JP2015044927A - ポリ乳酸樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

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陽介 尾上
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熊澤 貞紀
Sadanori Kumazawa
貞紀 熊澤
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Abstract

【課題】成形性、耐熱性などの特性に優れる樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供する。
【解決手段】(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂100重量部に対し、(B)無機系結晶核剤0.1〜50重量部、(C)脂肪族カルボン酸アミド0.1〜10重量部、(D)ポリアルキレングリコール系可塑剤および/または多価カルボン酸エステル系可塑剤1〜20重量部を配合してなるポリ乳酸樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物およびそれからなる成形品に関する。
ポリ乳酸は実用上溶融成形可能な高分子であり、生分解性の特徴を有することから、使用した後は自然環境中で分解して炭酸ガスや水として放出される生分解性高分子としての開発が進められてきた。一方、近年では、ポリ乳酸自身が二酸化炭素や水を起源とする再生可能資源(バイオマス)を原料としているため、使用後に二酸化炭素が放出されたとしても地球環境中における二酸化炭素は増減しないというカーボンニュートラルの性質が注目され、環境低負荷材料としての利用が期待されている。さらに、ポリ乳酸のモノマーである乳酸が、微生物を利用した発酵法により安価に製造されつつあるため、ポリ乳酸は、石油系プラスチック製の汎用ポリマーの代替素材としても検討されるようになってきた。
このような性質から、ポリ乳酸は溶融成形体として幅広い実用化が試みられているものの、石油系プラスチックに比較すると耐熱性や耐久性が低く、結晶化速度が小さいため生産性にも劣っており、実用化の範囲は大幅に限定されているのが現状である。また、ポリ乳酸成形体に対して、耐熱性向上のために熱処理等の結晶化処理を行う必要があり、生産性が低下する問題があることから、耐熱性に優れるポリ乳酸成形体が望まれている。
このような問題点を解決する手段の一つとして、ポリ乳酸ステレオコンプレックスの利用が注目されている。ポリ乳酸ステレオコンプレックスは、光学活性なポリ−L−乳酸(以下、PLLAと称する)とポリ−D−乳酸(以下、PDLAと称する)を混合することにより形成される。このようなポリ乳酸ステレオコンプレックスは、ポリ乳酸ホモポリマーに比較して、融点が30〜60℃高い200〜230℃に達し、結晶化速度も向上する。そこで、この性質を利用して、高融点かつ高結晶性の繊維、成形品、およびフィルム等への、ポリ乳酸ステレオコンプレックスの適用が検討されている。
また、その他の手段の一つとして、結晶核剤、脂肪族カルボン酸アミド、可塑剤を添
加する方法が従来から検討されている。
特許文献1には、乳酸系ポリマー、アミド結合を持つ脂肪族カルボン酸アミドを含んでなる有機結晶核剤、結晶化促進剤を含有し、透明性、耐熱性および生産性に優れる成形品、シートなどの熱成形品が開示されている。しかしながら、耐熱性についてはある程度の改良効果を有するものの不十分であり、ポリ乳酸ステレオコンプレックスの適用、射出成形性については一切開示はなく、成形性、耐熱性などの特性のいずれにも優れる樹脂組成物を得るための解決手段については全く示唆されていない。
特許文献2には、ポリ乳酸系樹脂、結晶核剤、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、成形性、耐衝撃性および耐熱性などの特性に優れる樹脂組成物が開示されている。しかしながら、成形性および耐熱性についてはある程度の改良効果を有するものの不十分である。
特許文献3には、ポリ乳酸樹脂、アミド化合物およびヒドラジド化合物から選択される少なくとも1種の結晶核剤、少なくとも1種がポリアルキレングリコール系可塑剤である可塑剤2種以上を含有し、透明性および耐熱性に優れる成形品が開示されている。しかしながら、成形性および耐熱性についてはある程度の改良効果を有するものの不十分である。
特許文献4には、結晶核剤として脂肪族カルボン酸アミドを含有し、耐熱性、耐衝撃性、透明性に優れるポリ乳酸系フィルムおよび樹脂組成物が開示されている。しかしながら、耐熱性についてはある程度の改良効果を有するものの不十分であり、無機系結晶核剤、射出成形性については一切開示はなく、成形性、耐熱性などの特性のいずれにも優れる樹脂組成物を得るための解決手段については全く示唆されていない。
特開2010−280910号公報 特開2012−136561号公報 特開2009−155489号公報 特開2009−249443号公報
本発明は、上述した先行技術において困難であった、成形性、耐熱性などの特性に優れる樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することを課題とする。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂100重量部に対し、(B)無機系結晶核剤0.1〜50重量部、(C)脂肪族カルボン酸アミド0.1〜10重量部、(D)ポリアルキレングリコール系可塑剤および/または多価カルボン酸エステル系可塑剤1〜20重量部を配合してなるポリ乳酸樹脂組成物、
(2)さらに(E)ペンタエリスリトール系離型剤を(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.01〜3重量部を配合してなる(1)に記載のポリ乳酸樹脂組成物、
(3)(C)脂肪族カルボン酸アミドが、エチレンビスラウリン酸アミドおよびエチレンビスステアリン酸アミドのいずれかである(1)〜(2)のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物、
(4)(C)脂肪族カルボン酸アミドが、エチレンビスラウリン酸アミドである(1)〜(3)のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物、
(5)(C)脂肪族カルボン酸アミドを(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂100重量部に対し、3.5〜5重量部を配合してなる(1)〜(4)のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物、
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物からなる成形品、
(7)成形品が射出成形品である(6)記載の成形品、および
(8)成形品が食器である(6)または(7)記載の成形品、
である。
本発明によれば、成形性、耐熱性に優れるポリ乳酸樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することができる。
<ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分>
本発明の実施の形態において、ポリ乳酸樹脂とは、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分により構成されるポリ乳酸樹脂である。
ここで、ポリ−L−乳酸成分とは、L−乳酸を主成分とする重合体であり、光学純度が90.0%e.e.以上であることが好ましく、成形性、耐熱性の点で、95.0%e.e.以上であることがより好ましく、99.0%e.e.以上であることがさらに好ましく、99.2%e.e.以上であることがよりさらに好ましく、99.3%e.e.以上であることが特に好ましい。上記光学純度の上限は理論的には100%e.e.であるが、現実的には99.8%e.e.である。
また、ポリ−D−乳酸成分とは、D−乳酸を主成分とする重合体であり、光学純度が90.0%e.e.以上であることが好ましく、成形性、耐熱性の点で、95.0%e.e.以上であることがより好ましく、99.0%e.e.以上であることがさらに好ましく、99.2%e.e.以上であることがよりさらに好ましく、99.3%e.e.以上であることが特に好ましい。上記光学純度の上限は理論的には100%e.e.であるが、現実的には99.8%e.e.である。
本発明の実施の形態において、L−乳酸単位を含有するポリ−L−乳酸成分またはD−乳酸単位を含有するポリ−D−乳酸成分は、得られるポリ乳酸樹脂およびポリ乳酸樹脂組成物の性能を損なわない範囲で、他の成分単位を含んでいてもよい。L−乳酸単位またはD−乳酸単位以外の他の成分単位としては、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、およびラクトンなどが挙げられる。具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、および5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類またはそれらの誘導体と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールにエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを付加した多価アルコール、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類またはそれらの誘導体と、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、および6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類と、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、およびδ−バレロラクトンなどのラクトン類などが挙げられる。
