JP6318717B2 - ポリエステルフィルム - Google Patents

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本発明は、耐熱性、耐油性、耐湿熱性が良好であり、かつ加工性に優れたポリエステルフィルムに関する。
ポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(以下PETと略すことがある)や、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下PENを略すことがある)などは機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。そのポリエステルをフィルム化したポリエステルフィルム、中でも二軸配向ポリエステルフィルムは、その優れた機械的特性、電気的特性などから、太陽電池バックシート、給湯器モーター用電気絶縁材料や、ハイブリッド車などに使用されるカーエアコン用モーターや駆動モーター用などの電気絶縁材料、磁気記録材料や、コンデンサ用材料、包装材料、建築材料、写真用途、グラフィック用途、感熱転写用途などの各種工業材料として使用されている。
これらの用途のうち、電気絶縁材料(例えばエアコン用のコンプレッサモーター)用途に用いる場合、冷媒の圧縮・膨張に伴って高温となる環境下で使用されるため、ポリエステルフィルムには耐熱性が求められる。そのため、該用途には、耐熱性に優れるPENフィルムが用いられることが知られていた(特許文献1、2)。
特開平9−300452号公報 特開2007−99971号公報 特表2011−525204号公報
しかしながら、コンプレッサモーター内部には、冷媒とともに潤滑油も封入されるため、電気絶縁材料の中でもコンプレッサモーター用途に用いるポリエステルフィルムには、耐熱性だけでなく、耐油性も求められる。本発明者らが鋭意検討したところ、PENフィルムは、耐熱性には優れるものの、耐油性に劣るという課題を有していることがわかった。さらに、PENは、その分子構造から加工性が悪いため、加工時にフィルムが割れるという課題を有していることがわかった。
また、電気絶縁材料用途に用いる場合には、長期使用に耐えられるよう、高温高湿条件の下でも加水分解による劣化を起こさない、いわゆる耐湿熱性も要求されているところ、特許文献1、2に開示される従来技術で得られるフィルムは、耐湿熱性は十分なものではなかった。以上のように、従来の技術では、耐熱性、耐油性、耐湿熱性のすべての特性を満足するフィルムを得ることはできていなかった。
加えて、近年、環境側面から、エアコン用のコンプレッサモーターの冷媒として、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)に代わりハイドロフルオロカーボン(HFC)の普及が進んでいる(特許文献3)。HFCに代表される冷媒R32は、その熱的特性から、コンプレッサの使用環境温度が従来よりも高温となることが指摘されており、エアコン用のコンプレッサモーター用途に使用されるフィルムに対しては、より高いレベルの耐熱性、耐油性、耐湿熱性が求められている。
本発明の課題は、かかる従来技術の背景に鑑み、耐熱性、耐油性、耐湿熱性に優れ、かつ加工性に優れたフィルムを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。すなわち、
[I](1)〜(2)を満たすポリエステルフィルム。
(1)オイル中へのオリゴマー溶出抑制性試験において、オリゴマーの溶出量が0g/m以上1.5g/m以下であること。
(2)ポリエステルフィルムの表面をフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、839cm−1に観察されるスペクトル強度r1と、824cm−1に観察されるスペクトル強度r2から求められるR1が以下の関係を満たすこと。
(i)1.0≦R1≦2.0
ここで、R1=r1/r2
[II]空気中、180℃、相対湿度5.0%以下で1時間熱処理したとき、処理した前後のフィルムのヘイズ変化(Δヘイズ)が5.0%以下である、[I]に記載のポリエステルフィルム。
[III]前記ポリエステルフィルムの表面をフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1018cm−1に観察されるスペクトル強度r3と、1602cm−1に観察されるスペクトル強度rから求められるR3が以下の関係を満たす[I]または[II]に記載のポリエステルフィルム。
(ii) 1.2≦R3≦2.0
ここで、R3=r3/r
[IV]前記ポリエステルフィルムが、少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムであって、フィルムの両面の表層を構成するポリエステル樹脂の融点TmAが、260℃以上280℃以下、結晶融解熱量(ΔHmA)が30J/g以上45J/g以下であることを特徴とする[I]〜[III]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[V]ポリエステルフィルムの表層以外の層を構成するポリエステル樹脂の融点TmBが、250℃以上260℃以下、結晶融解熱量(ΔHmB)が30J/g以上45J/g以下であることを特徴とする[IV]に記載のポリエステルフィルム。
[VI]ポリエステルフィルムの両側の表層を構成するポリエステル樹脂の融点と、表層以外の層を構成するポリエステル樹脂の融点の差(TmA−TmB)が3℃以上8℃以下であることを特徴とする[IV]または[V]に記載のポリエステルフィルム。
[VII]ポリエステルフィルムの両側の表層の厚みの和と、表層以外の層の厚みの和の比(両側の表層の厚みの和/表層以外の層の厚みの和)が、1/9〜1/4である[IV]〜[VI]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[VIII]ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量が15eq./t以下である[I]から[VII]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[IX]フィルムの総厚みが120μm以上400μm以下である、[I]から[VIII]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
[X]モーターの電気絶縁部材として用いられる[I]から[IX]のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
本発明によれば、耐熱性、耐油性、耐湿熱性、加工性に優れ、長期間の使用を満足するポリエステルフィルムを提供することができる。本発明により得られるフィルムは、機械オイル中においても物性の低下が抑制されるため、モーターの電気絶縁部材として用いた場合でも長期間の使用に耐えるポリエステルフィルムを提供することができる。
以下に具体例を挙げつつ、本発明について詳細に説明する。
本発明はポリエステルフィルムに係るものである。
ここでいうポリエステルは、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を有してなるものである。なお、本明細書内において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。
かかるポリエステルを構成するジカルボン酸構成成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
また、かかるポリエステルを構成するジオール構成成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、芳香族ジオール類等のジオール、上述のジオールが複数個連なったものなどが例としてあげられるがこれらに限定されない。
本発明のポリエステルフィルムは、後述するオイル中へのオリゴマー溶出性試験において、オリゴマーの溶出量が0g/m以上1.5g/m以下であることが必要である。
オイル中へのオリゴマー溶出抑制性試験は、以下のように行う。
