JP5504019B2 - 内燃機関のブリーザ装置 - Google Patents

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本発明は、自動車用内燃機関等に設けられるブリーザ装置に係り、詳しくは、オイル分離性能の向上やシリンダブロックのコンパクト化等を実現する技術に関する。
自動車等に搭載されるレシプロエンジン(以下、単にエンジンと記す)では、その圧縮行程や膨張行程において、シリンダとピストンとの間隙からブローバイガスがクランクケース内に漏出することが避けられない。ブローバイガスは未燃焼混合気(すなわち、HC)や酸、水分等を含むため、エンジンオイルの劣化や大気汚染を抑制すべく、クランクケースから吸気系に導入して新気とともに燃焼させる必要がある。しかし、ブローバイガスにはクランクケース内に浮遊する霧状のエンジンオイル(オイルミスト)が混入しているため、そのまま吸気系に導入した場合、エンジンオイルによって吸気系部品が汚損される他、エンジンオイルの消費量が増大する問題があった。
そこで、近年のエンジンでは、吸気負圧によってブローバイガスを吸気系に流入させるブローバイシステムが採用されるとともに、ブローバイガスからエンジンオイルを分離するブリーザチャンバをブローバイガスの流路(ブローバイ通路)に設け、分離したエンジンオイルをオイルパンに還流させるブリーザ装置が備えられている(特許文献1参照)。特許文献1のブリーザ装置では、シリンダブロックおよびシリンダヘッドの側部にブローバイ通路が形成され、シリンダブロックに形成された凹部に側面から蓋が被せられることでブリーザチャンバが画成されている。
また、エンジンでは、ピストンやコネクティングロッド等の運動によって生じる2次振動を抑制すべく、一対のバランサシャフトをクランクシャフトの2倍の回転数で回転させる2軸バランサ装置を備えたものがある。バランサシャフトは、シリンダブロックの下方(オイルパン内等)に設置されることもあるが、シリンダブロックの両側面に設置されることもある(特許文献2参照)。
実公平6−27779号公報 特開平11−351333号公報
特許文献1のブリーザ装置では、ブリーザチャンバが凹凸の無い空間であるためにオイル分離性能があまり高くなく、吸気系に導入されるブローバイガス中のエンジンオイル量が多くなる問題があった。また、特許文献1のブリーザ装置を特許文献2のエンジンに採用し、バランサシャフトの直下にブリーザチャンバを配置した場合、バランサシャフト軸受の直下に空間ができることでバランサシャフトの支持剛性が低くなり、エンジンの運転時に振動や騒音が生じることがあった。また、この場合には、ブローバイ通路をバランサシャフトを迂回するかたちで設ける必要があるため、シリンダブロック(すなわち、エンジン)の体格や重量が大きくなる問題もあった。
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、オイル分離性能の向上やシリンダブロックのコンパクト化等を実現したブリーザ装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、シリンダブロックに形成され、一端がクランク室に開口するとともにシリンダの軸線方向に延びる複数の上流側ブローバイ通路と、前記シリンダブロックに形成され、前記各上流側ブローバイ通路の他端が連通するとともにクランクシャフトの軸線方向に延びるブリーザチャンバとを有する内燃機関のブリーザ装置であって、前記ブリーザチャンバには、クランクシャフトの軸線方向に沿って凹部と凸部とが交互に設けられた凹凸面が形成され、前記クランクシャフトは、複数のクランク軸受によって前記シリンダブロックに回転自在に支持され、前記シリンダブロックの平面視において、前記クランク軸受の側方には前記上流側ブローバイ通路と前記凹部とが設けられ、前記クランク軸受間に位置するクランクウエイトの側方には前記凸部が設けられたことを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明に係る内燃機関のブリーザ装置において、前記凹凸面は、前記ブリーザチャンバにおけるシリンダ中心側の内壁であることを特徴とする。
