JP2014215513A - 赤外遮蔽フィルムおよび赤外遮蔽体 - Google Patents

赤外遮蔽フィルムおよび赤外遮蔽体 Download PDF

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明土 川浪
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Abstract

【課題】環境保全性を考慮して湿式塗布法が採用可能な系であるとともに、生産効率の高い同時重層塗布で製造した場合においても、層間混合レベルを制御し、界面の乱れを制御することで、近赤外反射率が高く、ヘイズが少なく、高い膜強度を有する赤外遮蔽フィルムとそれを用いた赤外遮蔽体を提供する。【解決手段】基材上に、低屈折率層と高屈折率層とを積層したユニットを少なくとも1つ含む赤外遮蔽フィルムにおいて、前記低屈折率層および前記高屈折率層はともに少なくとも1種のポリビニルアルコールを含有し、前記低屈折率層中で最も含有量の多いポリビニルアルコール(L)の鹸化度と、前記高屈折率層中で最も含有量の多いポリビニルアルコール(H)の鹸化度は異なっており、少なくとも1つの前記低屈折率層は金属酸化物の鎖状体または数珠状体を含み、少なくとも1つの前記低屈折率層には空隙が存在し、当該低屈折率層の空隙率が3%〜40%であることを特徴とする、赤外遮蔽フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、赤外遮蔽フィルムおよび赤外遮蔽体に関する。
近年、省エネルギー対策として、冷房設備にかかる負荷を減らすため、建物や車両の窓ガラスに装着させて、太陽光の熱線の透過を遮断する赤外遮蔽フィルムへの要望が高まっている。
赤外遮蔽フィルムの作製方法としては、主には、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構成からなる積層体ユニットを、蒸着法、スパッタ法などのドライ製膜法を用いて作製する方法が提案されている。しかし、ドライ製膜法は製造コスト高、大面積化が困難、かつ耐熱性基材が必要といった課題を抱えている。
近年、ドライ製膜法に代わり、湿式塗布法を用いた赤外遮蔽フィルムの作製が検討されている。基材上に2層以上の積層膜を湿式塗布で作製する方法としては、1層ずつ塗布・乾燥して積層する逐次塗布と、同時に複数の層を塗布する同時重層塗布がある。逐次塗布としては、スピンコート法(特許文献1)、バーコート法、ブレード塗布、グラビア塗布などがあるが、赤外遮蔽フィルムのような多層膜を作成する場合には塗布・乾燥回数が多くなるため生産性が低い。一方、同時重層塗布としてはカーテン塗布やスライドビード塗布などを用いた方法があり、同時に複数の層が形成できるため生産性が高い。
しかしながら、同時重層塗布で得られる塗膜は、未乾燥の液状態で重ねられるために、隣接する層間での混合や界面の乱れ(凹凸)がより発生しがちである。赤外遮蔽フィルムのような多層膜では適度な層間混合は膜の密着性や光学特性に良好な効果を及ぼすが、層間混合が大きすぎると反射率の低下が起こり好ましくないため、適切なレベルに制御することが必要である。また界面の乱れが大きくなるとヘイズの原因となり好ましくない。
一方、赤外遮蔽フィルムの効果を高めるためには、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が大きいほど好ましい。高屈折率層および低屈折率層の屈折率は、バインダー樹脂や金属、金属酸化物などの構成材料の種類や添加量により調整可能である。特に低屈折率層の場合、例えば特許文献2に記載されているように、バインダー樹脂および金属酸化物粒子によりナノポーラス構造を作製して空気(屈折率が1である)を充填させることで屈折率を低下させる方法が知られている。
しかしながら、バインダー樹脂および金属酸化物粒子によりナノポーラス構造を作製した低屈折率層では、低屈折率層の空隙に塗布液が侵入することで界面の乱れが大きくなる。さらに空隙率が大きすぎる場合、赤外遮蔽フィルムの膜強度の低下が見られる。
特開2009−86659号公報 特開2009−244684号公報
本発明は上記の事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、環境保全性を考慮して湿式塗布法が採用可能な系であるとともに、生産効率の高い同時重層塗布で製造した場合においても、層間混合レベルを制御し、界面の乱れを制御することで、近赤外反射率が高く、ヘイズが少なく、高い膜強度を有する赤外遮蔽フィルムとそれを用いた赤外遮蔽体を提供することである。
本発明者が上記課題を鑑みて鋭意検討した結果、下記構成を採ることにより、本発明の目的が達成されることが判明した。
1.基材上に、低屈折率層と高屈折率層とを積層したユニットを少なくとも1つ含む赤外遮蔽フィルムにおいて、前記低屈折率層および前記高屈折率層はともに少なくとも1種のポリビニルアルコールを含有し、
前記低屈折率層中で最も含有量の多いポリビニルアルコール(L)の鹸化度と、前記高屈折率層中で最も含有量の多いポリビニルアルコール(H)の鹸化度は異なっており、
少なくとも1つの前記低屈折率層は金属酸化物の鎖状体または数珠状体を含み、
少なくとも1つの前記低屈折率層には空隙が存在し、当該低屈折率層の空隙率が3%〜40%であることを特徴とする、赤外遮蔽フィルム;
2.前記ポリビニルアルコール(L)と前記ポリビニルアルコール(H)との鹸化度の絶対値の差が3mol%以上であることを特徴とする、上記1に記載の赤外遮蔽フィルム;
3.前記ポリビニルアルコール(L)の鹸化度は75mol%以上90mol%未満であり、前記ポリビニルアルコール(H)の鹸化度が90mol%以上であることを特徴とする、上記1または2に記載の赤外遮蔽フィルム;
4.前記金属酸化物の鎖状体または数珠状体を含有する前記低屈折率層が、金属酸化物の球状体をさらに含有することを特徴とする、上記1〜3のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルム;
5.上記1〜4のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルムを、基体の少なくとも一方の面に設けてなる赤外遮蔽体;
6.上記1〜4のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルムの製造方法であって、基材上に高屈折率層塗布液と低屈折率塗布液とを同時重層塗布した後乾燥して、高屈折率層と低屈折率層とを含む赤外遮蔽フィルムを形成する工程を含むことを特徴とする、赤外遮蔽フィルムの製造方法。
本発明によれば、生産効率の高い同時重層塗布で製造した場合においても、層間混合レベルを制御して界面の乱れを制御することで、近赤外反射率が高く、ヘイズが少なく、高い膜強度を有する赤外遮蔽フィルムとそれを用いた赤外遮蔽体を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
上述したように、本発明の発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、低屈折率層に含まれるポリビニルアルコール(L)と高屈折率層に含まれるポリビニルアルコール(H)とで鹸化度が異なるようにし、少なくとも1つの低屈折率層中に金属酸化物の鎖状体または数珠状体を含ませ、かつ、少なくとも1つの低屈折率層には空隙を存在させて空隙率を3%〜40%の範囲に制御して赤外遮蔽フィルムを構成することにより、生産性が高く、近赤外反射率が高く、ヘイズが少なく、高い膜強度を有する赤外遮蔽フィルムを実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
上述した本発明の構成による作用効果の発揮のメカニズムは以下のように推測される。
すなわち、本発明が対象とする赤外遮蔽フィルムは、通常、高屈折率層、低屈折率層を形成しうるそれぞれの塗布液を用い、前記各塗布液を逐次塗布または同時重層塗布によって高屈折率層と低屈折率層とを積層することによって製造される。しかしながら、上述したように同時重層塗布で得られる塗膜は、未乾燥の液状態で重ねられるために、隣接する層間での混合や界面の乱れ(凹凸)がより発生しがちである。光学反射フィルムのような多層膜では適度な層間混合は膜の密着性や光学特性に良好な効果を及ぼすが、層間混合が大きすぎると反射率の低下が起こり好ましくないため、適切なレベルに制御することが必要である。また界面の乱れが大きくなるとヘイズの原因となり好ましくないため、界面の乱れを小さくする必要がある。さらに、特許文献2に記載のようにバインダー樹脂と金属酸化物粒子によりナノポーラス構造を作製した低屈折率層では、低屈折率層の空隙に塗布液が侵入することで、界面の乱れが大きくなるという問題もある。
これに対し、本発明に係る赤外遮蔽フィルムにおいては、低屈折率層にポリビニルアルコール(L)を含有させ、高屈折率層にはポリビニルアルコール(L)とは鹸化度が異なるポリビニルアルコール(H)を含有させることにより、高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制され、好ましいレベルの層間混合状態を実現することができ、界面の乱れも小さくすることができた。鹸化度の異なるポリビニルアルコールの水溶液同士は相溶性が良好であるため、このような効果が発現した理由は明確ではない。ただし、鹸化度の異なるポリビニルアルコール樹脂自体の相溶性は悪いことから、高屈折率層と低屈折率層とが未乾燥の液状態で重ねられた際に各層が多少混合したとしても、乾燥過程で溶媒である水が揮発して濃縮されると鹸化度の異なるポリビニルアルコール樹脂同士は相分離を起こし、各層の界面の面積を最小にしようとする力が働くようになるため、層間混合が抑制され界面の乱れも小さくなったものと推定される。このように層間混合が抑制され、界面の乱れが小さくなったことで本発明の赤外遮蔽フィルムは所望の波長の光反射性に優れ、ヘイズが少なくなったと考えている。また、高屈折率層および低屈折率層の少なくとも一方に金属酸化物粒子を添加した際には、金属酸化物粒子がポリビニルアルコールと結合し、鹸化度の異なるポリビニルアルコール樹脂同士が相分離するときに金属酸化物粒子も一緒に移動するため、さらに本発明の効果を高めることができたと推定している。
