JP4788171B2 - 衛生用品用布帛 - Google Patents

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Description

本発明は、ステレオコンプレックスにより耐熱性を飛躍的に向上せしめ、かつ加水分解が抑制されたポリ乳酸繊維を少なくとも一部に含む衛生用品用に適した布帛を提供する。
近年、地球環境問題に強い関心が寄せられるようになり、地球温暖化問題における原因とされる温室効果ガスについて、その排出量を抑制する動きが活発になってきている。更には、有限な埋蔵資源である石油の枯渇についても、深刻な不足となることが懸念されている。石油を原料とした従来型のポリマーには、その原料が不足すること及び消費・廃棄段階での温室効果ガス発生を抑制することは、当業界において重要な課題となっている。そのような状況の中で、非石油系原料を用いたポリ乳酸が一躍脚光を浴びている。すなわち、ポリ乳酸はその原料である乳酸を農作物から乳酸発酵を経て得るために、農地を確保できれば枯渇する問題もないうえ、その構成物質の一部である炭素は植物によって大気中の炭酸ガスを固定化したものであり、仮に焼却等の廃棄処分を施しても、大気中の炭酸ガス全体量にほとんど影響を与えない。このことから、現在さまざまな用途において活発な技術開発が進められており、いくつかの商品も生まれている。
しかしながら、ポリ乳酸はその分子構造上、分子間力が小さい事から、熱によって容易に変形してしまう問題がある。具体的には、布帛に対して中温以上の家庭用アイロンを当ててしまうと、布帛表面が溶融して品位の悪いものしか得ることができない事などが挙げられる。これを解決する手段として、光学異性体であるL乳酸とD乳酸をそれぞれ別々に重合したポリL乳酸とポリD乳酸を混合・成形することで、ステレオコンプレックス結晶を形成し、耐熱性が向上することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、本発明者らの検討によれば該文献に記載された方法で得られる繊維を用いて布帛を製造したとしても耐久性に劣り、実用に耐えられるものではなかった。
更には、ポリ乳酸は容易に加水分解してその機械的特性が低下してしまい、例えば医療現場などで行われている湿熱滅菌処理によって、耐久性が大幅に低下してしまい、繰り返しの使用に耐えられないという問題もあった。これを解決するため、カルボキシル末端基を封鎖して加水分解を抑制する手法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、医療現場においては、衛生上の問題から使用される布帛には抗菌性が求められており、従来は天然繊維でできた布帛に対して、抗菌剤で処理するといった手法によって解決されてきた。しかし、布帛を製造した後に抗菌剤で処理するための工程が必要となるためコストがかかり、安価かつ洗濯耐久性に優れた抗菌性を持つ布帛を得ることは困難であった。
Takasaki,et.al.,Fiber Preprints(Annual Meeting)Japan,Vol.56,No.1(2001).67頁 特開2002−30208号公報(第2〜9頁)
本発明は、ステレオコンプレックスにより耐熱性を飛躍的に向上せしめ、かつ加水分解が抑制されたポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いた衛生用品用に適した布帛を提供することを課題とする。
本発明の課題は、ポリL乳酸とポリD乳酸の混合物よりなり、カルボキシル末端基を含むが、その濃度は20当量/t以下であり、ステレオコンプレックス率が15%以上である繊維を少なくとも一部に含み、静菌活性値が2.2以上であり、かつ湿熱滅菌処理をして用いられることを特徴とする衛生用品用布帛によって解決される。
本発明により、ステレオコンプレックスにより耐熱性を飛躍的に向上せしめ、かつ加水分解が抑制されたポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いた衛生用品用に適した布帛を提供できる。
本発明で用いられるポリ乳酸は、ポリL乳酸とポリD乳酸の混合物よりなる。ポリL乳酸はL乳酸単位を主体とするものであり、ポリD乳酸はD乳酸単位を主体とするものである。これらポリL乳酸、ポリD乳酸における乳酸単位のそれぞれの光学純度は高い方が好ましく、具体的には97%以上とすることが好ましい。一般にポリ乳酸は光学純度が低下すると結晶性が低下するために、得られた成形物は概して耐熱性が低下してしまい、実用的な成形物を得られない。このことから光学純度は98%以上であることがより好ましい。
また本発明で用いるポリL乳酸、ポリD乳酸の重量平均分子量は、それぞれ10万以上であることが、耐熱性、成形性の観点から好ましい。重量平均分子量を10万以上とすることで、得られる成形物の耐熱性が増大し、耐久性に優れたものを得られるばかりでなく、溶融時の流動性や結晶化特性も好ましい範囲とすることができるのである。また、重量平均分子量は40万以下であれば、溶融時の粘度を成形加工に適した領域に設定できる。このことから重量平均分子量は12万〜40万の範囲であるとより好ましく、12万〜25万の範囲が最も好ましい。
本発明で用いられるポリL乳酸、ポリD乳酸は、それぞれ、その重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)である分散度を2.4以下とすることが好ましい。分散度を2.4以下とすることで、より分子量分布の小さい、均一性に優れた成形物を得ることが可能となるほか、溶融成形時の均一性に優れるため、溶融紡糸段階での糸切れを防止できるなど、コストを抑えた形での製造が可能となるのである。更には、溶融成形において、それぞれのポリマーの分散度が2.4以下であると、ステレオコンプレックス結晶の完全性が高くなり、またその結晶性を高めることができることから、ひいては得られた成形物の耐熱性を向上させることが可能となるのである。これらのことから、分散度は2.0以下であるとより好ましく、1.9以下であると最も好ましい。また、この分散度は例えば溶媒により未重合のモノマーやオリゴマーを除去することや、真空中で熱処理を行ってモノマーやオリゴマーを除去することで高めることが可能であることから、例に挙げたようなモノマー、オリゴマー除去工程を通過させることが好ましい。
本発明において、上記重量平均分子量、数平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、25℃で測定し、ポリスチレン換算でも求められるものである。
