JP7266285B2 - 多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法と製造装置 - Google Patents
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Description
非金属材料を用いて全体を構成した歯科用補綴物は、金属アレルギーの心配がなく審美性に優れるという特長を有することに加え、近年のデジタル画像技術やコンピュータ処理技術等の発達により、その加工が容易になったことも有り、その需要は急速に高まっている。例えば、特許文献1に開示されているように、口腔内の撮影画像から、コンピュータ支援設計(CAD)(Computer Aided Design)及びコンピュータ支援製造(CAM)(Computer Aided Manufacturing)技術によるCAD/CAM装置を用いて、非金属材料からなる歯科加工用ブランクに切削加工を施して歯科用補綴物を成形するCAD/CAMシステムが多用されるようになってきている。ここで、歯科加工用ブランクとは、CAD/CAMシステムにおける切削加工機に取り付け可能にされた被切削体(ミルブランクとも呼ばれる。)を意味し、直方体や円柱の形状に成形された(ソリッド)ブロック又は板状若しくは盤状に形成された(ソリッド)ディスク等が一般的に知られている。
また、特許文献3には、審美性が高く、かつ機械的強度も高いとする積層されたミルブランクの製造方法が開示されている。このミルブランクの製造方法は、重合前の硬化性組成物を積層し、少なくとも2層から構成される、重合前の積層体を得る工程、及び前記工程で得られた積層体を重合する工程を含み、前記硬化性組成物が無機充填材と重合性単量体含有組成物とを含む、歯科用ミルブランクの製造方法が提案されている。
また、2以上の容器内に別々に収容された硬化前の硬化性組成物を押し出したのち、積層して積層体を得る方法とする場合、積層や充填の際に形状が崩れたり、得られたブランク内に空隙が生じてしまうおそれがあり、上記の方法では無機フィラー充填率の高い、より高強度を有する積層されたブランクを製造する事は難しい。
なお、歯科加工用ブランク1の材料としては、ハイブリッドレジン以外の非金属材料である、ガラスやジルコニア等のセラミック材料を用いることも可能であり、その場合の流動性ペーストとしては、これら材料の紛体とバインダー成分とを混練したペーストを用いることもできる。歯科加工用ブランクとしてすでに公知の組成物を選定して用いればよい。
また、目的とするブランクの性質を達成するために、上記に対してさらに任意成分を加えても良い。例えば、重合禁止剤、連鎖移動剤、蛍光剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、抗菌剤、X線造影剤などが挙げられるが、これらによらず歯科用ブランクとして公知の添加材を使用できる。
図1は二層構造を備えた歯科加工用ブランク1を製造する際に、二つの層を接合させる積層工程を説明する図である。第一層1aと第二層1bとはそれぞれ、第一型枠ユニット3と第二型枠ユニット4とにより形成される。すなわち、これら第一型枠ユニット3と第二型枠ユニット4のそれぞれには、種類の異なる歯科用の硬化性組成物の流動性ペーストPが充填される。
図3~図7に、型枠ユニット3、4に流動性ペーストPを充填する充填工程に使用される充填具5を模式的に示す。図3に示すように、この充填具5は型枠ユニット3、4を保持する保持板5aと、この保持板5aを収容させて位置決めするほぼU字形の位置決めブロック5bと、この位置決めブロック5bが支持面5c1に取り付けられた充填盤5cとを備えている。
保持板5aには、型枠ユニット3、4を収容する型枠ユニット収容部5dが設けられている。この型枠ユニット収容部5dは保持板5aに設けられた貫通孔で形成されている。なお、この実施形態においては、保持板5aに単一の型枠ユニット収容部5dが形成された構造について説明してあるが、このような配置に限らず、直線上や円周上に複数個を整列させて配したり、行列させて配したりすることでも構わない。これらの配置は充填装置の都合に合わせて適宜設計することができる。
また、保持板5a及び、又は型枠ユニット収容部5dには、位置決めや、前後工程の都合を加味した形状を付与することが好ましく、目的とするブランク形状や、その配列の都合に合わせて適宜設計すれば良い。
