以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、以下は本発明を説明する実施形態に限定する趣旨ではない。
本発明の製造方法は、無機充填材の成形体(A)と重合性単量体を含む組成物(B)とを鋳型内において接触させて成形体(A)に組成物(B)を含浸させる工程(I)と、成形体(A)を収容した鋳型内において重合性単量体を重合させる工程(II)と、を含む。
本発明の歯科用ミルブランクの製造方法は、組成物(B)の含浸工程(I)の前に、成形体(A)を鋳型に収容する工程(P−1)と、鋳型を収納容器(好適には、袋体)の内部に配置する工程(P−2)とを有していてもよい。また、工程(P−1)及び工程(P−2)を実施する順番は、特に限定されず、例えば、成形体(A)を鋳型に収容する前に鋳型を収納容器の内部に配置し、配置された鋳型に成形体(A)を収容してもよい。
工程(I)を実施する前に、成形体(A)が鋳型内に収容される(工程(P−1))。鋳型の形状は、成形体(A)の形状に合わせて適宜変形でき、特に限定されず、柱状(例えば、円柱状、角柱状)又は板状(円板状、角板状)等が挙げられ、円板状が好ましい。なお、本明細書において、円柱状と円板状は、底面の直径が高さより大きい場合を円板状とし、底面の直径が高さ以下である場合を円柱状として区別する。好適な実施形態として、円板状の鋳型について図1を用いて説明する。図1において、鋳型1は、第1成形型10及び第2成形型20から構成される。鋳型1は、その内部の収容空間に成形体100を収容することができる。
図2Aは、鋳型1の鉛直方向Vに沿った断面図である。主面(底面)の重心から伸びる中心軸Oは、鉛直方向Vに平行である。中心軸Oは、鋳型1の有する収容空間80の中心軸と一致する。
第1成形型10は、上側壁部11と、上側壁部11の上端と接続し、上側壁部11よりも中心軸O側に張り出した庇部12とを備える。また、第2成形型20は、下側壁部21と、下側壁部21の下端と接続し、下側壁部21よりも中心軸O側に張り出した底部22とを備える。
第1成形型10の庇部12における中心軸O側の端面13(内周面)と、第2成形型20の底部22における中心軸O側の端面23(内周面)は、鉛直方向Vに平行である。また、端面13及び端面23は、水平方向Hにおいて互いに一致する。
第1成形型10と第2成形型20とは、使用時に庇部12と底部22とが互いに対向するように上下方向(鉛直方向)に係合する。このとき、上側壁部11(上側係合部)と下側壁部21(下側係合部)とは端面(図示D1−D2)で係合する。なお、上側壁部11と下側壁部21とが係合する態様は、図2Aの態様に限定されない。例えば、図2B及び図2Cに示した鋳型1の断面図のように、上側壁部11と下側壁部21とが、それぞれ嵌合する形状であってもよい。
図2Aに示した上側壁部11及び下側壁部21の端面(図示D1−D2)において、最も中心軸O側の端部D1によって規定される面の径R2は、後述する付属空間90の外径に相当する。また、前記端面(図示D1−D2)において、中心軸Oから最も遠い端部D2によって規定される面の径R3は、鋳型1の底面の径(鋳型1の外径)に相当する。
鋳型1は、成形体(A)を収容する収容空間80と、収容空間80に連通する付属空間90とを有する。収容空間80と付属空間90とは、第1成形型10の上側壁部11と第2成形型20の下側壁部21とが、前記態様で係合することによって形成される。
収容空間80は、第2成形型20の端面23の下方側の端部E1によって規定される底面(下面)と、第1成形型10の端面13の上方側の端部E4によって規定される底面(上面)とに挟まれる。本発明に用いる鋳型における収容空間は、鋳型の形状に応じて変形してもよく、例えば、柱状(円柱状、角柱状)又は板状(円板状、角板状)等が挙げられ、円板状が好ましい。図1に示されるように、円板状の成形体(A)を収容する場合、鋳型1の収容空間80は円板状である。
また、収容空間80の空間周側面81と、上側壁部11及び下側壁部21との間に付属空間90が形成される。付属空間90は、収容空間80の空間周側面81によって規定される内周面の径R1に相当する内径と、上側壁部11及び下側壁部21の最も中心軸O側の端部D1によって規定される外周面の径R2に相当する外径と、を有する円筒形状である。また、付属空間90は、第2成形型20の端部E1によって規定される収容空間80の下面の周端と、第1成形型10の端部E4によって規定される収容空間80の上面の周端に接しない。このような構造によれば、ミルブランク部と段差を有するリング状の支持部とを備えるミルブランクが得られる。前記段差を有することによって、前記ミルブランクはミリング装置に適用できる。付属空間90は、収容空間80の空間周側面81の中央域(図示E2−E3)において、収容空間80に連通する。本明細書では、「収容空間80の空間周側面81の中央域」のことを「空間周側面中央域」と称することがある。図2Aにおいて、付属空間90は、空間周側面中央域を周回する。言い換えれば、付属空間90は、空間周側面中央域に沿って収容空間80を周回する。
成形体100を鋳型1の収容空間に収容した構造体を図3Aに示す。次に、成形体(A)を収容した鋳型を収納容器の内部に配置する(工程(P−2))。上述のように、収納容器の内部に鋳型を配置した後に、前記鋳型に成形体(A)を収容してもよい。すなわち、収納容器の内部に配置する鋳型は、成形体(A)を収容したものであってもよく、成形体(A)を収容していないものであってもよい。次いで、組成物(B)の含浸工程(I)で、収納容器に組成物(B)(溶液)を導入し、成形体(A)に組成物(B)を含浸させる。鋳型が配置され、かつ組成物(B)が導入された収納容器(袋体)の断面図を図3Bに示す。図3Bに示すように、重合性単量体を含む組成物(B)110で袋体120の内部が充填される。図3A及び図3Bに示した実施形態において、鋳型1は、収容した成形体(A)100の下面(底面)101が水平方向Hに平行に配置される。また、中心軸Oは、成形体(A)100の底面101における重心101aを通り、底面101に直交する。なお、鋳型1の収容空間は、成形体(A)100と略同一の形状である。また、付属空間90は、鋳型1が成形体(A)100を収容し、組成物(B)が充填されるまでの状態において中空である。
図3Aに示すように、付属空間90は、成形体(A)100の側面103、第1成形型10及び第2成形型20に囲まれた空間に形成される。また、鋳型1に収容された成形体(A)100の上面102と、底面101とは、外部に露出する。
図3Bに示すように、成形体(A)100を収容した鋳型1が袋体120の内部に設置され、重合性単量体を含む組成物(B)110で袋体120の内部が充填されると、成形体(A)100は、鋳型1の外部に露出した底面101及び上面102を介して組成物(B)110に接するため、底面101及び上面102から、成形体(A)100の内部に組成物(B)110が含浸される(工程(I))。また、成形体(A)100の内部に含浸された組成物(B)110が、成形体(A)100の側面103から付属空間90に染み出すことによって、付属空間90に組成物(B)110が充填される。上述のとおり、付属空間90は、組成物(B)110が充填されるまで中空であるため、組成物(B)が充填された付属空間90は、実質的に組成物(B)のみから構成され、無機充填材を実質的に含まない。ここで、「無機充填材を実質的に含まない」とは、成形体(A)から剥離等によって付属空間に流入する微量の無機充填材の存在を許容する趣旨であり、具体的には、付属空間に充填された組成物(B)における無機充填材の含有率が、重量基準で、5重量%未満、特に1重量%未満であることを意味する。
収納容器120は、組成物(B)に溶出せず、密封性を有するものである限り特に限定されず、公知の包装材料を用いることができる。収納容器120としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体(例えば、ポリエチレン);ポリオレフィン、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド;ポリビニルアルコール;エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH);ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリカーボネート;ポリビニルブチラール;ポリアリレート;フッ素樹脂;アクリレート樹脂;生分解性樹脂等が挙げられる。
また、収納容器120は、その表面が加工されていてもよい。表面加工の方法としては、包装用の汎用フィルム又はシートに施される加工法である限り、特に限定されない。収納容器120の表面を加工する方法(表面加工処理)としては、例えば、エンボス加工、サンドマット加工、ヘアライン加工、スリット加工、梨地加工等が挙げられる。特に、表面がエンボス加工された収納容器は、成形体(A)の外部に露出した表面(底面101及び上面102)と収納容器とが完全に密着することがなく、成形体(A)に組成物(B)を効率良く含浸させることができるため、好ましい。
また、組成物(B)が収納容器の内部に充填された後に、収納容器の内部を減圧雰囲気にしてもよい。減圧雰囲気下で、成形体(A)と組成物(B)とを接触させることによって、組成物(B)が成形体(A)の内部に浸透しやすくなる。また、減圧操作の後に常圧に戻す操作(減圧/常圧の操作)を複数回繰り返すことで、短い時間の間に組成物(B)が成形体(A)の内部に浸透する。また、減圧雰囲気下で、成形体(A)と組成物(B)とを接触させる場合の減圧度は、組成物(B)の粘度及び成形体(A)に含まれる無機充填材の粒子径に応じて適宜設定すればよいが、例えば、100hPa(10kPa)以下であり、0.001〜50hPa(0.0001〜5kPa)であることが好ましく、0.1〜20hPa(0.01〜2kPa)であることがより好ましい。また、真空下で成形体(A)と組成物(B)とを接触させてもよい。また、減圧時の平均減圧速度は、例えば200〜600kPa/minであってもよく、300〜500kPa/minであってもよい。なお、減圧開始直後は、組成物(B)が突沸することがある。そのため、減圧を開始する際に、成形体(A)と組成物(B)とは接触していないことが好ましい。また、減圧時の平均減圧速度は、前記よりも小さい値に設定してもよい。
また、加圧雰囲気下で、成形体(A)と組成物(B)とを接触させることによっても、組成物(B)が成形体(A)の内部に浸透しやすくなる。成形体(A)と組成物(B)とを加圧雰囲気下で接触させる方法としては、例えば、冷間等方圧加圧(CIP)装置等を用いる方法が挙げられる。CIP装置としては、例えば、神戸製鋼所製のCIP装置を用いることができ、当該CIP装置は1000MPa程度まで加圧することができる。加圧雰囲気下で、成形体(A)と組成物(B)とを接触させる場合の加圧度は、20MPa以上であることが好ましく、50MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることがさらに好ましい。また、加圧操作の後に常圧に戻す操作(加圧/常圧の操作)を複数回繰り返すことで、短い時間の間に組成物(B)が成形体(A)の内部に浸透する。
組成物(B)の粘性は、成形体(A)内部への浸透速度に影響を与える。通常は、組成物(B)の粘度が低いほど成形体(A)内部への浸透が早い。組成物(B)の粘度(25℃)は、10Pa・s以下であることが好ましく、5Pa・s以下であることがより好ましく、2Pa・s以下であることがさらに好ましく、0.1Pa・s以下であることが特に好ましい。組成物(B)の選択においては、粘度以外にも、機械的強度及び屈折率を加味する必要がある。また、組成物(B)は、重合性単量体のみから構成されていてもよく、重合性単量体を溶媒に溶解させたものでもよい。組成物(B)は、前記粘度となるように、溶媒によって希釈されてもよい。この場合、成形体(A)の内部に組成物(B)を浸透させた後に、減圧操作を行うことによって、溶媒を留去してもよい。さらに、成形体(A)と組成物(B)とを接触させる際の温度は、25℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、また、70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましい。前記温度に加温することによって、組成物(B)の粘度が低下するため、組成物(B)の成形体(A)内部への浸透が早まる。
成形体(A)と組成物(B)とを接触させる時間は、成形体(A)に含まれる無機充填材の種類、鋳型及び成形体(A)の大きさ、成形体(A)と組成物(B)とを接触させる方法等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1分〜240時間であってもよい。
