以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態によるエンジン100の構成について説明する。なお、図1では、エンジン100の主な構成要素に対して符号を付すとともに、図2および図3において、シリンダブロック2および補機ブラケット5まわりの詳細な構造に対して符号を付している。また、以下では、クランクシャフト40の延びる方向をX方向とし、クランクシャフト40に直交する方向をY方向とし、シリンダ2aの延びる方向をZ方向(上下方向)として説明を行う。
本発明の第1実施形態による自動車用のエンジン100は、図1に示すように、シリンダヘッド1、シリンダブロック2およびクランクケース3を含むアルミニウム合金製のエンジン本体10を備えている。また、ガソリン機関からなるエンジン100は、エンジン本体10のX2側の側端部に組み付けられるチェーンカバー20と、シリンダヘッド1の上側(Z1側)に組み付けられるヘッドカバー30とを備えている。なお、エンジン100は、本発明の「内燃機関」の一例である。
シリンダヘッド1の内部には、カムシャフトおよびバルブ機構(図示せず)などが配置されている。シリンダヘッド1の下方(Z2側)に接続されるシリンダブロック2の内部には、ピストン11(図2参照)がZ方向に往復動するシリンダ2a(図2参照)と、隔壁を隔ててシリンダ2aを取り囲むとともにシリンダ2aを冷却するための冷却水(冷却液(不凍液))が流通されるウォータジャケット2dとが形成されている。また、シリンダヘッド1の一方側(Y2側)には、シリンダブロック2に形成された複数のシリンダ2aのそれぞれに吸気を導入する吸気装置(図示せず)が接続されている。
また、シリンダブロック2とシリンダブロック2の下方(Z2側)に接続されるクランクケース3とによって、エンジン本体10の内底部にクランク室3aが形成されている。また、クランク室3aには、ピストン11(図2参照)およびコンロッド12(図2参照)を介してX軸まわりに回転可能に接続されたクランクシャフト40が配置されている。なお、図1においては、クランクシャフト40を概略棒形状に図示しているが、実際には、クランクシャフト40は、各シリンダ2aの直下において回転軸が偏心されたクランクピン41(図2参照)とこのクランクピン41を軸方向に挟み込むバランスウェイト42(図2参照)とがクランクジャーナル43(図2参照)に接続されて構成されている。また、クランク室3aの下部(Z2側)には、エンジンオイル(以下、単にオイルと呼ぶ)を溜めるオイル溜め部3bが設けられている。オイルは、図示しないオイルポンプによりオイル溜め部3bからエンジン本体10内の上部に汲み上げられてカムシャフトなどの動弁系タイミング部材(図示せず)やピストン11の外周面などの摺動部を潤滑にした後、自重により落下してオイル溜め部3bに戻される。
また、図1に示すように、エンジン100は、補機ブラケット5を備えている。アルミニウム合金製の補機ブラケット5は、本体部50aの外縁部に複数の固定孔(貫通孔)5bが形成されたシリンダブロック取付部5aと、エンジン100に対する補機類としての冷却水循環用のウォータポンプ70が固定される固定穴5w(たとえばねじ穴)を含むウォータポンプ取付部5cとを有している。ここで、X−Z平面に配置されるシリンダブロック取付部5aとY−Z平面に配置されるウォータポンプ取付部5cとは、互いに直交している。なお、補機ブラケット5は、本発明の「補機取付部材」の一例である。また、ウォータポンプ70は、本発明の「補機」の一例である。
補機ブラケット5は、シリンダブロック取付部5aをシリンダブロック2に対向させた状態でボルト91が固定孔5bに挿通されシリンダブロック2に締め込まれることにより、シール部材14(図2参照)を介して側壁2cの所定位置に取り付けられている。また、ウォータポンプ70は、取付部71に複数の取付孔(貫通孔)72を有している。そして、ボルト92が取付部71の取付孔72に挿通され補機ブラケット5のウォータポンプ取付部5cに設けられた固定穴5wに締め込まれることにより、ウォータポンプ70はメタルガスケットなどのシール部材15を介してウォータポンプ取付部5cに取り付けられている。ここで、図3に示すように、ウォータポンプ70は、ハウジング73の内部に羽根車(インペラ)74(破線で示す)が回転可能に構成されている。そして、ハウジング73の外部に設けられたプーリ75が所定方向に回転されることによって羽根車74が回転されてポンプ機能が発揮される。また、図2に示すように、補機ブラケット5は、ウォータポンプ70に加えて図示しないオルタネータ(発電装置)および車内空調用のコンプレッサ(圧縮機)などの他の補機類をエンジン本体10のY2側の側方部に固定するためにも使用される。
シリンダブロック2の側壁2cは、図2に示すように、Y2側の表面に凹状に窪む凹部2dを有している。また、補機ブラケット5のシリンダブロック取付部5aは、側壁2cに対向するY1側の表面に凹状に窪む凹部5dを有している。そして、補機ブラケット5は、シリンダブロック取付部5aの凹部5dを側壁2cの凹部2dに向き合わせて各々の外縁部同士を対向させた状態でシリンダブロック2に取り付けられるように構成されている。なお、シリンダブロック2と補機ブラケット5との合わせ面には、メタルガスケットなどのシール部材14が配置されている。
ここで、第1実施形態では、図2に示すように、シリンダブロック2に補機ブラケット5が取り付けられた状態で、側壁2cの凹部2dとシリンダブロック取付部5aの凹部5dとの間に、所定の形状を有する空間部4が形成されるように構成されている。そして、シリンダブロック2と補機ブラケット5との間の空間部4に、別部品からなるセパレータ部6が嵌め込まれている。また、セパレータ部6は、後述するブローバイガスを気液分離する機能を有している。なお、空間部4は、本発明の「空間」の一例である。
樹脂製のセパレータ部6は、下部側(Z2側)に設けられた入口部6aと、上部側(Z1側)に設けられた出口部6bと、入口部6aと出口部6bとの間に形成された本体部6cとを有している。また、中空構造を有する本体部6cは、凹凸形状を有して入り組んだ内壁面6dを有している。また、セパレータ部6は、製造プロセス上、本体部6cが上下または左右に2分割されたセパレータ部品同士を振動溶着などによって一体化して1つのセパレータ部6として製造されている。ここで、シリンダブロック2に補機ブラケット5が取り付けられた状態で、空間部4には、クランクケース3の上部の側壁部3cとシリンダブロック2の側壁2cの下部とをL字状に貫通する貫通部4aと、補機ブラケット5のシリンダブロック取付部5aを凹部5d側からY2方向に沿って外部に貫通する貫通部4bとが設けられている。そして、セパレータ部6は、貫通部4aのZ方向に延びる部分に入口部6aが挿通されるとともに、Y方向に延びる貫通部4bに出口部6bが挿通されるようにして空間部4に収容されている。なお、入口部6aは、本発明の「導入口」の一例である。
