以下、実施形態に係る車両用シェード装置について説明する。
<全体構成について>
図1は格納状態における車両用シェード装置20を示す側面図であり、図2は展開状態における車両用シェード装置20を示す側面図であり、図3は格納状態における車両用シェード装置20を示す部分拡大側面図であり、図4は格納状態における車両用シェード装置20を示す部分拡大斜視図であり、図5は展開状態における車両用シェード装置20を示す部分拡大斜視図である。図1、図2、図4及び図5では、車両用シェード装置20が車両のリアサイドドア10に取付けられた状態を示している。
車両用シェード装置20は、自動車等の車両のウインドウ16を遮蔽及び開閉可能に覆う装置である。ここでは、車両用シェード装置20がリアサイドドア10のウインドウ16を覆う例で説明する。もっとも、車両用シェード装置20は、荷室側方等の車体部分に設けられるサイドウインドウ、リアウインドウ等に適用されてもよい。
上記リアサイドドア10は、自動車の後部座席の乗り降りのために設けられた乗降口を開閉可能に覆う板状部材である。リアサイドドア10の上部に窓用開口11が設けられており、ウインドウ16はその窓用開口11を開閉可能に塞ぐ。ここでは、ウインドウ16は、長方形状に形成されているが、その他の形状、例えば、車両後方に向けて徐々に高さ寸法が低くなる形状等であってもよい。
車両用シェード装置20は、ウインドウ16の下側縁部に沿って延在するトリム部分に組込まれる。そして、シェード22がウインドウ16の下側からウインドウ16の車室内側面に沿って引き出されることにより、シェード22がウインドウ16を遮蔽し、車両用シェード装置20が展開状態となる。また、シェード22がウインドウ16の下側に格納されることで、ウインドウ16がシェード22によって光を遮られない状態となり、車両用シェード装置20は格納状態となる。なお、車両用シェード装置20は、必ずしもウインドウ16の下側から上側に展開する構成である必要は無く、ウインドウの上側から下側に向けて展開する構成、又は、一側方から他側方に向けて展開する構成であってもよい。
この車両用シェード装置20は、シェード22と、巻取機構30と、ステイ40と、展開付勢機構50と、ロッド60と、ガイドレール70と、ロック機構80とを備える。
車両用シェード装置20の全体の概略構成を説明すると、シェード22は、巻取機構30に巻取られており、シェード22の展開方向先端にはステイ40が取付けられている。ロッド60は、ガイドレール70によってシェード22の展開及び格納方向に沿って移動可能に支持されており、ロッド60の先端部はステイ40に取付けられている。展開付勢機構50の定荷重バネ56は、シェード22を展開方向に付勢する力を発生させる。この定荷重バネ56による付勢力は、ロッド60を介してステイ40に伝達される。ロック機構80は、シェード22を巻取機構30に巻取った格納状態でロック可能に構成されている。
格納状態では、シェード22が巻取機構30によって巻取られており、この状態が、ロック機構80によって維持されている(図1、図3及び図4参照)。この状態で、定荷重バネ56の付勢力は、巻取機構30による付勢力を上回っている。このため、ロック機構80によるロックを解除すると、定荷重バネ56の付勢力によってシェード22が展開する。これにより、車両用シェード装置20は、展開状態となる(図2及び図5参照)。
上記展開状態から、乗員の手等によって、ステイ40を下方に押下げる。すると、シェード22は、巻取機構30によって巻取られる。そして、シェード22の先端が最下端位置に達すると、ステイ40がロック機構80によってロックされる。これにより、車両用シェード装置20は、格納状態となる。
<各部構成について>
上記車両用シェード装置20の各部構成について説明する。
図1〜図5に示すように、シェード22は、ウインドウ16を遮蔽する部材である。シェード22は、メッシュ状の布、樹脂シート等の材料を裁断、縫製等して形成されたシート状の部材である。より具体的には、シェード22は、遮蔽対象となるウインドウ16と略同じ大きさ及び形状に形成され、ウインドウ16を全体的に遮蔽可能に形成されている。シェード22は、遮蔽対象となるウインドウ16の一部を遮蔽する形状及び大きさ、又は、複数のウインドウを一括して遮蔽可能な形状及び大きさに形成されていてもよい。
上記シェード22の基端は、巻取機構30に取付けられており、格納状態において、シェード22が巻取機構30に巻取られた状態となる。より具体的には、巻取機構30は、細長いケース32内に、巻取シャフト34が回転可能に支持された構成とされている(図3参照)。巻取シャフト34は、常時シェード22を巻取る方向の付勢力を発生させている。
ここでは、巻取シャフト34は、管状のシャフト本体部35と、片側支持シャフト36と、コイルバネ37とを備える(図3参照)。片側支持シャフト36は、管状のシャフト本体部35の一端部内に回転可能に挿入されている。また、巻取付勢用のコイルバネ37の一端部がシャフト本体部35に対して相対回転不能に連結されると共に、コイルバネ37の他端部が片側支持シャフト36に対して相対回転不能に連結されている。シャフト本体部35の他端部がケース32の一端部に回転可能に支持されると共に、片側支持シャフト36の外側端部はケース32の他端部に対して相対回転不能に支持されている。
シェード22の基端部は、シャフト本体部35に対して相対回転不能に連結されている。シェード22の基端部は、ウインドウ16の下側縁部に対応する部分である。このシェード22は、シャフト本体部35に巻取られており、ケース32の外周の一部に形成されたスリット32Sを通って外方に引出されている(図4参照)。
そして、シェード22が引出された状態では、片側支持シャフト36に対してシャフト本体部35が相対回転し、これにより、コイルバネ37が捻られた状態となる。このコイルバネ37が元に戻ろうとする力によって、シェード22を巻取シャフト34に巻取る巻取力を常時発生させている。なお、コイルバネ37に代えて、ゼンマイバネ、定荷重バネ等が用いられてもよい。
