JP6758673B2 - 歯科用セラミックス材料 - Google Patents

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Description

本発明は、歯科用セラミックス材料に関する。詳細には、本発明は、歯科切削加工で用いられる歯科用セラミックス積層体、歯科用セラミックス仮焼結体、歯科用セラミックス焼結体、これらを用いて製作される歯科補綴物等の歯科用セラミックス材料に関する。
近年、歯科の分野においても、デジタル技術の普及によりコンピュータの画面上で歯冠形状を設計し、コンピュータ支援による切削加工で、被削材を削り出して歯科補綴物を製作する技術が使用されるようになってきた。
そして、現在、歯科切削加工用材料として、天然歯に近い透明性を有する単一色のジルコニアのセラミック材料が開発されたことで、このセラミック材料を使用して歯科補綴物が製作されている。
しかしながら、天然歯の外観は、単一色ではなく、歯頸部から切端部にかけて色の濃さが変化していることから、天然歯の色調を再現する技術が求められている。
例えば、特許文献1及び2には、複数の異なる色調を有するジルコニア原料を積層させたジルコニア材料が開示されている。
しかしながら、特許文献1では、積層構造の各層の色調と色変化の方向性について検討されているが、審美要求を追求するにあたり、重要な要素である透明性を表す尺度の明暗対比(コントラスト比ともいう)については検討されていない。なお、明暗対比は、黒背景及び白背景で測色したそれぞれの色調の値から算出することができる。
また、特許文献2では、歯冠形態において、多層構造の歯科用被切削体を提供するための3層以上の歯科用被切削体であって、歯科用被切削体の上層側(W層、1層目)のコントラスト比が0.30〜0.54の範囲であり、中間層(30%位置層、2層目)のコントラスト比が0.50〜0.95であり、下層側(D層、3層目)のコントラスト比が0.55〜0.95の範囲である歯科用被切削体が記載されている。
そして、この特許文献2の明細書中には、D層とW層は、異なる透明性であることが好ましく、具体的には、コントラスト比の差(D層の値からW層の値を引いたもの)が0.05〜0.40の範囲が好ましく、さらに0.10〜0.30の範囲が好ましいと開示されている。
しかしながら、天然歯の色調を再現する際、積層構造の歯科補綴物は、層ごとのコントラスト比の差が大きいと、各層の境界面が目立ってしまい、天然歯のような自然な色勾配のある色調再現が困難になる。
これに対して、実際の天然歯は、その色調が、継ぎ目のない自然な色の移り変わりとなっているため、歯科用セラミックス材料はコントラスト比の差を小さくなるように制御し、各層の境界面が目立たないように考慮した色調設計が重要である。
つまり、歯科補綴物は、切端部側から歯頸部側に向かって、異なる色調全体の明暗対比が均一であることが求められる。
このように、歯科補綴物には天然歯の色調を再現する技術が求められているが、歯科補綴物は、機械で切削加工することにより製作されることから、適度な硬さを有し、優れた切削加工性も要求される。材料の硬さが高すぎると切削加工時に欠けが生じやすくなり、一方、材料の硬さが低すぎると切削途中で加工物が脱落してしまうことになる。
そこで、セラミックス材料の歯科補綴物を製作するには、まず、セラミックス粉末を加圧してセラミックス組成物を製作し、次いで、このセラミックス組成物を仮焼(仮焼結、半焼結、仮焼成、又は半焼成という場合もある。)して、適度な硬さで加工しやすいセラミックス仮焼結体を製作し、この仮焼結体を切削加工した後、焼結(本焼結、完全焼結という場合もある。)することでセラミックス焼結体及び歯科補綴物を製作することが行われている。
このセラミックス材料、特にジルコニア材料において、切削加工時の硬さは、仮焼結条件に左右される。仮焼結温度が高ければ硬さは高くなり、一方、仮焼結温度が低ければ硬さは低くなる。つまり、歯科補綴物のような精密な加工を必要とする材料の加工では、仮焼結条件の制御によって、仮焼結体を適切なビッカース硬さに調整する必要がある。
天然歯の色調に近づけるため、ジルコニア材料を着色する場合、そのジルコニア材料に配合する着色用金属酸化物(顔料成分)の量の違いによって焼結性(焼結速度)が変化する。ジルコニア材料は、顔料成分の量が異なっていても、本焼結時のように完全に焼結すると最終的にほぼ一定の収縮率を示す。
つまり、着色用金属酸化物の量が異なる複数のジルコニア粉末を積層させた積層体を仮焼結する場合は、完全に焼結させずに焼結を途中で止める状態になるため、層ごとに焼結性が異なることが影響し、仮焼結体に反りが発生することがある。反りのある状態の仮焼結体を用いて切削加工すると、本焼結後に得られる加工物が歪んでしまい、加工した歯科補綴物の適合が合わなくなるため口腔内で使用できないという問題が発生する。
特許文献3では、多層構造の歯科用セラミックス材料(ブランク)において、異なる層それぞれについての2.5kgfの荷重でのビッカース硬さを測定し、その差から算出される歪みの係数で評価し、各層の焼結性を一定に制御することで、歪みを伴うことなく熱的に緻密化することができることを開示している。
しかしながら、セラミックス仮焼結体が3層以上の円柱形状であった場合、その中層部分は側面が曲面状になっているため、硬さを測定することが困難である。また、製品の品質管理としてこのビッカース硬さを適用する場合、ビッカース硬さの測定を行うことでブランク表面に圧痕が生じてしまい、製品の品質劣化につながる。そのため、円柱形状の積層セラミックス仮焼結体においても歪みの評価に適用することができ、なおかつこの積層セラミックス仮焼結体を傷つけない手法が求められている。
また、特許文献3では、焼結阻害剤(Y)及び焼結助剤(Al)をドープすることにより、異なる層中に使用される粉末又は粉末混合物の比表面積を調整することで、これらの層中の粉末の収縮挙動を等しくして歪みを防止する手法を開示している。
しかしながら、焼結阻害剤及び焼結助剤をドープするための設備が必要であり、このドープする工程も煩雑なものである。そのため、ドープ等の煩雑な工程を行わずに、仮焼結時に反りが発生する問題を解決する簡便な手法が求められている。
特開2014−218389号公報 特開2018−086047号公報 特表2016−527017号公報
本発明は、異なる色の層の境界を認知することのできない色勾配が達成された、自然な歯の色調を有する歯科切削加工用セラミックス焼結体を提供することを目的としている。
本発明は、天然歯により近い自然な色調を有する歯科補綴物を提供することを目的としている。
本発明は、組成が異なる複数のセラミックス組成物を積層させたセラミックス積層体を仮焼結させた後でも、反りの少ないセラミックス仮焼結体を提供することを目的としている。
本発明者等は、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、下記に示す歯科用セラミックス材料が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
項1.
セラミックス積層体を仮焼結させて歯科用セラミックス仮焼結体を得る工程、及び
前記歯科用セラミックス仮焼結体を焼結させて歯科用セラミックス焼結体を得る工程を備える、歯科用セラミックス焼結体の製造方法であって、
前記歯科用セラミックス焼結体の切端部側から歯頸部側に向かって20%、40%、55%、70%、及び85%の位置をそれぞれA、B、C、D、及びEとした場合に、
前記歯科用セラミックス焼結体における前記A、B、C、D、及びEのいずれの位置間での明暗対比差が、0.03未満である、歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項2.
前記歯科用セラミックス焼結体において、前記A、B、C、D、及びEの明暗対比が、それぞれ0.5以上0.9以下である、項1に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項3.