続いて、図3Bに示すように、袋体に鋳型と組成物(B)が含まれた状態で、組成物(B)に含まれる重合性単量体を重合させる(工程(II))。重合硬化させた後、鋳型1を袋体120から取り出し、鋳型1をはずし、必要に応じて余剰な重合体部分を取り除くことによって、図3Cに示される歯科用ミルブランク150が得られる。ミルブランク150は、無機充填材、及び組成物(B)に含まれる重合性単量体単位を有する重合体を含むミルブランク部151と、組成物(B)に含まれる重合性単量体単位を有する重合体を含む支持部152とを備える。鋳型1の構造に由来して、ミルブランク150において、リング状の支持部152はミルブランク部151から突出し、段差を形成する。ミルブランク150のような円板状のミルブランクは、ミルブランクディスクと称される。また、上述のとおり、付属空間に充填された組成物(B)が無機充填材を実質的に含まないため、得られる支持部152も、無機充填材を実質的に含まない。
ミルブランク150において、ミルブランク部151及び支持部152に含まれる重合体は、同一の重合性単量体を用いた一括重合(1段階重合又は2段階以上の多段階重合)によって、一体として形成されるため、ミルブランク部151と支持部152との間には境界線(界面)が存在しない。言い換えれば、ミルブランク部151及び支持部152は、それぞれが別個独立した部材が物理的又は化学的な作用によって接合したものではない。そのため、ミルブランク部151と支持部152との間には、摩擦力が働かない。このようなミルブランク150によれば、切削加工時にミルブランク部151に加わる応力によって、ミルブランク部151が支持部152から脱離することを効果的に防ぐことができる。
また、ミルブランク150において、支持部152は、ミルブランク部151の周側面中央域から突出し、段差を形成する。このようなミルブランクの形状によって、CAD/CAMシステムを利用したミリング装置にミルブランクを適用できる。本発明の製造方法によって得られるミルブランクの支持部は、さらに加工を施す必要がなく、そのままの形状でミリング装置に固定することができる。
次に、図2Aに基づいて、鋳型1の具体的な形状について説明する。鋳型1の形状は、得られる歯科用ミルブランクが歯科用補綴物の作製に適した形状となるように適宜設定することができる。例えば、第2成形型20の端部E1によって規定される収容空間の底面の径R1は、70〜120mmであってもよく、80〜100mmであってもよい。径R1は、収容される成形体(A)の底面の径と一致することが好ましい。
鉛直方向Vについての、第2成形型20の端面23の上方側の端部E2と、第1成形型10の端面13の下方側の端部E3との間の距離L1は、例えば、5〜25mmであってもよく、8〜15mmであってもよい。
水平面方向(図示水平方向H)についての端部E1と端部D1との間の最短距離L2は、例えば、1〜20mmであってもよく、3〜10mmであってもよい。
鉛直方向Vについての端部E1と端部E4との距離L3は、例えば、8〜35mmであってもよく、10〜28mmであってもよい。距離L3は、収容される成形体(A)の厚さと一致することが好ましい。
また、距離L1に対する距離L2の比は、例えば、0.04〜4.0であってもよく、0.2〜1.2であってもよい。
図4A〜図4Fに鋳型の変形例を示す。図4A〜図4Fは、いずれも、主面(底面)が水平方向Hに平行となるように配置された鋳型2、3、4、5、6、7の鉛直方向Vに沿った断面図である。
鋳型2(図4A)は、鋳型1と同形状の第1成形型10及び第2成形型20を備える。第1成形型10及び第2成形型20は、容器230の内部に収容される。容器230は、収容空間80の底面及び第2成形型20を覆うように水平面方向(図示水平方向H)に沿って広がる基底部231と、基底部231の端部に接続され、第1成形型10の少なくとも一部を覆うように、鉛直方向V上方に向かって伸びる壁部232を備える。基底部231によって、鋳型2に収容される成形体(A)が鋳型2から抜け落ちることを防止できる。また、壁部232によって、第1成形型10と第2成形型20との位置ずれを防止できる。さらに、第1成形型10と第2成形型20との位置ずれを防ぐために、容器230が第1成形型10又は第2成形型20と嵌合するように構成されていてもよい。
鋳型3(図4B)は、収容される成形体(A)の底面を覆う基底部26を備えた第2成形型25を有する。第2成形型25が基底部26を備えることで、鋳型3に収容される成形体(A)が鋳型3から抜け落ちることを防止できる。
鋳型4(図4C)は、鋳型2において、容器230と第2成形型20とが、一体となった第2成形型30を備える。鋳型4によれば、成形体(A)の抜け落ち、及び、第1成形型10と第2成形型30との位置ずれが防止できる。
鋳型5(図4D)は、鋳型1の第1成形型10の上側壁部11がさらに鉛直方向V下方に伸びた第1成形型15と、鋳型1の第2成形型20において下側壁部21が取り除かれた第2成形型35と、を備える。さらに、第1成形型15及び第2成形型35が、鋳型2の容器230に相当する容器530の内部に収容される。鋳型2と同様に、鋳型5が容器530を備えることで、鋳型5に収容される成形体(A)が鋳型5から抜け落ちることを防止できる。また、第1成形型15と第2成形型35との位置ずれを防止できる。
鋳型6(図4E)は、鋳型5において、容器530と第2成形型35とが、一体となった第2成形型40を備える。鋳型6によれば、成形体(A)の抜け落ち、及び、第1成形型15と第2成形型40との位置ずれが防止できる。
鋳型1〜6は、第1成形型と第2成形型とが上下方向(鉛直方向)に係合する態様である。しかし、収容空間及び付属空間が形成される限りにおいて、第1成形型及び第2成形型の形状は前記した形状に限定されない。例えば、図4Fに示した鋳型7のように、第1成形型50と第2成形型60とが左右方向(図示水平方向H)に係合する態様でもよい。第1成形型50及び第2成形型60は、鉛直方向Vに沿って伸びる壁部52又は壁部62を備える。また、第1成形型50及び第2成形型60は、壁部52又は壁部62の上端に接続された庇部51又は庇部61と、壁部52又は壁部62の下端に接続された底部53又は底部63とを有する。第1成形型50と第2成形型60とは、位置ずれしないように、鋳型2の容器230に相当する容器730に収容される。
鋳型1〜7のそれぞれは、円板状の収容空間80と、収容空間80の空間周側面81の中央域に連通する付属空間90とを有する。また、収容空間80及び付属空間90を有する鋳型は、鋳型1〜7に限定されない。例えば、図2Aの鋳型1において、上側壁部11の端面と、下側壁部21の端面とは、端部D1で係合できる限り、必ずしもD1−D2面を有しなくてよい。すなわち、上側壁部11の厚みと下側壁部21の厚みとが異なってもよい。さらに、収容空間及び付属空間の形状は、鋳型1〜7に限定されず、例えば、付属空間が収容空間の空間側面全域にわたって連通してもよい。また、付属空間の形状は、円筒形状に限定されず、ミルブランクの切削に用いるミリング装置に応じて、適宜設定できる。付属空間は、収容空間の空間側面に連通せずに、収容空間の底面のみに連通してもよい。
図5Aにおいて示された鋳型8は、角柱状の収容空間85を有する。収容空間85は、幅W1を有する底面86を有する。底面86の中央域(図示W2)には、付属空間95が連通する。鋳型8は、水平方向Hで係合する第1成形型55と第2成形型65とを備える。また、収容空間85の上面が鋳型8の外側に露出する。第1成形型55及び第2成形型65は、位置ずれしないように、容器830の内部に収容される。鋳型8において、付属空間95は、収容空間85の底面86から鉛直方向下方に向かって高さT1まで広がる。また、付属空間95は、高さT2と、幅W2より小さい幅W3とを有する狭窄部96を有する。図5Aにおいて、狭窄部96は、幅W3の直径を有する円を底面とする円柱状である。
図5Bは、鋳型8を用いて製造されたミルブランク250の斜視図である。ミルブランク250は、ミルブランク部251と、支持部252とを備える。ミルブランク部251は、鋳型8の収容空間85に由来する。支持部252は、鋳型8の付属空間95に由来する。ミルブランク部251及び支持部252に含まれる重合体は、同一の重合性単量体を用いた一括重合(1段階重合又は2段階以上の多段階重合)によって一体として形成される。ミルブランク250において、支持部252は、ミルブランク部251の底面の一部であって、底面の重心を含む中央域から突出する。さらに、支持部252は、ミルブランク部251に接続された段差部254と、段差部254に接続された固定部253とを備える。支持部252が段差部254を備えることで、ミルブランク250の切削操作時に生じる応力によるミルブランク部251と支持部252との破断を防止できる。また、固定部253の形状は、図5Bに示した円柱状に限定されず、用いるミリング装置に応じて適宜変更できる。固定部253の形状変更は、図5Aにおける狭窄部96の形状を変更することによって行ってもよい。
本発明の製造方法に用いられる鋳型は、組成物(B)に溶出しないものである限り、公知の材料を用いて形成することができる。例えば、鋳型は、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等の樹脂;アルミニウム、チタン、真鍮、鉄、ステンレス、長石、ジルコニア等のセラミックスまたは金属材料;シリコーン、ウレタン等のゴムから形成することができる。シリコーン等のゴムから形成された鋳型は、柔軟性に優れるため、重合性単量体の重合後に鋳型からミルブランクを容易に取り出すことができる。また、テフロン製の鋳型は、ミルブランクの剥離性に優れる。
本発明の製造方法に用いられる成形体(A)について以下に説明する。成形体(A)は、例えば、無機充填材をプレス成形することによって得られる。成形体(A)は、無機充填材を焼結して得られる多孔質構造ではなく、個々の無機充填材が密着した構造である。無機充填材は、公知の無機粒子を含み、コンポジットレジンの充填材として用いられる公知の無機粒子(a)を含むものが好ましい。無機粒子(a)としては、例えば、各種ガラス類(二酸化珪素(石英、石英ガラス、シリカゲル等)又は珪素を主成分とし、各種重金属とともにホウ素及び/又はアルミニウムを含有するもの)、アルミナ、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、シリカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、二酸化チタン(チタニア)、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。また、無機充填材は、前記無機粒子(a)に重合性単量体を添加し、重合硬化させた後に粉砕することによって得られる有機無機複合粒子(有機無機複合フィラー)を含んでもよい。さらに、無機充填材は、2種以上の無機粒子(a)を含んでもよい。
歯科用補綴物は、天然歯と同様の透明性及びX線造影性を有することが求められる。透明性は、無機充填材の屈折率を重合性単量体の重合体の屈折率に近づけることによって調整することができる。また、X線造影性は、無機充填材がジルコニウム、バリウム、チタン、ランタン、ストロンチウム等の重金属元素の酸化物を含むことによって得ることができる。重金属元素を含む無機充填材の屈折率は通常高く、1.5〜1.6の範囲内にある。また、(メタ)アクリレート系単量体に由来する重合体の屈折率は通常、1.5〜1.6の範囲内にある。したがって、重合性単量体として(メタ)アクリレート系単量体を用いた場合には、重金属元素を含む無機充填材との屈折率差が小さいため、得られるミルブランク部は、X線造影性だけでなく優れた透明性を有する。
X線造影性を有し、屈折率が高い無機充填材に含まれる無機粒子(a)としては、例えば、バリウムボロアルミノシリケートガラス(例えば、Esstech社製E3000;ショット社製8235、GM27884、GM39923)、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス(例えばEsstech社製E4000;ショット社製G018−093、GM32087)、ランタンガラス(例えばショット社製GM31684)、フルオロアルミノシリケートガラス(例えばショット社製G018−091、G018−117)、ジルコニアを含有するガラス(例えばショット社製G018−310、G018−159)、ストロンチウムを含有するガラス(例えばショット社製G018−163、G018−093、GM32087)、酸化亜鉛を含有するガラス(例えばショット社製G018−161)、カルシウムを含有するガラス(例えばショット社製G018−309)等が挙げられる。
無機充填材に含まれる無機粒子(a)の形状は特に限定されず、例えば、破砕状、板状、鱗片状、繊維状(短繊維、長繊維)、針状、ウィスカー、球状である。無機粒子(a)は、前記形状の一次粒子が凝集したものでもよく、異なる形状の一次粒子が複数混合されたものでもよい。また、前記形状となるように、無機粒子(a)が何らかの処理(例えば、粉砕)を施されてもよい。
