JP4636514B2 - 歯科用材料の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、歯科用材料の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、人工歯、インレー、アンレー、クラウン、クラウンブリッジ等として有用な歯科用複合材料の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
歯科用材料には、一般に、機械的強度や機械加工性が良好で安価であり、審美性に優れ、生体為害性がなく、生体親和性がある等各種の要件を満たすことが必要とされる。今日、歯科用材料として、レジン、レジンに無機物を分散させた複合材料、陶材、アマルガムや、貴金属、卑金属等の合金等各種のものが開発され利用されている。
【0003】
歯科用のレジンとしては、一般にメチルメタクリレートを中心とするメタクリレート系の共重合体からなるものが種々開発され利用されている。これらは安価であって、審美性に優れ、耐変色性や耐衝撃性に優れるものの、耐磨耗性、曲げ強さ等の機械的強度が小さい。食物の咀嚼時等における咬合力は、人によって差はあるものの平均すると78kgあるといわれており、この咬合力が歯の先端にかかるとその応力は莫大なものになる。こういったことからレジンを歯科用材料として用いた場合、長期にわたる咀嚼による磨耗が大きく、また、咬合による形態の変形が起こり易い等の欠点がある。
【0004】
前記レジンの欠点を克服するものとして、メタクリレート系の共重合体レジンに無機物を混練・分散させた複合材料(コンポジットレジン)が開発されている。これは、前歯部において必要とされる良好な審美性を持ち、咬合に充分耐えうることのできる機械的強度が要求される臼歯部においても、レジンのみのものに比べ機械的強度が向上することから、好ましいものである。コンポジットレジンの機械的強度、曲げ強さ等の物理的性質を向上させ、天然歯に似た物理的性質に近づけるためには、レジン中に無機物を均一に分散させるとともに充填率を高めることが必要である。粒子径の大きなものは充填率を高めることはできるが、口腔内に人工歯、インレー、アンレー、クラウン、クラウンブリッジ等として装着した場合、コンポジットレジンの表面が粗く、結果的には滑沢な表面が得られないため、舌触り等の感触において違和感が残る。さらに長期間に亘る使用によりレジン表面部から無機物が欠落し、欠落部に歯垢等がたまると、それが着色したりして一層審美性が低下することにもなる。これに対し、粒子径の小さいものでは、粒子径の大きいものに比べ、同体積における無機物の総表面積は大きくなり、無機物のレジン中への分散に際して粘度上昇が伴い、充填率を高めることには限界があるとともに、人工歯の製造時や臨床でインレー、アンレー、クラウン、クラウンブリッジ等にするために成型したり、切削加工したりする際の取り扱い性や操作性等に難がある。また、超微粉末を用いると、粒子表面の弱い電荷やファンデルワールス力等により微粒子が凝集し易くレジン中での均一な分散性を得ることが難しく、凝集したものでは、凝集粒内に空隙が生ずることから、これもまた人工歯の製造時や、臨床で、インレー、アンレー、クラウン、クラウンブリッジ等にするために成型したり、切削加工したりする際の取り扱い性や操作性等に難があり、また凝集したために表面が粗く、舌触り等の感触において違和感が残る。レジン中に充填する粒子として粗大粒子と微細粒子といった粒子径の異なった組合せ、いわゆる粗大粒子間の間隙に微細粒子を介在させることで前記の欠点を改善しようとする試みも行われているが、均一な分散を得ること、高充填率を得ること等の面で未だ満足できるものが得られるまでには至っていない。こういったことから、未だ、コンポジットレジンにおいて長期的に満足のできる機械的強度、耐変色性、耐着色性のあるものが得られていない。
【0005】
陶材は、古くから使用されているセラミックス系歯科用材料であり、耐磨耗性および曲げ強さがあり、審美性、耐変色性、耐着色性等に優れており、生体為害性がなく、口腔内において無刺激性で、長期間使用しても材質的変化が起こらない安定した歯科用材料である。しかしながらレジンやコンポジットレジンに比べ高価であり、しかも弾性がなく脆いので衝撃力に弱く、ひび割れや破壊を起こしやすいという欠点を持つ。また、陶材を作製する際、焼成による収縮が大きく、所定の形状に精密に焼成することが困難である。通常研磨・整形して使用することになるが、修正研磨時における熱応力によって微小クラックが誘発され、食物の咀嚼運動による日々の咬合圧を繰り返し受けることおよび硬いものを噛んだりすることで前記微小クラックは成長し、疲労破折したり、咬合時の荷重が過大な場合、破折したりする。また、陶材を陶歯として義歯に用いる場合は、陶歯と床または支台となるレジンとの接着性がないことから、陶歯にピンや維持孔等の機械的保持手段を設けて、陶材とレジンとを一体化しているが、これらの保持手段は応力の集中を受けやすく、取付け方が悪いと周辺部のレジンに亀裂を発生させたり、口腔内装着後に陶歯の破折を引き起こしたりすることになる。また、陶歯のレジン義歯床からの脱落も起こしやすくなる。このため、陶歯を用いた良好な義歯の製作には熟練を要し、コスト高となっている。
【0006】