ステイ40は、シェード22の先端に取付けられた部材である。ここでは、ステイ40は、樹脂等により形成された長尺状の部材により形成されている。シェード22の先端は、巻取機構30から引出されるシェード22の引出方向における先端であり、展開状態では、ウインドウ16の上側縁部に位置する。展開状態でシェード22の皺等を抑制するためには、ステイ40がシェード22の先端の縁部の全体に亘って設けられることが好ましいが、これは必須ではない。
ステイ40のうち車室内側を向く側部には、つまみ部41が突設されている。ここでは、ステイ40の延在方向中間部につまみ部41が設けられている。乗員等は、当該つまみ部41を持つことで、ステイ40の操作、特に、ステイ40を押下げる操作等を容易に行える。
また、ステイ40には、ロック用突部42が設けられている(図5参照)。ここでは、ステイ40の延在方向中間部であって、上記つまみ部41の下方位置にロック用突部42が設けられている。図6及び図7に示すように、このロック用突部42がロック機構80に対して係脱可能に係止することで、車両用シェード装置20が格納状態に保たれる。
ロック用突部42及びロック機構80について説明すると、ロック機構80は、シェード22が巻取機構30に巻取られた状態で、ロック用突部42の下方となる位置に設けられている。ここでは、巻取機構30のケース32の延在方向中間部の一側外向き部分に、ロック機構80が設けられている。そして、シェード22が巻取機構30に巻取られ、ステイ40がケース32のスリット32Sの外方に接する位置に配設されると、ロック用突部42がロック機構80に係止可能な位置に配設されるようになっている。
図6〜図9を参照してより具体的に説明すると、ロック用突部42は、ステイ40の一側外方部分に突設された部分である。ロック用突部42は、つまみ部41よりも格納方向側でステイ40の一側外方部分に向けて突出する形状に形成されている。ロック用突部42の両側面は、シェード22の格納方向(下方)に向けて内向き傾斜する形状に形成されている(図7参照)。
また、ロック機構80は、上記ロック用突部42に係脱可能に係止することで、格納状態において、ロッド60の移動を阻止可能に構成されている。ここでは、ロック機構80は、ロック用ハウジング82と、ロック用可動部84と、付勢部材としてのコイルバネ86とを備える。
ロック用ハウジング82は、樹脂等により形成された部材であり、ロック用可動部84を、係止位置と係止解除位置との間で移動可能に支持している。そして、ロック用可動部84が係止位置に移動することで上記ロック用突部42が展開方向に移動しないように係止し、ロック用可動部84が係止解除位置に移動することで、ロック用突部42とロック用可動部84との係止が解除され、ステイ40が上方に移動可能となる。
より具体的には、ロック用ハウジング82は、ケース32の一側に取付けられた部材であり、ロック用ハウジング82には、シェード22の展開方向から格納方向(上方向から下方向)に向う挿入孔部82h1が形成されている。シェード22が巻取って格納され、ステイ40がケース32のスリット32Sの外方に近接する位置に配設されると、ロック用突部42は、挿入孔部82h1内に上方から入り込む。
また、ロック用ハウジング82のうち前記挿入孔部82h1の両側の位置に、ロック用可動部84を移動可能に収容する一対の可動収容空間82h2が形成されている。一対の可動収容空間82h2の内向き部分は、挿入孔部82h1に繋がっている。一対の可動収容空間82h2には、一対のロック用可動部84が移動可能に支持されている。一対のロック用可動部84の対向部分には、ロック用突部42に係止可能な係止凸部84aが設けられている。対向し合う一対の係止凸部84aの内向き部分は、シェード22の展開方向に向けて徐々に外側に開く形状に形成されている。このため、上記ロック用突部42が一対のロック用可動部84間に移動しようとすると、ロック用突部42の両側面が一対の係止凸部84aの内向き部分に摺接して、一対のロック用可動部84を互いに離れる方向に移動させる。
また、一対のロック用可動部84の外向き部分には、コイル装着孔84hが形成されており、このコイル装着孔84hに装着されたコイルバネ86が可動収容空間82h2内の外側面に押し当てられている。このコイルバネ86の付勢力により、一対のロック用可動部84が互いに近接する方向に付勢されている。
上記係止位置は、コイルバネ86の付勢力によって一対のロック用可動部84の係止凸部84aが挿入孔部82h1内に突出した位置である(図6〜図8参照)。また、係止解除位置は、コイルバネ86の付勢力に抗して一対のロック用可動部84の係止凸部84aが挿入孔部82h1から退避するように外向きに移動し、それらの間にロック用突部42が通過可能な隙間が形成された位置である(図9参照)。
また、一対のロック用可動部84の互いに対向する部分のうち車室内側を向く部分に、車室内側に向けて徐々に外向きに開くアンロック用傾斜面84cが形成されている。対向し合う一対のアンロック用傾斜面84cの間に、アンロック操作部88が設けられている。アンロック操作部88には、一対のアンロック用傾斜面84cのそれぞれと対向する押圧面88aが形成されている。また、アンロック操作部88のうちケース32とは反対側の車室内側部分は、ロック用ハウジング82より露出し、乗員の指等によって押動操作可能とされている。このアンロック操作部88は、一対の係止凸部84aよりも下方でロック用ハウジング82に突設されたコイルバネ88cによってステイ40に対して車室内側に付勢されて遠近移動可能に支持されている。そして、一対のロック用可動部84が係止位置に移動した状態では、一対のアンロック用傾斜面84cが一対の押圧面88aに接触して、アンロック操作部88をステイ40から遠ざかる方向に押している。上記状態から、アンロック操作部88を押込操作すると、一対の押圧面88aが一対のアンロック用傾斜面84cを押して、コイルバネ86の付勢力に抗して一対のロック用可動部84を互いに離れる方向に移動させる。これにより、一対のロック用可動部84が係止解除位置に移動する(図9参照)。
