以下、内燃機関の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態では、内燃機関が車両に搭載されているものとする。そして、内燃機関が車両に搭載されている状態での上下方向を内燃機関の上下方向とする。
図1に示すように、内燃機関10は、全体として略直方体状のシリンダブロック20を備えている。シリンダブロック20内には、円筒状の気筒22が区画されている。気筒22の軸線は上下方向に延びている。気筒22は、4つ設けられている(図1では1つのみ図示)。4つの気筒22は、内燃機関10のクランクシャフト100の軸線方向に一列に並んでいる。各気筒22内には、当該気筒22内を往復移動するピストン(図視省略)が配置されている。
シリンダブロック20内において、各気筒22の下側には、空隙部23が区画されている。空隙部23は、シリンダブロック20の下面まで続いている。すなわち、各気筒22は、空隙部23を介してシリンダブロック20の下面よりも下側に連通している。各空隙部23内では、各気筒22内のピストンに連結されたコネクティングロッド(図視省略)が動作できるようになっている。コネクティングロッドはクランクシャフト100に連結されていて、内燃機関10の運転時には、ピストンの上下方向への往復移動がコネクティングロッドを介してクランクシャフト100の回転運動に変換されるようになっている。
上記のとおり、4つの空隙部23が並設されているため、シリンダブロック20の隣り合う空隙部23の間には、各空隙部23を区画する仕切り壁21が3つ存在している。各仕切り壁21の下面においては、平面視半円状の軸受部26が上側へ窪んでいる。クランクシャフト100の軸線方向及び上下方向の双方に直交する方向を内燃機関10の幅方向としたとき、軸受部26は、当該仕切り壁21における内燃機関10の幅方向の略中央に位置している。
シリンダブロック20における気筒22や空隙部23よりも内燃機関10の幅方向一方側(図1において左側)には、全体として上下方向に延びているオイル排出孔24が区画されている。オイル排出孔24は、シリンダブロック20における、クランクシャフト100の軸線方向の略中央に位置している。オイル排出孔24は、シリンダブロック20の下面に開口している。オイル排出孔24は、図示しないシリンダヘッドの内部に連通しており、当該シリンダヘッドの内部からのオイル(潤滑油)がオイル排出孔24内を流下する。
シリンダブロック20の各仕切り壁21の下面には、略長方形板状のクランクキャップ30が固定されている。各クランクキャップ30は、仕切り壁21の厚みと略同じ厚みになっている。また、各クランクキャップ30の長手方向の寸法(図1において左右方向の長さ)は、仕切り壁21における内燃機関10の幅方向の寸法よりも小さくなっている。各クランクキャップ30は、その長手方向が各仕切り壁21における内燃機関10の幅方向に沿うとともに、その厚み方向が各仕切り壁21の厚み方向に沿うように配置されている。なお、各クランクキャップ30の長手方向の一方側(図1において左側)の端部は、シリンダブロック20のオイル排出孔24よりも内燃機関10の幅方向中央側に位置している。
各クランクキャップ30の上面においては、平面視半円状の軸受部32が下側へ窪んでいる。各クランクキャップ30の軸受部32は、シリンダブロック20における各仕切り壁21の軸受部26と対向するように配置されている。内燃機関10の幅方向に関し、各クランクキャップ30の軸受部32の両側においては、各クランクキャップ30に対して下側からボルト(図示省略)が挿通されている。ボルトは、クランクキャップ30を上下方向に貫通し、シリンダブロック20に螺合されている。すなわち、各クランクキャップ30は、ボルトによりシリンダブロック20に固定されている。
各クランクキャップ30の軸受部32と、シリンダブロック20における各仕切り壁21の軸受部26との間には、クランクシャフト100が回転可能に支持されている。
シリンダブロック20の下面には、全体として略直方体状のバランサハウジング70が固定されている。バランサハウジング70は、下側に開放された略四角形箱状の上ハウジング80の下側に、上側に開放された略四角形箱状の下ハウジング90が連結された構成となっている。具体的には、上ハウジング80は、略長方形板状の上壁82と、上壁82の外周縁から下側に向かって延びる四角形筒状の周壁84とを備えている。下ハウジング90は、略長方形板状の下壁92と、下壁92の外周縁から上側に向かって延びる四角形筒状の周壁94とを備えている。上ハウジング80の周壁84の下端面と、下ハウジング90の周壁94の上端面とが当接するようにして、上ハウジング80と下ハウジング90とが連結されている。バランサハウジング70は、その幅方向が、内燃機関10の幅方向に沿うように配置されている。バランサハウジング70の幅方向の寸法は、クランクキャップ30の長手方向の寸法よりも大きくなっている。
