JP2022104869A - 生分解性に優れた3次元造形用材料およびその造形物 - Google Patents

生分解性に優れた3次元造形用材料およびその造形物 Download PDF

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Yuta Nakano
亜希子 平野
Akiko Hirano
舞 稲垣
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Abstract

【課題】生分解性に優れた3次元造形用材料およびその造形物を提供すること。【解決手段】ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)を含む3次元造形用材料であって、動的粘弾性測定において、振動周波数1Hzで測定した際に、-100℃から0℃の範囲にtanδのピークを1つ以上有することを特徴とする、3次元造形用材料。【選択図】なし

Description

本発明は、3次元プリンターによる造形性が良好な3次元造形用材料および、それを用
いて造形された造形物に関する。
今日、種々の付加製造方式(例えば、結合剤噴射式、材料押出法、粉末床溶融結合、お
よび液槽光重合式等)の3次元プリンターが販売されている。
その中でも材料押出法(以下、ME(Material extrusion)法と称
することがある。)においては、まず、造形用材料は、熱可塑性樹脂からなるフィラメン
トやペレット、粉体、顆粒などとして押出ヘッドへ挿入され、加熱溶融しながら押出ヘッ
ドに備えたノズル部位からチャンバー内のX-Y平面基板上に連続的に押し出される。押
し出された樹脂は既に堆積している樹脂積層体上に堆積すると共に融着し、これが冷却す
るにつれて一体となって固化する。ME法はこのような簡単なシステムであるため、広く
用いられるようになってきている。
従来、ME法の造形用材料に用いる原料としては、一般的にポリ乳酸(以下、「PLA
樹脂」と称することがある)や、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂(以下
「ABS樹脂」と称することがある)等の熱可塑性樹脂が、加工性や流動性の観点から好
適に用いられてきた(特許文献1~2)。特にPLAは、植物由来の原料であることおよ
び生分解性を有することから、近年、地球環境への負荷が小さい原料として注目されてい
る。
特開2008-194968号公報 特表2010-521339号公報
しかし、PLAは、比較的高温(58℃以上)の好気的コンポスト環境下では生分解す
るものの、室温(28℃)の好気的コンポスト(土中)環境下や、海中における生分解性
度は低く、十分な生分解性を有しているとはいえなかった。
一方で、PLAよりも優れた生分解性を持つ原料として、ポリヒドロキシアルカノエー
ト(以下PHAと称する場合がある)がある。しかし、本発明者らが検討したところ、ポ
リヒドロキシアルカノエートを用いて作製した3次元造形用フィラメントは、結晶化収縮
による造形時の反りの懸念のため、造形性に劣ることがわかった。さらにポリヒドロキシ
アルカノエートを用いて作製した3次元造形用フィラメントは脆く、屈曲した際に折れや
すいため、造形に用いる際のハンドリング性に劣ることが分かった。
そこで本発明の目的は、生分解性に優れ、かつ造形時のハンドリング性や、造形外観な
どの造形性にも優れた3次元造形用材料を提供することである。
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の物性を有する3次元
造形用材料が上記課題を解決し得ることを見出した。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]~[10]に存する。
[1] ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)を含む3次元造形用材料であって、動
的粘弾性測定において、振動周波数1Hzで測定した際に、-100℃から0℃の範囲に
tanδのピークを1つ以上有する、3次元造形用材料。
[2] 脂肪族ポリエステル系樹脂(B)を含有する、[1]に記載の3次元造形用材料

[3] 上記脂肪族ポリエステル系樹脂(B)に含まれる全ジカルボン酸由来する繰り返
し単位中の、コハク酸に由来する凝り返し単位の割合が、5モル%以上100モル%以下
である、[2]に記載の3次元造形用材料。
[4] 上記ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)と、上記脂肪族ポリエステル系樹
脂(B)の質量比が、10/90~60/40である、[2]または[3]に記載の3次
元造形用材料。
[5] 動的粘弾性測定において、振動周波数1Hzで測定した30℃における引張貯蔵
弾性率(E’)が400MPa以上である、[1]~[4]に記載の3次元造形材料。
[6] 示差走査熱量測定において、速度10℃/分で-70℃から200℃まで昇温後
、冷却速度10℃/分で-70℃まで降温した際の結晶化熱量が55J/g以下である、
[1]~[5]に記載の3次元造形材料。
[7] 無機フィラーを含有する、[1]~[6]に記載の3次元造形用材料。
[8] 上記ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)が、3-ヒドロキシブチレート単
位および3-ヒドロキシヘキサノエート単位を主校正単位として含有する共重合体である
、[1]~[7]に記載の3次元造形用材料。
[9] フィラメントおよびペレット形状のいずれかである、[1]~[8]に記載の3
次元造形用材料。
[10] [1]~[9]に記載の3次元造形用材料を用いて造形した造形物。
本発明によれば、生分解性および造形性に優れた3次元造形用材料を提供することがで
きる。
実施例および比較例の造形評価に用いた形状 実施例および比較例のフィラメントのハンドリング性評価で作製した結び目の例
以下に本発明の3次元造形用材料の実施の形態を詳細に説明する。本発明は以下の説明
に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実
施することができる。尚、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値
を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
<3次元造形用材料>
本発明の3次元造形用材料は、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)を含み、動的
粘弾性測定において、振動周波数1Hzで測定した際に、-100℃から0℃の範囲にt
anδのピークを1つ以上有する。
本発明の3次元造形用材料は、動的粘弾性測定において、振動周波数1Hzで測定した
際に、-100℃から0℃の範囲にtanδのピークを1つ以上有するため、造形物およ
び造形用材料の靭性や、造形用材料のハンドリング性に優れる。-100℃から0℃の範
囲のピークの数は特に規定されないが、造形用材料の製造のしやすさや、造形用材料に含
まれる樹脂同士の相溶性に優れることで、造形時に安定してノズルから吐出されやすいと
いう観点から、5つ以下であることが好ましく、3つ以下であることがより好ましく、2
つ以下であることがさらに好ましい。
また、造形用材料や造形物に十分な靭性を担保する観点から、上記-100℃から0℃
の範囲のtanδのピークトップの温度は、-10℃以下であることが好ましく、-20
℃以下がより好ましく、-30℃以下がさらに好ましい。また、耐衝撃性と、材料の選択
しやすさとのバランスの観点から、-90℃以上であることが好ましく、-80℃以上で
あることがより好ましく、-70℃以上であることがさらに好ましい。なお、-100℃
から0℃の範囲にtanδのピークが複数ある場合は、-100℃から0℃の範囲にta
nδのピークの内1つ以上のピークが上記好ましい範囲内に入っていることが好ましく、
-100℃から0℃の範囲にtanδのピークの内全てのピークが上記好ましい範囲内に
入っていることが、より好ましい。
また、造形物および造形用材料の靭性や耐衝撃性、またフィラメント形状の造形用材料
についてはフィラメントの造形用材料を屈曲した際の折れにくさの観点から、上記-10
0℃から0℃の範囲のtanδのピークトップの値は、4×10-以上だと好ましく、
5×10-以上だとより好ましく、8×10-2以上だとさらに好ましい。上限につい
ては特に規定されないが、通常10以下である。
なお、本発明のtanδのピークトップの温度や、ピーク値は、後述する造形用材料の
樹脂組成などによって達成できる。また、これらの値は、実施例に記載の手法で測定する
ことができる。
本発明の3次元造形用材料は、造形物の剛性や、造形用材料のブロッキング防止、また
フィラメント形状の造形用材料の、ノズルへのフィラメントの送りやすさ(屈曲のしにく
さ)等の観点から、振動周波数1Hzで測定した30℃における引張貯蔵弾性率(E’)
が400MPa以上であることが好ましく、500MPa以上がより好ましく、800M
Pa以上がさらに好ましく、1000MPa以上であることが特に好ましい。また上限に
ついては特に規定されないが、通常は5000MPa以下であり、造形物および造形用材
料の靭性や、フィラメント形状の造形用材料についてはボビンへの巻きやすさなどの観点
から、4000MPa以下が好ましく、3000MPa以下がより好ましく、2500M
Pa以下が特に好ましい。この引張貯蔵弾性率(E’)は、後述する樹脂組成や、フィラ
ーの添加などによって調整することができる。なお、この引張貯蔵弾性率(E’)は、実
施例に記載の手法で測定することができる。
本発明の3次元造形用材料は、造形中の結晶化収縮による反りを抑制し、造形性を良好
にする観点から、示差走査熱量測定において、昇温速度10℃/分で-70℃から200
℃まで昇温後、冷却速度10℃/分で-70℃まで降温した際の結晶化熱量が55J/g
以下であることが好ましく、50J/g以下がより好ましく、45J/g以下がさらに好
ましく、40J/g以下が特にに好ましい。また、造形物の耐熱性や、室温での剛性(弾
性率)を担保する観点から、5J/g以上が好ましく、10J/g以上がより好ましく、
20J/g以上がさらに好ましい。なお、この結晶化熱量は、後述する造形用材料の樹脂
組成などによって達成できる。またこの結晶化熱量は、実施例に記載の手法で測定するこ
とができる。
本発明の3次元造形用材料は、特に限定されないが、造形性の観点から、示差走査熱量
測定において、昇温速度10℃/分で-70℃から200℃まで昇温後、冷却速度10℃
/分で-70℃まで降温した際の結晶化温度が、40℃以上であることが好ましい。結晶
化温度がこの範囲であると、造形用材料が造形時にノズルから溶融吐出されたあと、十分
に固化されやすいため、造形物の外観に優れる。特に、細かい形状の造形物の外観に優れ
る観点から、結晶化温度は、45℃以上であることが好ましく、50℃以上であることが
より好ましく、60℃以上であることがさらに好ましい。また、造形物の積層間の熱融着
性の観点から、結晶化温度は、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましく、
100℃以下がさらに好ましい。なお、結晶化温度が複数ある場合は、どれか1つ以上が
、上記範囲内にあると好ましい。またこの結晶化温度は、実施例に記載の手法で測定する
ことができる。
本発明の3次元造形用材料は、特に限定されないが、造形物や造形用材料の耐熱性の観
点から、示差走査熱量測定において、昇温速度10℃/分で-70℃から200℃まで昇
温後、冷却速度10℃/分で-70℃まで降温し、さらに昇温速度10℃/分で-70℃
から200℃まで昇温した際の融点が、80℃以上であることが好ましく、100℃以上
であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。また、低ノズル
温度での造形性の観点から、200℃以下であることが好ましく、190℃以下であるこ
とがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。なお、融点が複数ある場
合は、いずれかの融点が上記範囲内に入っていることが好ましいが、なかでも、もっとも
結晶融解熱量が大きいピークが、上記範囲内にあることが好ましい。また、もっとも高い
