JP6302779B2 - 高硬度と高強度を有する999白金合金の製造方法 - Google Patents
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Description
ここで3ナインとは、(イ)品位検定独立法人造幣局の基準値99.9%、(ロ)独立行政法人造幣局ホールマーク Pt999、又は(ハ)リング・ペンダント・ピアスなど貴金属製品品位の単位を表記している100分率 999/1000、等をいう。
従来、白金の加工品を製作するには、その加工特性等を改良するために、一部に他の金属を配合して溶解・鋳造することが行われている。
すなわち、3ナインの純度を維持する白金のビッカーズ硬度は、高々85Hv程度しかないため、実用品たる宝飾品や身飾品として加工しても、加工が困難であるばかりでなく、その機能や変形を防止(恒常性を維持)することができなかった。
<請求項1>
99.99重量%以上の純度を有するPtと、微小量のGaを溶解炉に入れ、鋳造して鋳物とした後、前記鋳物を溶解炉に入れ、窒素ガス雰囲気下で再度溶解して成形し、冷却することを特徴とする下記(A)及び(B)の物性を有する白金合金の製造方法。
(A)Ptが、999(スリーナイン)の純度を有すること
(B)幅4.00mm、厚み1.50mmの平打ちリングのビッカーズ硬度が90Hv以上であること
<請求項2>
99.99重量%以上の純度を有するPtと、微小量のGaを溶解炉に入れ、鋳造して鋳物とした後、前記鋳物を溶解炉に入れ、窒素ガス雰囲気下で再度溶解して成形し、冷却することを特徴とする下記(A)及び(B)の物性を有する白金合金の製造方法。
(A)Ptが、999(スリーナイン)の純度を有すること
(B)幅4.00mm、厚み1.50mm、内径15.8mmの平打ちリングの10%変形圧縮強度が14kgf以上であること
<請求項3>
99.99重量%以上の純度を有するPtと、微小量のGaを溶解炉に入れ、鋳造して鋳物とした後、前記鋳物を溶解炉に入れ、窒素ガス雰囲気下で再度溶解して成形し、冷却することを特徴とする下記(A)、(B)及び(C)の物性を有する白金合金の製造方法。
(A)Ptが、999(スリーナイン)の純度を有すること
(B)幅4.00mm、厚み1.50mmの平打ちリングのビッカーズ硬度が90Hv以上であること
(C)幅4.00mm、厚み1.50mm、内径15.8mmの平打ちリングの10%変形圧縮強度が14kgf以上であること
<請求項4>溶解炉内を窒素ガス雰囲気にする手段が、下記の(A)及び(B)の条件を満たす請求項1〜請求項3のいずれかに記載する白金合金の製造方法。
(A)溶解炉内の圧力を700mmHg以下に保持すること。
(B)溶解炉内の温度が、溶解物の融点より10℃低い温度に到達した時点からN 2 ガスを導入すること。
<請求項5>N 2 ガスを溶解炉内の溶解物に直接吹き付ける請求項1〜請求項4のいずれかに記載する白金合金の製造方法。
<請求項6>請求項1〜請求項5に記載する白金合金を使用する身飾品、又は宝飾品の製造方法。
(a)従来、単なる地金以外に、公的にスリーナインが保証されたPtの実用品(身飾品、宝飾品等)は、その加工性、機能性、恒常性(変形の防止等)を付加(維持)することが困難なため、ほとんど存在しない。
(b)Ptは、純品に不純物(Pt以外の元素)を配合して鋳造することによって、その加工性、機能性、恒常性(変形防止等)を付与することができるが、純度999を維持す
るためには、配合する不純物の総量を、最大で0.1重量部以下に抑える必要がある。
したがってPtに配合するGaは、0.1重量%以下に制限される(100/100.1=0.99900…)。
