以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
<ポリ乳酸ブロック共重合体>
本発明において、ポリ乳酸ブロック共重合体とは、L−乳酸を主成分とするポリ−L−乳酸セグメントとD−乳酸を主成分とするポリ−D−乳酸セグメントから構成されるポリ乳酸ブロック共重合体とは、L−乳酸単位からなるセグメントとD−乳酸単位からなるセグメントが共有結合したポリ乳酸ブロック共重合体である。
ここで、L−乳酸単位からなるセグメントとは、L−乳酸を主成分とする重合体であり、L−乳酸単位を70mol%以上含有している重合体をいう。80mol%以上含有していることがより好ましく、90mol%以上含有していることがさらに好ましく、95mol%以上含有していることが特に好ましく、98mol%以上含有していることが最も好ましい。
また、D−乳酸単位からなるセグメントとは、D−乳酸を主成分とする重合体であり、D−乳酸単位を70mol%以上含有している重合体をいう。80mol%以上含有していることがより好ましく、90mol%以上含有していることがさらに好ましく、95mol%以上含有していることが特に好ましく、98mol%以上含有していることが最も好ましい。
本発明において、L−乳酸またはD−乳酸単位からなるセグメントは、得られるポリ乳酸ブロック共重合体およびポリ乳酸ブロック共重合体を含むポリ乳酸樹脂組成物の性能を損なわない範囲で、他の成分単位を含んでいてもよい。L−乳酸またはD−乳酸単位以外の他の成分単位としては、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類またはそれらの誘導体、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールにエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを付加した多価アルコール、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類またはそれらの誘導体、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類、およびグリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などが挙げられる。
本発明においてポリ乳酸ブロック共重合体は、ステレオコンプレックス形成によりステレオコンプレックス結晶に基づく融点を190〜230℃の範囲で有するため、ポリ乳酸ホモポリマーに比較して耐熱性に優れる。ステレオコンプレックス結晶由来の融点の好ましい範囲は200℃〜230℃であり、205℃〜230℃の温度範囲がさらに好ましく、210℃〜230℃の温度範囲が特に好ましい。また、150℃〜185℃の範囲でポリ−L−乳酸単独結晶および/またはポリ−D−乳酸単独結晶に基づく小さな融解ピークを有する場合もある。
また、本発明で得られるポリ乳酸ブロック共重合体は、耐熱性の観点からステレオコンプレックス形成率(Sc)が80〜100%の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは85〜100%の範囲であり、90〜100%であることが特に好ましい。ここで、ステレオコンプレックス形成率とは、ポリ乳酸中の全結晶におけるステレオコンプレックス結晶の占める割合である。具体的には示差走査型熱量計(DSC)で昇温速度20℃/minで30℃から250℃まで昇温した際のポリ−L−乳酸単独結晶およびポリ−D−乳酸単独結晶の結晶融解に基づく熱量をΔHl、ステレオコンプレックス結晶の結晶融解に基づく熱量をΔHhとすると下記式(4)で算出することができる。
Sc=ΔHh/(ΔHl+ΔHh)×100 (4)
また、本発明において、ポリ乳酸ブロック共重合体はさらに下記式(5)を満たすことが好ましい。
1<(Tm−Tms)/(Tme−Tm)<1.8 (5)
ここで、Tmとは、ポリ乳酸ブロック共重合体を示差走査熱量計(DSC)により昇温速度40℃/minで30℃から250℃まで昇温した際の融点、Tmsとは、ポリ乳酸ブロック共重合体を示差走査熱量計(DSC)により昇温速度40℃/minで30℃から250℃まで昇温した際の融解開始温度、Tmeとは、ポリ乳酸ブロック共重合体を示差走査熱量計(DSC)により昇温速度40℃/minで30℃から250℃まで昇温した際の融解終了温度を示す。好ましい範囲は1<(Tm−Tms)/(Tme−Tm)<1.6であり、1<(Tm−Tms)/(Tme−Tm)<1.4の範囲がさらに好ましい。
本発明において、ポリ乳酸ブロック共重合体は成形性および耐熱性に優れるという点で、降温結晶化温度(Tc)が130℃以上であることが好ましい。ここで、成形体の降温結晶化温度(Tc)とは、示差走査熱量計(DSC)により昇温速度20℃/minで30℃から250℃まで昇温した後、250℃で3分間恒温状態に維持を行い、冷却速度20℃/minで降温した際に測定したポリ乳酸結晶由来の結晶化温度である。結晶化温度(Tc)は、特に限定されるものではないが、耐熱性および透明性の観点から、130℃以上が好ましく、132℃以上がより好ましく、135℃以上が特に好ましい。
本発明のポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量は、10万以上30万未満であることが、機械物性の点で好ましい。より好ましくは12万以上28万未満であり、さらに好ましくは13万以上27万未満であり、14万以上26万未満であることが成形性および機械物性の点で特に好ましい。
また、ポリ乳酸ブロック共重合体の分散度は、1.5〜3.0の範囲が機械物性の点で好ましい。分散度の範囲が1.8〜2.7であることがさらに好ましく、2.0〜2.4であることが成形性および機械物性の点で特に好ましい。なお、重量平均分子量および分散度とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールまたはクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の値である。
本発明において、ポリ乳酸ブロック共重合体の平均連鎖長は20以上が好ましい。さらに好ましくは25以上であり、30以上であることが成形体の機械物性の点で特に好ましい。なお、ポリ乳酸ブロック共重合体の平均連鎖長は13C−NMR測定により、カルボニル炭素に帰属する炭素のピークのうち、170.1〜170.3ppm付近に存在するピークの積分値を(a)、169.8〜170.0ppm付近に存在するピークの積分値を(b)としたとき、下記式(6)で算出することができる。
平均連鎖長=(a)/(b) (6)
本発明においては、ポリ乳酸ブロック共重合体一分子あたりに含まれるL−乳酸単位からなるセグメントおよびD−乳酸単位からなるセグメントの合計数が3以上であることが、高融点のポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成しやすいポリ乳酸ブロック共重合体が得られる点で好ましい。さらに好ましくは5以上であり、7以上であることが特に好ましい。
本発明において、L−乳酸単位からなるセグメントとD−乳酸単位からなるセグメントのそれぞれの合計の重量比は、90:10〜10:90であることが好ましい。さらに好ましくは80:20〜20:80であり、特に好ましくは75:25〜60:40あるいは40:60〜25:75である。L−乳酸単位からなるセグメントとD−乳酸単位からなるセグメントのそれぞれの合計の重量比が上記好ましい範囲であると、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成しやすく、その結果、ポリ乳酸ブロック共重合体の融点の上昇が十分に大きくなる。
<ポリ乳酸ブロック共重合体の調製法>
ポリ乳酸ブロック共重合体の調製法については、特に限定されるものではなく、一般のポリ乳酸調製法を利用することができる。具体的には、原料の乳酸から生成した環状2量体のL−ラクチドまたはD−ラクチドのいずれか一方を触媒存在下で開環重合を行い、さらに該ポリ乳酸の光学異性体であるラクチドを添加して開環重合することでポリ乳酸ブロック共重合体を得るラクチド法(ポリ乳酸ブロック共重合体の調製法1)、当該原料を直接重合またはラクチドを経由した開環重合によりポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とをそれぞれ重合し、次いで、得られたポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸を混合後、固相重合によりポリ乳酸ブロック共重合体を得る方法(ポリ乳酸ブロック共重合体の調製法2)、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを、融点の高い方の成分の融解終了温度以上で長時間溶融混練を行うことで、L−乳酸単位のセグメントとD−乳酸単位のセグメントとをエステル交換反応させたポリ乳酸ブロック共重合体を得る方法(ポリ乳酸ブロック共重合体の調製法3)、多官能性化合物をポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸に混合して反応することで、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを多官能性化合物で共有結合させポリ乳酸ブロック共重合体を得る方法(ポリ乳酸ブロック共重合体の調製法4)などがある。調製法についてはいずれの方法を利用してもよいが、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸を混合後、固相重合する方法が、ポリ乳酸ブロック共重合体一分子あたりに含まれるL−乳酸単位からなるセグメントおよびD−乳酸単位からなるセグメントの合計数が3以上となり、結果的に耐熱性、結晶性および機械物性を兼ね備えたポリ乳酸ブロック共重合体を得られるという点において好ましい。
ここで、ポリ−L−乳酸とは、L−乳酸を主成分とする重合体であり、L−乳酸単位を70mol%以上含有している重合体をいう。80mol%以上含有していることが好ましく、90mol%以上含有していることがより好ましく、95mol%以上含有していることがさらに好ましく、98mol%以上含有していることが特に好ましい。
また、ポリ−D−乳酸とは、D−乳酸を主成分とする重合体であり、D−乳酸単位を70mol%以上含有している重合体をいう。80mol%以上含有していることが好ましく、90mol%以上含有していることがより好ましく、95mol%以上含有していることがさらに好ましく、98mol%以上含有していることが特に好ましい。
次に、各種ポリ乳酸ブロック共重合体の調製法について詳細に説明する。
開環重合にてポリ乳酸ブロック共重合体を得る方法(調製法1)としては、例えば、L−ラクチドまたはD−ラクチドのいずれか一方を触媒存在下で開環重合を行い、次いで他方の光学異性体であるラクチドを添加して開環重合を行うことでポリ乳酸ブロック共重合体を得る方法を挙げることができる。
開環重合で得られるポリ乳酸ブロック共重合体一分子あたりに含まれるL−乳酸単位からなるセグメントの重量平均分子量とD−乳酸単位からなるセグメントの重量平均分子量の比は、耐熱性および成形体の透明性の観点から、2以上30未満であることが好ましい。さらに好ましくは3以上20未満であり、5以上15未満であることが特に好ましい。ここで、L−乳酸単位からなるセグメントの重量平均分子量とD−乳酸単位からなるセグメント重量平均分子量との比は、ポリ乳酸ブロック共重合体を重合する際に用いるL−ラクチドとD−ラクチドとの重量比で制御することができる。
開環重合で得られるポリ乳酸ブロック共重合体一分子あたりに含まれるL−乳酸単位からなるセグメントおよびD−乳酸単位からなるセグメントの合計数は3以上であることが、耐熱性および結晶性が向上する点で好ましい。さらに好ましくは5以上であり、7以上であることが特に好ましい。また、1セグメントあたりの重量平均分子量は2,000〜50,000であることが好ましい。さらに好ましくは4,000〜45,000であり、5,000〜40,000であることが特に好ましい。
開環重合法で用いるL−ラクチドおよびD−ラクチドの光学純度は90%ee以上であることがポリ乳酸ブロック共重合体の結晶性および融点を向上できる点で好ましい。さらに好ましくは95%ee以上であり、98%ee以上であることが特に好ましい。
開環重合法でポリ乳酸ブロック共重合体を得る場合、高分子量体を得るという観点から反応系内の水分量はL−ラクチドおよびD−ラクチドの合計量に対して4mol%以下であることが好ましい。さらに好ましくは2mol%以下であり、0.5mol%以下が特に好ましい。なお、水分量とはカールフィッシャー法を用いて電量滴定法により測定した値である。
開環重合法によりポリ乳酸ブロック共重合体を調製する際の重合触媒としては、金属触媒と酸触媒が挙げられる。金属触媒としては錫化合物、チタン化合物、鉛化合物、亜鉛化合物、コバルト化合物、鉄化合物、リチウム化合物、希土類化合物などの金属触媒が挙げられる。化合物の種類としては、金属アルコキシド、金属ハロゲン化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酸化物などが好ましい。具体的には、錫粉末、塩化錫(II)、塩化錫(IV)、臭化錫(II)、臭化錫(IV)、エトキシ錫(II)、t−ブトキシ錫(IV)、イソプロポキシ錫(IV)、酢酸錫(II)、酢酸錫(IV)、オクチル酸錫(II)、ラウリン酸錫(II)、ミリスチン酸錫(II)、パルミチン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)、リノール酸錫(II)、アセチルアセトン錫(II)、シュウ酸錫(II)、乳酸錫(II)、酒石酸錫(II)、ピロリン酸錫(II)、p−フェノールスルホン酸錫(II)、ビス(メタンスルホン酸)錫(II)、硫酸錫(II)、酸化錫(II)、酸化錫(IV)、硫化錫(II)、硫化錫(IV)、酸化ジメチル錫(IV)、酸化メチルフェニル錫(IV)、酸化ジブチル錫(IV)、酸化ジオクチル錫(IV)、酸化ジフェニル錫(IV)、酸化トリブチル錫、水酸化トリエチル錫(IV)、水酸化トリフェニル錫(IV)、水素化トリブチル錫、モノブチル錫(IV)オキシド、テトラメチル錫(IV)、テトラエチル錫(IV)、テトラブチル錫(IV)、ジブチルジフェニル錫(IV)、テトラフェニル錫(IV)、酢酸トリブチル錫(IV)、酢酸トリイソブチル錫(IV)、酢酸トリフェニル錫(IV)、二酢酸ジブチル錫、ジオクタン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジブチル錫(IV)、マレイン酸ジブチル錫(IV)、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、塩化トリブチル錫(IV)、二塩化ジブチル錫、三塩化モノブチル錫、二塩化ジオクチル錫、塩化トリフェニル錫(IV)、硫化トリブチル錫、硫酸トリブチル錫、メタンスルホン酸錫(II)、エタンスルホン酸錫(II)、トリフルオロメタンスルホン酸錫(II)、ヘキサクロロ錫(IV)酸アンモニウム、ジブチル錫スルフィド、ジフェニル錫スルフィドおよび硫酸トリエチル錫、フタロシアニン錫(II)等の錫化合物が挙げられる。また、チタニウムメトキシド、チタニウムプロポキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムブトキシド、チタニウムイソブトキシド、チタニウムシクロヘキシド、チタニウムフェノキシド、塩化チタン、二酢酸チタン、三酢酸チタン、四酢酸チタン、酸化チタン(IV)等のチタン化合物、ジイソプロポキシ鉛(II)、一塩化鉛、酢酸鉛、オクチル酸鉛(II)、イソオクタン酸鉛(II)、イソノナン酸鉛(II)、ラウリン酸鉛(II)、オレイン酸鉛(II)、リノール酸鉛(II)、ナフテン酸鉛、ネオデカン酸鉛(II)、酸化鉛、硫酸鉛(II)等の鉛化合物、亜鉛粉末、メチルプロポキシ亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛(II)、ナフテン酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸亜鉛等の亜鉛化合物、塩化コバルト、酢酸コバルト、オクチル酸コバルト(II)、イソオクタン酸コバルト(II)、イソノナン酸コバルト(II)、ラウリン酸コバルト(II)、オレイン酸コバルト(II)、リノール酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト(II)、炭酸第一コバルト、硫酸第一コバルト、酸化コバルト(II)等のコバルト化合物、塩化鉄(II)、酢酸鉄(II)、オクチル酸鉄(II)、ナフテン酸鉄、炭酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、酸化鉄(II)等の鉄化合物、プロポキシリチウム、塩化リチウム、酢酸リチウム、オクチル酸リチウム、ナフテン酸リチウム、炭酸リチウム、硫酸ジリチウム、酸化リチウム等のリチウム化合物、トリイソプロポキシユウロピウム(III)、トリイソプロポキシネオジム(III)、トリイソプロポキシランタン、トリイソプロポキシサマリウム(III)、トリイソプロポキシイットリウム、イソプロポキシイットリウム、塩化ジスプロシウム、塩化ユウロピウム、塩化ランタン、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化イットリウム、三酢酸ジスプロシウム(III)、三酢酸ユウロピウム(III)、酢酸ランタン、三酢酸ネオジム、酢酸サマリウム、三酢酸イットリウム、炭酸ジスプロシウム(III)、炭酸ジスプロシウム(IV)、炭酸ユウロピウム(II)、炭酸ランタン、炭酸ネオジム、炭酸サマリウム(II)、炭酸サマリウム(III)、炭酸イットリウム、硫酸ジスプロシウム、硫酸ユウロピウム(II)、硫酸ランタン、硫酸ネオジム、硫酸サマリウム、硫酸イットリウム、二酸化ユウロピウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化サマリウム(III)、酸化イットリウム等の希土類化合物が挙げられる。その他にも、カリウムイソプロポキシド、塩化カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、ナフテン酸カリウム、炭酸t−ブチルカリウム、硫酸カリウム、酸化カリウム等のカリウム化合物、銅(II)ジイソプロポキシド、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、硫酸銅(II)、炭酸二銅等の銅化合物、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、オクチル酸ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル(II)、酸化ニッケル等のニッケル化合物、テトライソプロポキシジルコニウム(IV)、三塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム(II)、炭酸ジルコニウム(IV)、硫酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム(II)等のジルコニウム化合物、トリイソプロポキシアンチモン、フッ化アンチモン(III)、フッ化アンチモン(V)、酢酸アンチモン、酸化アンチモン(III)等のアンチモン化合物、マグネシウム、マグネシウムジイソプロポキシド、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物、ジイソプロポキシカルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸カルシウム等のカルシウム化合物、アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、オクチル酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、ゲルマニウム、テトライソプロポキシゲルマン、酸化ゲルマニウム(IV)等のゲルマニウム化合物、トリイソプロポキシマンガン(III)、三塩化マンガン、酢酸マンガン、オクチル酸マンガン(II)、ナフテン酸マンガン(II)、硫酸第一マンガン等のマンガン化合物、塩化ビスマス(III)、ビスマス粉末、酸化ビスマス(III)、酢酸ビスマス、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等のビスマス化合物なども挙げることができる。また、錫酸ナトリウム、錫酸マグネシウム、錫酸カリウム、錫酸カルシウム、錫酸マンガン、錫酸ビスマス、錫酸バリウム、錫酸ストロンチウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸コバルト、チタン酸亜鉛、チタン酸マンガン、チタン酸ジルコニウム、チタン酸ビスマス、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどの2種以上の金属元素からなる化合物なども好ましい。
