以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」および「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。また、図面の比率は説明のために誇張されている場合もある。
本発明は、高分子を含有する塗布液を調製するための、減圧装置を備えた調製釜と、前記調製釜で調製された前記塗布液を順次前記調製釜から流出し、前記塗布液を貯蔵する、貯蔵釜と、前記貯蔵釜に貯蔵された前記塗布液を順次前記貯蔵釜から流出し、再度前記貯蔵釜に導く循環経路と、前記循環経路の途中に設けられ、前記循環経路を通る前記塗布液を分散する分散装置と、を有する、塗布液送液システムである。
このように、本発明は、塗布液送液システムに関する。本発明の好ましい形態によれば、本発明の塗布液送液システムは、光学フィルム製造システムの一部に適用される。そこで、以下、光学フィルム製造システム全般について説明しつつ、本発明の一実施形態である塗布液送液システムを説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光学フィルム製造システムの概略構成図である。
光学フィルム製造システム10は、複数の装置を接続して構成されており、各装置により実現する複数の工程を通じて光学フィルムを製造する。図1に示す例では、光学フィルム製造システム10は、大きく分けて、調製工程、循環工程、供給工程および塗布工程を実行する。
各工程に含まれる装置の構造や作用について説明する。
(調製工程)
光学フィルム製造システム10は、調製工程において、光学フィルムの光学機能層を形成する塗布液を調製する。調製工程は、塗布液調製釜101(本明細書では、単に「調製釜101」とも称する)、送液装置102および濾過装置103を含む。
調製釜101は、塗布液を調製するための容器である。本発明の調製釜101は、減圧装置を備えている。その減圧装置を使った減圧処理を行うことで、塗布液に含まれる気泡を除去または低減することができ、塗布故障を抑えながら、減圧処理を施さないものと比較して、短時間で高品質な塗膜を提供することができる。
塗布液の調製方法は、特に制限されず、たとえば、高分子、および必要に応じて架橋剤、金属酸化物粒子等の添加剤を溶媒に添加し、撹拌混合する方法である。この際、各成分の添加順も特に制限されず、撹拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、撹拌しながら一度に添加し混合してもよい。これらの塗布液の調製方法は、塗布液ごとに適宜決められる。
調製釜101の容量としては、好ましくは100〜5000L程度、より好ましくは500〜3000L程度である。
また、調製釜101の釜内径φとしては、好ましくは0.5〜2m程度、より好ましくは0.9〜1.7m程度である。
調製釜101において調製された塗布液は、調製釜101に備えられている減圧装置によって減圧される。減圧装置による減圧度としては、1.3332〜66.660kPa(10〜500Torr)であると、高品質な塗膜を提供することができるという点で好ましい。より好ましくは50〜400Torrであり、さら好ましくは80〜300Torrである。また、減圧装置による減圧処理の時間としては、好ましくは、20〜200分間程度、より好ましくは30〜150分間程度である。また、減圧処理の方法には特に制限はないが、好ましくは真空ポンプを用いて行う。真空ポンプの種類にも特に制限はない。また、調製釜101と、真空ポンプとの間に、吸い込んだ気泡を真空ポンプ内に流入しないように、トラップを設けておくことが好ましい。
調製釜101は、撹拌装置をさらに備えていると好ましい。そして、撹拌装置の撹拌周速は、ピッチドパドル翼を使用する場合は、0.2〜2m/secであると好ましい。より好ましくは0.3〜1.5m/secであり、さらに好ましくは0.4〜1.0m/secである。0.2m/sec未満では、撹拌が弱く、溶存酸素量を低下させるのに長い時間を要してしまう場合がある。他方、2m/secを超えると、気泡を巻き込んでしまい、気泡を効率的に除去することができなくなってしまう場合がある。
なお、ピッチドパドル翼の大きさ(翼径φ)/釜内径φとしては、撹拌効率の観点から、0.3〜0.7が好ましく、0.4〜0.6がより好ましい。
調製釜101は、循環工程に含まれる貯蔵釜に塗布液を供給するために、塗布液貯蔵釜104(本明細書では、単に「貯蔵釜104」とも称する)に接続されている。
送液装置102は、調製釜101から塗布液を流出する経路に設けられている。送液装置102は、たとえば、ポンプであり、調製された塗布液の流出、流出の停止を制御可能である。送液装置102は、塗布液を流出させる際には、塗布液の流量や速度を適宜設定可能である。
濾過装置103は、調製釜101から塗布液を流出する経路に設けられている。濾過装置103は、塗布液に混ざった異物や、塗布液中に発生した気泡や凝集による異物を除去する。異物が除去された塗布液は、循環工程に送られる。
濾過装置103としては、特に制限はないが、例えば、株式会社ロキテクノ社製の円筒型のフィルタを好適に用いることができる。フィルタの種類も、特に制限はなく、また塗布液の種類により適宜選択すればよいが、塗布液中の異物を低圧損で効率よく捕捉するため、デプスタイプ、あるいはプリーツタイプが好ましい。濾過流量も特に制限はないが、5〜40L/minとするのが好ましい。また、濾過圧力も小さい程、異物の通過が抑制できるので、通常0.2MPa以下で用いるのが好ましい。なお、実際の処理に際して、濾材は予め塗布液と同一の液中に浸漬し、濾材内部の空気を抜いておくことが望ましい。また、この濾過処理では、気泡の除去とともに、塗布液に含まれる不純物や不溶解物を同時に取り除くことができるという利点も有する。なお、本発明においては、濾過装置103を経ずに、貯蔵釜104に塗布液を供給してもよい。
(循環工程)
光学フィルム製造システム10は、循環工程(塗布液循環システム)において、調製された塗布液を、適正な物性に保ちつつ循環させる。本形態においては、循環工程は、貯蔵釜104、送液装置105、分散装置106、脱泡装置107、濾過装置108および循環経路R1を含む。
貯蔵釜104は、連続的に塗布液を供給できるように、塗布液を貯蔵する。これにより、貯蔵釜104内の塗布液の物性を均一にできる。貯蔵釜104には、塗布液を貯蔵釜104から流出させ、流出させた塗布液を再び貯蔵釜104に戻すための循環経路R1が接続されている。また、貯蔵釜104には、塗布液を供給工程および塗布工程に送るための供給経路L1も接続されている。
送液装置105は、循環経路R1上に設けられている。送液装置105は、たとえば、ポンプであり、貯蔵釜104に貯蔵されている塗布液の流出、流出の停止を制御可能である。送液装置105は、塗布液を流出させる際には、塗布液の流量や速度を適宜設定可能である。
分散装置106は、循環経路R1上に設けられている。分散装置106は、塗布液に分散処理、あるいは、せん断処理を施す。これにより、塗布液は、高分子の分子間および分子内の末端基による結合(ファンデルワールス結合等)が切断され、分子どうしの絡み合いが解消され、結果として、粘度が低減される。
分散装置106は、塗布液を、分散、せん断できれば、構成は特に制限されず、市販のマイルダー、圧力式ホモジナイザー、高速回転せん断型ホモジナイザー等であってもよい。マイルダーの場合、分散装置106は、たとえば、固定歯と可動歯との間に塗布液を流し、固定歯と可動歯との速度勾配により生じるせん断力により、塗布液を分散処理あるいはせん断処理する。
図2は、分散装置の一形態であるマイルダーの模式図である。図2のマイルダーは、固定歯であるステーター歯1と、回転歯であるローター歯2とを有する。前記ステーター歯1と前記ローター歯2との間隙(せん断間隙)Laを移動する塗布液4は、ローター歯2の半径方向に速度勾配(ずり速度)が生じる。当該速度勾配によって、前記ステーター歯1および前記ローター歯2間に内部摩擦力(せん断力)が発生する。塗布液4中に含有される気泡は、せん断力を受けながらせん断間隙Laを通過するため、分割され、気液界面が増加する。
ここで、本明細書において、「せん断速度」とは、下記式(1)により算出される。
「最小間隙」とは、塗布前駆液が移動する流路のうち、せん断力が付与される最小の間隙をいう。また、「速度」とは、前記最小間隙を塗布前駆液が通過する際の塗布前駆液の移動速度をいう。この際、一定の速度で塗布前駆液を移動させた場合には、最小間隙を通過するときに最も高いせん断力が付与される。
図2において、せん断間隙Laが式(1)における「最小間隙」に該当し、最小間隙であるせん断間隙Laを移動する際の塗布液4の速度が式(1)における「速度」に該当する。なお、せん断間隙への塗布液5の導入は、ローター歯2のスリット間隙から前記半径方向に行っているため、せん断間隙Laに流れる塗布液4と導入した塗布液5とは、連続的に衝突を繰り返していることとなる。すなわち、図2のマイルダーによれば、塗布液に対してせん断および混合が連続的に行われていることとなる。
前記マイルダーにおいて、せん断間隙におけるステーター歯とローター歯との最小間隙は0.05〜0.8mmであることが好ましく、0.1〜0.6mmであることがより好ましい。また、ローター歯の回転速度としては、500〜50,000rpmであることが好ましく、1,000〜20,000rpmであることがより好ましい。せん断間隙におけるステーター歯とローター歯との最小間隙やローター歯の回転速度等を適宜設定することで、せん断速度を調節することができる。このような回転数であると、塗布液中に含まれる気泡と前記塗布液とが接触する面積を増加させる。また、せん断速度にも特に制限はないが、好ましくは1000(1/sec)以上、より好ましくは5000〜10000000(1/sec)、さらに好ましくは10000〜1600000(1/sec)である。
上記のようなマイルダーとしては、例えば、エバラマイルダー(株式会社荏原製作所製)、マイルダー(大平洋機工株式会社製)等を用いることができる。