上記ロック機構80の動作について説明する。シェード22が展開状態にある状態では、コイルバネ86の付勢力によって、一対のロック用可動部84は係止位置に向けて付勢されている(図8参照)。この状態で、乗員等がステイ40を押下げると、ロック用突部42が一対のロック用可動部84間の上方に近づく(図8参照)。ステイ40をさらに押下げると(矢符P1参照)、ロック用突部42の両側部が一対のロック用可動部84の対向部分に摺接し、コイルバネ86の付勢力に抗して一対のロック用可動部84を係止解除位置に移動させる。これにより、ロック用突部42は、一対のロック用可動部84間を通ってそれらの下方に移動できるようになる。ロック用突部42が一対のロック用可動部84の下方に移動すると、コイルバネ86の付勢力によって一対のロック用可動部84が元の係止位置に戻る。これにより、ロック用突部42の上部が一対のロック用可動部84の係止凸部84aの下部に当接して、ロック用突部42の上方への移動が止められた状態となる(図6及び図7参照)。これにより、ステイ40及びロッド60の上方への移動が阻止され、シェード22が格納状態に保たれる。
この状態で、アンロック操作部88を押動操作すると、一対の押圧面88aが一対のアンロック用傾斜面84cを押して、一対のロック用可動部84を係止解除位置に移動させる。すると、一対の係止凸部84aの間にロック用突部42が通過可能な隙間が形成されるため、ロック用突部42が一対の係止凸部84aの間を通って上方に移動可能となる。この後、アンロック操作部88を押動操作する力を解除すると、コイルバネ86の付勢力によって一対のロック用可動部84が係止位置に戻る。また、ステイ40は、展開付勢機構50による付勢力によって展開状態となるように移動し、これに伴い、シェード22が引出される。
図10は定荷重バネ56、ロッド60及びガイドレール70の組合わせ部分を示す断面図であり、図11は定荷重バネ56、ロッド60及びガイドレール70の組合わせ部分を示す分解斜視図であり、図12は定荷重バネ56とロッド60との連結部分を示す分解斜視図であり、図13はガイドレール70内の一対のガイド面76を示す図である。
図1〜図4、図10〜図12に示すように、ロッド60は、金属又は樹脂等によって長尺状に形成された部材である。ロッド60は、ウインドウ16の上下方向の長さ寸法よりも大きく設定されている。ロッド60の先端部は、ステイ40に取付けられている。ここでは、ロッド60の先端部は、ステイ40の延在方向中間部に当該ステイ40に対して鉛直姿勢で連結されている。このため、ロッド60は、ステイ40の延在方向中間部から下向きに延在している。ここでは、ロッド60は、シェード22に対して車室外向き面側を通るように配設されている。ロッド60は、シェード22に対して車室内向き面側を通るように配設されていてもよい。
ガイドレール70は、互いに対向する一対のガイド面76を含み、前記格納状態においてロッド60を格納し、シェード22が格納状態から展開状態に移動する際にロッド60を案内するように構成されている。
より具体的には、ガイドレール70は、レール本体72と、一対の側方ガイド部74とを備える。
レール本体72は、金属又は樹脂等により形成された筒状の部材に形成されている。ここでは、レール本体72は、横断面形状がその長手方向に沿って一定である、四角筒状に形成されている。ガイドレール70は、その他の多角形筒状、円筒状に形成されていてもよい。このレール本体72の上端部は、巻取機構30の延在方向中間部に連結されており、巻取機構30の延在方向中間部から下方に向けて延出するように設けられている。ここでは、ケース32の延在方向中間部の下部にブラケット38を介して後述するベース部材52が取付けられており、このベース部材52にガイドレール70の上端部がネジ止等によって固定されている(図11参照)。これにより、ガイドレール70は、巻取機構30の下側でロッド60を上下方向に沿って移動可能に支持する。なお、ガイドレール70の上端部は、ケース32にブラケット等を介して固定されていてもよい。また、ガイドレール70が巻取機構30に直接又は間接的に取付けられていることは必須ではなく、ガイドレール70がバックサイドドアの金属パネル部分、又は、樹脂内装部分等に直接組込まれてもよい。
一対の側方ガイド部74は、樹脂、金属等によって形成された長尺部材である。一対の側方ガイド部74の長さ寸法は、レール本体72の長さ寸法と同じに設定されている。また、レール本体72の奥行方向における、側方ガイド部74の寸法は、レール本体72をその長手方向に沿って直交する面で切断したときに表れる内側の長方形の一組の対辺(ここでは、短辺)の長さ寸法と同じに設定されている。また、一対の側方ガイド部74の厚み寸法は、ガイドレール70の下側から上側に向うにつれて(つまり、シェード22の展開方向に向うにつれて)徐々に小さくなるように設定されている。ここでは、一対の側方ガイド部74の厚み寸法は、ガイドレール70の下側から上側に向うにつれて直線的に減少するが、カーブを描きながら減少してもよい。
一対の側方ガイド部74は、レール本体72の一対の対向する内周面に接触した状態で保持される。レール本体72内における一対の側方ガイド部74の保持は、ネジS止によってなされてもよいし、接着剤、その他の嵌め込み構造によってなされてもよい。この状態で、一対の側方ガイド部74の内向き面が間隔をあけて対向する一対のガイド面76となる。一対の側方ガイド部74の厚み寸法は、ガイドレール70の下側から上側に向うにつれて徐々に小さくなるように設定されているため、一対の側方ガイド部74の一対のガイド面76の間に、ガイドレール70の下側から上側に向うにつれて(シェード22の展開方向に向けて)徐々に間隔が大きくなるスライド収容空間73が形成される。このスライド収容空間73は、ガイドレール70の延在方向に沿って延び、上記ロッド60及び展開付勢機構50の定荷重バネ56を収容する。従って、スライド収容空間73の幅が最も狭まった下部でも、その幅寸法は、ロッド60及び定荷重バネ56の幅寸法よりも大きい。また、スライド収容空間73は、本車両用シェード装置20が格納状態となった状態で、ステイ40から下方に延出するロッド60を収容可能な長さ寸法以上に形成されている。
