JPWO2018074605A1 - 複数色積層歯科用ミルブランク - Google Patents

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Abstract

本発明は、より天然歯と同様の色調及び透明性を有する歯科用補綴物を切削加工により提供できる、歯科用ミルブランクを提供する。本発明は、積層体から構成され、前記積層体が、最上層、少なくとも1層の中間層及び最下層の少なくとも3層を含み、前記積層体を構成する各層が、充填材(A)及び重合体(B)を含み、各層の前記充填材(A)が、少なくとも1種の無機粒子(a)及び少なくとも1種の顔料(C)を含み、前記最上層と前記最下層の色度差ΔE*Tが5.0以上15.0以下であり、前記最上層と前記最下層の透明性差ΔΔL*Tが5.0以上15.0以下であり、全ての隣接する層の色度差ΔE*が1.0以上5.5以下であり、全ての隣接する層の透明性差ΔΔL*が1.0以上5.0以下であり、最上層の透明性ΔL*Hが13.5以上25.0以下であり、最下層の透明性ΔL*Lが7.0以上13.0以下である、歯科用ミルブランクに関する。

Description

本発明は、複数色の層からなる歯科用ミルブランクに関する。さらに詳しくは、例えば、歯科用CAD/CAMシステムでの切削加工による、インレー、オンレー、ベニア、クラウン、ブリッジ、支台歯、歯科用ポスト、義歯、義歯床、インプラント部材(フィクスチャー、アバットメント)等の歯科用補綴物の作製に好適に用いられる歯科用ミルブランクに関する。
近年、インレー、クラウン等の歯科用補綴物を、コンピューターによって設計し、ミリング装置により切削加工して作製するCAD/CAMシステムを適用させる例が増加している。このようなシステムでは、適当な大きさを有する直方体、円柱、ディスク等の形状のブロック体が供給され、これを切削加工機にセットして削り出すことで歯冠形状や歯列形状の修復物を得る。ブロックの素材としては、ガラスセラミックス、ジルコニア、チタン、アクリル樹脂、ポリマー樹脂と無機充填材を含む複合材料等、種々の材料が提案されている。
歯冠歯列修復治療では、天然組織の色調に可能な限り近い外観が得られていることが要求される。しかしながら、このような審美的な要求を満たすためには、単一色からなるブロック体を切削して作製するだけでは、不十分であった。そのため、これまでにも、天然歯の色調に近づけることを目的として、無機充填材を含み、それぞれの色調が異なる、多数の樹脂層を積層し、多層構造体とし、複数の色調から構成される切削用ブロックが提案されていた。一方で、このよう多層構造を有する切削用ブロックは、多層構造を形成するために、製造工程が多く、生産性に劣る点が指摘されていた。
そこで、生産性の課題を解決するために、ある程度天然歯に近い色調を有し、審美性を備えつつ、工業的生産性の向上を重視したレジンブロックとして、例えば、特許文献1に記載のCAD/CAM用レジンブロックが開発された。特許文献1では、光学的特性に注目し、象牙質修復用レジン層に光拡散性粒子を含有し、特定の拡散比を有することによって、2層程度の少ない層構造で、かつ各層の空間的配置な厳密な制御を必要としない単純な層構造を有するCAD/CAM用レジンブロックが記載されている。
特開2014−161440号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている2層構造では、歯頸部から切縁部にかけて透明性が異なる天然組織の色調を完全に再現することができておらず、改良の余地があった。特に、開口時に目につきやすい、いわゆる前歯(中切歯、側切歯及び犬歯)のクラウンに要求される、特に高い審美性を有するクラウンとして、天然歯の色調及び透明性を再現するには、不十分である。また、L*a*b*表色系において各層の彩度差についての範囲が記載されているが、その彩度差だけでは天然歯の色調を再現することはできない。
本発明は、より天然歯と同様の色調及び透明性を有する歯科用補綴物を、切削加工により提供することができる、歯科用ミルブランク及びその製造方法を提供することを目的とする。特に、前歯(中切歯、側切歯及び犬歯)の義歯として好適な歯科用補綴物を、切削加工により提供することができる、歯科用ミルブランク及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の発明を提供する。
[1]積層体から構成される歯科用ミルブランクであって、
前記積層体が、最上層、少なくとも1層の中間層、及び最下層の少なくとも3層を含み、
前記積層体を構成する各層が、充填材(A)及び重合体(B)を含み、
各層の前記充填材(A)が、少なくとも1種の無機粒子(a)及び少なくとも1種の顔料(C)を含み、
最上層と最下層の色度差ΔE*Tが5.0以上15.0以下であり、最上層と最下層の透明性差ΔΔL*Tが5.0以上15.0以下であって、
全ての隣接する層の色度差ΔE*が1.0以上5.5以下であり、全ての隣接する層の透明性差ΔΔL*が1.0以上5.0以下であり、最上層の透明性ΔL*Hが13.5以上25.0以下であり、最下層の透明性ΔL*Lが7.0以上13.0以下である、歯科用ミルブランク;
[2]下記式[I]及び[II]
ΔL*L<ΔL*M(1) [I]
ΔL*M(p)<ΔL*H [II]
(式中、ΔL*Lは最下層の透明性であり、ΔL*Hは最上層の透明性であり、ΔL*M(1)は最下層に最も近い中間層(M1層)の透明性であり、ΔL*M(p)は最上層に最も近い中間層(Mp層)の透明性であり、pは1以上の自然数である。)を満たす、前記[1]の歯科用ミルブランク;
[3]前記積層体全体の厚さが、8.0mm以上23.0mm以下であり、最上層及び最下層の厚さがそれぞれ2.0mm以上であり、最上層と最下層に挟まれた少なくとも1層からなる中間層の各層の厚さが1.0mm以上5.0mm以下である、前記[1]又は[2]の歯科用ミルブランク;
[4]重合体(B)の構造単位を構成する重合性単量体(b)が、(メタ)アクリレート系重合性単量体及び(メタ)アクリルアミド誘導体系の重合性単量体からなる群から選ばれる1種以上の重合性単量体である、前記[1]〜[3]のいずれかの歯科用ミルブランク;
[5]最上層、少なくとも1層の中間層、及び最下層の少なくとも3層の各層における無機粒子(a)の含有量が、61質量%以上96質量%以下である、前記[1]〜[4]のいずれかの歯科用ミルブランク;
[6]最上層における無機粒子(a)の屈折率と、重合体(B)の屈折率の差が、0.01以上0.05以下である、前記[1]〜[5]のいずれかの歯科用ミルブランク;
[7]中切歯、側切歯又は犬歯用である、前記[1]〜[6]のいずれかの歯科用ミルブランク;
[8]色調が異なる3種以上の充填材(A)を層状にプレス成形してなるプレス成形体と、重合性単量体含有組成物を接触させる工程、及び重合硬化させる工程を有し、前記充填材(A)が少なくとも1種の無機粒子(a)及び少なくとも1種の顔料(C)を含有し、前記重合性単量体含有組成物が重合体(B)の構造単位を構成する重合性単量体(b)を含有する、前記[1]〜[7]のいずれかの歯科用ミルブランクの製造方法;
[9]重合性単量体含有組成物中にプレス成形体を浸漬して接触させる、前記[8]の歯科用ミルブランクの製造方法;
[10]色調が異なる3種以上のペースト状の歯科用重合性組成物を積層する工程、及び重合硬化させる工程を有し、前記ペースト状の重合性組成物が、充填材(A)と重合体(B)の構造単位を構成する重合性単量体(b)とを含有し、各ペースト状の重合性組成物の前記充填材(A)が少なくとも1種の無機粒子(a)及び少なくとも1種の顔料(C)を含有する、前記[1]〜[7]のいずれかの歯科用ミルブランクの製造方法;
[11]前記[1]〜[7]のいずれかの歯科用ミルブランクを切削加工する、歯科用補綴物の製造方法。
本発明により、より天然歯と同様の色調及び透明性を有する歯科用補綴物を、切削加工により提供することができる、歯科用ミルブランク及びその製造方法を提供することができる。特に、前歯(中切歯、側切歯及び犬歯)の義歯として好適な歯科用補綴物を、切削加工により提供することができる、歯科用ミルブランク及びその製造方法を提供することができる。
本発明の歯科用ミルブランクは、積層体から構成され、前記積層体が、最上層、少なくとも1層の中間層、及び最下層の少なくとも3層を含み、前記積層体を構成する各層が、充填材(A)及び重合体(B)を含み、前記充填材(A)が、少なくとも1種の無機粒子(C)及び少なくとも1種の顔料(C)を含み、前記最上層と前記最下層の色度差ΔE*Tが5.0以上15.0以下であり、前記最上層と前記最下層の透明性差ΔΔL*Tが5.0以上15.0以下であり、全ての隣接する層の色度差ΔE*が1.0以上5.5以下であり、全ての隣接する層の透明性差ΔΔL*が1.0以上5.0以下であり、最上層の透明性ΔL*Hが13.5以上25.0以下であり、最下層の透明性ΔL*Lが7.0以上13.0以下であることを特徴とする。なお、本明細書において、数値範囲(色度差、透明性差等の特性、各成分の含有量、及び各成分から算出される値等)の上限値及び下限値、並びに各構成は適宜組み合わせ可能である。本明細書において、最上層と最下層は、ミルブランクをひっくり返すと入れ替わるため、便宜的に、より透明性が高い層を最上層といい、より透明性が低い層を最下層という。
本発明の歯科用ミルブランクにおいて、積層体の最上層と最下層の色度差ΔE*Tが5.0以上15.0以下であり、好ましくは5.5以上14.0以下であり、より好ましくは6.0以上13.0以下であり、さらに好ましくは、7.0以上11.0以下である。このΔE*Tが5.0未満の場合、切削加工したクラウンの色調の濃淡が少ないため、天然歯(特に前歯)における歯頸部から切縁部の色調変化を再現することができない。一方、ΔE*Tが15.0を超えると、切削加工したクラウンの濃淡が強く、天然歯(特に前歯)における歯頸部から切縁部の色調変化を再現することができない。
また、最上層と最下層の透明性差ΔΔL*Tが5.0以上15.0以下であり、好ましくは5.5以上14.0以下であり、より好ましくは6.0以上12.0以下であり、さらに好ましくは7.0以上10.0以下である。このΔΔL*Tが5.0未満の場合、切削加工したクラウンの透明性変化が少ないため、天然歯(特に前歯)における歯頸部から切縁部の透明性変化を再現することができない。一方、ΔΔL*Tが15.0を超えると、切削加工したクラウンの透明性差が強く、天然歯(特に前歯)における歯頸部から切縁部の色調変化を再現することができない。
さらに、全ての隣接する層の色度差ΔE*が1.0以上5.5以下であり、好ましくは1.2以上5.0以下であり、より好ましくは1.5以上4.5であり、さらに好ましくは2.0以上4.0以下である。このΔE*が1.0未満の場合、各層の色調変化が少なく、隣接する層に変化がないため、天然歯(特に前歯)における歯頸部から切縁部の色調変化を再現することができない。一方、隣接する層のΔE*が5.5を超えると、隣接する層の色調変化が強いため、各層の界面ははっきりしてしまい、天然歯(特に前歯)における歯頸部から切縁部の自然な色調変化を再現することができない。
また、全ての隣接する層の透明性差ΔΔL*が1.0以上5.0以下であり、好ましくは1.2以上4.9以下であり、より好ましくは1.5以上4.5以下であり、さらに好ましくは2.0以上3.5以下である。このΔΔL*が1.0未満の場合、隣接する層との透明性差が少なく、隣接する層との変化ないため、天然歯における歯頸部から切縁部の透明性変化を再現することができない。一方、隣接する層のΔE*が5.0を超えると、隣接する層の透明性変化が強いため、各層の界面ははっきりしてしまい、天然歯における歯頸部から切縁部の自然な透明性変化を再現することができない。
任意のx層とy層の色度差ΔE*は、色差計を用いて測定し、そのL*、a*、b*の値を元に以下の式によって算出される。色差計としては、例えば、分光測色計(CM−3610d、JIS Z 8722:2009、条件cに準拠、コニカミノルタジャパン株式会社製、D65光源)を使用できる。
Figure 2018074605
式中、Lw*x、aw*x、bw*xはx層の値であり、Lw*y、aw*y、bw*yはy層の値であり、これらは白背景での値を表す。白背景としては、標準白色板が使用される。
また、任意のx層の透明性ΔL*は、色差計を用いて、白背景(標準白色板)と黒背景(標準黒色板)の色度を測定し、そのL*、a*、b*の値を元に以下の式によって算出される。
ΔL*x=Lw*x−Lb*x
式中、Lw*xはx層の白背景での色度の値を表す。白背景としては、標準白色板が使用される。また、Lb*xはx層の黒背景での色度の値を表す。黒背景としては、標準黒色板が使用される。
さらに、任意のx層とy層の透明性差ΔΔL*(y-x)は、色差計を用いて測定し、そのL*、a*、b*の値を元に以下の式によって算出される。
ΔΔL*(y-x)=(Lw*y−Lb*y)−(Lw*x−Lb*x)
式中、Lw*xはx層の値であり、Lw*yはy層の値であり、これらは白背景での値を表す。白背景としては、標準白色板が使用される。また、Lb*xはx層の値であり、Lb*yはy層の値であり、これらは黒背景での値を表す。黒背景としては、標準黒色板が使用される。
最上層の透明性ΔL*Hとしては、天然歯(特に前歯)における歯頸部から切縁部の色調変化の再現性がより高い点から、13.5以上25.0以下であり、14.0以上24.0以下が好ましく、14.5以上23.0以下がより好ましい。最下層の透明性ΔL*Lとしては、天然歯(特に前歯)における歯頸部から切縁部の色調変化の再現性がより高い点から、7.0以上13.0以下であり、7.5以上12.5以下が好ましく、8.0以上12.0以下がより好ましい。
また、本発明の歯科用ミルブランクは、透明性について、下記式[I]及び[II]
ΔL*L<ΔL*M(1) [I]
ΔL*M(p)<ΔL*H [II]
(式中、ΔL*Lは最下層の透明性であり、ΔL*Hは最上層の透明性であり、ΔL*M(1)は最下層に最も近い中間層(M1層)の透明性であり、ΔL*M(p)は最上層に最も近い中間層(Mp層)の透明性であり、pは1以上の自然数である。)を満たすものが好ましい。さらに、2以上の中間層がある場合(pが2以上の自然数である場合)、k番目(kは2〜pまでの任意の自然数)の中間層の透明性は、ΔL*m(k-1)<ΔL*m(k)の関係を満たすものが好ましい。
本発明の歯科用ミルブランクにおいて、最上層と最下層の透明性差ΔΔL*Tと、最上層と最下層の色度差ΔE*Tとの絶対値の差(|ΔΔL*T−ΔE*T|)が3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましく、1.5以下であることが特に好ましい。