また、第3の発明は、第1または第2の発明に係る内燃機関のブリーザ装置において、前記クランクシャフトは、複数のクランク軸受によって前記シリンダブロックに回転自在に支持され、前記シリンダブロックの平面視において、前記クランク軸受の側方には前記上流側ブローバイ通路と前記凹部とが設けられ、前記クランク軸受間に位置するクランクウエイトの側方には前記凸部が設けられたことを特徴とする。
また、第4の発明は、第1〜第3の発明に係る内燃機関のブリーザ装置において、前記ブリーザチャンバの上方には、バランサ軸受によって回転自在に支持されたバランサシャフトが設置されたことを特徴とする。
また、第5の発明は、第1〜第4の発明に係る内燃機関のブリーザ装置において、前記凸部の先端には、前記凹部よりも小さい小凹部が形成されたことを特徴とする。
また、第6の発明は、第1〜第5の発明に係る内燃機関のブリーザ装置において、シリンダヘッドに下流側ブローバイ通路が形成され、前記ブリーザチャンバと当該下流側ブローバイ通路とが配管によって連通されたことを特徴とする。
第1の発明によれば、上流側ブローバイ通路からブリーザチャンバに流入した時点でブローバイガスの流れ方向が急激に90°変化するだけでなく、凹凸面によって流路面積が交番的に変化することでブローバイガスの流速も増減し、ブローバイガス中のエンジンオイルがブリーザチャンバ内で効果的に分離されやすくなる。また、第2の発明によれば、ブリーザチャンバにおける高温側の壁面が凹凸面となっているため、エンジンオイルが凹凸面に附着することで昇温されて粘度が低下し、クランク室に速やかに落下しやすくなる。また、第3の発明によれば、クランク軸受の側方に凹部が設けられ、クランクウエイトの側方に凸部が設けられるため、複数の上流側ブローバイ通路を設けるにもかかわらずシリンダブロックの大型化が抑制できる。また、第4の発明によれば、凹凸面によってブリーザチャンバの強度および剛性が高まるため、バランサシャフトの支持剛性が向上する。また、第5の発明によれば、小凹部によってブローバイガスの流速が更に増減し、ブローバイガス中のエンジンオイルがブリーザチャンバ内でより効果的に分離される。また、第6の発明によれば、ブリーザチャンバと下流側ブローバイ通路との連通路をシリンダブロック内に形成する必要がなくなるため、シリンダブロック(すなわち、エンジン)の体格を小さくすることができる。
実施形態に係るエンジンを示す斜視図である。 実施形態に係るシリンダブロックを示す下面図である。 図1中III部の拡大正面図である。 図3中のIV−IV断面図である。
以下、図面を参照して、本発明を自動車用エンジンのブリーザ装置に適用した一実施形態を詳細に説明する。なお、実施形態の説明にあたっては、図1における斜め左側を左方とし、紙面斜め手前側を前方とする。
≪実施形態の構成≫
<エンジンの全体構成>
図1に示すエンジン1は、4サイクル直列4気筒ディーゼルエンジンであり、シリンダブロック2や、シリンダヘッド3、ヘッドカバー4、オイルパン5等によって構成されている。シリンダブロック2には、図示しないピストンにコネクティングロッドを介して連結されたクランクシャフト11の他、第1,第2バランサシャフト12,13が回転自在に保持されている。両バランサシャフト12,13は、クランクシャフト11にアイドラギヤ14,15を介して連結されており、クランクシャフト11の2倍の回転数で互いに逆方向に回転駆動される。図2に示すように、クランクシャフト11は、各気筒ごとにクランクウエイト16を有しており、クランク軸受17を介してシリンダブロック2の下面に回転自在に支持されている。
<ブリーザ装置>
図3に示すように、シリンダブロック2の前面には、第1バランサシャフト12が収容されるバランサ凹部21と、ブリーザチャンバ30を構成するブリーザ凹部31とが上下に隣接した状態で配置されている。また、図4にも示すように、ブリーザ凹部31内には、第1〜第3凹部32〜34と第1,第2凸部35,36とをクランクシャフト11の軸線方向に沿って左方から交互に設けてなる凹凸面37が形成され、更に両凸部35,36の先端にはそれぞれ第1,第2小凹部38,39が設けられている。本実施形態の場合、各凹部32〜34や各凸部35,36、両凸部35,36は、いずれも平面視で略台形を呈している。また、図2に示すように、第1〜第3凹部32〜34はクランク軸受17の側方に設けられ、第1,第2凸部35,36はクランクウエイト16の側方に設けられている。なお、本実施形態のエンジン1は前方排気であり、シリンダヘッド3の前面には4つの排気ポート18が開口している。
