本発明の歯科用ミルブランクの製造方法は、重合前の硬化性組成物を積層し、少なくとも2層から構成される、重合前の積層体を得る工程〔I〕、及び前記工程〔I〕で得られた積層体を重合する工程〔II〕を含む。また、前記硬化性組成物は、無機充填材と重合性単量体含有組成物とを含む。前記硬化性組成物は、無機充填材と重合性単量体含有組成物とを含む限り特に限定されず、例えば、重合性単量体含有組成物と無機充填材を混練して得ることができる。
[工程〔I〕]
工程〔I〕では、重合前の硬化性組成物を積層し、少なくとも2層から構成される、重合前の積層体を得る。工程〔I〕としては、少なくとも2層から構成される重合前(未重合)の積層体を得られ、積層する間に重合を行わない限り特に限定されないが、例えば、1つの容器内に少なくとも2層に積層して収容された前記重合前の硬化性組成物を押し出すことによって、未重合(重合前)の積層体を得る方法〔I−1〕;2以上の容器内に別々に収容された前記重合前の硬化性組成物を押し出したのち、積層して積層体を得る方法〔I−2〕等が挙げられる。
工程〔I〕では、例えば、第1の重合前の硬化性組成物を容器の内部に充填して第1層を形成した後、少なくとも第2の重合前の硬化性組成物を容器の内部に充填して重合前の積層体を形成する。工程〔I〕において、得られる重合前の積層体は、少なくとも3層から構成されるものであってもよい。すなわち、工程〔I〕において、重合前の硬化性組成物を3つ以上使用してもよい。工程〔I〕では重合前の硬化性組成物を第1層の上に順に充填することによって、第1層〜第m層を有する、重合前の積層体を形成する。本明細書において、mは2以上の自然数を表し、審美性の観点から、3以上が好ましく、3又は4がより好ましい。工程〔I〕では、硬化性組成物を充填する度にその上面を平滑化することが、得られる歯科用ミルブランクの審美性の観点から好ましい。
工程〔I−1〕では、重合前の積層体は、1つの容器内に少なくとも2層に積層して収容された重合前の硬化性組成物を押し出すことによって形成される。例えば、積層して収容された硬化性組成物を積層方向と直交する方向に容器から押し出し、分割(切断)することによって、積層体を形成してもよい。歯科用ミルブランクの分割には、ダイヤモンドカッター等の特殊な切断装置が必要となるが、重合前の硬化性組成物の分割は、特殊な切断装置を必要とせず、公知の切断装置を用いて容易に実施することができる。なお、積層された硬化性組成物を容器から押し出す方法は、特に限定されない。例えば、容器を構成する面の1つが、面の厚み方向に移動できる機構(例えば、ピストン等)を備える容器を利用してもよい。
工程〔I−2〕では、積層体が、2以上の容器内に別々に収容された重合前の硬化性組成物を押し出したのち、積層して形成される。例えば、第1の容器に収容された第1の硬化性組成物を押し出し、第2の容器にそれぞれ収容された第2の硬化性組成物を押し出し、押し出された第1の硬化性組成物の上に第2の硬化性組成物を積層することによって、少なくとも2層から構成される、重合前の積層体を形成してもよい。工程〔I−2〕では、使用する硬化性組成物の数に応じて、使用する容器の数を増やしてもよい。例えば、重合前の積層体が、少なくとも3層から構成される場合、3以上の容器内に別々に収容された重合前の硬化性組成物を押し出したのち、積層して形成される。このような方法によれば、容器の形状により層の形状を適宜設定することができるため、目的とする積層体の形状を容易に形成することができる。
また、工程〔I〕の他の実施形態としては、重合前の積層体が、少なくとも3層から構成される場合、2以上の容器内に重合前の硬化性組成物が収容されており、そのうち少なくとも1つの容器内に2以上の重合前の硬化性組成物が積層して収容され、前記それぞれの容器から硬化性組成物を押し出したのち、すべての硬化性組成物を積層して積層体を形成する方法が挙げられる。例えば、第1の容器に、第1の硬化性組成物と、第2の硬化性組成物とが積層して収容されていてもよい。
本発明で用いられる硬化性組成物は、積層させるために適切な稠度が必要であり、例えば、ペースト状の形態を示す稠度、糊状の形態を示す稠度が好ましい。稠度としては、5〜100であることが好ましい。稠度は、例えば、10〜45であることがより好ましく、12〜40であることがさらに好ましい。稠度が5より小さい場合は、ペーストが固いため操作性が悪くなるおそれがある。一方、稠度が100より大きい場合は、ペーストが垂れすぎてしまい、うまく積層できないおそれがある。本明細書において、稠度とは、硬化性組成物を真空脱泡後、シリンジに充填し、25℃で2時間静置することによって調製した試料0.5mlを、25℃の恒温室内(湿度40%)でガラス板(5cm×5cm)の中心に盛り上げる様に静置し、その上に40gのガラス板(5cm×5cm)を載せ、120秒経過後のガラス板越しに測定される試料の長径及び短径の算術平均を算出した値のことである。なお、長径とは、ガラス板の面内における試料の中心を通る直径のうち最も長いものを指し、短径とは、ガラス板の面内における試料の中心を通る直径のうち試料の長径に直交するものを指す。
工程〔I〕で得られる積層体における、各層の厚み及び層の数は特に限定されない。歯科用ミルブランクは、積層体の層の数が多いほど、天然歯に近い色調を再現しやすくなり、2〜4層の積層体において天然歯に近い色調を発現でき、色調の点から3層又は4層の積層体が好ましい。また、積層体の層の厚みが、0.6mm〜10mmの場合に、得られる歯科用ミルブランクは天然歯に近い色調を発現できる。
積層体の形状は、少なくとも2層から構成されている限り特に限定されない。積層体は、例えば、縦10〜70mm×横5〜30mm×高さ5〜30mmの角柱状、又は、直径70〜120mm、厚み8〜35mmの円板状であってもよい。さらに、積層体は、縦、横、高さのいずれか一辺が100mm以上の長さである角柱状であってもよい。
工程〔I〕で用いられる容器は、硬化性組成物を収容することができれば、形状、材質、容量等は特に限定されない。容器の形状としては、例えば、直方体状、立方体状、円柱状、チューブ状等が挙げられる。容器の材質としては、例えば、金属、プラスチック、エンプラ、陶磁器、セラミックス、アルミニウム、ゴム等が挙げられる。前記プラスチックとしては、例えば、フッ素樹脂が好ましく、テフロン(登録商標)がより好ましい。容器の容量は、必要とされる積層体の大きさに応じて適宜設定することができる。
本発明において、積層体は、重合前の第1〜第mの硬化性組成物が順に積層されたものであるため、隣接する2つの層(例えば、第(m−1)層及び第m層)に含まれる硬化性組成物(例えば、第(m−1)の硬化性組成物、及び第mの硬化性組成物)が、隣接する層間の境界部分の近辺で微視的に混ざり合う。そのため、前記積層体から得られる歯科用ミルブランクは、隣接する層間の境界部分が不明瞭になり、審美性が高い。