本発明の実施の形態で用いるポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分の分子量は、特に限定されるものではないが、成形性、耐熱性、機械特性の点で、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のうちいずれか一方の重量平均分子量が6万〜30万以下であり、他方の重量平均分子量が1万〜5万以下であることが好ましい。さらに好ましくは、一方の重量平均分子量が10万〜27万、他方の重量平均分子量が2万〜4.5万である。特に好ましくは、一方の重量平均分子量が15万〜24万、他方の重量平均分子量が3万〜4.5万である。ただし、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のうちいずれか一方の重量平均分子量が6万未満または30万を超えており、他方の重量平均分子量が1万未満または5万を超えていてもよい。
ここで、重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって得られる、標準ポリメチルメタクリレート換算値である。
本発明の実施の形態で用いるポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分の製造方法については、開環重合法および直接重合法のいずれの方法も用いることができる。ただし、製造プロセスの簡易性、および原料コストの点で、直接重合法で製造することが好ましい。ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分を同じ製造法で製造してもよく、一方を直接重合法により製造して他方を開環重合法により製造してもよい。
開環重合法または直接重合法にてポリ−L−乳酸成分およびポリ−D−乳酸成分を得る方法としては、例えば、L−乳酸とD−乳酸のいずれか一方を触媒存在下で開環重合または直接重合を行う方法を挙げることができる。
また、直接重合法にてポリ−L−乳酸成分およびポリ−D−乳酸成分を得る場合、高分子量体を得るという観点から、反応系内の水分量は、反応系内のL−乳酸量またはD−乳酸量に対して4mol%以下であることが好ましい。さらに好ましくは2mol%以下であり、0.5mol%以下が特に好ましい。なお、水分量とはカールフィッシャー法を用いて電量滴定法により測定した値である。
直接重合法によりポリ−L−乳酸成分およびポリ−D−乳酸成分を製造する際の重合触媒としては、金属触媒と酸触媒が挙げられる。金属触媒としては、錫化合物、チタン化合物、鉛化合物、亜鉛化合物、コバルト化合物、鉄化合物、リチウム化合物、および希土類化合物などが挙げられる。上記各化合物としては、金属アルコキシド、金属ハロゲン化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酸化物などが好ましい。
本発明の実施の形態において、直接重合法にてポリ−L−乳酸成分やポリ−D−乳酸成分を製造する場合には、生成されるポリ乳酸樹脂の分子量を考慮すると、用いる重合触媒としては、錫化合物、チタン化合物、アンチモン化合物、希土類化合物、および酸触媒が好ましい。また、生成されるポリ乳酸樹脂組成物の融点を考慮すると、用いる重合触媒としては、錫化合物、チタン化合物、およびスルホン酸化合物が好ましい。さらに、生成されるポリ乳酸樹脂組成物の熱安定性を考慮すると、重合触媒として金属触媒を用いる場合には、錫系の有機カルボン酸塩あるいは錫系のハロゲン化合物が好ましく、特に酢酸錫(II)、オクチル酸錫(II)、および塩化錫(II)がより好ましい。重合触媒として酸触媒を用いる場合には、モノおよびジスルホン酸化合物が好ましく、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、プロパンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、および2−アミノエタンスルホン酸がより好ましい。また、重合触媒は1種類でもよく、2種類以上併用してもよいが、重合活性を高める点から考えて、2種類以上を併用することが好ましい。着色を抑制することが可能となるという点で、錫化合物から選択される1種類以上と、スルホン酸化合物から選択される1種類以上とを併用することが好ましい。さらに生産性に優れるという点で、酢酸錫(II)および/またはオクチル酸錫(II)と、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、および2−アミノエタンスルホン酸のいずれか一種類以上との併用がより好ましく、酢酸錫(II)および/またはオクチル酸錫(II)と、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンジスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸のいずれか一種との併用がさらに好ましい。
直接重合法を採用する場合の重合触媒の添加量については特に限定されるものではなく、使用する原料(L−乳酸、D−乳酸など)100重量部に対して0.001重量部以上であることが好ましい。また、使用する原料(L−乳酸、D−乳酸など)100重量部に対して2重量部以下であることが好ましく、1重量部以下がより好ましい。触媒量を0.001重量部以上とすることで、重合時間の短縮効果を高めることができる。また、触媒量を2重量部以下にすることで、得られるポリ−L−乳酸成分またはポリ−D−乳酸成分の分子量を十分に大きくすることが容易になる。また、触媒を2種類以上併用する場合は、合計添加量が上記の範囲内であることが好ましい。特に、錫化合物から選択される1種類以上と、スルホン酸化合物から選択される1種類以上とを併用する場合は、高い重合活性を維持し、かつ着色を抑制することが可能であるという点で、錫化合物とスルホン酸化合物の重量比が1:1〜1:30であることが好ましく、生産性に優れるという点で、1:2〜1:15であることがより好ましい。
直接重合法を採用する場合の重合触媒の添加時期については特に限定されるものではない。ただし、重合触媒として酸触媒を用いる場合には、原料を脱水する前に重合触媒を添加することが、生産性に優れるという点で好ましい。また、重合触媒として金属触媒を用いる場合には、原料を脱水した後に重合触媒を添加することが、重合活性を高める点から考えて好ましい。
分子量増大を目的として、直接重合後にさらに固相重合を行なってもよい。固相重合を行う場合には、固相重合に供するポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の形状は、特に限定されるものではなく、塊状、フィルム、ペレットおよび粉末などいずれでもよい。ただし、固相重合を効率的に進めるという観点から、ペレットまたは粉末を用いることが好ましい。ペレットにする方法としては、直接重合後のポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸をストランド状に押出し、ペレタイズする方法、あるいは直接重合後のポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を水中に押出し、アンダーウォーターカッターを用いてペレット化する方法が挙げられる。また、粉末にする方法としては、ミキサー、ブレンダー、ボールミルおよびハンマーミルなどの粉砕機を用いて粉砕する方法が挙げられる。この固相重合工程を実施する方法については特に限定されるものではなく、回分法でも連続法でもよく、また、反応容器は、撹拌槽型反応器、ミキサー型反応器および塔型反応器などを用いることができ、これらの反応器は2種以上組み合わせて使用することができる。
この固相重合工程を実施する際には、直接重合後のポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸が結晶化していることが好ましい。本発明の実施の形態において、直接重合後のポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸が結晶化状態である場合は、固相重合工程を実施する際にポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の結晶化は必ずしも必要ない。ただし、固相重合工程に先立ってポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の結晶化を行うことで、固相重合の効率をさらに高めることもできる。
結晶化させる方法については特に限定されるものではなく、公知の方法を利用することができる。例えば、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を気相中または液相中において結晶化温度で保持する方法、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の溶融物を延伸または剪断の操作を行いながら冷却固化させる方法などが挙げられる。操作が簡便であるという観点から、気相中または液相中において結晶化温度で保持する方法が好ましい。