(c)999の純度を維持し、かつ前記特性を付加するために配合できる不純物(Pt以外の他の金属)の量は、非常に微量に制限されるので、鋳造方法を工夫し、厳密に管理する必要がある。
(d)微量元素(不純物)としてGaを配合するのは、Gaは融点が低く、アマルガムを形成して溶解し、Pt(固溶体)内に侵入しやすいからである。また、PtとGaは、原子半径の差が大きく、母体金属に歪を起させ強度が上がるからである。
(e)鋳造を窒素ガス(N2)雰囲気下で行うのは、必ずしも酸素の影響を除外するためばかりではなく、Gaと共にNを合金(固溶体)の内部に取込むためである。
(f)溶解炉内の圧力を700mmHg以下に保持する(請求項9)のは、溶解炉内の酸素(空気)を速やか、かつ完全に除去し、N2ガスに置換してNを合金(固溶体)の内部に取込むためである。
また、溶解炉内をN2ガスに置換する時期は、溶解炉内が溶解物の融点(1776℃)より10℃低い温度に到達した時点、すなわち実温度で約1766℃が、繰り返し試験した結果、適していることが判明したからである。
(1)地金(合金)の配合
(イ)Pt(純度99.99重量%):100g
(ロ)Ga:0.040g
(2)鋳造条件
使用鋳造機:TR式高周波発振器 型式NTR−0502SHI−S 出力5Kw 周波数50KHz カーボン坩堝使用(株)日精販売 メーカー(株)日電高周波
電気炉:(株)安井インターテック
鋳型温度:850℃
鋳造温度:1860℃
鋳型へセットしてから鋳造までの時間:3分30秒
検体の寸法:幅4.00mm、厚み1.50mm、内径15.8mm
検体数:20本
使用合金(前記製作した地金)量:100g
使用鋳造機:TR式高周波発振器 型式NTR−0502SHI−S 出力5Kw 周波数50KHz
カーボン坩堝使用((株)日精販売 メーカー(株)日電高周波)
電気炉:(株)安井インターテック
なお、前記鋳造機は、ガス注入(噴射)孔を、先端にノズルの付いた金属製のパイプを接続して延長し、ノズルから噴射するN 2 ガスが、坩堝内の溶解物に直接吹き付けられるように改造したものを使用した(図2)。
ツリー形状:直径8mm、高さ120mmの円柱に、試験資材を円柱に対して、上方向へ角度25度で上から4本ずつ配置し、20mm下の段から付けて、5段のツリー形状とした。
埋没方法:(株)吉田キャスト社のオール89を使用し、水との混合比36%で、(株)愛工舎製作所の混和器で2分混合し、(株)安井インターテックの脱法器で1分空気を抜き、1時間乾燥の為放置した(室温25℃、湿度60%)。
脱漏方法:(株)カトーの温風ヒーターを使用し、温度設定150℃、1時間タイマーオフで中のワックスを抜いた。
鋳造方法:鋳型温度850℃、鋳造温度1860℃に設定して、溶解炉内の圧力を720ヘクトパスカル(Hp)に下げ、溶解温度が融点(1600℃)を超えてから、元圧5気圧のN2ガスを、前記ノズルから注入(噴霧、500ml/秒)した(溶解炉内の圧力は720mmHgに保持した)。
なお、以上に記載した平打ちリングは、Pt、Gaの地金(Pt合金)を予め作製してから、再度溶解してN2ガスを付加したが、地金作製工程を省略して、Pt、Gaを溶解してN2ガスを付加することもできる。
ちリングを作製した。
(A)Pt9999
(B)Pt9999+N2
(C)Pt9999+Ga(〔0010〕の(1)の配合、N2を使用せず。)
なお、前記(A)〜(D)の平打ちリングは、999の純度を保持していた。
ビッカーズ硬度の測定(微小硬度試験)は、アカシ微小硬度試験器MVK−G3500ATを用いた(図3)。
ビッカーズ硬度は、平打ちリングにダイアモンドの圧痕を付け(微小硬度測定1)、次に微小硬度距離を測定し、硬度表を参照して数値をだした(図3)。