工程〔II〕において、工程〔I〕で得られた積層体を重合する方法は、特に限定されない。工程〔II〕において、重合前の硬化性組成物を積層して得られた積層体を一括重合することによって、各層間の境界を不明瞭にすることができ、かつ各層間の境界部分での機械的強度が高い歯科用ミルブランクを得ることができる。また、一括重合によってこのような効果が得られることから、色調を天然歯に近づけることを目的として層の数を増やしても製造効率に優れ、工業的に有利である。積層体を構成する硬化性組成物には重合性単量体が含まれているため、例えば、加熱重合及び/又は光重合及び/又は化学重合によって、積層体を重合することができる。また、重合条件は、特に限定されず、公知の条件を利用できる。例えば、光重合は、可視光だけでなく、UV光を用いてもよい。また、積層体を、窒素ガス等の不活性雰囲気下あるいは減圧環境下で重合することで、重合率を高め、機械的強度をより高めることができる。例えば、加熱重合の温度は、特に限定されないが、40〜150℃程度が好ましい。また、加熱重合の時間は、特に限定されないが、30分〜96時間程度が好ましい。重合工程は、重合前の硬化性組成物を積層した、未重合の積層体を一括して重合する限り、特に限定されず、二段階で行ってもよい。例えば、加熱重合を、温度を変えて二段階で行ってもよい。重合工程を二段階で行うことによって、重合の際に、積層体に亀裂が入ることを防ぐことができる。
また、積層体の重合後にさらに加熱処理を行ってもよい。加熱処理をすることによって、得られた重合体の内部に生じた応力歪を緩和し、歯科用補綴物切削加工中又は臨床使用中に生じる歯科用補綴物の破損を抑制することができる。加熱処理の温度は、特に限定されないが、80〜150℃が好ましい。加熱処理の時間は、特に限定されないが、10分〜96時間程度が好ましい。前記のとおり、工程〔I〕によって得られた積層体において、隣接する層に含まれる硬化性組成物は、隣接する層間の境界部分の近辺で微視的に混ざり合っている。そのため、積層体を重合することによって得られる歯科用ミルブランクは、隣接する層間の境界部分での強度が従来と比べて高い。
本発明の製造方法によって得られる歯科用ミルブランクは、層間の界面が目視で不明瞭である。界面が不明瞭であると、切削加工してクラウン等の補綴物を作製した際に、段になったように見えないため、審美性に優れる。これは、重合前の硬化性組成物を積層することで、隣接する層間の境界部分の近辺(界面)において色調の異なる硬化性組成物同士が接触して微視的に混ざり合うためである。従来のように、コンポジットレジンを重合させて、その上に他のコンポジットレジンを積み重ねる方法では、一方のコンポジットレジンが重合硬化しているため、隣接する層間の界面においてコンポジットレジン同士が混ざり合うことができず、界面が明瞭な歯科用ミルブランクになる。界面が明瞭な歯科用ミルブランクは、切削加工してクラウン等の補綴物を作製した際に、段になったように見えるため、審美的に好ましくない。
本発明に用いられる歯科用ミルブランクの色度は、特に限定されないが、積層体において隣接する2つの層(例えば、第(m−1)層及び第m層)に含まれる硬化性組成物(例えば、第(m−1)の硬化性組成物、及び第mの硬化性組成物)をそれぞれ単独で重合した場合に得られる2つの重合体間の色差ΔE*が、2.0以上であることが好ましい。色差ΔE*が、2.0以上である場合、未重合の積層体を重合(一括重合)した際に、より天然歯に近い色調の歯科用ミルブランクが得られる。また、本明細書において色差とは、JIS Z 8781−4:2013に規定された、CIE 1976 L*a*b*色空間における明度指数L*、色座標a*、b*を用いて、2つの試料(色刺激)について、下記式(1)によって求められる色差ΔE*(ΔE*ab)のことをいう。
ΔE*={(L1*−L2*)2+(a1*−a2*)2+(b1*−b2*)2}1/2 (1)
なお、重合体における、L*a*b*表色系による色度は、硬化性組成物を重合させ、直径15mm、厚さ1mmの硬化板(色度板)を作製し、色度板の色(白背景のL1*,a1*,b1*)を分光色差計(日本電色工業社製、SE6000、光源D65/2)を用いて測定することによって求められる。
前記色差ΔE*を調整するため、及び、得られる歯科用ミルブランクを歯質に近似した色調とするために、硬化性組成物には顔料を適宜添加することができる。第1〜第mの硬化性組成物に添加される各顔料は、互いに同じであっても異なっていてもよいが、隣接する層に使用される硬化性組成物同士の色差が、2.0以上となるように選ぶことが好ましい。前記顔料としては、歯科用コンポジットレジンに用いられている公知の顔料を特に限定されず使用できる。前記顔料としては、無機顔料及び/又は有機顔料のいずれでもよく、無機顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄等のクロム酸塩;紺青等のフェロシアン化物;銀朱、カドミウム黄、硫化亜鉛、カドミウムレッド等の硫化物;硫酸バリウム、硫酸亜鉛、硫酸ストロンチウム等の硫酸塩;アンチモン白、亜鉛華、チタン白、ベンガラ、鉄黒、酸化クロム等の酸化物;水酸化アルミニウム等の水酸化物;ケイ酸カルシウム、群青等のケイ酸塩;カーボンブラック、グラファイト等の炭素等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY等の二トロン系顔料;ナフトールS、リソールファストイエロー2G等のニトロ系顔料;パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー等の不溶性アゾ系顔料;リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD等の難溶性アゾ系顔料;ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3B、ボルドー10B等の可溶性アゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー等のフタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性染料系顔料;ピーコックブルーレーキ、エオシンレーキ、キノリンイエローレーキ等の酸性染料系顔料等が挙げられる。前記顔料は1種単独で又は2種以上の組み合わせで用いることができ、目的とする色調に応じて適宜選択される。
硬化性組成物における顔料の含有量は、所望の色調によって適宜調整されるため、特に限定されないが、硬化性組成物100重量部に対して、好ましくは0.000001重量部以上、より好ましくは0.00001重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。また、顔料の含有量は、硬化性組成物100重量部に対して、好ましくは0.000001〜5重量部、より好ましくは0.00001〜1重量部である。
