JP2023037365A - 生分解性に優れた3次元造形用材料およびその造形物 - Google Patents

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Yuta Nakano
亜希子 平野
Akiko Hirano
舞 稲垣
Mai Inagaki
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Abstract

【課題】 ポリブチレンサクシネート樹脂を含む3次元造形用材料であって、以下(i)~(ii)を満たす3次元造形用材料。(i)振動周波数1Hzで測定した30℃における引張貯蔵弾性率(E’)が400MPa以上である。(ii)示差走査熱量測定において、昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温後、冷却速度10℃/分で0℃まで降温した際の結晶化熱量が65J/g以下である。【選択図】 なし

Description

本発明は、3次元プリンターによる造形性が良好な3次元造形用材料および、それを用
いて造形された造形物に関する。
今日、種々の付加製造方式(例えば、結合剤噴射式、材料押出法、粉末床溶融結合、お
よび液槽光重合式等)の3次元プリンターが販売されている。
その中でも材料押出法(以下、ME(Material extrusion)法と称
することがある。)においては、まず、造形用材料は、熱可塑性樹脂からなるフィラメン
トやペレット、粉体、顆粒などとして押出ヘッドへ挿入され、加熱溶融しながら押出ヘッ
ドに備えたノズル部位からチャンバー内のX-Y平面基板上に連続的に押し出される。押
し出された樹脂は既に堆積している樹脂積層体上に堆積すると共に融着し、これが冷却す
るにつれて一体となって固化する。ME法はこのような簡単なシステムであるため、広く
用いられるようになってきている。
従来、ME法の造形用材料に用いる原料としては、一般的にポリ乳酸(以下、「PLA
樹脂」と称することがある)や、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂(以下
「ABS樹脂」と称することがある)等の熱可塑性樹脂が、加工性や流動性の観点から好
適に用いられてきた(特許文献1~2)。特にPLAは、植物由来の原料であることおよ
び生分解性を有することから、近年、地球環境への負荷が小さい原料として注目されてい
る。
特開2008-194968号公報 特表2010-521339号公報
しかし、PLAは、比較的高温(58℃以上)の好気的コンポスト環境下では生分解す
るものの、室温(28℃)の好気的コンポスト(土中)環境下や、海中における生分解性
度は低く、十分な生分解性を有しているとはいえなかった。また、PLAは室温での弾性
率が高く、また脆いため、造形物の耐衝撃性に劣ったり、造形材料のハンドリング性に劣
るという課題もあった。
一方で、PLAよりも優れた生分解性および柔軟性を持つ原料として、ポリブチレンサ
クシネート(以下PBSと称する場合がある)がある。しかし、本発明者らが検討したと
ころ、PBSを用いて作製した3次元造形用フィラメントは、結晶化収縮による造形時の
反りの懸念などのため、造形性に劣ることがわかった。
そこで本発明の目的は、生分解性に優れ、かつ造形性にも優れた3次元造形用材料を提
供することである。
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の物性を有する3次元
造形用材料が上記課題を解決し得ることを見出した。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]~[7]に存する。
[1] ポリブチレンサクシネート樹脂(A)を含む3次元造形用材料であって、以下(
i)~(ii)を満たす3次元造形用材料。
(i)振動周波数1Hzで測定した30℃における引張貯蔵弾性率(E’)が400MP
a以上である。
(ii)示差走査熱量測定において、昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温後
、冷却速度10℃/分で0℃まで降温した際の結晶化熱量が65J/g以下である。
[2] 示差走査熱量測定において、昇温速度10℃/分で-70℃から200℃まで昇
温後、冷却速度10℃/分で-70℃まで降温し、さらに昇温速度10℃/分で-70℃
から200℃まで昇温した際の融点が、融点が150℃以下である、[1]に記載の3次
元造形用材料。
[3] 振動周波数1Hzでー100℃から200℃まで測定した際に、引張貯蔵弾性率
(E’)が10MPaになる温度が90℃以上である、[1]~[2]に記載の3次元造
形用材料。
[4] 無機フィラーを含有する、[1]~[3]に記載の3次元造形用材料。
[5] 上記3次元造形用材料中の上記ポリブチレンサクシネート樹脂(A)の全ジカル
ボン酸単位に対して、炭素数が5以上10以下の脂肪族ジカルボン酸やその誘導体が、5
モル%以上50モル%以下含まれる、[1]~[4]に記載の3次元造形用材料。
[6] フィラメントおよびペレット形状のいずれかである、[1]~[5]に記載の3
次元造形用材料。
[7] [1]~[6]に記載の3次元造形用材料を用いて造形した造形物。
本発明によれば、生分解性および造形性に優れた3次元造形用材料を提供することがで
きる。
実施例および比較例の造形評価に用いた形状
以下に本発明の3次元造形用材料の実施の形態を詳細に説明する。本発明は以下の説明
に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実
施することができる。尚、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値
を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
<3次元造形用材料>
本発明の3次元造形用材料は、ポリブチレンサクシネート樹脂を含む3次元造形用材料
であって、以下(i)~(ii)を満たすことを特徴とする。
(i)動的粘弾性測定において、振動周波数1Hzで測定した30℃における引張貯蔵
弾性率(E’)が400MPa以上である。
(ii)示差走査熱量測定において、昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温
後、冷却速度10℃/分で0℃まで降温した際の結晶化熱量が65J/g以下である。
本発明の3次元造形用材料は、振動周波数1Hzで測定した30℃における引張貯蔵弾
性率(E’)が400MPa以上であるため、造形物の剛性や、造形用材料のハンドリン
グ性に優れる。造形物の剛性や、造形用材料のブロッキング防止、またフィラメント形状
の造形用材料の、ノズルへのフィラメントの送りやすさ(屈曲のしにくさ)等の観点から
、500MPa以上が好ましく、700MPa以上がより好ましい。また上限については
特に規定されないが、通常は5000MPa以下であり、造形物および造形用材料の柔軟
性や、フィラメント形状の造形用材料についてはボビンへの巻きやすさなどの観点から、
3000MPa以下が好ましく、2000MPa以下がより好ましく、1500MPa以
下がさらに好ましく、1200MPa以下が特に好ましい。この引張貯蔵弾性率(E’)
は、後述する樹脂組成や、フィラーの添加などによって調整することができる。なお、こ
の引張貯蔵弾性率(E’)は、実施例に記載の手法で測定することができる。
本発明の3次元造形用材料は、特に限定されないが、フィラメント形状の造形用材料の
、ノズルへのフィラメントの送りやすさ(屈曲のしにくさ)等の観点から、振動周波数1
Hzで、-100℃から200℃まで測定した際に、引張貯蔵弾性率(E’)が1×10
Paになるときの温度が90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることが
より好ましい。また、造形時のノズル温度を低温にできる観点や、造形物の積層間の熱融
着性の観点から、上記温度は、200℃以下であることが好ましく、150℃以下である
ことがより好ましい。この温度は、後述する樹脂組成や、フィラーの添加などによって調
整することができる。なお、この温度は、実施例に記載の手法で測定することができる。
本発明の3次元造形用材料は、特に規定されないが、動的粘弾性測定において、振動周
波数1Hzで測定した際に、-100℃から0℃の範囲にtanδのピークを1つ以上有
することが、造形物および造形用材料の靭性や、造形用材料のハンドリング性の観点から
好ましい。-100℃から0℃の範囲のピークの数は特に規定されないが、造形用材料の
製造のしやすさや、造形用材料に含まれる樹脂同士の相溶性に優れることで、造形時に安
定してノズルから吐出されやすいという観点から、5つ以下であることが好ましく、3つ
以下であることがより好ましく、2つ以下であることがさらに好ましい。なお、本発明の
tanδのピークは、後述する造形用材料の樹脂組成などによって達成できる。また、こ
れらの値は、実施例に記載の手法で測定することができる。
本発明の3次元造形用材料は、示差走査熱量測定において、昇温速度10℃/分で-7
0℃から200℃まで昇温後、冷却速度10℃/分で-70℃まで降温した際の結晶化熱
量が65J/g以下であるため、造形中の結晶化収縮による反りが小さく、造形性に優れ