さらには、低屈折率層に金属酸化物の鎖状体または数珠状体を含ませ、かつ、低屈折率層に空隙を存在させて当該低屈折率層の空隙率を3%〜40%の範囲に制御することで、よりいっそうの低屈折率化とこれに伴う近赤外領域の反射率向上が達成され、ヘイズも低減される。これは、低屈折率層に含まれる金属酸化物の量を確保しながらも、適切な量の空隙が確保されることによるものと考えられる。また、かような構成とすることで、膜強度も向上させることができた。これは、特許文献2に開示された手法のように、塗布液が空隙中に侵入しにくい構成を達成することができたことによるものと推定している。ただし、上記メカニズムは推定であり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
以下、本発明の赤外遮蔽フィルムの構成要素、および本発明を実施するための形態等について詳細な説明をする。
[赤外遮蔽フィルム]
本形態の赤外遮蔽フィルムは、基材と、少なくとも1つの低屈折率層と高屈折率層とを積層したユニットと、を含む。また、本発明の赤外遮蔽フィルムは、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された交互積層体の形態を有するのが好ましい。なお、本明細書中、他方に対して屈折率の高い屈折率層を高屈折率層と、他方に対して屈折率の低い屈折率層を低屈折率層と称する。本明細書において、「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、隣接した2層の屈折率差を比較した場合に、屈折率が高い方の屈折率層を高屈折率層とし、低い方の屈折率層を低屈折率層とすることを意味する。したがって、「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、光学反射フィルムを構成する各屈折率層において、隣接する2つの屈折率層に着目した場合に、各屈折率層が同じ屈折率を有する形態以外のあらゆる形態を含むものである。
本発明において、赤外遮蔽フィルムは、屈折率の異なるふたつの層、すなわち、高屈折率層と、低屈折率層と、から構成される積層体(ユニット)を少なくとも1つ含むが、高屈折率層と低屈折率層とは、以下のように考える。
例えば、高屈折率層を構成する成分(以下、高屈折率層成分)と低屈折率層を構成する成分(以下、低屈折率層成分)とが、がふたつの層の界面で混合され、高屈折率層成分と低屈折率層成分とを含む層(混合層)が形成される場合がある。この場合、混合層において、高屈折率層成分が50質量%以上である部位の集合を高屈折率層とし、低屈折率層成分が50質量%を超える部位の集合を低屈折率層とする。具体的には、低屈折率層が、例えば、低屈折率成分として第1の金属酸化物を、また、高屈折率層は高屈折率成分として第2の金属酸化物を含有している場合、これらの積層膜における膜厚方向での金属酸化物濃度プロファイルを測定し、その組成によって、高屈折率層または低屈折率層とみなすことができる。積層膜の金属酸化物濃度プロファイルは、スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、最表面を0nmとして、0.5nm/minの速度でスパッタし、原子組成比を測定することで観測することが出来る。また、低屈折率成分または高屈折率成分に金属酸化物が含有されておらず、有機バインダーのみから形成されている積層体においても、同様にして、有機バインダー濃度プロファイルにて、例えば、膜厚方向での炭素濃度を測定することにより混合領域が存在していることを確認し、さらにその組成をEDXにより測定することで、スパッタでエッチングされた各層が、高屈折率層または低屈折率層とみなすことができる。
XPS表面分析装置としては、特に限定なく、いかなる機種も使用することができるが、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定する。
一般に、赤外遮蔽フィルムにおいては、低屈折率層と高屈折率層との屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で赤外反射率を高くすることができるという観点から好ましい。本形態では、低屈折率層および高屈折率層から構成される積層体(ユニット)の少なくとも1つにおいて、隣接する低屈折率層と高屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.35以上であり、特に好ましくは0.4超である。赤外遮蔽フィルムが高屈折率層および低屈折率層の積層体(ユニット)を複数有する場合には、全ての積層体(ユニット)における高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が上記好適な範囲内にあることが好ましい。ただし、最表層や最下層に関しては、上記好適な範囲外の構成であってもよい。また、本形態の赤外遮蔽フィルムにおいては、低屈折率層の好ましい屈折率は、1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。また、高屈折率層の好ましい屈折率は1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。
特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、200層以上の積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。反射率の向上と層数を少なくするという観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.4程度が限界である。
さらには、本形態の赤外遮蔽フィルムの光学特性として、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上であることが好ましく、また、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
本形態の赤外遮蔽フィルムは、基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成される積層体(ユニット)を少なくとも1つ含む構成を有するものであればよい。好ましい高屈折率層および低屈折率層の層数としては、上記の観点から、総層数の範囲としては、100層以下、すなわち50ユニット以下であり、より好ましくは40層(20ユニット)以下であり、さらに好ましくは20層(10ユニット)以下である。また、本発明の赤外遮蔽フィルムは、上記ユニットを少なくとも1つ積層した構成であればよく、例えば、積層膜の最表層や最下層のどちらも高屈折率層または低屈折率層となる積層膜であってもよい。本発明の赤外遮蔽フィルムとしては、基材に隣接する最下層が、低屈折率層で、最表層も低屈折率層である層構成が好ましい。
本形態の赤外遮蔽フィルムの全体の厚みは、好ましくは12μm〜315μm、より好ましくは15μm〜200μm、さらに好ましくは20μm〜100μmである。また、低屈折率層の1層あたりの厚みは、20〜800nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。一方、高屈折率層の1層あたりの厚みは、20〜800nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。
赤外遮蔽フィルムは、基材の下または基材と反対側の最表面層の上に、さらなる機能の付加を目的として、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層(接着層)、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、ハードコート層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、粘着層、接着層、本発明の高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)、合わせガラスに利用される中間膜層などの機能層の1つ以上を有していてもよい。
次いで、本発明の赤外遮蔽フィルムにおける低屈折率層および高屈折率層の基本的な構成概要について説明する。
〔低屈折率層と高屈折率層〕
本発明の低屈折率層および/または高屈折率層は、バインダー樹脂および/または金属酸化物粒子を含む。本発明において、低屈折率層および高屈折率層は、ともにバインダー樹脂としてポリビニルアルコールを含む。本明細書では、低屈折率層に含まれる含有量最大のポリビニルアルコールを「ポリビニルアルコール(L)」とも称し、高屈折率層に含まれる含有量最大のポリビニルアルコールを「ポリビニルアルコール(H)」とも称する。また、本発明において、低屈折率層および/または高屈折率層は、保護剤、硬化剤、エマルジョン樹脂、種々のその他添加剤をさらに含んでもよい。
なお、本明細書中、バインダー樹脂とは、質量平均分子量が1,000〜200,000(好ましくは3,000〜60,000)の高分子化合物を意味する。
〔ポリビニルアルコール〕
本発明の赤外遮蔽フィルムの特徴の1つは、低屈折率層中で最も含有量の多いポリビニルアルコール(L)の鹸化度と、高屈折率層中で最も含有量の多いポリビニルアルコール(H)の鹸化度が異なっている点にある。本発明では、このような関係を満たす低屈折率層と高屈折率層との組み合わせが少なくとも1つ存在すればよいが、本発明の作用効果をよりいっそう発現させるという観点からは、すべての低屈折率層および高屈折率層が、上記関係を満たすことが好ましい。高屈折率層と低屈折率層とに鹸化度の異なるポリビニルアルコールをそれぞれ含有させることにより、界面の混合が抑制され、赤外反射率(赤外遮蔽率)がより良好となり、ヘイズが低くなるため好ましい。また、高屈折率層と低屈折率層とのいずれの鹸化度が高くてもよいが、高屈折率層に含まれるポリビニルアルコールの鹸化度が、低屈折率層に含まれるポリビニルアルコールの鹸化度よりも高いことが好ましい。かような構成とすることで、高屈折率層に含まれる金属酸化物粒子が鹸化度のより高いポリビニルアルコールによって保護されうるためである。
