JP6331121B2 - 光カチオン重合増感剤 - Google Patents

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本発明は、9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物を含有する光カチオン重合増感剤に関する。
紫外線等の光線により重合する光カチオン重合性組成物が広くさまざまな用途で使用されている。この光カチオン重合性組成物としては、ラジカル重合型とカチオン重合型とがある。ラジカル重合型としては、(メタ)アクリルロイル基を有する化合物、不飽和ポリエステル系化合物等の不飽和二重結合を有する化合物が知られており、カチオン重合型としては、エポキシ基を有する化合物、ビニルエーテル基を有する化合物等が知られている。そして、これらの化合物は、適当な光重合開始剤及び必要に応じ光重合増感剤と共に使用される。一般に、ラジカル重合型は、重合速度が速く、生成する塗膜硬度が高いという特徴を持つが、基材との密着性が弱いという欠点がある。また、酸素の影響を受けやすく、特に薄膜の生成においては窒素封入などの設備が必要となる。一方、カチオン重合型は、基材との密着性が高く、可とう性に優れており、酸素による影響を受けにくいという特徴を有する。そのため、電子材料分野において光カチオン重合性組成物が用いられている。
この光カチオン重合には、通常光カチオン重合開始剤が使用される。当該光カチオン重合開始剤としてはオニウム塩が知られており、特にアリールヨードニウム塩やアリールスルホニウム塩が用いられている。この光カチオン重合開始剤は、紫外線等の光を吸収して励起し、その励起種が分解して、酸を発生する化合物である。
しかし、アリールヨードニウム塩はその吸収波長が250nm近辺と低く、高圧水銀ランプ等の紫外線により十分励起することができないために高圧水銀ランプ等で重合させるときは、高圧水銀ランプ等の照射波長である360〜400nm近辺に吸収のある9,10−ジアルコキシアントラセン等を光カチオン重合増感剤として添加する必要がある(特許文献1、2、3)。
一方、アリールスルホニウム塩は、高圧水銀ランプ等の光の波長である366nm付近に吸収を持つため、高圧水銀ランプ等を照射することにより酸を発生し、光カチオン重合性化合物を重合させることができる。そのため特に光カチオン重合増感剤の必要性は感じられてこなかった。
しかし、近年になり、366nmよりも更に長波長の紫外LEDが開発され、このLEDは発熱が少なく長寿命であることから徐々にこの紫外LEDを光源として使用する傾向にある。この場合にはヨードニウム塩及びスルホニウム塩のいずれも単独では励起できないためやはり光カチオン重合増感剤、たとえば9,10−ジアルコキシアントラセン等を使用しなければならない。
特開平10−147608号公報 特開2001−348497号公報 特表2000−515182号公報
しかしながら、上記述べた9,10−ジアルコキシアントラセンは高感度な光カチオン重合増感剤であるが、低濃度において感度が急低下するという問題がある。また、9,10−ジアルコキシアントラセンを含有する光カチオン重合性組成物を光カチオン重合し硬化させる時、あるいはその硬化物の保存中に光カチオン重合増感剤等の添加物が表面ににじみ出し、硬化物の粉吹きや着色の問題を引き起こすことが知られている。たとえば、フィルムとフィルムを接着する光接着剤の一成分としてこれらの光カチオン重合増感剤を使用する場合、光カチオン重合増感剤が上部に被せたフィルムに移行する(マイグレーション)ことがあり、上部フィルム上に増感剤の粉吹きや着色の問題が生じることもある。
本発明者は、アントラセン化合物の構造と光吸収特性について鋭意検討した結果、9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物が低濃度においても優れた光カチオン増感性能を持つと共に当該化合物を光カチオン重合増感剤として含有する光カチオン重合性組成物の上にフィルムを被せた場合でも光カチオン重合増感剤がマイグレーションなどを起こし難くなることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下に記載の骨子を要旨とするものである。
(発明1)一般式(1)で示される9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物を含有する光カチオン重合増感剤を提供する。
一般式(1)において、Rは炭素数1〜8のアルキル基又はアリル基を示し、X及びYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
(発明2)発明1記載の光カチオン重合増感剤、光カチオン重合開始剤及び光カチオン重合性化合物を含む光カチオン重合性組成物を提供する。
(発明3)光カチオン重合開始剤がアリールヨードニウム塩又はアリールスルホニウム塩である発明2に記載の光カチオン重合性組成物を提供する。
(発明4)光カチオン重合増感剤の添加量が、光カチオン重合性化合物100重量部に対して、0.2重量部以上、0.5重量部以下であることを特徴とする発明2又は発明3記載の光カチオン重合性組成物。
(発明5)発明2乃至発明4のいずれかひとつに記載の光カチオン重合性組成物に波長範囲355nmから420nmの光を含むエネルギー線を照射することを特徴とする光カチオン重合性組成物の硬化方法を提供する。
(発明6)波長が355nmから420nmの光を含むエネルギー線の照射源が、中心波長が365nm、375nm、385nm又は395nmの紫外LEDであることを特徴とする発明5に記載の硬化方法を提供する。
(発明7)発明5又は発明6に記載の硬化方法によって硬化することにより得られる硬化物を提供する。
(発明8)9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を炭酸エステル化することを特徴とする、上記一般式(1)で示される9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物の製造法を提供する。
本発明の9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物は、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を炭酸エステル化することにより工業的に容易に得ることができ、低濃度においても優れた増感性能を持つとともに光カチオン重合性組成物の上にフィルムを被せた場合でも当該フィルムにマイグレーションなどを起こし難くなるなど低マイグレーション性の光カチオン重合増感剤として有用である。
実施例1〜10と比較例1〜5の結果をまとめたもので、各光カチオン重合増感剤におけるその添加量(光カチオン重合性化合物100重量部に対する添加量)と光硬化速度(タック・フリー・タイム)の関係を図示したもの。光カチオン重合開始剤としてアリールスルホニウム塩を使用。 実施例11〜20と比較例6〜10の結果をまとめたもので、各光カチオン重合増感剤におけるその添加量(光カチオン重合性化合物100重量部に対する添加量)と光硬化速度(タック・フリー・タイム)の関係を図示したもの。光カチオン重合開始剤としてアリールヨードニウム塩を使用。
本発明の9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物は、一般式(1)に記載の構造を示す化合物である。
一般式(1)において、Rは炭素数1〜8のアルキル基又はアリル基を示し、X及びYは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
一般式(1)中、Rで表される炭素数1から8のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−アミル基、i−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、アリル基としては、アリル基、メタリル基等が挙げられる。
一般式(1)中、X及びYで表される炭素数1から8のアルキル基としてはメチル基、エチル基,n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−アミル基、i−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
一般式(1)で表される9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物の例としては、次の化合物が挙げられる。
すなわち、X及びYがともに水素原子である場合の例としては、9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(n−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(n−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(i−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(n−ヘプチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(n−オクチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセン等が挙げられる。
