JP5068979B2 - 歯科用充填材、その製造方法および歯科用複合材料 - Google Patents
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Description
前記シリカ系微粒子群は、2〜300nmの平均粒子径を有することが好ましい。
前記非晶質焼成粉体は、上記の非晶質乾燥粉体を焼成して得られる無機酸化物微粒子群の非晶質焼成粉体またはその粉砕物であることが好ましい。
前記無機酸化物微粒子群は、有機珪素化合物、有機チタニウム化合物および有機ジルコニウム化合物から選ばれた1種または2種以上の有機金属化合物で表面処理されたものであることが好ましい。
前記歯科用充填材の屈折率は、1.43〜1.65の範囲にあることが好ましい。
シリカ系微粒子群の表面を、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆してなる鎖状無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体または該鎖状無機酸化物微粒子群が絡み合って凝結した無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体からなる歯科用充填材を製造する方法であって、
(a)酸化ジルコニウム水和物を含む水溶液に、アルカリ金属の水酸化物と過酸化水素を添加して攪拌することにより、該酸化ジルコニウム水和物を解膠して溶解させた混合水溶液を調製する工程、
(b)平均粒子径2〜300nmのシリカ系微粒子群を水に分散させたシリカゾルに、該シリカゾルを撹拌しながら前記工程(a)で得られた混合水溶液と珪酸液の水溶液を添加する工程、
(c)前記工程(b)で得られた混合水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリする工程、
(d)前記工程(c)で得られた混合水溶液を反応容器中に入れて、100〜350℃の温度で水熱処理して鎖状無機酸化物微粒子群を含む混合水溶液を調製する工程、および
(e)前記工程(d)で得られた混合水溶液中に含まれる鎖状無機酸化物微粒子群を乾燥する工程、
に処することを特徴としている。
前記工程(a)で使用されるアルカリ金属の水酸化物は、水酸化カリウムであることが好ましい。
前記工程(b)において添加される珪酸液の水溶液は、水ガラスを水で希釈した後、陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリしたものであることが好ましい。
前記工程(c)における脱アルカリ操作は、前記水溶液のpHが7.0〜10.0の範囲になるように行うことが好ましい。
前記工程(b)における添加操作と前記工程(c)における脱アルカリ操作は、複数回、繰り返して行うことが好ましい。
前記工程(c)における水熱処理操作は、オートクレーブ中で10〜100時間かけて行うことが好ましい。
前記工程(d)における乾燥処理は、熱風乾燥機中で乾燥またはスプレードライヤーを用いた噴霧乾燥にて行うことが好ましい。
前記無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体または非晶質焼成粉体は、該粉体を水および/または有機溶媒の中に分散させた混合液に、有機珪素化合物、有機チタニウム化合物および有機ジルコニウム化合物から選ばれた1種または2種以上の有機金属化合物を添加して、該有機金属化合物の加水分解反応を起こさせることによってその表面を処理することが好ましい。
前記硬化性樹脂は、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂およびウレタン樹脂から選ばれた1種または2種以上の硬化性樹脂であることが好ましい。
また、前記歯科用複合材料の好ましき用途としては、歯科用修復材、歯科用接着剤、歯科用ミルクブランク、歯科用セメント、義歯、歯科用矯正具、歯科用矯正接着剤、歯科用鋳造材料、歯科用被覆物などがある。
1)前記歯科用充填材を構成する無機酸化物微粒子群は、その屈折率が1.45〜1.63、さらに詳しくは1.49〜1.60の範囲にあるため、歯科材料として好適に使用することができる。しかし、前記無機酸化物粒子群の屈折率を調整する必要がある場合には、該無機酸化物微粒子群が少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ微粒子群の非晶質乾燥粉体や非晶質焼成粉体であるため、有機珪素化合物、有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物などの有機金属化合物でその表面を容易に処理(改質)することができる。これにより、前記無機酸化物粒子群の屈折率を1.43〜1.65の範囲に容易に調整することができ、結果として歯科用複合材料の調合時に該無機酸化物微粒子群と混合して使用される硬化性樹脂の屈折率と適合したものが得られる。
3)前記無機酸化物微粒子群の非晶質焼成粉体は、特許文献4に記載されたジルコニウムシリケート化合物からなる結晶性無機酸化物微粒子に比べれば、その機械的強度や耐摩耗性が少し劣っているものの、歯科材料に要求される機械的強度や耐摩耗性は充分に備わっている。しかし、前記無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体は、前記非晶質焼成粉体に比べると、その機械的強度や耐摩耗性が充分でないため、これらの性状に対する要求が大きくない用途において使用することが望ましい。
5)前記無機酸化物微粒子群は、極めて安定した緻密な物質から構成されているため、これを歯科材料として用いても口腔内に溶出することはなく、また毒性のある重金属成分を一切、含んでいないため人体に悪影響を及ぼすこともない。
さらに、本発明に係る歯科用複合材料は、当該材料に要求される上記の光学的性質や機械的性質などを兼ね備えているため、現在または今後の歯科医療分野で使用される各種材料として極めて有用である。
歯科用充填材
本発明による歯科用充填材は、シリカ系微粒子の表面を、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆してなる非晶質の無機酸化物微粒子群を含むものである。