硬化性組成物に含まれる無機充填材について以下に説明する。第1〜第mの硬化性組成物に含まれる各無機充填材は、互いに同じであっても異なっていてもよい。無機充填材は、特に限定されず、公知の無機粒子を用いることができる。具体的には、例えば、各種ガラス類(二酸化珪素(石英、石英ガラス、シリカゲル等)又は珪素を主成分とし、各種重金属とともにホウ素及び/又はアルミニウムを含有するもの)、アルミナ、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、シリカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、二酸化チタン(チタニア)、ヒドロキシアパタイト等の従来公知のものが使用できる。また、無機充填材は、前記無機粒子に重合性単量体を予め添加してペースト状にした後、重合硬化させ、粉砕して得られる有機無機複合粒子(有機無機複合フィラー)を含んでもよい。無機充填材としては、前記無機粒子又は前記有機無機複合粒子を1種単独で又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
また、歯冠修復材料に望まれる重要な物性としては、天然歯と同様の透明性とX線造影性が挙げられる。透明性は無機充填材と硬化後の重合性単量体の屈折率をできるだけ一致させることで達成される。また、X線造影性の付与のためには、ジルコニウム、バリウム、チタン、ランタン、ストロンチウム等の重金属元素を含む無機酸化物が用いられる。前記重金属元素を含む無機充填材の屈折率は通常高く、1.5〜1.6の範囲内にある。また、(メタ)アタリレート系単量体の硬化物の屈折率は通常、1.5〜1.6の範囲内に調整可能である。本発明において、例えば、前記重金属元素を含む無機充填材と、重合性単量体として(メタ)アタリレート系単量体とが混合された硬化性組成物は、無機充填材と重合性単量体との屈折率差を小さく調節することができるため、得られる歯科用ミルブランクは、X線造影性だけでなく高い透明性を得やすく有用である。
無機充填材として用いられる無機粒子は、形態に特に制限が無く、例えば、破砕状、板状、鱗片状、繊維状(短繊維、長繊維)、針状、ウィスカー、球状等各種形状のものが用いられる。無機粒子は、前記形状の一次粒子が凝集した形態でもよく、異なる形状の一次粒子が組み合わされたものでもよい。なお、本発明においては、何らかの処理(例えば、粉砕等の従来公知の処理)を施すことによって前記形状を有する無機粒子を得ることができる。
無機粒子の粒子径は、歯科用コンポジットレジンの無機充填材として通常用いられる程度の大きさを有するものであればよく、例えば、平均粒子径が1.0nm〜10μmであるものが挙げられる。平均粒子径は、2.0nm〜5.0μmであることが好ましく、5.0nm〜3.0μmであることがより好ましい。なお、本明細書において、無機粒子の粒子径とは、無機粒子の一次粒子の粒子径(平均一次粒子径)を意味する。規定する平均粒子径に含まれない無機粒子が無機充填材に意図せず含まれていても、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に制限されず、本発明に含まれる。
なお、本明細書において、無機粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法又は電子顕微鏡観察により求めることができる。具体的には、0.1μm以上の粒子径を有する無機粒子の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が、0.1μm未満の粒子径を有する無機粒子(超微粒子)の粒子径測定には電子顕微鏡観察が簡便である。0.1μmはレーザー回折散乱法により測定した値である。
レーザー回折散乱法は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2100、島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することができる。
電子顕微鏡観察による平均粒子径の測定は、例えば、透過型電子顕微鏡(日立製作所製、H−800NA型)により、無機粒子の写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Macview(株式会社マウンテック))を用いて行うことができる。このとき、粒子の粒子径は、その粒子と同一の面積をもつ正円の直径として求められ、粒子数とそれぞれの粒子径より、平均一次粒子径が算出される。
本発明の製造方法では、異なった材質、粒度分布、又は形態を持つ2種以上の無機粒子を組み合わせた無機充填材を用いることもあり、また、本発明の効果を損なわない範囲内で、意図せずに、無機粒子以外の粒子が不純物として含まれていてもよい。
本発明に用いる無機充填材の配合量としては、特に限定されないが、硬化性組成物の全量(重合性単量体、重合開始剤、無機充填材、添加剤(顔料、紫外線吸収剤等)等の合計量)に対して、40〜95質量%が好ましく、45〜90質量%がより好ましく、50〜85質量%がさらに好ましい。
また、無機充填材として、予め表面処理が施された無機粒子を用いることができる。無機粒子に表面処理を施すことで、重合性単量体との馴染みが向上して、無機充填材と重合性単量体とがペースト状になりやすくなる。
表面処理剤としては、公知の表面処理剤を用いることができ、例えば、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物;リン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を少なくとも1個有する酸性基含有有機化合物が挙げられる。表面処理剤を2種以上使用する場合は、2種以上の表面処理剤の混合物を無機充填材に適用してもよい。また、第1〜第mの硬化性組成物に含まれる無機充填材に適用する各表面処理剤は互いに同じであっても異なっていてもよい。無機粒子を表面処理する方法としては、特に制限なく公知の方法を用いることができる。
前記有機ケイ素化合物としては、R1 nSiX4-nで表される化合物が挙げられる(式中、R1は炭素数1〜12の置換又は無置換の炭化水素基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、アセトキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は水素原子を示し、nはO〜3の整数である。但し、複数のR1、Xは、互いに同じであっても異なっていてもよい。)。
前記有機ケイ素化合物は、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等〕、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等〕等が挙げられる。なお、本発明において「(メタ)アクリロキシ」との表記は、メタクリロキシ基とアクリロキシ基の両者を包含する意味で用いられる。
前記有機ケイ素化合物は、重合性単量体と共重合し得る官能基を有するカップリング剤であることが好ましく、例えば、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ω−(メタ)アクリロキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が好ましい。
