JP2021055084A - フィルム - Google Patents

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尚之 小坂
Naoyuki Kosaka
尚之 小坂
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Abstract

【課題】室温での生分解性度が高く、海洋生分解性にも優れ、フィルムを得る際の成形性にも優れると共に剛性や引張強度などの機械的特性や透明性、口開き性などの特性にバランスよく優れた生分解性ポリエステルフィルムを提供する。【解決手段】脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位とを主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、ポリヒドロキシアルカノエート(B)及び無機フィラー(C)を含み、ポリヒドロキシアルカノエート(B)が3−ヒドロキシブチレート単位及び3−ヒドロキシヘキサノエート単位を主構成単位として含有し、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とポリヒドロキシアルカノエート(B)の質量比が95/5〜70/30、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とポリヒドロキシアルカノエート(B)の合計100質量部に対する無機フィラー(C)の含有割合が0.1〜15質量部である脂肪族ポリエステル系樹脂組成物よりなるフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪族ポリエステル系樹脂組成物よりなるフィルムに関する。
近年、プラスチック廃棄物が、生態系への影響、燃焼時の有害ガス発生、大量の燃焼熱量による地球温暖化等、地球環境への大きな負荷を与える原因となっている問題を解決できるものとして、生分解性プラスチックの開発が盛んになっている。
中でも植物由来の生分解性プラスチックを燃焼させた際に出る二酸化炭素は、もともと空気中にあったもので、大気中の二酸化炭素は増加しない。このことをカーボンニュートラルと称し、二酸化炭素削減目標値を課した京都議定書の下、重要視され、積極的な使用が望まれている。
最近、生分解性およびカーボンニュートラルの観点から、植物由来のプラスチックとして脂肪族ポリエステル系樹脂が注目されており、特にポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと称する場合がある)系樹脂、さらにはPHA系樹脂の中でもポリ(3−ヒドロキシブチレート)単独重合樹脂(以下、PHBと称する場合がある)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)共重合樹脂(以下、PHBVと称する場合がある)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂(以下、PHBHと称する場合がある)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)共重合樹脂およびポリ乳酸等が注目されている。
例えば、特許文献1には、ポリヒドロキシアルカノエートにアミド結合を有する化合物とペンタエリスリトールを含む脂肪族ポリエステル樹脂組成物からなる成形体が開示されており、射出成形やシート加工などの成形加工における成形加工性を向上したことが記載されている。
一方、近年では農業用資材や包装材などに適用されるフィルムにも生分解性樹脂を用いることが検討されている。
例えば、特許文献2には、ポリヒドロキシアルカノエートに脂肪酸アミドを含むマスターバッチと脂肪族芳香族ポリエステルを混合して、ポリヒドロキシアルカノエートを含む生分解性ポリエステルフィルムをインフレーション成形により実用的な加工条件で安定的に生産できる製造方法が開示されている。また、特許文献3には、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)共重合体とポリブチレンサクシネートを含む樹脂組成物およびそれを用いたフィルムが開示されている。
国際公開第2014/068943号 国際公開第2018/181500号 国際公開第2017/087658号
近年のより強い自然環境保護に対する社会の流れ、中でも、使用済みプラスチック用品の廃棄に起因する環境汚染(特に使用済みプラスチック用品の海洋廃棄によって引き起こされるマイクロプラスチックによる海洋生物への影響)から、生分解性を有する樹脂としても、部分的な生分解性ではなく、完全生分解性を有する樹脂が要求されている。また、生分解の環境としても、比較的高温(58℃以上)の好気的コンポスト環境(土中)下での生分解性だけでなく、室温(28℃)の好気的コンポスト(土中)環境下での生分解性や海中における高い生分解性が求められている。室温生分解性のみならず海中での生分解性(海洋生分解性)も示すものであれば、例えば、生分解性樹脂からなるフィルムなどを、使用後にホームコンポストとして処理することが可能となるだけでなく、更には海中で生分解することによりマイクロプラスチックによる海洋生物への悪影響をなくすことが可能となる。
上記特許文献2〜特許文献3には、フィルム材料として、ポリヒドロキシアルカノエートと脂肪族芳香族ポリエステルまたはポリブチレンサクシネートを組み合わせた組成物を使用することが開示されているが、ここで提案されている生分解性樹脂は、室温における生分解性度並びに海中における生分解性度が低く、今日、急速に高くなってきている環境負荷軽減の要求を満足できるものではなかった。
また、農業用資材(マルチフィルム)やレジ袋に代表される包装材などにあっては、生分解速度だけでなく、機械強度や透明性、更にはインフレーション成形時の口開き性などの特性も要求されるが、これらの要求特性を満たすには、従来提案されているフィルム用組成物では不十分であった。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、従来の生分解性樹脂を用いたフィルムに比べて、室温での生分解性度が高く、海洋生分解性にも優れ、また、フィルムを得る際の成形性にも優れると共に剛性や引張強度などの機械的特性や透明性、口開き性などの特性にバランスよく優れた生分解性ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位とを主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とポリヒドロキシアルカノエート(B)と、更に無機フィラー(C)を所定の割合で含む脂肪族系ポリエステル系樹脂組成物を成形してなる生分解性ポリエステルフィルムが、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]〜[10]に存する。
[1] 脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位とを主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、ポリヒドロキシアルカノエート(B)及び無機フィラー(C)を含む脂肪族ポリエステル系樹脂組成物であって、該ポリヒドロキシアルカノエート(B)が3−ヒドロキシブチレート単位及び3−ヒドロキシヘキサノエート単位を主構成単位として含有する共重合体であり、該脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と該ポリヒドロキシアルカノエート(B)の質量比が95/5〜70/30であり、該脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と該ポリヒドロキシアルカノエート(B)の合計量100質量部に対する該無機フィラー(C)の含有割合が0.1〜15質量部である脂肪族ポリエステル系樹脂組成物を用いた、フィルム。
[2] 前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)に含まれる脂肪族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位中にコハク酸単位及びアジピン酸単位を含む、[1]に記載のフィルム。
[3] 前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)に含まれる脂肪族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位中に含まれるアジピン酸単位量が18モル%以上32モル%以下である、[1]又は[2]に記載のフィルム。
[4] 前記無機フィラー(C)が無水シリカ、炭酸カルシウム、タルク、珪酸塩及びゼオライトからなる群より選ばれる1種又は2種以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載のフィルム。
[5] 前記無機フィラー(C)の平均粒子径が30μm以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のフィルム。
[6] 引張破断強度が25MPa以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載のフィルム。
[7] Hazeが40以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載のフィルム。
[8] インフレーション法により成形された、[1]〜[7]のいずれかに記載のフィルム。
[9] Tダイ法により成形された、[1]〜[7]のいずれかに記載のフィルム。
[10] インフレーションフィルムであって、ASTM D1893−67(1985)に基づき、インフレーションフィルム内面同士のMD方向の剥離強度が12N以下であり、且つ脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位とを主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、3−ヒドロキシブチレート単位及び3−ヒドロキシヘキサノエート単位を主構成単位として含有する共重合体であるポリヒドロキシアルカノエート(B)及び無機フィラー(C)を含む脂肪族ポリエステル系樹脂組成物よりなることを特徴とするインフレーションフィルム。
本発明によれば、成形性に優れ、室温での生分解性度が高く、海洋生分解性にも優れ、且つ、剛性や引張強度などの機械的特性や透明性、口開き性などの特性にバランスよく優れる生分解性ポリエステルフィルムが提供される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