図3は、分散装置の一形態である圧力式ホモジナイザーの模式図である。図3の圧力式ホモジナイザーは、バルブシート11と、バルブ12とを有する。加圧機構(図示せず)により供給された塗布液14は、バルブシート11間を高圧かつ高速で移動する。当該塗布液が、バルブシート11およびバルブ12の狭い間隙Lbを通過する際、バルブ12に衝突して流れの方向が変わった塗布液と、間隙Lbを通過しようとする塗布液との間で液同士の摩擦が発生し、その結果として、塗布液に大きなせん断力が生じると考えられる。このせん断力は、最小間隙Lbに比例する。図3において、間隙Lbは、せん断力が付与される最小の間隙であり、式(1)における「最小間隙」に該当する。また、最小間隙である間隙Lbを移動する際の塗布液14の速度が式(1)における「速度」に該当する。前記圧力式ホモジナイザーにおいて、バルブシートとバルブとの距離は0.05〜0.5mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmであることがより好ましい。また、バルブシートおよびバルブ間を通過する際の速度としては、1〜500m/sであることが好ましく、3〜300m/sであることがより好ましい。バルブシートとバルブとの距離や加圧機構における塗布液の供給条件等を適宜設定することで、せん断速度を調節することができる。塗布液の供給の際の圧力にも特に制限はないが、例えば400〜600bar程度が好ましい。
上記のような圧力式ホモジナイザーとしては、例えば、圧力式ホモジナイザーLAB1000(株式会社エスエムテー製)等を用いることができる。
なお、高速回転せん断型ホモジナイザーは、マイルダーと類似した構成を有しており、高速回転するローターと狭い間隙を経て近接するステーターとの間でせん断処理を行う処理装置である。高速で回転するローターにより塗布液が流動し、ステーターとの間で生じる速度勾配で発生したせん断と、塗布液同士の衝突によるせん断で、塗布液4中に含有される気泡は分割され、気液界面が増加する。
高速回転せん断型ホモジナイザーとしては、例えば、T.K.ロボミックス(プライミクス株式会社製)、クレアミックスCLM−0.8S(エム・テクニック株式会社製)、ホモジナイザー(マイクロテック・ニチオン社製)等を用いることができる。
なお、塗布液に含まれる気泡の量が多いと判断される場合は、脱泡処理を行ってもよい。脱泡装置107は、塗布液中に含まれる気泡や塗布液内に溶け込んでいる溶存空気を除去する。脱泡の原理はたとえば、遠心力により気泡と液体を分離して、気泡を真空引きにより排出するものや、超音波を利用するものが考えられる。ただし、脱泡できれば、脱泡装置107は、他のいかなる原理を利用する装置であってもよい。
濾過装置108は、塗布液に混ざった異物や、塗布液中に発生した気泡や凝集による異物を除去する。異物が除去された塗布液は、循環経路R1を通じて貯蔵釜104に戻る。濾過装置108としては、上記で説明したようなものを使用することができる。
以上のように、循環工程において、塗布液は、貯蔵釜104から循環経路R1に流出し、分散装置106、脱泡装置107および濾過装置108による処理を施された後、貯蔵釜104に戻る。貯蔵釜104に戻った塗布液は、貯蔵釜104内で分散されつつ移動した後、再び循環経路R1に流出し、上記の処理が繰り返し行われる。
循環工程における分散装置106、脱泡装置107および濾過装置108の処理強度は、光学フィルムの用途や使用する塗布液の性質等の条件に応じて、塗布液の物性が適正な範囲内に保たれるように適宜設定できる。なお、濾過装置108が、循環経路上に設けられると、塗布液に混ざった異物や、塗布液中に発生した気泡や凝集による異物を除去することができる。
循環工程においては、たとえば、塗布液の粘度が適正な範囲よりも大きいと、基材に塗布する際に塗布液が基材上を滑らかに流れず、塗布液を均一に塗布することは困難となる可能性がある。さらに、塗布液の凝集による異物が存在した状態で塗布されてしまうことも考えられる。逆に、塗布液の粘度が適正な範囲よりも小さいと、塗布された塗布液が安定せず、搬送時の空気の流れや乾燥時の風圧等により塗布液が流れてしまい、光学フィルムのスジやムラ(本明細書においては、それを「塗布故障」とも称する)の原因となる場合がある。また、他の塗布液と重ねて塗布する際に他の塗布液と混ざってしまい、光学フィルムの白濁の原因となる場合がある。
これに対し、本発明においては、循環経路R1で、上記の処理が繰り返し行われるため、調製された塗布液を循環させつつ、適切な強度において分散処理、脱泡処理、濾過処理等を連続的に施すことにより、塗布液の粘度等の物性を塗布に適した範囲内に保つことができる。
ここで、塗布液の粘度としては、後述する塗布装置によって塗布される直前において、好ましくは100〜1000mPa・sであり、より好ましくは120〜700mPa・sであり、さらに好ましくは150〜650mPa・sである。このような粘度であると、塗布液における気泡等を効率的に除去することができ、ひいては、高品質な塗膜を提供することができる。なお、1000mPa・sを超えると、粘度が高すぎるため、減圧処理を行っても気泡の除去が不十分となり塗布故障が発生してしまう場合がある。
また、調製釜から流出した前記塗布液の溶存酸素量が、好ましくは、1〜5mg/Lであり、より好ましくは1.5〜4mg/Lである。溶存酸素量が5mg/Lを超えると、塗布膜における気泡の溶解が少なく、減圧処理による気泡の除去が不十分となり、塗布故障を防げない場合がある。他方、1mg/L未満であると、減圧処理に要する時間が長くなって連続塗布することができなくなる場合がある。
なお、循環工程においては、塗布液を循環させる回数が予め定められているものではなく、送液装置105の設定等に応じて、一定時間あたり所定の流量の塗布液が、貯蔵釜104から循環経路R1に順次送られて循環する。循環された塗布液は貯蔵釜104に戻り攪拌されるので、貯蔵釜104に収容される塗布液全体の物性を、常に塗布に適した状態に保つことができる。
貯蔵釜104に収容されている塗布液のうちの一部は、貯蔵釜104に接続された供給経路L1を通じて、供給工程に送られる。
なお、循環経路R1上に、分散装置106、脱泡装置107および濾過装置108の順に装置が並んでいる。しかし、これらの装置の順序は、適宜変更可能である。また、複数の上記装置の機能を統合した1つの装置が循環工程に提供されてもよい。たとえば、分散装置106および脱泡装置107の機能が統合した分散脱泡装置が循環工程に提供されてもよい。
また、循環工程には、上記以外の装置が設けられていてもよく、また上記装置のいずれかが設けられていなくてもよい。特に、本発明においては、調製釜101に減圧処理を行う減圧装置が備えられているため、脱泡装置107を省略しても、高品質な塗膜を提供することができ、装置を省けるという観点でも生産性も向上する。
(供給工程)
光学フィルム製造システム10は、供給工程において、調製および循環された塗布液を、塗布工程へ供給する。供給工程は、送液装置109、流量計110、分散装置111、脱泡装置112、濾過装置113および供給経路L1を含む。供給経路L1は、循環工程の貯蔵釜104から、塗布工程に、塗布液を供給するための経路である。送液装置109、流量計110、分散装置111、脱泡装置112および濾過装置113は、供給経路L1に設けられている。
送液装置109は、循環工程の貯蔵釜104から流出させた塗布液を、供給経路L1に設けられる各装置に送る。送液装置109については、上述の説明が同様に妥当する。
流量計110は、供給経路L1を通過する塗布液の流量を計測する装置である。流量計110によって計測された塗布液の流量に応じて、送液装置109の流量が適切に制御されてもよい。流量計110としては、たとえば、フラップ式、熱線式、カルマン渦式、または負圧感知方式等の流量計が使用される。流量計に加えて、または流量計の替わりに、供給経路L1内における塗布液の圧力を計測する圧力計が設けられてもよい。
分散装置111、脱泡装置112および濾過装置113は、上記で説明したものと同様のものを用いることができ、これらの操作を経て異物が除去された塗布液は、供給経路L1を通じて塗布工程に送られる。
なお、供給経路L1上に、流量計110、分散装置111、脱泡装置112、濾過装置113の順に装置が並んでいる。しかし、これらの装置の順序は、適宜変更可能である。また、複数の上記装置の機能を統合した1つの装置が供給工程に提供されてもよい。たとえば、分散装置111および脱泡装置112の機能が統合した分散脱泡装置が供給工程に提供されてもよい。また、供給工程には、上記以外の装置が設けられていてもよく、また上記装置のいずれかが設けられていなくてもよい。
(塗布工程)
光学フィルム製造システム10は、塗布工程において、基材に、塗布液を塗布し、高分子膜(塗膜)を作製する。塗布工程は、塗布装置114、セット装置115および乾燥装置116を含む。
塗布装置114は、基材に、塗布液を塗布する。塗布装置114は、基材に、塗布液を単層で塗布してもよく、また、複数の層で塗布してもよい。塗布液を複数層に重ねて基材に塗布(いわゆる重層塗布)する場合、少なくとも隣り合って重ねられる塗布液は、異なる配分や材料によって調製されている。したがって、図1では、1つの調製釜101を示しているが、実際は、複数の調製釜が用意され、別個の調製工程および供給工程を経て、複数種類の塗布液が塗布装置114に供給されてもよい。
セット装置115は、基材上に形成された高分子膜を、一旦冷却する。塗布直後の高分子膜は粘度が低いため、塗布直後に熱風を当てて乾燥させると、熱風によって一部で膜厚が変わり、全面に均等な屈折率等が得られないことが起こり得る。また、重層塗布を行った場合には、層間において成分が移動し、所望の光学性能に悪影響を与えるほど層間の境界が曖昧となりうる。しかし、得られた高分子膜を一度冷却することで、熱風を当てても膜厚が変わらず、また、所望の光学性能に悪影響を与えるほど層間の境界が曖昧になることを抑制できる。無論、光学フィルム製造システム10においては、セット装置115が省略されてもよい。
乾燥装置116は、たとえば、熱風を基材上の高分子膜に与えて、高分子膜を乾燥させてさらに安定化させ、光学フィルムとして完成させる。
以上のように、光学フィルム製造システム10によれば、塗布液を循環させて継続的に分散処理を加える。したがって、時間の経過等により物性が変わる塗布液を、均一な塗布に適した状態で、連続して安定的に供給できる。
また、光学フィルム製造システム10は、塗布液を基材に塗布する塗布装置114と、塗布液を塗布装置114に供給する供給経路L1を有している。したがって、均一な塗布に適した状態の塗布液を塗布装置に供給でき、効率的に光学フィルムを製造できる。
さらに、供給経路L1と循環経路R1とは、並列に設けられている。したがって、塗布液の供給を止めることなく連続して安定的に供給しながら、塗布液を循環経路R1に循環させて塗布に適した物性を保つことができる。
加えて、光学フィルム製造システム10は、循環経路R1の途中に濾過装置108を有している。したがって、塗布液に混ざった異物や、塗布液中に発生した気泡や凝集による異物を取り除くことができ、塗布液を、均一な塗布に適した状態で、連続して安定的に供給できる。