無機粒子(a)の粒子径は、プレス成形に供することができる限り、特に限定されない。例えば、平均粒子径は、1.0nm〜20μm(粒径範囲:0.50nm〜50μm)であり、2.0nm〜5.0μm(粒径範囲:0.50nm〜20μm)であることが好ましく、5.0nm〜3.0μm(粒径範囲:1.0nm〜10μm)であることがより好ましく、5.0nm〜1.0μm(粒径範囲:1.0nm〜3.0μm)であることがさらに好ましい。また、無機粒子(a)が繊維状である場合には、例えば、平均繊維長は、1.0〜100μmであり、平均繊維径は、0.10〜30μmである。なお、本明細書において、無機粒子の粒子径とは、無機粒子の一次粒子の粒子径(平均一次粒子径)を意味し、粒径範囲とは、無機粒子の一次粒子の95%以上が含まれる粒子径の範囲を意味する。本発明の効果を損なわない範囲内であれば、粒径範囲に含まれない無機粒子が無機充填材に含まれてもよい。
なお、本明細書において、無機粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法又は電子顕微鏡観察により求めることができる。具体的には、0.10μm以上の粒子径を有する無機粒子については、レーザー回折散乱法によって粒子径を簡便に測定することができる。また、0.10μm未満の粒子径を有する無機粒子(超微粒子)については、電子顕微鏡観察によって粒子径を簡便に測定することができる。0.10μmはレーザー回折散乱法により測定した値である。
レーザー回折散乱法の装置としては、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100、島津製作所製)を用いることができる。このとき、分散媒としては0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液が用いられる。
電子顕微鏡観察は、例えば、透過型電子顕微鏡(日立製作所製、H−800NA型)を用いることができる。電子顕微鏡によって撮影された写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径は、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Macview(株式会社マウンテック))によって求めることができる。このとき、粒子径は、同一の面積を有する正円の径として求められる。また、粒子数及び、それぞれの粒子の粒子径から平均一次粒子径が算出される。
本発明の製造方法に用いられる成形体(A)は、前記無機粒子をプレス成形することによって得られる。プレス成形に供される無機粒子は、成形体(A)を調製できる限りにおいて、異なった材質、粒度分布、形態を有する2種以上の無機粒子が混合されてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、無機粒子以外の粒子が不純物として含まれてもよい。
以下に、本発明における無機充填材の好ましい態様を挙げる。
本発明において、無機充填材は、平均粒子径が0.10〜1.0μm(粒径範囲:0.050〜5.0μm)である無機粒子(サブミクロンフィラー)を含んでもよい。特に、サブミクロンフィラーは、平均粒子径が0.10〜0.50μm(粒径範囲:0.050〜5.0μm)であることが好ましく、0.10〜0.30μm(粒径範囲:0.050〜5.0μm)であることがより好ましい。前記サブミクロンフィラーを含む無機充填材を用いて製造されたミルブランク部は、機械的強度及び審美性(耐摩耗性、滑沢性等)を備えた歯科用補綴物を与えることができる。無機充填材におけるサブミクロンフィラーの含有率は、90重量%以上であることが好ましく、95重量%以上であることがより好ましく、実質的に100重量%であることが好ましい。
また、前記サブミクロンフィラーは、球状粒子であることが好ましい。本明細書において、球状とは、略球状を含み、完全真球に限定されない。例えば、平均均斉度は、0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、0.9以上であることがさらに好ましい。ここで、均斉度とは、粒子の最大径に対する最大径に直交する方向の粒子径の比である。また、平均均斉度とは、走査型電子顕微鏡を用いて撮影されたサブミクロンフィラーの写真の単位視野内に観察される任意の30個の粒子における均斉度の平均値である。
球状のサブミクロンフィラーは、シリカ粒子と、周期律表第2族、同4族、同12族、及び同13族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子又はその酸化物と、ケイ素原子と、酸素原子とを含む複合酸化物粒子であることが好ましい。複合酸化物粒子は、例えば、非晶質シリカ、石英、クリストバライト、トリジマイト等を含むもの;アルミナ、二酸化チタン、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム等を含むもの;シリカジルコニア、シリカチタニア、シリカチタニア酸化バリウム、シリカアルミナ、シリカチタニアナトリウムオキサイド、シリカチタニアカリウムオキサイド、シリカジルコニアナトリウムオキサイド、シリカジルコニアカリウムオキサイド、シリカバリウムオキサイド、シリカストロンチウムオキサイド等である。特に、球状のサブミクロンフィラーは、シリカ粒子と、周期律表第4族の金属原子と、周期律表第4族の金属酸化物と、ケイ素原子と、酸素原子とを含む複合酸化物粒子であることがより好ましい。さらに、X線造影性を有し、耐摩耗性に優れた歯科用ミルブランクが得られることから、球状のサブミクロンフィラーは、シリカジルコニアであることが好ましい。球状のサブミクロンフィラーの製造方法は、例えば、特開昭58−110414号公報又はWO2009/133913号に記載されている。また、球状のサブミクロンフィラーとして、ヒドロキシアパタイトを用いることもできる。
なお、球状のサブミクロンフィラーの比表面積は、好ましくは5〜25m2/gである。本明細書において、比表面積は、比表面積BET法により、通法に従って測定した値である。
本発明者らの検討によれば、球状のサブミクロンフィラーを用いた場合、通常の方法で製造される歯科用コンポジットレジンにおける無機充填材の含有率が、80重量%を超えることは困難である。しかし、本発明の製造方法によって得られるミルブランク部におけるサブミクロンフィラーの含有率は、80重量%以上となる。無機粒子(a)として球状のサブミクロンフィラーを用いた場合、ミルブランク部における無機充填材の含有率は、80重量%以上であることが好ましく、84重量%以上であることがより好ましい。また、前記含有率は、95重量%以下であることが好ましく、92重量%以下であることがより好ましい。特に、前記含有率は、80〜95重量%であることが好ましく、84〜92重量%であることがより好ましい。なお、本明細書において、ミルブランク部における無機充填材の含有率とは、単位重量あたりのミルブランク部に含まれる無機充填材の重量のことを意味する。
また、無機充填材は、サブミクロンフィラーの代わりに又はサブミクロンフィラーに加えて、平均粒子径が1.0nm以上0.10μm未満である無機超微粒子を含んでもよい。前記無機超微粒子の比表面積は、比表面積が30〜500m2/gであるものが好ましい。無機超微粒子の平均粒子径は、5.0nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、50nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましい。前記平均粒子径は、5.0〜50nmであることが好ましく、10〜40nmであることがより好ましい。また、無機超微粒子の比表面積は、40m2/g以上であることが好ましく、50m2/g以上であることがより好ましく、400m2/g以下であることが好ましく、200m2/g以下であることがより好ましい。前記比表面積は、40〜400m2/gであることが好ましく、50〜200m2/gであることがより好ましい。さらに、無機超微粒子としては、前記平均粒子径の範囲と前記比表面積の範囲とを組み合わせたものも好適に使用できる。無機超微粒子を含む無機充填材は、透明性及び研磨滑沢性に優れたミルブランク部を与えることができる。無機充填材における無機超微粒子の含有率は、90重量%以上であることが好ましく、95重量%以上であることがより好ましく、実質的に100重量%であることが好ましい。
前記無機超微粒子としては、歯科用コンポジットレジンに用いられる公知の無機超微粒子が挙げられる。例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物粒子、又は、これらが混合された複合酸化物粒子;燐酸カルシウム;ハイドロキシアパタイト;フッ化イットリウム;フッ化イッテルビウム;チタン酸バリウム;チタン酸カリウム等の無機超微粒子が好ましく、シリカ、アルミナ、チタニア、シリカ/アルミナ複合酸化物、シリカ/ジルコニア複合酸化物の無機超微粒子がより好ましい。前記シリカは、火炎熱分解法によって作製されるものが好ましい。無機超微粒子の市販品としては、例えば、日本アエロジル社製、アエロジル(登録商標)OX50、アエロジル50、アエロジル130、アエロジル200、アエロジル380、アエロジルMOX80、アエロジルR972、アエロジルRY50、アエロキサイド(登録商標)AluC、アエロキサイドTiO2 P25、アエロキサイドTiO2 P25S、VP Zirconium Oxide 3−YSZ、VP Zirconium Oxide 3−YSZ PHが挙げられる。また、前記無機超微粒子の形状は特に限定されない。
一般に、歯科用コンポジットレジンにおいては、配合する無機粒子の粒子径が小さくなるほど含有量を上げることが困難になる。特に、前記無機超微粒子を用いた場合には、その傾向が顕著となる。重合性単量体と無機超微粒子とを混合してペースト状のコンポジットレジンを作製した場合、コンポジットレジンにおける無機超微粒子の含有率は最大で60重量%程度であり、65重量%以上の含有率とすることは困難であった。しかし、無機超微粒子をプレス成形することによって、ミルブランク部における無機超微粒子の含有率を容易に65重量%以上とすることができる。無機超微粒子の含有率が65重量%以上であるミルブランク部は、機械的強度及び審美性に優れた歯科用補綴物を与えることができる。無機粒子として無機超微粒子を用いた場合、ミルブランク部における無機充填材の含有率は、65重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、75重量%以上であることがさらに好ましい。また、前記含有率は、95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましく、88重量%以下であることがさらに好ましい。特に、前記含有率は、65〜95重量%であることが好ましく、70〜90重量%であることがより好ましく、70〜88重量%であることがさらに好ましい。
また、無機粒子(a)は、前記無機超微粒子が凝集して形成された凝集粒子であってもよい。凝集粒子の平均粒子径は、1.0〜20μmであることが好ましく、2.0〜10μmであることがより好ましい。前記粒子径を有する凝集粒子を用いることで、機械的強度に優れるミルブランク部が得られる。凝集粒子に含まれる無機超微粒子としては、平均粒子径が1.0nm以上0.10μm未満であることが好ましい。無機充填材における凝集粒子の含有率は、90重量%以上であることが好ましく、95重量%以上であることがより好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。なお、凝集粒子の平均粒子径は、分散媒として0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用いたレーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100、島津製作所製)によって、測定された値である。
通常、市販の無機超微粒子は凝集体である。しかし、例えば、水又は5重量%以下のヘキサメタ燐酸ナトリウム等の界面活性剤を添加した水(分散媒)300mLに凝集体10mgを添加し、30分間、出力40W、周波数39KHzの超音波強度で分散処理することによって、凝集体はメーカー表示の粒子径まで分散される。一方、本発明の無機充填材に含まれる凝集粒子は、粒子同士が強固に凝集したものであり、前記操作でもほとんど分散されない。凝集粒子に含まれる無機超微粒子は、平均粒子径が1.0nm以上0.10μm未満である限り、歯科用コンポジットレジンに使用される公知の無機超微粒子であってもよい。公知の無機超微粒子としては、前記のものが挙げられる。凝集粒子は、前記無機超微粒子の1種又は2種以上が凝集することによって形成される。