また、酸触媒としては、プロトン供与体のブレンステッド酸でもよく、電子対受容体であるルイス酸でもよく、有機酸および無機酸のいずれでもよい。具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、オクチル酸、ノナン酸、イソノナン酸、トリフルオロ酢酸およびトリクロロ酢酸などのモノカルボン酸化合物、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸およびマロン酸などのジカルボン酸化合物、クエン酸およびトリカリバリル酸などのトリカルボン酸化合物、ベンゼンスルホン酸、n−ブチルベンゼンスルホン酸、n−オクチルベンゼンスルホン酸、n−ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジブチルベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼンスルホン酸、3,5−ジアミノ−2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸、p−クロルベンゼンスルホン酸、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、o−クレゾールスルホン酸、m−クレゾールスルホン酸、p−クレゾールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、イソプロピルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸、4,4−ビフェニルジスルホン酸、アントラキノン−2−スルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジアミノ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アントラキノン−1,5−ジスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、n−オクチルスルホン酸、ペンタデシルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸などの脂肪族スルホン酸、シクロペンタンスルホン酸、シクロヘキサンスルホン酸およびカンファースルホン酸、3−シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸などの脂環式スルホン酸などのスルホン酸化合物、アスパラギン酸やグルタミン酸などの酸性アミノ酸、アスコルビン酸、レチノイン酸、リン酸、メタリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、リン酸モノドデシルおよびリン酸モノオクタデシルなどのリン酸モノエステル、リン酸ジドデシルおよびリン酸ジオクタデシルなどのリン酸ジエステル、亜リン酸モノエステルおよび亜リン酸ジエステルなどのリン酸化合物、ホウ酸、塩酸、硫酸なども挙げられる。また、酸触媒としては、形状は特に限定されず、固体酸触媒および液体酸触媒のいずれでもよく、例えば、固体酸触媒としては、酸性白土、カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク、ケイ酸ジルコニウムおよびゼオライトなどの天然鉱物、シリカ、アルミナ、チタニアおよびジルコニアなどの酸化物またはシリカアルミナ、シリカマグネシア、シリカボリア、アルミナボリア、シリカチタニアおよびシリカジルコニアなどの酸化物複合体、塩素化アルミナ、フッ素化アルミナ、陽イオン交換樹脂などが挙げられる。
本発明において、開環重合法で生成するポリ乳酸の分子量を考慮した場合、開環重合法の重合触媒としては金属触媒が好ましく、中でも錫化合物、チタン化合物、アンチモン化合物、希土類化合物がより好ましく、開環重合法で生成するポリ乳酸の融点を考慮した場合には、錫化合物およびチタン化合物がより好ましい。さらに、開環重合法で生成するポリ乳酸の熱安定性を考慮した場合、錫系の有機カルボン酸塩あるいは錫系のハロゲン化合物が好ましく、特に酢酸錫(II)、オクチル酸錫(II)、および塩化錫(II)がより好ましい。
開環重合法の重合触媒の添加量については、使用する原料(L−乳酸、D−乳酸など)100重量部に対して0.001重量部以上、2重量部以下が好ましく、とくに0.001重量部以上、1重量部以下がより好ましい。触媒量が上記好ましい範囲であると、重合時間の短縮効果が得られ、一方、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量が大きくなる傾向である。また、触媒を二種類以上併用する場合は、合計添加量が上記の範囲内であることが好ましい。
開環重合法の重合触媒の添加時期については特に限定されるものではないが、ラクチドを加熱溶解後、触媒を添加することが触媒を系内に均一分散し、重合活性を高める点で好ましい。
次に、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを混合後、固相重合によりポリ乳酸ブロック共重合体を得る方法(調製法2)について説明する。本調製法においてポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の重合については、開環重合法および直接重合法のいずれの方法も用いることができる。
ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸を混合後、固相重合によりポリ乳酸ブロック共重合体を調製する場合には、固相重合後の重量平均分子量およびステレオコンプレックス形成率が高くなる点で、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のうちいずれか一方の重量平均分子量が60,000〜300,000以下であり、もう一方の重量平均分子量が10,000〜100,000以下であることが好ましい。さらに好ましくは、一方の重量平均分子量が100,000〜270,000、もう一方の重量平均分子量が15,000〜80,000である。特に好ましくは、一方の重量平均分子量が150,000〜240,000、もう一方の重量平均分子量が20,000〜50,000である。
さらに、本発明でポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分との重量平均分子量は、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のうちいずれか一方の重量平均分子量が120,000以上300,000以下であり、もう一方の重量平均分子量が30,000以上100,000以下であることも好ましい態様である。より好ましくは、一方の重量平均分子量が100,000以上270,000以下、もう一方の重量平均分子量が35,000以上80,000以下である。さらに好ましくは、125,000以上255,000以下、もう一方の重量平均分子量が25,000以上50,000以下である。
また、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の重量平均分子量の組み合わせとしては混合後の重量平均分子量が90,000以上となるよう、適宜選択することが好ましい。
また、本発明で使用するポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸は、重量平均分子量の高い方と重量平均分子量の低い方とのそれぞれの比が、2以上30未満であることが好ましい。さらに好ましくは、3以上20未満であり、5以上15未満であることが最も好ましい。また、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との重量平均分子量の組み合わせとしては混合後の重量平均分子量が90,000以上となるよう、適宜選択することが好ましい。
また、本発明で使用するポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸は、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分のそれぞれの重量平均分子量が上記の範囲であることと、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分の重量平均分子量の比率が2以上30未満であることとの両方を満たすことが好ましい。
ここで、重量平均分子量は、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールまたはクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の値である。
ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸に含有するラクチド量およびオリゴマー量は、それぞれ5%以下であることが好ましい。さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。また、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸に含有する乳酸量は、2%以下であることが好ましい。さらに好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0.5%以下である。
混合するポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の酸価は、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の内、いずれか一方の酸価が100eq/ton以下であることが好ましい。より好ましくは50eq/ton以下であり、さらに好ましくは30eq/ton以下であり、特に好ましくは15eq/ton以下である。また、混合するポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の内、もう一方の酸価は600eq/ton以下であることが好ましい。より好ましくは300eq/ton以下であり、さらに好ましくは150eq/ton以下であり、特に好ましくは100eq/ton以下である。
開環重合法を利用してポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を重合する方法については、高分子量体を得るという観点から反応系内の水分量はL−ラクチドおよびD−ラクチドの合計量に対して4mol%以下であることが好ましい。さらに好ましくは2mol%以下であり、0.5mol%以下が特に好ましい。なお、水分量とはカールフィッシャー法を用いて電量滴定法により測定した値である。
また、開環重合法によりポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を製造する際の重合触媒としては、調製法1と同様の金属触媒と酸触媒が挙げられる。
さらに、開環重合法の重合触媒の添加量については、使用する原料(L−乳酸、D−乳酸など)100重量部に対して0.001重量部以上、2重量部以下が好ましく、とくに0.001重量部以上、1重量部以下がより好ましい。触媒量が上記好ましい範囲であると、重合時間の短縮効果が得られ、一方、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量が大きくなる傾向である。また、触媒を2種類以上併用する場合は、合計添加量が上記の範囲内であることが好ましい。
開環重合法の重合触媒の添加時期については特に限定されるものではないが、ラクチドを加熱溶解後、触媒を添加することが触媒を系内に均一分散し、重合活性を高める点で好ましい。
また、直接重合法を利用してポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を製造する際の重合触媒としては、金属触媒および酸触媒が挙げられる。金属触媒としては錫化合物、チタン化合物、鉛化合物、亜鉛化合物、コバルト化合物、鉄化合物、リチウム化合物、希土類化合物などの金属触媒が挙げられる。化合物の種類としては、金属アルコキシド、金属ハロゲン化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酸化物などが好ましい。具体的には、金属触媒として前記調製法1において記載した金属化合物が、また、酸触媒として前記調製法1において記載した酸化合物が挙げられる。
直接重合法を利用して生成されるポリ乳酸の分子量を考慮した場合、錫化合物、チタン化合物、アンチモン化合物、希土類化合物、および酸触媒が好ましく、生成されるポリ乳酸の融点を考慮した場合に、錫化合物、チタン化合物、およびスルホン酸化合物がより好ましい。さらに、生成されるポリ乳酸の熱安定性を考慮した場合、金属触媒の場合は、錫系の有機カルボン酸塩あるいは錫系のハロゲン化合物が好ましく、特に酢酸錫(II)、オクチル酸錫(II)、および塩化錫(II)がより好ましく、酸触媒の場合は、モノおよびジスルホン酸化合物が好ましく、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、プロパンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、および2−アミノエタンスルホン酸がより好ましい。また、触媒は一種類でもよく、二種類以上併用してもよいが、重合活性を高める点から考えて、二種類以上を併用することが好ましく、着色も抑制することが可能となるという点で、錫化合物から選択される一種類以上および/またはスルホン酸化合物から選択される一種類以上を用いることが好ましく、さらに生産性に優れるという点で、酢酸錫(II)および/またはオクチル酸錫(II)と、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸のいずれか一種類以上との併用がより好ましく、酢酸錫(II)および/またはオクチル酸錫(II)と、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンジスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸のいずれか一種との併用がさらに好ましい。
重合触媒の添加量については、使用する原料(L−乳酸、D−乳酸など)100重量部に対して0.001重量部以上、2重量部以下が好ましく、とくに0.001重量部以上、1重量部以下がより好ましい。触媒量がこの好ましい範囲であると、重合時間を短縮することができ、一方、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量を大きくすることができる。また、触媒を二種類以上併用する場合は、合計添加量が上記の範囲内であることが好ましく、錫化合物から選択される一種類以上および/またはスルホン酸化合物から選択される一種類以上を併用する場合は、高い重合活性を維持し、かつ着色を抑制することが可能であるという点で、錫化合物とスルホン酸化合物の重量比が1:1〜1:30であることが好ましく、生産性に優れるという点で、1:2〜1:15であることがより好ましい。
重合触媒の添加時期については、特に直接重合法でポリ乳酸を重合する場合においては、酸触媒を原料または原料を脱水する前に添加することが生産性に優れるという点で好ましく、金属触媒については原料を脱水した後に添加することが重合活性を高める点から考えて好ましい。
本発明において、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸を混合し、混合物を固相重合してポリ乳酸ブロック共重合体を得る場合、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合により、ステレオコンプレックス形成率(Sc)が固相重合直前において60%を越える範囲であることが好ましい。さらに好ましくは70〜99%の範囲であり、80〜95%の範囲が特に好ましい。すなわち、上記式(4)に基づき、ステレオコンプレックス形成率(Sc)は下記式(2)を満たすことが好ましい。
Sc=ΔHh/(ΔHl+ΔHh)×100>60 (2)
ここで、
ΔHh:ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物のDSC測定において昇温速度20℃/minで昇温した際のステレオコンプレックス結晶に基づく熱量(J/g)
ΔHl:ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物のDSC測定において昇温速度20℃/minで昇温した際のポリ−L−乳酸単独結晶およびポリ−D−乳酸単独結晶の結晶融解に基づく熱量(J/g)
また、混合に用いるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との結晶化の有無については、特に限定されず、結晶化したポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを混合してもよいし、溶融状態のポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを混合することもできる。混合に用いるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との結晶化を行う場合、具体的な方法として気相中または液相中において結晶化処理温度で保持する方法および溶融状態のポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を融点−50℃〜融点+20℃の溶融機内でせん断を付与しながら滞留する方法および溶融状態のポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を融点−50℃〜融点+20℃の溶融機内で圧力を付与しながら滞留する方法などが挙げられる。
ここでいう結晶化処理温度とは、ガラス転移温度より高く、前記で混合したポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のうち、低い融点を有するポリ乳酸の融点よりも低い温度範囲であれば良いが、予め示差走査型熱量計(DSC)により測定した昇温結晶化温度および降温結晶化温度の範囲内であることがより好ましい。
気相中または液相中において結晶化させる際には、減圧、常圧または加圧のいずれの条件でもよい。
また、気相中または液相中において結晶化させる際の時間については、3時間以内であれば十分に結晶化されており、2時間以内でも好ましい。
上述した溶融機内でせん断または圧力を付与することでポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを結晶化する方法において、溶融機はせん断あるいは圧力を付与することができれば限定されず、重合缶、ニーダー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、射出成形機などを用いることができ、好ましくは単軸押出機、二軸押出機である。
溶融機内でせん断または圧力を付与することで結晶化する方法において、結晶化処理温度は、混合するポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の融点に対し、融点−50℃〜融点+20℃の範囲が好ましい。結晶化温度のより好ましい範囲は、融点−40℃〜融点であり、特に好ましくは融点−30℃〜融点−5℃の温度範囲である。溶融機の温度は通常、樹脂が溶融して良好な流動性を発現するために融点+20℃以上を設定するが、溶融機の温度を上記好ましい範囲とすると、適度な流動性を維持しながら結晶化し、一方、生成した結晶が再融解しにくい。ここで、融点とは、示差熱走査型測定を用いて、昇温速度20℃/minで30℃から250℃まで昇温した際の結晶融解温度のことである。