前記歯科用セラミックス焼結体のLの範囲が、前記A、B、C、D、及びEの各位置において、
A(20%):69≦L≦89,−2≦a≦11,
−5≦b≦38, 0≦C≦40;
B(40%):68≦L≦88,−1≦a≦12,
−2≦b≦40, 0≦C≦42;
C(55%):68≦L≦88, 0≦a≦13,
1≦b≦42, 3≦C≦44;
D(70%):67≦L≦87, 0≦a≦13,
2≦b≦44, 4≦C≦45;及び
E(85%):67≦L≦85, 0≦a≦13,
3≦b≦44, 5≦C≦45
である、項1又は2に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項4.
前記A及びEの位置における色差ΔEが、4以上13以下である、項1〜3の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項5.
前記歯科用セラミックス仮焼結体を得る工程が、セラミックス積層体を、最高係留温度が950℃以下の温度で仮焼結させることを特徴とする、項1〜4の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項6.
前記歯科用セラミックス仮焼結体の切端部側の面における線収縮率と歯頸部側の面における線収縮率との差が、0.12%以下である、項1〜5の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項7.
前記セラミックス積層体は、セラミックス粉末及び着色用金属酸化物を含む、項1〜6の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項8.
前記セラミックス粉末が、ジルコニアである、項7に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項9.
前記着色用金属酸化物が、酸化コバルトを含む、項7又は8に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項10.
前記着色用金属酸化物が、酸化コバルト、酸化エルビウム、及び酸化鉄からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である、項7又は8に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項11.
前記着色用金属酸化物の含有率が、
酸化コバルト:0.0001〜0.01質量%
酸化エルビウム:0.12〜0.85質量%、及び
酸化鉄:0.03〜0.14質量%である、項7〜10の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項12.
前記着色用金属酸化物の配合割合が、
酸化エルビウム:酸化鉄=2:1〜10:1、及び
酸化鉄:酸化コバルト=11:1〜300:1
である請求項7〜10の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項13.
前記着色用金属酸化物の含有率が、
酸化コバルト:0.001〜0.01質量%
酸化エルビウム:0.12〜0.85質量%、及び
酸化鉄:0.03〜0.14質量%である、項7〜10の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項14.
前記着色用金属酸化物の配合割合が、
酸化エルビウム:酸化鉄=2:1〜10:1、及び
酸化鉄:酸化コバルト=11:1〜33:1
である請求項7〜10の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項15.
前記歯科用セラミックス焼結体のJIS T6526:2018に準拠して測定した3点曲げ強さが、600MPa以上である、項1〜14の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項16.
歯科用セラミックス仮焼結体のビッカース硬さが、30以上70以下である、項1〜15の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項17.
さらに、セラミックス粉末と着色用金属酸化物とを混合してセラミックス組成物を得る工程(1)を備えている、項1〜16の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項18.
さらに、前記セラミックス組成物として、組成が異なる複数のセラミックス組成物を準備する工程(2)を備えている、項1〜17の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項19.
さらに、組成が異なる複数のセラミックス組成物を、積層してセラミックス積層体を得る工程(3)を備えている、項1〜18の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項20.
さらに、該セラミックス積層体を加圧して、セラミックス積層体を得る工程(4)を備えている、項1〜19の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項21
さらに、前記セラミックス積層体を旋盤加工して、セラミックス積層体を得る工程(5)を備えている、項1〜20の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
項22.
項1〜21の何れか一項に記載の方法によって製作されたことを特徴とする歯科用セラミックス焼結体。
項23.
項22に記載の歯科用セラミックス焼結体を製作するための歯科用セラミックス切削加工物。
項24.
項22に記載の歯科用セラミックス焼結体を製作するための歯科用セラミックス仮焼結体。
項25.
項24に記載の歯科用セラミックス仮焼結体を製作するための歯科用セラミックス積層体。
項26.
項25に記載の歯科用セラミックス積層体を製作するための歯科用セラミックス組成物。
項27.
項24に記載の歯科用セラミックス仮焼結体をCAD/CAMシステムを用いて切削加工した後、焼結されたことを特徴とする歯科用補綴物。
なお、現時点で、上記歯科用セラミックス焼結体、歯科用セラミックス切削加工物、歯科用セラミックス仮焼結体、歯科用セラミックス積層体、歯科用セラミックス組成物、及び歯科用補綴物は、物の構造を完全に特定することが不可能又はおよそ実際的ではない程度に困難であるため、プロダクトバイプロセスクレームによって、それぞれの物の発明を記載している。
本発明によれば、異なる色の層の境界を認知することのできない色勾配が達成された、自然な歯の色調を有する歯科切削加工用セラミックス材料を提供することができる。
さらに、本発明によれば、天然歯により近い自然な色調を有する歯科補綴物を提供することができる。
また、本発明によれば、組成が異なる複数のセラミックス粉末を積層させたセラミックス積層体を仮焼結させた後でも、反りの少ないセラミックス仮焼結体を提供することができる。
さらに、本発明によれば、適度なビッカース硬さを有する切削加工性に優れたセラミックス仮焼結体を提供することができる。
図1は、本発明の歯科用セラミックス焼結体の測色箇所を説明した図である。具体的に、本発明の歯科用セラミックス焼結体を用いて、前歯の形状に加工すると想定した場合に、歯冠形態の歯頸部側を上とし、切端部側を下として配置した概念図である。なお、切端部側から歯頸部側に向かう方向は色調の変化があるが、切端部側から歯頸部側に向かう方向と垂直方向は色調の変化がない。 図2は、本発明の歯科用セラミックス仮焼結体について、歯頸部側の面と切端部側の面との線収縮率差を算出するために、仮焼結前後で寸法を測定する部位を説明した図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.歯科用セラミックス材料