さらに、ポリビニルアルコール(L)とポリビニルアルコール(H)との鹸化度の絶対値の差は、3mol%以上であることが好ましい。より好ましくは5mol%以上である。かような範囲であれば、高屈折率層と低屈折率層との層間混合状態が好ましいレベルに維持することができる。ポリビニルアルコール(L)とポリビニルアルコール(H)との鹸化度の差は離れていれば離れているほど好ましいが、ポリビニルアルコールの水への溶解性の点からは、これらの絶対値の差は20mol%以下であることが好ましい。
ここで、「鹸化度」とは、ポリビニルアルコール中のアセチルオキシ基(原料の酢酸ビニル由来のもの)と水酸基との合計数に対する水酸基の割合のことである。
各屈折率層中で鹸化度の相違を比較するポリビニルアルコールは、各屈折率層が(鹸化度が異なる)複数のポリビニルアルコールを含む場合には、屈折率層中で最も含有量の高いポリビニルアルコールを基準とする。ここで、「屈折率層中で最も含有量が高いポリビニルアルコール」という際には、鹸化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールであるとし、鹸化度を算出する。具体的には、鹸化度が90mol%、鹸化度が91mol%、鹸化度が93mol%のポリビニルアルコールが同一層内にそれぞれ10質量%、40質量%、50質量%含まれる場合には、これら3つのポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールとし、これら3つの混合物を低屈折率層または高屈折率層に含まれるポリビニルアルコールとする。また、上記「鹸化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコール」とは、いずれかのポリビニルアルコールに着目した場合に3mol%以内であれば足り、例えば、90、91、92、94mol%のビニルアルコールを含む場合には、91mol%のビニルアルコールに着目した場合にいずれのポリビニルアルコールも3mol%以内となることから、すべて同一の鹸化度を有するポリビニルアルコールとなる。
一方、同一の屈折率層内に鹸化度が3mol%以上異なるポリビニルアルコールが含まれる場合には、異なるポリビニルアルコールの混合物とみなして、それぞれに鹸化度を算出する。
例えば、PVA−203:5質量%、PVA−117:25質量%、PVA−217:10質量%、PVA−220:10質量%、PVA−224:10質量%、PVA−235:20質量%、PVA−245:20質量%(いずれもクラレ製)が含まれる場合、最も含有量の多いPVAはPVA−217〜245の混合物であることから(PVA−217〜245の鹸化度の差は3mol%以内なので同一のポリビニルアルコールである)、この混合物がポリビニルアルコール(L)またはポリビニルアルコール(H)となる。そして、PVA−217〜245の混合物においては、鹸化度は88mol%となる。なお、変性ポリビニルアルコールも、当該鹸化度の計算に含まれる。
ポリビニルアルコール(L)およびポリビニルアルコール(H)の鹸化度は水への溶解性の点で75mol%以上が好ましい。さらに、ポリビニルアルコール(L)およびポリビニルアルコール(H)のうち一方が鹸化度90mol%以上であり、他方が90mol%未満であることが高屈折率層と低屈折率層との層間混合状態を好ましいレベルに維持するという点で好ましい。特に、ポリビニルアルコール(L)およびポリビニルアルコール(H)のうち一方が鹸化度95mol%以上であり、他方が90mol%未満であることがより好ましい。また、ポリビニルアルコール(L)の鹸化度が75mol%以上90mol%未満であり、ポリビニルアルコール(H)の鹸化度が90mol%以上であることがさらに好ましく、95mol%以上であることが特に好ましい。なお、ポリビニルアルコールの鹸化度の上限は特に限定されるものではないが、通常100mol%未満であり、99.9mol%以下程度である。
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールの重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。さらには、3,000以上100,000以下がより好ましい。また、ポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールとしては、水溶性であることが好ましく、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコール(未変性ポリビニルアルコール)の他に、末端をカチオン変性したカチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、アクリル等で変性した変性ポリビニルアルコール、酢酸ビニル系樹脂(例えば、クラレ製「エクセバール」)も含まれる。また、ポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させて得られるポリビニルアセタール樹脂(例えば、積水化学製「エスレック」)、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール(例えば、クラレ製「R−1130」)等も含まれる。これらのポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
本明細書中、ポリビニルアルコールの「水溶性」とは、水媒体に対し1質量%以上溶解することを意味し、好ましくは3質量%以上である。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10mol%、好ましくは0.2〜5mol%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報および同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体および特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
また、ビニルアルコール系ポリマーとして、エクセバール(商品名:(株)クラレ製)やニチゴーGポリマー(商品名:日本合成化学工業(株)製)などが挙げられる。
シラノール変性ポリビニルアルコールとしては、特に制限はなく、公知の方法で合成したものであってもよく、市販品であってもよい。シラノール変性ポリビニルアルコールの変性率としては、通常0.01〜5mol%であり、好ましくは0.1〜1mol%である。変性率が0.01mol%未満であると、耐水性が劣化することがあり、5mol%を越えると、水との溶解性が悪くなることがある。また、シラノール変性ポリビニルアルコールは、耐傷性、光沢跡の観点から、鹸化度が95mol%以上であるのが好ましく、95.0〜99.5mol%であるのがより好ましい。また、シラノール変性ポリビニルアルコールは、重合度が、通常300〜2,500であり、好ましくは500〜1,700である。重合度が300以上であると塗工層の強度が高く、2,500以下であると塗布液の粘度が高くなりすぎず工程適性があるため好ましい。
本発明において、シラノール変性ポリビニルアルコールが屈折率層を形成するための塗布液に含有されると、塗布液が安定し、結果として、得られる塗膜の塗布性が良好になるため好ましい。なお、塗布液が安定するとは塗布液が経時的に安定することを意味する。
また、本発明では、高屈折率層に、シラノール変性ポリビニルアルコールを含有することが好ましい。シラノール変性ポリビニルアルコールを用いるとヘイズが良くなり、膜の透明性が上がるためである。高屈折率層にシラノール変性ポリビニルアルコールが含まれる場合、その含有量は、高屈折率層の全固形分100質量%に対して、1〜40質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましく、3〜25質量%であることが特に好ましい。1質量%以上であるとセット性が良くなるため膜が乱れにくくなりヘイズが良好となり、40質量%以下であると液の安定性が良く好ましい。
本発明においては、ポリビニルアルコール(全ポリビニルアルコール)は、各屈折率層の全質量(固形分)100質量%に対し、5〜50質量%の範囲で含有させることが好ましく、10〜40質量%がより好ましく、14〜30質量%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールが5.0質量%以上であれば、屈折率層を塗工した後の乾燥時に、膜面が均一になり、透明性が向上する傾向が大きくなる。一方、含有量が50質量%以下であれば、相対的な金属酸化物の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易になる。なお、全ポリビニルアルコールとは、各屈折率層に含まれるポリビニルアルコールの合計量を意味する。
〔樹脂バインダー(その他の水溶性高分子)〕
本発明において、各屈折率層は、ポリビニルアルコール以外のバインダー樹脂を含んでもよい。
ポリビニルアルコール以外のバインダー樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、各屈折率層の全質量(固形分)に対し、好ましくは5〜50質量%である。
本発明においては、バインダー樹脂は水溶性バインダー樹脂から構成されることが好ましい。水溶性バインダー樹脂を用いることで、有機溶媒を用いることなく、屈折率層を形成することができ、環境上好ましいためである。本発明では、上記ポリビニルアルコールに加えて、ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子をバインダー樹脂として用いてもよい。ここで、ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子とは、該水溶性高分子が最も溶解する温度で、0.5質量%の濃度に水に溶解させた際、G2グラスフィルタ(最大細孔40〜50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた該水溶性高分子の50質量%以内であるものをいう。そのような水溶性高分子の中でも特にゼラチン、セルロース類、増粘多糖類、反応性官能基を有するポリマーが好ましい。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