る。造形中の反り抑制の観点から、この結晶化熱量は、60J/g以下が好ましく、50
J/g以下がより好ましく、40J/g以下がさらに好ましい。また、造形物の耐熱性や
、室温での剛性(弾性率)を担保する観点から、5J/g以上が好ましく、10J/g以
上がより好ましく、20J/g以上がさらに好ましい。なお、この結晶化熱量は、後述す
る造形用材料の樹脂組成や、フィラー添加などによって達成できる。またこの結晶化熱量
は、実施例に記載の手法で測定することができる。
本発明の3次元造形用材料は、特に限定されないが、造形性の観点から、示差走査熱量
測定において、昇温速度10℃/分で-70℃から200℃まで昇温後、冷却速度10℃
/分で-70℃まで降温した際の結晶化温度が、50℃以上であることが好ましい。結晶
化温度がこの範囲であると、造形用材料が造形時にノズルから溶融吐出されたあと、十分
に固化されやすいため、造形物の外観に優れる。特に、細かい形状の造形物の外観に優れ
る観点から、結晶化温度は、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であるこ
とがさらに好ましい。また、造形物の積層間の熱融着性の観点から、結晶化温度は、12
0℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。な
お、結晶化温度が複数ある場合は、どれか1つ以上が、上記範囲内にあると好ましい。ま
たこの結晶化温度は、実施例に記載の手法で測定することができる。
本発明の3次元造形用材料は、特に限定されないが、造形物や造形用材料の耐熱性の観
点から、示差走査熱量測定において、昇温速度10℃/分で-70℃から200℃まで昇
温後、冷却速度10℃/分で-70℃まで降温し、さらに昇温速度10℃/分で-70℃
から200℃まで昇温した際の融点が、80℃以上であることが好ましく、100℃以上
であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。また、低ノズル
温度での造形性の観点から、180℃以下であることが好ましく、160℃以下であるこ
とがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。なお、融点が複数ある場
合は、いずれかの融点が上記範囲内に入っていることが好ましいが、なかでも、もっとも
結晶融解熱量が大きいピークが、上記範囲内にあることが好ましい。また、もっとも高い
温度のピークが、上記範囲内にあることも好ましい。またこの融点は、実施例に記載の手
法で測定することができる。
本発明の3次元造形用材料は、特に限定されないが、造形性の観点から、振動周波数1
Hz、降温速度:3℃/minで200℃から50℃まで測定した際に、せん断貯蔵弾性
率(G’)が1×10Paになる温度が70℃以上であることが好ましい。せん断貯蔵
弾性率(G’)がこの範囲であると、造形用材料が造形時にノズルから溶融吐出されたあ
と、十分に固化されやすいため、造形物の外観に優れる。特に、細かい形状の造形物の外
観に優れる観点から、せん断貯蔵弾性率(G’)が1×10Paになる温度は、80℃
以上がより好ましく、85℃以上であることがさらに好ましい。また、造形時のノズル温
度を低温にできる観点や、造形物の積層間の熱融着性の観点から、せん断貯蔵弾性率(G
’)が1×10Paになる温度は、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ま
しく、100℃以下がさらに好ましい。なお、せん断貯蔵弾性率(G’)は、後述する造
形用材料の樹脂組成などによって達成できる。またこのせん断貯蔵弾性率(G’)は、実
施例に記載の手法で測定することができる。
本発明の造形用材料の、JISK7210に準じて、170℃、荷重2,16kgfに
て測定したメルトフローレート(MFR)は、特に限定されないが、造形時にノズルから
安定的に吐出できる観点から、0.5以上が好ましく、1.0以上が好ましく、1.5以
上が特に好ましい。また、造形時の糸引きやダマ等の不良抑制の観点から、20以下が好
ましく、15以下がより好ましく、10以下がもっとも好ましい。なお、このメルトイン
デックスは、後述する造形用材料の樹脂組成などによって達成できる。またこのメルトイ
ンデックスは、実施例に記載の手法で測定することができる。
<ポリブチレンサクシネート樹脂(A)>
本発明の造形用材料は、ポリブチレンサクシネート樹脂(A)を含むため、生分解性に
優れる。ポリブチレンサクシネート樹脂とは、ジカルボン酸単位としてコハク酸を、ジオ
ール単位として、1,4-ブタンジオールを含む脂肪族ポリエステル樹脂の一種である。
コハク酸以外のジカルボン酸単位や、1,4-ブタンジオール以外のジオール単位を含ん
でいてもよい。
本発明のポリブチレンサクシネート樹脂(A)は、特に規定されないが、コハク酸の他
に1種類以上の脂肪族ジカルボン酸単位が全ジカルボン酸単位に対して5モル%以上50
モル%以下含まれていることが好ましい。コハク酸以外の脂肪族ジカルボン酸単位を上記
所定範囲内共重合することで、ポリブチレンサクシネート樹脂(A)の結晶化度を下げる
ことができ、生分解速度を速くすることや、造形時の結晶化収縮による反りを抑制するこ
とが可能である。同様の理由から、ポリブチレンサクシネート樹脂(A)中のコハク酸以
外の脂肪族ジカルボン酸単位量は、全ジカルボン酸単位に対して好ましくは10モル%以
上45モル%以下であり、より好ましくは15モル%以上40モル%以下である。
上記、コハク酸の他の脂肪族ジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分として
は、特に限定されないが、炭素数が2以上40以下の脂肪族ジカルボン酸やそのアルキル
エステル等の誘導体が好ましく、炭素数が5以上10以下の脂肪族ジカルボン酸やそのア
ルキルエステル等の誘導体が特に好ましい。炭素数が5以上10以下の脂肪族ジカルボン
酸やそのアルキルエステル等の誘導体としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバ
シン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等やそのアルキルエステル等の誘導体が挙げられ、中
でもアジピン酸、セバシン酸が好ましく、アジピン酸が特に好ましい。上記脂肪族ジカル
ボン酸成分は、2種類以上を用いてもよい。
ポリブチレンサクシネート樹脂(A)は、通常、触媒の存在下で製造される。触媒とし
ては、公知のポリエステル系樹脂の製造に用いることのできる触媒を、本発明の効果を著
しく損なわない限り任意に選択することができる。その例を挙げると、ゲルマニウム、チ
タン、ジルコニウム、ハフニウム、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛
等の金属化合物が好適である。中でもゲルマニウム化合物、チタン化合物が好適である。
触媒として使用できるゲルマニウム化合物としては、例えば、テトラアルコキシゲルマ
ニウム等の有機ゲルマニウム化合物、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等の無機ゲル
マニウム化合物などが挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニ
ウム、テトラエトキシゲルマニウムおよびテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、
特には、酸化ゲルマニウムが好適である。
触媒として使用できるチタン化合物としては、例えば、テトラプロピルチタネート、テ
トラブチルチタネート、テトラフェニルチタネート等のテトラアルコキシチタンなどの有
機チタン化合物が挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、テトラプロピルチ
タネート、テトラブチルチタネートなどが好ましい。
本発明の目的を損なわない限り、他の触媒の併用を妨げない。また触媒は1種を単独で
用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
触媒の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、使用するモノマ
ー量に対して、通常0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上で、
通常3質量%以下、好ましくは1.5質量%以下である。この範囲の下限を下回ると触媒
の効果が現れないおそれがある。この範囲の上限を上回ると製造費が高くなったり得られ
るポリマーに著しい着色を生じたり、耐加水分解性が低下したりするおそれがある。
触媒の導入時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に導入して
おいてもよく、減圧開始時に導入してもよい。ポリブチレンサクシネート樹脂(A)に脂
肪族オキシカルボン酸単位を導入する場合は、原料仕込み時に乳酸やグリコール酸等の脂
肪族オキシカルボン酸単位を形成するモノマーやオリゴマーと同時に導入するか、又は脂
肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましく、特に、重合速度