前記シリカ系微粒子としては、平均粒子径が2〜300nmの範囲にあるものを使用することが好ましい。ここで、平均粒子径が2nm未満では、該粒子を用いた歯科用充填材の機械的強度、特に圧縮強度や曲げ強度が低下し、また平均粒子径が300nmを超えると、該粒子を含む歯科用充填材を用いて歯を修復した場合、その研磨面の滑沢性が十分でなくなるので、好ましくない。
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―O―Zr―O―Si―O― (I)
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―O―Zr―O―Si―O―Ti―O― (II)
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―O―Zr―O―Si―O―Al―O― (III)
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ここで、前記非晶質乾燥粉体は、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子を、該シリカ系微粒子の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結してなる鎖状無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体、該鎖状無機酸化物微粒子群が絡み合って凝結した無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体またはその粉砕物であることが好ましい。
なお、これらの非晶質乾燥粉体において、前記鎖状無機酸化物微粒子群は、概ね図1の電子顕微鏡写真に示すような形状を有しており、また該鎖状無機酸化物微粒子群が絡み合って凝結した無機酸化物微粒子群は、概ね図2の電子顕微鏡写真に示すような形状を有している。
しかし、前記非晶質乾燥粉体は、その機械的強度や耐摩耗性が充分でないため、通常はこの非晶質焼成粉体を使用することが望ましい。すなわち、前記非晶質乾燥粉体および前記非晶質焼成粉体は、その用途によって使い分ける必要がある。
なお、本発明に係る前記無機酸化物微粒子群は、前記非晶質乾燥粉体および非晶質焼成粉体のいずれにおいても、その表面を前記有機金属化合物で容易に処理(改質)することができるので、各歯科材料メーカー(異なった硬化性樹脂が使用される)が所望する表面特性(例えば、屈折率)を備えた粒子群を含む歯科用充填材を簡単に得ることができる。
RnSiX4-n (1)
(式中、Rは炭素数1〜10の非置換型炭化水素基または置換型炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン基または水素を表し、nは0〜3である。)
さらに、場合によっては、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機酸塩キレート化合物等の有機アルミニウム化合物で表面処理することもできる。
また、この表面処理は、使用される前記有機金属化合物の種類、更には得られる無機酸化物微粒子群の屈折率や分散性等に対する所望値によっても異なるが、前記無機酸化物微粒子群の表面に結合または被覆される前記有機金属酸化物(シラン化合物からなる有機珪素化合物、有機チタニウム化合物または有機ジルコニウム化合物にあっては、その加水分解物)の厚さが300nm以下、好ましくは100nm以下であることが望ましい。ここで、前記厚さが300nmを超えると、粒子表面に未反応の有機金属化合物(表面処理時に十分に加水分解されずに加水分解基が残っているものや、粒子表面と反応せずに有機金属化合物同士が反応したもの等)が残存し硬化性樹脂に分散させた場合、その粒子表面の経時安定性が悪くなり、粒子同士が付着して凝集したりすることもあるので、好ましくない。
また、前記無機酸化物微粒子群を含む歯科用充填材の屈折率も、上記の理由により、1.43〜1.65、好ましくは1.45〜1.63の範囲にあることが望ましい。
しかし、表面処理を施す前の前記無機酸化物微粒子群の屈折率は、その組成や調製条件などによっても異なるが、1.45〜1.63、好ましくは1.49〜1.60、さらに好ましくは1.53〜1.57の範囲にあることが望ましい。
本発明に係る歯科用充填材の製造方法は、
シリカ系微粒子の表面を、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆してなる鎖状無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体または該鎖状無機酸化物微粒子群が絡み合って凝結した無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体からなる歯科用充填材を製造する方法であって、
(a)酸化ジルコニウム水和物を含む水溶液に、アルカリ金属の水酸化物と過酸化水素を添加して攪拌することにより、該酸化ジルコニウム水和物を解膠して溶解させた混合水溶液を調製する工程、
(b)平均粒子径2〜300nmのシリカ系微粒子を水に分散させたシリカゾルに、前記工程(a)で得られた混合水溶液と珪酸液の水溶液を撹拌しながら添加する工程、
(c)前記工程(b)で得られた混合水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリする工程、
(d)前記工程(c)で得られた混合水溶液を反応容器中に入れて、100〜350℃の温度で水熱処理して鎖状無機酸化物微粒子群を含む混合水溶液を調製する工程、および
(e)前記工程(d)で得られた混合水溶液中に含まれる鎖状無機酸化物微粒子群を乾燥する工程、
を含むものである。
さらに、前記の各工程について詳述すれば、以下の通りである。
本発明でいう前記酸化ジルコニウム水和物は、化学式ZrO2・xH2Oで表され、この中には水酸化ジルコニウム(Zr(OH)n)も含まれるものとする。
また、前記酸化ジルコニウム水和物は、酸または酸を含む水溶液には溶解するが、水またはアルカリを含む水溶液には殆ど溶解しないことが知られている。