本発明の歯科用セラミックス材料(以下、「本発明のセラミックス材料」ということもある。)は、組成が異なる複数のセラミックス組成物(以下、「本発明のセラミックス組成物」又は「本発明の組成物」ということもある。)を積層させて製作された材料を意味する。なかでも、本発明において、歯科用セラミックス材料とは、下記のセラミックス積層体(以下、「本発明のセラミックス積層体」又は「本発明の積層体」ということもある。)、歯科用セラミックス仮焼結体(以下、「本発明のセラミックス仮焼結体」又は「本発明の仮焼結体」ということもある。)、歯科用セラミックス焼結体(以下、「本発明のセラミックス焼結体」又は「本発明の焼結体」ということもある。)、及び歯科用補綴物(以下、「本発明の歯科補綴物」ということもある。)である。ここで、セラミックスとは、セラミックと言い換えることができる。
2.製造方法
次に、本発明のセラミックス積層体、セラミックス仮焼結体、及びセラミックス焼結体の製造方法の一例について説明する。
本発明のセラミックス焼結体の製造方法は、セラミックス積層体を仮焼結させて歯科用セラミックス仮焼結体を得る工程、及び前記歯科用セラミックス仮焼結体を焼結させて歯科用セラミックス焼結体を得る工程を備えている。
<セラミックス積層体>
前記セラミックス積層体の製造方法としては、特に限定はなく、例えば、組成が異なる複数のセラミックス組成物を積層させてセラミックス積層体を形成する工程を経て製造することができる。
具体的に、前記セラミックス積層体の製造方法としては、
(1):セラミックス粉末と、着色用金属酸化物とを混合してセラミックス組成物を得る工程(「工程(1)」又は「混合工程」ということもある。)、
(2):前記セラミックス組成物として、組成が異なる複数のセラミックス組成物を準備する工程(「工程(2)」又は「複数の組成物を準備する工程」ということもある。)、
(3):組成が異なる複数のセラミックス組成物を、積層してセラミックス積層体1(成形体1)を得る工程(「工程(3)」又は「積層工程」ということもある。)、
(4):該セラミックス積層体1を加圧して、セラミックス積層体2(成形体2)を得る工程(「工程(4)」又は「加圧工程」ということもある。)、及び
(5):前記セラミックス積層体2を旋盤加工して、セラミックス積層体3(成形体3)を得る工程(以下、「工程(5)」又は「旋盤加工工程」ということもある。)
を備えることができる。
ここで、本発明のセラミックス積層体とは、工程(3)で得られたセラミックス積層体1、工程(4)で得られた加圧後のセラミックス積層体2、及び/又は工程(5)で得られた旋盤加工後のセラミックス積層体3も含まれている。また、セラミックス積層体は、セラミックス成形体と言い換えることもできる。
セラミックス粉末
セラミックス粉末としては、セラミックスを含有する粉末であれば特に限定はなく、例えば、ジルコニア(「酸化ジルコニウム」又は「ZrO」ともいう。)を含有する粉末、アルミナ(「酸化アルミニウム」又は「Al」ともいう。)を含有する粉末、陶材等が挙げられる。中でも、セラミックス粉末として、好ましくはジルコニアを含有する粉末であり、より好ましくはジルコニアの成分が85%以上である粉末である。
セラミックス粉末の平均一次粒子径は、特に限定はなく、例えば、2〜120nmであり、好ましくは5〜100nmであり、より好ましくは10〜80nmである。
セラミックス粉末の比表面積としては、特に限定はなく、例えば、3〜20m/g、好ましくは6〜17m/g、より好ましくは8〜15m/gである。
上記セラミックス粉末には、無機成分だけでなく、有機成分を含むことができる。
有機成分としては、特に限定はなく、例えば、成形助剤の有機バインダーが挙げられる。
前記有機バインダーとしては、特に限定はなく、例えば、ポリビニルアルコール;パラフィンワックス等のワックス;アクリル系バインダー等が挙げられる。中でも、好ましい有機バインダーとしては、分子中にカルボキシル基又はその誘導体(例えば、塩、特にアンモニウム塩等)を有するアクリル系のものが好ましい。
アクリル系バインダーとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
この有機バインダーの添加量としては、特に限定はなく、例えば、セラミックス粉末に対し0.5〜10重量%であり、好ましくは1〜5重量%である。
着色用金属酸化物
本発明のセラミックス組成物は、上記セラミックス粉末(酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化アルミニウム(Al)等)と、着色用金属酸化物とを含有することができる。
セラミックス粉末(顆粒状態)の平均二次粒子径は、特に限定はなく、通常、10〜200μmであり、20μm〜100μmであると好ましく、30μm〜70μmであるとより好ましく、40μm〜60μmであるとさらに好ましい。
さらに、本発明のセラミックス組成物は、安定化剤、焼結助剤等を含有することができる。
安定化剤としては、特に限定はなく、例えば、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化イットリウム(Y)、酸化セリウム(CeO)等の金属酸化物が挙げられる。
前記安定化剤の含有量としては、セラミックスが正方晶系として部分安定化できるような量であれば特に限定はなく、例えば、セラミックス組成物合計mol(全量)に対して、1〜30mol%、好ましくは1.5〜25mol%、より好ましくは2〜20mol%である。なかでも、安定化剤として酸化イットリウムを使用する場合、酸化イットリウムの含有率は、セラミックス組成物の合計mol数に対して、2.5mol%〜6mol%であると好ましく、3mol%〜5.5mol%であるとより好ましい。これにより3点曲げ強さが600MPa以上のセラミックス焼結体を製作することができる。
焼結助剤として添加している酸化アルミニウムの含有量としては、セラミックス組成物の全質量(全量)に対して、0質量%(無含有)〜0.3質量%であると好ましい。酸化アルミニウムは、セラミックス焼結体の強度を高めることができる。
着色用金属酸化物の含有量(合計量)としては、特に限定はなく、例えば、セラミックス組成物の全質量(全量)に対して、0.1〜1質量%であり、好ましくは0.2〜0.9質量%であり、より好ましくは0.3〜0.8質量%である。
着色用金属酸化物としては、特に限定はなく、例えば、酸化コバルト(CoO、Co)、酸化エルビウム(Er)、酸化鉄(Fe、Fe)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化チタン(TiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化クロム(Cr)、酸化プラセオジム(Pr11)等が挙げられる。
酸化コバルトの含有量としては、特に限定はなく、例えば、セラミックス組成物の全質量に対して、0.00001〜0.01質量%又は0.001〜0.01質量%であり、
好ましくは0.0001〜0.01質量%又は0.001〜0.01質量%であり、
より好ましくは0.0005〜0.007質量%又は0.001〜0.007質量%であり、
特に好ましくは0.001〜0.005質量%である。
酸化エルビウムの含有量としては、特に限定はなく、例えば、セラミックス組成物の全質量に対して、0.12〜0.85質量%であり、好ましくは0.2〜0.75質量%であり、より好ましくは0.25〜0.65質量%である。
酸化鉄の含有量としては、特に限定はなく、例えば、セラミックス組成物の全質量に対して、0.02〜0.2質量%であり、好ましくは0.03〜0.15質量%であり、より好ましくは0.04〜0.11質量%である。
酸化エルビウム:酸化鉄としては、2:1〜10:1であり、好ましくは2.5:1〜9.5:1であり、より好ましくは3:1〜9:1である。
酸化鉄:酸化コバルトとしては、11:1〜300:1又は11:1〜33:1であり、
好ましくは14:1〜298:1又は12:1〜32:1であり、
より好ましくは17:1〜296:1又は13:1〜31:1である。
中でも、好ましい着色用金属酸化物としては、酸化コバルト、酸化エルビウム、及び酸化鉄からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、
前記着色用金属酸化物の含有率が、
酸化コバルト:0.0001〜0.01質量%
酸化エルビウム:0.12〜0.85質量%、及び
酸化鉄:0.02〜0.2質量%であり、
特に、前記着色用金属酸化物の配合割合が、