ここでいう結晶化温度とは、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の、ガラス転移温度より高く融点よりも低い温度範囲であれば特に限定されるものではない。ただし、上記結晶化温度は、70〜90℃の範囲内であることがより好ましい。
ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸の結晶化は、真空下または乾燥窒素などの不活性気体気流下にて行うことが好ましい。
ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を結晶化させる際の時間については、特に限定されるものではない。ただし、十分に結晶化させるためには3時間以上であることが好ましく、5時間以上であることがさらに好ましい。
直接重合後に固相重合工程を実施する際の温度条件は、ポリ−L−乳酸あるいはポリ−D−乳酸の融点以下の温度とすればよい。具体的には、100℃以上が好ましく、固相重合を効率的に進めるという観点から110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが最も好ましい。また、170℃以下が好ましく、固相重合を効率的に進めるという観点から165℃以下であることがより好ましく、160℃以下であることが最も好ましい。
また、固相重合の反応時間を短縮するために、反応の進行とともに温度を段階的に上げるかあるいは連続的に上げることが好ましい。固相重合時に段階的に昇温するときの温度条件としては、第一段階として120〜130℃で1〜15時間、第二段階として135〜145℃で1〜15時間、第三段階として150〜170℃で10〜30時間と昇温するのが好ましく、さらには第一段階として120〜130℃で2〜12時間、第二段階として135〜145℃で2〜12時間、第三段階として150〜170℃で10〜25時間と昇温するのがより好ましい。固相重合時に連続的に昇温するときの温度条件としては、130℃〜150℃の初期温度より3℃/分の速度で150〜170℃まで連続的に昇温するのが好ましい。また、段階的な昇温と連続的な昇温を組み合わせることも固相重合を効率的に進行する観点から好ましい。
また、この固相重合工程を実施する際には、真空下または乾燥窒素などの不活性気体気流下で行うことが好ましい。真空下で固相重合を行う際の真空度は、150Pa以下であることが好ましく、75Pa以下であることがさらに好ましく、20Pa以下であることが特に好ましい。不活性気体気流下で固相重合を行う際の流量は、混合物1gに対して、0.1ml/分以上とすることが好ましく、0.5ml/分以上とすることがさらに好ましく、1.0ml/分以上とすることが特に好ましい。また、2000ml/分以下とすることが好ましく、1000ml/分以下とすることがさらに好ましく、500ml/分以下とすることが特に好ましい。
また、開環重合法を利用してポリ−L−乳酸成分またはポリ−D−乳酸成分を製造する際の重合触媒としては、直接重合法と同様の金属触媒と酸触媒が挙げられる。
本発明の実施の形態において、開環重合法にてポリ−L−乳酸成分やポリ−D−乳酸成分を製造する場合には、生成されるポリ乳酸樹脂の分子量を考慮すると、重合触媒としては金属触媒が好ましく、中でも錫化合物、チタン化合物、アンチモン化合物、および希土類化合物がより好ましい。生成されるポリ乳酸樹脂組成物の融点を考慮すると、錫化合物およびチタン化合物がより好ましい。生成されるポリ乳酸樹脂組成物の熱安定性を考慮すると、重合触媒としては錫系の有機カルボン酸塩あるいは錫系のハロゲン化合物が好ましく、特に酢酸錫(II)、オクチル酸錫(II)、および塩化錫(II)がより好ましい。
開環重合法を採用する場合の重合触媒の添加量については特に限定されるものではなく、使用する原料(L−ラクチド、D−ラクチドなど)100重量部に対して0.001重量部以上が好ましく、0.001重量部以上がより好ましい。また、使用する原料(L−ラクチド、D−ラクチドなど)100重量部に対して2重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。触媒量を0.001重量部以上とすることで、重合時間の短縮効果を高めることができる。また、触媒量を2重量部以下とすることで、得られるポリ−L−乳酸成分またはポリ−D−乳酸成分の分子量を十分に大きくすることが容易になる。また、触媒を2種類以上併用する場合は、合計添加量が上記の範囲内であることが好ましい。
開環重合法を採用する場合の重合触媒の添加時期については特に限定されるものではないが、ラクチドを加熱溶解後に触媒を添加することが、触媒を系内に均一分散させて、重合活性を高める点で好ましい。
ポリ−L−乳酸成分およびポリ−D−乳酸成分の融点は150℃以上が好ましく、成形性、耐熱性の点で、170℃以上がより好ましく、180℃以上がさらに好ましく、182℃以上がよりさらに好ましく、184℃以上が特に好ましい。
<(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂>
本発明の実施の形態のポリ乳酸樹脂は、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなる。
本発明の実施の形態のポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10万以上であることが好ましく、成形性、耐熱性、機械特性の点で、12万以上であることがさらに好ましく、14万以上であることが特に好ましい。また、上記重量平均分子量(Mw)は、30万以下であることが好ましく、成形性、耐熱性、機械特性の点で、28万以下であることがさらに好ましく、25万以下であることが特に好ましい。また、ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である分散度は、1.5以上であることが好ましく、成形性、耐熱性、機械特性の点で、1.8以上であることがさらに好ましく、2.0以上であることが特に好ましい。また、上記分散度は、3.0以下であることが好ましく、成形性、耐熱性、機械特性の点で、2.7以下であることがさらに好ましく、2.4以下であることが特に好ましい。なお、重量平均分子量および分散度とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって得られる、標準ポリメチルメタクリレート換算値である。
本発明の実施の形態において、ポリ乳酸樹脂を構成するポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分の合計重量に対するポリ−L−乳酸成分の重量の比は、20〜80重量%であることが好ましい。特に、ステレオコンプレックスの形成のし易さという観点から、上記合計重量に対するポリ−L−乳酸成分の重量の比が偏っていることが望ましい。具体的には、ポリ−L−乳酸成分の重量とポリ−D−乳酸成分の重量とが異なり、両者の差がより大きいことが望ましい。そのため、上記合計重量に対するポリ−L−乳酸成分の重量の比は、60〜80重量%または20〜40重量%であることがさらに好ましく、65〜75重量%または25〜35重量%であることが最も好ましい。ポリ乳酸樹脂を構成するポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分の合計重量に対するポリ−L−乳酸成分の重量の比が50重量%以外の場合は、重量平均分子量の大きい方のポリ−L−乳酸成分またはポリ−D−乳酸成分を多く配合することが好ましい。
本発明の実施の形態のポリ乳酸樹脂は、ステレオコンプレックス形成率が高く、耐熱性および衝撃強度に優れる点で、ポリ−L−乳酸成分からなるセグメントとポリ−D−乳酸成分からなるセグメントから構成されるポリ乳酸ブロック共重合体であることが好ましい。ただし、本発明の実施の形態のポリ乳酸樹脂は、ブロック共重合体を形成させるための特別な重合工程を行うことなく、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分とを加熱溶融混合して製造してもよい。
本発明の実施の形態のポリ乳酸樹脂は、ステレオコンプレックス結晶融点であるTmscが210℃以上が好ましく、成形性、耐熱性の点で、215℃以上であることがより好ましく、218℃以上がさらに好ましく、220℃以上がよりさらに好ましく、222℃以上が特に好ましい。
本発明の実施の形態のポリ乳酸樹脂は、ステレオコンプレックス結晶の融解熱量であるΔHmscが30J/g以上が好ましく、成形性、耐熱性の点で、40J/g以上であることがより好ましく、45J/gであることがさらに好ましく、50J/g以上であることが特に好ましい。また、上記ΔHmscの上限は理論的には142J/gであるが、現実的には100J/gである。
ΔHmscは、DSC測定においてポリ乳酸樹脂組成物を250℃まで昇温した際の、190℃以上240℃未満に現れる結晶融解熱量の値を示す。
本発明の実施の形態のポリ乳酸樹脂は、ポリ−L−乳酸成分および/またはポリ−D−乳酸成分の単独結晶由来のホモ結晶が存在することが好ましく、ホモ結晶の融点は160℃以上が好ましく、成形性、耐熱性の点で、175℃以上がより好ましく、177℃以上がさらに好ましく、180℃以上が特に好ましい。
本発明の実施の形態のポリ乳酸樹脂は、ステレオコンプレックス結晶およびポリ−L−乳酸成分および/またはポリ−D−乳酸成分由来のホモ結晶が存在することが好ましく、下記式(1)から計算されるステレオコンプレックス形成率(Sc)が70〜90%であることが好ましく、成形性、耐熱性の点で、75〜90%であることがより好ましく、80〜90%であることがさらに好ましい。