以下にこれらの水溶性高分子について説明する。
(ゼラチン)
本発明に適用可能なゼラチンとしては、従来、ハロゲン化銀写真感光材料分野で広く用いられてきた各種ゼラチンを適用することができ、例えば、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチンおよびゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を持ち、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。ゼラチンの一般的製造法に関しては良く知られており、例えばT.H.James:The Theory of Photographic Process 4th. ed. 1977(Macmillan)55項、科学写真便覧(上)72〜75項(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124(コロナ社)等の記載を参考にすることができる。また、リサーチ・ディスクロージャー誌第176巻、No.17643(1978年12月)のIX項に記載されているゼラチンを挙げることができる。
(ゼラチンの硬膜剤)
ゼラチンを用いる場合、必要に応じてゼラチンの硬膜剤を添加することもできる。
用いることのできる硬膜剤としては、通常の写真乳剤層の硬膜剤として使用されている公知の化合物を使用でき、例えば、ビニルスルホン化合物、尿素−ホルマリン縮合物、メラニン−ホルマリン縮合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、活性オレフィン類、イソシアネート系化合物などの有機硬膜剤、クロム、アルミニウム、ジルコニウムなどの無機多価金属塩類などを挙げることができる。
(セルロース類)
本発明で用いることのできるセルロース類としては、水溶性のセルロース誘導体が好ましく用いることができ、例えば、カルボキシメチルセルロース(セルロースカルボキシメチルエーテル)、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース誘導体や、カルボン酸基含有セルロース類であるカルボキシメチルセルロース(セルロースカルボキシメチルエーテル)、カルボキシエチルセルロース等を挙げることができる。
(増粘多糖類)
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類および合成複合多糖類を挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり分子内に水素結合基を多数有するもので、温度により分子間の水素結合力の違いにより、低温時の粘度と高温時の粘度差が大きな特性を備えた多糖類である。さらに好適には金属酸化物微粒子を添加すると、低温時にその金属酸化物微粒子との水素結合によると思われる粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加することにより好ましくは15℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、より好ましくは5.0mPa・s以上であり、更に好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸およびアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられ、塗布液中に共存する金属酸化微粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。本発明においては、特には、タマリンド、グアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。
本発明においては、更には、二種類以上の増粘多糖類を併用することが好ましい。
(反応性官能基を有するポリマー類)
本発明に適用可能な水溶性高分子としては、反応性官能基を有するポリマー類が挙げられ、例えば、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体およびそれらの塩が挙げられる。
〔保護剤〕
本発明の一実施形態では、低屈折率層および/または高屈折率層は、金属酸化物粒子を被覆(保護)する水溶性樹脂を含有することが好ましい。以下に、金属酸化物粒子を被覆(保護)する水溶性樹脂について説明する。なお、当該水溶性樹脂は、金属酸化物粒子を溶媒に分散させやすくするための役割を有し、以下、「保護剤」と称する。
保護剤としては、重合度が、好ましくは100〜700、より好ましくは200〜500の水溶性樹脂であることが、金属酸化物微粒子を安定化するという観点で好ましい。また、吸着性の観点からポリビニルアルコールが好ましいが、透明性および安定化の観点から変性ポリビニルアルコールであることがさらに好ましい。さらに、ポリビニルアルコールの鹸化度が、好ましくは95%mol以上、より好ましくは98〜99.5mol%であると粒子への吸着性が強く好ましい。ポリビニルアルコールについては、上記ポリビニルアルコールの欄で述べたため省略する。
本発明において、保護剤は、金属酸化物粒子100質量%に対して、0.1〜30質量%の範囲で含有させることが好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。上記範囲で保護剤を含むことで、低屈折率層および/または高屈折率用塗布液の液安定性が優れ、塗布性が安定するため好ましい。
〔硬化剤〕
本発明の低屈折率層および/または高屈折率層は、硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤は、ポリビニルアルコールと反応して、水素結合のネットワークを形成することができるためである。また、バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを用いた場合、その効果は特に発揮されうる。
本発明において、ポリビニルアルコールと共に用いることのできる硬化剤としては、ポリビニルアルコールと硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸、ホウ酸塩、およびホウ砂からなる群から選択されるのが好ましい。ホウ酸、ホウ酸塩、およびホウ砂以外にも公知のものが使用でき、一般的にはポリビニルアルコールと反応しうる基を有する化合物あるいはポリビニルアルコールが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
ホウ酸またはホウ酸塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
ホウ砂とは、Na(OH)・8HO(四ホウ酸ナトリウム Na の十水和物)で表される鉱物である。
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸、ホウ酸塩、およびホウ砂は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することができないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることができ、塗布液を濃縮化することができる。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。
本発明では、ホウ酸およびその塩並びに/またはホウ砂を用いることが好ましい。ホウ酸およびその塩並びに/またはホウ砂を用いた場合には、金属酸化物粒子とポリビニルアルコールのOH基と水素結合ネットワークを形成し、その結果として高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制され、好ましい赤外遮蔽特性が達成されると考えられる。特に、高屈折率層と低屈折率層の多層重層をコーターで塗布後、一旦塗膜の膜面温度を15℃程度に冷やした後、膜面を乾燥させるセット系塗布プロセスを用いた場合には、より好ましく効果を発現することができる。
上記硬化剤の総使用量は、バインダー樹脂(ポリビニアルアルコール)1g当たり1〜600mgが好ましく、100〜600mgがより好ましい。
〔金属酸化物粒子〕
本発明において、高屈折率層および/または低屈折率層は、金属酸化物を含有することが好ましい。
(低屈折率層中の金属酸化物(金属酸化物の鎖状体または数珠状体が必須))
本発明の低屈折率層に用いられる金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカなどの二酸化ケイ素、アルミナ、コロイダルアルミナを挙げることができる。本発明においては、屈折率を調整するために、これらの金属酸化物を1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明では、少なくとも1つの低屈折率層が、上記したような金属酸化物の鎖状体または数珠状体を含む点に特徴がある。好ましくは、すべての低屈折率層が金属酸化物の鎖状体または数珠状体を含む。鎖状体または数珠状体の形態の金属酸化物が低屈折率層に含まれることで、低屈折率層内に空隙を容易に形成することが可能となり、低屈折率層内に空隙を生み出すことで低屈折率層の屈折率の低下に貢献する。
上述したような観点から、本発明に係る赤外遮蔽フィルムでは、少なくとも1つの低屈折率層(好ましくはすべての低屈折率層)が空隙を有する。そして、空隙を有する当該低屈折率層の空隙率は、3%〜40%の範囲に制御されている。空隙を有する低屈折率層の空隙率が3%未満であると、低屈折率層における空気の含有量が少なくなり、低屈折率層の屈折率を十分に小さくすることが困難となる結果、近赤外光の反射率が低下してしまう。一方、空隙を有する低屈折率層の空隙率が40%を超えると、近赤外光の反射率は向上するものの、フィルムのヘイズが高くなり、十分な膜強度が確保できなくなってしまうという問題がある。なお、空隙を有する低屈折率層の空隙率は、好ましくは3〜40%であり、より好ましくは3〜25%である。また、上記空隙率の値としては、後述する実施例の欄に記載の手法により測定された値を採用するものとする。
