JP6302915B2 - ブレード部材およびその製造方法、ならびにクリーニングブレード - Google Patents
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Description
ジフェニルメタンジイソシアネートとポリエステル系ポリオールとを主原料に用いたポリウレタンゴム製のブレード本体と、
該ブレード本体における部位であって上記相手部材と摺接させるための摺接部の表面を少なくとも被覆する被膜とを有しており、
上記ポリウレタンゴムは、国際ゴム硬さが65〜85IRHD、tanδピーク温度が8℃以下、tanδピーク値が1.1以下であり、
上記被膜は、炭化水素系重合体を主成分として含有しており、
上記被膜により被覆されてなる被覆部は、0.1mNの荷重による上記被覆部表面のマルテンス硬度をH1、1mNの荷重による上記被覆部表面のマルテンス硬度をH2としたとき、H1/H2比が2以下であることを特徴とするブレード部材にある。
ジフェニルメタンジイソシアネートとポリエステル系ポリオールとを主原料に用い、国際ゴム硬さが65〜85IRHD、tanδピーク温度が8℃以下、tanδピーク値が1.1以下であるポリウレタンゴム製のブレード本体を準備するブレード本体準備工程と、
上記ブレード本体における部位であって上記相手部材と摺接させるための摺接部の表面に、マイクロ波によりプラズマ状態とした炭化水素ガスを用いた化学気相蒸着によって炭化水素系重合体を主成分として含有する被膜を少なくとも成膜する被膜形成工程と、
を有しており、
上記ブレード本体準備工程は、上記ブレード本体を炭化水素系溶剤にて洗浄するとともに、洗浄によって上記ブレード本体に付着した上記炭化水素系溶剤を残したままの状態とする手順を含んでおり、
上記被膜形成工程は、洗浄により上記ブレード本体に付着した上記炭化水素系溶剤をガス化させて生成させた炭化水素ガスを上記マイクロ波によりプラズマ状態とする手順を含んでいることを特徴とするブレード部材の製造方法にある。
また、上記ブレード部材は、ブレード本体における相手部材との摺接部の表面に、炭化水素系重合体を主成分として含有する被膜を有している。そのため、上記ブレード部材は、上記被膜による低摩擦化効果により、摺接部の表面が十分に低摩擦化され、高温領域における初期めくれを効果的に抑制することができる。また、上記被膜は、DLC膜等のカーボン系の膜と比較して、柔軟性が高い。そのため、上記ブレード部材は、低温領域であっても相手部材への追従性が良好であり、トナーのすり抜けが生じ難い。
実施例1のブレード部材について、図1〜図2を用いて説明する。図1〜図2に示すように、本例のブレード部材1は、電子写真方式を採用する画像形成装置内の相手部材4との摺接によって相手部材4の表面に残留する残留トナー5を除去するために用いられる。
実施例2のクリーニングブレードについて、図1〜図2を用いて説明する。図1〜図2に示すように、本例のクリーニングブレード3は、実施例1のブレード部材1を備えている。本例では、具体的には、クリーニングブレード3は、ブレード部材1と保持部材2とを有している。
参考例3のブレード部材の製造方法について説明する。本例のブレード部材の製造方法は、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリエステル系ポリオールとを主原料に用い、国際ゴム硬さが65〜85IRHD、tanδピーク温度が8℃以下、tanδピーク値が1.1以下であるポリウレタンゴム製のブレード本体を準備するブレード本体準備工程と、ブレード本体における部位であって相手部材と摺接させるための摺接部の表面に、マイクロ波によりプラズマ状態とした炭化水素ガスを用いた化学気相蒸着によって炭化水素系重合体を主成分として含有する被膜を成膜する被膜形成工程とを有している。
実施例4のブレード部材の製造方法について説明する。本例のブレード部材の製造方法は、参考例3のブレード部材の製造方法と、次の点で相違している。すなわち、本例において、ブレード本体準備工程は、ブレード本体を炭化水素系溶剤にて洗浄するとともに、洗浄によってブレード本体に付着した炭化水素系溶剤を残したままの状態とする手順を含んでいる。また、被膜形成工程は、炭化水素ガス供給源からガス状態の炭化水素ガスを供給する手順を含んでおらず、代わりに、洗浄によりブレード本体に付着した炭化水素系溶剤をガス化させて生成させた炭化水素ガスをマイクロ波によりプラズマ状態とする手順を含んでいる。その他の工程は、参考例3のブレード部材の製造方法と同様である。