また、押出板3aは流動性ペーストPの充填に伴われて、図7において徐々に上方に移動し、流動性ペーストPが十分に充填された状態で、図7における上部側の閉鎖側開口3bを閉鎖する。
流動性ペーストPが充填された型枠ユニット3、4は、これら型枠ユニット3、4の供給側開口3c、4cを突き合わせて、充填された流動性ペーストPを積層することになる。図8~図10に、第一型枠ユニット3、4に充填された硬化性組成物の流動性ペーストPを積層させる積層工程で使用される積層装置6を、模式的に示す。なお、生産性や効率の観点を考慮して、積層装置の構造を適宜設計することが好ましい。各型枠ユニット3、4の位置を保持しつつ積層することが可能であれば、図示のようなピンによる保持構造や配置に限らない。直線上や円周上に複数個を整列させたり、より多くを行列させて配したりしても良い。
図8には、第一型枠ユニット3を保持板6aに載置させた状態が示されており、この第一型枠ユニット3に、後述するように、第二型枠ユニット4が載置される。なお、第二型枠ユニット4を保持板6aに載置させて、この第二型枠ユニット4に第一型枠ユニット3を積層させることでも構わない。
また、型枠ユニット3、4が位置する部分であって、型枠ユニット3、4を位置決めする4本の決めピン6a1で囲まれた部分の中央部には、保持板6aを貫通する透孔6a2が設けられている。
第一型枠ユニット3と第二型枠ユニット4とが重ねられて、充填された流動性ペーストPが硬化されることによって、多層構造の歯科加工用ブランク1に形成される。これら流動性ペーストPを硬化する際には、例えば、図11に一例を示すような、型枠ユニット保持装置7を用いることができる。この型枠ユニット保持装置7は、型枠ユニット3、4を受容する一対の保持枠7a、7bを備えている。一対の保持枠7a、7bは、それぞれ断面が型枠ユニットの外形を保持できる形状に形成され、その開放側を対向させて、底板7cに立設させて取り付けられている。この保持枠7a、7bの内側には、型枠ユニット3、4を積み重ねた状態で保持させることができる。そして、型枠ユニット3、4を底板7cに対して押圧する押圧ブロック7dが保持枠7a、7bの上部に着脱自在に取り付けられる。なお、この押圧ブロック7dは、ボルト7eとナット7fの組み合わせやその他の構造による固定手段により固定される。図11に示すように、一組の型枠ユニット3、4を重ねた状態で固定する以外にも、複数の組を直線や平面上に整列させたように固定することも可能であり、目的とするブランクの形状や固定方法に合わせた設計の型枠ユニット保持装置を用いれば良い。
次に、二層構造の歯科加工用ブランク1を製造する工程を説明する。
充填具5の保持板5aの型枠ユニット収容部5dに、第一型枠ユニット3を保持させる。次いで、図4に示すように、第一型枠ユニット3を保持させた保持板5aを、位置決めブロック5bのU字形の内側に収まるようにして、位置決めブロック5bに保持させる。この状態で、第一型枠ユニット3の空洞部に、支持面5c1に配された充填ノズル5eが対向して位置する。そして、充填盤5cの下方に接続させた図示しない射出装置によって、硬化性組成物からなる歯科加工用ブランク1の材料の流動性ペーストPがペースト流路5c2を通り第一型枠ユニット3内に充填される。流動性ペーストPの充填量が増加するに応じて、第一型枠ユニット3の供給側開口3cに位置していた押出板3aが、図7に示すように、徐々に押し上げられて、閉鎖側開口3bへ向かって移動する。押出板3aが閉鎖側開口3bに移動した状態では、所定量の流動性ペーストPが第一型枠ユニット3に充填された状態となって、端用ペースト充填型枠ユニットが作製される。
流動性ペーストが充填された第一型枠ユニット3を、図8に示すように、積層装置6の保持板6aの位置決めピン6a1で規制された位置に、閉鎖側開口3bを保持板6aの上面に対向させて配置する。この実施形態では、第一型枠ユニット3が鉛直方向の最下層に配置されたものとなる。次いで、図1(A)に示すように、保持板6aの透孔6a2に押上板6bの押上ロッド6b1を挿入させて、押上板6bを保持板5aに接近させる。押上板6bが保持板6aに重なる状態となると、押上ロッド6b1の先端部が保持板6aの上面から突出して、第一型枠ユニット3内に配された押出板3aを押し上げる。これにより、図1(B)と図9に示すように、第一型枠ユニット3に充填された流動性ペーストPの一部が、供給側開口3cから突出し、例えば、平面状や凸曲面状のペースト接合面Paが形成される。このとき、流動性ペーストPが第一型枠ユニット3から溢出又は零出することがない位置まで突出するように、押上ロッド6b1の突出量を定めればよい。
