JP6296302B2 - アクリロニトリルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プロピレンを分子状酸素およびアンモニアにより気相接触アンモ酸化してアクリロニトリルを製造する方法に関する。
本発明は、2012年2月29日に日本国に出願された特願2012−042833号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
流動層反応器においてプロピレン、アンモニアおよび分子状酸素(酸素含有ガス)を原料として用い、気相接触アンモ酸化反応によりアクリロニトリルを製造する方法は広く知られている。特に、鉄およびアンチモンを含有する複合酸化物触媒はアンモ酸化反応に有用であり、工業的にも広く用いられている。
従来、鉄およびアンチモンを含有する複合酸化物触媒に関しては多くの検討がなされ、これまでに種々の触媒が提案されている。
例えば、特許文献1には鉄、アンチモン、およびコバルト、ニッケルよりなる群から選ばれた少なくとも一種の元素との複合酸化物触媒が開示されている。
また、特許文献2〜8には、鉄、アンチモン、テルル、さらにバナジウム、モリブデン、タングステン等を含有する複合酸化物触媒が開示されている。さらに、特許文献9〜11にはこれら鉄、アンチモンを含有する触媒の製造方法が開示されている。
また、触媒性能の経時変化を抑制し、長期間に亘ってアクリロニトリル収率を高く維持することができるアクリロニトリルの製造方法についてもいくつかの提案がなされている。
例えば、特許文献12には、反応使用によって性能が低下した触媒にテルルを富化し、900℃以下の高温で加熱することにより、目的生成物の選択率および触媒活性が改善されることが明記されている。そして、このテルル富化触媒を反応器内の触媒と入れ替えることにより、高いアクリロニトリル収率を維持することが開示されている。
また、特許文献13では、テルル含有酸化物触媒を用いたアンモ酸化反応中に、テルル担体、テルル化合物、及びモリブデン化合物を反応器中に添加することにより、目的生成物の選択率、および触媒活性の経時的な低下が改善されることが開示されている。
特公昭38−19111号公報 特公昭46−2804号公報 特公昭47−19765号公報 特公昭47−19766号公報 特公昭47−19767号公報 特開昭50−108219号公報 特開昭52−125124号公報 特開平4−118051号公報 特公昭47−18722号公報 特公昭47−18723号公報 特公昭59−139938号公報 特開昭58−139745号公報 特開昭58−140056号公報
しかしながら、これらの従来技術に開示された触媒やその触媒の製造方法、およびアクリロニトリルの製造方法は、高いアクリロニトリル収率を維持する点においてはある程度の効果は見られるものの、必ずしも十分ではない。従って、アクリロニトリルをさらに高い収率で製造する方法が望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、長期間に亘り、安定して高いアクリロニトリル収率を維持することができるアクリロニトリルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明のアクリロニトリルの製造方法の1つの態様は、流動層反応器にて、鉄(Fe)、アンチモン(Sb)およびテルル(Te)を含有する粒子からなる流動層触媒を用い、プロピレンを分子状酸素およびアンモニアにより気相接触アンモ酸化してアクリロニトリルを製造する方法において、前記気相接触アンモ酸化反応中における、前記流動層触媒のバルク組成におけるTe/Sb原子比をA、粒子の表面組成におけるTe/Sb原子比をBとしたときに、B/Aを2.0〜5.0の範囲に維持しながら、気相接触アンモ酸化反応を行うことを特徴とする。
また、前記流動層触媒のバルク組成が、下記一般式(1)で表されることが好ましい。
Fe10Sb Te・(SiO ・・・(1)
式中、Fe、Sb、Te、OおよびSiOはそれぞれ鉄、アンチモン、テルル、酸素およびシリカを表し、はバナジウム、モリブデンおよびタングステンからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素、Dはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、リン、ヒ素およびビスマスからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素、Eはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素を表し、a、b、c、d、e、xおよびyは原子比を表し、a=3〜100、b=0.1〜5、c=0.1〜10、d=0〜50、e=0〜5、y=10〜200であり、xはシリカを除く前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子数である。
また、本発明のアクリロニトリルの製造方法は、以下の側面を有する。
<1>アクリロニトリルの製造方法であって、
プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを含む原料ガスを、流動層触媒に接触させて気相接触アンモ酸化を行い、アクリロニトリルを得る、気相接触アンモ酸化工程を含み、