が大きくなるという点で脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が
好ましい。
ポリブチレンサクシネート樹脂(A)を製造する際の温度、重合時間、圧力などの反応
条件は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ジカルボン酸成分とジオール
成分とのエステル化反応および/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150
℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下で
ある。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下である。反応圧力は、通
常、常圧~10kPaであるが、中でも常圧が好ましい。反応時間は、下限が通常1時間
以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは4時間以
下である。反応温度が高すぎると、不飽和結合の過剰生成が起こり、不飽和結合が要因と
なるゲル化が起こり、重合の制御が困難になることがある。
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル反応および/又はエステル交換反応後の
重縮合反応は、圧力が、下限が通常0.01×103Pa以上、好ましくは0.03×1
03Pa以上、上限が通常1.4×103Pa以下、好ましくは0.4×103Pa以下
の真空度下で行うことが望ましい。この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ま
しくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応時
間は、下限が通常2時間以上、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である
反応温度が高すぎると、不飽和結合の過剰生成で不飽和結合が要因となるゲル化が起こ
り、重合の制御が困難になることがある。
ポリブチレンサクシネート樹脂(A)の製造時には、カーボネート化合物やジイソシア
ネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできる。この場合、鎖延長剤の量は、ポリブ
チレンサクシネート樹脂(A)を構成する全構成単位を100モル%とした場合のポリブ
チレンサクシネート樹脂(A)中のカーボネート結合やウレタン結合の割合として、通常
10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。ただし
、ポリブチレンサクシネート樹脂(A)中にウレタン結合やカーボネート結合が存在する
と、生分解性を阻害する可能性があるため、本発明では、ポリブチレンサクシネート樹脂
(A)を構成する全構成単位に対し、カーボネート結合は1モル%未満、好ましくは0.
5モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下であり、ウレタン結合は0.55モル%
以下、好ましくは0.3モル%以下、より好ましくは0.12モル%以下、更に好ましく
は0.05モル%以下とするのがよい。この量は、ポリブチレンサクシネート樹脂(A)
100質量部あたりに換算すると、0.9質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、よ
り好ましくは0.2質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下である。特に、ウレ
タン結合量が上記上限値を上回ると、成膜工程等において、ウレタン結合の分解のため、
ダイス出口からの溶融膜からの発煙や臭気が問題となる場合があり、また、溶融膜中に発
泡による膜切れが起こって安定的に成形できないことがある。
ポリブチレンサクシネート樹脂(A)中のカーボネート結合量やウレタン結合量は、1
H-NMRや13C-NMR等のNMR測定結果から算出して求めることができる。
鎖延長剤としてのカーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート
、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボ
ネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブ
チルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカ
ーボネートなどが例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ
化合物から誘導される、同種、又は異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物
も使用可能である。
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4-トリレンジイソシアネート、
2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの混合体、1
,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジ
イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,
4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネ
ート、2,4,6-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート、4,4’-ジフェニル
メタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の公知のジイソシアネートなどが
例示される。
その他の鎖延長剤として、ジオキサゾリン、珪酸エステルなどを使用してもよい。珪酸
エステルとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、
ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン等が例示される。
これらの鎖延長剤(カップリング剤)を用いた高分子量ポリブチレンサクシネート樹脂
についても従来の技術を用いて製造することが可能である。鎖延長剤は、重縮合終了後、
均一な溶融状態で無溶媒にて反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応
させる。
より具体的には、ジオール成分とジカルボン酸成分とを触媒反応させて得られる、末端
基が実質的にヒドロキシル基を有し、重量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ま
しくは40,000以上のポリエステルに上記鎖延長剤を反応させることにより、より高
分子量化したポリブチレンサクシネート樹脂を得ることができる。重量平均分子量が20
,000以上のプレポリマーは、少量の鎖延長剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件
下でも、残存する触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量の
ポリブチレンサクシネート樹脂を製造することができる。ここで、ポリブチレンサクシネ
ート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、溶媒をクロロホルムとし、測定温度40℃でゲル
パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値から単分散ポリスチレンに
よる換算値として求められる。
例えば鎖延長剤として上記のジイソシアネート化合物を用いて、ポリブチレンサクシネ
ート樹脂(A)を更に高分子量化する場合には、重量平均分子量が20,000以上、好
ましくは40,000以上のプレポリマーを用いることが好ましい。プレポリマーの重量
平均分子量が20,000未満であると、高分子量化するためのジイソシアネート化合物
の使用量が多くなり耐熱性が低下する場合がある。このようなプレポリマーを用いてジイ
ソシアネート化合物に由来するウレタン結合を介して連鎖した線状構造を有するウレタン
結合を有するポリブチレンサクシネート樹脂(A)が製造される。
鎖延長時の圧力は、通常0.01MPa以上1MPa以下、好ましくは0.05MPa
以上0.5MPa以下、より好ましくは0.07MPa以上0.3MPa以下であるが、
常圧が最も好ましい。
鎖延長時の反応温度は、下限が通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ま
しくは190℃以上、最も好ましくは200℃以上、上限が通常250℃以下、好ましく
は240℃以下、より好ましくは230℃以下である。反応温度が低すぎると粘度が高く
均一な反応が難しく、高い攪拌動力も要する傾向がある。反応温度が高すぎると、ポリエ
ステル系樹脂のゲル化や分解が併発する傾向がある。
鎖延長を行う時間は、下限が通常0.1分以上、好ましくは1分以上、より好ましくは