コンプレッサ用の機械オイルとしては、冷媒であるハイドロフルオロカーボン(HFC)との相溶性から、ポリオールエステルオイル(POE)、ポリアルキレングリコールオイル(PAG)、ポリビニルエーテルオイル(PVE)が用いられ、中でもR32冷媒との相溶性からPOEが好適に用いられている。本発明において、オイル中へのオリゴマー溶出性試験には、POE(具体的には、Mobil(株)社製、Mobil EAL Aarctic VG68)を用いる。
試料として1辺が10cmのフィルムを用いる。
上述のMobil(株)社製、Mobil EAL Aarctic VG68を100g容器に量り取り、試料をオイル中に完全に浸漬させる。該試料を浸漬させたオイルを、オートクレーブ装置(耐圧硝子工業(株)製TVS−N2型)に入れる。オートクレーブ装置の内圧を、ポンプにより減圧状態(100Pa以下)とする。オートクレーブ装置全体を温め、180℃として500hr保持する。その後、減圧状態から解放し、試料を取り出した後、後述する方法により、オイルに含有されるオリゴマー量を測定する。
オリゴマーとは、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分とジオール成分からなる環状3量体、環状4量体、環状5量体や、線状単量体、線状2量体などを含む総称をあらわす場合があるが、本発明でいうオリゴマーとは、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分とジオール成分からなる環状3量体を指す。
一般的に、コンプレッサ内部には冷凍機オイルとフィルムが封入される。オイル中へのオリゴマー析出量が0.75g/mを超えると、コンプレッサにつながる配管などにつまり、不具合を生じるため好ましくない。より好ましくは析出量が0.6g/m以下であり、さらに好ましくは0.5g/m以下である。
本発明のポリエステルフィルムは、下記(2)を満たすことが必要である。
(2)ポリエステルフィルムの表面をフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、839cm−1のスペクトル強度r1と、824cm−1に観察されるスペクトル強度r2から求められるR1が以下の関係を満たすこと。
(i)1.0≦R1≦2.0
ここで、R1=r1/r2
フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、824cm−1、839cm−1に観察されるスペクトルは、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートの分子構造に特徴付けられるものである。すなわち、本発明のポリエステルフィルムは、フィルム表面を構成する樹脂中に、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートを含有する。表面を構成する樹脂中のポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートの含有量は、耐油性、耐熱性、耐湿熱性の観点から、少なくとも一方の表面を構成する樹脂の総量に対して70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85質量%以上である。
一般的に、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートにおいては、ポリエチレン2,6−ナフタレートの構造には、分子鎖が規則正しく配列し、密度の高い結晶部分と、分子鎖の配列がランダムで、密度の低い非晶部分の2種類をとることが知られている。ポリエステルフィルムの表面を、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、ポリエチレン2,6−ナフタレートの結晶部分の構造は、839cm−1に観察されるスペクトルに特徴付けられ、非晶部分の構造は、824cm−1に観察されるスペクトルに特徴付けられる。そのため、r1/r2であるR1が大きいほど、規則正しい構造を持った結晶部分が多いことを表す。
オリゴマーは低分子量体であるため、ある程度の大きさを持つ。そのため、オリゴマーは、規則正しい配列を持った結晶部分には、立体障害により存在することができないため、ポリエステルフィルム中で必然的に非晶部分に存在することになる。非晶部分が多い方が溶出抑制性には有利となる。
また、ここでいうオリゴマーは、上述したとおり、ポリエステルを構成する構成単位の低分子量体であり、ここで、POEはエステル結合を持つため、同じエステル結合を持つオリゴマーと親和性をもつ。このため、ポリエステルフィルムをPOEに浸漬した場合、オリゴマーはPOEに溶出する傾向がある。しかしながら、以下のようにフィルム内部へのPOEの侵入を防ぐことにより、POEへオリゴマーが溶出することを抑制することができる。
一般的にポリエステル樹脂の結晶部分の密度は、非晶部に比べて高い。そのため、フィルムをPOEに浸漬した場合、POEはフィルム内部に浸透していく。その際、POEは、密度の高い結晶部分に比べて、密度の低い非晶部分により浸透しやすい。このため、結晶部分が多い方が、POEのフィルム内部への進入を抑制する結果、オリゴマーのPOEへの溶出を抑制することができる。
これら2つの相反する効果から、耐油性を良好とするためには、R1は1.0以上2.0以下である必要があることがわかった。
また、ポリエステルフィルムをエアコンコンプレッサに用いる電気絶縁部材として使用する場合、使用形状に合わせたフィルム断裁、折り曲げの加工が必要となる。該加工時にはフィルムに応力がかかり、特に断裁時にはカッターの刃先によって狭い範囲に大きな力がかかることとなる。このとき、狭い範囲に集中した力をフィルムが吸収しきれず、余剰な力によってフィルムが割れることがある。ここで、結晶部分は、分子鎖が規則正しく配列する際、通常は複数の分子鎖によって構成されるため、分子鎖をつなぐ結節点としての役割を持つ。フィルム中に結晶部分が多い場合、フィルムにかかった力が分子鎖を伝わってフィルム全体に分散しやすくなる。一方で、結晶部分の割合が少ない場合、フィルムにかかる力が分散しづらく、断裁時に割れが発生しやすくなるため好ましくない。そのため、加工性を良好にするためには、R1は1.0以上である必要がある。
ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートが高温下、または高温下かつ湿熱雰囲気下に置かれた場合、酸化劣化による分子鎖切断、または加水分解による分子鎖切断が起こる。ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートがフィルム形状である場合には、フィルムの脆化が進行する。フィルムの脆化は、切断された分子鎖が、フィルム中に存在する結晶部分を核として結晶化が進行して、非晶部分に比べて靱性の低い結晶部分が増加し、フィルム全体の靱性が低下することに起因する。脆化が進行すると、機械的伸度が低下する。機械的伸度が低下すると、少しの衝撃でもフィルムが破断するため、電気絶縁部材としての使用に耐えない。フィルムの耐熱性、耐湿熱性を高めるため、R1は2.0以下であることが好ましい。ポリエステルフィルムの表面のR1を上記の範囲とするには、
(イ)フィルムの表層を構成するポリエステル樹脂を特定のポリエステル樹脂として、後述の条件にてフィルムを二軸延伸する方法
(ロ)少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムとして、表層と内層を構成するポリエステル樹脂を特定のポリエステル樹脂として、後述の条件にてフィルムを二軸延伸する方法
(ハ)上記の方法を組合せることにより得ることができる。
まず、(イ)に係る方法について説明する。
本発明のポリエステルフィルムの表面は、ポリエステルフィルムの表面をフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1018cm−1に観察されるスペクトル強度r3と、1602cm−1に観察されるスペクトル強度rから求められるR3が以下の関係を満たすことが好ましい。
(ii) 1.2≦R3≦2.0
ここで、R3=r3/r