温度のピークが、上記範囲内にあることも好ましい。またこの融点は、実施例に記載の手
法で測定することができる。
本発明の3次元造形用材料は、特に限定されないが、造形性の観点から、振動周波数1
Hz、降温速度:3℃/minで200℃から50℃まで測定した際に、せん断貯蔵弾性
率(G’)が1×10Paになる温度が70℃以上であることが好ましい。せん断貯蔵
弾性率(G’)がこの範囲であると、造形用材料が造形時にノズルから溶融吐出されたあ
と、十分に固化されやすいため、造形物の外観に優れる。特に、細かい形状の造形物の外
観に優れる観点から、せん断貯蔵弾性率(G’)が1×10Paになる温度は、80℃
以上がより好ましく、85℃以上であることがさらに好ましい。また、造形時のノズル温
度を低温にできる観点や、造形物の積層間の熱融着性の観点から、せん断貯蔵弾性率(G
’)が1×10Paになる温度は、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ま
しく、100℃以下がさらに好ましい。なお、せん断貯蔵弾性率(G’)は、後述する造
形用材料の樹脂組成などによって達成できる。またこのせん断貯蔵弾性率(G’)は、実
施例に記載の手法で測定することができる。
本発明の造形用材料の、JISK7210に準じて、170℃、荷重2,16kgfに
て測定したメルトフローレート(MFR)は、特に限定されないが、造形時にノズルから
安定的に吐出できる観点から、0.5g/10分以上が好ましく、1.0g/10分以上
が好ましく、1.5g/10分以上が特に好ましい。また、造形時の糸引きやダマ等の不
良抑制の観点から、20g/10分以下が好ましく、15g/10分以下がより好ましく
、10g/10分以下がもっとも好ましい。なお、このメルトインデックスは、後述する
造形用材料の樹脂組成などによって達成できる。またこのメルトインデックスは、実施例
に記載の手法で測定することができる。
本発明の造形用材料の、JISK7120に準じて、熱重量測定によって、空気中にて
測定した熱分解開始温度は、特に規定されないが、造形時のノズル中で滞留した際の熱分
解を抑制する観点から、220℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、260
℃以上がより好ましい。上限は特に規定されないが、通常500℃以下である。
<ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)>
本発明の造形用材料は、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(以下、PHAと称するこ
とがある)(A)を含むため、生分解性や海洋分解性に優れる。ポリヒドロキシアルカノ
エート樹脂(A)は、一般式:[-CHR-CH2-CO-O-](式中、Rは炭素数1
~15のアルキル基である。)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルであり
、3-ヒドロキシブチレート単位と3-ヒドロキシヘキサノエート単位を主たる構成単位
として含む共重合体である。
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)は、造形時の熱安定性や、造形性の観点から
、構成成分として3-ヒドロキシブチレート単位を80モル%以上含むことが好ましく、
85モル%以上含むことがより好ましい。また、ポリヒドロキシアルカノエート(A)は
、微生物によって生産されたものが好ましい。
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)の具体例としては、ポリ(3-ヒドロキシブ
チレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3-ヒドロキシブチ
レート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹
脂等が挙げられる。特に、造形性や、造形用材料および造形物の物性の観点から、ポリ(
3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、即ちPH
BHが好ましい。
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)において、3-ヒドロキシブチレート(以下
、3HBと称する場合がある)と、共重合している3-ヒドロキシヘキサノエート(以下
、3HHと称する場合がある)等のコモノマーとの構成比、即ち共重合樹脂中のモノマー
比率は、造形性や、造形用材料および造形物の物性の観点から、3-ヒドロキシブチレー
ト/コモノマー=97/3~80/20(モル%/モル%)であることが好ましく、95
/5~85/15(モル%/モル%)であることがより好ましい。このコモノマー比率が
3モル%未満であると、造形温度と熱分解温度が近接するため、造形温度の選択範囲が狭
く、造形が難しい場合がある。一方でコモノマー比率が20モル%を超えると、ポリヒド
ロキシアルカノエート樹脂(A)の結晶化が遅くなるため、造形時、造形用材料が造形時
にノズルから溶融吐出されたあと十分に固化せず、造形外観が悪化する懸念がある。
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)中の各モノマー比率は、以下のようにガスク
ロマトグラフィーによって測定できる。
乾燥PHA約20mgに、2mlの硫酸/メタノール混液(15/85(質量比))と
2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱して、PHA分解物
のメチルエステルを得る。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加え
て中和し、炭酸ガスの発生が止まるまで放置する。4mlのジイソプロピルエーテルを添
加してよく混合した後、上清中のPHA分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガ
スクロマトグラフィーにより分析することにより、共重合樹脂中の各モノマー比率を求め
られる。
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)の重量平均分子量(以下、Mwと称する場合
がある)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値から、単
分散ポリスチレンを標準物質として求めた重量平均分子量(Mw)として、通常200,
000以上2,500,000以下である。造形性と、造形物および造形用材料の機械強
度の点において有利なため、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)の重量平均分子量
(Mw)は好ましくは250,000以上2,000,000以下、より好ましくは30
0,000以上1,000,000以下である。重量平均分子量が200,000未満で
は、機械物性等が劣る場合があり、2,500,000超えると、成形加工が困難となる
場合がある。
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、JIS
K7210に準じて、190℃、荷重2.16kgで測定した値で、好ましくは1g/
10分以上100g/10分以下である。ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)のM
FRは、造形性と、造形用材料および造形物の機械強度の観点から、より好ましくは80
g/10分以下、特に好ましくは50g/10分以下である。ポリヒドロキシアルカノエ
ート樹脂(A)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)の融点は、造形物および造形用材料の耐熱性
の観点から、100℃以上が好ましく、より好ましくは120℃以上であり、造形時のノ
ズル温度を低温にできる観点から、180℃以下であることが好ましく、より好ましくは
170℃以下、特に好ましくは160℃未満である。融点が複数存在する場合には、少な
くとも1つの融点が上記範囲内にあることが好ましい。
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)の、示差走査熱量測定において、昇温速度1
0℃/分で0℃から200℃まで昇温後、冷却速度10℃/分で0℃まで降温した際の結
晶化熱量は、造形中の反り抑制の観点から、100J/g以下が好ましく、80J/g以
下がより好ましく、70J/g以下がさらに好ましい。また、造形物の耐熱性や、室温で
の剛性(弾性率)を担保する観点から、20J/g以上が好ましく、30J/g以上がよ
り好ましく、40J/g以上がさらに好ましい。ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A
)のの結晶化熱量は、上述のモノマー比率等によって調節することが可能である。
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)の、示差走査熱量測定において、昇温速度1
0℃/分で-50℃から180℃まで昇温後、冷却速度10℃/分で-50℃まで降温し
た際の結晶化温度は、造形性の観点から、50℃以上であることが好ましい。結晶化温度
がこの範囲であると、造形用材料が造形時にノズルから溶融吐出されたあと、十分に固化
されやすいため、造形物の外観に優れる。特に、細かい形状の造形物の外観に優れる観点
から、結晶化温度は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好
ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。また、造形物の積層間の熱融着性の観
点から、結晶化温度は、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましく、100
℃以下がさらに好ましい。なお、結晶化温度が複数ある場合は、どれか1つ以上が、上記
範囲内にあると好ましい。
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)の、振動周波数1Hzで測定した30℃にお
ける引張貯蔵弾性率(E’)は、造形物の剛性や、造形用材料のブロッキング防止、また
フィラメント形状の造形用材料の、ノズルへのフィラメントの送りやすさ(屈曲のしにく
さ)等の観点から、500MPa以上が好ましく、800MPa以上がより好ましく、1
000MPa以上であることが特に好ましい。また上限については特に規定されないが、
通常は5000MPa以下であり、造形物および造形用材料の靭性や、フィラメント形状
の造形用材料についてはボビンへの巻きやすさなどの観点から、4000MPa以下が好
ましく、3000MPa以下がより好ましく、2500MPa以下が特に好ましい。ポリ
ヒドロキシアルカノエート樹脂(A)の引張貯蔵弾性率(E’)は、上述のモノマー比率
等によって調整することが可能である。
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)は、例えば、Alcaligenes eu
trophusにAeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入
したAlcaligenes eutrophus AC32株(ブダペスト条約に基づ
く国際寄託、国際寄託当局:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日
本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)、原寄託日:平成8年8月12日、平成
9年8月7日に移管、寄託番号FERM BP-6038(原寄託FERM P-157
86より移管))(J.Bacteriol.,179,4821(1997))等の微
生物によって産生される。
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)としては、市販品を用いることもでき、3-
ヒドロキシブチレート単位及び3-ヒドロキシヘキサノエート単位を主構成単位として含
むポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)の市販品としては、カネカ社製「Aonil
