JP2017096990A - 光反射フィルムの製造方法 - Google Patents

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【課題】長期間の使用においての変色や脆化が抑制され長期信頼性に優れた光反射フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】屈折率差を有する高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層され少なくともそのうちの1層が水溶性樹脂および無機酸化物粒子を含んだ光反射層を有する光学積層体を形成する工程と、前記光学積層体のL*a*b*色空間における色差ΔE*abを、0.5≦ΔE*ab≦10.0の範囲で変化させる熱処理工程とを行う光反射フィルムの製造方法である。【選択図】図1

Description

本発明は、光反射フィルムの製造方法に関する。
近年、冷房設備にかかる負担を減らすため、建物や車両の窓ガラスに装着させて、太陽光の熱線の透過を遮断する赤外遮蔽フィルムへの要望が高まっている。赤外線を遮蔽する構成の一つとして、水溶性樹脂と金属酸化物粒子とを用いて構成された高屈折率層と低屈折率層とを、基材上に交互に積層してなる赤外反射層を備えた赤外反射フィルムが知られている。
このような赤外反射フィルムは、例えばウェットプロセスを適用して次のようにして製造する。先ず、基材上に低屈折率層用塗布液と高屈折率層用塗布液とを交互に塗布、乾燥して赤外反射層を形成し、次いで、赤外反射層に樹脂接着層用塗布液を塗布、乾燥して樹脂接着剤を形成し、さらに樹脂接着剤層にハードコート用塗布液を塗布し、さらに活性エネルギー線を照射してハードコート層を形成する(下記特許文献1参照)。
国際公開第2014/024873号
しかしながら以上のような赤外反射フィルムは、赤外反射層の塗布とその後の乾燥による層形成からの時間経過により、徐々に赤外反射層内の樹脂及び金属酸化物粒子が変質し、時間経過とともに変色や脆化が進行する問題があった。
そこで本発明は、長期間の使用においての変色や脆化が抑制され長期信頼性に優れた光反射フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
このような目的を達成するための本発明は、屈折率差を有する高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層され少なくともそのうちの1層が水溶性樹脂および無機酸化物粒子を含んだ光反射層を有する光学積層体を形成する工程と、前記光学積層体のL色空間における色差ΔEabを、0.5≦ΔEab≦10.0の範囲で変化させる熱処理工程とを行う光反射フィルムの製造方法である。
以上のような本発明によれば、長期間の使用においての変色や脆化が抑制され長期信頼性に優れた光反射フィルムの製造方法を提供することが可能である。
第1実施形態の製造方法を説明する断面模式図である。 第2実施形態の製造方法を説明する断面模式図である。 第3実施形態の製造方法を説明する断面模式図である。
≪第1実施形態:光反射フィルムの製造方法≫
図1は、第1実施形態を説明する断面模式図である。この図を用いて製造方法を説明する光反射フィルム10aは、建物の屋外の窓や自動車窓等、長期間太陽光に晒らされる設備に装着して用いられるものである。このような光反射フィルム10aは、樹脂基材1と、その一主面上に設けられた光反射層3と、樹脂基材1の他主面上に設けられたハードコート層5とを備えたものである。光反射層3は、低屈折率層3Lと高屈折率層3Hとが交互に積層されたものである。
このような光反射フィルム10aの厚さは、12〜315μmであることが好ましく、15〜200μmであることがより好ましく、20〜100μmであることがさらに好ましい。
このような光反射フィルム10aの光学特性は、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上であり、好ましくは75%以上であり、より好ましくは85%以上である。また、この光反射フィルム10aが、例えば近赤外遮蔽フィルムであれば、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。なお、以下においては、この光反射フィルム10aが近赤外線を反射する熱線反射フィルムであることとして実施の形態を説明する。しかしながら、この光反射フィルム10aは、近赤外遮蔽フィルムであることに限定されることはなく、赤外線や紫外線を反射して遮蔽するフィルムであってもよく、それぞれの波長領域の反射率が50%を超えるように、各層の膜厚および構成材料が設定されていることとする。
以上のような光反射フィルム10aの製造方法は、先ず図1Aに示すように、ハードコート層5、樹脂基材1、および光反射層3からなる光学積層体10を形成した後、図1Bに示すように光学積層体10を熱処理することにより光反射フィルム10aを作製する方法である。そして特に、光学積層体10の熱処理において、光学積層体10の色変化を指標とした熱処理を行うところに特徴がある。以下、各図面に示す工程の詳細を説明する。
<光学積層体10の形成>
先ず、図1Aに示すように、樹脂基材1を準備する。次いで、ウェットプロセスを適用して、樹脂基材1の一主面側に光反射層3を形成し、樹脂基材1の他主面側にハードコート層5を形成する。これにより、ハードコート層5、樹脂基材1、および光反射層3を積層した光学積層体10を形成する。以下、各工程を順に説明するが、樹脂基材1の一主面上への光反射層3の形成と、樹脂基材1の他主面上へのハードコート層5の形成とは、どちらを先に行なっても良い。
[樹脂基材1の準備]
ここで準備する樹脂基材1は、透明であれば特に限定されるものではない。このような樹脂基材1としては、例えば、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ力一ボネー卜(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の樹脂からなるフィルム、さらには前記樹脂を二層以上積層してなる樹脂フィルム等が挙げられる。コストや入手の容易性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ力一ボネー卜(PC) を用いることが好ましい。
樹脂基材1の厚さは、5μm〜200μmであることが好ましく、15μm〜150μmであることがより好ましい。樹脂基材1が、複数の基材の積層体で構成される場合には、その総膜厚が上記範囲にあることが好ましい。
樹脂基材1は、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。樹脂基材1の透過率を高めることにより、光反射フィルム10aにおける波長420nm〜780nmの最小透過率を高めることができる。
また樹脂基材1は、未延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよいが、強度の向上、熱膨張の抑制の観点から延伸フィルムであることが好ましい。
さらに樹脂基材1は、製膜過程で片面または両面に下引層を設けることが好ましい。下引層は、インラインでまたは製膜後に形成されうる。下引層の形成方法としては、例えば、下引層塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥する方法が挙げられる。下引層塗布液は、通常、樹脂を含む。樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビ、ニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、変性ポリビニルアルコール系樹脂、およびゼラチン等が挙げられる。
なお、樹脂基材1は、さらに導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、中間膜層等の公知の機能層を有していてもよい。このような機能層を備えた樹脂基材1は、機能層を含めた総膜厚が、5μm〜200μmであることが好ましく、15μm〜150μmであることがより好ましい。
[光反射層3の形成]
樹脂基材1の一主面上に形成する光反射層3は、低屈折率層3Lと高屈折率層3Hとが交互に積層された構成を有する。なお、「低屈折率層3L」及び「高屈折率層3H」は、互いに屈折率差を有する層であって、隣接した2層の屈折率差を比較した場合に、屈折率の低い方の層を低屈折率層3Lとし、高い方の層を高屈折率層3Hとする。
これらの低屈折率層3Lおよび高屈折率層3Hは、水溶性樹脂および無機酸化物粒子を含んだ層として形成される。低屈折率層3Lは、水溶性樹脂および第1の無機酸化物粒子を含んで形成される。また高屈折率層3Hは、水溶性樹脂および第2の無機酸化物粒子を含んで形成される。第1の無機酸化物粒子と第2の無機酸化物粒子とは、低屈折率層3Lと高屈折率層3Hとの屈折率差を大きくするために用いられる。