そこで、この工程(a)においては、純水または蒸留水中に水酸化ジルコニウムを含む懸濁水溶液を調製し、これにカリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物(すなわち、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)および過酸化水素を添加して攪拌することにより、前記酸化ジルコニウム水和物を解膠して溶解させた混合水溶液(以下、「混合水溶液-(1)」という)を調製する。ここで、前記アルカリ金属水酸化物としては水酸化カリウムを使用することが好ましい。これは、水酸化カリウムを使用すると、水酸化ナトリウムに比べて前記の解膠が進みやすいためである。
さらに、前記過酸化水素は、18〜35重量%濃度の過酸化水素水として添加することが望ましい。
前記水溶液中における前記ジルコン酸塩の含有量は、10〜20重量%、好ましくは13〜17重量%の範囲にあることが好ましい。
さらに、前記アンモニア水は、5〜15重量%濃度のアンモニア水として添加することが望ましい。
このようにして得られる混合水溶液-(1)中に溶解して含まれるジルコニウム成分(酸化ジルコニウム水和物の解膠物)は、特にこれに制限されるものではないが、ZrO2換算基準で0.3〜5重量%の範囲にあることが望ましい。
この工程(b)では、平均粒子径2〜300nmのシリカ系微粒子を水に分散させたシリカゾル中に、該ゾルを撹拌しながら前記工程(a)で得られた混合水溶液-(1)と珪酸液の水溶液をそれぞれ添加する。
ここで、前記シリカゾルとしては、平均粒子径が2〜300nmのシリカ系微粒子を含むものであれば、市販のもの(例えば、触媒化成工業(株)製SI-30等)を使用することができる。ここで、平均粒子径が2nm未満であると、該粒子を用いた歯科用充填材の機械的強度、特に圧縮強度や曲げ強度が低下し、また平均粒子径が300nmを超えると、該粒子を含む歯科用充填材を用いて歯を修復した場合、その研磨面の滑沢性が十分でなくなるので、好ましくない。なお、ここでいう平均粒子径は、レーザー回折散乱法を用いて測定した結果を示すものである。
この珪酸液の水溶液の中でも、pHが2〜4、好ましくは2〜3の範囲にあり、珪素成分の含有量がSiO2換算基準で0.5〜5重量%、好ましくは3〜4重量%の範囲にあるものを使用することが好ましい。ここで、前記pHが2未満であると、その処理に要する陽イオン交換樹脂の量と処理時間が必要以上に多くなって経済的でなくなり、また前記pHが4を超えると、脱アルカリの度合いが低いため、得られる珪酸液の安定性が悪くなるので、好ましくない。さらに、前記含有量が0.5重量%未満であると、経済的に前記無機酸化物微粒子を得ることが難しくなり、また前記含有量が5重量%を超えると、珪酸液の安定性が悪くなるので、好ましくない。
このような性状を有する珪酸液の水溶液としては、水ガラス(珪酸ナトリウム)を水で希釈した後、陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリしたものを使用することが好ましい。
また、前記混合水溶液-(1)および前記珪酸液の水溶液の添加は、これらの水溶液中に含まれる前記成分の濃度やその添加量(総量)によっても異なるが、それぞれ4〜24時間かけてゆっくりと行うことが好ましい。
強いアルカリ性を呈する前記混合水溶液-(1)の添加に伴い、前記混合水溶液-(2)中のpHは経時的に高まるので、該混合水溶液のpHが11、好ましくは10.5となった段階で、前記混合水溶液-(1)と前記珪酸液の添加を中止することが望ましい。ここで、前記pHが11を超えると、前記シリカゾル中に含まれるシリカ系微粒子がアルカリにより混合水溶液-(2)中に溶解し始めるので、好ましくない。
よって、pHが11になった段階で前記混合水溶液-(2)および前記珪酸液の添加が完了していない場合は、以下に述べる工程(c)に処して脱アルカリした後、この操作を再度または繰り返して行うことが好ましい。
この工程(c)では、前記工程(b)で得られた混合水溶液-(2)を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリする。
ここで使用される陽イオン交換樹脂としては、特に制限されるものではないが、三菱化学(株)製のSK1BH等の陽イオン交換樹脂を使用することが好ましい。
また、この工程では、前記混合水溶液-(2)を該混合水溶液のpHが7.0〜10.0、好ましくは8.5〜9.5となるように脱アルカリ処理することが好ましい。ここで、前記pHが7.0未満であると、混合液中の脱アルカリが進みすぎて、その混合液が不安定となって粒子の凝集などが起こり、また前記pHが10.0を超えると、前記混合水溶液-(1) および前記珪酸液を添加している間に前記シリカゾル中に含まれるシリカ系微粒子がアルカリによって溶け始めて前記混合水溶液-(2)中に溶解するので、好ましくない。
この工程(d)では、前記工程(c)で得られた混合水溶液-(3)を反応容器中に入れて、100〜350℃の温度で水熱処理する。
ここで、前記反応器としては、0.5〜16.5Mpaの圧力に耐える耐圧・耐熱容器であれば特に制限されるものではないが、ステンレススチール製のオートクレーブを用いることが好ましい。
この工程(e)では、前記工程(d)で得られた混合水溶液-(4)中に含まれる鎖状無機酸化物微粒子群からなる固形分を乾燥する。
前記混合水溶液-(4)中に含まれる固形分は、一般的に用いられている乾燥工程、即ち該固形分を濾過分離した後、必要に応じて純水または蒸留水で洗浄してから100〜200℃の温度で乾燥する工程に供して乾燥することができる。
また、前記混合水溶液-(4)を限外濾過膜を用いて8〜12重量%まで濃縮した後、該濃縮水溶液をそのまま乾燥機中に入れて、100〜200℃の温度で乾燥することもできる。
この際、前記熱風の温度は、入り口温度は150〜200℃、好ましくは170〜180℃の範囲にあることが望ましく、出口温度は40〜60℃の範囲にあることが好ましい。ここで、前記入口温度が150℃未満であると、前記固形分の乾燥が不充分となり、また200℃を超えると、経済的でなくなる。また、前記出口温度が40℃未満であると、粉体の乾燥度合いが悪くて装置内に付着するので、好ましくない。