Xがアルキル基であり、Yが水素原子である場合の例としては、1−メチル−9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−メチル−9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−メチル−9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−メチル−9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−メチル−9,10−ビス(n−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−メチル−9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−メチル−9,10−ビス(n−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−メチル−9,10−ビス(i−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−メチル−9,10−ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−メチル−9,10−ビス(n−ヘプチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−メチル−9,10−ビス(n−オクチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−メチル−9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−メチル−9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(n−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(n−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(i−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(n−ヘプチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(n−オクチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−エチル−9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−エチル−9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−エチル−9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−エチル−9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−エチル−9,10−ビス(n−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−エチル−9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−エチル−9,10−ビス(n−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−エチル−9,10−ビス(i−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−エチル−9,10−ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−エチル−9,10−ビス(n−ヘプチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−エチル−9,10−ビス(n−オクチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−エチル−9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1−エチル−9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(n−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(n−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(i−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(n−ヘプチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(n−オクチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセン等が挙げられる。
X及びYがともにアルキル基である場合の例としては、2,3−ジメチル−9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ビス(n−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ビス(n−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ビス(i−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ビス(n−ヘプチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ビス(n−オクチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(n−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(n−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(i−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(n−ヘプチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(n−オクチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ビス(n−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ビス(n−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ビス(i−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ビス(n−ヘプチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ビス(n−オクチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジメチル−9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジメチル−9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジメチル−9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジメチル−9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジメチル−9,10−ビス(n−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジメチル−9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジメチル−9,10−ビス(n−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジメチル−9,10−ビス(i−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジメチル−9,10−ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジメチル−9,10−ビス(n−ヘプチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジメチル−9,10−ビス(n−オクチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジメチル−9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジメチル−9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセン等が挙げられる。
更には、2,3−ジエチル−9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジエチル−9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジエチル−9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジエチル−9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジエチル−9,10−ビス(n−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジエチル−9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジエチル−9,10−ビス(n−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジエチル−9,10−ビス(i−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジエチル−9,10−ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジエチル−9,10−ビス(n−ヘプチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジエチル−9,10−ビス(n−オクチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジエチル−9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,3−ジエチル−9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジエチル−9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジエチル−9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジエチル−9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジエチル−9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジエチル−9,10−ビス(n−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジエチル−9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジエチル−9,10−ビス(n−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジエチル−9,10−ビス(i−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジエチル−9,10−ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジエチル−9,10−ビス(n−ヘプチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジエチル−9,10−ビス(n−オクチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジエチル−9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,6−ジエチル−9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジエチル−9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジエチル−9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジエチル−9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジエチル−9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジエチル−9,10−ビス(n−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジエチル−9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジエチル−9,10−ビス(n−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジエチル−9,10−ビス(i−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジエチル−9,10−ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジエチル−9,10−ビス(n−ヘプチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジエチル−9,10−ビス(n−オクチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジエチル−9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、2,7−ジエチル−9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジエチル−9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジエチル−9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジエチル−9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジエチル−9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジエチル−9,10−ビス(n−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジエチル−9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジエチル−9,10−ビス(n−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジエチル−9,10−ビス(i−ペンチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジエチル−9,10−ビス(n−ヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジエチル−9,10−ビス(n−ヘプチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジエチル−9,10−ビス(n−オクチルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジエチル−9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセン、1,5‐ジエチル−9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセン等が挙げられる。
以上述べた9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物の中でも、特に、合成の容易さと性能の高さから、9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(n−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセンが好ましい。
(光カチオン重合増感剤)
本発明の9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物はカチオン重合増感剤として有用である。本発明の9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物を光カチオン重合増感剤として含有することにより、光カチオン重合開始剤、光カチオン重合性化合物からなる光カチオン重合性組成物は、波長範囲355nmから420nmの光を含むエネルギー線を照射することにより容易に光カチオン重合させることができる。
(光カチオン重合開始剤)
本発明の光カチオン重合性組成物に用いる光カチオン重合開始剤としては通常スルホニウム塩またはヨードニウム塩が使用される。スルホニウム塩としては、アリールスルホニウム塩が好ましく、S,S,S’,S’−テトラフェニル−S,S’−(4、4’−チオジフェニル)ジスルホニウムビスヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニルー4−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられ、例えばダウ・ケミカル製、商品名:UVI6992、サンアプロ社製、商品名:CPI−100P、ビー・エー・エス・エフ社製、商品名:イルガキュア270を用いることが出来る(イルガキュアは、ビー・エー・エス・エフ社の登録商標)。一方、ヨードニウム塩としては、アリールヨードニウム塩が好ましく、4−イソブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−イソプロピルフェニルー4’−メチルフェニルヨードニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートが挙げられ、例えばビー・エー・エス・エフ社製、商品名:イルガキュア250、ローディア社製、商品名:ロードシル2074(ロードシルは、ローディア社の登録商標)を用いることが出来る。
(光カチオン重合性化合物)
本発明に使用することができる光カチオン重合性化合物としてはエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物が挙げられる。エポキシ化合物として一般的なものは脂環式エポキシ化合物、エポキシ変性シリコーン、芳香族グリシジル化合物である。脂環式エポキシ化合物としては3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダウ・ケミカル社製、UVR6105、UVR6110、ダイセル社製、セロキサイド2021P、セロキサイドは株式会社ダイセルの登録商標)、1,2−エポキ−4−ビニルシクロヘキサン(ダイセル社製、セロキサイド2000)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられ、この中でも、特に3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを用いることが好ましい。芳香族グリシジル化合物としては2,2’−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン等が挙げられる。ビニルエーテル化合物としてはメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
(光カチオン重合性組成物)
