JP6390336B2 - R32と接する用途に用いるポリエステルフィルム - Google Patents

R32と接する用途に用いるポリエステルフィルム Download PDF

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Description

本発明は、R32と接する用途に用いるフィルムに好適なポリエステルフィルムに関する。
ポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(以下PETと略すことがある)や、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下PENを略すことがある)などは機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。そのポリエステルをフィルム化したポリエステルフィルム、中でも二軸配向ポリエステルフィルムは、その優れた機械的特性、電気的特性などから、太陽電池バックシート、給湯器モーター、ハイブリッド車などに使用されるカーエアコン用モーター、駆動モーター用などの電気絶縁材料、磁気記録材料や、コンデンサ用材料、包装材料、建築材料、写真用途、グラフィック用途、感熱転写用途などの各種工業材料として使用されている。
これらの用途のうち、電気絶縁材料(例えばエアコン用のコンプレッサモーター)用途に用いる場合、冷媒ガスの圧縮・膨張に伴って高温となる環境下で使用されるため、その使用環境における耐熱性や耐圧性、冷媒に対する耐性などが求められる。加えて、近年、環境側面から、エアコン用の冷媒ガスとしてハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)に代わりハイドロフルオロカーボン(HFC)の普及が進んでいる(特許文献1)。
特表2011−525204号公報 特開2009−67944号公報 特開2011−12200号公報 特開平11−60971号公報 特開2012−41520号公報
HFCに代表される冷媒ガスであるR32(化学式:CH)は、その熱的特性から、コンプレッサの使用環境温度が従来よりも高温となり、また、使用環境圧力が従来よりも高くなる。そのため、R32と接する用途に用いるフィルム、特にR32が冷媒として用いられているデバイスの電気絶縁材料に用いるには、従来よりも高い耐熱性、耐圧性が求められる。また、R32と接する用途に用いるフィルム、特にR32が冷媒として用いられているデバイスの電気絶縁材料に用いるには、R32に対する耐性(R32と接したときにフィルム特性の低下が小さいことや、フィルム中に含有する成分がR32中に放出されないこと。以降、耐冷媒性と称する場合がある。)が求められる。
フィルムの耐熱性を向上させる手段として、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物に、リン化合物、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤を添加することで、重合時に使用した触媒に起因する熱分解反応を抑制させる方法が開示されている(特許文献2〜5)。
しかしながら、特許文献2〜5に記載の方法で得られるフィルムをR32と接する用途、特にR32が冷媒として用いられているデバイスの電気絶縁材料に使用すると、リン化合物、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤がR32中に溶出する。かかる場合、R32の性状が変化するため、R32の冷媒としての特性を悪化させるという問題が発生する。また、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物から、リン化合物、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が溶出した結果、フィルムの耐熱性が悪化するという課題がある。
本発明の課題は、かかる従来技術の背景に鑑み、耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性に優れた、R32と接する用途に用いるポリエステルフィルムを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。すなわち、
[I]
以下(1)〜(3)を満たすR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
(1)140℃0%RH下に2000時間保持したときの強度保持率が30%以上であること。
(2)耐圧試験(放圧−加圧10MPa繰り返し試験)したときの伸度保持率が50%以上であること。
(3)R32雰囲気下、冷凍機オイルに80℃200時間浸漬したときの重量変化率が−0.3〜1質量%であること。
[II]
以下(4)〜(5)を満たす[I]に記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
(4)キシレンに140℃24時間含浸せしめたとき、キシレンに溶出する成分の重量がフィルムの質量に対して0〜0.5質量%であること。
(5)140℃80%RH下に24時間保持したときの強度保持率が30%以上であること。
[III]
以下(6)〜(8)を満たす[I]または[II]に記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
(6)少なくとも2層からなる積層ポリエステルフィルムであること。
(7)少なくとも一方の表面が、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1452cm−1に観察されるスペクトル強度r1と、1332cm−1に観察されるスペクトル強度r2と、1602cm−1に観察されるスペクトル強度rから求められるR1、R2が以下の関係を満たすこと。
(i)0.3≦R1≦0.6
(ii)1.10≦R2≦1.40
ここで、R1=r1/r、R2=r2/r
(8)前記(7)を満たす表面が、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1018cm−1に観察されるスペクトル強度r3と、1602cm−1に観察されるスペクトル強度rから求められるR3が以下の関係を満たすこと。
(iii)1.20≦R3≦2.00
ここで、R3=r3/r
[IV]
前記(7)、(8)を満たす表面を有する層(該層をA層とする)をフィルムの両側に有する、少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムであって、表層を有しない層(該層をB層とする)を構成する樹脂の固有粘度が0.68〜1.0dl/g、末端カルボキシル基量が0〜25当量/tである[I]〜[III]のいずれかに記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
[V]
A層を構成するポリエステル樹脂組成物に含有するアルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)、2価金属元素の含有量をM2(mol/t)、リン元素の含有量をP(mol/t)とするとき、下記式(iv)で求められる前記ポリエステル樹脂組成物における金属含有量M(mol/t)が、下記式(v)を満たす[IV]に記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
(iv)M=0.5×(M1)+M2
(v)0.5≦M/P≦1.5
[VI]
A層/B層の厚み比が0.04〜15であることを特徴とする[IV]または[V]に記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
[VII]
フィルムの総厚みが20〜350μmである[I]〜[VI]のいずれかに記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