本発明で用いられるポリL乳酸、ポリD乳酸中に含まれる未反応のモノマー、オリゴマーの量は、それぞれ0.01〜0.3重量%の範囲であることが好ましい。未反応のモノマー、オリゴマーは溶融成形中にブリードしてきて装置を汚染してしまうが、ごく僅かの量が存在すると、所謂可塑剤として作用し、成形性を向上させることができる。かてて加えて、これらモノマー、オリゴマーはカルボキシル末端基を持つことから、本発明で規定する範囲を超えない程度のカルボキシル末端基による効果で、布帛表面のpHを酸性サイドに保つことが可能となり、抗菌性を発現させることが可能となる。これは、従来からあるポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのオリゴマー、モノマーよりも、ポリ乳酸に起因するオリゴマー、モノマーの方が酸性度が高いために得られる効果である。すなわち、ポリ乳酸のモノマーとは乳酸であることから、モノマー単位中にカルボキシル末端基を必ずもつものであり、これによって繊維表面を酸性サイドに保つことが可能となることから、抗菌性が得られるのである。また、オリゴマーの主成分であるラクチド(乳酸の環状2量体)は加水分解(湿熱滅菌処理など)によって乳酸に変化することで、上述した効果を発現するのである。このことからモノマー、オリゴマーの量は残存ラクチド量を指標とすることができ、これを測定した場合0.01〜0.3重量%の範囲であることが好ましく、0.01〜0.2重量%の範囲であるとより好ましく、0.01〜0.1重量%の範囲が特に好ましい。
本発明においては、上記ポリL乳酸とポリD乳酸は、それぞれペレット化してポリL乳酸を主体とするペレット(以下「ペレットA」と称する場合もある)およびポリD乳酸を主体とするペレット(以下「ペレットB」と称する場合もある)をペレットの形状を保持したまま混合し、溶融紡糸に供することが好ましい。
本発明で用いられるポリL乳酸を主体としたペレットと、ポリD乳酸を主体としたペレットを混合するにあたり、そのブレンド比[ペレットA:ペレットB](重量比)は、ステレオコンプレックス結晶形成のため、一方が極端に少なくなりすぎないようにすることが好ましく、本発明で規定するステレオコンプレックス率を達成するには、通常7:3〜3:7の範囲とすることがより好ましい。この範囲で混合されたペレットは、一般的にペレットAとペレットCが時間の経過につれて生じる分離現象(脱混和)が発生しにくく、均一な成形物を得ることができるばかりでなく、得られた成形物のステレオコンプレックス結晶を十分に形成せしめる事が可能となり、耐熱性を飛躍的に向上させることができるのである。このことから重量比は6:4〜4:6の範囲であるとより好ましく、5:5の範囲でブレンドされていると最も好ましい。
上記ペレット混合物に対して、界面活性剤が添加されていることが好ましい。界面活性剤とは、界面活性作用を及ぼすものであれば特に限定されず使用が可能であるが、ポリエーテル、ポリエーテルエステルなどの有機界面活性剤が好ましく用いられる。中でも、長鎖脂肪酸にポリアルキレングリコールなどを付加したポリエーテルエステル化合物は、それぞれのペレット表面に被膜を形成し易く、表面状態を均一に保つことが可能となるほか、製造設備の清掃などにおいて、容易に洗浄が可能であるなどの点で好ましい。長鎖脂肪酸としては炭素数8〜20の脂肪酸であることが好ましく、具体例としては、ステアリン酸、オレイル酸、マレイン酸などが挙げられる。またポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが挙げられ、ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は40〜2000の範囲で適宜選択できる。更に該界面活性剤は添加時に液体であることが表面被膜を均一に形成させる事が可能であるため好ましい。界面活性剤を添加する際に容易に液状化させるため、界面活性剤の融点は50℃未満であるものを選択することが好ましい。
上記界面活性剤の添加量は、ペレットA、Bの合計量に対して、0.003〜0.3重量%の範囲であると、表面に均一な被膜を充分に形成し、ペレットA、Bの混合物の表面状態を均一にすることが可能となり、これによって長期間ペレットの混合比が変動しない均一な混合物を製造設備に供給できることから、ひいては得られる成形物も均一なものとなるのである。また、低含有量の界面活性剤は溶融成形時に熱分解などを引き起こすことが少なく、ベースポリマーの劣化を抑制できることから、界面活性剤の添加量は0.03〜0.2重量%の範囲であるとより好ましい。
本発明のそれぞれのペレットの安息角差は5°未満であることが好ましい。安息角とは、ペレットをステンレス製の平板上に盛り上げ、その転がりが開始される傾きを表し、ペレットの転がり易さを表す指標であり、後述する方法で測定されるものである。この安息角の差が5°未満であれば、それぞれのペレットの転がり易さがほぼ同一となり、混合したペレットの脱混和を防止して安定した品質のステレオコンプレックス成形物を提供できるのである。安息角の差は好ましくは4°未満、更に好ましくは3°未満である。ペレットA、Bの安息角の差を上記範囲に制御するには、ペレットAとペレットBの形状を同じにすること、またペレットAとペレットBの粒度平均値をなるべく同じにすること、ペレットAとペレットBの粉体量を同じにする方法などが挙げられる。
また、それぞれのペレットにおける安息角の絶対値は45°未満であることが、製造工程での取り扱いに優れ、チップホッパーや配管等での詰まりを抑制できることから好ましい。ペレットA、Bの安息角の絶対値を上記範囲内に制御するには、ペレットAおよびペレットBに含まれる粉体量を5〜100mg/100gペレットの範囲とすること、およびペレットAとペレットBの粒度平均値を5〜50mg/個の範囲とすること、また、ペレットの形状は球状であることが安息角の絶対値を下げることが可能となるため好ましい。
ここで、粉体量とは100gのペレットAまたはペレットBを200メッシュのフィルター上で10回揺らして篩いにかけ、フィルターを通過した粉体の量を表したものである。粉体量が5mg/100gペレット以上であれば、ペレットの転がり抵抗が少なく、安息角の絶対値を45°未満とすることが可能となる。また、粉体量が100mg/100gペレット以下であれば、輸送工程や溶融成形機の原料ホッパー内で粉体が堆積することが少ないため好ましい。このことから粉体量は5〜50mg/100gペレットであることがより好ましい。