本発明の歯科用ミルブランクは、複数色の積層体から構成される。天然歯は、透明性の高いエナメル層と比較的不透明で色味のある象牙質層から構成されている。また、前歯(特に中切歯、側切歯及び犬歯)では、その構成成分の割合は、歯頸部から切縁部に行くにしたがって異なり、さらに象牙質とエナメル質においても構成成分の割合が異なる。そのため、切縁部は透明性が高く色味は少なく、歯頸部は透明性が低く色味が濃い。このことから、L*a*b*表色系における歯科用ミルブランクに好適なL*、a*、b*として、L*は70.0〜99.0であり、a*は−7.0〜20.0であり、b*は5〜45であり、より好ましくは、L*は72.0〜95.0であり、a*は−5.0〜18.0であり、b*は7〜42であり、さらに好ましくは、L*は74.0〜93.0であり、a*は−3.0〜15.0であり、b*は9〜40である。
また、本発明の歯科用ミルブランクを構成する積層体の層の数は、少なくとも3層であり、好ましくは3層以上8層以下であり、より好ましくは4層以上6層以下である。すなわち、前記式[II]のpは1〜6の自然数が好ましく、2〜4の自然数がより好ましい。
歯科用ミルブランクを構成する積層体全体の厚さは、好ましくは8.0mm以上23mm以下であり、より好ましくは9.0mm以上22.0mm以下であり、さらに好ましくは10.0mm以上20.0mm以下である。
また、最上層と最下層の厚さは、それぞれ好ましくは2.0mm以上であり、より好ましくは5.0mm以上22.0mm以下であり、さらに好ましくは5.5mm以上21.0mm以下であり、特に好ましくは6.0mm以上20.0mm以下である。
さらに、最上層と最下層に挟まれた少なくとも1層からなる中間層の各層の厚さは、好ましくは1.0mm以上5.0mm以下であり、より好ましくは1.3mm以上4.7mm以下であり、さらに好ましくは1.5mm以上4.3mm以下である。
本発明で用いられる充填材(A)は、少なくとも1種の無機粒子(a)及び少なくとも1種の顔料(C)を含む。無機粒子(a)としては、歯科用コンポジットレジンの充填材として用いられている公知の無機粒子がなんら制限なく用いられる。本明細書において、「無機粒子」は、「無機粉末」と読み替えてもよい。無機粒子として、具体的には、例えば、各種ガラス類(二酸化ケイ素(石英、石英ガラス、シリカゲル等)、ケイ素を主成分とし、各種重金属とともにホウ素及び/又はアルミニウムを含有するガラス)、アルミナ、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、シリカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、二酸化チタン(チタニア)、ヒドロキシアパタイト等の従来公知の物が使用できる。また、これら無機粒子に重合性単量体を予め添加してペースト状にした後、重合硬化させ、粉砕して得られる有機無機複合粒子(有機無機複合フィラー)を用いても差し支えない。これらの無機粒子は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、歯冠修復材料に望まれる重要な物性としては、天然歯と同様の透明性とX線造影性が挙げられる。透明性は無機粒子(a)と重合体(B)(重合性単量体の硬化物)の屈折率をできるだけ一致させることで達成される。また、X線造影性の付与のためには、ジルコニウム、バリウム、チタン、ランタン、ストロンチウム等の重金属元素を有する無機酸化物が用いられる。このような重金属元素を含む無機粒子の屈折率は通常高く、1.5〜1.6の範囲内にある。よって、本発明において、例えば、重合体(B)の構造単位を構成する重合性単量体(b)として(メタ)アクリレート系単量体を用いた場合、(メタ)アクリレート系単量体の屈折率は通常、1.5〜1.6の範囲内にあることから、この様なX線造影性を有する屈折率の高い無機粒子(a)と組み合わせても屈折率差を小さく調節することができるので、得られる歯科用ミルブランクは高い透明性を得やすく有用である。
また、透明性を調整する方法としては、無機粒子(a)の屈折率と粒子径を調節する方法も好適に用いられる。一般に無機粒子が分散した樹脂の透明性は、無機粒子と樹脂の屈折率差が小さいほど、また、粒子径が可視光線の波長(0.4〜0.7μm)から離れるほど、高くなることが知られている。したがって、透明性を高める場合、例えば、透明性の高い層(例えば、最上層)に配置する無機粒子(a)としては、重合体(B)の屈折率となるべく同じ屈折率(例えば、両者の差が0.01以上0.05以下又は0.02以上0.05以下)を持った無機粒子を選択するか、或いは無機粒子の屈折率に合致するように重合体(B)の屈折率を調節する。屈折率は、アッベ屈折計(商品名:DR−A1,NARシリーズ;株式会社アタゴ製)によって25℃の環境で測定することができる。無機粒子の屈折率は液浸法によって測定することができる。具体的には、無機粒子をエタノール中に分散させてスラリーにし、このスラリーに対して1−ブロモナフタリンを徐々に滴下し、無機粒子と液体の境界が目視で確認できなくなったところの分散液の屈折率を無機粒子の屈折率とする。
このようなX線造影性を有する屈折率の高い無機粒子としては、例えば、バリウムボロシリケートガラス(例えば、ESSTECH社製E−3000;ショット社製8235、GM27884、GM39923)、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス(例えばESSTECH社製E−4000;ショット社製G018−093、GM32087)、ランタンガラス(例えばショット社製GM31684)、フルオロアルミノシリケートガラス(例えばショット社製G018−091、G018−117)、ジルコニアを含有するガラス(例えばショット社製G018−310、G018−159)、ストロンチウムを含有するガラス(例えばショット社製G018−163、G018−093、GM32087)、酸化亜鉛を含有するガラス(例えばショット社製G018−161)、カルシウムを含有するガラス(例えばショット社製G018−309)等が挙げられる。
無機粒子(a)は、形態に特に制限が無く、例えば、破砕状、板状、鱗片状、繊維状(短繊維、長繊維)、針状、ウィスカー、球状等各種形状のものが用いられる。これらの形状の一次粒子が凝集した形態でも構わなく、異なる形状のものが組み合わさったものでもよい。なお、本発明においては、前記形状を有するよう何らかの処理(例えば、粉砕)を行なったものであってもよい。
また、無機粒子(a)の粒子径は、歯科用コンポジットレジンの充填材として通常用いられる程度の大きさを有するのであればよく、例えば、平均粒子径が0.001〜10μm、粒径範囲が0.0005〜50μmであるものが挙げられる。なお、本明細書において、無機粒子(a)の平均粒子径とは、無機粒子の一次粒子の粒子径(平均一次粒子径)を意味する。粒径範囲とは、用いる集団の95%以上の数の粒子が満足する粒子径の範囲のことであり、規定する粒径範囲を満たさない粒子が意図せず含まれていても、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に制限されない。
なお、本明細書において、無機粒子(a)の平均粒子径は、レーザー回折散乱法又は粒子の電子顕微鏡観察により求めることができる。具体的には、0.10μm以上の粒子の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が、0.10μm未満の超微粒子の粒子系測定には電子顕微鏡観察が簡便である。前記0.10μmはレーザー回折散乱法によって測定した値である。
レーザー回折散乱法は、具体的に例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100:株式会社島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することができる。
電子顕微鏡観察は、具体的に例えば、粒子の透過電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800NA型)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Macview(株式会社マウンテック))を用いて測定することにより求めることができる。このとき、粒子の粒子径は、その粒子と同一の面積をもつ円の直径である円相当径として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均一次粒子径が算出される。
本発明では、異なった材質、粒度分布、形態を持つ2種以上の無機粒子を、混合又は組み合わせて用いることもあり、また、本発明の効果を損なわない範囲内で、意図せずに、無機粒子以外の粒子が不純物として含まれていてもよい。
以下に、本発明における無機粒子(a)の好ましい態様を挙げる。
本発明において、好ましい実施形態の一つとしては、無機粒子(a)が、平均粒子径が0.10μm以上1.0μm未満の範囲である無機粒子(a1)(以下、サブミクロンフィラー(a1)ともいう。)を含有することが好ましい。サブミクロンフィラー(a1)は、粒径範囲が0.05〜5.0μmにあることが好ましい。なかでも、平均粒子径が0.10μm以上0.50μm以下の範囲である無機粒子が好ましく、平均粒子径が0.10μm以上0.30μm以下の範囲である無機粒子がより好ましく、前記粒径範囲を有し、かつ平均粒子径が0.10〜0.30μmの範囲である無機粒子がさらに好ましい。この範囲の平均粒子径を持つ無機粒子の適用は、機械的強度と審美性(耐摩耗性、滑沢性)を適度に兼ね備えた歯科用補綴物を与える歯科用ミルブランクを与えることができる。ある実施形態の歯科用ミルブランクにおいて、無機粒子(a)中の前記サブミクロンフィラー(a1)の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましい。
また、機械的強度と審美性(耐摩耗性、滑沢性)を適度に兼ね備えた歯科用補綴物を与える歯科用ミルブランクを与えることができる観点から、サブミクロンフィラー(a1)において、球状のサブミクロンフィラーが、好ましい。球状とは、略球状まで含み、必ずしも完全真球である必要はない。一般には、走査型電子顕微鏡を用いて粒子の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子を任意に30個選び、それぞれの粒子について最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で徐した均斉度を求めた際に、その平均値(平均均斉度)が、0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、0.9以上であることがさらに好ましい。
サブミクロンフィラー(a1)としては、シリカ粒子、周期律表第2族、同4族、同12族、及び同13族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物粒子、又は、周期律表第2族、同4族、同12族、及び同13族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子と、ケイ素原子と、酸素原子とを含む複合酸化物粒子であることが好ましい。これらの具体例としては、非晶質シリカ、石英、クリストバライト、トリジマイト、アルミナ、二酸化チタン、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、シリカジルコニア、シリカチタニア、シリカチタニア酸化バリウム、シリカアルミナ、シリカチタニアナトリウムオキシド、シリカチタニアカリウムオキシド、シリカジルコニアナトリウムオキシド、シリカジルコニアカリウムオキシド、シリカバリウムオキシド、シリカストロンチウムオキシド等の粒子が挙げられる。球状粒子として、より好適には、シリカ粒子、周期律表第4族の金属の酸化物粒子、及び周期律表第4族の金属原子と、ケイ素原子と、酸素原子とを含む複合酸化物の粒子であり、X線造影性を有し、より耐摩耗性に優れた歯科用ミルブランクが得られることから、さらに好適には、シリカジルコニアの粒子である。サブミクロンフィラー(a1)は市販品を使用できる。また、サブミクロンフィラー(a1)の製造法としては、例えば、特開昭58−110414号公報に記載されている。また、球状のサブミクロンフィラーとして、ヒドロキシアパタイトを用いることもできる。
なお、前記サブミクロンフィラー(a1)は、比表面積が好ましくは5〜25m2/gである。本明細書において、比表面積は、比表面積BET法により、通法に従って測定することができる。
また別の好ましい実施形態の一つとしては、無機粒子(a)が、平均粒子径が1.0nm以上0.10μm未満の範囲であり、比表面積が30〜500m2/gの範囲である無機超微粒子(a2)を含有することが好ましい。なかでも、平均粒子径が5.0nm以上50nm以下の範囲であるものが好ましく、10nm以上40nm以下の範囲であるものがより好ましい。また、比表面積が40〜400m2/gの範囲であるものが好ましく、50〜200m2/gの範囲であるものがより好ましい。平均粒子径が5.0nm以上50nm以下の範囲であり、かつ比表面積が40〜400m2/gの範囲であるものが特に好ましく、平均粒子径が10nm以上40nm以下の範囲であり、かつ比表面積が50〜200m2/gの範囲であるものが最も好ましい。このような無機超微粒子(a2)は、いわゆるナノ粒子(以下、超微粒子フィラー(a2)ともいう。)といわれるが、透明性、研磨滑沢性により優れた歯科用ミルブランクを与えることができる。無機粒子(a)中の前記無機超微粒子(a2)の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましい。
かかるナノ粒子(a2)としては、歯科用コンポジットレジン等に使用される公知の無機超微粒子が何ら制限なく使用される。好ましくは、シリカ(例えば、火炎熱分解法で作製されるシリカ)、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物粒子、又はこれらからなる複合酸化物粒子(例えば、シリカ/アルミナ複合酸化物、シリカ/ジルコニア複合酸化物)、燐酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、フッ化イットリウム、フッ化イッテルビウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。好ましくは、火炎熱分解法で作製されるシリカ、アルミナ、チタニア、シリカ/アルミナ複合酸化物、シリカ/ジルコニア複合酸化物の粒子である。無機超微粒子(a2)は市販品を使用することができ、市販品としては、例えば、日本アエロジル株式会社製、商品名:アエロジル、アエロキサイドAlu C、アエロキサイドTiO2 P 25、アエロキサイドTiO2 P 25S、VP Zirconium Oxide 3−YSZ、VP Zirconium Oxide 3−YSZ PHが挙げられる。また、該無機超微粒子の形状は特に限定されず、適宜選択して使用することができる。