また、結晶化処理時間は0.1分〜10分であることが好ましく、より好ましくは0.3〜5分、特に好ましくは0.5分〜3分の範囲である。結晶化処理時間が上記好ましい範囲であると、結晶化が十分に起こり、一方、熱分解を生じにくい。
溶融機内でせん断を付与することで溶融樹脂の分子が配向する傾向があり、その結果、著しく結晶化速度を大きくすることができる。このときのせん断速度は10〜400(/秒)の範囲が好ましい。せん断速度が上記好ましい範囲であると、結晶化速度が十分に大きくなり、一方、せん断発熱による熱分解を生じにくい。
圧力を付与した場合においても結晶化が促進する傾向が見られ、特に0.05〜10(MPa)の範囲のときに良好な流動性と結晶性を併せ持つ結晶化ポリ乳酸を得ることができるため好ましい。圧力が上記好ましい範囲であると、結晶化速度が十分に大きくなる。
さらにせん断速度10〜400(/秒)のせん断と0.05〜10(MPa)の圧力を同時に付与して処理した場合には結晶化速度がより大きくなるため特に好ましい。
ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合方法としては特に限定されるものではなく、例えばポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸のうち、融点の高い方の成分の融解終了温度以上で溶融混練する方法、溶媒中で混合した後に溶媒を除く方法、あるいは溶融状態のポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の少なくとも一方を、あらかじめ融点−50℃〜融点+20℃の温度範囲内で溶融機内にてせん断を付与しながら滞留させた後、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸からなる混合物の結晶が残存するように混合する方法などが挙げられる。
ここで、融点とは、示差走査型熱量計で(DSC)により測定したポリ乳酸単独結晶融解ピークにおけるピークトップの温度のことを指し、また融解終了温度とは示差走査型熱量計で(DSC)により測定したポリ乳酸単独結晶融解ピークにおけるピーク終了温度のことを指す。
融解終了温度以上で溶融混練する方法としては、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸を回分法もしくは連続法で混合する方法が挙げられ、いずれの方法で混合してもよく、混練装置としては例えば、一軸押出機、二軸押出機、プラストミル、ニーダー、および減圧装置付き撹拌槽型反応機が挙げられ、均一かつ十分に混練できる観点においては一軸押出機、二軸押出機を用いることが好ましい。
融解終了温度以上で溶融混練する際の温度条件については、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸のうち、融点の高い方の成分の融解終了温度以上で行うことが好ましい。好ましくは140℃〜250℃の範囲であり、さらに好ましくは160℃〜230℃であり、特に好ましくは180℃〜210℃である。混合温度が上記の好ましい範囲であると、溶融状態で混合が可能であり、混合時における混合物の分子量低下も起きにくい。さらに、混合物の流動性を一定に保持することが可能であり、著しい流動性低下が起きにくい。
また、混合する時間条件については、0.1分〜10分の範囲が好ましく、0.3分〜5分がより好ましく、0.5分〜3分の範囲が特に好ましい。混合時間が上記好ましい範囲であると、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を均一に混合することが可能であり、一方、混合による熱分解を生じにくい。
融解終了温度以上で混合する際の圧力条件については特に限定されるものではなく、大気雰囲気下または窒素などの不活性気体雰囲気下のいずれの条件でもよい。
溶融機内でせん断または圧力を付与することで結晶化したポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを混合する具体的な方法としては、回分法もしくは連続法で混合する方法が挙げられ、いずれの方法で混合してもよいが、溶融状態のポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸のうち、融点の低い方のポリ乳酸の融点−50℃〜融点+20℃の溶融機内でせん断を付与しながら滞留する方法、または溶融状態のポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸のうち、融点の低い方のポリ乳酸の融点−50℃〜融点+20℃の溶融機内で圧力を付与しながら滞留する方法により、混合後におけるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合物のステレオコンプレックス形成率(Sc)を制御できる。なお、ステレオコンプレックス形成率(Sc)は、上記式(4)により算出することができる。
混合する温度条件については、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合物の融点に対し、融点−50℃〜融点+20℃の範囲が好ましい。混合温度のより好ましい範囲は、融点−40℃〜融点であり、特に好ましくは融点−30℃〜融点−5℃の温度範囲である。溶融機の温度は通常、樹脂が溶融して良好な流動性を発現するために融点+20℃以上を設定するのが好ましい。かかる好ましい混合温度とすると、流動性が低下しすぎることはなく、一方、生成した結晶が再融解しにくい。ここで融点は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度20℃/minで30℃から250℃まで昇温した際の、結晶融解温度のことを指す。
溶融機内でせん断または圧力を付与することで結晶化したポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを混合する際のせん断速度は10〜400(/秒)の範囲が好ましい。せん断速度が上記の好ましい範囲であると、流動性と結晶性を維持しながらポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを均一に混合することができ、一方、混合時のせん断発熱により熱分解を生じにくい。
また、混合の際に加える圧力は、0.05〜10(MPa)の範囲が好ましい。圧力が上記の好ましい範囲であると、流動性と結晶性を維持しながらポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを均一に混合することができる。
押出機を用いた混練において、ポリ乳酸の供給方法は特に限定されず、樹脂供給口からポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを一括して供給する方法や、必要に応じてサイド供給口を利用し、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを樹脂供給口とサイド供給口にそれぞれ分けて供給する方法が可能である。また、混練機へのポリ乳酸の供給は、ポリ乳酸製造工程から直接溶融状態で行うことも可能である。
押出機におけるスクリューエレメントは、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とが均一に混合してステレオコンプレックス形成できるように、混合部にニーディングエレメントを備えるのが好ましい。
混合工程において、L−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸と、D−乳酸単位からなるポリ−D−乳酸との混合重量比は、90:10〜10:90であることが好ましい。さらに好ましくは80:20〜20:80であり、特に好ましくは75:25〜60:40あるいは40:60〜25:75である。L−乳酸単位からなるセグメントと、D−乳酸単位からなるセグメントとのそれぞれの合計の重量比が上記好ましい範囲であると、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成しやすく、その結果、ポリ乳酸ブロック共重合体の融点の上昇が十分に大きくなる。ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合重量比を50:50以外にする場合は、重量平均分子量の大きい方のポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を多く配合することが好ましい。
この混合工程において、次の固相重合を効率的に進めるために、混合物に、触媒を含有させることが好ましい。このとき触媒は、ポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸を製造する際の触媒の残留分であってもよいし、混合工程においてさらに前記触媒から選ばれる一種以上を添加することもできる。
固相重合を効率的に進めるための触媒の含有量は、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の混合物100重量部に対して0.001重量部以上、1重量部以下が好ましく、とくに0.001重量部以上、0.5重量部以下がより好ましい。触媒量が上記好ましい範囲であると、固相重合の反応時間短縮効果が得られ、一方、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量が大きくなる傾向である。
混合後におけるポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の混合物の重量平均分子量(Mw)は、混合物の機械物性の点から90,000以上300,000未満であることが好ましい。さらに好ましくは120,000以上300,000未満であり、140,000以上300,000未満であることが特に好ましい。
また、混合後におけるポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の混合物の分散度は1.5〜4.0の範囲が好ましい。さらに好ましくは2.0〜3.7の範囲であり、特に好ましくは2.5〜3.5の範囲である。ここで、分散度とは、混合物の数平均分子量に対する重量平均分子量の割合のことをいい、具体的には溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールまたはクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の値である。
ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸に含有するラクチド量およびオリゴマー量は、それぞれ5%以下であることが好ましい。さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。また、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸に含有する乳酸量は、2%以下であることが好ましい。さらに好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0.5%以下である。
混合物を固相重合する際には、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の混合物の形状は、特に限定されるものではなく、塊状、フィルム、ペレットおよび粉末などいずれでもよいが、固相重合を効率的に進めるという観点においては、ペレットまたは粉末を用いることが好ましい。ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の混合物をペレットにする方法としては、混合物をストランド状に押出し、ペレタイズする方法、混合物を水中に押出し、アンダーウォーターカッターを用いてペレット化する方法が挙げられる。また、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の混合物を粉末にする方法としては、ミキサー、ブレンダー、ボールミルおよびハンマーミルなどの粉砕機を用いて粉砕する方法が挙げられる。この固相重合工程を実施する方法については特に限定されるものではなく、回分法でも連続法でもよく、また、反応容器は、撹拌槽型反応器、ミキサー型反応器および塔型反応器などを用いることができ、これらの反応器は2種以上組み合わせて使用することができる。
この固相重合工程を実施する際には、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の混合物が結晶化していることが好ましい。本発明において、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の混合工程で得られた混合物が結晶化状態である場合は、固相重合工程を実施する際にポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の混合物の結晶化は必ずしも必要ないが、結晶化を行うことで固相重合の効率をさらに高めることもできる。
結晶化させる方法については、公知の方法を利用することができる。例えば、気相中または液相中において結晶化処理温度で保持する方法、またはポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の溶融混合物を延伸または剪断の操作を行いながら冷却固化させる方法などが挙げられ、操作が簡便であるという観点においては、気相中または液相中において結晶化処理温度で保持する方法が好ましい。
ここでいう結晶化処理温度とは、ガラス転移温度より高く、混合したポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸のうち、低い融点を有するポリ乳酸の融点よりも低い温度範囲であれば特に限定されるものではないが、予め示差走査型熱量計(DSC)により測定した昇温結晶化温度および降温結晶化温度の範囲内であることがより好ましい。
結晶化させる際には、減圧、常圧または加圧のいずれの条件でもよい。
また、結晶化させる際の時間については、3時間以内であれば十分に結晶化されており、2時間以内でも好ましい。
この固相重合工程を実施する際の温度条件としては、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の混合物の融点以下の温度が好ましい。ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の混合物は、ステレオコンプレックス形成によりステレオコンプレックス結晶に基づく融点を190℃〜230℃の範囲で有し、また、150℃〜185℃の範囲でポリ−L−乳酸単独結晶およびポリ−D−乳酸単独結晶に基づく融点を有するため、これらの融点以下で固相重合することが好ましい。具体的には、100℃以上220℃以下が好ましく、さらに固相重合を効率的に進めるという観点においては、110℃以上200℃以下であることがより好ましく、120℃以上180℃以下であることがさらに好ましく、130℃以上170℃以下であることが特に好ましい。
また、固相重合の反応時間を短縮するために、反応の進行とともに温度を段階的に上げるかあるいは連続的に上げることが好ましい。固相重合時に段階的に昇温するときの温度条件としては、第一段階として120℃〜145℃で1〜15時間、第二段階として135℃〜160℃で1〜15時間、第三段階として150℃〜175℃で10〜30時間と昇温するのが好ましく、さらには第一段階として130℃〜145℃で2〜12時間、第二段階として140℃〜160℃で2〜12時間、第三段階として155℃〜175℃で10〜25時間と昇温するのがより好ましい。固相重合時に連続的に昇温するときの温度条件としては、130℃〜150℃の初期温度より1〜5(℃/min)の速度で150℃〜175℃まで連続的に昇温するのが好ましい。また、段階的な昇温と連続的な昇温を組み合わせることも固相重合を効率的に進行する観点から好ましい。
また、この固相重合工程を実施する際には、真空下または乾燥窒素などの不活性気体気流下で行うことが好ましい。真空下で固相重合を行う際の真空度は、150Pa以下であることが好ましく、75Pa以下であることがさらに好ましく、20Pa以下であることが特に好ましい。不活性気体気流下で固相重合を行う際の流量は、混合物1gに対して0.1〜2,000(mL/min)の範囲が好ましく、0.5〜1,000(mL/min)の範囲がさらに好ましく、1.0〜500(mL/min)の範囲が特に好ましい。
固相重合後におけるポリマーの収率(Y)は、90%以上であることが好ましい。さらに好ましくは93%以上であり、特に好ましくは95%以上である。ここでいうポリマーの収率(Y)とは、固相重合前の混合物重量に対する固相重合後のポリ乳酸ブロック共重合体の重量の割合である。具体的には、固相重合前の混合物重量をWp、固相重合後のポリマーの重量をWsとすると、ポリマーの収率(Y)は下記式(7)で算出することができる。
Y=Ws/Wp×100 (7)
固相重合工程においては、混合物の分散度が小さくなることが好ましい。具体的には、固相重合前における混合物の分散度が1.5〜4.0の範囲から、固相重合後にはポリ乳酸ブロック共重合体の分散度が1.5〜2.7の範囲になることが好ましい。さらに好ましくは固相重合前における混合物の分散度が2.0〜3.7の範囲が固相重合後にはポリ乳酸ブロック共重合体の分散度が1.8〜2.6の範囲に小さくなることであり、特に好ましくは、固相重合前における混合物の分散度が2.5〜3.5の範囲から固相重合後にはポリ乳酸ブロック共重合体の分散度が2.0〜2.5の範囲になることである。
次に、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸を、融点の高い方の成分の融解終了温度以上で長時間溶融混練を行うことで、L−乳酸単位のセグメントとD−乳酸単位のセグメントとをエステル交換反応させたポリ乳酸ブロック共重合体を得る方法(調製法3)について説明する。本調製法においても、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の重合については、上述した開環重合法および直接重合法のいずれの方法も用いることができる。
本方法にてポリ乳酸ブロック共重合体を得るためには、溶融混練後にステレオコンプレックス形成率が高くなる点で、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸のうちいずれか一方の重量平均分子量が60,000〜300,000以下であり、もう一方の重量平均分子量が10,000〜100,000以下であることが好ましい。さらに好ましくは、一方の重量平均分子量が100,000〜270,000、もう一方の重量平均分子量が15,000〜80,000である。特に好ましくは、一方の重量平均分子量が150,000〜240,000、もう一方の重量平均分子量が20,000〜50,000である。また、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の重量平均分子量の組み合わせとしては混合後の重量平均分子量が90,000以上となるよう、適宜選択することが好ましい。
さらに、溶融混練後のポリ乳酸樹脂組成物の機械物性が高くなるという点では、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のうちいずれか一方の重量平均分子量が60,000以上300,000以下であり、もう一方の重量平均分子量が30,000以上100,000以下であることも好ましい態様である。より好ましくは、一方の重量平均分子量が100,000以上270,000以下、もう一方の重量平均分子量が20,000以上80,000以下である。さらに好ましくは、125,000以上255,000以下、もう一方の重量平均分子量が25,000以上50,000以下である。