低屈折率層3Lの屈折率は、1.10〜1.60であることが好ましく、1.30〜1.50であることがより好ましい。一方、高屈折率層3Hの屈折率は、1.80〜2.50であることが好ましく、1.90〜2.20であることがより好ましい。なお、低屈折率層3Lおよび高屈折率層3Hの各屈折率の値は、以下のように測定した値を採用するものとする。具体的には、支持体上に屈折率の測定対象となる層を単層で塗布して得られた塗膜を10cm×10cmに断裁してサンプルを作製する。作製したサンプルは、裏面での光の反射を防止するため、測定面とは反対側の面(裏面)を粗面化処理し、黒色スプレーで光吸収処理を行う。このように作製したサンプルを、分光光度計U−4000型(株式会社日立製作所製)を用いて、5度正反射の条件にて可視領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
以上のような低屈折率層3Lおよび高屈折率層3Hは、屈折率差が大きいほど少ない層数で、光反射層3を薄膜化しつつ光反射率を高くすることができる。したがって、低屈折率層3Lおよび高屈折率層3Hの層数は、低屈折率層3Lと高屈折率層3Hの屈折率差の寄っても異なるが、光反射層3を薄膜化する観点から合計で100層以下であることが好ましく、40層以下であることがより好ましく、20層以下であることがさらに好ましい。
樹脂基材1の一主面上にこのような光反射層3を形成する方法として、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液を調整した後、これらの塗布液を交互に塗布および乾燥させる方法が挙げられ、以下のように行う。
−低屈折率層用塗布液の調整および高屈折率層用塗布液の調整−
低屈折率層用塗布液の調製方法、および高屈折率層用塗布液の調整方法は、特に制限されず、水溶性樹脂、無機酸化物粒子(第1無機酸化物粒子または第2無機酸化物粒子)、保護剤、溶媒、硬化剤、及び必要に応じて添加されるその他の添加剤を、撹拌混合する方法が挙げられる。各成分の混合順は特に限定されず、撹拌しながら各成分を順次混合してもよいし、一度に混合して撹拌してもよい。これらの各塗布液は、溶媒の量を調整することにより、適当な粘度に調整する。
以下、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液の調整に用いられる水溶性樹脂、無機酸化物粒子(第1無機酸化物粒子または第2無機酸化物粒子)、保護剤、溶媒、硬化剤、及び必要に応じて添加されるその他の添加剤を、この順に説明する。
(水溶性樹脂)
低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液に含まれる水溶性樹脂は、低屈折率層3Lおよび高屈折率層3Hのバインダーとして機能するものである。なお、ここで「水溶性」とは、水媒体に対し1質量%以上、好ましくは2質量%以上が溶解することを意味する。
このような水溶性樹脂としては、例えば、ポリビ、ニルアルコール系樹脂、ゼラチン、セルロース類、増粘多糖類、および反応性官能基を有するポリマーが用いられうる。これらのうち、ポリビニルアルコール系樹脂を用いることが好ましい。
好ましく用いられるポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコール(未変性ポリビニルアルコール)の他に、末端を力チオン変性した力チオン変性ポリビニルアルコール、アニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、アクリル等で変性した変性ポリビニルアルコール、反応型ポリビニルアルコール(例えば、日本合成製「ゴーセファイマーZ])、酢酸ビニル系樹脂(例えば、クラレ製「エクセバール])も含まれる。
これらのポリビニルアルコール系樹脂は、重合度や変性の種類違いなど2種類以上を併用することもできる。また、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール(例えば、クラレ製「R−1130」)等を併用することもできる。シラノール変性ポリビニルアルコールを含むことにより、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液が経時的に安定し、結果として得られる塗膜の塗布性が良好になる。
ここで用いられるポリビ、二アルアルコール樹脂の重合度は、1500〜7000であることが好ましく、2000〜5000であることがより好ましい。重合度が1500以上であると、低屈折率層3Lおよび高屈折率層3Hの形成時における塗布膜のひび割れ耐性が良くなることから好ましい。一方、重合度が7000以下であると、低屈折率層3Lおよび高屈折率層3Hの形成時における塗布液が安定することから好ましい。なお、ここで「重合度」とは、粘度平均重合度を指し、JIS−K6726(1994)に準じて測定された値を採用するものとする。具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂を完全に再ケン化して精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から下記式(1)により、重合度Pを求めることができる。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)・・・式(1)
低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液に含まれる水溶性樹脂は、それぞれケン化度の異なるポリビニルアルコール系樹脂を含有することが好ましい。これにより、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液を重ねて塗布した場合の界面での層間混合が抑制され、光反射率(光遮蔽率)がより良好となり、ヘイズが低くなることから好ましい。この際、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液のどちらのポリビニルアルコール系樹脂のケン化度の値が高くてもよいが、高屈折率層用塗布液に含まれるポリビ、ニルアルコール系樹脂のケン化度がより高いことが好ましい。ケン化度の高いポリビニルアルコール系樹脂は、高屈折率層用塗布液に含まれる第2の無機酸化物粒子を保護することができる。
低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液に含まれるポリビニルアルコール系樹脂のケン化度の絶対値の差は、可能な限り大きいことが好ましいが、3mol%以上であることが好ましく、5mol%以上であることがより好ましい。ケン化度の絶対値の差が3mol%以上であると、上記界面での層間混合を好ましいレベルに抑制できる。
また、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液に含まれるポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、水への溶解性の観点から、75mol%以上であることが好ましい
以上のような水溶性樹脂は、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液中の濃度が、0.5〜10質量%であることが好ましい。
さらに、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液におけるポリビニルアルコール系樹脂(全ポリビニルアルコール系樹脂の合計)の含有量は、形成される低屈折率層3Lおよび高屈折率層3Hの全質量(固形分)100質量%に対し、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、14〜30質量%であることがさらに好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が5質量%以上であると、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液を塗布した後の乾燥において、塗膜の表面が均一になり、透明性の良好な低屈折率層3Lおよび高屈折率層3Hを形成することができる。一方、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量を50質量%以下とすることにより、高屈折率層3Hと低屈折率層3Lと屈折率差を十分に大きくできる程度の無機酸化物粒子(第1無機酸化物粒子または第2無機酸化物粒子)を、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液に含有させることができる。
(第1の無機酸化物粒子)