また、本発明で用いるペレットA、ペレットBの粒度平均値は3〜50mg/個の範囲であることが好ましい。該範囲に調整された各ペレットは、輸送工程(各種運送形態による輸送や、製造工程中での風送配管による輸送も含む)や成形機に投入する際の取り扱い性に優れるのである。また、ポリL乳酸とポリD乳酸のそれぞれのペレットは、粒度平均値の差を7mg/個未満とすることが好ましい。粒度の差を前記範囲とすることで、例えばチップホッパー内での分離現象を抑制できることから、均一性に優れた繊維を得ることが可能となる。このことから粒度平均値の差はより好ましくは5mg/個未満であり、3mg/個未満であると最も好ましい。上記粒度平均値は100個のペレットの重量を測定し、その平均値より算出した値である。
また、本発明の衛生用品用布帛を製造するためのポリ乳酸よりなる繊維は、カルボキシル末端基を有するが、そのカルボキシル末端基濃度は20当量/t以下であり、好ましくは2〜20当量/tであるが、この値はカルボキシル末端基濃度はポリL乳酸、ポリD乳酸のカルボキシル末端基の少なくとも一部を封鎖することにより制御することができる。カルボキシル末端基を封鎖する方法は特に限定されないが、エポキシ系化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物や酸無水物などの化合物(末端封鎖剤)を添加して反応させる事によって封鎖されている事が好ましい。中でも、成形時に上記化合物が分離、蒸発、拡散すると、作業環境を悪化させるため、化合物の分子量は200以上であることが好ましい。また、化合物の構造上結晶化しやすいものに関しては、融点が向上する事から蒸発、拡散の問題も少なく、好適に用いられる。
上記エポキシ系化合物としては、N−グリシジルフタルイミド、N−グリシジル−4−メチルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−3−メチルフタルイミド、N−グリシジル−3,6−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−4−エトキシフタルイミド、N−グリシジル−4−クロルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジクロルフタルイミド、N−グリシジル−3,4,5,6−テトラブロムフタルイミド、N−グリシジル−4−n−ブチル−5−ブロムフタルイミド、N−グリシジルサクシンイミド、N−グリシジルヘキサヒドロフタルイミド、N−グリシジル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、N−グリシジルマレインイミド、N−グリシジル−α,β−ジメチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−エチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−プロピルサクシンイミド、N−グリシジルベンズアミド、N−グリシジル−p−メチルベンズアミド、N−グリシジルナフトアミド、N−グリシジルステラミド、N−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−エチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−フェニル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−ナフチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−トリル−3−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、オルソフェニルフェニルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、3−(2−キセニルオキシ)−1,2−エポキシプロパン、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、α−クレシルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルなどが挙げられ、さらには、テレフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジメチルジグリシジルエステル、フェニレンジグリシジルエーテル、エチレンジグリシジルエーテル、トリメチレンジグリシジルエーテル、テトラメチレンジグリシジルエーテル、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートやトリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。これらのエポキシ化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択してポリ乳酸のカルボキシル末端を封鎖すればよいが、反応性の点でエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、オルソフェニルフェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、N−グリシジルフタルイミド、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートやトリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートなどが好ましい。中でもトリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートなどはトリアジン環骨格を持つ事から融点が高く、更には耐熱性にも優れるため好ましく、中でも分子架橋による紡糸性悪化を防止できる観点からエポキシ基が2官能以下であることがより好ましい。
更に、エポキシ系化合物を使用する場合には、少量の触媒を併用することも好ましく行われる。触媒としては、酸、塩基のどちらかを示す化合物が好ましいが、例えばステアリン酸、オレイル酸などの長鎖脂肪酸とナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を反応させた脂肪酸アルカリ(土類)金属塩を用いると、耐熱性が高く、また十分な触媒効果を発揮することから、効率的にカルボキシル末端基を封鎖することができるため好ましい。触媒の添加量は0.001〜0.5重量%添加されていれば、ベースポリマーの熱分解を問題ないレベルに抑制し、その性能を十分に発揮できる。