5分以上で、上限が通常5時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくは30分以下
、最も好ましくは15分以下である。鎖延長を行う時間が短すぎる場合には、鎖延長剤の
添加効果が発現しない傾向がある。鎖延長を行う時間が長すぎる場合には、ポリエステル
系樹脂のゲル化や分解が併発する傾向がある。
本発明で用いるポリブチレンサクシネート樹脂(A)の分子量は、ゲルパーミエーショ
ンクロマトグラフィー(GPC)による測定値から単分散ポリスチレンを標準物質として
求めた重量平均分子量(Mw)として、通常10,000以上1,000,000以下で
あることが好ましい。
本発明で用いるポリブチレンサクシネート樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)
は、JIS K7210に基づいて190℃、荷重2.16kgで測定した値で、通常0
.1g/10分以上100g/10分以下である。本発明で用いるポリブチレンサクシネ
ート樹脂(A)のMFRは、造形性と、造形物および造形用材料の機械強度の観点から、
好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは40g/10分以下である。ポリブチレ
ンサクシネート樹脂(A)のMFRは、分子量により調節することが可能である。
本発明で用いるポリブチレンサクシネート樹脂(A)の融点は、造形物および造形用材
料の耐熱性やブロッキング防止の観点から、70℃以上が好ましく、より好ましくは75
℃以上である。また、低ノズル温度で造形できることや、造形物の層間熱融着性を上げる
観点から、170℃以下であることが好ましく、より好ましくは150℃以下、特に好ま
しくは130℃未満である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記
範囲内にあることが好ましい。
本発明で用いるポリブチレンサクシネート樹脂(A)の、示差走査熱量測定において、
昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温後、冷却速度10℃/分で0℃まで降温
した際の結晶化熱量は、造形中の反り抑制の観点から、80J/g以下が好ましく、60
J/g以下がより好ましく、50J/g以下がさらに好ましい。また、造形物の耐熱性や
、室温での剛性(弾性率)を担保する観点から、5J/g以上が好ましく、10J/g以
上がより好ましく、20J/g以上がさらに好ましい。
本発明で用いるポリブチレンサクシネート樹脂(A)の、振動周波数1Hzで測定した
30℃における引張貯蔵弾性率(E’)は、造形物の剛性や、造形用材料のブロッキング
防止、またフィラメント形状の造形用材料の、ノズルへのフィラメントの送りやすさ(屈
曲のしにくさ)等の観点から、100MPa以上が好ましく、200MPa以上がより好
ましく、300MPa以上がさらに好ましい。また、30℃における引張貯蔵弾性率(E
’)は、耐衝撃性の観点から、1000MPa以下が好ましく、800MPa以下がより
好ましく、500MPa以下がさらに好ましい。
本発明で用いるポリブチレンサクシネート樹脂(A)の、融点や結晶化熱量、引張貯蔵
弾性率(E’)の調整法は特に限定されないが、例えば、コハク酸以外の脂肪族ジカルボ
ン酸成分の共重合成分の種類を選択したり、ぞれぞれの共重合比率を調節したり、それら
を組み合わせたりすることにより調節することが可能である。
ポリブチレンサクシネート樹脂(A)としては、市販品を用いることもでき、PTTM
CC Biochem社製、「BioPBS(登録商標) FD92PB」、「BioP
BS(登録商標) FD92PM」などを用いることができる。
ポリブチレンサクシネート樹脂(A)は1種に限らず、構成単位の種類や構成単位比、
製造方法、物性等の異なる2種以上のポリブチレンサクシネート樹脂(A)をブレンドし
て用いることもできる。
<ポリエステル系樹脂(B)>
本発明の造形材料は、造形材料の物性を所望の範囲に制御しやすい観点から、上記ポリ
ブチレンサクシネート樹脂(A)とは異なるポリエステル系樹脂(B)を含有することが
好ましい。
ポリエステル系樹脂(B)の融点は、造形物および造形用材料の耐熱性の観点から、9
0℃以上が好ましく、より好ましくは100℃以上であり、造形時のノズル温度を低温に
できる観点から、180℃以下であることが好ましく、より好ましくは160℃以下、特
に好ましくは150℃以下である。融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点
が上記範囲内にあることが好ましい。ポリエステル系樹脂(B)の融点は、モノマーの種
類や比率等によって調節することが可能である。
ポリエステル系樹脂(B)の、示差走査熱量測定において、昇温速度10℃/分で0℃
から200℃まで昇温後、冷却速度10℃/分で0℃まで降温した際の結晶化熱量は、造
形中の反り抑制の観点から、100J/g以下が好ましく、90J/g以下がより好まし
く、80J/g以下がさらに好ましい。また、造形物の耐熱性や、室温での剛性(弾性率
)を担保する観点から、20J/g以上が好ましく、30J/g以上がより好ましく、4
0J/g以上がさらに好ましい。ポリエステル系樹脂(B)の結晶化熱量は、モノマーの
種類や比率等によって調節することが可能である。
ポリエステル系樹脂(B)の、示差走査熱量測定において、昇温速度10℃/分で-5
0℃から180℃まで昇温後、冷却速度10℃/分で-50℃まで降温した際の結晶化温
度は、造形性の観点から、50℃以上であることが好ましい。結晶化温度がこの範囲であ
ると、造形用材料が造形時にノズルから溶融吐出されたあと、十分に固化されやすいため
、造形物の外観に優れる。特に、細かい形状の造形物の外観に優れる観点から、結晶化温
度は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。また、
造形物の積層間の熱融着性の観点から、結晶化温度は、120℃以下が好ましく、110
℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。なお、結晶化温度が複数ある場
合は、どれか1つ以上が、上記範囲内にあると好ましい。ポリエステル系樹脂(B)の結
晶化温度は、モノマーの種類や比率、核剤の添加等によって調節することが可能である。
ポリエステル系樹脂(B)の、振動周波数1Hzで測定した30℃における引張貯蔵弾
性率(E’)は、造形物の剛性や、造形用材料のブロッキング防止、またフィラメント形
状の造形用材料の、ノズルへのフィラメントの送りやすさ(屈曲のしにくさ)等の観点か
ら、400MPa以上が好ましく、500MPa以上がより好ましく、600MPa以上
であることが特に好ましい。また上限については特に規定されないが、通常は5000M
Pa以下であり、造形物および造形用材料の靭性や、フィラメント形状の造形用材料につ
いてはボビンへの巻きやすさなどの観点から、2000MPa以下が好ましく、1500
MPa以下がより好ましく、1000MPa以下が特に好ましい。ポリエステル系樹脂(
B)の引張貯蔵弾性率(E’)は、モノマーの種類や比率等によって調整することが可能
である。
本発明のポリエステル系樹脂(B)は、分子中にエステル結合を有する樹脂であれば特
に規定はされない。ポリエステル系樹脂(B)の具体例としては、ポリエチレンテレフタ
レート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタ
レート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PB
AT)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネートなどが挙
げられる。なかでも良好な生分解性を有する観点から、ポリヒドロキシアルカノエート(
PHA)やポリブチレンサクシネートが好ましく、造形材料の柔軟性や、熱分解のしにく
さの観点から、ポリブチレンサクシネートを用いることが特に好ましい。
本発明のポリエステル系樹脂(B)として用いるポリブチレンサクシネートは、上述の
ポリブチレンサクシネート樹脂(A)で例示したものと類似のものを用いることができ、
組成や溶融粘度、熱特性、機械物性、添加剤比率などの物性のうち、ポリブチレンサクシ
ネート樹脂(A)とどれか1つ以上が異なっていればよいが、上述したポリエステル系樹
脂(B)としての好ましい熱特性や機械特性を付与するために、全ジカルボン酸単位中の
コハク酸に由来する単位が、80モル%以上含まれていることが好ましく、90%以上含
まれていることがより好ましい。
ポリエステル系樹脂(B)としては、市販品を用いることもでき、PTTMCC Bi
ochem社製「BioPBS(登録商標) FZ71PB」、「BioPBS(登録商
標) FZ71PM」、「BioPBS(登録商標) FZ91PB」、「BioPBS
(登録商標) FZ91PM」などを用いることができる。
ポリエステル系樹脂(B)は1種に限らず、構成単位の種類や構成単位比、製造方法、
物性等の異なる2種以上のポリエステル系樹脂(B)をブレンドして用いることもできる
<ポリブチレンサクシネート樹脂(A)/ポリエステル系樹脂(B)のブレンド比率>
本発明の造形材料がポリエステル系樹脂(B)を含有する場合は、造形時の反り抑制や