上ハウジング80における上壁82の上面からは、柱状の脚部88が上側に延びている。脚部88の上下方向の寸法は、クランクキャップ30の短手方向(上下方向)の寸法よりも大きくなっている。図2に示すように、脚部88は、バランサハウジング70の幅方向のそれぞれの端部に3つずつ、計6個設けられている。バランサハウジング70の幅方向の一方(図2において上側)の端部に位置している3つの脚部88は、バランサハウジング70の長手方向に略等間隔に配置されている。バランサハウジング70の幅方向の他方の端部に位置している3つの脚部88は、上記一方の端部に位置している3つの脚部88と幅方向に対向した位置に配置されている。つまり、バランサハウジング70の幅方向に対向している脚部88が3対、バランサハウジング70の長手方向に並んでいる。
図1に示すように、3対の脚部88は、クランクシャフト100の軸線方向(バランサハウジング70の長手方向)に関して、シリンダブロック20における3つの仕切り壁21と同位置に配置されている。3対の脚部88のそれぞれに関して、上記一方の端部に位置している脚部88と他方の端部に位置している脚部88は、内燃機関10の幅方向においてクランクキャップ30の両側に配置されている。
各脚部88の上端面は、シリンダブロック20における各仕切り壁21の下面に当接している。各脚部88には、図示しないボルトが上下方向に貫通している。詳しくは、下ハウジング90の周壁94に対して下側からボルトが挿通されている。そして、ボルトは、上ハウジング80の周壁84、及び脚部88を貫通して、シリンダブロック20の仕切り壁21に螺合されている。この結果として、バランサハウジング70がシリンダブロック20の下面に固定されている。なお、バランサハウジング70がシリンダブロック20に固定された状態において、バランサハウジング70の幅方向一方側(図1において左側)の側面は、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口よりも内燃機関10の幅方向中央側に位置している。
上ハウジング80における幅方向の両側に位置している周壁84間には、板状の区切り壁86が架け渡されている。区切り壁86は、バランサハウジング70の長手方向に2つ設けられている。各区切り壁86の下面においては、平面視半円状の第1軸受部86aが上側へ窪んでいる。各区切り壁86の下面において、第1軸受部86aとは異なる位置には、平面視半円状の第2軸受部86bが上側へ窪んでいる。第1軸受部86a及び第2軸受部86bは、バランサハウジング70の幅方向に並んでいる。一方の区切り壁86に設けられている第1軸受部86a及び第2軸受部86bは、他方の区切り壁86に設けられている第1軸受部86a及び第2軸受部86bと、バランサハウジング70の幅方向の同位置に配置されている。
下ハウジング90における幅方向の両側に位置している周壁94間には、板状の区切り壁96が架け渡されている。区切り壁96は、バランサハウジング70の長手方向に2つ設けられている。各区切り壁96の上面においては、平面視半円状の第1軸受部96aが下側へ窪んでいる。各区切り壁96の上面において、第1軸受部96aとは異なる位置には、平面視半円状の第2軸受部96bが下側へ窪んでいる。第1軸受部96a及び第2軸受部96bは、バランサハウジング70の幅方向に並んでいる。一方の区切り壁96に設けられている第1軸受部96a及び第2軸受部96bは、他方の区切り壁96に設けられている第1軸受部96a及び第2軸受部96bと、バランサハウジング70の幅方向の同位置に配置されている。また、一方の区切り壁96に設けられている第1軸受部96a及び第2軸受部96bは、上ハウジング80における一方の区切り壁86に設けられている第1軸受部86a及び第2軸受部86bと対向するように配置されている。他方の区切り壁96に設けられている第1軸受部96a及び第2軸受部96bは、上ハウジング80における他方の区切り壁86に設けられている第1軸受部86a及び第2軸受部86bと対向するように配置されている。
上ハウジング80における各区切り壁86の第1軸受部86aと、下ハウジング90における各区切り壁96の第1軸受部96aとの間には、クランクシャフト100の軸線方向に延びている第1バランサシャフト62が回転可能に支持されている。ここで、上ハウジング80における上壁82の一部は、その厚み方向に亘って貫通された開口となっている。第1バランサシャフト62は、上記開口を通じて、図示しないギヤを介してクランクシャフト100と駆動連結されている。そして、クランクシャフト100が回転すると、第1バランサシャフト62が同期して回転するようになっている。
上ハウジング80における各区切り壁86の第2軸受部86bと、下ハウジング90における各区切り壁96の第2軸受部96bとの間には、クランクシャフト100の軸線方向に延びている第2バランサシャフト64が回転可能に支持されている。第2バランサシャフト64は、バランサハウジング70の内部に配置されている図示しないギヤを介して第1バランサシャフト62と駆動連結されている。そして、第1バランサシャフト62が回転すると、第2バランサシャフト64が同期して回転するようになっている。