尚、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
また、本明細書において、“質量%”、及び“質量部”と、“重量%”及び“重量部”とは、それぞれ同義である。
また、フィルムのMD方向とは、フィルム成形時の押出方向(或いは引き取り方向、流れ方向)をさし縦方向とも言い、TD方向とは当該MD方向に直交する方向をさし、横方向又は幅方向とも言う。
本発明のフィルムは、脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位とを主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、ポリヒドロキシアルカノエート(B)及び無機フィラー(C)を含む脂肪族ポリエステル系樹脂組成物であって、該ポリヒドロキシアルカノエート(B)が3−ヒドロキシブチレート単位及び3−ヒドロキシヘキサノエート単位を主構成単位として含有する共重合体であり、該脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と該ポリヒドロキシアルカノエート(B)の質量比が95/5〜70/30であり、該脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と該ポリヒドロキシアルカノエート(B)の合計量100質量部に対する該無機フィラー(C)の含有割合が0.1〜15質量部である脂肪族ポリエステル系樹脂組成物(以下、「本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物」と称す場合がある。)を用いたものである。
本発明のインフレーションフィルムは、ASTM D1893−67(1985)に基づき、インフレーションフィルム内面同士のMD方向の剥離強度が12N以下であり、且つ脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位とを主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、3−ヒドロキシブチレート単位及び3−ヒドロキシヘキサノエート単位を主構成単位として含有する共重合体であるポリヒドロキシアルカノエート(B)及び無機フィラー(C)を含む脂肪族ポリエステル系樹脂組成物、好ましくは、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物よりなることを特徴とする。
本発明において、脂肪族ジオールとは脂肪族炭化水素基に水酸基が2つ結合したものをいい、該脂肪族炭化水素基としては、通常直鎖脂肪族炭化水素基が用いられるが、分岐構造を有していても構わないし、環状構造を有していても構わず、それらを複数有していても構わない。
また、脂肪族ジカルボン酸とは、脂肪族炭化水素基にカルボキシル基が2つ結合したものをいい、該脂肪族炭化水素基としては、通常直鎖脂肪族炭化水素基が用いられるが、分岐構造を有していても構わないし、環状構造を有していても構わず、それらを複数有していても構わない。
また、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物に含まれる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、繰返し単位を有する重合体であるが、それぞれの繰返し単位は、それぞれの繰返し単位の由来となる化合物に対する化合物単位とも呼ぶ。例えば、脂肪族ジオールに由来する繰返し単位を「脂肪族ジオール単位」、脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位を「脂肪族ジカルボン酸単位」とも呼ぶ。
なお、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中の「主構成単位」とは、通常、その構成単位が脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中に80質量%以上含まれる構成単位のことであり、主構成単位以外の構成単位が全く含まれない場合もある。ポリヒドロキシアルカノエート(B)における「主構成単位」についても同様である。
[メカニズム]
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物に含まれる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及びポリヒドロキシアルカノエート(B)は室温で高い生分解性を有すると共に、海中でも高い生分解性度を有することから、樹脂成分として、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及びポリヒドロキシアルカノエート(B)を含む本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物よりなる本発明のフィルムは、室温での生分解性及び海洋生分解性に優れる。また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とポリヒドロキシアルカノエート(B)とを所定の割合で併用することで、剛性を向上させることができる。
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物が、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及びポリヒドロキシアルカノエート(B)と共に更に無機フィラー(C)を所定の割合で含むことで、インフレーション成形時の口開き性や適度な剛性を付与することでき、成形性に優れたものとすることができる。
また、無機フィラー(C)を添加すると成形品の表面積が増大することと、さらに分解が促進された際に無機フィラーが脱落することで微生物が生産する分解酵素との接触面積が増えることから、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及びポリヒドロキシアルカノエート(B)の生分解速度を速める機能も発揮される。また、無機フィラー(C)は、核剤としても働くことにより成形性の向上にも有効に作用するため、無機フィラー(C)を所定の割合で含むことにより、より一層室温での生分解性と海洋生分解性に優れたフィルムを良好な成形性、生産性のもとに提供することが可能となる。
[脂肪族ポリエステル系樹脂組成物]
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、ポリヒドロキシアルカノエート(B)、及び無機フィラー(C)を含む本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物について以下に説明する。
<脂肪族ポリエステル系樹脂(A)>
本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)(以下「ポリエステル系樹脂(A)」と称す場合がある。)は、脂肪族ジオール単位及び脂肪族ジカルボン酸単位を主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂である。
本発明で用いるポリエステル系樹脂(A)は、全ジカルボン酸単位中にコハク酸単位及びアジピン酸単位を含むことが好ましい。また、この場合において、ポリエステル系樹脂(A)は、コハク酸単位を全ジカルボン酸単位中に5モル%以上90モル%以下含み、アジピン酸単位を全ジカルボン酸単位中に10モル%以上95モル%以下含むことが好ましい。
ポリエステル系樹脂(A)は、コハク酸単位及びアジピン酸単位の量が異なる脂肪族ポリエステル系樹脂の混合物であってもよい。即ち、コハク酸単位及びアジピン酸単位を含む脂肪族ポリエステル系樹脂とコハク酸単位及びアジピン酸単位を含まない脂肪族ポリエステル系樹脂との混合物であってもよいし、更にコハク酸単位及びアジピン酸単位のうちの一方のみを含む脂肪族ポリエステル系樹脂をブレンドしてポリエステル系樹脂(A)におけるコハク酸単位及びアジピン酸単位量を上記好適範囲内に調整して使用することも可能である。
ポリエステル系樹脂(A)が、コハク酸単位とアジピン酸単位とを含む共重合ポリエステル系樹脂であると、ポリエステル系樹脂(A)の結晶化度が下がり、生分解性をより一層高くすることが可能であり、好ましい。
より具体的には、ポリエステル系樹脂(A)は、下記式(1)で表される脂肪族ジオール単位、および下記式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を含むポリエステル系樹脂である。
−O−R−O− (1)
−OC−R−CO− (2)
式(1)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表す。また、上記式(2)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表す。上記式(1)、(2)で表される脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位は、石油から誘導された化合物由来であっても、植物原料から誘導された化合物由来であってもかまわないが、植物原料から誘導された化合物由来であることが望ましい。
ポリエステル系樹脂(A)が共重合体である場合には、ポリエステル系樹脂(A)中に2種以上の式(1)で表される脂肪族ジオール単位が含まれていてもよく、ポリエステル系樹脂(A)中に2種以上の式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位が含まれていてもよい。
前述の通り、式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位は、コハク酸単位及びアジピン酸単位を含み、全ジカルボン酸単位に対してコハク酸単位を5モル%以上90モル%以下、アジピン酸単位を10モル%以上95モル%以下含むことが好ましい。ポリエステル系樹脂(A)がコハク酸単位及びアジピン酸単位を含み、コハク酸単位及びアジピン酸単位含有量が上記所定範囲内であると、成形性が向上するとともに耐熱性、生分解性にも優れた脂肪族ポリエステル系樹脂組成物を得ることが可能となる。同様の理由から、ポリエステル系樹脂(A)中のコハク酸単位量は、全ジカルボン酸単位に対してより好ましくは10モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、特に好ましくは64モル%以上、とりわけ好ましくは68モル%以上で、より好ましくは88モル%以下、更に好ましくは86モル%以下、特に好ましくは84モル%以下、とりわけ好ましくは82モル%以下である。一方、ポリエステル系樹脂(A)中のアジピン酸単位量は、全ジカルボン酸単位に対してより好ましくは12モル%以上、更に好ましくは14モル%以上、特に好ましくは16モル%以上、とりわけ好ましくは18モル%以上で、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは50モル%以下、特に好ましくは36モル%以下、とりわけ好ましくは32モル%以下である。