低屈折率用塗布液に含有させる第1の無機酸化物粒子は、高屈折率用塗布液に含有させる第2の無機酸化物粒子よりも屈折率が低いものである。このような第1の無機酸化物粒子を構成する材料は、特に限定されることはないが、酸化亜鉛、合成非晶質シリ力、およびコロイダルシリ力等の二酸化ケイ素、アルミナ、コロイダルアルミナ等を挙げることができる。これらのうち、二酸化ケイ素を用いることが好ましく、コロイダルシリ力を用いることが特に好ましい。なお、第1の金属酸化物は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
第1の無機酸化物粒子として特に好ましく用いられるコロイダルシリ力とは、ケイ酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリ力ゾルを加熱熟成して得られる。
このようなコロイダルシリ力としては、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、スノーテックスシリーズ(スノーテックスOS、OXS、S、OS、20、30、40、O、N、C:日産化学工業株式会社製)等が挙げられる。
コロイダルシリ力は、その表面が力チオン変性されたものであってもよく、またAl、Ca、MgまたはBa等で処理された物であってもよい。
第1の無機酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)は、その平均粒径が3〜100nmであることが好ましく、3〜50nmであることがより好ましい。なお、ここでは、無機酸化物粒子の「平均粒径(個数平均)]は、粒子そのもの又は各層の断面や表面に現れた任意の1000個の粒子を電子顕微鏡で観察して粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求めた値を採用するものとする。この際、粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
以上のような第1の無機酸化物粒子は、低屈折率層用塗布液中の濃度が1〜50質量%であることが好ましい。また低屈折率層用塗布液は、形成される低屈折率層3L中の第1の無機酸化物粒子の含有量が、低屈折率層3Lの全固形分100質量%に対して、20〜75質量%となるように調整されることが好ましく、30〜70質量%となるように調整されることがより好ましく、35〜69質量%となるように調整されることがさらに好ましく、40〜68質量%となるように調整されることが特に好ましい。20質量%以上であると、低屈折率層3Lに所望の屈折率が得られることから好ましい。一方、75質量%以下であると、低屈折率層3Lを形成する際の低屈折率層用塗布液の塗布性が良好となる。
なお、第1の金属酸化物粒子は、低屈折率層用塗布液に対して単分散であることが好ましい。「単分散」とは、下記式(2)で求められる単分散度が40%以下であることをいい、より好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%である。
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×10・・・式(2)
(第2の無機酸化物粒子)
高屈折率用塗布液に含有させる第2の無機酸化物粒子は、低屈折率用塗布液に含有させる第1の無機酸化物粒子よりも屈折率が高いものである。このような第2の無機酸化物粒子を構成する材料は、特に限定されることはないが、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、アルミナ、コロイダルアルミナ、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム等を挙げることができる。これらのうち、透明でより屈折率の高い高屈折率層3Hを形成する観点から、酸化チタン、酸化ジルコニウムを用いることが好ましく、ルチル型(正方晶形)酸化チタン粒子を含有することがより好ましい。なお、第2の無機酸化物粒子は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
第2の無機酸化物粒子として酸化チタン粒子を用いる場合、酸化チタンゾルの表面を変性して水または有機溶剤等に分散可能な状態として用いることが好ましい
また酸化チタン粒子は、含ケイ素の水和酸化物で被覆されたコアシェル粒子の形態で、あってもよい。コアシェル粒子は、酸化チタン粒子の表面を、コアとなる酸化チタンに含ケイ素の水和酸化物で構成されたシェル層で被覆した構造を有する。この際のコアの部分となる酸化チタン粒子の体積平均粒径は、1nmを超え、30nm未満であることが好ましく、4nm以上、30nm未満であることがより好ましい。このようなコアシェル粒子を高屈折率層用塗布液に含有させることで、シェル層を構成する含ケイ素の水和酸化物と、水溶性樹脂との相互作用により、形成した低屈折率層3Lと高屈折率層3Hとの層間混合が抑制される。
含ケイ素の水和酸化物としては、無機ケイ素化合物の水和物、有機ケイ素化合物の加水分解物および縮合物のいずれであってもよいが、シラノール基を有することが好ましい。このため、コアシェル粒子としては、酸化チタン粒子がシリ力変性されたシリ力変性(シラノール変性)酸化チタン粒子であることが好ましい。
酸化チタンの含ケイ素の水和化合物の被覆量は、酸化チタン100質量%に対して、3〜30質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましく、3〜8質量%であることがさらに好ましい。被覆量が3質量%以上であると、コアシェル粒子を安定に形成できることから好ましい。一方、被覆量が30質量%以下であると、高屈折率層3Hが所望の屈折率化の値となることから好ましい。
第2の無機酸化物粒子は、その平均粒径(個数平均)が3〜100nmであることが好ましく、3〜50nmであることがより好ましい。
また、第2の無機酸化物粒子は、体積平均粒径が50nm以下であることが好ましく、1〜45nmであることがより好ましく、5〜40nmであることがさらに好ましい。体積平均粒径が50nm以下であると、ヘイズが少なく可視光透過性に優れることから好ましい。ここで「体積平均粒径」とは、媒体中に分散された一次粒子または二次粒子の体積平均粒径を意昧する。体積平均粒径は、以下の方法によって測定した値を採用するものとする。具体的には、屈折率層の断面や表面に現れた任意の1000個の粒子を電子顕微鏡で観察して粒径を測定し、それぞれシヌd1、d2、…dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1,n2,…nk個存在する第2の無機酸化物粒子の集団において、粒子1個当りの体積をV1とした場合に、下記式(3)により体積平均粒径[mv]を算出する。
mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}・・・式(3)
また第2の無機酸化物粒子は、第1の無機酸化物粒子とイオン性が同じで電荷が同符号であることが好ましい。これにより、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液を交互に塗布する場合に、塗布膜の界面における凝集物の生成が防止され、良好なへイズが得られる。イオン性をそろえる手段としては、例えば、第1の無機酸化物粒子として二酸化ケイ素(アニオン)を用い、第2の無機酸化物粒子として酸化チタン(力チオン)を用いる場合において、酸化チタンを含ケイ素の水和酸化物で、処理してアニオン化する方法が挙げられる。なお、この場合、第1の無機酸化物粒子である二酸化ケイ素(アニオン)を、アルミニウム等で処理して力チオン化してもよい。
なお、高屈折率層用塗布液を調整する際には、先ず体積平均粒径が100nm以下の第2の無機酸化物粒子(例えばルチル型の酸化チタン)を分散媒に対して分散させた分散液を調整し、この分散液を用いて高屈折率層用塗布液を調製することが好ましい。この際、第2の無機酸化物粒子は、含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子であることがより好ましい。分散液を用いる場合は、各層において任意の濃度となるように分散液を適宜添加すればよい。
以上のような第2の無機酸化物粒子は、高屈折率層用塗布液中の濃度が1〜50質量%であることが好ましい。また高屈折率層用塗布液は、形成される高屈折率層3H中の第2の無機酸化物粒子の含有量が、高屈折率層3Hの全固形分100質量%に対して、15〜85質量%となるように調整されることが好ましく、20〜80質量%となるように調整されることがより好ましく、30〜75質量%となるように調整されることがさらに好ましい。この範囲とすることにより、光遮蔽性が良好な光反射フィルム10aが得られる。
なお、第2の金属酸化物粒子は、高屈折率層用塗布液に対して単分散であることが好ましい。
(保護剤)
保護剤は、第1の無機酸化物粒子または第2の無機酸化物粒子を被覆する水溶性樹脂であり、第1の無機酸化物粒子または第2の無機酸化物粒子を溶媒に分散させ易くするための役割を有する。