なお、一対の側方ガイド部74は、別体とされる必要は無く、連結部等を介して繋がった一体構成とされていてもよい。また、一対のガイド面76の両方がガイドレール70の延在方向に対して傾斜している必要は無く、その一方のみがガイドレール70の延在方向に対して傾斜していてもよい。また、ここでは、レール本体72内に、一対の側方ガイド部74を装着することによって、一対のガイド面76を形成しているが、レール本体の一対の内面を傾斜形状に形成してこれを一対のガイド面としてもよい。
もっとも、レール本体72に一対の側方ガイド部74を装着する構成とすることによって、レール本体72を、アルミニウム等の金属の押出成形品によって形成し、これに樹脂部品である一対の側方ガイド部74を装着して、低コスト可を図ることができる。
上記ロッド60は、展開状態においてシェード22が引出された状態でも、格納状態においてシェード22が巻取機構30に格納された状態においても、巻取機構30の下方に延出している。ロッド60のうち巻取機構30の下方に延出した部分が、ガイドレール70内にその上側開口より挿入されている。ロッド60のうち巻取機構30を下方に越えた部分が、ガイドレール70内のスライド収容空間73内に移動可能に挿入されることによって、ロッド60がシェード22の展開方向に沿って案内される。つまり、ガイドレール70によって、シェード22が格納状態から展開状態に移動する際及びその逆に移動する際に、ロッド60が案内される。
展開付勢機構50は、ロッド60をシェード22の展開方向に付勢するように構成されている。ここでは、展開付勢機構50は、引出可能な定荷重バネ56を備える。定荷重バネ56は、渦巻状に巻回された定荷重バネ56の外周側端部を直線状に引出し、直線状に引出された部分が元の曲率半径に戻ろうとする復元力によって付勢力を発生させるものである。かかる定荷重バネ56は、引出量に関係なく、一定の付勢力を発生させることができるという特性を有している。そのため、展開付勢機構50は、ほぼ一定の付勢力を発生させることができる。
より具体的には、展開付勢機構50は、ベース部材52と、リール53と、支持部54と、定荷重バネ56とを備える。
ベース部材52は、樹脂又は金属等により形成された部材であり、定荷重バネ56の中心軸を一定位置にして定荷重バネ56を支持可能に構成されている。ここでは、ベース部材52は、一対のバネ支持片52aと、一対の連結片52bとを備える。一対のバネ支持片52aの間に間隔をあけた状態で、一対のバネ支持片52aのそれぞれの端部が、一対の連結片52bを介して連結されている。これにより、ベース部材52の中央部に、一対のバネ支持片52aと一対の連結片52bとで囲まれるバネ収容空間52hが形成されている。
上記一対のバネ支持片52aの延在方向中間部には、支軸用孔52ahが形成されており、当該支軸用孔52ahに、シャフト状の支持部54が挿入される。
下側の連結片52bの中間部の底部には、ガイドレール70のレール本体72の上端部がネジ止等によって固定されている。この状態で、ガイドレール70の上端側の開口部は、上記バネ収容空間52h内に向けて開口している(図10参照)。
また、上側の連結片52bの中間部の底部には、ロッド60を案内する案内溝52bgが形成されている。
このベース部材52は、ケース32の延在方向中間部の下部にブラケット38を介して取付けられる(図10及び図11参照)。ブラケット38は、樹脂等で形成された部材であり、ケース32の延在方向中間部の下部にネジ止等によって固定される固定部38aと、固定部38aから下方に延出する一対の延出片38bとを備える。一対の延出片38bが一対のバネ支持片52aの上端部にネジ止等によって固定される。また、この状態で、ロッド60のうちガイドレール70の上端部から延出する部分は、一対の延出片38bの間で、上記案内溝52bgを通って上方に案内される。
リール53は、樹脂等によって形成された部材であり、円柱状の胴部53aと胴部53aの両端部から周方向外側に張出すように形成された一対の鍔部53bとを備える。胴部53aの中心部には、その軸方向に沿って支持部54を挿通可能なシャフト挿通孔53ahが形成されている。
定荷重バネ56は、帯状のバネ材によって形成されており、リール53に渦巻状に巻回された構成とされている。ここでは、定荷重バネ56は、リール53の胴部53aに巻回された形状に形成されている。定荷重バネ56の長さ寸法は、格納状態においてロッド60がガイドレール70内に最も多く挿入された長さ寸法以上に設定されている。なお、定荷重バネは、略一定の曲率半径で巻回されたコイル状のものであればよく、2次元平面において渦巻状に巻回されたものであってもよいし、3次元空間において円柱周面上を周回しながら所定の軸方向に沿って進むように螺旋状に巻回されたものであってもよい。
支持部54は、一対のバネ支持片52a間にリール53を配設した状態で、支軸用孔52ah及びシャフト挿通孔53ahに挿通されている。一対の支軸用孔52ah及びシャフト挿通孔53ahの少なくとも一方で、支持部54は回転可能とされている。ここでは、支持部54の軸方向中間部に回り止突起54aが形成され、その両端側の部分は丸棒状に形成されている。そして、回り止突起54aがシャフト挿通孔53ahに回り止状態で嵌め込まれると共に、その両端側部分が一対の支軸用孔52ahに回転可能に嵌め込まれている。そして、支持部54が一対の支軸用孔52ahに対して回転することで、リール53がベース部材52に対して一定の回転軸周りで回転可能に支持されることになる。なお、支持部54が支軸用孔52ah回転不能に嵌め込まれ、リール53が支持部54に対し回転してもよい。また、リール53を設けず、コイル状に巻回した定荷重バネ56を支持部54に挿通し、定荷重バネ56が支持部54に対して回転してもよい。また、定荷重バネ56が上記のように支持されていることは必須ではなく、所定の区間内に回転可能に収納され、当該空間から外部に繋がるスリットを通じて定荷重バネ56が引出される構成であってもよい。