またさらに、前記超微粒子フィラー(a2)が凝集してできた凝集粒子(a3)も本発明において好適に用いることができる。なかでも、機械的強度に優れる歯科用ミルブランクを与えることができる点から、前記凝集粒子(a3)の平均粒子径は、1.0〜20μmの範囲であることが好ましく、2.0〜10μmの範囲であることがより好ましい。よって、本発明の別の好ましい実施形態の一つとして、無機粒子(a)が、平均粒子径が1.0nm以上0.10μm未満の範囲であり、比表面積が30〜500m2/gの範囲である無機超微粒子(a2)が凝集した凝集粒子であり、平均粒子径が1.0〜20μmである凝集粒子(a3)を含有することが好ましい。無機粒子(a)中の前記凝集粒子(a3)の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましい。
通常、市販の超微粒子フィラーは凝集体として存在しているが、水もしくは5質量%以下のヘキサメタ燐酸ナトリウム等の界面活性剤を添加した水(分散媒)300mLに無機酸化物粉体10mgを添加し、30分間、出力40W、周波数39KHzの超音波強度で分散処理するとメーカー表示の粒子径まで分散される程度の弱い凝集力しか有しない。しかしながら、本発明における凝集粒子(a3)は、かかる条件でもほとんど分散されない粒子同士が強固に凝集したものである。
凝集粒子(a3)を構成する超微粒子フィラー(a2)としては、平均粒子径が1.0nm以上0.10μm未満である限り、歯科用硬化性組成物等に使用される公知の超微粒子フィラーが何ら制限なく使用され、超微粒子フィラー(a2)として前記したものが挙げられる。好ましくは、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物粒子、又はこれらからなる複合酸化物粒子、燐酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、フッ化イットリウム、フッ化イッテルビウム等の粒子が挙げられ、これらの超微粒子フィラー(a2)は1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
市販の超微粒子フィラーから、本発明で用いる凝集粒子(a3)を作製する方法として、凝集力をさらに高めるために、そのフィラーが融解する直前の温度付近まで加熱して、接触したフィラー同士がわずかに融着する程度に加熱する方法が好適に用いられる。またこの場合、凝集粒子の形状をコントロールするため、加熱前に凝集した形態を作っておくことがある。例えば、フィラーを適当な容器に入れて加圧したり、一度溶剤に分散させた後、噴霧乾燥等の方法で溶剤を除去する方法が挙げられる。
また、超微粒子フィラーの凝集粒子(a3)の作製方法として好適な別の方法は、湿式法で作製されたシリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル、ジルコニアゾル等を用い、これを凍結乾燥や噴霧乾燥等の方法で乾燥し、必要に応じて加熱処理することで容易に、粒子同士が強固に凝集した凝集粒子を得ることができる。ゾルの具体例としては、株式会社日本触媒製シーホスター(登録商標)、日揮触媒化成株式会社製OSCAL(登録商標)、QUEEN TITANIC、日産化学工業株式会社製スノーテックス(登録商標)、アルミナゾル、セルナックス(登録商標)、ナノユース(登録商標)等が挙げられる。該超微粒子フィラーの形状は特に限定されず、適宜選択して使用することができる。
さらに、前記凝集粒子(a3)として、特開2008−115136号公報に記載されているような、シリカ系微粒子の表面を、少なくともジルコニウム、ケイ素及び酸素からなる複合酸化物で被覆してなる非晶質の無機酸化物微粒子(フィラー)も好適に用いることができる。
かかる凝集粒子(a3)を含む場合の本発明における歯科用ミルブランク中の無機粒子(a)の含有量としては、65〜95質量%の範囲が好ましく、70〜90質量%の範囲がより好ましく、75〜88質量%の範囲がさらに好ましい。
また別の好ましい実施形態の一つとしては、無機粒子(a)が、平均粒子径が1.0nm以上0.10μm未満の範囲であり、比表面積が30〜500m2/gの範囲内にある無機超微粒子(a4)と、平均粒子径が0.2〜2.0μmの範囲で、粒径範囲が0.10〜10μmである無機粒子(a5)とを併せて用いることである。このように、無機超微粒子(a4)と無機粒子(a5)の両者が配合(混合)された組成は、ハイブリッド型無機粒子(a6)と言われ、機械的強度により優れる歯科用ミルブランクを与えることができる。無機粒子(a)中の前記ハイブリッド型無機粒子(a6)の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましい。
ハイブリッド型における無機超微粒子(a4)は、前記無機超微粒子(a2)と同様のものが用いられる。一方、無機粒子(a5)は、平均粒子径が0.2〜2.0μmの範囲であるものが好ましく、0.4〜1.5μmの範囲であるものがより好ましい。また、無機粒子(a5)は、粒径範囲が0.1〜10μmの範囲であるものが好ましく、0.1〜5.0μmの範囲であるものがより好ましい。無機粒子(a5)としては、平均粒子径が0.2〜2.0μmの範囲であり、かつ粒径範囲が0.1〜10μmの範囲である無機粒子がさらに好ましく、平均粒子径が0.4〜1.5μmの範囲であり、かつ粒径範囲が0.1〜5.0μmの範囲である無機粒子が最も好ましい。無機粒子(a5)としては、かかる平均粒子径、粒径範囲を有するもので、かつ前記サブミクロンフィラー(a1)で例示されるような組成を有する無機粒子が用いられる。
ハイブリッド型における無機超微粒子(a4)と無機粒子(a5)の質量比(無機超微粒子(a4)/無機粒子(a5))は、1/1〜1/20が好ましく、1/3〜1/10がより好ましい。
無機超微粒子(a4)の具体例としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の無機酸化物微粒子、又はこれらからなる複合酸化物微粒子が好ましく、この中でも、商品名アエロジルに代表される高分散性シリカ、商品名アエロキサイドに代表される高分散性のアルミナ、チタニア、ジルコニアが特に好ましい。また、これと組み合わせる無機粒子(a5)としては、前出のような、バリウムボロシリケートガラス、ランタンガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、長石、ムライト、石英、パイレックス(登録商標)ガラス、シリカガラス等が好適に用いられる。
このようなハイブリッド型無機粒子(a6)を含む実施形態の歯科用ミルブランクにおいて、無機粒子(a)中のハイブリッド型無機粒子(a6)の含有量は、好ましくは80〜96質量%の範囲であり、より好ましくは85〜95質量%の範囲であり、さらに好ましくは88〜95質量%の範囲である。ここでいう、ハイブリッド型無機粒子(a6)の含有量とは、ハイブリッド型における無機超微粒子(a4)と無機粒子(a5)の合計含有量のことである。
本発明の歯科用ミルブランクの積層体の各層における無機粒子(a)の含有量は、58質量%以上98質量%以下が好ましく、60質量%以上97質量%以下がより好ましく、61質量%以上96質量%以下がさらに好ましく、62質量%以上95質量%以下が特に好ましい。歯科用ミルブランクにおける無機粒子(a)の含有量の測定方法は、後記する実施例のとおりである。
本発明に用いられる顔料(C)は、歯科用組成物に用いられている公知の顔料がなんら制限なく用いられる。かかる顔料としては、無機顔料及び/又は有機顔料のいずれでもよく、無機顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄等のクロム酸塩;紺青等のフェロシアン化物;銀朱、カドミウム黄、硫化亜鉛、アンチモン白、カドミウムレッド等の硫化物;硫酸バリウム、硫酸亜鉛、硫酸ストロンチウム等の硫酸塩;亜鉛華、酸化チタン、酸化鉄赤(ベンガラ)、酸化鉄黒、酸化鉄黄、酸化クロム等の酸化物;水酸化アルミニウム等の水酸化物;ケイ酸カルシウム、群青等のケイ酸塩;カーボンブラック、グラファイト等の炭素等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY等のニトロソ系顔料;ナフトールS、リソールファストイエロー2G等のニトロ系顔料;パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー等の不溶性アゾ系顔料;リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD等の難溶性アゾ系顔料;ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3B、ボルドー10B等の可溶性アゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー等のフタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性染料系顔料;ピーコックブルーレーキ、エオシンレーキ、キノリンイエローレーキ等の酸性染料系顔料等が挙げられる。これらの顔料は1種を単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせで用いることができ、歯科用ミルブランクの目的とする色調に応じて適宜選択される。これらの顔料の中でも、耐熱性或いは耐光性等に優れる無機顔料である酸化チタン、ベンガラ、酸化鉄黒及び酸化鉄黄等が、本発明の歯科用ミルブランクには特に好ましい。
顔料(C)の含有量は、所望の色調によって適宜調整されるため、特に限定されないが、顔料が配合される層中の無機粒子(a)100質量部に対して、好ましくは0.000001〜5質量部であり、より好ましくは0.00001〜1質量部である。
充填材(A)は、無機粒子(a)に顔料(C)を均一に混合分散して得られる。無機粒子(a)と顔料(C)を均一に混合分散させる方法としては、公知の粉末の混合分散方法がなんら制限なく用いられ、乾式法でも湿式法でもいずれの方法でもよい。しかし、それぞれの粒子をより均一に混合分散させるためには溶媒の存在下で無機粒子(a)と顔料(C)を分散させ、その後に溶剤を除去又は留去する方法が好ましい。分散は当該分野の公知の方法を採用して行うことができる。例えば、サンドミル、ビーズミル、アトライター、コロイドミル、ボールミル、超音波破砕機、ホモミキサー、ディゾルバー、ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。分散条件は、無機粒子(a)或いは顔料(C)の粒子径の大きさ或いは仕込量、溶媒の種類及び添加量、又は分散機の種類等により異なるが、それら粒子の分散状況に応じて分散時間、撹拌具及び回転数等の分散条件を適宜選択することができる。湿式分散に用いる溶媒としては、水及び/又は水と相溶する溶剤が好ましい。前記溶剤としては、アルコール類(例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール)、エーテル類、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)等が挙げられる。
また、各層の色調の調整方法としては、上記のような顔料分散による方法以外には、着色ガラスのように、無機粒子の材質自体に色を持ったものも用いられることがある。着色ガラスを無機粒子(a)として使用する場合であっても、透明性あるいは色度差を微調整するために、顔料(C)は必須である。このような無機粒子自体が着色されたものの例としては、市販のポーセレンパウダー、例えば、VM、VM7(商品名)等のVMシリーズ(VITA社製)、ノリタケスーパーポーセレンAAA(商品名、クラレノリタケデンタル株式会社製)、セラビアン(登録商標) ZR(商品名、クラレノリタケデンタル株式会社製)等を、必要に応じて粉砕して粒子径を調整した粉末があげられる。
さらに、天然歯のエナメル質と重複する部分(例えば、最上層、最上層に隣接する中間層又は前記中間層の最上層に隣接する側の一部)には滑沢性、摩耗性に優れる無機粒子、すなわち、前記サブミクロンフィラー(a1)又は超微粒子フィラー(a2)を配置し、天然歯の象牙質と重複する部分(例えば、最下層、最下層に隣接する中間層又は前記中間層の最下層に隣接する側の一部)には機械的強度に優れる無機粒子、すなわち、前記サブミクロンフィラー(a1)、超微粒子フィラーの凝集粒子(a3)、又はハイブリッド型無機粒子(a6)を配置することができる。かかる組み合わせは、臨床上、口腔内での耐久性に優れる、極めて有用な歯冠補綴物を与えることができる。
また、本発明においては、無機粒子(a)として、表面処理剤によって予め表面処理が施された無機粒子が用いられることが好ましい。表面処理を施すことで、得られる歯科用ミルブランクの機械的強度が向上する。また、無機粒子(a)を加圧成形し、得られた無機粒子(a)を含有するプレス成形体を、後述の重合性単量体に接触させて、凝集した無機粒子(a)間の間隙に該重合性単量体を侵入させる際に、無機粒子(a)表面と重合性単量体とのなじみが良くなり、凝集した無機粒子間の間隙に、重合性単量体が浸入しやすくなるというメリットもある。なお、ハイブリッド型無機粒子(a6)に表面処理を施す場合は、ハイブリッド型における無機超微粒子(a4)と無機粒子(a5)のそれぞれに表面処理を施した後、混合してハイブリッド型無機粒子(a6)としてもよく、該無機超微粒子(a4)と無機粒子(a5)を混合したものに表面処理を施してもよい。
前記表面処理剤としては、公知の表面処理剤を用いることができ、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物、及びリン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を少なくとも1個有する酸性基含有有機化合物を用いることができる。表面処理剤を2種以上使用する場合は、2種以上の表面処理剤の混合物の表面処理層としてもよいし、表面処理剤層が複数積層した複層構造の表面処理層としてもよい。また、表面処理方法としては、特に制限なく公知の方法を用いることができる。
有機ケイ素化合物としては、R1 nSiX4-nで表される化合物が挙げられる(式中、R1は炭素数1〜12の置換又は無置換の炭化水素基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、nは0〜3の整数であり、但し、R1及びXが複数ある場合にはそれぞれ、同一でも異なっていてもよい)。