なお、低屈折率層に含まれる空隙の空隙径は特に制限されないが、好ましくは150nm以下であり、より好ましくは3〜150nmであり、さらに好ましくは3〜100nmであり、特に好ましくは3〜40nmである。空隙径が3nm以上であると、低屈折化の効果が十分に期待でき、150nm以下であれば密着性および透明性が十分に良好となるためである。なお、上記空隙径の値としては、空隙の外縁を、2本の平行線で挟んだ距離のうち、最大の距離と最小の距離との和の平均を意味する。平均空隙径は、上記空隙径をランダムに50個以上を求め、その数平均値を求めることにより得られる。
上述した空隙率や空隙径の値は、低屈折率層の構成成分(特に、金属酸化物の鎖状体や数珠状体)の形状、大きさ、濃度、低屈折率層用塗布液乾燥時の乾燥温度などを調節することにより、制御することが可能である。
当該鎖状体や数珠状体は通常一次粒子が連結することにより構成されており、この連結された長さ(連結長さともいう)は平均長さとして、30〜200nmが好ましく、40〜120nmが透明性の観点で好ましい。また、これら鎖状体や数珠状体を構成する1次粒子の平均粒子径は5〜100nmであることが好ましく、より好ましくは10〜50nmである。なお、本発明において用いられる金属酸化物の鎖状体または数珠状体を構成する一次粒子の平均粒子径、連結長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
また、電子顕微鏡から求める場合、金属酸化物の鎖状体または数珠状体の一次粒子の平均粒子径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、100個以上の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。平均連結長さを求める場合は、任意の100個以上の連結長さを測定し、その単純平均値(個数平均)として求める。
なお、低屈折率層に含まれる金属酸化物の鎖状体や数珠状体を構成する金属酸化物は、好ましくは気相法シリカやコロイダルシリカ等の二酸化ケイ素(シリカ)であり、透明性およびヘイズ(表面均一性)の観点から特に好ましくはコロイダルシリカである。このような、鎖状シリカや数珠状シリカの製造方法としては、特開2008−115060号公報および特開2010−143784号公報などに記載の技術が挙げられる。また、当該鎖状シリカとの市販品としては、日産化学工業社製のスノーテックス−UPシリーズが挙げられ、数珠状シリカの市販品としては日産化学工業社製のスノーテックス−PSシリーズが挙げられる。
低屈折率層が金属酸化物の鎖状体や数珠状体を含む場合であっても、当該低屈折率層はその他の金属酸化物を含んでもよいことはもちろんである。鎖状体でも数珠状体でもないコロイダルシリカの市販品としては、日産化学工業社製のスノーテックスシリーズ(スノーテックスOS、OXS、S、OS、20、30、40、O、N、C等)が挙げられる。
コロイダルシリカは、その表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、MgまたはBa等で処理されたものであってもよい。
本発明の好ましい実施形態において、金属酸化物の鎖状体または数珠状体を含む低屈折率層は、金属酸化物の球状体をさらに含むことが好ましい。かような構成とすることにより、赤外遮蔽フィルムの膜強度をよりいっそう高めることが可能となる。
低屈折率層における金属酸化物の含有量は、低屈折率層の全固形分100質量%に対して、20〜75質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましく、35〜69質量%であることがさらに好ましく、40〜68質量%であることが特に好ましい。20質量%以上であると、所望の屈折率が得られ、75質量%以下であると塗布性が良好となり好ましい。また、低屈折率層に含まれる金属酸化物の全量100質量%に占める金属酸化物の鎖状体または数珠状体の含有割合は、好ましくは10〜100質量%であり、より好ましくは25〜90質量%である。さらに、低屈折率層に含まれる金属酸化物の全量100質量%に占める金属酸化物の球状体の含有割合は、好ましくは0〜90質量%であり、より好ましくは10〜75質量%である。
(高屈折率層中の金属酸化物)
本発明に係る赤外遮蔽フィルムにおいて、少なくとも1つの高屈折率層(好ましくはすべての高屈折率層)は、金属酸化物を含むことが好ましい。高屈折率層に含まれうる金属酸化物は、低屈折率層に含まれるものとは異なる金属酸化物であることが好ましい。
本発明に係る高屈折率層に用いられる金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、アルミナ、コロイダルアルミナ、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、ジルコンを挙げることができる。本発明において、屈折率を調整するために、これらの金属酸化物は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
本発明では、透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成するために、高屈折率層は、チタン、ジルコニア等の高屈折率を有する金属酸化物、すなわち、酸化チタンまたは酸化ジルコニアを含有することが好ましい。また、体積平均粒径が100nm以下のルチル型(正方晶形)酸化チタン粒子を含有することがより好ましい。また、複数種の酸化チタン粒子を混合してもよい。
また、低屈折率層に含まれる金属酸化物と高屈折率層に含まれる金属酸化物とは、イオン性をそろえた状態(すなわち、電荷が同符号)にすることが好ましい。例えば、同時重層塗布する場合にはイオン性が異なると、界面で反応し凝集物ができヘイズが悪くなるためである。イオン性をそろえる手段としては、例えば、低屈折率層に二酸化ケイ素(アニオン)、高屈折率層に酸化チタン(カチオン)を用いた場合に、二酸化ケイ素をアルミニウム等で処理してカチオン化したり、あるいは、後述するように、酸化チタンを含ケイ素の水和酸化物で処理してアニオン化したりすることが可能である。
本発明の高屈折率層に含まれる金属酸化物は、その平均粒径(個数平均)が3〜100nmであることが好ましく、3〜50nmであることがより好ましい。
また、高屈折率層に含まれる金属酸化物は、体積平均粒径が50nm以下であることが好ましく、1〜45nmであることがより好ましく、5〜40nmであるのがさらに好ましい。体積平均粒径が50nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。ここでいう体積平均粒径とは、媒体中に分散された一次粒子または二次粒子の体積平均粒径であり、レーザー回折/散乱法、動的光散乱法等により測定できる。
具体的には、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する金属酸化物粒子の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径を算出する。
さらに、本発明で用いられる金属酸化物は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下であることをいう。この単分散度は、さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%である。
Figure 2014215513
高屈折率層における金属酸化物の含有量としては、高屈折率層の全固形分100質量%に対して、15〜85質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましく、30〜75質量%であることがさらに好ましい。上記範囲とすることで、赤外遮蔽性の良好なものとできる。
高屈折率層に含まれる金属酸化物粒子として好ましく用いられる酸化チタンとしては、酸化チタンゾルの表面を変性して水または有機溶剤等に分散可能な状態にしたものを用いることが好ましい。
水系の酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報、特開昭63−17221号公報等に記載された事項を参照にすることができる。
金属酸化物粒子として酸化チタン粒子を用いる場合、酸化チタン粒子のその他の製造方法については、例えば、「酸化チタン−物性と応用技術」清野学 p255〜258(2000年)技報堂出版株式会社、またはWO2007/039953号明細書の段落番号0011〜0023に記載の工程(2)の方法を参考にすることができる。
上記工程(2)による製造方法とは、二酸化チタン水和物をアルカリ金属の水酸物またはアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される、少なくとも1種の塩基性化合物で処理する工程(1)の後に、得られた二酸化チタン分散物を、カルボン酸基含有化合物および無機酸で処理する工程(2)からなる。
また、高屈折率層に含まれる金属酸化物粒子は、酸化チタン粒子が含ケイ素の水和酸化物で被覆されたコアシェル粒子の形態が好ましい。コアシェル粒子としては、コアの部分である酸化チタン粒子の体積平均粒径が、好ましくは1nm超30nm未満、より好ましくは4nm以上30nm未満であり、当該酸化チタン粒子の表面を、コアとなる酸化チタン100質量%に対して、含ケイ素の水和酸化物の被覆量がSiOとして3〜30質量%となるように含ケイ素の水和酸化物からなるシェルが被覆してなる構造である。本発明において、第2の金属酸化物粒子としてコアシェル粒子を含有させることで、シェル層の含ケイ素の水和酸化物とバインダー樹脂との相互作用により、高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制される効果を奏する。