Sc=ΔHmsc/(ΔHmh+ΔHmsc)×100 (1)
ここで、ΔHmhは、150℃以上190℃未満に現れるポリ−L−乳酸単独結晶の結晶融解熱量およびポリ−D−乳酸単独結晶の結晶融解熱量の合計を示す。また、ΔHmscは、190℃以上240℃未満に現れるステレオコンプレックス結晶の結晶融解熱量を示す。ΔHmscおよびΔHmhは、DSC測定においてポリ乳酸樹脂を250℃まで昇温した際の値を示す。
本発明の実施の形態のポリ乳酸樹脂は、DSC測定において、ポリ乳酸樹脂を250℃まで昇温して3分間恒温状態にして溶融状態とした後、冷却速度20℃/分で降温した際の降温結晶化熱量(ΔHc)が、20J/g以上であることが好ましい。上記ΔHcは、成形性、耐熱性の点で、25J/g以上であることがより好ましく、30J/g以上であることがさらに好ましい。ΔHcを20J/g以上とすることで、結晶化速度を速めて成形時間を短縮し、成形加工性を向上させることができる。また、上記ΔHcの上限は理論的には142J/gであるが、現実的には100J/gである。
本発明の実施の形態のポリ乳酸樹脂は、ポリ乳酸樹脂100重量部に含まれる、L−乳酸および/またはD−乳酸からなる直鎖状オリゴマー量が0.3重量部以下であることが好ましい。直鎖状オリゴマー量を0.3重量部以下にすることで、耐衝撃性に優れ、成形品としたときの成形品外観に優れるポリ乳酸樹脂を得ることができる。成形品外観点で、直鎖状オリゴマー量は0.25重量部以下であることがより好ましく、成形品の機械特性の点で、0.2重量部以下であることがさらに好ましい。なお、本発明の実施の形態のポリ乳酸樹脂は、通常は、ポリ乳酸樹脂100重量部中に、0.01重量部以上の直鎖状オリゴマーを含有する。
ここで、直鎖状オリゴマーとは、ポリ乳酸樹脂をクロロホルム/o−クレゾール=1/2重量比の混合溶液に溶解し、得られたポリマー溶液をメタノールにて再沈殿処理後、孔径1ミクロンのメンブレンフィルター濾過によりポリマーを除去した溶液に溶解する、二量体以上の直鎖状低分子量体を示す。本発明の実施の形態における二量体以上の直鎖状低分子量体(直鎖状オリゴマー)の含有量は、Macromolecules,Vol.29,No.10,1996に記載の方法で測定した値である。具体的には、直鎖状オリゴマーは重クロロホルム溶液中、15℃にて測定した1H−NMRスペクトルにおいて、化学シフト1.26〜1.55ppmの範囲に観測されるピークの積分値より定量することができる。
<(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂の製造方法>
本発明の実施の形態のポリ乳酸樹脂を製造する場合には、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分を溶融混練する工程の後、真空下または窒素フロー下にて70〜90℃で結晶化する工程を行い、次いで真空下または窒素フロー下にて130〜150℃で脱揮する工程を行うことが好ましい。また、ポリ乳酸樹脂がポリ−L−乳酸成分からなるセグメントとポリ−D−乳酸成分からなるセグメントから構成されるポリ乳酸ブロック共重合体である場合には、上記溶融混練する工程の後、真空下または窒素フロー下にて70〜90℃で結晶化する工程を行い、次いで真空下または窒素フロー下にて130〜150℃で脱揮する工程を行い、次いで150℃を超え175℃以下で固相重合する工程を行えばよい。
ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分を溶融混練する方法としては特に限定されるものではない。例えば、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分のうち、融点の高い方の成分の融解終了温度以上で溶融混練する方法、溶媒中で混合した後に溶媒を除く方法、あるいは溶融状態のポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分の少なくとも一方を、あらかじめ融点−50℃〜融点+20℃の温度範囲内で溶融機内にてせん断を付与しながら滞留させた後、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなる混合物の結晶が残存するように混合する方法などが挙げられる。これらの中でも、生産性の観点から、溶融混練する方法が好ましい。
融解終了温度以上で溶融混練する方法としては、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分を回分法もしくは連続法で混合する方法が挙げられ、いずれの方法で混合してもよい。混練装置としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、プラストミル、ニーダー、および減圧装置付き撹拌槽型反応機が挙げられ、均一かつ十分に混練できるという観点から、一軸押出機あるいは二軸押出機を用いることが好ましい。
融解終了温度以上で溶融混練する際の温度条件については、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分のうち、融点の高い方の成分の融解終了温度以上で行うことが好ましく、200℃以上がより好ましく、205℃以上がさらに好ましく、210℃以上が特に好ましい。また、250℃以下が好ましく、245℃以下がさらに好ましく、240℃以下が特に好ましい。溶融混練時の温度を250℃以下にすることで、混合物の分子量低下を抑制することができ、200℃以上にすることで、混合物の流動性の低下を抑制することができる。
また、溶融混練する時間条件については、0.1分以上が好ましく、0.3分以上がより好ましく、0.5分以上が特に好ましい。また、上記時間条件は、10分以下が好ましく、5分以下がさらに好ましく、3分以下が特に好ましい。溶融混練する時間を0.1分以上とすることで、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合の均一性を高めることができる。また、溶融混練する時間を10分以下とすることで、混合による熱分解を抑制することができる。
溶融混練の際の圧力条件については特に限定されるものではなく、大気雰囲気下または窒素などの不活性気体雰囲気下のいずれの条件でもよい。
押出機を用いた混練において、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分の供給方法は特に限定されず、樹脂供給口からポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分を一括して供給する方法や、必要に応じてサイド供給口を利用し、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分を樹脂供給口とサイド供給口にそれぞれ分けて供給する方法が可能である。また、混練機へのポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分の供給は、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分の製造工程から直接溶融状態で行うことも可能である。
押出機におけるスクリューエレメントは、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分とを均一に混合してステレオコンプレックス形成できるように、混合部にニーディングエレメントを備えるのが好ましい。
ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分の溶融混練後の形状は、特に限定されるものではなく、塊状、フィルム、ペレットおよび粉末などいずれでもよい。ただし、各工程を効率的に進めるという観点から、ペレットまたは粉末にすることが好ましい。ペレットにする方法としては、ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分の混合物をストランド状に押出し、ペレタイズする方法や、上記混合物を水中に押出し、アンダーウォーターカッターを用いてペレット化する方法が挙げられる。また、粉末にする方法としては、ミキサー、ブレンダー、ボールミルおよびハンマーミルなどの粉砕機を用いて粉砕する方法が挙げられる。
ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分を溶融混練した後の結晶化工程の温度は、70〜90℃とすることが好ましい。結晶化温度を70℃以上とすることで、結晶化を十分に進行させ、後の脱揮工程にてペレットまたは粉末同士が融着することを抑制できる。また、結晶化温度を90℃以下とすることで、ペレットまたは粉末同士の融着を抑制し、熱分解による分子量の低下および副生成物の生成を抑えることができる。
結晶化工程の時間については3時間以上であることが好ましく、後の脱揮工程にてペレットまたは粉末同士の融着抑制の点から5時間以上がより好ましい。結晶化させる時間を3時間以上とすることで、結晶化を十分に進行させて、後の脱揮工程にてペレットまたは粉末同士の融着を抑制することができる。
この結晶化工程を実施する際には、真空下または乾燥窒素などの不活性気体気流下で行うことが好ましい。真空下で結晶化を行う際の真空度は、150Pa以下であることが好ましく、75Pa以下であることがさらに好ましく、20Pa以下であることが特に好ましい。不活性気体気流下で結晶化を行う際の流量は、混合物1gに対して0.1ml/分以上が好ましく、0.5ml/分以上がさらに好ましく、1.0ml/分以上が特に好ましい。また、上記流量は、混合物1gに対して2000ml/分以下が好ましく、1000ml/分以下がさらに好ましく、500ml/分以下が特に好ましい。