このような保護剤としては、吸着性の観点から、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、透明性および安定化の観点から、変性ポリビニルアルコールであることがさらに好ましい。この際、保護剤の重合度は、1000〜700であることが好ましく、200〜500であることがより好ましい。重合度が上記範囲にあると、第1の無機酸化物粒子または第2の無機酸化物粒子を安定化できることから好ましい。
また、保護剤としてポリビニルアルコールを用いる場合には、そのケン化度は、第1の無機酸化物粒子または第2の無機酸化物粒子への吸着性の観点から、95mol%以上であることが好ましく、98〜99.5mol%であることがより好ましい。
保護剤の含有量は、第1の無機酸化物粒子または第2の無機酸化物粒子100質量%に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましい。保護剤の含有量が上記範囲内であると、低屈折率層用塗布液または高屈折率層用塗布液の液安定性が優れ、塗布性が安定することから好ましい。
(低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液の溶媒)
低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液の調整に用いられる溶媒が、特に限定されることはないが、水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒であることが好ましい。具体例としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテ一卜、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテー卜等のエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
水溶性樹脂としてポリビニルアルコール系樹脂が用いられる場合には、水系溶媒を用いることが好ましい。また環境面、操作の簡便性などからも、水系溶媒を用いることが好ましい、水系溶媒としては、水、または水とメタノールおよびエタノールの何れかを混合した溶媒が用いられ、水が95%以上であることがより好ましい。また、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液がポリビニルアルコール系樹脂および水系溶媒を含む場合には、塗布後に塗膜をセットさせて層間の混合を抑制できることから好ましい。
(硬化剤)
硬化剤は、水溶性樹脂(例えばポリビニルアルコール系樹脂)と反応して水素結合のネットワークを形成し、これによって低屈折率層3Lと高屈折率層3Hとの層間混合を抑制する。ポリビニルアルコール系樹脂とともに用いることのできる硬化剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂と硬化反応を起こすものであれば特に限定されることはないが、好ましい例としてホウ酸、ホウ酸塩、およびホウ砂が挙げられる。ホウ酸、ホウ酸塩、およびホウ砂は、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液に対して、水溶液の形態で添加される。
特に、高屈折率層3Hおよび低屈折率層3Lの多層重層を、コーターで塗布した後、一度塗膜の膜面温度を15℃程度に冷やし、次いで膜面を乾燥させる、いわゆるセット系塗布プロセスにより形成する場合には、硬化剤を用いることによって層間混合を効果的に抑制することができる。
このような硬化剤は、水溶性樹脂(例えばポリビ、二アルコール樹脂)1gに対して、1〜600mgであることが好ましく、100〜600mgであることがより好ましい。
(その他の添加剤)
低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液には、それぞれ個別に必要に応じたその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等が挙げられる。pH調整剤としては、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等が例示される。また低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液には、水溶性樹脂の他にもその他の樹脂が含有されていてもよく、その他の樹脂として例えばウレタン樹脂が含有されていてもよい。
−低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液の塗布、乾燥−
次に、樹脂基材1の一主面上に、調製した低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液を塗布、乾燥することで光反射層3を形成する。具体的には以下の形態が挙げられる。(1)樹脂基材1の一主面上に、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液のいずれか一方を塗布し、乾燥して層を形成し、その後もう一方の塗布液をこの層上に塗布し、乾燥して層を形成し、これを所望の数だけ交互に繰り返す逐次塗布法。(2)樹脂基材1の一主面上に、高屈折率層用塗布液と低屈折率層用塗布液とを重層塗布した後乾燥する工程を繰り返す逐次重層塗布方法。(3)樹脂基材1の一主面上に高屈折率層用塗布液と低屈折率層用塗布液とを、交互に同時重層塗布し、乾燥する同時重層塗布法。以上のうち、より簡便な製造プロセスとなる(3)の同時重層塗布法が好ましく適用される。
塗布方式としては、例えば、ロールコーテイング法、ロツドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーテイング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2761419号、米国特許第2761719号に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
(3)の同時重層塗布を行う際の高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の粘度としては、特に制限されないが、スライドビード塗布方式を用いる場合には、45℃における粘度が5〜100mPa・sであることが好ましく、10〜50mPa・sであることがさらに好ましい。また、力一テン塗布方式を用いる場合には、45℃における粘度が5〜1200mPa・sであることが好ましく、25〜500mPa・sであることがさらに好ましい。
なお、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液は、15℃における粘度が、100mPa・s以上であることが好ましく、100〜30000mPa・sであることがより好ましく、3000〜30000mPa・sであることがさらに好ましく、10000〜30000mPa・sであることが最も好ましい。
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を塗布する際の温度条件は、特に限定されることはないが、例えば、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を30〜60℃に加温して用いる。
樹脂基材1の一主面上に塗布した高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の乾燥温度は、30℃以上であることが好ましい。例えば、湿球温度5〜50℃、膜面温度30〜100℃(好ましくは10〜50℃)で乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、温風乾燥、赤外乾燥、マイクロ波乾燥が例示され、単一プロセスで行っても、多段プロセスで行ってもよいが、乾燥は好ましくは多段プロセスで行われる。この場合には、[恒率乾燥部の温度]<[減率乾燥部の温度]とすることがより好ましい。恒率乾燥部の温度範囲は30〜60℃、減率乾燥部の温度範囲は50〜100℃とすることが好ましい。
なお、塗布後、乾燥前にセット工程を行ってもよい。セット工程とは、塗布によって得られた高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の塗膜を乾燥前に冷却する工程をいう。セット工程を行うことで、塗膜の粘度が向上し、またはゲル化することで、各層間および各層内の物質の流動性が低下する。これにより、層間の混合を防止し、塗膜均一性が向上する。
セット工程は、例えば、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の塗膜に対して冷風を吹き付けて冷却を行う。この際、冷風の温度は、0〜25℃であることが好ましく、5〜10℃であることがより好ましい。