ex(登録商標) X131A」、「Aonilex(登録商標) 151A」、「Ao
nilex(登録商標) 151C」、「PHBH(登録商標) X331N」、「PH
BH(登録商標) X131A」、「PHBH(登録商標) 151A」、「PHBH(
登録商標) 151C」を用いることができる。
ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)は1種に限らず、構成単位の種類や構成単位
比、製造方法、物性等の異なる2種以上のポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)をブ
レンドして用いることもできる。
<脂肪族ポリエステル系樹脂(B)>
本発明の造形用材料は、上述したポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)の他に、耐
衝撃性や、造形用材料のハンドリング性、造形中のノズル滞留による熱分解と、それによ
るノズルからの樹脂垂れを抑制するなどの観点から、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)を
含有することが好ましい。ここで、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)とは、脂肪族ジオー
ル単位及び脂肪族ジカルボン酸単位を主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂で
ある。
ポリエステル系樹脂(B)は、生分解性等の観点から、全ジカルボン酸単位中のコハク
酸単位の割合が5モル%以上100モル%以下であることが好ましい。ポリエステル系樹
脂(B)は、コハク酸単位の量が異なる脂肪族ポリエステル系樹脂の混合物であってもよ
く、例えば、コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸単位を含まない(脂肪族ジカルボン酸単
位としてコハク酸単位のみを含む)脂肪族ポリエステル系樹脂と、コハク酸以外の脂肪族
ジカルボン酸単位を含む脂肪族ポリエステル系樹脂とをブレンドして、ポリエステル系樹
脂(B)におけるコハク酸単位量を上記好適範囲内に調整して使用することも可能である
具体的には、ポリエステル系樹脂(B)は、下記式(1)で表される脂肪族ジオール単
位、および下記式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を含むポリエステル系樹脂で
ある。
-O-R-O- (1)
-OC-R-CO- (2)
式(1)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表す。式(2)中、Rは、2価の脂
肪族炭化水素基を表す。式(1)、(2)で表される脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカル
ボン酸単位は、石油から誘導された化合物由来であっても、植物原料から誘導された化合
物由来であってもよいが、植物原料から誘導された化合物由来であることが望ましい。
ポリエステル系樹脂(B)が共重合体である場合には、ポリエステル系樹脂(B)中に
2種以上の式(1)で表される脂肪族ジオール単位が含まれていてもよく、ポリエステル
系樹脂(B)中に2種以上の式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位が含まれていて
もよい。
式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位には、コハク酸単位が、全ジカルボン酸単
位に対して5モル%以上100モル%以下含まれることが好ましい。ポリエステル系樹脂
(B)におけるコハク酸構成単位量を上記所定範囲内とすることで、3次元造形用材料と
して用いた際の造形性が向上するとともに、耐熱性、分解性にも優れた生分解性樹脂組成
物を得ることが可能となる。同様の理由から、ポリエステル系樹脂(B)中のコハク酸単
位量は、全ジカルボン酸単位に対して好ましくは10モル%以上、より好ましくは50モ
ル%以上、更に好ましくは64モル%以上、特に好ましくは68モル%以上である。
以下、ポリエステル系樹脂(B)中の全ジカルボン酸単位に対するコハク酸単位の割合
を「コハク酸単位量」と称す場合がある。
式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位には、コハク酸の他に1種類以上の脂肪族
ジカルボン酸単位が全ジカルボン酸単位に対して5モル%以上50モル%以下含まれてい
ることがより好ましい。コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸単位を上記所定範囲内共重合
することで、ポリエステル系樹脂(B)の結晶化度を下げることができ、生分解速度を速
くすることや、造形時の結晶化収縮による反りを抑制することが可能である。同様の理由
から、ポリエステル系樹脂(B)中のコハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸単位量は、全ジ
カルボン酸単位に対して好ましくは10モル%以上45モル%以下であり、より好ましく
は15モル%以上40モル%以下である。
式(1)で表されるジオール単位を与える脂肪族ジオールとしては、特に限定されない
が、造形性や、造形用材料および造形物の機械強度の観点から、炭素数が2以上10以下
の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数4以上6以下の脂肪族ジオールが特に好ましい。例
えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,
4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4-ブタンジオールが特に好
ましい。上記脂肪族ジオールは、2種類以上を用いることもできる。
式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分としては
、特に限定されないが、炭素数が2以上40以下の脂肪族ジカルボン酸やそのアルキルエ
ステル等の誘導体が好ましく、炭素数が4以上10以下の脂肪族ジカルボン酸やそのアル
キルエステル等の誘導体が特に好ましい。コハク酸以外の炭素数が4以上10以下の脂肪
族ジカルボン酸やそのアルキルエステル等の誘導体としては、例えば、アジピン酸、スベ
リン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等やそのアルキルエステル等の誘導体が
挙げられ、中でもアジピン酸、セバシン酸が好ましく、アジピン酸が特に好ましい。上記
脂肪族ジカルボン酸成分は、2種類以上を用いることもでき、この場合、コハク酸とアジ
ピン酸との組み合わせが好ましい。
ポリエステル系樹脂(B)は、脂肪族オキシカルボン酸に由来する繰返し単位(脂肪族
オキシカルボン酸単位)を有していてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪
族オキシカルボン酸成分の具体例としては、例えば、乳酸、グリコール酸、2-ヒドロキ
シ-n-酪酸、2-ヒドロキシカプロン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシ
-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシイソカプロ
ン酸等、又はこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステル等の誘導体が挙げら
れる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体又はラセミ体の何れでもよい
。これらの形態としては固体、液体又は水溶液のいずれであってもよい。これらの中で特
に好ましいものは、乳酸又はグリコール酸或いはその誘導体である。これら脂肪族オキシ
カルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
ポリエステル系樹脂(B)がこれらの脂肪族オキシカルボン酸単位を含む場合、その含
有量は、造形性の観点から、ポリエステル系樹脂(B)を構成する全構成単位を100モ
ル%として20モル%以下であることが好ましく、より好ましくは10モル%以下、更に
好ましくは5モル%以下であり、最も好ましくは0モル%(含まない)である。
ポリエステル系樹脂(B)は3官能以上の脂肪族多価アルコール、3官能以上の脂肪族
多価カルボン酸又はその酸無水物、或いは3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸成分
を共重合することによって、溶融粘度が高められたものであってもよい。
3官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリ
ン等が挙げられ、4官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、ペンタエリスリトー
ル等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
3官能の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、プロパントリカル
ボン酸又はその酸無水物が挙げられ、4官能の多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例
としては、シクロペンタンテトラカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。これらは
単独でも2種以上混合して使用することもできる。
3官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が
1個を同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基が1個とヒドロキシル基が
2個を同一分子中に有するタイプとに分かれる。何れのタイプも使用可能であるが、成形
性、機械強度や成形品外観の観点からリンゴ酸等の(i)カルボキシル基が2個とヒドロ
キシル基が1個を同一分子中に有するタイプが好ましく、より具体的には、リンゴ酸が好
ましく用いられる。
4官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロ
キシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒド
ロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個の
カルボキシル基とを同一分子中に共有するタイプに分かれる。何れのタイプも使用可能で
あるが、カルボキシル基を複数有するものが好ましく、より具体的には、クエン酸、酒石
酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
ポリエステル系樹脂(B)がこのような3官能以上の成分由来の構成単位を含む場合、
その含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)を構成する全構成単位を100モル%と
して、下限が通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が通常5モ
ル%以下、好ましくは2.5モル%以下である。
脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の製造方法は、ポリエステルの製造に関する公知の方
法が採用できる。この際の重縮合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定する
ことができ、特に制限されない。通常、エステル化反応を進行させた後、減圧操作を行う
ことによって更に重合度を高める方法が採用される。
脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の製造時に、ジオール単位を形成するジオール成分と
ジカルボン酸単位を形成するジカルボン酸成分とを反応させる場合には、製造される脂肪
族ポリエステル系樹脂(B)が目的とする組成を有するようにジオール成分およびジカル