[VIII]
R32が冷媒として用いられているデバイスの電気絶縁材料に用いる[I]〜[VII]のいずれかに記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
本発明によれば、耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性に優れた、R32と接する用途に用いるポリエステルフィルムを提供することができる。
以下に具体例を挙げつつ、本発明について詳細に説明する。
本発明のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルムに用いられるポリエステルは、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を有してなるものである。なお、本明細書内において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。
かかるポリエステルを構成するジカルボン酸構成成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。
また、かかるポリエステルを構成するジオール構成成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、芳香族ジオール類等のジオール、上述のジオールが複数個連なったものなどがあげられる。
本発明のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルムは下記(1)を満たすことが必要である。
(1)140℃0%RH下に2000時間保持したときの強度保持率が30%以上であること。
R32を冷媒として使用するときの使用温度は約140℃であり、従来用いられている冷媒の使用温度よりも高温であるため、R32と接する用途に用いるポリエステルフィルムには、使用温度である140℃での強度保持率が高いことが必要である。そのため、本発明に用いるポリエステルフィルムは、140℃0%RH下に2000時間保持したときの強度保持率は30%以上であることが必要である。30%未満では脆く絶縁性が保てない。より好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは50%以上である。
本発明のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルムは下記(2)を満たすことが必要である。
(2)耐圧試験(放圧−加圧10MPa繰り返し試験)したときの伸度保持率が50%以上であること。
R32を冷媒として使用するモーターは、R22やR410Aといった従来の冷媒を用いたときよりも高い圧力での加圧−放圧が繰り返される。そのため、R32と接する用途に用いるポリエステルフィルム、特にR32が冷媒として用いられているデバイスの電気絶縁材料に用いるポリエステルフィルムには、高い耐圧性が求められる。そのため、本発明のポリエステルフィルムには、耐圧試験(放圧−加圧10MPa繰り返し試験)したときの伸度保持率が50%以上であることが必要である。より好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上である。耐圧試験(放圧−加圧10MPa繰り返し試験)の詳細については後述する。
本発明のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルムは下記(3)を満たすことが必要である。
(3)R32雰囲気下、冷凍機オイルに80℃200時間浸漬したときの重量変化率が−0.3〜1質量%であること。
本発明のポリエステルフィルムは、R32に対する耐性が必要である。そのため、本発明のポリエステルフィルムは、R32雰囲気下、冷凍機オイルに80℃200時間浸漬したときの重量変化率が−0.3〜1質量%である必要がある。重量変化率が−0.3%よりも小さいとポリエステルフィルム中からの抽出物が多いことを示しており、冷媒中に不純物を含むことになり好ましくない。また、1質量%より大きいとフィルムが膨潤しやすく、絶縁性が低下する可能性があり好ましくない。より好ましくは−0.25〜0.75%、さらに好ましくは−0.2〜0.5%である。なお、本発明でいう冷凍機オイルに80℃200時間浸漬したときの重量変化率は、後述する測定方法において、冷凍機オイルとしてMobil(株)製Mobil EAL Aarctic 68を用いて求められる値とする。
本発明のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルムは、下記(4)を満たすことが好ましい。
(4)キシレンに140℃24時間含浸せしめたとき、キシレンに溶出する成分の重量がフィルムの質量に対して0〜0.5質量%であること。
コンプレッサモーターは、コンプレッサーモーター内部に、冷媒とともに冷凍機オイルなどの潤滑油を封入して使用されることがある。そのため、電気絶縁材料に用いるポリエステルフィルムには、冷媒や潤滑油に対して成分が溶出しないこと(冷媒や潤滑油に対する溶出抑制性が高いこと)が好ましい。冷媒や潤滑油に成分が溶出すると、コンプレッサーの配管につまりを発生させたり、冷媒能を低下させる問題が発生する場合があるので好ましくない。冷媒や潤滑油に対する溶出抑制性は、キシレンに含浸せしめたとき、キシレンに溶出する成分の重量によって評価することができる。本発明に用いるポリエステルフィルムは、R32を冷媒として用いるコンプレッサーモーターの使用温度となる140℃にて、24時間キシレンに含浸せしめた時の成分の重量が、フィルムの質量に対して0〜0.5質量%であることが好ましい。0.5質量%より大きいと、溶出成分が不純物となり、コンプレッサ配管につまりを発生させたり、冷媒性能が低下する場合があるため好ましくない。より好ましくは0〜0.4質量%、さらに好ましくは0〜0.3質量%である。
本発明のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルムは下記(5)を満たすことが好ましい。
(5)140℃80%RH下に24時間保持したときの強度保持率が30%以上であること。
冷媒や冷凍機オイルは吸湿性があるため、コンプレッサーモーター内部には、冷媒や冷凍機オイルは水分を含んで封入される。また、上述したように、R32を冷媒として使用するときの使用温度は約140℃であり、従来用いられている冷媒の使用温度よりも高温である。そのため、本発明のポリエステルフィルムには、R32を冷媒として使用するときの使用温度である140℃において、ポリエステルフィルムが加水分解の発生を抑制する耐湿熱性を有することが好ましい。本発明のポリエステルフィルムは、使用温度である140℃において、湿度80%RHの条件下、24時間保持した後の強度保持率が30%以上であることが好ましい。30%未満であると水分による劣化がおこりやすく、長期の使用によって機械的強度の低下が発生する場合があるため好ましくない。より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上。
本発明のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルムは下記(6)を満たすことが好ましい。
(6)少なくとも2層からなる積層ポリエステルフィルムであること。
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも2層からなる積層ポリエステルフィルムであることが好ましい。より好ましくはフィルムの両側表層が後述するA層からなる、少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムである。耐熱性、耐湿熱性に優れたA層がフィルム両側表層に配されることで、積層フィルム全体の耐熱性、耐湿熱性が向上するため好ましい。
本発明のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルムは下記(7)を満たすことが好ましい。