そして、本発明においては、調製釜101に減圧処理を行う減圧装置が備えられている。そのため、その減圧装置を使った減圧処理を行うことで、塗布液に含まれる気泡を除去または低減することができ、塗布故障を抑えながら、短時間で高品質な塗膜を提供することができる。無論、減圧装置を備えていないものであっても、塗布液を調製釜101内に所定時間静置したりすることで、気泡と塗布液との質量差を利用して、ある程度気泡を除去することが可能である。しかし、このような質量差による気泡の除去方法では、特に塗布液の粘度が高くなると、気泡の浮上に長時間を要する。そして、静置する時間が長くなると、貯蔵釜104に貯蔵している塗布液のすべてが流出されて塗布に回ってしまい、連続して塗布することができなくなってしまう。他方、所定の時間内に塗布を完了させなければならない状況下では、静置できる時間も限られてしまい、結果、気泡が多く含まれている状態で塗布に回ってしまい、塗布故障が防げない。
これに対して、本発明においては、調製釜101に減圧処理を行う減圧装置が備えられているため、貯蔵釜104に貯蔵できる塗布液以上の塗布液を塗布装置114に供給できるため、連続生産が可能となる。つまり、光学フィルム製造システム10を流れる塗布液の量を、貯蔵釜104の貯蔵量を超えさせることで、塗布装置114に、供給経路L1を通じて導かれた塗布液を途絶えることなく供給し、塗布液を基材に連続的に塗布することができ、このようにしても、塗布液に含まれる気泡を除去または低減することができ、塗布故障を抑えることができ、短時間で高品質な塗膜を提供することができる。なお、供給経路L1を通じて導かれた塗布液を途絶えることなく供給し、塗布液を基材に連続的に塗布する方法としては、貯蔵釜104に貯蔵された塗布液がすべて流出する前に、調製釜101で調製された塗布液を貯蔵釜104に送液することが好ましい。このようにすることで、基材上に塗布液を塗布すると並行して、調製釜101で塗布液を調製でき、貯蔵釜104中の塗布液を枯渇させず、連続して塗布作業を行うことができる。
なお、本実施形態において、循環工程は、調製工程の後に設けられるものとして説明したが、これに限定されない。循環工程は、塗布液が調製されてから塗布されるまでの間のいかなる部分に位置してもよい。また、本実施形態において、循環工程は、光学フィルム製造システム10の中に一つ設けられるものとして説明したが、これに限定されない。循環工程は、光学フィルム製造システム10の中に複数設けられてもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の光学フィルム製造システムについて説明する。
第1実施形態においては、循環経路R1と供給経路L1とは、循環工程の貯蔵釜104にそれぞれ別々の経路として接続され、それぞれの経路に送液装置、分散装置等が設けられている。しかし、循環経路R1と供給経路L1とは、経路や装置の一部を共用し、片方の経路における設備が省略されてもよい。第2実施形態においては、供給経路L1を循環経路R1の途中に接続し、供給経路L1上の経路や装置の一部を省略する場合について説明する。
図4は、第2実施形態に係る光学フィルム製造システムの概略構成図である。図4においては、第1実施形態と同様の構成には同じ参照番号を付している。第1実施形態と同様の構成については、説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図4に示すように、光学フィルム製造システム20の調製工程および塗布工程は、第1実施形態と同様であり、循環工程および供給工程が、第1実施形態と異なる。
なお、光学フィルム製造システム20は、塗布液を基材に塗布する塗布装置114を有しており、貯蔵釜101または循環経路R1上に接続され、塗布液を塗布装置114に順次導く供給経路L1をさらに有している。
(循環工程)
光学フィルム製造システム20の循環工程は、供給経路L1が、濾過装置108に接続されている点が第1実施形態と異なる。
循環工程において、塗布液は、貯蔵釜104から循環経路R1に流出し、分散装置106、脱泡装置107を経て、濾過装置108に送られる。塗布液は、濾過装置108において異物が除去された後、循環経路R1を通じて再び貯蔵釜104に戻る。ここで、濾過装置108を通過する塗布液のうちの一部は、濾過装置108に接続された供給経路L1を通じて、供給工程に送られる。
(供給工程)
光学フィルム製造システム20の供給工程は、流量計110および供給経路L1を含む。供給経路L1は、循環工程の濾過装置108に接続されている。そのため、第1実施形態とは異なり、供給経路L1上の送液装置、分散装置、脱泡装置および濾過装置は省略されている。
循環工程から供給経路L1に導かれた塗布液は、流量計110を通過し、塗布工程の塗布装置に送られる。
第2実施形態の光学フィルム製造システム20は、第1実施形態の光学フィルム製造システム10が達成する効果に加えて、以下の効果を奏する。
光学フィルム製造システム20によれば、供給経路L1が循環経路R1上に接続され、供給経路L1の経路や装置等の設備を省略できるため、設備投資を抑えつつ、コンパクトな光学フィルム製造システムを構築できる。
なお、本実施形態では、供給経路L1が濾過装置108に接続されるものとして説明したが、これに限定されない。供給経路L1は、循環経路R1に設けられた他の装置に接続されてもよい。あるいは、循環経路R1上に経路を分岐するための装置を設けて、供給経路L1がその装置に接続されるようにしてもよい。
また、本実施形態では、供給経路L1上には流量計110のみが設けられるものとして説明したが、これに限定されない。供給経路L1上には、流量計110以外の装置が設けられていてもよい。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の光学フィルム製造システムついて説明する。
第3実施形態は、第1実施形態の構成に加えて、循環工程において、塗布液の物性を測定する測定装置と、測定装置の測定結果に応じて分散装置を制御する装置とを備えている点が第1実施形態と異なる。
図3は、第3実施形態に係る光学フィルム製造システムの概略構成図である。図3においては、第1実施形態と同様の構成には同じ参照番号を付している。第1実施形態と同様の構成については、説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図3に示すように、光学フィルム製造システム30の調製工程、供給工程および塗布工程は、第1実施形態と同様であり、循環工程のみが、第1実施形態と異なる。
(循環工程)
光学フィルム製造システム30の循環工程は、第1実施形態と同様の構成に加えて、さらに、測定装置117と制御装置118とを含む。
測定装置117は、循環経路R1上に設けられ、循環経路R1を通過する塗布液の物性を測定する。測定装置117は、たとえば塗布液の粘度を測定する粘度計である。粘度計としては、回転式、振動式、細管式等いかなる方法の粘度計が使用されてもよい。測定装置117は、測定結果を示す情報を制御装置118に通知する。
このように、測定装置117が、循環経路R1上、供給経路L1上および貯蔵釜104内の少なくとも一箇所に設けられると好ましい。
制御装置118は、プログラムに従って演算するCPU、各種データやプログラムを記録するメモリやハードディスク等を有する。制御装置118は、測定装置117から通知された測定結果を示す情報に基づいて、分散装置106を制御する。
制御装置118は、たとえば、測定装置117が粘度計である場合、測定装置117によって測定された塗布液の粘度に基づいて、分散装置106を制御する。塗布液の粘度が所定の適正な範囲よりも大きい場合、制御装置118は、分散装置106の分散強度を高めるように制御する。分散装置106がマイルダーの場合、制御装置118は、可動歯の回転速度を高めるように分散装置106を制御する。あるいは、塗布液の粘度が所定の適正な範囲よりも小さい場合、制御装置118は、分散装置106の分散強度を低めるように制御する。
第3実施形態の光学フィルム製造システム30は、第1実施形態の光学フィルム製造システム10が達成する効果に加えて、以下の効果を奏する。
光学フィルム製造システム30によれば、測定装置117により測定された塗布液の物性に基づいて、分散装置106の分散強度を制御する。したがって、循環する塗布液をより確実に、均一な塗布に適した物性に保つことができる。
また、光学フィルム製造システム30は、測定装置117により塗布液の粘度を測定し、粘度が所定の適正な範囲よりも大きい場合は分散強度を大きくし、粘度が所定の適正な範囲よりも小さい場合は分散強度を小さくするように分散装置106を制御する。したがって、循環する塗布液の粘度を適正な範囲に保つことができ、均一な塗布に適した状態で供給できる。
なお、第3実施形態においては、測定装置117が塗布液の粘度を測定する例を説明したが、これに限定されない。測定装置117は、塗布液の動粘度や密度、粘弾性、温度等、塗布液のいかなる物性を測定してもよい。
また、第3実施形態においては、制御装置118が塗布液の粘度に基づいて分散装置106を制御する例を説明したが、これに限定されない。制御装置118は、測定装置117が測定した様々な物性に基づいて、分散装置106だけでなく、脱泡装置107や濾過装置108を制御してもよい。たとえば、制御装置118は、塗布液の密度に基づいて脱泡装置107と濾過装置108を制御してもよい。具体的には、密度が所定の範囲よりも小さい場合には、塗布液中の気泡や溶存空気の割合が大きいと判断し、脱泡装置107の脱泡強度を高めるように制御してもよい。あるいは、密度が所定の範囲よりも大きい場合には、塗布液中に凝固による異物等が発生していると判断し、濾過装置108の濾過強度を高めるように濾過フィルタのメンテナンスを行うように制御してもよい。
また、第3実施形態においては、測定装置117が循環工程に設けられるものとして説明したが、これに限定されない。測定装置117は、循環経路R1だけでなく、供給経路L1や貯蔵釜104内等、塗布液が通過するいかなる場所に設けられてもよい。また、測定装置117が複数設けられ、複数の測定結果に基づいて複数の装置が制御されてもよい。これにより、より塗布に適した状態で塗布液を供給できる。
以上、第1実施形態〜第3実施形態において、光学フィルム製造システムのバリエーションを説明してきた。しかし、上記実施形態は一例であり、様々な改変が可能である。たとえば、分散装置を上記実施形態1〜3とは異なる位置に配置してもよい。また、各装置は、図示される順番ではなく、別の順番に配置されて処理を実行してもよい。
(材料等)
次に、第1実施形態〜第3実施形態において、製造される光学フィルム、光学フィルムの製造に用いる材料、光学フィルムの製造工程等について詳細に説明する。