酸化エルビウム:酸化鉄=2:1〜10:1、及び
酸化鉄:酸化コバルト=11:1〜300:1
であることが好ましい。
工程(1)
前記工程(1)における混合方法としては、特に限定はなく、公知の混合方法を採用することができる。例えば、混合方法としては、V型混合機等の撹拌装置を用いて、混合することができる。工程(1)において、セラミックス粉末と着色用金属酸化物とを混合する方法とは、例えば、(A)ジルコニア粉末等のセラミックス粉末と、ジルコニア粉末等のセラミックス粉末及び着色用金属酸化物(ここでは、着色顔料ともいう)を含む混合物(着色されたセラミックス粉末、着色用ジルコニア粉末ともいう)とを混合する方法(方法A);
(B)ジルコニア粉末等のセラミックス粉末と、着色用金属酸化物とを混合する方法(方法B)等が挙げられる。
工程(2)
前記工程(2)における準備方法としては、特に限定はなく、例えば、組成が異なる原料粉末で工程(1)を繰り返し、複数の異なる色調を有するセラミックス組成物を準備する工程等が挙げられる。
工程(3)
前記工程(3)における積層方法としては、特に限定はなく、公知の積層方法を採用することができる。例えば、積層方法としては、直圧成型機に成分の異なる複数の原料粉末を順次投入して加圧することで積層体を得る方法等が挙げられる。
工程(3)において、積層体の層数としては、特に限定はなく、何層で製作してもよい。
層の下限は、2層以上、好ましくは3層以上である。層の上限は、特に限定はなく、例えば、10層以下であり、好ましくは7層以下、より好ましくは6層以下である。
工程(3)において、各層の厚さとしては、特に限定はなく、例えば、1〜20mm、好ましくは2〜15mm、より好ましくは4〜10mmである。各層の厚さは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
工程(4
前記工程(4)における加圧方法としては、特に限定はなく、公知の加圧方法を採用することができる。例えば、加圧(成形)方法としては、プレス成形、熱間等方圧加圧法(HIP法)、冷間等方圧加圧法(CIP)等の成形方法が挙げられる。
工程(4)の圧力としては、特に限定はなく、例えば、1〜400MPa、好ましくは5〜350MPa、より好ましくは10〜300MPaである。具体的には、工程(4)は、直圧プレス成形にて10〜30MPaで加圧を行った後、冷間等方圧加圧法(CIP)により100〜300MPaで加圧を行って積層体を得ることができる。
例えば、本発明の積層体の製造方法としては、2層の積層体を製作する場合、色設計を行った2種類の粉末を第1粉末及び第2粉末とする。次に、第1粉末を所定の厚さまで充填し、定規等の直線部分を有する器具を粉末表面で移動させることによって第1粉末の上面を平坦にする。
次に、第1粉末の上に、第2粉末を所定の厚さまで充填し、最後に10〜30MPaで直圧プレス処理を行い平坦にする。層数が3層以上の場合も同様の手順で製作することができる。
次層を充填する前に粉末表面を平坦にならすことにより、均一な層を実現することができる。すべての層を充填した後で直圧プレス処理を行い全体に均一な圧力をかけることで強度を高めることができる。
積層後、冷間等方圧加圧法(CIP)により100〜300MPaで加圧を行うことで、本発明の積層体を製作できる。この工程により、全方位から均等な圧力をかけることができ、焼結時に発生する収縮の方向性をなくし、適合の良い歯科用補綴物を提供することができる。
工程(5
前記工程(5)における旋盤加工方法としては、特に限定はなく、公知の旋盤加工方法を採用することができる。例えば、旋盤加工方法としては、工程(4)で得られた積層体を、旋盤加工により円柱状の成形体の両面を切削し、仮焼結後に20mmとなるように、厚みを20.1mmに加工する方法等が挙げられる。
歯科用セラミックス仮焼結体
本発明のセラミックス仮焼結体の製造方法は、前記セラミックス積層体を仮焼結させて歯科用セラミックス仮焼結体(仮焼体、半焼結体、仮焼成体、又は半焼成体という場合もある。)を得る工程を備えている。
仮焼とは、セラミックス積層体中の有機物(バインダー成分等)を燃焼させて除去する操作(脱脂)の後に、切削加工しやすい硬さになるように途中まで焼結させることを意味する。つまり、本発明の仮焼結体とは、セラミックス積層体を焼結(完全焼結)に至らない温度で焼成する工程で得られるものを意味している。
この仮焼によって得られた本発明の仮焼結体は、適度な硬さの材料であり、切削加工がしやすい材料である。
前記仮焼結体を得る工程(以下、「仮焼結体製造工程」ということもある。)における仮焼結温度(仮焼温度、半焼結温度、仮焼成温度、半焼成温度、又は最高係留温度という場合もある。)としては、約750℃〜950℃程度、好ましくは780℃〜920℃、より好ましくは800℃〜900℃である。なお、750℃以上の仮焼結温度にすることで、仮焼結体が強くなり、切削加工時に脱落が起こりにくくなる。また、950℃以下の仮焼結温度にすることで、反りの発生を抑制することができる。
最高係留温度とは、仮焼結における最高温度であり、係留(維持、保持)する温度を意味している。
仮焼結体製造工程は、常圧下又は加圧下で行うことができる。
仮焼結体の荷重1kgfにおけるビッカース硬さとしては、30以上70以下、好ましくは33以上65以下、より好ましくは35以上60以下である。上記仮焼結温度に調整することで、仮焼結体の切削加工性が良好になり、切削加工によって得られた加工物(以下、「切削加工物」ということもある。)の欠け及び脱落が発生しない仮焼結体を製作することができる。
仮焼時間は、特に限定はなく、通常は1〜30時間であり、好ましくは5〜25時間であり、より好ましくは10〜20時間である。
本発明の切削加工前のセラミックス仮焼結体(以下、「歯科切削加工用セラミックス材料」、「被削材」、「歯科用被切削材料」、又は「歯科用被切削体」ということもある。)は、CAD/CAM(Computer-Aided-Design/Computer-Aided Manufacturing)システムで切削するための被切削材料であり、その種類及び形状としては特に限定はない。
歯科切削加工用セラミックス材料の形状としては、特に限定はなく、例えば、CAD/CAMシステム用の被切削体セラミックスディスク(外径98.5mm×厚さ20mm)、同セラミックスブロック(幅50mm、奥行50mm、厚さ20mm)等が挙げられる。
歯科切削加工用セラミックス材料の形状は、切削加工機に取り付け及び取り外し可能な形状を有する。切削加工機に取り付け可能な形状とは、例えば、円盤状、直方体などが挙げられる。
歯科用セラミックス焼結体
本発明のセラミックス焼結体の製造方法は、前記セラミックス仮焼結体を焼結(本焼結)させて歯科用セラミックス焼結体を得る工程(以下、「焼結体製造工程」ということもある。)を備えている。
焼結とは、上記仮焼結とは異なる温度で焼成することを意味している。具体的に、焼結温度としては、仮焼結体製造工程における仮焼結温度より高ければ特に限定はなく、例えば、1300℃〜1600℃、好ましくは1350℃〜1550℃、より好ましくは1400℃〜1500℃である。
焼結における保持時間(以下、「保持時間」ということもある。)は、焼結温度により異なる。保持時間として5時間以下、更には3時間以下、また更には2時間以下を例示することができる。
焼結体製造工程は、常圧下又は加圧下で行うことができる。
一般に、歯科用セラミックス材料は、大別すると、高強度タイプと高透過タイプに分かれている。
高強度タイプは、約3mol%の酸化イットリウムが添加されており、曲げ強さが高く光の透過性が低い。
一方、高透過タイプは約5mol%以上の酸化イットリウムが添加されており、曲げ強さが低く光の透過性が高いものである。
焼結雰囲気及び仮焼結雰囲気は、還元性雰囲気でなければよく、酸素雰囲気又は大気雰囲気の少なくともいずれかであることが好ましく、大気雰囲気とすることが簡便である。
以上のような製造方法を経ることにより、図1で示すような歯科用セラミックス焼結体の切端部側から歯頸部側に向かって20%、40%、55%、70%、及び85%の位置をそれぞれA、B、C、D、及びEとした場合に、
前記歯科用セラミックス焼結体の前記A、B、C、D、及びEのいずれの位置間での明暗対比差が、0.03未満である、歯科用セラミックス焼結体を得ることができる。