(7)少なくとも一方の表面が、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1452cm−1に観察されるスペクトル強度r1と、1332cm−1に観察されるスペクトル強度r2と、1602cm−1に観察されるスペクトル強度rから求められるR1、R2が以下の関係を満たす。
(i)0.3≦R1≦0.6
(ii) 1.10≦R2≦1.40
ここで、R1=r1/r、R2=r2/r。
フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1452cm−1、1332cm−1に観察されるスペクトルは、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートの分子構造に特徴付けられるものである。すなわち、本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも一方の表面を構成する樹脂中に、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートを含有することが好ましい。少なくとも一方の表面を構成する樹脂中のポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートの含有量は、耐熱性、耐湿熱性の観点から、少なくとも一方の表面を構成する樹脂の総量に対して70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85質量%以上である。一般的に、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートにおいては、ポリエチレン2,6−ナフタレートのメチレン基部分の立体配座において、ゴーシュ型構造、トランス型構造の2種類をとることが知られている。これら2種類の内、分子鎖が規則正しく配列する上では、ゴーシュ型構造に比べ、トランス型構造が有利である。このことから、ゴーシュ型構造はポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートの分子鎖が規則正しく配列していない部分(以後非晶部分という)を反映し、トランス型構造はポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートの分子鎖が配向して規則正しく配列し、結晶化した構造(以後結晶部分という)を反映している。積層ポリエステルフィルムの表面を、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、ポリエチレン2,6−ナフタレートのメチレン基部分の立体配座のゴーシュ型構造は、1452cm−1に観察されるスペクトルに特徴付けられ、トランス型構造は、1332cm−1に観察されるスペクトルに特徴付けられる。即ち、r1は非晶部分に由来するゴーシュ型構造を反映し、r2は結晶部分に由来するトランス型構造を反映している。また、rはポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートのナフタレン環のC−H伸縮振動による吸収を反映し、分子鎖の配列に依存しないため、r1、r2の強度比較において規格化の吸収ピークとして利用することができる。そのため、r1/rであるR1が小さいほど、またr2/rであるR2が大きいほど、規則正しい構造を持った結晶部分が多いことを表す。R1は0.3よりも小さいと結晶性が高すぎて加工性に問題がある場合がある。R1は0.6よりも大きいとR32に対する耐性が劣る場合がある。
また、電気絶縁材料に用いるポリエステルフィルムには、冷媒や潤滑油に対して成分が溶出しないこと(冷媒や潤滑油に対する溶出抑制性が高いこと)が好ましい。冷媒や潤滑油に溶出する代表的な成分として、ポリエステルのオリゴマー成分があるが、オリゴマーは低分子量体であるため、ある程度の大きさを持つ。そのため、オリゴマーは、規則正しい配列を持った結晶部分には、立体障害により存在することができないため、ポリエステルフィルム中で必然的に非晶部分に存在することになる。非晶部分が多い方が溶出抑制性には有利となる。
一般的にポリエステル樹脂の結晶部分の密度は、非晶部に比べて高い。そのため、フィルムをキシレンに浸漬した場合、キシレンはフィルム内部に浸透していく。その際、キシレンは、密度の高い結晶部分に比べて、密度の低い非晶部分により浸透しやすい。このため、結晶部分が多い方が、キシレンのフィルム内部への進入を抑制する結果、キシレンへの溶出を抑制することができる。
上記の効果から、溶出抑制性を良好とするためには、R1は0.3以上0.6以下であることが好ましい。
また、ポリエステルフィルムをエアコンコンプレッサに用いる電気絶縁部材として使用する場合、使用形状に合わせたフィルム断裁、折り曲げの加工が必要となる。該加工時にはフィルムに応力がかかり、特に断裁時にはカッターの刃先によって狭い範囲に大きな力がかかることとなる。このとき、狭い範囲に集中した力をフィルムが吸収しきれず、余剰な力によってフィルムが割れることがある。ここで、結晶部分は、分子鎖が規則正しく配列する際、通常は複数の分子鎖によって構成されるため、分子鎖をつなぐ結節点としての役割を持つ。フィルム中に結晶部分が多い場合、フィルムにかかった力が分子鎖を伝わってフィルム全体に分散しやすくなる。一方で、結晶部分の割合が少ない場合、フィルムにかかる力が分散しづらく、断裁時に割れが発生しやすくなるため好ましくない。そのため、加工性を良好にするためには、R1は0.3以上であることが好ましい。
R1の好ましい下限は0.35、好ましい上限は0.55である。R2は1.40よりも大きいと結晶性が高すぎて加工性に問題がある場合がある。R2は1.10よりも小さいとR32に対する耐性が劣る場合がある。好ましい下限は1.15、好ましい上限は1.35である。R1、R2を上記の範囲とすることによって、良好な加工性を有しながら、(1)〜(5)を満たす耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性に優れたフィルムを得ることができるため、好ましい。
また、本発明のポリエステルフィルムは、下記(8)を満たすことが好ましい。
(8)式(7)を満たす表面が、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1018cm−1に観察されるスペクトル強度r3と、1602cm−1に観察されるスペクトル強度rから求められるR3が以下の関係を満たすこと。
(iii) 1.20≦R3≦2.00
ここで、R3=r3/r。
フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1018cm−1に観察されるスペクトルは、ポリエチレンテレフタレートの分子構造(ベンゼン環のC−H伸縮振動)に特徴付けられるものである。即ち、本発明のポリエステルフィルムのどちらか一方の表層を構成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを含有する。ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートに比べ、ポリエチレンテレフタレートは、ガラス転移温度が低いため、熱に対する分子鎖の運動性が高い。また、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートとポリエチレンテレフタレートの分子構造は近いため、分子鎖同士が物理的な相互作用を起こしやすい。そのため、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートにポリエチレンテレフタレートを含有せしめた場合、ポリエチレンテレフタレートの分子鎖の高い運動性によってポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートの分子鎖の運動性も高まる結果、後述する方法で二軸延伸した場合、本発明の積層フィルムを二軸配向せしめやすくなる。