凝集粒子を製造する方法としては、例えば、市販の無機超微粒子を融解する直前の温度付近まで加熱する方法が挙げられる。前記方法によれば、接触した無機超微粒子同士がわずかに融着することによって、無機超微粒子の凝集力が高まり、凝集粒子が形成される。また、無機超微粒子は、加熱される前に、例えば、適当な容器内で加圧されてもよく、溶媒に分散された後に噴霧乾燥等の方法によって乾燥されてもよい。加熱前に前記操作を行うことによって、無機超微粒子の形状が効果的に制御される。
また、無機超微粒子の凝集粒子は、湿式法で作製されたシリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル等を凍結乾燥又は噴霧乾燥等の方法で乾燥し、必要に応じて加熱処理することによっても、容易に得られる。前記ゾルの具体例としては、日本触媒社製シーホスター(登録商標)、日揮触媒化成社製OSCAL(登録商標)、QUEEN TITANIC、日産化学社製スノーテックス(登録商標)、アルミナゾル、セルナックス(登録商標)、ナノユース(登録商標)等が挙げられる。凝集粒子を構成する無機超微粒子の形状は特に限定されない。
さらに、凝集粒子は、シリカ系微粒子の表面が少なくともジルコニウム、珪素及び酸素からなる複合酸化物で被覆された非晶質の無機酸化物微粒子群であって、平均粒子径が1.0〜20μmの非晶質粉末であってもよい。前記非晶質粉末は、特開2008−115136号及びWO2009/133913号に記載されている。
無機粒子(a)として凝集粒子を用いた場合、ミルブランク部における無機充填材の含有率は、65重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、75重量%以上であることがさらに好ましい。また、前記含有率は、95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましく、88重量%以下であることがさらに好ましい。特に、前記含有率は、65〜95重量%であることが好ましく、70〜90重量%であることがより好ましく、75〜88重量%であることがさらに好ましい。
無機充填材は、平均粒子径が1.0nm以上0.10μm未満である無機超微粒子と、平均粒子径が0.10〜2.0μm(粒径範囲:0.050〜10μm)である無機粒子とを含んでもよい。無機超微粒子と、平均粒子径が0.10〜2.0μmの無機粒子とが配合(混合)された粒子は、ハイブリッド型無機粒子と呼ばれる。ハイブリッド型無機粒子を含む無機充填材を用いて製造した成形体(A)を本発明の製造方法に用いた場合、機械的強度により優れるミルブランク部が得られる。無機充填材に含まれるハイブリッド型無機粒子の含有率は、90重量%以上であることが好ましく、95重量%以上であることがより好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。なお、本明細書では、ハイブリッド型無機粒子に含まれ、平均粒子径が0.10〜2.0μm(粒径範囲:0.050〜10μm)である無機粒子のことをハイブリッド型無機粒子に含まれる無機粒子と記載することがある。
ハイブリッド型無機粒子に含まれる無機超微粒子は、前記無機超微粒子と同様のものが用いられる。一方、ハイブリッド型無機粒子に含まれる無機粒子の平均粒子径は、0.20μm以上であることが好ましく、0.40μm以上であることがより好ましく、また、2.0μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましい。特に、前記平均粒子径は、0.20〜2.0μmであることが好ましく、0.40〜1.5μmであることがより好ましい。また、ハイブリッド型無機粒子に含まれる無機粒子の粒径範囲は、0.10μm以上であることが好ましく、10μm以下であることが好ましく、5.0μm以下であることがより好ましい。特に、前記粒径範囲は、0.10〜10μmであることが好ましく、0.10〜5.0μmであることがより好ましい。ハイブリッド型無機粒子に含まれる無機粒子は、前記平均粒子径及び粒径範囲を有する限りにおいて、前記サブミクロンフィラーであってもよい。
ハイブリッド型無機粒子に含まれる無機超微粒子と、ハイブリッド型無機粒子に含まれる無機粒子との重量比(無機超微粒子/無機粒子)は、1/1〜1/20であることが好ましく、1/3〜1/10であることがより好ましい。
前記ハイブリッド型無機粒子に含まれる無機超微粒子としては、前記のものが挙げられ、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物微粒子、又はこれらが混合された複合酸化物微粒子が好ましい。特に、日本アエロジル社製アエロジルに代表される高分散性シリカ、又は、日本アエロジル社製アエロキサイドに代表される高分散性のアルミナ、チタニア、ジルコニアがより好ましい。また、ハイブリッド型無機粒子に含まれる無機粒子としては、例えば、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ランタンガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、長石、ムライト、石英、パイレックス(登録商標)ガラス、シリカガラス等が好ましい。
無機粒子(a)としてハイブリッド型無機粒子を用いた場合、ミルブランク部における無機充填材の含有率は、80重量%以上であることが好ましく、85重量%以上であることがより好ましく、88重量%以上であることがさらに好ましい。また、前記含有率は、96重量%以下であることが好ましく、95重量%以下であることがより好ましい。特に、前記含有率は、80〜96重量%であることが好ましく、85〜95重量%であることがより好ましく、88〜95重量%であることがさらに好ましい。
また、成形体(A)は積層構造(層状構造)を有してもよい。積層構造は、無機粒子を層状にプレス成形したものを積層することによって形成される。積層構造に含まれる無機粒子は、層ごとに異なってもよいし、同一であってもよい。積層構造を有する成形体(A)を用いて本発明の製造方法を実施することによって、物性、透明性及び色調等が層ごとに異なるミルブランク部を得ることができる。積層構造を有するミルブランク部からは、臨床的に有用な歯科用補綴物が得られる。例えば、硬化物の透明度が高くなるように調製された無機粒子からなる第1層と、第1層の少なくとも片面に積層された、象牙色調に調製された無機粒子からなる第2層との積層構造を有する成形体(A)を用いることによって製造されたミルブランク部からは、審美的に優れた歯科用補綴物が得られる。
層に含まれる無機粒子の色調及び透明性を変化させる方法としては、例えば、顔料(着色粒子)を無機粒子と混合し、分散させることが挙げられる。顔料は、歯科用コンポジットレジンに用いられる公知の顔料であってもよく、無機顔料、有機顔料のいずれでもよい。無機顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄等のクロム酸塩;紺青等のフェロシアン化物;銀朱、カドミウム黄、硫化亜鉛、カドミウムレッド等の硫化物;硫酸バリウム、硫酸亜鉛、硫酸ストロンチウム等の硫酸塩;アンチモン白、亜鉛華、チタン白、ベンガラ、鉄黒、黄酸化鉄、酸化クロム等の酸化物;水酸化アルミニウム等の水酸化物;ケイ酸カルシウム、群青等のケイ酸塩;カーボンブラック、グラファイト等の炭素が挙げられる。有機顔料としては、例えば、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY等のニトロソ系顔料;ナフトールS、リソールファストイエロー2G等のニトロ系顔料;パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー等の不溶性アゾ系顔料;リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD等の難溶性アゾ系顔料;ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3B、ボルドー10B等の可溶性アゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー等のフタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性染料系顔料;ピーコックブルーレーキ、エオシンレーキ、キノリンイエローレーキ等の酸性染料系顔料が挙げられる。前記顔料は2種以上を併用してもよく、目的とする色調に応じて適宜選択される。特に、耐熱性及び耐光性等に優れることから、チタン白、ベンガラ、鉄黒及び黄酸化鉄を顔料として用いることが好ましい。チタン白としては、局方酸化チタン白が好ましい。
層に含まれる顔料の含有量は、特に限定されず、目的とする色調に応じて適宜調製すればよいが、層に含まれる無機粒子100重量部に対して、0.000001重量部以上であることが好ましく、0.00001重量部以上であることがより好ましく、また、5重量部以下であることが好ましく、1重量部以下であることがより好ましい。特に、層に含まれる顔料の含有量は、無機粒子100重量部に対して、0.000001〜5重量部であることが好ましく、0.00001〜1重量部であることがより好ましい。
無機粒子と顔料とを均一に混合分散させる方法としては、公知の方法を用いることができ、乾式法及び湿式法のいずれであってもよい。溶媒の存在下、無機粒子と顔料とを分散させた後に、溶媒を除去又は留去する方法によれば、より均一に無機粒子と顔料とを混合分散させることができる(湿式分散)。無機粒子と顔料とを分散させる装置としては、公知のものを使用することができ、例えば、サンドミル、ビーズミル、アトライター、コロイドミル、ボールミル、超音波破砕機、ホモミキサー、ディゾルバー、ホモジナイザー等が挙げられる。分散操作における時間、撹拌具及び回転数等の条件は、特に限定されず、無機粒子又は顔料の粒子径及び仕込み量、溶媒の種類及び添加量、並びに、分散機の種類等に応じて適宜選択すればよい。湿式分散に用いる溶媒としては、水及び/又は水と相溶する溶媒が好ましい。水と相溶する溶媒としては、アルコール類(例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール)、エーテル類、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)等を用いることができる。
層に含まれる無機粒子の色調を変化させる他の方法としては、あらかじめ着色された無機粒子を用いることが挙げられる。着色された無機粒子としては、例えば、市販のポーセレンパウダー、VITA社製VM、VM7、クラレノリタケデンタル社製ノリタケスーパーポーセレンAAA、セラビアン(登録商標)ZR等が挙げられる。着色された無機粒子は、必要に応じて粉砕され、粒径が調整されてもよい。
層に含まれる無機粒子の透明性を変化させる他の方法としては、無機粒子の屈折率と粒子径とを調節する方法が挙げられる。一般に、無機粒子が分散した樹脂は、無機粒子と樹脂との屈折率の差が小さく、かつ、無機粒子の粒子径が可視光線の波長(0.4〜0.7μm)から離れているほど、透明性に優れることが知られている。したがって、例えば、含浸する重合性単量体が硬化することによって得られる重合体の屈折率と同程度の屈折率を有する無機粒子を用いる、又は、無機粒子の屈折率と同程度の屈折率を有する重合体を与える重合性単量体を調製することによって、透明性に優れた層を形成することができる。
また、層ごとに、特性の異なる無機粒子が配合されてもよい。例えば、エナメル色の第1層(以下、エナメル色層)が滑沢性に優れる無機粒子を含み、デンチン色の第2層(以下、デンチン色層)が機械的強度に優れる無機粒子を含んでもよい。前記積層構造を有するミルブランク部は、臨床上、口腔内での耐久性に優れる、極めて有用な歯冠補綴物を与えることができる。
前記エナメル色層に含まれる無機粒子としては、前記したサブミクロンフィラー又は無機超微粒子が挙げられる。前記デンチン色層に含まれる無機粒子としては、前記したサブミクロンフィラー、無機超微粒子の凝集粒子、又はハイブリッド型無機粒子が挙げられる。例えば、ミルブランク部は、無機超微粒子を含むエナメル色層と、サブミクロンフィラーを含むデンチン色層とから構成されてもよいし、サブミクロンフィラーを含むエナメル色層と、ハイブリッド型無機微粒子を含むデンチン色層とから構成されてもよい。
積層構造を有する成形体(A)を用いて本発明の製造方法を実施した場合、ミルブランク部における無機充填材の含有率は、60重量%以上であることが好ましく、65重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましい。また、前記含有率は、96重量%以下であることが好ましく、94重量%以下であることがより好ましく、92重量%以下であることがさらに好ましい。特に、前記含有率は、60〜96重量%であることが好ましく、65〜96重量%であることがより好ましく、70〜94重量%であることがさらに好ましく、70〜92重量%であることが特に好ましい。