しかし、前記固形分を一般的に知られている乾燥装置の中に入れて、100〜200℃の温度で乾燥させてもよいことは勿論である。ただし、この場合は、粒子径の揃った無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体を得ることができないので、場合によっては、すり鉢やボールミル等を用いた粉砕工程に供してその粒子径を調整することが必要である。
この工程では、前記工程(e)で得られた無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体を300〜900℃の温度で焼成する。
前記工程(e)で乾燥された無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体は、石英製の坩堝に入れて電気炉中で、300〜900℃、好ましくは500〜800℃の温度条件下で1時間以上、好ましくは3〜4時間かけて焼成することが好ましい。ここで、前記焼成温度が 300℃未満であると、得られる非晶質焼成粉体に所望の機械的強度が得られなくなるばかりでなく、その被覆物質の密度が高くならないため所望の屈折率(1.45〜1.63)が得られなくなることがあり、結果としてこれを用いた歯科用充填材の色調が歯の色調に合致しなくなる場合がある。また、前記焼成温度が900℃を超えると、酸化ジルコニウム(ZrO2)の結晶化が起こり始めて所望の屈折率(1.45〜1.63)が得られなくなることがあり、結果としてこれを用いた歯科用充填材の色調が歯の色調に合致しなくなる場合がある。また、前記焼成時間が1時間未満となると、得られる非晶質焼成粉体に所望の機械的強度が得られなくなるばかりでなく、その被覆物質の密度が高くならないため所望の屈折率(1.45〜1.63)が得られなくなることがあり、結果としてこれを用いた歯科用充填材の色調が歯の色調に合致しなくなる場合がある。
しかし、このようにして得られた無機酸化物粒子群(非晶質焼成粉体)の粒子径が所望値より大きい場合には、これをすり鉢やボールミル等の中に入れて粉砕して、2〜50000nmの範囲から選択された所望の平均粒子径に調整してから歯科用充填剤として使用してもよいことは勿論である。特に、前記工程(e)において、スプレードライヤーを用いた噴霧乾燥を行わない場合や得られた非晶質乾燥粉体の粉砕処理を行わない場合には、この段階で粉砕処理して所望の粒子径とすることが望ましい。
本発明に係る無機酸化物微粒子群、すなわち前記工程(e)で得られた非晶質乾燥粉体、前記焼成工程で得られた非晶質焼成粉体およびその粉砕物は、上記のような物理的性状を有しているので、その使用用途によっても異なるが、本発明に係る歯科用充填材としてそのまま使用することができる。
しかし、この無機酸化物微粒子群と混合して使用される硬化性樹脂とその屈折率を調整する必要がある場合、あるいはこの硬化性樹脂への分散性や該樹脂との密着性を向上させる必要がある場合には、該無機酸化物微粒子群の表面を有機珪素化合物、有機チタニウム化合物および有機ジルコニウム化合物から選ばれた1種または2種以上の有機金属化合物で表面処理(表面改質)して使用することが望ましい。
本発明による歯科用複合材料は、前記の歯科用充填材と硬化性樹脂を含むものである。
ここで、前記硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂などがある。また、これらの硬化性樹脂は、前記歯科用複合材料の使用用途によって選択され、場合によってはこれらの2種以上を混合して使用してもよい。
このようにして製造される前記歯科用複合材料は、歯科用修復材、歯科用接着剤、歯科用ミルクブランク、歯科用セメント、義歯、歯科用矯正具、歯科用矯正接着剤、歯科用鋳造材料、歯科用被覆物などの用途に好適に使用することができる。
酸化ジルコニウム水和物の調製
オキシ塩化ジルコニウム250kg(ZrOCl2・8H2O、太陽鉱工(株)製)を温度15℃の純水4375kgに加えて攪拌し、オキシ塩化ジルコニウムを溶解させた。
さらに、このオキシ塩化ジルコニウム水溶液に、15重量%濃度のアンモニア水250 Lを攪拌下でゆっくりと添加して、15℃の温度条件下で前記オキシ塩化ジルコニウムの中和反応を行い、酸化ジルコニウム水和物の沈殿を含むスラリーを得た。このスラリーのpHは8.5であった。
次いで、このスラリーを濾過し、得られたケーキ状物質を純水で繰り返し洗浄して、前記中和反応での副生物や未反応物などを除去した。
その結果、酸化ジルコニウム水和物をZrO2換算基準で10重量%含み、残余物が水分であるケーキ状物質860kgを得た。
珪酸液の調製
市販の水ガラス10kg(旭硝子エスアイテック(株)製)を純水38kgで希釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を用いて脱アルカリして、pHが3で、SiO2濃度が4重量%の珪酸液9kgを調製した。その後、この珪酸液10768gと純水14860gを混合し、2重量%の珪酸液25628gを調整した。
[実施例1]
調製例1で調製された酸化ジルコニウム水和物を含むケーキ状物質5416gに純水45800gを加え、さらに攪拌しながら水酸化カリウム(関東化学(株)製)を85重量%含む水酸化カリウム1024gを添加してアルカリ性にした後、過酸化水素(林純薬工業(株)製)を35重量%含む過酸化水素水10248gを添加した。
さらに、この混合水溶液を攪拌しながら1時間、放置し、前記酸化ジルコニウム水和物を解膠して水溶液中に溶解させた。次いで、純水を冷凍して得られた氷水39991gを加えて、発熱反応によって温度が上昇した前記水溶液を30℃以下の温度に冷却した。これにより、ZrO2換算基準でジルコニウム成分を0.5重量%含み、pHが約11の混合水溶液102400g(以下、実施例調製液1Aという)を得た。
次に、前記シリカゾルを90℃に加熱し、これを撹拌しながら、これに調製例2で調製された珪酸液の水溶液12814gと前記実施例調製液1A51200gを10 時間かけてゆっくりと添加した。これにより、pHが約11の混合水溶液115250g(以下、実施例調製液1B-(1)という)を得た。