第1バランサシャフト62及び第2バランサシャフト64にはそれぞれ、図示しないアンバランスマスが固定されている。アンバランスマスは例えば半円状(扇形状)に形成されていて、第1バランサシャフト62及び第2バランサシャフト64のそれぞれの軸線に対して重心が偏心している。そして、第1バランサシャフト62が回転すると、当該第1バランサシャフト62は、重心位置が回転中心に対して偏心した状態で回転する。第2バランサシャフト64についても同様である。こうした状態で第1バランサシャフト62及び第2バランサシャフト64が回転することで、ピストンの運動に伴って生じるクランクシャフト100の振動が抑制される。第1バランサシャフト62及び第2バランサシャフト64は、アンバランスマス及びギヤを含めて、バランサ装置60を構成している。
シリンダブロック20の下面には、全体として略四角形箱状のオイルパン40が固定されている。オイルパン40は、上側及び下側の双方に開放された略四角形筒状のクランクケース50の下側に、上側に開放された略四角形箱型の貯留ケース42が連結された構成となっている。
クランクケース50の上端面は、シリンダブロック20の下面における外周縁に沿って延びている。クランクケース50の上端面がシリンダブロック20の下面における外周縁に当接するようにして、クランクケース50はシリンダブロック20に固定されている。クランクケース50は、シリンダブロック20の各仕切り壁21の下面に固定されている各クランクキャップ30及びバランサハウジング70を取り囲んでいる。
貯留ケース42の内部にはオイルが貯留されている。図示は省略するが、貯留ケース42には、当該貯留ケース42の内部のオイルを圧送するためのオイルポンプが収められている。オイルポンプの動作により、内燃機関10における潤滑が求められる各部位(例えばシリンダヘッド内に収容されるカムシャフト等)にオイルを供給できるようになっている。
図1及び図2に示すように、バランサハウジング70における上ハウジング80の上壁82の上面からは、略板状の第1遮蔽壁72が上側に突出している。第1遮蔽壁72は、バランサハウジング70における幅方向一方側(図1においては左側)の端部から突出している。第1遮蔽壁72は、バランサハウジング70における長手方向の略中央に位置している。第1遮蔽壁72は、上ハウジング80との一体成形物である。
図2に示すように、上側からの平面視で、第1遮蔽壁72の概略形状はU字状となっている。具体的には、第1遮蔽壁72は、U字の底部分を構成している板状の底壁部72aと、底壁部72aの一方側の端部からバランサハウジング70の幅方向一方側に立ち上がる板状の第1立上壁部72bと、底壁部72aの他方側の端部からバランサハウジング70の幅方向一方側に立ち上がる板状の第2立上壁部72cと、によって構成されている。上側からの平面視で、底壁部72aは、上ハウジング80の上壁82の縁に沿うようにしてバランサハウジング70の長手方向に延びている。底壁部72aにおける、バランサハウジング70の長手方向の寸法は、シリンダブロック20のオイル排出孔24の径よりも大きくなっている。上側からの平面視で、第1立上壁部72bと第2立上壁部72cとは、バランサハウジング70の幅方向に延びている。詳しくは、第1立上壁部72bと第2立上壁部72cとは、上側からの平面視で、上ハウジング80の上壁82の縁から上壁82よりも外側へ延びている。そして、第1立上壁部72bと第2立上壁部72cとは、上側からの平面視で、バランサハウジング70の幅方向一方側の側面よりもクランクケース50の内側面の側へ飛び出している。第1立上壁部72bと第2立上壁部72cのバランサハウジング70の幅方向の寸法は、バランサハウジング70の幅方向一方側の側面と、クランクケース50の内側面との間の間隔の略半分である。すなわち、上側からの平面視で、第1立上壁部72bと第2立上壁部72cのそれぞれの先端は、バランサハウジング70の幅方向一方側の側面とクランクケースの内側面との間の中央近傍に至っている。
図1に示すように、底壁部72a、第1立上壁部72b、及び第2立上壁部72cは、上下方向に立設している。底壁部72a、第1立上壁部72b、及び第2立上壁部72cの上下方向の寸法は、上ハウジング80の上壁82とシリンダブロック20の下面との間の寸法(脚部88の寸法)と略一致している。すなわち、底壁部72a、第1立上壁部72b、及び第2立上壁部72cの上端部は、シリンダブロック20の下面に至っていて、シリンダブロック20の下面に当接している。