前記流動層触媒が、Fe、Sb、およびTeを含有する粒子からなり、
前記気相接触アンモ酸化工程が、前記流動層触媒のバルク組成におけるTe/Sb原子比をA、前記流動層触媒の粒子の表面組成におけるTe/Sb原子比をBとしたときに、B/Aを2.0〜5.0の範囲に維持しながら行われることを特徴とする、アクリロニトリルの製造方法;
<2>前記流動層触媒のバルク組成が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする、<1>に記載のアクリロニトリルの製造方法;
Fe10Sb Te・(SiO ・・・(1)
式中、Fe、Sb、Te、O、およびSiOはそれぞれ鉄、アンチモン、テルル、酸素およびシリカを表し、はバナジウム、モリブデン、およびタングステンからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を表し、Dはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、リン、ヒ素、およびビスマスからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を表し、Eはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素を表し、a、b、c、d、e、xおよびyは原子比を表し、a=3〜100、b=0.1〜5、c=0.1〜10、d=0〜50、e=0〜5、y=10〜200であり、xはシリカを除く前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子数である。ただし、、D、およびEが、2種以上の元素を含む場合、b、d、およびeは、各元素の原子比の合計を表す。
本発明のアクリロニトリルの製造方法によれば、長期間に亘り、安定して高いアクリロニトリル収率を維持することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の1つの態様は、流動層反応器にて、鉄(Fe)、アンチモン(Sb)およびテルル(Te)を含有する粒子からなる流動層触媒を用い、プロピレンを分子状酸素およびアンモニアにより気相接触アンモ酸化してアクリロニトリルを製造する方法において、前記気相接触アンモ酸化反応中における、前記流動層触媒のバルク組成におけるTe/Sb原子比をA、粒子の表面組成におけるTe/Sb原子比をBとしたときに、B/Aを2.0〜5.0の範囲に維持しながら、気相接触アンモ酸化反応を行うことを特徴とするアクリロニトリルの製造方法である。
また、本発明のその他の態様は、プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを含む原料ガスを、流動層触媒に接触させて気相接触アンモ酸化を行い、アクリロニトリルを得る、気相接触アンモ酸化工程を含み、前記流動層触媒が、Fe、Sb、およびTeを含有する粒子からなり、前記気相接触アンモ酸化工程が、前記流動層触媒のバルク組成におけるTe/Sb原子比をA、前記流動層触媒の粒子の表面組成におけるTe/Sb原子比をBとしたときに、B/Aを2.0〜5.0の範囲に維持しながら行われることを特徴とする、アクリロニトリルの製造方法である。
流動層反応器にて、鉄、およびアンチモンを含有する流動層触媒を用い、プロピレンの気相接触アンモ酸化反応によりアクリロニトリルを製造する方法においては、アクリロニトリル収率が経時的に低下することがある。本発明者らがこの原因について鋭意検討した結果、アクリロニトリル収率の経時的な低下は、前記流動層触媒粒子の表面組成が経時的に変化することによるものであることを見出した。その結果から、気相接触アンモ酸化反応中における、流動層触媒のバルク組成におけるTe/Sb原子比をA、流動層触媒の粒子の表面組成におけるTe/Sb原子比をBとしたときに、B/Aを2.0〜5.0の範囲に維持することで、アクリロニトリル収率の経時的な低下を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明では、気相接触アンモ酸化反応工程における、流動層触媒のバルク組成におけるTe/Sb原子比をA、流動層触媒の粒子の表面組成におけるTe/Sb原子比をBとしたときに、B/A(以下、「流動層触媒のB/A」という。)を2.0〜5.0の範囲に維持しながら気相接触アンモ酸化反応を行うことで、長期間に亘り、安定して高いアクリロニトリル収率を維持できる。
気相接触アンモ酸化反応工程中の流動層触媒のB/Aの下限値は好ましくは2.4であり、上限値は好ましくは4.6である。
本発明において、未反応(すなわち、流動層触媒が気相接触アンモ酸化反応に供される前)の流動層触媒のB/Aについては、気相接触アンモ酸化工程中の流動層触媒のB/Aを2.0〜5.0の範囲に維持することができる限り特に制限はない。未反応の流動層触媒のB/Aは、好ましくは2.4〜4.6である。流動層触媒のB/Aが上記の条件を満たすことにより、良好な触媒性能、すなわち、高いアクリロニトリル収率を維持することができる。