この他に諸物理的性質を満たすアマルガムや、貴金属、卑金属等の金属材料は、金属光沢を有することから審美性に劣り、敬遠されがちであり、また、口腔内において溶出し毒性を示すものもあり人体に及ぼす悪影響が懸念される。
【0007】
これら歯科材料を人工歯、インレー、アンレー、クラウン、クラウンブリッジ等として歯科治療に使用する場合は、種々の機械・器具を用い、少なくとも50〜100μm程度の精度の加工を行うことが必要になる。このような精度の加工を手作業で行うことができるようになるまでには、相当の熟練を要するものであり、かかる精度を常に維持することは容易なことではない。そして、かかる加工を高効率で行うことは困難であって、コスト高の一因にもになっている。熟練者の確保が困難となっていること、加工を精度よく短時間で行うこと、およびコストを削減すること等を目的として、歯科加工用データーの入力から加工、設計、歯科用材料の切削・仕上げ加工までをCAD/CAMシステムを利用して一貫して行おうとする試みがなされており、CAD/CAMシステムにより適した歯科用材料の開発が希求されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記のような実情に鑑み従来のレジン、コンポジットレジン、陶材、金属材料等の歯科用材料の前記したような欠点を解消した歯科用材料を開発すべく鋭意研究した結果創案されたものであり、長期にわたって耐磨耗性、曲げ強さ等の機械的強度、耐変色性、耐着色性、審美性を維持することができ、曲げ弾性率、衝撃強さ等において優れた安価な歯科用材料の製造方法を提供すること、加えてCAD/CAMシステムにも適した歯科用材料の製造方法を提供することを目的としている。この発明の目的、およびこのほかの目的、作用並びに効果は以下の詳細な説明および図面の記載からも明らかとなるものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、多孔質セラミックスの連通孔にレジンを含浸させることによって達成されたものである。より具体的には、人工歯、インレー、アンレー、クラウン、クラウンブリッジ等の形状やCAD/CAMに適したブロック形状に成型され、焼結されてなる多孔質セラミックスにレジンを含浸させた複合材料とすることで達成されたものである。
すなわち、この発明の歯科用材料は、多孔質セラミックスにレジンが含浸されてなることを特徴とする。
多孔質セラミックスが、少なくとも網目形成酸化物から形成されてなるものであることが好ましく、多孔質セラミックスが、網目形成酸化物に、中間酸化物、網目修飾酸化物を併用したものから形成されてなるものであることがさらに好ましい。
多孔質セラミックスの見掛け気孔率としては0.5〜70%であることが好ましい。
そして、多孔質セラミックスの表面にカップリング処理がなされてなることが好ましい。より具体的には、例えば、多孔質セラミックスの表面にシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤のうちから選択された少なくとも1つのカップリング剤によってカップリング処理がなされてなることが好ましい。レジンとしては、少なくともエチレン性2重結合を含有するモノマーおよび/またはオリゴマーの重合体を有するものであることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
網目形成酸化物としてはSiO2 を中心に、B23 、P25 、Al23 、ZrO2 、Sb25 等を用いることが好ましい。そして、中間酸化物としてはAl23 、ZrO2 、BeO、TiO2 等を、網目修飾酸化物としてはCaO、Na2 O、K2 O、MgO、Li2 O、CsO2 、BaO、La23 、Y23 、ZnO等を用途に応じて適宜選択し、組み合わせて使用する。とりわけ、アルミノケイ酸塩系K2 O−Al23 −SiO2 、K2 O−Na2 O−Al23 −SiO2 、ホウケイ酸塩系Na2 O−B23 −SiO2 、アルミノホウケイ酸塩系Na2 O−Al23 −B23 −SiO2 の組合せが、多孔質のセラミックスを作製するのに好ましい。
上記の組合せの場合の成分比率は、成分はSiO2 を中心に、アルミノケイ酸塩系K2 O−Al23 −SiO2 においては、SiO2 を40〜80重量%、K2 Oを1〜30重量%、Al23 を5〜30重量%とし、K2 O−Na2 O−Al23 −SiO2 においては、SiO2 を40〜80重量%、K2 Oを1〜30重量%、Na2 Oを1〜10重量%、Al23 を5〜30重量%とする。ホウケイ酸塩系Na2 O−B23 −SiO2 においては、SiO2 を60〜95重量%、Na2 Oを0.1〜10重量%、B23 を1〜30重量%とする。アルミノホウケイ酸塩系Na2 O−Al23 −B23 −SiO2 においては、SiO2 を60〜90重量%、Na2 Oを0.1〜15重量%、Al23 を1〜25重量%、B23 を1〜20重量%とする。なお、上記割合となるようにするために、長石を一部利用してもよいことはいうまでもない。また、結晶からなるセラミックスや結晶を含むセラミックスであってもよい。例えば、上記の成分を組み合わせたものに熱処理を加えて結晶を析出させた粉末を使用し、多孔質セラミックスを作製してもよい。