また、式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位には、コハク酸単位及びアジピン酸単位以外の脂肪族ジカルボン酸単位が含まれていてもよい。
コハク酸単位及びアジピン酸単位以外の脂肪族ジカルボン酸単位としては特に限定されないが、炭素数2以上40以下、特に炭素数4以上10以下の脂肪族ジカルボン酸単位が好ましく、例えば、スベリン酸単位、セバシン酸単位、ドデカン二酸単位、ダイマー酸単位などの1種又は2種以上が挙げられる。中でもセバシン酸単位が好ましい。
ポリエステル系樹脂(A)がコハク酸単位及びアジピン酸単位以外の脂肪族ジカルボン酸単位を含む場合、その含有量は、全ジカルボン酸単位中に45モル%以下、特に40モル%以下であることが好ましい。
式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、上記したコハク酸単位、アジピン酸単位、コハク酸単位及びアジピン酸単位以外の脂肪族ジカルボン酸やそのアルキルエステル等の誘導体の1種又は2種以上が挙げられる。
式(1)で表されるジオール単位を与える脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、成形性や機械強度の観点から、炭素数が2以上10以下の脂肪族ジオールが好ましく、炭素数4以上6以下の脂肪族ジオールが特に好ましい。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオールが特に好ましい。尚、上記脂肪族ジオールは、2種類以上を用いることもできる。
ポリエステル系樹脂(A)は、脂肪族オキシカルボン酸に由来する繰返し単位(脂肪族オキシカルボン酸単位)を有していてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸成分の具体例としては、例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等、又はこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステル等の誘導体が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体又はラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体又は水溶液のいずれであってもよい。これらの中で特に好ましいものは、乳酸又はグリコール酸或いはその誘導体である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
ポリエステル系樹脂(A)がこれらの脂肪族オキシカルボン酸単位を含む場合、その含有量は、成形性の観点から、ポリエステル系樹脂(A)を構成する全構成単位を100モル%として20モル%以下であることが好ましく、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下であり、最も好ましくは0モル%(含まない)である。
また、ポリエステル系樹脂(A)は3官能以上の脂肪族多価アルコール、3官能以上の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物、或いは3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸成分を共重合することによって、溶融粘度が高められたものであってもよい。
3官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられ、4官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
3官能の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、プロパントリカルボン酸又はその酸無水物が挙げられ、4官能の多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、シクロペンタンテトラカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
また、3官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基が1個とヒドロキシル基が2個のタイプとに分かれ、何れのタイプも使用可能であるが、成形性、機械強度や成形品外観の観点からリンゴ酸等の(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプが好ましく、より具体的には、リンゴ酸が好ましく用いられる。また、4官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基とを同一分子中に共有するタイプに分かれ、何れのタイプも使用可能であるが、カルボキシル基を複数有するものが好ましく、より具体的には、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
ポリエステル系樹脂(A)がこのような3官能以上の成分由来の構成単位を含む場合、その含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を構成する全構成単位を100モル%として、下限が通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が通常5モル%以下、好ましくは2.5モル%以下である。
本発明に係る脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の製造方法は、ポリエステルの製造に関する公知の方法が採用できる。また、この際の重縮合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。通常、エステル化反応を進行させた後、減圧操作を行うことによって更に重合度を高める方法が採用される。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の製造時に、ジオール単位を形成するジオール成分とジカルボン酸単位を形成するジカルボン酸成分とを反応させる場合には、製造される脂肪族ポリエステル系樹脂(A)が目的とする組成を有するようにジオール成分およびジカルボン酸成分の使用量を設定する。通常、ジオール成分とジカルボン酸成分とは実質的に等モル量で反応するが、ジオール成分は、エステル化反応中に留出することから、通常はジカルボン酸成分よりも1〜20モル%過剰に用いられる。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)に脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位等の必須成分以外の成分(任意成分)を含有させる場合、その脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位もそれぞれ目的とする組成となるように、それぞれに対応する化合物(モノマーやオリゴマー)を反応に供するようにする。このとき、上記の任意成分を反応系に導入する時期および方法に制限はなく、本発明に好適な脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を製造できる限り任意である。
例えば脂肪族オキシカルボン酸を反応系に導入する時期および方法は、ジオール成分とジカルボン酸成分との重縮合反応以前であれば特に限定されず、(1)予め触媒を脂肪族オキシカルボン酸溶液に溶解させた状態で混合する方法、(2)原料仕込み時に触媒を反応系に導入すると同時に混合する方法、などが挙げられる。
多官能成分単位を形成する化合物の導入時期は、重合初期の他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込むようにしてもよく、或いは、エステル交換反応後、減圧を開始する前に仕込むようにしてもよいが、他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込む方が工程の簡略化の点で好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、通常、触媒の存在下で製造される。触媒としては、公知のポリエステル系樹脂の製造に用いることのできる触媒を、本発明の効果を著しく損なわない限り任意に選択することができる。その例を挙げると、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の金属化合物が好適である。中でもゲルマニウム化合物、チタン化合物が好適である。
触媒として使用できるゲルマニウム化合物としては、例えば、テトラアルコキシゲルマニウム等の有機ゲルマニウム化合物、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物などが挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウムおよびテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特には、酸化ゲルマニウムが好適である。
触媒として使用できるチタン化合物としては、例えば、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラフェニルチタネート等のテトラアルコキシチタンなどの有機チタン化合物が挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどが好ましい。
また、本発明の目的を損なわない限り、他の触媒の併用を妨げない。なお、触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
触媒の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、使用するモノマー量に対して、通常0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、また、通常3質量%以下、好ましくは1.5質量%以下である。この範囲の下限を下回ると触媒の効果が現れないおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなったり得られるポリマーに著しい着色を生じたり、耐加水分解性が低下したりするおそれがある。