「歯科用セラミックス焼結体の切端部側から歯頸部側に向かって20%、40%、55%、70%、及び85%の位置をそれぞれA、B、C、D、及びEとした場合」とは、例えば、図1に示すように、歯科用セラミックス焼結体の切端部側から歯頸部側に向かって、20%の位置をA、40%の位置をB、55%の位置をC、70%の位置をD、85%の位置をEとすることを意味している。なお、切端部側はL表色系における彩度Cが最も小さい側であり、歯頸部側はCが最も高い側である。
「A、B、C、D、及びEのいずれの位置間での明暗対比差」とは、図1に示すとおり、本発明のセラミックス焼結体のA、B、C、D、及びEの位置とした場合、その前記セラミックス焼結体において位置決めしたA、B、C、D、及びEのいずれの位置間での明暗対比の差、つまり、
Aの明暗対比とBの明暗対比の差、
Aの明暗対比とCの明暗対比の差、
Aの明暗対比とDの明暗対比の差、
Aの明暗対比とEの明暗対比の差、
Bの明暗対比とCの明暗対比の差、
Bの明暗対比とDの明暗対比の差、
Bの明暗対比とEの明暗対比の差、
Cの明暗対比とDの明暗対比の差、
Cの明暗対比とEの明暗対比の差、及び
Dの明暗対比とEの明暗対比の差の全てを意味している。
すなわち、本発明の製造方法は、焼結後の本発明の歯科用セラミックス焼結体の切端部側から歯頸部側に向かって20%、40%、55%、70%、及び85%の位置をそれぞれA、B、C、D、及びEとした場合に、
A、B、C、D、及びEのいずれの位置間での明暗対比差も0.03未満とすることができる。各層を構成するセラミックス粉末の組成(成分)を調整することにより、自然な色調を有する歯科補綴物を製作可能な歯科用セラミックス仮焼結体を製作することができる。
この歯科用セラミックス仮焼結体から製作された焼結体は、色勾配がありながらも層構造が目視ではほぼ確認できない、又は目視では全く確認できないことから、この歯科用セラミックス仮焼結体を用いることによって自然な色調を有する歯科補綴物を製作することができる。
上記明暗対比差としては、好ましくは0.001以上0.028未満であり、より好ましくは0.002以上0.025未満である。
歯頸部とは、歯根側の材料部位を意味する。切端部とは、歯の先端(切端)部側の材料部位を意味する。なお、本明細書において、「歯頸部側」及び「切端部側」を、「上面」及び「下面」、又は「一端」及び「他端」と言い換えることもできる。
上記位置のいずれの位置においても「明暗対比」の数値としては、特に限定はなく、例えば、0.5以上0.9以下であることが好ましく、0.55以上0.85以下であることがより好ましく、0.6以上0.8以下であることが特に好ましい。
ここで、「明暗対比」とは、透明性を表す尺度であり、JIS Z8781−3:2016に規定されるXYZ表色系の三刺激値のうちの明るさに関するY値を用いて算出するものである。
具体的には、1.0mm厚の試料板に対して、黒背景、及び白背景を接触させ、D55光源の光を照射した際の反射光におけるY値を読み取ることができる。
黒背景の場合のYをYb、白背景の場合のYをYwとすると、明暗対比はYb/Ywから求められる。
明暗対比の値が1に近いほど不透明な材料であり、0に近いほど透明な材料であることを示す。
本発明の歯科用セラミックス材料の焼結体の色度は、L表色系(JIS Z8781−4:2013)によって測定することができる。
表色系による色度の測定方法は、次のとおりである。
本発明の歯科用セラミックス仮焼結体(歯科用被切削体)を層の境界が存在する面と垂直方向が最大の長さである20mmとなるよう20mm×12mm×1.4mmの板状に加工した後、1450℃で2時間焼成して、焼結体を製作した。厚みは、色度に大きく影響するため、試験片を砥粒15μm(粒度1000)のダイヤモンド研磨紙(ダイヤモンドラッピングフィルムLDF−D、三共理化学社製)により1mmの厚みとなるまで研磨し、最終的に約16mm×約10mm×約1.0mmの試験片を得た。その後、分光測色機(PR‐650、Photo Research社製)を用いて測色を行った。測色条件は、光源:D55光源、視野角:2°(度)、背景色:白色である。
前記A、B、C、D、及びEの各位置における色度は、特に限定はなく、例えば、下記表1に示す色度の範囲が挙げられる。
中でも、本発明のセラミック材料を、歯科用補綴物に適用する場合、
位置Aにおいて、
好ましくは、71≦L≦86、−1.5≦a≦10.5、−2≦b≦35、0.5≦C≦37、
より好ましくは、73≦L≦84、−1≦a≦10、0≦b≦33、1≦C≦35であり、
位置Bにおいて、
好ましくは、70≦L≦85、−0.5≦a≦11.5、1≦b≦38、2≦C≦39、
より好ましくは、73≦L≦83、0≦a≦11、3≦b≦36、4≦C≦37であり、
位置Cにおいて、
好ましくは、71≦L≦85、0.5≦a≦12.5、4≦b≦40、6≦C≦41、
より好ましくは、73≦L≦83、1≦a≦12、6≦b≦38、8≦C≦39であり、
位置Dにおいて、
好ましくは、70≦L≦84、0.5≦a≦12.7、5≦b≦41、7≦C≦42、
より好ましくは、72≦L≦82、1≦a≦12.5、7≦b≦39、9≦C≦40であり、
位置Eにおいて、
好ましくは、70≦L≦82、0.5≦a≦12.5、5≦b≦41、8≦C≦42、
より好ましくは、72≦L≦80、1≦a≦12、7≦b≦39、10≦C≦40である。
本発明の焼結体は、このような色度に設定することにより、自然な天然歯の色調に適合させることができる。
<色調>
歯科医師は、患者の口腔内で歯の色調を確認するために、一般的に、シェードガイド「VITAPAN classical(VITA社製)」を使用している。
天然歯の色調は、切端部がエナメル色と呼ばれており、薄く明るい色調であり、歯頸部はサービカル色と呼ばれており、濃く暗い色調であり、中央部は切端部と歯頸部の中間色であり、象牙質色とも呼ばれている。
シェードガイドは、このような天然歯全体の色勾配のある色調を模したものであるため、切端部及び歯頸部の色調が天然歯と同程度に異なっている。このシェードガイドは色の系統により16種の色数(シェード)があり、薄い色から濃い色までラインアップされている。
また、シェードガイドの形状は、歯科補綴物(前歯)と同様の形状をしているため、歯科材料の色調設計の参考とすることができる。
<色度(L,a,b)の差(色差)>
上記シェードガイドは、図1のFの形状と近似しており、図1に示す位置A(切端部)と位置E(歯頸部)の部分を分光測色機で測色し、位置Aと位置Eの部分の色差(ΔE)を、下記(式1):
から求めた結果、切端部と歯頸部の色差(ΔE)は16種のシェードにおいて、最小の値は4.8で最大の値は12であった。ここで、Δは、デルタと言い換えることができる。
天然歯の色調を再現するためには、シェードガイドと同程度の色差が必要と考えられるため、切端部側から歯頸部側に向かって20%、40%、55%、70%、及び85%のいずれの位置間においても明暗対比差を0.03未満に抑えるだけでなく、さらにAとEの位置の色差ΔEが4以上13以下を満たすように、切端部側から歯頸部側に向かって色が濃くなることで、色勾配のある色調を有しながら違和感のない自然な色調の歯科補綴物を提供することができる。前記差ΔEは、好ましくは4.5以上12.5以下、より好ましくは4.8以上12以下である。
本発明の製造方法によれば、焼結後のセラミックス積層体の各層の明暗対比差が小さくなり、各層の境界面が目立たないため、滑らかな色勾配のセラミックス焼結体を製作することができる。
<3点曲げ強さ>
本発明の歯科用セラミックス焼結体のJIS T6526:2018に準拠して測定した3点曲げ強さは、特に限定はないが、好ましくは600MPa以上、より好ましくは650MPa以上、特に好ましくは700MPa以上である。
<仮焼結体の反り>
本発明のセラミックス積層体において、各層中の着色用金属酸化物の含有量が違っていても、完全焼結されると最終的に同程度の収縮挙動を示すが、その成分の違いにより焼結時の収縮の速度が異なるため、焼結を途中で止めるセラミックス仮焼結体には反りが発生する。