ボン酸成分の使用量を設定する。通常、ジオール成分とジカルボン酸成分とは実質的に等
モル量で反応するが、ジオール成分は、エステル化反応中に留出することから、通常はジ
カルボン酸成分よりも1~20モル%過剰に用いられる。
脂肪族ポリエステル系樹脂(B)に脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位等の
必須成分以外の成分(任意成分)を含有させる場合、その脂肪族オキシカルボン酸単位や
多官能成分単位もそれぞれ目的とする組成となるように、それぞれに対応する化合物(モ
ノマーやオリゴマー)を反応に供するようにする。このとき、上記の任意成分を反応系に
導入する時期および方法に制限はなく、本発明に好適な脂肪族ポリエステル系樹脂(B)
を製造できる限り任意である。
例えば脂肪族オキシカルボン酸を反応系に導入する時期および方法は、ジオール成分と
ジカルボン酸成分との重縮合反応以前であれば特に限定されず、(1)予め触媒を脂肪族
オキシカルボン酸溶液に溶解させた状態で混合する方法、(2)原料仕込み時に触媒を反
応系に導入すると同時に混合する方法、などが挙げられる。
多官能成分単位を形成する化合物の導入時期は、重合初期の他のモノマーやオリゴマー
と同時に仕込むようにしてもよく、エステル交換反応後、減圧を開始する前に仕込むよう
にしてもよいが、他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込む方が工程の簡略化の点で好ま
しい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(B)は、通常、触媒の存在下で製造される。触媒としては
、公知のポリエステル系樹脂の製造に用いることのできる触媒を、本発明の効果を著しく
損なわない限り任意に選択することができる。その例を挙げると、ゲルマニウム、チタン
、ジルコニウム、ハフニウム、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の
金属化合物が好適である。中でもゲルマニウム化合物、チタン化合物が好適である。
触媒として使用できるゲルマニウム化合物としては、例えば、テトラアルコキシゲルマ
ニウム等の有機ゲルマニウム化合物、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等の無機ゲル
マニウム化合物などが挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニ
ウム、テトラエトキシゲルマニウムおよびテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、
特には、酸化ゲルマニウムが好適である。
触媒として使用できるチタン化合物としては、例えば、テトラプロピルチタネート、テ
トラブチルチタネート、テトラフェニルチタネート等のテトラアルコキシチタンなどの有
機チタン化合物が挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、テトラプロピルチ
タネート、テトラブチルチタネートなどが好ましい。
本発明の目的を損なわない限り、他の触媒の併用を妨げない。また触媒は1種を単独で
用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
触媒の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、使用するモノマ
ー量に対して、通常0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上で、
通常3質量%以下、好ましくは1.5質量%以下である。この範囲の下限を下回ると触媒
の効果が現れないおそれがある。この範囲の上限を上回ると製造費が高くなったり得られ
るポリマーに著しい着色を生じたり、耐加水分解性が低下したりするおそれがある。
触媒の導入時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に導入して
おいてもよく、減圧開始時に導入してもよい。脂肪族ポリエステル系樹脂(B)に脂肪族
オキシカルボン酸単位を導入する場合は、原料仕込み時に乳酸やグリコール酸等の脂肪族
オキシカルボン酸単位を形成するモノマーやオリゴマーと同時に導入するか、又は脂肪族
オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましく、特に、重合速度が大
きくなるという点で脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ま
しい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(B)を製造する際の温度、重合時間、圧力などの反応条件
は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ジカルボン酸成分とジオール成分
とのエステル化反応および/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以
上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である
。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下である。反応圧力は、通常、
常圧~10kPaであるが、中でも常圧が好ましい。反応時間は、下限が通常1時間以上
であり、上限が通常10時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは4時間以下で
ある。 反応温度が高すぎると、不飽和結合の過剰生成が起こり、不飽和結合が要因とな
るゲル化が起こり、重合の制御が困難になることがある。
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル反応および/又はエステル交換反応後の
重縮合反応は、圧力が、下限が通常0.01×103Pa以上、好ましくは0.03×1
03Pa以上、上限が通常1.4×103Pa以下、好ましくは0.4×103Pa以下
の真空度下で行うことが望ましい。この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ま
しくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応時
間は、下限が通常2時間以上、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である
反応温度が高すぎると、不飽和結合の過剰生成で不飽和結合が要因となるゲル化が起こ
り、重合の制御が困難になることがある。
脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の製造時には、カーボネート化合物やジイソシアネー
ト化合物等の鎖延長剤を使用することもできる。この場合、鎖延長剤の量は、脂肪族ポリ
エステル系樹脂(B)を構成する全構成単位を100モル%とした場合のポリエステル系
樹脂(B)中のカーボネート結合やウレタン結合の割合として、通常10モル%以下、好
ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。ただし、脂肪族ポリエステ
ル系樹脂(B)中にウレタン結合やカーボネート結合が存在すると、生分解性を阻害する
可能性があるため、本発明では、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)を構成する全構成単位
に対し、カーボネート結合は1モル%未満、好ましくは0.5モル%以下、より好ましく
は0.1モル%以下であり、ウレタン結合は0.55モル%以下、好ましくは0.3モル
%以下、より好ましくは0.12モル%以下、更に好ましくは0.05モル%以下とする
のがよい。この量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)100質量部あたりに換算すると
、0.9質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下、
さらに好ましくは0.1質量部以下である。特に、ウレタン結合量が上記上限値を上回る
と、成膜工程等において、ウレタン結合の分解のため、ダイス出口からの溶融膜からの発
煙や臭気が問題となる場合があり、また、溶融膜中に発泡による膜切れが起こって安定的
に成形できないことがある。
脂肪族ポリエステル系樹脂(B)中のカーボネート結合量やウレタン結合量は、1H-
NMRや13C-NMR等のNMR測定結果から算出して求めることができる。
鎖延長剤としてのカーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート
、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボ
ネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブ
チルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカ
ーボネートなどが例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ
化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物
も使用可能である。
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4-トリレンジイソシアネート、
2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの混合体、1
,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジ
イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,
4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネ
ート、2,4,6-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート、4,4’-ジフェニル
メタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の公知のジイソシアネートなどが
例示される。
その他の鎖延長剤として、ジオキサゾリン、珪酸エステルなどを使用してもよい。珪酸
エステルとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、
ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン等が例示される。
これらの鎖延長剤(カップリング剤)を用いた高分子量ポリエステル系樹脂についても
従来の技術を用いて製造することが可能である。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融
状態で無溶媒にて反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。
より具体的には、ジオール成分とジカルボン酸成分とを触媒反応させて得られる、末端
基が実質的にヒドロキシル基を有し、重量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ま
しくは40,000以上のポリエステルに上記鎖延長剤を反応させることにより、より高
分子量化したポリエステル系樹脂を得ることができる。重量平均分子量が20,000以
上のプレポリマーは、少量の鎖延長剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残
存する触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のポリエステ
ル系樹脂を製造することができる。ここで、ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw
)は、溶媒をクロロホルムとし、測定温度40℃でゲルパーミエーションクロマトグラフ
ィー(GPC)による測定値から単分散ポリスチレンによる換算値として求められる。