触媒の導入時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に導入しておいてもよく、減圧開始時に導入してもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を導入する場合は、原料仕込み時に乳酸やグリコール酸等の脂肪族オキシカルボン酸単位を形成するモノマーやオリゴマーと同時に導入するか、又は脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましく、特に、重合速度が速くなるという点で脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を製造する際の温度、重合時間、圧力などの反応条件は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応および/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。また、反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下である。更に、反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであるが、中でも常圧が好ましい。また、反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは4時間以下である。反応温度が高すぎると、不飽和結合の過剰生成が起こり、不飽和結合が要因となるゲル化が起こり、重合の制御が困難になることがある。
また、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル反応および/又はエステル交換反応後の重縮合反応は、圧力が、下限が通常0.01×10Pa以上、好ましくは0.03×10Pa以上、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度下で行うことが望ましい。また、この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。更に、反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。反応温度が高すぎると、不飽和結合の過剰生成で不飽和結合が要因となるゲル化が起こり、重合の制御が困難になることがある。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の製造時には、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできる。この場合、鎖延長剤の量は、脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する全構成単位を100モル%とした場合のポリエステル系樹脂(A)中のカーボネート結合やウレタン結合の割合として、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。しかしながら、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中にウレタン結合やカーボネート結合が存在すると、生分解性を阻害する可能性があるため、本発明では、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を構成する全構成単位に対し、カーボネート結合は1モル%未満、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下であり、ウレタン結合は0.55モル%以下、好ましくは0.3モル%以下、より好ましくは0.12モル%以下、更に好ましくは0.05モル%以下とするのがよい。この量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)100質量部あたりに換算すると、0.9質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下である。特に、ウレタン結合量が上記上限値を上回ると、成膜工程等において、ウレタン結合の分解のため、ダイス出口からの溶融膜からの発煙や臭気が問題となる場合があり、また、溶融膜中に発泡による膜切れが起こって安定的に成形できないことがある。
なお、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)中のカーボネート結合量やウレタン結合量は、H−NMRや13C−NMR等のNMR測定結果から算出して求めることができる。
上記鎖延長剤としてのカーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物も使用可能である。
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合体、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の公知のジイソシアネートなどが例示される。
また、その他の鎖延長剤として、ジオキサゾリン、珪酸エステルなどを使用してもよい。
珪酸エステルとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン等が例示される。
これらの鎖延長剤(カップリング剤)を用いた高分子量ポリエステル系樹脂についても従来の技術を用いて製造することが可能である。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で無溶媒にて反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。
より具体的には、ジオール成分とジカルボン酸成分とを触媒反応させて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基を有し、重量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ましくは40,000以上のポリエステルに上記鎖延長剤を反応させることにより、より高分子量化したポリエステル系樹脂を得ることができる。重量平均分子量が20,000以上のプレポリマーは、少量の鎖延長剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残存する触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のポリエステル系樹脂を製造することができる。ここで、ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、溶媒をクロロホルムとし、測定温度40℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値から単分散ポリスチレンによる換算値として求められる。
したがって、例えば鎖延長剤として上記のジイソシアネート化合物を用いて、ポリエステル系樹脂を更に高分子量化する場合には、重量平均分子量が20,000以上、好ましくは40,000以上のプレポリマーを用いることが好ましい。重量平均分子量が20,000未満であると、高分子量化するためのジイソシアネート化合物の使用量が多くなり耐熱性が低下する場合がある。このようなプレポリマーを用いてジイソシアネート化合物に由来するウレタン結合を介して連鎖した線状構造を有するウレタン結合を有するポリエステル系樹脂が製造される。
鎖延長時の圧力は、通常0.01MPa以上1MPa以下、好ましくは0.05MPa以上0.5MPa以下、より好ましくは0.07MPa以上0.3MPa以下であるが、常圧が最も好ましい。
鎖延長時の反応温度は、下限が通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは190℃以上、最も好ましくは200℃以上であり、上限が通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下である。反応温度が低すぎると粘度が高く均一な反応が難しく、高い攪拌動力も要する傾向があり、また高すぎると、ポリエステル系樹脂のゲル化や分解が併発する傾向がある。
鎖延長を行う時間は、下限が通常0.1分以上、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上であり、上限が通常5時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくは30分以下、最も好ましくは15分以下である。鎖延長を行う時間が短すぎる場合には、鎖延長剤の添加効果が発現しない傾向があり、また、長すぎる場合には、ポリエステル系樹脂のゲル化や分解が併発する傾向がある。
本発明で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが可能であって、単分散ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量(Mw)が、通常10,000以上1,000,000以下であるが、成形性と機械強度の点において有利なため、好ましくは20,000以上500,000以下、より好ましくは50,000以上400,000以下である。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づいて190℃、荷重2.16kgで測定した値で、通常0.1g/10分以上100g/10分以下であるが、成形性と機械強度の観点から、好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは30g/10分以下である。脂肪族ポリエステル系樹脂(A)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の融点は70℃以上が好ましく、より好ましくは75℃以上であり、170℃以下であることが好ましく、より好ましくは150℃以下、特に好ましくは130℃未満である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記範囲内にあることが好ましい。
また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の弾性率は180〜1000MPaであることが好ましい。
融点が上記範囲外では成形性に劣り、弾性率が180MPa未満では成形加工性に問題が起こり易く、一方、弾性率が1000MPaを超えると得られるフィルムもろくなる傾向にある。