また、無機充填材として、あらかじめ表面処理が施された無機粒子(a)を用いてもよい。表面処理が施された無機粒子(a)からなる成形体(A)を含むミルブランク部は機械的強度に優れる。また、表面処理が施された無機粒子(a)からなる成形体(A)は、重合性単量体が浸入しやすい。なお、無機充填材として、ハイブリッド型無機粒子を用いる場合は、ハイブリッド型無機粒子に含まれる無機超微粒子と、ハイブリッド型無機粒子に含まれる無機粒子との表面が混合前に処理されてもよい。
表面処理剤としては、公知の表面処理剤を用いることができ、例えば、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物;リン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を少なくとも1つ有する酸性基含有有機化合物を用いることができる。成形体(A)に含まれる無機粒子(a)は、2種以上の表面処理剤が混合された処理剤によって表面処理されてもよい。また、積層構造を有する成形体(A)は、層ごとに異なる表面処理剤によって表面処理された無機粒子(a)から形成されてもよい。また、表面処理の方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
表面処理剤として用いられる有機ケイ素化合物としては、R1 nSiX4-nで表される化合物が挙げられる(式中、R1は炭素数1〜12の置換又は無置換の炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基、ビニル基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、アセトキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、nは0〜3の整数である。ただし、R1又はXは、それぞれが複数ある場合、同一又は異なっていてもよい)。
有機ケイ素化合物は、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン〕、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン〕等が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリロキシ」との表記は、メタクリロキシ基とアクリロキシ基とを包含する意味で用いられる。
有機ケイ素化合物は、重合性単量体と共重合し得る官能基を有することが好ましい。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
有機チタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機酸塩キレート化合物等が挙げられる。
リン酸基を含有する酸性基含有有機化合物としては、例えば、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート、及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
また、表面処理剤として用いられる他の酸性基含有有機化合物としては、例えば、WO2012/042911号に記載された酸性基含有有機化合物が挙げられる。
前記表面処理剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、重合性単量体と共重合し得る官能基を有する酸性基含有有機化合物を用いた場合には、組成物(B)に含まれる、重合性単量体単位を有する重合体と成形体(A)を構成する無機粒子(a)とが強固に接着され、機械的強度に優れるミルブランク部が得られる。
表面処理剤の使用量は、特に限定されず、例えば、無機充填材100重量部に対して、0.1〜50重量部であってもよい。
無機充填材をプレス成形し、成形体(A)を得る方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、無機充填材を所望の大きさのプレス用金型(ダイ)に充填し、上パンチと下パンチを用いて一軸プレスにより加圧する方法が挙げられる。プレス圧は、目的とする成形体(A)の大きさ、無機粒子の種類及び粒子径に応じて適宜設定すればよいが、通常は、10MPa以上である。プレス圧が低い場合には、無機粒子が緻密に充填されず、無機粒子間の隙間が大きいため、ミルブランク部における単位重量あたりの無機粒子の重量(含有率)は小さくなる。無機粒子の含有率が低いミルブランク部から得られた歯科用補綴物の機械的強度、耐摩耗性及び表面滑沢性は、実用上不十分となることがある。したがって、プレス圧は高いほど好ましく、一軸プレスでのプレス圧は、例えば、10MPa以上であることが好ましく、20MPa以上であることがより好ましく、25MPa以上であることがさらに好ましい。また、成形体(A)の大きさ、又は生産性の観点から、一軸プレスでのプレス圧は、例えば、200MPa以下であり、180MPa以下であることが好ましく、150MPa以下であることがより好ましく、100MPa以下であることがさらに好ましく、80MPa以下であることが特に好ましい。特に、前記プレス圧は、10〜200MPaであることが好ましく、20〜100MPaであることがより好ましく、25〜80MPaであることがさらに好ましい。プレス操作の時間は、プレス圧に応じて適宜設定すればよいが、通常、1〜120分間である。
また、無機充填材をプレス成形する方法としては、冷間等方圧加圧(CIP)工程を含むことが好ましい。具体的には、前記一軸プレスに代えてCIP工程により無機充填材をプレス成形してもよく、前記一軸プレスによって無機充填材をプレス成形した後に、CIP工程を実施してもよい。CIP工程によるプレス成形は、通常、一軸プレスよりも高いプレス圧をかけることができるだけでなく、均等に圧力をかけることができるため、得られる成形体(A)の内部の空隙及び無機粒子の凝集むらが低減される。また、CIP工程により無機粒子の密度が大きくなることで、無機充填材の含有率が極めて高いミルブランク部が得られる。CIP工程は、シリコンゴム又はポリイソプレンゴム等の弾性に富む容器に無機充填材を充填した後に、大気圧下又は真空下で実施されてもよい。また、CIP工程は、一軸プレスによってプレス成形された無機充填材に対して、大気圧下又は真空下で実施されてもよい。CIP工程は、例えば、神戸製鋼所製のCIP装置を用いることができる。CIP工程でのプレス圧は、一軸プレスの有無に関わらず高いほど好ましいが、生産性についても考慮する必要がある。CIP工程でのプレス圧は、例えば、一軸プレスを行う場合は、30MPa以上であることが好ましく、50MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることがさらに好ましく、また、500MPa以下であることが好ましく、400MPa以下であることがより好ましく、300MPa以下であることがさらに好ましい。特に、前記プレス圧は、30〜500MPaが好ましく、50〜500MPaがより好ましく、100〜300MPaがさらに好ましい。また、一軸プレスを行わない場合、CIP工程でのプレス圧は、30MPa以上であることが好ましく、50MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることがさらに好ましく、また、1000MPa以下であることが好ましく、800MPa以下であることがより好ましく、700MPa以下であることがさらに好ましい。特に、一軸プレスを行わない場合のCIP工程でのプレス圧は、30〜1000MPaが好ましく、50〜800MPaがより好ましく、100〜700MPaがさらに好ましい。CIP工程におけるプレス成形の時間は、プレス圧に応じて適宜設定すればよいが、通常、1〜60分間である。
また、成形体(A)は、異なる2種以上の無機粒子を積み重ねてプレス成形することによっても得ることができる。例えば、一軸プレス用の金型(ダイ)に、第1の無機粒子を充填し、プレス成形した後に、プレス成形された第1の無機粒子の上に、第2の無機粒子を充填し、再びプレス成形することによって成形体(A)を得てもよい。前記方法によって得られた成形体(A)は、第1の無機粒子の層と、第2の無機粒子の層とが積層した構造を有する。なお、プレス成形時のプレス圧は、用いる無機粒子の種類及び量に応じて、適宜設定すればよく、各層によってプレス圧が異なってもよい。また、第1の無機粒子を金型に充填した後に、第1の無機粒子の上に第2の無機粒子を充填し、第1の無機粒子と第2の無機粒子とをまとめてプレス成形してもよい。
後述するように、ミルブランク部は、所定の形状に加工することが可能であるため、成形体(A)の大きさは特に限定されないが、本発明の製造方法に用いられる鋳型における収容空間と略同一の大きさ及び形状を有していることが好ましい。なお、成形体(A)は、無機充填材を一度にプレス成形することによって得られたものでもよく、別々に成形した無機充填材を積層した後に、プレス成形することによって得られたものでもよく、無機充填材の成形体の上に無機粒子を加え、プレス成形することによって得られたものでもよい。
成形体(A)は、無機充填材をプレス成形することによって得られる無機充填材の高密充填体であることが好ましい。本発明の製造方法では、成形体(A)を組成物(B)と接触させることによって、成形体(A)における無機充填材の一次粒子間に組成物(B)に含まれる重合性単量体が侵入することとなる。その結果、無機粒子は、重合性単量体に極めて密に分散する。
一般に、歯科用補綴物は、樹脂中に分散する無機粒子の粒子径が小さいほど、研磨滑沢性に優れ、かつ、口腔内での光沢を長期間維持することができる。一方で、無機粒子の粒子径が小さくなるほど、歯科用補綴物中に無機粒子を高密度に充填することが困難になり、歯科用補綴物の機械的強度及び耐摩耗性が低下する傾向がある。しかし、本発明においては、粒子径の小さい無機粒子を高密度に充填することが可能であるため、ミルブランク部から得られる歯科用補綴物は、従来に比べて、光沢に優れ、かつ、強度及び耐摩耗性が向上する。
ミルブランク部における無機充填材の含有率は、使用する無機粒子の粒子径及び形状に応じて変動するが、無機粒子の粒子径が小さい場合でも60重量%以上となる。ミルブランク部における無機充填材の含有率は、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、82重量%以上であることがさらに好ましく、85重量%以上であることが特に好ましい。また、前記含有率は、96重量%以下であることが好ましく、95重量%以下であることがより好ましい。特に、前記含有率は、60〜96重量%であることが好ましく、70〜96重量%であることがより好ましく、80〜95重量%であることがさらに好ましく、85〜95重量%であることが特に好ましい。
ミルブランク部における無機充填材の含有率は、例えば、ミルブランクから支持部を切り離すことによって得られるミルブランク部を坩堝に入れ、電気炉によって575℃に加熱し、所定の時間処理することによって、ミルブランク部の有機成分を焼却し、残った無機粒子(強熱残分)の重量から算出することができる。前記方法では、無機充填材が表面処理された無機粒子を含む場合に、表面処理剤は、焼却された有機成分として算出される。
成形体(A)に接触させる組成物(B)は、重合性単量体を含有する。重合性単量体は、歯科用コンポジットレジンに用いられる公知の重合性単量体であればよく、特に、ラジカル重合によって重合することができる重合性単量体(ラジカル重合性単量体)であることが好ましい。ラジカル重合性単量体としては、例えば、α−シアノアクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸エステル、α−ハロゲン化アクリル酸エステル、クロトン酸エステル、桂皮酸エステル、ソルビン酸エステル、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル等のエステル類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体等のアミド類;ビニルエステル類;ビニルエーテル類;モノ−N−ビニル誘導体;スチレン誘導体等が挙げられる。特に、ラジカル重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。
(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体の例を以下に示す。
(i)一官能性(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド誘導体
メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライド、10−メルカプトデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(ii)二官能性(メタ)アクリレート
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート(2,2−ビス[4−〔3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン(通称Bis−GMA))、ビスフェノールAジグリシジルアクリレート(2,2−ビス[4−〔3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン)、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンチルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(iii)三官能性以上の(メタ)アクリレート
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラ(メタ)アクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキサヘプタン、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート1モルとグリセリンジメタクリレート2モルとの付加物等が挙げられる。
重合性単量体としては、前記(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体のほかに、カチオン重合が可能であるオキシラン化合物又はオキセタン化合物が挙げられる。
組成物(B)に含まれる重合性単量体は、2種以上が混合されたものでもよい。また、組成物(B)は液体であることが好ましいが、常温で液体である必要はなく、組成物(B)を成形体(A)に接触させる際に液体であればよい。また、固体の重合性単量体を他の重合性単量体と混合することによって液体としてもよい。
ミルブランク部における重合性単量体の含有率は、成形体(A)と組成物(B)との接触条件によって、適宜調整することができる。
本発明の歯科用ミルブランクは、成形体(A)内部の粒子間に含浸された重合性単量体、及び、鋳型の付属空間に充填された重合性単量体を重合硬化することによって作製される。そのため、組成物(B)は、重合硬化を容易にするため、重合開始剤を含んでもよい。重合開始剤は、公知の重合開始剤であれば特に限定されないが、歯科材料に用いられる重合開始剤であることが好しい。重合開始剤は、熱重合開始剤、光重合開始剤及び化学重合開始剤であってもよく、2種以上の重合開始剤が混合されたものでもよい。
熱重合開始剤としては、有機過酸化物類及びアゾ化合物類等が挙げられる。
熱重合開始剤として用いられる有機過酸化物類としては、例えば、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
前記ケトンパーオキサイドとしては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
前記ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
前記ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
前記ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン等が挙げられる。
前記パーオキシケタールとしては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン及び4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステル等が挙げられる。
前記パーオキシエステルとしては、例えば、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート及びt−ブチルパーオキシバレリックアシッド等が挙げられる。
前記パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート及びジアリルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
前記有機過酸化物類としては、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の観点から、ジアシルパーオキサイドが好ましく、ベンゾイルパーオキサイドがより好ましい。
前記アゾ化合物類としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリック酸、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチラート、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジヒドロクロライド等が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、α−ジケトン類、クマリン類等が挙げられる。
前記(ビス)アシルホスフィンオキサイド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、及びこれらの塩等のアシルホスフィンオキサイド類;ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、及びこれらの塩等のビスアシルホスフィンオキサイド類が挙げられる。
前記アシルホスフィンオキサイド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイドナトリウム塩が好ましい。また、前記ビスアシルホスフィンオキサイド類としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが好ましい。
前記α−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ジベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナンスレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノン等が挙げられる。特に、光重合開始剤として用いられるα−ジケトン類としては、カンファーキノンが好ましい。
前記クマリン類としては、例えば、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−チエノイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイルクマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3,5−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3−ベンゾイル−6−ブロモクマリン、3,3’−カルボニルビスクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3−カルボキシクマリン、3−カルボキシ−7−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−6−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−8−メトキシクマリン、3−アセチルベンゾ[f]クマリン、3−ベンゾイル−6−ニトロクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジメチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノ)クマリン、7−メトキシ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−(4−ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3−(4−エトキシシンナモイル)−7−メトキシクマリン、3−(4−ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3−(4−ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3−[(3−ジメチルベンゾチアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3−[(1−メチルナフト[1,2−d]チアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3,3’−カルボニルビス(6−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジメチルアミノクマリン)、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−アセチル−7−(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11オン、10−(2−ベンゾチアゾイル)−2,3,6、7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン等が挙げられる。前記化合物は、特開平9−3109号公報、特開平10−245525号公報に記載されている。
前記クマリン類としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)及び3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)が好ましい。
光重合開始剤としては、歯科用コンポジットレジンに広く用いられる(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、α−ジケトン類、及びクマリン類からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
また、組成物(B)は、光重合開始剤のほかに、必要に応じて、重合促進剤を含んでもよい。組成物(B)が重合促進剤を含むことによって、光重合をより短時間で効率的に行うことができる。
重合促進剤としては、例えば、第3級アミン類、アルデヒド類、チオール基を有する化合物、スルフィン酸及び/又はその塩等が挙げられる。
前記第3級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジイソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジブチルアニリン、4−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(2−メタクリロイルオキシ)エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート等が挙げられる。
前記アルデヒド類としては、例えば、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。チオール基を有する化合物としては、例えば、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、チオ安息香酸等が挙げられる。
前記スルフィン酸及びその塩としては、例えば、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、トルエンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸ナトリウム、トルエンスルフィン酸カリウム、トルエンスルフィン酸カルシウム、トルエンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられる。
化学重合開始剤としては、有機過酸化物と重合促進剤とを組み合わせたレドックス重合開始剤が好ましい。化学重合開始剤に用いられる有機過酸化物は、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、前記熱重合開始剤として用いられる有機過酸化物が挙げられる。
化学重合開始剤に用いられる有機過酸化物としては、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の観点から、ジアシルパーオキサイドが好ましく、ベンゾイルパーオキサイドがより好ましい。
レドックス重合開始剤を構成する重合促進剤は、公知の重合促進剤であればよいが、特に歯科材料に用いられる重合促進剤であることが好ましい。化学重合開始剤に用いられる重合促進剤は、2種以上を併用してもよい。