またセット工程において、塗膜が冷風に晒される時間は、塗膜の搬送速度にもよるが、好ましくは10〜360秒、より好ましく10〜300秒、さらに好ましくは10〜120秒である。
セット工程が完了するまでの時間(セット時間)は、5分以内であることが好ましく、2分以内であることがより好ましい。セット時間が5分以内であると、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の塗膜中のいける無機酸化物粒子(第1無機酸化物粒子または第2無機酸化物粒子)の層間拡散を抑制し、低屈折率層3Lと高屈折率層3Hとの間の屈折率差が大きくなることから好ましい。セット時間は、水溶性樹脂や、無機酸化物粒子(第1無機酸化物粒子または第2無機酸化物粒子)等の種類および濃度等を適宜調節することで制御することができる。なお、「セット工程の完了」とは、塗膜の表面に指を押し付けたときに指に塗膜成分が付着しない状態をいう。
[ハードコート層5の形成]
樹脂基材1の他主面上に形成するハードコート層5は、光反射フィルム10aの露出面に耐擦傷性を付与するための層である。樹脂基材1の他主面上にハードコート層5を形成する方法は、特に限定されないが、例えばハードコート層用塗布液を調製した後、塗布液を塗布および乾燥させ、乾燥中または乾燥後に加熱および活性エネルギー線の照射の少なくとも一方を施すことで形成される。このようなハードコート層5の形成は、以下のように行う。
−ハードコート層用塗布液の調整−
ハードコート層用塗布液の調製方法は、特に限定されず、ハードコート剤、溶媒、およびその他の添加剤を、撹拌混合する方法が挙げられる。混合の際、各成分の混合順は特に限定されず、撹拌しながら各成分を順次混合してもよいし、一度に混合して撹拌してもよく、溶媒の量を調整することにより、塗布液の粘度を適宜に調整する。以下、ハードコート層用塗布液の調整に用いるハードコート剤、溶媒、その他の添加剤をこの順に説明する。
(ハードコート剤)
ハードコート剤としては、活性エネルギー線硬化樹脂が用いられる。その他、必要に応じて活性エネルギー線硬化樹脂とともに熱硬化樹脂等を用いてもよい。なお、ここで「活性エネルギ一線」とは、紫外線や電子線等の活性線を表し、好ましくは紫外線を意昧する。
活性エネルギー線硬化性樹脂が特に限定されることはないが、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含むものであることが好ましく、紫外線硬化性樹脂であることがより好ましい。紫外線硬化樹脂が特に限定されることはないが、紫外線硬化型(メタ)アクリレート系樹脂を用いることが好ましい。紫外線硬化型(メタ)アクリレート系樹脂としては、紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、紫外線硬化型ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、紫外線硬化型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、紫外線硬化型ポリオール(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。
これらの活性エネルギー線硬化樹脂および熱硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
熱硬化性樹脂が特に限定されることはないが、ポリシロキサン等の無機系材料が挙げられる。
(ハードコート層用塗布液の溶媒)
溶媒は、特に制限されないが、酢酸メチル、ブロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が用いられうる。
(その他の添加剤)
ハードコート層用塗布液には、必要に応じて公知の添加剤を使用することができる。好ましい添加剤としては、赤外線を吸収または反射できる色素または顔料が挙げられる。
−ハードコート層用塗布液の塗布−
樹脂基材1の他主面上に対するハードコート層用塗布液の塗布方法が特に限定されることはないが、一例としてグラビアコート法が適用される。ここでは、最終的に形成されるハードコート層5が1〜10μm程度の膜厚となるように、好ましくは2〜5μm程度の膜厚となるように、ハードコート層用塗布液を塗布する。
−塗布膜の乾燥−
樹脂基材1の他主面上に塗布したハードコート層用塗布液の乾燥方法が特に限定されることはないが、加熱、温風の送風等による乾燥方法が例示される。乾燥温度は、30〜110℃であることが好ましい。
−加熱、活性エネルギー線の照射−
樹脂基材1の他主面上に塗布し乾燥させたハードコート層用塗布液の液膜に対して、活性エネルギ一線(例えば紫外線ランプ等)を照射する。これにより、活性エネルギー線硬化性樹脂を架橋させてハードコート層5を形成する。
ハードコート層用塗布液が熱硬化性樹脂を含む場合には、樹脂基材1の他主面上に塗布し乾燥させたハードコート層用塗布液の液膜を加熱する。これにより、熱硬化性樹脂の硬化を進める。この際の加熱温度は、20〜120℃であることが好ましく、50〜100℃であることがより好ましい。なお、ハードコート層用塗布液が熱硬化性樹脂を含む場合には、樹脂基材1の他主面上にハードコート層用塗布液を塗布した後、乾燥させる段階で乾燥温度および乾燥時間を調節することにより、乾燥と同時に加熱を行ってもよい。
<光学積層体10の熱処理工程>
次に、図1Bに示すように、ハードコート層5、樹脂基材1、および低屈折率層3Lと高屈折率層3Hとを交互に積層した光反射層3で構成された光学積層体10に対し、熱処理を施すことにより光反射フィルム10aを形成する。この熱処理工程では、熱処理前の光学積層体10の色に対する、熱処理後の光学積層体10の色の変化を指標とした熱処理を行うところが特徴的である。
この熱処理工程は、CIE1976L色空間における、熱処理前の光学積層体10の色(L)に対する、熱処理後の光学積層体10の色(L)の色差ΔEabを、0.5≦ΔEab≦10.0の範囲で変化させるように行う。
また熱処理工程は、光学積層体10のL色空間における色座標bの差Δbを、Δb≦−0.5の範囲で変化させるように行うことが好ましい。
なお、光学積層体10のCIE1976L色空間の色(L)は、例えば分光光度計を用いて光学積層体10の分光透過率を測定し、測定した値から算出することができる。
以上のような熱処理は、例えば60℃以上、130℃以下の環境下に光学積層体10を2分以上保持することによって実施される。このような温度条件においての熱処理時間は、48時間以下で設定される。2分以上の熱処理を実施することで、光反射層3の変質を防止でき、48時間の熱処理であれば光反射層3の変質をさらに確実に防止できる。またこの熱処理は、光反射層3の変質を防止する効果が得にくくなるため、1週間を超えて実施する必要はない。
<第1実施形態の効果>
以上のような光反射フィルム10aの製造方法によれば、水溶性樹脂および無機酸化物粒子を用いた光反射層3を有する光学積層体10を形成した後、この光学積層体10に対して色差ΔEabを指標とした熱処理を施すことにより、下記実施例で示されるように、長期間の使用においての無機酸化物粒子の変質による変色や脆化が抑制され長期信頼性に優れた光反射フィルム10aを製造することが可能である。ここで、水溶性樹脂と無機酸化物粒子とを含む光反射層3では、長期の使用において経時的に無機酸化物粒子の表面が変質したり、無機酸化物粒子の表面で光反射層3内の樹脂が反応して分解が進むと考えられるが、熱処理によって光学積層体10をある程度以上に変色させることにより、無機酸化物粒子の表面において樹脂が硬化し、また光反射層3内の溶剤が除去される。したがって、熱処理によって光学積層体10を上述した範囲で変色させることにより、上述した変質や分解がそれ以上進むことを抑えた光反射フィルム10aを得ることが可能になるのである。
≪第2実施形態:粘着層付き光反射フィルムの製造方法の第1例≫
図2は、第2実施形態を説明する断面模式図である。この図に示す光反射フィルムの製造方法は、ウェットプロセスを適用して粘着層付き光反射フィルムを製造する方法の第1例である。第2実施形態の製造方法は、先ず、図2Aに示すようにハードコート層5、樹脂基材1、および光反射層3を積層した積層体10’を形成する。その一方、セパレータ11の一主面側に粘着層13を形成する。次いで、図2Bに示すように積層体10’の光反射層3に対して、セパレータ11上の粘着層13を張り合わせ、粘着層付き光学積層体20を形成する。その後、図2Cに示すように、粘着層付き光学積層体20を熱処理することにより、粘着層付き光反射フィルム20aを作製する。以下、各図面に示す工程の詳細を説明する。
<積層体10’の形成>
先ず、図2Aに示す積層体10’の形成を、第1実施形態において図1Aを用いて説明した光学積層体10の形成と同様に行なう。
<粘着層13の形成>