融解終了温度以上で長時間溶融混練する方法としては、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを回分法もしくは連続法で混合する方法が挙げられ、いずれの方法で混合してもよい。混練装置としては例えば、一軸押出機、二軸押出機、プラストミル、ニーダー、および減圧装置付き撹拌槽型反応機が挙げられ、均一かつ十分に混練できる観点においては一軸押出機、二軸押出機を用いることが好ましい。
混合する温度条件については、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸のうち、融点の高い方の成分の融解終了温度以上で行うことが重要である。好ましくは140℃〜250℃の範囲であり、さらに好ましくは160℃〜230℃であり、特に好ましくは180℃〜210℃である。混合温度が上記好ましい範囲であると、流動性が低下しすぎず、一方、混合物の分子量低下が起きにくい。
混合する時間条件については、0.1分〜30分の範囲が好ましく、0.3分〜20分がより好ましく、0.5分〜10分の範囲が特に好ましい。混合時間が上記好ましい範囲であると、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合が均一となり、一方、混合により熱分解を生じにくい。
混合する圧力条件については特に限定されるものではなく、大気雰囲気下または窒素などの不活性気体雰囲気下のいずれの条件でもよい。
混合するL−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸と、D−乳酸単位からなるポリ−D−乳酸との混合重量比は、80:20〜20:80であることが好ましく、75:25〜25:75であることがより好ましく、さらに70:30〜30:70であることが好ましく、特に60:40〜40:60であることが好ましい。L−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸の重量比が上記好ましい範囲であると、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成しやすく、その結果、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点が十分に大きくなる。
この混合工程において、L−乳酸単位のセグメントとD−乳酸単位のセグメントとのエステル交換を効率的に進めるために、混合物に、触媒を含有させることが好ましい。このとき触媒は、ポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸を製造する際の触媒の残留分であってもよいし、混合工程においてさらに触媒を添加することもできる。
触媒の含有量は、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の混合物100重量部に対して0.001重量部以上、1重量部以下が好ましく、特に0.001重量部以上、0.5重量部以下がより好ましい。触媒量が上記好ましい範囲であると、混合物のエステル交換の頻度が十分に高く、一方、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量が大きくなる傾向である。
次に、多官能性化合物をポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸に混合することで、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを多官能性化合物で共有結合させポリ乳酸ブロック共重合体を得る方法(調製法4)について説明する。本調製法で用いるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の重合においては、上述した開環重合法および直接重合法のいずれの方法も用いることができる。
本方法にてポリ乳酸ブロック共重合体を得るために用いるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との重量平均分子量は、ステレオコンプレックス形成率が高くなる点で、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸のうちいずれか一方の重量平均分子量が30,000〜100,000以下であり、もう一方の重量平均分子量が10,000〜30,000以下であることが好ましい。さらに好ましくは、一方の重量平均分子量が35,000〜90,000、もう一方の重量平均分子量が10,000〜25,000である。特に好ましくは、一方の重量平均分子量が40,000〜80,000、もう一方の重量平均分子量が10,000〜20,000である。
さらに、溶融混練後のポリ乳酸樹脂組成物の機械物性が高くなるという点で、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のうちいずれか一方の重量平均分子量が60,000以上300,000以下であり、もう一方の重量平均分子量が30,000以上100,000以下であることも好ましい態様である。より好ましくは、一方の重量平均分子量が100,000以上270,000以下、もう一方の重量平均分子量が20,000以上80,000以下である。さらに好ましくは、125,000以上255,000以下、もう一方の重量平均分子量が25,000以上50,000以下である。
また、上記の混合に使用するポリ−L−乳酸の重量平均分子量と、ポリ−D−乳酸の重量平均分子量との比は、ステレオコンプレックス形成率が高くなる観点で、2以上10未満であることが好ましい。さらに好ましくは3以上10未満であり、特に好ましくは4以上10未満である。
ここで使用する多官能性化合物としては、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコールおよび多価エポキシ化合物などが挙げられ、具体的には、イソフタル酸クロリド、テレフタル酸クロリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの多価カルボン酸ハロゲン化物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの多価カルボン酸、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネートなどの多価イソシアネート、エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミンなどの多価アミン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、およびテレフタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどの多価エポキシ化合物などが挙げられる。好ましくは、多価カルボン酸無水物、多価イソシアネート、多価アルコールおよび多価エポキシ化合物であり、特に多価カルボン酸無水物、多価イソシアネートおよび多価エポキシ化合物がより好ましい。また、これらは1種または2種以上を併用して使用することができる。
多官能性化合物の混合量については、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の合計100重量部に対して、0.01重量部以上、20重量部以下が好ましく、さらに0.1重量部以上、10重量部以下であることがより好ましい。多官能性化合物の添加量が上記好ましい範囲であると、共有結合が生じる効果を十分に発揮できる。
さらに、多官能性化合物を用いる際には、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸と多官能性化合物の反応を促進させるために、反応触媒を添加してもよい。反応触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、ビスフェノールAの二ナトリウム塩、同二カリウム塩、同二リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、同カリウム塩、同リチウム塩、同セシウム塩などのアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウムなどのアルカリ土類金属化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリアミルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、ジメチルフェニルアミン、ジメチルベンジルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの3級アミン、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−フェニル−2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリプロピルベンジルアンモニウムクロライド、N−メチルピリジニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(p−ヒドロキシ)フェニルホスフェート、トリ(p−メトキシ)フェニルホスフェートなどのリン酸エステル、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸、および三フッ化ホウ素、四塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化錫などのルイス酸などが挙げられ、これらは一種または二種以上を併用して使用することができる。
触媒の添加量は、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の合計100重量部に対して、0.001重量部以上、1重量部以下が好ましい。触媒量が上記好ましい範囲であると、反応促進効果が十分であり、一方、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の分子量が大きくなる傾向である。
ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸を多官能性化合物と反応する方法としては特に限定されるものではなく、例えばポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸のうち、融点の高い方の成分の融解終了温度以上で溶融混練する方法が挙げられる。
融解終了温度以上で溶融混練する方法としては、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを回分法もしくは連続法で混合する方法が挙げられ、いずれの方法で混合してもよく、混練装置としては例えば、一軸押出機、二軸押出機、プラストミル、ニーダー、および減圧装置付き撹拌槽型反応機が挙げられ、均一かつ十分に混練できる観点においては一軸押出機、二軸押出機を用いることが好ましい。
溶融混練する温度条件については、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸のうち、融点の高い方の成分の融解終了温度以上で行うことが好ましい。好ましくは140℃〜250℃の範囲であり、さらに好ましくは160℃〜230℃であり、特に好ましくは180℃〜210℃である。混合温度が上記好ましい範囲であると、流動性が低下しすぎず、一方、混合物の分子量低下が起きにくい。
溶融混練する時間条件については、0.1分〜30分の範囲が好ましく、0.3分〜20分がより好ましく、0.5分〜10分の範囲が特に好ましい。混合時間が上記好ましい範囲であると、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合が均一となり、一方、混合により熱分解を生じにくい。
溶融混練する圧力条件については特に限定されるものではなく、大気雰囲気下または窒素などの不活性気体雰囲気下のいずれの条件でもよい。
混合するL−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸と、D−乳酸単位からなるポリ−D−乳酸との混合重量比は、90:10〜10:90であることが好ましく、80:20〜20:80であることがさらに好ましい。特に好ましくは75:25〜60:40あるいは40:60〜25:75である。L−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸の重量比が上記好ましい範囲であると、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成しやすく、その結果、最終的に得られるポリ乳酸ブロック共重合体の融点の上昇が十分に大きくなる。
多官能性化合物をポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸と混合して得られるポリ乳酸ブロック共重合体は、多官能性化合物によりポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とが共有結合されているため高分子量体であるが、混合した後に上述した方法にて固相重合することも可能である。
<グリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物>
本発明において、ポリ乳酸ブロック共重合体のカルボキシル基あるいはヒドロキシル基末端を封鎖して耐熱性および湿熱安定性を向上させ、さらにはポリ乳酸樹脂組成物を塩素化合物等の刺激臭が発生しない良好な製造環境にて製造するためには、ポリ乳酸樹脂組成物中にグリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物を含むことが必要である。
また、本発明においてグリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物は、上記ポリ乳酸樹脂組成物に含む他に、ポリ乳酸ブロック共重合体を作製する際に含んでいても構わない。ポリ乳酸ブロック共重合体を作製する過程で、グリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物を添加する順序は特に制限はなく、例えばポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合する際に添加してもよいし、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合した後に添加してもよい。また、混合するポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸に対してあらかじめグリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物を含んでいてもよい。本発明のポリ乳酸樹脂組成物中、グリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物の含有量については後述する。
ここで、グリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物の分子量は、ポリ乳酸ブロック共重合体の末端との反応性から800以下である。環状化合物の分子量が600以下であればポリ乳酸ブロック共重合体の末端基との反応性をさらに高めることが可能である。分子量の下限は、100以上であれば反応中における揮発が少ない。
本発明において、ポリ乳酸樹脂組成物中に含有するグリシジル基を有する環状化合物としては下記一般式で表されるイソシアヌレート化合物を基本骨格に有する1〜3官能基のグリシジル変性化合物が挙げられる。
ここで、前記一般式で表される化合物のうち、R1〜R3は同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1つはグリシジル基である。なお、グリシジル基の付加数の異なるイソシアヌレート化合物をポリ乳酸ブロック共重合体に添加しても構わない。また、R1〜R3の内、グリシジル基以外の官能基としては水素あるいは炭素原子数1〜10にアルキル基、水酸基、アリル基が選択される。ここで、アルキル基中の炭素原子についてはその数が少ない方が好ましく、中でもジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレートは、融点が高く、耐熱性にも優れるため好ましく用いられる。
また、本発明において、ポリ乳酸樹脂組成物中に含有するグリシジル基を有する環状化合物としては、例えばフタル酸ジグリシジル、テレフタル酸ジグリシジル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルから選択される1種以上の化合物であることが好ましく用いられる。
さらに、本発明において、ポリ乳酸樹脂組成物中に含有する酸無水物を有する環状化合物としては、例えばフタル酸無水物、マレイン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物から選択される1種以上の化合物であることが好ましく用いられる。
本発明において、グリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物を添加する際には、ポリ乳酸ブロック共重合体とこれら化合物の反応を促進させるために、反応触媒を添加してもよい。反応触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、ビスフェノールAの二ナトリウム塩、同二カリウム塩、同二リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、同カリウム塩、同リチウム塩、同セシウム塩などのアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウムなどのアルカリ土類金属化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリアミルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、ジメチルフェニルアミン、ジメチルベンジルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンなどの3級アミン、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−フェニル−2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリプロピルベンジルアンモニウムクロライド、N−メチルピリジニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(p−ヒドロキシ)フェニルホスフェート、トリ(p−メトキシ)フェニルホスフェートなどのリン酸エステル、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸、および三フッ化ホウ素、四塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化錫などのルイス酸などが挙げられ、これらは一種または二種以上を併用して使用することができる。
反応触媒の添加量は、ポリ乳酸ブロック共重合体100重量部に対して、0.001重量部以上、0.5重量部以下が好ましい。触媒量が上記好ましい範囲であると、重合時間の短縮効果が得られ、一方、最終的に得られるポリ乳酸樹脂組成物の分子量も大きくできる。
<ポリ乳酸樹脂組成物>
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、L−乳酸を主成分とするポリ−L−乳酸セグメントとD−乳酸を主成分とするポリ−D−乳酸セグメントから構成されるポリ乳酸ブロック共重合体100重量部に対して、グリシジル基または酸無水物を有する環状化合物を0.05〜2重量部を含む。好ましくは0.3〜1.5重量部であり、より好ましくは0.6〜1.2重量部である。グリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物を好ましい範囲内でポリ乳酸樹脂中に配向することで、ポリ乳酸樹脂組成物のカルボキシル末端あるいはヒドロキシル末端が封鎖されて、その結果、成形加工性、機械物性、耐熱性、さらには湿熱特性や乾熱特性が向上する。また、ポリ乳酸樹脂組成物の製糸において糸切れが発生しにくい。