<光学フィルム>
本形態に係る製造方法で製造される光学フィルムは、基材上に、膜厚が1〜1000nmである光学機能層が少なくとも1層形成されてなる。
光学フィルムは、光学機能層の組成、構成等によって発揮する機能が異なる。したがって、本発明に係る技術的思想は、適宜公知の事項を参酌することによって、種々の光学フィルム、例えば、赤外遮蔽フィルム、反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、および電磁波シールドフィルム等に用いることができる。
以下の説明では、屈折率の異なる屈折率層(高分子膜)が積層されてなる赤外遮蔽フィルムについて説明するが、本発明を限定するものではない。なお、赤外遮蔽フィルムは光学フィルムに該当し、屈折率層は光学機能層に該当する。
一般に、赤外遮蔽フィルムにおいては、隣接する屈折率層間の屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で赤外反射率を高くすることができるという観点から好ましい。本形態では、隣接する屈折率層間の屈折率差の少なくとも1つが0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.4以上であることが特に好ましい。また、前記積層された屈折率層間のすべての屈折率差が上記好適な範囲内にあることが好ましい。ただし、この場合でも、反射層を構成する屈折率層のうち、最表層や最下層に関しては、上記好適な範囲外の構成であってもよい。
特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、100層以上の積層が必要となる。このような場合、生産性の低下、積層界面における散乱の増大、透明性の低下、および製造時の塗布故障が生じうる。
さらには、本形態の赤外遮蔽フィルムの光学特性として、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上であることが好ましく、また、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
赤外遮蔽フィルムは、屈折率層が積層された構成を有することにより、基材の側から、または積層された屈折率層の側から赤外光を照射した場合に、少なくとも赤外光の一部を遮蔽して赤外遮蔽効果を発揮することができる。
一実施形態において、前記積層された屈折率層は、高屈折率層および低屈折率層が交互に積層されてなる。積層された高屈折率層および低屈折率層は、それぞれ同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。屈折率層が高屈折率層であるか低屈折率層であるかは、隣接する屈折率層との屈折率の対比によって判断される。具体的には、ある屈折率層を基準層としたとき、当該基準層に隣接する屈折率層が基準層より屈折率が低ければ、基準層は高屈折率層である(隣接層は低屈折率層である)と判断される。一方、基準層より隣接層の屈折率が高ければ、基準層は低屈折率層である(隣接層は高屈折率層である)と判断される。
上述のように、高屈折率層であるか低屈折率層であるかは隣接する屈折率層との関係で定まる相対的なものであるが、高屈折率層の屈折率(nH)は1.60〜2.50であることが好ましく、1.70〜2.50であることがより好ましく、1.80〜2.20であることがさらに好ましく、1.90〜2.20であることが特に好ましい。一方、低屈折率層の屈折率(nL)は、1.10〜1.60であることが好ましく、1.30〜1.55であることがより好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。なお、各屈折率層の屈折率の値は、以下のように測定した値を採用するものとする。具体的には、支持体上に測定対象となる屈折率層を単層で塗布して得られた塗膜を10cm×10cmに断裁してサンプルを作製する。当該サンプルは、裏面での光の反射を防止するため、測定面とは反対側の面(裏面)を粗面化処理し、黒色スプレーで光吸収処理を行う。このように作製したサンプルを、分光光度計U−4000型(株式会社日立製作所製)を用いて、5度正反射の条件にて可視領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
屈折率層の総層数の範囲としては、生産性の観点から、好ましくは200層以下であり、より好ましくは100層以下であり、さらに好ましくは50層以下である。
屈折率層の1層あたりの厚さは、1〜1000nmであり、好ましくは20〜800nmであり、より好ましくは50〜350nmである。
<高分子を含有する塗布液(塗布液)>
赤外遮蔽フィルムの製造においては、通常、塗布液として、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の少なくとも2種の塗布液を調製する。
[塗布液の組成]
塗布液は、高分子を含む。さらに、必要に応じて溶媒、架橋剤、金属酸化物粒子、エマルジョン樹脂、その他の添加剤を含んでいてもよい。
(高分子)
用いられうる高分子としては、特に制限されないが、水溶性高分子が挙げられる。水溶性高分子としては、特に制限されないが、反応性官能基を有するポリマー、変性ポリビニルアルコール、ゼラチン、および増粘多糖類等が挙げられる。なお、本明細書において、「水溶性高分子」とは、水溶性高分子が最も溶解する温度で0.5質量%の濃度となるように水に溶解させた場合において、G2グラスフィルタ(最大細孔40〜50μm)で濾過した際に濾別される不溶物の質量が、加えた水溶性高分子の50質量%以内であるものを意味する。
反応性官能基を有するポリマー
本発明で用いられうる反応性官能基を有するポリマーとしては、例えば、未変性ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、もしくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、もしくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体およびそれらの塩が挙げられる。これらの中でも、未変性ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、およびこれらの共重合体を用いることが好ましい。
なお、上記反応性官能基を有するポリマーが共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
変性ポリビニルアルコール
本発明において用いられうる変性ポリビニルアルコールは、未変性ポリビニルアルコールに任意の変性処理の1または2以上を施したものである。例えば、アミン変性ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボン酸変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、チオール変性ポリビニルアルコール、アセタール変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコールは、市販品を使用してもよく、あるいは当該分野で公知の方法で製造したものを使用してもよい。
また、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも用いてもよい。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような第1級〜第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールが挙げられ、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報および同63−307979号公報に記載されているようなビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、および特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
そして、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
ここで、未変性ポリビニルアルコールとしては、平均重合度が好ましくは約100〜10000、より好ましくは平均重合度が約500〜5000、さらに好ましくは平均重合度約900〜2500である。また、未変性ポリビニルアルコールのケン化度は、好ましくは約60〜100モル%、より好ましくは78〜99モル%である。このようなケン化ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルをラジカル重合し、得られたポリ酢酸ビニルを適宜、ケン化することによって製造することができ、所望の未変性ポリビニルアルコールを製造するためには、適宜、重合度、ケン化度をそれ自体公知の方法で制御することによって達成される。
なお、こうした部分ケン化ポリビニルアルコールとしては、市販品を使用することも可能であり、好ましい未変性ポリビニルアルコールの市販品としては、例えばゴーセノールEG05、EG25(日本合成化学工業株式会社製)、PVA203(株式会社クラレ製)、PVA204(株式会社クラレ製)、PVA205(株式会社クラレ製)、JP−04(日本酢ビ・ポバール株式会社製)、JP−05(日本酢ビ・ポバール株式会社製)等が挙げられる。あるいは、(株)クラレ製のPVA124(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、PVA117(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、PVA624(ケン化度:95.0〜96.0モル%)およびPVA617(ケン化度:94.5〜95.5モル%);例えば日本合成化学工業(株)製のAH−26(ケン化度:97.0〜98.8モル%)、AH−22(ケン化度:97.5〜98.5モル%)、NH−18(ケン化度:98.0〜99.0モル%)およびN−300(ケン化度:98.0〜99.0モル%);例えば日本酢ビ・ポバール(株)のJF−17(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、JF−17L(ケン化度:98.0〜99.0モル%)およびJF−20(ケン化度:98.0〜99.0モル%)などが挙げられる。