ここで、流動層触媒のバルク組成とは、少なくとも数十mgの流動層触媒の集合体全体の組成のことを指す。具体的には、流動層触媒のバルク粒子の粒子径が、1〜200μm、より好ましくは5〜150μmの組成のことを指す。流動層触媒のバルク組成におけるTe/Sb原子比Aを測定する方法としては特に制限はないが、例えばICP(誘導結合高周波プラズマ)発光分析法、XRF(蛍光X線)分析法、原子吸光分析法等の公知の元素分析を行うことにより確認できる。本発明では、簡便性の面からXRF分析法による、既知量の標準サンプルを用いた検量線法を採用した。すなわち、本発明においては、このような測定方法で測定した流動層触媒の組成を、「流動層触媒のバルク組成におけるTe/Sb原子比A」とする。
一方、流動層触媒の粒子の表面組成とは、流動層触媒の各粒子におけるごく表層を構成している元素の比率のことを指す。ここで、ごく表層とは、粒子表面から数nm程度の深さまでの層のことである。具体的には、流動層触媒の各粒子の最表層〜5nmの深さまでの層、より好ましくは、最表層〜3nmの深さまでの層のことを意味する。本発明において、流動層触媒の粒子の上述の表面組成におけるTe/Sb原子比Bは、XPS(X線光電子分光)法により測定して求めた値のことを意味する。
気相接触アンモ酸化工程中の流動層触媒のB/Aは、気相接触アンモ酸化工程中の流動層反応器から流動層触媒を一部抜き出し、その流動層触媒のバルク組成におけるTe/Sb原子比A、および流動層触媒の粒子の表面組成におけるTe/Sb原子比Bを上述した方法で測定することで求められる。
気相接触アンモ酸化反応工程中の流動層触媒のB/Aが上記下限値、すなわち、2.0よりも小さい場合には、青酸等の副生成物の生成量が増加し、アクリロニトリル収率が低下する。
一方、気相接触アンモ酸化反応工程中の流動層触媒のB/Aが上記上限値、すなわち、5.0よりも大きい場合には、二酸化炭素等の副生成物の生成量が増加し、アクリロニトリル収率が低下する。
なお、流動層触媒のB/Aが上記範囲内であればそのまま反応を継続すればよいが、流動層触媒のB/Aが上記範囲から外れない範囲で、流動層触媒のB/Aを増大させたり低減させたりしてもよい。
本発明のアクリロニトリルの製造方法の1つの態様において、気相接触アンモ酸化工程は、前記流動層触媒のB/Aを2.0〜5.0の範囲に維持しながら行われることを特徴とする。すなわち、本発明のアクリロニトリルの製造方法は、気相接触アンモ酸化反応工程が、流動層触媒のB/Aを2.0〜5.0の範囲に維持する工程を含むことが好ましい。流動層触媒のB/Aを特定の範囲に維持するためには、流動層触媒のB/Aを増大させる方法、もしくは流動層触媒のB/Aを低減させる方法を用いることが好ましい。
気相接触アンモ酸化反応工程中の流動層触媒のB/Aを増大させる方法としては、テルル元素を含む化合物、具体的には、テルル粉末、テルル酸等を反応器中に添加する方法や、テルルを含浸して製造した触媒など、流動層触媒のB/Aが高い触媒等を反応器中に添加する方法などが有効である。また、反応器中の触媒の一部を、流動層触媒のB/Aが高い触媒で置換する方法なども有効である。
一方、気相接触アンモ酸化反応工程中の流動層触媒のB/Aを低減する方法としては、流動層触媒のB/Aが低い触媒を反応器中に添加する方法や、反応器内の反応温度を一時的に上げる手法なども有効である。
また、反応器内の触媒の一部を前述の流動層触媒のB/Aが低い触媒で置換する方法なども有効である。
また、テルルは、反応中、アンチモンと比較して揮散しやすい性質を有する。この性質を利用し、反応温度を一時的に上昇(または下降)させるなどしてテルルの揮散を促進(または低減)させることにより、反応中の流動層触媒のB/Aを制御してもよい。
上述したテルル元素を含む化合物、テルルを含浸して製造した触媒、又は反応器内の触媒と異なる流動層触媒のB/Aを有する触媒を添加するタイミング、又は添加量については、本発明の効果を有する限り特に制限されないが、気相接触アンモ酸化反応が進行するに連れて反応中の流動層触媒のB/Aは低下する傾向にある。よって、気相接触アンモ酸化反応中における流動層触媒のB/Aが上記範囲となるような添加のタイミングや添加量が好ましい。
なお、反応中の流動層触媒のB/Aを制御する方法は、上述した方法に限定されず、公知の任意の方法で実施することができる。
本発明のアクリロニトリルの製造方法において、気相接触アンモ酸化工程は、流動層反応器に流動層触媒を充填して触媒層とし、前記触媒層にプロピレン、分子状酸素、およびアンモニアを含有する原料ガスを通過させることにより行われる。
原料ガスとしては本発明の効果を有する限り特に限定されないが、プロピレン/アンモニア/酸素が1/1.0〜2.0/1.0〜5.0(モル比)の範囲の原料ガスが好ましい。
酸素源である分子状酸素の供給減としては本発明の効果を有する限り特に限定されないが、空気を用いることが好ましい。
原料ガスは窒素、二酸化炭素等の不活性ガスや飽和炭化水素等で希釈してもよく、また、純酸素を混合して酸素濃度を高めて用いてもよい。
気相接触アンモ酸化反応の反応温度は350〜500℃が好ましく、反応圧力は常圧(100kPa)から500kPaの範囲内が好ましい。流動層触媒と反応ガスの接触時間は、0.1〜20秒間であることが好ましい。
本発明に用いられる流動層触媒としては、上記の要件を満たし、かつ鉄、アンチモンおよびテルルを含有する粒子からなるものであれば、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、高いアクリロニトリル収率が得られる点で、下記一般式(1)で表されるバルク組成であることが好ましい。
Fe10Sb Te・(SiO ・・・(1)