−材料の準備−
ブレード部材の形成に用いるウレタン組成物の材料として、次のものを準備した。
<ポリオール>
・ポリブチレンアジペート(PBA、数平均分子量Mn=500)(合成品)
本例では、1,4ブタンジオールとアジピン酸の縮重合反応により合成した。
・ポリブチレンアジペート(PBA、数平均分子量Mn=1000)(日本ポリウレタン工業社製、「ニッポラン4009」)
・ポリブチレンアジペート(PBA、数平均分子量Mn=2000)(日本ポリウレタン工業社製、「ニッポラン4010」)
・ポリブチレンアジペート(PBA、数平均分子量Mn=3000)(合成品)
本例では、1,4ブタンジオールとアジピン酸の縮重合反応により合成した。
・ポリブチレンアジペート(PBA、数平均分子量Mn=3500)(合成品)
本例では、1,4ブタンジオールとアジピン酸の縮重合反応により合成した。
・ポリエチレンアジペート(PEA、数平均分子量Mn=2000)(日本ポリウレタン工業社製、「ニッポラン4040」)
・エチレンアジペートとブチレンアジペートとの共重合体(EA/BA、数平均分子量Mn=2000)(日本ポリウレタン工業社製、「ニッポラン4042」)
・ポリヘキシレンアジペート(PHA、数平均分子量Mn=2000)(日本ポリウレタン工業社製、「ニッポラン4073」)
・ポリテトラメチレングリコール(PTMG、数平均分子量Mn=2000)(三菱化学社製、「PTMG2000」)
<ポリイソシアネート>
・4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(日本ポリウレタン工業社製、「ミリオネートMT」)
・トリレンジイソシアネート(TDI)(三井化学社製、「コスモネートT100」)
<鎖延長剤>
・1,4−ブタンジオール(1,4BD)(三菱化学社製)
・エチレングリコール(EG)(三菱化学社製)
・1,6−ヘキサンジオール(1,6HD)(関東化学社製)
<架橋剤>
・トリメチロールプロパン(TMP)(三菱ガス化学社製)
<触媒>
・感温性触媒(エアプロダクツ社製「DABCO TMR−3」)
・トリエチレンジアミン(東ソー社製、「TEDA」)
後述の表1〜表3に示すように、80℃にて1時間真空脱泡した所定量の所定のポリオールと、所定量の所定のポリイソシアネートとを混合し、窒素雰囲気下、80℃で3時間反応させ、NCO%が16.5%となるように各主剤を調製した。
また、後述の表1〜表3に示すように、所定量の所定のポリオールと、所定の鎖延長剤と所定の架橋剤との混合物と、触媒としての上記感温性触媒とトリエチレンジアミンとを、窒素雰囲気下、80℃にて1時間混合することにより、水酸基価が150となるよう各硬化剤を調製した。なお、鎖延長剤と架橋剤との混合物は、鎖延長剤、架橋剤が、表1〜表3に示す所定の質量比で混合されている。また、それぞれの触媒の配合量は、所定のポリオールおよび鎖延長剤と架橋剤との混合物の合計質量を100質量%とした場合の、ともに0.005質量%である。
次いで、上記調製した主剤液と各硬化剤液とを真空雰囲気下、所定のNCOインデックスとなる混合比で60℃で1分間混合し、十分に脱泡した。これにより各ウレタン組成物を調製した。
調製した各ウレタン組成物を、保持部材がセットされた成形型のキャビティに注入し、130℃で10分間加熱して硬化させた。硬化後、金型から取り出し、所定の寸法に切断した。これにより、ブレード本体と保持部材とが一体化した各成形体を作製した。
ブレード本体における被膜のない部分から採取したサンプルについて、JIS K 6253に準拠し、ウォーレス(H.W.WALLACE)社製のウォーレス測微硬度計を用いて、25℃、50%RHの測定条件下、国際ゴム硬さ試験法M法にて、国際ゴム硬さを測定した。
ブレード本体における被膜のない部分から採取したサンプル(1.6mm×1.6mm×30mm)を、動的粘弾性測定装置(レオロジ社製のDVEレオスペクトラー)に、測定長さが20mmとなるように固定し、変位振幅±10μm、周波数10Hzの正弦波歪を与え、−20℃〜50℃の範囲におけるtanδ(損失正接)を昇温速度3℃/minで1℃毎に測定した。そして、得られたtanδの値が最大(ピーク)となる温度をtanδピーク温度、そのtanδの最大値をtanδピーク値として求めた。