未変性(変性)ポリビニルアルコールと重合させる重合性ビニル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類またはそれらの塩(例えばアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩)、それらのエステル類(例えば置換または非置換のアルキルエステル、環状アルキルエステル、ポリアルキレングリコールエステル)、不飽和ニトリル類、不飽和アミド類、芳香族ビニル類、脂肪族ビニル類、不飽和結合含有複素環類等が挙げられる。具体的には、(a)アクリル酸エステル類としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート(ポリエチレングリコールとアクリル酸とのエステル)、ポリプロピレングリコールアクリレート(ポリプロピレングリコールとアクリル酸とのエステル)などが、(b)メタクリル酸エステル類としては、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート(ポリエチレングリコールとメタクリル酸とのエステル)などが、(c)不飽和ニトリル類としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが、(d)不飽和アミド類としては例えばアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミドなどが、(e)芳香族ビニル類としてはスチレン、α−メチルスチレンなどが、(f)脂肪族ビニル類としては、酢酸ビニルなどが、(g)不飽和結合含有複素環類としては、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリンなどが例示される。
上述の変性ポリビニルアルコールは、未変性ポリビニルアルコールまたはその誘導体をそれ自体公知の方法で変性処理することにより製造することができる。
特に、変性ポリビニルアルコールとしての上記グラフト共重合体を製造する方法としては、ラジカル重合、例えば溶液重合、懸濁重合、乳化重合および塊状重合などのそれ自体公知の方法を挙げることができ、各々の通常の重合条件下で実施することができる。この重合反応は、通常、重合開始剤の存在下、必要に応じて還元剤(例えば、エリソルビン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸)、連鎖移動剤(例えば2−メルカプトエタノール、α−メチルスチレンダイマー、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ラウリルメルカプタン)あるいは分散剤(例えばソルビタンエステル、ラウリルアルコールなどの界面活性剤)等の存在下、水、有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、セロソルブ、カルビトール)あるいはそれらの混合物中で実施される。また、未反応の単量体の除去方法、乾燥、粉砕方法等も公知の方法でよく、特に制限はない。
ゼラチン
本発明で用いられうるゼラチンとしては、従来、ハロゲン化銀写真感光材料分野で広く用いられてきた各種ゼラチンを挙げることができる。例えば、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチンおよびゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基、またはカルボキシ基を有し、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。ゼラチンの一般的製造法に関しては良く知られており、例えば、T.H.James:The Theory of Photographic Process 4th.ed.1977(Macmillan)55頁、科学写真便覧(上)72〜75頁(丸善株式会社)、写真工学の基礎−銀塩写真編 119〜124頁(コロナ社)等の記載を参考にすることができる。また、リサーチ・ディスクロージャー誌第176巻、No.17643(1978年12月)のIXページに記載されているゼラチンを挙げることができる。
増粘多糖類
本発明で用いられる増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類および合成複合多糖類などを挙げることができる。これら増粘多糖類の詳細については、「生化学辞典(第2版)」(東京化学同人)、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
前記増粘多糖類とは、糖類の重合体で、分子内に水素結合基を多数有するものであり、温度による分子間の水素結合力の違いにより、低温時の粘度と高温時の粘度との差が大きいという特性を備えた多糖類であり、さらに金属酸化物粒子や多価金属化合物を添加すると、低温時に金属酸化物粒子または多価金属化合物との反応により金属酸化物粒子または多価金属化合物との水素結合またはイオン結合を形成して、粘度上昇またはゲル化を引き起こすものである。粘度の上昇幅は、金属酸化物粒子または多価金属化合物の添加前の15℃における粘度と比較して、15℃の粘度で、1.0mPa・s以上であることが好ましい。粘度上昇幅は、より好ましくは5.0mPa・s以上であり、さらに好ましくは10.0mPa・s以上である。
本発明に適用可能な増粘多糖類のさらに具体的な例としては、例えば、ペクチン、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム、タマリンドシードガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ゲランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸およびアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類、カルボキシメチルセルロース(セルロースカルボキシメチルエーテル)、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類が挙げられる。塗布液中に共存しうる金属酸化物粒子の分散安定性を低下させないという観点から、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。
上述の高分子は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、高分子の質量平均分子量は特に制限はないが、5000〜1000000を好ましく用いる事ができる。なお、本明細書において、質量平均分子量とは、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxLまたはTSKgel G2000HxL(東ソー株式会社製)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトフラフィ(GPC)分析装置(溶媒:テトラヒドロフラン(THF))により、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量を意味する。
また、塗布液中の高分子の濃度は、高分子の種類に応じて適宜変更することができるが、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、3〜9.5質量%であることがさらに好ましい。高分子の濃度が上記範囲にあると、塗布液が一定の粘性を有し成膜に有利となりうることから好ましい。なお、気泡の除去の効率を考えると濃度が低い方が好ましい。
(溶媒)
本発明で用いられうる溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、またはその混合溶媒等が挙げられる。
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して用いてもよい。環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、水、または水とメタノール、エタノール、もしくは酢酸エチルとの混合溶媒を用いることが好ましく、水を用いることがより好ましい。
(架橋剤)
架橋剤は、高分子を硬化させる機能を有する。硬化によって、屈折率層に耐水性が付与されうる。
用いられうる架橋剤としては、高分子と硬化反応を起こすものであれば特に制限されない。例えば、高分子が未変性ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールである場合には、ホウ酸およびその塩(ホウ素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩)、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸、および八ホウ酸またはそれらの塩を用いることが好ましい。ホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用してもよく、ホウ酸およびホウ砂の混合水溶液を用いることが特に好ましい。他にも公知の化合物を使用することができ、一般的には高分子と反応しうる基を有する化合物、または樹脂が有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、樹脂の種類に応じて適宜選択して用いられる。架橋剤の具体例としては、例えば、ジグリシジルエチルエ−テル、エチレングリコ−ルジグリシジルエーテル、1,4一ブタンジオ−ルジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロ−ルポリグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤;ホルムアルデヒド、グリオキザ−ル等のアルデヒド系架橋剤;2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−S−トリアジン等の活性ハロゲン系架橋剤;1.3.5−トリス−アクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等の活性ビニル系化合物;アルミニウム明礬等が挙げられる。
また、樹脂としてゼラチンを用いる場合は、架橋剤として、例えば、ビニルスルホン化合物、尿素−ホルマリン縮合物、メラニン−ホルマリン縮合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、活性オレフィン類、イソシアネート系化合物などの有機硬膜剤、クロム、アルミニウム、ジルコニウムなどの無機多価金属塩類などを用いるとよい。