、生分解性の観点から、ポリブチレンサクシネート樹脂(A)とポリエステル系樹脂(B
)の総量に対して、ポリブチレンサクシネート樹脂(A)の含有量が40質量%以上であ
ることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であるこ
とがさらに好ましい。また、室温での剛性や、造形用材料が造形時にノズルから溶融吐出
されたあとの固化を適度に促進し、造形物の外観に優れる観点から、ポリブチレンサクシ
ネート樹脂(A)とポリエステル系樹脂(B)の総量に対して、ポリブチレンサクシネー
ト樹脂(A)の含有量が、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下である
ことがより好ましい。
本発明の造形材料のポリエステル系樹脂(B)がポリブチレンサクシネート樹脂である
場合、造形材料の造形性や生分解性のバランスがとりやすい観点から、ポリブチレンサク
シネート樹脂(A)およびポリエステル系樹脂(B)に含まれる全ジカルボン酸単位に対
して、炭素数が5以上10以下の脂肪族ジカルボン酸やその誘導体が、5モル%以上50
モル%以下含まれることが好ましく、10モル%以上40モル%以下であることがより好
ましい。これは、上記ブレンド比率などで調整できる。
<その他の樹脂>
本発明の造形用材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリブチレンサクシネート
樹脂(A)およびポリエステル系樹脂(B)以外の樹脂、例えば芳香族ポリエステル系樹
脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ア
モルファスポリオレフィン、ABS、AS(アクリロニトリルスチレン)、ポリカプロラ
クトン、ポリビニルアルコール、セルロースエステルなどの合成樹脂、その他の生分解性
樹脂などの1種又は2種以上を含有していてもよい。
本発明の造形用材料が、これらのその他の樹脂を含有する場合、本発明の効果を有効に
得るために、その他の樹脂の含有量は、ポリブチレンサクシネート樹脂(A)およびポリ
エステル系樹脂(B)と、その他の樹脂との合計100質量部中に70質量部以下、特に
50質量部以下、さらには30質量部以下であることが好ましい。
<その他の成分>
本発明の造形用材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、無機フィラー、鮮度保持剤
、抗菌剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔
料、加水分解防止剤、結晶核剤、アンチブロッキング剤、耐光剤、可塑剤、熱安定剤、難
燃剤、離型剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、分散助剤、各種界面活性剤、スリ
ップ剤等の各種添加剤や、澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉
末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末、或いはこれらの混合物が「その他の成分」
として含まれていてもよい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して
使用してもよい。
これらのその他の成分の含有量は、通常、本発明の造形用材料の物性を損なわないため
に、混合する成分の総量が、本発明の造形用材料の総量に対して0.01質量%以上40
質量%以下であることが好ましい。
本発明の造形用材料は、積層痕が目立たず、造形外観が良好になる観点や、フィラメン
トの弾性率を向上させてハンドリング性を向上させる観点から、無機フィラーを添加する
ことが好ましい。無機フィラーとしては、無水シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸
カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セ
ピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラ
ステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミ
ニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸
化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等の塩類等が挙げられ、好ましくはタルク、炭
酸カルシウム、ゼオライトである。
無機フィラーの中には、炭酸カルシウム、石灰石のように、土壌改良剤の性質を持つも
のもある。これらの無機フィラーを特に多量に含んだ、バイオマス由来のポリブチレンサ
クシネート樹脂(A)を含む造形材料やその造形物を、土壌に投棄すれば、生分解後の無
機フィラーは残存して、土壌改良剤としても機能するので、生分解樹脂としての有意性を
高めることができる。
無機フィラーは、その形状によっても分類可能である。無機フィラーには繊維状、粉粒
状、板状、針状のものがあり、粉粒状、板状のものが好ましく、板状フィラーが特に好ま
しい。板状フィラーとしては、タルク、カオリン、マイカ、クレイ、セリサイト、ガラス
フレーク、合成ハイドロタルサイト、各種金属箔、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タン
グステン、窒化ホウ素、板状酸化鉄、板状炭酸カルシウム、板状水酸化アルミニウム、ゼ
オライト等が挙げられる。配合のしやすさ、剛性、射出成形性、分解性、水蒸気等の透湿
性改良、脱臭効果を高めるという観点からは、タルク、マイカ、或いはクレイ、炭酸カル
シウム、ゼオライトを用いることが好ましい。また、フィラーは、樹脂との相溶性を向上
し、造形時のダマやフィラメント紡糸時の目ヤニを抑制するために、表面処理がされてい
てもよい。
無機フィラーは、ハンドリングの理由から平均粒子径が0.5μm以上であることが好
ましく、より好ましくは0.6μm以上、更に好ましくは0.7μm以上、特に好ましく
は1.0μm以上である。一方で、無機フィラーの平均粒子径は50μm以下であること
が好ましく、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下である。
無機フィラーの平均粒子径の測定方法は特に限定されない。測定法の具体例としては、
島津製作所製粉体比表面積測定装置SS-100型(恒圧式空気透過法)で測定した粉末
1gあたりの比表面積値を求め、JIS M8511に準じた空気透過法による比表面積
の測定結果から、下記式によりフィラーの平均粒子径を計算する方法が挙げられる。
平均粒子径(μm)=10000×{6/(フィラーの比重×比表面積)}
無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率
で併用してもよい。
無機フィラーの好適なものとして使用できるタルクは、例えば、日本タルク製のミクロ
エースや富士タルク工業製のMG113、MG115等が挙げられる。また、無機フィラ
ーの好適なものとして使用できる炭酸カルシウムは、具体的には、備北粉化工業社製のソ
フトン1200、2200等が挙げられる。
上記無機フィラーの含有量は特に規定されないが、本発明の造形用材料の総量に対して
1~50質量%であることが好ましい。より好ましくは10~45質量%、さらに好まし
くは15~40質量%である。無機フィラーの含有量が上記下限よりも少ないと、生分解
性や造形外観の向上効果を得ることができない。一方で、無機フィラーの含有量が上記上
限よりも多いと、造形物の層間接着を阻害し、造形物の強度に劣る懸念がある。
本発明の造形用材料は、特に上記無機フィラーを含有する場合、造形時に、ノズルに、
樹脂中からブリードした無機フィラーが付着することで発生するダマを抑制するためや、
フィラメント形状の造形用材料を作製する際の目やに抑制のために、分散材を添加するこ
とが望ましい。これら分散材としては、金属石鹸(脂肪酸金属塩)、脂肪酸エステル、脂
肪酸アマイド、ワックス、低分子量ポリマーなどが挙げられる。なかでも分散性やブリー
ド抑制の観点から、ステアリン酸カルシウムや、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石
鹸が好ましい。添加量は、本発明の造形用材料の総量に対して、500~5000rpm
が好ましい。
上記その他の成分のうち、防曇剤は具体的には、炭素数4以上20以下の飽和又は不飽
和脂肪族カルボン酸と多価アルコールのエステル系界面活性剤が好ましく用いられる。
上記その他の成分のうち、スリップ剤としては、炭素数6~30の不飽和および飽和脂
肪酸からなる不飽和および飽和脂肪酸アマイド、不飽和および飽和脂肪酸ビスアマイドが
挙げられる。スリップ剤としては、最も好ましくはエルカ酸アマイドやオレイン酸アマイ
ド、ステアリン酸アマイドやそれらのビスアマイド等が挙げられる。これらは、本発明の
効果を損なわない範囲で任意に配合することができ、1種を単独で用いてもよく、2種以
上を混合して使用してもよい。
上記その他の成分のうち、アンチブロッキング剤としては、炭素数6~30の飽和脂肪
酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチロールアマイド、エタノールアマイド、天然