リール53が上記のように支持された状態で、リール53に巻回された定荷重バネ56の外側端部は、ベース部材52の底面に沿って下方に引出され、ベース部材52に取付けられたガイドレール70の上側開口を通ってガイドレール70のスライド収容空間73内に導かれる。定荷重バネ56がガイドレール70内に格納されることで、定荷重バネ56が余分に大きく湾曲して大きく引出されることを抑制できる。特に、ガイドレール70の上側開口の上方位置に支持部54を設け、引出された定荷重バネ56を直ぐガイドレール70のスライド収容空間73内に導くことで、定荷重バネ56のうち引出された部分を、なるべく全体的にガイドレール70内に格納して大きな湾曲を抑制することができる。なお、支持シャフトは、ガイドレールからある程度離れた位置に設けられていてもよい。また、ガイドレールの延在方向中間部にバネ導入用の開口が形成され、バネがガイドレールの延在方向中間部で当該ガイドレール70内に導入されてもよい。
上記したように、ロッド60の基端部(下端部)及び定荷重バネ56の外周側の先端部は、ガイドレール70の上側開口より当該ガイドレール70のスライド収容空間73内に格納されている。そして、ガイドレール70内で、ロッド60の基端部が定荷重バネ56の先端部に連結されている。ここでは、ロッド60の基端部が互いに平行な2面を持つように偏平形状に形成されている。また、定荷重バネ56の先端部に板状の連結部材57がリベット留等によって固定されている。そして、ロッド60の基端部と連結部材57とが重ね合された状態で、ネジ及びナット、リベット、又は、溶接等によって連結されている。
なお、展開付勢機構50が定荷重バネ56を備える構成であることは必須ではない。展開付勢機構は、ゼンマイバネによってロッド60の先端部に連結されたワイヤーを引っ張って、ロッド60をシェード22の展開方向に付勢する構成等であってもよい。
上記定荷重バネ56のうちガイドレール70内に格納され直線的に引出された部分は、元の渦巻状に戻ろうとする。つまり、定荷重バネ56の先端部には、ガイドレール70内を上方に移動しようとする付勢力が作用している。定荷重バネ56の先端部とロッド60の基端部とは連結されているため、当該定荷重バネ56の付勢力によって、ロッド60はガイドレール70内を上方に移動するように付勢される。ロッド60が上方に移動する方向は、シェード22の展開方向と同じであるため、定荷重バネ56の付勢力によって、ロッド60は、シェード22の展開方向に付勢されることになる。また、ロッド60の先端部は、ステイ40に連結されているため、ロッド60は当該付勢力をステイ40に伝達することになる。
また、上記ロッド60には、当該ロッド60と共に移動する可動部材100が取付けられている。ここでは、ロッド60の基端部と連結部材57との連結部分に、可動部材100が取付けられている。可動部材は、ロッドのその他の部分、例えば、最下端部よりも上方の位置に取付けられていてもよい。
図14〜図17は、ガイドレール70における可動部材100を示す図であり、図14は可動部材100がガイドレール70の下端部にある状態(シェード22の格納状態)を示し、図15は可動部材100がガイドレール70の上端部にある状態(シェード22の展開状態)を示し、図16は可動部材100が上方に移動途中(シェード22が格納状態から展開状態へと変更中)の状態を示し、図17は可動部材100が下方に移動途中(シェード22が展開状態から格納状態へと変更中)の状態を示している。図12、図14〜図17に示すように、可動部材100は、一対のガイド面76に当接可能な一対の当接部分112を含み、一対の当接部分112を一対のガイド面76に摺接させつつ、ロッドと共にガイドレール70内を移動し、シェード22の展開方向に移動するにつれて、一対の当接部分112が一対のガイド面76に摺接することによる動摩擦力が小さくなるように構成されている。
具体的には、可動部材100は、可動本体102と、一対の当接片110と、バネ120とを備える。
可動本体102は、樹脂等により形成された部材であり、上記一対の当接片110を支持した状態で、ロッドの先端部に連結されている。より具体的には、可動本体102は、方形板状部分103の一端に直方体状の厚板部分104が繋がる形状に形成されている。厚板部分104には、方形板状部分103とは反対側の端部及び厚板部分104の一方主面側に開口する凹部105が形成されている。そして、ロッドの端部と定荷重バネ56の端部とが重ね合わされた状態で、当該凹部105内に収容されている。そして、ロッドの端部及び定荷重バネ56の端部が、凹部105の底部分にネジ止等によって固定されている。これにより、可動本体102がロッドと共にガイドレール70内を移動する。
方形板状部分103には、その幅方向に沿って間隔をあけて一対の支軸部106が突設されている。方形板状部分103に対して支軸部106が突出する方向は、方形板状部分103に対して厚板部分104が突出する方向と同じである。従って、一対の支軸部106によって支持される一対の当接片110は、厚板部分104の下方の空間に収容される。
一対の当接片110は、長円形状に形成されている。当接片110の一端部には、支軸部106を挿通可能な孔111が形成されている。そして、支軸部106が孔111に挿通されることによって、当接片110が支軸部106を中心として姿勢変更して回転可能に支持される。ここでは、ワッシャ107が一対の当接片110の基端部を挟むように支軸部106に外嵌めされている。これにより、当接片110が支軸部106の軸周りに円滑に回転する。また、支軸部106の先端部に、Eリング108が取付けられ、これにより、支軸部106からの当接片110の抜止めが図られている。