また図2Aに示すように、セパレータ11を用意し、セパレータ11の一主面側に粘着層13を形成する。この粘着層13は、厚さ0.3〜3μmで有ることが好ましく、0.5〜2μmであることがより好ましい。粘着層13の形成は、次に詳細に説明するように、先ず粘着層用塗布液を調整し、この粘着層用塗布液をセパレータ11上に塗布して乾燥させることによって行う。
−粘着層用塗布液の調整−
粘着層用塗布液の調整方法は、特に制限されず、粘着性樹脂、溶媒、必要に応じて無機酸化物粒子、ジルコニウム化合物、熱線吸収粒子、およびその他の添加剤を、撹拌混合する方法が挙げられる。各成分の混合順は特に限定されず、撹拌しながら各成分を順次混合してもよいし、一度に混合して撹拌してもよい。これらの各塗布液は、溶媒の量を調整することにより、適当な粘度に調整する。
以下、粘着層用塗布液に用いられる水溶性樹脂、粘着性樹脂、溶媒、必要に応じて添加される無機酸化物粒子、ジルコニウム化合物、熱線吸収粒子、およびその他の添加剤を、この順に説明する。
(粘着性樹脂)
粘着層用塗布液に用いられる粘着性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、およびウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。
ポリビニルアセタール樹脂とは、ポリビニルアルコールの水酸基の少なくとも1つをアルデヒドと反応させてアセタール化した樹脂である。ポリビ、ニルアセタール樹脂の具体例としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール;部分的にホルマル化したポリビニルブチラール等の部分ホルマル化ポリビニルアルコール;ポリビニルブチラールアセタール等の共重合アセタール等が挙げられる。これらのポリビニルアセタール樹脂は、その他の繰り返し単位を含有していてもよい。
これらのポリビニルアセタール樹脂は、自ら調製しても、市販品を用いてもよい。自ら調製する場合には、公知の手法が用いられる。当該公知の手法としては、例えば、ポリビニルアルコールを、塩酸や硫酸のような酸触媒の存在下でアルデヒドと反応させる方法等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化率は、光反射層3との密着性が十分に得られ程度とする。アセタール化率は、ポリビニルアルコール、アルデヒド、触媒等の種類、添加量、反応温度等を適宜調節することで制御することができる。なお、一般に、アセタール化率はその値が高いほど水に溶解する傾向にある。
アクリル樹脂とは、アクリル系モノマーをポリマーの構成成分とする樹脂である。当該アクリル系モノマーとしては、特に制限されないが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アミノ基置換アルキルアクリレート、アミノ基置換アルキルメタクリレート、エポキシ基含有アクリレート、置換アクリルアミド、置換メタクリルアミド、アクリル酸の塩、メタクリル酸の塩等が挙げられる。
ここで用いるアクリル樹脂としては、塗布性の観点から、水系のものが好ましく、アクリル水溶液またはアクリルエマルジョンが好ましく、透明性の観点からアクリル水溶液を用いることがより好ましい。アクリル水溶液の場合には、水溶性の観点から、アクリル樹脂が変性されていることが好ましい。また、アクリルエマルジョンについては様々なものが市販されているが、成膜性の観点から、Tgが20℃以下、透明性の観点からは粒径が100nm以下であることが好ましい。
ウレタン樹脂とは、ウレタン結合を介して形成される樹脂である。ウレタン樹脂としては、スルホン酸アルカリ塩基や力ルボン酸アミン塩基を有する親水性ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。当該親水性ポリウレタン樹脂としては、ポリエチレングリコールージフェニルメタンジイソシアネー卜−エチレンジアミン、ジメチロールプロピオン酸アミン塩系ポリウレタン等が挙げられる。
ここで用いるウレタン樹脂としては、塗布性の観点から、水系のものが好ましく、ウレタンエマルジョンが好ましい。ウレタンエマルジョンについては様々なものが市販されているが、成膜性の観点からTgが20℃以下、透明性の観点からは粒径が100nm以下であることが好ましい。
以上のようなポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、およびウレタン樹脂は、1種類を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
粘着層13が、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、およびウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、上述の光反射層3との密着性が向上する。
(粘着層用塗布液の溶媒)
粘着層用塗布液の溶媒は、特に制限されないが、上述した低屈折率層用塗布液および高屈折率用塗布液と同様のものが用いられる。
(無機酸化物粒子)
粘着層用塗布液に必要に応じて含有させる無機酸化物粒子は、特に制限されないが、上述した第1の無機酸化物粒子および第2の無機酸化物粒子が用いられうる。これらのうち、密着性、透明性の観点から、二酸化ケイ素、アルミナを用いることが好ましい。粘着層用塗布液に含有される無機酸化物粒子の粒径は、100nm以下であることが好ましく、3〜30nmであることがより好ましい。粒径が100nm以下であると、透明性に優れることから好ましい。
無機酸化物粒子は、粘着層13中の含有量が、粘着層13の全固形分100質量%中、3〜30質量%となるように粘着層用塗布液中に含有させることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましい。
粘着層13に対して無機酸化物粒子を含有させることで、粘着層13を構成する粘着性樹脂の親水性基が光反射層3内に溶出し、光反射性に影響を与えることを防止できる。また、粘着性樹脂の膨潤を抑えることができ、耐久性が向上する。
(ジルコニウム化合物)
粘着層用塗布液に必要に応じて含有されるジルコニウム化合物は、粘着層13と光反射層3との密着性を向上させるためのものである。ここで用いられるジルコニウム化合物としては、特に制限されないが、水系であることが好ましい。具体的なジルコニウム化合物としては、酸塩化ジルコニウムZrOCl、ZrO(OH)Cl、オキシ硝酸ジルコニウムZrO(NO、炭酸ジルコニウムアンモニウム(NHZr(OH)(CO、酢酸ジルコニウムZrO(C等が挙げられる。ジルコニウム化合物は市販品を使用してもよく、pHが5以上であるものが好ましい。pHは、酸やアルカリで調整することもできる。
(熱線吸収粒子)
粘着層用塗布液に必要に応じて含有される熱線吸収粒子は、金属酸化物粒子であることが好ましく、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化タングステン及び酸化インジウム等が挙げられる。粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫(ATO)粒子、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)粒子、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)粒子、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムド-プ酸化タングステン粒子、ルビジウムド-プ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム(ITO)粒子、錫ドープ酸化亜鉛粒子、および珪素ドープ酸化亜鉛粒子等が挙げられる。
赤外遮蔽性をより一層高める観点からは、熱線吸収粒子は、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO)、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO)、およびアルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO)からなる群から選択された少なくとも一種であることが好ましく、アルミニウムド-プ酸化亜鉛粒子であることがさらに好ましい。
熱線吸収粒子の体積平均粒子径は特に限定されないが、1〜50nmが好ましく、2〜40nmがさらに好ましく、3〜30nmが特に好ましい。
(その他の添加剤)
粘着層用塗布液に必要に応じて含有されるその他の添加材としては、光安定化剤、紫外線吸収剤、退色防止剤、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等が挙げられる。
−粘着層用塗布液の塗布、乾燥−