シリカ、合成シリカ、合成ゼライト、タルク等が挙げられる。
上記その他の成分のうち、耐光剤としては具体的には、ビス(2,2,6,6-テトラ
メチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-
ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-
4-ピペリジル)セバケート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル
)-2-n-ブチル-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)マロネー
ト、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-n-ブチル-ビス
(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)マロネート、2-(3,5-ジ
-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチル-ビス(2,2,6,6-テ
トラメチル-4-ピペリジル)マロネート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロ
キシベンジル)-2-n-ブチル-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペ
リジル)マロネート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-
1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペ
ンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ミッ
クスド(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,
4-ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド(1,2,2,6,6-ペンタメチル-
4-ピペリジル/トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ミッ
クスド{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル/β,β,β’,β’-テトラ
メチル-3,9-〔2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〕ジエ
チル}-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド{1,2,2,6
,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/β,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-〔
2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〕ジエチル}-1,2,3
,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2-ビス(3-オキソ-2,2,6,6-テ
トラメチル-4-ピペリジル)エタン、1-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ
フェニル)-1,1-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシカル
ボニル)ペンタン、ポリ〔1-オキシエチレン(2,2,6,6-テトラメチル-1,4
-ピペリジル)オキシスクシニル〕、ポリ〔2-(1,1,4-トリメチルブチルイミノ
)-4,6-トリアジンジイル-(2,2,6,6-テトラ及び-4-ピペリジル)イミ
ノヘキサメチレン-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕、N,
N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス〔N-ブチル-N-
(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ〕-6-クロロ-1,3,5
-トリアジン縮合物及びそのN-メチル化合物、コハク酸と1-(2-ヒドロキシエチル
)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンとの重縮合物等が挙げら
れる。
これらの中で、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケー
ト、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチル-ビス
(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)マロネートが特に好ましい。
上記その他の成分のうち、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾ
ール系、サリチル酸系、シアノアクリレート系等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤の
中で、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、具体的には、2-[2-ヒドロキ
シ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール
、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキ
シ-フェノールが挙げられる。
上記その他の成分のうち、酸化防止剤としては、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン
)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ペンタ
エリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェ
ニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル
-α,α’,α”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、オク
タデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ
ート、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリ
ル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H、3H,5H)-トリオン、
1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,
3,5-トリアジン-2,4,6(1H、3H,5H)-トリオン、カルシウムジエチル
ビス[{3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル}メチル]
ホスホネート、ビス(2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジ-tert-ブチル-5,
5’-ジメチルフェニル)エタン、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3
,5-ジ-tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオンアミド等のヒンダ
ードフェノール系酸化防止剤、トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト
、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,
4’―ジイルビスホスフォナイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6
-メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェ
ニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系酸化防止剤、3-ヒドロキシ-5
,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとキシレンの反応性生物等のラクトン系
酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等の
硫黄系酸化防止剤及びこれらの2種以上の混合物等が例示できる。この中でもヒンダード
フェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。
好ましいヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、イルガノックス3790、イル