また、一対の当接片110の他端部は、外方に向けて突状に湾曲する曲面状の当接部分112に形成されている。そして、一対の当接片110のそれぞれを、一対の支軸部106に軸支した状態で、一対の当接片110をシェード22の展開方向に向けて外向き傾斜する組付姿勢にすると、一対の当接片110のそれぞれの当接部分112が可動本体102の両側部から外方に突出して配設され、それぞれ一対のガイド面76に摺接可能となる。
また、一対の当接片110の他端部の一側方部分には、外方に向けて突出するバネ固定部113が形成されている。より具体的には、バネ固定部113は、当接片110の他端部の一側方部分から他端部の先端側に向けて外向き傾斜する斜片113aと、当該斜片113aの先端部に突設された突部113bとを備える。一対の当接片110が上記組付姿勢となった状態では、それぞれのバネ固定部113は対向して配設される。
また、バネ120は、一対の当接片110が上記組付姿勢とされた状態で、一対の支軸部106と厚板部分104との間であって、一対の当接片110の他端部間に圧縮状態で配設される。この状態で、一対の当接片110の他端部の突部113bは、バネ120の両端部内に嵌め込まれ、バネ120の保持がなされている。このバネ120により、一対の当接片110の各当接部分112がガイド面76に向けて押付けられるように付勢される。
この可動部材100がガイドレール70内に組み込まれた状態では、一対の当接部分112をガイド面76に接触させたまま、当接片110が姿勢変更可能に支持されている。そして、バネ120が元の自然長に戻ろうとする付勢力(復元力)により、一対の当接部分112のそれぞれがガイド面76に押付けるように付勢される。このため、可動部材100がガイドレール70内を移動する際、一対のガイド面76間の距離が変動すると、それに応じて一対の当接片110の傾きが変動し、一対の当接部分112の外向き部分間の距離が変動する。バネとしては、その他、板バネ、ねじりコイルバネ等が用いられてもよい。
また、各当接片110が支軸部106によって姿勢変更可能に支持される位置は、各当接片110に設けられた当接部分112がガイド面76に摺接する位置よりもシェード22の格納方向にある。このため、可動部材100がシェード22の展開方向に移動する際に、当接部分112がガイド面76に摺接することによる動摩擦力は、一対の当接片110を開く側に姿勢変更させようとする(図16の矢符Q1参照)。このため、当接部分112とガイド面76との動摩擦力は、一対の当接片110を開いて当接部分112をより強くガイド面76に押付ける力として作用する。
一方、可動部材100がシェード22の格納方向に移動する際に、当接部分112がガイド面76に摺接することによる動摩擦力は、一対の当接片110を閉じる側に姿勢変更させようとする(図17の矢符Q2参照)。このため、当接部分112とガイド面76との動摩擦力は、一対の当接片110を閉じて当接部分112をガイド面76に押付ける力を弱くする力として作用する。
<車両用シェード装置の動作について>
車両用シェード装置の動作について説明する。
格納状態では、シェード22が巻取機構30によって巻取られており、この状態が、ロック機構80によって維持されている(図1、図3及び図4参照)。
この状態で、ロック機構80によるロックを解除すると、展開付勢機構50の付勢力によってシェード22が展開する。なお、シェード22には、巻取機構30による巻取力が加わっているが、展開付勢機構50による付勢力は巻取機構30による巻取力を上回っている。このため、シェード22がウインドウ16をほぼ全体的に覆うようになるまで、展開付勢機構50の付勢力によってシェード22が展開する。シェード22がウインドウ16をほぼ全体的に覆った状態で、ステイ40がウインドウ16の上側で受部材90によって受止められる。これにより、車両用シェード装置20は、展開状態となる。
シェード22が展開方向に移動する際、ロッドはガイドレール70内を同方向に移動する。これに合わせて、可動部材100も、ガイドレール70内を、シェード22の展開方向に移動する。この際、一対の当接片110のそれぞれの当接部分112が、一対のガイド面76に接触する。このため、一対の当接部分112と一対のガイド面76との動摩擦力が、ロッド等に対してシェード22の展開方向とは逆方向に作用する。この動摩擦力は、一対の当接部分112が一対のガイド面76に押付けられる力に比例している。また、この押付力は、主としてバネ120の力によって決る。また、ガイドレール70内でシェード22の展開方向に向うにつれて、一対のガイド面76間の寸法は大きくなり、これに応じて、一対の当接片110も大きく開き(一対の当接部分112の外側部分間の寸法が大きくなる)、バネ120も自然長に近くなる。このため、可動部材100がガイドレール内をシェード22の展開方向に移動するのにつれて、バネ120が一対の当接部分112を一対のガイド面76に押付ける力は小さくなり、これに伴い、一対の当接部分112と一対のガイド面76との間の動摩擦力は小さくなる。
なお、既に述べたように、可動部材100がシェード22の展開方向に移動する際に、当接部分112がガイド面76に摺接することによる動摩擦力によって、一対の当接片110は開く側に姿勢変更しようとする(図16の矢符Q1参照)。このため、当接部分112とガイド面76との動摩擦力は、一対の当接片110を開いて当接部分112をより強くガイド面76に押付ける力として作用する。
そして、展開状態での展開付勢機構50による付勢力が巻取機構30による巻取力を常に上回るようにすることで、ステイ40を受部材90に押し付け、シェード22がウインドウ16をほぼ全体的に覆った展開状態を維持している。
