JP2012045190A - 歯冠修復物の作製方法および歯冠修復物 - Google Patents
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Abstract
【課題】天然歯に近い色調を備えた歯冠修復物を、高精度かつ安価に作製する方法を提供する。
【解決手段】歯冠修復物の作製方法が、歯冠修復物の外観形状データと、歯冠修復物を構成するエナメル質、象牙質、および構造層のそれぞれの位置データおよび色調データと、を取得する取得工程と、色調データに基づいて、エナメル質、象牙質、および構造層用のコンポジットレジン材料を準備する材料準備工程と、外観形状データを用いて、歯冠修復物をかたどる、分割可能なシェルモールドを準備するシェルモールド準備工程と、分割したシェルモールド内に、少なくともエナメル質および象牙質用のコンポジットレジン材料を、位置データに基づいて塗布する塗布工程と、シェルモールドを組立て、その内部に構造層用のコンポジットレジン材料を充填する注入工程と、少なくとも構造層用のコンポジットレジン材料を硬化させる硬化工程と、を含む。
【選択図】図1
【解決手段】歯冠修復物の作製方法が、歯冠修復物の外観形状データと、歯冠修復物を構成するエナメル質、象牙質、および構造層のそれぞれの位置データおよび色調データと、を取得する取得工程と、色調データに基づいて、エナメル質、象牙質、および構造層用のコンポジットレジン材料を準備する材料準備工程と、外観形状データを用いて、歯冠修復物をかたどる、分割可能なシェルモールドを準備するシェルモールド準備工程と、分割したシェルモールド内に、少なくともエナメル質および象牙質用のコンポジットレジン材料を、位置データに基づいて塗布する塗布工程と、シェルモールドを組立て、その内部に構造層用のコンポジットレジン材料を充填する注入工程と、少なくとも構造層用のコンポジットレジン材料を硬化させる硬化工程と、を含む。
【選択図】図1
Description
本発明は歯冠修復物およびその作製方法に関し、特にコンポジットレジン製歯冠修復物やセラミック製歯冠修復物およびその作製方法に関する。
近年、審美性等の理由から、金属製の歯冠修復物に代わりセラミック製の歯冠修復物に対する需要が増大している。セラミック製の歯冠修復物の作製には、CAD/CAMシステムが導入されている。CAD/CAMシステムでは、まず、歯列データに基づいてコンピュータ上で歯冠修復物の形状が決定される。続いて、かかる形状に基づいてブロック状のセラミックをドリルで切削し、歯冠修復物が作製される。
Nakamura T., Tanaka H, Kinuta S, Akao T, Okamaoto K, Wakabayashi K, Yatani H, "In vitro study on marginal and internal fit of CAD/CAM all-ceramic crowns", Dent Mater J. 2005 Sep; 24(3):456-9
Hotta Y, Miyazaki T, Fujiwara T, Tomita S, Shinya A, Sugai Y, Ogura H, "Durability of tungsten carbide burs for the fabrication of titanium crowns using dental CAD/CAM", Dent Mater J. 2004 Jun; 23(2):190-6
Li H, You DO, Zhou CR, Ran JG, "Study on machinable glass-ceramic containing fluorophlogopite for dental CAD/CAM system", J Mater Sci Mater Med. 2006 Nov; 17(11):1133-7
セラミックの切削加工は、1つずつセラミック材料から切削するため、1つの歯冠修復物の作製に時間がかかり、製造コストが高くなるとともに、廃棄される切削くずや削り残しが無駄になるという問題があった。
また、ドリルの細さには限界があり、細かい形状の部分ではドリルが入らないため切削のためにオフセットを行う必要がある。このため設計通りの細かさの形状を再現できないという問題があった。
また、ドリルの摩耗により、完成した歯冠修復物の形状がCAD上で設計した歯冠修復物の形状から誤差を生じるため、患者の口腔内への装着時に調整が必要になるという問題があった。また、消耗品であるドリルの刃も高価であった。