具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等〕、ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等〕等が挙げられる。なお、本発明において「(メタ)アクリロイルオキシ」との表記は、メタクリロイルオキシとアクリロイルオキシの両者を包含する意味で用いられる。
この中でも、重合性単量体と共重合し得る官能基を有するカップリング剤、例えばω(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が好ましく用いられる。
有機チタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニルアセテート等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機酸塩キレート化合物等が挙げられる。
リン酸基を含有する酸性基含有有機化合物としては、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジヒドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジヒドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジヒドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジヒドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジヒドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジヒドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジヒドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジヒドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジヒドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジヒドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジヒドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジヒドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジヒドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ヒドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ヒドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ヒドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ヒドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ヒドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ヒドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジヒドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルヒドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルヒドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ヒドロジェンホスフェート、及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
また、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を有する酸性基含有有機化合物としては、例えば、国際公開2012/042911号に記載のものを好適に用いることができる。
上記の表面処理剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、無機粒子(a)と重合性単量体との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させるために、重合性単量体と共重合し得る官能基を有する酸性基含有有機化合物を用いることがより好ましい。
表面処理剤の使用量は、特に限定されず、例えば、無機粒子(a)100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましい。
本発明の重合体(B)は、重合性単量体(b)を重合硬化して得られる硬化物である。重合性単量体(b)について以下に説明する。各層の重合体(B)の構造単位を構成する重合性単量体(b)は、互いに同じであっても異なっていてもよい。本発明の重合性単量体(b)としては、歯科用コンポジットレジン等に使用される公知の重合性単量体が何ら制限無く用いられるが、一般には、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。ラジカル重合性単量体の具体例としては、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリルアミド誘導体;ビニルエステル類;ビニルエーテル類;モノ−N−ビニル誘導体;スチレン誘導体等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。なお、本発明において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。
(メタ)アクリレート系重合性単量体及び(メタ)アクリルアミド誘導体系の重合性単量体の例を以下に示す。
(I)一官能性(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド誘導体
メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライド、10−メルカプトデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(II)二官能性(メタ)アクリレート
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−〔3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−〔3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン(通称Bis−GMA)、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンチルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(III)三官能性以上の(メタ)アクリレート
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N'−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラ(メタ)アクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン等が挙げられる。
また、これらの(メタ)アクリル酸エステル系及び(メタ)アクリルアミド誘導体系の重合性単量体の他に、カチオン重合可能な、オキシラン化合物やオキセタン化合物も好適に用いられる。
前記重合性単量体(b)は、いずれも、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、本発明で用いられる重合性単量体(b)は液体状であることが好ましいが、常温で液体状である必要は必ずしも無く、さらに、固体状の重合性単量体であっても、液体状の、その他の重合性単量体と混合溶解させて使用することができる。
重合性単量体(b)の粘度範囲(25℃)は好ましくは10Pa・s以下であり、より好ましくは5Pa・s以下であり、さらに好ましくは2Pa・s以下であるが、2種以上の重合性単量体を混合溶解したり、或いはさらに溶剤希釈して用いる場合は、上記重合性単量体(b)の粘度は、個々の重合性単量体が、該粘度範囲である必要は無く、混合溶解して使用する組成物の状態において、該粘度範囲であることが好ましい。
次に、重合性単量体(b)を重合硬化して重合体(B)を得るために使用される重合開始剤について説明する。重合開始剤は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられ、加熱重合開始剤、光重合開始剤及び化学重合開始剤を用いることができる。重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
加熱重合開始剤としては、有機過酸化物類とアゾ化合物類等が挙げられる。
前記有機過酸化物類としては、ケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート等が挙げられる。
前記ケトンペルオキシドとしては、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド及びシクロヘキサノンペルオキシド等が挙げられる。
前記ヒドロペルオキシドとしては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド及び1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
前記ジアシルペルオキシドとしては、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド及びラウロイルペルオキシド等が挙げられる。
前記ジアルキルペルオキシドとしては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン等が挙げられる。
前記ペルオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン及び4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレリックアシッド−n−ブチルエステル等が挙げられる。
前記ペルオキシエステルとしては、α−クミルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルペルオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタラート、t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート及びt−ブチルペルオキシマレイックアシッド等が挙げられる。
前記ペルオキシジカーボネートとしては、ジ−3−メトキシペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペルオキシジカーボネート及びジアリルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。
これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルペルオキシドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルペルオキシドがより好ましく用いられる。
前記アゾ化合物類としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(イソブチラート)、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジヒドロクロライド等が挙げられる。
光重合開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α−ジケトン類、クマリン類等が挙げられる。
前記(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、アシルホスフィンオキシド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩;テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等のアンモニウム塩等)等が挙げられる。ビスアシルホスフィンオキシド類としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、及びこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩;テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等のアンモニウム塩等)等が挙げられる。
これら(ビス)アシルホスフィンオキシド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドナトリウム塩が好ましい。
前記α−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナントレンキノン、4,4'−オキシベンジル、アセナフテンキノン等が挙げられる。この中でも、カンファーキノンが好適である。