受部材90は、リアサイドドア10のうちウインドウ16の上部に固定された部材であり、ステイ40の上方及び車室内側への移動を規制するようにステイ40を受止める部材である。ここでは、一対の受部材90は、リアサイドドア10のうちウインドウ16の2つのコーナー部分に対向する位置に設けられている。一対の受部材90は、互いに向合う側及び下方に向けて開口しており、ステイ40の両端部が当該一対の受部材90に対して下方から嵌め込まれて受止められる。この受部材90により、展開状態となったステイ40及びシェード22の上方及び車室内側への位置規制、がたつき防止等が図られる。ステイ40及びシェード22の上方への位置規制等については、ガイドレール70に対するロッド60のスライド移動位置を規制すること、巻取機構30からのシェード22の引出可能量を規制すること等によっても実現できる。このため、受部材90は、省略されてもよい。
上記展開状態から、乗員の手等によって、ステイ40を下方に押下げる。この際、ステイ40には、展開付勢機構50による上方への付勢力が作用しているため、当該展開付勢機構50の付勢力に抗してステイ40を押下げることになる。ステイ40の押下げに伴って、ステイ40に連結されたシェード22は、順次巻取機構30によって巻取られている。
シェード22が格納方向に移動する際、ロッドはガイドレール70内を同方向に移動する。これに合わせて、可動部材100も、ガイドレール70内を、シェード22の格納方向に移動する。この際には、一対の当接部分112と一対のガイド面76との動摩擦力が、ロッド等に対してシェード22の格納方向とは逆方向に作用する。この動摩擦力は、上記と同様に、可動部材100がガイドレール内をシェード22の格納方向に移動するのにつれて、バネ120が一対の当接部分112を一対のガイド面76に押付ける力として大きく作用し、これに伴い、一対の当接部分112と一対のガイド面76との間の動摩擦力は大きくなる。
また、既に述べたように、可動部材100がシェード22の格納方向に移動する際に、当接部分112がガイド面76に摺接することによる動摩擦力により、一対の当接片110は閉じる側に姿勢変更しようとする(図17の矢符Q2参照)。このため、当接部分112とガイド面76との動摩擦力は、一対の当接片110を閉じて当接部分112をガイド面76に押付ける力を弱くする力として作用する。従って、一対の当接部分112と一対のガイド面76との間の動摩擦力は、可動部材100がシェード22の展開方向に移動する場合よりも、シェード22の格納方向に移動する場合において、全体的に小さい。
ステイ40がウインドウ16の下側に達すると、ロック用突部42がロック機構80によってロックされ、上方(展開方向)への移動を阻止された状態となる。これにより、車両用シェード装置20は、格納状態に維持される。
図18及び図19は、シェード22が展開される際において、シェード22の展開量と、シェード22に作用する展開方向への力との関係を示す図である。横軸は、格納状態と展開状態との間でのシェード22の引出量を示している。縦軸は、展開方向への力を“正(+)”、格納方向への力を“負(−)”として、シェード22に作用する力の大きさ及び向きを示している。図18では可動部材100による動摩擦力が無い場合を想定しており、図19では可動部材100による動摩擦力を加味している。
まず、図18に示すように、巻取機構30は、コイルバネ37によって巻取方向の付勢力を発生させているため、コイルバネ37による付勢力F1は、シェード22の引出量が大きくなるのに伴って、格納方向への力の大きさが徐々に大きくなる特性を示す。定荷重バネ56は、渦巻状に巻回された定荷重バネ56の外周側端部を直線状に引出し、直線状に引出された部分が元の曲率半径に戻ろうとする復元力によって付勢力F2を発生させるものである。このため、定荷重バネ56の引出量、すなわち、シェード22の引出量に関係なく、定荷重バネ56はほぼ一定の付勢力F2を発生させる。従って、シェード22に最終的に作用する付勢力F3は、シェード22が大きく引出されるのに従って、緩やかな傾きで徐々に小さくなる特性を示すことになる。ここでは、付勢力F3は、巻取機構30による付勢力F1の傾き(変化度合)に応じた傾き(変化度合)を示す。
なお、シェード22がより確実に展開状態となるようにするためには、シェード22が如何なる引出量となっている場合でも、当該シェード22に展開方向への力が作用している必要がある。シェード22に最終的に作用する付勢力F3は、シェード22が最も大きく引出された状態、すなわち、展開状態で、最も小さくなるため、展開状態で、付勢力F3がシェード22を展開させることができる力を越えている必要がある。そして、これに合わせて、定荷重バネ56等の特性を決定することになる。このように定荷重バネ56の特性を決定しても、付勢力F3は、シェード22の引出量に応じて、緩やかな傾きで変化するため、格納状態においても、シェード22に対して作用する付勢力F3を可及的に小さくすることができる。このため、シェード22を適度な勢いで引出せる。
上記を前提に、図19に示すように、可動部材100による動摩擦力F4の影響を加味すると、当該動摩擦力F4は、シェード22の展開方向とは逆方向に作用し、また、シェード22が展開するにつれて、徐々に小さくなる。このため、シェード22が展開するのにつれてコイルバネ37による付勢力F1が大きくなるのに従い、その増加分を相殺するように、動摩擦力F4が小さくなる。このため、シェード22に最終的に作用する付勢力F3は、シェード22の引出量に関係無く、可及的に一定となる。
なお、展開付勢機構として、縮径変形したゼンマイバネが元の自然径に戻ろうとする力によってロッドの先端部に連結されたワイヤーを引っ張る構成を採用した場合、上記力F3の傾きはより急になる。このため、上記可動部材100に係る構成を採用することは有効である。