更に、天然歯のような色調が得られず、審美性が劣るという問題もあった。
また、ドリルの細さには限界があり、細かい形状の部分ではドリルが入らないため切削のためにオフセットを行う必要がある。このため設計通りの細かさの形状を再現できないという問題があった。
また、ドリルの摩耗により、完成した歯冠修復物の形状がCAD上で設計した歯冠修復物の形状から誤差を生じるため、患者の口腔内への装着時に調整が必要になるという問題があった。また、消耗品であるドリルの刃も高価であった。
更に、天然歯のような色調が得られず、審美性が劣るという問題もあった。
そこで、本発明は、天然歯に近い色調を備えた歯冠修復物を、高精度かつ安価に作製する方法を提供することを目的とする。
本発明は、歯冠修復物の作製方法であって、歯冠修復物の外観形状データと、歯冠修復物を構成するエナメル質、象牙質、および構造層(フレーム層)のそれぞれの位置データおよび色調データと、を取得する取得工程と、色調データに基づいて、エナメル質、象牙質、および構造層用のコンポジットレジン材料を準備する材料準備工程と、外観形状データを用いて、歯冠修復物をかたどる、分割可能なシェルモールドを準備するシェルモールド準備工程と、分割したシェルモールド内に、少なくともエナメル質および象牙質用のコンポジットレジン材料を、位置データに基づいて塗布する塗布工程と、シェルモールドを組立て、その内部に構造層用のコンポジットレジン材料を充填する注入工程と、少なくとも構造層用のコンポジットレジン材料を硬化させる硬化工程と、を含むことを特徴とする歯冠修復物の作製方法である。
本発明にかかる歯冠修復物の作製方法では、高精度で、短時間に、歯冠修復物の作製が可能となる。
また、切削くず等の発生やドリルの消耗といった問題もなく、安価に歯冠修復物が作製できるとともに、環境にも配慮した作製方法となる。
また、審美的にも優れた、天然歯のような色調の歯冠修復物を得ることができる。
また、切削くず等の発生やドリルの消耗といった問題もなく、安価に歯冠修復物が作製できるとともに、環境にも配慮した作製方法となる。
また、審美的にも優れた、天然歯のような色調の歯冠修復物を得ることができる。
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1にかかる、コンポジットレジン製歯冠修復物の作製方法のフローチャートである。コンポジットレジン製歯冠修復物では、レジン成分を含む歯冠修復物が患者の口腔内に固定される。かかる製造方法は以下の工程S1〜S5を含む。
図1は、本発明の実施の形態1にかかる、コンポジットレジン製歯冠修復物の作製方法のフローチャートである。コンポジットレジン製歯冠修復物では、レジン成分を含む歯冠修復物が患者の口腔内に固定される。かかる製造方法は以下の工程S1〜S5を含む。
工程S1:データ取得工程
歯冠修復物の挿入が必要な欠損部分を含む患者の口腔内のCT像を撮影し、これを基に、患者の口腔内の3次元イメージを作成する。3次元イメージの作成は、断層写真であるCT像を積み上げて合成して行う。この合成には例えばハプティックデバイス(商品名:PHANToM、米国SensAble Technologies 社製)を用いる。ここではCT像を用いて説明するが、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴映像)を用いても構わない。
歯冠修復物の挿入が必要な欠損部分を含む患者の口腔内のCT像を撮影し、これを基に、患者の口腔内の3次元イメージを作成する。3次元イメージの作成は、断層写真であるCT像を積み上げて合成して行う。この合成には例えばハプティックデバイス(商品名:PHANToM、米国SensAble Technologies 社製)を用いる。ここではCT像を用いて説明するが、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴映像)を用いても構わない。
工程S2:設計工程
取得した患者の口腔内の3次元イメージから、CAD装置を用いて欠損部分に挿入する歯冠修復物を設計する。歯冠修復物の設計工程では、コンピュータ上で3次元イメージの咬合動作を行い、歯冠修復物の外観形状を決定する。咬合動作には、例えば、FGP(Functionally Generated Path)法をコンピュータ上で行うFGVP(Functionally Generated Virtual Path)法が用いられる(例えば、特開2010−17467号公報参照)。具体的には、コンピュータ上で、3次元イメージの上下顎関節を滑走運動させたり、上下歯列を誘導運動(並進運動や回転運動)させて、接触領域を検出しながら、歯冠修復物の形状を修正する。