前記有機チタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート等が挙げられる。
前記有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート等が挙げられる。
前記有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機酸塩キレート化合物等が挙げられる。
前記リン酸基を含有する酸性基含有有機化合物としては、例えば、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート、及びこれらの酸塩化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
また、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を有する酸性基含有有機化合物としては、例えば、WO2012/042911号に記載のものを好適に用いることができる。
前記表面処理剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、無機充填材と重合性単量体との化学結合性を高めて歯科用ミルブランクの機械的強度を向上させるために、前記表面処理剤は、重合性単量体と共重合し得る官能基を有する酸性基含有有機化合物がより好ましい。
表面処理剤の使用量は、特に限定されず、例えば、無機充填材100重量部に対して、0.1〜50重量部が好ましい。
硬化性組成物に用いる重合性単量体含有組成物は、重合性単量体と重合開始剤とを含む。重合性単量体について以下に説明する。各層の硬化性組成物に含まれる各重合性単量体は、互いに同じであっても異なっていてもよい。重合性単量体としては、歯科用コンポジットレジン等に使用される公知の重合性単量体が何ら制限無く用いられるが、一般には、ラジカル重合性単量体が好ましい。前記ラジカル重合性単量体は、例えば、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエステル類、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。なお、本発明において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。(メタ)アクリル酸エステル系及び(メタ)アクリルアミド誘導体系の重合性単量体の例を以下に示す。
(i)単官能性(メタ)アタリレート及び(メタ)アクリルアミド誘導体
メチル(メタ)アタリレート、イソブチル(メタ)アタリレート、ベンジル(メタ)アタリレート、ラウリル(メタ)アタリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アタリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アタリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アタリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アタリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アタリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アタリレート、グリセリンモノ(メタ)アタリレート、エリトリトールモノ(メタ)アタリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライド、10−メルカプトデシル(メタ)アタリレート等が挙げられる。
(ii)二官能性(メタ)アタリレート
エチレングリコールジ(メタ)アタリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アタリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アタリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アタリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アタリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アタリレート、2,2−ビス[4−〔3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−メタアクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(通称Bis−GMA))、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフエニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフエニル〕プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アタリレート、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−力ルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンチルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アタリレート等が挙げられる。
(iii)三官能性以上の(メタ)アタリレート
トリメチロールプロパントリ(メタ)アタリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アタリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アタリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アタリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アタリレート、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラ(メタ)アクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン等が挙げられる。
また、これらの(メタ)アクリル酸エステル系及び(メタ)アクリルアミド誘導体系の重合性単量体の他に、カチオン重合可能な、オキシラン化合物及びオキセタン化合物も好適に用いられる。
前記重合性単量体は、いずれも、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、本発明で用いられる重合性単量体は液体状であることが好ましいが、必ずしも常温で液体状である必要は無く、重合性単量体を無機充填材に接触させる際に液体であればなんら差し支えない。さらに、固体状の重合性単量体であっても、液体状の、その他の重合性単量体と混合溶解させて使用することができる。