式中、Fe、Sb、Te、O、およびSiOはそれぞれ鉄、アンチモン、テルル、酸素およびシリカを表し、はバナジウム、モリブデン、およびタングステンからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を表し、Dはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、リン、ヒ素、およびビスマスからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を表し、Eはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素を表し、a、b、c、d、e、xおよびyは原子比を表し、a=3〜100、b=0.1〜5、c=0.1〜10、d=0〜50、e=0〜5、y=10〜200であり、xはシリカを除く前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子数である。ただし、、D、E、およびGが、2種以上の元素を含む場合、c、d、e、およびfは、各元素の原子比の合計を表す。
本発明に用いられる流動層触媒の製造方法については本発明の効果を有する限り特に限定はなく、例えば前述の特許文献1〜13等に記載の触媒の製造方法に倣えばよい。具体的には、流動層触媒を構成する各元素の原料を含有する溶液または水性スラリーを調製し、得られた溶液または水性スラリーを乾燥した後、得られた乾燥物を焼成する方法などが挙げられる。すなわち、本発明の流動層触媒の製造方法は、流動層触媒を構成する各元素を混合して、溶液または水性スラリーを調製する工程(I)、前記工程(I)で得られた溶液または水性スラリーを乾燥した後、得られた乾燥物を焼成する工程(II)を含む製造方法等により製造される事が好ましい。
工程(I)において、溶液または水性スラリーには、本発明の流動層触媒を構成する所望の元素の全てが、所望の原子比で含有されていてもよい。また、流動層触媒を構成する、一部の元素を含む溶液または水性スラリーを調製し、残りの元素を、乾燥後あるいは焼成後の触媒組成物に含浸等の方法により添加してもよい。
流動層触媒を構成する各元素の原料については、その目的、用途等に応じて決められ、酸化物、あるいは強熱することにより容易に酸化物になり得る硝酸塩、炭酸塩、有機酸塩、水酸化物、アンモニウム塩等、またはそれらの混合物を用いることが好ましい。
これらの原料を固体のまま、あるいは水や希硝酸等に溶解して溶液とした後に混合し、溶液または水性スラリーを得る。また、本発明の流動層触媒はシリカを含むが、前記シリカとしては、シリカゾルを用いることが好ましい。
溶液または水性スラリーのpH調製に際しては、必要に応じて硝酸やアンモニア水等を添加してpH調整を行ってもよく、また、濃縮処理や加熱処理により行ってもよい。
工程(II)は、前記工程(I)で得られた溶液または水性スラリーを乾燥した後、得られた乾燥物を焼成する工程である。工程(II)において、流動層触媒を構成する元素を含有する溶液またはスラリーを乾燥してできるだけ球状の乾燥物(乾燥粒子)を得ることが好ましい。乾燥は、通常、噴霧乾燥により行われる。乾燥機としては回転円盤式、ノズル式等一般的なものを用いることができる。流動層触媒として好ましい粒径分布を有する触媒を得るため、乾燥の条件を適宜調節することができる。
得られた乾燥粒子は焼成することにより触媒としての活性を発現する。焼成温度は300〜1000℃が好ましい。焼成温度が上記下限値、すなわち、300℃より低い場合には、触媒としての活性が発現しにくくなる。逆に焼成温度が上記上限値、すなわち、1000℃より高い場合には活性が過小となったり、アクリロニトリル収率が低下したりしやすくなる。すなわち、焼成温度が300〜1000℃であれば、触媒としての活性が発現しやすく、アクリロニトリル収率が低下しにくいため好ましい。
焼成時間は、短すぎると触媒としての活性が十分に発現しにくいことから、0.5時間以上が好ましい。上限は特に限定されないが、必要以上に焼成時間を延長しても、触媒の性能は一定以上とはならないため、通常は20時間以内である。すなわち、焼成時間は、0.5〜20時間であることが好ましい。
焼成に用いられる炉については特に制限はなく、箱型炉、ロータリーキルン、流動焼成炉等を用いることができる。流動層触媒の製造には、粒子を流動させながら焼成するロータリーキルンや流動焼成炉が好ましく、特に均一な焼成が可能であるという点で流動焼成炉が好ましい。焼成は二回、あるいはそれ以上に分けて行うことでアクリロニトリル収率や粒子強度等の物性が向上ため好ましい。
前記流動層触媒のバルク組成を上記一般式(1)の範囲内とするためには、例えば上述した溶液または水性スラリーの調製工程(I)における各触媒原料の添加量や、溶液または水性スラリーの調製工程後から乾燥工程(II)までの各工程で添加する触媒原料の添加量を適宜選択すればよい。また、工程(II)において、乾燥後の触媒に含浸する等の方法により触媒を製造する場合には、含浸等により添加される触媒原料の添加量を適宜選択すればよい。
前記流動層触媒のバルク組成は、上述したようにXRF(蛍光X線)分析法により元素分析を行うことにより確認できる。著しく揮発性の高い元素を用いない場合は、触媒製造時に用いた各原料の仕込み量から算出しても差し支えない。