本明細書における含ケイ素の水和酸化物とは、無機ケイ素化合物の水和物、有機ケイ素化合物の加水分解物および/または縮合物のいずれでもよく本願の発明効果を得るためにはシラノール基を有することがより好ましい。よって、本発明において、高屈折率層に含まれる金属酸化物としては、酸化チタン粒子がシリカ変性されたシリカ変性(シラノール変性)酸化チタン粒子であることが好ましい。
酸化チタンの含ケイ素の水和化合物の被覆量は、酸化チタン100質量%に対して、3〜30質量%、好ましくは3〜10質量%、より好ましくは3〜8質量%である。被覆量が30質量%以下であると、高屈折率層の所望の屈折率化が得られ、被覆量が3%以上であると粒子を安定に形成することができるからである。
また、高屈折率層に含まれる金属酸化物としては、公知の方法で製造されたコアシェル粒子を用いることもできる。例えば、以下の(i)〜(iv);(i)酸化チタン粒子を含有する水溶液を加熱加水分解し、または酸化チタン粒子を含有する水溶液にアルカリを添加し中和して、平均粒径が1〜30nmの酸化チタンを得た後、mol比で表して酸化チタン粒子/鉱酸が1/0.5〜1/2の範囲になるように、前記酸化チタン粒子と鉱酸とを混合したスラリーを、50℃以上該スラリーの沸点以下の温度で加熱処理し、その後得られた酸化チタン粒子を含むスラリーに、ケイ素の化合物(例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液)を添加し、酸化チタン粒子の表面にケイ素の含水酸化物を析出させて表面処理し、次いで、得られた表面処理された酸化チタン粒子のスラリーから不純物を除去する方法(特開平10−158015号);(ii)含水酸化チタンなどの酸化チタンを一塩基酸またはその塩で解膠処理して得られる酸性域のpHで安定した酸化チタンゾルと、分散安定化剤としてのアルキルシリケートを常法により混合し、中性化する方法(特開2000−053421号);(iii)過酸化水素および金属スズを、2〜3のH/Sn mol比に保持しつつ同時にまたは交互にチタン塩(例えば、四塩化チタン)等の混合物水溶液に添加し、チタンを含む塩基性塩水溶液を生成し、該塩基性塩水溶液を0.1〜100時間かけて50〜100℃の温度で保持して酸化チタンを含む複合体コロイドの凝集体を生成させ、次いで、該凝集体スラリー中の電解質を除去し、酸化チタンを含む複合体コロイド粒子の安定な水性ゾルが製造される。一方、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液)等を含有する水溶液を調製し、水溶液中に存在する陽イオンを除去することで、二酸化ケイ素を含む複合体コロイド粒子の安定な水性ゾルが製造される。得られた酸化チタンを含む複合体水性ゾルを金属酸化物TiOに換算して100質量部と、得られた二酸化ケイ素を含む複合体水性ゾルを金属酸化物SiOに換算して2〜100質量部と混合し、陰イオンを除去後、80℃で1時間加熱熟成する方法(特開2000−063119号);(iv)含水チタン酸のゲルまたはゾルに過酸化水素を加えて含水チタン酸を溶解し、得られたペルオキソチタン酸水溶液に、ケイ素化合物等を添加し加熱し、ルチル型構造をとる複合固溶体酸化物からなるコア粒子の分散液が得られ、次いで、該コア粒子の分散液にケイ素化合物等を添加した後、加熱しコア粒子表面に被覆層を形成し、複合酸化物粒子が分散されたゾルが得られ、さらに、加熱する方法(特開2000−204301号);(v)含水酸化チタンを解膠して得られた酸化チタンのヒドロゾルに、安定剤としてのオルガノアルコキシシラン(RnSiX4−n)または過酸化水素および脂肪族もしくは芳香族ヒドロキシカルボン酸から選ばれた化合物を添加し、溶液のpHを3以上9未満へ調節し熟成させた後に脱塩処理を行う方法(特開4550753号);で製造されたコアシェル粒子が挙げられる。
〔エマルジョン樹脂〕
本発明の低屈折率層および/または高屈折率層は、エマルジョン樹脂をさらに含有していてもよい。エマルジョン樹脂を含むことにより、膜の柔軟性が高くなりガラスへの貼りつけ等の加工性がよくなる。
エマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な、例えば、平均粒径が0.01〜2.0μm程度の樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られない。エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
水酸基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は70〜100mol%のものが好ましく、80〜99.5mol%のものがより好ましい。
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
〔屈折率層のその他の添加剤〕
本発明に係る高屈折率層と低屈折率層には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることができる。
例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報および同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報および同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
〔基材〕
本発明の赤外遮蔽フィルムに用いられる基材としては、透明な有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
かような基材としては、例えば、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の樹脂からなるフィルム、さらには前記樹脂を二層以上積層してなる樹脂フィルム等が挙げられる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられる。
基材の厚さは、5〜200μm程度が好ましく、さらに好ましくは15〜150μmである。基材は、2枚以上を重ねたものであってもよく、この際、基材の種類は同じでもよいし異なっていてもよい。
また、基材は、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。基材が上記透過率以上であることにより、赤外遮蔽フィルムとしたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率を50%以上にするという点で有利であり、好ましい。
また、上記樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
また、基材は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、またはテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%で処理されることである。弛緩処理された基材は、下記のオフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、さらに、寸法安定性が良好になる。
基材は、製膜過程で片面または両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明においては、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂およびゼラチン等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
[赤外遮蔽フィルムの製造方法]
本発明の赤外遮蔽フィルムの製造方法について特に制限はなく、基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ形成することができるのであれば、いかなる方法でも用いられうる。
本発明の赤外遮蔽フィルムの製造方法では、基材上に高屈折率層と低屈折率層とから構成される積層体(ユニット)を積層して形成され、例えば、高屈折率層用塗布液と低屈折率層用塗布液とを交互に塗布、乾燥して積層体を形成する。例えば、金属酸化物と、ポリビニルアルコールを含むバインダー樹脂と、水系溶媒と、をそれぞれ含む低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液を基材に塗布する工程と、塗布液が塗布された前記基材を乾燥する工程と、を含む赤外遮蔽フィルムの製造方法により得られる。この際、それぞれの塗布液に含まれるポリビニルアルコールの鹸化度を異ならせるとよい。また、低屈折率層用塗布液に含まれる金属酸化物としては、鎖状体または数珠状体のものを用いるとよい。
より具体的には、高屈折率層用塗布液と低屈折率層用塗布液とを交互に塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましい。具体的には以下の形態が挙げられる;(1)基材上に、高屈折率層用塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成した後、低屈折率層用塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成し、赤外遮蔽フィルムを形成する方法;(2)基材上に、低屈折率層用塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成した後、高屈折率層用塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成し、赤外遮蔽フィルムを形成する方法;(3)基材上に、高屈折率層用塗布液と、低屈折率層用塗布液とを交互に逐次重層塗布した後乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含む赤外遮蔽フィルムを形成する方法;(4)基材上に、高屈折率層用塗布液と、低屈折率層用塗布液とを同時重層塗布し、乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含む赤外遮蔽フィルムを形成する方法;などが挙げられる。なかでも、より簡便な製造プロセスとなる上記(4)の方法が好ましい。また、同時重層塗布の場合には、界面の混合がより生じやすいため、本発明は同時重層塗布により製造する場合に、より効果が発揮されやすい。