光カチオン重合性組成物の組成としては、光カチオン重合性化合物の100重量部に対し、光カチオン重合開始剤を0.1重量部以上、10.0重量部以下、好ましくは1.0重量部以上、5.0重量部以下の範囲で使用する。光カチオン重合性化合物に対する光カチオン重合開始剤の使用量が0.1重量部未満だと、光カチオン重合性組成物を光カチオン重合させたとき、重合速度が遅くなり、一方、光カチオン重合開始剤の使用量が10.0重量部を超えると光カチオン重合性組成物を光カチオン重合させたときに得られる光カチオン重合物の物性が低下するおそれがあるため好ましくない。
本発明の光カチオン重合増感剤である9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物は、光カチオン重合性化合物100重量部に対し、0.1重量部以上、5.0重量部以下、好ましくは0.2重量部以上、1.0重量部以下、更に好ましくは、0.2重量部以上、0.5重量部以下の範囲で使用する。光カチオン重合増感剤が0.1重量部未満だと、増感効果が発現し難くなる場合があり、一方、5.0重量部を超えて添加すると光カチオン重合性組成物を光カチオン重合させたとき、重合物の物性が低下するおそれがあるため好ましくない。
本発明の光カチオン重合増感剤である9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物は、アントラセン系の光カチオン重合増感剤として公知の9,10−ジブトキシアントラセンの増感効果が著しく低下する0.5重量部以下の使用量でも実用的な増感効果を示すことが特徴である。
(添加剤)
本発明の光カチオン重合性組成物には、必要に応じてエポキシ系希釈剤、オキセタン系希釈剤、ビニルエーテル系希釈剤を含有しても良い。
本発明で用いられるエポキシ系希釈剤の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。オキセタン系希釈剤の例としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン等が挙げられる。ビニルエーテル系希釈剤の例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
本発明に係る光カチオン重合性組成物には、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、着色剤、有機または無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤などの各種樹脂添加剤を、通常の使用範囲で配合することができる。
着色剤としては、黒色顔料、黄色顔料、赤色顔料、青色顔料、白色顔料などが挙げられる。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラックなどが挙げられる。黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどが挙げられる。赤色顔料としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R,リソールレッド、レーキレッドDブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどが挙げられる。青色顔料としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどが挙げられる。白色顔料としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などが挙げられる。その他の顔料としては、例えば、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどが挙げられる。
(重合方法)
当該光カチオン重合性組成物の重合はフィルム状で行うことも出来るし、塊状に硬化させることも可能である。フィルム状に重合させる場合は、当該光カチオン重合性組成物を液状にし、たとえばポリエステルフィルムなどの基材上に、たとえばバーコーターなどを用いて光カチオン重合性組成物を塗布したのちに、紫外線などの光線を照射して重合させる。
(基材)
フィルム状に重合させる場合に用いられる基材としてはフィルム、紙、アルミ箔、金属等が主に用いられるが特に限定されない。基材としてのフィルムに用いられる素材としてはポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリビニルアルコール(PVA)等が用いられる。具体的には例えばポリエステルフィルム(東レ株式会社製ルミラー、ルミラーは東レ株式会社の登録商標)を用いることが出来る。当該ポリエステルフィルムの膜厚は通常100μm未満の膜厚のものを使用する。ポリエステルフィルムの膜厚を調整するために使用するバーコーターは特に指定しないが、膜厚が1μm以上100μm未満に調整できるバーコーターを使用する。
(光源)
このようにして調製した塗布膜に紫外線などの光線を照射することにより重合させることができる。用いられる光源としては、波長が350〜420nmの紫外線を含む光源を使用することが好ましい。具体的には高圧水銀ランプ、超高圧水銀メタルハライドランプ、ガリウムドープドランプ、マイクロ波励起方式UVランプ(例えばフュージョン(株)製のHバルブ、Dバルブ、Vバルブ)、395nm紫外LEDランプ、385nm紫外LEDランプ、375nm紫外LEDランプ、365nm紫外LEDランプ等が挙げられる。太陽光等の使用も可能である。特に、395nm紫外LEDが好ましい。395nm紫外LEDとしては、たとえば、Phoseonn社製395紫外LEDが挙げられる。
(雰囲気)
本発明の光カチオン重合性組成物は、当該光カチオン重合性組成物の表面を開放した系でも表面を空気と遮断した系でも重合させることができる。例えば、フィルム状で重合させるときに、本発明の光カチオン重合性組成物を基材に塗布し、塗布面を開放したまま、紫外線などの光線を照射して重合させることもできれば、本発明の光カチオン重合性組成物を酸素不透過性基材に塗布し、その表面に酸素不透過性基材貼合した状態で紫外線などの光線を照射して重合させることもできる。
光カチオン重合性組成物表面開放系の例としては、塗膜として使用に供する用途、すなわち塗料、コーティング、インキ等を挙げることができる。具体的には自動車用塗料、木工コーティング、PVC床コーティング、窯業壁コーティング、建材用コーティング、樹脂ハードコート、メタライズベースコート、フィルムコーティング、液晶ディスプレイ(LCD)用コーティング、プラズマディスプレイ(PDP)用コーティング、光ディスク用コーティング、金属コーティング、光ファィバーコーティング、印刷インキ、平版インキ、金属缶インキ、スクリーン印刷インキ、インクジェットインキ、グラビアニス等が挙げられる。また、レジスト、ディスプレイ、封止剤、歯科材料、光造型材料等の分野でもこのような使用態様が用いられる。
光カチオン重合性組成物表面遮断系の例としては、接着剤、粘着剤、粘接着剤、シーリング剤等を挙げることができる。さらに、「電子部品用感光性材料の最新動向III−半導体・電子基板・ディスプレー分野の開発状況―」(住ベリサーチ社、2006年7月)、「UV・EB硬化技術の最新動向」(ラドテック研究所、2006年3月)、「光応用技術・材料事典」(山岡亜夫編、2006年4月)、「光硬化技術」(技術情報協会、2000年3月)、「光硬化性材料−製造技術と応用展開−」(東レリサーチセンター、2007年9月)等に例示されている用途に適宜用いることができる。
(製造法)
本発明の9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物の合成は、次のようにして行われる。すなわち、対応する9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を塩基化合物の存在下もしくは非存在下、炭酸エステル化剤と反応式1に従って反応させることによって合成できる。
反応式1において、Rは炭素数1〜8のアルキル基又はアリル基を示し、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
使用される9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−メチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,7−ジメチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,6−ジエチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2,7−ジエチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、1,5−ジエチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン等が挙げられる。
次に、使用される炭酸エステル化剤としては、ハロゲン化炭酸アルキル化合物が用いられる。ハロゲン化炭酸アルキル化合物としては、クロロ炭酸メチル、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸n−プロピル、クロロ炭酸i−プロピル、クロロ炭酸n−ブチル、クロロ炭酸i−ブチル、クロロ炭酸n−ペンチル、クロロ炭酸n−ヘキシル、クロロ炭酸n−ヘプチル、クロロ炭酸n−オクチル、クロロ炭酸2−エチルヘキシル、クロロ炭酸アリル、クロロ炭酸メタリル、ブロモ炭酸メチル、ブロモ炭酸エチル、ブロモ炭酸n−プロピル、ブロモ炭酸i−プロピル、ブロモ炭酸n−ブチル、ブロモ炭酸i−ブチル、ブロモ炭酸n−ペンチル、ブロモ炭酸n−ヘキシル、ブロモ炭酸n−ヘプチル、ブロモ炭酸n−オクチル、ブロモ炭酸2−エチルヘキシル、ブロモ炭酸アリル、ブロモ炭酸メタリル等が挙げられる。
9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対するハロゲン化炭酸アルキル化合物の添加比率は2.0モル倍以上、5.0モル倍未満、好ましくは2.2モル倍以上3.0モル倍未満が好ましい。2.0未満では9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物が未反応のままで残り、5.0モル倍以上では生成した9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物の反応液に対する溶解度が高くなり、反応生成物から結晶化しがたくなり収率が低下し、ともに好ましくない。