塗布液中の架橋剤の濃度は、0.001〜20質量%であることが好ましく、0.01〜10質量%であることがより好ましい。架橋剤が上記範囲にあると、塗布液が一定の曳糸性や粘性を有し成膜に有利となり、また、形成される屈折率層が好適な耐水性を有しうることから好ましい。
(金属酸化物粒子)
用いられうる金属酸化物粒子としては、特に制限されないが、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ケイ素(SiO2)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンスズ(ATO)等が挙げられる。これらのうち、高屈折率層用塗布液には酸化チタン(TiO2)を、低屈折率層用塗布液には酸化ケイ素(SiO2)を、それぞれ用いることが好ましい。
前記酸化チタン(TiO2)としては、特に屈折率が高く、触媒活性が低いルチル型の酸化チタンを用いることが好ましい。なお、触媒活性が低いと、屈折率層や隣接する層で生じる副反応(光触媒反応)が抑制されて耐候性が高くなりうる。
また、前記酸化チタンは、pHが1.0〜3.0かつチタン粒子のゼータ電位が正である水系の酸化チタンゾルの表面を疎水化して有機溶剤に分散可能な状態にしたものを用いることが好ましい。前記水系の酸化チタンゾルの調製方法としては、たとえば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等に記載された事項を参照することができる。
また、酸化チタン粒子のその他の製造方法については、たとえば、「酸化チタン−物性と応用技術」(清野学 p255〜258(2000年)技報堂出版株式会社)に記載の方法、またはWO2007/039953号明細書の段落「0011」〜「0023」に記載の工程(2)の方法を参考にすることができる。この工程(2)による製造方法とは、二酸化チタン水和物をアルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の塩基性化合物で処理する工程(1)で得られた二酸化チタン分散物を、カルボン酸基含有化合物および無機酸で処理するものである。本発明では、工程(2)における無機酸によりpHが1.0〜3.0に調整された酸化チタンの水系ゾルを用いることができる。
前記酸化ケイ素(SiO2)としては、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。これらのうち、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることがより好ましく、水および/または有機溶媒に分散させたコロイダルシリカゾルを用いることがさらに好ましい。上記のコロイダルシリカは、ケイ酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られうる。かようなコロイダルシリカは、例えば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、および国際公開第94/26530号パンフレット等に記載されている。また、コロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
上記金属酸化物粒子は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
金属酸化物粒子の平均粒径は、2〜100nmであることが好ましく、3〜50nmであることがより好ましく、4〜30nmであることがさらに好ましい。当該金属酸化物粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、屈折率層の固形分100質量%に対して、20〜70質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。金属酸化物粒子の含有量が20質量%以上であると、所望の屈折率が得られることから好ましい。また、金属酸化物粒子の含有量が70質量%以下であると、膜の柔軟性を得ることができ、製膜が容易となることから好ましい。
また、屈折率の異なる屈折率層(例えば、高屈折率層と低屈折率層)がいずれも金属酸化物粒子を含む場合には、アニオン化処理またはカチオン化処理を行い、金属酸化物粒子が同一のイオン性(電荷)を有することが好ましい。アニオン化処理またはカチオン化処理を行うことによって、2種の金属酸化物粒子との間に斥力が生じ、これによって、例えば、重層塗布して屈折率層を形成する際に層界面での凝集等が起こりにくくなりうる。
金属酸化物粒子のアニオン化処理として、例えば、酸化チタンのアニオン処理を例示すると、当該酸化チタン粒子は、含ケイ素の水和酸化物で被覆することによりアニオン化することができる。含ケイ素の水和化合物の被覆量は、通常、3〜30質量%であり、好ましくは3〜10質量%であり、より好ましくは3〜8質量%である。被覆量が30質量%以下であると高屈折率層の所望の屈折率化が得られることから好ましく、被覆量が3%以上であると粒子を安定に形成することができることから好ましい。
金属酸化物粒子のカチオン化処理は、例えば、カチオン性化合物を用いることにより行うことができる。前記カチオン性化合物の例としては、カチオン性ポリマー、多価金属塩等が挙げられるが、吸着力・透明性の観点から多価金属塩が好ましい。多価金属塩としては、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、銅、スカンジウム、ガリウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛等の金属の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、クロロ酢酸塩等が挙げられる。これらのうち、水溶性アルミニウム化合物、水溶性カルシウム化合物、水溶性マグネシウム化合物、水溶性亜鉛化合物、水溶性ジルコニウム化合物を用いることが好ましく、水溶性アルミニウム化合物、水溶性ジルコニウム化合物を用いることがより好ましい。前記水溶性アルミニウム化合物の具体例としては、ポリ塩化アルミニウム(塩基性塩化アルミニウム)、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、硝酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性乳酸アルミニウム等が挙げられる。当該カチオン性化合物の被覆量は、金属酸化物粒子の形状や粒径等によって異なるが、金属酸化物粒子に対しては1質量%〜15質量%であることが好ましい。
(エマルジョン樹脂)
エマルジョン樹脂は、通常、塗布液に分散されたポリマーである。エマルジョン樹脂は、油溶性のモノマーを、高分子分散剤等を用いてエマルジョン重合して得られる。
用いられうる油溶性のモノマーは、特に制限されないが、エチレン、プロピレン、ブタジエン、酢酸ビニルおよびその部分加水分解物、ビニルエーテル、アクリル酸およびそのエステル類、メタクリル酸およびそのエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、メタクリルアミドおよびその誘導体、スチレン、ジビニルベンゼン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、マレイン酸、ビニルピロリドンなどが挙げられる。これらのうち、透明性と粒径の観点から、アクリル酸およびそのエステル類、酢酸ビニル系を用いることが好ましい。
アクリル酸および/またはそのエステル類、酢酸ビニル系エマルジョンとしては、市販されているものを用いてもよく、例えば、アクリットUW−309、UW−319SX、UW−520(大成ファインケミカル株式会社製)、およびモビニール(日本合成化学工業株式会社製)等が挙げられる。
また、用いられうる分散剤は、特に制限されないが、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、第4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。
上述したエマルジョンは、柔軟性を高める観点から、ガラス転移温度(Tg)が20℃以下であることが好ましく、−30〜10℃であることがより好ましい。
(その他の添加剤)
本発明の好ましい形態として、光学フィルムに用いられうる屈折率層に適用可能なその他の添加剤を、以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、特開昭57−87988号公報、および特開昭62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、アニオン、カチオン、またはノニオンの各種界面活性剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、防黴剤、帯電防止剤、マット剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、色素、顔料等の公知の各種添加剤などが挙げられる。
本発明においては、上記の塗布液送液システムを用いて製造された塗布液を基材上に塗布する工程と、前記基材上の塗布液を乾燥させる工程と、を有する光学フィルムの製造方法が提供される。以下に、詳細に説明する。
[塗布液の調製]
塗布液の調製方法は、特に制限されず、例えば、高分子、および必要に応じて架橋剤、金属酸化物粒子等の添加剤を溶媒に添加し、撹拌混合する方法が挙げられる。この際、各成分の添加順も特に制限されず、撹拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、撹拌しながら一度に添加し混合してもよい。
[基材]
本発明の光学フィルムに適用する基材としては、特に制限されることはなく、公知の樹脂フィルムを用いることができる。具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリアリレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。これらのうち、コストや入手の容易性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等を用いることが好ましい。
また、上記樹脂フィルムを用いた基材は、未延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよいが、PETやPENのような結晶性を有する樹脂フィルムの場合には、強度の向上、熱膨張抑制の観点から延伸後、熱固定化されるフィルムであることが好ましい。