これらの素材の微粉末の粒子径としてはレジンの含浸可能な気孔分布を得るため、その平均粒径は3.0〜50μmが好ましい。より好ましくは5〜30μmの範囲である。平均粒径が3.0μm未満では、多孔質セラミックスの気孔率が低下し、連通孔が減少したり連通孔の口径が微細となり、レジンが含浸しにくくなったり、弾性の低下を引き起こしたりする一因となる等の点から好ましくない。ただし、平均粒径が3.0μm未満のものであっても、例えば、使用するバインダー、成型圧、焼結温度、焼結時間等を適宜選択することで多孔質セラミックスを形成したり、後述するようなレジン用の化合物のうち低粘度のものを採用したりすれば、得られる歯科用材料の物理的性質のうち弾性率の低下を若干引き起こす可能性はあるものの、表面性状等の特性に優れることから、平均粒径3.0μm未満のものも歯科用材料としては使用が可能である。平均粒径が50μmを超えるとレジン含浸後の表面性状の悪化や耐磨耗性が低下し好ましくない。
このように粒子径の相違によって、その物理的性質や性状等に多少の違いが生ずるものの、粒子径は耐磨耗性、曲げ強さ等の機械的強度、耐変色性、耐着色性、審美性に支障のない範囲で適宜選択することが可能である。例えば、多孔質セラミックスを作製する粉末の平均粒径が50μmを超えるものであっても、粒子径が150μm以下のものを多く含む構成となっていれば、使用するバインダー、成型圧、焼結温度、焼結時間等を適宜選択することでほぼ良好な連通孔を有する多孔質セラミックスを形成することができる。そして、該多孔質セラミックスの連通孔に後述するようなレジン用の化合物を浸透させて重合させれば、表面性状は若干劣るものの弾性率等は歯科用陶材と比較しても優位といえるほど良好であり、またレジン用化合物も高粘度のものを浸透させることができる等といった利点があることから、このような構成のものも使用することができる。
【0011】
また、これらの素材微粉末に、Fe23 、CeO2 、MnO2 等の微粉末を微量添加することで、天然歯または陶歯に似た色調を再現させることができる。珪石やカオリンの微粉末の微量添加により焼成後のセラミックスの曲げ強さを増加させることができる。また、珪石の微粒子は焼成時の形状を維持することに寄与することになり、カオリンの微粒子は素材微粉末の可塑性を増大して成型を容易にするのに寄与することになる。
【0012】
これらの素材微粉末の内から適宜選択し、バインダーを均一に分散させ、金型等を用いて人工歯、インレー、アンレー、クラウン、クラウンブリッジ等の形状や、CAD/CAM用のブロック形状等所定の形状に成型する。もちろん、バインダーを使用しないで素材微粉末のみで所定形状に成型することも素材微粉末および/または成型圧等によっては可能である。
バインダーとしては、水、粘土、燐酸塩、天然の澱粉、蛋白、海藻(アルギン酸)、糖、天然ゴム、瀝青、天然廃液(パルプ、糖密)、この他にもポリエチレン等の熱可塑性レジン、エポキシ、ウレタン等の熱硬化性レジン、合成ゴムや昇華性の炭化水素化合物(多環式化合物)等が使用できるが、これに限られるものではない。前記バインダーを用途に応じ、1種ないしは2種以上を混合し使用する。バインダーを素材微粉末に均一に分散させるためには、バインダーを適度な液体状態として使用することが必要となるが、バインダーの液粘度が高いものは分散しにくくなることから、バインダーの液粘度を下げる必要があり、これは、バインダーを溶媒に希釈することによって行う。溶媒としてはアルコール類、ケトン類、エーテル類、シクロアルカン類が使用できる。バインダーと溶媒のバインダー混合液は焼成することにより揮散し、連通孔を有する多孔質セラミックスを形成することになる。
【0013】
そして、所定の形状に成型した後、焼成し多孔質セラミックスを得る。焼成温度、焼成時間は焼成しようとする素材、連通孔を形成することのできる気孔率等に応じ相違する。この多孔質セラミックスの見掛け気孔率は0.5〜70%が好ましい。0.5%未満では、弾性がなくなるとともに連通孔を形成することができなくなり、70%を超えると、強度が不十分であり形状の保持が困難となり好ましくない。見掛け気孔率が15〜55%であると、連通孔が多く気孔分布も安定し、曲げ弾性率や曲げ強度のバランスがとれることから望ましい。
焼成は真空焼成、大気焼成いずれも採用でき、焼成により、バインダーを昇華、蒸発または燃焼させて揮散させるとともに微粉末を焼結させる。
なお、多孔質体を得るために、焼成後、ガラス質の部分を強酸処理して溶出させ多孔質体とすることも可能であるが、セラミックスのブロックが大きい場合、独立孔が残り易く、連通孔を形成し難く、また、強酸処理に長時間を要することから、前記方法が好ましいが採用できないものではない。
【0014】
前記した多孔質セラミックスの連通孔の表面に、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤を用いてカップリング処理することが好ましい。
シランカップリング剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシトリエトキシシラン、γ−クロロトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等を採用することができる。
【0015】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネートを採用することができる。
【0016】
ジルコアルミネート系カップリング剤としては、アルコール系キャブコモドやグリコール系キャブコモドを採用することができる。