前記クマリン類としては、3,3'−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−チエノイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイルクマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3,5−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3−ベンゾイル−6−ブロモクマリン、3,3'−カルボニルビスクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3−カルボキシクマリン、3−カルボキシ−7−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−6−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−8−メトキシクマリン、3−アセチルベンゾ[f]クマリン、3−ベンゾイル−6−ニトロクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジメチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノ)クマリン、7−メトキシ−3(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−(4−ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3−(4−エトキシシンナモイル)−7−メトキシクマリン、3−(4−ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3−(4−ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3−[(3−ジメチルベンゾチアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3−[(1−メチルナフト[1,2−d]チアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3,3'−カルボニルビス(6−メトキシクマリン)、3,3'−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)、3,3'−カルボニルビス(7−ジメチルアミノクマリン)、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−アセチル−7−(ジメチルアミノ)クマリン、3,3'−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)、3,3'−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7'−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11オン、10−(2−ベンゾチアゾイル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン等の特開平9−3109号公報、特開平10−245525号公報に記載されている化合物が挙げられる。
上述のクマリン化合物の中でも、3,3'−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)及び3,3'−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)が好適である。
これらの光重合開始剤の中でも、歯科用硬化性組成物に広く使われている(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α−ジケトン類、及びクマリン類からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
また、かかる光重合開始剤は、必要に応じて、更に重合促進剤と組み合わせることで、光重合をより短時間で効率的に行うことができる場合がある。
光重合開始剤との組み合わせに好適な重合促進剤としては、主として第3級アミン、アルデヒド類、チオール基を有する化合物、スルフィン酸及び/又はその塩等が挙げられる。
前記第3級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルp−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジイソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸(2−メタクリロイルオキシ)エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸ブチル、N−メチルジエタノールアミン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート等が挙げられる。
前記アルデヒド類としては、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。チオール基を有する化合物としては、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、チオ安息香酸等が挙げられる。
前記スルフィン酸及びその塩としては、例えば、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられる。
化学重合開始剤としては、有機過酸化物及びアミン系;有機過酸化物、アミン及びスルフィン酸(又はその塩)系等のレドックス系重合開始剤が好ましく用いられる。レドックス系重合開始剤を使用する場合、酸化剤と還元剤が別々に包装された包装形態をとり、使用する直前に両者を混合する必要がある。レドックス系重合開始剤の酸化剤としては、有機過酸化物が挙げられる。レドックス系重合開始剤の酸化剤としての有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、前記加熱重合開始剤で例示した有機過酸化物が挙げられる。
これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルペルオキシドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルペルオキシドがより好ましく用いられる。
レドックス系重合開始剤の還元剤としては、通常、芳香環に電子吸引性基を有しない第3級芳香族アミンが用いられる。芳香環に電子吸引性基を有しない第3級芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジイソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリンが挙げられる。
化学重合開始剤は、必要に応じて、更に重合促進剤を組み合わせて使用してもよい。化学重合開始剤の重合促進剤は、一般工業界で使用されている重合促進剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合促進剤が好ましく用いられる。また、重合促進剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上適宜組み合わせて使用してもよい。具体的には、アミン類、スルフィン酸及びその塩、銅化合物、スズ化合物等が挙げられる。
前記アミン類は、脂肪族アミン及び芳香環に電子吸引性基を有する芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミン等が挙げられる。これらの中でも、組成物の硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、その中でもN−メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましく用いられる。
また、前記芳香環に電子吸引性基を有する第3級芳香族アミンとしては、例えば、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ安息香酸)n−ブトキシエチル及び4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
前記スルフィン酸及びその塩としては、上記した光重合開始剤の重合促進剤として例示したものが挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが好ましい。
前記銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅等が好適に用いられる。
前記スズ化合物としては、例えば、ジ−n−ブチル錫ジマレエート、ジ−n−オクチル錫ジマレエート、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジラウレート等が挙げられる。特に好適なスズ化合物は、ジ−n−オクチル錫ジラウレート及びジ−n−ブチル錫ジラウレートである。
これらのなかでも、光重合開始剤と加熱重合開始剤を併用することが好ましく、(ビス)アシルホスフィンオキシド類とジアシルペルオキシドの組合せがより好ましい。
重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点から、重合性単量体100質量部に対して、0.001〜30質量部が好ましい。重合開始剤の含有量が重合性単量体100質量部に対して、0.001質量部以上の場合、重合が十分に進行して機械的強度の低下を招くおそれがなく、より好適には0.05質量部以上であり、さらに好適には0.1質量部以上である。一方、重合開始剤の含有量が、重合性単量体100質量部に対して、30質量部以下であると、重合開始剤自体の重合性能が低い場合にでも十分な機械的強度が得られ、さらには組成物からの析出を招くおそれがなく、より好適には20質量部以下である。
本発明の歯科用ミルブランクの好適な実施形態(W1)としては、例えば、積層体から構成される歯科用ミルブランクであって、前記積層体が、最上層、少なくとも1層の中間層、最下層の少なくとも3層を含み、前記積層体を構成する各層が、充填材(A)及び重合体(B)を含み、各層の前記充填材(A)が、少なくとも1種の無機粒子(a)及び少なくとも1種の顔料(C)を含み、前記最上層と前記最下層の色度差ΔE*Tが5.5以上14.0以下であり、前記最上層と前記最下層の透明性差ΔΔL*Tが5.5以上14.0以下であり、全ての隣接する層の色度差ΔE*が1.2以上5.0以下であり、全ての隣接する層の透明性差ΔΔL*が1.2以上4.9以下であり、最上層の透明性ΔL*Hが13.5以上25.0以下であり、最下層の透明性ΔL*Lが7.0以上13.0以下である、歯科用ミルブランクが挙げられる。
また、他の好適な実施形態(W2)としては、例えば、積層体から構成される歯科用ミルブランクであって、前記積層体が、最上層、少なくとも1層の中間層、最下層の少なくとも3層を含み、前記積層体を構成する各層が、充填材(A)及び重合体(B)を含み、各層の前記充填材(A)が、少なくとも1種の無機粒子(a)及び少なくとも1種の顔料(C)を含み、前記最上層と前記最下層の色度差ΔE*Tが5.5以上14.0以下であり、前記最上層と前記最下層の透明性差ΔΔL*Tが5.5以上14.0以下であり、全ての隣接する層の色度差ΔE*が1.2以上5.0以下であり、全ての隣接する層の透明性差ΔΔL*が1.2以上4.9以下であり、最上層の透明性ΔL*Hが14.0以上24.0以下であり、最下層の透明性ΔL*Lが7.5以上12.5以下である、歯科用ミルブランクが挙げられる。
さらに、他の好適な実施形態(W3)としては、例えば、積層体から構成される歯科用ミルブランクであって、前記積層体が、最上層、少なくとも1層の中間層、最下層の少なくとも3層を含み、前記積層体を構成する各層が、充填材(A)及び重合体(B)を含み、各層の前記充填材(A)が、少なくとも1種の無機粒子(a)及び少なくとも1種の顔料(C)を含み、前記最上層と前記最下層の色度差ΔE*Tが5.5以上14.0以下であり、前記最上層と前記最下層の透明性差ΔΔL*Tが5.5以上14.0以下であり、全ての隣接する層の色度差ΔE*が1.2以上5.0以下であり、全ての隣接する層の透明性差ΔΔL*が1.2以上4.9以下であり、最上層の透明性ΔL*Hが14.0以上24.0以下であり、最下層の透明性ΔL*Lが7.5以上12.5以下であり、下記式[I]及び[II]
ΔL*L<ΔL*M(1) [I]
ΔL*M(p)<ΔL*H [II]
(式中、記号は上記と同一意味を有する。)を満たす、歯科用ミルブランクが挙げられる。上記した好適な実施形態(W1)〜(W3)のいずれにおいても、上述の説明に基づいて、各特性の値を適宜変更でき、また、構成(例えば、顔料(C)の種類、積層体の層の厚さ、重合体(B)の構造単位を構成する重合性単量体(b)等)について、追加、削除等の変更をすることができる。
本発明の歯科用ミルブランクの製造方法は、充填材(A)及び重合体(B)を含有し、所定の透明性差及び色度差を有する歯科用ミルブランクが得られれば特に何ら制限なく、例えば、(1)色調が異なる3種以上のペースト状の歯科用重合性組成物を積層する工程、及び重合硬化させる工程を有し、前記ペースト状の重合性組成物が、充填材(A)と重合体(B)の構造単位を構成する重合性単量体(b)とを含有し、各ペースト状の重合性組成物の前記充填材(A)が少なくとも1種の無機粒子(a)及び少なくとも1種の顔料(C)を含有する方法;(2)色調が異なる3種以上の充填材(A)を所望の金型に充填し3層以上に積層してプレス成形し、プレス成形体を得る工程、前記工程で得られたプレス成形体に対し、重合性単量体(b)を含有する重合性単量体含有組成物を浸透させ、重合硬化させる工程を有する方法;さらに、(3)色調が異なる3種以上の充填材(A)を3層以上に積層してプレス成形し、プレス成形体を得る工程、前記工程で得られたプレス成形体を焼成し、多孔質体を作製する工程、前記工程で得られた多孔質体に、表面処理剤で表面処理を行う工程、表面処理された多孔質体に重合性単量体(b)を含有する重合性単量体含有組成物を浸透させ、重合硬化させる工程を有する方法等が挙げられる。
前記(1)の歯科用ミルブランクの製造方法としては、例えば、充填材(A)及び重合性単量体(b)を含有する、色調が異なる3種以上のペースト状の歯科用重合性組成物を、所望の形状を有する型に充填し、3層以上に積層及び成形して成形体を得る工程(以下、積層工程ともいう)、及び得られた成形体を重合硬化する工程を有する方法等が挙げられる。
ペースト状の歯科用重合性組成物は、充填材(A)、重合性単量体(b)及び前記した重合開始剤を含む。ペースト状の歯科用重合性組成物に含まれる無機粒子(a)の含有量は、使用する無機粒子(a)の粒子径或いは形状により変動するが、通常は50質量%以上であり、好ましくは55〜75質量%であり、より好ましくは60〜70質量%である。無機粒子(a)の含有量が85質量%以上を超えると、ペースト状の歯科用重合性組成物の粘度が急激に上がり、重合体(B)に気泡が混入しやすくなり適当ではない。前記したペースト状の歯科用重合性組成物に含まれる無機粒子(a)含有量は、実質的に平均粒子径0.10μm未満の無機粒子のみ(例えば、無機超微粒子(a2)のみ)を無機粒子(a)として用いた場合においても、同様である。なお、本明細書において、実質的に平均粒子径0.10μm未満の無機粒子のみを無機粒子(a)として用いるとは、ペースト状の歯科用重合性組成物に含まれる平均粒子径0.10μm以上の無機粒子の含有量が3.0質量%未満であり、1.0質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましい。充填材(A)に含まれる顔料(C)の含有量は、上述したとおりである。
ペースト状の歯科用重合性組成物には、前記成分以外に、目的に応じて、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、着色剤、抗菌剤、X線造影剤、増粘剤、蛍光剤等をさらに添加することも可能である。