上記樹脂フィルムを用いた基材は、従来公知の一般的な方法により製造することができる。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸フィルムを製造することができる。また、前記未延伸フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、樹脂フィルムの流れ(縦軸)方向、および/または樹脂フィルムの流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸フィルムを製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍であることが好ましい。
本発明に係る基材の厚さは、5〜300μmであることが好ましく、15〜150μmであることがより好ましい。また、基材は、2枚以上を重ねたものであってもよく、この際、基材の種類は同じであっても、異なっていてもよい。
また、基材は、寸法安定性の観点から、弛緩処理およびオフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記樹脂フィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、またはテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われることが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、100〜180℃で行われることがより好ましい。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%に処理されることが好ましく、2〜6%に処理されることがより好ましい。弛緩処理された基材は、さらにオフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、より寸法安定性が向上しうる。
前記基材は、製膜過程で片面または両面に、下引層を設けることが好ましい。当該下引層は、インラインでまたは製膜後に形成されうる。下引層の形成方法としては、例えば、下引層塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥する方法が挙げられる。下引層塗布液は、通常、樹脂を含む。当該樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリスチレンブタジエン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール、およびゼラチン等が挙げられる。前記下引層塗布液には、さらに公知の添加剤を加えてもよい。下引層塗布液の塗布量は、乾燥状態で約0.01〜2g/m2となるように塗布することが好ましい。下引層塗布液の塗布方法としては、特に制限されないが、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法等の公知の方法が用いられうる。得られた塗膜は延伸させてもよく、通常、塗布液を塗布した後にテンター内で横延伸を行いながら80〜120℃で乾燥させることで、下引層が形成されうる。なお、下引層は、単層構造であっても、積層構造であってもよい。
本発明に係る基材は、さらに導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層(接着層)、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、ハードコート層、耐摩耗性層、粘着層、中間膜層等の公知の機能層を有していてもよい。
基材が、上述の下引層や機能層等の中間層を有する場合には、基材および中間層の総膜厚は、5〜500μmであることが好ましく、25〜250μmであることがより好ましい。
[塗布]
塗布装置において、上記基材に所定の温度、所定の速度で塗布液を塗布して塗膜を形成する。
塗布液の塗布方式としては、特に制限されず、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号明細書、米国特許第2,761,791号明細書に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
前記塗布方式がスライドビード塗布方式を用いた同時重層塗布である場合には、塗布液の粘度は1〜2000mPa・sであることが好ましく、1〜1000mPa・sであることがより好ましい。
塗布温度は、20〜60℃であることが好ましい。塗布温度が60℃以下であると、塗布液を高温に保つための設備が比較的簡素化でき、コストを抑えることができることから好ましい。一方、塗布温度が20℃以上であると、塗布液を冷却するための設備が不要となり、コストを抑えることができ、また、作業の安全性が向上しうることから好ましい。
塗布速度は、1m/min以上であることが好ましく、1〜500m/minであることがより好ましい。塗布速度が1m/min以上であると、高い生産性が得られることから好ましい。
[乾燥]
乾燥装置において、塗膜を乾燥させることにより、屈折率層が形成されうる。
乾燥の方法としては、特に制限されず、公知の方法で行われうる。乾燥方法の例としては、自然乾燥、加熱乾燥、熱風を当てる方法、冷風を当てる方法等が挙げられる。迅速に乾燥を行う観点から、加熱乾燥により乾燥を行うことが好ましい。この際、加熱温度としては、形成された塗膜の組成等によっても異なるが、15〜120℃であることが好ましく、20〜90℃であることがより好ましい。
[冷却]
光学フィルムの製造において、基材上に生成された塗膜を、乾燥前に一度冷却してもよい。冷却することにより、屈折率層の表面(積層されている場合には界面)がより均一となりうる。
塗布直後の塗膜は粘度が低いため、例えば、塗布直後の塗膜に熱風を当てて乾燥させる場合には、得られる屈折率層の表面は熱風によって膜厚のバラツキが生じうる。また、重層塗布を行った場合には、層間において塗膜成分が移動し、得られる屈折率層間の境界が光学性能に悪影響を与えるほど曖昧となりうる。しかし、得られた塗膜を一度冷却すると、塗膜の粘性が急激に上昇して塗膜が安定化しうる。その結果、熱風等の乾燥による膜厚のバラツキの発生、層間の塗膜成分の移動を抑制しうる。ただし、層間の塗布成分の移動によって、赤外遮蔽フィルムの性能が異なる場合もありうることから、冷却を行うか否かは、赤外遮蔽フィルムの所望の性能に応じて適宜決定されうる。
冷却を行う場合には、塗膜の冷却によって粘性が上昇しやすい高分子を塗布液の成分とすることが好ましい。上述のように、粘性は、塗布液中の高分子の分子間および分子内の末端基による結合、架橋剤における結合、分子どうしの絡み合い等によって生じうる。よって、塗布液の成分として、官能基を多数有している高分子、分子量が大きい高分子を使用し、架橋剤を含むことが好ましい。
冷却温度は、用いる塗布液によっても異なるが、−20〜20℃であることが好ましく、−5〜10℃であることがより好ましい。
<用途>
上記で得られた赤外遮蔽フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、赤外遮蔽効果を付与する赤外遮蔽フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
特に、本発明に係る赤外遮蔽フィルムが直接または接着剤を介してガラスまたはガラス代替の樹脂などの基体に貼合されている部材には、赤外遮蔽フィルムは好適に適用されうる。
すなわち、本発明のさらに他の形態によれば、上記赤外遮蔽フィルムを、基体の少なくとも一方の面に設けた、赤外遮蔽体をも提供する。
前記基体の具体的な例としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、金属板、セラミック等が挙げられる。樹脂の種類は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂のいずれでもよく、これらを2種以上組み合わせて用いても良い。本発明で使用されうる基体は、押出成形、カレンダー成形、射出成形、中空成形、圧縮成形等、公知の方法で製造することができる。基体の厚さは特に制限されないが、通常0.1mm〜5cmである。
赤外遮蔽フィルムと基体とを貼り合わせる接着層または粘着層は、赤外遮蔽フィルムを日光(熱線)入射面側に設置することが好ましい。また、本発明に係る赤外遮蔽フィルムを、窓ガラスと基体との間に挟持すると、水分等の周囲のガスから封止でき耐久性に優れるため好ましい。本発明に係る赤外遮蔽フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
赤外遮蔽フィルムまたは赤外遮蔽体の断熱性能、日射熱遮蔽性能は、一般的にJIS R 3209(複層ガラス)、JIS R 3106(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)、JIS R 3107(板ガラス類の熱抵抗および建築における熱貫流率の算定方法)に準拠した方法により求めることができる。
日射透過率、日射反射率、放射率、可視光透過率の測定は、(1)波長(300〜2500nm)の分光測光器を用い、各種単板ガラスの分光透過率、分光反射率を測定する。また、波長5.5〜50μmの分光測定器を用いて放射率を測定する。なお、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、熱線吸収板ガラスの放射率は既定値を用いる。(2)日射透過率、日射反射率、日射吸収率、修正放射率の算出は、JIS R 3106に従い、日射透過率、日射反射率、日射吸収率、垂直放射率を算出する。修正放射率に関しては、JIS R 3107に示されている係数を、垂直放射率に乗ずることにより求める。断熱性、日射熱遮蔽性の算出は、(1)厚さの測定値、修正放射率を用いJIS R 3209に従って複層ガラスの熱抵抗を算出する。ただし中空層が2mmを超える場合はJIS R 3107に従って中空層の気体熱コンダクタンスを求める。(2)断熱性は、複層ガラスの熱抵抗に熱伝達抵抗を加えて熱貫流抵抗で求める。(3)日射熱遮蔽性はJIS R 3106により日射熱取得率を求め、1から差し引いて算出する。
また、上記で得られた赤外遮蔽フィルムは薄膜化されたものであることから、ディスプレイパネルの表面に適用してもよい。例えば、プラズマディスプレイパネルでは、赤外遮蔽フィルムを高透明PETフィルムに貼り合わせて、ディスプレイ画面に導入することができる。これによって、プラズマディスプレイパネルから放射される赤外線を遮蔽し、人体の保護、電子機器相互の誤動作防止、およびリモコンの誤動作防止等に寄与しうる。