次いで、前記実施例調製液1B-(1)を陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、SK1BH)で処理して脱アルカリした。これにより、pHが約9.5の混合水溶液117250g(以下、実施例調製液1C-(1)という)を得た。
次に、前記実施例調製液1B-(2)を陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、SK1BH)で処理して脱アルカリした。これにより、pHが約9.5の混合水溶液182264g(以下、実施例調製液1C-(2)という)を得た。
この結果、実施例粉体1A-(1)は、前記複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子を、該シリカ系微粒子の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結してなる鎖状形状を有しており、さらに実施例粉体1A-(2)は、鎖状形状の無機酸化物微粒子群が絡み合って凝結したような形状を有していることがわかった。
次いで、前記実施例粉体1B3.0gを石英製の坩堝に入れて電気炉(東洋製作所(株)製)中に収納し、これを800℃の温度条件下で3時間かけて焼成した。これにより、無機酸化物微粒子群の焼成粉体2.1g(以下、実施例粉体1Cという)を得た。
さらに、前記実施例粉体1Bおよび実施例粉体1Cの中から選ばれた無機酸化物微粒子群の粒子径、密度、屈折率および圧縮強度をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
(a)粒子径
水-グリセリン溶液(水/グリセリンの重量比=6/4)に無機酸化物微粒子群を添加して、その含有量が1重量%になるように調整した。次に、この混合液を注入したセルを、遠心沈降式粒度分析計(堀場製作所、CAPA700)にかけて粒子の平均粒子径を測定した。また、この測定は、テーブル回転数1000rpm、粒度範囲0.5〜15μmの条件下で行った。
無機酸化物微粒子である試料0.2gとCARGILIE標準屈折率液0.2gを均一に混合したペーストを得た。次に、スライドガラス板上に厚さ1mmの金属製リングをのせ、該リングの中へ前記ペーストを流し込み、その上にカバーガラスをのせて、軽く圧接した。さらに、前記ペーストの透明度を目視により確認した。
(C)圧縮強度
微小圧縮試験機(島津製作所製)を用いて、ダイヤモンド圧盤で無機酸化物微粒子(3〜4μm)に負荷を与え、負荷圧力と圧縮変位を測定し粒子の圧縮強度とした。
なお、実施例1で採用された測定装置や測定方法に関しては、異なった記載がない限り、以下に示す実施例2〜9、および比較例2〜10においても同じものを使用した。
実施例1で前記実施例調製液1C-(2)を調製した方法と同じ方法で、調製液2C-(2) 15000gを調製した。
次いで、前記調製液2C-(2)の中から4800gずつを取り出し、ステンレススチール製のオートクレーブ(耐圧ガラス工業(株)製)の中に入れて、それぞれ90℃、110℃、300℃の温度で18時間、水熱処理を行った。これにより、表面被覆された無機酸化物微粒子群からなる固形分を含む混合水溶液(以下、それぞれ比較例調製液1D、実施例調製液2D-(1)および実施例調製液2D-(2)という)を得た。
さらに、この無機酸化物微粒子群をすり鉢に入れて、大きな粒子径を有する粒子や塊状物を粉砕して、比較的粒子径の整った無機酸化物微粒子群(以下、それぞれ比較例粉体1B、実施例粉体2B-(1)及び実施例粉体2B-(2)という)を得た。その結果、得られた比較例粉体1B、実施例粉体2B-(1)および実施例粉体2B-(2)は、それぞれ2.8g、2.1gおよび2.3gであった。
次いで、実施例1と同じ条件下でこれらの粉体を焼成して、それぞれの無機酸化物微粒子群(以下、それぞれ比較例粉体1C、実施例粉体2C-(1)および実施例粉体2C-(2))を得た。
さらに、実施例1の場合と同様に、前記の比較例粉体1C、実施例粉体2C-(1)および実施例粉体2C-(2)の中から選ばれた無機酸化物微粒子群の粒子径、屈折率および圧縮強度をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
実施例1で前記実施例粉体1Bを調製した方法と同じ方法で、粉体3B200gを調製した。
次いで、前記粉体3Bの中から30gずつを取り出し、石英製の坩堝に入れて電気炉(東洋製作所(株)製)中に収納して、それぞれ350℃、500℃、800℃および1000℃の温度条件下で3時間かけて焼成した。これにより、それぞれの無機酸化物微粒子群(以下、それぞれ実施例粉体3C-(1)、実施例粉体3C-(2)、実施例粉体3C-(3)および比較例粉体2Cという)を得た。
さらに、実施例1の場合と同様に、前記の実施例粉体3C-(1)、実施例粉体3C-(2)、実施例粉体3C-(3)および比較例粉体2Cの中から選ばれた無機酸化物微粒子群の粒子径、屈折率および圧縮強度をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
実施例1で前記実施例調製液1Dを調製した方法と同じ方法で、調製液4D11500 gを調製した。
次いで、前記調製液4Dに含まれる固形分濃度を2重量%に調整して、これらをスプレードライヤー(NIRO ATOMIZER)に供して噴霧乾燥を行った。この時の噴霧乾燥おける温度(熱風温度)は180℃であり、また噴霧条件はスラリー供給量2L/分でスプレー圧0.45Mpaであった。これにより、充分に乾燥された実施例粉体4Aを得た。得られた実施例粉体4A50gをエタノール100gと十分混合し1時間静置を行った後、上澄みから約3cmの液、及び上澄みから約3〜6cmの液、約6〜9cmの液、約9cm以下の沈降物含有液(以下、それぞれ実施例調製液4E-(1)、実施例調製液4E-(2)、実施例調製液4E-(3)および実施例調製液4E-(4))を得た。
次いで、実施例1と同じ条件下でこれらの粉体を焼成して、それぞれの無機酸化物微粒子群(以下、それぞれ実施例粉体4C-(1)、実施例粉体4C-(2)、実施例粉体4C-(3)および実施例粉体4C-(4)という)を得た。