この際、第1実施形態では、セパレータ部6が空間部4に配置された状態で、本体部6cの外表面6fと空間部4の内壁面4dとの間には、空気層からなる隙間Sが設けられている。この場合、隙間Sは、少なくとも補機ブラケット5の凹部5dの内壁面(空間部4の内壁面4d)に対して本体部6cの外表面6fが内側に離間するように設けられている。また、隙間Sは、本体部6cの上側においてシリンダブロック2の凹部5d側から凹部2dに向かって延びている。したがって、シリンダブロック2の下部の凹部2dの内壁面(空間部4の内壁面4d)に対向する本体部6cの外表面6fは、凹部2dから内側(下方向)に隙間Sを隔てて離間している。また、隙間Sは、本体部6cの下側においても補機ブラケット5の凹部5d側からシリンダブロック2の凹部2dに向かって延びている。したがって、シリンダブロック2の上部の凹部2dの内壁面(空間部4の内壁面4d)に対向する本体部6cの外表面6fは、凹部2dから内側(上方向)に隙間Sを隔てて離間している。
また、図3に示すように、本体部6cは、空間部4のX2側の端部を形成する内壁面4d(補機ブラケット5の凹部5dのX2側の内壁面)および空間部4のX1側の端部を形成する内壁面4d(補機ブラケット5の凹部5dのX1側の内壁面)に対しても、それぞれ、外表面6fが隙間Sを隔てて内側に離間するように配置されている。したがって、図2および図3に示すように、空間部4においては、立体的な形状を有するセパレータ部6は、貫通部4a、貫通部4bおよび後述する流路部8a(冷却水通路8)と接触する部分を除いて、空気層からなる隙間Sによって外表面6fが包み込まれるように構成されている。また、これにより、補機ブラケット5やシリンダブロック2の温度が直接的にセパレータ部6の本体部6cに伝わるのが抑えられ、セパレータ部6の保温性が維持されている。
また、第1実施形態では、図2に示すように、セパレータ部6の入口部6a近傍の部分とシリンダブロック2との間の隙間Sをシール(封止)するためのシール部材7が設けられている。シール部材7は、弾性を有する材料で、かつ、耐水性と耐油性との両方を兼ね備えたゴム系(樹脂製)の材料を用いて構成されている。したがって、シール部材7により、クランクケース3側のブローバイガスやオイルミストなど水分および油分を含む雰囲気が、貫通部4aから空間部4と本体部6cの外表面6fとの間の隙間Sに侵入するのが防止されている。その一方で、セパレータ部6の出口部6b近傍の部分と補機ブラケット5の貫通部4bとの間にはシール部材は設けられていない。なお、セパレータ部6の出口部6bとPCVバルブ81とを接続する管路(ホース部材)とは、シール部材9を介して接続されており、出口部6bを流通するブローバイガスが外部に漏れ出るのが防止されている。
エンジン100では、シリンダ(シリンダライナ)2aの内壁面とピストンリング13との隙間からシリンダ2a下部のクランクケース3(クランク室3a)に漏れ出したブローバイガス(未燃焼の混合気)が、シリンダ2aに空気を吸入する吸気系80に再び導入されるように構成されている。より具体的には、エンジン本体10には、クランクケース3と吸気系80に接続されるPCV(Positive Crankcase Ventilation)バルブ81とを連通するようなブローバイガスの流路が設けられており、セパレータ部6は、このブローバイガスの流路の一部を構成している。この場合、入口部6aを介してクランクケース3側とセパレータ部6とが連通され、出口部6bを介して後述するPCVバルブ81側とセパレータ部6とが連通されている。
また、本体部6cの内壁面6dは、複数(4つ)の板状の突出壁部6eを有している。各々の突出壁部6eは、水平面(X−Y面)に沿って延びるとともに、Y1側の内壁面6dとY2側の内壁面6dとの各々から水平方向(Y1方向およびY2方向)に沿って互いに交互に突出している。また、各々の突出壁部6eの先端部は、本体部6cのY方向の中央部において、Z方向に所定間隔を隔てて互いに重なり合っている。これにより、セパレータ部6は、内部にラビリンス(迷路)構造が形成されている。したがって、クランクケース3(クランク室3a)に漏れ出したブローバイガスは、ラビリンス構造を有するセパレータ部6を入口部6aに対応する下部側から出口部6bに対応する上部側へと流通してPCVバルブ81に導かれた後、吸気系80に導入されるように構成されている。
なお、炭化水素を含むブローバイガスには、クランク室3aにおいて発生したオイルミストが混合される。したがって、図2に示すように、ブローバイガスがセパレータ部6を通過する際に、入口部6aから出口部6bまでの流路長が複数の突出壁部6eを有する内壁面6dにより往復蛇行状に引き延ばされたセパレータ部6の内部空間に滞留するブローバイガスから、微粒子状のオイルミストが効率よく捕集される。また、凹凸形状を有して入り組んだ本体部6cの内壁面6d(突出壁部6e)に対する慣性衝突を利用してブローバイガスからオイルが気液分離されるように構成されている。また、気液分離されて液滴となったオイルは、セパレータ部6の下部に形成された入口部6a(貫通部4a)からクランクケース3(オイル溜め部3b(図1参照))に自然落下される。
したがって、クランクケース3(クランク室3a)に漏れ出たブローバイガスの流れとしては、下部の入口部6aからセパレータ部6に矢印Pで示されるように流入して本体部6c内での滞留中に内壁面6d(突出壁部6e)に対する衝突を繰り返した後、上部の出口部6bからPCVバルブ81側に放出される。また、オイルが気液分離されたブローバイガスはPCVバルブ81に導かれて吸気系80に還流される。
また、補機ブラケット5がシリンダブロック2に組み付けられた状態において、エンジン本体10には、所定のレイアウトを有する冷却水通路8が形成されるように構成されている。
冷却水通路8は、図2および図3に示すように、補機ブラケット5内をX2方向に延びる流路部8aと、補機ブラケット5内を斜め上方向(概略矢印Z1方向)に延びる流路部8b(図3参照)と、流路部8bに接続され補機ブラケット5内をX1方向に延びる流路部8cと、流路部8cに接続され補機ブラケット5およびシリンダブロック2内をY方向に延びる流路部8dとを含んでいる。この場合、冷却水通路8は、冷却水(冷却液(不凍液))が流れる向きに沿って、流路部8a、ウォータポンプ70(図3参照)、流路部8b、流路部8cおよび流路部8dの順に接続されている。また、図2に示すように、流路部8dは、シリンダブロック2の内部でウォータジャケット2dの下端部近傍に接続されており、流路部8dもウォータジャケット2dの一部を兼ねている。なお、流路部8aは、本発明の「冷却水通路」の一例である。
ここで、冷却水(冷却液)の流れについて説明する。エンジン100(図1参照)が定常的に駆動されている際には、図示しないラジエータにより冷やされた冷却水(冷却液)が、ラジエータから延びる管路(ホース部材)に接続された補機ブラケット5内の流路部8aを矢印X2方向に流れてウォータポンプ70に吸い込まれる。ウォータポンプ70により吐出された冷却水は、補機ブラケット5内の流路部8b(図1参照)を斜め上方向(概略矢印Z1方向)に流れた後、流路部8cを矢印X1方向に流れてさらに流路部8dを矢印Y1方向に流れてウォータジャケット2dへと流入される。そして、シリンダヘッド1およびシリンダブロック2の熱を受け取った冷却水はシリンダヘッド1から放出されるとともにラジエータに戻されて冷却される。このように、流路部8a〜8dからなる冷却水通路8は、エンジン100が定常的に駆動されている際にはシリンダヘッド1およびシリンダブロック2を冷却するための流路の一部を担う。
