以下、実施形態に係るトノカバー装置について説明する。図1はトノカバー装置20を示す斜視図であり、図2は同トノカバー装置20を示す分解斜視図である。図3は車両10においてトノカバー装置20を通常引出状態に引出した様子を示す説明図である。図4及び図5は車両10においてトノカバー装置20を第1荷物載置可能状態に引出す様子を示す説明図である。図6は車両10においてトノカバー装置20を第2荷物載置可能状態に引出した状態を示す説明図であり、図7は図6の矢符A部分の拡大図である。図8は車両10においてトノカバー装置20を第3荷物載置可能状態に引出した状態を示す説明図である。
<組込対象である車両について>
このトノカバー装置20は、後方に荷室11が設けられた車両10に設けられる(図3参照)。このような車両10は、ハッチバイクタイプ又はステーションワゴンタイプ等と称される。荷室11の後方は開口しており、その開口はバックドア12によって開閉される。荷室11は、荷室フロア11a上で、両側壁11b間に囲まれた空間である。荷室11の上方には、ルーフ11cが設けられている。荷室11の前方には、リアシート14の背もたれ部分14aがあり、荷室11は、背もたれ部分14aの上方空間を通じて乗員側室内と連通している。なお、背もたれ部14aは可倒式である場合もある。
<トノカバー装置の全体構成について>
本トノカバー装置20は、上記のような車両10の荷室11に組込まれるものであり、シート状部材30と、引出部材40と、巻取装置60とを備える。
巻取装置60は、長尺形状に形成されている。巻取装置60の長さ寸法は、荷室11の幅方向全体に亘って掛渡すことができる程度の大きさである。この巻取装置60は、荷室11の前側位置であって荷室11の上下方向中間位置で、車両10に取付けられる。例えば、巻取装置60の両端部が、両側壁11bに形成された凹部に嵌め込まれること等によって、巻取装置60が車両10に固定される。或は、巻取装置60は、背もたれ部分14aの後部に組込まれる。荷室11の上下方向におけるトノカバー装置20の位置は、好ましくは、リアサイドウインドウ11dの下縁部又は下縁部よりも下方(僅かに下方)の位置である。
この巻取装置60によって、シート状部材30が引出可能な状態で巻取られている。シート状部材30は、車両10の荷室11を覆うシート状の部材である。シート状部材30の幅寸法は、荷室11の幅方向全体に亘って配設可能な程度の大きさである。また、シート状部材30の全体の長さ寸法(引出方向の寸法)は、本巻取装置60が設けられた上下方向位置において、荷室11の前後長よりも大きく設定されている。
そして、この巻取装置60より、シート状部材30が車両後方に向けて引出される。引出されたシート状部材30は、背もたれ部分14aの後方で荷室11を上方空間と下方空間とに仕切る。
引出部材40は、長尺形状に形成されており、シート状部材30の引出側端部に取付けられている。引出部材40の長さ寸法は、荷室11の後側で、荷室11の幅方向全体に亘って掛渡すことができる程度の大きさである。この引出部材40は、車両10の荷室11の後側に設けられた保持部材48に保持されることによって、荷室11の後側で一定位置に保持される。荷室11の上下方向における引出部材40の保持位置(即ち、保持部材48の位置)は、好ましくは、巻取装置60と同じ位置である。これにより、シート状部材30を水平方向に引出した状態で、リアサイドウインドウ11dの下縁部又は下縁部よりも下方(僅かに下方)の位置で、当該荷室11の下方空間を覆い隠すように保持できる。
もっとも、引出部材40が保持部材48によって保持された状態で、シート状部材30は、通常引出状態(図3参照)と、第1荷物載置可能状態(図5参照)と、第2荷物載置可能状態(図6参照)、第3荷物載置可能状態(図8参照)とに切替えられる。
通常引出状態は、シート状部材30が平面状に引出された状態であり、ここでは、シート状部材30が水平姿勢で平面状に展開された状態である。第1荷物載置可能状態は、シート状部材30が通常引出状態よりも引出され、シート状部材30が巻取装置60と引出部材40との間で下方に弛んだ状態である。第2荷物載置可能状態は、シート状部材30が第1荷物載置状態よりもさらに引出され、シート状部材30が巻取装置60と引出部材40との間でさらに下方に弛んだ状態である。第3荷物載置状態は、シート状部材30が第2荷物載置可能状態よりもさらに引出され、シート状部材30のうち巻取装置60側の部分が1つの収容部を形成するように下方に弛むと共に、シート状部材30のうち引出部材40側の部分が上記第2荷物載置状態と同様態様にて巻取装置60と引出部材40との間でさらに下方に弛んだ状態である。
以下、各部についてより具体的に説明する。
<巻取装置について>
巻取装置60は、巻取機構70と、ケース部材62とを備える。
巻取機構70は、シート状部材30を巻取方向に付勢した状態で当該シート状部材30を引出及び巻取可能に構成されている。また、巻取機構70は、シート状部材30を引出した状態における後述する引出巻取操作によって、シート状部材30の巻取方向への付勢をロックした状態とそのロック状態を解除した状態との間で切替可能に構成されている。従って、巻取機構70がシート状部材30の巻取方向への付勢をロックした状態では、シート状部材30は一定の引出長に維持された状態となる。また、この状態で、ロック状態を解除すると、シート状部材30が巻取機構70によって巻取られるようになる。
<ケース部材>
ケース部材62は、樹脂又は金属等によって形成された部材であり、巻取機構70によって巻取られたシート状部材30を収容可能に形成されている。このケース部材62には、巻取機構70より引出されるシート状部材30が通過可能な引出用開口部64が形成されている。
より具外的には、ケース部材62は、長尺筒形状に形成されている。ここでは、ケース部材62の軸方向に直交する面における横断面形状は、非円形断面形状、より具体的には、三角形の角部を丸めた形状に形成されている(図2及び図3参照)。ケース部材62の長さ寸法は、シート状部材30の最大幅と同じであるかこれよりも大きく(僅かに大きく)設定されている。ケース部材62内には、巻取られたロール状のシート状部材30を収容可能な細長い収容空間が形成されている。
また、ケース部材62の周りの一部には、その延在方向に沿って引出用開口部64が形成されている。引出用開口部64の開口寸法(当該引出用開口部64を通るシート状部材30に対して直交する方向の寸法)は、シート状部材30の厚み寸法よりも大きい。これにより、シート状部材30が、本引出用開口部64を通過して引出される。巻取機構70が車両10に固定された状態で、引出用開口部64は、車両後方を向く位置に形成されている。引出用開口部64の上側縁部64Bは、湾曲しつつケース部材62内に向かうように延出している(図2及び図34参照)。また、引出用開口部64の下側縁部64Aは、他の部分よりも厚く形成されており、また、その外向き部分が曲面を描くように加工されている(図2及び図34参照)。
また、ケース部材62の引出用開口部64には、フック部66が設けられている。フック部66は、金属又は樹脂等で形成された部材であり、後述する係合用シート状部としてのネット部36に係合可能に構成されている。
ここでは、引出用開口部64の下側縁部64Aに複数のフック部66が設けられている。複数のフック部66は、引出用開口部64の延在方向に沿って間隔をあけて設けられている。フック部66の間隔は、後述するネット部36の孔部37(網目、図2及び図26参照)のピッチの整数倍であることが好ましい。また、フック部66は、少なくとも引出用開口部64の両端部に設けられており、ネット部36の両側部に係合することが好ましい。
フック部66は、ネット部に形成された孔部37(網目)に挿通可能に形成されている。ここでは、フック部66は、ネット部36に対して、その引出を規制する方向に係合可能で、その巻取方向には係合解除可能な形状に形成されている。
より具体的には,フック部66は、引出用開口部64の下側縁部64Aに固定される基部67と、当該下側縁部64Aから上方の引出用開口部64内に向けて突出するフック本体部68とを備える(図7参照)。