図2に示すように、クランクシャフト100の軸線方向に関して、第1遮蔽壁72の底壁部72aは、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口(図2の二点鎖線参照)と略同位置に配置されている。そして、第1遮蔽壁72は、底壁部72aと第1立上壁部72bと第2立上壁部72cとによって、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口を、内燃機関10の幅方向中央側から取り囲むように配置されている。
図1及び図2に示すように、略四角形筒状のクランクケース50の内側面のうち、内燃機関10の幅方向一方側に位置している内側面からは、内燃機関10の幅方向中央側に向かって板状の第2遮蔽壁74が突出している。第2遮蔽壁74は、クランクケース50との一体成形物である。
第2遮蔽壁74は2つ設けられている。クランクシャフト100の軸線方向に関して、2つの第2遮蔽壁74は、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口の両側に位置している。具体的には、クランクシャフト100の軸線方向に関して、一方の第2遮蔽壁74aは、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口と、第1遮蔽壁72の第1立上壁部72bとの間に位置している。他方の第2遮蔽壁74bは、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口と、第1遮蔽壁72の第2立上壁部72cとの間に位置している。
図2に示すように、2つの第2遮蔽壁74は、それぞれの厚み方向がクランクシャフト100の軸線方向に沿うように配置されている。内燃機関10の幅方向に関して、2つの第2遮蔽壁74の寸法は、第1遮蔽壁72の第1立上壁部72b及び第2立上壁部72cの寸法と略一致している。そして、内燃機関10の幅方向に関して、2つの第2遮蔽壁74の先端は、第1遮蔽壁72の第1立上壁部72b及び第2立上壁部72cの先端と略同位置に至っている。
図1に示すように、2つの第2遮蔽壁74は、上下方向に延びている。上下方向に関して、2つの第2遮蔽壁74の寸法は、第1遮蔽壁72の底壁部72a、第1立上壁部72b、及び第2立上壁部72cの寸法と略一致している。また、上下方向に関して、2つの第2遮蔽壁74は、第1遮蔽壁72の底壁部72a、第1立上壁部72b、及び第2立上壁部72cと略同位置に配置されている。すなわち、2つの第2遮蔽壁74の下端部は、バランサハウジング70における上ハウジング80の上壁82の上面と略同位置に至っている。また、2つの第2遮蔽壁74の上端部は、シリンダブロック20の下面に至っていて、シリンダブロック20の下面に当接している。
上記のとおり、第1遮蔽壁72は、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口を、内燃機関10の幅方向中央側から取り囲むように配置されている。一方、2つの第2遮蔽壁74は、第1遮蔽壁72よりも内燃機関10の幅方向端側に位置していて、尚且つ、クランクシャフト100の軸線方向に関して、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口の両側に位置している。この結果として、第1遮蔽壁72と、2つの第2遮蔽壁74aは、全体として、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口を相応の範囲(270度程度)に亘って取り囲んでいる。さらに、一方の第2遮蔽壁74aと他方の第2遮蔽壁74bとがクランクケース50の内側面で繋がれていることから、2つの第2遮蔽壁74と、これらの間に位置しているクランクケース50の内側面と、第1遮蔽壁72とは、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口をその全周(360度)に亘って取り囲んでいる。
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)貯留ケース42内に貯留されているオイルは、内燃機関10を循環している。具体的には、オイルポンプの動作により、内燃機関10の各種部位に供給されたオイルは、当該下記種部位を潤滑した後、シリンダブロック20におけるオイル排出孔24に至る。そして、オイルは、図1の矢印Aで示すように、オイル排出孔24を流下し、当該オイル排出孔24からクランクケース50内に排出される。オイルは、オイル排出孔24の開口の真下に流下し、バランサハウジング70における幅方向一方側の側面とクランクケース50の内壁面との間を通って、貯留ケース42内に戻る。
ここで、クランクシャフト100の回転に伴い、クランクケース50内では空気の旋回流が生じ得る。仮に、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口が壁部で取り囲まれていない場合、上記旋回流やそこから派生した空気の流れは、シリンダブロック20のオイル排出孔24から排出されるオイルを巻き上げたり飛散させたりするおそれがある。この場合、オイルが、本来戻るべき貯留ケース42の底面にまで至りにくくなる。