R3が1.20より小さいと加工性に問題がある場合がある。R3が2.00より大きいとR32に対する耐性に劣る場合がある。好ましい下限は1.25、好ましい上限は1.95である。R3の値は、ポリエステルフィルムのどちらか一方の表層を構成する樹脂中における、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートとポリエチレンテレフタレートの含有量の比に依る。上記(iii)の範囲とするためには、ポリエステルフィルムのどちらか一方の表層を構成する樹脂の原料として、ポリエチレンテレフタレートと、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用い、ポリエチレンテレフタレートと、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートを溶融製膜前にブレンドする方法が挙げられる。上記(iii)の範囲とするためには、原料中のポリエチレンテレフタレートの含有量を、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートに対して、2.5質量%以上30質量%以下とすることが重要である。R3を上記の範囲とすることによって、良好な加工性を有しながら、(1)〜(5)を満たす耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性に優れたフィルムを得ることができるため、好ましい。
本発明のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルムは、前記(7)、(8)を満たす表面を有する層(該層をA層とする)をフィルムの両側に有する、少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムであって、表層を有しない層(該層をB層とする)を構成する樹脂の固有粘度が0.68〜1.0dl/g、末端カルボキシル基量が0〜25当量/tであることが好ましい。固有粘度のより好ましい下限は0.70dl/g、より好ましい上限は0.9dl/gである。0,68dl/gより小さいと、耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性が劣る場合がある。1.0dl/gより大きいと加工性に問題がある場合がある。末端カルボキシル基量が25当量/tより大きいと、耐熱性、R32に対する耐性が劣る場合がある。
本発明のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルムは、A層を構成するポリエステル樹脂組成物に含有するアルカリ金属元素の含有量をM1、2価金属元素の含有量をM2、3価金属元素の含有量をM3、リン元素の含有量をP(mol/t)とするとき、下記式(iv)で求められる前記ポリエステル樹脂組成物における金属含有量M(mol/t)が、下記式(v)を満たす[IV]に記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルムであることが好ましい。
(iv)M=0.5×(M1)+M2+1.5×(M3)
(v)0.5≦M/P≦1.5
M/Pが、0.5より小さいとリン元素量が過剰すぎるため、重合触媒の失活がおこりやすく、低分子量体が多く存在し、溶出抑制性、R32に対する耐性が悪化する場合がある。1.5よりも大きいと金属量が過剰なため、熱劣化を促進し耐熱性が悪化する場合がある。
この式におけるMは、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物において、リン酸に由来する陰イオンと相互作用する、金属元素の陽イオンの含有量を表すものである。リン酸に由来する陰イオンと相互作用する、金属元素の陽イオンとして、2価金属元素だけではなく、電気陰性度が大きいアルカリ金属元素の陽イオンも考慮する必要がある。
一般的に、リン酸に由来する陰イオンは3価の負電荷をもつため、1価の金属元素の陽イオンとは1:3、2価の金属元素の陽イオンとは2:3、3価の金属元素の陽イオンとは1:1で相互作用すると考えられる。しかしながら、本発明者らが鋭意検討を進めた結果、リン酸に由来する陰イオンが2価の陰イオンとして金属元素の陽イオンと相互作用するとした(iv)式、(v)式(すなわち、リン酸に由来する陰イオンが、1価の金属元素の陽イオンとは1:2、2価の金属元素の陽イオンとは1:1、3価の金属元素の陽イオンとは3:2で相互作用するとした式)のもと、M/Pを上記の範囲内とすることで、溶出抑制性、R32に対する耐性、耐熱性が良好になることを見出した。このことは、現時点では明らかになっていないが、リン酸の電離度によるものと推定している。リン酸は3価の負電荷をもつが、一般的に、リン酸の3段目の電離度は低いことから、ポリエステル組成物中においても、見かけ上2価の陰イオンを持つ(2価の金属陽イオンと1:1で相互作用する)ものと考えている。
M/Pを上記の数値範囲内とすることによって、溶出抑制性、R32に対する耐性、耐熱性に優れたポリエステル樹脂組成物とすることが可能となる。
本発明のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルムのA層/B層の厚み比は、0.04〜15であることが好ましい。0.04より小さいとB層が厚すぎて耐熱性が悪化する場合がある。15よりも大きいとA層が厚すぎて加工性が悪化する場合がある。
本発明のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルムは、総厚みが20μm〜350μmであることが好ましい。20μmより薄いとハンドリング性が悪く加工性が悪化する場合がある。350μmよりも厚いと折り曲げ等により割れやすく加工性が悪化する場合がある。
(1)〜(3)を満たすポリエステルフィルムを得るには、
(イ)フィルムの表層を構成するポリエステル樹脂を特定のポリエステル樹脂として、後述の条件にてフィルムを製造する方法
(ロ)少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムとして、表層と内層を構成するポリエステル樹脂を特定のポリエステル樹脂として、後述の条件にてフィルムを製造する方法
(ハ)上記の方法を組合せることにより得ることができる。
まず、(イ)に係る方法について説明する。
本発明のポリエステルフィルムの表層は融点が高いポリエステル樹脂が含まれることが好ましい。好ましくは245℃以上、より好ましくは260℃以上である。
さらに好ましくは、ポリエステルフィルムの表面をフーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1018cm−1に観察されるスペクトル強度r3と、1602cm−1に観察されるスペクトル強度rから求められるR3が以下の関係を満たすことが好ましい。
(ii)1.2≦R3≦2.0
ここで、R3=r3/r
ここで(ii)式は、以下のことを表すものである。すなわち、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1018cm−1に観察されるスペクトルは、ポリエチレンテレフタレートの分子構造(ベンゼン環のC−H変角振動)に特徴付けられるものである。即ち、本発明の積層ポリエステルフィルムのどちらか一方の表層を構成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを含有することが好ましい。フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1602cm−1に観察されるスペクトルは、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートのナフタレン環のC−C伸縮振動による吸収に特徴付けられるものである。このスペクトル強度は、分子鎖の配向に依存しないため、強度比較において規格化の吸収ピークとして利用することができる。1018cm−1に観察されるスペクトルも分子鎖の配向に依存しないため、R3は、フィルムの表層を構成する樹脂に含有されるポリエチレンテレフタレートの量を反映する。
ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートに比べ、ポリエチレンテレフタレートは、ガラス転移温度が低いため、熱に対する分子鎖の運動性が高い。また、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートとポリエチレンテレフタレートの分子構造は近いため、分子鎖同士が物理的な相互作用を起こしやすい。そのため、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートにポリエチレンテレフタレートを含有せしめた場合、ポリエチレンテレフタレートの分子鎖の高い運動性によってポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートの分子鎖の運動性も高まる結果、後述する方法で製造した場合、本発明のフィルムの結晶部分と非晶部分の割合を制御しやすくなる。さらに、分子鎖の運動性が高い樹脂が存在した場合、フィルムの成形性も向上するため好ましい。分子鎖の運動性が高い樹脂は、応力によって変形しやすいため、フィルム加工時の応力を吸収することができる。
R3の値は、ポリエステルフィルムのどちらか一方の表層を構成する樹脂中における、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートとポリエチレンテレフタレートの含有量の比に依る。上記(ii)の範囲とするためには、ポリエステルフィルムのどちらか一方の表層を構成する樹脂の原料として、ポリエチレンテレフタレートと、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用い、ポリエチレンテレフタレートと、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートを溶融製膜前にブレンドする方法が挙げられる。上記(ii)の範囲とするためには、原料中のポリエチレンテレフタレートの含有量を、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートに対して、5質量%以上25質量%以下とすることが重要である。一方、ポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートとポリエチレンテレフタレートを共重合することにより上記(ii)を充足せしめた場合、(ii)を満たすポリエステル樹脂の結晶性、および融点が低下する。結晶性が低下した場合、延伸による結晶化が起こらず、(i)を満たすことが出来ない場合があり、(i)を満たさない場合は、加工性、耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性に劣ったフィルムとなる。また、フィルムの表層を構成するポリエステル樹脂の融点が低下すると、加工性、耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性に劣ったフィルムとなる場合がある。
上記(ii)を満たすポリエステル樹脂からフィルムを構成させることにより、分子鎖の運動性を高め、ポリエステル樹脂の分子鎖を、二軸延伸により規則正しく配列させ、結晶の起点を形成しやすくできる結果、結晶を成長させやすいため、耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性だけでなく、加工性の観点からも好ましい。
次に、(ロ)に係る方法について説明する。表層を構成する樹脂として、上記した(ii)を満たさないポリエステル樹脂、例えば、PENのみからなる樹脂を用いたとしても、表層を有さない層を構成する樹脂として、分子鎖の運動性が高い樹脂を用いて、少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムとすることにより、フィルムの表層をR1を満たす表層とすることができる。表層を構成する樹脂がポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートである場合、表層以外の層を構成するポリエステル樹脂は、分子鎖の運動性が高いことから、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
表層以外の層を構成する樹脂の分子鎖が、表層を構成する樹脂の分子鎖の構造に近い場合、表層を構成する樹脂は、延伸の際に、表層以外の層を構成する樹脂の分子鎖が規則正しく配列する動きに追随するため、表層を構成する樹脂の分子鎖も配列しやすくなる。また、表層以外の層を構成する樹脂の分子鎖の運動性が高く、延伸によって規則正しく配列せしめやすい場合、表層を構成する樹脂の分子鎖をより規則正しく配列せしめやすくなる。その結果、表層を構成する樹脂として、上記した(ii)を満たさないポリエステル樹脂、例えば、PENのみからなる樹脂を用いたとしても、(i)式を満たすほど、PENの分子鎖を配向せしめることが可能となる。その結果、耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性に優れたフィルムが得られる。また、フィルムの構成を上記の3層構成とした場合、フィルム中に分子鎖の運動性が高い樹脂が占める割合が多くなるため、フィルムの加工性も向上する。
次に、(ハ)に係る方法について説明する。積層ポリエステルフィルムとした場合において、(ii)を満たす樹脂からなる層を表層となるように積層しそれ以外の層を分子鎖の運動性が高い樹脂からなる層とする場合、フィルムを構成する層をなす樹脂それぞれの分子鎖の運動性が高いため、二軸延伸しやすく、製膜性、溶出抑制性(耐油性)の観点から好ましい。下記(ii)を満たす樹脂からなる層を最表層となるように積層しそれ以外の層を分子鎖の運動性が高い樹脂からなる層とする場合、フィルムを構成する層をなす樹脂それぞれの分子鎖の運動性が高いため、二軸延伸しやすく、製膜性、溶出抑制性(耐油性)の観点から好ましい。
本発明のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルムは、例えば、次のようにして製造される。ポリエステルフィルムを製造するには、例えば、ポリエステルのペレットを、押出機を用いて溶融し、口金から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。このとき、ポリマー中の未溶融物を除去するために、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過してもよい。
さらに、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料および染料などが添加されてもよい。
続いて、上記のようにして得られたシート状物を、長手方向と幅方向の二軸に延伸した後、熱処理する。延伸形式としては、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行うなどの逐次二軸延伸法、同時二軸テンター等を用いて長手方向と幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法、さらに、逐次二軸延伸法と同時二軸延伸法を組み合わせた方法などが包含される。
R32と接する用途に用いるポリエステルフィルムを構成する層ごとに押出機を用い各層の原料ペレット(および、必要に応じて、マスターバッチ)を、180℃の温度で3時間以上減圧乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で、265〜280℃の温度に加熱された押出機に供給し、スリット状のTダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。フィルムの積層方法は2台以上の押出機およびマニホールドまたは合流ブロックを用いて溶融積層する。このとき、押出機内の温度ムラは2℃以内とすることが好ましい、押出機内に温度ムラがあると未延伸フィルムの構造にムラができやすく、延伸時による構造制御が難しくなる。