本発明で得られるポリ乳酸樹脂組成物は、耐熱性の観点からステレオコンプレックス形成率(Sc)が80〜100%の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは85〜100%の範囲であり、90〜100%であることが特に好ましい。ここで、ステレオコンプレックス形成率とは、ポリ乳酸中の全結晶におけるステレオコンプレックス結晶の占める割合である。具体的には示差走査型熱量計(DSC)で昇温速度20℃/minで30℃から250℃まで昇温した際のポリ−L−乳酸単独結晶およびポリ−D−乳酸単独結晶の結晶融解に基づく熱量をΔHl、ステレオコンプレックス結晶の結晶融解に基づく熱量をΔHhとすると下記式(8)で算出することができる。
Sc=ΔHh/(ΔHl+ΔHh)×100 (8)
本発明において、ポリ乳酸樹脂組成物は耐加水分解性および湿熱安定性に優れるという点で、末端カルボキシル基濃度が10eq/ton以下であることが好ましい。より好ましくは7eq/ton以下であり、さらに好ましくは5eq/ton以下である。
さらに、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、60℃、95%RH条件下で100時間湿熱処理した後の重量平均分子量が湿熱処理前の重量平均分子量に対して80%以上保持していることが好ましい。より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。湿熱処理後の重量平均分子量の保持率が高いほど、湿熱安定性に優れ、例えばポリ乳酸樹脂組成物からなる繊維に対してアイロンがけを行った際に、力学特性が低下しにくく、さらには風合い等の品質も保持されるため好ましい。
さらに本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、DSC測定において、ポリ乳酸樹脂組成物を250℃まで昇温した際の190℃における結晶融解エンタルピーが30J/g以上であることが好ましい。より好ましくは35J/g以上であり、さらに好ましくは40J/g以上である。この結晶融解エンタルピーが高いと、成形品の耐熱性が高くなり、加熱時滞留安定性や耐久性にも優れるため好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物の重量平均分子量は、10万以上50万以下であることが、機械物性の点で好ましい。より好ましくは12万以上45万以下であり、13万以上40万以下であることが成形性、機械物性および加熱時滞留安定性の点で特に好ましい。
また、ポリ乳酸樹脂組成物の分散度は、1.5〜2.5の範囲が機械物性の点で好ましい。分散度の範囲が1.6〜2.3であることがさらに好ましく、1.7〜2.0であることが成形性および機械物性の点で特に好ましい。なお、重量平均分子量および分散度とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールまたはクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の値である。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法については特に制限はなく、好ましくは押出機やニーダーなどの加熱溶融混練装置を使用することにより、以下の(I)〜(III)の3つの方法のいずれかにて製造することができる。
ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法(I)としては、ポリ乳酸ブロック共重合体とグリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物を溶融混練する手法が挙げられる。溶融混練の手法としては回分法もしくは連続法のいずれの混合手法でもよい。混練装置としては例えば、一軸押出機、二軸押出機、プラストミル、ニーダー、および減圧装置付き撹拌槽型反応機が挙げられ、均一かつ十分に混練できる観点においては一軸押出機、二軸押出機を用いることが好ましい。
溶融混練する温度条件については、180℃〜250℃で行うことが好ましい。より好ましくは200℃〜240℃の範囲であり、さらに好ましくは205℃〜235℃である。混合温度が上記好ましい範囲であると、流動性が低下しすぎず、一方、混合物の分子量低下が起きにくい。
溶融混練する時間条件については、0.1分〜30分の範囲が好ましく、0.3分〜20分がより好ましく、0.5分〜10分の範囲が特に好ましい。混合時間が上記好ましい範囲であると、ポリ乳酸ブロック共重合体とグリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物との混合が均一となり、一方、混合により熱分解を生じにくい。
溶融混練する圧力条件については特に限定されるものではなく、大気雰囲気下または窒素などの不活性気体雰囲気下のいずれの条件でもよい。
次に、ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法(II)としては、あらかじめポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を混合した後、グリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物を配合し、配合して得られた混合物を混合物の融点より低い温度で固相重合する手法が挙げられる。この方法における溶融混練の手法は上述のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法で適用される混合方法でよく、混練装置、混合時の温度条件、時間条件および圧力条件についても上述のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法記載と同様である。
さらに、ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法(III)としては、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸およびグリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物の3種を一括で混合した後、混合物の融点より低い温度で固相重合する手法が挙げられる。この方法における溶融混練の手法は上述のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法で適用される混合方法でよく、混練装置、混合時の温度条件、時間条件および圧力条件についても上述のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法記載と同様である。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で最終的に得られるポリ乳酸樹脂のL−乳酸単位からなるポリ−L−乳酸(L−乳酸単位からなるセグメント)と、D−乳酸単位からなるポリ−D−乳酸(D−乳酸単位からなるセグメント)との交互性を高めるために、多官能性化合物を混合してもよい。
ここで使用する多官能性化合物としては、多価カルボン酸ハロゲン化物、多価カルボン酸、多価イソシアネート、多価アミン、多価アルコールおよび多価エポキシ化合物などが挙げられ、具体的には、イソフタル酸クロリド、テレフタル酸クロリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの多価カルボン酸ハロゲン化物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの多価カルボン酸、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネートなどの多価イソシアネート、エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミンなどの多価アミン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、およびテレフタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどの多価エポキシ化合物などが挙げられる。好ましくは、多価カルボン酸無水物、多価イソシアネート、多価アルコールおよび多価エポキシ化合物であり、特に多価カルボン酸無水物、多価イソシアネートおよび多価エポキシ化合物がより好ましい。また、これらは一種または二種以上を併用して使用することができる。
多官能性化合物の混合量については、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の合計100重量部に対して、0.01重量部以上、20重量部以下が好ましく、さらに0.1重量部以上、10重量部以下であることがより好ましい。多官能性化合物の添加量が上記好ましい範囲であると、多官能性化合物を使用する効果を発揮できる。
さらに、多官能性化合物を用いる際には、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸と多官能性化合物の反応を促進させるために、反応触媒を添加してもよい。反応触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、ビスフェノールAの二ナトリウム塩、同二カリウム塩、同二リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、同カリウム塩、同リチウム塩、同セシウム塩などのアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウムなどのアルカリ土類金属化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリアミルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、ジメチルフェニルアミン、ジメチルベンジルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンなどの3級アミン、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−フェニル−2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリプロピルベンジルアンモニウムクロライド、N−メチルピリジニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(p−ヒドロキシ)フェニルホスフェート、トリ(p−メトキシ)フェニルホスフェートなどのリン酸エステル、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸、および三フッ化ホウ素、四塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化錫などのルイス酸などが挙げられ、これらは一種または二種以上を併用して使用することができる。
反応触媒の添加量は、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の合計100重量部に対して、0.001重量部以上、0.5重量部以下が好ましい。触媒量が上記好ましい範囲であると、重合時間の短縮効果が得られ、一方、最終的に得られるポリ乳酸樹脂の分子量も大きくできる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常の添加剤、例えば、触媒失活剤(ヒンダードフェノール系化合物、チオエーテル系化合物、ビタミン系化合物、トリアゾール系化合物、多価アミン系化合物、ヒドラジン誘導体系化合物、リン系化合物などが挙げられ、これらを併用して用いてもよい。中でもリン系化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、ホスフェート系化合物、ホスファイト系化合物あるいはリン酸金属塩無機化合物であることがさらに好ましい。
リン系化合物からなる触媒失活剤の具体例としては株式会社ADEKA製“アデカスタブ”(登録商標)AX−71(ジオフタデミルホスフェート)、PEP−8(ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト)、PEP−36(サイクリックネオペンタテトライルビス(2,6−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト)などのホスファイト系化合物、あるいは、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素カルシウム、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸水素カルシウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウムから選ばれる少なくとも一種のリン酸金属塩無機化合物が挙げられる。この中でもリン酸二水素ナトリウムとリン酸二水素カリウムがより好ましい。
通常の添加剤として可塑剤を添加する場合は、例えば、ポリアルキレングリコール系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ペンタエリスリトール、各種ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイルおよびパラフィン類などを挙げることができ、耐ブリードアウト性の観点から、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロックおよび/またはランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールあるいはその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、および末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などのポリアルキレングリコール系可塑剤、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、アセチルトリブチルサイトレート、メトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジブチルサイトレートなどの多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレートおよびグリセリンモノアセトモノモンタネートなどのグリセリン系可塑剤など)、耐衝撃性改良材(天然ゴム、低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、耐衝撃改質ポリスチレン、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/メチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート/ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体などのポリエステルエラストマー、MBSなどのブタジエン系コアシェルエラストマーまたはアクリル系のコアシェルエラストマーが挙げられ、これらは一種又は二種以上使用することができる。ブタジエン系またはアクリル系のコアシェルエラストマーとしては、三菱レイヨン製“メタブレン”、カネカ製“カネエース”(登録商標)、ローム&ハース製“パラロイド”(登録商標)など)、充填剤(繊維状、板状、粉末状、粒状などのいずれの充填剤も使用することができる。具体的には、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、二硫化モリブデン、ワラステナイト、モンモリロナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、硫酸バリウムなど)、難燃剤(赤リン、ブロム化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミンおよびシアヌール酸またはその塩、シリコン化合物など)、紫外線吸収剤(レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、熱安定剤(ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、滑剤、離形剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(ニグロシンなど)および顔料(硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、着色防止剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩など)、導電剤あるいは着色剤(カーボンブラックなど)、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂など)、帯電防止剤などが挙げられ、一種または二種以上を添加することができる。
本発明で用いるポリ乳酸樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、上述のポリ乳酸ブロック共重合体以外に、さらにポリ−L−乳酸及び/またはポリ−D−乳酸を含むことができる。
ここで、ポリ−L−乳酸とは、L−乳酸を主成分とする重合体であり、L−乳酸単位を70モル%以上含有していることが好ましく、90モル%以上含有していることがより好ましく、95モル%以上含有していることがさらに好ましく、98モル%以上含有していることが特に好ましい。
また、ポリ−D−乳酸とは、D−乳酸を主成分とする重合体であり、D−乳酸単位を70モル%以上含有していることが好ましく、90モル%以上含有していることがより好ましく、95モル%以上含有していることがさらに好ましく、98モル%以上含有していることが特に好ましい。
本発明において、ポリ−L−乳酸やポリ−D−乳酸は、得られるポリ乳酸樹脂組成物の性能を損なわない範囲で、他の成分単位を含んでいてもよい。L−乳酸またはD−乳酸単位以外の他の成分単位としては、ポリ乳酸ブロック共重合体を構成するL−乳酸を主成分とするセグメントまたはD−乳酸を主成分とするセグメントに対して含んでいてもよい他の成分単位と同様に、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられる。
本発明で用いるポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、10万以上であることが、機械物性の点で好ましい。12万以上であることがさらに好ましく、14万以上であることが成形性および機械物性の点で特に好ましい。なお、重量平均分子量および分散度とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールまたはクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の値である。
上記のポリ乳酸樹脂組成物に対するポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸を混合する順序については特に限定されず、上記ポリ乳酸樹脂組成物に対してポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸を混合してもよいし、あらかじめポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸を混合したところへポリ乳酸ブロック共重合体とグリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物を混合しても構わない。