以上説明した本発明のアクリロニトリルの製造方法によれば、気相接触アンモ酸化反応工程において、反応中の流動層触媒のB/Aを2.0〜5.0の範囲に維持しながら、気相接触アンモ酸化反応を行うことで、アクリロニトリル収率の経時的な低下を抑制でき、長期間に亘り、安定して高いアクリロニトリル収率を維持することができる。従って、本発明のアクリロニトリルの製造方法は、経済的に有利な方法である。
以下、実施例により、本発明の実施態様および効果を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
各実施例で用いた流動層触媒の製造方法を以下に示す。
また、流動層触媒の活性試験、流動層触媒のバルク組成と前記バルク組成におけるTe/Sb原子比A、および流動層触媒の粒子の表面組成におけるTe/Sb原子比Bの測定方法を以下に示す。
[流動層触媒の製造]
<流動層触媒1>
まず、63質量%の硝酸2400gに銅粉末68.8gを溶解した。この溶液に純水2300gを添加してから60℃に加熱し、電解鉄粉201.7g、テルル粉末64.5gを少量ずつ添加し、溶解した。溶解を確認した後、この溶液に硝酸ニッケル105.0g、硝酸クロム43.3g、硝酸マンガン10.4gを順次添加し、溶解した(A液)。
別途、純水700gにパラタングステン酸アンモニウム37.7gを溶解した溶液(B液)、純水100gにパラモリブデン酸アンモニウム31.9gを溶解した溶液(C液)を各々調製した。
次いで、攪拌しながらA液に20質量%コロイダルシリカ6508.0g、三酸化アンチモン粉末1052.6g、B液、C液を順次添加して水性スラリーを得た。
この水性スラリーに15質量%アンモニア水を滴下してpHを2.0に調整し、得られた水性スラリーを還流下、沸点で3時間加熱処理した。
加熱処理後の水性スラリーを80℃まで冷却し、85質量%リン酸20.8g、ホウ酸40.2gを順次添加した。
得られた水性スラリーを、噴霧乾燥機により、乾燥空気の温度を乾燥機入口で330℃、乾燥機出口で160℃として噴霧乾燥し、球状の乾燥粒子を得た。次いで、得られた乾燥粒子を250℃で2時間、400℃で2時間焼成し、最終的に流動焼成炉を用いて800℃で3時間流動焼成し、流動層触媒1を得た。
得られた流動層触媒1のバルク組成は、以下の通りであった。
Fe10Sb20Mo0.50.4Te1.4CuNi0.51.8Cr0.3Mn0.1(SiO60
ここで、xは、シリカを除く前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子数である。なお、流動層触媒1のバルク組成を表1にも示すが、表1においては酸素とその原子数(x)の記載を省略する。
<流動層触媒2>
50℃に加熱した純水150gに、パラモリブデン酸アンモニウム51.0g、テルル粉末253.4g、35%過酸化水素水200gを順次添加して溶解した後、3時間攪拌保持した。そこに純水を添加することにより、液量を720mLに調節し、D液を調製した。
3000gの流動層触媒1に、D液を少しずつ添加し、D液を含浸した混合物を得た。
この混合物を回転焼成炉内で、500℃で、3時間焼成を行うことにより、流動層触媒2を得た。
得られた流動層触媒2のバルク組成は、以下の通りであった。
Fe10Sb20Mo1.30.4Te6.9CuNi0.51.8Cr0.3Mn0.1(SiO60
ここで、xは、シリカを除く前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子数である。なお、流動層触媒2のバルク組成を表1にも示すが、表1においては酸素とその原子数(x)の記載を省略する。
<流動層触媒3>
50℃に加熱した純水150gに、硝酸カリウム3.65gを添加して溶解した後、30分間攪拌した。そこに純水を添加することにより、液量を720mLに調節し、E液を調製した。
3000gの流動層触媒1に、E液を少しずつ添加し、E液を含浸した混合物を得た。
この混合物を回転焼成炉内で、500℃で、3時間焼成を行うことにより、流動層触媒3を得た。
得られた流動層触媒3のバルク組成は、以下の通りであった。
Fe10Sb20Mo0.50.4Te1.4CuNi0.51.8Cr0.3Mn0.10.1(SiO60
ここで、xは、シリカを除く前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子数である。なお、流動層触媒3のバルク組成を表1にも示すが、表1においては酸素とその原子数(x)の記載を省略する。
<流動層触媒4>
63質量%硝酸2110gに銅粉末48.7gを溶解した。この溶液に純水2710gを添加してから60℃に加熱し、電解鉄粉213.9g、テルル粉末88.0gを少量ずつ添加し、溶解した。溶解を確認した後、硝酸マグネシウム29.5g、硝酸ニッケル55.7g、硝酸リチウム1.3gを順次添加し、溶解した(F液)。
別途、純水270gにパラタングステン酸アンモニウム10.0gを溶解した液(G液)、純水30gにパラモリブデン酸アンモニウム40.6gを溶解した液(H液)を各々調製した。
次いで、攪拌しながら、F液に20質量%シリカゾル5178.4g、三酸化アンチモン粉末1395.9gに15質量%アンモニア水を滴下してpHを1.8に調整し、得られた水性スラリーを還流下、3時間加熱処理した。
加熱処理後のスラリーを80℃まで冷却し、85質量%リン酸4.4g、G液、H液を順次添加した。
得られた水性スラリーを、噴霧乾燥機により、乾燥空気の温度を乾燥機入口で330℃、乾燥機出口で160℃として噴霧乾燥し、球状の乾燥粒子を得た。次いで、得られた乾燥粒子を250℃で2時間、400℃で2時間焼成し、最終的に流動焼成炉を用いて810℃で3時間流動焼成し、流動層触媒4を得た。