図1,図4に示すように、シリンダブロック2の前面には、バランサ凹部21とブリーザ凹部31との開口を覆うチャンバカバー41が装着され、このチャンバカバー41とブリーザ凹部31とによってブリーザチャンバ30が画成される。なお、バランサ凹部21内には、第1バランサシャフト12を支持するバランサ軸受22が形成されている。
図4に示すように、ブリーザチャンバ30の下壁には、第1〜第3凹部32〜34に対応する位置に(すなわち、クランク軸受17の側方に)、上流側ブローバイ通路として、シリンダブロック2の下部(クランクケース)に連通する第1〜第3ブリーザ孔42〜44が穿設されている。なお、本実施形態の場合、第3ブリーザ孔44の面積は、第1,第2ブリーザ孔42,43の面積よりも小さく設定されている。また、図1に示すように、チャンバカバー41およびヘッドカバー4の前面にはニップル41a,4aが突設されており、ブローバイホース45の両端がこれらニップル41a,4aにそれぞれ接続されている。ヘッドカバー4内には下流側ブローバイ通路4bが形成されており、ブリーザチャンバ30からのブローバイガスは、ブローバイホース45を介してヘッドカバー4の下流側ブローバイ通路に流入した後、図示しない吸気装置に吸引される。なお、本実施形態の場合、チャンバカバー41側のニップル41aは、第2小凹部39に対応する部位の上方に配置されている。
図3に示すように、バランサ凹部21には、ブリーザチャンバ30の第1,第2凸部35,36に対応する位置に給油孔51,52が各々開口している。給油孔51はバランサ凹部21の底面に穿設される一方、給油孔52はバランサ凹部21の内壁(クランク室側の側壁)に穿設されており、どちらもシリンダブロック2のクランク室とブリーザチャンバ30とを連通している。
<実施形態の作用>
エンジン1が運転を開始すると、シリンダとピストンとの間隙からクランクケース内にブローバイガスが漏出する一方、吸気負圧がヘッドカバー4やブローバイホース45を介してブリーザチャンバ30に作用する。これにより、ブローバイガスは、シリンダブロック2の下部から第1〜第3ブリーザ孔42〜44を通過してブリーザチャンバ30に流入する。流入したブローバイガスは、図3,図4に矢印で示すように、ブリーザチャンバ30内を流通した後、ヘッドカバー4に接続したブローバイホース45に流出する。
ブローバイガスは、ブリーザチャンバ30内でその流れ方向が急激に90°変化した後、ブリーザチャンバ30内で凹凸面37に沿って流れることになる。ブローバイガスの流速は、流路面積の大きい第1〜第3凹部32〜34で低くなり、流路面積の小さい第1,第2凸部35,36で高くなる他、流路面積の比較的大きい第1,第2小凹部38,39で若干低くなる。このように、ブリーザチャンバ30内においてブローバイガスの流れ方向が急変するとともにその流速が交番的に変化することにより、ブローバイガスに含まれていたエンジンオイルは、凹凸面37に衝突/附着して効果的に分離され、ブリーザチャンバ30の下面から第1〜第3ブリーザ孔42〜44を介してクランクケースに落下する。また、凹凸面37は、シリンダ中心側の内壁であることからその温度が高く、ブリーザチャンバ30が排気ポート30側に設けられていることも相俟って、附着したエンジンオイルの粘度が低下してクランクケースへの落下が促進される。
一方、本実施形態のブリーザチャンバ30は、第1〜第3凹部32〜34と第1,第2凸部35,36と第1,第2小凹部38,39とからなる凹凸面37が内部に形成されていることから、筐体としての強度や剛性が非常に高くなっている。このため、チャンバカバー41がバランサ凹部21の前面に装着されることも相俟って、ブリーザチャンバ30の直上に位置するバランサ凹部21やバランサ軸受22に弾性変形が殆ど生じることがなく、第1バランサシャフト12が高い支持剛性をもって支持される。その結果、エンジン1の運転時において、第1バランサシャフト12の振れ等に起因する振動や騒音が効果的に抑制される。
また、本実施形態では、クランク軸受17の側方に各ブリーザ孔42〜44や各凹部32〜34が設けられ、クランクウエイト16の側方に両凸部35,36が設けられるため、複数のブリーザ孔42〜44を設けたにもかかわらず駄肉が少なくなってシリンダブロック2(すなわち、エンジン1)の大型化が抑制できる。そして、ブリーザチャンバ30からヘッドカバー4とをブローバイホース45によって連結したため、シリンダブロック2内に連通路を形成する必要がなくなり、シリンダブロック2の大型化が更に抑制できる。