以上に説明した実施形態では、二層構造の歯科加工用ブランク1を製造する場合を説明した。次に、三層以上の層構造を備えている歯科加工用ブランク1を製造する場合について、図12を参照して説明する。なお、図12は三層構造の歯科加工用ブランク1を製造する場合の、積層工程を説明する図であり、図1に相当する図である。
さらに、必要に応じて装置部材の後処理を行う事が好ましい。研磨や表面処理等の後処理によって部材の耐久性や、機能性を向上することができる。
1a 第一層
1b 第二層
2 ブランク保持ピン
3 第一型枠ユニット
3a 押出板
3b 閉鎖側開口
3c 供給側開口
4 第二型枠ユニット
4a 押出板
4b 閉鎖側開口
4c 供給側開口
5 充填具
5a 保持板
5a1 突出部
5b 位置決めブロック
5b1 段部
5c 充填盤
5c1 支持面
5c2 ペースト流路
5c3 ペースト流路
5d 型枠ユニット収容部
5e 充填ノズル
6 積層装置
6a 保持板
6a1 位置決めピン
6a2 透孔
6b 押上板
6b1 押上ロッド
7 型枠ユニット保持装置
7a、7b 保持枠
7c 底板
7d 押圧ブロック
10 歯科用補綴物
21 第一端用型枠ユニット
22 第二端用型枠ユニット
23 中間用型枠ユニット
21a 押出板
22a 押出板
P 流動性ペースト
Pa ペースト接合面
Claims (9)
- 少なくとも第一層と第二層とを有する多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法において、
少なくとも一面が開口された型枠ユニットである第一型枠ユニットに、第一層が成形される、硬化性組成物からなり、所望の形状保持性を有する第一の流動性ペーストを充填すると共に、少なくとも一面が開口された型枠ユニットである第二型枠ユニットに、第二層が成形される、硬化性組成物からなり、所望の形状保持性を有する第二の流動性ペーストを充填する充填工程、
前記第一型枠ユニットと前記第二型枠ユニットの開口部同士を合わせて、前記第一の流動性ペーストと前記第二の流動性ペーストを密着させて接合させて、少なくとも前記第一の流動性ペーストからなる第一層及び第二の流動性ペーストからなる第二層を含む多層構造の積層体を得る積層工程、
及び
前記多層構造の積層体を硬化させる硬化工程、
を含むことを特徴とする多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法。 - 請求項1に記載の多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法であって、
前記第一型枠ユニットと第二型枠ユニットに充填する流動性ペーストは色調が異なる、
ことを特徴とする多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法。 - 多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法において、
型枠ユニットの組み合わせからなり、これらの型枠ユニットを連結することにより1つの連結型枠を形成できる型枠キットであって、
前記型枠ユニットの各々は、何れも柱状空洞部を有する筒状体からなり、
前記連結型枠は、前記型枠ユニットの各々を、各柱状空洞部の母線が一致するように重ねて連結することにより形成され、各柱状空洞部が連結された連結柱状空洞部を内部に有する、
前記型枠キットの準備工程と、
前記型枠ユニットの各々の内部に、硬化性組成物からなり、所望の形状保持性を有する流動性ペーストを充填して、型枠ユニットの一方又は両方の端部開口に、当該開口を塞ぐ流動性ペーストの露出する面である平面状又は凸曲面状のペースト接合面を形成したペースト充填型枠ユニットを作製する充填工程と、
前記充填工程で得られた、ペースト充填型枠ユニットを重ね合わせて、前記連結型枠を形成するとともに、前記連結柱状空洞部の内部において、相互に隣接するペースト充填型枠ユニットのペースト接合面を重ね合わせてこれらペースト接合面を構成する流動性ペースト同士を密着させてペーストの積層体とする積層工程と、