得られた流動層触媒4のバルク組成は、以下の通りであった。
Fe10Sb25Mo0.60.1Te1.0CuNi0.5Mg0.30.1Li0.05(SiO45
ここで、xは、シリカを除く前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子数である。なお、流動層触媒4のバルク組成を表1にも示すが、表1においては酸素とその原子数(x)の記載を省略する。
<流動層触媒5>
流動層触媒4の製造において、F液調製時に使用するテルル粉末の量を88.0gから219.9gに変更した点以外は、流動層触媒4と同様に製造を行い、流動層触媒5を得た。
得られた流動層触媒5のバルク組成は、以下の通りであった。
Fe10Sb25Mo0.60.1Te2.5CuNi0.5Mg0.30.1Li0.05(SiO45
ここで、xは、シリカを除く前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子数である。なお、流動層触媒5のバルク組成を表1にも示すが、表1においては酸素とその原子数(x)の記載を省略する。
Figure 0006296302
[流動層触媒の活性試験]
得られた流動層触媒を用い、以下の要領でプロピレンの気相接触アンモ酸化反応によるアクリロニトリル合成反応を実施した。
触媒流動部の内径が55mm、高さが2000mmの流動層反応器に、接触時間が3.2秒間となるように流動層触媒を充填した。流動層触媒と反応ガスの接触時間は下記式により求めた。
接触時間(秒)=見掛け嵩密度基準の触媒容積(mL)/反応条件に換算した供給原料ガス量(mL/秒)
酸素源として空気を用い、組成がプロピレン:アンモニア:酸素=1:1.1:2.3(モル比)である原料ガスを、ガス線速17cm/秒で触媒層に送入した。反応圧力は200kPa、反応温度は460℃とした。
反応生成物の定量にはガスクロマトグラフィーを用い、100時間に1回以上の頻度で分析を行った。その際、プロピレンの転化率が97.8〜98.2%となるように、触媒量を適宜調整した。具体的には、プロピレン転化率がこの範囲よりも小さい場合、新品触媒を添加し、触媒量を調整した。また、プロピレン転化率がこの範囲よりも大きい場合、反応器から触媒を抜き出し、プロピレンの転化率を調整した。
プロピレン転化率、アクリロニトリル収率、アンモニア燃焼率は下記式により求めた。
プロピレン転化率(%)={(供給したプロピレンの炭素質量−未反応プロピレンの炭素質量)/供給したプロピレンの炭素質量}×100
アクリロニトリル収率(%)={(生成したアクリロニトリルの炭素質量)/供給したプロピレンの炭素質量)}×100
アンモニア燃焼率(%)={(供給したアンモニアの窒素質量−未反応アンモニアの窒素質量−捕集された窒素含有有機化合物の窒素質量)/(供給したアンモニアの窒素質量)}×100
[流動層触媒のバルク組成と該バルク組成におけるTe/Sb原子比Aの測定]
流動層触媒のバルク組成と該バルク組成におけるTe/Sb原子比Aの測定は、蛍光X線分析装置(リガク社製、「ZSX−PrimusII」)を用いて行った。流動層触媒中のTeおよびSbの定量は、既知量の標準サンプルを用いた検量線法を用いて行った。
[流動層触媒の粒子表面におけるTe/Sb原子比Bの測定]
粒子表面におけるTe/Sb原子比Bの測定は、X線光電子分光分析装置(VG社製、「ESCALAB220iXL」)を用い、X線源としてAl−kα線を使用して行った。
測定により得られたXPSスペクトルについて、まず、Te3d5のピーク面積強度、およびSb3d3のピーク面積強度を算出し、次いで各々のピーク面積強度について装置固有の相対感度因子による補正を行ったうえでその比率を求めるという手順により、流動層触媒の粒子表面組成におけるTe/Sb原子比Bを求めた。
[実施例1]
以下のようにして活性試験および反応器より抜出した触媒の物性分析(XRF分析法測定およびXPS法測定)を行った。
流動層触媒1を用いて気相接触アンモ酸化反応によるアクリロニトリル合成反応を行った。なお、未反応の触媒についてXRF分析法測定およびXPS法測定を行ったところ、流動層触媒のB/Aは、4.1であった。
反応開始から100時間後に反応ガスを分析し、プロピレン転化率、アクリロニトリル収率、アンモニア燃焼率を求めた。また、反応ガス分析直後に反応器から触媒約5gを抜き出し、XRF分析法測定およびXPS法測定を行った。
引き続き、反応を継続し、反応開始から300時間後に反応ガスを分析し、プロピレン転化率、アクリロニトリル収率、アンモニア燃焼率を求めた。また、反応ガス分析直後に反応器から触媒約5gを抜き出し、XRF分析法測定およびXPS法測定を行った。反応開始から325時間後に反応器中の触媒質量の0.2%に相当する量の金属テルルを添加して、反応を継続した。
反応開始から500時間後に反応ガスを分析し、プロピレン転化率、アクリロニトリル収率、アンモニア燃焼率を求めた。また、反応ガス分析直後に反応器から触媒約5gを抜き出し、XRF分析法測定およびXPS法測定を行った。反応開始から525時間後に反応器中の触媒質量の2%に相当する量の流動層触媒2を添加して、反応を継続した。