基部67は、引出用開口部64の下側縁部64Aに形成された凹部64gに嵌め込み可能に形成されている。凹部64gは、下側縁部64Aの内部で大きく拡がり、かつ、下側縁部64Aの上向き部分で狭まる形状に形成されている(図7参照)。凹部64gは、ケース部材62の延在方向全体において連なるように形成されている。
基部67は、上記凹部64gに嵌め込まれることで、引出用開口部64の下側縁部64Aの一定位置に固定される。ここでは、複数のフック部66の基部67は、基部連結部67aを介して連結されており、1つの長尺状部分として構成されている。この長尺状部分から上記フック本体部68が間隔をあけて突設される。これにより、複数の基部67及び基部連結部67aが繋がる1つの長尺状部分を凹部64gに嵌め込むことで、複数のフック本体部68が一括して引出用開口部64の下側縁部64Aに取付けられる。
もっとも、複数のフック部66がそれぞれ別の部分として分離して形成されていてもよい。
下側縁部64Aからのフック本体部68の突出寸法は、引出用開口部64の開口幅(上下方向の開口幅)よりも小さく設定されている。これにより、フック本体部68と上端部と引出用開口部64の上側縁部64Bとの間に、シート状部材30が通過可能な隙間が形成されている。特に、引出部材40が保持部材48に向けて引出されてネット部36が引出用開口部64内に配設された状態で(ここでは、水平方向に沿って引出された状態)、当該ネット部36がフック部66の上方に配設されることが好ましい(図3参照)。これにより、シート状部材30を水平姿勢で引出す際には、フック部66がシート状部材30に干渉し難いようにすることができる。本実施形態においても、このような設定とされている。
このフック本体部68は、ガイド傾斜部68aと固定用突部68bと固定用凹部68cとを備えている(図7参照)。ケース部材62の延在方向に沿って視た側面視において、ガイド傾斜部68aは、引出用開口部64の外側から内側に向けて引出用開口部64内に向けて徐々に突出する形状に形成されている。ガイド傾斜部68aのうち引出用開口部64の外側の端部は、下側縁部64Aの外向き部分に対して連続している。このため、引出用開口部64を通過するシート状部材30を、フック本体部68の突出方向である上方向に向けてかつ引出用開口部64内に向けて円滑にガイドすることができる。
固定用突部68bは、フック本体部68の上部から引出用開口部64内に向けて突出するように形成されている。フック本体部68のうち引出用開口部64の内向き部分であって固定用突部68bの下方に、その外向きに凹む固定用凹部68cが形成されている。ここでは、固定用突部68bと下側縁部64Aとの間に、固定用凹部68cが形成されている。
固定用突部68bのうちケース部62の内部側部分は、固定用部突部68bの基端から先端に向けてケース部62の内側へと傾斜する形状に形成されており、固定用突部68bを引出用開口部64の内側に越えたネット部36の部分が固定用凹部68cの奥に向けてガイドされるようになっている。
そして、ネット部36が引出用開口部64を通って外方に引出される際に、当該ネット部36をフック本体部68の基端側に移動させることで、そのネット部36を上記固定用凹部68cに係合させることができる。一方、ネット部36が引出用開口部64を通って内方に巻取られる際には、上記ガイド傾斜部68aに接触するため、当該フック本体部68に係合し難い。このため、本フック部66は、シート状部材30に対してその引出方向には容易に係合でき、巻取方向には係合し難い、方向性のある係合構造とされている。
もっとも、フック部66がこのような方向性のある係合構造である必要はない。例えば、フック部は、引出用開口部64に向けて突出する単なる棒状の部材として構成されていてもよい。フック部は、少なくともシート状部材の引出方向においてネット部36と係合可能な構成であればよい。
<巻取機構>
巻取機構70は、シート状部材30を巻取方向に付勢した状態で引出及び巻取可能に構成され、かつ、シート状部材30を引出した状態での引出巻取操作によって、シート状部材30の巻取方向への付勢をロックした状態とそのロックを解除した状態との間で切替可能に構成されている。
かかる巻取機構70としては、既に、車両用のウインドウを覆うシェード装置、一般家庭用のウインドウを覆うロール式スクリーン等で採用されている各種機構等を含む各種構成を採用することができる。
以下では、巻取機構70の一例について説明する。図9は巻取機構70の一端部の巻取ロック機構80の縦断面図であり、図10は巻取機構70の一端部の巻取ロック機構ケース部材120の縦断面図であり、図11は巻取機構70の一端部の内部構造を示す説明図である。
図1、図9〜図11に示すように、巻取機構70は、巻取軸部材72と、巻取付勢部材76と、巻取軸部材72の一端部に設けられた巻取ロック機構80と、巻取軸部材72の他端部に設けられた巻取支持ケース部材78とを備える。
巻取軸部材72は、シート状部材30の最大幅寸法と同じかこれよりも大きい(僅かに大きい)長さ寸法の筒形状に形成されている。シート状部材30の巻取側端部は、本巻取軸部材72に対して相対回転不能に固着されている。
この巻取軸部材72の両端部は、ケース部材62の両端部の巻取ロック機構ケース部材120、巻取支持ケース部材78に回転可能に支持されている。
ここでは、巻取軸部材72の一端部内に後述するラチェット部材82の介在軸部83が相対回転不能に挿入固定されている。また、介在軸部83の外側端部が巻取ロック機構ケース部材120の軸受部120a内に相対回転可能に嵌め込まれている。これにより、巻取軸部材72の一端部がラチェット部材82の介在軸部83を介して、ケース部材62の一端部の巻取ロック機構ケース部材120に回転可能に支持されている。
また、ケース部材62の他端部には、巻取支持ケース部材78が取付けられており、この巻取支持ケース部材78内に支持板79が固定されている。この支持板79にケース部材62に向けて軸受突部材78aが突設されており、この軸受突部材78aが巻取軸部材72の他端部内に相対回転可能に挿入されている。これにより、巻取軸部材72の他端部がケース部材62の他端部で回転可能に支持されている。
これらにより、巻取軸部材72が、ケース部材62内で当該ケース部材62に対して相対回転可能に支持されている。そして、巻取軸部材72が所定方向に回転することで、シート状部材30が巻取軸部材72に巻取られる。また、シート状部材30を引出すと、巻取軸部材72が前記所定方向とは逆方向に回転し、もって、シート状部材30が巻取軸部材72から引出される。
また、巻取付勢部材76は、巻取軸部材72を、巻取方向に付勢するための部材である。ここでは、巻取付勢部材76は、コイルバネであり、巻取軸部材72の他端部内で挿入されている。この巻取付勢部材76の一端部は、巻取軸部材72の延在方向中間部で当該巻取軸部材72に対して相対回転不能に固定されている。また、巻取付勢部材76の他端部は、巻取支持ケース部材78の支持板79に相対回転不能に固定されている。
そして、巻取軸部材72及び介在軸部83を、支持板72に対して、シート状部材30を引出す方向に回転させると、巻取付勢部材76が捩られる。この巻取付勢部材76が元に戻ろうとする力によって、巻取軸部材72及び介在軸部83が、支持板72、即ち、ケース部材62に対して、シート状部材30を巻取る方向に付勢される。
巻取ロック機構80は、ケース部材62に対して相対回転可能に支持されると共に巻取方向に付勢された巻取軸部材72を、その巻取付勢をロックした状態とそのロック解除した状態(つまり、巻取付勢可能な状態)とに切替可能構成されている。
巻取ロック機構80についてより具体的に説明する。
巻取ロック機構80は、ラチェット部材82と、カム部材90と、コントロールカム部材100と、パウル部材110とを備える。
ラチェット部材82は、介在軸部83と、ラチェットホイール部85とが一体形成された部材である。
介在軸部83は、棒状に形成されており、その延在方向中間部にラチェットホイール部85が形成されている。つまり、ラチェットホイール部85の両面側の中央部に介在軸部83が突出している。