(塗布液の調製方法)
まず、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の調製方法について述べる。
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の調製方法は、特に制限されず、例えば、金属酸化物、ポリビニルアルコール、その他のバインダー樹脂、および必要に応じて添加されるその他の添加剤を添加し、攪拌混合する方法が挙げられる。この際、各成分の添加順も特に制限されず、攪拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、攪拌しながら一度に添加し混合してもよい。必要に応じて、さらに溶媒を用いて、適当な粘度に調製される。
なお、高屈折率層用塗布液に含まれる金属酸化物は、塗布液を調製する前に、別途、分散液の状態に調製したものを用いるのが好ましい。すなわち、体積平均粒径が100nm以下のルチル型の酸化チタンを添加、分散して調製した水系の高屈折率層用塗布液を用いて、高屈折率層を形成することが好ましい。さらに、本発明では、上述した方法で、含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子を添加、分散して調製した水系の高屈折率層塗布液を用いて、高屈折率層を形成することがより好ましい。分散液を用いる場合は、各層において任意の濃度となるように分散液を適宜添加すればよい。
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を調製するための溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、またはその混合溶媒が好ましい。本発明においては、バインダー樹脂として、ポリビニルアルコールを主に用いるために、水系溶媒を用いることができる。水系溶媒は、有機溶媒を用いる場合と比較して、大規模な生産設備を必要とすることがないため、生産性の点で好ましく、また環境保全の点でも好ましい。
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、特に水、または水とメタノール、エタノール、もしくは酢酸エチルとの混合溶媒が好ましく、水がより好ましい。
また、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液としては、塗布後に塗膜をセットさせて層間の混合を抑制できるという点から、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子と、水あるいはこれに水溶性有機溶剤を含む水系溶媒を主成分とする水系塗布液を用いることが好ましい。
高屈折率層用塗布液中のバインダー樹脂(ポリビニルアルコールも含む)の濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましい。また、高屈折率層用塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
低屈折率層用塗布液中のバインダー樹脂(ポリビニルアルコールも含む)の濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましい。また、低屈折率層用塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
同時重層塗布を行う際の高屈折率層用塗布液と低屈折率層用塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、45℃における粘度が、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、45℃における粘度が、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
塗布および乾燥方法としては、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
(塗布および乾燥方法)
塗布および乾燥方法の条件は、特に制限されないが、例えば、逐次塗布法の場合は、まず、30〜60℃に加温した高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液のいずれか一方を基材上に塗布、乾燥して層を形成した後、もう一方の塗布液をこの層上に塗布、乾燥して積層膜前駆体(ユニット)を形成する。次に、所望の赤外遮蔽性能を発現するために必要なユニット数を、前記方法にて逐次塗布、乾燥して積層させて積層膜前駆体を得る。乾燥する際は、形成した塗膜を、30℃以上で乾燥することが好ましい。例えば、湿球温度5〜50℃、膜面温度30〜100℃(好ましくは10〜50℃)の範囲で乾燥するのが好ましく、例えば、40〜60℃の温風を1〜5秒吹き付けて乾燥する。乾燥方法としては、温風乾燥、赤外乾燥、マイクロ波乾燥が用いられる。また単一プロセスでの乾燥よりも多段プロセスの乾燥が好ましく、恒率乾燥部の温度<減率乾燥部の温度にするのがより好ましい。この場合の恒率乾燥部の温度範囲は30〜60℃、減率乾燥部の温度範囲は50〜100℃にするのが好ましい。
また、同時重層塗布を行う場合の塗布および乾燥方法の条件は、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を30〜60℃に加温して、基材上に高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を好ましくは1〜15℃にいったん冷却し(セット)、その後10℃以上で乾燥することが好ましい。より好ましい乾燥条件は、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件である。例えば、80℃の温風を1〜5秒吹き付けて乾燥する。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜の均一性向上の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
ここで、前記セットとは、冷風等を塗膜に当てて温度を下げるなどの手段により、塗膜組成物の粘度を高め、各層間および各層内の物質の流動性を低下させたり、またゲル化する工程のことを意味する。冷風を塗布膜に表面から当てて、塗布膜の表面に指を押し付けたときに指に何もつかなくなった状態を、セット完了の状態と定義する。
塗布した時点から、冷風を当ててセットが完了するまでの時間(セット時間)は、5分以内であることが好ましく、2分以内であることがより好ましい。また、下限の時間は特に制限されないが、45秒以上の時間をとることが好ましい。セット時間が短すぎると、層中の成分の混合が不十分となる虞がある。一方、セット時間が長すぎると、金属酸化物微粒子の層間拡散が進み、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が不十分となるおそれがある。なお、高屈折率層と低屈折率層との間の中間層の高弾性化が素早く起こるのであれば、セットさせる工程は設けなくてもよい。
セット時間の調整は、水溶性高分子(バインダー樹脂)の濃度や金属酸化物粒子の濃度を調整したり、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギ−ナン、ゲランガム等の各種公知のゲル化剤など、他の成分を添加することにより調整することができる。
冷風の温度は、0〜25℃であることが好ましく、5〜10℃であることがより好ましい。また、塗膜が冷風に晒される時間は、塗膜の搬送速度にもよるが、好ましくは10〜360秒、より好ましくは10〜300秒、さらに好ましくは10〜120秒である。
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の塗布厚は、上記で示したような好ましい乾燥時の厚みとなるように塗布すればよい。
[赤外遮蔽体]
本発明により提供される赤外遮蔽フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、赤外遮蔽効果を付与する赤外遮蔽フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
特に、本発明に係る赤外遮蔽フィルムが直接または接着剤を介してガラスまたはガラス代替の樹脂などの基体に貼合されている部材に好適である。
すなわち、本発明のさらに他の形態によれば、本発明に係る赤外遮蔽フィルムを、基体の少なくとも一方の面に設けた、赤外遮蔽体をも提供する。
前記基体の具体的な例としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、金属板、セラミック等が挙げられる。樹脂の種類は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂のいずれでも良く、これらを2種以上組み合わせて用いても良い。本発明で使用されうる基体は、押出成形、カレンダー成形、射出成形、中空成形、圧縮成形等、公知の方法で製造することができる。基体の厚みは特に制限されないが、通常0.1mm〜5cmである。
赤外遮蔽フィルムと基体とを貼り合わせる接着層または粘着層は、赤外遮蔽フィルムを日光(熱線)入射面側に設置することが好ましい。また、本発明に係る赤外遮蔽フィルムを、窓ガラスと基体との間に挟持すると、水分等の周囲のガスから封止でき耐久性に優れるため好ましい。本発明に係る赤外遮蔽フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。さらに粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