また、本実施形態では、シリンダブロック2のクランク室とが給油孔51,52によって連通されているため、エンジン1の運転時にクランクウエイト16から飛散したエンジンオイルがバランサ凹部21に流入し、このエンジンオイルによって第1バランサシャフト12の軸受(中央のバランサ軸受22および両端を支持する軸受)の潤滑が効果的に行われる。
また、本実施形態では、第1〜第3ブリーザ孔42〜44がシリンダヘッド3内で動弁機構を潤滑したエンジンオイルの環流路としても機能するが、これらブリーザ孔42〜44の1つが何らかの原因で塞がった場合にも他の2つが存在することで円滑なエンジンオイルの環流が実現されて、その逆流が防止される。なお、図示はしないが、エンジン1の後面にも前面と同様のブリーザ孔が形成されている。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明はこれら実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では凹凸面に3つの凹部と2つの凸部と2つの小凹部とを形成するようにしたが、これらの組み合わせは設計上の都合等によって適宜変更可能である。また、上記実施形態では、凹部や凸部、小凹部の形状を平面視で略台形としたが、鋳抜きで形成することが可能であればその形状は自由に設定できる。また、上述したブローバイホースに代えて金属製のブローバイパイプを採用するようにしてもよいし、シリンダブロック内にブリーザチャンバとヘッドカバーとを連通させる連通路を形成するようにしてもよい。その他、エンジンの具体的構成やシリンダブロックの具体的形状等についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。
1 エンジン
2 シリンダブロック
3 シリンダヘッド
4 ヘッドカバー
4b 下流側ブローバイ通路
5 オイルパン
11 クランクシャフト
12 第1バランサシャフト
16 クランクウエイト
17 クランク軸受
21 バランサ凹部
22 バランサ軸受
30 ブリーザチャンバ
31 ブリーザ凹部
32〜34 凹部
35,36 凸部
37 凹凸面
38,39 小凹部
41 チャンバカバー
42〜44 ブリーザ孔(上流側ブローバイ通路)
45 ブローバイホース(配管)

Claims (5)

  1. シリンダブロックに形成され、一端がクランク室に開口するとともにシリンダの軸線方向に延びる複数の上流側ブローバイ通路と、
    前記シリンダブロックに形成され、前記各上流側ブローバイ通路の他端が連通するとともにクランクシャフトの軸線方向に延びるブリーザチャンバと
    を有する内燃機関のブリーザ装置であって、
    前記ブリーザチャンバには、クランクシャフトの軸線方向に沿って凹部と凸部とが交互に設けられた凹凸面が形成され
    前記クランクシャフトは、複数のクランク軸受によって前記シリンダブロックに回転自在に支持され、
    前記シリンダブロックの平面視において、前記クランク軸受の側方には前記上流側ブローバイ通路と前記凹部とが設けられ、前記クランク軸受間に位置するクランクウエイトの側方には前記凸部が設けられたことを特徴とする内燃機関のブリーザ装置。
  2. 前記凹凸面は、前記ブリーザチャンバにおけるシリンダ中心側の内壁であることを特徴とする、請求項1に記載された内燃機関のブリーザ装置。
  3. 前記ブリーザチャンバの上方には、バランサ軸受によって回転自在に支持されたバランサシャフトが設置されたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載された内燃機関のブリーザ装置。
  4. 前記凸部の先端には、前記凹部よりも小さい小凹部が形成されたことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された内燃機関のブリーザ装置。
  5. シリンダヘッドに下流側ブローバイ通路が形成され、前記ブリーザチャンバと当該下流側ブローバイ通路とが配管によって連通されたことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された内燃機関のブリーザ装置。
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