次に、このようにして得られた未延伸フィルムを、二軸延伸する。数本のロールが配置された縦延伸機を用いて、ロールの周速差を利用して縦方向に延伸し(MD延伸)、続いてステンターにより横延伸を行う(TD延伸)二軸延伸方法について説明する。
まず、未延伸フィルムをMD延伸する。縦延伸機は予熱ロール、延伸ロール、冷却ロールからなり、さらに張力をカットしフィルムの滑りを抑えるニップロールからなる。MD延伸では延伸ロール上に走行するフィルムを延伸ニップロールで一定の圧力(ニップ圧)で押さえつけてフィルムを挟み張力をカットし、延伸ロールの次の冷却ロールが周速差をつけて回転することで延伸される。このとき、延伸ロールの表面粗度は、0.35〜0.45Sが好ましい。0.35〜0.45Sを満たさない延伸ロールでは、ロール上にてフィルムに滑りが発生し、延伸による配向にムラが生じる場合があるため、構造制御が難しくなる場合がある。MD延伸温度は(ガラス転移温度(以下Tgと記載)+10)〜(Tg+50)℃で行い、MD延伸の延伸倍率は1.2〜5.0倍である。延伸後、20〜50℃の温度の冷却ロール群で冷却する。このとき、冷却ロールの表面粗度は、0.35〜0.45Sが好ましい。0.35〜0.45Sを満たさない冷却ロールでは、ロール上にてフィルムの滑りが変化し、フィルムの冷却速度にムラが生じる場合があるため、構造制御が難しくなる。
次に、ステンターを用いて、幅方向の延伸(TD延伸)を行う。ステンターはフィルムの両端をクリップで把持しながら両端のクリップ間を広げてフィルムを横延伸する装置であり、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱処理ゾーン、冷却ゾーンに分かれる。このとき、クリップに把持させる幅の変動は5mm以下が好ましい。把持させる幅が変動すると延伸される距離が変化するため延伸による構造にムラができる場合がある。TD延伸の延伸倍率は2.0〜6.0倍で、延伸温度は(Tg)〜(Tg+50)℃の範囲で行う。TD延伸後、熱固定処理を行う。熱固定処理はフィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら、150〜240℃の温度範囲で熱処理する。熱処理時間は0.5〜10秒の範囲で行う。その後、冷却ゾーンで25℃に冷却される。その後、フィルムエッジを除去し、本発明のポリエステルフィルムを得ることができる。
[特性の評価方法]
(1)破断強度・破断伸度測定
ASTM−D882(1997)に基づいて、サンプルを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/minにて引っ張ったときの破断強度、破断伸度を測定した。なお、フィルムの縦方向、横方向のそれぞれについて、サンプル数はn=5で測定した後、それらの平均値を破断強度、破断伸度とした。
(2)耐熱性評価(140℃0%RH下に2000時間保持したときの伸度保持率)
試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、エスペック(株)製熱処理器GPHH−102にて、温度140℃(湿度0%RH)の条件下にて2000時間処理を行い、その後上記(1)項に従って破断強度を測定した。なお、測定はn=5とし、フィルムの縦方向、横方向のそれぞれ5サンプルについて測定した後、その平均値を破断強度S1とした。また、処理を行う前のフィルムについても上記(1)項に従って破断強度S0を測定し、得られた破断強度S0,S1を用いて、次の式(iv)により強度保持率を算出した。
強度保持率(%)=(S1/S0)×100 ・・・(iv)
(3)耐圧性評価(耐圧試験(放圧−加圧10MPa繰り返し試験)したときの伸度保持率)
フィルム試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出したものを準備し、オートクレーブ装置(耐圧硝子工業(株)製TVS−N2型)に入れる。オートクレーブ装置の内圧を、ポンプでもって真空状態(100Pa以下)とする。オートクレーブ装置全体を140℃に温め、R32を10MPaになるように導入する。10MPaの状態で6時間保持し、その後、放圧し真空状態100Pa以下で6時間保持する。この10MPaの状態で6時間保持した後100Pa以下で6時間保持するサイクルを10回繰り返し、その後上記(1)項に従って破断伸度を測定した。なお、測定はn=5とし、フィルムの縦方向、横方向のそれぞれ5サンプルについて測定した後、その平均値を破断伸度E1とした。また、処理を行う前のフィルムについても上記(1)項に従って破断伸度E0を測定し、得られた破断伸度E0,E1を用いて、次の式(v)により伸度保持率を算出した。
伸度保持率(%)=(E1/E0)×100 ・・・(v)
(4)R32に対する耐性評価(R32雰囲気下、冷凍機オイルに80℃200時間浸漬したときの重量変化率)
フィルム試料を1辺10cmに切り出したものを準備し重量W0を測定する。冷凍機オイルとしてMobil(株)製Mobil EAL Aarctic 68を用いる。該オイルを100g量り取り、フィルム試料を完全に浸漬させ、オートクレーブ装置(耐圧硝子工業(株)製TVS−N2型)に入れる。オートクレーブ装置の内圧を、ポンプでもって真空状態(100Pa以下)とする。そこにR32を5MPaとなるように導入しオートクレーブ装置全体を温め、80℃として200時間保持する。その後、放圧しフィルム試料を取り出し、オイルを拭き取り、重量W1を測定する。得られた重量W0,W1を用いて、次の式(vi)により重量変化率を算出した。
重量変化率(%)=((W1−W0)/W0)×100 ・・・(vi)
(5)溶出抑制性評価(キシレンに140℃24時間含浸せしめたとき、キシレンに溶出する成分の重量率)
フィルム試料を1辺10cmに切り出したものを20枚準備し、重量W2を測定した後、オートクレーブ装置(耐圧硝子工業(株)製TVS−N2型)に入れる。キシレン(和光純薬工業(株)試薬一級;キシレン異性体混合)100mlの重量W3を測定し、オートクレーブ装置には200ml導入する。オートクレーブ装置の内圧を、ポンプでもって真空状態(100Pa以下)とする。そしてオートクレーブ装置全体を温め、140℃として24時間保持する。その後、フィルム試料を取り出し、キシレン100mlを量り取り重量W4を測定し、得られた重量W2,W3,W4を用いて、次の式(vii)により溶出成分量を算出した。
キシレンに溶出する成分の重量率(%)=((W4−W3)/W2)×100・・・(vii)
(6)耐加水分解性評価(140℃80%RHに24時間保持したときの強度保持率)
試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、エスペック(株)製高度加速寿命試験装置EHS−411にて、温度140℃、相対湿度80%RHの条件下にて24時間処理を行い、その後上記(1)項に従って破断強度を測定した。なお、測定はn=5とし、フィルムの縦方向、横方向のそれぞれ5サンプルについて測定した後、その平均値を破断強度S2とした。また、処理を行う前のフィルムについても上記(1)項に従って破断強度S0を測定し、得られた破断伸度S0,S2を用いて、次の式(viii)により伸度保持率を算出した。
強度保持率(%)=(S2/S0)×100 ・・・(viii)
(7)D.フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)スペクトル強度
(株)パーキンエルマー製のFrontier FT−IRを用い、UATR IRユニットを使用して、媒質結晶をダイヤモンド/ZnSeとして、減衰全反射法(ATR法)によってスペクトル強度を測定する。分光器の分解能は1cm−1、スペクトルの積算回数は16回として測定する。スペクトル強度は、各波長での吸光度(arb.unit)とする。