さらに、実施例1の場合と同様に、前記の実施例粉体4C-(1)、実施例粉体4C-(2)、実施例粉体4C-(3)および実施例粉体4C-(4)の中から選ばれた無機酸化物微粒子群の粒子径、屈折率および圧縮強度をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
実施例1で前記実施例調製液1Aを調製した方法と同じ方法で、調製液5A98kgを調製した。
次に、調製例2で調製された珪酸液と前記調製液5Aを以下に示す割合にて、実施例1と同様な方法で、90℃に加熱されたシリカゾル13480g中に2回に分けて添加すると共に、脱アルカリ処理を行った。なお、下記のモル比は、前記珪酸液中に含まれる珪素成分をSiO2で表し、さらに前記水溶液中に含まれるジルコニウム成分をZrO2で表したときのものを示す。
混合水溶液1 10784.0 43136.0 2/1
混合水溶液2 5055.0 20200.0 2/1
混合水溶液3 8087.5 32350.0 2/1
混合水溶液4 337.0 1348.0 2/1
次いで、実施例1と同じ条件下でこれらの粉体を焼成して、それぞれの無機酸化物微粒子群(以下、それぞれ比較例粉体3C-(1)、実施例粉体5C-(1)、実施例粉体5C-(2)および比較例粉体3C-(2)という)を得た。
さらに、実施例1の場合と同様に、前記の比較例粉体3C-(1)、実施例粉体5C-(1)、実施例粉体5C-(2)および比較例粉体3C-(2)の中から選ばれた無機酸化物微粒子群の粒子径、屈折率および圧縮強度をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
実施例1で前記実施例調製液1Aを調製した方法と同じ方法で、調製液6A60.0kgを調製した。
次に、調製例2で調製された珪酸液6740gと前記調製液6A26960gを、実施例1と同様な方法で、50℃および80℃に加熱されたシリカゾル13480g中に2回に分けて添加すると共に、脱アルカリ処理を行った。
次いで、得られた混合水溶液(すなわち、それぞれ比較例調製液4Cおよび実施例調製液6Cである。)を、ステンレススチール製のオートクレーブ(耐圧ガラス工業(株)製)の中に入れて、それぞれ160℃の温度で16時間、水熱処理を行った。これにより、表面被覆された無機酸化物微粒子群からなる固形分を含む混合水溶液(以下、それぞれ比較例調製液4Dおよび実施例調製液6Dという)を得た。
次いで、実施例1と同じ条件下でこれらの粉体を焼成して、それぞれの無機酸化物微粒子群(以下、それぞれ比較例粉体4Cおよび実施例粉体6Cという)を得た。
さらに、実施例1の場合と同様に、前記の比較例粉体4Cおよび実施例粉体6Cの中から選ばれた無機酸化物微粒子群の粒子径、屈折率および圧縮強度をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
実施例1で前記実施例調製液1Aを調製した方法と同じ方法で、調製液7A28kgを調製した。
次に、調製例2で調製された珪酸液6740gと前記調製液7A26960gを、90℃に加熱されたシリカゾル13480g中に1回で添加し、脱アルカリ処理を行った。
次いで、得られた混合水溶液(すなわち、比較例調製液5Cである。)を、ステンレススチール製のオートクレーブ(耐圧ガラス工業(株)製)の中に入れて、それぞれ160℃の温度で16時間、水熱処理を行った。これにより、無機酸化物微粒子群からなる固形分を含む混合水溶液(以下、比較例調製液5Dという)を得た。
次いで、実施例1と同じ条件下でこれらの粉体を焼成して、それぞれの無機酸化物微粒子群(以下、それぞれ比較例粉体5Cという)を得た。
さらに、実施例1の場合と同様に、前記の比較例粉体5Cの中から選ばれた無機酸化物微粒子群の粒子径、屈折率および圧縮強度をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
実施例1で前記実施例粉体1Bを調製した方法と同じ方法で、粉体7B135gを調製した。
次いで、前記粉体7Bの中から100gを取り出し、ガラス容器に入れてエチルアルコール99.5重量%および水0.5重量%を含むエタノール18gとγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12gを添加して1時間、攪拌混合した後、乾燥器に入れて110℃の温度にて16時間乾燥させた。これにより、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物で表面処理された実施例粉体7BX107gを得た。
さらに、実施例1の場合と同様に、前記の実施例粉体7BXの中から選ばれた無機酸化物微粒子群の粒子径、密度、屈折率および圧縮強度をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
実施例1で前記実施例粉体1Cを調製した方法と同じ方法で、粉体8C152gを調製した。
次いで、前記粉体8Cの中から100gを取り出し、ガラス容器に入れてエチルアルコール99.5重量%および水0.5重量%を含むエタノール18gとγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12gを添加して1時間、攪拌混合した後、乾燥器に入れて110℃の温度にて16時間乾燥させた。これにより、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランの加水分解物で表面処理された実施例粉体8CX112gを得た。
さらに、実施例1の場合と同様に、前記の実施例粉体8CXの中から選ばれた無機酸化物微粒子群の粒子径、屈折率および圧縮強度をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
比較例1で前記比較例粉体1Bを調製した方法と同じ方法で、粉体6B122gを調製した。