塩基化合物の存在下に反応を実施する場合に用いられる塩基化合物は、通常無機のアルカリ塩が用いられる。無機のアルカリ塩としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが用いられる。有機塩基の使用も可能である。有機塩基としてはピリジン、ピペリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の使用も可能である。
9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物とハロゲン化炭酸アルキル化合物との反応においては、通常、溶媒を使用する。溶媒としては、ハロゲン化炭酸アルキル化合物と反応しなければ特に種類を選ばない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒又は塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒のような水非混和性溶媒、さらには、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒又はテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒のような水混和性溶媒を用いることが出来る。
一方、塩基化合物が無機のアルカリ塩である場合は、無機のアルカリ塩を水溶液として使用するため、ハロゲン化炭酸アルキル化合物を溶解させる溶媒としては水非混和性の溶媒が好ましい。水非混和性の溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、p−キシレン、クロロベンゼン、メチルナフタレン、テトラリン等の芳香族系溶媒、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒を使用することが出来る。一方、水混和性の溶媒を使用する場合は、ハロゲン化炭酸アルキル化合物が加水分解されるため、好ましくない。
塩基化合物が無機のアルカリ塩であり、溶媒として水非混和性を使用する場合は、相間移動触媒の使用が有効である。相間移動触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルエチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロマイド、トリオクチルブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルエチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムクロライド、トリオクチルブチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
相間移動触媒の添加量としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、好ましくは0.01重量%以上、10重量%未満、より好ましくは、0.1重量%以上、1.0重量%未満である。0.01重量%未満であると、反応速度が遅く、また、10重量%以上だと生成物の純度が低下するので好ましくない。
反応温度は、好ましくは0℃以上80℃未満、より好ましくは0℃以上20℃未満である。本反応は発熱反応であり、冷却が必要である。0℃未満では、溶媒の使用量にもよるが、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物の溶媒に対する溶解度が低くなるため、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物がスラリー状態となり、反応速度が低下する。一方、80℃以上だと、副反応が進行し、目的物の純度が低下し、好ましくない。
反応時間は、反応温度にもよるが、通常、15分以上3時間未満である。
反応終了後、溶媒が水混和性の場合はメタノール等のアルコール系溶媒を加えて未反応の炭酸エステル化剤を中和した後、水を加えて生成物を結晶化させる。また、溶媒が水非混和性の場合は、沈殿した塩基の塩酸塩を水を加えて溶解して二層とし、次いで分液した水非混和溶媒にメタノールを加えた後濃縮し、生成物を結晶化させる。析出した結晶を濾別・洗浄することにより、目的物を得ることができる。また、必要に応じて再結晶等により精製してもよい。
得られた化合物の同定は、H−NMRスペクトル、IRスペクトルを用いて行い、9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物であることを確認した。
本発明により得られた化合物の構造確認は、下記の機器による測定によって行った。
(1)融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB−595(JIS K0064に準拠)
(2)赤外線(IR)分光光度計:日本分光社製、型式IR−810
(3)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式GSX FT−NMRSpectorometer
(合成例1)9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンの合成
温度計、攪拌機付きの200ml三口フラスコ中、窒素雰囲気下、9,10−ジヒドロキシアントラセン4.20g(20.0ミリモル)、クロロ炭酸メチル4.35g(46.0ミリモル)を脱気トルエン65mlに加え、氷水で冷やした。次いで、得られたスラリーに、トリエチルアミン4.65g(46.0ミリモル)を脱気トルエン15mlに溶解した溶液を加えた。析出した塩基の塩酸塩をそのまま0℃で10時間ゆっくり攪拌した。その後、水40mlを加え、良く攪拌して析出物を溶解させ、トルエン、水の二層とした。ついで、トルエン層を抽出して、当該トルエン層を抽出して、当該トルエン層にメタノール50ml加え、減圧濃縮した。析出した結晶を吸引ろ過・乾燥し、9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンの白色の微結晶3.70g(11.3ミリモル)を得た。9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は56.8モル%であった。
(1)融点:167−169℃
(2)IR(KBr、cm−1):1760,1440,1246,1172,1003,936, 772.
(3)H−NMR(CDCl,270MHz):δ=4.00(s,6H),7.51−7.60(m,4H),8.03−8.13(m,4H).
(合成例2)9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセンの合成
温度計、攪拌機付きの200ml三口フラスコ中、窒素雰囲気下、9,10−ジヒドロキシアントラセン4.20g(20.0ミリモル)、クロロ炭酸エチル4.99g(46.0ミリモル)を脱気トルエン70mlに加え、氷水で冷やした。次いで、得られたスラリーにトリエチルアミン4.65g(46.0ミリモル)を脱気トルエン15mlに溶解した溶液を加えた。析出した塩基の塩酸塩をそのまま0℃で8時間ゆっくり攪拌した。その後、水40mlを加え、良く攪拌して析出物を溶解させ、トルエン、水の二層とした。ついで、トルエン層を抽出して、当該トルエン層にメタノール50ml加え、減圧濃縮した。析出した結晶を吸引ろ過・乾燥し、9,10−ビス(エトキシカルボニルオキシ)アントラセンの白色微結晶4.20g(11.9ミリモル)を得た。9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は59.3モル%であった。
(1)融点:178−179℃
(2)IR(KBr、cm−1):2992,2940,1762,1630,1472,1446,1366,1240,1172,1092,1016,895,766.
(3)H−NMR(CDCl,270MHz):δ=1.46(t,J=8Hz,6H),4.42(q,J=8Hz,4H),7.50−7.60(m,4H),8.02−8.12(m、4H).
(合成例3)9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセンの合成
温度計、攪拌機付きの200ml三口フラスコ中、窒素雰囲気下、9,10−ジヒドロキシアントラセン4.20g(20.0ミリモル)、クロロ炭酸アリル5.54g(46.0ミリモル)を脱気トルエン60mlに加え、氷水で冷やした。次いで、トリエチルアミン4.65g(46.0ミリモル)を脱気トルエン10mlに溶解した溶液を加えた。析出した塩基の塩酸塩をそのまま0℃で10時間ゆっくり攪拌した。その後、水40mlを加え、良く攪拌して析出物を溶解させ、トルエン、水の二層とした。ついで、トルエン層を抽出して、当該トルエン層にメタノール50ml加え、減圧濃縮した。析出した結晶を吸引ろ過・乾燥し、9,10−ビス(アリルオキシカルボニルオキシ)アントラセンの白色の微結晶2.40g(6.3ミリモル)を得た。9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は31.5モル%であった。
(1)融点:125−126℃
(2)IR(KBr、cm−1):3060,2960,1756,1625,1440,1362,1230,1164,1010,994,948,772,725,610.
(3)H−NMR(CDCl,270MHz):δ=4.84(d,J=7Hz,4H),5.38(dd、J=9Hz,J=2Hz,2H),5.49(dd、J=17Hz,J=2Hz,2H),6.0−6.14(m,2H),7.51−7.61(m,4H),8.0−8.11(m,4H).