また、補機ブラケット5内の冷却水通路8は、エンジン100の始動直後においては、エンジン100により暖められた冷却水の熱を利用してエンジン本体10に内包されるセパレータ部6の内部を暖める役割を有している。この場合、図示しない流路切替弁が駆動されることによって、シリンダヘッド1およびシリンダブロック2から放出された冷却水がラジエータを経由することなく(冷却されることなく)補機ブラケット5内の流路部8aに還流されるように構成されている。これにより、エンジン100の始動直後おいては、エンジン100により暖められた冷却水の熱を効率的に利用してセパレータ部6の内部が暖められる。また、これによって、始動直後に発生してセパレータ部6を通過するブローバイガスが暖められる。したがって、ブローバイガスに含まれる水蒸気成分が本体部6cの冷えた内壁面6dの部分で結露するのが抑制されるように構成されている。
ここで、第1実施形態では、セパレータ部6を暖めるための流路部8aは、セパレータ部6の外側に近接するようにして本体部6cの外表面6fに沿って配置されている。この場合、補機ブラケット5における流路部8aの管壁部と、本体部6cの外表面6fの一部とが互いに接触している。また、流路部8aは、本体部6cのうちのセパレータ部6の入口部6aが設けられる下部(Z2側)に近い側に配置されている。すなわち、エンジン100により暖められた直後の相対的に高温の冷却水が流通される流路部8aが、セパレータ部6の下部(Z2側)に配置されている。これにより、入口部6aから流入した直後のブローバイガスに含まれる水蒸気が、結露しにくくなるように構成されている。
また、図1に示すように、チェーンカバー20の内部においては、クランクシャフト40に取り付けられたクランクシャフトタイミングスプロケット(図示せず)と、シリンダヘッド1の内部に組み込まれたカムシャフト駆動用のカムシャフトタイミングスプロケット(図示せず)とが、タイミングチェーン(図示せず)によって繋がれている。また、チェーンカバー20の外部においては、クランクシャフト40の前端部40aにクランクプーリ(図示せず)が回転可能に取り付けられている。そして、ウォータポンプ70や車内空調用のコンプレッサなどの補機類は、クランクプーリに掛けられたベルトにより駆動される。また、クランクシャフト40の後端部40bは、変速機などからなる動力伝達部(図示せず)に接続されている。第1実施形態におけるエンジン100における補機ブラケット5まわりの構造は、上記のように構成されている。
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、第1実施形態では、上記のように、シリンダブロック2と補機ブラケット5との間の空間部4に配置されるとともに、シリンダブロック2および補機ブラケット5とは別体で設けられたセパレータ部6を備えることによって、別体(別部品)として構成されたセパレータ部6を、補機ブラケット5とセパレータ部6との間の隙間Sおよびシリンダブロック2とセパレータ部6との間の隙間Sを共に断熱層として利用して、直接外気に晒されるシリンダブロック2の側壁2cおよび補機ブラケット5から熱的に隔離することができる。すなわち、セパレータ部6は、断熱層としての隙間Sを隔てて断熱されることによって外気温度の影響を直接的に受けにくくなるので、エンジン100の停止後であって外気温度が低い環境におかれていた場合や、これに加えてエンジン100の始動時(始動直後)などウォータジャケット2dを流通する冷却水温度が十分に昇温されない場合においても、セパレータ部6の温度が低下するのが抑制される。これにより、セパレータ部6の保温性が維持されるので、セパレータ部6を流通するブローバイガス中の水蒸気の結露防止を効果的に図ることができる。その結果、セパレータ部6により回収されるオイルに結露水が混入するのを回避することができる。
また、第1実施形態では、シリンダブロック2および補機ブラケット5とは別体(別部品)としてセパレータ部6を設けることにより、ブローバイガスを気液分離するオイル分離方式にとらわれることなく、ラビリンス(迷路)式のセパレータ部6をエンジン本体10に容易に組み込むことができる。なお、エンジン100の設計仕様に応じてセパレータ部6に要求されるオイル捕集能力(セパレータ部6の設計仕様上の特長点)は異なるが、ラビリンス式からなるセパレータ部6の以外であっても、たとえば慣性衝突式や、後述するサイクロン式およびフィルタ式などいずれのオイル分離方式を有するセパレータ部品を適用しても、セパレータ部品の保温によるブローバイガス中の水蒸気の結露防止が効果的に図られて、気液分離されたオイルに結露水が混入するのを回避することができる。
また、第1実施形態では、シリンダブロック2と補機ブラケット5との間の空間部4に、少なくとも補機ブラケット5に対して隙間Sを有した状態でセパレータ部6を配置する。これにより、発熱源などがなく外気温度の影響を直接的に受けやすい補機ブラケット5に対して隙間Sを隔てて空間部4にセパレータ部6が配置されるので、外気によって補機ブラケット5が冷やされた状態であっても、この隙間Sが断熱層の役割を果たして補機ブラケット5の温度が空間部4のセパレータ部6に直接的に熱伝達されにくくすることができる。これにより、外気温度に対するセパレータ部6の保温性を効果的に維持することができるので、外気温度に起因してセパレータ部6を流通するブローバイガス中の水蒸気の結露防止を確実に図ることができる。
また、第1実施形態では、シリンダブロック2と補機ブラケット5との間の空間部4に、補機ブラケット5およびシリンダブロック2の両方に対して隙間Sを有した状態でセパレータ部6を配置する。これにより、外気温度の影響を受けやすい補機ブラケット5のみならず、シリンダブロック2に対しても隙間Sを隔ててセパレータ部6が配置されるので、エンジン100の始動時などウォータジャケット2dを流通する冷却水温度が所定温度まで昇温されていない低温状態においても、補機ブラケット5およびシリンダブロック2の両方に対して設けられた隙間Sにより断熱効果(断熱性能)が得られて空間部4のセパレータ部6を確実に保温維持することができる。したがって、特に、エンジン100の冷間始動直後にセパレータ部6を流通するブローバイガス中の水蒸気が結露するのを確実に防止することができる。
また、第1実施形態では、セパレータ部6と少なくとも補機ブラケット5との間の隙間Sに、空気層からなる断熱層を設ける。これにより、セパレータ部6と補機ブラケット5との間の隙間Sに設けられた空気層からなる断熱層によって、補機ブラケット5が冷やされた状態であっても補機ブラケット5に対する断熱効果(断熱性能)が得られて空間部4のセパレータ部6を確実に保温することができる。また、断熱層に空気層を用いることによって、断熱効果(断熱性能)を発揮する特殊な材料を用いて断熱層を構成することなく、単なる空気層を断熱層として用いることよって、セパレータ部6と少なくとも補機ブラケット5との間の隙間Sに容易に断熱性能を発揮させることができる。