【0017】
これらのカップリング剤は単独または2種以上を組み合わせて使用する。カップリング剤の反応機構は未だ全てが充分に解明されているとは言えないが、例えば、前記カップリング剤のうちシランカップリング剤を用いる場合には、シランカップリング剤のアルコキシ基(CH3 O)が、溶媒としての水または溶媒に吸収された水により加水分解され、メタノールが脱離してシラノール基(SiOH)となり、これが多孔質セラミックス表面に存在する水分によって加水分解されて生成したシラノール基と縮合反応を起こし結合するといわれている。一方、メタクリロイル基は、レジンとの接着性を改善することになり、レジン含浸セラミックスの曲げ強度や曲げ弾性率を良好にするため好ましい。
また、カップリング剤はレジンの含浸性やぬれ性を改善することができ、カップリング処理のないときに比べ、多孔質セラミックスの微細孔へのレジンの浸入を補助し、浸入時間の短縮や良好な含浸を与えることができることから好ましい。なお、必ずしもカップリング剤の使用を必要とするものではないことはいうまでもない。
【0018】
カップリング剤を溶媒に均一に分散させて、溶液とし、カップリング剤を多孔質セラミックスの連通孔に浸透させる。
シランカップリング剤の希釈溶媒としては、より低濃度でシランアルコキシルと水を相溶できるものが好ましく、アルコール類、エーテル類が使用できる。水に溶解したシラノール基は不安定であり、経時変化により縮合反応を起こすことから、シランカップリング剤、溶媒の混合時と同一の分散状態でシランカップリング剤、溶媒を安定して保存させることが必要であり、また、シランカップリング剤と多孔質セラミックスの表面との縮合反応を安定して行わせることが必要であり、そのため、酸性成分を添加することが望ましい。添加する酸性成分としては、酢酸、燐酸、ギ酸、塩酸、硫酸等が使用できる。その際、PHは、4.0〜6.0の弱酸性域とすることがシランカップリング剤が溶媒中で安定するために好ましい。カップリング剤混合時から処理までが短時間であれば、酸性成分でのpHの調整は必ずしも必要としない。
チタネート系カップリング剤やジルコアルミネート系カップリング剤の希釈溶媒としては、アルコール類、エーテル類が使用できる。
カップリング剤の使用量は特に限定はされないが、多孔質セラミックス100重量部に対して好ましくは0.1〜200重量部、さらに好ましくは0.5〜100重量部用いる。また、希釈溶媒中のカップリング剤の濃度は、これも特に限定はされないが、多孔質セラミックスの連通孔の細孔部へ十分に浸透させるため、より低粘度であることが好ましい。
カップリング剤の溶液を、効率よく多孔質セラミックスの連通孔の細部にまで浸入させ、多孔質セラミックスとカップリング剤とを縮合反応させるために、超音波中および/または減圧下においてカップリング剤の溶液中に多孔質セラミックスを浸漬処理することが好ましい。反応温度は室温〜120℃程度が好ましく、反応時間は溶液濃度にもよるが通常24時間未満で完了する。
【0019】
多孔質セラミックスに含浸するレジンとしては、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸エステル、プロピオン酸ビニル、ブチレン、プロピレン、アクリロニトリル、スチレン等の熱可塑性樹脂系、メラミン、フェノール、エポキシ、ウレタン等の熱硬化樹脂系や、これらをそれぞれの系の中で2種、または3種以上混合する系が採用できる。このうち、エチレン性の二重結合を少なくとも1個以上含有する重合の可能な化合物が好ましい。これはこれらが低粘度で、重合後に軟化または膨潤しにくく、耐水性、耐アルカリ性、耐薬品性を有し、重合時間が短く、特に人工歯、インレー、アンレー、クラウン、クラウンブリッジに成型後、合着剤を介して義歯床、支台や天然歯との接着に優れているためである。
エチレン性の二重結合を1個含有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が採用できる。
【0020】
エチレン性の二重結合を2個含有する化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリプロポキシフェニル)プロパン、ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、ビス(メタ)アクリロキシエチルヒドロキシイソシアヌレート、2,6−ビス[2′−(メタ)アクリロキシエチル]ウレタンカプロン酸メチル、2,2−ビス[p−(2−(メタ)アクリロキシアルキレンオキシ)フェニル]プロパン、3,9−ビス(2−(メタ)アクリロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが採用できる。また、分子中にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート、例えば、ジ−2−(メタ)アクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート等も採用できることはいうまでもない。
エチレン性の二重結合を3個含有する化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレートが採用できる。