色調が異なる3種以上のペースト状の歯科用重合性組成物の積層工程としては、公知の方法が制限なく用いられる。例えば、各ペースト状の歯科用重合性組成物を所望の大きさの金型もしくは樹脂製の型に充填し、上パンチを下パンチにて加圧し、成形体を得る方法が簡便である。この時のプレス圧は、目的とする成形体のサイズ或いはペーストの粘度により適宜適当な値を設定でき、各層の積層時におけるプレス圧は異なっても同じでもよいが、通常は、1.0MPa以上である。プレス圧が低いと、無機粒子(a)が緻密に充填されず、その結果、該成形体から得られた歯科用補綴物の機械的強度、耐摩耗性、表面滑沢性が不十分となることがある。この観点からはプレス圧は高いほど好ましいが、プレス成形体のサイズ或いは設備的要因等の生産性の面を考慮すると、一軸プレスでのプレス圧は、通常は200MPa以下であり、好ましくは20〜100MPaの範囲であり、より好ましくは25〜80MPaの範囲である。
また、色調が異なる3種以上のペースト状の歯科用重合性組成物の積層工程としては、より詳細には、以下の方法が挙げられる。例えば、下パンチを嵌めた一軸プレス用の金型(ダイ)に、第1ペースト(ペースト状の歯科用重合性組成物)を充填して、上パンチを該金型にセットして該第1ペーストをプレスする。次いで、上パンチを外し、プレスされた第1ペーストの上に、第2ペースト(第1ペーストと色調が異なるペースト状の歯科用重合性組成物)を充填して、再び、上パンチをセットして、該第2ペーストをプレスする。さらに、上パンチを外し、プレスされた第2ペーストの上に、第3ペースト(第1ペースト及び第2ペーストと色調が異なるペースト状の歯科用重合性組成物)を充填して、再び、上パンチをセットして、該第3ペーストをプレスし、成形体を得る方法が挙げられる。同様にして、さらに、第3ペーストの上に第4ペーストを積層し、4層の成形体を得てもよい。成形体を得た後、金型を固定し、前記成形体を重合硬化させることで、層状に重なった複数色を有する歯科用ミルブランクを得ることができる。
さらに、3種以上のペースト状の歯科用重合性組成物の積層工程の他の方法として、異なる色の3種以上のペースト状の歯科用重合性組成物を押し出し成形してもよい。例えば、歯科用ミルブランクを構成する積層体が3層から構成される場合、3つの容器内に重合前の重合性組成物が収容されており、それぞれの容器から重合性組成物を押し出して成形体を得たのち、すべての成形体を積層して硬化前の積層体を形成する方法が挙げられる。
さらに、3種以上のペースト状の歯科用重合性組成物の積層工程の他の方法として、樹脂製の型に異なる色のペーストを充填して成形されてもよい。例えば、歯科用ミルブランクを構成する積層体が3層から構成される場合、上部が解放されている樹脂製の型に1層目のペースト状の歯科用重合性組成物を充填し、上部から解放部と同等の面積を持つパンチにて所定の圧力(通常、1.0MPa以上)にて押さえ、その表面を平滑にする。さらにこれを2回繰り返すことにより、3層構造の複数色ペースト成形体を得ることができる。
また、前記(1)の歯科用ミルブランクの製造方法の他の実施形態としては、例えば、各層毎に積層工程と重合硬化工程を行い、目的とする層(少なくとも3層)の数だけ繰り返す方法が挙げられる。具体的には、まず、ペースト(例えば、第1ペースト)を金型に充填しプレスし、成形体(例えば、第1成形体)を得る。次いで、次のペースト(例えば、第2ペースト)を金型に充填する前に前記成形体(例えば、第1成形体)を重合硬化させて硬化物とし、次のペースト(例えば、第2ペースト)を前記硬化物の上に充填してプレスし、成形体(例えば、第2成形体)を得る。さらに、次のペースト(例えば、第3ペースト)を金型に充填する前に前記成形体(例えば、第2成形体)を重合硬化させて硬化物とし、次のペースト(例えば、第3ペースト)を前記硬化物の上に充填してプレスし、成形体(例えば、第3成形体)を得て、前記成形体(例えば、第3成形体)を重合硬化させる方法が挙げられる。
さらに、前記(2)の歯科用ミルブランクの製造方法としては、色調が異なる3種以上の充填材(A)を積層してプレス成形してプレス成形体を得る工程(以下、プレス成形工程ともいう。)、前記プレス成形体に、重合性単量体(b)を含有する重合性単量体含有組成物を浸透させ、重合硬化させる工程を含む方法が挙げられる。この方法としては、公知の方法が制限なく用いられる。例えば、プレス成形体を得る工程としては、充填材(A)を所望の大きさのプレス用金型(ダイ)に充填し、上パンチと下パンチを用いて一軸プレスにより加圧する方法が簡便である。このときのプレス圧は、目的とする成形体のサイズ、無機粒子(a)の種類或いは粒子径により適宜最適な値を設定できるが、通常は、10MPa以上である。プレス圧が低いと、無機粒子(a)が緻密に充填されず、無機粒子間の隙間が十分に狭くならないため、得られた成形体において、単位体積あたりの無機粒子の含有量を上げることができない。その結果、該成形体から得られた歯科用補綴物の機械的強度、耐摩耗性、表面滑沢性が不十分となることがある。この観点からはプレス圧は高いほど好ましいが、プレス成形体のサイズ或いは設備的要因等の生産性の面を考慮すると、一軸プレスでのプレス圧は、通常は200MPa以下であり、好ましくは20〜100MPaの範囲であり、より好ましくは25〜80MPaの範囲である。プレス時間は、プレス圧に応じて適宜設定できるが、通常、1〜120分間である。
前記重合性単量体含有組成物は、重合性単量体(b)を含有するのであれば特に限定なく、調製することができる。例えば、重合性単量体(b)に前記した重合開始剤を配合して、これらを混合することにより調製することができる。
前記重合性単量体含有組成物には、前記成分以外に、目的に応じて、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、着色剤、抗菌剤、X線造影剤、増粘剤、蛍光剤等をさらに添加することも可能である。
前記(2)又は(3)の製造方法におけるプレス成形工程としては、冷間等方圧加圧(CIP)工程;又はCIP工程を含む方法が好ましい。具体的には、上記の一軸プレスを行うこと無く、CIP工程によりプレス成形を行う方法;又は、上記の一軸プレスでのプレス成形で成形体を得た後、該成形体に対してさらに、CIP成形を施すことが好適である。CIP成形は、通常、一軸プレスよりも高いプレス圧をかけることができ、また、成形体に対して3次元方向から均等に圧力をかけられるため、CIP成形を行うことで、成形体内部の好ましくない微小な空隙、無機粒子(a)の凝集状態のむらが解消されたり、また無機粒子(a)の圧縮密度がさらに上がって、無機粒子(a)の含有量が極めて高い歯科用ミルブランクが得られる。金型で一軸プレスする工程を経ずに、充填材(A)を弾性に富む容器(例えばシリコンゴム製容器、ポリイソプレンゴム製容器等)に充填して、これをそのままCIP処理することにより、プレス成形体を得ることもできる。CIP成形の際の加圧力も高い方が好ましい。CIP装置としては、1000MPa程度に加圧可能なCIP装置を用いることができる。例えば、WET CIP装置(株式会社神戸製鋼所製)、DRY CIP装置(株式会社神戸製鋼所製)、ピストン式CIP装置(株式会社神戸製鋼所製)等が挙げられる。生産性及び製造コストも考慮すると、例えば、30〜500MPaの範囲であり、CIP成形の際の加圧力も高い方が好ましい。生産性を重視すると、例えば、50〜500MPaの範囲であり、好ましくは100〜300MPaの範囲である。CIP成形時間は、プレス圧に応じて適宜設定できるが、通常、1〜60分間である。
また、前記(2)又は(3)の製造方法のプレス成形工程としては、以下の方法が挙げられる。例えば、歯科用ミルブランクを構成する積層体が3層から構成される場合、下パンチを嵌めた一軸プレス用の金型(ダイ)に、第1充填材(A)を充填して、上パンチを該金型にセットして該第1充填材(A)をプレスし、第1プレス成形体を得る。次いで、上パンチを外し、第1プレス成形体の上に、第1充填材(A)と色調が異なる第2充填材(A)を充填して、再び、上パンチをセットして、該第2充填材(A)をプレスし、2層構造の第2プレス成形体を得る。さらに、上パンチを外し、第2プレス成形体の上に、第1充填材(A)及び第2充填材(A)と色調が異なる第3充填材(A)を充填して、再び、上パンチをセットして、該第3充填材(A)をプレスし、プレス成形体を得る方法が挙げられる。プレス成形後、金型からプレス成形体を取り出すと、第1充填材(A)、第2充填材(A)及び第3充填材(A)が層状に重なったプレス成形体を得られる。なお、前記プレス時のプレス圧は、用いる無機粒子(a)の種類或いは量によって、適宜最適な値を設定でき、各層におけるプレス圧は異なっても同じでもよい。また、歯科用ミルブランクを構成する積層体が3層から構成される場合、第1充填材(A)を金型に充填した後、表面を平らにならし、プレスを行わないで、その上に第2充填材(A)を充填し、表面を平らにならし、さらに第3充填材(A)を充填し、第1充填材(A)と第2充填材(A)と第3充填材(A)を一緒にプレスすることもできる。目的とする積層体の層の数に応じて、無機粒子の種類を増やすことができるため、4種の無機粒子を用いて、上記と同様の方法で4層の積層体を得ることができる。さらに、積層体を構成する各層(例えば、最上層)に、2種以上の充填材(A)を含んでいてもよい。
かくして、充填材(A)から構成される層を3層以上備え、各層の充填材(A)の色調が異なるプレス成形体(以下、充填材(A)成形体又は充填材(A)のプレス成形体ともいう。)が得られるが、該成形体は後述の各形状の歯科用ミルブランクに加工可能なことから、そのサイズは特に限定されない。なお、本発明における充填材(A)のプレス成形体としては、充填材(A)を一度にプレス成形したものをそのまま成形体としても、別々に成形したものを積層後、プレス成形して一つの成形体としてもよく、別途成形した成形体の上に、新たに充填材(A)をプレス成形することで一つの成形体としてもよい。
このようにして得られた、充填材(A)のプレス成形体は、重合性単量体含有組成物と接触させることで、粉末一次粒子の隙間に重合性単量体(b)が侵入し、その結果、重合性単量体(b)に無機粒子(a)が極めて密に分散した構造の成形体が得られることになる。
このようにして得られた歯科用ミルブランクにおける無機粒子(a)の含有量は、使用する無機粒子の粒子径や形状により変動するが、通常は60質量%以上で配合され、好ましくは65〜96質量%であり、より好ましくは70〜96質量%であり、さらに好ましくは80〜95質量%であり、特に好ましくは85〜95質量%である。前記含有量は、実質的に平均粒子径0.10μm未満の無機粒子のみ(例えば、無機超微粒子(a2)のみ)を無機粒子(a)として用いた場合においても、同様である。なお、ここでいう無機粒子(a)含有量は、重合性単量体含有組成物の硬化物の強熱残分により測定された値である。
前記硬化物の強熱残分の測定は、例えば、該硬化物を坩堝に入れて電気炉で575℃の温度で所定の時間加熱することで、有機樹脂成分を焼却し、残った無機粒子(a)の質量を測定することで算出することができる。この方法では、表面処理が施された無機粒子(a)を用いて得た歯科用ミルブランクの場合、施された表面処理剤は焼却された有機樹脂成分として算出される。
次いで、このようにして得られた充填材(A)のプレス成形体に、重合性単量体含有組成物を接触させる。
重合性単量体含有組成物と充填材(A)のプレス成形体の接触方法は、重合性単量体含有組成物がプレス成形体中の無機粒子(a)の間隙に侵入できるのであれば、特に限定はない。もっとも簡便で好ましい方法は、重合性単量体含有組成物の中に、該充填材(A)のプレス成形体を浸漬する方法である。浸漬することによって、毛細管現象により、重合性単量体(b)が徐々にプレス成形体の内部に浸透することができる。前記浸漬を減圧雰囲気下に行うことは、液体状の重合性単量体(b)の浸透を促すことになるため、好ましい。また、減圧操作及び減圧後に常圧に戻す操作を複数回繰り返すことは、重合性単量体(b)を成形体内部に完全に浸透させる工程の時間短縮のためには有効である。このときの減圧度としては、重合性単量体(b)の粘度或いは無機粒子(a)の粒子径により適宜選択されるが、通常は100ヘクトパスカル以下に減圧し、好ましくは50〜0.001ヘクトパスカルまで減圧し、より好ましくは20〜0.1ヘクトパスカルまで減圧する。
さらに、浸漬の方法としては、例えば、充填材(A)のプレス成形体を重合性単量体含有組成物の入った真空パック用の袋に入れ、真空パック装置にて所定圧力及び所定時間にて処理を行い、該袋を減圧環境下にて密封する方法が挙げられる。この方法により、等方的に重合性単量体含有組成物が充填材(A)のプレス成形体に接触し、浸透速度を上げることができ、工程に要する時間を短縮することができる。前記減圧環境の減圧度としては、通常は100ヘクトパスカル以下に減圧し、好ましくは50〜0.001ヘクトパスカルまで減圧し、より好ましくは20〜0.1ヘクトパスカルまで減圧する。また、真空パック時間は、30秒以上〜20分以下が好ましく、1分以上10分以下がより好ましい。
また、浸漬以外の方法としては、金型でプレス成形した状態で、そのまま、圧力をかけて重合性単量体含有組成物を金型中の充填材(A)のプレス成形体に送り込む方法も考えられる。この方法をとると、重合硬化の工程も該金型中でそのまま引き続いて行うことが可能である。
また、重合性単量体含有組成物の粘性は浸透速度に影響を与え、通常は粘度が低いほど浸透が早い。粘度範囲(25℃)は10Pa・s以下が好ましく、5Pa・s以下がより好ましく、2Pa・s以下がさらに好ましい。一方で、重合性単量体(b)の選択は粘度以外にも、機械的強度又は屈折率も加味して行う必要がある。また、重合性単量体含有組成物を溶剤で希釈して用いて、後の減圧操作で溶剤を留去する方法をとることもある。また、温度を上げることで重合性単量体含有組成物の粘度を下げて、浸透を早めることもできる。
重合性単量体含有組成物を充填材(A)のプレス成形体に接触させる時間は、無機粒子(a)の種類、成形体のサイズ、単量体の浸透程度等によって適宜、調整することができる。例えば、浸漬によって接触させる場合は、通常1〜120時間である。減圧下での浸漬の場合、接触させる時間は、通常0.5〜12時間である。重合性単量体(b)を充填材(A)のプレス成形体内部に隙間無く浸透させる、さらに好ましい方法として、見かけ上、重合性単量体(b)が含浸した充填材(A)のプレス成形体を、一定時間加圧条件に置く方法がある。即ち、重合性単量体(b)が含浸した充填材(A)のプレス成形体を、重合性単量体(b)と共に、CIP装置等を用いて加圧条件下に置くことが好ましい。かかる加圧条件としては、20MPa以上が好ましく、50MPa以上がより好ましく、100MPa以上がさらに好ましい。また、加圧を解除して常圧に戻し、再び加圧するという、加圧と常圧を繰り返して行うとさらに好ましい。