上記カルボジイミド化合物としては、N,N´−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert. −ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トリイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド,N,N′−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N′−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N′−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−トリルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミドなどが挙げられる。中でも、耐熱性及び取り扱いのし易さから、ポリカルボジイミド化合物が好適に用いられ、該ポリカルボジイミド化合物は、ジイソシアネート化合物を重合したものが好適に用いられるが、中でも4,4'−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドの重合体やテトラメチルキシリレンカルボジイミドの重合体やその末端をポリエチレングリコール等で封鎖したものが好ましい。 上記オキサゾリン化合物としては、2−メトキシ−2−オキサゾリン、2−エトキシ−2−オキサゾリン、2−プロポキシ−2−オキサゾリン、2−ブトキシ−2−オキサゾリン、2−ペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘプチルオキシ−2−オキサゾリン、2−オクチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ノニルオキシ−2−オキサゾリン、2−デシルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−アリルオキシ−2−オキサゾリン、2−メタアリルオキシ−2−オキサゾリン、2−クロチルオキシ−2−オキサゾリン、2−フェノキシ−2−オキサゾリン、2−クレジル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−ペンチル−2−オキサゾリン、2−ヘキシル−2−オキサゾリン、2−ヘプチル−2−オキサゾリン、2−オクチル−2−オキサゾリン、2−ノニル−2−オキサゾリン、2−デシル−2−オキサゾリン、2−シクロペンチル−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−アリル−2−オキサゾリン、2−メタアリル−2−オキサゾリン、2−クロチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェニル−2−オキサゾリンなどが挙げられ、さらには、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−9,9′−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)などが挙げられる。さらには、上記した化合物をモノマー単位として含むポリオキサゾリン化合物など、例えばスチレン・2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合体などが挙げられる。これらのオキサゾリン化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択してポリ乳酸のカルボキシル末端を封鎖すればよい。
末端封鎖剤の添加量は基材となるポリ乳酸の残存カルボキシル末端基濃度に対して50%が反応する量以上を添加することが好ましい。一般に末端封鎖剤はその存在確率の問題から、反応率が低下するため、カルボキシル末端基と反応させて耐加水分解性を向上させるためには、少なくとも50%が反応する量を添加することが好ましい。反応率を考慮した場合、末端封鎖剤の添加量はポリ乳酸のカルボキシル末端基濃度に対して70%が反応する量以上とすることが好ましい。ただし、末端封鎖剤は添加しすぎた場合、紡糸性の悪化やゲルの生成、更には得られる繊維の色調、抗菌性を悪化させることがあるため、末端封鎖剤の添加量はポリ乳酸のカルボキシル末端基濃度に対して200%が反応する量以下とすることが好ましい。
本発明において、カルボキシル末端基濃度は、上記のとおり20当量/t以下、好ましくは2〜20当量/tに抑えられていることが、布帛の加水分解を抑制できる観点から必要である。カルボキシル末端基の繊維中における残存濃度は低いほど加水分解を抑制することが可能であり、一方で抗菌性を考慮すると、2〜10当量/tであれば更に好ましく、2〜7当量/tであると最も好ましい。また、これらの化合物および触媒は、溶融成形時に直接添加しても良いし、予めペレットAおよび/またはペレットB、あるいはそれらペレットの一部に配合し、マスターペレットを作成して添加しても、更には重合時に添加しても良い。
本発明で用いる繊維のカルボキシル末端基濃度は上記した末端封鎖剤の添加量および触媒量によって制御することができる。
また、本発明で用いるポリ乳酸よりなる繊維には、その特性を変化させない範囲で他の改質剤、添加剤や他のポリマーを含有させることもできる。これら改質剤、添加剤や他のポリマーは重合時に添加しても良いし、先に混練したマスターペレットの形態としても良いし、直接本発明のペレットA、ペレットB及び必要に応じて添加される界面活性剤と混合して溶融成形しても良い。改質剤としては、例えば繊維表面の摩擦係数を低下させる目的で、いわゆる滑剤を添加することも好ましく実施される。また、添加剤としては各種無機、有機粒子や染料、顔料といったものから、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤など様々な物質を選択して添加することができる。他のポリマーとしては、例えば柔軟性を付与する目的でポリブチレンサクシネートやポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステルや、成形性や強度、耐摩耗性を向上させる観点からポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、アクリレート系ポリマーなどの群から、適宜選択して添加することができる。