ポリ乳酸樹脂組成物中に含有するポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸の量は、ポリ乳酸樹脂組成物100重量部に対して、10重量部以上900重量部以下が好ましく、さらに30重量部以上400重量部以下が好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物に対するポリ−L−乳酸および/またはポリ−D−乳酸が上記好ましい範囲であると、ステレオコンプレックス形成性を高めることができるため好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロースエステルなど)または熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂など)または軟質熱可塑性樹脂(例えば、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体など)などの少なくとも一種以上をさらに含有することができる。
本発明でアクリル樹脂を使用する場合は、一般に炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル単位を主成分とするアクリル樹脂が好ましく挙げられる。また、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルには、炭素数1〜4のアルキル基を有する他のアクリル酸アルキルやスチレンなどの芳香族ビニル化合物を共重合してもよい。
上記のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルの例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシルおよびメタクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。本発明でアクリル樹脂を使用する場合には、特にメタクリル酸メチルからなるポリメチルメタクリレートが好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、成形体として成形品などに加工する際に、一旦熱溶融させて固化した後も、高融点のポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成しやすい特徴を有する。また、本発明により得られた成形体は耐熱性や耐加水分解性に優れるため、例えば、繊維・布、不織布、シート、フィルム、発泡体への加工が特に有効である。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物が繊維に加工される場合、その形態はマルチフィラメント、モノフィラメント、ステープルファイバー、トウ、スパンボンドなどとして用いることができる。中でも高速紡糸での曳糸性や色調、強度等の力学特性に優れることからマルチフィラメントが特に好ましく用いられる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物を繊維に成形加工する際の製造方法としては、従来公知の溶融紡糸方法を用いることができるが、ステレオコンプレックス結晶を効率的に形成させ、繊維の配向度を高める点において、高速紡糸工程および延伸工程を採用することが好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物からなる繊維を延伸することで繊維を十分に配向し、機械物性が向上するだけでなく、同時に熱処理を行うことで十分に結晶化が進行した、収縮特性にも優れた繊維を得ることが可能となる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物を高速紡糸する際の紡糸速度は500〜10,000m/minにすることで分子配向が生じ、後の延伸工程での工程通過性を高めることができるため好ましい。なお、本発明における紡糸速度とは、糸条を引き取るための第1ゴデットロールの周速度をいう。また、延伸同時仮撚等を行うためには、さらに分子配向が必要であるため、紡糸速度は2,000m/min以上がより好ましく、さらに好ましくは3,000m/min以上である。特に好ましくは4,000m/min以上である。一方、紡糸での工程安定性を考慮すると紡糸速度は7,000m/min以下であることが好ましい。この高速紡糸工程で得られた未延伸糸は配向度が高く、効率的にステレオコンプレックス結晶を形成できる前駆体となり、さらには機械的強度にも優れるため、延伸工程での工程通過性に優れた性質を示す。
一方、上記で得られたポリ乳酸樹脂組成物からなる未延伸糸の延伸工程は、例えば熱ローラー/ 熱ローラー間で予熱・延伸・熱セットを行う工程でも良いし、冷ローラー/ホットプレート/ 熱ローラーにて製造しても良いが、ポリ乳酸はその分子構造から分子鎖間の相互作用が弱く、耐摩耗性に劣る場合が多いため、熱ローラー/ 熱ローラーにて延伸を行うことがより好ましい。上記で得られた高速紡糸した未延伸糸は配向度が高いため、延伸工程における予熱温度(例えば第1熱ローラーもしくはホットプレートの温度)は80〜140℃ までの温度で適宜選択できる。
また、延伸工程における熱セット工程については前記予熱温度よりも高く設定することで、得られる繊維の結晶化を促進し、繊維に寸法安定性とステレオコンプレックス結晶形成による耐熱性を付与できる。このことから熱セット温度は予熱温度以上かつ130〜200℃ の範囲とすることがより好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物からなる繊維の延伸仮撚工程では、アウトドロー工程やインドロー工程など、従来公知の延伸仮撚工程を適宜選択することが可能である。インドロー工程は、製造設備を簡略化できるため、安価に繊維を製造することができる点で好ましい。また、延伸仮撚工程における施撚体はピン、ベルトやディスクなどを採用することができるが、ベルトもしくはディスクを採用すると、高速での延伸仮撚が可能となるため、単位時間当たりの生産量を高めることができ、結果的に繊維を安価に製造可能となることため好ましい。また、延伸仮撚機のヒーターは接触型、非接触型のどちらを採用することも可能であるが、非接触型の場合は、該ポリ乳酸樹脂組成物からなる繊維の摩耗を低減できるため好ましい。更に該ヒーターの温度は、仮撚糸の機械的強度や寸法安定性、耐熱性を付与する観点から、100〜200℃ の範囲で適宜選択することが好ましい。該温度範囲であれば、延伸仮撚工程で得られる繊維を、糸切れなく安定性して製造可能であることと、十分に配向結晶化した機械的強度や寸法安定性、耐熱性に優れたものにできる。さらに、延伸仮撚糸の寸法安定性を高めるため、延伸仮撚後にリラックス熱処理を加えることも好適である。上記の方法で得られたポリ乳酸樹脂組成物からなる繊維は、機械的特性や寸法安定性に優れるばかりでなく、ステレオコンプレックス結晶が十分に形成されているため、アイロン耐熱性および耐久性にも優れ、高温染色も可能である。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物からなる繊維の用途としては、耐加水分解性が要求される衣料、例えば、アウトドアウェアやゴルフウェア、アスレチックウェア、スキーウェア、スノーボードウェア及びそれらのパンツ等のスポーツウェア、ブルゾン等のカジュアルウェア、コート、防寒服およびレインウェア等の婦人・紳士用アウターが挙げられる。また、長時間使用による耐久性や湿老化特性に優れたものが要求される用途として、ユニフォーム、掛布団や敷布団、肌掛け布団、こたつ布団、座布団、ベビー布団、毛布等の布団類や枕、クッション等の側地やカバー、マットレスやベッドパッド、病院用、医療用、ホテル用およびベビー用のシーツ等、さらには寝袋、揺りかごおよびベビーカー等のカバー等の寝装資材用途があり、これらにも好ましく用いることができる。また、自動車用の内装資材にも好適に用いることができ、その中でも、高い耐加水分解性と湿老化特性が要求される自動車用カーペットや天井材用不織布に用いることが最適である。なお、これら用途に限定されるものではなく、例えば農業用の防草シートや建築資材用の防水シート、釣り糸、漁網、海苔網、植生保護用不織布、土木用ネット、土嚢、育苗用ポット、農業用資材、水切り袋などが挙げられる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物からなる成形体がマルチフィラメントである場合、実用的な観点から強度は3.0cN/dtex以上であることが好ましい。より好ましくは3.5cN/dtex以上であり、さらに好ましくは4.0N/dtex以上である。一方、強度の上限は工業的に安定して製造できる点から9.0N/dtex以下が好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物からなる成形体がマルチフィラメントである場合、耐加水分解性の指標である強度保持率は60〜99%であることが好ましい。より好ましくは70〜99%であり、さらに好ましくは80〜99%であり、特に好ましくは85〜99%である。強度保持率は、ポリ乳酸樹脂組成物からなるマルチフィラメントを水中に浸漬して密閉し、該密閉容器を130℃、40分間加熱処理した際の、加熱処理前後の強度比から算出した値である。
本発明の成形体の製造方法として射出成形を行う場合には、耐熱性の点で、金型温度をポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度以上および融点以下の温度範囲、好ましくは60℃以上、240℃以下の温度範囲、より好ましくは、70℃以上、220℃以下の温度範囲、さらに好ましくは、80℃以上、200℃以下の温度範囲に設定し、成形サイクル150秒以下、好ましくは90秒以下、より好ましくは60秒以下、さらに好ましくは50秒以下で射出成形してなることが好ましい。
本発明の成形体の製造方法としてブロー成形を行う場合には、例えば、ポリ乳酸樹脂組成物を上記の方法で射出成形により有底のチューブ状成形物(パリソン)を成形し、次いでポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移点以上およびガラス転移点+80℃以下の温度範囲、好ましくは60℃以上、140℃以下の温度範囲、さらに好ましくは70℃以上、130℃以下の温度範囲に設定したブロー成形用の金型に移動して、延伸ロッドにより延伸しつつ、エアノズルから圧縮空気を供給して成形体を得る方法が挙げられる。
本発明の成形体の製造方法として真空成形を行う場合には、耐熱性の点で、ポリ乳酸樹脂組成物を熱板もしくは熱風などのヒーターで60〜150℃、好ましくは65〜120℃、より好ましくは70〜90℃で加熱を行い、そのシートを金型温度30〜150℃、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜90℃に設定した金型に密着させると同時に、金型内を減圧することで成形する方法が挙げられる。
本発明の成形体の製造方法としてプレス成形を行う場合には、耐熱性の点で、ポリ乳酸樹脂組成物を熱板もしくは熱風などのヒーターで60〜150℃、好ましくは65〜120℃、より好ましくは70〜90℃で加熱を行い、そのシートを金型温度30〜150℃、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜90℃に設定した雄型と雌型からなる金型に密着して加圧を行い、型締めする方法が挙げられる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物からなる成形体が射出成形品である場合、成形品の耐熱性はヒートサグ試験の変形量で評価することができる。例えば、80mm×80mmの角板成形品を片持ち支持した状態で、60℃、30分保持したときの変形量を測定した場合、耐熱性の点において変形量は20mm以下であることが好ましい。より好ましくは15mm以下であり、さらに好ましくは10mm以下であり、5mm以下であることが特に好ましい。下限は特に制限されない。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物からなる成形品が射出成形品である場合、成形品の乾熱特性の指標である強度保持率については50%以上であることが好ましい。より好ましくは55%以上であり、さらに好ましくは60%以上であり、65%以上であることが特に好ましい。上限は特に制限されない。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物からなる成形体が、フィルム、シート、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品および他の材料との複合体として用いられる場合は、土木・建築用資材、文具、医療用品、自動車用部品、電気・電子部品、光学フィルムまたはその他の用途として有用である。
具体的には、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンハウジングまたは内部部品、CRTディスプレーハウジングまたは内部部品、プリンターハウジングまたは内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングまたは内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングまたは内部部品、コピー機のハウジングまたは内部部品、ファクシミリのハウジングまたは内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、“レーザーディスク(登録商標)”、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、釣り餌袋などの水産関連部材、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECU(Electric Control Unit)ハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター(中継接続用コネクター)、PCBコネクター(ボードコネクター)、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクター、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農ビの止め具、緩効性肥料、防根シート、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢などの農業部材、シェールガス・オイル採掘時に使用する目止め材(繊維)や成形材料、衛生用品、医療用フィルムなどの医療用品、カレンダー、文具、衣料、食品等の包装用フィルム、トレー、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類、食品用透明耐熱容器、化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品等のラッピングフィルムなどの容器・包装、各種衣料、インテリア用品、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレー、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、歯ブラシ、文房具、クリアファイル、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。
以下実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。ここで、実施例中の部数は、重量部を示す。物性等の測定方法は以下のとおりである。
(1)分子量
ポリ乳酸樹脂組成物の重量平均分子量および分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値である。GPC測定は、検出器に日本ウォーターズ(株)製の示差屈折計WATERS410を用い、ポンプに日本ウォーターズ(株)製のMODEL510を用い、カラムに昭和電工(株)製の“Shodex”(登録商標)GPC HFIP−806Mと“Shodex”(登録商標)GPC HFIP−LGとを直列に接続したものを用いて行った。測定条件は、流速0.5mL/minとし、測定では溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入した。
(2)熱的特性
ポリ乳酸樹脂組成物の融点および融解熱量は、(株)パーキンエルマー・ジャパン製の示差走査型熱量計(DSC)により測定した。測定条件は、試料5mg、窒素雰囲気下、昇温速度が20℃/minである。
ここで、融点とは、結晶融解ピークにおけるピークトップの温度のことを指し、また融解終了温度とは結晶融解ピークにおけるピーク終了温度のことを指す。得られた結果において、融点が190℃以上250℃未満に確認されたものは、ポリ乳酸ステレオコンプレックスが形成されたものと判断し、融点が150℃以上190℃未満に確認されたものについてはポリ乳酸ステレオコンプレックスが形成されなかったものと判断した。ここで、示すポリ乳酸樹脂組成物の融点とは、第2昇温時に昇温速度20℃/minで30℃から250℃まで昇温したときに測定される融点を示す。また、ステレオコンプレックス結晶由来融解熱量(ΔHmsc)とは、上記方法で測定した際の、ステレオコンプレックス結晶融解ピークのピーク面積を算出したものである。
また、ポリ乳酸樹脂組成物の熱的特性として下記式(9)で示されるパラメータ値の算出を行った。
(Tm−Tms)/(Tme−Tm) (9)
式(9)のパラメータにおいて、Tm:ポリ乳酸樹脂組成物のステレオコンプレックス結晶由来の融点(結晶融解ピークにおけるピークトップ温度)、Tms:ポリ乳酸樹脂組成物のステレオコンプレックス結晶融解開始温度、Tme:ポリ乳酸樹脂組成物の融点終了温度を示しており、それぞれの値は(株)パーキンエルマー・ジャパン示差走査型熱量計(DSC)を用いて試料5mg、窒素雰囲気下での測定値である。なお、測定値は、第1昇温時に昇温速度40℃/minで30℃から250℃まで昇温した後、降温速度40℃/minで30℃まで冷却し、さらに第2昇温時に昇温速度40℃/minで30℃から250℃まで昇温したときの値を用いている。
(3)ステレオコンプレックス形成率(Sc)
ポリ乳酸樹脂組成物のステレオコンプレックス形成率(Sc)は、下記式(4)から算出した。
Sc=ΔHh/(ΔHl+ΔHh)×100 (4)
ここで、ΔHlは150℃以上190℃未満に現れるポリ−L−乳酸単独結晶およびポリ−D−乳酸単独結晶の結晶融解に基づく熱量を示し、ΔHhは190℃以上250℃未満に現れるステレオコンプレックス結晶の結晶融解に基づく熱量を示す。
また、本実施例におけるポリ乳酸樹脂組成物のステレオコンプレックス形成率(Sc)は、示差走査型熱量計(DSC)の第2昇温時に測定される結晶融解ピークから算出したものである。
(4)カルボキシル基末端濃度
ポリ乳酸樹脂組成物のカルボキシル基末端濃度は、ポリ乳酸樹脂組成物のペレットをo−クレゾール/クロロホルム混合溶液に溶解後、0.02規定のエタノール性水酸化カリウム溶液にて滴定することにより算出した。
(5)分子量保持率
ポリ乳酸樹脂組成物の分子量保持率は、ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを60℃、95%RH条件下で100時間湿熱処理を行い、湿熱処理前の重量平均分子量(Mw1)と湿熱処理後の重量平均分子量(Mw2)から下記式(10)に従い算出した。
分子量保持率(%)=Mw2/Mw1×100 (10)
(6)延伸糸強度
本発明のポリ乳酸樹脂組成物からなる延伸糸の強度は、(株)オリエンテック製テンシロン(TENSILON)UCT−100を用いて、JIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、1998年)に従い,定速伸張条件(つかみ間隔:20cm、伸張速度20cm/分)で測定した。
(7)延伸糸強度保持率
本発明のポリ乳酸樹脂組成物からなる延伸糸の強度は、以下の手順で測定を行った。
ポリ乳酸樹脂組成物からなる延伸糸1gを収縮しないようにボビンに巻き付け、水300mlとともに密閉可能な容器に入れた後、昇温速度4℃/分にて容器内の水温が130℃となるように加熱して130℃にて40分間定温保持した後、降温速度4℃/分にて冷却させた。容器内の水温が50℃以下になったところで試料をとりだして水洗を行い、熱処理前の引張強度(T1)、熱処理後の引張強度(T2)から下記式(11)に従い強度保持率を算出した。
強度保持率(%)=T2/T1×100 (11)
(8)布帛アイロン耐熱性