反応開始から700時間後に反応ガスを分析し、プロピレン転化率、アクリロニトリル収率、アンモニア燃焼率を求めた。また、反応ガス分析直後に反応器から触媒約5gを抜き出し、XRF分析法測定およびXPS法測定を行った。反応開始から725時間後に反応器中の触媒質量の5%に相当する量の流動層触媒3を添加して、反応を継続した。
反応開始から1000時間後に反応ガスを分析し、プロピレン転化率、アクリロニトリル収率、アンモニア燃焼率を求めた。また、反応ガス分析直後に反応器から触媒約5gを抜き出し、XRF分析法測定およびXPS法測定を行った。
これらの結果を表2に示す。
[実施例2]
実施例1と同じ流動層触媒1を用い、以下のように気相接触アンモ酸化反応によるアクリロニトリル合成反応を行った。
反応開始から525時間まで実施例1と同様の運転を行い、反応開始から525時間後に反応器中の触媒質量の4%に相当する量の流動層触媒2を添加して、反応を継続した。また、これ以降も実施例1と同様の運転を行った。
反応開始から100、300、500、700、1000時間後に反応ガスを分析し、プロピレン転化率、アクリロニトリル収率、アンモニア燃焼率を求めた。また、それぞれ反応ガスの分析直後に反応器から触媒約5gを抜き出し、XRF分析法測定およびXPS法測定を行った。
これらの結果を表2に示す。
[実施例3]
流動層触媒4を用いて気相接触アンモ酸化反応によるアクリロニトリル合成反応を行った。なお、未反応の触媒についてXRF分析法測定およびXPS法測定を行ったところ、流動層触媒のB/Aは、3.0であった。
反応開始から100時間後に反応ガスを分析し、プロピレン転化率、アクリロニトリル収率、アンモニア燃焼率を求めた。また、反応ガス分析直後に反応器から触媒約5gを抜き出し、XRF分析法測定およびXPS法測定を行った。
引き続き、反応を継続し、反応開始から300時間後に反応ガスを分析し、プロピレン転化率、アクリロニトリル収率、アンモニア燃焼率を求めた。また、反応ガス分析直後に反応器から触媒約5gを抜き出し、XRF分析法測定およびXPS法測定を行った。反応開始から325時間後に反応器中の触媒質量の10%に相当する量の触媒を反応器から抜き出し、抜き出した触媒と等量の流動層触媒5を添加して、反応を継続した。
反応開始から500時間後に反応ガスを分析し、プロピレン転化率、アクリロニトリル収率、アンモニア燃焼率を求めた。また、反応ガス分析直後に反応器から触媒約5gを抜き出し、XRF分析法測定およびXPS法測定を行った。反応開始から525時間後に反応器中の触媒質量の8%に相当する量のモリブデン酸アンモニウムを添加して、反応を継続した。
反応開始から700時間後に反応ガスを分析し、プロピレン転化率、アクリロニトリル収率、アンモニア燃焼率を求めた。また、反応ガス分析直後に反応器から触媒約5gを抜き出し、XRF分析法測定およびXPS法測定を行った。反応開始から725時間後に反応器中の触媒質量の2%に相当する量の流動層触媒4を添加して、反応を継続した。
反応開始から1000時間後に反応ガスを分析し、プロピレン転化率、アクリロニトリル収率、アンモニア燃焼率を求めた。また、反応ガス分析直後に反応器から触媒約5gを抜き出し、XRF分析法測定およびXPS法測定を行った。
これらの結果を表2に示す。
[比較例1]
実施例3と同じ流動層触媒4を用い、かつ、反応途中で流動層触媒5およびモリブデン酸アンモニウムの添加を行わない以外は、実施例3と同様の運転を行った。
反応開始から100、300、500、700、1000時間後に反応ガスを分析し、プロピレン転化率、アクリロニトリル収率、アンモニア燃焼率を求めた。また、それぞれ反応ガスの分析直後に反応器から触媒約5gを抜き出し、XRF分析法測定およびXPS法測定を行った。
これらの結果を表2に示す。
[比較例2]
実施例1と同じ流動層触媒1を用い、以下のように気相接触アンモ酸化反応によるアクリロニトリル合成反応を行った。
反応開始から100時間後に反応ガスを分析し、プロピレン転化率、アクリロニトリル収率、アンモニア燃焼率を求めた。また、反応ガス分析直後に反応器から触媒約5gを抜き出し、XRF分析法測定およびXPS法測定を行った。反応開始から125時間後に反応器中の触媒質量の10%に相当する量の触媒を反応器から抜き出し、抜き出した触媒と等量の流動層触媒2を添加して、反応を継続した。
反応開始から300時間後に反応ガスを分析した。また、反応ガス分析直後に反応器から触媒約5gを抜き出し、XRF分析法測定およびXPS法測定を行った。
これらの結果を表2に示す。
Figure 0006296302
表2の結果から明らかなように、気相接触アンモ酸化工程中の流動層触媒のB/Aを2.0〜5.0の範囲に維持しながら、気相接触アンモ酸化反応を行った実施例1〜3の場合は、80%以上の高いアクリロニトリル収率を維持しながらアクリロニトリルを製造することができた。特に、反応中の流動層触媒のB/Aを2.4〜4.6の範囲に維持しながら、気相接触アンモ酸化反応を行った実施例1の場合は、80.5%以上のより高いアクリロニトリル収率を維持しながらアクリロニトリルを製造することができた。
一方、比較例1の場合、気相接触アンモ酸化反応の途中で、反応中の流動層触媒のB/Aが2.0未満になると、アクリロニトリルの収率が低下した。
また、比較例2の場合、気相接触アンモ酸化反応の途中で、反応中の流動層触媒のB/Aが5.0を超えると、アクリロニトリルの収率が低下した。