また、結晶化工程後の脱揮工程の温度は130℃以上が好ましく、副生成物の除去による酸価低減の点から、135℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。また、上記脱揮工程の温度は、副生成物の除去による酸価低減の点から、150℃以下であることが好ましい。
脱揮工程の時間については3時間以上が好ましく、副生成物の除去による酸価低減の点から、4時間以上であることがより好ましく、5時間以上であることがさらに好ましい。
この脱揮工程は、真空下または乾燥窒素などの不活性気体気流下で行うことが好ましい。真空下で脱揮を行う際の真空度は、150Pa以下であることが好ましく、75Pa以下であることがさらに好ましく、20Pa以下であることが特に好ましい。不活性気体気流下で脱揮を行う際の流量は、混合物1gに対して0.1ml/分以上が好ましく、0.5ml/分以上がさらに好ましく、1.0ml/分以上が特に好ましい。また、上記流量は、混合物1gに対して2000ml/分以下が好ましく、1000ml/分以下がさらに好ましく、500ml/分以下が特に好ましい。
本発明の実施の形態のポリ乳酸樹脂の製造方法では、脱揮工程の後、さらに固相重合工程を実施することで、ポリ−L−乳酸成分からなるセグメントとポリ−D−乳酸成分からなるセグメントから構成されるポリ乳酸ブロック共重合体の製造を行ってもよい。固相重合工程を実施する際の温度条件としては、130℃を超え175℃以下であることが好ましい。さらに固相重合を効率的に進めるという観点から、130℃を超え170℃以下であることがより好ましく、さらには130℃を超え165℃以下であることが最も好ましい。
固相重合工程では、固相重合の反応時間を短縮するために、反応の進行とともに温度を段階的に上げるかあるいは連続的に上げることが好ましい。固相重合時に段階的に昇温するときの温度条件としては、第一段階として130℃を超え155℃以下で1〜15時間、第二段階として160〜175℃で1〜15時間と昇温するのが好ましく、さらには第一段階として130℃を超え155℃以下で2〜12時間、第二段階として160〜175℃で2〜12時間と昇温するのがより好ましい。固相重合時に連続的に昇温するときの温度条件としては、130℃を超え155℃以下の初期温度より3℃/分の速度で160〜175℃まで連続的に昇温するのが好ましい。また、段階的な昇温と連続的な昇温を組み合わせることも固相重合を効率的に進行する観点から好ましい。
この固相重合工程を実施する際には、真空下または乾燥窒素などの不活性気体気流下で行うことが好ましい。真空下で固相重合を行う際の真空度は、150Pa以下であることが好ましく、75Pa以下であることがさらに好ましく、20Pa以下であることが特に好ましい。不活性気体気流下で固相重合を行う際の流量は、混合物1gに対して0.1ml/分以上が好ましく、0.5ml/分以上がさらに好ましく、1.0ml/分以上が特に好ましい。また、上記流量は、混合物1gに対して2000ml/分以下が好ましく、1000ml/分以下がさらに好ましく、500ml/分以下が特に好ましい。
<(B)無機系結晶核剤>
本発明の実施の形態において、(B)無機系結晶核剤の具体例としては、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、マイカ、合成マイカ、クレイ、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などが挙げられ、耐熱性を向上させる効果が大きいという点で、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、マイカおよび合成マイカが好ましく、成形性、耐熱性の点で、タルクがより好ましい。これらは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。これらの無機系結晶核剤は、樹脂組成物中での分散性を向上させるために、有機物で修飾されていることが好ましい。
本発明の実施の形態において、原料として用いられる(B)無機系結晶核剤のD50平均粒子径は、0.001〜20μmであることが好ましく、成形性、耐熱性の点で、0.01〜10μmであることがさらに好ましく、0.1〜5μmであることが特に好ましい。
本発明の実施の形態において、樹脂組成物中での(B)無機系結晶核剤の分散性を向上させることが、成形性、耐熱性の点で好ましく、原料として用いられる無機系結晶核剤のD50平均粒子径が小さいほど、樹脂組成物中での無機系結晶核剤の分散性を向上させることができ、成形性、耐熱性の点でさらに好ましい。
本発明の実施の形態において、(B)無機系結晶核剤の配合量は、(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.1〜50重量部であり、成形性、耐熱性の点で、1〜30重量部がさらに好ましく、5〜20重量部が特に好ましい。
<(C)脂肪族カルボン酸アミド>
本発明の実施の形態において、(C)脂肪族カルボン酸アミドの具体例としては、カプリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド等の炭素数8〜30の脂肪族カルボン酸モノアミドや、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、へキサメチレンビスステアリン酸アミド、へキサメチレンビスベヘニン酸アミド、へキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等の脂肪族カルボン酸ビスアミドなどが挙げられる。これらは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の実施の形態において、(C)脂肪族カルボン酸アミドとしては、成形性、耐熱性の点で、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミドが好ましく、成形性、耐熱性および耐ブリードアウト性の点で、エチレンビスラウリン酸アミドが特に好ましい。
本発明の実施の形態において、(C)脂肪族カルボン酸アミドの配合量は、(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.1〜10重量部であり、成形性、耐熱性および耐ブリードアウト性の点で、2〜7重量部がより好ましく、3.5〜5重量部が特に好ましい。
本発明の実施の形態において、(C)脂肪族カルボン酸アミドをポリ乳酸ホモポリマーに配合することでも、成形性、耐熱性が向上するが、特に、(C)脂肪族カルボン酸アミドを(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂に配合することで、著しく成形性、耐熱性が向上する。
<(D)可塑剤>
本発明の実施の形態において、可塑剤の具体例としては、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ヒマシ油系可塑剤などを挙げることができ、成形性、耐熱性の点で、ポリアルキレングリコール系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤が特に好ましい。これらは、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエステル系可塑剤としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルやポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルなどを挙げることができる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸もしくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノモンタネートまたはグリセリントリアセテートなどを挙げることができ、ポリオキシエチレングリセリントリアセテートなどのようにエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド単位を付加されているものでもよい。
多価カルボン酸系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジルまたはフタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチルまたはトリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル、コハク酸イソデシル、コハク酸トリエチレングリコールモノメチルエーテルエステルまたはコハク酸ベンジルメチルジグリコールエステルなどのコハク酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシルエステル、アジピン酸ジエチレングリコールモノメチルエーテルエステル、アジピン酸メチルジグリコールブチルジグリコールエステル、アジピン酸ベンジルメチルジグリコールエステル、アジピン酸またはアジピン酸ベンジルブチルジグリコールエステルなどのアジピン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチルまたはセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸エステルなどを挙げることができ、成形性、耐熱性の点で、アジピン酸ジエチレングリコールモノメチルエーテルエステルが好ましい。