レドックス重合開始剤を構成する重合促進剤としては、例えば、アミン類、スルフィン酸及びその塩、銅化合物、スズ化合物等が挙げられる。
前記アミン類としては、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミン;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸ブチル等の芳香族アミンが挙げられる。重合促進剤として用いられるアミン類としては、組成物の硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、N−メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましい。また、組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、重合促進剤は、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル及び4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記スルフィン酸及びその塩としては、前記のものを用いることができる。特に、重合促進剤として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが好ましい。
前記銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅等が挙げられる。
前記スズ化合物としては、例えば、ジ−n−ブチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジラウレート等が挙げられ、ジ−n−オクチル錫ジラウレート及びジ−n−ブチル錫ジラウレートが好ましい。
重合開始剤としては、光重合開始剤と熱重合開始剤との併用が好ましく、特に、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類とジアシルパーオキサイドとの併用が好ましい。
組成物(B)における重合開始剤の含有量は特に限定されないが、組成物(B)の硬化性等の観点から、重合性単量体100重量部に対して、0.001〜30重量部であることが好ましい。重合開始剤の含有量が、重合性単量体100重量部に対して、0.001重量部以上である場合、重合が十分に進行するため、歯科用ミルブランクの機械的強度が低下するおそれがない。重合開始剤の含有量は、重合性単量体100重量部に対して、0.05重量部以上であることが好ましく、0.1重量部以上であることがさらに好ましい。一方、重合開始剤の含有量が、重合性単量体100重量部に対して、30重量部以下である場合には、重合性能が低い重合開始剤であっても、十分な機械的強度を有する歯科用ミルブランクが得られ、さらには組成物(B)から重合開始剤が析出するおそれがない。重合開始剤の含有量は、重合性単量体100重量部に対して、20重量部以下であることがより好ましい。
組成物(B)は、目的に応じて、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、着色剤、顔料、抗菌剤、X線造影剤、増粘剤、蛍光剤等を含んでいてもよい。
組成物(B)は、例えば、重合性単量体と重合開始剤とを含むものであってもよい。
重合性単量体を重合する方法は、特に限定されず、加熱重合、光重合及び化学重合等の公知の方法を利用することができる。特に、より機械的強度の高いミルブランクを得る観点から、重合性単量体は、光重合によって重合させた後に、加熱重合によって重合させることが好ましい。前記方法によって、重合率の高い重合体を得ることができる。光重合に用いられる光は、可視光であってもよく、UV光であってもよい。また、窒素ガス等の不活性雰囲気下、又は、減圧環境下において重合性単量体を重合させることで、重合性単量体の重合率を高めることができ、これによって、得られる歯科用ミルブランクの機械的強度がより高まる。また、成形体(A)が収容された鋳型を袋体に封入し、組成物(B)に浸漬して真空下で重合操作を行うことは、生産性の観点から好ましい。さらに、オートクレーブ等を用いて、加圧下で、重合性単量体を加熱重合してもよい。
さらに、組成物(B)が含浸された成形体(A)を加圧した状態で、重合性単量体を重合させてもよい。加圧下において、組成物(B)は、成形体(A)の内部の微小な空隙にまで入り込むことができるため、成形体(A)の内部に存在する微小な気泡が低減する。そのため、加圧下において、重合性単量体を重合させることによって、歯科用ミルブランクの機械的強度をさらに高めることができる。加圧雰囲気下で、重合性単量体を重合させる場合の加圧度は、20MPa以上であることが好ましく、50MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることがさらに好ましい。重合性単量体を重合させる場合、圧力は高いほど好ましいが、実際は、用いる加圧装置の能力に依存する。加圧装置としては、例えば、オートクレーブ、CIP装置及びHIP(熱間等方圧加圧)装置が挙げられる。CIP装置としては、例えば、神戸製鋼社製のCIP装置が挙げられ、当該CIP装置は1000MPa程度まで加圧することができる。加圧条件下で、重合性単量体を重合させる方法としては、加熱重合、光重合及び化学重合が挙げられる。また、組成物(B)が充填された鋳型及び成形体(A)をビニール袋、ゴムチューブ等の真空パックで密封し、CIP装置等を用いて加圧しながら重合性単量体を重合させてもよい。前記方法で重合性単量体を重合させる場合の加圧度は、50MPa以上であることが好ましく、200MPa以上であることがより好ましい。また、組成物(B)が充填された鋳型及び成形体(A)を密封し、CIP装置を用いて加圧した後に、CIP装置内の処理室を加温することによって重合性単量体を重合させてもよい。具体的には、CIP装置によって密封された鋳型及び成形体(A)を室温下で加圧した後に、30分から24時間程度の時間をかけて80℃〜180℃まで加熱することが好ましい。前記方法によれば、歯科用ミルブランクの機械的強度をさらに高めることができる。重合時間及び温度は、重合性単量体に含まれる重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定すればよい。
さらに、重合性単量体を重合させた後に、鋳型内の歯科用ミルブランクに加熱処理をすることが好ましい。加熱温度は、特に限定されないが、80〜150℃が好ましい。加熱時間は、特に限定されないが、10〜120分間が好ましい。加熱処理を行うことによって、重合体内部に生じた応力及び歪みを緩和することができるため、得られた歯科用ミルブランクが切削加工中又は臨床使用中に破損することを防止できる。
重合性単量体を重合させた後に、鋳型を取り外すことによって、歯科用ミルブランクが得られる。得られたミルブランクは、必要に応じて切断、切削、表面研磨が施された後に、製品として出荷される。本発明により得られる歯科用ミルブランクは、無機充填材の含有率が、従来に比べて飛躍的に高いミルブランク部と、無機充填材を実質的に含まない支持部とを備える。
成形体(A)は、無機粒子が極めて緻密に充填され、かつ、充填された粒子の粒子間距離が極めて小さい。成形体(A)における無機粒子は、基本的には、隣接する無機粒子と接触した状態にあると考えられる。一方、従来の歯科用コンポジットレジンは、ある程度の流動性を必要としている。そのため、歯科用コンポジットレジンに含まれる無機粒子(a)は、コンポジットレジン中において一定以上の粒子間距離が確保されている必要があり、隣接する無機粒子(a)同士が接触した状態になるまでの高密度充填は原理的にほとんど不可能である。
本発明の歯科用ミルブランクにおけるミルブランク部は、無機充填材の含有率が非常に高いため、従来の歯科用コンポジットレジンから作製された歯科用補綴物に比べて、口腔内での耐摩耗性及び滑沢耐久性等が大幅に改善された歯科用補綴物を与えることができる。無機充填材の含有率が非常に高い歯科用補綴物は、優れた機械的強度だけでなく、熱膨張率、硬度等が、天然歯質により近い物性であることが予想される。
また、ミルブランク部の研磨平滑面を顕微鏡観察することによって、無機粒子が極めて緻密に充填されていることがわかる。従来の歯科用コンポジットレジンの硬化物における研磨面を顕微鏡観察した場合には、樹脂マトリックス中に無機粒子が均一に分散した海島構造が確認される。一方、本発明のミルブランク部は、無機粒子同士が接触して緻密に充填されるため、このような樹脂マトリックス中に無機粒子が均一に分散したような海島構造は観察されず、樹脂マトリックス領域が極めて少ない状態が観察される。本発明のミルブランク部において、樹脂中の無機粒子は緻密に充填されるため、ミルブランク部の表面が平滑となり、対合歯の耐摩耗性に優れる。ミルブランク部における無機充填材の含有率は、顕微鏡観察によって得られた画像を解析して、無機粒子部分と樹脂マトリックス部分との面積を算出することによって推定することもできる。画像を解析する方法としては、例えば、画像解析ソフト(アメリカ国立衛生研究所、Image J)を用いる方法が挙げられる。
本発明の製造方法によれば、ミルブランクにおけるミルブランク部及び支持部を同時に形成することができる。すなわち、本発明の製造方法は、ミルブランクを製造したあとに支持部を付与する工程を必要とせず、生産効率に優れる。また、本発明によって得られたミルブランクによれば、ミルブランク部及び支持部において重合性単量体が一体として重合するため、切削加工時にミルブランク部に加わる応力によって、ミルブランク部が支持部から脱離することを効果的に防ぐことができる。
本発明の歯科用ミルブランクにおけるミルブランク部の形状及び大きさは、市販の歯科用CAD/CAMシステムに供することができる限りにおいて特に限定されず、例えば、縦10〜70mm×横5〜30mm×高さ5〜30mmの角柱状、又は、直径70〜120mm、厚み8〜35mmの円板状のものが挙げられる。ミルブランク部が40mm×20mm×15mmの角柱状である場合、当該ミルブランク部は、一歯欠損ブリッジの作製に適用される。ミルブランク部が17mm×10mm×10mmの角柱状である場合、当該ミルブランク部は、インレー及びオンレーの作製に適用される。ミルブランク部が14mm×18mm×20mmの角柱状である場合、当該ミルブランク部は、フルクラウンの作製に適用される。ミルブランク部が直径100mm、厚みが10〜28mmの円板状である場合、当該ミルブランク部は、ロングスパンブリッジ及び義歯床の作製に適用される。
本発明の歯科用ミルブランクにおける支持部の形状及び大きさは特に限定されないが、例えば、ミルブランク部の底面の中央域から突出し、直径5〜30mm×高さ1〜5mmの円板状の段差部と、直径2.5〜15mm×高さ5〜30mmの円柱状の固定部とを有するものが挙げられる。また、ミルブランク部が円板状である場合の支持部は、例えば、ミルブランク部の周側面中央域から突出した内径70〜120mm、外径71〜140mm、高さ5〜35mmの円筒状のものが挙げられる。
本発明の歯科用ミルブランクが切削加工されることによって、機械的物性、耐摩耗性、及び滑沢性に優れた審美的な歯科用補綴物を得ることができる。
本発明のミルブランクから製造される歯科用補綴物としては、例えば、インレー、アンレー、オンレー、ベニア、クラウン、ブリッジ等の歯冠修復物、支台歯、歯科用ポスト、義歯、義歯床、インプラント部材(フィクスチャー又はアバットメント)等が挙げられる。また、切削加工に用いられる歯科用CAD/CAMシステムとしては、例えば、シロナデンタルシステムズ社製のCERECシステム、及び、クラレノリタケデンタル社製のカタナシステムが挙げられる。
また、本発明で得られるミルブランクは、歯科材料以外にも用いることができる。ミルブランクは、例えば、封止材料、積層板成形材料等の電子材料;建築用の複合材料部材;電化製品、家庭用品、玩具類の部品等としても用いることができる。
(実施例)
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
〔組成物(B)の製造例1〕
[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(UDMA)70重量部及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)30重量部に、熱重合開始剤であるベンゾイルパーオキサイド1重量部を溶解させることによって、組成物(B−1)を調製した。
〔組成物(B)の製造例2〕
2,2−ビス[4−〔3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン(Bis−GMA)50重量部及びヘキサンジオールジメタクリレート(HD)50重量部に、光重合開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(TMDPO)0.5重量部、及び、熱重合開始剤であるベンゾイルパーオキサイド(BPO)1重量部を溶解させることによって、組成物(B−2)を調製した。