取得した患者の口腔内の3次元イメージから、CAD装置を用いて欠損部分に挿入する歯冠修復物を設計する。歯冠修復物の設計工程では、コンピュータ上で3次元イメージの咬合動作を行い、歯冠修復物の外観形状を決定する。咬合動作には、例えば、FGP(Functionally Generated Path)法をコンピュータ上で行うFGVP(Functionally Generated Virtual Path)法が用いられる(例えば、特開2010−17467号公報参照)。具体的には、コンピュータ上で、3次元イメージの上下顎関節を滑走運動させたり、上下歯列を誘導運動(並進運動や回転運動)させて、接触領域を検出しながら、歯冠修復物の形状を修正する。
次に、歯冠修復物の色調を決定する。具体的には、まず、患者の歯を、色見本の義歯と比較して1つの色見本(A1、A2、B3等)を選択し、次に、選択した色見本の3次元色調データを3次元スキャナを用いて取得する。かかる3次元色調データは、色見本の義歯をスキャンして取得するが、簡易的には色見本毎に予めデータを準備しておいてもよい。また、3次元スキャナを用いて、患者の欠損部分に隣接する歯のような、歯冠修復物に類似した歯の色調分析を行って取得しても良い。
次に、取得した歯冠修復物の3次元色調データに応じて、歯冠修復物を形成する材料を決定する。天然歯は、色調の異なるエナメル質、象牙質、構造層(フレーム層)が積層して歯の全体の色調を決定している。そこで、歯冠修復物の色調を決定するために、歯冠修復物をエナメル質、象牙質、構造層の3層構造と仮定し、各層に用いる材料を、3次元色調データに応じて決定する。なお、構造層の色調は、歯冠修復物全体の色調への影響が小さいことから、エナメル質と象牙質の色調のみを、取得した歯冠修復物の3次元色調データから決定し、構造層には常に同じ材料(色調は一定)を用いることもできる。
例えば、色見本の義歯の色調に対応するように、予め、エナメル質、象牙質、構造層のそれぞれの材料を義歯毎にテーブル化しておいても良い。
続いて、コンピュータ上で、歯冠修復物の外観データと色調データを基に、エナメル質、象牙質、構造層の位置データ(形状データ)を決定する。具体的には、デジタルモデリングツール(商品名:FreeForm、米国SensAble Technologies 社製)を用いて、歯冠修復物のエナメル質、象牙質、構造層の形状シミュレーションを行い、歯冠修復物の外観の色調が患者の天然歯の色調に近くなるような位置データを決定する。もちろん、エナメル質、象牙質、構造層の材料データも、シミュレーションの結果に応じて変えても良い。
以上で、歯冠修復物の外観形状、エナメル質、象牙質、構造層の形状データ(歯冠修復物中での位置データ)および材料データを含む設計データが得られる。ここでは、歯冠修復物をエナメル質、象牙質、構造層の3層構造としたが、コストや色調等を考慮して、2層構造や4層構造のような他の構造を用いることもできる。
工程S31:シェルモールド作製工程
工程S2で得た歯冠修復物の外観形状の設計データに基づき、歯冠修復物形成用の凹型シェルモールド(鋳型)を、CAM装置を用いて形成する。具体的には、OBJET社製の3次元プリンタ装置を用いて、アクリル等の透明樹脂からの凹型シェルモールドを形成する。シェルモールドは、複数の部分に分割できるように形成される。ここでは、歯冠修復物の上半分と下半分に分割できるシェルモールドについて説明するが、3分割等の構造としてもよい。歯冠修復物の材料に光重合レジンを用いる場合は、シェルモールドは透明樹脂から形成されるが、熱重合レジンを用いる場合には、必ずしも透明でなくても良い。
工程S2で得た歯冠修復物の外観形状の設計データに基づき、歯冠修復物形成用の凹型シェルモールド(鋳型)を、CAM装置を用いて形成する。具体的には、OBJET社製の3次元プリンタ装置を用いて、アクリル等の透明樹脂からの凹型シェルモールドを形成する。シェルモールドは、複数の部分に分割できるように形成される。ここでは、歯冠修復物の上半分と下半分に分割できるシェルモールドについて説明するが、3分割等の構造としてもよい。歯冠修復物の材料に光重合レジンを用いる場合は、シェルモールドは透明樹脂から形成されるが、熱重合レジンを用いる場合には、必ずしも透明でなくても良い。
工程S32:象牙質等の材料準備工程
工程S2で述べたように、3次元色調データを基に得られたエナメル質、象牙質、構造層の材料データを用いて、それぞれの材料を準備する。これらの材料には、例えば市販のコンポジットレジン(例えば、トクヤマデンタル株式会社製)が用いられ、具体的には、アクリル、BISGMA、UDMA、TEGDMA等の多官能性モノマーのレジン(樹脂)に、アルミナ、シリカ、ジルコニア等の、ナノサイズのセラミック粉体(フィラー)を混合した材料が用いられる。材料には、色調調整のために顔料等を加えても良い。必要に応じてコンポジットレジンに溶媒を加え、スラリーとして用いる。コンポジットレジン製歯冠修復物では、レジン成分を含む歯冠修復物を患者の口腔内に装着するため、医療用材料として承認されたレジン成分およびセラミックス成分が用いられる。
工程S2で述べたように、3次元色調データを基に得られたエナメル質、象牙質、構造層の材料データを用いて、それぞれの材料を準備する。これらの材料には、例えば市販のコンポジットレジン(例えば、トクヤマデンタル株式会社製)が用いられ、具体的には、アクリル、BISGMA、UDMA、TEGDMA等の多官能性モノマーのレジン(樹脂)に、アルミナ、シリカ、ジルコニア等の、ナノサイズのセラミック粉体(フィラー)を混合した材料が用いられる。材料には、色調調整のために顔料等を加えても良い。必要に応じてコンポジットレジンに溶媒を加え、スラリーとして用いる。コンポジットレジン製歯冠修復物では、レジン成分を含む歯冠修復物を患者の口腔内に装着するため、医療用材料として承認されたレジン成分およびセラミックス成分が用いられる。
工程S4:塗布/硬化工程
エナメル質および象牙質の位置および材料のデータに基づいて、シェルモールド中にディスペンサで材料を塗布する。
エナメル質および象牙質の位置および材料のデータに基づいて、シェルモールド中にディスペンサで材料を塗布する。
図2Aは、吐出装置の全体写真であり、左から、コンピュータ、ロボット、コントローラ、ディスプレーの順に並ぶ。図2Bはディスペンサを搭載したロボットとそのコントローラの写真であり、図2Cはディスペンサの拡大写真である。例えば、直行型ロボットは武蔵エンジニアリング社製の卓上ロボットShotMini200α−3Aであり、ディスペンサは同じく武蔵エンジニアリング社製のJetMasterMJET−2T1−SETSである。
直行型ロボットは、ディスペンサの位置をx軸、y軸、z軸方向に制御する。ディスペンサは、例えば2種類のコンポジットレジン(エナメル質と象牙質)の塗布が可能な2機連装型とする。ロボットを動かすソフトウエアで、STLデータをスライスして、これに応じて所定の位置にディスペンサを移動させ、コンポジットレジンを吐出する。ディスペンサは、例えばインクジェット方式でコンポジットレジンを塗布する。
図3は、コンポジットレジンを充填したシェルモールド10の概略図である。シェルモールド10は例えばアクリルからなり、歯冠の表面側の下部シェルモールド11と、裏面側(歯根側)の上部シェルモールド12に分割できる(破線部分で分割できる)。シェルモールド10は、更に、インプラントと接合するための孔部13に対応する突起と、コンポジットレジンを注入するための開口部14とを有する。
コンポジットレジンの塗布工程では、まず、図2Aの吐出装置に下部シェルモールド11をセットする。続いて、エナメル質の位置データ(x,y,z)に応じて、ディスペンサを用いて、光重合性のエナメル質用コンポジットレジン1を点状(スポット状)に塗布する。コンポジットレジン1を塗布しながら、紫外線や可視光等の光を照射し、硬化させる。
同様に、象牙質の位置データに応じて、光重合性の象牙質用コンポジットレジン2を塗布しつつ、紫外線や可視光等の光を照射し硬化させる。
以上で、エナメル質用、象牙質用のコンポジットレジン1、2の塗布/硬化工程が完了する。ここでは、エナメル質および象牙質の2層を塗布したが、更に、下部シェルモールド11の上端(点線)まで、構造層用のコンポジットレジン3を塗布し硬化させても良い。
工程S5:注入/硬化工程
吐出装置から下部シェルモールド11を取り出し、上部シェルモールド12と重ね合わせる。接続箇所からコンポジットレジンが漏れないように、十分な力で重ね合わせて固定する。続いて、開口部14から、光重合性の構造層用コンポジットレジン3をエアーベント(図示せず)から空気を抜きながら注入充填し、光を照射して硬化させる。かかる工程では、コンポジットレジン3の重合収縮(体積収縮)を補填するために、構造層用コンポジットレジン3を加圧状態で維持しながら硬化させる。この際、開口部14内でコンポジットレジン3が硬化しないように、開口部14には光を通さないステンレス管等を挿入しておくのが好ましい。