ここで(ii)式は、以下のことを表すものである。すなわち、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1018cm−1に観察されるスペクトルは、ポリエチレンテレフタレートの分子構造(ベンゼン環のC−H変角振動)に特徴付けられるものである。即ち、本発明の積層ポリエステルフィルムのどちらか一方の表層を構成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを含有することが好ましい。フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1602cm−1に観察されるスペクトルは、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートのナフタレン環のC−C伸縮振動による吸収に特徴付けられるものである。このスペクトル強度は、分子鎖の配向に依存しないため、強度比較において規格化の吸収ピークとして利用することができる。1018cm−1に観察されるスペクトルも分子鎖の配向に依存しないため、R3は、フィルムの表層を構成する樹脂に含有されるポリエチレンテレフタレートの量を反映する。
ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートに比べ、ポリエチレンテレフタレートは、ガラス転移温度が低いため、熱に対する分子鎖の運動性が高い。また、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートとポリエチレンテレフタレートの分子構造は近いため、分子鎖同士が物理的な相互作用を起こしやすい。そのため、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートにポリエチレンテレフタレートを含有せしめた場合、ポリエチレンテレフタレートの分子鎖の高い運動性によってポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートの分子鎖の運動性も高まる結果、後述する方法で二軸延伸した場合、本発明のフィルムの結晶部分と非晶部分の割合を制御しやすくなる。さらに、分子鎖の運動性が高い樹脂が存在した場合、フィルムの成形性も向上するため好ましい。分子鎖の運動性が高い樹脂は、応力によって変形しやすいため、フィルム加工時の応力を吸収することができる。
R3の値は、ポリエステルフィルムのどちらか一方の表層を構成する樹脂中における、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートとポリエチレンテレフタレートの含有量の比に依る。上記(ii)の範囲とするためには、ポリエステルフィルムのどちらか一方の表層を構成する樹脂の原料として、ポリエチレンテレフタレートと、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用い、ポリエチレンテレフタレートと、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートを溶融製膜前にブレンドする方法が挙げられる。上記(ii)の範囲とするためには、原料中のポリエチレンテレフタレートの含有量を、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートに対して、5質量%以上25質量%以下とすることが重要である。一方、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートとポリエチレンテレフタレートを共重合することにより上記(ii)を充足せしめた場合、(ii)を満たすポリエステル樹脂の結晶性、および融点が低下する。結晶性が低下した場合、延伸による結晶化が起こらず、(i)を満たすことが出来ない場合があり、(i)を満たさない場合は、成形性、耐油性に劣ったフィルムとなる。また、フィルムの表層を構成するポリエステル樹脂の融点が低下すると、耐熱性、耐油性に劣ったフィルムとなる場合がある。
上記(ii)を満たすポリエステル樹脂からフィルムを構成させることにより、分子鎖の運動性を高め、ポリエステル樹脂の分子鎖を、二軸延伸により規則正しく配列させ、結晶の起点を形成しやすくできる結果、結晶を成長させやすいため、耐熱性、耐油性だけでなく、成形性の観点からも好ましい。
一方、上記(ii)を満たさないポリエステル樹脂、例えば、PENのみからなる樹脂の単層フィルムを二軸延伸せしめても、分子鎖の運動性が低いため、分子鎖を二軸延伸により規則正しく配列させ、結晶の起点を形成することが困難である。また、分子鎖の運動性が低いため、延伸することが難しく、延伸時に製膜破れが多発し、製膜性に劣る。
次に、(ロ)に係る方法について説明する。表層を構成する樹脂として、上記した(ii)を満たさないポリエステル樹脂、例えば、PENのみからなる樹脂を用いたとしても、表層を有さない層を構成する樹脂として、分子鎖の運動性が高い樹脂を用いて、少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムとすることにより、フィルムの表層をR1を満たす表層とすることができる。表層を構成する樹脂がポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートである場合、表層以外の層を構成するポリエステル樹脂は、分子鎖の構造が近いこと、分子鎖の運動性が高いことから、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
表層以外の層を構成する樹脂の分子鎖が、表層を構成する樹脂の分子鎖の構造に近い場合、表層を構成する樹脂は、延伸の際に、表層以外の層を構成する樹脂の分子鎖が規則正しく配列する動きに追随するため、表層を構成する樹脂の分子鎖も配列しやすくなる。また、表層以外の層を構成する樹脂の分子鎖の運動性が高く、延伸によって規則正しく配列せしめやすい場合、表層を構成する樹脂の分子鎖をより規則正しく配列せしめやすくなる。その結果、表層を構成する樹脂として、上記した(ii)を満たさないポリエステル樹脂、例えば、PENのみからなる樹脂を用いたとしても、(i)式を満たすほど、PENの分子鎖を配向せしめることが可能となる。その結果、耐熱性、耐油性、耐加水分解性に優れたフィルムが得られる。また、フィルムの構成を上記の3層構成とした場合、フィルム中に分子鎖の運動性が高い樹脂が占める割合が多くなるため、フィルムの加工性も向上する。
次に、(ハ)に係る方法について説明する。積層ポリエステルフィルムとした場合において、(ii)を満たす樹脂からなる層を表層となるように積層し、それ以外の層を分子鎖の運動性が高い樹脂からなる層とする場合、フィルムを構成する層をなす樹脂それぞれの分子鎖の運動性が高いため、二軸延伸せしめやすく、製膜性、オリゴマー溶出抑制性(耐油性)の観点から好ましい。下記(ii)を満たす樹脂からなる層を最表層となるように積層し、それ以外の層を分子鎖の運動性が高い樹脂からなる層とする場合、フィルムを構成する層をなす樹脂それぞれの分子鎖の運動性が高いため、二軸延伸せしめやすく、製膜性、オリゴマー溶出抑制性(耐油性)の観点から好ましい。
また、本発明のポリエステルフィルムが、少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムである場合、フィルムの両面の表層を構成するポリエステル樹脂の融点TmAが、260℃以上280℃以下、結晶融解熱量(ΔHmA)が30J/g以上45j/g以下であることが好ましい。
なお、本発明において、融点(TmA)および結晶融解熱量(ΔHmA)は、後述する測定方法により示差走査型熱量測定(DSC)の1stRUNから求められるものである。
フィルムの両面の表層を構成する樹脂の融点が260℃未満である場合、フィルムが高温下、機械オイルに晒された場合、最も高温の影響を受けるフィルム表面の耐熱性が充分でなく、フィルム表面が熱により劣化しやすくなる結果、機械オイルがフィルム内部にまで浸透し、オリゴマー溶出抑制性(耐油性)に劣る場合がある。融点が280℃を超える場合には、上手く溶融押出することができない場合がある。フィルムの両面の表層を構成する樹脂の結晶融解熱量(ΔHmA)が30J/gに満たない場合、フィルム表面を構成する樹脂の結晶化が十分でない場合がある。一般的に、樹脂の結晶部分の密度は、非晶部に比べて高い。フィルムを機械オイルに浸漬した場合、機械オイルはフィルム内部に浸透していくが、密度の低い非晶部分により浸透しやすいと考えられる。ΔHmAが30J/gに満たない場合、フィルム表面を構成する樹脂の結晶化が十分に起こっていないため、フィルム内部にまで機械オイルが浸透し、オリゴマー溶出抑制性(耐油性)が悪くなる場合がある。ΔHmAが45J/gを超えると、結晶化が過度に進行するため、オリゴマーがフィルム内部に存在することができず、オリゴマー溶出抑制性(耐油性)が悪化する場合がある。ΔHmAは、30J/g以上42J/g以下であることがより好ましく、33J/g以上39J/g以下であることがさらに好ましい。