また、本発明の衛生用品用布帛は、JIS−L1902の統一試験法(定量法)による静菌活性値が、抗菌防臭に効果があるといわれる2.2以上であることが好ましい。静菌活性値とは、一定の菌数の検定菌を標準試料および対象試料に植菌し、一定時間培養後の標準試料の生菌数をB(cells/ml)、一定時間培養後の対象試料の生菌数をC(cells/ml)とした場合に(logB−logC)で表される。静菌活性値が2.2以上であると、菌の繁殖を抑えることが充分に可能であり、特にメディカル用途においては雑菌によってもたらされる各種のトラブルを抑制できることから好ましい。このことから静菌活性値は3.0以上であることがより好ましい。上限としては、特に制限はなく、高いほどよいが、実際に得られる布帛の性能を鑑みると、7.0以下であることが好ましい。本発明のメディカル布帛の静菌活性値は、得られた繊維の残存ラクチド量を0.01〜0.3重量%の範囲とすることにより上記範囲内に制御することができる。
更に、本発明の衛生用品用布帛は、カルボキシル末端基濃度が前記した範囲に制御されていることから、耐加水分解性が向上しているため、湿熱滅菌処理によって実用的な強度が損なわれることが無い。このため、主に繊維表面のポリ乳酸が湿熱滅菌処理時に僅かに加水分解を受け、繊維表面のモノマー、オリゴマー量を一定レベルに保つことができるのである。一般に、これらモノマー、オリゴマーは低分子量であるために、通常の洗濯(水またはぬるま湯での洗濯)を行った場合に、容易に繊維から脱落してしまうため、安定した抗菌性を得ることは困難である。本発明は耐加水分解性を向上させ、かつ該布帛に対して湿熱滅菌処理を行うことで、繊維表面の酸性度を一定に保つことが可能となることから、抗菌性を安定して得ることができるのである。
本発明においてステレオコンプレックス率は、以下の評価方法で定義されるものであり、ステレオコンプレックス率は15%以上であれば、成形品の耐熱性を十分に高めることができ、高温環境下、例えば湿熱滅菌処理などにおいても力学特性を保持できることから好ましく、加えてアイロンなどによって布帛の皺を取る際に変形や溶融による穴あきを防止できるため、製品の品質を保つことが可能となる。このことからステレオコンプレックス率は好ましくは20%以上、更に好ましくは35%以上であると、上述した効果を最大限に発揮できるのである。耐熱性を向上させる観点から上限は特になく、高いほど好ましいが、一般に結晶化が進行しすぎた繊維は実用的な強伸度を持たせることが困難であることから、上限としては80%以下であることが好ましい。上記ステレオコンプレックス率は、前述した好ましいペレット混合物を用いて後述する好ましい紡糸方法で紡糸することで達成することができる。ここで、ステレオコンプレックス率は広角X線回折におけるステレオコンプレックス結晶の(100)面に由来するピーク強度(ISC)から下記式により求めることができる。
ステレオコンプレックス率(%)=(ISC/ISC )×100(%)
SC :ステレオコンプレックス100%の結晶を生成しているサンプルのピーク強度(ISC ref)を測定し、そのX線強度をサンプルの結晶化度(χref)で規格化した。
SC =ISC ref/χref
ここで、ステレオコンプレックスの形成度合いを広角X線回折から求めたステレオコンプレックス率により判断するのは以下の理由からである。従来、示差走査熱量計(DSC)の測定を行い、その融解ピーク温度と融解熱量でステレオコンプレックスの形成を判断しているものもあるが、これではサンプルがステレオコンプレックスを形成しているかどうかを必ずしも確認できるわけではない。というのは、DSCはサンプルを融解するまで加熱する一種の破壊試験であり、DSCの昇温過程では一旦サンプルが融解し、それが再結晶化することが起こっており、それが最終的に融解するところが融解ピークとして観測されるものである。すなわち、DSC測定前のバージンサンプルにステレオコンプレックスが形成されていなくてもDSC昇温過程で、160〜170℃付近でPLLA単独および/またはPDLA単独の融解が起こり、それが再結晶化する際にステレオコンプレックスを形成し、最終的に210〜230℃で融解していると考えられる。このため、バージンサンプルのステレオコンプレックス量の定量にはDSCは不向きであり、非破壊試験である広角X線回折を利用することが重要なのである。
更に、本発明の衛生用品用布帛を構成する繊維の製造方法は、従来公知のいかなる溶融紡糸方法を用いても良いが、ステレオコンプレックス結晶を効率的に形成せしめ、また繊維の配向度を十分に高められることから、高速紡糸工程および延伸工程を採用することが好ましい。延伸工程を経ることにより、繊維を十分に配向せしめ、機械的特性を向上させることが可能となるばかりでなく、同時に熱処理を行うことで十分に結晶化が進行した、収縮特性にも優れた繊維とすることができるのである。延伸工程における繊維の予熱温度は90〜150℃、熱セット温度は110〜180℃であれば、効率よくステレオコンプレックス結晶を形成させることが可能となるばかりでなく、延伸を安定して行うことができるのである。また、ここでいう高速紡糸工程とは、具体的に紡糸速度2000〜6000m/分の領域で繊維を製造することを指す。上記紡糸速度範囲にて得られたポリ乳酸未延伸糸は、紡糸線において十分に紡糸張力が与えられ、得られた未延伸糸の配向度が高く、効率的にステレオコンプレックス結晶を形成できる前駆体となるほか、機械的強度にも優れるため、例えば延伸工程での工程通過性などに優れるのである。
紡糸張力Tと紡糸速度Vは、以下の関係式を満足することが好ましい。
7.34×10−8×V−2.05×10−4×V+0.6≦T≦7.34×10−8×V−2.05×10−4×V+1.2
V:紡糸速度(m/分)
T:紡糸張力(cN/dtex)
該範囲で製造された未延伸糸は、溶融紡糸の細化過程において、繊維に十分な紡糸張力が与えられており、これによって分子配向が進んだ未延伸糸を得ることが可能となる。すなわち、分子配向の進んだ未延伸糸は、熱や歪みを与えられる事によってステレオコンプレックス結晶を速やかに形成させることが可能である。ポリ乳酸の結晶形態は、α型、β型が知られているが、ステレオコンプレックス結晶はこのうちβ型の結晶形態に分類されるものである。β型結晶とは、所謂引き延ばされた形で結晶化した結晶形態であるため、溶融紡糸時に繊維に紡糸張力を付与する、すなわち十分に分子配向を進めることで速やかに結晶化できるのである。なお、本式の誘導は多数の実験結果を基に導出したものである。