吐出装置から下部シェルモールド11を取り出し、上部シェルモールド12と重ね合わせる。接続箇所からコンポジットレジンが漏れないように、十分な力で重ね合わせて固定する。続いて、開口部14から、光重合性の構造層用コンポジットレジン3をエアーベント(図示せず)から空気を抜きながら注入充填し、光を照射して硬化させる。かかる工程では、コンポジットレジン3の重合収縮(体積収縮)を補填するために、構造層用コンポジットレジン3を加圧状態で維持しながら硬化させる。この際、開口部14内でコンポジットレジン3が硬化しないように、開口部14には光を通さないステンレス管等を挿入しておくのが好ましい。
コンポジットレジンに含まれるセラミックス等が不透明な場合、光が透過せず光重合することが困難である。このような場合は、セラミックスと同じ屈折率のレジンでスラリーを混合することで透明なスラリーとなり光重合が可能となる。
なお、ここでは、光重合レジンを用いる場合について説明したが、熱重合レジンを用いてもかまわない。熱重合レジンの場合は、各コンポジットレジンを例えば100℃〜160℃程度に加熱して硬化させる。
最後に、シェルモールド10を上下に分割して、歯冠修復物20を取り出す。以上の工程で、歯冠修復物20が完成する。
歯冠修復物20は、設計データに基づきオーダーメードで正確に作製されるため、患者の歯の欠損部分にインプラントで固定するだけで使用可能であり、歯冠修復物20を削って噛み合わせ等の微調整を行う必要はない。また、患者の他の天然歯と略同様の色調を有する歯冠修復物20が得られ、装着しても違和感を感じさせない。
図4A〜図4Cは、シェルモールド10および/または完成した歯冠修復物20の写真である。
図4Aは、アクリル製の下部シェルモールド11と、完成した歯冠修復物20である。
図4Bは、下部シェルモールド11の上に上部シェルモールド12を重ねた状態である、左方の開口部からコンポジットレジンを注入する。
図4Cは、完成した歯冠修復物20とインプラントであり、図4Dは、歯冠修復物20の孔部13にインプラントを挿入してセメントで接着した状態である。
以上のように、本実施の形態1にかかる歯冠修復物の作製方法では、歯冠修復物20の外観形状データに基づきCAM装置を用いてシェルモールド10を形成するため、設計通りの外観形状を有する歯冠修復物20を得ることができる。例えば、口腔内の噛み合わせは、50μm以下の精度を要求されるが、本実施の形態1にかかる方法では、50μm以下の精度で歯冠修復物が作製できる。
また、歯冠修復物20を患者の口腔内に装着した後の、噛み合わせ調整が不要となるため、患者の負担も低減できる。特にインプラント等の大きな手術後の患者の負担が軽くなり、高齢な患者等に対しては非常に有意義である。
また、異なるコンポジットレジン1、2、3を積層して歯冠修復物20を形成することにより、天然歯に非常に近い色調で、審美性の高い歯冠修復物20を得ることができる。
また、セラミックス材料を切削する方法のように削りかすや削り残しが発生せず、材料の無駄がなくて経済的である。
また、歯冠修復物20の外観形状、エナメル質、象牙質、構造層の形状は、CADデータに基づいて作製されるため、歯冠修復物の製造工程が速くなるとともに、作製者である歯科技工士の4年から10年といわれる経験や習熟度に依存することなく、正確に歯冠修復物20を作製できる。
なお、歯冠修復物の作製方法として、パウダーやスラリーを積層して作製するラピッドプロトタイピング(RP)法が提案されている。RP法では、層状に歯冠修復物を形成するため、特に、審美性の点で天然歯のような色調の歯冠修復物を得ることが困難であった。これに対して、本実施の形態1にかかる方法では、ディスペンサを用いて点状にスラリーを塗布するため、天然歯に近い色調を得ることが可能となる。また、上述のように、歯冠修復物の作製精度も向上する。
実施の形態2
図5は、本発明の実施の形態2にかかる、セラミック製歯冠修復物の作製方法のフローチャートである。セラミック製歯冠修復物は、コンポジットレジン中のレジンを焼却除去した歯冠修復物である。かかる製造方法は以下の工程S101〜S109を含む。
図5は、本発明の実施の形態2にかかる、セラミック製歯冠修復物の作製方法のフローチャートである。セラミック製歯冠修復物は、コンポジットレジン中のレジンを焼却除去した歯冠修復物である。かかる製造方法は以下の工程S101〜S109を含む。