TmA、ΔHmAをこの範囲とすることによって、オリゴマー溶出抑制性(耐油性)に優れたフィルムとすることができる。フィルムの両面の表層を構成する樹脂の融点を上記の範囲とする方法は、例えば、フィルムの両面の表層を構成する樹脂の原料として、ポリエチレンテレフタレートと、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用い、原料中のポリエチレンテレフタレートの含有量を、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートに対して、5質量%以上25質量%以下とすることなどが挙げられる。
本発明のフィルムが積層ポリエステルフィルムである場合、ポリエステルフィルムの表層以外の層を構成するポリエステル樹脂の融点TmBが、250℃以上260℃以下、結晶融解熱量(ΔHmB)が30J/g以上45J/g以下であることが好ましい。ΔHmBは、33J/g以上45J/g以下であることがより好ましく、35J/g以上42J/g以下であることがさらに好ましい。TmBが250℃以下である場合、フィルムが高温下、機械オイルに晒された場合、劣化が進行してポリエステルの分解が起こるため好ましくない。TmBが260℃を超える場合、分子鎖の運動性が悪く、二軸延伸により配向を付与することができない。ポリエステルフィルムの表層以外の層を構成するポリエステル樹脂の融点TmBを上記の範囲とする方法は、フィルムの両面の表層を構成する樹脂の原料として、ポリエチレンテレフタレートと、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用い、原料中のポリエチレンテレフタレートの含有量を、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートに対して、5質量%以上25質量%以下とする場合は、成形性、オリゴマー溶出抑制性(耐油性)の観点からポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステル樹脂とすることなどが挙げられる。ここでいうポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルとは、全ジカルボン酸構成成分中におけるテレフタル酸構成成分の割合が90mol%以上100mol%以下、好ましくは95mol%以上100mol%以下であり、かつ全ジオール構成成分中のエチレングリコール構成成分の割合が90mol%以上100mol%以下、好ましくは95mol%以上100mol%以下のポリエステルである。
本発明のポリエステルフィルムが積層ポリエステルフィルムである場合、ポリエステルフィルムの両側の表層を構成するポリエステル樹脂の融点と、表層以外の層を構成するポリエステル樹脂の融点の差(TmA−TmB)が3℃以上8℃以下であることが好ましい。TmA−TmBが8℃を超えると、溶融押出法を用いてフィルムを積層する場合、溶融温度が異なるため、積層性が悪くなる場合がある。一方、3℃未満である場合、積層による延伸性向上の効果が見られず、製膜性が悪化する場合がある。
本発明のポリエステルフィルムが積層ポリエステルフィルムである場合、ポリエステルフィルムの両側の表層の厚みの和と、表層以外の層の厚みの和の比(両側の表層の厚みの和/表層以外の層の厚みの和)が、1/9〜1/4であることが好ましい。1/4を超える場合、積層による延伸性向上の効果が見られず、製膜性が悪化する。1/9未満である場合、最表層でのPOE進入抑制効果が十分でなく、オリゴマー溶出抑制性(耐油性)が悪化する場合がある。より好ましくは、1/8〜1/5である。
また、本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルム全体の厚みが120μm以上500μm以下であることが好ましい。湿熱雰囲気下でのポリエステルの分解は、フィルム形状である場合、フィルム表面から進行する。そのため、フィルム全体の厚みが120μm以上とすることにより、フィルムを構成するポリエステル全体の量に対して、湿熱雰囲気下で分解されるポリエステルの量が少なく、フィルム全体の劣化が抑えられる。フィルムの厚みが500μmを超えると、フィルムを二軸配向せしめることが困難となる場合がある。より好ましくは150μm以上450μm以下であり、特に好ましくは200μm以上400μm以下である。
本発明のフィルムは、空気中、180℃、相対湿度5%以下に1時間熱処理したとき、処理した前後でのフィルムのヘイズ変化(Δヘイズ)が5%以下であることが好ましい。フィルムを高温下に置いた場合、フィルムの分子鎖の運動が激しくなることにより、フィルム内部のオリゴマーがフィルム表面へと押し出される。フィルム表面にオリゴマーが析出された結果、フィルムが白化し、Δヘイズが上昇する。特に、R1が1.0未満であると非晶部分が多いため、分子鎖の運動性が高く、Δヘイズが悪化する。R1が2.0を超える場合、結晶部分が多いためフィルム内部にオリゴマーが存在できないため、オリゴマーが析出しやすく、Δヘイズが悪化する。Δヘイズが上記の範囲を超えると、析出したオリゴマーによってフィルム加工時に割れが発生しやすくなる場合がある。Δヘイズは、より好ましくは4%以下であり、特に好ましくは3%以下である。
また、本発明のフィルムが積層ポリエステルフィルムである場合は、上記(ii)の条件を満たすことが好ましい。積層ポリエステルフィルムである場合、フィルムの最表層を構成する樹脂の分子鎖の運動性と、それ以外の層を構成する樹脂の分子鎖の運動性に差がある場合、特に最表層を構成する樹脂の分子鎖の運動性がそれ以外の層を構成する樹脂の分子鎖の運動性より低い場合、最表層以外の層を構成する樹脂から析出するオリゴマーが、最表層を構成する樹脂との界面に達したとき、フィルム最表層を構成する樹脂の分子鎖の運動性が低いため、最表層に進入することができず、界面に堆積する。界面に存在するため光の屈折が複数回起きるため、フィルムの白化がより進行する。
本発明のポリエステルフィルムは、従来公知の製造方法で得ることが出来るが、延伸、熱処理工程を以下の条件で製造することにより、ポリエステルフィルムの表面を、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)で測定したときのスペクトル強度を上記の範囲としたポリエステルフィルムを安定して得ることが出来るため好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、必要に応じて乾燥した原料を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。その他の方法として、原料を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して膜状とし、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができる。
フィルムを溶融キャスト法により製造する場合、ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂原料を溶融せしめて口金に導き、口金からキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法が好適に用いられる。本発明のフィルムが積層ポリエステルフィルムである場合、積層ポリエステルフィルムを構成する層毎に押出機を用い、各層の原料を溶融せしめ、これらを押出装置と口金の間に設けられた合流装置にて溶融状態で積層したのち口金に導き、口金からキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法が好適に用いられる。該シートは、表面温度10℃以上40℃以下に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸シートを作製する。この未延伸シートを二軸延伸する事により本発明のポリエステルフィルムを得ることができる。