次に、重合性単量体含有組成物に含まれる重合開始剤について説明する。重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤、化学重合開始剤が挙げられる。これらは、1種単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
熱重合開始剤としては、有機過酸化物類とアゾ化合物類等が挙げられる。
上記熱重合開始剤として用いられる有機過酸化物類としては、例えば、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
上記熱重合開始剤として用いられるケトンパーオキサイドとしては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。上記熱重合開始剤として用いられるハイドロパーオキサイドとしては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。上記熱重合開始剤として用いられるジアシルパーオキサイドとしては、例えば、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。上記熱重合開始剤として用いられるジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン等が挙げられる。上記熱重合開始剤として用いられるパーオキシケタールとしては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン及び4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレリックアシッド−n−ブチル等が挙げられる。上記熱重合開始剤として用いられるパーオキシエステルとしては、例えば、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート及びt−ブチルパーオキシバレリックアシッド等が挙げられる。上記熱重合開始剤として用いられるパーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート及びジアリルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルパーオキサイドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルパーオキサイドがより好ましく用いられる。
上記熱重合開始剤として用いられるアゾ化合物類としては、例えば、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4−アゾビス−4−シアノバレリック酸、1,1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチラート、2,2−アゾビス−(2−アミノプロパン)ジヒドロクロライド等が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、α−ジケトン類、クマリン類等が挙げられる。
上記光重合開始剤として用いられる(ビス)アシルホスフィンオキサイド類のうち、アシルホスフィンオキサイド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフエニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、及びこれらの塩等が挙げられる。ビスアシルホスフィンオキサイド類としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフエニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、及びこれらの塩等が挙げられる。これら(ビス)アシルホスフィンオキサイド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイドナトリウム塩が好ましい。
上記光重合開始材として用いられるアルファジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ジベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナンスレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノン等が挙げられる。この中でも、カンファーキノンが好適である。
上記光重合開始剤として用いられるクマリン類の例としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−チエノイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイルクマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3,5−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3−ベンゾイル−6−ブロモクマリン、3,3’−カルボニルビスクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3−カルボキシクマリン、3−カルボキシ−7−メトキシクマリン、3−カルボキシ−7−ジエチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−6−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−8−メトキシクマリン、3−アセチルベンゾ[f]クマリン、3−ベンゾイル−6−ニトロクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジメチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノ)クマリン、7−メトキシ−3(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−(4−ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3−(4−エトキシシンナモイル)−7−メトキシクマリン、3−(4−ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3−(4−ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3−[(3−ジメチルベンゾチアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3−[(1−メチルナフト[1,2−d]チアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3,3’−カルボニルビス(6−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジメチルアミノクマリン)、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−アセチル−7−(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11オン、10−(2−ベンゾチアゾイル)−2,3,6、7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン等の特開平9−3109号公報、特開平10−245525号公報に記載されている化合物が挙げられる。