(合成例4)9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンの合成
温度計、攪拌機付きの200ml三口フラスコ中、窒素雰囲気下、9,10−ジヒドロキシアントラセン2.1g(10.0ミリモル)を脱気水15g中リスラリーし、水酸化ナトリウム0.88g(22.0ミリモル)を水3gに溶解した溶液を加えた。しばらくして9,10−ジヒドロキシアントラセンが溶解し、9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウムのエンジ色の水溶液となった。ついで、氷水で冷やしつつ、得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム水溶液に、クロロ炭酸n−プロピル2.68g(22.0ミリモル)をトルエン20gに溶解した溶液を添加した。添加後5時間撹拌し、液の色は消えて無色の二層となった。水層をすて、トルエン層を水10mlで2回洗浄した後、メタノール40ml加え、濃縮した。析出した結晶を吸引濾過・乾燥し、9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンの薄黄色の結晶2.48g(6.49ミリモル)を得た。原料9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は64.9モル%であった。
(1)融点:120−121℃
(2)IR(KBr、cm−1):3070,2980,2950,1764,1626,1460,1444,1396,1258,1230,1168,1054,996,940,768,730,608.
(3)H−NMR(CDCl,400MHz):δ=1.03(d,J=8Hz,6H),1.77−1.89(m,4H),4.32(t,J=8Hz,4H),7.51−7.61(m,4H),8.03−8.10(m,4H).
(合成例5)9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンの合成
温度計、攪拌機付きの200ml三口フラスコ中、窒素雰囲気下、9,10−ジヒドロキシアントラセン2.1g(10.0ミリモル)を脱気水15g中リスラリーし、水酸化ナトリウム0.88g(22.0ミリモル)を水3gに溶解した溶液を加えた。しばらくして9,10−ジヒドロキシアントラセンが溶解し、9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウムのエンジ色の水溶液となった。ついで、氷水で冷やしつつ、得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム水溶液に、クロロ炭酸i−プロピル2.68g(22.0ミリモル)のトルエン20g溶液を添加した。添加後5時間撹拌し、液の色は消えて無色の二層となった。水層をすて、トルエン層を水10mlで2回洗浄した後、メタノール40ml加え、濃縮した。析出した結晶を吸引濾過・乾燥し、9,10−ビス(i−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンの薄黄色の結晶2.87g(7.51ミリモル)を得た。原料9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は75.1モル%であった。
(1)融点:200−202℃
(2)IR(KBr、cm−1):3100,3075,3000,1770,1628,1472,1443,1382,1250,1230,1162,1108,1080,990,916,790,780,770,716,608.
(3)H−NMR(CDCl,400MHz):δ=1.45(d,J=8Hz,12H),5.07(q,J=8Hz,2H),7.49−7.59(m,4H),8.00−8.10(m,4H).
(合成例6)9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンの合成
温度計、攪拌機付きの200ml三口フラスコ中、窒素雰囲気下、9,10−ジヒドロキシアントラセン2.1g(10.0ミリモル)を脱気水15g中リスラリーし、水酸化ナトリウム0.88g(22.0ミリモル)を水3gに溶解した溶液を加えた。しばらくして9,10−ジヒドロキシアントラセンが溶解し、9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウムのエンジ色の水溶液となった。ついで、氷水で冷やしつつ、得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム水溶液に、クロロ炭酸i−ブチル3.00g(22.0ミリモル)をトルエン20gに溶解した溶液を添加した。添加後5時間撹拌し、液の色は消えて無色の二層となった。水層をすて、トルエン層を水10mlで2回洗浄した後、メタノール40ml加え、濃縮した。析出した結晶を吸引濾過・乾燥し、9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンの薄黄色の結晶2.60g(6.35ミリモル)を得た。原料9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は63.5モル%であった。
(1)融点:101〜102℃
(2)IR(KBr,cm−1):2980、1760、1640、1470、1230、1170、1050、960、770、600
(3)H−NMR(CDCl3,400MHz):δ=1.01(d、J=7Hz、12H)、2.1(tqq、J=7Hz、2H)、4.14(d、J=7Hz、4H)、7.52−7.57(m、4H)、8.05−8.09(m、4H)
(4)MS−スペクトル:M=410
(合成例7)9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセンの合成
温度計、攪拌機付きの200ml三口フラスコ中、窒素雰囲気下、9,10−ジヒドロキシアントラセン2.1g(10.0ミリモル)を脱気水15g中リスラリーし、水酸化ナトリウム0.88g(22.0ミリモル)を水3gに溶解した溶液を加えた。しばらくして9,10−ジヒドロキシアントラセンが溶解し、9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウムのエンジ色の水溶液となった。ついで、氷水で冷やしつつ、得られた9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム水溶液に、クロロ炭酸2−エチルヘキシル34.23g(22.0ミリモル)をトルエン20gに溶解した溶液を添加した。添加後5時間撹拌し、液の色は消えて無色の二層となった。水層をすて、トルエン層を水10mlで2回洗浄した後、メタノール40ml加え、濃縮した。析出した結晶を吸引濾過・乾燥し、9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ)アントラセンの白色の結晶3.16g(6.05ミリモル)を得た。原料9,10−ジヒドロキシアントラセンに対する収率は60.5モル%であった。
(1)融点:53〜57℃
(2)IR(KBr,cm−1):2970、2940、2870、1770、1230、117
0.