また、第1実施形態では、内壁面6dから突出する複数の突出壁部6eによって内部にラビリンス(迷路)構造を有するラビリンス式のセパレータ部6を用いる。これにより、セパレータ部6の内部空間がラビリンス(迷路)構造となるので、内壁面6d(複数の突出壁部6eを含む内壁面6d)により形成され入口部6aから出口部6bまでの流路長が往復蛇行状に延ばされたセパレータ部6の内部空間にブローバイガスを滞留させてブローバイガスに含まれる微粒子状のオイルミストを効率よく捕集することができる。また、ブローバイガスが流通する過程で入り組んだ内壁面6d(複数の突出壁部6eを含む内壁面6d)にオイルミストを繰り返し衝突させることによってもオイルミストを効率よく捕集することができる。また、ラビリンス(迷路)式のセパレータ部6を適用してもブローバイガスが内壁面6d(複数の突出壁部6eを含む内壁面6d)によって冷やされることがないので、セパレータ部6を流通するブローバイガス中の水蒸気の結露防止を効果的に図ることができる。
また、第1実施形態では、セパレータ部6は、シリンダブロック2からブローバイガスを導入するための入口部6aを含み、セパレータ部6の入口部6a近傍の部分とシリンダブロック2との間の隙間Sをシールするためのシール部材7を設ける。これにより、セパレータ部6に導入されるブローバイガスの一部が入口部6a近傍の部分からセパレータ部6の外表面6fを外側から包み込むシリンダブロック2および補機ブラケット5と外表面6fとの間の隙間S(空間部4における空気層)に漏れ出るのを防止することができる。したがって、ブローバイガス中のオイルが、この隙間Sに無用に溜まり込むのを防止することができる。
また、第1実施形態では、補機ブラケット5は、冷却水通路8を含み、補機ブラケット5の冷却水通路8の近傍にセパレータ部6を配置する。これにより、エンジン100の始動後においては、エンジン100により十分に暖められた冷却水(高温水)の熱をセパレータ部6の内部空間にまで伝達してセパレータ部6を暖めることができる。したがって、ひとたび冷却水の熱によりセパレータ部6が暖められた後も、シリンダブロック2と補機ブラケット5との間の空間部4に配置されたセパレータ部6に保温性が維持されるので、補機ブラケット5が低温の外気に晒されていてもセパレータ部6を流通するブローバイガスを所定温度に維持することができる。
また、第1実施形態では、セパレータ部6を樹脂製として構成する。これにより、補機ブラケット5とセパレータ部6との間の隙間Sおよびシリンダブロック2とセパレータ部6との間の隙間Sを共に断熱層として利用するのみならず、セパレータ部6自身が有する樹脂材料の断熱効果(断熱性能)も利用して、セパレータ部6に外気温度の影響をより受けにくくさせることができる。また、製造プロセス上、たとえば2分割されたセパレータ部品同士を振動溶着などによって一体化して1つのセパレータ部6として容易に製造することができる。この際、樹脂成形によって個々のセパレータ部品の内部構造(複数の突出壁部6eを含む内壁面6d)を所望の形状(ラビリンス構造)に形成することができるので、保温性が確保されかつ高性能なオイル分離機能を有するセパレータ部6をエンジン100に組み込むことができる。また、セパレータ部6が樹脂製となる分、軽量化も図ることができる。
(第2実施形態)
次に、図2および図4を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、セパレータ部206の外表面206fがシリンダブロック202の内部(クランク室3a)に露出するようにセパレータ部206を設置した例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
本発明の第2実施形態によるエンジン200においては、図4に示すように、シリンダブロック202の側壁202cに対して補機ブラケット5がシール部材14を介して取り付けられている。また、補機ブラケット5が取り付けられるシリンダブロック202の側壁202cの内壁部202dには、側壁202cをクランク室3aにまで貫通する開口部202eが形成されている。なお、内壁部202dはシリンダブロック202の外側の表面を構成しているが、ここでは、後述する空間部204の内壁面204dを構成する意味で、「内壁部」と称している。また、内壁部202dの開口部202eは、比較的大きな開口面積を有している。そして、補機ブラケット5は、シリンダブロック取付部5aの凹部5dを側壁202cの開口部202e(内壁部202d)に向き合わせて各々の外縁部同士を当接させた状態でシリンダブロック202に取り付けられている。なお、エンジン200は、本発明の「内燃機関」の一例である。
ここで、第2実施形態では、シリンダブロック202に補機ブラケット5が取り付けられた状態で、側壁202cの内壁部202d(開口部202e)とシリンダブロック取付部5aの凹部5dとの間に、所定の形状を有する空間部204が形成されるように構成されている。また、空間部204は、開口部202eを介してシリンダブロック202の内部となるクランク室3aに連通している。そして、この空間部204に、別部品からなる樹脂製のセパレータ部206が配置されている。なお、空間部204は、本発明の「空間」の一例である。
セパレータ部206は、下部側に設けられた入口部206aと、上部側に設けられた出口部206bと、本体部206cとを有している。また、本体部206cは、内部にラビリンス構造を有する内壁面206dを有している。また、セパレータ部206は、開口部202eを介してクランク室3aに対向するように入口部206aが向けられて設置されるとともに、貫通孔204bに出口部206bが挿通されるようにして空間部204に嵌め込まれている。
なお、セパレータ部206の出口部206bは、シール部材209を介して補機ブラケット5の貫通孔204bに嵌め込まれている。また、シール部材209は、弾性を有する材料で、かつ、耐油性を備えたゴム系(樹脂製)の材料を用いて構成されている。したがって、シール部材209により、クランクケース3側の雰囲気(ブローバイガスやオイルミストなど)が貫通孔204bから補機ブラケット5の外部に漏れ出るのが防止されている。
これにより、第2実施形態においても、セパレータ部206が空間部204に配置された状態で、本体部206cの外表面206fと空間部204の内壁面204dとの間に、空気層からなる隙間Tが設けられている。この場合、隙間Tは、補機ブラケット5の凹部5dの内壁面に対して本体部206cの外表面206fが内側に離間するように設けられている。また、隙間Tは、本体部206cの上下方向(Z方向)および前後方向(X方向)の各々の外表面206fに沿って補機ブラケット5の凹部5d側からシリンダブロック202の内壁部202dに沿って開口部202eに向かって延びている。したがって、空間部204においては、立体的な形状を有するセパレータ部206は、貫通部204a、貫通部204bおよび流路部8a(冷却水通路8)と接触する部分を除いて、空気層からなる隙間Tによって外表面206fが包み込まれるように構成されている。
また、第2実施形態では、隙間Tを構成する空気層からなる断熱層は、シリンダブロック202の開口部202eを介してクランク室3aと連通している。これにより、エンジン200が始動された後において、シリンダ2a下部からクランク室3aに漏れ出した高温のブローバイガスがクランク室3aのみならず開口部202eを介して隙間Tにまで充満するように構成されている。また、セパレータ部206は、隙間Tに充満する高温のブローバイガスによって包み込まれる。