これらの結果より、気相接触アンモ酸化工程中の流動層触媒のB/Aが2.0〜5.0の範囲内のときのアクリロニトリル収率は、流動層触媒のB/Aが上記範囲外のときの収率よりも高かった。流動層触媒のB/Aとアクリロニトリルの収率の関係、すなわち、流動層触媒のB/Aが上記範囲内であればアクリロニトリルの収率の低下を効果的に抑制できることを確認できた。
従って、本発明であれば、気相接触アンモ酸化工程中の流動層触媒のB/Aを2.0〜5.0の範囲に維持しながら気相接触アンモ酸化反応を行うことで、経時的なアクリロニトリル収率の低下を抑制でき、長期間に亘り、安定して高いアクリロニトリル収率を維持することができる。

Claims (3)

  1. アクリロニトリルの製造方法であって、
    プロピレンと、分子状酸素と、アンモニアとを含む原料ガスを、流動層触媒(a)に接触させて気相接触アンモ酸化を行い、アクリロニトリルを得る、気相接触アンモ酸化工程を含み、
    前記流動層触媒(a)が、Fe、Sb、およびTeを含有する粒子からなり、
    前記気相接触アンモ酸化工程が、前記流動層触媒(a)のバルク組成におけるTe/Sb原子比をA、前記流動層触媒(a)の粒子の表面組成におけるTe/Sb原子比をBとしたときに、テルルを含む化合物、下記一般式(1)で表されるバルク組成を有する流動層触媒(b)、及びモリブデン酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種を加えることにより、B/Aを増大させるか低減させて、B/Aを2.0〜5.0の範囲に維持しながら行われ、前記Bは、X線光電子分光分析装置を用い、X線源としてAl−kα線を使用して測定を行い、得られたXPSスペクトルについて、Te3d5のピーク面積強度、およびSb3d3のピーク面積強度を算出し、次いで前記Te3d5のピーク面積強度、および前記Sb3d3のピーク面積強度について装置固有の相対感度因子による補正を行い、前記Te3d5のピーク面積強度、および前記Sb3d3のピーク面積強度の比率を算出することにより求められることを特徴とする、アクリロニトリルの製造方法。
    Fe10Sb Te・(SiO ・・・(1)
    (式中、Fe、Sb、Te、O、およびSiOはそれぞれ鉄、アンチモン、テルル、酸素およびシリカを表し、はバナジウム、モリブデン、およびタングステンからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を表し、Dはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、リン、ヒ素、およびビスマスからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を表し、Eはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素を表し、a、b、c、d、e、xおよびyは原子比を表し、a=3〜100、b=0.1〜5、c=0.1〜10、d=0〜50、e=0〜5、y=10〜200であり、xはシリカを除く前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子数である。ただし、、D、およびEが、2種以上の元素を含む場合、b、d、およびeは、各元素の原子比の合計を表す。)
  2. 前記流動層触媒(a)のバルク組成が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1に記載のアクリロニトリルの製造方法。
    Fe10Sb Te・(SiO ・・・(1)
    (式中、Fe、Sb、Te、O、およびSiOはそれぞれ鉄、アンチモン、テルル、酸素およびシリカを表し、はバナジウム、モリブデン、およびタングステンからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を表し、Dはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、リン、ヒ素、およびビスマスからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を表し、Eはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素を表し、a、b、c、d、e、xおよびyは原子比を表し、a=3〜100、b=0.1〜5、c=0.1〜10、d=0〜50、e=0〜5、y=10〜200であり、xはシリカを除く前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子数である。ただし、、D、およびEが、2種以上の元素を含む場合、b、d、およびeは、各元素の原子比の合計を表す。)
  3. 前記気相接触アンモ酸化工程が、前記気相接触アンモ酸化工程中に一部の前記流動層触媒(a)を抜出し、前記一部の流動層触媒(a)のバルク組成におけるTe/Sb原子比A、及び前記一部の流動層触媒(a)の粒子の表面組成におけるTe/Sb原子比Bを測定してB/Aを算出し、算出結果に基づいて、前記流動層触媒(a)のB/Aを増大させるか低減させて、B/Aを2.0〜5.0の範囲に維持しながら行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアクリロニトリルの製造方法。
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