また、エチレン性の二重結合を4個以上含有する化合物としては、1,3,5−トリス[1,3−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2−プロポキシカルボニルアミノヘキサン]−1,3,5−(1H,3H,5H)トリアジン−2,4,6−トリオンが採用できる。
【0021】
これらのレジン用の化合物は、モノマーおよび/またはオリゴマーの液体状態のものを1種、または2種以上組み合わせてもよく、その組合せ、配合割合は、人工歯、インレー、アンレー、クラウン、クラウンブリッジの用途に応じ、適宜決定できる。
【0022】
そして、これらのレジン用の化合物は、重合触媒等を用いて重合させる。重合触媒等としては、加熱重合型開始剤、化学重合型開始剤、光重合型開始剤等の重合開始剤を単独または2種以上を併用することができる。
加熱重合型開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシカーボネイト等の過酸化物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス2−メチルブチロニトリル、2,2−アゾビス2−メチルヘプトニトリル、1,1−アゾビス1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート、2,2−アゾビス−(2−アミノプロパン)ジハイドライド、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系化合物が採用できる。
【0023】
化学重合型の開始剤としては、過酸化物と三級アミンや有機金属化合物、ピリミジントリオン酸誘導体と4級アンモニウムクロライドの組合せ等が採用できる。
【0024】
光重合型開始剤としては、増感剤と還元剤との組合せが一般的に使用される。
増感剤としては、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4−ジメチルベンジルジメチルケタール、アントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェノン)ケトン、4,4−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アシド基を含む化合物等が採用でき、これらの化合物を1種、または2種以上組み合わせてもよく、用途に応じ化合物およびその割合を任意に選択する。
還元剤としては、3級アミン等が一般に使用される。3級アミンとしては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルが採用される。その他には、ベンゾイルパーオキサイド、有機金属化合物、スルフィン酸誘導体等が使用される。
光重合型開始剤を単独または2種以上併用する場合は、紫外線若しくは可視光線等の活性光線を照射することにより重合反応が達せられる。光源としては、超高圧、高圧、中圧および低圧の各種水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、キセノンランプ、アルゴンイオンレーザー等を使用することができる。
【0025】
重合開始剤の添加量は、開始剤の能力に応じ0.001〜20重量%までの範囲で適宜決定する。
【0026】
これら重合触媒を含むモノマー/またはオリゴマーを液体状態で多孔質セラミックスの連通孔に浸透させる。浸透は、超音波中および/または減圧下で浸透させることが好ましい。浸透後は常温・常圧、常温・加圧、加温・加圧、加温・常圧のいずれかの条件下において、重合触媒を含むモノマー/またはオリゴマーを密閉容器中で重合させ、レジンが含浸された複合材料を得る。
なお、必要に応じ着色剤、重合禁止剤、酸化安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料をレジン用の化合物の液に添加することができる。
【0027】
この発明の歯科用材料は、例えば、以下のようにして製造することができる。
ここにおいて、多孔質セラミックスは、シランカップリング処理されるものとする。
図1に示されるように、(a)粒子径サイズが調整されたセラミックス微粉末、バインダー等の原料を混合する(混合工程)。次いで、(b)型枠を用い所定の型に成型する(成型工程)。そして、(c)成型型枠から取り出し、焼成炉中において真空焼結させ、所定温度にてバインダーを揮散させて連通孔を有する多孔質セラミックスを得る(焼成工程)。(d)得られた多孔質セラミックスをシランカップリング剤を分散させた溶液中に浸漬し、密閉容器中で、超音波中および/または減圧下にて、多孔質セラミックスの連通孔にシランカップリング剤を浸透させカップリング処理する(カップリング処理工程)。そして、(e)カップリング処理された多孔質セラミックスを乾燥させる(乾燥工程)。次いで、(f)カップリング処理された多孔質セラミックスをモノマーおよび/またはオリゴマーと重合開始剤等からなる混合液中に浸漬し、密閉容器中で減圧し、カップリング処理された多孔質セラミックスの連通孔に混合液を浸透させる(浸透工程)。(g)多孔質セラミックスを混合液から取り出し、モノマーおよび/またはオリゴマーを重合させ(重合工程)、レジンが含浸された製品を得る。
【0028】
【実施例】
以下、実施例を示し、さらに詳しくこの発明について説明する。もちろんこの発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