具体的には、色調を変化させる積層体において、着色用金属酸化物が多く含まれる歯頸部側が切端部側よりも速く収縮するため、積層体は、仮焼結後に図2のように歯頸部側が円弧の内側となるような反り方をする。
この仮焼結体の反り具合が大きい状態で切削加工すると、最終焼結体である歯科補綴物の支台歯への適合が合わなくなり、口腔内で使用できなくなる。このため、仮焼結体の反りを小さくする必要があり、仮焼結温度を調整することによって解決することが可能である。
このセラミックス仮焼結体の反りは、切端部側の面と歯頸部側の面の仮焼結における線収縮率の差(以下、「線収縮率差」ともいう。)によって評価することができる。具体的には、図2に示す歯頸部側の面の長さ又はその直径、及び切端部側の面の長さ又はその直径を、仮焼結前と仮焼結後において計測し、下記(式2)及び(式5)を用いることにより歯頸部側の面と切端部側の面の線収縮率の差を算出することで評価できる。
<線収縮率>
線収縮率は、下記(式2):
により導き出される。
図2に示す記号を用いると、歯頸部側及び切端部側の線収縮率はそれぞれ、下記(式3)及び(式4)で表すことができる。
歯頸部側及び切端部側の線収縮率は、前記歯科用セラミックス仮焼結体の切端部側の面の長さ、又はその直径を、寸法計測機を用いて、仮焼結前と仮焼結後において計測し、(式2)を適用することにより算出する。
<線収縮率差>
線収縮率差は、下記(式5):
により導き出される。
線収縮率差は、上記(式5)で示されるように前記歯科用セラミックス仮焼結体の切端部側の線収縮率と歯頸部側の線収縮率との差を取ったものである。
上記(式5)を用いてこの線収縮率差を求めることにより、セラミックス積層体を仮焼結させた後、セラミックス仮焼結体における反りの程度を数値化することができる。
<拡大係数>
反りの有無についての線収縮率差の判断基準は、JIS T6526:2018に記載されている値に基づいて設定した。このJIS T6526:2018の要求事項に拡大係数(加工係数、収縮係数)は、製造販売業者が指定する値の±0.002でなければならないとあることから、0.002までの拡大係数の差異は許容される。
拡大係数とは、セラミックスが焼結により収縮するため、最終的に得られる歯科補綴物が設計通りの寸法となるように、収縮を考慮して焼結前の切削加工物の切削データ(STLデータ)に拡大係数を乗じる際に必要な情報である。
例えば、拡大係数が1.2の場合、10mmの歯科補綴物を製作するには、焼結前の切削加工物は12mmで製作する必要があり、この拡大係数が製品に表示されている数字と許容範囲(±0.002)以上になると、歯科補綴物の適合が合わなくなって、口腔内で使用できなくなる。したがって、この拡大係数を一定の範囲内にすることは、セラミックス材料の品質として大変重要である。
また、このJIS T6526:2018の要求事項は、本焼結における拡大係数であるが、拡大係数の差異が小さければ、焼結後の歯科補綴物の適合精度に問題ないため、この拡大係数は、仮焼結における反りの評価にも適用することができる。
ただし、拡大係数は、本焼結時の寸法変化から算出される値であり、仮焼結時の反りについては、仮焼結前後の寸法変化から算出される線収縮率で評価することが妥当である。
つまり、セラミックスを仮焼する際に、仮焼結前後の歯頸部側の面及び切端部側の面の寸法を測定し、それぞれの線収縮率を算出し、その値の差から反りを評価することができる。
拡大係数は、下記(式6):
で表され、
線収縮率は、上記(式2)を書き換えると、下記(式7):
で表わすことができる。すなわち、上記(式7)の線収縮率は、下記(式8):
で表すことができる。
一般的に、セラミックス材料、特にジルコニア材料は、仮焼結後から本焼結後に約20%収縮するため、拡大係数は、約1.250である。拡大係数の差異の許容範囲が±0.002であるため、セラミックス材料に表示する拡大係数が1.250の場合は、最大で1.252の範囲に制御された品質である必要がある。(式8)を用いて拡大係数が1.250の場合の線収縮率に換算すると20%であり、拡大係数が1.252の場合は、20.128%であり、その差は0.128%となる。
つまり、セラミックス材料の仮焼結後から本焼結での拡大係数が1.250での0.002の差は、線収縮率差に換算すると約0.128%であることから、歯頸部側の面及び切端部側の面の線収縮率差が0.12%以下であれば、仮焼結体の反りが影響する歯科補綴物の適合不良が発生しないと判断できる。前記歯科用セラミックス仮焼結体の切端部側の面と歯頸部側の面の仮焼結における線収縮率差が0.12%以下、好ましくは0.09%以下、より好ましくは0.06%以下となるように、上記仮焼条件を調整することで、適合性に優れた仮焼結体が得られる。
3.歯科補綴物
歯科補綴物とは、歯の欠損を修復するための人工物(歯冠又は義歯)のことである。本発明の上記歯科用セラミックス仮焼結体を、CAD/CAMシステムを用いて削り出し、歯科補綴物を製作することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
実施例1〜8
本発明の歯科用セラミックス焼結体及び歯科補綴物は、下記工程(1)、工程(2)、工程(3)、工程(4)、工程(5)、仮焼結工程、切削加工工程、及び焼結工程を経て製作した。
<工程(1):混合工程、及び工程(2):準備工程>
[原料]
(高強度タイプ)
ジルコニア粉末
・Zpex(登録商標)(東ソー社製;比表面積12〜13m/g)
高強度タイプのジルコニア粉末とは、本焼結体の強度が高いが、光透過性は低い(1mm厚ペレットで透過率が約40%)原料粉末である。
着色用ジルコニア粉末
・Zpex(登録商標)−Yellow(東ソー社製;比表面積12〜13m/g)
・Zpex(登録商標)−Pink(東ソー社製;比表面積12〜13m/g)
・Zpex(登録商標)−Gray(東ソー社製;比表面積12〜13m/g)
着色するために、ジルコニア粉末に微量の着色用金属酸化物を混合する場合、均一分散が容易ではないため、あらかじめジルコニア粉末と着色用金属酸化物とが十分に混合された市販の上記着色用ジルコニア粉末を用いた。
(高透過タイプ)
ジルコニア粉末
・Zpex Smile(登録商標)(東ソー社製;比表面積10m/g)
高透過タイプのジルコニア粉末とは、本焼結体の光透過性が高い(1mm厚ペレットで透過率が約50%)が、強度は低い原料粉末である。
着色用ジルコニア粉末
・Zpex Smile(登録商標)−Yellow(東ソー社製;比表面積10m/g)
・Zpex Smile(登録商標)−Gray(東ソー社製;比表面積10m/g)
(比較例)
ジルコニア粉末
・Zpex(登録商標)4(東ソー社製;中強度・中透過タイプ)
着色用ジルコニア粉末
・Zpex(登録商標)4−Yellow(東ソー社製;中強度・中透過タイプ)
・Zpex(登録商標)−Pink(東ソー社製;比表面積10m/g)
原料であるジルコニア粉末及び着色用ジルコニア粉末の組成を、下記表2〜表4に示す。
(高強度タイプ)
実施例1
高強度タイプのジルコニア粉末であるZpexと、着色用ジルコニア粉末であるZpex−Yellow、Zpex−Pink、及びZpex−Grayとを、下記表6の組成となるように混合し、下記表5に示す粉末1〜3をそれぞれ準備した。
実施例2〜4
また、下記表7〜9の組成に代えた以外は、実施例1と同様の方法で粉末4〜6、粉末7〜9、及び粉末10〜12をそれぞれ準備した。
(高透過タイプ)
実施例5
高透過タイプのジルコニア粉末であるZpex Smileと、着色用ジルコニア粉末であるZpex Smile−Yellow、Zpex Smile−Gray、及びZpex−Pinkとを、下記表10の組成となるように混合し、下記表5に示す粉末13〜15をそれぞれ準備した。
実施例6〜8
また、下記表11〜13の組成に代えた以外は、実施例5と同様の方法で粉末16〜18、粉末19〜21、及び粉末22〜24をそれぞれ準備した。
比較例1
比較のため、次のジルコニア焼結体を製作した。ジルコニア粉末である、中強度・中透過タイプのZpex4と、着色用ジルコニア粉末であるZpex4−Yellow、Zpex−Pink、及びZpex−Grayとを、下記表14の組成となるように混合し、着色用金属酸化物の割合が、酸化エルビウム:酸化鉄=2:1〜10:1、酸化鉄:酸化コバルト=11:1〜33:1の条件のうち、少なくとも一つを満たさない粉末25〜27を準備した。