押出機での溶融押出する際は、窒素雰囲気下で溶融させ、押出機へのチップ供給から、口金で押出されるまでの時間は短い程良く、目安としては30分以下、より好ましくは15分以下、更に好ましくは5分未満とすることが、末端カルボキシル基量増加抑制の点から、また複数種のポリエステル原料を用いる場合は、押出機内でのエステル交換反応によってポリエステルが共重合化するのを抑制する観点から好ましい。本発明のポリエステルフィルムを構成する樹脂の末端カルボキシル基量は、耐湿熱性を向上させる観点から、15eq./t(当量/t)以下であることが好ましい。押出機で溶融押出する際の押出機の温度は、末端カルボキシル基量の増加を抑制の観点から、また複数種のポリエステル原料を用いる場合は、押出機内でのエステル交換反応によってポリエステルが共重合化するのを抑制する観点から、好ましくは300℃未満、より好ましくは290℃未満である。
上記得られた未延伸シートは、(3)の条件にて2軸延伸する。
(3)下記(iii)式または(iv)式を満たす温度T1nにて、フィルムの長手方向(MD)とフィルムの幅方向(TD)に面積倍率6.0倍以上9.6倍以下に二軸延伸する。
(iii)フィルムが単層ポリエステルフィルムである場合 TgA≦T1n≦TgA+40℃
TgA:ポリエステルフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度(℃)
(iv)フィルムが積層ポリエステルフィルムである場合 TgB≦T1n≦TgB+40℃
TgB:ポリエステルフィルムの表層以外の層を構成するポリエステル樹脂のガラス転移温度(℃)
次に、得られた二軸延伸フィルムの結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、TmA−90℃以上TmA以下の温度で1秒間以上30秒間以下の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却することによって、本発明のポリエステルフィルムが得られる。
二軸延伸する方法としては、フィルムの長手方向(MD)とフィルムの幅方向(フィルムの長手方向に垂直な方向、TD)の延伸とを分離して行う逐次二軸延伸方法の他に、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法が挙げられる。
延伸温度(T1n)がTgAまたはTgB以下である場合、延伸することができない。また、T1nが上記の範囲である場合、ポリエステルフィルムを構成する樹脂の分子鎖を延伸により規則正しく配列させることができる。この状態で、TmA−90℃以上TmA以下で熱処理することによって、延伸によって配列した分子鎖を起点とした結晶を成長させることでフィルム表面の結晶部分と非晶部分の割合を決定することができる。
本発明のフィルムが積層ポリエステルフィルムである場合、(iv)を満たす条件で延伸を実施する場合、該T1nは、積層ポリエステルフィルムの両側の表層を構成するポリエステル樹脂のガラス転移温度と同じ温度、またはそれよりも低い温度となる場合がある。単層からなるポリエステルフィルムの場合、通常、フィルムを構成するポリエステルのガラス転移温度以下で延伸し、配向を付与することはできない。しかしながら、本発明においては、延伸温度を、両側の表層を構成するポリエステル樹脂のガラス転移温度以下であったとしても、両側の表層以外の層を構成するポリエステル樹脂が充分に延伸できる条件とすることにより、フィルムの両側の表層の樹脂もそれに追随して延伸することが可能である。また、両側の表層以外の層を構成するポリエステル樹脂を充分延伸できる延伸温度とするために、T1nは、両側の表層以外の層を構成するポリエステル樹脂のガラス転移温度(TgB)以上、ガラス転移温度+40℃(TgB+40℃)以下であることが好ましい。上記(3)の条件でフィルムを延伸するには、延伸性の観点から、ポリエステルフィルムの両側の表層の厚みの和と、表層以外の層の厚みの和の比(両側の表層の厚みの和/表層以外の層の厚みの和)が1/4以下であることが好ましい。
本発明において、フィルムが単層ポリエステルフィルムである場合、(ii)の条件を満たす構成とし、かつ、上記(iii)を満たす温度で延伸することにより、R1の値を(i)を満たすものとすることができる。すなわち、該層を構成するポリエステル分子鎖の運動性が向上し、延伸により分子鎖を規則正しく並べることが可能となり、成形性に優れたフィルムとすることができる。延伸倍率が6.0倍に満たないと、結晶部分の起点となる配列した分子鎖を作ることができない。延伸倍率が9.6倍を超えると、分子鎖が配向しすぎることにより分子鎖の運動性が低下し、熱処理によって結晶部分が形成できない。
R3が1.2未満の場合((ii)を満たさない場合:フィルムを構成するポリエステル樹脂中、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートに対するポリエチレンテレフタレートの含有量が少ない場合)、ポリエステル分子鎖の運動性が足りず、面積倍率9.6倍以上で延伸した場合でも、延伸により結晶部分の起点となる配列した分子鎖を作ることができず、R1の値が1.0に満たなくなる。また、ポリエステル分子鎖の運動性が足りないため、製膜性が悪く、フィルムとすることが難しい場合がある。R3の値は、フィルムを構成する樹脂中のポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートに対するポリエチレンテレフタレートの重量比を増加させることで増加する。そして、それに伴ってA層を構成する樹脂の分子運動性も高くなるためより配向がつきやすくなる。即ち、R1が大きくなり、成形性が向上する。一方で、フィルムを構成する樹脂中のポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートに対するポリエチレンテレフタレートの重量比を増加させていくに従い、フィルムを構成する樹脂の分子鎖の運動性が高くなり、規則正しい配列を持つことが難しくなる。即ち、結晶性が低下していく結果、配向がつきにくくなる。R3が2.0を超える場合((ii)を満たさない場合:フィルムを構成するポリエステル樹脂中、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートに対するポリエチレンテレフタレートの含有量が多い場合)、フィルムを構成するポリエステル分子鎖の運動性が高くなりすぎ、面積倍率6.0倍以上9.6倍以下で延伸した場合、結晶部分の起点となる配列した分子鎖を作ることができず、R1の値が1.0に満たなくなる。
本発明において、フィルムが少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムである場合、フィルムの表面を(ii)の条件を満たす構成とし、かつ、フィルムの両面の表層を構成するポリエステル樹脂の融点TmAを260℃以上280℃以下とし、ポリエステルフィルムの表層以外の層を構成するポリエステル樹脂の融点TmBを250℃以上260℃以下とした場合、上記(iv)を満たす温度で延伸した後、熱処理することで、R1の値を(i)を満たすものとすることができ、かつΔHmA、ΔHmBを上述の範囲とすることができる。すなわち、フィルムの両面の表層を構成するポリエステル樹脂のポリエステル分子鎖の運動性が向上せしめることに加え、ポリエステルフィルムの表層以外の層を構成するポリエステル樹脂の分子鎖の運動性が高いため、延伸時の該層の動きに対して、フィルムの両面の表層を構成するポリエステル樹脂のポリエステル分子鎖が追随することにより、延伸により結晶部分の起点を作るだけでなく、製膜性も向上させることが可能となる。延伸倍率が6.0倍に満たないと、結晶部分の起点となる配列した分子鎖を作ることができない。延伸倍率が9.6倍を超えると、分子鎖が配向しすぎることにより分子鎖の運動性が低下し、熱処理によって結晶部分が形成できない場合がある。