(3)H−NMR(CDCl3,400MHz):δ=0.89−0.95(m、12H)、1.29−1.47(m、16H)、1.72(ddd、J=6Hz、2H)、4.27(d、J=6Hz、4H)、7.54−7.56(m、4H)、8.05−8.08(m、4H)
(4)MS−スペクトル:M=522
「実施例1」
光カチオン重合性化合物として脂環式エポキシ(ダウ・ケミカル社製、商品名:UVR6105)100重量部に対し、アリールスルホニウム塩系光カチオン重合開始剤であるUVI6992を4重量部、光カチオン重合増感剤として、合成例4と同様にして得られた9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセン0.8重量部を混合し、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は1.0秒であった。
「実施例2」
9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.5重量部とした以外は実施例1と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は3.0秒であった。
「実施例3」
9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.4重量部とした以外は実施例1と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は5.0秒であった。
「実施例4」
9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.2重量部とした以外は実施例1と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は13秒であった。
「実施例5」
9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.1重量部とした以外は実施例1と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は23秒であった。
「実施例6」
光カチオン重合性化合物として脂環式エポキシ(ダウ・ケミカル社製、商品名:UVR6105)100重量部に対し、アリールスルホニウム塩系光カチオン重合開始剤であるUVI6992を4重量部、光カチオン重合増感剤として、合成例1と同様にして得られた9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン0.8重量部を混合し、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は2.0秒であった。
「実施例7」
9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.5重量部とした以外は実施例6と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は4秒であった。
「実施例8」
9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.4重量部とした以外は実施例6と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は6.0秒であった。
「実施例9」
9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.2重量部とした以外は実施例6と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は13秒であった。
「実施例10」
9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.1重量部とした以外は実施例6と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は32秒であった。
「実施例11」
光カチオン重合性化合物として脂環式エポキシ(ダイセル社製、商品名:セロキサイド2021P)100重量部に対し、アリールヨードニウム塩系光カチオン重合開始剤であるイルガキュア250を2重量部、光カチオン重合増感剤として、合成例6と同様にして得られた9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン0.8重量部を混合し、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は6.0秒であった。
「実施例12」
9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.6重量部とした以外は実施例11と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は7.0秒であった。
「実施例13」
9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.4重量部とした以外は実施例11と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は8秒であった。
「実施例14」
9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.3重量部とした以外は実施例11と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は19秒であった。
「実施例15」
9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.2重量部とした以外は実施例11と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は45秒であった。
「実施例16」
光カチオン重合性化合物として脂環式エポキシ(ダイセル社製、商品名:セロキサイド2021P)100重量部に対し、アリールヨードニウム塩系光カチオン重合開始剤であるイルガキュア250を2重量部、光カチオン重合増感剤として、合成例1と同様にして得られた9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセン0.8重量部を混合し、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は5.0秒であった。
「実施例17」
9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.6重量部とした以外は実施例16と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は6.0秒であった。
「実施例18」
9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.4重量部とした以外は実施例16と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は9.0秒であった。
「実施例19」
9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.3重量部とした以外は実施例16と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は19秒であった。
「実施例20」
9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンの添加量を0.2重量部とした以外は実施例16と全く同様にして、光カチオン重合性組成物を調製した。該組成物をポリエステルフィルム(東レ製、商品名:ルミラー)の上にバーコーターを用いて膜厚が30ミクロンになるように塗布した。ついで、表面からPhoseonn社製395紫外LEDを用いて光照射した。べたつき(タック)がなくなるまでの光照射時間「タック・フリー・タイム」は60秒であった。
「比較例1」
実施例1の9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンを9,10−ジブトキシアントラセンに代えたこと以外は実施例1と同様にして、光カチオン重合性組成物を調製し、Phoseonn社製395紫外LEDを照射した。「タック・フリー・タイム」は2.0秒であった。
「比較例2」
実施例2の9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンを9,10−ジブトキシアントラセンに代えたこと以外は実施例2と同様にして、光カチオン重合性組成物を調製し、Phoseonn社製395紫外LEDを照射した。「タック・フリー・タイム」は12秒であった。
「比較例3」
実施例3の9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンを9,10−ジブトキシアントラセンに代えたこと以外は実施例3と同様にして、光カチオン重合性組成物を調製し、Phoseonn社製395紫外LEDを照射した。「タック・フリー・タイム」は28秒であった。
「比較例4」
実施例4の9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンを9,10−ジブトキシアントラセンに代えたこと以外は実施例4と同様にして、光カチオン重合性組成物を調製し、Phoseonn社製395紫外LEDを照射した。「タック・フリー・タイム」は90秒であった。
「比較例5」
実施例5の9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンを9,10−ジブトキシアントラセンに代えたこと以外は実施例5と同様にして、光カチオン重合性組成物を調製し、Phoseonn社製395紫外LEDを照射した。「タック・フリー・タイム」は240秒であった。
「比較例6」