これに対して、本実施形態では、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口が第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74によって取り囲まれている。クランクシャフト100の回転に伴う旋回風が、オイル排出孔24から排出されるオイルに向けて流れても、その流れは第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74によって遮られる。
詳細には、クランクシャフト100の回転に伴う空気の旋回流やそこから派生した流れであってクランクケース50における、クランクシャフト100の軸線方向の略中央で内燃機関10の幅方向中央側から端側へと向かう空気の流れ(図2の矢印W1参照)は、第1遮蔽壁72の底壁部72aで遮られる。また、クランクシャフト100の回転に伴う上記流れであって、クランクケース50における、内燃機関10の幅方向一方側の端側でクランクシャフト100の軸線方向端側から中央側へと向かう空気の流れ(図2の矢印W2)は、第1遮蔽壁72の第1立上壁部72b及び第2立上壁部72cによって遮られる。また、クランクシャフト100の回転に伴う上記流れであって、クランクケース50における、内燃機関10の幅方向一方側の内壁面に沿ってクランクシャフト100の軸線方向端側から中央側へと向かう空気の流れ(図2の矢印W3)は、2つの第2遮蔽壁74によって遮られる。
このようにしてクランクシャフト100の回転に伴う上記流れが遮られるため、当該流れが、シリンダブロック20のオイル排出孔24から排出されたオイルに至ることは抑制される。そのため、シリンダブロック20のオイル排出孔24から排出されたオイルが上記流れによって巻き上げられたり飛散したりすることは抑制される。したがって、オイルを速やかに貯留ケース42の底面へと至らせることができる。
(2)仮に、第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74の上端部が、シリンダブロック20の下面にまで至っていない場合、クランクシャフト100の回転に伴って空気に流れが生じたときに、第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74の上端部と、シリンダブロック20の下面との間を介してオイル排出孔24側に空気が流入するおそれが捨てきれない。
この点、本実施形態では、第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74の上端部が、シリンダブロック20の下面にまで至っている。そのため、第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74の上端部と、シリンダブロック20の下面との間から、クランクシャフト100の回転に伴って空気がオイル排出孔24側に流入することを防止できる。
(3)一方の第2遮蔽壁74aは、クランクシャフト100の軸線方向に関して、第1遮蔽壁72の第1立上壁部72bとずれた位置に配置されている。また、他方の第2遮蔽壁74bは、クランクシャフト100の軸線方向に関して、第1遮蔽壁72の第2立上壁部72cとずれた位置に配置されている。そのため、シリンダブロック20の下面にバランサハウジング70及びクランクケース50を組み付ける際に、シリンダブロック20の下面に対するバランサハウジング70及びクランクケース50の組み付け位置が、内燃機関の幅方向またはクランクシャフト100の軸線方向に多少ずれても、一方の第2遮蔽壁74aと第1遮蔽壁72の第1立上壁部72bとが干渉することが略ない。また、同様に、他方の第2遮蔽壁74bと第1遮蔽壁72の第2立上壁部72cとが干渉することが略ない。したがって、本実施形態によれば、シリンダブロック20の下面に対するバランサハウジング70及びクランクケース50の組み付け位置の誤差をある程度は許容できる。
(4)特許文献1には、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口に、上下方向に延びる延長管を接続する構成が開示されている。この特許文献1に開示の延長管の下端は、貯留ケース42の底に至っている。こうした構成を採用した場合、クランクシャフト100の回転に伴う空気の流れによってオイル排出孔24からオイルが排出されにくくなることはない。しかし、このような構成においては、延長管だけでなく、当該延長管をシリンダブロック20の下面に接続するための接続部材(例えばボルト)が必要であり、部品点数が増える。また、延長管をシリンダブロック20の下面に接続するための接続作業も必要になる。さらに、仮にバランサハウジング70が、オイルパン40内における相応の領域を占めている場合には、延長管をバランサハウジング70との干渉を避けつつ引き回す必要がある。この場合、延長管を配置するスペースを確保したり延長管を引き回す作業が煩雑になったりしてしまうため、実際には、このような延長管の採用は現実的ではない。