該未延伸糸を用いて、更に引き延ばし工程、具体的には延伸工程や延伸仮撚工程を施すことは、繊維の配向度および結晶化度を更に高めることが可能となることから、機械的強度や寸法安定性に優れた繊維を得られるばかりでなく、ステレオコンプレックス結晶を十分に形成せしめ、耐熱性に優れた繊維を得ることも可能となるため好ましい。延伸工程は、例えば熱ローラー/熱ローラー間で予熱・延伸・熱セットを行う工程でも良いし、冷ローラー/ホットプレート/熱ローラーにて製造しても良いが、ポリ乳酸はその分子構造から分子鎖間の相互作用が弱く、耐摩耗性に劣る場合が多いため、熱ローラー/熱ローラーにて延伸を行うことがより好ましい。延伸工程における予熱温度(例えば第1熱ローラーもしくはホットプレートの温度)は80〜140℃までの温度で適宜選択できる。一般に配向度が低いポリ乳酸未延伸糸は高い予熱温度を受けると繊維が軟化してしまったり、自発伸長現象が発生してローラー上で糸が弛んでしまうことがある。配向度の低いポリ乳酸繊維の予熱温度は一般に100℃が限界である。しかし、本発明で好適に用いられる高速溶融紡糸工程で得られた未延伸糸は、上記したように十分に配向度の高い繊維が得られるため、このように予熱温度の範囲を広く設定できるのである。また、熱セット温度(例えば第2熱ローラーの温度)は前記予熱温度よりも高く設定することで、得られる繊維の結晶化を促進し、繊維に寸法安定性とステレオコンプレックス結晶形成による耐熱性を付与できる。このことから熱セット温度は予熱温度以上かつ130〜200℃の範囲とすることがより好ましい。また、延伸仮撚工程では、所謂アウトドロー工程やインドロー工程など、従来公知の延伸仮撚工程を適宜選択することが可能であるが、インドロー工程であると製造設備を簡略化できるため、安価に繊維を製造することができるため好ましい。また、延伸仮撚工程における施撚体はピン、ベルトやディスクなどを採用することができるが、ベルトもしくはディスクを採用すると、高速での延伸仮撚が可能となるため、単位時間当たりの生産量を高めることができ、これによって繊維を安価に製造可能となることから好ましい。また、延伸仮撚機のヒーターは接触型、非接触型のどちらを採用することも可能であるが、非接触型であると、延伸工程で説明したように、ポリ乳酸の摩耗を防止できることから好ましい。更に該ヒーターの温度は、仮撚糸の機械的強度や寸法安定性、耐熱性を付与する観点から、100〜200℃の範囲で適宜選択することが良い。該温度範囲であれば、延伸仮撚工程で得られる繊維を、糸切れなく安定性して製造可能であることと、十分に配向結晶化した機械的強度や寸法安定性、耐熱性に優れたものにできる。更に、延伸仮撚糸の寸法安定性を高めるため、延伸仮撚後にリラックス熱処理を加えることも好適である。上記した方法で得られた繊維からなる衛生用品用布帛は、機械的特性や寸法安定性に優れるばかりでなく、ステレオコンプレックス結晶が十分に形成されているため、アイロン耐熱性にも優れるばかりでなく、耐久性にも優れるのである。
本発明の衛生用品用布帛を構成するポリ乳酸よりなる繊維は、110℃、30分間の湿熱処理後において、その強度保持率が60%以上あることが好ましい。110℃、30分間の湿熱処理とは、一般的に行われている滅菌処理に相当する処理であり、実用的な評価方法として採用したものである。強度保持率は、繊維の加水分解を抑制することで高められ、強度保持率を上記範囲とすることで、布帛の耐久性を向上させ、繰り返し使用を可能とするのである。強度保持率は布帛の耐久性の観点から高いほど好ましいが、70%以上の強度保持率があれば、布帛に十分な耐久性を付与できるため好ましい。このことから、強度保持率は80%以上であれば最も好ましい。上限についてはポリエステルの加水分解を100%抑制することは理論上困難であるため、98%以下であることが好ましい。上記範囲を有する衛生製品用布帛は、カルボキシル末端基量を本発明の範囲内に制御することにより得ることができる。
本発明で得られる衛生用品用布帛を形成する繊維は、長繊維であっても短繊維であっても良い。また、本発明の抗菌性を損なわない範囲で、上記ポリ乳酸よりなる繊維を少なくとも一部に含めば天然繊維や他の合成繊維を混合、混紡、混繊してあっても良いが、これらの混合割合は80重量%以下とすることが、抗菌性を保持する点で好ましい。また、衛生用品用布帛にある程度の吸湿性を持たせると、例えば着用した際に蒸れなどによる床ずれなどを抑制できるため好ましい。この吸湿性を持たせる観点から、天然繊維として綿を用いると好適である。
本発明の衛生用品用布帛を構成する布帛形態は、織物、編み物、不織布のいずれを採用することもできる。これら布帛形態を構成せしめる製造方法については、従来公知の織り工程、編み工程および不織布製造工程を採用することができ、特に制限されるものではないが、例えば織物を形成させた場合には三角巾や器具を覆う布帛や白衣などに好適に用いられ、編み物の場合には包帯や患者用の衣料などに好適に用いられる。また、不織布の場合にはマスクなどに好適に用いられる。
本発明の衛生用品用布帛は、湿熱滅菌処理を行う必要のあるメディカル用途に好適に用いることができる。例えば、病院内で医師、看護士、看護助手、その他の作業者が着用する白衣や、入院患者などが着用する衣料品等の病院医療、更にはタオル、ガーゼ、マスクなどの衛生用品に用いることも好適である。特に、繊維製品はその表面積が大きいため、雑菌が繁殖しやすく、臭気や着色といったトラブルが起こりやすいが、本発明の衛生用品用布帛であれば、布帛表面に十分な抗菌作用があるため、これら問題点を効率的に解決できる。特に、免疫不良患者の衣服やタオルといった生活用品に使用することによって、雑菌繁殖による疾患を防止でき、患者に対して衛生的な環境を提供できるのである。
以下に本発明の好ましい実施の態様を示すが、本発明はこれら記載に対して何ら制限を受けるものではない。
A.重量平均分子量および分散度
本発明で使用したまたは製造したポリ乳酸ペレットまたはポリ乳酸繊維の一部を試料として、クロロホルム溶液にTHF(テトロヒト゛ロフラン)を混合し測定溶液とした(試料濃度は0.03重量%)。これを Waters社製ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)Waters2690を用いて25℃で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量および分布曲線から分散度を求めた。なお、3回の測定結果に対する平均値を算出して物性値として用いた。
B.カルボキシル末端基濃度
精秤したサンプル(本発明で使用したまたは製造したポリ乳酸ペレットまたはポリ乳酸繊維)をo−クレゾール(水分5%)に溶解し、この溶液にジクロロメタンを適量添加した後、0.02規定のKOHメタノール溶液にて滴定することにより求めた。この時、乳酸の環状2量体であるラクチド等のオリゴマーが加水分解し、カルボキシル基末端を生じるため、ポリマーのカルボキシル基末端およびモノマー由来のカルボキシル基末端、オリゴマー由来のカルボキシル基末端の全てを合計したカルボキシル基末端濃度が求まる。なお、3回の測定結果に対する平均値を算出して物性値として用いた。
C.残存ラクチド量