ガノックス1330、イルガノックス1010、イルガノックス1076、イルガノック
ス3114、イルガノックス1425WL、イルガノックス1098、イルガノックスH
P2225FL、イルガノックスHP2341、イルガフォスXP-30(以上、BAS
F社製)、スミライザーBBM-S(住友化学社製)が挙げられる。最も好ましい酸化防
止剤はイルガノックス1010(ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-
tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート])、イルガノックス13
30(3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル-α,α’,α”-
(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール)である。
<3次元造形用材料の形態>
本発明の3次元造形用材料の形態は特に限定されず、結合剤噴射式、材料押出法、粉末
床溶融結合方式などの3次元プリンターに適用可能な形態であればよい。3次元造形用材
料の形態としては、たとえば、粉体、ペレット、顆粒、フィラメントなどが挙げられる。
特に、造形用材料の生産性や、ハンドリング性の観点から、材料押出法に適した、ペレッ
トやフィラメントの形状が好ましい。本発明の3次元造形用材料は、上記に例示したよう
な樹脂を複数用いる場合に、複数の樹脂を混合して均質な材料としてもよいし、用いる2
種以上の樹脂をそれぞれ異なる層に分けて多層構造としてもよい。
ペレット形状の場合、その形状は、円柱状(断面が楕円のものも含む)、球状、米粒状
、円盤状、四角状などが挙げられる。造形時に、プリンターのノズル上部に通常設けられ
ているスクリューに、良好に噛みこんでいく観点から、ペレットの一番長い部分の長さが
10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。また、ス
クリューへの巻き付きを抑制する観点から、ペレットの一番短い部分の長さが、0.1m
m以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。
フィラメント形状の場合、その径は、使用するシステムの能力に依存するが、好ましく
は1.0~5.0mm、より好ましくは1.3~3.5mmである。更に径の精度はフィ
ラメントの任意の測定点に対して±5%以内の誤差に納めることが原料供給の安定性の観
点から好ましい。
フィラメント形状の場合、その好ましい形態は、ボビン等に巻きとった巻回体であり、
また、フィラメントを容器に密封収納した3次元プリンター用カートリッジであることが
、吸湿抑制の観点から好ましい。
<3次元造形用材料の製造方法>
本発明の3次元造形用材料は、ポリブチレンサクシネート樹脂(A)やポリエステル系
樹脂(B)および、必要に応じて用いられるその他の樹脂やその他の成分を、混合、ある
いは積層することなどにより製造される。混合比率等の異なる2種以上の混合品を作製し
たあと、さらにそれらを積層することで製造してもよい。なお、生産性の観点から、全て
の成分が混合されて製造されることが好ましい。
この混合工程は、ポリブチレンサクシネート樹脂(A)や、ポリエステル系樹脂(B)
および、必要に応じて用いられるその他の樹脂やその他の成分を、所定の割合で同時に、
又は任意の順序で、タンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサ
ー、混練ロール、押出機等の混合機により混合し、好ましくは溶融混練することにより行
われる。
混合工程で使用される混練機は、溶融混練機であってもよい。二軸押出機もしくは単軸
押出機の種別の如何を限定するものではないが、用いるポリブチレンサクシネート樹脂(
A)や、ポリエステル系樹脂(B)及びその他の樹脂や成分等の特性に応じて溶融混練を
達成する目的の下では、二軸押出機がより好ましい。
溶融混練時の温度は120~220℃が好ましく、130~160℃であることがより
好ましい。この温度範囲であれば、溶融混練に要する時間の短縮が可能になり、樹脂の劣
化に伴う色調の悪化等を防止することができ、また、耐衝撃性や耐湿熱性などの実用面で
の物理特性をより向上させることができる。
溶融混練時間は、樹脂劣化をより確実に回避するという観点から無用な長大化は好まし
くなく、20秒以上20分以下が好ましく、より好ましくは30秒以上15分以下である
。この溶融混練時間を満たすような溶融混練温度や時間の条件設定を行うことが好ましい

本発明の3次元造形用材料がペレット形状の場合は、たとえば上記溶融混練時に、スト
ランドカットやホットカットなど任意の手法でペレット化すればよい。また本発明の3次
元造形用材料がフィラメント形状の場合は、例えば上記溶融混練時に吐出されたストラン
ドをそのまま所望の径に調整してフィラメント形状とする方法や、上記のペレット形状で
得られた樹脂を、再び押出機で溶融押出し、フィラメント形状とする方法が挙げられる。
造形用材料が粉末や顆粒形状の場合は、上記のペレット形状で得られた樹脂を、任意の手
法で粉砕する方法などが挙げられる。
本発明の3次元造形用材料は、上記手法で製造されたあと、3次元造形用材料の結晶化
を促進させるため、60℃以上で1日以上、熱処理を行ってもよい。3次元造形用材料の
結晶化が十分にされていないと、3次元造形用材料が造形前に生分解されて3次元造形用
材料や造形物の強度が低下する懸念がある。また、造形時の雰囲気温度の上昇によって、
3次元造形用材料同士がブロッキングしたり、3次元造形用材料が急激に結晶化したり軟
化したりすることなどにより、造形性が低下する懸念がある。ここで、結晶化が十分にさ
れているかは、DSCによる結晶化ピークの有無や、結晶化融解熱量、X線回折法などに
よって確認することができる。
本発明の3次元造形用材料は、上記手法で製造された後、60℃以上で1晩程度乾燥し
、含水率が低い状態で、アルミ内装袋やポリエチレン製袋などに密封され保管されること
が好ましい。なお、乾燥後の造形用材料の含水率は、2.5%以下であることが好ましい
。該含水率は、2.0%以下がより好ましく、1.5%以下がさらに好ましく、1.0%
以下が特に好ましい。該含水率は、0.3%以上でもよく、0.6%以上でもよい。該範
囲であれば、押出時に発泡や発煙が少なく、また、寸法安定性や機械強度等が安定するた
め好ましい。該特性は、カールフィッシャー法で測定される。
<造形物の製造方法>
本発明の3次元造形用材料を用いて、結合剤噴射式、材料押出法、粉末床溶融結合方式
などの3次元プリンターにより造形することで、本発明の造形物を製造することができる
。プリンターが比較的安価に入手できることや、3次元造形用材料のハンドリング性に優
れる観点から、本発明では、材料押出法の3次元プリンターを用いることが好ましい。な
お、本発明の造形物の製造時に、サポート材料として他の樹脂からなる造形用材料を同時
に用いて造形し、造形完了後にこのサポート材料を取り除いて、本発明の造形物としても
よい。
材料押出法の3次元プリンターは一般に、加熱可能な造形テーブル、押出ノズル、加熱
溶融器、原料供給部などを備えている。これらの3次元プリンターの中には、押出ノズル
と加熱溶融器とが一体化されているものもある。
押出ノズルはガントリー構造に設置されることにより、造形テーブルのX-Y平面上に
任意に移動させることができる。造形テーブルは目的の造形物やサポート材等を構築する
プラットフォームであり、加熱保温することで造形物との密着性を得たり、得られる造形
物を所望の3次元物体として寸法安定性を改善したりできる仕様であることが好ましい。
押出ノズルと造形テーブルとは、通常、少なくとも一方がX-Y平面に垂直なZ軸方向に
可動となっている。また、プリンターによっては、ノズルがX方向(あるいはY方向)の
みに移動し、造形テーブルがY方向(あるいはX方向)に動く仕様のものなどもある。
造形用材料がフィラメント形状の場合は、原料供給部からフィラメントが供給され、対
向する1組のローラー又はギアーにより押出ノズルへ送り込まれ、押出ノズルにて加熱溶
融され、ノズル先端より押し出される。また造形用材料がペレットや粉体、顆粒の場合は
、定量フィーダやホッパーなどの原料供給部から造形用材料が投入され、スクリューやピ
ストンなどで溶融されながら、押出ノズルへと送り込まれ、ノズル先端より押し出される
。ノズルから吐出された造形用材料は、3次元モデルを基にして発信される信号により、
押出ノズルあるいは造形テーブルがその位置を移動することで、造形テーブル上に積層堆
積されてゆく。この工程が完了した後、基板から積層堆積物を取り出し、必要に応じてサ
ポート材等を剥離したり、余分な部分を切除したりして所望の3次元物体として造形物を
得ることができる。
押出ノズルから吐出される溶融樹脂の温度は120℃以上であることが好ましく、14
0℃以上であることがより好ましく、一方、250℃以下であることが好ましく、220
℃以下であることがより好ましい。溶融樹脂の温度が上記下限値以上であると、樹脂が十
分に流動するため、高速で造形した場合も造形外観に優れる傾向にあり好ましい。一方、
溶融樹脂の温度が上記上限値以下であると、樹脂の熱分解や焼け、発煙、臭い、べたつき
、ダマの発生といった不具合の発生を防ぎやすいため好ましい。