また、セパレータ部206が高温のブローバイガスによって包み込まれた状態で、ブローバイガスは、入口部206aからセパレータ部206に矢印Pで示されるように流入して本体部206c内での滞留中に内壁面206d(突出壁部206e)に対する衝突を繰り返した後、上部の出口部206bからPCVバルブ81側に放出される。
なお、本体部206cの内壁面206dは、複数(4つ)の板状の突出壁部206eを有している。この場合、各々の突出壁部206eは、垂直面(X−Z面)に沿って延びるとともに、Z1側の内壁面206d(上面)とZ2側の内壁面206d(底面)との各々から上下方向(Z1方向およびZ2方向)に沿って互いに交互に突出している。また、各々の突出壁部206eの先端部は、本体部206cのZ方向の中央部において、Y方向に所定間隔を隔てて互いに重なり合っている。これにより、セパレータ部206は、内部にラビリンス(迷路)構造が形成されている。
また、第2実施形態では、セパレータ部206を暖めるための流路部8aは、セパレータ部206の外側に近接するようにして本体部206cの外表面206fに沿って配置されている。この場合、補機ブラケット5における流路部8aの管壁部と、本体部206cの外表面206fの一部とが互いに接触している。また、流路部8aは、本体部206cのうちのセパレータ部206の入口部206aが設けられる下部(Z2側)に近い側に配置されている。なお、第2実施形態によるエンジン200のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、第2実施形態では、上記のように、補機ブラケット5およびシリンダブロック202の両方に対して、空気層を含む断熱層を構成する隙間Tを有した状態でセパレータ部206を配置する。そして、空気層を含む断熱層がシリンダブロック202の内部となるクランク室3aと連通するようにシリンダブロック202の内壁部202dに開口部202eを設ける。これにより、シリンダブロック202の内部となるクランク室3aと連通する断熱層(空気層)によって、シリンダブロック202と補機ブラケット5との間の空間部204に配置されるセパレータ部206を包み込むことができる。この際、クランク室3a内部の気体は、ブローバイガスやオイル溜め部3bに溜められたエンジンオイルなどにより温められているので、ブローバイガスなどの温度の高い気体(ガス)が発生するので、セパレータ部206はこのような高温の気体(ガス)によって包み込まれる。したがって、エンジン200の始動後において、セパレータ部206の保温性を容易に維持することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
次に、図2および図5を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、上記第1実施形態で用いたラビリンス構造を有するセパレータ部6(図2参照)とは異なり、オイル分離方式にサイクロン式を適用したセパレータ部306を用いる例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
本発明の第3実施形態によるエンジン300においては、図5に示すように、シリンダブロック302の側壁302cに対して補機ブラケット5が取り付けられている。また、側壁302cの凹部302dとシリンダブロック取付部5aの凹部5dとの間に、所定の形状を有する空間部304が形成されている。そして、シリンダブロック302と補機ブラケット5との間の空間部304に、別部品からなるセパレータ部306が配置されている。なお、空間部304は、本発明の「空間」の一例である。また、エンジン300は、本発明の「内燃機関」の一例である。
ここで、第3実施形態では、セパレータ部306にサイクロン式を用いたものを適用している。セパレータ部306は、側壁に設けられた入口部306aと、上部側(Z1側)に設けられた出口部306bと、入口部306aと出口部306bとの間に形成されたサイクロン室を構成する本体部306cと、分離されたオイルが流下するオイル通路部306dとを有している。サイクロン式は、ブローバイガスを円筒状のサイクロン室を構成する本体部306cの内部で旋回させ、遠心分離作用によってブローバイガスに含まれるオイルミストを分離する方式である。また、サイクロン式はオイルミストの捕集の方法がラビリンス式や慣性衝突式などと異なるため、サイクロン式のセパレータ部306の構造は、オイルミストの捕集方法の差異に伴って、ラビリンス式(慣性衝突式)のセパレータ部6(図2参照)の構造とは大きく異なる。なお、入口部306aは、本発明の「導入口」の一例である。
また、シリンダブロック302に補機ブラケット5が取り付けられた状態で、空間部304には、凹部302dを水平方向に貫通する貫通部304aと、補機ブラケット5のシリンダブロック取付部5aを凹部5d側からY2方向に沿って外部に貫通する貫通部304bと、貫通部304aの下方(Z2側)において凹部302dを水平方向に貫通する別な貫通部304cとが設けられている。そして、セパレータ部306は、貫通部304aに入口部306aが挿通されるとともに、貫通部304bに出口部306bが挿通され、さらに、貫通部304cにオイル通路部306dが挿通されるようにして空間部304に収容されている。したがって、空間部304においては、立体的な形状を有するセパレータ部306は、貫通部304a、貫通部304b、貫通部304cおよび流路部8a(冷却水通路8)と接触する部分を除いて、空気層からなる隙間Uによって外表面306fが包み込まれるように構成されている。また、これにより、補機ブラケット5やシリンダブロック302の温度が直接的にセパレータ部306の本体部306cに伝わるのが抑えられている。
また、第3実施形態では、入口部306aおよびオイル通路部306dは、それぞれ、シール部材351および352を介して貫通部304aおよび貫通部304cに取り付けられている。この場合、シール部材351によってセパレータ部306の入口部306a近傍の部分とシリンダブロック302(凹部302d)との間の隙間Uがシール(封止)されるとともに、シール部材352によってセパレータ部306のオイル通路部306d近傍の部分とシリンダブロック302(凹部302d)との間の隙間Uがシールされている。なお、第3実施形態によるエンジン300のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、第3実施形態では、上記のように、シリンダブロック302および補機ブラケット5とは別体(別部品)としてサイクロン(遠心分離)式のセパレータ部306を設けることにより、ブローバイガスを気液分離するオイル分離方式にとらわれることなく、エンジン300の設計仕様に応じたオイル捕集能力を有するサイクロン(遠心分離)式のセパレータ部306を容易に組み込むことができる。
また、第3実施形態では、セパレータ部306は、シリンダブロック302からブローバイガスを導入するための入口部306aと、本体部306cにより分離されたオイルが流通するオイル通路部306dとを含む。そして、入口部306a近傍の部分とシリンダブロック302との間の隙間Uをシールするためのシール部材351を設ける。また、オイル通路部306d近傍の部分とシリンダブロック302との間の隙間Uをシールするためのシール部材352を設ける。これにより、セパレータ部306に導入されるブローバイガスの一部が入口部306a近傍の部分およびオイル通路部306d近傍の部分からセパレータ部306の外表面306fを外側から包み込むシリンダブロック302および補機ブラケット5と外表面306fの間の隙間U(空間部304における空気層)に漏れ出るのを防止することができる。したがって、ブローバイガス中のオイルが、この隙間Uに無用に溜まり込むのを防止することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第4実施形態)