ポリアルキレングリコール系可塑剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロックおよび/またはランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールまたはそれらの末端エポキシ変性化合物または末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などを挙げることができ、成形性、耐熱性の点で、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロックおよび/またはランダム共重合体が好ましい。
エポキシ系可塑剤の具体例としては、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどを指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も使用することができる。
ヒマシ油系可塑剤の具体例としては、ヒマシ油およびその誘導体であれば、いずれでもよく、例えば、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヒマシ硬化油、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、リシノール酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、セバシン酸、ウンデシレン酸、ヘプチル酸、ヒマシ油脂肪酸縮合物、ヒマシ油脂肪酸エステル、メチルリシノレート、エチルリシノレート、イソプロピルリシノレート、ブチルリシノレート、エチレングリコールモノリシレート、プロピレングリコールモノリシレート、トリメチロールプロパンモノリシレート、ソルビタンモノリシレート、ヒマシ油脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ヒマシ油系ポリオール、ヒマシ油系トルオールまたはヒマシ油系ジオールなどを挙げることができる。
また、その他の可塑剤としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレン
グリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ポリオ
キシエチレンジアセテート、ポリオキシエチレンジ(2−エチルヘキサノエート)、ポリ
オキシプロピレンモノラウレート、ポリオキシプロピレンモノステアレート、ポリオキシ
エチレンジベンゾエート、ポリオキシプロピレンジベンゾエートなどのポリオールエステ
ル、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、
アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸エトキシカルボニルメチルジブチル、クエン酸ジ
−2−エチルヘキシル、アセチルリシノール酸メチルまたはアセチルリシノール酸ブチル
などのオキシ酸エステル、大豆油、大豆油脂肪酸、大豆油脂肪酸エステル、エポキシ化大
豆油、菜種油、菜種油脂肪酸、菜種油脂肪酸エステル、エポキシ化菜種油、亜麻仁油、亜
麻仁油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸エステル、エポキシ化亜麻仁油、ヤシ油またはヤシ油脂肪
酸などの植物油系化合物、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリアクリル酸エステ
ル、シリコーンオイルまたはパラフィン類などを挙げることができる。
本発明の実施の形態において、可塑剤の配合量は、(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂100重量部に対し、1〜20重量部であり、成形性、耐熱性および耐ブリードアウト性の点で、2〜10重量部がより好ましく、2〜7重量部が特に好ましい。
<(E)離型剤>
本発明の実施の形態において、離型剤の具体例としては、脂肪族カルボン酸エステル系離型剤、ポリオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、ポリオルガノシロキサン、金属石鹸、パラフィンワックス、蜜蝋などが挙げられ、成形性、耐熱性、離型性の点で、脂肪族カルボン酸エステル系離型剤が好ましい。
脂肪族カルボン酸エステル系離型剤における脂肪族カルボン酸エステルとは、多価アルコールとカルボン酸の化合物である。
多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ジペンタエリスリトール、アジピン酸ペンタエリスリトール縮合物、アジピン酸ジペンタエリスリトール縮合物などが挙げられ、成形性の点で、エチレングリコール、ペンタエリスリトールが好ましく、ペンタエリスリトールが特に好ましい。
カルボン酸の具体例としては、デカン酸(カプリン酸)、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、アラギジン酸、ベヘン酸、イコサン酸、ドコサン酸、オクタコサン酸(モンタン酸)およびメリシン酸などの飽和脂肪族モノカルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族モノカルボン酸、並びに安息香酸、イソプロピル安息香酸、トリメチル安息香酸などの芳香族モノカルボン酸を挙げることができ、飽和脂肪族モノカルボン酸が好ましく、ステアリン酸、モンタン酸がより好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。
脂肪族カルボン酸エステル系離型剤としては、エチレングリコールジモンタネート、エチレングリコールジステアレートなどのエチレングリコール系離型剤、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールモノモンタネート、ペンタエリスリトールジモンタネート、ペンタエリスリトールトリモンタネート、ペンタエリスリトールテトラモンタネート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、アジピン酸ペンタエリスリトールモノステアレートなどのペンタエリスリトール系離型剤が挙げられ、成形性の点で、ペンタエリスリトール系離型剤が特に好ましい。なかでも、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく、ペンタエリスリトールテトラステアレートが特に好ましい。
本発明の実施の形態において、離型剤の配合量は、(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.01〜3重量部であり、成形性、耐熱性の点で、0.1〜2重量部がより好ましく、0.2〜1重量部が特に好ましい。
<その他の添加剤>
本発明において、本発明の目的を損なわない範囲で、通常の添加剤、例えば、無機結晶核剤とは異なる充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、セリサイト、ベントナイト、ドロマイト、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトまたは白土など)、触媒失活剤(ヒンダードフェノール系化合物、チオエーテル系化合物、ビタミン系化合物、トリアゾール系化合物、多価アミン系化合物、ヒドラジン誘導体系化合物、リン系化合物など)、紫外線吸収剤(レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、熱安定剤(ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、滑剤、染料(ニグロシンなど)および顔料(硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、着色防止剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩など)、難燃剤(赤燐、燐酸エステル、ブロム化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミンおよびシアヌール酸またはその塩、シリコン化合物など)、導電剤あるいは着色剤(カーボンブラックなど)、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂など)、帯電防止剤などの1種または2種以上を添加することができる。
<製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法は、本発明で規定する要件を満たす限り、特に限定され
るものではないが、例えば、(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂、(B)無機系結晶核剤、(C)脂肪族カルボン酸アミド、(D)ポリアルキレングリコール系可塑剤および/または多価カルボン酸エステル系可塑剤、必要に応じて(E)ペンタエリスリトール系離型剤およびその他の添加剤を、単軸または二軸押出機などを用いて、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を揮発させ除去する方法などが好ましく用いられる。