工程S101〜S105
実施の形態1の工程S1〜S5と同じ工程である。
但し、工程S102の設計工程では、工程107の焼結工程において歯冠修復物が収縮することを考慮して形状を設計する。歯冠修復物の収縮率は焼結条件により異なるため、予め焼結条件と収縮率のデータを取っておくことが好ましい。
また、エナメル質用、象牙質用、および構造層用の材料としては、実施の形態1と同様に、多官能性モノマー等のレジンにナノサイズやミクロンサイズのフィラー等を混合したコンポジットレジンが用いられる。但し、本実施の形態2では、焼却工程(S106)でレジンを焼却除去するため、医療用材料として承認されていないレジンを用いることもできる。
実施の形態1の工程S1〜S5と同じ工程である。
但し、工程S102の設計工程では、工程107の焼結工程において歯冠修復物が収縮することを考慮して形状を設計する。歯冠修復物の収縮率は焼結条件により異なるため、予め焼結条件と収縮率のデータを取っておくことが好ましい。
また、エナメル質用、象牙質用、および構造層用の材料としては、実施の形態1と同様に、多官能性モノマー等のレジンにナノサイズやミクロンサイズのフィラー等を混合したコンポジットレジンが用いられる。但し、本実施の形態2では、焼却工程(S106)でレジンを焼却除去するため、医療用材料として承認されていないレジンを用いることもできる。
工程S106:焼却工程
シェルモールドから取り出した歯冠修復物を電気炉などで加熱し、歯冠修復物中のアクリル等のレジンを焼却、除去する。これにより、多孔質のセラミック材料からなる歯冠修復物を得ることができる。焼却条件は、例えば600℃で2時間の加熱とする。
シェルモールドから取り出した歯冠修復物を電気炉などで加熱し、歯冠修復物中のアクリル等のレジンを焼却、除去する。これにより、多孔質のセラミック材料からなる歯冠修復物を得ることができる。焼却条件は、例えば600℃で2時間の加熱とする。
工程S107:焼結工程
歯冠修復物を電気炉等で加熱して、歯冠修復物の焼結を行う。焼結条件は、歯冠修復物の形状に依存するが、例えば1400℃〜1700℃で2時間加熱して行う。歯冠修復物が薄肉の場合などは、例えば1500℃程度が好ましい。焼結工程では、セラミック粒子間の焼結により歯冠修復物の体積が収縮し、患者の口腔内に装着する最終形状の歯冠修復物となる。
なお、工程S107と工程S108は、同一工程として行っても良く、または連続した一連の工程として行っても良い。
歯冠修復物を電気炉等で加熱して、歯冠修復物の焼結を行う。焼結条件は、歯冠修復物の形状に依存するが、例えば1400℃〜1700℃で2時間加熱して行う。歯冠修復物が薄肉の場合などは、例えば1500℃程度が好ましい。焼結工程では、セラミック粒子間の焼結により歯冠修復物の体積が収縮し、患者の口腔内に装着する最終形状の歯冠修復物となる。
なお、工程S107と工程S108は、同一工程として行っても良く、または連続した一連の工程として行っても良い。
工程S108:ガラス浸透工程
歯冠修復物をパウダー状のガラスに接触させた状態で加熱し、多孔質の歯冠修復物中に溶融したガラスを浸透させる。具体的には、電気炉中に白金箔を置き、その上にパウダー状ガラスを乗せ、更にパウダー状ガラスに外部が接触するように歯冠修復物を乗せる。この場合、歯冠修復物の孔部(インプラントを固定する孔部)やその周囲はパウダー状ガラスが接触しないようにする。この状態で、例えば1100℃で2時間加熱し、歯冠修復物にガラスを浸透、充填させる。パウダー状ガラスとしては、例えば株式会社ジーシー(GC)から入手可能なビタインセラムアルミナ(VITA In-Ceram ALUMINA(登録商標))が用いられる。アルミナ以外にジルコニア、スピネル等を用いても構わない。
歯冠修復物をパウダー状のガラスに接触させた状態で加熱し、多孔質の歯冠修復物中に溶融したガラスを浸透させる。具体的には、電気炉中に白金箔を置き、その上にパウダー状ガラスを乗せ、更にパウダー状ガラスに外部が接触するように歯冠修復物を乗せる。この場合、歯冠修復物の孔部(インプラントを固定する孔部)やその周囲はパウダー状ガラスが接触しないようにする。この状態で、例えば1100℃で2時間加熱し、歯冠修復物にガラスを浸透、充填させる。パウダー状ガラスとしては、例えば株式会社ジーシー(GC)から入手可能なビタインセラムアルミナ(VITA In-Ceram ALUMINA(登録商標))が用いられる。アルミナ以外にジルコニア、スピネル等を用いても構わない。
工程S109:ガラス除去工程