これに対して、本実施形態の第1遮蔽壁72は、バランサハウジング70の上ハウジング80との一体成形物である。また、第2遮蔽壁74は、クランクケース50との一体成形物である。そのため、第1遮蔽壁72や第2遮蔽壁74を固定するための新たな部材は不要であり、かつ、接続作業も不要である。さらに、シリンダブロック20の下面にバランサハウジング70とクランクケース50とを組み付けることで、内燃機関10の内部に第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74を設置できる。このとき、第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74を配置するための新たなスペースを確保したり、第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74の位置を調整したりする等の作業は不要である。つまり、第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74でオイル排出孔24の周囲を取り囲むにあたって別段の不便さもない。したがって、本実施形態の第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74に関する構成は、オイルパン40内においてバランサハウジング70が占める領域が大きくても現実的に採用可能な構成である。
(5)2つの第2遮蔽壁74と、これらの間に位置しているクランクケース50の内側面と、第1遮蔽壁72とは、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口をその全周に亘って取り囲んでいる。その上で、これらの各壁面は、上下方向に続いている。そのため、これらの各壁面は、オイル排出孔24から排出されたオイルを下側へと導く案内通路を区画している。ここで、第1遮蔽壁72の底壁部72aが、バランサハウジング70における幅方向一方側の縁に沿って立設していることから、上記案内通路内を流下したオイルがバランサハウジング70における幅方向一方側の側面よりもバランサハウジング70の幅方向中央側に流れることはない。そのため、オイルを確実にバランサハウジング70における幅方向一方側の側面とクランクケース50の内側面との間に流下させることができる。したがって、オイルが意図しない流下経路を辿って例えばクランクシャフトの回転に巻き込まれたり、貯留ケース42に戻るまでに時間がかかって蒸発または劣化したりすることを抑制できる。
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74は、シリンダブロック20の下面側から視たときに、当該第1遮蔽壁72と当該第2遮蔽壁74とで、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口を取り囲むように配置されていることを条件に、適宜形状や寸法や位置を変更可能である。なお、第1遮蔽壁72と第2遮蔽壁74とは、シリンダブロック20の下面側から視たときに、シリンダブロック20におけるオイル排出孔24の開口を360度取り囲んでいる必要はなく、当該開口をある程度の範囲(180度以上)に亘って周方向に取り囲んでいればよい。以下に第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74の具体的な変更例を記載する。
・第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74の上下方向の寸法は適宜変更可能である。第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74は、シリンダブロック20の下面にまで至っていなくてもよい。また、第1遮蔽壁72と第2遮蔽壁74の上下方向の寸法が互いに異なっていてもよい。さらに、第1遮蔽壁72において、底壁部72a、第1立上壁部72b、第2立上壁部72cの上下方向の寸法が互いに異なっていてもよいし、2つの第2遮蔽壁74の上下方向の寸法が互いに異なっていてもよい。
・第1遮蔽壁72の上端部と、第2遮蔽壁74の上端部との位置が上下方向にずれていてもよい。第1遮蔽壁72の下端部と、第2遮蔽壁74の下端部との位置が上下方向にずれていてもよい。ただし、第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74は、上下方向の少なくとも一部において上下方向の同位置に配置されている必要がある。