介在軸部83のうちケース部材62側の端部は、ケース部材62の一端部と巻取ロック機構ケース部材120との間に取付けられる支持板120Bに形成された挿通孔120Bhを通ってケース部材62の一端部内に相対回転不能に嵌め込まれている。また、介在軸部83のうち外側の端部は、巻取ロック機構ケース部材120の軸受部120a内に相対回転可能に挿入されている。
介在軸部83は、上述したように、巻取軸部材72の一端部内に相対回転不能に挿入固定されている。このため、本ラチェット部材82は、巻取軸部材72と共に回転する。
ラチェットホイール部85は、その外周部に複数のロック歯85aが形成された環状部分であり、支持板120Bの外側部分に隣接して設けられている。このラチェットホイール部85の回転を、パウル部材110によって停止させることによって、シート状部材30の巻取方向への巻取軸部材72の回転がロックされた巻取付勢ロック状態となる。また、パウル部材110によるラチェットホイール部85の回転停止状態を解除することによって、巻取付勢部材76による付勢力によって巻取軸部材72がシート状部材30の巻取方向に付勢されたロック解除状態となる。
図12はパウル部材110の正面図であり、図13はパウル部材110の側面図である。パウル部材110は、ラチェットホイール部85のロック歯85aに選択的に係止して、ラチェット部材82の回転を停止させる部材である。
すなわち、パウル部材110は、支軸部112と、パウル本体部114と、被ガイド凸部116とが一体形成された部材である。
支軸部112は、長尺棒状形状に形成され、ラチェット部材82周りの位置で、巻取ロック機構ケース部材120に対して回転可能に支持可能に構成されている。
この歯軸部112を中心として半径方向に突出するようにしてパウル本体部114が形成されている。パウル本体部114の先端部は、上記ロック歯85aに対して係止可能に形成されている。そして、支軸部112周りにパウル部材110を回転させ、パウル本体部114の先端部をラチェットホイール部85に近づけることで、パウル本体部114の先端部がロック歯85aに係止して、シート状部材30の巻取方向へのラチェット部材82の回転を停止させる。また、支軸部112周りにパウル部材110を回転させ、パウル本体部114の先端部をラチェットホイール部85から遠ざけることで、パウル本体部114の先端部とロック歯85aとの係止が解除され、ラチェット部材82が両方向に回転できるようになる。
被ガイド凸部116は、パウル本体部114の先端部から巻取ロック機構ケース部材120の内部奥側に向けて突出するように形成されている。巻取ロック機構ケース部材120の内部には、本被ガイド凸部116の移動経路及び移動範囲を規制するガイドする弧状溝121が形成されている。これにより、パウル本体部114の先端部が、ラチェットホイール部85のロック歯85aに係止可能な係止位置と当該位置から外側に離れた非係止位置との間で、弧状経路に沿って移動可能に支持される。
なお、そのパウル本体部114の先端部は、ねじりコイルバネ等のパウル付勢部材118によって、前記非係止位置から係止位置に向けて付勢されている。
図14はコントロールカム部材100の側面図であり、図15はコントロールカム部材100の正面図であり、図16はカム部材90の側面図であり、図17はカム部材90の正面図である。
カム部材90と、コントロールカム部材100とは、パウル部材110がラチェット部材82に係止可能になる状態と係止不能になる状態とを切替える役割を果す。
すなわち、上記ラチェットホイール部85の軸方向外側に隣接してカム部材90が配設され、このカム部材90の軸方向外側に隣接してコントロールカム部材100が配設されている。これらカム部材90、コントロールカム部材100は、ラチェット部材82の筒部86に相対回転可能に外嵌めされており、ラチェット部材82と同軸周りに相対回転可能に支持されている。
なお、上記筒部86のうちコントロールカム部材100の軸方向外側部分には、皿バネ又はウェーブワッシャ等で構成されたカム付勢部材130が外嵌めされており、このカム付勢部材130によって、コントロールカム部材100及びカム部材90がラチェットホイール部85に向けて付勢されている。これにより、ラチェットホイール部85とカム部材90との間、及び、カム部材90とコントロールカム部材100との間で摩擦力が生じるようになっている。
コントロールカム部材100は、合成樹脂等によって円板状に形成された部材である。コントロールカム部材100の中央には、筒部86を回転可能に挿通可能な孔部100hが形成されている。
コントロールカム部材100の外周部の一部にはその中央に向けて凹む凹部102、103が形成されている。凹部102は、パウル本体部114の先端部を配設可能な程度の開き角度に設定されている。凹部103は、コントロールカム部材100の外周部であって上記凹部102とは異なる位置、ここでは、コントロールカム部材100の中心を挟んで反対側の位置に形成されている。凹部103は、カム部材90の突起部96をコントロールカム部材100の周方向に沿って移動可能な状態で配設可能な程度の開き角度に設定されている。
また、コントロールカム部材100の外周部のうち凹部102、103が形成された箇所以外の部分は、円弧状カム面104、105に形成されている。パウル本体部114の先端部が本円弧状カム面104、105に接触することで、非係止位置から係止位置に向けて移動しないように規制される。
また、コントロールカム部材100のうちカム部材90とは反対側の外向き面には、突起部106、107が形成されている。突起部106は、凹部102の一端部に隣接する位置に突設され、所定の回転姿勢で巻取ロック機構ケース部材120に設けられたストッパ122に当接可能とされている。また、突起部107は凹部102の他端部からコントロールカム部材100の周方向に沿って間隔をあけた位置に突設されており、所定の回転姿勢で巻取ロック機構ケース部材120に設けられたストッパ122に当接可能とされている。本コントロールカム部材100は、突起部106、107が、ストッパ122、123に当接する範囲内で回転量が規制されている。
カム部材90は、合成樹脂等によって円板状に形成された部材である。カム部材90の中央には、筒部86を回転可能に挿通可能な孔90hが形成されている。
カム部材90の外周部の一部にはその中央に向けて凹む凹部92が形成されている。凹部92は、パウル本体部114の先端部を配設可能な程度の開き角度に設定されている。凹部92のうちカム部材90の周方向に沿った一端部は、外側に凸となる円弧状縁部92aに形成されている。
また、カム部材90の外周部のうち凹部92が形成された箇所以外の部分は、円弧状カム面94に形成されている。パウル本体部114の先端部は、本円弧状カム面94に接触することによっても、非係止位置から係止位置に向けて移動しないように規制される。
また、カム部材90のうちコントロールカム部材100側の面には、突起部96が突設されている。突起部96は、カム部材90の外周部において凹部92とは異なる位置に設けられている。この突起部106は、コントロールカム部材100の凹部103内にコントロールカム部材100の周方向に沿って所定範囲内で移動可能な状態で配設される。
また、カム部材90のうちラチェットホイール部85側の面には、孔部90hの内径寸法よりも大きな内径寸法の環状凸部98が形成されており、この環状凸部98がラチェットホイール部85のうちカム部材90側の面に接触する。
また、カム部材90のうちコントロールカム部材100側の面には、上記環状凸部98の内径寸法よりも小さい内径寸法の環状凸部99が形成されている。コントロールカム部材100のうちカム部材90側の面には、環状凸部99を配設可能な環状凹部108が形成されている。そして、カム部材90とコントロールカム部材100との間では、環状凸部99の外向き面と環状凹部108の底面とが接触する。
カム部材90とラチェットホイール部85との間の摩擦トルクが、カム部材90とコントロールカム部材100との間の摩擦トルクよりも大きくなるように、環状凸部98が環状凸部99よりも外周側に位置するように形成されている。これにより、カム部材90は、コントロールカム部材100よりも、ラチェットホイール部85に対して優先的に追従して回転するようになっている。