試料3および試料22のクリーニングブレードにおける被膜、試料3のクリーニングブレードにけるブレード本体(ポリウレタンゴム)について、ラマン分光法による分析を行った。分析には、レーザラマン分光光度計(日本分光社製、「NRS−5100」)を用いた。分析条件は、次の通りとした。
励起波長:532nm、レーザ強度0.6mW、スリット幅:10×1000μm、アパーチャφ:4000μm、対物レンズ:MPLFLN 100 x、露光時間:20秒、積算回数:10回、中心波数:2172.71cm−1
ESCA(X線光電子分光法)により、被膜の厚みを3点(長手方向中央部、中央部と左端部との中間点、中央部と右端部との中間点)測定し、その平均値を被膜の膜厚とした。
図4に示すように、表面に厚み150μmのPETシート6が配置された金属製の板部材7に、ブレード部材1を押し当てた(押し当て角度θ:60°、押し当て力:1N/cm)。板部材7を図中の矢印の方向に2.5mm/秒の速度で移動させて、被膜12の動摩擦係数μkを測定した。なお、被膜12が形成されていない試料21については、ブレード本体11の動摩擦係数を測定した。
各クリーニングブレード試料について、上述した方法により、H1、H2を測定し、H1/H2比を算出した。
各クリーニングブレード試料を、市販のレーザープリンタ(日本ヒューレット・パッカード社製、「Laser Jet P3015dn」)のカートリッジに組み込み、23℃×50%RHの環境下で、A4サイズで12000枚の画像出力(画像:2%濃度の横線画像)を行った。12000枚印刷後に、黒、ハーフトーン、白の画像を印刷し、画像を確認した。12000枚印刷後の画像にスジ・汚れの欠陥がなかった場合を、ブレード部材の耐久性に優れるとして「A」とした。12000枚印刷後の画像にスジがわずかに見られたが許容範囲内であった場合を、ブレード部材の耐久性が良好であるとして「B」とした。12000枚印刷後の画像にスジ・汚れの欠陥があった場合を、ブレード部材の耐久性に劣るとして「C」とした。
各クリーニングブレード試料を、トナーを抜き取った市販の上記レーザープリンタのカートリッジに組み込み、32℃×85%RHの環境下で、30秒間感光ドラムを回転させた。30秒間ブレード部材のめくれが発生しなかった場合を、耐初期めくれ性に優れるとして「A」とした。15秒から30秒間までの間にブレード部材のめくれが発生した場合を、耐初期めくれ性が良好であるとして「B」とした。通常であれば、カートリッジ内のトナーが潤滑機能を果たし、初期めくれが生じ難い方向になるためである。15秒以下でブレード部材のめくれが発生した場合を、耐初期めくれ性に劣るとして「C」とした。
各クリーニングブレード試料を、市販の上記レーザープリンタのカートリッジに組み込み、25℃×50%RHの環境下で、A4サイズで1000枚の画像出力(画像:2%濃度の横線画像)を行った。その後、0℃、5℃の環境下に3時間放置後、黒、ハーフトーン、白の画像を印刷し、画像を確認した。0℃、5℃のいずれの環境下に放置した後であっても、画像にスジ・汚れの欠陥がなかった場合を、ブレード部材の低温環境下におけるトナークリーニング性に優れるとして「A」とした。5℃の環境下に放置した後の試験では、上記欠陥がなかったが、0℃の環境下に放置した後の試験では、上記欠陥があった場合を、ブレード部材の低温環境下におけるトナークリーニング性が良好であるとして「B」とした。5℃、0℃のいずれの環境下に放置した後の試験でも上記欠陥があった場合を、ブレード部材の低温環境下におけるトナークリーニング性に劣るとして「C」とした。
同様に、各クリーニングブレード試料を、市販の上記レーザープリンタのカートリッジに組み込み、25℃×50%RHの環境下で、A4サイズで1000枚の画像出力(画像:2%濃度の横線画像)を行った。その後、35℃、40℃の環境下に3時間放置後、黒、ハーフトーン、白の画像を印刷し、画像を確認した。35℃、40℃のいずれの環境下に放置した後であっても、画像にスジ・汚れの欠陥がなかった場合を、ブレード部材の高温環境下におけるトナークリーニング性に優れるとして「A」とした。35℃の環境下に放置した後の試験では、上記欠陥がなかったが、40℃の環境下に放置した後の試験では、上記欠陥があった場合を、ブレード部材の高温環境下におけるトナークリーニング性が良好であるとして「B」とした。35℃、40℃のいずれの環境下に放置した後の試験でも上記欠陥があった場合を、ブレード部材の高温環境下におけるトナークリーニング性に劣るとして「C」とした。