<多孔質セラミックス原料の調整>
網目形成酸化物としてSiO2 を67重量部、中間酸化物としてAl23 を20重量部、網目修飾酸化物としてK2 Oを6重量部、Na2 Oを6重量部を用いたアルミノケイ酸塩系のセラミックスにMgO、CaO、Fe23 、TiO2 、珪石、カオリンを微量含むものを熔融してセラミックスを製造し、これをボールミルによって粉砕し、粗粉末を得、該粗粉末をふるい分けし、平均粒径7μmで、粒度0.5〜40μmのセラミックス粉末を得たものを使用したものであり、バインダーとして昇華性の炭化水素化合物50重量部と、溶媒としてシクロヘキサン50重量部からなるバインダー混合液を用い、前記のセラミックス粉末100重量部に対し、前記バインダー混合液40重量部を、セラミックス粉末とバインダー混合液とが均一に混合されるようにシクロヘキサンを添加しながら攪拌・混合し、次いで、常温においてシクロヘキサンを揮発させ混合粉末を得た。
<多孔質セラミックスの焼成>
前記混合粉末を、CAD/CAM用ブロック型を用いて成型した。成型されたブロックを真空焼成炉にて約50HPaの減圧下、1040℃で10分間焼成し、見掛け気孔率35%の多孔質セラミックスブロックを得た。見掛け気孔率は後述の測定方法によるものである。
<カップリング処理>
多孔質セラミックスブロック10重量部を、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1重量部を含むエタノール溶媒中に浸漬し、60分間超音波を作用させて、連通孔の微細孔にまで処理液を浸透させた。次いで、カップリング処理液から多孔質セラミックスブロックを取り出し、100℃で1時間維持し、エチルアルコールおよび余分な水分を蒸発させた。そして、120℃で2時間カップリング処理を行なわせ、カップリング処理済多孔質セラミックスブロックを得た。
<レジンの浸透、重合>
化合物Iが39重量部、化合物IIが15重量部、NPGが30重量部、化合物IVが16重量部、アゾ触媒Mが0.5重量部からなる混合液を調整し、該混合液中に、前記カップリング処理済多孔質セラミックスブロックを浸漬し、6時間超音波を作用させて、連通孔の微細孔にまで混合液を浸透させた。
次いで、これを常温常圧下で重合させ、レジン含浸セラミックスを得た。
ここにおいて、化合物Iは、ジ−2−メタクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、化合物IIは、1,3,5−トリス[1,3−ビス(メタクリロキシ)−2−プロポキシカルボニルアミノヘキサン]−1,3,5−(1H,3H,5H)トリアジン−2,4,6−トリオン、NPGは、ネオペンチルグリコール、化合物IVは、トリフルオロエチルメタクリレート、アゾ触媒Mは、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を意味する。
得られたレジン含浸セラミックスを、6.5×2.0×24mmに切り出し、表面を酸化チタンでバフ研磨し、水中に1日浸漬したものを試験片とし、以下に示す試験方法に基づき物理的性質(曲げ強さ、曲げ弾性率、衝撃強さ、磨耗量)、色調変化(耐着色性、耐変色性)の試験を行った。結果は表1に示す通りである。
【0030】
1)含浸状態は試験片を肉眼により観察し、色ムラのないものを良好とし、色ムラのあるものを不良とした。
2)曲げ強さおよび曲げ弾性率は、オートグラフ(SHIMAZU社製)を使用し、クロスヘッドスピード1mm/min、支点間距離20mmで三点曲げ試験を行うことで測定した。
3)衝撃強さは、ダインスタッド衝撃試験器(東洋精機製作所製)を使用し、2.5kg・cmのエネルギーで、打撃部は直径6mmロッド銅を用いることを条件として測定した。
4)耐磨耗性は、磨耗試験器(東京技研社製)を使用し、対磨耗材料を硬質レジン(ジーシー・デュラデント前歯)を用い、100000回後の磨耗量を測定した。
5)耐着色性は、0.2%濃度の塩基性フクシン水溶液を100℃に煮沸した中に、試験片を60分間浸漬し、未試験片と試験片との色差を肉眼で判定した。色差の小さい場合を3、色差がある場合を2、色差が大きい場合を1で表す。
6)耐変色性は、試作サーマルサイクル試験器を用い、試験片を4℃の冷水と60℃の温水に交互に30秒間づつ浸漬を繰り返し、2000回後の試験片と未試験片との色差を肉眼で判定した。色差の小さい場合を3、色差がある場合を2、色差が大きい場合を1で表す。
なお、見掛け気孔率の測定は、以下の方法によるものである。
すなわち、多孔質セラミックスブロックを水中に浸し、減圧下で泡が完全に放出しなくなるまでこれを行い、60分間、超音波を作用させ微細孔まで水を浸透させる。超音波作用後、水中から取り出し24時間放置後、水中での重量を測定する(重量A)。表面に付着している余分な水を拭き取り、表乾重量を測定する(重量B)。次にこれを乾燥機内で乾燥させ、乾燥重量を測定する(重量C)。これらの重量A、B、Cにより以下の式から見掛け気孔率を算出した。
見掛け気孔率(%)=(B−C)/(B−A)×100
【0031】
(実施例2、3)
実施例1において、セラミックス粉末100重量部に対するバインダー混合液の量を30重量部、または、25重量部にし、それ以外は実施例1と同様にしてレジン含浸セラミックスを得、実施例1と同一な試験を行った。得られた結果は表1の実施例2、3に示す通りである。
【0032】