この巻取ロック機構80の動作について図18〜図22を参照して説明する。
なお、シート状部材30が引出される際には、ラチェットホイール部85は矢符P1方向(反時計回り)に回転し、シート状部材30が巻取られる際には、ラチェットホイール部85は矢符P2方向(時計回り)に回転する。コントロールカム部材100は、突起部106、107がストッパ122、123に当接する範囲内で回転する。また、カム部材90は、コントロールカム部材100の回転可能な範囲に、その突起部96が凹部103内を移動可能な範囲を付加した範囲内で回転することができる。従って,ラチェットホイール部85が回転する際、カム部材90は、上記範囲内でラチェットホイール部85に追従して回転し、コントロールカム部材100は、上記範囲内で、カム部材90に追従して回転する。この際、カム部材90とラチェットホイール部85間の摩擦トルクが、カム部材90とコントロールカム部材100間の摩擦トルクよりも大きいため、コントロールカム部材100の回転が停止した状態でも、カム部材90の突起部96が凹部103内を移動可能な範囲内で、カム部材90はラチェットホイール部85に追従して回転する。
また、カム部材90の凹部92とコントロールカム部材100の凹部102とが一致してパウル本体部114の先端部の内側に配設された状態では、パウル本体部114の先端部は係止位置に向けて移動し、ラチェットホイール部85に係止可能な状態となるが、それ以外の状態では、パウル本体部114の先端部は、円弧状カム面94、104、105の少なくとも1つに接触するため、非係止位置に維持され、ラチェットホイール部85への係止はなされない状態が維持される。
図18はシート状部材30を完全に巻取った状態を示している。この状態では、突起部106がストッパ122に当接し、突起部96が凹部103の端部に当接した状態となっている。また、凹部92と凹部102とは一致した位置にあるが、パウル本体部114の先端部からは回転方向においてずれた位置に配設されている。このため、パウル本体部114の先端部は、非係止位置に位置している。
この状態からシート状部材30を引出すと、ラチェットホイール部85とカム部材90との間の摩擦によりカム部材90が矢符P1方向に回転すると共に、カム部材90とコントロールカム部材100との間の摩擦により、コントロールカム部材100も矢符P1方向に回転する。すると、図19に示すように、パウル本体部114の先端部の内側位置に、凹部92と凹部102が配設され、パウル本体部114の先端部がラチェットホイール部85に係止可能な状態となる。また、コントロールカム部材100の突起部107がストッパ123に当接し、コントロールカム部材100のそれ以上の回転が規制される状態となる。
シート状部材30をさらに引出すと、図20に示すように、上記のようにコントロールカム部材100の回転が規制されているので、カム部材90だけがラチェットホイール部85と共に追従して矢符P1方向に回転する。そして、やがて、カム部材90の突起部96がコントロールカム部材100の凹部103の端部に当接してカム部材90の回転も規制される。カム部材90とラチェットホイール部85とは接触しているだけであるため、カム部材90を停止させた状態のまま、ラチェットホイール部85をさらに回転させて、シート状部材30をさらに引出すことができる。
上記のようにシート状部材30を大きく引出した状態で、シート状部材30の引出力を解除して、シート状部材30を少し巻取らせるだけの弛みを付与するようにする。すると、巻取付勢部材76の付勢力によって巻取軸部材72が巻取方向に回転し、図20に示す状態からラチェットホイール部85が矢符P2方向に回転する。これに追従してカム部材90が矢符P2方向に回転し、さらにこれに追従してコントロールカム部材100も矢符P2方向に回転する。つまり、カム部材90とコントロールカム部材100とが一体的に矢符P2方向に回転する。すると、図21に示すように、コントロールカム部材100の突起部106がストッパ122に当接して回転規制された状態となる。さらに、シート状部材30が巻取られ、ラチェットホイール部85が矢符P2方向に回転すると、カム部材90だけが矢符P2方向に回転し、やがて、図18に示すように、凹部92と凹部102とは一致した状態となる。
この状態からシート状部材30を引き出すと、図19に示すように、一致する関係となる凹部92と凹部102とが、パウル本体部114の先端部の内側に配設されるので、パウル本体部114の先端部が凹部92及び凹部102を通じて係止位置に移動する。この状態で、シート状部材30の引出力を解除すると、巻取軸部材72及びラチェットホイール部85が僅かに矢符P2方向に回転し、図22に示すように、ラチェットホイール部85のいずれかのロック歯85aに、パウル本体部114の先端部が係止する。これにより、シート状部材30の巻取方向への付勢力がロックされた状態となる。
ここでは、シート状部材30の巻取方向への付勢力をロックするように切替える引出巻取操作としては、シート状部材30を引出した状態からシート状部材30を巻取らせた後、シート状部材30を所定量(ここでは、僅かな量)引出す操作が実施される。
なお、図22に示す状態からシート状部材30をさらに引出すと、ラチェットホイール部85に追従して、カム部材90及びコントロールカム部材100が回転し、ラチェットホイール部85とパウル本体部114の先端部との係止が解除される。そして、図20に示す状態となり、シート状部材30のさらなる引出を行える状態となる。また、この状態では、ラチェットホイール部85とパウル本体部114の先端部との係止が解除されるので、巻取付勢部材76による巻取方向への付勢力が作用する状態に戻るため、シート状部材30を引出す力を解除して、シート状部材30を巻取ることができる。
すなわち、シート状部材30の巻取方向への付勢力をロックした状態を解除するように切替える引出巻取操作としては、巻取付勢ロック状態から、シート状部材30をさらに引出す操作が実施される。
<シート状部材について>
シート状部材30は、車両10の荷室11を覆えるように構成されている。すなわち、シート状部材30は、全体として、荷室11の全体を覆える程度の広がりのシート状に形成されている。
シート状部材30は、遮蔽部32と、係合用シート状部としてのネット部36とを備える。
遮蔽部32は、樹脂又は布等により形成されたシート状の部材であり、シート状部材30において引出部材40側に設けられ、荷室11を上方から遮蔽可能に構成されている。ここでは、遮蔽部32は、荷室11の上下方向においてリアサイドウインドウ11dの下縁部又は下縁部よりも下方(僅かに下方)の位置で、荷室11を上方から遮蔽可能に構成されている。遮蔽部32は、荷室11を覆い隠すことができるように、孔等が形成されていないシート状の部材である。
より具体的には、遮蔽部32の幅寸法は、荷室11の幅寸法と同じか小さく(僅かに小さく)設定されている。遮蔽部32のうち引出部材40側の部分は、その先端側に向けて徐々に幅狭になるように形成されている。これは、荷室11がバックドア12に向けて徐々に幅狭になるため、この形状に対応させたものである。
また、遮蔽部32の前後方向(引出方向)長さ寸法は、保持部材48に保持された引出部材40と巻取装置60との間の全体で、荷室11の全体を上方から遮蔽可能な大きさに設定されている。すなわち、遮蔽部32の前後方向長さ寸法は、引出部材40と巻取装置60との間隔寸法と同じであるか、これよりも大きく設定されている。ここでは、遮蔽部32を引出部材40と巻取装置60との間で弛ませた状態で配設できるように(図5参照)、遮蔽部32の前後方向長さ寸法は、引出部材40と巻取装置60との間隔寸法よりも大きく設定されている。もっとも、遮蔽部32の前後方向長さ寸法は、引出部材40と巻取装置60との間隔寸法よりも小さくてもよい。
この遮蔽部32には、線状補強部材34が設けられている(図1、図2、図23〜図25参照)。ここでは、遮蔽部32の前後方向中間部であってネット部36に近い側の部分に、間隔をあけて2つの線状補強部材34が設けられている。線状補強部材34は、遮蔽部32のうちネット部36側の部分に設けられていてもよい。