積層フィルムの表層のスペクトルを測定する場合は、フィルムの表層を媒質結晶に密着させ、測定を実施する。媒質結晶とサンプルとの密着は、装置付随の冶具を用いて圧力をかけることによって行う。サンプルのスペクトルを観測しながら圧力を高めていき、圧力によってスペクトル形状が変化しない時点で測定を実行する。
積層フィルムの表層に接する層のスペクトルを測定する場合は、積層ポリエステルフィルムからミクロトームを用いて表層を構成する樹脂の厚さ分削りだした後のフィルムの表面を媒質結晶に密着させ、測定を実施する。ピーク検出には、(株)パーキンエルマー製のIRスペクトル分析ソフトSpectrum(ver.10.2)を用い、ピーク検出機能により測定したIRスペクトルからピークとなる波数を読み取る。
(8)固有粘度
オルトクロロフェノール100mlにポリエステル組成物を溶解させ(溶液濃度C=1.2g/dl)、その溶液の25℃での粘度を、オストワルド粘度計を用いて測定する。また、同様に溶媒の粘度を測定する。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記(c)式により、[η](dl/g)を算出し、得られた値でもって固有粘度(IV)とする。
(c)ηsp/C=[η]+K[η]・C
(ここで、ηsp=(溶液粘度(dl/g)/溶媒粘度(dl/g))−1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)。
(9)末端カルボキシル基量
Mauliceの方法に準じて以下の条件よって測定する(文献M.J. Maulice, F. Huizinga, Anal.Chim.Acta,22 363(1960))。ポリエステル組成物2gをo−クレゾール/クロロホルム(重量比7/3)50mLに温度150℃にて溶解し、0.05NのKOH/メタノール溶液によって滴定し、末端カルボキシル基量を測定し、eq./ポリエステル1tの値で示す。なお、滴定時の指示薬はフェノールレッドを用いて、黄緑色から淡紅色に変化したところを滴定の終点とする。
(10)M/P
(10−1)フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物のリン元素、2価金属元素(ただし、アルカリ金属元素を除く)の含有量
理学電機(株)製蛍光X線分析装置(型番:3270)を用いて測定する。
(10−2)フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物のアルカリ金属元素の含有量
原子吸光分析法(曰立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度計180−80。フレーム:アセチレンー空気)にて定量を行った。
(10−3)M/P
アルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)、2価金属元素の含有量をM2(mol/t)、3価金属元素の含有量をM3、リン元素の含有量をP(mol/t)として、
ポリエステル樹脂組成物における金属含有量M(mol/t)を0.5×(M1)+M2+1.5×(M3)として求め、M/Pを算出した。
(11)積層比
フィルム断面を、フィルム幅方向に平行な方向にミクロトームで切り出す。該断面を走査型電子顕微鏡で5000倍の倍率で観察し、積層各層の厚み比率を求める。求めた積層比率と上記したフィルム厚みから、各層の厚みを算出する。
(12)絶縁性評価
評価フィルムサンプルを絶縁フィルムとして実装したハーメチックモーターを100個作製し、冷媒(R32)および真空乾燥した絶縁油(ポリオールエステル油)を絶縁油と冷媒の添加重量比が3:1になるように充填したルームエアコン用の圧縮機に組み込み、高速高負荷条件で2160時間、3240時間、4320時間の実機試験を行った。絶縁性が悪化するとモーターが停止するため、正常に運転している個数から絶縁性を評価した。
A:4320時間でも100個とも正常に運転
B:4320時間では1個以上のモーターが評価中に停止したが、3240時間では100個とも正常に運転
C:3240時間では1個以上のモーターが評価中に停止したが、2160時間では100個とも正常に運転
D:2160時間で1〜5個のモーターが評価中に停止
E:2160時間で6個以上のモーターが評価中に停止
A〜Dを合格とした。
(13)冷却性能評価
上記(12)でテストしたルームエアコン用の圧縮機を簡易サイクルに接続し2160時間後に冷却性能のテストを実施した。R32冷媒耐性が低いと絶縁油への抽出物が増え冷媒の冷却効率が落ちる。冷却性能テストは35℃に温調した空間(15m)を20℃まで冷却する時間(分)で評価した。
A:6分以内で設定温度に到達
B:6分より長く10分以内で設定温度に到達
C:10分より長く15分以内に設定温度に到達
D:15分より長く20分以内に設定温度に到達
E:20分経過しても設定温度に到達しない。
A〜Dを合格とした。
(14)加工性
(株)小田原エンジニアリング製のモーター加工機を用いて、フィルムを12×80mmのサイズ(フィルムの長手方向を80mmとした)に打ち抜き、さらに折り目つける加工をトータルの加工速度2個/秒の速度で1000個のサンプルを作成し、割れや亀裂の発生数をカウント(割れ発生数)した。また1000個のサンプルのうち、割れや亀裂の発生しなかったものについて折り目の内角が90゜以上であるサンプル数をカウント(変形不良数)した。いずれの値もカウント数が少ないほど加工性は良好であり、割れ発生数と変形不良数を合計し10で割った値を不良率(%)として求めた。
A:不良率が0.5%未満
B:不良率が0.5%以上、1%未満
C:不良率が1%以上、5%未満
D:不良率が5%以上、10%未満
E:不良率が10%以上
A〜Dを合格とした。
ポリエステルフィルムの総合評価として、絶縁性、冷却性能、加工性に不合格がないものを合格とした。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
[PETの製造]テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール57.5質量部、酢酸マグネシウム2水和物0.03質量部、三酸化アンチモン0 .03質量部を150℃、窒素雰囲気下で溶融した。この溶融物を撹拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を終了した。エステル交換反応終了後、リン酸0.005質量部をエチレングリコール0.5質量部に溶解したエチレングリコール溶液(pH5.0)を添加した。このときのポリエステル組成物の固有粘度は0.2未満であった。この後、重合反応を最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.52、末端カルボキシル基量が15当量/トンのポリエチレンテレフタレートを得た。得られたポリエチレンテレフタレートを160℃で6時間乾燥、結晶化させた。その後、220℃、真空度0.3Torr、8時間の固相重合を行い、固有粘度0.80、末端カルボキシル基量が10当量/トン、M/P=1.0のポリエチレンテレフタレート(PET)を得た。得られたポリエチレンテレフタレート組成物のガラス転移温度は82℃、融点は255℃であった。
[PENの製造]2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルおよびエチレングリコールから、酢酸マンガンを触媒として、エステル交換反応を実施した。エステル交換反応終了後、三酸化アンチモンを触媒として常法によりPENを得た。得られたPEN−Aのガラス転移温度は124℃、融点は265℃、固有粘度は0.62、末端カルボキシル基量は25eq./tであった。
(実施例1)