押出ノズルから吐出される造形用材料は、好ましくは直径0.01~1mm、より好ま
しくは直径0.02~0.8mmのストランド状で吐出される。造形用材料がこのような
形状でノズルから吐出されると、3次元モデルの再現性が良好となる傾向にあるために好
ましい。
本発明の造形物は、使用する用途などに応じて、造形後、熱処理により結晶化を促進あ
るいは完了させてもよい。
<造形物の用途>
本発明の造形物は、生分解性に優れたものである。このため、文房具、玩具、食品用の
容器、農業用資材、医療用部材、学校教材、家電製品、OA機器の補修部品、自動車、オ
ートバイ、自転車等の各種パーツ、建装材等の部材等の用途に好適に用いることができる
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるもの
ではない。なお、本明細書中に表示される種々の測定値および評価は次のようにして行っ
た。
<物性評価>
[引張貯蔵弾性率(E’)およびtanδピーク]
実施例および比較例で得られた造形用材料を、熱プレスによりそれぞれ厚み約0.5m
mのシートに成形し、幅約4mmの短冊状に切り出し、標線間距離を2.5cmとして、
測定用サンプルとした。動的粘弾性測定機(アイティ計測(株)製、商品名:粘弾性スペ
クトロメーターDVA-200)を用いて、歪み0.1%、振動周波数1Hz、昇温速度
3℃/分の条件で、引張貯蔵弾性率(E’)を-100℃から200℃まで測定し、得ら
れたデータから、30℃における引張貯蔵弾性率(E’)、tanδピーク値および、引
張貯蔵弾性率(E’)が1×10Paになるときの温度を読み取った。
[結晶化熱量、結晶化温度、および融点]
実施例および比較例で得られた造形用材料約10mgについて、示差走査熱量計((株
)パーキンエルマー社製、商品名:Diamond DSC)を用いて、JIS K71
21に準じて、加熱速度10℃/分で-70℃から200℃まで昇温し、200℃で1分
間保持した後、冷却速度10℃/分で-70℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で
200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムの降温過程から、結晶化量および結晶
化温度を読み取った。また、再昇温過程から、融点を読み取った。
[せん断貯蔵弾性率(G’)]
実施例および比較例で得られた造形用材料について、60℃で12時間乾燥した後、レ
オメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製、商品名:MARS I
I)を用いて、φ20mmパラレルプレートにて、歪0.5%、周波数1Hz、降温速度
3℃/minで、せん断引張貯蔵弾性率(G’)を200℃から50℃まで測定し、得ら
れたデータから、せん断貯蔵弾性率(G’)が1×10Paになる温度を読み取った。
[メルトフローレート(MFR)]
実施例および比較例で得られた造形用材料について、60℃で12時間乾燥した後、メ
ルトインデックス測定装置((株)東洋精機製作所製、商品名:セミメルトインデックサ
)を用いて、JISK7210に準じて、170℃、荷重2.16kgfにてMFR(g
/10min)を測定した。
<造形性の評価>
[高速造形性]
実施例および比較例で得られた造形用材料について、材料押出法の3次元プリンター(
Prusa Research製Original Prusa i3 MK3S)を用
いて、造形速度50mm/s、ノズル温度180℃、造形テーブル温度60℃、冷却ファ
ン100%、インフィル20%とし、造形テーブルにはtesa製の青色マスキングテー
プを貼り付けて、図1に示す3DBenchyモデルの造形を行い、造形結果から高速造
形性を以下の用に判断した。
A:最後まで造形用材料は良好にノズルから吐出され、造形を完了できた。
B+:造形中にフィラメントが屈曲することでノズルに造形用材料を送れなくなり、造
形が途中で止まってしまった。
B:造形開始時にフィラメントが屈曲することでノズルに造形用材料を送れなくなり、
造形を開始できなかった。
[造形物の反り]
上記高速造形評価と同じ造形条件で、同じ形状を造形した際の、造形物の反りの発生の
状況から、以下のように反り抑制効果を評価した。
AA:反らずに最後まで造形が完了できた。
A:上記条件では造形中に反りが発生したが、造形テーブルの青色マスキングテープ上
に、両面テープを貼り付けて造形したところ、反らずに最後まで造形が完了できた。
B:造形テーブルの青色マスキングテープ上に両面テープを貼り付けても、造形中に反
りが発生し、造形テーブルから造形物が剥がれて造形を完了できなかった。
実施例、比較例で用いた原料を下記する。
<ポリブチレンサクシネート樹脂(A)>
PBSA(PTTMCCBiochem社製 BioPBS FD92PM、全ジカル
ボン酸単位量中のコハク酸単位量:74モル%、全ジカルボン酸単位量中のアジピン酸単
位量:26モル%、MFR:5.0g/10分、融点:89℃)
<ポリエステル系樹脂(B)>
PBS(PTTMCCBioChem社製 BioPBS FZ91PM、全ジカルボ
ン酸単位量中のコハク酸単位量:100モル%、MFR:5.0g/10分、融点:11
3℃)
<その他成分>
Talc-1(富士タルク工業社製 MG-115、平均粒子径:14μm)
(実施例1~2)
表1に示す原料を表1に示す割合でブレンドし、混練温度140℃にて、スクリュー径
φ30mmの二軸押出機にてストランド状に押出し、ペレタイザーによりペレット化した
。得られた樹脂ペレットをスクリュー径φ25mmの単軸押出機にて、設定温度150℃
で、口径2.5mmのノズルから樹脂組成物を押出し、30℃の水槽を経て引取り装置で
20m/minで引取り、直径1.75mm±0.05mmのフィラメント形状の3次元
造形用材料を得た。製造したフィラメント形状の3次元造形用材料で、物性および造形性
の評価を実施した。結果を表2に示す。
Figure 2023037365000001
(実施例3~4)
表1に示す原料を表1に示す割合でブレンドし、実施例1~2と同様にしてフィラメン
トを製造した場合の、物性および造形性の評価結果の予測を表2に示す。
(比較例1)
原料として、ポリブチレンサクシネート樹脂(A)のみを用いて、スクリュー径φ25
mmの単軸押出機にて、設定温度150℃で、口径2.5mmのノズルから押出し、30
℃の水槽を経て引取り装置で20m/minで引取り、1.75mmφ±0.05mmの
フィラメント形状の3次元造形用材料を得た。製造したフィラメント形状の3次元造形用
材料で、物性および造形性の評価を実施した。結果を表2に示す。なお、比較例1で製造
した造形材料は、高速造形性の評価にて造形できなかったため、造形物の反りについては
未評価である。
(比較例2)
原料としてポリエステル系樹脂(B)のみを用いた以外は、比較例1と同様にしてフィ
ラメントを製造した場合の、生産性、物性、および造形性の評価結果の予測を表2に示す
Figure 2023037365000002
表2より、本発明の範囲である実施例1~4は、良好な造形性を示している。一方で、
比較例1は、30℃における引張貯蔵弾性率(E’)が本発明の範囲より低いので、フィラ
メントの剛性が劣るため、造形時にフィラメントの屈曲が発生して高速造形性に劣る。ま
た比較例2は、結晶化熱量が本発明の範囲より高いため、結晶化収縮により造形物の反り
が発生し、造形性に劣る。
また実施例1と実施例2を比較すると、実施例2では結晶化熱量が本発明の範囲の、よ
り好ましい範囲になるため、造形時の反りがさらに抑制されている。

Claims (7)

  1. ポリブチレンサクシネート樹脂(A)を含む3次元造形用材料であって、以下(i)~
    (ii)を満たす3次元造形用材料。
    (i)振動周波数1Hzで測定した30℃における引張貯蔵弾性率(E’)が400M
    Pa以上である。
    (ii)示差走査熱量測定において、昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温
    後、冷却速度10℃/分で0℃まで降温した際の結晶化熱量が65J/g以下である。
  2. 示差走査熱量測定において、昇温速度10℃/分で-70℃から200℃まで昇温後、
    冷却速度10℃/分で-70℃まで降温し、さらに昇温速度10℃/分で-70℃から2
    00℃まで昇温した際の融点が、融点が150℃以下である、請求項1に記載の3次元造
    形用材料。
  3. 振動周波数1Hzでー100℃から200℃まで測定した際に、引張貯蔵弾性率(E’
    )が10MPaになる温度が90℃以上である、請求項1~2に記載の3次元造形用材料
  4. 無機フィラーを含有する、請求項1~3に記載の3次元造形用材料。
  5. 上記3次元造形用材料中の上記ポリブチレンサクシネート樹脂(A)の全ジカルボン酸
    単位に対して、炭素数が5以上10以下の脂肪族ジカルボン酸やその誘導体が、5モル%
    以上50モル%以下含まれる、請求項1~4に記載の3次元造形用材料。
  6. フィラメントおよびペレット形状のいずれかである、請求項1~5に記載の3次元造形
    用材料。
  7. 請求項1~6に記載の3次元造形用材料を用いて造形した造形物。
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