次に、図1、図2および図6を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、上記第1実施形態で用いたラビリンス構造を有するセパレータ部6(図2参照)とは異なり、オイル分離方式にフィルタ式を適用したセパレータ部406を用いる例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
本発明の第4実施形態によるエンジン400においては、図6に示すように、シリンダブロック2の側壁2cに対して補機ブラケット5が取り付けられている。また、側壁2cの凹部2dとシリンダブロック取付部5aの凹部5dとの間に、所定の形状を有する空間部4が形成されている。そして、シリンダブロック2と補機ブラケット5との間の空間部4に、別部品からなるセパレータ部406が配置されている。なお、エンジン400は、本発明の「内燃機関」の一例である。
ここで、第4実施形態では、セパレータ部406にフィルタ式を用いたものを適用している。セパレータ部406は、下部側(Z2側)に設けられた入口部406aと、上部側(Z1側)に設けられた出口部406bと、入口部406aと出口部406bとの間に形成された本体部406cとを有している。また、本体部406cの内部空間には、フィルタ部材401が配置されている。本体部406cは、内壁面406dに水平方向(X−Y平面)に沿って周状に形成された固定部406eを有しており、フィルタ部材401は、外縁部が固定部406eに嵌め込まれている。
これにより、入口部406aから流入したブローバイガスは、本体部406cにおいてフィルタ部材401に上方向(Z1方向)に衝突するとともにブローバイガスがフィルタ部材401の微細な空隙を通過する際に微粒子状のオイルミストがフィルタ部材401に吸着される。フィルタ部材401に吸着されたオイルは液滴となって落下し入口部406aからクランクケース3(オイル溜め部3b(図1参照))に戻される。また、フィルタ部材401によってオイルが気液分離されたブローバイガスはPCVバルブ81に導かれて吸気系80に還流される。なお、第4実施形態によるエンジン400のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第4実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、第4実施形態では、上記のように、シリンダブロック2および補機ブラケット5とは別体(別部品)としてフィルタ式のセパレータ部406を設けることにより、ブローバイガスを気液分離するオイル分離方式にとらわれることなく、エンジン400の設計仕様に応じたオイル捕集能力を有するフィルタ式のセパレータ部406を容易に組み込むことができる。なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第5実施形態)
次に、図1、図5および図7〜図9を参照して、第5実施形態について説明する。この第5実施形態では、上記第1実施形態で用いたセパレータ部6(図2参照)に対して内部構造を変更してセパレータ機能を向上させたセパレータ部506を用いる例について説明する。なお、図中において、上記第1および第3実施形態と同様の構成には、第1および第3実施形態と同じ符号を付して図示している。
本発明の第5実施形態によるエンジン500では、図7に示すように、上記第3実施形態のエンジン300に用いたサイクロン式のセパレータ部306(図5参照)に代えて、セパレータ部6(図2参照)に類似のラビリンス構造を有するセパレータ部506が空間部304に配置されている。なお、エンジン500は、本発明の「内燃機関」の一例である。
ここで、第5実施形態では、セパレータ部506は、上下方向(Z方向)における中央部近傍に設けられた入口部506aと、上部側(Z1側)に設けられた出口部506bと、所定の内部構造を有する本体部506cとを有している。また、入口部506aは、クランクケース3(クランク室3a)からのブローバイガスを導入するために本体部506cの外部(クランク室3a側)から内部にわたって直線状(直管状)に延びている。そして、本体部506cは、入口部506aの直後(Y2側)に設けられ、入口部506aを介して導入されたブローバイガスを衝突させるための壁部506dと、壁部506dの直後に設けられ、壁部506dに衝突したブローバイガスを貯留する貯留空間501とを有している。また、本体部506cは、貯留空間501のブローバイガスが流通されるラビリンス構造を有する複数の突出壁部506eをさらに有してその内壁部全体が構成されている。なお、入口部506aと対向する壁部506dは、貯留空間501のY2側の上下方向の内壁部506fよりも入口部506a側(矢印Y1方向側)に突出している。なお、入口部506aは、本発明の「導入口」の一例である。
なお、入口部506aは、図8に示すように、内径Dを有する円形の断面形状を有している。また、壁部506dは、入口部506aの直後に設けられた位置のみならず、その高さ位置(Z方向)を維持したまま本体部506cのX方向における両端部(X1側およびX2側)の内壁部506fの位置まで帯状に延びている。また、図7に示すように、壁部506dは、凹凸形状の表面を有するように形成されている。ここで、壁部506dの表面の凹凸形状は、緩やかな波状であってもよいし、波状よりも起伏の激しい凹凸形状を有していてもよい。また、凹凸の大きさは壁部506dにわたって一様であってもよいし、ランダム状(不規則状)であってもよい。
また、壁部506dは、壁部506dに衝突したブローバイガスが下方(矢印Z2方向)に向かいやすい方向に傾斜した形状の表面を有している。この場合、壁部506dの表面は、下方に向かうほど、入口部506a(ブローバイガスの噴出口)に対する離間間隔(X方向)が増加するように傾斜している。なお、入口部506aのY2側の端部(ブローバイガスの噴出口)から壁部506dの表面までの水平距離L(最小値)は、入口部506aの内径Dよりも大きい。
これにより、入口部506aを介して本体部506c内に導入されたブローバイガスは、壁部506dに対して勢いよく衝突される。この際、壁部506dの表面が起伏(凹凸形状)を有しているので、ブローバイガスは、壁部506dのより多くの表面に衝突する。また、水平距離Lが内径Dよりも大きいので、ブローバイガスに含まれる微粒子状のオイルミスト(油滴)のうち相対的に粒径の大きいオイルミストは、壁部506dに衝突するのみならず水平距離Lの間を自重で落下する。また、壁部506dに衝突することにより、ブローバイガスに含まれるオイルミストがある程度分離される。そして、分離された油滴は、壁部506dの下方に傾斜した表面を伝って落下(滴下)する。