〔組成物(B)の製造例3〕
トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート1モルとグリセリンジメタクリレート2モルとの付加物30重量部、2,2−ビス〔4−アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン(分子内にエトキシ基が平均6個)30重量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(NPG)25重量部及び2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンチルジメタクリレート(HFPD)15重量部に、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.5重量部を溶解させることによって、組成物(B−3)を調製した。
〔無機粒子(a)の製造例1〕
市販の無機超微粒子(日本アエロジル社製、アエロジルOX50、平均一次粒子径40nm、BET比表面積50m2/g)100gを水500mLに分散し、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン7gを加えて室温で2時間攪拌した。スプレードライヤー(ビュッヒ社製B290型)を用いて噴霧乾燥後、90℃で3時間乾燥することによって、表面処理された粉末状の無機粒子(a−1)を得た。
〔無機粒子(a)の製造例2〕
市販のバリウムボロアルミノシリケートガラス粉末(ショット社製GM27884、NF180、平均粒子径0.18μm、粒径範囲0.05〜0.50μm、破砕状)200gをエタノール500mLに分散し、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン8g及び水5gを加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理された粉末状の無機粒子(a−2)を得た。
〔無機粒子(a)の製造例3〕
市販のシリカジルコニア球状充填材(Sukgyung社製、平均一次粒子径0.20μm、粒径範囲0.05〜0.40μm)100gに対して、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン6g及び水3gを用いて、無機粒子(a)の製造例2と同様の操作を行うことによって、表面処理された球状の無機粒子(a−3)を得た。
〔無機粒子(a)の製造例4〕
市販の無機超微粒子(日本アエロジル社製、アエロジルOX50、平均一次粒子径40nm、BET比表面積50m2/g)100gに対して、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン7g及び水5gを用いて、無機粒子(a)の製造例2と同様の操作を行うことによって、表面処理された粉末状の無機粒子(a−4)を得た。
〔無機粒子(a)の製造例5〕
スプレードライヤー(ビュッヒ社製B290型)を用いて、市販のシリカゾル(日産化学社製、平均一次粒子径10nm、BET比表面積180m2/g)を噴霧乾燥することによって無機超微粒子が凝集し、粉末状の凝集粒子が得られた。凝集粒子は、平均粒子径が5μmの球状粒子であり、粒径範囲が0.5μm〜15μmであった。凝集粒子を800℃で1時間焼成した後、凝集粒子100gに対して、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン20g及び水10gを用いて無機粒子(a)の製造例2と同様の操作を行うことによって、表面処理された無機粒子(a−5)を得た。
〔無機粒子(a)の製造例6〕
市販のバリウムボロアルミノシリケートガラス粉末(SCHOTT社製、8235、平均粒子径1.5μm、粒径範囲0.1〜5.0μm)100g、及び、市販の無機超微粒子(日本アエロジル社製、アエロジルOX50、平均一次粒子径40nm、BET比表面積50m2/g)20gをトルエン300mLに分散し、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン4gを加えて、2時間加熱還流した。トルエンをエバポレーターで減圧留去し、得られた粉末を解砕することによって、バリウムガラス粉末と無機超微粒子とが均一に混合され、かつ、表面処理されたハイブリッド型無機粒子(a−6)を得た。
〔無機粒子(a)の製造例7〕
市販のミルドファイバー(セントラルグラスファイバー社製、EFH30−31、平均繊維長30μm、平均繊維径11μm)200gをエタノール500mLに分散し、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1g及び水5gを加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理された短繊維状の無機粒子(a−7)を得た。
〔無機粒子(a)の製造例8〕
市販の無機超微粒子(日本アエロジル社製、アエロキサイドAluC、平均一次粒子径20nm、BET比表面積100m2/g)100gに対して、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン15g及び水500gを用いて、無機粒子(a)の製造例2と同様の操作を行うことによって、表面処理された粉末状の無機粒子(a−8)を得た。
〔無機粒子(a)の製造例9〕
WO2009/133913号に記載された製造例8の方法に基づいて、シリカ系微粒子と、ジルコニウム原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、シリ力系微粒子の表面を被覆する酸化物とを含む非晶質粉末(屈折率1.549、平均粒子径6.3μm、粒径範囲0.2〜20μm)を得た。得られた非晶質粉末100重量部に対して、25重量部のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランと水500gを用いて、無機粒子(a)の製造例2と同様の操作を行うことによって、表面処理された粉末状の無機粒子(a−9)を得た。
〔成形体(A)の製造例1〕
無機粒子(a−1)100gを、93mmΦの円形のプレス用金型の下パンチ棒の上に敷いた。タッピングにより無機粒子(a−1)をならした後に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、プレス機を用いて一軸プレス(プレス圧44.2MPa(300kN)、時間は30分間)を行った。上パンチ及び下パンチを金型から外し、無機粒子(a−1)が凝集した成形体(A−1)を取り出した。成形体(A−1)は、93mmΦ×14mmの円板状であった。
〔成形体(A)の製造例2〕
無機粒子(a−1)3.8gを14.5mm×18.0mmの長方形の穴を持つプレス用金型の下パンチ棒の上に敷いた。タッピングにより粉末をならした後に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、テーブルプレス機を用いて一軸プレス(プレス圧38.3MPa(10kN)、時間は3分間)を行った。上パンチ棒及び下パンチ棒を金型から外し、無機粒子(a−1)が凝集した成形体(A−2)を取り出した。成形体(A−2)は、14.5×18.0×14.5mmの角柱状であった。
〔成形体(A)の製造例3〕
無機粒子(a−1)1.9gを15.0mm×12.0mmの長方形の穴を持つプレス用金型の下パンチ棒の上に敷いた。タッピングにより粉末をならした後に、上パンチ棒を所定の位置に設置し、テーブルプレス機を用いて一軸プレス(プレス圧38.9MPa(7kN)、時間は3分間)を行った。上パンチ棒及び下パンチ棒を金型から外し、無機粒子(a−1)が凝集した成形体(A−3)を取り出した。成形体(A−3)は、15.0×12.0×10.0mmの角柱状であった。
〔実施例1〕
成形体(A−1)と略同一形状の収容空間を有するテフロン製鋳型1(図2A)に成形体(A−1)を収容した。収容空間に成形体(A−1)を収容した鋳型1をポリエチレン製の袋体の内部に設置した。その後、組成物(B−1)を袋体の内部に導入し、袋体内部を減圧することによって、成形体(A−1)に組成物(B−1)を含浸させた。このときの減圧度は、0.1hPaであり、減圧時の平均減圧速度は、400kPa/minであった。減圧下、室温で4日間静置した後、成形体(A−1)に、組成物(B−1)が十分に含浸されていることを目視によって確認した。なお、成形体(A−1)に組成物(B−1)が十分に含浸されている状態において、鋳型1の付属空間は組成物(B−1)に満たされていた。次に、熱風乾燥機を用いて55℃18時間加熱後、さらに110℃で3時間加熱処理を行って、重合性単量体を重合させて、目的とするミルブランク(C−1)を得た。ミルブランク(C−1)は、93mmΦ×14mmの円板状のミルブランク部と、内径93mmΦ、外径99mmΦ、高さ10mmであり、ミルブランク部の周側面中央域から突出した支持部とを備えていた。
〔実施例2〕
実施例1で用いた鋳型1の代わりに、鋳型1と同一形状の収容空間及び付属空間を有するテフロン製鋳型6(図4E)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、目的とするミルブランク(C−1)を得た。
〔実施例3〕
実施例1で用いた鋳型1の代わりに、鋳型1と同一形状の収容空間及び付属空間を有するテフロン製鋳型7(図4F)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、目的とするミルブランク(C−1)を得た。
〔実施例4〜11〕
実施例1で用いた成形体(A−1)に含まれる無機粒子(a−1)の代わりに無機粒子(a−2〜a−9)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ミルブランク(C−2〜C−9)を得た。
〔実施例12〕
実施例1で用いた組成物(B−1)の代わりに組成物(B−2)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ミルブランク(C−10)を得た。
〔実施例13〕
実施例1で用いた組成物(B−1)の代わりに組成物(B−3)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ミルブランク(C−11)を得た。
〔実施例14〕
実施例12で行った加熱による重合操作の代わりに、歯科用光照射機(モリタ社製、αライト2)によって、ポリエチレン製の袋体に設置された鋳型及び成形体に5分間光照射を行った後に、熱風乾燥機によって130℃で20分間加熱処理した以外は実施例12と同様の操作を行い、ミルブランク(C−12)を得た。
〔実施例15〕
成形体(A−2)と同一形状の収容空間を有するテフロン製鋳型8(図5A)に成形体(A−2)を収容した。収容空間に成形体(A−2)を収容した鋳型8をポリエチレン製の袋体の内部に設置した。その後、組成物(B−1)を袋体の内部に導入し、成形体(A−2)に組成物(B−1)を含浸させた。室温で2日間静置した後、成形体(A−2)に、組成物(B−1)が十分に含浸されていることを目視によって確認した。なお、成形体(A−2)に組成物(B−1)が十分に含浸されている状態において、鋳型8の付属空間は組成物(B−1)に満たされていた。次いで、熱風乾燥機を用いて55℃18時間加熱後、さらに110℃で3時間加熱処理を行って、重合性単量体を重合させて、目的とするミルブランク(C−13)を得た。ミルブランク(C−13)は、14.5×18.5×14.5mmの角柱状のミルブランク部と、ミルブランク部の底面中央域から突出した支持部とを備えていた。支持部は、12mmΦ×2.5mmの円板状の段差部と、6mmΦ×13mmの円柱状の固定部とを備えていた。
〔実施例16〕
実施例15で用いた鋳型8の代わりに、成形体(A−3)と同一形状の収容空間を有するテフロン製鋳型8(図5A)を用い、成形体(A−2)の代わりに成形体(A−3)を用いたこと以外は実施例15と同様の操作を行い、ミルブランク(C−14)を得た。ミルブランク(C−14)は、15.0×12.0×10.0mmの角柱状のミルブランク部と、ミルブランク部の底面中央域から突出した支持部とを備えていた。支持部は、12mmΦ×2.5mmの円板状の段差部と、6mmΦ×13mmの円柱状の固定部とを備えていた。
〔実施例17〕
実施例15で用いた組成物(B−1)の代わりに組成物(B−2)を用いたこと以外は実施例15と同様の操作を行い、ミルブランク(C−15)を得た。
〔実施例18〕
実施例15で用いた組成物(B−1)の代わりに組成物(B−3)を用いたこと以外は実施例15と同様の操作を行い、ミルブランク(C−16)を得た。