また、シェード22が格納される際には、上記動摩擦力F4は、上記とは逆方向に作用するが、その大きさは、上記と同様に、シェード22の展開量(引出量)と反比例する。このため、シェード22に最終的に作用する付勢力F3を、シェード22の引出量に関係無く、可及的に一定とすることができる。
また、シェード22が格納される際において、動摩擦力F4は、上記したように小さいため、手でステイ40を押下げる際の抵抗としての作用は小さい。従って、可動部材100が一対のガイド面76に摺接している構成を採用しても、ステイ40を押下げるために要する力をなるべく小さくすることができる。
<効果等>
以上のように構成された車両用シェード装置20によると、シェード22が展開するにつれて、巻取機構30の巻取バネであるコイルバネ37による巻取付勢力が大きくなるため、展開付勢機構50による付勢力とコイルバネ37による付勢力との合成によるシェード22の引出力は、シェード22の展開開始時には大きく、展開終了時には小さくなる。これに対応して、ロッドがシェード22の展開方向に移動するにつれて、可動部材100の一対の当接部分112が一対のガイド面76に摺接することによる動摩擦力が小さくなる。このため、引出力が比較的大きい、シェード22の展開開始時には、動摩擦力により可動部材100の勢いが抑えられ、シェード22が展開終了に近づき、引出力が徐々に小さくなるにつれ、動摩擦力が徐々に小さくなって、可動部材100のスムーズな移動が可能となる。これにより、シェード22の展開開始時から展開終了時までの速度差をなるべく小さくすることができる。
なお、上記実施形態では、一対の当接部分112がガイド面76に摺接する例で説明したが、一対、すなわち、2つを越える数の当接部分がガイド面に摺接してもよい。
また、一対のガイド面76の間隔寸法は、シェード22の展開方向に向けて徐々に大きくなり、可動部材100は、一対の当接部分112の少なくとも一方が設けられ、一対の当接部分112の少なくとも一方をガイド面76に接触させたまま姿勢変更可能に支持された当接片110と、一対の当接部分112の前記少なくとも一方をガイド面76に押付けるように付勢するバネ120とを含む。このため、一対のガイド面76の間隔寸法に合わせて当接片110が姿勢変更し、この姿勢変更によってバネ120の付勢力が変化し、これにより、一対の当接部分112の少なくとも一方とガイド面76との間の動摩擦力を変化させることができる。
また、当接片110、ガイド面76がすり減ったとしても、バネ120の付勢力によって当接片110の当接部分112が安定してガイド面76に押し当てられるため、可動部材100による上記作用効果を安定して得ることができる。
また、当接片110には、一対の当接部分112の一方が設けられており、当接片110は、一対のガイド面76の内側において、当接部分112がガイド面76に摺接する位置よりもシェード22の各方向にある支軸部106を中心に姿勢変更可能に回転支持されている。換言すれば、当接片110は、支軸部106周りに姿勢変更可能に支持され、シェード22の展開方向に向けてガイド面76側に傾斜するように設けられて、当該ガイド面76に接している。このため、可動部材100がシェード22の展開方向に移動する際には、当接部分112の当接部分112とガイド面76との摩擦により、当接片110は支軸部106周りで当接部分112をガイド面に押付ける方向に回転しようとする。これにより、当接部分112がガイド面76に対してより大きな力で押付けられる。このため、シェード22の展開時には、当接部分112とガイド面76との間により大きな動摩擦力を発生させることができ、シェード22の展開開始時から展開終了時までの速度差を効果的に小さくすることができる。一方、可動部材100がシェード22の格納方向に移動する際には、当接片110の当接部分112とガイド面76との摩擦により、当接片110は支軸部106周りで当接部分112をガイド面76から遠ざける(逃げる)方向に回転しようとする。これにより、シェード22の格納時には、当接部分112とガイド面76との間の動摩擦力を小さくすることができ、シェード22を小さい力で格納できる。
{変形例}
上記実施形態では、一対の当接部分112が一対の当接片110に設けられ、一対の当接片110のそれぞれが姿勢変更可能である例で説明したが、図20に示す変形例のように、1つの当接片210のみが一対のガイド面76に当接する例であってもよい。この変形例では、可動部材200は、可動本体202と、1つの当接片210とを備える。当接片210は、可動本体202に対して回転可能に支持されている。上記1つの当接片210の両端部は、外方に向けて突出する円弧状曲面に形成され、それぞれが当接部分212とされる。この例では、1つの当接片210に一対の当接部分212が設けられる。また、当接片210は、コイルバネ等によって一定方向に回転付勢されている。このため、当接片210の両端部の当接部分212は、常時、一対のガイド面76に向けて押付けられており、また、一対のガイド面76の間隔に合わせて、当接片210が回転することで、その押付け状態が維持される。なお、可動部材200がシェード22の展開方向に移動するにつれて、バネが自然形状に近づき、当接部分112がガイド面76に押付けられる力は小さくなる。
この変形例によっても、上記実施形態と同様に、シェード22の展開開始時から展開終了時までの速度差をなるべく小さくすることができる。
また、一対の当接部分の両方が可動本体に対して可動である必要は無く、一対の当接部分の一方が可動本体に対して一定位置に設けられていてもよい。
また、一対の当接片が回転可能に支持されている必要は無く、ガイド面に対して接近及び離れる方向に直線的に移動可能に支持されていてもよい。
また、一対の当接部分とガイド面との間の動摩擦力を変化させる構成は上記例に限られない。例えば、ガイド面の表面の滑らかさ、凹凸形状等が変ることによって、ガイド面と当接部分との間の動摩擦力を変化させてもよい。
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。