単軸または二軸押出機などを用いて溶融混練する方法としては、好ましい相構造を有する樹脂組成物を得るために、例えば、(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂、(B)無機系結晶核剤および(C)脂肪族カルボン酸アミド、(D)ポリアルキレングリコール系可塑剤および/または多価カルボン酸エステル系可塑剤、必要に応じて(E)ペンタエリスリトール系離型剤およびその他添加剤を一括で原料供給口から投入して溶融混練する方法、メインフィーダーから(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂、(B)無機系結晶核剤および(C)脂肪族カルボン酸アミド、(D)ポリアルキレングリコール系可塑剤および/または多価カルボン酸エステル系可塑剤および必要に応じて(E)ペンタエリスリトール系離型剤を供給し、必要に応じてその他の添加剤を押出機の途中に設置したサイドフィーダーから供給する方法などが挙げられる。
樹脂組成物を製造する際の、溶融混練温度は、170〜250℃が好ましく、175℃〜245℃がより好ましく、180〜240℃がさらに好ましく、185〜235℃が特に好ましい。
<成形品および用途>
本発明の樹脂組成物は、公知の各種成形法により、成形品とすることができる。成形法
としては、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形などが挙げられ、射出成形が好ましい。
本発明の樹脂組成物からなる成形品としては、射出成形品、押出成形品、プレス成形品およびブロー成形品など各種成形品、シート、フィルム、繊維などに加工することにより有用に利用することができ、特に射出成形品が好ましい。
成形法として、射出成形を選択する場合は、金型温度としては、30〜120℃が好ましく、成形性、耐熱性の点で、50〜100℃がより好ましく、70〜99℃がさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物からなる成形品の用途としては、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、土木部材、農業資材、および日用品などが挙げられる。
自動車部品としては、具体的には、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジング、スペアタイヤカバー、ドアトリムなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクターなどが挙げられる。
電気・電子部品としては、具体的には、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナ、さらに、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品、また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、モーターケース、スイッチ、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品などが挙げられる。
土木建築部材としては、具体的には、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋などの水産関連部材、植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材などが挙げられる。
農業資材としては、具体的には、マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、植生保護用不織布、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農業用塩ビフィルムの止め具、緩効性肥料、防根シート、園芸ネット、防虫ネット、幼齢木ネット、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢、獣害防止ネット、誘因紐、防風網などが挙げられる。
医療用品としては、具体的には、紙おむつ、生理用品包材、綿棒、おしぼり、便座ふきなどの衛生用品、医療用不織布(縫合部補強材、癒着防止膜、人工器官補修材)、創傷被覆材、キズテープ包帯、貼符材基布、手術用縫合糸、骨折補強材、医療用フィルムなどが挙げられる。
日用品としては、具体的には、皿、椀、鉢、箸、ナイフ、フォーク、スプーンなどの食器類、カレンダー、文具、衣料、食品などの包装用フィルム、トレー、ブリスター、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類、化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品などのラッピングフィルムなどの容器・包装、天然繊維複合、ポロシャツ、Tシャツ、インナー、ユニホーム、セーター、靴下、ネクタイなどの各種衣料、カーテン、イス貼り地、カーペット、テーブルクロス、布団地、壁紙、ふろしきなどのインテリア用品、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、紙、皮革、不織布などのホットメルトバインダー、磁性体、硫化亜鉛、電極材料など粉体のバインダー、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレー、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、各種ネット、歯ブラシ、文房具、水切りネット、ボディタオル、ハンドタオル、お茶パック、排水溝フィルター、クリアファイル、コート剤、接着剤、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどが挙げられる。特に、日用品としては、食器類として有用である。
以下実施例により本発明を説明する。
本発明で用いた測定方法および判定方法を以下に示す。
(1)ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の光学純度
ポリ−L−乳酸成分またはポリ−D−乳酸成分50mgをサンプル管に量り取り、 超純水2mL、1MのNaOH溶液(溶媒は体積比で水:メタノール=1:4)2mLを添加し、70℃で加熱攪拌して還流を行い、完全に溶解した時点で加熱を終了した。次に、1NのHCl水溶液で中和し、2mMの硫酸銅水溶液で5倍希釈し、以下の条件にてHPLC法により測定を行い、D−乳酸の濃度を検出した。
カラム:TSK−gel Enantio L1(東ソー株式会社製)
移動相:1mM 硫酸銅水溶液
流速:1.0ml/min
検出方法:UV254nm
温度:30℃
ポリ−L−乳酸の光学純度は下記式2で計算した。ここで、LはL−乳酸の濃度、DはD−乳酸の濃度を表す。
ポリ−L−乳酸の光学純度(%e.e.)=100×(L−D)/(L+D) (2)
また、ポリ−D−乳酸の光学純度は下記式3で計算した。
ポリ−D−乳酸の光学純度(%e.e.)=100×(D−L)/(D+L) (3)。
(2)分子量および分散度
重量平均分子量および分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリメチルメタクリレート換算値として測定した。GPCの測定は、検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410を用い、ポンプにMODEL510高速液体クロマトグラフィーを用い、カラムにShodex GPC HFIP−806MとShodex GPC HFIP−LGを直列に接続したものを用いて行った。測定条件は、流速1.0mL/分とし、溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入した。
(3)結晶融点(Tmh、Tmsc)および融解熱量(ΔHmh、ΔHmsc)
ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、および得られたポリ乳酸樹脂の融点および融解熱量は、パーキンエルマー社示差走査型熱量計(DSC−7型)により測定した。測定条件は、試料5mg、窒素雰囲気下、昇温速度が20℃/分である。
ここで、融点とは、結晶融解ピークにおけるピークトップの温度のことを指す。また、融解終了温度とは、結晶融解ピークにおけるピーク終了温度のことを指す。得られたポリ乳酸樹脂の結果において、ポリ乳酸のホモ結晶(ポリ−L−乳酸の単独結晶またはポリ−D−乳酸の単独結晶)と比べて融点の上昇(高融点化)が見られたものは、ポリ乳酸ステレオコンプレックスが形成されたものと判断し、ポリ乳酸のホモ結晶と比べて融点が変わらないものについては、ポリ乳酸ステレオコンプレックスが形成されなかったものと判断した。実施例において、ステレオコンプレックスおよびポリ−L−乳酸あるいはポリ−D−乳酸の融点は、第1昇温時に昇温速度20℃/分で30℃から250℃まで昇温したときに測定される値とした。
(4)ステレオコンプレックス形成率(Sc)
得られたポリ乳酸樹脂のステレオコンプレックス形成率(Sc)は、下記式(4)から算出した。
Sc=ΔHmsc/(ΔHmh+ΔHmsc)×100 (4)
ここで、ΔHmhは、150℃以上190℃未満に現れるポリ−L−乳酸単独結晶の結晶融解熱量およびポリ−D−乳酸単独結晶の結晶融解熱量の合計を示す。また、ΔHmscは、190℃以上240℃未満に現れるステレオコンプレックス結晶の結晶融解熱量を示す。ポリ乳酸樹脂のステレオコンプレックス形成率は、第1昇温時に昇温速度20℃/分で30℃から250℃まで昇温したときに測定される結晶融解ピークから算出したものである。