上述のクマリン化合物の中でも、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)及び3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)が好適である。
これらの光重合開始剤の中でも、歯科用硬化性組成物に広く使われている(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、α−ジケトン類、及びクマリン類からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、かかる光重合開始剤は、必要に応じて、更に重合促進剤を配合することで、光重合をより短時間で効率的に行うことができる場合がある。
光重合開始剤に好適な重合促進剤としては、主として第3級アミン類、アルデヒド類、チオール基を有する化合物、スルフィン酸及び/又はその塩等が挙げられる。
第3級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2一ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジイソプロピルアニリン、N,N−ビス(2ヒドロキシエチル)−3,5−ジブチルアニリン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸(2−メタクリロイルオキシ)エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸ブチル、N−メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート等が挙げられる。
アルデヒド類としては、例えば、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。チオール基を有する化合物としては、例えば、2−メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、チオ安息香酸等が挙げられる。
スルフィン酸及びその塩としては、例えば、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、トルエンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸ナトリウム、トルエンスルフィン酸カリウム、トルエンスルフィン酸カルシウム、トルエンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられる。
化学重合開始剤としては、有機過酸化物と重合促進剤の組み合わせが好ましく用いられる。化学重合開始剤に使用される有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、前記熱重合開始剤で例示した有機過酸化物が挙げられる。これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルパーオキサイドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルパーオキサイドがより好ましく用いられる。
化学重合開始剤に使用される重合促進剤は、一般工業界で使用されている重合促進剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合促進剤が好ましく用いられる。また、重合促進剤は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用される。具体的には、アミン類、スルフィン酸及びその塩、銅化合物、スズ化合物等が挙げられる。
重合促進剤として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2一(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N−メチルジエタノールアミンジ(メタ)アクリレート、N−エチルジエタノールアミンジ(メタ)アクリレート、トリエタノールアミンモノ(メタ)アクリレート、トリエタノールアミンジ(メタ)アクリレート、トリエタノールアミントリ(メタ)アクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミン等が挙げられる。これらの中でも、組成物の硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、その中でもN−メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましい。
また、芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジイソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル及び4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。
重合促進剤として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、例えば、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが好ましい。
重合促進剤として用いられる銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅等が好適に用いられる。
重合促進剤として用いられるスズ化合物としては、例えば、ジ−n−ブチル錫ジマレート、ジーn一オクチル錫ジマレート、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジラウレート等が挙げられる。中でも好適なスズ化合物は、ジ−n−オクチル錫ジラウレート及びジ−n−ブチル錫ジラウレートである。
これらの中でも、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用することが好ましく、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類とジアシルパーオキサイドの組み合わせがより好ましい。