また、壁部506dに衝突したオイルミストを含むブローバイガスは、貯留空間501に移動される。この際、貯留空間501に拡散したブローバイガスは、流速が低下される。なお、図7においては、入口部506aよりも上側(Z1側)の貯留空間501の部分と、入口部506aよりも下側(Z2側)の貯留空間501の部分とに分かれているように図示されているが、実際には、図8に示すように、入口部506aの壁部まわりを取り囲むようにして1つの貯留空間501が形成されている。図8においては、入口部506aよりも上側(Z1側)の貯留空間501の部分と、入口部506aよりも下側(Z2側)の貯留空間501の部分とに、ブローバイガスがそれぞれ拡散する様子を示している。これにより、ブローバイガスは、入口部506aの上側および下側の貯留空間501に留まる際にも、オイルミストがさらに分離される。
また、図7および図8に示すように、入口部506aよりも上側に広がる貯留空間501の天井部501aの裏側領域(Z1側の空間領域)には、複数(2枚)の突出壁部506eが交互に配置されてラビリンス構造が形成されている。なお、セパレータ部506におけるラビリンス構造の部分を平面的に見た場合(本体部506cを上方から見た場合)、貯留空間501の天井部501a、2枚の突出壁部506eおよび本体部506cの天井部506gは、水平方向(X−Y平面)に沿って広がりを有した状態で互いに所定の間隔(Z方向)を有して重ねられている。そして、貯留空間501の天井部501aに形成されたスリット部502(図8参照)を介して貯留空間501の天井部501aの裏側へと空間(ガス流路)が広がり、1枚目(Z2側)の突出壁部506eに形成されたスリット部503(図8参照)を介して1枚目の突出壁部506eの裏側へと空間が広がっている。そして、2枚目(Z1側)の突出壁部506eに形成されたスリット部504(図8参照)を介して2枚目の突出壁部506eの裏側へと空間が広がっている。そして、2枚目の突出壁部506eの裏側空間(天井部506gの下部空間)の隅部領域に形成された貫通孔により出口部506b(図8参照)が形成されている。
なお、天井部501a、2枚の突出壁部506eおよび天井部506gは、平面的に見て、それぞれ矩形形状を有している。また、スリット部502は、天井部501aのY1側およびX2側の各々の辺部と本体部506cの内壁部506fとの隙間を形成するL字型の連通孔である。同様に、スリット部503は、1枚目の突出壁部506eのY2側およびX1側の辺部と本体部506cの内壁部506fとの隙間を形成するL字型の連通孔である。また、スリット部504は、2枚目の突出壁部506eのY1側およびX2側の辺部と本体部506cの内壁部506fとの隙間を形成するL字型の連通孔である。すなわち、スリット部502〜504は、互いに本体部506cの内部におけるY1側かつX2側の角部とY2側かつX1側の角部とを結ぶ対角線の一方側と他方側とに交互に配置されている。これにより、貯留空間501に一時的に貯留されたブローバイガスは、X方向およびY方向に往復蛇行しながらスリット部502〜504を順番に上方にすり抜けて出口部506bへと導かれる。
また、第5実施形態では、セパレータ部506は、貯留空間501に貯留されたブローバイガス中のオイル(分離された液状のオイル)を排出するオイル排出口506hを有している。オイル排出口506hは、図8に示すように、本体部506cにおける貯留空間501のZ2側に位置する底部501b近傍において水平方向(X方向)に開口するように設けられている。ここで、オイル排出口506hは、図9に示すように、上下方向(Z方向)に延びるX2側の内壁部506fの部分に対して、Z方向に延びる縦長形状を有して貯留空間501に開口するように形成されている。これにより、壁部506dおよび貯留空間501において分離されて落下する液体状のオイルは、縦長形状のオイル排出口506hを介してクランクケース3(オイル溜め部3b(図1参照))に適切に排出される。この際、縦長形状のオイル排出口506hの下部側(Z2側)の断面領域をオイルが主に流れ出る一方、オイル排出口506hの上部側(Z1側)の断面領域には貯留空間501とクランクケース3(クランク室3a(図7参照))とを連通する連通路(空気の通る小孔部分505(図8および図9に破線でおおよその領域を示す))が生じる。したがって、貯留空間501においては、オイル溜め部3bに排出されるオイルとクランク室3a内の空気とがオイル排出口506hを介して迅速に置換されてオイルの迅速な排出が図られている。
また、図7に示すように、補機ブラケット5における流路部8aの管壁部は、壁部506dに対応した高さ位置(Z方向)ではなく、セパレータ部506のZ1側の貯留空間501の部分の外表面506jに沿って配置されている。これにより、ブローバイガスが貯留される貯留空間501が相対的に高温の冷却水により間接的に暖められる。したがって、入口部506aから流入し壁部506dに衝突した直後のブローバイガスに含まれる水蒸気が結露しにくくなり、かつ、貯留空間501のブローバイガスからさらなるオイルミストの分離が図られるように構成されている。なお、第5実施形態によるエンジン500のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第5実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、第5実施形態では、上記のように、シリンダブロック2からブローバイガスを導入するための入口部506aと、入口部506aの直後に設けられ、入口部506aを介して導入されたブローバイガスを衝突させるための壁部506dと、壁部506dの直後に設けられ、壁部506dに衝突したブローバイガスを貯留する貯留空間501とを含むようにセパレータ部506を構成する。これにより、入口部506aを介して本体部506c内に導入されたブローバイガスを壁部506dに勢いよく衝突させてブローバイガスに含まれる微粒子状のオイルミスト(油滴)を効果的に分離することができる。そして、衝突後のブローバイガスを上下の貯留空間501に拡散させるとともに流速を低下させてこの貯留空間501に留まらせることによって、オイルミストをさらに分離することができる。したがって、オイルを分離するセパレータ部506の機能を向上させることができる。
また、第5実施形態では、貯留空間501に貯留されたブローバイガス中のオイルを排出するための上下方向(Z方向)に延びる縦長形状のオイル排出口506hをセパレータ部506に設ける。これにより、壁部506dおよび貯留空間501において分離されて落下(滴下)する液体状のオイルを、縦長形状のオイル排出口506hを介してクランクケース3(オイル溜め部3b)に適切に排出することができる。この際、断面が縦長形状のオイル排出口506hのうちの下部側(Z2側)の断面領域をオイルが主に流れ出る一方、オイル排出口506hのうちの上部側(Z1側)の断面領域には貯留空間501とクランクケース3とを連通する連通路(空気の通る小孔部分505)を生じさせることが可能となるので、貯留空間501においては、排出されるオイルとクランクケース3内の空気とがオイル排出口506hを介して迅速に置換される。この結果、粘性を有する液体状のオイルを、オイル排出口506hから迅速に排出することができる。また、液体状のオイルが溜まり込まずに一定の空間容積を有する貯留空間501を常に確保することができるので、セパレータ部506の機能を容易に維持することができる。