(5)降温結晶化熱量(ΔHc)
得られたポリ乳酸樹脂の降温結晶化熱量(ΔHc)は、パーキンエルマー社示差走査型熱量計(DSC−7型)により測定した。具体的には、上記降温結晶化熱量(ΔHc)とは、試料5mgを示差走査熱量計(DSC)により窒素雰囲気下で昇温速度20℃/分で30℃から250℃まで昇温した後、250℃で3分間恒温状態に維持し、冷却速度20℃/分で降温した際に測定される結晶化熱量である。
(6)成形性(離型可能冷却時間)
射出成形機(住友重機械工業製SG75H−MIV)を用い、シリンダー温度230℃、金型温度90℃で射出成形を行い、変形のない固化した成形品(φ15mm×20mm、3mm厚)が得られる最短の冷却時間(離型可能冷却時間)を計測した。離型可能冷却時間が短いほど成形性に優れているといえる。
(7)耐熱性評価(低荷重:0.45MPaにおける荷重たわみ温度)
射出成形機(住友重機械工業製SG75H−MIV)を用い、シリンダー温度230℃、金型温度90℃で射出成形を行い、ASTM D648に従って、12.7mm×127mm×3mmの成形品の荷重たわみ温度(荷重0.45MPa、低荷重DTUL)を測定した。低荷重DTULが高いほど耐熱性に優れているといえる。
(8)耐ブリードアウト性評価
射出成形機(住友重機械工業製SG75H−MIV)を用い、シリンダー温度230℃、金型温度90℃で射出成形を行い、金型から取り出し直後の成形品表面に生じる付着物(ブリードアウト)の外観評価を目視にて行った。判定基準は以下のとおりであり、点数が高いほど耐ブリードアウト性に優れているといえる。
3:ブリードアウト無し
2:ブリードアウト僅かに有り
1:ブリードアウト顕著に有り
また、本発明で用いた原料を以下に示す。実施例および比較例は、下記材料を表に示す配合で用いたが、これらは本発明を限定するものではない。
(A)ポリ乳酸樹脂
(A−1)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂
(A−1−1)ポリ乳酸ステレオコンプレックス(重量平均分子量15.2万、ステレオコンプレックス結晶の融点(Tmsc)214℃、ステレオコンプレックス結晶の融解熱量(ΔHmsc)11.6J/g、ホモ結晶の融点(Tmh)164℃、ホモ結晶の融解熱量(ΔHmh)22.6J/g、ステレオコンプレックス形成率(Sc)34%、降温結晶化熱量(ΔHc)1.9J/g)[製造例1]
(A−1−2)ポリ乳酸ステレオコンプレックス(重量平均分子量15.2万、ステレオコンプレックス結晶の融点(Tmsc)224℃、ステレオコンプレックス結晶の融解熱量(ΔHmsc)40.5J/g、ホモ結晶の融点(Tmh)182℃、ホモ結晶の融解熱量(ΔHmh)15.9J/g、ステレオコンプレックス形成率(Sc)72%、降温結晶化熱量(ΔHc)22.1J/g)[製造例2]
(A−2)ポリ乳酸ホモポリマー
(A−2−1)ポリ−L−乳酸ホモポリマー(光学純度97.1%e.e.、融点169℃、重量平均分子量16万、分散度1.7)
(A−2−2)ポリ−L−乳酸ホモポリマー(光学純度99.3%e.e.、融点184℃、重量平均分子量16万、分散度1.7)
(A−2−3)ポリ−D−乳酸ホモポリマー(光学純度97.1%e.e.、融点166℃、重量平均分子量16万、分散度1.8)
(A−2−4)ポリ−D−乳酸ホモポリマー(光学純度99.3%e.e.、融点184℃、重量平均分子量16万、分散度1.7)
(B)無機系結晶核剤
(B−1)タルク(D50平均粒子径4μm、日本タルク製P−6)
(C)脂肪族カルボン酸アミド
(C−1)エチレンビスラウリン酸アミド(日本化成製スリパックスL)
(C−2)エチレンビスステアリン酸アミド(日本化成製スリパックスE)
(D)可塑剤
(D−1)ポリアルキレングリコール系可塑剤
(D−1−1)ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体(アデカ製プルロニックF68)
(D−2)多価カルボン酸系可塑剤
(D−2−1)アジピン酸ベンジルメチルジグリコールエステル(大八化学工業製DAIFATTY−101)
(E)離型剤
(E−1)ペンタエリトール系離型剤
(E−1−1)ペンタエリスリトールテトラステアレート(エメリーオレオケミカルズ製ロキシオールVPG−861)
(E−2)エチレングリコール系離型剤
(E−2−1)エチレングリコールジモンタレート(クラリアント製リコワックスE)
[製造例1]
(A−2−1)ポリ−L−乳酸ホモポリマー50重量部および(A−2−3)ポリ−D−乳酸ホモポリマー50重量部とを、ドライブレンドした。ドライブレンドの後、ベントを有する二軸押出機にて溶融混練を行った。二軸押出機は、樹脂供給口よりL/D=10の部分に温度240℃に設定した可塑化部分を備え、L/D=30の部分にニーディングディスクを備えるスクリューによって、せん断付与下で混合できる構造をしている。ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、および触媒失活剤の溶融混練は、減圧下、混練温度240℃で行った。溶融混練で得られた混合物は、ペレット化した。
得られた混合物のペレット1gに対して、窒素流量20ml/分の窒素気流下において、80℃で9時間結晶化を行った。次いで、混合物のペレット1gに対して、窒素流量20ml/分の窒素気流下において、140℃で5時間脱揮を行った。さらに、混合物のペレット1gに対して、窒素流量20ml/分の窒素気流下において、150℃から3℃/分にて160℃まで昇温し、引き続き160℃で12時間固相重合を行った。
次に、固相重合後のペレット100重量部に対し、触媒失活剤として「アデカスタブ」AX−71(ADEKA製、ジオクタデシルホスフェート)0.2重量部をドライブレンドした。ドライブレンドの後、ベントを有する二軸押出機にて溶融混練を行った。二軸押出機は、樹脂供給口よりL/D=10の部分に温度220℃に設定した可塑化部分を備え、L/D=30の部分にニーディングディスクを備えるスクリューによって、せん断付与下で混合できる構造をしている。固相重合後のペレットと触媒失活剤の溶融混練は、減圧下、混練温度220℃で行った。溶融混練で得られた混合物は、ペレット化した。
得られた混合物のペレット1gに対して、窒素流量20ml/分の窒素気流下において、80℃で9時間結晶化を行った。その後、さらに混合物のペレット1gに対して、窒素流量20ml/分の窒素気流下において、140℃で5時間脱揮を行うことにより、(A−1−1)ポリ乳酸ステレオコンプレックスを得た。
[製造例2]
(A−2−1)ポリ−L−乳酸ホモポリマーおよび(A−2−3)ポリ−D−乳酸ホモポリマーを、それぞれ(A−2−2)ポリ−L−乳酸ホモポリマーおよび(A−2−4)ポリ−D−乳酸ホモポリマーに変更する以外は、製造例1と同様の条件により製造し、(A−1−2)ポリ乳酸ステレオコンプレックスを得た。
[実施例1〜18、比較例1〜9]
表1、2、3に示すように原料を配合し、30mm径、L/D=45の二軸押出機(日本製鋼所製TEX−30α)を用い、シリンダー温度230℃、回転数150rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。得た樹脂組成物を、射出成形機(住友重機械工業製SG75H−MIV)を用い、シリンダー温度230℃、金型温度90℃で射出成形を行い、成形品を得た。得た成形品を用いて、各種評価を行った結果を表1、2、3に示す。
Figure 2015044927
Figure 2015044927
Figure 2015044927
表1、2、3の結果から、本発明の好ましい範囲内で原料を配合した実施例1〜12では、本発明の好ましい範囲外で原料を配合した比較例1〜9より成形性、耐熱性、耐ブリードアウト性のバランスに優れることがわかる。

Claims (8)

  1. (A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂100重量部に対し、(B)無機系結晶核剤0.1〜50重量部、(C)脂肪族カルボン酸アミド0.1〜10重量部、(D)ポリアルキレングリコール系可塑剤および/または多価カルボン酸エステル系可塑剤1〜20重量部を配合してなるポリ乳酸樹脂組成物。
  2. さらに(E)ペンタエリスリトール系離型剤を(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.01〜3重量部を配合してなる請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  3. (C)脂肪族カルボン酸アミドが、エチレンビスラウリン酸アミドおよびエチレンビスステアリン酸アミドのいずれかである請求項1〜2のいずれか1項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  4. (C)脂肪族カルボン酸アミドが、エチレンビスラウリン酸アミドである請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  5. (C)脂肪族カルボン酸アミドを(A)ポリ−L−乳酸成分とポリ−D−乳酸成分からなるポリ乳酸樹脂100重量部に対し、3.5〜5重量部を配合してなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリ乳酸樹脂組成物からなる成形品。
  7. 成形品が射出成形品である請求項6記載の成形品。
  8. 成形品が食器である請求項6または7記載の成形品。
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