例えば鎖延長剤として上記のジイソシアネート化合物を用いて、ポリエステル系樹脂を
更に高分子量化する場合には、重量平均分子量が20,000以上、好ましくは40,0
00以上のプレポリマーを用いることが好ましい。プレポリマーの重量平均分子量が20
,000未満であると、高分子量化するためのジイソシアネート化合物の使用量が多くな
り耐熱性が低下する場合がある。このようなプレポリマーを用いてジイソシアネート化合
物に由来するウレタン結合を介して連鎖した線状構造を有するウレタン結合を有するポリ
エステル系樹脂が製造される。
鎖延長時の圧力は、通常0.01MPa以上1MPa以下、好ましくは0.05MPa
以上0.5MPa以下、より好ましくは0.07MPa以上0.3MPa以下であるが、
常圧が最も好ましい。
鎖延長時の反応温度は、下限が通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ま
しくは190℃以上、最も好ましくは200℃以上、上限が通常250℃以下、好ましく
は240℃以下、より好ましくは230℃以下である。反応温度が低すぎると粘度が高く
均一な反応が難しく、高い攪拌動力も要する傾向がある。反応温度が高すぎると、ポリエ
ステル系樹脂のゲル化や分解が併発する傾向がある。
鎖延長を行う時間は、下限が通常0.1分以上、好ましくは1分以上、より好ましくは
5分以上で、上限が通常5時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくは30分以下
、最も好ましくは15分以下である。鎖延長を行う時間が短すぎる場合には、鎖延長剤の
添加効果が発現しない傾向がある。鎖延長を行う時間が長すぎる場合には、ポリエステル
系樹脂のゲル化や分解が併発する傾向がある。
本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の分子量は、ゲルパーミエーションク
ロマトグラフィー(GPC)による測定値から単分散ポリスチレンを標準物質として求め
た重量平均分子量(Mw)として、通常10,000以上1,000,000以下である
ことが好ましい。脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は成形性と
機械強度の点において有利なため、より好ましくは20,000以上500,000以下
、さらに好ましくは50,000以上400,000以下である。
本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、
JIS K7210に基づいて190℃、荷重2.16kgで測定した値で、通常0.1
g/10分以上100g/10分以下である。本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂
(B)のMFRは、造形性と、造形物および造形用材料の機械強度の観点から、好ましく
は50g/10分以下、特に好ましくは40g/10分以下である。脂肪族ポリエステル
系樹脂(B)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の融点は、造形物および造形用材料の
耐熱性やブロッキング防止の観点から、70℃以上が好ましく、より好ましくは75℃以
上である。また、低ノズル温度で造形できることや、造形物の層間熱融着性を上げる観点
から、170℃以下であることが好ましく、より好ましくは150℃以下、特に好ましく
は130℃未満である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記範囲
内にあることが好ましい。
本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の、示差走査熱量測定において、昇温
速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温後、冷却速度10℃/分で0℃まで降温した
際の結晶化熱量は、造形中の反り抑制の観点から、80J/g以下が好ましく、60J/
g以下がより好ましく、50J/g以下がさらに好ましい。また、造形物の耐熱性や、室
温での剛性(弾性率)を担保する観点から、5J/g以上が好ましく、10J/g以上が
より好ましく、20J/g以上がさらに好ましい。
本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の、振動周波数1Hzで測定した30
℃における引張貯蔵弾性率(E’)は、造形物の剛性や、造形用材料のブロッキング防止
、またフィラメント形状の造形用材料の、ノズルへのフィラメントの送りやすさ(屈曲の
しにくさ)等の観点から、100MPa以上が好ましく、200MPa以上がより好まし
く、300MPa以上がさらに好ましい。また、30℃における引張貯蔵弾性率(E’)
は、耐衝撃性の観点から、1000MPa以下が好ましく、800MPa以下がより好ま
しく、500MPa以下がさらに好ましい。
本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(B)は、本発明の造形用材料および造形物
の耐衝撃性や、特にフィラメント形状の造形用材料の折れにくさの観点から、動的粘弾性
測定において、振動周波数1Hzで測定した際に、-100℃から0℃の範囲にtanδ
のピークを1つ以上有することが好ましい。また、造形用材料や造形物に十分な靭性を担
保する観点から、tanδのピークトップの温度は、-10℃以下であることが好ましく
、-20℃以下がより好ましく、-30℃以下がさらに好ましい。また、耐衝撃性と、材
料の選択しやすさとのバランスの観点から、-90℃以上であることが好ましく、-80
℃以上であることがより好ましく、-70℃以上であることがさらに好ましい。なお、-
100℃から0℃の範囲にtanδのピークが複数ある場合は、1つ以上のピークが上記
好ましい範囲内に入っているが好ましく、全てのピークが上記好ましい範囲内にはいって
いることが、より好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の融点や結晶化熱量、引張貯蔵弾性率(E’)、ta
n δピーク温度の調整法は特に限定されないが、例えば、コハク酸以外の脂肪族ジカル
ボン酸成分の共重合成分の種類を選択したり、ぞれぞれの共重合比率を調節したり、それ
らを組み合わせたりすることにより調節することが可能である。
脂肪族ポリエステル樹脂(B)としては、市販品を用いることもでき、PTTMCC
Biochem社製「BioPBS(登録商標) FZ71PB」、「BioPBS(登
録商標) FZ71PM」、「BioPBS(登録商標) FZ91PB」、「BioP
BS(登録商標) FZ91PM」、「BioPBS(登録商標) FD92PB」、「
BioPBS(登録商標) FD92PM」を用いることができる。
脂肪族ポリエステル樹脂(B)は1種に限らず、構成単位の種類や構成単位比、製造方
法、物性等の異なる2種以上の脂肪族ポリエステル樹脂(B)をブレンドして用いること
ができる。
<ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)/脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の質量
比>
本発明の造形用材料が、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)を含む場合、ポリヒドロキシ
アルカノエート樹脂(A)/脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の質量比は、5/95~9
9/1の範囲が好ましく、20/80~95/5の範囲がより好ましい。ポリヒドロキシ
アルカノエート樹脂(A)の含有量が上記範囲より少ないと、造形物の剛性に劣ったり、
造形時のフィラメントの屈曲により高速造形性に劣る。一方でポリヒドロキシアルカノエ
ート樹脂(A)の含有量が上記範囲より多いと、ノズルで滞留した場合の熱分解が発生し
やすく、また造形材料や造形物の靭性に劣る。特に、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂
(A)/脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の質量比が、5/95~60/40の範囲であ
れば、造形用材料や造形物としての耐衝撃性や耐熱性、造形用材料のハンドリング性、造
形外観や、造形中にノズルで滞留した際の熱分解のしにくさや、熱分解による異臭の発生
のしにくさなどのバランスに優れるため好ましく、より好ましくは、ポリヒドロキシアル
カノエート樹脂(A)/脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の質量比が、10/90~55
/45であり、さらに好ましくは15/85~55/45である。
<その他の樹脂>
本発明の造形用材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリヒドロキシアルカノエ
ート樹脂(A)および脂肪族ポリエステル系樹脂(B)以外の樹脂、例えば芳香族ポリエ
ステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリ
ル樹脂、アモルファスポリオレフィン、ABS、AS(アクリロニトリルスチレン)、ポ
リカプロラクトン、ポリビニルアルコール、セルロースエステルなどの合成樹脂、ポリ乳
酸や脂肪族芳香族ポリエステルであるポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT
)などの生分解性樹脂などの1種又は2種以上を含有していてもよい。
本発明の造形用材料が、これらのその他の樹脂を含有する場合、本発明の効果を有効に
得るために、その他の樹脂の含有量は、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)および
脂肪族ポリエステル系樹脂(B)と、その他の樹脂との合計100質量部中に70質量部
以下、特に50質量部以下、さらには30質量部以下であることが好ましい。
<その他の成分>
本発明の造形用材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、無機フィラー、鮮度保持剤
、抗菌剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔
料、加水分解防止剤、結晶核剤、アンチブロッキング剤、耐光剤、可塑剤、熱安定剤、難
燃剤、離型剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、分散助剤、各種界面活性剤、スリ
ップ剤等の各種添加剤や、澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉
末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末、或いはこれらの混合物が「その他の成分」
として含まれていてもよい。 これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合し
て使用してもよい。
これらのその他の成分の含有量は、通常、本発明の造形用材料の物性を損なわないため
に、混合する成分の総量が、本発明の造形用材料の総量に対して0.01質量%以上40
質量%以下であることが好ましい。
本発明の造形用材料は、積層痕が目立たず、造形外観が良好になる観点や、フィラメン
トの弾性率を向上させてハンドリング性を向上させる観点から、無機フィラーを添加する
ことが好ましい。無機フィラーとしては、無水シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸
カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セ
ピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラ
ステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミ
ニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸
化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等の塩類等が挙げられ、好ましくはタルク、炭
酸カルシウム、ゼオライトである。
無機フィラーの中には、炭酸カルシウム、石灰石のように、土壌改良剤の性質を持つも
のもある。これらの無機フィラーを特に多量に含むバイオマス由来の脂肪族ポリエステル
系樹脂(B)及びポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)を含む造形材料やその造形物
を、土壌に投棄すれば、生分解後の無機フィラーは残存して、土壌改良剤としても機能す
るので、生分解樹脂としての有意性を高めることができる。
無機フィラーは、その形状によっても分類可能である。無機フィラーには繊維状、粉粒
状、板状、針状のものがあり、粉粒状、板状のものが好ましく、板状フィラーが特に好ま
しい。板状フィラーとしては、タルク、カオリン、マイカ、クレイ、セリサイト、ガラス
フレーク、合成ハイドロタルサイト、各種金属箔、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タン
グステン、窒化ホウ素、板状酸化鉄、板状炭酸カルシウム、板状水酸化アルミニウム、ゼ
オライト等が挙げられる。配合のしやすさ、剛性、射出成形性、分解性、水蒸気等の透湿
性改良、脱臭効果を高めるという観点からは、タルク、マイカ、或いはクレイ、炭酸カル
シウム、ゼオライトを用いることが好ましい。また、フィラーは、樹脂との相溶性を向上
し、造形時のダマやフィラメント紡糸時の目ヤニを抑制するために、表面処理がされてい
てもよい。
無機フィラーは、ハンドリングの理由から平均粒子径が0.5μm以上であることが好
ましく、より好ましくは0.6μm以上、更に好ましくは0.7μm以上、特に好ましく
は1.0μm以上である。一方で、無機フィラーの平均粒子径は50μm以下であること
が好ましく、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下である。
無機フィラーの平均粒子径の測定方法は特に限定されない。測定法の具体例としては、
島津製作所製粉体比表面積測定装置SS-100型(恒圧式空気透過法)で測定した粉末
1gあたりの比表面積値を求め、JIS M8511に準じた空気透過法による比表面積
の測定結果から、下記式によりフィラーの平均粒子径を計算する方法が挙げられる。
平均粒子径(μm)=10000×{6/(フィラーの比重×比表面積)}
無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率
で併用してもよい。
無機フィラーの好適なものとして使用できるタルクは、例えば、日本タルク製のミクロ
エースや富士タルク工業製のMG113、MG115等が挙げられる。また、無機フィラ
ーの好適なものとして使用できる炭酸カルシウムは、具体的には、備北粉化工業社製のソ
フトン1200、2200等が挙げられる。
上記無機フィラーの含有量は特に規定されないが、本発明の造形用材料の総量に対して
1~50質量%であることが好ましい。より好ましくは10~45質量%、さらに好まし
くは15~40質量%である。無機フィラーの含有量が上記下限よりも少ないと、生分解
性や造形外観の向上効果を得ることができない。一方で、無機フィラーの含有量が上記上
限よりも多いと、造形物の層間接着を阻害し、造形物の強度に劣る懸念がある。
本発明の造形用材料は、特に上記無機フィラーを含有する場合、造形時に、ノズルに、
樹脂中からブリードした無機フィラーが付着することで発生するダマを抑制するためや、
フィラメント形状の造形用材料を作製する際の目やに抑制のために、分散材を添加するこ
とが望ましい。これら分散材としては、金属石鹸(脂肪酸金属塩)、脂肪酸エステル、脂
肪酸アマイド、ワックス、低分子量ポリマーなどが挙げられる。なかでも分散性やブリー
ド抑制の観点から、ステアリン酸カルシウムや、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石
鹸が好ましい。添加量は、本発明の造形用材料の総量に対して、500~5000rpm
が好ましい。
上記その他の成分のうち、防曇剤は具体的には、炭素数4以上20以下の飽和又は不飽
和脂肪族カルボン酸と多価アルコールのエステル系界面活性剤が好ましく用いられる。
上記その他の成分のうち、スリップ剤としては、炭素数6~30の不飽和および飽和脂
肪酸からなる不飽和および飽和脂肪酸アマイド、不飽和および飽和脂肪酸ビスアマイドが
挙げられる。スリップ剤としては、最も好ましくはエルカ酸アマイドやオレイン酸アマイ
ド、ステアリン酸アマイドやそれらのビスアマイド等が挙げられる。これらは、本発明の
効果を損なわない範囲で任意に配合することができ、1種を単独で用いてもよく、2種以
上を混合して使用してもよい。
上記その他の成分のうち、アンチブロッキング剤としては、炭素数6~30の飽和脂肪
酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチロールアマイド、エタノールアマイド、天然
シリカ、合成シリカ、合成ゼライト、タルク等が挙げられる。
上記その他の成分のうち、耐光剤としては具体的には、ビス(2,2,6,6-テトラ
メチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-
ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-
4-ピペリジル)セバケート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル
)-2-n-ブチル-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)マロネー
ト、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-n-ブチル-ビス
(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)マロネート、2-(3,5-ジ
-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチル-ビス(2,2,6,6-テ
トラメチル-4-ピペリジル)マロネート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロ
キシベンジル)-2-n-ブチル-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペ
リジル)マロネート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-
1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペ
ンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ミッ
クスド(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,
4-ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド(1,2,2,6,6-ペンタメチル-
4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ミッ
クスド{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル/β,β,β’,β’-テトラ
メチル-3,9-〔2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〕ジエ
チル}-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド{1,2,2,6
,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/β,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-〔
2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〕ジエチル}-1,2,3
,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2-ビス(3-オキソ-2,2,6,6-テ
トラメチル-4-ピペリジル)エタン、1-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ
フェニル)-1,1-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシカル
ボニル)ペンタン、ポリ〔1-オキシエチレン(2,2,6,6-テトラメチル-1,4
-ピペリジル)オキシスクシニル〕、ポリ〔2-(1,1,4-トリメチルブチルイミノ
)-4,6-トリアジンジイル-(2,2,6,6-テトラ及び-4-ピペリジル)イミ
ノヘキサメチレン-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕、N,
N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス〔N-ブチル-N-
(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ〕-6-クロロ-1,3,5
-トリアジン縮合物及びそのN-メチル化合物、コハク酸と1-(2-ヒドロキシエチル
)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンとの重縮合物等が挙げら
れる。 これらの中で、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セ
バケート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチル
-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)マロネートが特に好まし
い。
上記その他の成分のうち、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾ
ール系、サリチル酸系、シアノアクリレート系等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤の
中で、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、具体的には、2-[2-ヒドロキ
シ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール
、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキ
シ-フェノールが挙げられる。
上記その他の成分のうち、酸化防止剤としては、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン
)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ペンタ
エリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェ
ニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル
-α,α’,α”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、オク
タデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ
ート、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリ
ル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H、3H,5H)-トリオン、
1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,
3,5-トリアジン-2,4,6(1H、3H,5H)-トリオン、カルシウムジエチル
ビス[{3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル}メチル]