試料(実施例で得られたポリ乳酸ポリマーもしくは繊維)1gをジクロロメタン20mlに溶解し、この溶液にアセトン5mlを添加した。さらにシクロヘキサンで定容して析出させ、島津社製GC17Aを用いて液体クロマトグラフにより分析し、絶対検量線にてラクチド量を求めた。
D.安息角
ペレットを円筒形容器(直径200mmφ、高さ40mm)に容積で50%を充填し、 円筒形容器の円心に接続した軸を30rpm一定で回転させた時の、水平面とペレットがなす角度θを安息角とした。
E.粒度平均値
ペレット100個を秤量し、ペレット1個当たりの重量を算出することで粒度平均値とした。
F.ステレオコンプレックス率
理学電機社製4036A2型X線回折装置を用い、以下の条件で赤道線方向の回折強度を測定した。
X線源 : Cu−Kα線(Niフィルター)
出力 : 40kV×20mA
スリット : 2mmφ−1゜−1゜
検出器 : シンチレーションカウンター
計数記録装置 : 理学電機社製RAD−C型
ステップスキャン : 0.05゜ステップ
積算時間 : 2秒
サンプルプレパレーション : 長さ4cm、重量20mgに調整し、コロジオン・エタノール溶液で固めた。
そして、赤道線においてθ=12.0°付近に観測されるステレオコンプレックス結 晶の(100)面に由来するピーク強度(ISC)から下記式によりステレオコンプレックス率を求めた。なお、ISCは、バックグラウンドや非晶による散漫散乱を差し引いた後のX線強度とした。
ステレオコンプレックス率(%)=ISC/ISC ×100(%)
SC :ステレオコンプレックス100%の結晶を生成しているサンプルのピーク強度(ISC ref)を測定し、そのX線強度をサンプルの結晶化度(χref)で規格化した。ここで、ISC はステレオコンプレックス100%品と0%品から算出した値である、30000cpsとした。
G.静菌活性値
統一試験法(繊維製品衛生加工協議会認定の抗菌効果試験方法)により静菌活性値を測定し、抗菌性能を評価した。評価にあたっては、使用菌株として、Staphylococcus aureus ATCC 6538P(黄色葡萄状球菌)を用いた。すなわち、バイアル瓶に入れた減菌済試料0.4g(布帛を裁断したもの)に生菌数を(1± 0.3)×105 に調整した菌液0.2mlをできるだけ均一に接種し、37℃で18時間培養する。ポリオキシエチレンモノラウレート(ICIケミカルズ社製ツイン80)を0.2%添加した生理食塩水20mlを加えて攪拌し、菌を洗い出す。10倍希釈系列を作成してニュートリエント寒天培地と混釈し、37℃で24時間以上培養してコロニー数を数え、生菌数を求めた。静菌活性値の計算としては、標準試料及び試験試料について、上記試験をそれぞれ行い、下式から静菌活性値を求めた。なお、標準試料としては、ナイロン標準白布を用いた。
静菌活性値=log B−log C
ただし、B:標準試料の18時間培養後、回収した菌数
C:試験試料の18時間培養後、回収した菌数。
H.強度保持率
本発明実施例で得られた衛生用品用布帛からポリ乳酸繊維サンプルを分離して、浴比1:100にて染色加工機に投入し、4℃/分の昇温速度で110℃まで到達させ、30分間湿熱処理を行った後、急冷して取り出す。その後、繊維サンプルを50℃の熱風乾燥機にて十分に風乾し、オリエンテック(株)製テンシロン UCT-100でJIS L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、1998年)に従い、初期試料長50mm、引張速度50mm/分にて強伸度を測定した。処理前の強度をT1、処理後の強度をT2として、強度保持率を以下の式で算出した。
強度保持率(%)=(T2−T1)/T1×100
I.均一性
下記実施例にて得られた衛生用品用布帛において、10カ所を無作為にサンプリングし、そのステレオコンプレックス率の変動を測定した。変動が5%未満を◎とし、変動が5%以上10%未満のものを○とし、10%以上15%未満のものを△とし、20%以上変動したものを×として、4段階で評価を行い、△以上を合格とした。
J.アイロン耐熱性
下記実施例にて得られた布帛に対して、中温(表面温度170℃)に設定した家庭用アイロンを10秒間押し当てて、変化のないものを◎、アタリが僅かに見られるものを○、アタリが明確に見られるものを△、アタリが顕著もしくは溶融してしまったものを×として4段階で耐熱性を評価し、○以上を合格とした。
実施例1
純度99.8%のL乳酸を出発物質としてビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)存在させてチッソ雰囲気下180℃で140分間重合を行った。その後、冷却溶媒中でカットして、100℃の真空中で撹拌しながら4時間結晶化処理を行い、重量平均分子量が14万、分散度が1.7、ペレットの安息角が15°、粒度平均値が40mg/個、残存ラクチド量が0.08重量%であるポリL乳酸ペレットを製造した。。同様に、純度99.8%のD乳酸を出発物質としてビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)存在させてチッソ雰囲気下180℃で140分間重合を行った。その後、冷却溶媒中でカットして、100℃の真空中で撹拌しながら4時間処理を行い、重量平均分子量が14万、分散度が1.7、安息角が15°、粒度平均値が40mg/個、残存ラクチド量が0.08重量%であるポリD乳酸ペレットを製造した。また、ポリL乳酸ペレットに対して、末端封鎖剤としてトリグリシジルイソシアヌレート(日産化学製TEPIC−S)をテクノベル社製2軸混練機を用い、混練温度200℃にて2.0重量%混練し、マスターペレットとした。また、界面活性剤としてオレイル酸にポリエチレングリコール(繰り返し単位4)を付加したポリエーテルエステル化合物(重量平均分子量440)を用いて、5:5の重量比で混合したポリL乳酸およびポリD乳酸ペレットに、ペレットA,Bの合計に対して0.1重量%の割合で添加・混合し、混合樹脂ペレットを得た(末端封鎖剤の混合樹脂ペレット全体に対する添加量は1.0重量%)。該混合ペレットを真空乾燥機中で80℃、12時間乾燥した後、溶融紡糸機に投入し、溶融温度200℃、紡糸温度210℃、口金0.3mmφ、紡糸速度5000m/分にて品種100dtex−24フィラメントの未延伸糸を得た。該未延伸糸を紡糸する際の紡糸張力は1.6cN/dtexであり、十分に繊維に紡糸張力を付与できていた。この未延伸糸を予熱温度100℃、熱セット温度130℃にて延伸倍率1.4倍で延伸し、70dtex−24フィラメントの延伸糸を得た。得られた繊維のステレオコンプレックス率は41%であり、またカルボキシル末端基濃度は4当量/tであり、優れた耐熱性と耐加水分解性を示した。更に、上記製造方法にて1週間のロングランテストを行ったが、テスト中に物性値が変動することもなく、品質に優れた繊維を得ることができた。得られた繊維について、残存ラクチド量を測定した。また、この繊維を用いて、経糸40本/cm、緯糸40本/cmの平織物を作成した。静菌活性値を評価したところ4.5と優れた抗菌性を示した。また、該布帛を110℃×30分間の湿熱処理を行って強度保持率を評価したところ、96%の保持率を示し、優れた耐久性を併せ持つ布帛が得られた。