上記のように、本発明の塗布液送液システムにおいては、基材上に塗布された塗膜を乾燥する、乾燥装置をさらに有し、前記塗布液の前記基材上への塗布および乾燥を複数回繰り返すことによって、基材上に複数層の塗膜が形成されてなる積層体を作製することができる。
そして、かかる積層体が、相互に屈折率の異なる、高屈折率層および低屈折率層が交互に積層されてなるものであり、前記高屈折率層および前記低屈折率層の少なくとも一層が、金属酸化物粒子と、水溶性樹脂とを含む、ことによって、赤外遮蔽フィルムとして使用することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
まず、高分子を含有する塗布液を調製し、塗膜(高分子膜)を作製するまでの全体の流れを説明する。図4に示されるように、減圧装置を備えた塗布液調製釜101に原料を添加して塗布液を調製する。この際、通常、気泡が混入してしまう。この気泡を減圧装置による減圧処理により除去する。そして、気泡を除去した塗布液を、送液装置102を使って、濾過装置103を経ることなく、塗布液貯蔵釜104に供給する。この段階で気泡の数を確認する。これは、後述の<目視での液中の泡の有無>にて評価する。
次に、塗布液貯蔵釜104の塗布液を、送液装置105を使って分散装置106に供給し、脱泡装置107を経ることなく、濾過装置108に供給後、循環経路R1を使い、再度、塗布液貯蔵釜104に戻す。この循環処理を繰り返し行う。
最後に、循環処理を経た塗布液を用いて、塗布装置114および乾燥装置116によって、塗膜(高分子膜)を作製する。この段階でも気泡の数を確認する。これは、後述の<塗膜の塗布故障>にて評価する。
より簡単にまとめると、1.塗布液を調製し、粘度を測定する(a)。2.減圧処理を行う。3.減圧処理終了後に、粘度測定を測定する(b)。送液を行い、4.貯蔵釜へ貯蔵し、この時点で、溶存酸素量測定(c)、粘度測定(d)、気泡数確認(e)を行う。送液を行い、5.せん断処理を行う。送液を行い、6.濾過処理を行う。送液(循環経路R1)を行い、7.貯蔵釜に貯蔵する。8. 5〜7を繰り返す循環を行い、循環を終了させ粘度測定(f)を行う。送液を行い、9.塗布を行う。10.乾燥を行い、塗布故障評価(g)を行う。以下、具体的操作について詳説する。
<実施例1>
減圧装置と撹拌装置とを備えた釜内径φ0.95mの塗布液調製釜101(減圧可能な蓋付き釜:減圧浮上槽)に、濃度7.4質量%に調製したポリビニルアルコール(PVA−124、平均重合度2400、ケン化度98〜99モル%、株式会社クラレ製)水溶液500Lを入れ、40℃に加熱し、塗布液1を調製した。この塗布液1の粘度は、450mPa・sであった(a)。なお、本明細書中の粘度は、回転式粘度計(ブルックフィールド デジタル粘度計 DV−E)による測定から得られる値とする。なお、塗布液の温度は、すべての実施例、比較例を通して、40℃に維持している。
この塗布液1には気泡が混入されている。そこで、撹拌装置による翼径φ475mmの4枚ピッチドパドル翼で、周速0.5m/secで撹拌しながら、減圧度100Torrで、30分間、減圧処理を行って、減圧処理が施された塗布液1を得た。この減圧処理が施された塗布液1の粘度は、450mPa・sであった(b)。
続いて、送液装置102としてのロータリーポンプを用いて20L/minの流量で、(濾過装置103を経ることなく)、釜内径φ0.95mの塗布液貯蔵釜104に、減圧処理が施された塗布液1を供給し、貯蔵した。この時点での溶存酸素量は、3.1mg/Lであった(c)。なお、本明細書の溶存酸素量は、溶存酸素計(飯島電子工業製 DOメーター B−506)による測定から得られる値とする。また、この貯蔵釜に貯蔵された塗布液1の粘度は、430mPa・sであった(d)。また、この段階で気泡の数を確認した(<目視での液中の泡の有無>:(e))。
続いて、塗布液貯蔵釜104に貯蔵された塗布液は、送液装置105としてのロータリーポンプを用いて20L/minの流量で、分散装置マイルダーMDN306V(分散装置106)に送液されせん断処理を行った。かかる分散装置は、標準タイプのローター及びステーターを備えたマイルダー処理装置である。かかるマイルダー処理装置を用いて、5000rpmの回転速度でローターを回転させて、減圧処理が施された塗布液1のせん断処理を行った。
続いて、濾過装置108により塗布液1の濾過を行った。濾過は、フィルタ250L−SLP−200(株式会社ロキテクノ製)、ロータリーポンプを用いて20L/minの流量でフィルタに塗布液1を通液させて濾過を行った。なお、濾過圧力は0.05〜0.1MPaであった。
濾過処理が施された塗布液1を、循環経路R1により再び塗布液貯蔵釜104に戻した。この循環工程を30分実施し、循環工程が施された塗布液1を得た。なお、この循環工程が施された塗布液1の粘度は、400mPa・sであった(f)。
最後に、濾過装置108から、供給経路L1を通じて、循環工程が施された塗布液1を塗布装置114としてのスライドコータ塗布装置に供給し、かかるスライドコータ塗布装置を用いて、厚さ100μmのPETからなる基材上に、速度50m/分で、塗布液1の塗布を行い、乾燥装置116を用いて、50℃で乾燥させて、塗膜1を作製した。この段階でも気泡の数を確認した(<塗膜の塗布故障>:(g))。
<実施例2>
濃度を8.0質量%にした以外は、塗布液1の調製と同様にして、塗布液2を調製し、実施例1と同様にして塗膜2を作製した。
なお、調製した塗布液2の粘度は、650mPa・sであった(a)。また、減圧処理が施された塗布液2の粘度は、650mPa・sであった(b)。また、溶存酸素量は3.4mg/Lであった(c)。また、貯蔵釜に貯蔵された塗布液2の粘度は、620mPa・sであった(d)。また、循環処理が施された塗布液2の粘度は、600mPa・sであった(f)。
<実施例3>
濃度を8.5質量%にした以外は、塗布液1の調製と同様にして、塗布液3を調製し、実施例1と同様にして塗膜3を作製した。
なお、調製した塗布液3の粘度は、850mPa・sであった(a)。また、減圧処理が施された塗布液3の粘度は、840mPa・sであった(b)。また、溶存酸素量は3.9mg/Lであった(c)。また、貯蔵釜に貯蔵された塗布液3の粘度は、820mPa・sであった(d)。また、循環処理が施された塗布液3の粘度は、800mPa・sであった(f)。
<実施例4>
濃度を9.1質量%にした以外は、塗布液1の調製と同様にして、塗布液4を調製し、減圧度を20Torrに変更した以外は、実施例1と同様にして塗膜4を作製した。
なお、調製した塗布液4の粘度は、1100mPa・sであった(a)。また、減圧処理が施された塗布液4の粘度は、1100mPa・sであった(b)。また、溶存酸素量は3.8mg/Lであった(c)。また、貯蔵釜に貯蔵された塗布液4の粘度は、1050mPa・sであった(d)。また、循環処理が施された塗布液4の粘度は、1000mPa・sであった(f)。
<実施例5>
濃度を6.0質量%にした以外は、塗布液1の調製と同様にして、塗布液5を調製し、減圧度を400Torrに変更した以外は、実施例1と同様にして塗膜5を作製した。
なお、調製した塗布液5の粘度は、150mPa・sであった(a)。また、減圧処理が施された塗布液5の粘度は、150mPa・sであった(b)。また、溶存酸素量は3.0mg/Lであった(c)。また、貯蔵釜に貯蔵された塗布液5の粘度は、110mPa・sであった(d)。また、循環処理が施された塗布液5の粘度は、100mPa・sであった(f)。
<実施例6>
塗布液調製釜の撹拌速度を周速0.2m/secとした以外は、実施例1と同様にして塗膜6を作製した。
なお、減圧処理が施された塗布液6の粘度は、450mPa・sであった(b)。また、溶存酸素量は3.7mg/Lであった(c)。また、貯蔵釜に貯蔵された塗布液6の粘度は、410mPa・sであった(d)。また、循環処理が施された塗布液6の粘度は、400mPa・sであった(f)。
<実施例7>
塗布液調製釜の撹拌速度を周速2.0m/secとした以外は、実施例1と同様にして塗膜7を作製した。
なお、減圧処理が施された塗布液7の粘度は、440mPa・sであった(b)。また、溶存酸素量は4.1mg/Lであった(c)。また、貯蔵釜に貯蔵された塗布液7の粘度は、410mPa・sであった(d)。また、循環処理が施された塗布液7の粘度は、400mPa・sであった(f)。
<実施例8>
塗布液調製釜での減圧処理の時間を30分間から10分間に変更した以外は、実施例1と同様にして塗膜8を作製した。
なお、減圧処理が施された塗布液8の粘度は、450mPa・sであった(b)。また、溶存酸素量は4.8mg/Lであった(c)。また、貯蔵釜に貯蔵された塗布液8の粘度は、410mPa・sであった(d)。また、循環処理が施された塗布液8の粘度は、400mPa・sであった(f)。
<実施例9>
塗布液調製釜での減圧度を100Torrから510Torrに変更した以外は、実施例1と同様にして塗膜9を作製した。
なお、減圧処理が施された塗布液9の粘度は、450mPa・sであった(b)。また、溶存酸素量は4.5mg/Lであった(c)。また、貯蔵釜に貯蔵された塗布液9の粘度は、410mPa・sであった(d)。また、循環処理が施された塗布液9の粘度は、400mPa・sであった(f)。
<比較例1>
塗布液調製釜にて減圧処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして塗膜10を作製した。
なお、溶存酸素量は6.9mg/Lであった(c)。また、貯蔵釜に貯蔵された塗布液10の粘度は、410mPa・sであった(d)。また、循環処理が施された塗布液10の粘度は、400mPa・sであった(f)。
<比較例2>
循環経路を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして塗膜11を作製した。
<目視での液中の泡の有無>
循環経路を経る前の塗布液貯蔵釜104から、透明ビーカーに約1Lの塗布液(塗布液)を採取(サンプリング)し、目視で1mm以下のサイズの泡個数をカウントした。
◎:0個/1L
〇:1〜5個/1L
△:6〜10個/1L
×:11〜50個/1L
××:51〜100個/1L
×××:101個以上/1L
<塗膜の塗布故障>
1m×10mの、乾燥後の塗布サンプルを見て、泡起因および凝集物起因の塗布故障の個数をそれぞれ目視でカウントし、10で除することによって、1m×1mあたりの塗布故障の数をカウントした。
◎:0個/m2
〇:0超〜0.1個/m2
△:0.1超〜1.0個/m2
×:1.0超〜10個/m2
××:10超〜50個/m2
×××:50個超/m2
結果を下記表1に示す。