ホスホネート、ビス(2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジ-tert-ブチル-5,
5’-ジメチルフェニル)エタン、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3
,5-ジ-tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオンアミド等のヒンダ
ードフェノール系酸化防止剤、トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト
、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,
4’―ジイルビスホスフォナイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6
-メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェ
ニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系酸化防止剤、3-ヒドロキシ-5
,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとキシレンの反応性生物等のラクトン系
酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等の
硫黄系酸化防止剤及びこれらの2種以上の混合物等が例示できる。この中でもヒンダード
フェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。
好ましいヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、イルガノックス3790、イル
ガノックス1330、イルガノックス1010、イルガノックス1076、イルガノック
ス3114、イルガノックス1425WL、イルガノックス1098、イルガノックスH
P2225FL、イルガノックスHP2341、イルガフォスXP-30(以上、BAS
F社製)、スミライザーBBM-S(住友化学社製)が挙げられる。最も好ましい酸化防
止剤はイルガノックス1010(ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-
tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート])、イルガノックス13
30(3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル-α,α’,α”-
(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール)である。
<3次元造形用材料の形態>
本発明の3次元造形用材料の形態は特に限定されず、結合剤噴射式、材料押出法、粉末
床溶融結合方式などの3次元プリンターに適用可能な形態であればよい。3次元造形用材
料の形態としては、たとえば、粉体、ペレット、顆粒、フィラメントなどが挙げられる。
特に、造形用材料の生産性や、ハンドリング性の観点から、材料押出法に適した、ペレッ
トやフィラメントの形状が好ましい。本発明の3次元造形用材料は、上記に例示したよう
な樹脂を複数用いる場合に、複数の樹脂を混合して均質な材料としてもよいし、用いる2
種以上の樹脂をそれぞれ異なる層に分けて多層構造としてもよい。
ペレット形状の場合、その形状は、円柱状(断面が楕円のものも含む)、球状、米粒状
、円盤状、四角状などが挙げられる。造形時に、プリンターのノズル上部に通常設けられ
ているスクリューに、良好に噛みこんでいく観点から、ペレットの一番長い部分の長さが
10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。また、ス
クリューへの巻き付きを抑制する観点から、ペレットの一番短い部分の長さが、0.1m
m以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。
フィラメント形状の場合、その径は、使用するシステムの能力に依存するが、好ましく
は1.0~5.0mm、より好ましくは1.3~3.5mmである。更に径の精度はフィ
ラメントの任意の測定点に対して±5%以内の誤差に納めることが原料供給の安定性の観
点から好ましい。
フィラメント形状の場合、その好ましい形態は、ボビン等に巻きとった巻回体であり、
また、フィラメントを容器に密封収納した3次元プリンター用カートリッジであることが
、吸湿抑制の観点から好ましい。
<3次元造形用材料の製造方法>
本発明の3次元造形用材料は、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)や、脂肪族ポ
リエステル系樹脂(B)および、必要に応じて用いられるその他の樹脂やその他の成分を
、混合、あるいは積層することなどにより製造される。混合比率等の異なる2種以上の混
合品を作製したあと、さらにそれらを積層することで製造してもよい。なお、生産性の観
点から、全ての成分が混合されて製造されることが好ましい。
この混合工程は、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)や、脂肪族ポリエステル系
樹脂(B)および、必要に応じて用いられるその他の樹脂やその他の成分を、所定の割合
で同時に、又は任意の順序で、タンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバ
リーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合し、好ましくは溶融混練するこ
とにより行われる。
混合工程で使用される混練機は、溶融混練機であってもよい。二軸押出機もしくは単軸
押出機の種別の如何を限定するものではないが、用いるポリヒドロキシアルカノエート樹
脂(A)や、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)及びその他の樹脂や成分等の特性に応じて
溶融混練を達成する目的の下では、二軸押出機がより好ましい。
溶融混練時の温度は120~220℃が好ましく、130~160℃であることがより
好ましい。この温度範囲であれば、溶融混練に要する時間の短縮が可能になり、樹脂の劣
化に伴う色調の悪化等を防止することができ、また、耐衝撃性や耐湿熱性などの実用面で
の物理特性をより向上させることができる。
溶融混練時間は、樹脂劣化をより確実に回避するという観点から無用な長大化は好まし
くなく、20秒以上20分以下が好ましく、より好ましくは30秒以上15分以下である
。この溶融混練時間を満たすような溶融混練温度や時間の条件設定を行うことが好ましい

本発明の3次元造形用材料がペレット形状の場合は、たとえば上記溶融混練時に、スト
ランドカットやホットカットなど任意の手法でペレット化すればよい。また本発明の3次
元造形用材料がフィラメント形状の場合は、例えば上記溶融混練時に吐出されたストラン
ドをそのまま所望の径に調整してフィラメント形状とする方法や、上記のペレット形状で
得られた樹脂を、再び押出機で溶融押出し、フィラメント形状とする方法が挙げられる。
造形用材料が粉末や顆粒形状の場合は、上記のペレット形状で得られた樹脂を、任意の手
法で粉砕する方法などが挙げられる。
本発明の3次元造形用材料は、上記手法で製造されたあと、3次元造形用材料の結晶化
を促進させるため、60℃以上で1日以上、熱処理を行うことが好ましい。3次元造形用
材料の結晶化が十分にされていないと、3次元造形用材料が造形前に生分解されて3次元
造形用材料や造形物の強度が低下する懸念がある。また、造形時の雰囲気温度の上昇によ
って、3次元造形用材料同士がブロッキングしたり、3次元造形用材料が急激に結晶化し
たり軟化したりすることなどにより、造形性が低下する懸念がある。ここで、結晶化が十
分にされているかは、DSCによる結晶化ピークの有無や、結晶化融解熱量、X線回折法
などによって確認することができる。
本発明の3次元造形用材料は、上記手法で製造された後、60℃以上で1晩程度乾燥し
、含水率が低い状態で、アルミ内装袋やポリエチレン製袋などに密封され保管されること
が好ましい。なお、乾燥後の造形用材料の含水率は、2.5%以下であることが好ましい
。該含水率は、2.0%以下がより好ましく、1.5%以下がさらに好ましく、1.0%
以下が特に好ましい。該含水率は、0.3%以上でもよく、0.6%以上でもよい。該範
囲であれば、押出時に発泡や発煙が少なく、また、寸法安定性や機械強度等が安定するた
め好ましい。該特性は、カールフィッシャー法で測定される。
<造形物の製造方法>
本発明の3次元造形用材料を用いて、結合剤噴射式、材料押出法、粉末床溶融結合方式
などの3次元プリンターにより造形することで、本発明の造形物を製造することができる
。プリンターが比較的安価に入手できることや、3次元造形用材料のハンドリング性に優
れる観点から、本発明では、材料押出法の3次元プリンターを用いることが好ましい。な
お、本発明の造形物の製造時に、サポート材料として他の樹脂からなる造形用材料を同時
に用いて造形し、造形完了後にこのサポート材料を取り除いて、本発明の造形物としても
よい。
材料押出法の3次元プリンターは一般に、加熱可能な造形テーブル、押出ノズル、加熱
溶融器、原料供給部などを備えている。これらの3次元プリンターの中には、押出ノズル
と加熱溶融器とが一体化されているものもある。
押出ノズルはガントリー構造に設置されることにより、造形テーブルのX-Y平面上に
任意に移動させることができる。造形テーブルは目的の造形物やサポート材等を構築する
プラットフォームであり、加熱保温することで造形物との密着性を得たり、得られる造形
物を所望の3次元物体として寸法安定性を改善したりできる仕様であることが好ましい。
押出ノズルと造形テーブルとは、通常、少なくとも一方がX-Y平面に垂直なZ軸方向に
可動となっている。また、プリンターによっては、ノズルがX方向(あるいはY方向)の
みに移動し、造形テーブルがY方向(あるいはX方向)に動く仕様のものなどもある。
造形用材料がフィラメント形状の場合は、原料供給部からフィラメントが供給され、対
向する1組のローラー又はギアーにより押出ノズルへ送り込まれ、押出ノズルにて加熱溶
融され、ノズル先端より押し出される。また造形用材料がペレットや粉体、顆粒の場合は
、定量フィーダやホッパーなどの原料供給部から造形用材料が投入され、スクリューやピ
ストンなどで溶融されながら、押出ノズルへと送り込まれ、ノズル先端より押し出される
。ノズルから吐出された造形用材料は、3次元モデルを基にして発信される信号により、
押出ノズルあるいは造形テーブルがその位置を移動することで、造形テーブル上に積層堆
積されてゆく。この工程が完了した後、基板から積層堆積物を取り出し、必要に応じてサ
ポート材等を剥離したり、余分な部分を切除したりして所望の3次元物体として造形物を
得ることができる。
押出ノズルから吐出される溶融樹脂の温度は120℃以上であることが好ましく、14
0℃以上であることがより好ましく、一方、250℃以下であることが好ましく、220
℃以下であることがより好ましい。溶融樹脂の温度が上記下限値以上であると、樹脂が十
分に流動するため、高速で造形した場合も造形外観に優れる傾向にあり好ましい。一方、
溶融樹脂の温度が上記上限値以下であると、樹脂の熱分解や焼け、発煙、臭い、べたつき
、ダマの発生といった不具合の発生を防ぎやすいため好ましい。
押出ノズルから吐出される造形用材料は、好ましくは直径0.01~1mm、より好ま
しくは直径0.02~0.8mmのストランド状で吐出される。造形用材料がこのような
形状でノズルから吐出されると、3次元モデルの再現性が良好となる傾向にあるために好
ましい。
本発明の造形物は、使用する用途などに応じて、造形後、熱処理により結晶化を促進あ
るいは完了させてもよい。
<造形物の用途>
本発明の造形物は、生分解性に優れたものである。このため、文房具、玩具、食品用の
容器、農業用資材、漁具(漁網、ルアー等の釣り具、捕獲用/養殖用のカゴなど)、医療
用部材、学校教材、家電製品、OA機器の補修部品、自動車、オートバイ、自転車等の各
種パーツ、建装材等の部材等の用途に好適に用いることができる。
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるもの
ではない。なお、本明細書中に表示される種々の測定値および評価は次のようにして行っ
た。
<物性評価>
[引張貯蔵弾性率(E’)およびtanδピーク]
実施例および比較例で得られた造形用材料を、熱プレスによりそれぞれ厚み約0.5m
mのシートに成形し、幅約4mmの短冊状に切り出し、標線間距離を2.5cmとして、
測定用サンプルとした。動的粘弾性測定機(アイティ計測(株)製、商品名:粘弾性スペ
クトロメーターDVA-200)を用いて、歪み0.1%、振動周波数1Hz、昇温速度
3℃/分の条件で、引張貯蔵弾性率(E’)を-100℃から200℃まで測定し、得ら
れたデータから、30℃における引張貯蔵弾性率(E’)および、-100℃から0℃ま
でのtanδピーク数、ピーク高さを読み取った。
[結晶化熱量、結晶化温度、および融点]
実施例および比較例で得られた造形用材料約10mgについて、示差走査熱量計((株
)パーキンエルマー社製、商品名:Diamond DSC)を用いて、JIS K71
21に準じて、加熱速度10℃/分で-70℃から200℃まで昇温し、200℃で1分
間保持した後、冷却速度10℃/分で-70℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で
200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムの降温過程から、結晶化量および結晶
化温度を読み取った。また、再昇温過程から、融点を読み取った。
[せん断貯蔵弾性率(G’)]
実施例および比較例で得られた造形用材料について、60℃で12時間乾燥した後、レ
オメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製、商品名:MARS I
I)を用いて、φ20mmパラレルプレートにて、歪0.5%、周波数1Hz、降温速度
3℃/minで、せん断引張貯蔵弾性率(G’)を200℃から50℃まで測定し、得ら
れたデータから、せん断貯蔵弾性率(G’)が1×10Paになる温度を読み取った。
[メルトフローレート(MFR)]
実施例および比較例で得られた造形用材料について、60℃で12時間乾燥した後、メ
ルトインデックス測定装置((株)東洋精機製作所製、商品名:セミメルトインデックサ
)を用いて、JISK7210に準じて、170℃、荷重2.16kgfにてMFR(g
/10min)を測定した。
[熱分解温度]
実施例および比較例で得られた造形用材料約10mgについて、示差熱熱重量同時測定
装置((株)日立ハイテクサイエンス製、商品名:STA2000RV)を、JISK7
120に準じて、昇温速度10℃/分で、100ml/minの空気雰囲気下で、30℃
から500℃まで昇温した際の熱重量測定によって、熱分解開始温度を測定した。
<生産性の評価>
設定温度150℃で、押出機先端の口径2.5mmのノズルから造形用材料を吐出し、
1.75mmφのフィラメント状の3次元造形用材料を20m/分の速度で30分間引き
取った際に、ノズル周りに目ヤニが発生するかどうかを目視で確認し、造形用材料の生産
性を以下の基準で評価した。
A:目ヤニの発生なし
A-:目ヤニの発生があるが、フィラメント径に影響なく、良好にサンプル採取できた
B:目ヤニの発生があり、発生した目ヤニがフィラメント径に付着するなど、サンプル
を良好に採取できなかった
<造形性の評価>
[高速造形性]
実施例および比較例で得られた造形用材料について、材料押出法の3次元プリンター(
Prusa Research製Original Prusa i3 MK3S)を用
いて、造形速度50mm/s、ノズル温度180℃、造形テーブル温度60℃、冷却ファ
ン100%、インフィル20%とし、造形テーブルにはtesa製の青色マスキングテー
プを貼り付けて、図1に示す3DBenchyモデルの造形を行い、造形結果から高速造
形性を以下の用に判断した。
A:最後まで造形用材料は良好にノズルから吐出され、造形を完了できた
B+:造形中にフィラメントが折れたり屈曲することでノズルに造形用材料を送れなく
なり、造形が途中で止まってしまった。
B:造形開始時にフィラメントが折れたり屈曲することでノズルに造形用材料を送れな
くなり、造形を開始できなかった。
[フィラメントのハンドリング性]
実施例および比較例で得られたフィラメント形状の造形用材料について、30cm長さ
にカットし、図2のように結び目を作って手で引っ張った際の挙動から、以下のようにハ
ンドリング性(屈曲した際の折れにくさ)を評価した。
AA:図2のように結び目を作ることができ、その後手で引っ張っても、フィラメント
は破断しなかった。
A+:図2のように結び目を作ることができるが、その後手で引っ張ると、結び目とフ
ィラメントの間で、フィラメントが破断した。
A:図2のように結び目を作ることができるが、その後手で引っ張ると、結び目の屈曲
部でフィラメントが折れて、フィラメントが破断した。
B:図2のような結び目ができる前に、屈曲部でフィラメントが折れて、フィラメント
が破断した。
[造形物の反り]
上記高速造形評価と同じ造形条件で、同じ形状を造形した際の、造形物の反りの発生の
状況から、以下のように反り抑制効果を評価した。
A:反らずに最後まで造形が完了できた
B:造形中に、反りにより造形テーブルから造形物が剥がれたため、造形が完了できな
かった。
[ノズル滞留時の安定性]
上記高速造形評価時と同じプリンターを用いて、造形用材料をノズルにロードした状態
で、ノズル温度215℃で5分間放置したあと、フィラメントを5mm程度ノズルに送り
込んだ際の、ノズルからの吐出物の状態より、ノズル滞留時の安定性を以下のように評価
した。
A:滞留前と同様に、ノズルからストランド状に造形用材料が吐出された
A-:滞留により造形用材料の粘度が低下し、安定したストランド状ではなく、液滴状
で造形用材料がノズルから吐出された。
B:造形用材料の粘度が極端に低下し、フィラメントをノズルに送り込まなくても、ノ
ズルから造形用材料の垂れが発生した。
[造形時のブツ発生]
上記高速造形評価と同じ造形条件で、同じ形状を造形した際の、ノズルへの付着物によ
り発生したブツの多さを、目視で判断した。
実施例、比較例で用いた原料を下記する。
<ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)>
PHBH(株式会社カネカ製 PHBH(登録商標) X131A、3HB/3HHモ
ル比:94/6、MFR:6g/10分、融点:140℃)
<脂肪族ポリエステル系樹脂(B)>
PBSA(PTTMCCBiochem社製 BioPBS FD92PM、全ジカル
ボン酸単位量中のコハク酸単位量:74モル%、MFR:5.0g/10分、融点:89
℃)
<その他成分>
Talc-1(富士タルク工業社製 FH-105、平均粒子径:5μm)
Talc-2(富士タルク工業社製 MG-115、平均粒子径:14μm)
ステアリン酸マグネシウム(日東化成工業社製、Mg-St)
(実施例1~3)
表1に示す原料を表1に示す割合でブレンドし、混練温度140℃にて、スクリュー径
φ30mmの二軸押出機にてストランド状に押出し、ペレタイザーによりペレット化した
。得られた樹脂ペレットをスクリュー径φ25mmの単軸押出機にて、設定温度150℃
で、口径2.5mmのノズルから樹脂組成物を押出し、30℃の水槽を経て引取り装置で
20m/minで引取り、直径1.75mm±0.05mmのフィラメント形状の3次元
造形用材料を得た。このフィラメント製造時に生産性の評価を、また製造したフィラメン
ト形状の3次元造形用材料で、物性および造形性の評価を実施した。結果を表2に示す。
(実施例4~5)
表1に示す原料を表1に示す割合でブレンドし、混練温度140℃にて、スクリュー径
φ30mmの二軸押出機にてストランド状に押出し、ペレタイザーによりペレット化した
。得られたペレットに、ステアリン酸マグネシウムを、ペレット重量に対して2000p
pm添加する以外は、実施例1~3と同様にしてフィラメントを製造した場合の、生産性
、物性、および造形性の評価結果の予測を表2に示す。
(比較例1)
原料として、脂肪族ポリエステル系樹脂(B)のみを用いて、スクリュー径φ25mm
の単軸押出機にて、設定温度150℃で、口径2.5mmのノズルから押出し、30℃の
水槽を経て引取り装置で20m/minで引取り、1.75mmφ±0.05mmのフィ
ラメント形状の3次元造形用材料を得た。このフィラメント製造時に生産性の評価を、ま
た製造したフィラメント形状の3次元造形用材料で、物性および造形性の評価を実施した
。結果を表2に示す。なお、比較例1で製造した造形材料は、高速造形性の評価にて造形
できなかったため、造形物の反りについては未評価である。
(比較例2)
原料としてポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)のみを用いた以外は、比較例1と
同様にしてフィラメントを製造した場合の、生産性、物性、および造形性の評価結果の予
測を表2に示す。
Figure 2022104869000001
Figure 2022104869000002
表2より、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)を含み、tanδが本発明の範囲
である実施例1~5は、フィラメントのハンドリング性や、造形性に優れた3次元造形材
料となっている。これに対して、比較例1は、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)
を含まないため、造形材料の剛性に劣り、造形時にフィラメントの屈曲が発生して高速造
形性に劣る。また、比較例2は、tanδのピークが本発明の範囲にないのでフィラメン
トのハンドリング性に劣る。
また、実施例1や実施例2は、tanδのピーク値が、本発明の、より好ましい範囲に
あるため、実施例3や実施例4と比較して、フィラメントのハンドリング性がより優れて
いる。また実施例1は、実施例2のtanδのピーク値よりもさらに好ましい範囲にある
ため、フィラメントのハンドリング性が実施例2よりもさらに優れている。
また、実施例4および5は、金属石鹸を含有していることにより、実施例1~3と比較
して、無機フィラーのブリードが抑制されることにより、生産性に優れ、また造形時のブ
ツ発生も抑制できると予想される。

Claims (10)

  1. ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)を含む3次元造形用材料であって、動的粘弾
    性測定において、振動周波数1Hzで測定した際に、-100℃から0℃の範囲にtan
    δのピークを1つ以上有する、3次元造形用材料。
  2. 脂肪族ポリエステル系樹脂(B)を含有する、請求項1に記載の3次元造形用材料。
  3. 上記脂肪族ポリエステル系樹脂(B)に含まれる全ジカルボン酸由来する繰り返し単位
    中の、コハク酸に由来する凝り返し単位の割合が、5モル%以上100モル%以下である
    、請求項2に記載の3次元造形用材料。
  4. 上記ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)と、上記脂肪族ポリエステル系樹脂(B
    )の質量比が、10/90~60/40である、請求項2または3に記載の3次元造形用
    材料。
  5. 動的粘弾性測定において、振動周波数1Hzで測定した30℃における引張貯蔵弾性率
    (E’)が400MPa以上である、請求項1~4に記載の3次元造形材料。
  6. 示差走査熱量測定において、速度10℃/分で-70℃から200℃まで昇温後、冷却
    速度10℃/分で-70℃まで降温した際の結晶化熱量が55J/g以下である、請求項
    1~5に記載の3次元造形材料。
  7. 無機フィラーを含有する、請求項1~6に記載の3次元造形用材料。
  8. 上記ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(A)が、3-ヒドロキシブチレート単位およ
    び3-ヒドロキシヘキサノエート単位を主校正単位として含有する共重合体である、請求
    項1~7に記載の3次元造形用材料。
  9. フィラメントおよびペレット形状のいずれかである、請求項1~8に記載の3次元造形
    用材料。
  10. 請求項1~9に記載の3次元造形用材料を用いて造形した造形物。
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