セパレータ11上への粘着層用塗布液の塗布、乾燥は、上述した低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液の塗布、乾燥と同様に行うことができ、これにより、セパレータ11上に粘着層13を形成する。
<粘着層付き光学積層体20の形成>
次に図2Bに示すように、積層体10’の光反射層3に対して、セパレータ11上の粘着層13を張り合わせ、粘着層付き光学積層体20を形成する。
<粘着層付き光学積層体20の熱処理工程>
その後、図2Cに示すように、粘着層付き光学積層体20に対して熱処理を施すことにより、粘着層付き光反射フィルム20aを作製する。この熱処理工程は、第1実施形態において図1Bを用いて説明した熱処理工程と同様に行なえばよい。このためここでの詳細な説明は省略する。
<第2実施形態の効果>
以上のような第2実施形態の製造方法であっても水溶性樹脂および無機酸化物粒を用いた光反射層3を有する光学積層体20を形成した後、この光学積層体20に対して色差ΔEabを指標とした熱処理を施すことにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
≪第3実施形態:粘着層付き光反射フィルムの製造方法の第2例≫
図3は、第3実施形態を説明する断面模式図である。この図に示す光反射フィルムの製造方法は、ウェットプロセスを適用して粘着層付き光反射フィルムを製造する方法の第2例である。この第3実施形態の製造方法が、第2実施形態の製造方法と異なるところは、粘着層付き光学積層体20の形成手順にあり、その後の熱処理工程は、第1実施形態および第2実施形態と同様におこなうことができる。以下、粘着層付き光学積層体20の形成を説明する。
<粘着層付き光学積層体20の形成>
先ず図3Aに示すように、樹脂基材1の一主面側に、光反射層3を形成し、光反射層3上に粘着層13を形成する。一方、樹脂基材1の他主面側にハードコート層5を形成する。
その後図3Bに示すように、さらに粘着層13上にセパレータ11を張り合わせる。これにより、ハードコート層5、樹脂基材1、光反射層3、粘着層13、およびセパレータ11を積層した粘着層付き光学積層体20を形成する。
以上の形成手順のうち、樹脂基材1の一主面側への光反射層3の形成、および樹脂基材1の他主面側へのハードコート層5の形成は、第1実施形態で説明したと同様に行なえばよい。また、光反射層3上への粘着層13の形成は、第2実施形態で説明したセパレータ11上への粘着層13の形成と同様に行なえばよい。また、樹脂基材1の他主面側へのハードコート層5の形成は、光反射層3の形成前、または光反射層3を形成した後で粘着層13を形成する前、または粘着層13上にセパレータ11を張り合わせた後の何れかのタイミングで行なえばよい。
<粘着層付き光学積層体20の熱処理工程>
次に、図3Cに示すように、粘着層付き光学積層体20に対して、他の実施形態と同様に熱処理を施し、粘着層付き光反射フィルム20aを形成する。
<第3実施形態の効果>
以上のような第3実施形態の製造方法であっても水溶性樹脂および無機酸化物粒を用いた光反射層3を有する光学積層体20を形成した後、この光学積層体20に対して色差ΔEabを指標とした熱処理を施すことにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
≪変形例≫
以上の各実施形態においては、樹脂基材1の一主面上のみに光反射層3を設けた構成を説明したが、本発明は樹脂基材1の両面に光反射層3を設けた構成の光反射フィルムの製造にも適用可能である。この場合、樹脂基材1の両面に光反射層3を形成し、次いで一方の光反射層3の上部にハードコート層5を形成して光学積層体を形成する。その後、この光学積層体に対して、上述した熱処理工程を実施すればよく、これにより同様の効果を得ることができる。
また、樹脂基材1の両面に光反射層3を有し、さらに粘着層13を設けた光学反射フィルムを作製する場合であれば、樹脂基材1の両面に光反射層3を形成し、次いで一方の光反射層3の上部にハードコート層5を形成した後、ハードコート層5上またはハードコート層5で覆われていない側の光反射層3上に粘着層13を形成し、これをセパレータ11で覆って光学積層体を形成する。その後、この光学積層体に対して、上述した熱処理工程を実施すればよい。なお、この場合、セパレータ11上に形成した粘着層13を貼り合わせて光学積層体を形成してもよく、これにより同様の効果を得ることができる。
さらに以上の各実施形態においては、樹脂基材1の他主面上にハードコート層5を設けた構成を説明したが、本発明は、樹脂基材1の一主面上に光反射層3とハードコート層5をこの順に設けた光学積層体を形成し、この光学積層体に対して上述した熱処理工程を実施してもよく、これにより同様の効果を得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」を表す。
≪試料1の光学反射フィルムの作製≫
<光学積層体の形成>
[樹脂基材の準備]
樹脂基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(A4300、両面易接着層、厚さ:50μm、長さ200m×幅210mm、東洋紡績株式会社製)を準備した。
[光反射層の形成]
樹脂基材の一主面上に湿式成膜法を適用し、以下のようにして光反射層を形成した。
−低屈折率層用塗布液の調整−
430部のコロイダルシリ力(10質量%)(スノーテックスOXA;日産化学工業株式会社製)、150部のホウ酸水溶液(3質量%)、85部の水、300部のポリビニルアルコール(4質量%)(JP−45;重合度:4500;ケン化度:88mol%;日本酢ビ・ポバール株式会社製)、3部の界面活性剤(5質量%)(ソフタゾリンLSB−R;川研ファインケミカル株式会社製)、を45℃でこの順に混ぜ合わせた。そして、純水で1000部に仕上げ、低屈折率層用塗布液を調製した。
−高屈折率層用塗布液の調整−
あらかじめ調整したシリ力変性酸化チタン粒子のゾル水分散液に、溶媒他を添加して高屈折率層用塗布液を調整した。シリ力変性酸化チタン粒子のゾル水分散液は以下のように調製した。
先ず、硫酸チタン水溶液を公知の手法により熱加水分解して酸化チタン水和物を得た。得られた酸化チタン水和物を水に懸濁させて、水性懸濁液(TiO濃度:100g/L)10Lを得た。これに水酸化ナトリウム水溶液(濃度10mol/L)30Lを撹拌下で添加し、90℃に昇温して5時間熟成した。得られた溶液を塩酸で中和し、ろ過、水洗することで、塩基処理チタン化合物を得た。
次に、塩基処理チタン化合物をTiO濃度20g/Lになるように純粋に懸濁させて撹拌した。撹拌下、TiO量に対して0.4mol%の量のクエン酸を添加した。95℃まで昇温し、濃塩酸を塩酸濃度30g/Lとなるように加え、液温を維持して3時間撹拌した。ここで、得られた混合液のpHおよびゼータ電位を測定したところ、pHは1.4、ゼータ電位は+40mVであった。また、ゼータサイザ一ナノ(マルバーン社製)により粒径測定を行ったところ、体積平均粒径は35nm、単分散度は16%であった。
ルチル型酸化チタン粒子を含む20.0質量%酸化チタンゾル水系分散液1kgに純水1kgを添加し、10.0質量%酸化チタンゾル水系分散液を調製した。
調整した10.0質量%酸化チタンゾル水系分散液0.5kgに、純水2kgを加えた後、90℃に加熱した。その後、SiO濃度が2.0質量%のケイ酸水溶液1.3kgを徐々に添加した。得られた分散液をオートクレーブ中、175℃で18時間の加熱処理を行い、さらに濃縮することで、SiOで被覆されたルチル型構造を有する酸化チタンを含む、20質量%のシリ力変性酸化チタン粒子のゾル水分散液を得た。
調製したシリ力変性酸化チタン粒子のゾル水分散液に溶媒等を添加して高屈折率層用塗布液を調製した。具体的には、320部のシリ力変性酸化チタン粒子のゾル水分散液(20.0質量%)、120部のクエン酸水溶液(1.92質量%)、20部のポリビニルアルコール(10質量%)(PVA−103、重合度:300、ケン化度:99mol%、株式会社クラレ製)、100部のホウ酸水溶液(3質量%)、350部のポリビニルアルコール(4質量%)(PVA−124、重合度:2400、ケン化度:88mol%、株式会社クラレ製)、1部の界面活性剤(5質量%)(ソフタゾリンLSB−R、川研ファインケミカル株式会社製)を、45℃でこの順に添加した。そして、純水で1000部に仕上げ、高屈折率層用塗布液を調製した。
−塗布、乾燥−
9層重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液を45℃に保温しながら、45℃に加温した樹脂基材の一主面上に、9層の同時重層塗布を行った。この際、最下層および最上層は低屈折率層とし、それ以外は低屈折率層および高屈折率層がそれぞれ交互に積層されるように設定した。塗布量については、乾燥時の膜厚が低屈折率層は各層150nm、高屈折率層は各層130nmになるように調節した。なお、膜厚は、製造した光反射フィルムを切断し、その切断面を電子顕微鏡により観察することで確認した。この際、2つの層聞の界面を明確に観測することができない場合には、XPS表面分析装置により得た層中に含まれるTiOの厚さ方向のXPSフロファイルにより界面を決定した。