前記連結柱状空洞部内部の前記ペーストの積層体を硬化させて硬化体とする硬化工程と、
を含み、
前記充填工程では、前記積層工程において隣接する型枠ユニットの内部には、異なる種類の硬化性組成物からなる流動性ペーストを充填する、
ことを特徴とする多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法。 - 請求項3に記載の歯科加工用ブランクの製造方法であって、
前記型枠ユニットには、前記連結型枠の一端に配置される端用型枠ユニットを含み、前記端用型枠ユニットの一方側の開口には、前記柱状空洞部内に充填される流動性ペーストと接触する平坦な接触面を有し、充填された前記流動性ペーストを他方側の開口から押し出すための押出板が、前記柱状空洞部内を進退自在に嵌挿されており、
前記充填工程では、前記端用型枠ユニットの前記押出板の接触面より他方側の開口に位置する前記柱状空洞部内に所定量の前記流動性ペーストを密に充填して、一方側の開口である閉鎖側開口が前記押出板で塞がれ、他方側の開口である供給側開口にペースト接合面が形成された端用ペースト充填型枠ユニットを作製し、
前記積層工程では、前記押出板を供給側開口に向けて移動させて前記流動性ペーストを押し出して、該流動性ペーストの一部を前記他方側開口から突出せしめた後に、前記端用ペースト充填型枠ユニットに隣接して配置すべき前記ペースト充填型枠ユニットを、その少なくとも1つのペースト接合面を前記端用ペースト充填型枠ユニットのペースト接合面に重ねて、前記両ペースト接合面を構成する前記流動性ペーストを密着させる、
ことを特徴とする歯科加工用ブランクの製造方法。 - 請求項3または請求項4に記載の多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法であって、
隣接する前記型枠ユニットに充填する流動性ペーストは色調が異なる、
ことを特徴とする多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法。 - 請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法であって、
前記型枠ユニットのいずれか一つまたは二つ以上の型枠ユニットの、前記柱状空洞部の母線の長さが、他の柱状空洞部の母線の長さと異なっている、
ことを特徴とする多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法。 - 請求項3から請求項6までのいずれか一項に記載の多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法であって、
前記型枠ユニットが、第一端用型枠ユニットと、第二端用型枠ユニットとを備え、
前記充填工程では、前記第一端用型枠ユニットの柱状空洞部と前記第二端用型枠ユニットの柱状空洞部とに、異なる種類の硬化性組成物からなる、所望の形状保持性を有する流動性ペーストを充填し、
前記積層工程では、前記第一端用型枠ユニットを鉛直方向の最下層に配置し、前記第二端用型枠ユニットの前記ペースト接合面を前記第一端用型枠ユニットの前記ペースト接合面に重ね合わせる、
ことを特徴とする多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法。 - 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法であって、
前記硬化性組成物が、重合性単量体、無機充填材及び重合開始剤を含み、前記硬化性組成物の総質量に占める無機フィラー充填率が60%以上、99%以下である、
ことを特徴とする多層構造の歯科加工用ブランクの製造方法。 - 少なくとも第一層と第二層とを有する多層構造の歯科加工用ブランクの製造装置において、
柱状空洞部を有する筒状体からなる型枠ユニットに、硬化性組成物からなる、所望の形状保持性を有する流動性ペーストを充填する充填具と、
前記流動性ペーストが充填された型枠ユニットを、各柱状空洞部の母線が一致するように積層させて保持する積層装置と、
を備えていることを特徴とする多層構造の歯科加工用ブランクの製造装置。
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