係合用シート状部材であるネット部に、その幅方向に延在する線状補強部材を組込んでおけば、フック部を、線状補強部材と遮蔽部との間でネット部に係合させることができ、より安定した状態でネット部をフック部によって支持することが可能となる。
線状補強部材34は、金属又は樹脂等により、細長い棒状部材に形成されており、遮蔽部32にその幅方向に沿って取付けられている。線状補強部材34は、遮蔽部32の幅寸法と同じ又はこれよりも小さい(僅かに小さい)程度の長さ寸法の棒状部材に形成されている。線状補強部材34は、遮蔽部32の幅方向全体に亘って設けられていることが好ましいが、これは必須ではない。
また、線状補強部材34は、遮蔽部32と共に巻取装置60により巻取可能な程度に細く形成されている。例えば、図24に示す例では、線状補強部材34は、細長い板状に形成されており、遮蔽部32に沿った姿勢で当該遮蔽部32の一方主面に沿って設けられている。これにより、線状補強部材34を、遮蔽部32と共に巻取装置60の巻取軸部材72に巻取ることができるようになっている。なお、図25に示すように、線状補強部材34Bは、細い丸棒状の部材であってもよい。この場合でも、線状補強部材34Bが十分に細径であれば、遮蔽部32と共に巻取軸部材72に巻取ることができる。
線状補強部材34は、例えば、次のようにして遮蔽部32に取付けられる。すなわち、線状補強部材34よりも太い帯状の取付用シート部33が準備される。そして、線状補強部材34が、遮蔽部32と取付用シート部33との間に挟まれた状態で、取付用シート部33が遮蔽部32の一方主面上に配設される。この状態で、線状補強部材34の周囲全体、即ち、取付用シート部33の周囲全体が糸33a等を用いて遮蔽部32に縫付けられる。これにより、線状補強部材34が遮蔽部32に取付けられる。取付用シート部33も遮蔽部32と同様に柔軟なシート状に形成されているため、線状補強部材34と取付用シート部33とを、遮蔽部32と共に、巻取軸部材72に巻取ることができる。
ネット部36は、シート状部材30において、遮蔽部32に対して巻取軸部材72側に設けられている(図2、図7、図8、図26及び図27参照)。
ネット部36は、フック部66が係合可能な孔部37が形成されたシート状の部材である。ここでは、ネット部36は、網糸38が格子状をなすように組合わされたもの、即ち、一種の網によって構成されている。かかるネット部36では、各網糸38間に、複数の孔部37(網目)が縦横に並ぶよう形成され、各孔部37に対してフック部66を係合できるようになっている。
ネット部は、上記構成の他、六角形の網目を形成するようなネットであってもよい。また、係合用シート状部の全部又は一部が網である必要は無い。例えば,係合用シート状部は、孔の無いシート状部分と網との組合わせによって構成されていてもよいし、樹脂又は布等によって形成されたシートにフック部を係合可能な孔を打抜く等して形成したものであってもよい。
ネット部36の幅寸法は、遮蔽部32のうちネット部36側の部分の幅寸法と同じに形成されている。このため、ネット部36は、遮蔽部32に対して巻取装置60側に同幅のシート状部分として連続するように、当該遮蔽部32に対して連結されている。
ネット部36と遮蔽部32との連結は、例えば、次のようにしてなされる。すなわち、遮蔽部32のうちネット部36側の部分とネット部36のうち遮蔽部32側の部分とが重ね合せて配設される(図26及び図27参照)。そして、帯状の連結用シート部39が、それらの重ね合せ部分において、ネット部36上に被さるように配設される。この状態で、連結用シート部39の両側縁部が糸39a等を用いて遮蔽部32に縫付けられる。これにより、ネット部36のうち遮蔽部32側の部分が、遮蔽部32のうちネット側の部分と連結用シート部39との間に挟み込まれた状態で、遮蔽部32に対して連結される。
ネット部36の前後方向(引出方向)における長さ寸法は、フック部66をネット部36に係合可能な大きさであればよい。例えば、ネット部36は、その幅方向に複数の孔部37(網目)が一列並んでいれば、フック部66をネット部36に係合させることができる。このため、ネット部36の前後方向における長さ寸法は、孔部37(網目)1つ分の長さ寸法あればよい。
もっとも、ここでは、ネット部36のうち巻取装置60側の部分と遮蔽部32側の部分とを、フック部66に係合させて、それらの間の部分で、荷物を収容可能な垂下がり部分を形成することができる程度に、ネット部36の前後方向長さ寸法が設定される(図8参照)。例えば、ネット部36の前後方向長さ寸法は、巻取装置60と荷室11のフロアとの距離寸法からその2倍の寸法の間の大きさであることが好ましい。これにより、ネット部36によって、巻取装置60と荷室11のフロアとの距離寸法の半分の深さ以上でかつ荷室11のフロアに達し無い程度の収容部分を形成することができる。
上記ネット部36のうち巻取装置60側の部分は、巻取軸部材72に対して相対回転不能に取付けられている。ここでは、ネット部36に対して巻取軸部材72側に軸固定用シート73が上記と同様に縫合等で取付けられている。そして、この軸固定用シート73が巻取軸部材72に巻付けられた状態で、両面テープ、接着剤、縫合構造等を利用して、当該巻取軸部材72に相対回転不能に取付けられている。これにより、巻取軸部材72が回転することで、当該巻取軸部材72に対してネット部36及びこれに続く遮蔽部32が巻取られる。
<引出部材について>
図28は引出部材40を示す概略側面図であり、図29は引出部材40が保持部材48に保持された状態を示す概略側面図である。図1、図2、図28及び図29に示すように、引出部材40は、シート状部材30の引出側端部に取付けられた長尺部材である。この引出部材40は、シート状部材30の引出側端部を真っ直ぐな状態に維持する役割を果す。また、引出部材40は、シート状部材30を引出す際に、利用者が引出し力を作用させるために持つ部分としての役割を果す。さらに、引出部材40は、車両10の荷室11の後側に設けられた保持部材48に保持されることによって、シート状部材30を引出した状態に維持する役割をも果す。
ここでは、引出部材40は、長尺棒状の引出棒状部42と、板状部44とを備える。
引出棒状部42は、金属又は樹脂等によって形成された棒状部分であり、シート状部材30の引出側端部の幅寸法と同じ又は小さい(僅かに小さい)長さ寸法に形成されている。
引出棒状部42の両端部には、保持部材48に形成された保持凹部49に嵌め込み可能な嵌込端部45が設けられている。
すなわち、車両10の荷室11の両側壁11bの後部に保持部材48が設けられている。保持部材48には、後方に向けて開口する保持凹部49が形成されている。保持凹部49は、その後方より嵌込端部45を嵌め込み可能な大きさに設定されている。また、保持凹部49の上面であってその開口よりの位置に、内側に向けて突出する位置決め突部49aが突設されている。
嵌込端部45は、引出棒状部42の端部に嵌入又は外嵌め可能な部材であり、上記保持凹部49内に嵌込み可能な形状に形成されている。ここでは、嵌込端部45の上下寸法は、保持凹部49のうち位置決め突部49aとその下部との間の隙間と同程度に設定され、前後方向寸法は、嵌込端部45の前後寸法と同程度又はこれよりも小さく設定されている。
そして、嵌込端部45を保持凹部49内に嵌め込んだ状態で、位置決め突部49aよりも前側の部分では、嵌込端部45の上面と保持凹部49の上面との間に、位置決め突部49aの突出寸法と同程度の隙間が形成される。
嵌込端部45は樹脂等で形成された部材であり、その内部空間にがたつき抑制部材46を支持可能な保持形状構造が形成されている。ここでは、嵌込端部45内に中空支持空間45sが形成されると共に、その中空空間に連なるようにして挟持隙間45saが形成されている。また、中空支持空間45sは、嵌込端部45の上部の開口45hを通じて外部と連なっている。
がたつき抑制部材46は、嵌込端部45が保持凹部49に嵌め込まれた状態で、保持凹部49の内周面に付勢され押圧される部分を備える。