次いで、前記粉体6Bの中から100gを取り出し、ガラス容器に入れてエチルアルコール99.5重量%および水0.5重量%を含むエタノール18gとγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12gを添加して1時間、攪拌混合した後、乾燥器に入れて110℃の温度にて16時間乾燥させた。これにより、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物で表面処理された比較例粉体6BX112gを得た。
さらに、実施例1の場合と同様に、前記の実施例粉体6BXの中から選ばれた無機酸化物微粒子群の粒子径、屈折率および圧縮強度をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
平均粒子径6μmのシリカ微粒子100g(触媒化成工業(株)製、シリカマイクロビードP−1500、450℃焼成品)をガラス容器にいれて、エチルアルコール99.5重量%および水0.5重量%を含むエタノール18gとγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12gを添加して1時間、攪拌混合した後、乾燥器に入れて110℃の温度にて16時間乾燥させた。これにより、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物で表面処理された比較例粉体7AX112gを得た。
さらに、実施例1の場合と同様に、前記の比較例粉体7AXの中から選ばれた無機酸化物微粒子群の粒子径、屈折率および圧縮強度をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
平均粒子径17nmのシリカ微粒子をSiO2基準で10重量%含むシリカゾル(触媒化成工業(株)製、カタロイドS−20L)を蒸留水で希釈して、3重量%のシリカ微粒子を含むシリカゾル1867gを得た。これに、濃度3重量%のNaOH水溶液12gと、ジルコニウム成分をZrO2基準で4重量%含む炭酸ジルコニルアンモニウム水溶液407g(第一稀元素化学工業(株)製、ジルコゾールAC−7)を添加した後、15分間攪拌してこれらの混合スラリー液2286gを調製した。
さらに、実施例1の場合と同様に、前記の比較例粉体8Cの中から選ばれた無機酸化物微粒子群の粒子径、屈折率および圧縮強度をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
比較例8で前記比較例粉体8Cを調製した方法と同じ方法で、粉体9C188gを調製した。
次いで、前記粉体9Aの中から100gを取り出し、ガラス容器に入れてエチルアルコール99.5重量%および水0.5重量%を含むエタノール18gとγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12gを添加して1時間、攪拌混合した後、乾燥器に入れて110℃の温度にて16時間乾燥させた。これにより、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物で表面処理された比較例粉体9CX112gを得た。
さらに、実施例1の場合と同様に、前記の比較例粉体9CXの中から選ばれた無機酸化物微粒子群の粒子径、屈折率および圧縮強度をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
[実施例9および比較例10]
ウレタンジメタクリレート130gとトリエチレングリコールジメタクリレート70gを混合した後、カンファーキノン2gおよびジメチルアミノエチルメタクリレート4gを添加して溶解させた重合性単量体を調製した。
(a)X線造影性
X線撮影装置を用いて前記複合材料を歯科用X線フィルムに撮影した。さらに、同時に厚さを規定したアルミニウム板を撮影し、前記複合材料のX線不透過性がアルミニウム板と等価の場合を100%とした。
前記複合材料を白色と黒色に二分された透明性テスト紙上にプレートの1/2が黒色上に位置するように置いて、白色部と黒色部のプレート上での透明性を観察した。さらに、以下の基準で評価した。
○印:黒色部に白濁や反射光がなく、白色部に何ら着色が認められない。(すなわち、透明性が高いことを意味する。)
△印:黒色部がやや白味を帯び、白色部にやや着色の傾向が認められる。(すなわち、透明性がやや低いことを意味する。)
×印:黒色部が白味を帯びて反射光があり、白色部に薄茶の着色が認められる。(すなわち、透明性が低いことを意味する。)
前記複合材料を37℃の蒸留水中に24時間保持した後、これを取り出してインストロン万能試験機を用いて、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分の条件下で曲げ強度試験を行った。なお、ここでは、各試料5本ずつの試験片(幅約2mm、高さ約2mm、長さ約25mmの直方体)を作製し、その平均値を以ってその試料の曲げ強度とした。
Claims (20)
- シリカ系微粒子群の表面を、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆してなる非晶質の無機酸化物微粒子群を含み、該無機酸化物微粒子群が、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆された鎖状シリカ微粒子群の非晶質乾燥粉体または非晶質焼成粉体であることを特徴とする歯科用充填材。
- 前記シリカ系微粒子群が、2〜300nmの平均粒子径を有することを特徴とする請求項1に記載の歯科用充填材。
- 前記非晶質乾燥粉体が、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子群を、該シリカ系微粒子群の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結してなる鎖状無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体、該鎖状無機酸化物微粒子群が絡み合って凝結した無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体またはその粉砕物であることを特徴とする請求項1または2に記載の歯科用充填材。
- 前記非晶質焼成粉体が、請求項3に記載の非晶質乾燥粉体を焼成して得られる無機酸化物微粒子群の非晶質焼成粉体またはその粉砕物であることを特徴とする請求項1または2に記載の歯科用充填材。