(実施例4)
実施例1において、アゾ触媒Mに代え、ベンゾイルパーオキサイド(B.P.O)を0.5重量部用い、それ以外は実施例1と同様にしてレジン含浸セラミックスを得、実施例1と同一な試験を行った。得られた結果は表1の実施例4に示す通りである。
【0033】
(実施例5)
実施例1において、化合物Iを43重量部、化合物IIを10重量部、NPGを35重量部、化合物IVを12重量部用い、それ以外は実施例1と同様にしてレジン含浸セラミックスを得、実施例1と同一な試験を行った。得られた結果は表1の実施例5に示す通りである。
【0034】
【表1】
Figure 0004636514
【0035】
(実施例6)
実施例1において、化合物Iを43重量部、化合物IIに代え芳香族多官能モノマーである2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(化合物III)を10重量部、NPGを35重量部、化合物IVを12重量部用い、それ以外は実施例1と同様にしてレジン含浸セラミックスを得、実施例1と同一な試験を行った。得られた結果は表2の実施例6に示す通りである。
【0036】
(実施例7)
実施例1において、化合物Iを50重量部、NPGを20重量部、化合物IVを10重量部、化合物IIに代えメチルメタクリレート(MMA)を20重量部用い、それ以外は実施例1と同様にしてレジン含浸セラミックスを得、実施例1と同一な試験を行った。得られた結果は表2の実施例7に示す通りである。
【0037】
(実施例8)
表2の実施例8に示す組成のセラミックス粉末(平均粒径7μm、粒度0.5〜40μm)100重量部と、実施例1と同一のバインダー混合液40重量部を混合した混合粉末を用いて、実施例1と同一型によって成型し、50HPaの減圧下、1100℃で10分間焼成し、見掛け気孔率が35%の多孔質セラミックスブロックを得た。カップリング処理を実施例1と同様に行った後、表2の実施例8に示す配合比の混合液中に多孔質セラミックスブロックを浸漬し、3時間超音波を作用させ、次いで、実施例1と同様に常温常圧下で重合させ、レジン含浸セラミックスを得た。得られたレジン含浸セラミックスについて実施例1と同一な試験を行った。得られた結果は表2の実施例8に示す通りである。
【0038】
(実施例9)
実施例8と同一の混合粉末を用い、該混合粉末を実施例1と同一型によって成型し、50HPaの減圧下、1100℃で10分間焼成し、見掛け気孔率が35%の多孔質セラミックスブロックを得た。カップリング処理を実施例1と同様に行った後、表2の実施例9に示す配合比の混合液中にカップリング処理済多孔質セラミックスブロックを浸漬し、3時間超音波を作用させ、次いで、実施例1と同様に常温常圧下で重合させ、レジン含浸セラミックスを得た。得られたレジン含浸セラミックスについて実施例1と同一な試験を行った。得られた結果は表2の実施例9に示す通りである。
【0039】
【表2】
Figure 0004636514
【0040】
(実施例10)
表3の実施例10に示すように長石を88重量部、網目形成酸化物としてSiO2 を微量、中間酸化物としてAl23 を5重量部、網目修飾酸化物としてK2 Oを10重量部を用いたアルミノケイ酸塩系セラミックスにNa2 O、TiO2 、CaO、MgOを微量含むものを熔融してセラミックスを製造し、これをボールミルによって粉砕し、粗粉末を得、該粗粉末をふるい分けし、平均粒径40μmで、粒度120μm以下のセラミックス粉末を得た。該セラミックス粉末100重量部と、実施例1と同一のバインダー混合液40重量部を混合した混合粉末を用いて、実施例1と同一型によって成型し、50HPaの減圧下、770℃で10分間焼成し、見掛け気孔率が33%の多孔質セラミックスブロックを得た。カップリング処理を実施例1と同様に行った後、表2の実施例9に示す配合比の混合液中に多孔質セラミックスブロックを浸漬し、3時間超音波を作用させ、次いで、実施例1と同様に常温常圧下で重合させ、レジン含浸セラミックスを得た。得られたレジン含浸セラミックスについて実施例1と同一な試験を行った。得られた結果は表3の実施例10に示す通りである。
【0041】
(実施例11)
表3の実施例10において得られたセラミックスを700℃で熱処理を加え、結晶を析出させた。これをボールミルによって粉砕し、粗粉末を得、該粗粉末をふるい分けし、平均粒径40μmで、粒度120μm以下のセラミックス粉末を得た。該セラミックス粉末100重量部と、実施例1と同一のバインダー混合液40重量部を混合した混合粉末を用いて、実施例1と同一型によって成型し、50HPaの減圧下、770℃で10分間焼成し、見掛け気孔率が30%の多孔質セラミックスブロックを得た。カップリング処理を実施例1と同様に行った後、表2の実施例9に示す配合比の混合液中に多孔質セラミックスブロックを浸漬し、3時間超音波を作用させ、次いで、実施例1と同様に常温常圧下で重合させ、レジン含浸セラミックスを得た。得られたレジン含浸セラミックスについて実施例1と同一な試験を行った。得られた結果は表3の実施例11に示す通りである。
【0042】
【表3】
Figure 0004636514
【0043】
(比較例1)
実施例1のセラミックス粉末のみを用い、1300℃で15分間焼成し溶融状態にして気孔をなくしたものであり、実施例1と同一な試験を行った。得られた結果は表4の比較例1に示されるように、曲げ弾性率は大きく、脆く衝撃強さがなく、曲げ強さにおいても実施例に比べはるかに劣るものである。