ここでは、がたつき抑制部材46は、弾性を有する細長板材を曲げて形成した部材であり、嵌込端部45内の挟持隙間45saに保持される弾性保持部46aと、当該弾性保持部46aに一体形成された弾性当接部46bとを備える。
弾性保持部46aは、L字状をなす部分であり、その一端部を挟持隙間45saで挟んで支持した状態で、中空支持空間45s内に配設されている。
弾性当接部46bは、弾性保持部46aの他端部に連なる山状突起部分であり、上記開口45hを通じて嵌込端部45の上方に突出している。弾性当接部46bは、弾性保持部46aによって片持ち状に弾性変位可能に支持された状態で、中空支持空間45s内に退避するように移動可能である。従って、弾性当接部46bは、上記開口45hを通じて嵌込端部45の上方に大きく突出した状態と小さく突出した状態との間で変位可能とされている。
この嵌込端部45を保持凹部49内に嵌め込む前の状態では、弾性当接部46bは比較的大きく突出している。そして、嵌込端部45を、保持凹部49内にその後方より嵌め込むと、弾性当接部46bが位置決め突部49aに当接し、その弾性当接部46bが嵌込端部45側に退避するように弾性変形する。嵌込端部45をさらに保持凹部49内に嵌め込み、弾性当接部46bが位置決め突部49aを乗越えると、弾性当接部46bが比較的大きく突出するように突出し、位置決め突部49aの奥側及び保持凹部49の上面に付勢された状態で当接した状態となる。すなわち、弾性当接部46bの突出部分が、嵌込端部45と保持凹部49との隙間に介在した状態となる。これにより、嵌込端部45が、保持凹部49に対してその前後方向及び上下方向に位置決めされた状態で当該保持凹部49内に保持されることになる。なお、位置決め突部49aが設けられていない場合でも、がたつき抑制部材46によって、上下方向に対するがたつきを抑制することは可能である。
図30は、第1変形例に係る嵌込端部45B及びがたつき抑制部材46Bを示す図である。
この変形例では、保持部材48に対応する保持部材48Bの保持凹部49Bの上下部分に位置決め突部49Baが形成されている。
また、嵌込端部45B内に中空支持空間45Bsが形成され、その中空支持空間45Bsの前側に挟持隙間45Bsaが形成されている。中空支持空間45Bsは、嵌込端部45Bの上部及び下部の開口45Bh、45Bhを通じて外部と連なっている。
また、がたつき抑制部材46Bは、弾性を有する細長板材を曲げて形成した部材であり、中空支持空間45Bs内に保持される弾性保持部46Baと、当該弾性保持部46Baの両端部に一体形成された一対の弾性当接部46Bbとを備える。
弾性保持部46Baは、U字状をなす部分であり、その中間部を挟持隙間45Bsaで挟んで支持した状態で、中空支持空間45Bs内に配設されている。
弾性当接部46Bbは、弾性保持部46Baの各端部に連なる山状突起部分であり、上記開口45Bhを通じて嵌込端部45Bの上方又は下方に突出している。弾性当接部46Bbは、弾性保持部46Baによって片持ち状に弾性変位可能に支持された状態で、中空支持空間45Bs内に退避するように移動可能である。従って、弾性当接部46Bbは、上記開口45Bhを通じて嵌込端部45の上方又は下方に大きく突出した状態と小さく突出した状態との間で変位可能とされている。
そして、この嵌込端部45Bを保持凹部49B内に嵌め込むと、一対の弾性当接部46Bbが比較的大きく突出するように突出し、位置決め突部49Baの奥側及び保持凹部49Bの上面又は下面に付勢された状態で当接した状態となる。これにより、嵌込端部45Bが、保持凹部49Bに対してその前後方向及び上下方向に位置決めされた状態で当該保持凹部49B内に保持されることになる。
図31は、第2変形例に係る嵌込端部45C及びがたつき抑制部材46Cを示す図である。
この変形例では、嵌込端部45C内に中空支持空間45Csが形成され、その中空支持空間45Csの後側に挟持隙間45Csaが形成されている。中空支持空間45Csは、嵌込端部45Cの上部及び前部の開口45Ch1、45Ch2を通じて外部と連なっている。
また、がたつき抑制部材46Cは、弾性を有する細長板材を曲げて形成した部材であり、中空支持空間45Cs内に保持される弾性保持部46Caと、当該弾性保持部46Caの一端部に一体形成された第1弾性当接部46Cbと、第1弾性当接部46Cbに一体形成された第2弾性当接部46Ccとを備える。
弾性保持部46Caは、直線をなす部分であり、挟持隙間45Csaで挟んで支持した状態で、中空支持空間45Cs内に配設されている。
第1弾性当接部46Cbは、弾性保持部46Caの一端部に連なる山状突起部分であり、上記開口45Ch1を通じて嵌込端部45Cの上方に突出している。第1弾性当接部46Cbは、弾性保持部46Caによって片持ち状に弾性変位可能に支持された状態で、中空支持空間45Cs内に退避するように移動可能である。従って、第1弾性当接部46Cbは、上記開口45Ch1を通じて嵌込端部45の上方に大きく突出した状態と小さく突出した状態との間で変位可能とされている。
第2弾性当接部46Ccは、第1弾性当接部46Cbに対してL字状をなしつつ連なる山状突起部分であり、上記開口45Ch2を通じて嵌込端部45Cの前方に突出している。第2弾性当接部46Ccは、弾性保持部46Ca及び第1弾性当接部46Cbによって弾性変位可能に支持された状態で、中空支持空間45Cs内に退避するように移動可能である。従って、第2弾性当接部46Ccは、上記開口45Ch2を通じて嵌込端部45の前方に大きく突出した状態と小さく突出した状態との間で変位可能とされている。
そして、この嵌込端部45Cを保持凹部49内に嵌め込むと、第1弾性当接部46Cbが上記弾性当接部46bと同様に、位置決め突部49aの奥側及び保持凹部49の上面に付勢された状態で当接した状態となる。また、第2弾性当接部46Ccは、保持凹部49の奥側の面(前側の面)に付勢された状態で当接する。これにより、嵌込端部45Cが、保持凹部49に対してその前後方向及び上下方向に位置決めされた状態で当該保持凹部49内に保持されることになる。特に、第2弾性当接部46Ccが保持凹部49の奥側の面(前側の面)に付勢された状態で当接するため、第1弾性当接部46Cbが位置決め突部49aの奥側の部分により確実に押付けられた状態となる。このため、嵌込端部45Cが、保持凹部49に対してその前後方向により確実に位置決めされた状態で当該保持凹部49内に保持されることになる。
図32及び図33は第3変形例に係る嵌込端部45D及びがたつき抑制部材46Dを示す図である。
この変形例では、保持部材48Dには、車両前方側内向する保持凹部49Dが形成されている。保持凹部49Dの奥側(車両後方側)の下部には、保持凹部49Dの開口部の下端部よりも凹む収容凹部49Daが形成されている。この収容凹部49Daの車両前方側部分は、車両前方側に向けて凹む位置決め凹部49Dbに形成されている。
また、保持凹部49Dの奥側(車両後方側)部分の下部及び上下方向中間部には、突部49Dc、49Deが形成されている。突部49Dc、49De間の部分は、それらの先端部よりも凹んでいる。
また、嵌込端部45Dは、樹脂等によって形成された部材であり、保持凹部49Dのうち収容凹部49Daに嵌込み可能な形状部分45Daを有する。ここでは、前記部分45Daのうち車両前側部分は、下方に向けて順次突出する形状に形成され、上記位置決め凹部49Dbに嵌め込み可能に形成されている。また、部分45Daの前後方向寸法は、収容凹部49Daの前後寸法と同程度に設定され、その上下方向寸法は、保持凹部49Dの車両前方側開口を通過可能で、かつ、保持凹部49Dの上下方向寸法よりも小さい寸法に設定されている。
そして、部分45Daの車両前側部分を位置決め凹部49Dbに嵌め込んだ状態で、嵌込端部45Dの部分45Daを、保持凹部49Dの奥側下部に嵌込むことができるようになっている。
また、嵌込端部45Dの部分45Daには、がたつき抑制部材46Dが組込まれている。例えば、上記嵌込端部45Dと同様にその内部にがたつき抑制部材46Dを組込可能な空間を形成することで、がたつき抑制部材46Dが嵌込端部45Dに組込まれている。