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の融点や弾性率の調整法は特に限定されないが、例えば、コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸成分の共重合成分の種類を選択したり、ぞれぞれの共重合比率を調節したり、それらを組み合わせたりすることにより調節することが可能である。
脂肪族ポリエステル樹脂(A)としては、市販品を用いることもでき、PTTMCC Biochem社製「BioPBS(登録商標) FZ71PB」、「BioPBS(登録商標) FZ71PM」、「BioPBS(登録商標) FZ91PB」、「BioPBS(登録商標) FZ91PM」、「BioPBS(登録商標) FD92PB」、「BioPBS(登録商標) FD92PM」を用いることができる。
本発明では、脂肪族ポリエステル樹脂(A)は1種に限らず、構成単位の種類や構成単位比、製造方法、物性等の異なる2種以上の脂肪族ポリエステル樹脂(A)をブレンドして用いることができる。
<ポリヒドロキシアルカノエート(B)>
本発明で用いるポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと称することがある)(B)は、一般式:[−CHR−CH−CO−O−](式中、Rは炭素数1〜15のアルキル基である。)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルであり、3−ヒドロキシブチレート単位と3−ヒドロキシヘキサノエート単位を主たる構成単位として含む共重合体である。
本発明で用いるポリヒドロキシアルカノエート(B)は、成形性、熱安定性の観点から、構成成分として3−ヒドロキシブチレート単位を80モル%以上含むことが好ましく、85モル%以上含むことがより好ましい。また、微生物によって生産されたものが好ましい。ポリヒドロキシアルカノエート(B)の具体例としては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂等が挙げられる。
特に、成形加工性および得られる成形体の物性の観点から、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、即ちPHBHが好ましい。
ポリヒドロキシアルカノエート(B)において、3−ヒドロキシブチレート(以下、3HBと称する場合がある)と、共重合している3−ヒドロキシヘキサノエート(以下、3HHと称する場合がある)等のコモノマーとの構成比、即ち共重合樹脂中のモノマー比率としては、成形加工性および成形体品質等の観点から、3−ヒドロキシブチレート/コモノマー=97/3〜80/20(モル%/モル%)であることが好ましく、95/5〜85/15(モル%/モル%)であることがより好ましい。このコモノマー比率が3モル%未満であると、成形加工温度と熱分解温度が近接するため成形加工し難い場合がある。コモノマー比率が20モル%を超えると、ポリヒドロキシアルカノエート(B)の結晶化が遅くなるため生産性が悪化する場合がある。
ポリヒドロキシアルカノエート(B)中の各モノマー比率は、以下のようにガスクロマトグラフィーによって測定できる。
乾燥PHA約20mgに、2mlの硫酸/メタノール混液(15/85(質量比))と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱して、PHA分解物のメチルエステルを得る。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生が止まるまで放置する。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、上清中のPHA分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析することにより、共重合樹脂中の各モノマー比率を求められる。
本発明で用いるポリヒドロキシアルカノエート(B)の重量平均分子量(以下、Mwと称する場合がある)は、前記のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することが可能であって、単分散ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量(Mw)が、通常200,000以上2,500,000以下であるが、成形性と機械強度の点において有利なため、好ましくは250,000以上2,000,000以下、より好ましくは300,000以上1,000,000以下である。重量平均分子量が200,000未満では、機械物性等が劣る場合があり、2,500,000超えると、成形加工が困難となる場合がある。
ポリヒドロキシアルカノエート(B)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づいて190℃、荷重2.16kgで測定した値で、好ましくは1g/10分以上100g/10分以下であるが、成形性と機械強度の観点から、より好ましくは80g/10分以下、特に好ましくは50g/10分以下である。ポリヒドロキシアルカノエート(B)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
ポリヒドロキシアルカノエート(B)の融点は100℃以上が好ましく、より好ましくは120℃以上であり、180℃以下であることが好ましく、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは160℃未満である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記範囲内にあることが好ましい。
ポリヒドロキシアルカノエート(B)は、例えば、Alcaligenes eutrophusにAeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32株(ブダペスト条約に基づく国際寄託、国際寄託当局:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)、原寄託日:平成8年8月12日、平成9年8月7日に移管、寄託番号FERM BP−6038(原寄託FERM P−15786より移管))(J.Bacteriol.,179,4821(1997))等の微生物によって産生される。
ポリヒドロキシアルカノエート(B)としては、市販品を用いることもでき、3−ヒドロキシブチレート単位及び3−ヒドロキシヘキサノエート単位を主構成単位として含むポリヒドロキシアルカノエート(B)の市販品としては、カネカ社製「Aonilex(登録商標) X131N」、「Aonilex(登録商標) X131A」、「Aonilex(登録商標) 151A」、「Aonilex(登録商標) 151C」、「PHBH(登録商標) X331N」、「PHBH(登録商標) X131A」、「PHBH(登録商標) 151A」、「PHBH(登録商標) 151C」を用いることができる。
本発明では、ポリヒドロキシアルカノエート(B)は1種に限らず、構成単位の種類や構成単位比、製造方法、物性等の異なる2種以上のポリヒドロキシアルカノエート(B)をブレンドして用いることができる。
<無機フィラー(C)>
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂(A)及びポリヒドロキシアルカノエート(B)に加えて更に無機フィラー(C)を含む。
本発明で用いる無機フィラー(C)としては、無水シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム、珪酸アルミニウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等の塩類等が挙げられ、好ましくはタルク、炭酸カルシウム、ゼオライトである。
無機フィラーの中には、炭酸カルシウム、石灰石のように、土壌改良剤の性質を持つものもあり、これらの無機フィラーを特に多量に含むバイオマス由来の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及びポリヒドロキシアルカノエート(B)を含む脂肪族ポリエステル系樹脂組成物よりなるフィルムを、土壌に投棄すれば、生分解後の無機フィラー(C)は残存して、土壌改良剤としても機能するので、生分解性樹脂組成物としての有意性を高めることができる。
また、無機フィラー(C)は、その形状によっても分類可能であり、繊維状、球状、板状、針状のものがあり、球状もしくは板状のものが好ましい。球状フィラーとしては、炭酸カルシウム、球状シリカ、球状ガラスビーズ、グラファイト等が挙げられる。また板状フィラーとしては、タルク、カオリン、マイカ、クレイ、セリサイト、ガラスフレーク、合成ハイドロタルサイト、各種金属箔、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、板状酸化鉄、板状炭酸カルシウム、板状水酸化アルミニウム、珪酸塩、ゼオライト等が挙げられる。配合のしやすさ、剛性、成形性、分解性、脱臭効果を高めるという観点からは、タルク、マイカ、或いはクレイ、炭酸カルシウム、珪酸塩、ゼオライトを用いることが好ましい。
本発明で用いる無機フィラー(C)の粒径は、ハンドリングの理由から平均粒子径が0.5μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.6μm以上であって、更に好ましくは0.7μm以上、特に好ましくは1.0μm以上である。また、一方で、平均粒子径が30μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。
ここで、無機フィラー(C)の平均粒子径の測定方法は特に限定されないが、測定法の具体例としては、島津製作所製粉体比表面積測定装置SS−100型(恒圧式空気透過法)で測定した粉末1gあたりの比表面積値を求め、JIS M8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から、下記式によりフィラーの平均粒子径を計算する方法が挙げられる。
平均粒子径(μm)=10000×{6/(フィラーの比重×比表面積)}
無機フィラー(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
無機フィラー(C)の好適なものとして使用できるタルクは、具体的には、例えば、日本タルク製のミクロエースや富士タルク工業製のFH105等が挙げられる。また、無機フィラー(C)の好適なものとして使用できる炭酸カルシウムは、具体的には、例えば、備北粉化工業社製のソフトン1200、2200等が挙げられる。
<脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、ポリヒドロキシアルカノエート(B)及び無機フィラー(C)の配合割合>
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物に含まれる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とポリヒドロキシアルカノエート(B)の質量比は、口開き性(剥離強度)、剛性の向上及び成形加工のし易さの観点から、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)/ポリヒドロキシアルカノエート(B)=95/5〜70/30が好ましく、より好ましくは93/7〜75/25、更により好ましくは90/10〜80/20である。
また、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物中の無機フィラー(C)の含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とポリヒドロキシアルカノエート(B)の合計量100質量部に対して0.1質量部以上、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上で、15質量部以下、好ましくは12質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。無機フィラー(C)の含有量が上記下限よりも少ないと無機フィラー(C)を配合したことによる口開き性等の改善効果を十分に得ることができない。一方、無機フィラー(C)の含有量が上記上限よりも多いと引張強度等の機械強度が低下する。
<その他の樹脂>
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、ポリヒドロキシアルカノエート(B)以外の樹脂、例えば芳香族ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル樹脂、アモルファスポリオレフィン、ABS、AS(アクリロニトリルスチレン)、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、セルロースエステルなどの合成樹脂、ポリ乳酸や脂肪族芳香族ポリエステルであるポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)などの生分解性樹脂などの1種又は2種以上を含有していてもよい。
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物が、これらのその他の樹脂を含有する場合、樹脂成分として脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とポリヒドロキシアルカノエート(B)とを含むことによる本発明の効果を有効に得るために、その他の樹脂の含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とポリヒドロキシアルカノエート(B)とその他の樹脂との合計100質量部中に70質量部以下、特に50質量部以下であることが好ましい。
<その他の成分>
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物には、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、加水分解防止剤、結晶核剤、アンチブロッキング剤、耐光剤、可塑剤、熱安定剤、難燃剤、離型剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、分散助剤、各種界面活性剤、スリップ剤等の各種添加剤や、澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末、或いはこれらの混合物が「その他の成分」として含まれていてもよい。
また、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物には、機能性添加剤として、鮮度保持剤、抗菌剤等を配合することもできる。
これらは、本発明の効果を損なわない範囲で任意に配合することができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
これらのその他の成分の含有量は、通常、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物の物性を損なわないために、混合する成分の総量が、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物の総量に対して0.01質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
上記その他の成分のうち、防曇剤はあらかじめ脂肪族ポリエステル系樹脂組成物に練り込んでもよいし、フィルム成形後、成形されたフィルムの表面に塗布してもよい。使用する防曇剤は具体的には、炭素数4以上20以下の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸と多価アルコールのエステル系界面活性剤が好ましく用いられる。
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物にスリップ剤を含有させると、樹脂組成物の成形性を向上させることができるので好ましい。スリップ剤としては、公知のものを特に限定されることなく用いることができ、具体的には、パラフィン油、固形パラフィン等のパラフィン、ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸の金属塩、ステアリン酸ブチル、グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールモノステアレート等の脂肪酸エステル、ステアロアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オキシステアリン酸のエチレンジアミド、メチロールアミド、オレイルアミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド類、カルナウバワックス、モンタンワックス等のワックス類などが挙げられる。これらのスリップ剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。スリップ剤としてはこの中でもエルカ酸アミドが特に好ましい。本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物において、これらのスリップ剤の含有量は、通常、樹脂組成物中0.01〜2質量%であり、0.05〜0.5質量%の範囲であることが好ましい。
アンチブロッキング剤としては、炭素数6〜30の飽和脂肪酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチロールアマイド、エタノールアマイド、天然シリカ、合成シリカ、合成ゼライト、タルク等が挙げられる。
耐光剤としては具体的には、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−n−ブチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−〔2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〕ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド{1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−〔2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〕ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2−ビス(3−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エタン、1−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ペンタン、ポリ〔1−オキシエチレン(2,2,6,6−テトラメチル−1,4−ピペリジル)オキシスクシニル〕、ポリ〔2−(1,1,4−トリメチルブチルイミノ)−4,6−トリアジンジイル−(2,2,6,6−テトラ及び−4−ピペリジル)イミノヘキサメチレン−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物及びそのN−メチル化合物、コハク酸と1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物等が挙げられる。
これらの中で、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネートが特に好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤の中で、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、具体的には、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシ−フェノールが挙げられる。
酸化防止剤としては、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−α,α’,α”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、カルシウムジエチルビス[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ホスホネート、ビス(2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチルフェニル)エタン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオンアミド等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’―ジイルビスホスフォナイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系酸化防止剤、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとキシレンの反応性生物等のラクトン系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤及びこれらの2種以上の混合物等が例示できる。この中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。
好ましいヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、イルガノックス3790、イルガノックス1330、イルガノックス1010、イルガノックス1076、イルガノックス3114、イルガノックス1425WL、イルガノックス1098、イルガノックスHP2225FL、イルガノックスHP2341、イルガフォスXP−30(以上、BASF社製)、スミライザーBBM−S(住友化学社製)が挙げられる。最も好ましい酸化防止剤はイルガノックス1010(ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート])、イルガノックス1330(3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−α,α’,α”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール)である。
帯電防止剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。帯電防止剤としては、界面活性剤型のノニオン系、カチオン系、アニオン系が好ましい。
ノニオン系の帯電防止剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルジエタノールアミン、ヒドロキシアルキルモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステルアルキルジエタノールアマイド類等が挙げられる。中でもアルキルジエタノールアミン類等が好ましい。
カチオン系の帯電防止剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
アニオン系の帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート等が挙げられる。
中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩が樹脂との混練性がよく、帯電防止効果も高いため好ましい。
<脂肪族ポリエステル系樹脂組成物の製造方法>
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、ポリアルカノエート(B)及び無機フィラー(C)と、必要に応じて用いられるその他の樹脂やその他の成分を混合することにより製造される。
この混合工程は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、ポリヒドロキシアルカノエート(B)及び無機フィラー(C)と、必要に応じて用いられるその他の樹脂やその他の成分を、所定の割合で同時に、又は任意の順序で、タンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合し、好ましくは溶融混練することにより行われる。
混合工程で使用される混練機について、溶融混練機であってもよい。また、二軸押出機もしくは単軸押出機の種別の如何を限定するものではないが、用いる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、ポリヒドロキシアルカノエート(B)及び無機フィラー(C)の特性に応じて溶融混練を達成する目的の下では二軸押出機がより好ましい。
溶融混練時の温度は120〜220℃が好ましく、130〜160℃であることがより好ましい。この温度範囲であれば、溶融反応に要する時間の短縮が可能になり、樹脂の劣化に伴う色調の悪化等を防止することができ、また、耐衝撃性や耐湿熱性などの実用面での物理特性をより向上させることができる。
また溶融混練時間については、前記同様の樹脂劣化をより確実に回避するという観点から無用な長大化は回避されるべきであり、20秒以上20分以下が好ましく、より好ましくは30秒以上15分以下であり、これを満たすような溶融混練温度や時間の条件設定を行うことが好ましい。
[フィルム]
本発明のフィルムは、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物を成形してなるものである。その成形法としては例えば、射出成形、押出成形や共押出成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、熱プレス成形、中空成形(各種ブロー成形)、熱成形(真空成形、圧空成形)、塑性加工、粉末成形(回転成形)等が挙げられる。特に、押出成形やインフレーション成形によって成形する方法(インフレーション法)やTダイ法が、本発明の効果が顕著に現れるので好ましい。
より具体的には、例えば、Tダイ、Iダイ又は丸ダイ等から所定の厚みに押し出したフィルム状、シート状物又は円筒状物を、冷却ロールや水、圧空等により冷却、固化させる方法等が挙げられる。この際、本発明の効果を阻害しない範囲で、数種の組成物を積層させた積層フィルムとすることも可能である。
インフレーション成形の場合、バブル内圧、加熱温度、バブル直径、冷却速度、引き取り速度等の条件は通常の公知の条件を採用することができる。
成形条件としては、例えば、ブロー比を通常1.1〜10倍、好ましくは2〜5倍とすることによりフィルムの引裂強度を調節することができる。
また、インフレーション成形適性はバブル安定性、フロストライン高さ等を目視判定し、バブルは揺れがなく安定であるほど好ましく、またバブルの形状が左右対称であることが好ましい。フロストライン高さは高すぎないことが好ましい。フロストラインが高すぎる場合はチューブ状のフィルムが固化しにくいことを示し、フィルムのブロッキングが生じ、口開きが悪化することがある。また、フロストラインが低すぎると、エアリングやダイスにバブルが接触して成形ができないことがある。したがって、フロストラインは装置、使用する原料、加工条件に適した高さにする必要がある。
ダイス内の樹脂温度は、溶融粘度が高くなりすぎず押出機の動力当たりの押出量が適正となるようにその下限は通常110℃である。一方、ダイスに樹脂劣化物が付着して得られるフィルムに混入することがないようにその上限は通常280℃である。ダイス内の樹脂温度は、好ましくは120〜250℃、より好ましくは130〜200℃の範囲とする。
このようなインフレーション成形により得られる本発明のフィルムは単層構造でも積層構造でも良い。
インフレーション成形によるフィルムの厚みは、通常6〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
Tダイ成形の場合、ダイス内の樹脂温度は、溶融粘度が高くなりすぎず押出機の動力当たりの押出量が適正となるようにその下限は通常120℃である。一方、ダイスに樹脂劣化物が付着して得られるフィルムに混入することがないようにその上限は通常280℃である。ダイス内の樹脂温度は、好ましくは130〜250℃、より好ましくは140〜220℃の範囲とする。
また、吐出された溶融樹脂は巻き取り時のブロッキングを防止するために素早く冷却することが望ましく、通常、静電密着式またはタッチロール式のキャスティングロールにて冷却することが望ましい。この場合、キャスティングロールの表面温度は、通常15〜70℃、好ましくは20〜60℃に制御すればよい。また、シートの厚みが1mm以上であるときは、多段式冷却ロールを用いることが望ましい。その他成形条件は通常の公知の条件を採用することができる。
Tダイ成形により得られる本発明のフィルムも単層構造でも積層構造でも良い。
Tダイ成形によるフィルムの厚みは、通常3〜200μm、好ましくは5〜100μmである。
インフレーション法やTダイ法で得られたフィルム状成形体は、その後、ロール法、テンター法、チューブラー法等によって一軸又は二軸延伸を施してもよい。延伸する場合は、延伸温度は通常30℃〜110℃の範囲で、延伸倍率は縦、横方向、それぞれ0.6〜10倍の範囲で行われる。また、延伸後、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法、ヒートロール上に接触させる方法等によって熱処理を施してもよい。
インフレーション法やTダイ法で得られたフィルム状成形体は、その後、他の基材と積層してもよい。その積層方法は通常の公知の方法を採用することができる。例えばドライラミネーション法、ノンソルベントラミネーション法、サーマルラミネーション法などがある。
また、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂組成物を成形してなる本発明のフィルムには、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、各種の二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、蛇腹加工、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング等)等が挙げられる。
[フィルムの物性]
<引張破断強度>
本発明のフィルムの引張破断強度は、JIS K7127(1999)に規定される方法で測定された値で、実用性の観点から、MD方向、TD方向ともに通常15MPa以上が好ましく、20MPa以上がより好ましく、25MPa以上がさらに好ましく、30MPa以上が特に好ましい。特に、インフレーションフィルムは厚さが薄い場合が多く、25MPa以上が好ましい。
<引張弾性率>
本発明のフィルムの引張弾性率は、JIS K7127(1999)に規定される方法で測定された値で、実用性の観点から、MD方向、TD方向いずれかが通常300MPa以上が好ましく、350MPa以上がより好ましく、400MPa以上がさらに好ましい。
<Haze>
本発明のフィルムは、透明性に優れることが好ましく、JIS K7136(2000)に規定される方法で測定されたHazeが、厚みに関係なく40以下、特に35以下であることが好ましい。
<口開き性>
インフレーション成形により得られた本発明のインフレーションフィルムは、袋の口を開く必要があるため、袋の口が開きやすいほうが好ましい。口開き性は、ASTM D1893−67(1985)に規定される方法で測定された剥離強度として評価することができ、この剥離強度は低いほうが好ましく、具体的には、インフレーションフィルム内面同士のMD方向の剥離強度が15N以下であることが好ましく、12N以下がより好ましく、10N以下がさらに好ましい。
[用途]