- 前記無機酸化物微粒子群が、有機珪素化合物、有機チタニウム化合物および有機ジルコニウム化合物から選ばれた1種または2種以上の有機金属化合物で表面処理されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の歯科用充填材。
- 前記歯科用充填材の屈折率が、1.43〜1.65の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の歯科用充填材。
- シリカ系微粒子群の表面を、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆してなる鎖状無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体または該鎖状無機酸化物微粒子群が絡み合って凝結した無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体からなる歯科用充填材を製造する方法であって、
(a)酸化ジルコニウム水和物を含む水溶液に、アルカリ金属の水酸化物と過酸化水素を添加して攪拌することにより、該酸化ジルコニウム水和物を解膠して溶解させた混合水溶液を調製する工程、
(b)平均粒子径2〜300nmのシリカ系微粒子群を水に分散させたシリカゾルに、該シリカゾルを撹拌しながら前記工程(a)で得られた混合水溶液と珪酸液の水溶液を添加する工程、
(c)前記工程(b)で得られた混合水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリする工程、
(d)前記工程(c)で得られた混合水溶液を反応容器中に入れて、100〜350℃の温度で水熱処理して鎖状無機酸化物微粒子群を含む混合水溶液を調製する工程、および
(e)前記工程(d)で得られた混合水溶液中に含まれる鎖状無機酸化物微粒子群を乾燥する工程、
に処することを特徴とする歯科用充填材の製造方法。 - 前記工程(a)で使用される酸化ジルコニウム水和物が、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、オキシ炭酸ジルコニウムおよびアンモニウムオキシ炭酸ジルコニウムから選ばれた1種または2種以上のジルコン酸塩の水溶液にアンモニアまたはアンモニア水を撹拌下で添加して得られる中和反応物を洗浄したものであることを特徴とする請求項7に記載の歯科用充填材の製造方法。
- 前記工程(a)で使用されるアルカリ金属の水酸化物が、水酸化カリウムであることを特徴とする請求項7または8に記載の歯科用充填材の製造方法。
- 前記工程(b)において添加される珪酸液の水溶液が、水ガラスを水で希釈した後、陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリしたものであることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の歯科用充填材の製造方法。
- 前記工程(b)において、前記ジルコニウム成分を含む水溶液および前記珪酸液の水溶液を添加する前に、前記シリカゾルを70〜95℃の温度に加熱しておくことを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の歯科用充填材の製造方法。
- 前記工程(c)における脱アルカリ操作を、前記水溶液のpHが7.0〜10.0の範囲になるように行うことを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の歯科用充填材の製造方法。
- 前記工程(b)における添加操作と前記工程(c)における脱アルカリ操作を複数回、繰り返して行うことを特徴とする請求項7〜12のいずれかに記載の歯科用充填材の製造方法。
- 前記工程(c)における水熱処理操作を、オートクレーブ中で10〜100時間かけて行うことを特徴とする請求項7〜13のいずれかに記載の歯科用充填材の製造方法。
- 前記工程(d)における乾燥処理を、熱風乾燥機中で乾燥またはスプレードライヤーを用いた噴霧乾燥にて行うことを特徴とする請求項7〜14のいずれかに記載の歯科用充填材の製造方法。
- 請求項7〜15のいずれかに記載の方法で得られた鎖状無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体、該鎖状無機酸化物微粒子群が絡み合って凝結した無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体またはその粉砕物を300〜900℃の温度で焼成して得られる非晶質焼成粉体またはその粉砕物からなる歯科用充填材の製造方法。
- 前記無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体または非晶質焼成粉体を水および/または有機溶媒の中に分散させた混合液に、有機珪素化合物、有機チタニウム化合物および有機ジルコニウム化合物から選ばれた1種または2種以上の有機金属化合物を添加して、該有機金属化合物の加水分解反応を起こさせることによって該無機酸化物微粒子群の表面を処理することを特徴とする請求項7〜16のいずれかに記載の歯科用充填材の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の歯科用充填材と硬化性樹脂とを含む歯科用複合材料。
- 前記硬化性樹脂が、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂およびウレタン樹脂から選ばれた1種または2種以上の硬化性樹脂であることを特徴とする請求項18に記載の歯科用複合材料。
- 前記歯科用複合材料が、歯科用修復材、歯科用接着剤、歯科用ミルクブランク、歯科用セメント、義歯、歯科用矯正具、歯科用矯正接着剤、歯科用鋳造材料および歯科用被覆物から選ばれた1種または2種以上の用途に使用されることを特徴とする請求項18または19に記載の歯科用複合材料。
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