R3が1.2未満の場合((ii)を満たさない場合:フィルムを構成するポリエステル樹脂中、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートに対するポリエチレンテレフタレートの含有量が少ない場合)においても、ポリエステルフィルムの表層以外の層を構成するポリエステル樹脂の分子鎖の運動性が高いため、延伸時の該層の動きに対して、フィルムの両面の表層を構成するポリエステル樹脂のポリエステル分子鎖が追随することにより、延伸により結晶部分の起点を作ることができ、熱処理を施すことによってR1の値を1.0以上とすることが可能となる。
延伸倍率が6.0倍に満たないと、結晶部分の起点となる配列した分子鎖を作ることができない。延伸倍率が9.6倍を超えると、分子鎖が配列しすぎることにより分子鎖の運動性が低下し、熱処理によって結晶部分が形成できない。
本発明により得られるフィルムは、成形性、オリゴマー溶出抑制性(耐油性)に優れ、コンプレッサ内部のモーターの電気絶縁部材として好適に用いることができる。
[特性の評価方法]
A.末端カルボキシル基量
Mauliceの方法に準じて以下の条件よって測定する(文献M.J.Maulice, F. Huizinga, Anal.Chim.Acta,22 363(1960))。ポリエステル組成物2gをo−クレゾール/クロロホルム(重量比7/3)50mLに温度150℃にて溶解し、0.05NのKOH/メタノール溶液によって滴定し、末端カルボキシル基量を測定し、eq./ポリエステル1tの値で示す。なお、滴定時の指示薬はフェノールレッドを用いて、黄緑色から淡紅色に変化したところを滴定の終点とする。
B.各層を構成する樹脂の融点(TmA、TmB)(℃)
試料を、JIS K 7121(1999)に基づいた方法により、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置“ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション“SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施した。
サンプルパンに試料を5mgずつ秤量し、試料を25℃から320℃まで20℃/分の昇温速度で加熱した(1stRUN)。1stRUNの示差走査熱量測定チャート(縦軸を熱エネルギー、横軸を温度とする)を得る。当該1stRunの示差走査熱量測定チャートの、吸熱ピークである結晶融解ピークにおけるピークトップの温度を求め、これを融点(℃)とする。2以上の結晶融解ピークが観測される場合は、最も温度が高いピークトップの温度を融点とする。
試料は、積層ポリエステルフィルムからミクロトームを用いて各層を構成する樹脂のみ削りだし、測定に供する。
C.最表層を構成する樹脂のガラス転移温度TgA、最表層以外の層を構成する樹脂のガラス転移温度TgB(℃)
JIS K 7121(1999)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施する。
サンプルパンに試料を5mg秤量し、試料を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し(1stRUN)、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷する。直ちに引き続いて、再度25℃から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行って測定を行い、2ndRUNの示差走査熱量測定チャート(縦軸を熱エネルギー、横軸を温度とする)を得る。当該2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、ガラス転移の階段状の変化部分において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状の変化部分の曲線とが交わる点から求める。2以上のガラス転移の階段状の変化部分が観測される場合は、それぞれについて、ガラス転移温度を求め、それらの温度を平均した値を試料のガラス転移温度(TgA)(℃)とする。
試料は、TgA測定においては、積層ポリエステルフィルムからミクロトームを用いて表層を構成する樹脂のみ削りだし、測定に供する。TgB測定においては、積層ポリエステルフィルムからミクロトームを用いて表層を構成する樹脂の厚さ分削りだした後のフィルムから、さらに表層に接する層を構成する樹脂のみ削りだし、測定に供する。
D.最表層を構成する樹脂の結晶融解熱量(ΔHmA)、最表層以外の層を構成する樹脂の結晶融解熱量(ΔHmB)
試料を、JIS K 7122(1999)に基づいた方法により、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置“ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション“SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施した。
サンプルパンに試料を5mgずつ秤量し、試料を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱した(1stRUN)。1stRUNの示差走査熱量測定チャート(縦軸を熱エネルギー、横軸を温度とする)を得る。当該1stRunの示差走査熱量測定チャートの、吸熱ピークのピーク面積を求め、結晶融解熱量とする。2以上の結晶融解ピークが観測される場合は、最も温度が高いピークの面積を結晶融解熱量とし、2以上のピークを分離できない場合は2つのピークを合わせてピーク面積を求める。
試料は、積層ポリエステルフィルムからミクロトームを用いて各層を構成する樹脂のみ削りだし、測定に供する。
E.フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)スペクトル強度
(株)パーキンエルマー製のFrontier FT−IRを用い、UATR IRユニットを使用して、媒質結晶をダイヤモンド/ZnSeとして、減衰全反射法(ATR法)によってスペクトル強度を測定する。分光器の分解能は1cm−1、スペクトルの積算回数は16回として測定する。スペクトル強度は、各波長での吸光度(arb.unit)とする。
積層フィルムの表層のスペクトルを測定する場合は、フィルムの表層を媒質結晶に密着させ、測定を実施する。媒質結晶とサンプルとの密着は、装置付随の冶具を用いて圧力をかけることによって行う。サンプルのスペクトルを観測しながら圧力を高めていき、圧力によってスペクトル形状が変化しない時点で測定を実行する。
ピーク検出には、(株)パーキンエルマー製のIRスペクトル分析ソフトSpectrum(ver.10.2)を用い、ピーク検出機能により測定したIRスペクトルからピークとなる波数を読み取る。
F.耐湿熱性
フィルムを1cm×20cmの大きさに、長辺がフィルムの長手方向・幅方向に平行となるようにそれぞれ切り出し、ASTM−D882(1997)に基づいて、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/分にて引っ張ったときの破断伸度を測定する。なお、サンプル数はn=5とし、また、フィルムの長手方向、幅方向のそれぞれについて測定した後、それらの平均値を求め、これをフィルムの破断伸度E0とする。
次に、同様に切り出したフィルムを、タバイエスペック(株)製プレッシャークッカーにて、温度125℃、相対湿度100%RHの高湿熱条件下にて処理を行った後、破断伸度を測定する。なお、測定はn=5とし、フィルムの長手方向、幅方向のそれぞれについて測定し、その平均値を破断伸度E1とする。得られた破断伸度E0,E1を用いて、次の(a)式により伸度保持率を算出する。処理時間を1時間ずつ変更し、伸度保持率が50%以下となる処理時間を伸度半減期とする。
(a) 伸度保持率(%)=E1/E0×100
得られた伸度半減期から、フィルムの耐湿熱性を以下のように判定する。
伸度半減期が61時間以上の場合:A
伸度半減期が48時間以上61時間未満の場合:B
伸度半減期が36時間以上48時間未満の場合:C
伸度半減期が36時間未満の場合:D
A、B、Cが良好であり、その中でもAが最も優れている。
G.オイルに含有されるオリゴマー量の測定