9層の同時重層塗布を行った後、塗布膜に5℃の冷風を吹き付けてセッ卜した。このとき、表面を指で触れでも指に何もつかなくなるまでの時間(セット時間)は5分であった。
セット完了後、80℃の温風を吹き付けて塗布膜を乾燥させて、低屈折率層と高屈折率層とを合計で9層積層した光反射層を得た。
[粘着層の形成]
−粘着層用塗布液の調整−
10.0質量%のポリビニルアセタール樹脂のエタノール液(BX−L、アセタール化率:61%、積水化学工業株式会社製)1000重量部に、ヒンダードアミン系光安定化剤(Tinuvin292:BASF社製)5重量部と、紫外線吸収剤となるインドール化合物(BONASORB3912、オリエント化学工業社製)3重量部とを添加して撹拌し、粘着層用塗布液を調整した。
−塗布、乾燥−
調整した粘着層用塗布液を、マイクログラビアコーターを用いて光反射層上に塗布し、70℃で乾燥した。この際、塗布量については、乾燥後の膜厚が1μmなる様に調整した。これにより、添加剤を含有する粘着層Aを形成した。
[ハードコート層の形成]
−ハードコート層用塗布液の調整―
73部のペンタエリスリトールトリアクリレート(トリエステル37%)(NKエステルA−TMM−3、新中村化学工業株式会社製)と、5部のイルガキュア184(チバ・ジャパン株式会社製)と、1部のシリコーン系界面活性剤(KF−351A、信越化学工業株式会社製)と、10部のプロピレングリコールモノメチルエーテルと、70部の酢酸メチルと、70部のメチルエチルケトンとを混合し、得られた混合液を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、ハードコート層用塗布液を調製した。
−塗布、乾燥−
調整したハードコート層用塗布液を、マイクログラビアコーターを用いて粘着層上に塗布し、恒率乾燥区間温度50℃、減率乾燥区間温度70℃で乾燥した。この際、塗布量については、乾燥時の膜厚が3μmになるように調節した。
−紫外線照射−
窒素雰囲気下において、得られた塗布膜に対して紫外線ランプを用いて紫外線を照射することにより、塗布膜を硬化させた。硬化条件は、酸素濃度:1.0体積%以下、照度:100mW/cm、照射量:0.2J/cmであった。
以上のようにして、ハードコート層、樹脂基材、光反射層(9層)、粘着層、およびセパレータをこの順に積層し、粘着層付きの光学積層体を得た。この光学積層体を試料1の光反射フィルムとした。
≪試料2の光学反射フィルムの作製≫
試料1の光反射フィルムの作製において、粘着層用塗布液の調整に用いたポリビニルアセタール樹脂を、10.0質量%のポリビニルアセタール樹脂水溶液(KW−1、アセタール化率:9mol%、積水化学工業株式会社製)に変更し、添加剤を含有する粘着層Bを形成したことを除いては、試料1と同様にして光反射フィルムを作製した。
≪試料3の光学反射フィルムの作製≫
試料1の光反射フィルムの作製において、粘着層用塗布液の調整に添加剤を用いず、添加剤を含有しない粘着層A’を形成したこと以外は、試料1と同様にして光反射フィルムを作製した。
≪試料4〜試料8の光学反射フィルムの作製≫
試料1の光反射フィルムの作製において、粘着層付きの光学積層体を作製した後、作製した粘着層付きの光学積層体に対して、下記表1に示す条件で熱処理を行った。この熱処理は、無風で所定の温度に調整されたゾーンにフィルムを搬送することで実施した。これにより、試料4〜試料8のそれぞれの光反射フィルムを作製した。
≪試料9の光学反射フィルムの作製≫
試料3の光反射フィルムの作製において、粘着層付きの光学積層体を作製した後、下記表1に示す条件で熱処理を行った。この熱処理は、無風で所定の温度に調整されたゾーンにフィルムを搬送することで実施した。これにより、試料9の光反射フィルムを作製した。
≪熱処理前後での色の測定≫
試料1〜試料9の光反射フィルムの作製においては、熱処理の前後においてL色空間における色を測定した。ここでは、分光光度計((株)島津製作所製、型番:UV−3100PC)を用い、透過法によりCIE1976L色空間におけるにおける色(L)の測定を行った。そして、2回の測定値から色差ΔEabと、差Δbとを算出した。色差ΔEabの算出は、CIE1976L色空間の表色系による色差公式[ΔEab]=[{(ΔL+(Δa+(Δb(1/2)]から求めた。ただし、試料1〜試料3は熱処理を行っていないため、色(L)の測定は1回のみであるため、色差ΔEabおよび差Δbはゼロ(0)である。算出した結果を下記表1に示す。
≪評価≫
試料1〜試料9で作製した各光反射フィルムについて、下記の加速試験を行い、加速試験後の光反射フィルムに関して下記のように「剥がれ」、「クラック」、「色差ΔEab」の評価を行った。
[加速試験]
厚さ3mmの青色ガラスに対して、作製した各光反射フィルムを粘着層を介して貼り付けた。この状態で、各光反射フィルムを収容した雰囲気内を湿度60%として、1時間で0〜60℃の間で温度変化させた。これを1サイクルとして2000時間(2000サイクル)の加速試験を行った。
[剥がれ]
加速試験後の各光反射フィルムを目視で観察し、下記の基準に従って剥がれを評価した。評価結果を下記表1に示す。
5:まったく剥がれは見られない
4:ルーペでは端部にやや剥がれがみられるが実用上問題ない
3:目視で端部にやや剥がれがみられる
2:はがれが内部まで進行し、実用上に支障がある
1:膜全体に剥がれが進行し、実用上に支障がある
[クラック]
加速試験後の各光反射フィルムを目視で観察し、下記の基準に従ってクラックの発生を評価した。評価結果を下記表1に示す。
5:まったくクラックは見られない
4:ルーペでは端部に微小なクラックがあるが実用上問題ない
3:目視で端部に微小なクラックがみられる
2:クラックが中央部にも発生し、実用上に支障がある
1: 膜全体にクラックが発生し、実用上に支障がある
[色差ΔEab]
加速試験後の各光反射フィルムに関し、上述した熱処理前後での色の測定と同様にしてCIE1976L色空間におけるにおける色(L)の測定を行った。そして、加速試験前後での色差ΔEabを算出した。この結果を下記表1に示す。
Figure 2017096990
表1に見られるように、試料4〜試料9の、光学積層体に対してL色空間における色差ΔEabを、0.5≦ΔEab≦10.0の範囲で変化させる熱処理を実施した光反射フィルムは、加速試験後の剥がれ、クラック、色変化が実用レベルの範囲に低く抑えられていることが分かった。これに対して、試料4〜試料9の、光学積層体に対して、L色空間における色差ΔEabを指標とした熱処理を実施していない光反射フィルムは、加速試験後には、実用上に支障が出る程の剥がれ、クラックが発生し、また色変化も3.0以上と大きかった。
さらに、試料5〜試料9の、光学積層体に対してL色空間における色座標bの差Δbを、Δb≦−0.5の範囲で変化させる熱処理を実施した光反射フィルムは、加速試験後にも剥がれ、クラックの発生がなく、色変化も色差ΔEab<1に小さく抑えられることが確認された。
1…樹脂基材
3…光反射層
3L…低屈折率層
3H…高屈折率層
5…ハードコート層
10…光学積層体
10a…光反射フィルム
11…セパレータ
13…粘着層
20…粘着層付き光学積層体
20a…粘着層付き光反射フィルム

Claims (5)

  1. 屈折率差を有する高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層され少なくともそのうちの1層が水溶性樹脂および無機酸化物粒子を含んだ光反射層を有する光学積層体を形成する工程と、
    前記光学積層体のL色空間における色差ΔEabを、0.5≦ΔEab≦10.0の範囲で変化させる熱処理工程とを行う
    光反射フィルムの製造方法。
  2. 前記光学積層体を形成する工程では、前記光反射層上に粘着層を積層する
    請求項1記載の光反射フィルムの製造方法。
  3. 前記光学積層体を形成する工程では、セパレータ上に塗布された前記粘着層を、前記光反射層に貼り合わせる
    請求項2記載の光反射フィルムの製造方法。
  4. 前記熱処理工程では、60℃以上、130℃以下の環境下に前記光学積層体を2分以上保持する
    請求項1〜3の何れかに記載の光反射フィルムの製造方法。
  5. 前記熱処理工程では、前記光学積層体のL色空間における色座標bの差Δbを、Δb≦−0.5の範囲で変化させる
    請求項1〜4の何れかに記載の光反射フィルムの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2019004046A1 (ja) * 2017-06-27 2019-01-03 住友化学株式会社 粘着剤組成物及び粘着剤層付フィルム
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