さらに、前記(3)の歯科用ミルブランクの製造方法としては、色調が異なる3種以上の無機粒子を含む充填材(A)をプレス成形し、プレス成形体を得る工程、前記工程で得られたプレス成形体を焼成し、多孔質体を作製する工程、前記工程で得られた多孔質体に重合性単量体含有組成物を浸透させ、重合硬化させる工程を含む方法が挙げられる。この方法としては、公知の方法が制限なく用いられる。プレス成形体を得る工程としては、前記(2)で説明した方法と同様の方法が挙げられる。
次いで、得られたプレス成形体を、焼成して多孔質体を作製する。その焼成温度は、約1000〜1300℃が好ましく、1050〜1200℃がより好ましい。また、その焼成時間は、1〜8時間が好ましく、2〜4時間がより好ましい。これにより、プレス成型体は、無機充填材どうしが一部結合し、多孔質体となり、網目構造をとる。多孔質体の孔(直径)の大きさは、使用する無機粒子の平均粒子径、種類及び量、並びに焼成条件等によって適宜変更でき、限定されないが、例えば、1.0〜20μm程度であってもよい。
次いで、重合性単量体含有組成物との親和性を高めるために、得られた多孔質体に表面処理剤で表面処理を行う。その表面処理剤としては、無機粒子(a)の表面処理剤と同様のものが挙げられ、有機ケイ素化合物が好ましい。表面処理の方法としては、例えば、多孔質体を、エタノール100質量部、水5質量部、酢酸0.2質量部、及びγ―メタクリロイルオキシプロピルメトキシシラン1質量部を混合した溶液に1時間浸漬し、その後取り出し、取り出した多孔質体を真空条件下にて、90℃で3時間乾燥させる方法が挙げられる。
次に、表面処理された多孔質体(以下、表面処理多孔質体という。)を、重合性単量体含有組成物と接触させる。
重合性単量体含有組成物と表面処理多孔質体の接触方法は、重合性単量体含有組成物が表面処理多孔質体中の空隙に侵入できるのであれば、特に限定はないが、最も簡便で好ましい方法は、重合性単量体含有組成物の中に、該表面処理多孔質体を浸漬することである。浸漬することによって、毛細管現象により、重合性単量体(b)が徐々に表面処理多孔質体の内部に浸透することができる。前記浸漬を減圧雰囲気下に行うことは、液体状の重合性単量体(b)の浸透を促すことになるため、好ましい。また、減圧操作及び減圧後に常圧に戻す操作を複数回繰り返すことは、重合性単量体(b)を表面処理多孔質体内部に完全に浸透させる工程の時間短縮のためには有効である。このときの減圧度としては、重合性単量体(b)の粘度或いは無機粒子(a)の粒子径により適宜選択されるが、通常は100ヘクトパスカル以下に減圧し、好ましくは50〜0.001ヘクトパスカルまで減圧し、より好ましくは20〜0.1ヘクトパスカルまで減圧する。
さらに、浸漬の方法としては、表面処理多孔質体を重合性単量体含有組成物の入った真空パック用の袋に入れ、真空パック装置にて所定圧力及び所定時間にて処理を行い、該袋を減圧環境下にて密封する方法が挙げられる。この方法により、等方的に重合性単量体含有組成物が表面処理多孔質体に接触し、浸透速度を上げることができ、工程に要する時間を短縮することができる。前記減圧環境の減圧度としては、通常は100ヘクトパスカル以下に減圧し、好ましくは50〜0.001ヘクトパスカルまで減圧し、より好ましくは20〜0.1ヘクトパスカルまで減圧する。また、真空パック時間は、30秒以上〜20分以下が好ましく、より好ましくは1分以上10分以下である。
次に、これらの方法によって得られた重合性単量体(b)を含む表面処理多孔質体を重合する。
前記した本発明の歯科用ミルブランクの製造方法のすべてにおいて、重合硬化は、加熱重合及び/又は光重合及び/又は化学重合によって行うことができ、その条件は公知の方法に従って行うことができる。なかでも、本発明では重合性単量体(b)の重合率を高めて、より機械的強度の高い歯科用ミルブランクを得る観点から、加熱重合を行うことが好ましい。
また、重合硬化の際、重合性単量体(b)を含む、成形体、ペーストが重なった成形体及び表面処理多孔質体を、窒素ガス等の不活性雰囲気下或いは減圧環境下で重合させることで、重合率を高め、機械的強度をより高めることができる。また、重合性単量体(b)が含浸された成形体、ペーストが重なった成形体及び表面処理多孔質体を真空パック等に詰めて真空状態にして重合操作を行うことは、生産性の面から好ましい。この場合、オートクレーブ等を用いて、加圧加熱重合することもできる。更には、これらの成形体、ペーストが重なった成形体及び表面処理多孔質体を加圧した状態のまま、重合硬化を行うこともできる。このような加圧加熱重合は、本発明においてより好ましい重合硬化方法の一つである。即ち、重合性単量体(b)を含む充填材(A)成形体及び表面処理多孔質体を、重合性単量体(b)と共に加圧条件下に置くことで、成形体及び表面処理多孔質体が有する微小な隙間まで重合性単量体(b)が入り込むことができたり、微小な気泡の残存を解消することができる。加圧条件下で重合させることで、機械的強度をさらに高めることができる。かかる条件としては、20MPa以上が好ましく、50MPa以上がより好ましく、100MPa以上がさらに好ましい。基本的には圧力は高いほど好ましいが、実際には用いる加圧装置の能力に依存する。このような加圧装置としては、オートクレーブ、CIP装置、HIP(熱間等方圧加圧)装置が用いられる。CIP装置は、上述のものを使用できる。加圧条件下で、温度を上げることで重合させる加熱重合の他、光重合或いは化学重合で重合させることも可能である。より好ましい加圧重合方法として、重合性単量体(b)を含浸した成形体及び表面処理多孔質体を、ビニール袋、ゴムチューブ等に真空パックで密封し、CIPを用いて加圧しながら重合する方法がある。この時の圧力は高いほど好ましく、50MPa以上が好ましく、200MPa以上がより好ましい。密封した成形体及び表面処理多孔質体をCIP処理室に入れ、所定の圧力をかけた後に、処理室を加温して、高圧下で重合を開始させる方法は、機械的強度を高める上で、特に好ましい重合方法である。例えば、室温でCIPで圧力をかけた後、30分から24時間程度の時間をかけて、室温から温度を上げて、到達温度は80℃〜180℃が好ましい。重合時間と到達温度は、重合性単量体(b)に配合される重合開始剤の分解温度を考慮して設定される。
さらに、重合硬化後に好ましくは80〜150℃で10〜120分間加熱処理することによって、硬化体内部に生じた応力歪を緩和し、歯科用補綴物切削加工中又は臨床使用中に生じる歯科用補綴物の破損を抑制することができる。
また、前記製造方法(2)の変形例として、色調が異なる3種以上の充填材(A)を層状にプレス成形してなるプレス成形体と、重合性単量体含有組成物を接触させる工程、及び重合硬化させる工程を有し、前記充填材(A)が少なくとも1種の無機粒子(a)及び少なくとも1種の顔料(C)を含有し、前記重合性単量体含有組成物が重合体(B)の構造単位を構成する重合性単量体(b)を含有する方法が挙げられる。前記製造方法(3)の変形例として、色調が異なる3種以上の充填材(A)を層状にプレス成形してなるプレス成形体を焼成し、多孔質体を作製する工程、前記工程で得られた多孔質体に、表面処理剤で表面処理を行う工程、表面処理された多孔質体に重合性単量体(b)を含有する重合性単量体含有組成物を浸透させ、重合硬化させる工程を有する方法等が挙げられる。これらの変形例における各工程については、前記製造方法(2)、(3)と同様である。
これらの製造方法により、歯科用ミルブランクが得られる。得られた歯科用ミルブランクは、必要に応じて所望の大きさに切断、切削、表面研磨が施してもよい。
本発明の歯科用ミルブランクのサイズは、市販の歯科用CAD/CAMシステムにセットできるように、適当な大きさに加工されることが好ましい。好ましいサイズとしては、例えば、一歯欠損ブリッジの作製に適当な40mm×20mm×15mmの角柱状;インレー又はオンレーの作製に適当な17mm×10×10mmの角柱状;フルクラウンの作製に適当な14mm×18mm×20mmの角柱状;ロングスパンブリッジ又は義歯床の作製に適当な、直径100mm、厚さが10〜28mmの円盤状等が挙げられるが、これらのサイズに限定されるものではない。
本発明の歯科用ミルブランクを、切削加工することによって、各層の境界部分が色調及び透明性について移行的であり、境界部分を明瞭に識別可能ではなく、かつ天然歯の色調分布を再現したシェードガイドにも適合する色調を有するほど、高い審美性を有する歯科用補綴物を提供することができる。本発明の歯科用ミルブランクは、高い審美性を有するため、歯科用補綴物として、臼歯(第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯、第二大臼歯、第三大臼歯)用のみならず、前歯(中切歯、側切歯、犬歯)としても有用である。
本発明の歯科用ミルブランクから製造される歯科用補綴物としては、例えば、インレー、オンレー、ベニア、クラウン、ブリッジ等の歯冠修復物の他、支台歯、歯科用ポスト、義歯、義歯床、インプラント部材(フィクスチャー、アバットメント)等が挙げられる。また、切削加工は、例えば、市販の歯科用CAD/CAMシステムを用いて行うことが好ましく、かかるCAD/CAMシステムとしては、シロナデンタルシステムズ株式会社のCERECシステム、クラレノリタケデンタル株式会社のカタナシステムが挙げられる。
また、本発明で得られる歯科用ミルブランクは、歯科用途以外の用途にも用いることができ、例えば、一般的な汎用の複合材料部材、例えば、建築用、電化製品、家庭用品、玩具類の部品としても用いることができる。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
〔重合性単量体含有組成物の製造例1〕
[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(UDMA)70質量部及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)30質量部に、光重合開始剤兼加熱重合開始剤としてベンゾイルペルオキシド1.5質量部を溶解させて、重合性単量体含有組成物mを調製した(重合性単量体含有組成物mの硬化物の屈折率:1.51)。
〔無機粒子の製造例1〕
市販の超微粒子シリカ(日本アエロジル株式会社製、アエロジル(登録商標)OX−50、平均一次粒子径:40nm、屈折率:1.46、BET比表面積:50m2/g)100gをエタノールに500mLに分散し、分散液とした。この分散液に、あらかじめ、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン7gと水5g及び酢酸0.1gを撹拌させた溶液を加え、2時間室温で撹拌した。次いで、前記溶液から溶媒を減圧留去し、さらに90℃3時間乾燥した。このような表面処理によって、表面処理された無機粒子(a2−1)を得た。
〔無機粒子の製造例2〕
市販のバリウムボロシリケートガラスGM27884 NF180グレード(ショット社製、平均一次粒子径:0.18μm、屈折率:1.53)100gに対し、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン7gと水5gを用いて、無機粒子の製造例1と同様の方法で表面処理を行い、無機粒子(a1−1)を得た。
〔無機粒子の製造例3〕
国際公開2009/133913号に記載された製造例8の方法に基づいて、シリカ系微粒子と、ジルコニウム原子、該原子及び酸素原子を含有し、シリカ系微粒子の表面を被覆する酸化物とを含む非晶質粒子(屈折率:1.549、平均粒子径:6.3μm、粒子径範囲:0.2〜20μm)を得た。得られた非晶質粒子100質量部に対して、25質量部のγ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシランと水500gを用いて、無機粒子の製造例1と同様の方法で表面処理を行い、さらにその表面処理された非晶質粒子100質量部と無機粒子(a2−1)10質量部をポリ容器に入れ、振とう器YGG−R(株式会社ヤヨイ製)にて、混合する。この混合した無機粒子を、#150の篩(目開き:約100μm)にかけ、無機粒子(a3−1)を得た。
〔充填材(A)の製造例1〕
無機粒子(a2−1)に対し、顔料(C)として、日局酸化チタン、酸化鉄黒、酸化鉄赤(ベンガラ)、酸化鉄黄を微量取り、回転ボールミルにて均一に分散し、下記表1〜3に示す色調及び透明性を有する、充填材A−1〜A−58、A−68、A−69を得た。
下記表1〜3に示す充填材A−1〜A−58、A−68、A−69の色調及び透明性は、以下のようにして測定した。まず、各充填材について、後記する実施例1と同様に、プレス成形を行ってプレス成形体を得た。次いで、得られたプレス成形体に重合性単量体含有組成物mを含浸させた後、60℃で18時間、次いで110℃で6時間重合硬化を行い、硬化物を得た。得られた硬化物からダイヤモンドカッターを用いて板状試験片(10mm×10mm×1.2mm)を切り出した後、平滑面を#1500研磨紙、#2000研磨紙、#3000研磨紙の順に乾燥条件下で研磨し、研磨面の色調及び透明性を分光測色計(CM−3610d、JIS Z 8722:2009、条件cに準拠、コニカミノルタジャパン株式会社製、D65光源)を用いて測定した。下記表1〜3に示す充填材A−1〜A−58、A−68、A−69の色調及び透明性は重合性単量体含有組成物mに配合する微量の顔料を調整することで得られる。
〔充填材(A)の製造例2〕
無機粒子(a3−1)に対し、顔料(C)として、日局酸化チタン、酸化鉄黒、酸化鉄赤(ベンガラ)、酸化鉄黄を微量取り、回転ボールミルにて均一に分散し、下記表1〜3に示す色調及び透明性を有する、充填材A−59〜A−67を得た。
下記表1〜3に示す充填材A−59〜A−67の色調及び透明性は、以下のようにして測定した。まず、各充填材について、後記する実施例1と同様に、プレス成形を行ってプレス成形体を得た。次いで、得られたプレス成形体に重合性単量体含有組成物mを含浸させた後、60℃で18時間、次いで110℃で6時間重合硬化を行い、硬化物を得た。得られた硬化物からダイヤモンドカッターを用いて板状試験片(10mm×10mm×1.2mm)を切り出した後、平滑面を#1500研磨紙、#2000研磨紙、#3000研磨紙の順に乾燥条件下で研磨し、研磨面の色調及び透明性を分光測色計(CM−3610d、JIS Z 8722:2009、条件cに準拠、コニカミノルタジャパン株式会社製、D65光源)を用いて測定した。下記表1〜3に示す充填材A−59〜A−67の色調及び透明性は重合性単量体含有組成物mに配合する微量の顔料を調整することで得られる。
〔着色ペーストの製造例1〕