試料とするオイルを一定量秤量し、10mLメスフラスコに入れ、アセトニトリルを加えて10mLに定容する。不溶物がある場合は、“テフロン”(登録商標)製のディスクフィルター(目の粗さ0.45μm)でろ過した後、測定に供する。定容した溶液を試料溶液としてHPLC/UV装置に供する。HPLC/UV装置は島津製作所製LC−20Aを用い、ジーエルサイエンス(株)製のIntertsilODS−3分析カラムに上記のとおり調整した溶液を流量1.2mL/minで注入し、波長240nmのUV光にて検出する。横軸保持時間(分)、縦軸吸光度(arb.unit)としてチャートを得、一定保持時間で出現するピークの面積を算出する。
予め環状3量体標準物質によって同装置、同条件により算出されるピーク面積から検量線を作成し、それを用いて試料に含まれるオリゴマー量を算出する。
H.オリゴマー溶出抑制性(耐油性)
フィルム試料を1辺10cmに切り出したものを準備する。
冷凍機オイルとしてMobil(株)製Mobil EAL Aarctic 68を用いる。該オイルを100g量り取り、フィルム試料を完全に浸漬させる。該試料を浸漬させたオイルを、オートクレーブ装置(耐圧硝子工業(株)製TVS−N2型)に入れる。オートクレーブ装置の内圧を、ポンプでもって真空状態(100Pa以下)とする。オートクレーブ装置全体を温め、180℃として500hr保持する。その後、減圧状態から解放し、フィルム試料を取り出した後のオイルに含有されるオリゴマー量を上記G.項に従って測定し、オイル中へ溶出したオリゴマー量を算出する。溶出するオリゴマー量をフィルム試料の表面積で除し、単位面積当たりの溶出量とする。該試験を3回繰り返し、3回の平均値でもって単位面積当たりのオリゴマー溶出量とする。
得られるオリゴマー溶出量から、以下のように判定する。
オリゴマー溶出量が0g/m以上0.30g/m未満:A
オリゴマー溶出量が0.30g/m以上0.50g/m未満:B
オリゴマー溶出量が0.50g/m以上0.75g/m以下:C
オリゴマー溶出量が0.75g/mを超える場合:D
I.フィルムの厚み(μm)
フィルム厚みは、ダイヤルゲージを用い、JIS K7130(1992年)A−2法に準じて、フィルムを10枚重ねた状態で任意の5ヶ所について厚さを測定した。その平均値を10で除してフィルム厚みとした。
J.積層フィルムの各層の厚み(μm)
フィルムが積層フィルムである場合、下記の方法にて、各層の厚みを求めた。フィルム断面を、フィルム幅方向に平行な方向にミクロトームで切り出す。該断面を走査型電子顕微鏡で5000倍の倍率で観察し、積層各層の厚み比率を求める。求めた積層比率と上記したフィルム厚みから、各層の厚みを算出する。
K.打ち抜き性
高分子計器(株)製試験片打抜機を用い、JIS K−6251に記載の5号型ダンベル形状に積層フィルムを打ち抜く。フィルムを1枚ずつ打ち抜き、10枚打ち抜いた際に端面の割れ、剥がれが起きている枚数Mを数え、打ち抜き性を評価する。
0≦M≦2:打ち抜き性A
3≦M≦5:打ち抜き性B
6≦M≦8:打ち抜き性C
9≦M:打ち抜き性D
Aが最も優れ、Dが最も劣っている。
L.固有粘度IV
オルトクロロフェノール100mlにポリエステル組成物を溶解させ(溶液濃度C=1.2g/dl)、その溶液の25℃での粘度を、オストワルド粘度計を用いて測定する。また、同様に溶媒の粘度を測定する。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記(c)式により、[η](dl/g)を算出し、得られた値でもって固有粘度(IV)とする。
(c)ηsp/C=[η]+K[η]・C
(ここで、ηsp=(溶液粘度(dl/g)/溶媒粘度(dl/g))―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)。
M.Δヘイズ
フィルムを1辺10cmの正方形状に切り出し、日本電色(株)製ヘイズメーターNDH−5000を用い、ランダムに3カ所のヘイズを測定して平均値を算出し、試験前のヘイズH0とする。該サンプルを23℃65%RHに保たれた部屋に静置したタバイエスペック(株)製ギアオーブンにて、180℃の高温下1時間熱処理する。熱処理した後のフィルムのヘイズを同様に測定し、H1を求める。Δヘイズ(ΔH)を下記式(v)により求める。
(v)ΔH=H1−H0
求めたΔヘイズから、以下のように判定する。
0≦ΔH<1.5:A
1.5≦ΔH<3.0:B
3.0≦ΔH≦5.0:C
5.0<ΔH:D
Aが最も優れ、Dが最も劣っている。
N.製膜性
製膜中にフィルムが1時間に破れる回数を数え、1回未満であるものをA、1回以上3回未満であるものをB、3回以上5回未満であるものをC、5回以上であるものをDとして評価する。Aが最も製膜性がよく、Dが最も劣る。
なお、上記の測定において、測定するフィルムの長手方向や幅方向が分からない場合は、フィルムにおいて最大の屈折率を有する方向を長手方向、長手方向に直行する方向を幅方向とみなす。また、フィルムにおける最大の屈折率の方向は、フィルムの全ての方向の屈折率を屈折率計で測定して求めてもよく、位相差測定装置(複屈折測定装置)などにより遅相軸方向を決定することで求めてもよい。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
[PET−A、PET−Bの製造]テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、常法により重合を行い、PET−Bを得た。得られたPET−Bのガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.68、末端カルボキシル基量は20eq./tであった。次に、PET−Bを常法により固相重合せしめ、PET−Aを得た。得られたPET−Aのガラス転移温度は82℃、融点は255℃、固有粘度は0.85、末端カルボキシル基量は11eq./tであった。
[PEN−Aの製造]2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルおよびエチレングリコールから、酢酸マンガンを触媒として、エステル交換反応を実施した。エステル交換反応終了後、三酸化アンチモンを触媒として常法によりPEN−Aを得た。得られたPEN−Aのガラス転移温度は124℃、融点は265℃、固有粘度は0.62、末端カルボキシル基濃度は25eq./tであった。
(実施例1)
フィルム構成する樹脂として、PEN−A95質量部、PET−A5質量部をブレンドし、160℃で2時間真空乾燥した後押出機に投入した。押出機内で原料を溶融させ、キャスティングドラム状に押し出し、シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、120℃の温度で長手方向(MD方向)に3.0倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の150℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に3.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで200℃の温度で10秒間の熱処理を施し、さらに200℃の温度で4%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ250μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各特性を表に示す。オリゴマー溶出抑制性(耐油性)、耐湿熱性、加工性、Δヘイズに優れたフィルムであることが分かった。
(実施例2〜4)
フィルムを構成する樹脂に用いるPEN−AとPET−Aの混合比率を表に記載の通りに変えた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの各特性を表に示す。オリゴマー溶出抑制性(耐油性)、耐湿熱性、加工性、Δヘイズに優れたフィルムであることが分かった。
(実施例5)