・第1遮蔽壁72の第1立上壁部72b及び第2立上壁部72cの寸法、配置、形状は適宜変更可能である。例えば、内燃機関10の幅方向に関して、第1立上壁部72b及び第2立上壁部72cの寸法は適宜変更可能であり、当該第1立上壁部72b及び当該第2立上壁部72cの先端がクランクケース50の内側面にまで至っていてもよい。内燃機関10の幅方向に関して、第1立上壁部72b及び第2立上壁部72cの寸法が互いに異なっていてもよい。また、上側からの平面視で、第1立上壁部72b及び第2立上壁部72cの双方またはいずれか一方が、内燃機関10の幅方向(バランサウハウジング70の幅方向)に対して傾斜して配置されていてもよい。さらに、第1立上壁部72b及び第2立上壁部72cの双方またはいずれか一方が、上下方向に対して傾斜して配置されていてもよい。上側からの平面視で、第1立上壁部72b及び第2立上壁部72cの双方またはいずれか一方が、円弧状になっていてもよい。第1立上壁部72b及び第2立上壁部72cの双方またはいずれか一方を廃止してもよい。
・第1遮蔽壁72の底壁部72aの寸法、配置、形状は適宜変更可能である。例えば、クランクシャフト100の軸線方向(バランサハウジング80の長手方向)に関する底壁部72aの寸法を、上記実施形態の構成から変更してもよい。上側からの平面視で、底壁部72aが、クランクシャフト100の軸線方向(バランサハウジング80の長手方向)に対して傾斜して配置されていてもよい。底壁部72aが、上下方向に対して傾斜して配置されていてもよい。上側からの平面視で、底壁部72aが円弧状になっていてもよい。底壁部72aを廃止してもよい。
・第1遮蔽壁72は、上側からの平面視でU字状でなくてもよい。第1遮蔽壁72は、上側からの平面視で、例えば、全体として円弧状やV字状に構成されていてもよい。
・2つの第2遮蔽壁74の寸法、配置、形状は適宜変更可能である。例えば、内燃機関10の幅方向に関して、2つの第2遮蔽壁74の寸法は適宜変更可能であり、2つの第2遮蔽壁74の先端が、第1遮蔽壁72の底壁部72aにまで至っていてもよい。内燃機関10の幅方向に関して、2つの第2遮蔽壁74の寸法が互いに異なっていてもよい。上側からの平面視で、2つの第2遮蔽壁74の双方またはいずれか一方が、内燃機関10の幅方向に対して傾斜して配置されていてもよい。2つの第2遮蔽壁74の双方またはいずれか一方が、上下方向に対して傾斜して配置されていてもよい。上側からの平面視で、2つの第2遮蔽壁74の双方またはいずれか一方が円弧状になっていてもよい。2つの第2遮蔽壁74のいずれか一方を廃止してもよい。
・一方の第2遮蔽壁74aは、クランクシャフト100の軸線方向に関して、第1遮蔽壁72の第1立上壁部72bよりも内燃機関10の端側に位置していてもよい。他方の第2遮蔽壁74bに関しても同様の変更例を適用できる。
・第1遮蔽壁72は、バランサハウジング70の上面以外の部分に設けてもよい。例えば、バランサハウジング70に、当該バランサハウジング70の側面から、当該側面の外側に突出する壁部を設ける。そして、この壁部から、第1遮蔽壁72が上側に突出する構成としてもよい。
・第1遮蔽壁72は、予めバランサハウジング70とは別体で成形されたものを、後からバランサハウジング70に接着剤やボルト、溶接等で接続してもよい。同様に、第2遮蔽壁74は、予めクランクケース50とは別体で成形されたものを、後からクランクケース50に接着材やボルト、溶接等で接続してもよい。
・バランサハウジング70は、第1バランサシャフト62及び第2バランサシャフト64をクランクシャフト100と同期して回転可能に支持できることを条件に、形状や寸法を適宜変更可能である。例えば、バランサハウジング70における幅方向一方側の側面が、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口よりも内燃機関10の幅方向端側に位置していてもよい。ただし、バランサハウジング70における幅方向一方側の側面とクランクケース50の内側面との間には、オイルを流下させるための隙間が必要である。
・第1バランサシャフト62とクランクシャフト100とを同期して回転させる機構は、ギヤによるものに限定されず、適宜変更可能である。例えば、ベルトやチェーンを利用してもよい。第1バランサシャフト62と第2バランサシャフト64とを同期して回転させる機構についても同様である。
・シリンダブロック20におけるオイル排出孔24の位置を、クランクシャフト100の軸線方向に関して変更してもよい。この場合、シリンダブロック20の下面におけるオイル排出孔24の開口の位置に合わせて、第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74の位置を変更すればよい。
・シリンダブロック20において、内燃機関10の幅方向他方側(図1におい右側)にオイル排出孔24を区画してもよい。この場合も、そのオイル排出孔24の開口の位置に合わせて、第1遮蔽壁72及び第2遮蔽壁74の位置を変更すればよい。
・気筒22の数は変更可能である。気筒22の数に合わせて、仕切り壁21の数や、バランサハウジング70における脚部88の数を変更すればよい。