重合性単量体含有組成物m(溶液)に対し、顔料(C)として、日局酸化チタン、酸化鉄黒、酸化鉄赤(ベンガラ)、酸化鉄黄を微量加え、超音波分散器にて均一に分散し、分散液を得た。その顔料の分散した分散液20.0gと無機粒子(a1−1)80.0gガラス製の乳鉢に測量し、均一になるように混合した。その混合したペーストの気泡を取り除くため、減圧条件にて脱泡を実施し、着色ペースト(ペースト状の歯科用重合性組成物)B−1〜B−7を得た。
下記表2で示す着色ペーストB−1〜B−7の色調及び透明性は、以下のようにして測定した。各色のペーストから、板状試験片(10mm×10mm×1.2mm)を重合硬化し、平滑面を#1500研磨紙、#2000研磨紙、#3000研磨紙の順に乾燥条件下で研磨し、研磨面の色調及び透明性を分光測色計(CM−3610d、JIS Z 8722:2009、条件cに準拠、コニカミノルタジャパン株式会社製、D65光源)を用いて測定した。表2に示す色調及び透明性は重合性単量体含有組成物mに配合する微量の顔料(C)を調整することで得られる。
[実施例1]
充填材A−3を2.0g、15.0mm×18.0mmの長方形の穴を持つプレス用金型の下パンチ棒の上に敷いた。タッピングにより粉末をならし、下パンチを下げ、充填材A−3の上に、充填材A−2を0.6g敷き、タッピングにより表面をならした。さらに充填材A−2の上に充填材A−1を2.0g敷き、タッピングにより表面をならした。充填材A−1が充填された後、上パンチをその上に載せ、テーブルプレス機を用い、面圧100MPaにてプレス成形を行ってプレス成形体を得た。該プレス成形体を、上述の重合性単量体含有組成物mに浸漬した。室温で24時間暗所に静置した後、浸漬した状態のまま減圧して脱気した(10ヘクトパスカル、10分間)。減圧を解除して、重合性単量体が含浸された成形体を取り出すと、目視では成形体のすべての内部に浸透し、内部に気泡の存在は認められなかった。該重合性単量体が含浸された成形体を真空パック袋に入れ、真空パック装置にて10ヘクトパスカルまで減圧後、密封した。その後、50℃の熱風乾燥器に20時間静置し、さらに、130℃にて1時間加熱処理をすることで、目的とする歯科用ミルブランクを得た。得られた歯科用ミルブランクは、切削加工機DWX−50(クラレノリタケデンタル株式会社製)にて前歯(中切歯)のクラウン形状に加工した。加工したクラウンは、表面に研磨剤にて研磨処理を施し、鏡面研磨した。
[実施例2〜11、17、18、比較例1〜11]
実施例1と同様の方法にて表2に示す充填材の組み合わせにて歯科用ミルブランクを作製し、切削加工及び研磨処理を施し、クラウンを作製した。各層の厚さについては、その表1及び2で示す厚さになるように充填材を充填することで調整した。
[実施例12]
着色ペーストB−1を3.0g、15.0mm×18.0mmの長方形の穴を持つプレス用の金型の下パンチ棒の上に敷いた。その後、上パンチをその上に載せ、テーブルプレス機を用い、面圧1.0MPaにてプレスを実施し、さらにその状態にて下パンチを下げた。次に、上パンチを外し、表面をならしたB−1ペーストの上に着色ペーストB−2を0.9g敷いた。その後、再度上パンチを載せ、面圧1.0MPaにてプレスを実施し、さらにその状態にて下パンチを下げた。この操作をB−3まで繰り返し、次に最後のペーストが充填された後、上パンチをその上に載せ、テーブルプレス機を用い、面圧100MPaにてプレス成形を行ってプレス成形体を得た。得られた成形体を真空パック袋に入れ、真空パック装置にて10ヘクトパスカルまで減圧後、密封した。その後、50℃の熱風乾燥器に20時間静置し、さらに、130℃にて1時間加熱処理をすることで、目的とする歯科用ミルブランクを得た。得られたミルブランクは、切削加工機DWX−50(クラレノリタケデンタル株式会社製)にて前歯のクラウン形状に加工した。加工したクラウンは、表面に研磨剤にて研磨処理を施し、鏡面研磨した。
[実施例13〜16]
実施例12と同様の方法にて表2で示す着色ペーストの組み合わせにて歯科用ミルブランクを作製し、切削加工及び研磨処理を施し、クラウンを作製した。各層の厚さについては、その表2で示す厚さになるように着色ペーストの充填量を調整することで実施した。
(外観試験A)
実施例及び比較例の切削研磨したクラウンを歯科用支台築造材料(クリアフィル(登録商標)DCコア オートミックス(登録商標)ONE、デンチン色 クラレノリタケデンタル株式会社製)にて作製した支台歯に装着し、そのクラウンの各層の境界部分の差について目視評価した。その境界部分が色調について移行的であり、かつ透明性についても移行的であるものを〇、境界部分が色調又は透明性について明瞭に識別可能である場合を×とした。
(外観試験B)
上顎義歯床上の前歯右1(中切歯)に、実施例及び比較例の切削研磨したクラウンを配列した。これを、天然歯の色調分布を再現した色見本として一般的に使用されているVITA社製Clasical Shade Guideの表に示す対象シェードと比較し、そのクラウンの色調がシェードガイド(Shade Guide)と適合しているか目視評価した。色調が合っており、審美性に優れるものを〇、色調が適合しておらず審美性に劣るものを×とした。
また、実施例1〜18及び比較例1〜12の歯科用ミルブランクについて、無機粒子(a)の含有量を測定した。歯科用ミルブランクにおける無機粒子(a)の含有量は、ミルブランクから最上層等の各層を切り離すことによって得られる各層の部分を坩堝に入れ、電気炉によって575℃に加熱し、所定の時間処理することによって、各層の有機成分を焼却し、残った無機粒子(強熱残分)の質量から算出した。前記方法では、無機充填材が表面処理された無機粒子を含む場合に、表面処理剤は、焼却された有機成分として算出される。各層における無機粒子(a)の含有量の測定結果を表4に示す。
Figure 2018074605
Figure 2018074605
Figure 2018074605
Figure 2018074605
実施例1と比較例1の結果の対比で示されるように、比較例1の最上層と最下層との透明性差ΔΔL*T及び色度差ΔE*Tが規定範囲に満たないと、切削加工されたクラウンが単色に見えてしまい、審美的に不十分であった。
また、実施例1と比較例2の結果の対比で示されるように、比較例2の各層の透明性差ΔΔL*及び、最上層と最下層との透明性差ΔΔL*Tが規定範囲外であり、切削加工されたクラウンの透明性が不足しており、審美的に不十分であった。
さらに、実施例1と比較例3の結果の対比で示されるように、比較例3では、各層の色度差ΔE*が規定範囲外となり、各層の界面がはっきり視認することができ、審美的に不十分であった。
実施例4、5、17と比較例6の結果の対比で示されるように、比較例6の各層のΔΔL*、及びΔE*、並びに最上層及び最下層のΔΔL*T、及びΔE*Tが規定範囲外であり、各層の界面がはっきり分かれ、視認することができ、審美的に不十分であった。
実施例4、5、17と比較例7の結果の対比で示されるように、比較例7の各層のΔΔL*並びに最上層及び最下層のΔΔL*Tが規定範囲外であり、切削加工されたクラウンの各層の界面がはっきり分かれ、視認することができ、審美的に不十分であった。
実施例4、5、17と比較例8の結果の対比で示されるように、比較例8の各層の色度差ΔE*及び最上層及び最下層のΔE*Tが規定範囲外であり、各層の界面がはっきり分かれ、視認することができ、審美的に不十分であった。
比較例4は、4層構造を有しており、最上層と最下層との透明性差ΔΔL*Tが小さすぎ、規定範囲外であることから、切削加工されたクラウンの切縁部の透明性が不足しており、審美性に劣っていた。
比較例5は、4層構造を有しており、各層の透明性差ΔΔL*が小さすぎ、規定範囲外であること及び最上層と最下層とのΔΔL*Tが小さすぎ、規定範囲外であることから、切削加工されたクラウンの切縁部の透明性が不足しており、審美性に劣っていた。
実施例6、7は、4層構造を有しており、各層のΔE*及びΔΔL*、並びに最上層と最下層のΔE*T及びΔΔL*Tが規定範囲内であり、切削加工後、審美的に十分なクラウンとなった。
実施例8、9、18は、5層構造を有しており、各層のΔE*及びΔΔL*、並びに最上層と最下層のΔE*T及びΔΔL*Tが規定範囲内であり、切削加工後、審美的に十分なクラウンとなった。
実施例10、11と比較例9の結果の対比で示されるように、比較例9の各層のΔΔL*、ΔE*、最上層及び最下層のΔE*T及びΔΔL*Tが規定範囲外であり、各層の界面がはっきり分かれ、視認することができ、審美的に不十分であった。
実施例9、10と比較例10の結果の対比で示されるように、比較例10の各層の色度差ΔE*及び最上層と最下層のΔE*Tが規定範囲外であり、切削加工したクラウンの各層の界面がはっきり分かれ、視認することができ、審美的に不十分であった。
実施例9、10と比較例11の結果の対比で示されるように、比較例11の各層の透明性差ΔΔL*及び最上層と最下層の透明性差ΔΔL*Tが規定範囲外であり、切削加工したクラウンの各層の界面がはっきり分かれ、視認することができ、審美的に不十分であった。
実施例12〜14と比較例1の結果の対比で示されるように、比較例1の最上層と最下層とのΔΔL*T及びΔE*Tが規定範囲に満たないと、切削加工されたクラウンが単色に見えてしまい、審美的に不十分であった。
実施例12〜14と比較例2の結果の対比で示されるように、比較例2の各層の透明性差であるΔΔL*及び、最上層と最下層との透明性差ΔΔL*Tが規定範囲外であり、切削加工されたクラウンの透明性が不足しており、審美的に不十分であった。
さらに、実施例12〜14と比較例3の結果の対比で示されるように、比較例3では、各層の色度差ΔE*が規定範囲外となり、各層の界面がはっきり視認することができ、審美的に不十分であった。
実施例15、16は、4層構造を有しており、各層のΔE*、ΔΔL*及び最上層と最下層のΔE*T及びΔΔL*Tが規定範囲内であり、切削加工後、審美的に十分なクラウンとなった。
比較例12は、特開2014−161440号公報の実施例1に該当する。実施例5と比較例12の結果の対比で示されるように、各層の透明性変化が少なすぎると、天然歯の自然な透明性変化を再現することできず、審美性が不十分である。特開2014−161440号公報の実施例では、臼歯に基づいて審美性を判断しているため、境界部分は移行的であるものの、開口時を考慮して、特に高い審美性が要求される前歯(中切歯、側切歯及び犬歯)のクラウンとしては、天然歯の色調を再現することができず、審美性が不十分であることが確認された。
本発明の色調を有する歯科用ミルブランクを用いると天然歯と近い色調を有する歯科用補綴物が得られる。また、本発明の歯科用ミルブランクは、CAD/CAM用ミルブランクとして好適に用いられる。すなわち、CAD/CAMシステムを用いて切削加工することによって、高い審美性を有する歯科補綴物を作製するために、好適に用いられる。

Claims (11)

  1. 積層体から構成される歯科用ミルブランクであって、
    前記積層体が、最上層、少なくとも1層の中間層、及び最下層の少なくとも3層を含み、
    前記積層体を構成する各層が、充填材(A)及び重合体(B)を含み、
    各層の前記充填材(A)が、少なくとも1種の無機粒子(a)及び少なくとも1種の顔料(C)を含み、
    前記最上層と前記最下層の色度差ΔE*Tが5.0以上15.0以下であり、前記最上層と前記最下層の透明性差ΔΔL*Tが5.0以上15.0以下であり、
    全ての隣接する層の色度差ΔE*が1.0以上5.5以下であり、全ての隣接する層の透明性差ΔΔL*が1.0以上5.0以下であり、最上層の透明性ΔL*Hが13.5以上25.0以下であり、最下層の透明性ΔL*Lが7.0以上13.0以下である、歯科用ミルブランク。
  2. 下記式[I]及び[II]
    ΔL*L<ΔL*M(1) [I]
    ΔL*M(p)<ΔL*H [II]
    (式中、ΔL*Lは最下層の透明性であり、ΔL*Hは最上層の透明性であり、ΔL*M(1)は最下層に最も近い中間層(M1層)の透明性であり、ΔL*M(p)は最上層に最も近い中間層(Mp層)の透明性であり、pは1以上の自然数である。)を満たす、請求項1に記載の歯科用ミルブランク。
  3. 前記積層体全体の厚さが、8.0mm以上23.0mm以下であり、最上層及び最下層の厚さがそれぞれ2.0mm以上であり、最上層と最下層に挟まれた少なくとも1層からなる中間層の各層の厚さが1.0mm以上5.0mm以下である、請求項1又は2に記載の歯科用ミルブランク。
  4. 重合体(B)の構造単位を構成する重合性単量体(b)が、(メタ)アクリレート系重合性単量体及び(メタ)アクリルアミド誘導体系の重合性単量体からなる群から選ばれる1種以上の重合性単量体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯科用ミルブランク。
  5. 最上層、少なくとも1層の中間層、及び最下層の少なくとも3層の各層における無機粒子(a)の含有量が、61質量%以上96質量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯科用ミルブランク。
  6. 最上層における無機粒子(a)の屈折率と、重合体(B)の屈折率の差が、0.01以上0.05以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯科用ミルブランク。
  7. 中切歯、側切歯又は犬歯用である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯科用ミルブランク。
  8. 色調が異なる3種以上の充填材(A)を層状にプレス成形してなるプレス成形体と、重合性単量体含有組成物を接触させる工程、及び重合硬化させる工程を有し、前記充填材(A)が少なくとも1種の無機粒子(a)及び少なくとも1種の顔料(C)を含有し、前記重合性単量体含有組成物が重合体(B)の構造単位を構成する重合性単量体(b)を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯科用ミルブランクの製造方法。
  9. 重合性単量体含有組成物中にプレス成形体を浸漬して接触させる、請求項8に記載の歯科用ミルブランクの製造方法。
  10. 色調が異なる3種以上のペースト状の歯科用重合性組成物を積層する工程、及び重合硬化させる工程を有し、前記ペースト状の重合性組成物が、充填材(A)と重合体(B)の構造単位を構成する重合性単量体(b)とを含有し、各ペースト状の重合性組成物の前記充填材(A)が少なくとも1種の無機粒子(a)及び少なくとも1種の顔料(C)を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯科用ミルブランクの製造方法。
  11. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯科用ミルブランクを切削加工する、歯科用補綴物の製造方法。
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