試料17のブレード部材、クリーニングブレードは、ポリウレタンゴムの主原料にTDIを用いているので、必要な耐摩耗性を確保できていない。また、ポリウレタンゴムの国際ゴム硬さが本願で規定される下限値を下回っており、これによっても耐摩耗性が悪化し、相手部材に対する当接力が弱くなってトナーのすり抜けが生じ、低温環境下および高温環境下におけるトナークリーニング性がいずれも悪化した。
また、上記各試料のブレード部材、クリーニングブレードは、ブレード本体における相手部材との摺接部の表面に、炭化水素系重合体を主成分として含有する被膜を有している。そのため、上記被膜による低摩擦化効果により、摺接部の表面が十分に低摩擦化され、高温領域における初期めくれを効果的に抑制することができる。また、上記被膜は、DLC膜等のカーボン系の膜と比較して、柔軟性が高い。そのため、低温領域であっても相手部材への追従性が良好であり、トナーのすり抜けが生じ難い。
Claims (7)
- 電子写真方式を採用する画像形成装置内の相手部材との摺接によって上記相手部材の表面に残留する残留トナーを除去するために用いられるブレード部材であって、
ジフェニルメタンジイソシアネートとポリエステル系ポリオールとを主原料に用いたポリウレタンゴム製のブレード本体と、
該ブレード本体における部位であって上記相手部材と摺接させるための摺接部の表面を少なくとも被覆する被膜とを有しており、
上記ポリウレタンゴムは、国際ゴム硬さが65〜85IRHD、tanδピーク温度が8℃以下、tanδピーク値が1.1以下であり、
上記被膜は、炭化水素系重合体を主成分として含有しており、
上記被膜により被覆されてなる被覆部は、0.1mNの荷重による上記被覆部表面のマルテンス硬度をH1、1mNの荷重による上記被覆部表面のマルテンス硬度をH2としたとき、H1/H2比が2以下であることを特徴とするブレード部材。 - 波長532nm、レーザ強度0.6mWの励起レーザ光を用いて測定されるラマンスペクトルのラマンシフト2000〜3000cm−1の範囲において、上記被膜のラマン散乱強度の平均値が100〜1000(a.u.)の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のブレード部材。
- 上記被膜の膜厚は、5〜230nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載のブレード部材。
- 上記ポリウレタンゴムは、NCOインデックスの値が110〜160の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のブレード部材。
- 電子写真方式を採用する画像形成装置内の相手部材との摺接によって上記相手部材の表面に残留する残留トナーを除去するために用いられるブレード部材の製造方法であって、
ジフェニルメタンジイソシアネートとポリエステル系ポリオールとを主原料に用い、国際ゴム硬さが65〜85IRHD、tanδピーク温度が8℃以下、tanδピーク値が1.1以下であるポリウレタンゴム製のブレード本体を準備するブレード本体準備工程と、
上記ブレード本体における部位であって上記相手部材と摺接させるための摺接部の表面に、マイクロ波によりプラズマ状態とした炭化水素ガスを用いた化学気相蒸着によって炭化水素系重合体を主成分として含有する被膜を少なくとも成膜する被膜形成工程と、
を有しており、
上記ブレード本体準備工程は、上記ブレード本体を炭化水素系溶剤にて洗浄するとともに、洗浄によって上記ブレード本体に付着した上記炭化水素系溶剤を残したままの状態とする手順を含んでおり、
上記被膜形成工程は、洗浄により上記ブレード本体に付着した上記炭化水素系溶剤をガス化させて生成させた炭化水素ガスを上記マイクロ波によりプラズマ状態とする手順を含んでいることを特徴とするブレード部材の製造方法。 - 上記炭化水素系溶剤の沸点は、200℃以下であることを特徴とする請求項5に記載のブレード部材の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のブレード部材を備えることを特徴とするクリーニングブレード。
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