表層を構成する樹脂として、PEN−A100質量部とし、160℃で2時間真空乾燥した後押出機1に投入した。また、表層以外の層を構成する樹脂としてPET−A100質量部を160℃で2時間真空乾燥した後、押出機2に投入した。押出機内でそれぞれの原料を溶融させ、合流装置で押出機1に投入した樹脂がフィルムの両表層となるように合流させ、キャスティングドラム状に押し出し、3層構造をもつ積層シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、95℃の温度で長手方向(MD方向)に3.0倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に3.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで220℃の温度で10秒間の熱処理を施し、さらに220℃の温度で4%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ250μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各特性を表に示す。オリゴマー溶出抑制性(耐油性)、耐湿熱性、加工性に優れたフィルムであることが分かった。しかしながら、R3の値が小さく、最表層を構成する樹脂の運動性が低いため、Δヘイズにやや劣る結果となった。
(実施例6)
延伸倍率を表に記載の通りに変えた以外は、実施例5と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの各特性を表に示す。オリゴマー溶出抑制性(耐油性)、耐湿熱性、加工性に優れたフィルムであることが分かった。しかしながら、R3の値が小さく、最表層を構成する樹脂の運動性が低いため、Δヘイズにやや劣る結果となった。
(実施例7〜13)
表層を構成する樹脂として、表に記載の通りにブレンドした樹脂を用いた以外は、実施例5と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの各特性を表に示す。オリゴマー溶出抑制性(耐油性)、耐湿熱性、加工性、Δヘイズに優れたフィルムであることが分かった。フィルム表層を構成する樹脂の分子鎖の運動性が向上したため、製膜性が向上した。特に、実施例1〜6に比べて、フィルム表面のR1の値を大きくすることができたため、実施例7〜13で成形性が向上し、実施例7〜11ではオリゴマー溶出抑制性(耐油性)が向上した。
(実施例14〜18)
表層を構成する樹脂として、表に記載の通りにブレンドした樹脂を用い、積層フィルムの総厚み、フィルム各層の厚みを変更した以外は、実施例5と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの各特性を表に示す。オリゴマー溶出抑制性(耐油性)、耐湿熱性、加工性、Δヘイズに優れたフィルムであることが分かった。
(比較例1)
フィルムを構成する樹脂として、PEN−A100質量部とした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの各特性を表に示す。R3の値が低く、製膜性に劣る。また、R1の値が低く、オリゴマー溶出抑制性(耐油性)、成形性に劣る。
(比較例2〜4)
表層を構成する樹脂に用いる樹脂、表層以外の層を構成する樹脂、製膜条件、積層比、フィルムの厚みを表に記載の通りに変えた以外は、実施例5と同様にして積層フィルムを得た。
表層以外の層を構成する樹脂として、比較例2、4ではPET−A95質量%とPEN−A5質量%をブレンドしたもの、比較例3ではPET−A90質量%とPEN−A10質量%をブレンドしたものを用いた。
フィルムの各特性を表に示す。
比較例2〜4では面積倍率が大きいため、R1の値が小さく、オリゴマー溶出抑制性(耐油性)、成形性に劣る。また、R3の値も低いため、Δヘイズに劣る。また、TmA−TmBの値が大きいため、積層性が悪く、製膜性に劣るものであった。
(比較例5)
表層を構成する樹脂に用いる樹脂、製膜条件を表に記載の通りに変えた以外は、実施例5と同様にして積層フィルムを得た。
熱処理温度が高く、R1の値が大きいため、オリゴマー溶出抑制性(耐油性)に劣る。
(比較例6)
表層を構成する樹脂に用いる樹脂、製膜条件、フィルムの厚み、積層比を表に記載の通りに変えた以外は、実施例5と同様にして積層フィルムを得た。
押出温度が高く、押出機内でエステル交換が進み、R1が小さいものであった。また、R3が大きいため、フィルム表面の結晶化度が低く、オリゴマー溶出抑制性(耐油性)に劣る。また、フィルム厚みが薄いため耐湿熱性にも劣る。
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本発明のポリエステルフィルムは、耐熱性、オリゴマー溶出抑制性(耐油性)、耐湿熱性、加工性に優れる。そのため、本発明のポリエステルフィルムは、機械オイル中においても物性の低下が抑制されるため、モーターの電気絶縁部材として好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. (1)〜(2)を満たす少なくとも3層からなるポリエステルフィルムであって、フィルムの両面の表層を構成するポリエステル樹脂中にポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートを含有し、かつ、フィルムの両面の表層を構成するポリエステル樹脂の融点TmAが、260℃以上280℃以下、結晶融解熱量(ΔHmA)が30J/g以上45J/g以下であるポリエステルフィルム。
    (1)オイル中へのオリゴマー溶出抑制性試験において、オリゴマーの溶出量が0g/m以上0.75g/m以下であること。
    (2)ポリエステルフィルムの表面をフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、839cm−1に観察されるスペクトル強度r1と、824cm−1に観察されるスペクトル強度r2から求められるR1が以下の関係を満たすこと。
    (i)1.0≦R1≦2.0
    ここで、R1=r1/r2
  2. 空気中、180℃、相対湿度5.0%以下で1時間熱処理したとき、処理した前後のフィルムのヘイズ変化(Δヘイズ)が5.0%以下である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
  3. 前記ポリエステルフィルムの表面をフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1018cm−1に観察されるスペクトル強度r3と、1602cm−1に観察されるスペクトル強度rから求められるR3が以下の関係を満たす請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
    (ii) 1.2≦R3≦2.0
    ここで、R3=r3/r
  4. ポリエステルフィルムの表層以外の層を構成するポリエステル樹脂の融点TmBが、250℃以上260℃以下、結晶融解熱量(ΔHmB)が30J/g以上45J/g以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  5. ポリエステルフィルムの両側の表層を構成するポリエステル樹脂の融点と、表層以外の層を構成するポリエステル樹脂の融点の差(TmA−TmB)が3℃以上8℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  6. ポリエステルフィルムの両側の表層の厚みの和と、表層以外の層の厚みの和の比(両側の表層の厚みの和/表層以外の層の厚みの和)が、1/9〜1/4である請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  7. ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂の末端カルボキシル基量が15eq./t以下である請求項1から6のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  8. フィルムの総厚みが120μm以上400μm以下である、請求項1から7のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  9. モーターの電気絶縁部材として用いられる請求項1から8のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
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