測定はJIS規格の測定方法に則り、硬度測定を5回行い、その最低数値及び最高数値の2つを切り捨て、中旬値である、3つの数値の平均値を算出した。
表1に測定結果を示す。
すなわち、(C)及び(D)の硬度を有する白金合金(Pt999)からは、実用品を製作することができる。
変形圧縮強度の測定(微小硬度試験)は、万能試験機オリエンテック RTC1310を用いた。(図4)。
検体は、ビッカーズ硬度の測定と同一の製造方法で作製したもの((A)〜(D))を用いた。測定結果を表2に示す。
この測定は、ユーザーが本発明に係る999Ptを、身飾品等として身に付けたとき、何キロの圧力に耐えるかを測定しているものである。
(D)区分においては、Gaを配合したPt9999は、N原子がPt及びGaの原子間に間隙(浸透)し易くなり、固溶体を強化するため強度が増している。
すなわち、PtにGaを配合したPt合金は、Pt(溶媒原子:solvent atom)の格子点にGa(溶質原子:solute atom)が置換して、置換型固溶体(subsutitutional solid solution)を形成し、さらにN(溶質原子:solute atom)は原子半径が小さいので、Ptの結晶格子の空間に入り込み、侵入型固溶体(interstitial solid solution)を形成して、固溶体が強化され、強度が増したと理解出来る。
(ロ)次に、エポキシ樹脂を使用して、この検体が円柱形のエポキシ樹脂の上面から、検体の側面を上部にして垂直に埋め込まれた検体埋没円柱Pを作製した(図5A、図5B)。
(ハ)次にPを、その上面と平行(高さ方向に垂直)に切断して、円柱の上面に検体の切断面が露出した圧縮硬度測定用検体Qを作製した(図5C、図5D)。
Qとして、コイン状の検体A、B、C、Dのそれぞれについて、コイン状の検体の上部(側面)から0.5mm、1.5mm、4.0mm(中心部)の位置で切断したもの(4×3)種類を用意した。
(ニ)前記A、B、C、Dから製作した12個のQについて、実施例1と同様にビッカーズ硬度を測定した。
測定結果を表3と図6に示す。
(2)測定条件:X線源:MgKα
管電圧:10kv
管電流:10mA
Step:1.0eV(ワイドレンジ)、0.05eV(ナローレンジ)
Dwell:100ms
Pass: 50eV(ワイドレンジ)、20eV(ナローレンジ)
(3)測定結果を表4に示す。
したがって、資産価値を維持したままの白金を、実生活に利用して楽しむことができ、宝飾(ジュエリー)業界の需要を刺激し、活性化させることができるので十分な産業上の利用可能性がある。
2 坩堝
11 検体
12 アクリル樹脂
Claims (4)
- 99.99重量%以上の純度を有するPtと、微小量のGaを溶解炉に入れ、鋳造して鋳物とした後、前記鋳物を溶解炉に入れ、窒素ガス雰囲気下で再度溶解して成形し、冷却することを特徴とする下記(A)及び(B)の物性を有する白金合金の製造方法。
(A)Ptが、999(スリーナイン)の純度を有すること
(B)幅4.00mm、厚み1.50mmの平打ちリングのビッカーズ硬度が90Hv以上であること - 溶解炉内を窒素ガス雰囲気にする手段が、下記の(A)及び(B)の条件を満たす請求項1に記載する白金合金の製造方法。
(A)溶解炉内の圧力を700mmHg以下に保持すること。
(B)溶解炉内の温度が、溶解物の融点より10℃低い温度に到達した時点からN 2 ガスを導入すること。 - N 2 ガスを溶解炉内の溶解物に直接吹き付ける請求項1、又は請求項2のいずれかに記載する白金合金の製造方法。
- 請求項1〜請求項3のいずれかに記載する白金合金を使用する身飾品、又は宝飾品の製造方法。
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