実施例2
末端封鎖剤としてジアリルモノグリシジルイソシアヌレート(四国化成製DAMGIC)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で繊維および布帛を得た。得られた繊維のステレオコンプレックス率は42%であり、またカルボキシル末端基濃度は7当量/tであり、優れた耐熱性と良好な耐加水分解性を示した。更に、静菌活性値は4.2であり、優れた抗菌性を示した。また、110℃×60分間の湿熱処理後の強度保持率は90%であり、優れた耐久性を示す布帛が得られた。
実施例3
末端封鎖剤としてトリグリシジルイソシアヌレート(日産化学製TEPIC−S)を1.0重量%、ポリL乳酸ペレットに混練した以外は、実施例1と同様の方法にて繊維および布帛を得た。得られた繊維のステレオコンプレックス率は41%であり、またカルボキシル末端基濃度は8当量/tであり、優れた耐熱性と良好な耐加水分解性を示した。更に、静菌活性値は4.3であり、優れた抗菌性を示した。また、110℃×60分間の湿熱処理後の強度保持率は86%であり、優れた耐久性を示す布帛が得られた。
比較例1
末端封鎖剤を添加せずに、実施例1と同様の方法で繊維および布帛を得た。得られた繊維のステレオコンプレックス率は43%であり、優れた耐熱性を示していた。しかし、カルボキシル末端基濃度は26当量/tであり、耐加水分解性には劣るものであった。実際に、110℃×30分間の強度保持率を測定したところ35%であり、加水分解によって繊維の強度を保持することが不可能であり、耐久性に劣るものであった。
比較例2
ポリD乳酸を用いず、ポリL乳酸のみを原料として請求項1と同様の方法で繊維および布帛を得た。該繊維はポリD乳酸が含有されていないため、ステレオコンプレックス結晶が形成されておらず、耐熱性に劣っていた。実際に中温に設定したアイロン(表面温度170℃)を布帛に当てると、溶融して穴が空いてしまった。
Figure 0004788171
実施例4
ポリL乳酸とポリD乳酸ペレットのブレンド比を6:4とし、ポリL乳酸に混練する末端封鎖剤の濃度を1.67重量%とした以外は実施例1と同様の方法で繊維および布帛を得た。得られた繊維のステレオコンプレックス率は31%であり、良好な耐熱性を示した。
実施例5
ポリL乳酸とポリD乳酸ペレットのブレンド比を7:3とし、ポリL乳酸に混練する末端封鎖剤の濃度を1.43重量%とした以外は実施例1と同様の方法で繊維および布帛を得た。得られた繊維のステレオコンプレックス率は24%であり、十分な耐熱性を示した。
比較例3
ポリL乳酸とポリD乳酸ペレットのブレンド比を8:2とし、ポリL乳酸に混練する末端封鎖剤の濃度を1.25重量%とした以外は実施例1と同様の方法で繊維および布帛を得た。得られた繊維のステレオコンプレックス率は12%であり、耐熱性に劣っていた。
Figure 0004788171
実施例6
末端封鎖剤としてポリカルボジイミド化合物(日清紡(株)製LA−1)を用いた以外は実施例1と同様の方法で繊維および布帛を得た。製造工程において分解ガスによる臭気があったが、製造することは可能であった。得られた繊維のステレオコンプレックス率は40%、カルボキシル末端基濃度は2当量/tであり、優れた耐熱性と耐加水分解性を示した。
実施例7
末端封鎖剤を1.0重量%、ポリL乳酸ペレットに混練した以外は、実施例7と同様の方法で繊維および布帛を得た。製造工程において分解ガスによる臭気があったが、製造することは可能であった。得られた繊維のステレオコンプレックス率は41%、カルボキシル末端基濃度は6当量/tであり、優れた耐熱性と良好な耐加水分解性を示した。
実施例8
実施例1で得られた未延伸糸を用いて、仮撚温度130℃、加工倍率1.4倍、VR1.35にて村田機械(株)製マッハクリンパーMACH33H+を用いて、仮撚加工糸および該仮撚加工糸を用いて実施例1と同様の方法で布帛を製造した。得られた仮撚糸のステレオコンプレックス率は40%、カルボキシル末端基濃度は4当量/tであり、優れた耐熱性と耐加水分解性を示した。
実施例9
仮撚温度を150℃、加工倍率1.45倍、VR1.35とした以外は実施例9と同様の方法で仮撚加工糸およびそれからなる布帛を得た。得られた仮撚糸のステレオコンプレックス率は43%、カルボキシル末端基濃度は4当量/tであり、優れた耐熱性と耐加水分解性を示した。
比較例4
ポリエチレンテレフタレートを用いて、紡糸温度290℃にて紡糸速度3000m/分で180dtex−24フィラメントの未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を用いて、予熱温度90℃、熱セット温度130℃、延伸倍率1.8倍にてローラー間で延伸を行い、100dtex−24フィラメントの延伸糸を得た。得られた繊維はホモポリ乳酸繊維と比較して優れた耐熱性および耐加水分解性を示したが、静菌活性値は0.5であり、抗菌性に劣るものであった。
Figure 0004788171
実施例10
ポリD乳酸ペレットの粒度平均値を36mg/個とした以外は実施例1と同様の方法で繊維および衛生用品用布帛を得た。得られた衛生用品用布帛はごくわずかにステレオコンプレックス率の変動が見られたものの、良好なものを得ることができた。
実施例11
ポリD乳酸ペレットの粒度平均値を32mg/個とした以外は実施例1と同様の方法で繊維および衛生用品用布帛を得た。得られた衛生用品用布帛は若干のステレオコンプレックス率の変動が見られたものの、実用上問題ない品質の布帛を得ることができた。
Figure 0004788171

Claims (3)

  1. ポリL乳酸とポリD乳酸の混合物よりなり、カルボキシル末端基を含むが、その濃度は20当量/t以下であり、ステレオコンプレックス率が15%以上である繊維を少なくとも一部に含み、静菌活性値が2.2以上であり、かつ湿熱滅菌処理をして用いられることを特徴とする衛生用品用布帛。
  2. 110℃×30分間の加圧湿熱滅菌処理を行った後の繊維強度保持率が60%以上であることを特徴とする請求項1記載の衛生用品用布帛。
  3. 請求項1または2記載の衛生用品用布帛からなる事を特徴とする病院衣料。
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