本発明のフィルムは、自然環境下における分解性を有しつつ、成形性、透明性、成形体の表面特性及び力学特性に優れたものであるため、各種食品、薬品、雑貨用等の液状物や粉粒物、固形物の包装用資材、農業用資材、建築資材等幅広い用途において、特に使い捨てにされる用途に好適に用いることができる。その具体的用途としては、例えば、農業用マルチフィルム、トンネルフィルム、ハウスフィルム、日覆い、防草シート、畦シート、発芽シート、林業用燻蒸シート、フラットヤーン等を含む結束テープ、おむつのバックシート、包装用シート、ショッピングバッグ、レジ袋、ゴミ袋、水切り袋、コンポストバッグ等が挙げられる。
以下、実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[用いた樹脂のメルトフローレイト(MFR)の測定]
JIS K7210(1999)に基づき、メルトインデクサーを用いて190℃、荷重2.16kgにて測定した。単位はg/10分である。
[使用原料]
実施例及び比較例で使用した樹脂と無機フィラーの詳細は下記の通りである。
以下において、「PBS」は「ポリブチレンサクシネート」、「PBSA」は「ポリブチレンサクシネートアジペート」、「PHBH」は「ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)」を示す。
<脂肪族ポリエステル系樹脂(A)>
PBSA(PTTMCC Biochem社製 BioPBS(登録商標) FD92PM、全ジカルボン酸単位量中のコハク酸単位量:74モル%、アジピン酸単位量:26モル%、MFR:5.0g/10分、融点:89℃)
PBS(PTTMCCBioChem社製 BioPBS FZ91PM、全ジカルボン酸単位量中のコハク酸単位量:100モル%、アジピン酸単位量:0モル%、MFR:5.0g/10分、融点:113℃)
<ポリヒドロキシアルカノエート(B)>
PHBH−1(株式会社カネカ製 PHBH(登録商標) X131A、3HB/3HHモル比:94/6、MFR:6g/10分、融点:140℃)
PHBH−2(株式会社カネカ製 Aonilex(登録商標) X151A、3HB/3HHモル比:89/11、MFR:6g/10分、融点:131℃)
<無機フィラー(C)>
Talc−1(日本タルク株式会社製 ミクロエースSG−95、平均粒子径:3μm)
Talc−2(富士タルク工業株式会社製 FH105、平均粒子径:5μm)
Talc−3(日本タルク株式会社製 ミクロエースK−1、平均粒子径:8μm)
Talc−4(富士タルク工業株式会社製 MG−115、平均粒子径:14μm)
<エルカ酸アミド>
三菱ケミカル株式会社製 ダイヤミッド L−200
[評価法]
実施例及び比較例における各種物性、特性の評価方法は以下の通りである。
<成形性:バブル安定性>
インフレーション成形時のバブルの安定性を下記基準で評価した。
○:バブルが安定しており成形性が良好
×:バブルが不安定で成形性に問題がある
<成形性:口開き性>
ASTM D1893−67(1985)に基づき、インフレーションフィルム内面同士のMD方向の剥離強度を測定し、下記基準で評価した。剥離強度が低いほど口開き性が良く好ましい。
○:剥離強度が12N以下
×:剥離強度が13N以上
<引張弾性率>
JIS K7127(1999)に基づき、MD方向とTD方向の引張弾性率を測定し、下記基準で評価した。引張弾性率は高い程、剛性が高く好ましい。
○:引張弾性率が300MPa以上
×:引張弾性率が300MPa未満
<引張破断強度>
JIS K7127(1999)に基づき、MD方向とTD方向の引張破断強度を測定し、下記基準で評価した。引張破断強度は高いほうが破れにくくなるので好ましい。
○:引張破断強度が25MPa以上
×:引張破断強度が25MPa未満
<Haze測定>
JIS K7136(2000)に基づき、測定した。Hazeの値が小さいほど透明性に優れ、好ましい。
<土中室温生分解試験>
三重県の農場から採取した土(水分量30%)にフィルムを28±2℃条件下で3ヶ月間保管した後、重量測定を実施し下記基準で土中室温生分解性を評価した。尚、分解度は下記の式で算出した。
分解度(%)=100−(3ヶ月後のサンプル重量/試験前のサンプル重量)×100
〇:分解度が90%以上
×:分解度が90%未満
<海水中生分解試験>
三重県四日市市の四日市港で採取した海水中にシートを28±2℃条件下で6ヶ月間保管した後、重量測定を実施し下記基準で海水中生分解性を評価した。尚、分解度は下記の式で算出した。
分解度(%)=100−(6ヶ月後のサンプル重量/試験前のサンプル重量)×100
〇:分解度が50%以上
×:分解度が50%未満
[実施例1〜8、比較例1〜2]
表1に示す原料を表1に示す割合でブレンドし、混練温度140℃にて、スクリュウ径φ30mmの二軸押出機にてストランド状に押出し、ペレタイザーによりペレット化した。得られた樹脂ペレットをスクリュー径φ40mmの押出機、直径60mmの丸ダイを有するインフレーション成形機にて成形温度160℃、ブロー比2.5で成形して肉厚30μmのインフレーションフィルムを得た。このフィルムについて成形性評価(バブル安定性、口開き性)、引張試験(弾性率、破断強度)、Haze測定、土中室温生分解性評価、海水中生分解性評価を実施した。
その結果を表1に示す。
Figure 2021055084
[実施例9〜12]
表2に示す原料を表2に示す割合でブレンドし、混練温度140℃にて、スクリュウ径φ30mmの二軸押出機にてストランド状に押出し、ペレタイザーによりペレット化した。得られた樹脂ペレットをスクリュー径φ40mmの押出機、直径60mmの丸ダイを有するインフレーション成形機にて成形温度160℃、ブロー比2.5で成形して肉厚30μmのインフレーションフィルムを得た。このフィルムについて成形性評価(バブル安定性、口開き性)、引張試験(弾性率、破断強度)、Haze測定、土中室温生分解性評価、海水中生分解性評価を実施した。
その結果を表2に示す。
Figure 2021055084
表1より、本発明のフィルムは、従来の生分解性樹脂を用いたフィルムに比べて、成形性、剛性、引張強度、透明性、室温生分解性、海洋生分解性のバランスに優れていることが分かる。
表2より、本発明のフィルムでは、粒径の小さい無機フィラーを用いることにより、透明性が特に向上することがわかる。
本発明のフィルムは、樹脂成分としてそれ自体、室温で高い生分解性を有すると共に、海中でも高い生分解性度を有する脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及びポリヒドロキシアルカノエート(B)を用いたものである上に、無機フィラー(C)もまた、生分解性の向上に寄与するものであるため、表1,2に示されるように、室温での生分解性と海洋生分解性に優れたフィルムである。
なお、比較例1は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の割合が、本発明の規定範囲よりも少なく、ポリヒドロキシアルカノエート(B)が本発明の規定範囲よりも多いため、成形安定性、口開き性(剥離強度)、引張破断強度に劣る。
比較例2はポリヒドロキシアルカノエート(B)を含まないため、引張弾性率が劣る。

Claims (10)

  1. 脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位とを主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、ポリヒドロキシアルカノエート(B)及び無機フィラー(C)を含む脂肪族ポリエステル系樹脂組成物であって、該ポリヒドロキシアルカノエート(B)が3−ヒドロキシブチレート単位及び3−ヒドロキシヘキサノエート単位を主構成単位として含有する共重合体であり、該脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と該ポリヒドロキシアルカノエート(B)の質量比が95/5〜70/30であり、該脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と該ポリヒドロキシアルカノエート(B)の合計量100質量部に対する該無機フィラー(C)の含有割合が0.1〜15質量部である脂肪族ポリエステル系樹脂組成物を用いた、フィルム。
  2. 前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)に含まれる脂肪族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位中にコハク酸単位及びアジピン酸単位を含む、請求項1に記載のフィルム。
  3. 前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)に含まれる脂肪族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位中に含まれるアジピン酸単位量が18モル%以上32モル%以下である、請求項1又は2に記載のフィルム。
  4. 前記無機フィラー(C)が無水シリカ、炭酸カルシウム、タルク、珪酸塩及びゼオライトからなる群より選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム。
  5. 前記無機フィラー(C)の平均粒子径が30μm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。
  6. 引張破断強度が25MPa以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム。
  7. Hazeが40以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のフィルム。
  8. インフレーション法により成形された、請求項1〜7のいずれかに記載のフィルム。
  9. Tダイ法により成形された、請求項1〜7のいずれかに記載のフィルム。
  10. インフレーションフィルムであって、ASTM D1893−67(1985)に基づき、インフレーションフィルム内面同士のMD方向の剥離強度が12N以下であり、且つ脂肪族ジオールに由来する繰返し単位と脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位とを主構成単位として含む脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、3−ヒドロキシブチレート単位及び3−ヒドロキシヘキサノエート単位を主構成単位として含有する共重合体であるポリヒドロキシアルカノエート(B)及び無機フィラー(C)を含む脂肪族ポリエステル系樹脂組成物よりなることを特徴とするインフレーションフィルム。
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