下記実施例で得られたポリ乳酸樹脂組成物からなる布帛に対して、中温(表面温度170℃)に設定した家庭用アイロンを10秒間押しあてて、変化が認められないものをgood、硬化がわずかに認められるものをfair、硬化が明確に認められるものをbad、硬化が顕著もしくは溶融してしまったものをworseとして4段階でアイロン耐熱性評価を行い、fair以上を合格とした。
(9)成形品耐熱性:ヒートサグ試験
ポリ乳酸樹脂組成物からなる80mm×80mmの角板成形品を片持ち支持した状態で、60℃、30分保持したときの変形量を測定した。変形量が小さいほど耐熱性に優れるといえる。
(10)成形品強度保持率
ポリ乳酸樹脂組成物からなるASTM1号ダンベル成形品を用いて、熱処理前の引張強度(T1)と150℃、100時間乾熱処理後の引張強度(T2)を測定して下記式(12)に従い成形品の乾熱強度保持率を算出した。
強度保持率(%)=T2/T1×100 (12)
本実施例(実施例1〜20および比較例1〜16)で使用したポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸は以下の通りである。
PLA1:参考例1で得られたポリ−L−乳酸(Mw=5万、分散度1.5)
PLA2:参考例2で得られたポリ−L−乳酸(Mw=14万、分散度1.6)
PLA3:参考例3で得られたポリ−L−乳酸(Mw=20万、分散度1.7)
PDA1:参考例4で得られたポリ−D−乳酸(Mw=4万、分散度1.5)
PDA2:参考例5で得られたポリ−D−乳酸(Mw=7万、分散度1.5)
PDA3:参考例6で得られたポリ−D−乳酸(Mw=13万、分散度1.6)
PDA4:参考例7で得られたポリ−D−乳酸(Mw=18万、分散度1.6)
[参考例1]
撹拌装置および還流装置を備えた反応容器中に、90%L−乳酸水溶液を50部入れ、温度を150℃にした後、徐々に減圧して水を留去しながら3.5時間反応した。その後、窒素雰囲気下で常圧にし、酢酸錫(II)0.02部を添加した後、170℃にて13Paになるまで徐々に減圧しながら7時間重合反応を行った。続いて、得られたポリ−L−乳酸を窒素雰囲気下で110℃、1時間結晶化処理を行った後、60Paの圧力下、140℃で3時間、150℃で3時間、160℃で5時間固相重合を行い、ポリ−L−乳酸(PLA1)を得た。PLA1の重量平均分子量は5万、分散度は1.5、融点は157℃であった。
[参考例2]
撹拌装置および還流装置を備えた反応容器中に、90%L−乳酸水溶液を50部入れ、温度を150℃にした後、徐々に減圧して水を留去しながら3.5時間反応した。その後、窒素雰囲気下で常圧にし、酢酸錫(II)0.02部を添加した後、170℃にて13Paになるまで徐々に減圧しながら7時間重合反応を行った。続いて、得られたポリ−L−乳酸を窒素雰囲気下で110℃、1時間結晶化処理を行った後、60Paの圧力下、140℃で3時間、150℃で3時間、160℃で12時間固相重合を行い、ポリ−L−乳酸(PLA2)を得た。PLA2の重量平均分子量は14万、分散度は1.6、融点は165℃であった。
[参考例3]
撹拌装置および還流装置を備えた反応容器中に、90%L−乳酸水溶液を50部入れ、温度を150℃にした後、徐々に減圧して水を留去しながら3.5時間反応した。その後、窒素雰囲気下で常圧にし、酢酸錫(II)0.02部を添加した後、170℃にて13Paになるまで徐々に減圧しながら7時間重合反応を行った。続いて、得られたポリ−L−乳酸を窒素雰囲気下で110℃、1時間結晶化処理を行った後、60Paの圧力下、140℃で3時間、150℃で3時間、160℃で18時間固相重合を行い、ポリ−L−乳酸(PLA3)を得た。PLA3の重量平均分子量は20万、分散度は1.7、融点は170℃であった。
[参考例4]
撹拌装置と還流装置を備えた反応容器中に、90%D−乳酸水溶液を50部入れ、温度を150℃にした後、徐々に減圧して水を留去しながら3.5時間反応した。その後、窒素雰囲気下で常圧にし、酢酸錫(II)0.02部を添加した後、170℃にて13Paになるまで徐々に減圧しながら7時間重合反応を行った。続いて、得られたポリ−D−乳酸を窒素雰囲気下で110℃、1時間結晶化処理を行った後、60Paの圧力下、140℃で3時間、150℃で3時間、160℃で5時間固相重合を行い、ポリ−D−乳酸(PDA1)を得た。PDA1の重量平均分子量は4.0万、分散度は1.5、融点は156℃であった。
[参考例5]
撹拌装置と還流装置を備えた反応容器中に、90%D−乳酸水溶液を50部入れ、温度を150℃にした後、徐々に減圧して水を留去しながら3.5時間反応した。その後、窒素雰囲気下で常圧にし、酢酸錫(II)0.02部を添加した後、170℃にて13Paになるまで徐々に減圧しながら7時間重合反応を行った。続いて、得られたポリ−D−乳酸を窒素雰囲気下で110℃、1時間結晶化処理を行った後、60Paの圧力下、140℃で3時間、150℃で3時間、160℃で9時間固相重合を行い、ポリ−D−乳酸(PDA2)を得た。PDA2の重量平均分子量は7.0万、分散度は1.5、融点は161℃であった。
[参考例6]
撹拌装置と還流装置を備えた反応容器中に、90%D−乳酸水溶液を50部入れ、温度を150℃にした後、徐々に減圧して水を留去しながら3.5時間反応した。その後、窒素雰囲気下で常圧にし、酢酸錫(II)0.02部を添加した後、170℃にて13Paになるまで徐々に減圧しながら7時間重合反応を行った。続いて、得られたポリ−D−乳酸を窒素雰囲気下で110℃、1時間結晶化処理を行った後、60Paの圧力下、140℃で3時間、150℃で3時間、160℃で12時間固相重合を行い、ポリ−D−乳酸(PDA3)を得た。PDA3の重量平均分子量は13万、分散度は1.6、融点は164℃であった。
[参考例7]
撹拌装置および還流装置を備えた反応容器中に、90%D−乳酸水溶液を50部入れ、温度を150℃にした後、徐々に減圧して水を留去しながら3.5時間反応した。その後、窒素雰囲気下で常圧にし、酢酸錫(II)0.02部を添加した後、170℃にて13Paになるまで徐々に減圧しながら7時間重合反応を行った。続いて、得られたポリ−D−乳酸を窒素雰囲気下で110℃、1時間結晶化処理を行った後、60Paの圧力下、140℃で3時間、150℃で3時間、160℃で18時間固相重合を行い、ポリ−D−乳酸(PDA4)を得た。PDA4の重量平均分子量は18万、分散度は1.6、融点は168℃であった。
(A)ポリ乳酸樹脂
A−1:参考例8で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合物)(Mw=11万、分散度2.7)
A−2:参考例9で得られたポリ乳酸ブロック共重合体(Mw=13万、分散度2.4)
A−3:参考例10で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合物)(Mw=13万、分散度2.6)
A−4:参考例11で得られたポリ乳酸ブロック共重合体(Mw=16万、分散度2.3)
A−5:参考例12で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合物)(Mw=4万、分散度1.8)
A−6:参考例13で得られたポリ乳酸ブロック共重合体(Mw=6万、分散度1.6)
A−7:参考例14で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合物)(Mw=10万、分散度2.2)
A−8:参考例15で得られたポリ乳酸ブロック共重合体(Mw=13万、分散度2.0)
A−9:参考例16で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合物)(Mw=12万、分散度2.4)
A−10:参考例17で得られたポリ乳酸ブロック共重合体(Mw=14万、分散度2.2)
A−11:参考例18で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合物)(Mw=13万、分散度2.5)
A−12:参考例19で得られたポリ乳酸ブロック共重合体(Mw=15万、分散度2.3)
A−13:参考例20で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合物)(Mw=15万、分散度2.6)
A−14:参考例21で得られたポリ乳酸ブロック共重合体(Mw=17万、分散度2.4)
A−15:参考例22で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合物)(Mw=17万、分散度2.4)
A−16:参考例23で得られたポリ乳酸ブロック共重合体(Mw=19万、分散度2.2)
A−17:参考例24で得られたポリ乳酸ブロック共重合体(Mw=15万、分散度1.8)
A−18:参考例25で得られたポリ乳酸ブロック共重合体(Mw=11万、分散度1.7)
A−19:参考例26で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合物)(Mw=17万、分散度1.7)
PLA3:参考例3で得られたポリ−L−乳酸(Mw=20万、分散度1.7)
[参考例8]
参考例3で得られたPLA3と参考例4で得られたPDA1を混合前にあらかじめ窒素雰囲気下で温度110℃、2時間結晶化処理を行った。続いて、結晶化した50重量部のPLA3を二軸押出機の樹脂供給口より添加し、50重量部のPDA1を後述するL/D=30の部分に設けたサイド供給口より添加することで溶融混練を行った。ここで、二軸押出機は、樹脂供給口よりL/D=10の部分に温度190℃に設定した可塑化部分を有するとともに、L/D=30の部分にニーディングディスクを備えてせん断付与できるスクリューとしてせん断付与下で混合できる構造を有している。二軸押出機によって、減圧下、混練温度210℃でPLA1およびPDA1の溶融混練を行い、ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−1)を得た。ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−1)の重量平均分子量は11万、分散度は2.7、融点は211℃で、ステレオコンプレックス形成率は100%であった。
[参考例9]
参考例8で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−1)を、窒素雰囲気下で110℃、1時間結晶化処理を行った後、60Paの圧力下、140℃で3時間、150℃で3時間、160℃で18時間固相重合を行い、セグメント数3以上のポリ乳酸ブロック共重合体(A−2)を得た。ポリ乳酸ブロック共重合体(A−2)の重量平均分子量は13万、分散度は2.4、融点は211℃で、ステレオコンプレックス形成率は100%であった。
[参考例10]
二軸押出機に供給するPLA3を70重量部、PDA1を30重量部とする以外は参考例8と同様の方法で溶融混練を行い、ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−3)を得た。ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−3)の重量平均分子量は13万、分散度は2.6、融点は214℃と151℃のダブルピークで、ステレオコンプレックス形成率は95%であった。
[参考例11]
参考例10で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−3)を参考例9と同様の方法で固相重合を行い、セグメント数3以上のポリ乳酸ブロック共重合体(A−4)を得た。ポリ乳酸ブロック共重合体(A−4)の重量平均分子量は16万、分散度は2.3、融点は215℃と171℃のダブルピークで、ステレオコンプレックス形成率は97%であった。
[参考例12]
二軸押出機で溶融混練するポリ−L−乳酸をPLA1、ポリ−D−乳酸をPDA1とする以外は参考例10と同様の方法にて溶融混練を行い、ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−5)を得た。ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−5)の重量平均分子量は4万、分散度は1.8、融点は215℃で、ステレオコンプレックス形成率は100%であった。
[参考例13]
参考例12で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−5)を参考例9と同様の方法で固相重合を行い、ポリ乳酸ブロック共重合体(A−6)を得た。ポリ乳酸ブロック共重合体(A−6)の重量平均分子量は6万、分散度は1.6、融点は215℃で、ステレオコンプレックス形成率は100%であった。
[参考例14]
二軸押出機で溶融混練するポリ−L−乳酸をPLA2、ポリ−D−乳酸をPDA1とする以外は参考例10と同様の方法にて溶融混練を行い、ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−7)を得た。ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−7)の重量平均分子量は10万、分散度は2.2、融点は213℃と152℃のダブルピークで、ステレオコンプレックス形成率は96%であった。
[参考例15]
参考例14で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−7)を参考例9と同様の方法で固相重合を行い、ポリ乳酸ブロック共重合体(A−8)を得た。ポリ乳酸ブロック共重合体(A−8)の重量平均分子量は12万、分散度は2.0、融点は212℃と170℃のダブルピークで、ステレオコンプレックス形成率は98%であった。
[参考例16]
二軸押出機で溶融混練するポリ−L−乳酸をPLA2、ポリ−D−乳酸をPDA2とする以外は参考例10と同様の方法にて溶融混練を行い、ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−9)を得た。ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−9)の重量平均分子量は12万、分散度は2.4、融点は212℃と160℃のダブルピークで、ステレオコンプレックス形成率は93%であった。
[参考例17]
参考例16で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−9)を参考例9と同様の方法で固相重合を行い、ポリ乳酸ブロック共重合体(A−10)を得た。ポリ乳酸ブロック共重合体(A−10)の重量平均分子量は14万、分散度は2.2、融点は212℃と171℃のダブルピークで、ステレオコンプレックス形成率は95%であった。
[参考例18]
二軸押出機で溶融混練するポリ−L−乳酸をPLA2、ポリ−D−乳酸をPDA3とする以外は参考例10と同様の方法にて溶融混練を行い、ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−11)を得た。ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−11)の重量平均分子量は13万、分散度は2.5、融点は210℃と165℃のダブルピークで、ステレオコンプレックス形成率は55%であった。
[参考例19]
参考例18で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−11)を参考例9と同様の方法で固相重合を行い、ポリ乳酸ブロック共重合体(A−12)を得た。ポリ乳酸ブロック共重合体(A−12)の重量平均分子量は15万、分散度は2.3、融点は211℃と170℃のダブルピークで、ステレオコンプレックス形成率は63%であった。
[参考例20]
二軸押出機で溶融混練するポリ−L−乳酸をPLA3、ポリ−D−乳酸をPDA2とする以外は参考例10と同様の方法にて溶融混練を行い、ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−13)を得た。ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−13)の重量平均分子量は15万、分散度は2.6、融点は211℃と161℃のダブルピークで、ステレオコンプレックス形成率は90%であった。
[参考例21]
参考例20で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−13)を参考例9と同様の方法で固相重合を行い、ポリ乳酸ブロック共重合体(A−14)を得た。ポリ乳酸ブロック共重合体(A−14)の重量平均分子量は17万、分散度は2.4、融点は212℃と171℃のダブルピークで、ステレオコンプレックス形成率は95%であった。
[参考例22]
二軸押出機で溶融混練するポリ−L−乳酸をPLA3、ポリ−D−乳酸をPDA3とする以外は参考例10と同様の方法にて溶融混練を行い、ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−15)を得た。ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−15)の重量平均分子量は17万、分散度は2.4、融点は212℃と168℃のダブルピークで、ステレオコンプレックス形成率は60%であった。
[参考例23]
参考例20で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−15)を参考例9と同様の方法で固相重合を行い、ポリ乳酸ブロック共重合体(A−16)を得た。ポリ乳酸ブロック共重合体(A−16)の重量平均分子量は19万、分散度は2.2、融点は212℃と171℃のダブルピークで、ステレオコンプレックス形成率は67%であった。
[参考例24]
L−ラクチド100部、エチレングリコール0.15部を撹拌装置のついた反応容器中で、窒素雰囲気下、160℃で均一に溶解させた後、オクチル酸錫0.01部を加え、2時間開環重合反応を行った。重合反応終了後、反応物をクロロホルムに溶解させ、メタノール(クロロホルム溶液の5倍量)中で撹拌しながら再沈殿させ、未反応のモノマーを除去してポリ−L−乳酸(PLA4)を得た。PLA4の重量平均分子量は8万、分散度は1.6、融点は168℃であった。
次に、得られたPLA4の100部を撹拌装置のついた反応容器中で、窒素雰囲気下にて200℃で溶解させた後、120部のD−ラクチドを投入し、0.01部のオクチル酸錫を加えた後、3時間重合反応させた。得られた反応物はクロロホルムに溶解し、メタノール(クロロホルム溶液の5倍量)中で撹拌しながら再沈殿させ、未反応のモノマーを除去して、L−乳酸単位からなるPLA4にD−乳酸単位からなるセグメントが結合したセグメント数が3のポリ乳酸ブロック共重合体(A−17)を得た。A−17の分子量は15万、分散度は1.8、融点は208℃と169℃とのダブルピークで、ステレオコンプレックス形成率は95%であった。また、ポリ乳酸ブロック共重合体A−17を構成するL−乳酸単位からなるセグメントの重量平均分子量とD−乳酸単位からなるセグメントの重量平均分子量との比は2.7であった。
[参考例25]
参考例3で得られたPLA3(50重量部)と参考例7で得られたPDA4(50重量部)を(株)東洋精機製作所製バッチ式二軸混練機(ラボプラストミル)にて混練温度270℃、混練回転数120rpm、混練時間10分にて混練を行い、PLA3のL−乳酸単位からなるセグメントとPDA4のD−乳酸単位からなるセグメントがエステル交換したセグメント数3以上のポリ乳酸ブロック共重合体(A−18)を得た。A−18の分子量は11万、分散度は1.7、融点は211℃で、ステレオコンプレックス形成率は100%であった。
[参考例26]
参考例3で得られたPLA3と参考例7で得られたPDA4を、参考例8と同様の方法にて溶融混練を行い、ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−19)を得た。ポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−19)の重量平均分子量は17万、分散度は1.7、融点は220℃と169℃のダブルピークで、ステレオコンプレックス形成率は55%であった。
(B)グリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物
B−1:トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学工業(株)製“TEPIC−S”(登録商標)、エポキシ当量100g/mol、分子量297)