がたつき抑制部材46Dは、弾性を有する細長板材を曲げて形成した部材であり、ここでは、J字状形状をなしている。がたつき抑制部材46Dは、その曲げ部分を部分45Daに対して車両後方に向けて突出させた状態で、その直線部分を部分45Daで保持することで、嵌込端部45Dに組込まれている。
そして、部分45Daを保持凹部49D内に嵌込んだ状態で、がたつき抑制部材46Dの曲げ部分が突部49Dc、49De間で保持凹部49Dの奥側部分に押付けられる。これにより、嵌込端部45Dの部分45Daが保持凹部49D内に一定位置で保持される。
この変形例では、次のようにして嵌込端部45Dを保持凹部49Dに保持させることができる。すなわち、部分45Daを、保持凹部49Dの車両前側開口を通って保持凹部49D内に配設する。そして、嵌込端部45Dの車両後側部分を持上げるように嵌込端部45Dを傾斜させて、部分45Daの車両前側部分を位置決め凹部49Dbに嵌込む(図33参照)。この後、嵌込端部45Dの車両後側部分を押下げると、がたつき抑制部材46Dの曲げ部分が弾性変形して、突部49Dcを乗越えて、突部49Dc、49De間で保持凹部49Dの奥側に押し当てられる。これにより、嵌込端部45Dが保持凹部49Dに保持される。
この変形例によると、嵌込端部45Dを車両前側より保持凹部49Dに嵌込むことができるというメリットがある。
なお、がたつき抑制部材は、保持凹部側に設けられ、引出部材の端部に押圧されるものであってもよい。例えば、がたつき抑制部材としての板状バネが保持凹部に設けられ、当該板ばねの一部が保持凹部内に突出し、この板ばねの一部が、当該保持凹部内に嵌め込まれた引出部材の端部に押圧されることで、保持凹部内での引出部材の端部のがたつきを抑制してもよい。すなわち、引出部材の端部と保持凹部との少なくとも一方に、該引出部材の端部と該保持凹部との他方を押圧するがたつき抑制部材が設けられていればよい。
もっとも、上記引出部材40が、がたつき抑制部材46、46B、46C、46Dを備えていることは必須ではない。
板状部44は、引出棒状部42に対して一定姿勢で固定された板状部材である。板状部44は、引出棒状部42の両端部が保持部材48に保持された状態で、当該引出棒状部42とバックドア12との間の隙間を塞ぐことができる大きさ及び形状の板状部材に形成されていることが好ましい。
また、この板状部44には、取っ手部44aが取付けられており、利用者は、その取っ手部44aを掴むことで、シート状部材30の引出及び巻取操作を容易に行える。
<動作について>
本トノカバー装置20の動作について説明する。
本トノカバー装置20は、シート状部材30を巻取装置60によって巻取った巻取状態からシート状部材30を引出すことで、通常引出状態(図3参照)、第1荷物載置可能状態(図5参照)、第2荷物載置可能状態(図6及び図7参照)、第3荷物載置可能状態(図8参照)に切替えて使用可能に構成されている。
すなわち、巻取状態では、シート状部材30の全体が巻取装置60によって巻取られている。この状態では、引出部材40が巻取装置60のケース部材62に対して引出用開口部64の外側から当接した状態となっている。この状態では、荷室11は、上下全体で連なる1つの収容空間を形成している。
通常引出状態では、シート状部材30が引出され、引出部材40の両端部が保持部材48によって保持される(図3参照)。この状態では、シート状部材30は、巻取装置60によって巻取方向に付勢された状態となっており、遮蔽部32が荷室11の上下方向中間部において、水平姿勢で展開し張った状態で配設される。この状態では、荷室11は、シート状部材30の遮蔽部32によって上下に仕切られた状態となる。
この通常引出状態は、荷室11のフロア11a上に載置された荷物が遮蔽部32によって覆われた状態となる。このため、通常引出状態は、主として、荷室11のフロア11a上に載置された荷物を、遮蔽部32によって隠した状態に維持する目的で使用される。
なお、通常引出状態では、シート状部材30は巻取方向に付勢された状態のままであるため、引出部材40の両端部を保持部材48から外すと、上記巻取状態に戻すことができる。
第1荷物載置可能状態では、通常引出状態よりもシート状部材30が引出され、引出部材40と巻取装置60との間でシート状部材30が下方に弛んだ状態で配設される(図5参照)。
通常引出状態から第1荷物載置可能状態への切替は次のようにして行われる。すなわち、図4に示すように、ネット部36が引出されない範囲内で、シート状部材30を上記通常引出状態よりも大きく引出す。この後、引出し力を解除して、シート状部材30を少し巻取らせた後、シート状部材30を所定量(ここでは、僅かな量)引出す。かかる引出巻取操作によって、上述したように、巻取機構70は、シート状部材30の巻取方向への付勢をロックした状態となる。この状態で、引出部材40の両端部を保持部材48によって保持すると、図5に示すように、引出部材40と巻取装置60との間でシート状部材30が下方に弛んだ状態で配設されるようになる。
この状態では、引出部材40と巻取装置60との間でシート状部材30が下方に弛んだ状態で配設されるため、その凹み部分に荷物Wを配設することができる。荷物Wは、シート状部材30の凹み部分に載置されるため、車両10の発進時及び停車時等において、シート状部材30上に安定して支持される。
なお、この状態でも、引出部材40と巻取装置60との間には、遮蔽部32が配設されているため、荷室11のフロア11a上に載置された荷物を、遮蔽部32によって隠すことができる。
なお、この状態では、線状補強部材34が巻取装置60から引出されている。このため、シート状部材30の幅方向において部分的(例えば、幅方向中央部)に載置された荷物Wの荷重を線状補強部材34の延在方向全体、即ち、シート状部材30の幅方向に分散させることができる。これにより、シート状部材30に皺が発生し難くなる。また、荷物Wの荷重が巻取軸部材72の延在方向に沿って分散して受止められ、シート状部材30と巻取軸部材72と連結箇所に局所的に大きな力が作用し難いという利点もある。
また、この第1荷物載置可能状態から、引出部材40の両端部を保持部材48から外し、シート状部材30をさらに引出すと、巻取機構70によるシート状部材30の巻取方向への付勢のロック状態が解除され、上記巻取状態に戻すことができる。
ところで、この第1荷物載置可能状態において、載置される荷物Wの重さが、巻取装置60からシート状部材30を引出せる程度の大きさに達していると、巻取装置60の巻取方向への付勢力に抗して、シート状部材30が巻取装置60から引き出されてしまう。
そこで、載置される荷物Wの重さが大きい場合には、第2荷物載置可能状態とすることが好ましい。
第2荷物載置可能状態では、ネット部36がフック部66を越える迄シート状部材30が巻取装置60より引出され、フック部66がネット部36に係合すると共に、引出部材40と巻取装置60との間でシート状部材30が下方により大きく弛んだ状態で配設される(図6参照)。
通常引出状態又は第1荷物載置可能状態から第2荷物載置可能状態への切替は次のようにして行われる。すなわち、ネット部36がフック部66を越える迄、シート状部材30を大きく引出す。この後、引出し力を解除して、シート状部材30を少し巻取らせた後、シート状部材30を所定量(ここでは、僅かな量)引出し、ネット部36がフック部66を越えた状態で、巻取機構70がシート状部材30の巻取方向への付勢をロックした状態とする。そして、ネット部36を下方に弛ませる等して、フック部66をネット部36に係合させる(図7参照)。この係合構造により、巻取装置60からのシート状部材30の引出が抑制される。この前後で、引出部材40の両端部を保持部材48によって保持させると、図6に示すように、引出部材40と巻取装置60との間でシート状部材30が下方に弛んだ状態で配設されるようになる。
この状態では、引出部材40と巻取装置60との間でシート状部材30が大きく下方に弛んだ状態で配設されるため、その凹み部分に荷物Wを配設することができる。荷物Wは、シート状部材30の凹み部分に載置されるため、車両10の発進時及び停車時等において、シート状部材30上に安定して支持される。特に、フック部66がネット部36に係合しているため、荷物Wの重さが大きい場合でも、シート状部材30が巻取装置60から引出され難いという利点がある。