ガラス浸透工程後の歯冠修復物は、周囲に余分なガラスが付着した状態である。そこで、余分なガラスを、例えばサンドブラストを用いて除去する。サンドブラスト工程では、ガラスと歯冠修復物との強度差を利用して、歯冠修復物の表面が露出するまで付着したガラスを削り取る。
ガラス浸透工程後の歯冠修復物は、周囲に余分なガラスが付着した状態である。そこで、余分なガラスを、例えばサンドブラストを用いて除去する。サンドブラスト工程では、ガラスと歯冠修復物との強度差を利用して、歯冠修復物の表面が露出するまで付着したガラスを削り取る。
以上の工程で、本実施の形態2にかかる歯冠修復物が完成する。
本実施の形態2にかかる歯冠修復物では、多孔質の歯冠修復物中にガラスを浸透させるため、上述の実施の形態1の歯冠修復物より高強度の歯冠修復物が得られる。勿論、実施の形態1の歯冠修復物と同様に、天然歯に非常に近い色調で、高精度な歯冠修復物である。
実施の形態3
実施の形態1では、工程S4で、エナメル層1を塗布し、続いて象牙層2を塗布する場合(図3)について述べたが、エナメル層1と象牙層2との境界近傍において、それぞれの材料を交互に塗布し、境界がグラディエーションとなるようにしても良い。
実施の形態1では、工程S4で、エナメル層1を塗布し、続いて象牙層2を塗布する場合(図3)について述べたが、エナメル層1と象牙層2との境界近傍において、それぞれの材料を交互に塗布し、境界がグラディエーションとなるようにしても良い。
即ち、塗布材料は、インクジェット方式のディスペンサ(図2C参照)を用いて、座標データ(x,y,z)として与えられる位置データに従って、各点毎に塗布される。このため、例えば2種類のコンポジットレジン(エナメル質と象牙質)の塗布が可能な2機連装型のディスペンサを用いて、エナメル層と象牙層を、エナメル層から象牙層に徐々に置き換わるように塗布することも可能である。このような塗布方法を用いることにより、エナメル層1と象牙層2との境界をグラディエーションにすることができる。
同様に、象牙層2と構造層3との境界をグラディエーションとなるようにしても良い。
このように、本発明の塗布工程では、座標データ(x,y,z)に基づいて、点毎に材料を塗布するため、任意の位置に各材料の塗布が可能となり、より天然歯の色調に近い歯冠修復物の形成が可能となる。
なお、実施の形態1〜3では、エナメル層、象牙層が1層ずつの場合について説明したが、これらの層は、2層以上の材料から形成しても良い。例えば、エナメル層を、透明度の高いエナメル質と透明度の低いエナメル質の2層とし、それぞれに材料データ、位置データを与えても良い。同様に、象牙層を透明度の高い象牙質と透明度の低い象牙質の2層とし、それぞれに材料データ、位置データを与えても良い。もちろん、これらの層の境界(例えば、透明度の高いエナメル質と透明度の低いエナメル質の境界)をグラディエーションとすることも可能である。
1 エナメル質用コンポジットレジン
2 象牙質用コンポジットレジン
3 構造層用コンポジットレジン
10 シェルモールド
11 下部シェルモールド
12 上部シェルモールド
13 孔部
14 開口部
20 歯冠修復物
2 象牙質用コンポジットレジン
3 構造層用コンポジットレジン
10 シェルモールド
11 下部シェルモールド
12 上部シェルモールド
13 孔部
14 開口部
20 歯冠修復物
Claims (14)
- 歯冠修復物の作製方法であって、
歯冠修復物の外観形状データと、歯冠修復物を構成するエナメル質、象牙質、および構造層のそれぞれの位置データおよび色調データと、を取得する取得工程と、
色調データに基づいて、エナメル質、象牙質、および構造層用のコンポジットレジン材料を準備する材料準備工程と、
外観形状データを用いて、歯冠修復物をかたどる、分割可能なシェルモールドを準備するシェルモールド準備工程と、
分割したシェルモールド内に、少なくともエナメル質および象牙質用のコンポジットレジン材料を、位置データに基づいて塗布する塗布工程と、
シェルモールドを組立て、その内部に構造層用のコンポジットレジン材料を充填する注入工程と、
少なくとも構造層用のコンポジットレジン材料を硬化させる硬化工程と、を含むことを特徴とする歯冠修復物の作製方法。 - 歯冠修復物の作製方法であって、
歯冠修復物の外観形状データ、歯冠修復物を構成するエナメル質、象牙質、および構造層のそれぞれの位置データ、およびエナメル質と象牙質の色調データと、を取得する取得工程と、
色調データに基づいてエナメル質と象牙質用のコンポジットレジン材料を準備するとともに、別途構造層用のコンポジットレジンを準備する材料準備工程と、