表層(A層)を構成するポリマーαとして、PEN90質量部、ポリマーβとしてPET10質量部をブレンドし、180℃で3時間真空乾燥した後押出機1に投入した。また、表層に接する層(B層)を構成するポリマーγとしてPET100質量部を180℃で2時間真空乾燥した後、押出機2に投入した。押出機内の温度ムラが2℃以内でそれぞれの原料を溶融させ、合流装置で押出機1に投入した樹脂がフィルムの両表層となるように合流させ、キャスティングドラム状に押し出し、3層構造(A/B/A、積層比A/B=0.25)をもつ積層シートを作製した。続いて該シートを加熱した表面粗度0.40のロール群で予熱した後、95℃の温度で長手方向(MD方向)に2.6倍延伸を行った後、25℃の温度の表面粗度0.40のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップに把持させる幅の変動は5mm以下で把持しながらテンター内の110℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に3.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで220℃の温度で10秒間の熱処理を施し、さらに220℃の温度で4%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ250μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各特性を表に示す。耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性に優れたフィルムであることが分かった。
(実施例2〜20)
ポリマーα、ポリマーβ、の混合比率、および積層フィルムの積層構成、積層比、製膜条件を表に記載の通りに変えた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性は表に示すとおり。なお、実施例10のIRスペクトルはA層側を評価した。
(実施例21)
ポリマーαをPENからPCHT樹脂であるポリエステル13319(イーストマン社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性は表に示すとおり。
(実施例22)
ポリマーαをPENからPEI樹脂であるウルテム1010(SABIC社製)に変更し、混合比率を変更したこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性は表に示すとおり。
(実施例23)
B層を構成するポリエチレンテレフタレートの末端カルボキシル基量を表に記載のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性は表に示すとおり。
(比較例1〜4)
ポリマーα、ポリマーβ、の混合比率、および積層フィルムの積層構成、積層比、製膜条件を表に記載の通りに変えた以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性は表に示すとおり、劣るものであった。
表中のCOOH量は、末端カルボキシル基量の意味である。
Figure 0006390336
Figure 0006390336
Figure 0006390336
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本発明のポリエステルフィルムによれば、耐熱性、耐圧性、R32に対する耐性に優れるため、R32と接する用途に用いることが好適なポリエステルフィルム、特にR32が冷媒として用いられているデバイスの電気絶縁材料や、R32が冷媒として用いられているエアコンのコンプレッサー部材に用いるのに好適なポリエステルフィルムを提供することができる。

Claims (8)

  1. 以下(1)〜(3)を満たし、表層を構成する層にPET及び、PEN、PCHT又はPEIを含有する、R32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
    (1)140℃0%RH下に2000時間保持したときの強度保持率が30%以上であること。
    (2)耐圧試験(放圧−加圧10MPa繰り返し試験)したときの伸度保持率が50%以上であること。
    (3)R32雰囲気下、冷凍機オイルに80℃200時間浸漬したときの重量変化率が−0.3〜1質量%であること。
  2. 以下(4)〜(5)を満たす請求項1に記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
    (4)キシレンに140℃24時間含浸せしめたとき、キシレンに溶出する成分の重量がフィルムの質量に対して0〜0.5質量%であること。
    (5)140℃80%RH下に24時間保持したときの強度保持率が30%以上であること。
  3. 以下(6)〜(8)を満たし、表層を構成する層にPET及びPENを含有する請求項1または請求項2に記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
    (6)少なくとも2層からなる積層ポリエステルフィルムであること。
    (7)少なくとも一方の表面が、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1452cm−1に観察されるスペクトル強度r1と、1332cm−1に観察されるスペクトル強度r2と、1602cm−1に観察されるスペクトル強度rから求められるR1、R2が以下の関係を満たすこと。
    (i)0.3≦R1≦0.6
    (ii)1.10≦R2≦1.40
    ここで、R1=r1/r、R2=r2/r
    (8)前記(7)を満たす表面が、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)にて測定したとき、1018cm−1に観察されるスペクトル強度r3と、1602cm−1に観察されるスペクトル強度rから求められるR3が以下の関係を満たすこと。
    (iii)1.20≦R3≦2.00
    ここで、R3=r3/r
  4. 前記(7)、(8)を満たす表面を有する層(該層をA層とする)をフィルムの両側に有する、少なくとも3層からなる積層ポリエステルフィルムであって、表層を有しない層(該層をB層とする)を構成する樹脂の固有粘度が0.68〜1.0dl/g、末端カルボキシル基量が0〜25当量/tである請求項1〜3のいずれかに記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
  5. A層を構成するポリエステル樹脂組成物に含有するアルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)、2価金属元素の含有量をM2(mol/t)、3価金属元素の含有量をM3、リン元素の含有量をP(mol/t)とするとき、下記式(iv)で求められる前記ポリエステル樹脂組成物における金属含有量M(mol/t)が、下記式(v)を満たす請求項4に記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
    (iv)M=0.5×(M1)+M2+1.5×(M3)
    (v)0.5≦M/P≦1.5
  6. A層/B層の厚み比が0.04〜15であることを特徴とする請求項4または5に記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
  7. フィルムの総厚みが20〜350μmである請求項1〜6のいずれかに記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
  8. R32が冷媒として用いられているデバイスの電気絶縁材料に用いる請求項1〜7のいずれかに記載のR32と接する用途に用いるポリエステルフィルム。
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