重合性単量体含有組成物に配合される重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点からは、重合性単量体100重量部に対して、0.001〜30重量部が好ましい。重合開始剤の配合量が0.001重量部以上の場合、重合が十分に進行して機械的強度の低下を招くおそれがなく、より好適には0.05重量部以上、さらに好適には0.1重量部以上である。一方、重合開始剤の配合量が30重量部以下であると、重合開始剤自体の重合性能が低い場合にでも十分な機械的強度が得られ、さらには組成物からの析出を招くおそれがなく、より好適には20重量部以下である。
本発明で用いる重合性単量体含有組成物には、前記成分以外に、目的に応じて、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、着色剤、顔料、抗菌剤、X線造影剤、増粘剤、蛍光剤等の添加剤をさらに添加することも可能である。
重合性単量体含有組成物は、重合性単量体及び重合開始剤を含有するのであれば特に限定なく、調製することができる。例えば、重合性単量体に重合開始剤を配合して混合することにより調製することができる。
本発明で用いられる硬化性組成物は、無機充填材、重合性単量体及び重合開始剤を含有していれば特に限定はなく、当業者に公知の方法により、用途に応じた状態(1ペースト状態、2ペースト状態、粉−液状態、成型された状態)で容易に製造することができる。なお、化学重合開始剤もしくは化学重合性及び光重合性をあわせ持つ重合開始剤を使用する場合は、有機過酸化物を含む組成物と還元剤を含む組成物が別々に包装された包装形態をとり、使用する直前に両者を混合する必要がある。
かくして、本発明の製造方法により、歯科用ミルブランクが得られる。得られたミルブランクは、必要に応じて所望の大きさに切断、切削、表面研磨が施されて製品として出荷される。本発明により得られる歯科用ミルブランクは、その硬化物中の無機粒子の含有量が、従来の一般的な歯科用コンポジットレジンで達成されている無機粒子含有量に比較して、飛躍的に高いレベルを実現できる。
本発明の歯科用ミルブランクは、曲げ強さが160MPa以上であり、170MPa以上が好ましく、180MPaがより好ましい。曲げ強さの測定方法及び測定条件は、後記する実施例に記載のとおりである。
本発明の歯科用ミルブランクのサイズは、市販の歯科用CAD/CAMシステムにセットできるような適当な大きさに加工されることが望ましい。望ましいサイズの例としては、例えば、一歯欠損ブリッジの作成に適当な40mm×20mm×15mmの角柱状;インレー、オンレーの作製に適当な17mm×10mm×10mmの角柱状;フルクラウンの作製に適当な、14mm×18mm×20mm、10mm×12mm×15mm若しくは14.5mm×14.5mm×18mmの角柱状;ロングスパンブリッジ、義歯床の作成に適当な、直径100mm、厚みが10〜28mmの円盤状等が挙げられるが、これらのサイズに限定されるものではない。
本発明の歯科用ミルブランクを切削加工することによって、高い機械的物性、優れた耐摩耗性と滑沢性を有する審美的な歯科用補綴物を提供することができる。歯科用補綴物としては、例えば、インレー、アンレー、オンレー、ベニア、クラウン、ブリッジ等の歯冠修復物の他、支台歯、歯科用ポスト、義歯、義歯床、インプラント部材(フィクスチャー、アバットメント)等が挙げられる。また、切削加工は、例えば市販の歯科用CAD/CAMシステムを用いて行うことが好ましく、かかるCAD/CAMシステムの例としては、シロナデンタルシステムズ社のCERECシステム、クラレノリタケデンタル社のカタナシステムが挙げられる。
また、本発明で得られるミルブランクは、歯科用途以外の用途にも用いることができ、例えば、封止材料、積層板成形材料等の電子材料用途、一般的な汎用の複合材料部材、例えば、建築用、電化製品、家庭用品、玩具類の部品としても用いることができる。
(実施例)
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
〔製造例1−1〕重合性単量体含有組成物(A−1)の製造
2,2−ビス(メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6のもの、通称D2.6E)70重量部及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)30重量部に、熱重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO)1重量部、紫外線吸収剤のチヌビン326を0.3重量部、酸化チタン0.12重量部、ベンガラ黒0.00028重量部、ベンガラ黄0.013重量部、ベンガラ赤0.0021重量部を溶解させて、重合性単量体含有組成物(A−1)を調製した。
〔製造例1−2〕重合性単量体含有組成物(A−2)の製造
2,2−ビス(メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6のもの、D2.6E)70重量部及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)30重量部に、熱重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO)1重量部、紫外線吸収剤のチヌビン326を0.3重量部、酸化チタン0.10重量部、ベンガラ黒0.0014重量部、ベンガラ黄0.016重量部、ベンガラ赤0.0023重量部を溶解させて、重合性単量体含有組成物(A−2)を調製した。
〔製造例1−3〕重合性単量体含有組成物(A−3)の製造
2,2−ビス(メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6のもの、D2.6E)70重量部及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)30重量部に、熱重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO)1重量部、紫外線吸収剤のチヌビン326を0.3重量部、酸化チタン0.072重量部、ベンガラ黒0.0016重量部、ベンガラ黄0.024重量部、ベンガラ赤0.0035重量部を溶解させて、重合性単量体含有組成物(A−3)を調製した。
〔製造例1−4〕重合性単量体含有組成物(A−4)の製造
2,2−ビス(メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(エトキシ基の平均付加モル数が2.6のもの、D2.6E)70重量部及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)30重量部に、熱重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO)1重量部、紫外線吸収剤のチヌビン326を0.3重量部、酸化チタン0.0079重量部、ベンガラ黒0.0088重量部、ベンガラ黄0.052重量部、ベンガラ赤0.0051重量部を溶解させて、重合性単量体含有組成物(A−4)を調製した。