【0044】
(比較例2)
実施例1において得られた多孔質セラミックスブロックについて、カップリング処理のみを行い、実施例1におけると同一な試験を行った。得られた結果を表4の比較例2に示す。該多孔質セラミックスブロックは、曲げ弾性率はあるものの、曲げ強さ、衝撃強さは非常に低く、耐磨耗性試験では全てが磨耗した。これは、セラミックス粒子間の結合が弱く、かつ一部のみの結合であることによる。そして、耐着色性、耐変色性にも劣るものである。
【0045】
(比較例3)
実施例1において得られた多孔質セラミックスブロックについて、実施例1と同様にカップリング処理した後、実施例1と同一の混合液を超音波を利用しないでそのまま含浸・重合させたものであり、浸漬時間、重合条件は実施例1と同一としたものであるが、十分に混合液が含浸しておらず、表面のみが含浸している状態である。得られたセラミックス複合材料について実施例1と同一な試験を行った。得られた結果は表4の比較例3に示す通りである。得られたセラミックス複合材料は実施例1に比べ、曲げ強さが劣るものである。
【0046】
(比較例4)
実施例1と同一の混合粉末を、50HPaの減圧下、焼成温度1180℃で10分間焼成し、セラミックスブロックを得た。得られたセラミックスブロックについて、実施例4と同一の混合液を用い、それ以外は実施例1と同様にしてセラミックス複合材料を得、実施例1と同一な試験を行った。得られた結果は表4の比較例4に示す通りである。実施例1に比べ見掛け気孔率が小さいため、曲げ弾性率が大きく、脆く、衝撃強さがない。曲げ強さにおいても実施例1に比べ劣るものである。
【0047】
【表4】
Figure 0004636514
【0048】
【発明の効果】
この発明は、以上詳しく説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
この発明によれば、
多孔質セラミックスの連通孔にレジンを含浸させることによって、無機材料の充填率を高くすることができることから、長期にわたって耐磨耗性、曲げ強さ等の機械的強度、耐変色性、耐着色性、審美性を維持することができ、また、セラミックス中の応力が緩和されるため、曲げ弾性率、衝撃強さ等において優れた歯科用材料を提供すること、加えてCAD/CAMシステムにも適した歯科用材料を提供することができる。
また、この発明によれば、耐磨耗性、曲げ強さ等の機械的強度、耐変色性、耐着色性、曲げ弾性率、衝撃強さ等といった特性は、セラミックス用素材原料、充填率、レジンの種類等を変えることにより種々設定することができるので、人工歯、インレー、アンレー、クラウン、クラウンブリッジやCAD/CAM用のブロック等が必要とする特性のものを容易にかつ安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の歯科用材料の製造方法の一例を示す工程図である。

Claims (5)

  1. 多孔質セラミックスにレジンが含浸されてなる歯科用材料の製造方法であって
    a)網目形成酸化物、中間酸化物、および、網目修飾酸化物を含有し平均粒径が3.0〜50μmのセラミックス粉末と、バインダーを含む混合物を所定形状に成型し、
    b)前記成型された混合物を焼成し、連通孔を有する多孔質セラミックスブロックを得、
    c)該多孔質セラミックスブロックの連通孔にシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤のうちから選択された少なくとも1つのカップリング剤を超音波中および/または減圧下で浸透させ、連通孔の表面をカップリング処理し、
    d)前記カップリング処理された多孔質セラミックスブロックの連通孔に、少なくともエチレン性二重結合を含有するモノマーおよび/またはオリゴマーを超音波中および/または減圧下で浸透させた後、重合させる
    ことを特徴とする歯科用材料の製造方法。
  2. 前記多孔質セラミックスブロックは、見かけの気孔率が0.5〜70%であることを特徴とする請求項1記載の歯科用材料の製造方法
  3. 前記網目形成酸化物がSiO 、前記中間酸化物がAl 、前記網目修飾酸化物がK Oとするアルミノケイ酸塩系セラミックス粉末を含有し、該粉末はSiO が40〜80重量%、Al が5〜30重量%、K Oが1〜30重量%のものであることを特徴とする請求項1または2記載の歯科用材料の製造方法。
  4. 前記網目形成酸化物がSiO 、前記中間酸化物がAl 、前記網目修飾酸化物がK OとNa Oとするアルミノケイ酸塩系セラミックス粉末を含有し、該粉末はSiO が40〜80重量%、Al が5〜30重量%、K Oが1〜30重量%、Na Oが1〜10重量%のものであることを特徴とする請求項1または2記載の歯科用材料の製造方法
  5. 前記網目形成酸化物がSiO とB 、前記中間酸化物がAl 、前記網目修飾酸化物がNa Oとするアルミノホウケイ酸塩系セラミックス粉末を含有し、該粉末はSiO が60〜90重量%、B が1〜20重量%、Al が1〜25重量%、Na Oが0.1〜15重量%のものであることを特徴とする請求項1または2記載の歯科用材料の製造方法。
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