また、第5実施形態では、凹凸形状の表面を有するように壁部506dを構成する。これにより、壁部506dの表面に起伏(凹凸形状)が生じる分、ブローバイガスを壁部506dのより多くの表面に衝突させることができるので、ブローバイガスに含まれる微粒子状のオイルミストを凹凸形状の表面部分によって効率よく捕集することができる。
また、第5実施形態では、壁部506dに衝突したブローバイガスが下方(矢印Z2方向)に向かいやすい方向に傾斜した形状の表面を有するように壁部506dを構成する。これにより、衝突後のブローバイガスを入口部506aよりも下方に形成された貯留空間501へと導きやすくすることができるので、ブローバイガスが貯留空間501において下層側から上層側へと貯留される分、ブローバイガスより長い時間にわたって貯留空間501に留まらせることができる。これにより、貯留空間501においてオイルミストを十分に分離することができる。なお、第5実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1〜第5実施形態では、樹脂製のセパレータ部6(206、306、406、506)をシリンダブロック2(202、302)と補機ブラケット5との間の空間部4(204、304)に配置した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、金属製のセパレータ部6をシリンダブロック2と補機ブラケット5との間の空間部4に配置してもよい。金属製のセパレータ部であっても、空間部4(隙間S)を隔てて断熱されることによって外気温度の影響を直接的に受けにくくすることができるので、金属製のセパレータ部の保温性が維持されてセパレータ部を流通するブローバイガス中の水蒸気の結露防止を図ることができる。
また、上記第1〜第5実施形態では、補機としてのウォータポンプ70、オルタネータおよびコンプレッサを専用に取り付ける補機ブラケット5とシリンダブロック2(202、302)とを組み付けた状態で本発明の内燃機関のセパレータ構造を適用した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、エンジン本体10に取り付けられるタイミングチェーンカバーまたはタイミングベルトカバーが本発明の「補機取付部材」を兼ねるような内燃機関(エンジン)に対して本発明のセパレータ構造を適用してもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、セパレータ部6(206、306、406、506)の外表面6f(206f、306f、406f)と空間部4(204、304)の内壁面4d(204d、304d)との間の隙間S(T、U)に、空気層からなる断熱層を設けた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明の「断熱層」として樹脂材料からなる断熱層を用いてもよい。たとえば、セパレータ部6を空間部4に嵌め込んだ状態でウレタン樹脂などの発泡系断熱材を隙間Sに充填してもよい。この場合、補機ブラケット5に対応する部分の隙間Sにのみ発泡系断熱材を充填してもよいし、補機ブラケット5に対応する部分とシリンダブロック2に対応する部分の隙間Sとの両方に発泡系断熱材を充填してもよい。また、発泡系断熱材のみならず、グラスウールなどの繊維系断熱材を隙間Sに充填してもよい。また、発泡系断熱材または繊維系断熱材を用いてセパレータ部6における本体部6c(外表面6f)を包み込んだ(被覆した)状態で、セパレータ部6を空間部4に嵌め込んでもよい。この場合、発泡系断熱材または繊維系断熱材などの被覆層(断熱層)によって被覆されたセパレータ部6と補機ブラケット5(シリンダブロック2)との隙間に空気層(断熱層)がさらに介在していてもよい。
また、上記第1、第2および第5実施形態では、セパレータ構造としてラビリンス式のセパレータ部6(206、506)を適用し、上記第3実施形態では、サイクロン式のセパレータ部306を適用し、上記第4実施形態では、フィルタ式のセパレータ部406を適用した例について示したが、本発明はこれに限られない。セパレータ構造として、上記以外のオイル分離方式を適用したセパレータ部を用いてもよい。たとえば、セパレータ部が複数のセパレータ部屋に分割されており、複数のセパレータ部屋のうちの一方のセパレータ部屋からブローバイガスが取り込まれるとともに、複数のセパレータ部屋のうちの他方のセパレータ部屋からブローバイガスが放出されるように本発明の「セパレータ部」を構成してもよい。
また、上記第1、第2、第4および第5実施形態では、補機ブラケット5における流路部8aの管壁部と、この管壁部に対応するセパレータ部6(206、406、506)の本体部6c(206c、406c、506c)の外表面6f(206f、406f)の部分とを互いに接触させるように構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、流路部8aの管壁部に対して若干の隙間(空気層など)を有するようにセパレータ部6の外表面6fを配置してもよい。これにより、エンジン100の停止後であって外気温度が低い環境におかれていた場合や、エンジン100の始動時(始動直後)など流路部8aを流通する冷却水温度が十分に昇温されない場合においても、セパレータ部6の温度が低下するのを抑制することができる。
また、上記第5実施形態では、凹凸形状の表面を有するように壁部506dを構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、平坦な表面を有するように壁部506dを構成してもよい。
また、上記第5実施形態では、セパレータ部506に1つの入口部506aを設けた例について示したが、本発明はこれに限られない。ブローバイガスを衝突させるための壁部506dに対して、その前方側に並べられた複数の入口部506aを有するようにセパレータ部506を構成してもよい。また、円形の断面形状を有するように入口部506aを構成するのみならず、多角形形状を有するように入口部506aを構成してもよい。また、エンジン500においては、セパレータ部506まわりの空間部304(隙間U)がクランク室3aと連通される構成(上記第2実施形態に示す空間部204のような構成)であってもよい。
また、上記第5実施形態では、内径Dを有して直線状(直管状)に延びるように入口部506aを形成した例について示したが、本発明はこれに限られない。本体部506cに引き込まれたブローバイガスを壁部506dに効果的に衝突させるために内径Dを変化させるように入口部506aを形成してもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、ガソリン機関からなる自動車用のエンジン100〜400に本発明を適用した例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、内燃機関であるならば、ガソリン機関以外のガス機関(ディーゼルエンジンおよびガスエンジンなどの内燃機関)に対して本発明を適用してもよい。また、自動車用以外のたとえば設備機器の駆動源(動力源)として設置されるような内燃機関に対して本発明を適用してもよい。