なお、この状態でも、引出部材40と巻取装置60との間の大部分には、遮蔽部32が配設されているため、荷室11のフロア11a上に載置された荷物を、遮蔽部32によってほとんど隠すことができる。
また、この第2荷物載置可能状態から、引出部材40の両端部を保持部材48から外し、シート状部材30をさらに引出すと、巻取機構70によるシート状部材30の巻取方向への付勢のロック状態が解除され、上記巻取状態に戻すことができる。
なお、本第2荷物載置可能状態では、荷物Wの重さによってシート状部材30が巻取装置60から引出され、この引出力がフック部66とネット部36との係合構造によって受止められる。このため、第2荷物載置可能状態の初期状態或は荷物Wの載置状態で、巻取機構70がシート状部材30の巻取方向への付勢をロックした状態となっていることは必須ではない。
第3荷物載置可能状態では、ネット部36がフック部66を越える迄シート状部材30が巻取装置60より引出され、ネット部36のうち巻取装置60側の部分と遮蔽部32側の部分とが同時にフック部66に係合して当該ネット部36が下方に弛んだ状態で配設されると共に、引出部材40と巻取装置60との間でもシート状部材30が下方に大きく弛んだ状態で配設される(図8参照)。
すなわち、上記いずれかの状態から第3荷物載置可能状態への切替は次のようにして行われる。すなわち、ネット部36がフック部66を越える迄、シート状部材30を大きく引出す。好ましくは、ネット部36の全体を巻取装置60から引出す。この後、引出し力を解除して、シート状部材30を少し巻取らせた後、シート状部材30を所定量(ここでは、僅かな量)引出し、ネット部36がフック部66を越えた状態で、巻取機構70がシート状部材30の巻取方向への付勢をロックした状態とする。そして、ネット部36を下方に弛ませる等して、ネット部36のうち巻取装置60側の部分をフック部66に係合させる。この後、利用者がネット部36のうち遮蔽部32側の部分を持ってフック部66に引っ掛ける。これにより、ネット部36のうち巻取装置60側の部分及び遮蔽部32側の部分がフック部66に係合され、フック部66のうちそれらの間の部分がネット部36の下方に袋状に垂下がる。この部分に荷物Waを載置することができる。荷物Waは、ネット部36のうち巻取装置60側の部分をフック部66に係合させる前の時点で、ネット部36上に配設しておくことが好ましい。
そして、この前後で、引出部材40の両端部を保持部材48によって保持させると、図8に示すように、引出部材40と巻取装置60との間もシート状部材30が下方に弛んだ状態で配設されるようになり、この部分にも荷物を載置することができる。
なお、本第3荷物載置可能状態では、ネット部36のうち遮蔽部32側の部分をフック部66に対して容易に係合できるようにするために、図34に示すように、遮蔽部32のうちフック部66側の部分に上記線状補強部材34と同様の線状補強部材134を配設しておくことが好ましい。
これにより、利用者が、線状補強部材134をフック部66に対してケース部材62側に配設することで、フック部66を、ネット部36のうち遮蔽部32に近い孔部37に挿通させて係合させることができ、本第3荷物載置可能状態に容易に実現できるという利点がある。
また、図35に示すように、フック部が、引出用開口部64の下側に設けられたフック部66と、上側に設けられた上側フック部材166とを備えていてもよい。
上側フック部材166は、樹脂等によって形成された部材であり、支軸部167と、フック本体部168とを備える。
上記支軸部167は、ケース部材62に対応するケース部材162のうち引出用開口部64の上側部分に、巻取軸部材72の軸と同じ方向の軸周りに回転可能に支持されている。上側フック部材166は、フック部66と同様に複数間隔をあけて設けられることが好ましい。
フック本体部168は、支軸部167から突出するL字状部分に形成されており、ケース部材162のうち引出用開口部64の上側部分に形成された溝状凹部に収容された収容姿勢(図35において点線で示す上側フック部材166参照)と、ケース部材162のうち引出用開口部64の上側部分から車両後方に向う突出姿勢との間で姿勢変更可能とされている。
この変形例では、収容姿勢では、ケース部材162からの上側フック部材166の突出が抑制されているため、他の部材が上側フック部材166に引っ掛かり難い。また、突出姿勢では、フック本体部168の先端部は上を向いており、従って、図36に示すように、ネット部36のうち遮蔽部32側の部分を容易にフック本体部168に引っ掛けることができる。もっとも、ケース部材のうち引出用開口部の上部において常時突出する上側フック部材が設けられていてもよい。
<効果等>
以上のように構成されたトノカバー装置20によると、遮蔽部32を大きく引出した状態で、巻取機構70を、巻取付勢力をロックした状態に切替えると、保持部材48によって保持された引出部材40と巻取装置60との間で、シート状部材30が弛んだ状態に維持される。これにより、シート状部材30上に荷物Wの移動を抑制した状態で当該荷物Wを載置することができる。また、シート状部材30をさらに引出し、フック部66をネット部36に係合させることによっても、保持部材48によって保持された引出部材40と巻取装置60との間で、シート状部材30が弛んだ状態に維持される。この場合でも、シート状部材30上に荷物Wの移動を抑制した状態で、当該荷物Wを載置することができる。これらの場合において、車両10側には、引出部材40を保持可能な保持部材48を設ければよい。このため、シート状部材30上に、荷物Wの移動を抑制した状態で当該荷物Wを載置可能なトノカバー装置20を、車両10側の構造を複雑にしなくても実現できる。
また、シート状部材30には、従来技術とは異なり、車両10に固定可能な構造を組込む必要が無いため、当該シート状部材30を巻取装置60に巻取って収容することができる。
また、ネット部36を巻取装置60から引出さない状態では、遮蔽部32によって荷室11をなるべく遮蔽することができるため、荷室11のフロア11a上の荷物を外部から見え難いようにすることができる。
また、引出部材40が保持部材48に向けて水平姿勢で引出されてネット部36が引出用開口部64内に配設された状態で、フック部66の上方にネット部36が配設されるため、この状態では、フック部66とネット部36とが係合し難い。このため、シート状部材30の引出及び巻取り操作を円滑に実施できる。また、巻取機構70によるシート状部材30の巻取り方向への付勢をロックした状態として、シート状部材30を下方に弛ませた状態とすれば、フック部66をネット部36に容易に係合させることができる。これにより、第2荷物載置可能状態等を容易に実現できる。
また、係合用シート状部としてネット部36を用いているため、複数の網目に対してフック部66をより確実にネット部36に係合させることができる。また、ネット部36は入手性に優れ、低コスト化が可能であるというメリットもある。
また、遮蔽部32に線状補強部材34を設けているため、シート状部材30に載置された荷物Wの荷重を、線状補強部材34によってシート状部材30の幅方向に分散させることができる。これにより、シート状部材30の皺の発生等を抑制できる。また、巻取軸部材72に対する荷重集中を抑制できるというメリットもある。
また、上記のように、巻取機構70が、巻取り方向への付勢力をロックした状態となり、巻取装置60と引出部材40との間でシート状部材30が弛むと、引出部材40の端部が保持部材48の保持凹部49内でがたつく恐れがある。そこで、引出部材40の端部に、保持凹部49に付勢される部分を含むがたつき抑制部材46、46B、46Cを設けることで、そのがたつきを抑制することができる。
また、第3荷物載置可能状態のように、ネット部36のうち巻取装置60側の部分と遮蔽部32側の部分をフック部66に係合させ、それらの間の部分をフック部66より下方に垂下がるようにすることで、この部分に荷物Waを収容することができる。これにより、より多様な形態で、荷物W、Waを載置することが可能になる。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。