<工程(4):加圧工程>
実施例1〜8及び比較例1
工程(3)で得られた実施例1〜8及び比較例1に記載のセラミックス積層体1〜8及び比較積層体1にそれぞれ直圧プレス処理を行った。次に、冷間等方圧加圧法(CIP)により加圧してセラミックス積層体(成形体)1〜8及び比較セラミックス積層体(成形体)1を製作した。
<工程(5):旋盤加工工程>
実施例1〜8及び比較例1
工程(4)で得られたセラミックス積層体(成形体)1〜8及び比較セラミックス積層体(成形体)1を、旋盤加工により円柱状の成形体の両面を加工し、厚みが20.1mmのセラミックス積層体(成形体)1〜8及び比較セラミックス積層体(成形体)1をそれぞれ得た。
<仮焼結工程>
実施例1〜4
上記表6〜表9に記載のセラミックス組成物1〜4から製作された本発明のセラミックス積層体1〜4を、それぞれ850℃で20時間焼成して本発明のセラミックス仮焼結体1〜4を製作した。
実施例5〜8
上記表10〜表13に記載のセラミックス組成物5〜8から製作された本発明のセラミックス積層体5〜8を、それぞれ900℃で10時間焼成して本発明のセラミックス仮焼結体5〜8を製作した。
比較例1
上記表14に記載の比較セラミックス組成物1から製作された比較セラミックス積層体1を、1000℃で3時間焼成して比較セラミックス仮焼結体1を製作した。
<切削加工工程>
実施例1〜8及び比較例1
上記仮焼結工程で得られたセラミックス仮焼結体1〜8及び比較セラミックス仮焼結体1を、CAD/CAMシステムの切削加工機(DWX−50、ローランドD.G.社製)を用いて切削加工し、20mm×12mm×1.4mmの板状の切削加工物1〜8及び比較切削加工物1を得た。
<焼結工程>
実施例1〜8及び比較例1
上記切削加工物1〜8及び比較切削加工物1を、それぞれ1450℃で2時間焼成して、セラミックス焼結体1〜8及び比較セラミックス焼結体1を製作した。これらを砥粒15μm(粒度1000)のダイヤモンド研磨紙(ダイヤモンドラッピングフィルムLDF−D、三共理化学社製)により1mm±0.05mmの厚みとなるまで研磨し、最終的に(16mm±0.5mm)×(10mm±0.5mm)×(1.0mm±0.05mm)の明暗対比及び色度評価用の試験片1〜8及び比較試験片1を得た。
また、従来技術として、下記の比較例2及び3を示す。
比較例2
既製品の積層ジルコニア(カタナジルコニアUTML、クラレノリタケデンタル社製)のA3シェードを用いた。これは、異なる4つの色調を有する層を積層させたジルコニアディスクであり、特開2014−218389号公報をもとに製作されたものであると推測される。
比較例2の試料において、層の境界が存在する面と垂直方向が最大の長さとなるように実施例と同様の方法で板状に加工した後、メーカーにより指定された条件で焼成し、厚み調整を行い、明暗対比及び色度評価用の比較試験片2を得た。
比較例3
既製品で2層構造をもつ樹脂系材料であるハイブリッドレジンブロック(松風ブロックHC2レイヤー、松風社製)のA3シェードを用いた。これは、特開2018−086047号公報に記載の技術を有するメーカーが製作したものである。
上記ハイブリッドレジンブロックは、樹脂系材料であることから、焼結工程が不要である。このハイブリッドレジンにおける層の境界が存在する面と垂直方向が最大の長さとなるように、ダイヤモンドカッターブレードを装着した切断機を用いて切断し、粒度1000及び粒度2000の耐水研磨紙(C34P、理研コランダム社製)を用いて実施例と同じ厚みになるよう調整を行い、明暗対比及び色度評価用の比較試験片3を得た。
[試験例]
<明暗対比>
セラミックス焼結体の切端部側から歯頸部側に向かって20%、40%、55%、70%、及び85%の位置をそれぞれA、B、C、D、及びEとした場合、A〜Eの5点の明暗対比を測定した。
明暗対比は、分光測色機を用いて測定した。
<明暗対比差>
上記明暗対比の測定結果に基づいて、各位置の明暗対比の差の最大値を求めた。その結果を下記表15〜表17に示す。
表15〜17において、いずれの位置間においても明暗対比差の最大値が0.03未満である場合を「判定○」、0.03以上である場合を「判定×」とした。
なお、下記表15〜17において、明暗対比(項目A〜E)の「(0.5〜0.9)」という数値範囲、及び明暗対比差の最大値「(0.03未満)」という数値は、本願発明で得られるセラミックス焼結体の合格値を意味している。
<色度>
A〜Eそれぞれの地点に対して、L表色系による色度を測定した。
色度は、分光測色機を用いて測定した。
色度の測定結果及びAとEの位置の色差ΔEを表18〜表20に示す。
なお、下記表18〜20において、色度(項目)及び色差ΔEに記載する数値範囲は、本願発明で得られるセラミックス焼結体の合格値を意味している。
<結果>
その結果、実施例1〜8の試験片1〜8は、上記表15及び表16に示すとおり、いずれの位置においても明暗対比が0.5以上0.9以下の範囲に入っており、また、いずれの位置間における明暗対比差も0.03未満であった。
さらに、実施例1〜8の試験片1〜8は、上記表18及び表19に示すように、上記A〜Eのいずれの位置においても色度の範囲は本発明において指定した範囲内に入っており、AとEの位置の色差ΔEは4以上13以下の範囲内に入っていた。
以上のとおり、実施例1〜8の試験片1〜8は、すべて自然な色の勾配を有しており、明暗対比が均一に設計されているため層の境界面が判別できない色調になっていることが目視でも確認された。
一方、比較試験片1〜3は、上記表17に示すとおり、明暗対比差の最大値が0.03以上であった。また、比較試験片1〜3の色度の値は、上記表20に示すとおりA〜Eの各位置に おいて指定した範囲内に入っており、AとEの位置の色差ΔEは、4以上13以下の範囲に入っていたが、明暗対比が均一になっていないため、実施例と比べると層の境界面が判別されやすい積層構造になっていることが目視でも確認された。
<ビッカース硬さ>
前記仮焼結工程後のセラミックス仮焼結体の切端部側の面及び歯頸部側の面のビッカース硬さを、ミツトヨ社製の硬さ試験機(HV-113)を用いて、荷重1kgf、加圧時間15秒にて測定した。そのビッカース硬さの測定結果を下記表21に示す。
なお、比較例3の被切削体は、材質が樹脂系材料であり、材質がジルコニアである実施例と比較評価できないため測定していない。
<結果>
その結果、実施例1〜8に記載の仮焼結体1〜8は、いずれもビッカース硬さが30以上70以下に収まっていた。これら仮焼結体1〜8は、切削加工工程において、試験片の欠け、脱落等が見られず、良好な切削加工性であることが確認できた。
一方、比較例1及び比較例2の仮焼結体は、いずれもビッカース硬さが70を超えていた。比較例1及び比較例2の試験片は実施例と比べると、加工時に試験片の角にわずかに欠けが確認された。
<線収縮率差>
仮焼結工程前後の寸法から導き出される線収縮率差により、仮焼結体の反りの有無について確認した。切端部側の面及び歯頸部側の面の直径を、それぞれ仮焼結前後で測定して線収縮率
(%)を算出し、切端部側の面及び歯頸部側の面の線収縮率差(%)が0.12%以下であるか確認した。切端部側の面及び歯頸部側の面の直径の測定は寸法測定機(NZRプリプレート、アクシス社製)を用いて行った。線収縮率差を下記表22に示す。
なお、切端部側の面及び歯頸部側の面の線収縮率差が0.12%以下である場合を「判定○」、0.12を超える場合を「判定×」とした。また、比較例2の既製品は、仮焼結後の状態であり仮焼結工程前の寸法を測定することができないため、また、比較例3のハイブリッドレジンブロックは樹脂系材料であり仮焼結工程が存在しないため、比較例2及び比較例3については、仮焼結前後の反りの評価をしていない。
<結果>
その結果、実施例1〜8の仮焼結体1〜8は、いずれも線収縮率差が0.12%以下であった。一方、比較例1の仮焼結体は、線収縮率差が0.12%を超えており、目視でも仮焼結体に反りが確認された。
<3点曲げ強さ>
上記実施例1〜8で得られた本発明の焼結体1〜8及び比較例1〜2を20mm×4mm×1.2mmとなるよう加工し、試験片を実施例ごとに10本ずつ用意した。
JIS T6526:2018に準拠して測定した3点曲げ強さを測定し、600MPa以上である場合を合格とした。その結果を表23に示す。