外観形状データを用いて、歯冠修復物をかたどる、分割可能なシェルモールドを準備するシェルモールド準備工程と、
分割したシェルモールド内に、少なくともエナメル質および象牙質用のコンポジットレジン材料を、位置データに基づいて塗布する塗布工程と、
シェルモールドを組立て、その内部に構造層用のコンポジットレジン材料を充填する注入工程と、
少なくとも構造層用のコンポジットレジン材料を硬化させる硬化工程と、を含むことを特徴とする歯冠修復物の作製方法。 - 上記硬化工程の後に、
シェルモールドから取り出した歯冠修復物を加熱し、歯冠修復物中のレジン成分を除去して多孔質の歯冠修復物を得る工程と、
歯冠修復物を焼結する工程と、
歯冠修復物をパウダー状ガラスに接触させた状態で加熱し、多孔質の歯冠修復物中に溶融したガラスを浸透させる工程と、
歯冠修復物の外部に付着した余分なガラスを除去する工程と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の作製方法。 - 上記取得工程は、患者の口腔内の3次元イメージから、CAD装置を用いて欠損部分に挿入する歯冠修復物の外観形状を設計する工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記取得工程は、患者の天然歯の3次元色調データから、少なくともエナメル質と象牙質の位置データおよび色調データを取得する工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記シェルモールド準備工程は、歯科修復物の外観データを用いて、3次元に樹脂を積層してシェルモールドを形成する工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記塗布工程は、ディスペンサを用いてコンポジットレジン材料を点状に吐出する工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記塗布工程は、エナメル質用のコンポジットレジン材料を塗布して硬化させ、更に象牙質用のコンポジットレジン材料を塗布して硬化させる工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記塗布工程は、エナメル質と象牙質の境界がグラディエーション状になるように、エナメル質と象牙質用のコンポジットレジン材料を、それぞれ点状に塗布する工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記硬化工程は、構造層用のコンポジットレジン材料をシェルモールドに充填し、加圧しながら硬化させる工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 上記エナメル質、象牙質、および構造層用のコンポジットレジン材料は、光重合性または熱重合性であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
- 互いに色調の異なるコンポジットレジン材料からなるエナメル質、象牙質、および構造層の3層を含むことを特徴とする歯冠修復物。
- 互いに色調の異なる多孔質のセラミック材料からなるエナメル質、象牙質、および構造層の3層を含み、セラミック材料中にガラスを浸透させたことを特徴とする歯冠修復物。
- 少なくとも上記エナメル層と上記象牙層との境界が、エナメル層から象牙層に漸次材料が置き換わるグラディエーション状であることを特徴とする請求項12または13に記載の歯冠修復物。
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---|---|---|---|
JP2010190439A JP2012045190A (ja) | 2010-08-27 | 2010-08-27 | 歯冠修復物の作製方法および歯冠修復物 |
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---|---|---|---|---|
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- 2010-08-27 JP JP2010190439A patent/JP2012045190A/ja active Pending
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