実施例11の9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンを9,10−ジブトキシアントラセンに代えたこと以外は実施例11と同様にして、光カチオン重合性組成物を調製し、Phoseonn社製395紫外LEDを照射した。「タック・フリー・タイム」は7.0秒であった。
「比較例7」
実施例12の9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンを9,10−ジブトキシアントラセンに代えたこと以外は実施例12と同様にして、光カチオン重合性組成物を調製し、Phoseonn社製395紫外LEDを照射した。「タック・フリー・タイム」は12秒であった。
「比較例8」
実施例13の9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンを9,10−ジブトキシアントラセンに代えたこと以外は実施例13と同様にして、光カチオン重合性組成物を調製し、Phoseonn社製395紫外LEDを照射した。「タック・フリー・タイム」は110秒であった。
「比較例9」
実施例14の9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンを9,10−ジブトキシアントラセンに代えたこと以外は実施例14と同様にして、光カチオン重合性組成物を調製し、Phoseonn社製395紫外LEDを照射した。「タック・フリー・タイム」は300秒であった。
「比較例10」
実施例15の9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンを9,10−ジブトキシアントラセンに代えたこと以外は実施例15と同様にして、光カチオン重合性組成物を調製し、Phoseonn社製395紫外LEDを照射した。「タック・フリー・タイム」は1000秒であった。
実施例1〜実施例10、比較例1〜比較例5の結果を図1にまとめた。又、実施例11〜実施例20、比較例6〜比較例10の結果を図2にまとめた。
光カチオン重合開始剤としてアリールスルホニウム塩を用い、本発明の光カチオン重合増感剤である9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンを用いた実施例1〜5、9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンを用いた実施例6〜10と公知の9,10−ジブトキシアントラセンを用いた比較例1〜5の比較とこれらの結果を図示した図1より明らかなように、光カチオン重合性化合物100重量部に対して、従来より光カチオン重合増感剤として用いられている公知の9,10−ジブトキシアントラセンの場合は、その添加量が0.5重量部以下だとタック・フリー・タイムが急激に長くなり、増感効果が十分でないのに対して、本発明の光カチオン重合増感剤である9,10−ビス(メキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンの場合は0.5重量部以下という低濃度の添加量においても高い増感効果を示していることが分かる。
又、光カチオン重合開始剤としてアリールヨードニウム塩を用い、本発明の光カチオン重合増感剤である9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンを用いた実施例11〜15、9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンを用いた実施例16〜20と公知の9,10−ジブトキシアントラセンを用いた比較例6〜10の比較とこれらの結果を図示した図2より明らかなように、光カチオン重合性化合物100重量部に対して、従来より光カチオン重合増感剤として用いられている公知の9,10−ジブトキシアントラセンの場合は、その添加量が0.5重量部以下だとタック・フリー・タイムが急激に長くなり、増感効果が十分でないのに対して、本発明の光カチオン重合増感剤である9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンの場合は0.5重量部以下という低濃度の添加量においても高い増感効果を示していることが分かる。
(光カチオン重合における耐マイグレーション性の評価実施例その1)
(実施例21)
光カチオン重合性化合物として脂環式エポキシ(ダイセル社製セロキサイド2021P)100部に対し、光カチオン重合増感剤として合成例6と同様の方法で合成した9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセン0.2部を混合し調製した光カチオン重合性組成物をポリエステルフィルム上で膜厚が12ミクロンになるようにバーコーターを用いて塗布した。次いで、得られた塗布物上に低密度ポリエチレンフィルム(膜厚30ミクロン)を被せて、暗所で一日間保管したもの、二日間保管したもの、四日間保管したものを、それぞれ保管後、ポリエチレンフィルムを剥がし、ポリエチレンフィルムをアセトンで洗い乾燥した後、フィルムのUVスペクトルを測定し、260nmの吸光度を測定した。得られた9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンの吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した。吸光度は、一日保管後0.015、二日保管後0.025、四日保管後0.027であった。
(実施例22)
光カチオン重合増感剤として9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンの代わりに合成例1と同様の方法で合成した9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンを使用すること以外は実施例21と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ビス(メトキシカルボニルオキシ)アントラセンの吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.010、二日保管後0.020、四日保管後0.020であった。
(実施例23)
光カチオン重合増感剤として9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンの代わりに合成例4と同様の方法で合成した9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンを使用すること以外は実施例21と同様にして試験した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ビス(n−プロポキシカルボニルオキシ)アントラセンの吸光度を9,10−ジブトキシアントラセン換算した値は、一日保管後0.012、二日保管後0.018、四日保管後0.020であった。
(比較例11)
光カチオン重合増感剤として9,10−ビス(i−ブトキシカルボニルオキシ)アントラセンの代わりに9,10−ジブトキシアントラセンを使用すること以外は評価例21と同様に調製した。アセトン洗いしたポリエチレンフィルムの260nmの吸光度を測定した結果、9,10−ジブトキシアントラセンの吸光度は、一日保管後0.60、二日保管後0.75、四日保管後0.85であった。

実施例21、22、23及び比較例11の結果を表1に示す。

以上の実施例と比較例の結果より、次のことが明らかである。すなわち、実施例21〜23と比較例11とその結果をまとめた表1からわかるように、光カチオン重合性組成物に含まれる本発明の光カチオン重合増感剤は、ポリエチレンフィルムへの移行度合いが極めて低く、耐マイグレーション性が高いことが分かる。一方、公知の光カチオン重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセンは、同様のテストで、ポリエチレンフィルムへの高い移行性が観測された。
以上の結果より、本発明の9,10−ビス(アルコキシカルボニルオキシ)アントラセン化合物は、光カチオン重合において、公知の光カチオン重合増感剤である9,10−ジブトキシアントラセン化合物と比較して、低濃度で高い光カチオン重合増感能を有するだけでなく、耐マイグレーション性が高い優れた化合物であり、光カチオン重合増感剤として極めて有用な化合物であることが判る。

Claims (7)

  1. 一般式(1)で示される9,10−ビス(置換カルボニルオキシ)アントラセン化合物を含有する光カチオン重合増感剤。

    (一般式(1)において、Rは炭素数1〜8のアルキル基又はアリル基を示し、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
  2. 請求項1記載の光カチオン重合増感剤、光カチオン重合開始剤及び光カチオン重合性化合物を含む光カチオン重合性組成物。
  3. 光カチオン重合開始剤がアリールヨードニウム塩又はアリールスルホニウム塩である請求項2に記載の光カチオン重合性組成物。
  4. 光カチオン重合増感剤の添加量が、光カチオン重合性化合物100重量部に対して、0.2重量部以上、0.5重量部以下であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の光カチオン重合性組成物。
  5. 請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の光カチオン重合性組成物に波長範囲355nmから420nmの光を含むエネルギー線を照射することを特徴とする光カチオン重合性組成物の硬化方法。
  6. 波長が355nmから420nmの光を含むエネルギー線の照射源が、中心波長が365nm、375nm、385nm又は395nmの紫外LEDであることを特徴とする請求項5に記載の硬化方法。
  7. 請求項5又は6に記載の硬化方法によって硬化することにより得られる硬化物。
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