〔製造例2−1〕無機粉末(B−1)の製造
バリウムガラス「GM27884 UF0.4(平均粒子径0.4μm)」(ショット社製)100g、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン7.0g、及びトルエン200mLを三口フラスコに入れ、2時間、室温下で攪拌した。トルエンを減圧下で留去した後、40℃で16時間真空乾燥を行い、さらに90℃で3時間加熱し、表面処理層が設けられた平均粒子径0.4μmの無機粉末(B−1)を得た。
〔製造例2−2〕無機粉末(B−2)の製造
凝集シリカ「シリカマイクロビード P−500(超微粒子平均粒子径12nm、凝集体平均粒子径2μm)」(日揮触媒化成社製)100g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン20g、及びトルエン200mLを三口フラスコに入れ、2時間、室温下で攪拌した。トルエンを減圧下で留去した後、40℃で16時間真空乾燥を行い、さらに90℃で3時間加熱し、平均粒子径1.6μmの無機粉末(B−2)を得た。
〔製造例3−1〕硬化性組成物(C−1)の製造
重合性単量体含有組成物(A−1)40重量部に無機粉末(B−1)57重量部及び無機粉末(B−2)3重量部を練りこみながら少しずつ加えていき、硬化性組成物(C−1)を製造した。
〔製造例3−2〕硬化性組成物(C−2)の製造
重合性単量体含有組成物(A−2)40重量部に無機粉末(B−1)58重量部及び無機粉末(B−2)2重量部を練りこみながら少しずつ加えていき、硬化性組成物(C−2)を製造した。
〔製造例3−3〕硬化性組成物(C−3)の製造
重合性単量体含有組成物(A−3)38重量部に無機粉末(B−1)59重量部及び無機粉末(B−2)3重量部を練りこみながら少しずつ加えていき、硬化性組成物(C−3)を製造した。
〔製造例3−4〕硬化性組成物(C−4)の製造
重合性単量体含有組成物(A−4)40重量部に無機粉末(B−1)57重量部及び無機粉末(B−2)3重量部を練りこみながら少しずつ加えていき、硬化性組成物(C−4)を製造した。
実施例1
14.5mm×14.5mm×18mmのテフロン製の収納容器を用い、14.5mm×18mm面に対して、硬化性組成物(C−1)を5mmの厚みまで充填した。その上に、硬化性組成物(C−2)を2.25mmの厚みで充填した。さらにその上に、硬化性組成物(C−3)を2.25mm、さらに硬化性組成物(C−4)を5mmの厚みで充填し、容器に収容された、重合前の積層体を得た。得られた重合前の積層体を容器内で50℃24時間加熱重合させ、続いて110℃12時間加熱重合させた。重合工程終了後、容器から取り出して、目的とする積層構造を有するミルブランクを得た。
実施例2
14.5mm×14.5mm×126mmのテフロン製の収納容器を用い、14.5mm×126mm面に対して、硬化性組成物(C−1)を5mmの厚みまで充填した。その上に、硬化性組成物(C−2)を2.25mmの厚みで充填した。さらにその上に、硬化性組成物(C−3)を2.25mm、さらに硬化性組成物(C−4)を5mmの厚みで充填し、容器に収容された、重合前の積層体を得た。得られた積層体を容器内で50℃24時間加熱重合させて、続いて110℃12時間加熱重合させた。重合工程終了後、容器から取り出して、棒状の積層構造を有するミルブランクを得た。これを長辺が18mmになるようにダイヤモンドカッターで切断し、目的とする積層構造を有するミルブランクを得た。
実施例3
14.5mm×14.5mm×126mmのテフロン製の収納容器を用い、14.5mm×126mm面に対して、硬化性組成物(C−1)を5mmの厚みまで充填した。その上に、硬化性組成物(C−2)を2.25mmの厚みで充填した。さらにその上に、硬化性組成物(C−3)を2.25mm、さらに硬化性組成物(C−4)を5mmの厚みで充填した。得られた積層された重合前の硬化性組成物を、テフロン製の押し出し機にて18mm押し出し、押し出した部分をカッターで切断し、重合前の積層体を得た。その切断した直方体状の積層体を50℃24時間加熱重合させて、続いて110℃12時間加熱重合させて、積層構造を有するミルブランクを得た。
比較例1
14.5mm×14.5mm×18mmのテフロン製の収納容器を用い、14.5mm×18mm面に対して、硬化性組成物(C−1)を5mmの厚みまで充填した。続いて、50℃24時間加熱重合させて、さらに110℃12時間加熱重合させた。その上に、硬化性組成物(C−2)を2.25mmの厚みで充填し、続いて50℃24時間加熱重合させて、さらに110℃12時間加熱重合させた。さらにその上に、硬化性組成物(C−3)2.25mmを充填し、続いて50℃24時間加熱重合させて、さらに110℃12時間加熱重合させた。さらに硬化性組成物(C−4)を5mmの厚みで充填し、続いて50℃24時間加熱重合させて、さらに110℃12時間加熱重合させた。重合工程終了後、容器から取り出して、積層構造を有するミルブランクを得た。
試験例(色調)
厚さ1mmの色度板像の色(白背景のL1*,a1*,b1*)を分光色差計(日本電色工業社製、SE6000、光源D65/2)を用いて測定した。また、同様にして、別の層の色度板(白背景のL2*,a2*,b2*)を測定した。両者の色の値から、下記式(1)を用いて、色差ΔE*を求めた。
ΔE*={(L1*−L2*)2+(a1*−a2*)2+(b1*−b2*)2}1/2 (1)
下記表1には、硬化前の各硬化性組成物のペースト稠度、硬化後の各硬化性組成物の色調(L*、a*、b*)、その色調データをもとに計算した隣り合う層のΔE*を示した。
試験例(曲げ強さ)
実施例及び比較例で得られた各ミルブランクから所定の寸法(2mm×2mm×15mm)の角柱状のサンプルをダイヤモンドカッターで切り出した。このとき、各実施例及び比較例について、各層間の境界部分が含まれるように、硬化性組成物(C−1)の硬化部分と硬化性組成物(C−2)の硬化部分とが各々0.98〜1.02mm含む試験片を5本ずつ作製し、37℃の蒸留水中に24時間保管した。インストロン万能試験機を用いて、スパン:10mm、クロスヘッドスピード:1mm/minの条件下で曲げ強さを測定し、各試験片の測定値の平均値を算出し、曲げ強さとした。
各層間の境界部分の不明瞭さの結果及び曲げ強さの結果を表2に示す。
各層間における境界部分については、目視にて判定した。実施例1〜3においては、境界部分が不明瞭で天然歯と同様に自然な感じがするのに対して、比較例1においては、境界部分が明瞭であり、菱餅のような感じがして不自然なものであった。また、実施例1〜3で作製したミルブランクは、高い曲げ強さであるのに対して、比較例1で作製したミルブランクは、境界部分が弱くて破断したためか、低い曲げ強さを示した。