B−2:モノアリルジグリシジルイソシアヌレート(四国化成工業(株)製「MA−DGIC」(商品名)、分子量281)
B−3:ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート(四国化成工業(株)製「DA−MGIC」(商品名)、分子量253)
B−4:テトラヒドロフタル酸ジグリシジル(天津市合成材料工業研究所製、分子量284)
B−5:1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(無水トリメリット酸)(和光純薬工業(株)製、分子量218)
(C)多官能性化合物
C−1:N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(ラインケミージャパン(株)製“スタバクゾール”(登録商標)、分子量363)
C−2:ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、分子量168)
C−3:2,2’−(1,3−フェニレン)ビス(2−オキサゾリン)(三國製薬工業(株)製、分子量216)
(D)結晶核剤
D−1:タルク(日本タルク(株)製“ミクロエース”(登録商標)P−6)
D−2:リン酸エステルナトリウム塩(株)ADEKA製“アデカスタブ”(登録商標)NA−11)
D−3:リン酸エステルアルミニウム塩(株)ADEKA製“アデカスタブ”(登録商標)NA−21)
(実施例1〜21)
表1および表2に示す種々の割合で、ポリ乳酸樹脂(A)、グリシジル基または酸無水物を有する環状化合物(B)および結晶核剤(D)をあらかじめドライブレンドした後、ベントを有する二軸押出機にて溶融混練を行った。二軸押出機は、上述したように、樹脂供給口よりL/D=10の部分に温度225℃に設定した可塑化部分と、L/D=30の部分にニーディングディスクを備えてせん断付与できるスクリューとしてせん断付与下で混合できる構造とを有しており、この二軸押出機を用いて減圧下、混練温度220℃で溶融混練を行って、ペレット化されたポリ乳酸樹脂組成物を得た。
続いて、繊維評価用サンプルを得るために、上記ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを真空乾燥機中で140℃、24時間乾燥した後、溶融紡糸機に投入し、溶融温度220℃、紡糸温度230℃、口金0.3mmφ、紡糸速度5000m/分の条件にて品種100dtex−24フィラメントの未延伸糸を得た。さらにこの未延伸糸を予熱100℃、熱セット温度130℃にて延伸倍率1.4倍で延伸し、品種70dtex−24フィラメントの延伸糸を得た。また、この延伸糸を用いて経糸40本/cm、緯糸40本/cmからなる布帛を作製した。
一方、成形品の耐熱性試験および引張強度保持率の測定サンプルを得るために、溶融混練により得られたポリ乳酸樹脂組成物のペレットを射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)にて、シリンダー温度230℃、金型温度110℃で射出成形を行うことにより、耐熱性試験サンプルとして厚さ1mmの角板成形品を、また引張強度保持率の測定サンプルとして厚さ3mmのASTM1号ダンベル成形品をそれぞれ作製した。
溶融混練により得られたポリ乳酸樹脂組成物、繊維物性ならびに射出成形品の物性は表1および表2に示す通りである。
実施例1〜4では、ポリ乳酸樹脂としてポリ乳酸ブロック共重合体(A−2)を、実施例5〜8ではポリ乳酸ブロック共重合体A−4を用い、これらポリ乳酸樹脂に対して添加量の異なるトリグリシジルイソシアヌレート(B−1)を用いて溶融混練を行い、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。その結果、ポリ乳酸樹脂(A−2)および(A−4)いずれについてもトリグリシジルイソシアヌレート(B−1)の添加量が多くなるとともにポリ乳酸樹脂組成物の重量平均分子量は増加し、分散度は小さくなる傾向であった。さらに、イソシアヌレート化合物の添加量が多くなるとともに、ポリ乳酸樹脂組成物のカルボキシル基末端濃度は低くなり、湿熱処理後の分子量保持率についても高くなる傾向であることから湿熱安定性に優れることがわかった。ポリ乳酸樹脂組成物からなる延伸糸については、延伸糸強度がいずれも3.0cN/dtex以上で、延伸糸の強度保持率が80%以上であり、さらには布帛のアイロン耐熱性にも優れることから、本発明のポリ乳酸樹脂組成物からなる延伸糸は機械物性、耐熱性、耐加水分解性に優れることがわかった。また、射出成形品のヒートサグ試験についても変形量が10mm以下と小さく、さらに強度保持率についても59%以上であることから耐熱性および乾熱特性両方において優れていることがわかった。
実施例9〜12では、ポリ乳酸樹脂(A)を表1に記載の(A−6,8,10,14)に変更し、これらポリ乳酸樹脂に対してトリグリシジルイソシアヌレート(B−1)をポリ乳酸樹脂に対して1重量部添加してポリ乳酸樹脂組成物を得た。これらポリ乳酸樹脂組成物の物性については、実施例1〜8と同様、イソシアヌレート化合物との反応により重量平均分子量は増加し、カルボキシル基末端濃度については10eq/tonに低下、ポリ乳酸樹脂組成物としての分子量保持率については86%以上と湿熱安定性に優れることがわかった。ポリ乳酸樹脂組成物からなる延伸糸については、重量平均分子量が7万の実施例9を除いては3.0cN/dtex以上で、延伸糸の強度保持率が90%以上、さらには布帛のアイロン耐熱性も良好であることから、本発明のポリ乳酸樹脂組成物からなる延伸糸は機械物性、耐熱性、耐加水分解性に優れることがわかった。また、射出成形品のヒートサグ試験についても実施例1〜8と同様良好であることから耐熱性および乾熱特性両方において優れていることがわかった。
実施例13〜16では、トリグリシジルイソシアヌレート(B−1)を他のイソシアヌレート化合物(B−2、B−3)、テトラヒドロフタル酸ジグリシジル(B−4)および酸無水物の環状化合物である1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(無水トリメリット酸)(B−5)に変更し、ポリ乳酸樹脂組成物を作製したものである。いずれのポリ乳酸樹脂組成物においても、実施例1〜12と同様に分子量増加および分散度が小さくなる傾向であった。また、熱物性においてもステレオコンプレックス形成率は90%以上であり、ステレオコンプレックス結晶の融解エンタルピー(ΔHmsc)が30J/g以上であることから耐熱性に優れることがわかった。さらに、延伸糸の物性についても実施例1〜12と同様、機械物性、耐加水分解性、耐熱性に優れ、射出成形品のヒートサグ試験についても変形量が10mm以下、強度保持率についても65%以上であることから耐熱性および乾熱特性両方に優れることがわかった。
実施例17、18では、ポリ乳酸樹脂(A)を(A−5)と(A−6)に変更し、ポリ乳酸樹脂組成物を作製したものであるが、いずれのポリ乳酸樹脂組成物においても、実施例1〜16と同様に分子量増加および分散度が小さくなる傾向であった。また、DSC測定から得られる熱物性ならびにカルボキシル基末端濃度、分子量保持率についても実施例1〜16と同様の物性値であることから耐熱性と湿熱安定性に優れていることがわかった。さらに延伸糸の物性については、延伸糸強度がいずれも4.0cN/dtex以上、強度保持率についても80%以上であることから耐熱性と耐加水分解性に優れ、延伸糸からなる布帛についてもアイロン耐熱性は良好であった。また、射出成形品のヒートサグ試験および強度保持率の結果についても実施例1〜16と同様であり耐熱性と乾熱特性に優れていた。
実施例19〜21では、ポリ乳酸樹脂A−4に対して、トリグリシジルイソシアヌレート(B−1)と結晶核剤(D−1)〜(D−3)をそれぞれ添加してポリ乳酸樹脂組成物を作製したものであるが、いずれのポリ乳酸樹脂組成物においてもイソシアヌレート化合物との反応により、分子量増加と分散度の低下傾向がみられた。また、熱物性においてもステレオコンプレックス形成率(Sc)は95%以上と高く、ステレオコンプレックス結晶の融解エンタルピー(ΔHmsc)が36J/g以上であることから耐熱性に優れることがわかった。さらに、延伸糸強度はいずれも3.9cN/dtex以上、強度保持率についても78%以上であることから耐熱性と耐加水分解性に優れていた。また、延伸糸からなる布帛のアイロン耐熱性、射出成形品の耐熱性および乾熱特性についても良好であった。
(比較例1〜22)
表3および表4に示す種々の割合で、ポリ乳酸樹脂(A)、グリシジル基または酸無水物を有する環状化合物(B)、多官能性化合物(C)および結晶核剤(D)をあらかじめドライブレンドした後、実施例と同様の方法にて溶融混練を行い、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。また、ポリ乳酸樹脂組成物については実施例と同様の方法にて溶融紡糸を行い、延伸糸と布帛の作製ならびに射出成形による各種評価用成形品の作製を行った。溶融混練により得られたポリ乳酸樹脂組成物、繊維物性ならびに射出成形品の物性は表3および表4に示す通りである。
比較例1〜4では100重量部のポリ乳酸樹脂(A−2)あるいは(A−4)に対してトリグリシジルイソシアヌレート(B−1)をそれぞれ0.03重量部と2.5重量部で添加したものである。その結果、比較例1、3ではイソシアヌレート化合物との反応後においてもカルボキシル基末端濃度は30eq/ton以上と高いことからが、実施例1〜15に比較して分子量保持率が低かった。さらに、比較例1と3のポリ乳酸樹脂組成物から得られた延伸糸の強度保持率は50%未満であることから耐加水分解性に劣ることがわかった。一方、比較例2、4ではトリグリシジルイソシアヌレート(B−1)との反応後、ポリ乳酸樹脂組成物のカルボキシル基末端濃度は1eq/tonと低く、分子量保持率についても89%以上であることから耐加水分解性に優れていたが、製糸時にイソシアヌレート化合物起因と推定される発煙が生じるとともに紡出糸の冷却過程における細化が不安定であることから糸切れ発生し、延伸糸の強度も低かった。
比較例5,6では、ポリ乳酸樹脂としてポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−1,3)を用い、イソシアヌレート化合物との溶融混練によりポリ乳酸樹脂組成物を作製した。この比較例で得られたポリ乳酸樹脂組成物については、ポリ乳酸樹脂としてポリ乳酸ブロック共重合体を用いた実施例3,7に比較してカルボキシル基末端濃度が10eq/ton以上と高く、ポリ乳酸樹脂組成物としての湿熱時分子量保持率は実施例に比較して低く耐熱性に劣るものであった。
比較例7〜15では、ポリ乳酸樹脂として表3および表4に記載のポリ乳酸ステレオコンプレックスあるいはポリ乳酸ブロック共重合体を用い、イソシアヌレート化合物との溶融混練によりポリ乳酸樹脂組成物を作製した。表中で比較例7〜9については、ポリ乳酸樹脂組成物としてステレオコンプレックス形成率は90%以上と高く、カルボキシル基末端濃度は10eq/ton以下と低いため湿熱安定性に優れるものの、ポリ乳酸樹脂組成物の重量平均分子量は14万と低いため延伸糸強度については実施例に比較して低かった。
比較例10,11と13〜15では、ポリ乳酸樹脂を構成するポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の比率が2未満であり、ポリ乳酸樹脂組成物のステレオコンプレックス形成率はいずれも70%未満と低かった。ポリ乳酸樹脂組成物のカルボキシル基末端濃度はいずれも1eq/tonでポリ乳酸樹脂組成物の湿熱安定性は優れているものの、布帛のアイロン耐熱性や成形品の耐熱性はポリ乳酸樹脂組成物のステレオコンプレックス形成率が影響して実施例に比較して劣るものであった。一方、比較例12についてはポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性や湿熱時分子量保持率は実施例と同様に優れるものであったが、延伸糸強度についてはポリ乳酸樹脂(A)としてポリ乳酸ブロック共重合体を用いた実施例12に比較すると低かった。
比較例16についてはポリ乳酸樹脂としてホモポリ乳酸であるPLA3を用いてポリ乳酸樹脂組成物を作製した。その結果、ポリ乳酸樹脂はホモポリ乳酸であることもありステレオコンプレックスの形成は0J/gで、耐熱性および結晶化特性が実施例に比較して劣る結果であった。また、布帛のアイロン加熱では布帛が溶融してしまうことからアイロン耐熱性が乏しく、さらには射出成形品のヒートサグ試験での変形量は20mm以上であり、引張強度保持率も低いことから耐熱性および乾熱特性において物性は劣っていることがわかった。
比較例17〜19については、ポリ乳酸ブロック共重合体(A−4)に対して多官能性化合物(C−1)〜(C−3)を添加してポリ乳酸樹脂組成物を作製した。その結果、いずれの場合もイソシアヌレート化合物との反応により重量平均分子量は増加するが、イソシアヌレート化合物でみられるような分散度の低下はなく、逆に分散度は大きくなる傾向であった。またカルボキシル基末端濃度は20eq/ton以上であり、分子量保持率についても60%以下であることから実施例に比較して湿熱安定性は低かった。さらに、延伸糸物性についても強度保持率が低くて耐加水分解性が実施例に比較して低く、延伸糸から得られた布帛についてはアイロン加熱により硬化が認められた。また、射出成形品のヒートサグ試験による変形量は20mm以上であり、強度保持率についても50%未満であることから、ポリ乳酸樹脂組成物としてポリ乳酸ブロック共重合体を含有していても、グリシジル基もしくは酸無水物を有する環状化合物以外の多官能性化合物を用いた場合には、耐熱性や乾熱特性が低いことがわかった。
比較例20〜22については、ポリ乳酸樹脂(A)についてポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−19)を使用し、トリグリシジルイソシアヌレート(B−1)と結晶核剤(D−1)〜(D−3)を添加してポリ乳酸樹脂組成物を作製した。その結果、これらポリ乳酸樹脂組成物のステレオコンプレックス形成率(Sc)は70%未満と低く、実施例に比較して耐熱性が劣るものであった。また、延伸糸についても布帛のアイロン加熱において一部硬化が認められた。さらに成形品の耐熱性についてはヒートサグ試験での変形量が20mm以上、強度保持率についても0%であることから実施例に比較して耐熱性および乾熱特性が低いことがわかった。
(実施例22、23)
参考例3で得られたPLA3と参考例4で得られたPDA1を混合前にあらかじめ窒素雰囲気下で温度110℃、2時間結晶化処理を行った。続いて、表5に示す添加量にて結晶化したPLA3およびトリグリシジルイソシアヌレート(B−1)を二軸押出機の樹脂供給口より添加し、一方、結晶化したPDA1を後述するL/D=30の部分に設けたサイド供給口より添加することで溶融混練を行った。ここで、二軸押出機は、樹脂供給口よりL/D=10の部分に温度190℃に設定した可塑化部分を有するとともに、L/D=30の部分にニーディングディスクを備えてせん断付与できるスクリューとしてせん断付与下で混合できる構造を有している。
さらに、上記で混練した混練物を窒素雰囲気下で110℃、1時間結晶化処理を行った後、60Paの圧力下、150℃にて24時間で固相重合を行い、ポリ乳酸樹脂組成物を得た。また、得られたポリ乳酸樹脂組成物については実施例と同様の方法にて溶融紡糸を行い、延伸糸と布帛の作製ならびに射出成形による各種評価用の成形品の作製を行った。
ポリ乳酸樹脂組成物、繊維物性ならびに射出成形品の物性は表5に示す通りである。
(実施例24)
参考例10で得られたポリ乳酸ステレオコンプレックス(A−3)とトリグリシジルイソシアヌレート(B−1)を二軸押出機の樹脂供給口より添加することで溶融混練を行った。押出機のエレメント構成および温度設定については実施例22、23に記載の通りである。続いて、溶融混練後の混練物を実施例22、23に記載した方法で固相重合を行った。また、実施例1〜21と同様の方法にて延伸糸、布帛の作製ならびに射出成形による各種評価用の成形品の作製を行った。
ポリ乳酸樹脂組成物、繊維物性ならびに射出成形品の物性は表5に示す通りである。
(実施例25〜27)
参考例3で得られたPLA3、参考例7で得られたPDA4および参考例11で得られた(A−4)を混合前にあらかじめ窒素雰囲気下で温度110℃、2時間結晶化処理を行った。
ポリ乳酸樹脂組成物の作製について、あらかじめポリ乳酸ブロック共重合体(A−4)とトリグリシジルイソシアヌレート(B−1)を表3に示す添加量にて二軸押出機の樹脂供給口より添加して溶融混練することで混合物を得た。続いて、二軸押出機の樹脂供給口に対して上記混合物と、さらにPLA3およびPDA4を表5に示す添加量にて添加して溶融混練することにより、ポリ乳酸樹脂組成物を作製した。なお、実施例25〜27についてはポリ乳酸樹脂組成物の混練後に固相重合は実施しなかった。また、該ポリ乳酸樹脂組成物についても実施例1〜21と同様の方法にて溶融紡糸を行い、延伸糸と布帛の作製ならびに射出成形による各種評価用の成形品の作製を行った。
得られたポリ乳酸樹脂組成物、繊維物性ならび射出成形品の物性は表5に示す通りである。
(比較例23、24)
実施例22、23と同様の方法にて二軸押出機にて混練物を作製することでポリ乳酸樹脂組成物を作製した。なお、比較例23、24については混練物の固相重合は実施しなかった。得られたポリ乳酸樹脂組成物については実施例と同様の方法にて溶融紡糸を行い、延伸糸と布帛の作製を行った。また、射出成形品についても実施例と同様の方法にて作製を行い、各種評価用サンプルを得た。ポリ乳酸樹脂組成物および射出成形品の物性は表5に示す通りである。
実施例22、23について、ポリ乳酸樹脂(A)としてあらかじめポリ乳酸ブロック共重合体を作製せずにPLA3、PDA1およびトリグリシジルイソシアヌレート(B−1)を一括で溶融混練を行い、その後固相重合したところ、ポリ乳酸樹脂組成物はイソシアヌレート化合物との反応により重量平均分子量はわずかに上昇し、分散度についても低下傾向であった。本方法で作製したポリ乳酸樹脂組成物においてもカルボキシル基末端濃度は10eq/ton未満であり、分子量保持率が高いことから湿熱安定性に優れていることがわかった。さらに、延伸糸の特性についても実施例1〜21と同様傾向で、機械物性、耐加水分解性、アイロン耐熱性に優れることがわかった。また、成形品のヒートサグ試験の変形量は10mm以下であり、引張強度保持率も60%以上であることから耐熱性および乾熱特性に優れることがわかった。
実施例24について、実施例1〜21と異なり、トリグリシジルイソシアヌレート(B−1)を固相重合前に添加した場合も、実施例1〜21と同様にポリ乳酸樹脂組成物はイソシアヌレート化合物との反応により重量平均分子量は増加し、分散度については低下傾向であった。本方法で得られたポリ乳酸樹脂組成物についてもカルボキシル基末端濃度は1eq/tonと低く分子量保持率は90%と実施例と同様に高かった。さらに延伸糸の特性や成形品の物性および耐熱性についても実施例と同様優れていることがわかった。
実施例25〜27について、得られたポリ乳酸樹脂組成物の物性については実施例と同様、トリグリシジルイソシアヌレート(B−1)との反応により重量平均分子量はわずかに上昇し、分散度についても低下傾向であった。本方法で作製したポリ乳酸樹脂組成物においてもカルボキシル基末端濃度は10eq/ton未満であり、分子量保持率が高いことから湿熱安定性に優れていることがわかった。また、延伸糸の特性についても実施例1〜21と同様の傾向で、機械物性、耐加水分解性、アイロン耐熱性に優れることがわかった。さらに、射出成形品のヒートサグ試験による変形量は10mm以下であり、引張強度保持率についても58%以上であることから耐熱性および乾熱特性に優れることがわかった。
比較例23、24について、実施例22、23と同様にPLA3、PDA1およびトリグリシジルイソシアヌレート(B−1)を一括で溶融混練したが、その後固相重合しなかったため、重量平均分子量は実施例22、23に比較して低く、ステレオコンプレックス結晶の融解エンタルピーについても低く耐熱性は低かった。また、延伸糸の特性については強度保持率が高いため耐加水分解性は優れるものの、延伸糸強度は実施例22、23に比較して低かった。射出成形品のヒートサグ試験では、実施例22、23に比較すると変形量が大きく、乾熱強度保持率も50%未満と耐熱性および乾熱特性に劣る傾向であった。