なお、比較例3の被切削体は、材質が樹脂系材料であり、材質がジルコニアである実施例と比較評価できないため測定していない。
実施例1〜4に記載の焼結体は高強度タイプであり、いずれも1200MPa以上であり600MPa以上を満たした。また、実施例5〜8に記載の焼結体は高透過タイプであり、強度が低い組成のジルコニア材料であるが、本発明の3点曲げ強さが600MPa以上であるという要件を満たしていた。
一方、比較例1の焼結体は、600MPaよりも高い3点曲げ強さを示した。比較例2の焼結体は、600MPaよりも低い3点曲げ強さを示した。
本発明の歯科用セラミックス材料は、CAD/CAMシステムを用いた切削加工により歯科補綴物を製作するセラミックス材料のブロック又はディスクに利用することができる。
A 切端部側から20%の位置
B 切端部側から40%の位置
C 切端部側から55%の位置
D 切端部側から70%の位置
E 切端部側から85%の位置
F 歯科補綴物(前歯)の形状
L1 焼結前における歯頸部側の面の直径
L2 焼結前における切端部側の面の直径
L3 焼結後における歯頸部側の面の直径
L4 焼結後における切端部側の面の直径

Claims (15)

  1. セラミックス積層体を仮焼結させて歯科用セラミックス仮焼結体を得る工程、及び
    前記歯科用セラミックス仮焼結体を焼結させて歯科用セラミックス焼結体を得る工程を備える、歯科用セラミックス焼結体の製造方法であって、
    前記セラミックス積層体の層数は、3層であり、
    前記セラミックス積層体は、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化エルビウム、酸化鉄、及び酸化コバルトを含有し、
    前記歯科用セラミックス焼結体の切端部側から歯頸部側に向かって20%、40%、55%、70%、及び85%の位置をそれぞれA、B、C、D、及びEとした場合に、
    前記歯科用セラミックス焼結体における前記A、B、C、D、及びEのいずれの位置間での明暗対比(Yb/Yw;前記Ybは、黒背景の場合のYを、前記Ywは、白背景の場合のYを示す。)の差が、0.03未満である、歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
  2. 前記歯科用セラミックス焼結体において、前記A、B、C、D、及びEの明暗対比が、それぞれ0.5以上0.9以下である、請求項1に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
  3. 前記歯科用セラミックス焼結体のLの範囲が、前記A、B、C、D、及びEの各位置において、
    A(20%):69≦L≦89,−2≦a≦11,
    −5≦b≦38, 0≦C≦40;
    B(40%):68≦L≦88,−1≦a≦12,
    −2≦b≦40, 0≦C≦42;
    C(55%):68≦L≦88, 0≦a≦13,
    1≦b≦42, 3≦C≦44;
    D(70%):67≦L≦87, 0≦a≦13,
    2≦b≦44, 4≦C≦45;及び
    E(85%):67≦L≦85, 0≦a≦13,
    3≦b≦44, 5≦C≦45
    である、請求項1又は2に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
  4. 前記A及びEの位置における色差ΔEが、4以上13以下である、請求項1〜3の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
  5. 前記歯科用セラミックス仮焼結体を得る工程が、セラミックス積層体を、最高係留温度が950℃以下の温度で仮焼結させることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
  6. 前記歯科用セラミックス仮焼結体の切端部側の面における線収縮率と歯頸部側の面における線収縮率との差が、0.12%以下である、請求項1〜5の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
  7. 前記歯科用セラミックス焼結体における前記A、B、C、D、及びEのいずれの位置間での明暗対比(Yb/Yw;前記Ybは、黒背景の場合のYを、前記Ywは、白背景の場合のYを示す。)の差が、0.01以下である、
    請求項1〜6の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
  8. セラミックス積層体を仮焼結させて歯科用セラミックス仮焼結体を得る工程、及び
    前記歯科用セラミックス仮焼結体を焼結させて歯科用セラミックス焼結体を得る工程を備える、歯科用セラミックス焼結体の製造方法であって、
    前記セラミックス積層体の層数は、3層であり、
    前記セラミックス積層体は、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化エルビウム、酸化鉄、及び酸化コバルトを含有し、
    前記歯科用セラミックス焼結体の切端部側から歯頸部側に向かって20%、40%、55%、70%、及び85%の位置をそれぞれA、B、C、D、及びEとした場合に、
    前記歯科用セラミックス焼結体における前記A、B、C、D、及びEのいずれの位置間での明暗対比(Yb/Yw;前記Ybは、黒背景の場合のYを、前記Ywは、白背景の場合のYを示す。)の差が、0.03未満である、歯科用セラミックス焼結体の製造方法であって、
    前記酸化エルビウム:前記酸化鉄の配合割合が、2:1〜10:1、及び
    酸化鉄:酸化コバルトの配合割合が、11:1〜300:1である、歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
  9. 前記歯科用セラミックス焼結体における前記A、B、C、D、及びEのいずれの位置間での明暗対比(Yb/Yw;前記Ybは、黒背景の場合のYを、前記Ywは、白背景の場合のYを示す。)の差が、0.001以上0.03未満である、請求項1に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
  10. 前記歯科用セラミックス焼結体のJIS T6526:2018に準拠して測定した3点曲げ強さが、600MPa以上である、請求項1〜9の何れか一項に記載の歯科用セラミックス焼結体の製造方法。
  11. セラミックス積層体を仮焼結させて歯科用セラミックス仮焼結体を得る工程、及び
    前記歯科用セラミックス仮焼結体を焼結させて歯科用セラミックス焼結体を得る工程により製造された、歯科用セラミックス焼結体であって、
    前記セラミックス積層体の層数は、3層であり、
    前記セラミックス積層体は、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化エルビウム、酸化鉄、及び酸化コバルトを含有し、
    歯科用セラミックス焼結体の切端部側から歯頸部側に向かって20%、40%、55%、70%、及び85%の位置をそれぞれA、B、C、D、及びEとした場合に、
    前記歯科用セラミックス焼結体における前記A、B、C、D、及びEのいずれの位置間での明暗対比(Yb/Yw;前記Ybは、黒背景の場合のYを、前記Ywは、白背景の場合のYを示す。)の差が、0.03未満である、歯科用セラミックス焼結体。
  12. 請求項11に記載の歯科用セラミックス焼結体を製作するための歯科用セラミックス仮焼結体。
  13. 請求項11に記載の歯科用セラミックス焼結体を製作するための歯科用セラミックス仮焼結体であって、
    ビッカース硬さ(HV1)が、30以上70以下である、前記歯科用セラミックス仮焼結体。
  14. 請求項12又は13に記載の歯科用セラミックス仮焼結体をCAD/CAMシステムを用いて切削加工した後、焼結された歯科用補綴物。
  15. 請求項12又は13に記載の歯科用セラミックス仮焼結体が焼結された歯科用補綴物。
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