赤外遮蔽フィルムまたは赤外遮蔽体の断熱性能、日射熱遮へい性能は、一般的にJIS R 3209(複層ガラス)、JIS R 3106(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)、JIS R 3107(板ガラス類の熱抵抗および建築における熱貫流率の算定方法)に準拠した方法により求めることができる。
日射透過率、日射反射率、放射率、可視光透過率の測定は、(1)波長(300〜2500nm)の分光測光器を用い、各種単板ガラスの分光透過率、分光反射率を測定する。また、波長5.5〜50μmの分光測定器を用いて放射率を測定する。なお、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、熱線吸収板ガラスの放射率は既定値を用いる。(2)日射透過率、日射反射率、日射吸収率、修正放射率の算出は、JIS R 3106に従い、日射透過率、日射反射率、日射吸収率、垂直放射率を算出する。修正放射率に関しては、JIS R 3107に示されている係数を、垂直放射率に乗ずることにより求める。断熱性、日射熱遮へい性の算出は、(1)厚さの測定値、修正放射率を用いJIS R 3209に従って複層ガラスの熱抵抗を算出する。ただし中空層が2mmを超える場合はJIS R 3107に従って中空層の気体熱コンダクタンスを求める。(2)断熱性は、複層ガラスの熱抵抗に熱伝達抵抗を加えて熱貫流抵抗で求める。(3)日射熱遮蔽性はJIS R 3106により日射熱取得率を求め、1から差し引いて算出する。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。
≪赤外遮蔽フィルムの作製・評価≫
<低屈折率層塗布液の調製>
〈低屈折率層塗布液L1の調製〉
45℃に加熱した15%シリカ水溶液(スノーテックスOUP、日産化学製)360部に3%ホウ酸水溶液50部を撹拌しながら添加した。その後、8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−235、鹸化度88.0mol%、クラレ製)330部と純水180部を撹拌しながら添加した。最後に5%界面活性剤水溶液(ソフタゾリンLSB−R、川研ファインケミカル製)1部を撹拌しながら添加し、低屈折率層塗布液L1を調製した。
〈低屈折率層塗布液L2の調製〉
低屈折率層塗布液L1の調製において、15%シリカ水溶液(スノーテックスOUP、日産化学製)360部を15%シリカ水溶液(スノーテックスPS−SO、日産化学製)360部に変更した以外は同様にして、低屈折率層塗布液L2を調製した。
〈低屈折率層塗布液L3の調製〉
低屈折率層塗布液L1の調製において、15%シリカ水溶液(スノーテックスOUP、日産化学製)360部を15%シリカ水溶液(スノーテックスPS−MO、日産化学製)360部に変更した以外は同様にして、低屈折率層塗布液L3を調製した。
〈低屈折率層塗布液L4の調製〉
低屈折率層塗布液L1の調製において、8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−235、鹸化度88.0mol%、クラレ製)330部を8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−117、鹸化度98.5mol%、クラレ製)330部に変更した以外は同様にして、低屈折率層塗布液L4を調製した。
〈低屈折率層塗布液L5の調製〉
低屈折率層塗布液L1の調製において、8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−235、鹸化度88.0mol%、クラレ製)330部を8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−420、鹸化度98.5mol%、クラレ製)330部に変更した以外は同様にして、低屈折率層塗布液L5を調製した。
〈低屈折率層塗布液L6の調製〉
低屈折率層塗布液L1の調製において、8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−235、鹸化度88.0mol%、クラレ製)330部を8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−617、鹸化度79.5mol%、クラレ製)330部に変更した以外は同様にして、低屈折率層塗布液L6を調製した。
〈低屈折率層塗布液L7の調製〉
低屈折率層塗布液L1の調製において、15%シリカ水溶液(スノーテックスOUP、日産化学製)360部を15%シリカ水溶液(スノーテックスOUP、日産化学製)275部と20%シリカ水溶液(スノーテックスOS、日産化学製)70部に変更し、さらに純水180部を195部に変更した以外は同様にして、低屈折率層塗布液L7を調製した。
〈低屈折率層塗布液L8の調製〉
低屈折率層塗布液L1の調製において、15%シリカ水溶液(スノーテックスOUP、日産化学製)360部を15%シリカ水溶液(スノーテックスOUP、日産化学製)150部と20%シリカ水溶液(スノーテックスOS、日産化学製)165部に変更し、さらに純水180部を225部に変更した以外は同様にして、低屈折率層塗布液L8を調製した。
〈低屈折率層塗布液L9の調製〉
低屈折率層塗布液L1の調製において、15%シリカ水溶液(スノーテックスOUP、日産化学製)360部を15%シリカ水溶液(スノーテックスOUP、日産化学製)35部と20%シリカ水溶液(スノーテックスOS、日産化学製)250部に変更し、さらに純水180部を255部に変更した以外は同様にして、低屈折率層塗布液L9を調製した。
〈低屈折率層塗布液L10の調製〉
低屈折率層塗布液L1の調製において、15%シリカ水溶液(スノーテックスOUP、日産化学製)360部を20%シリカ水溶液(スノーテックスOS、日産化学製)275部に変更し、さらに純水180部を265部に変更した以外は同様にして、低屈折率層塗布液L10を調製した。
〈低屈折率層塗布液L11の調製〉
低屈折率層塗布液L1の調製において、15%シリカ水溶液(スノーテックスOUP、日産化学製)360部を250部に変更し、8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−235、鹸化度88.0mol%、クラレ製)330部を400部に変更し、さらに純水180部を160部に変更した以外は同様にして、低屈折率層塗布液L11を調製した。
〈低屈折率層塗布液L12の調製〉
低屈折率層塗布液L1の調製において、15%シリカ水溶液(スノーテックスOUP、日産化学製)360部を440部に変更し、8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−235、鹸化度88.0mol%、クラレ製)330部を300部に変更し、さらに純水180部を200部に変更した以外は同様にして、低屈折率層塗布液L12を調製した。
<高屈折率層塗布液の調製>
〈シリカ付着二酸化チタンゾルの調製〉
15%酸化チタンゾル(SRD−W、体積平均粒径5nm、堺化学社製)1質量部に純水4質量部を加えた後、90℃に加熱した。次いで、ケイ酸水溶液(ケイ酸ソーダ4号(日本化学社製)をSiO濃度が4%となるように純水で希釈したもの)2.6質量部を徐々に添加し、次いでオートクレーブ中、175℃にて18時間加熱処理を行い、冷却後、限外濾過膜にて濃縮することにより、固形分濃度が20質量%のSiOを表面に付着させた二酸化チタンゾル(以下「シリカ変性酸化チタンゾル」)を得た。
〈高屈折率層塗布液H1の調製〉
45℃に加熱した20%シリカ変性酸化チタンゾル水分散液360部に2%クエン酸水溶液135部を撹拌しながら添加した。その後、8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−117、鹸化度98.5mol%、クラレ製)290部と純水120部を撹拌しながら添加した。最後に、5%界面活性剤水溶液(ソフタゾリンLSB−R、川研ファインケミカル製)1部を撹拌しながら添加し、高屈折率層塗布液H1を調製した。
〈高屈折率層塗布液H2の調製〉
高屈折率層塗布液H1の調製において、8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−117、鹸化度98.5mol%、クラレ製)290部を8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−117H、99.5mol%、クラレ製)290部に変更した以外は同様にして、高屈折率層塗布液H2を調製した。
〈高屈折率層塗布液H3の調製〉
高屈折率層塗布液H1の調製において、8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−117、鹸化度98.5mol%、クラレ製)290部を8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−617、95.0mol%、クラレ製)290部に変更した以外は同様にして、高屈折率層塗布液H3を調製した。
〈高屈折率層塗布液H4の調製〉
高屈折率層塗布液H1の調製において、8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−117、鹸化度98.5mol%、クラレ製)290部を8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA−235、88.0mol%、クラレ製)290部に変更した以外は同様にして、高屈折率層塗布液H4を調製した。
<赤外遮蔽フィルム試料の作製>
〈試料1の作製〉
21層重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、上記で調製した低屈折率層用塗布液L1および高屈折率層用塗布液H1を45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(A4300、両面易接着層、東洋紡製)上に、最下層と最上層は低屈折率層とし、それ以外はそれぞれ交互に、乾燥時の膜厚が低屈折率層は各層150nm、高屈折率層は各層130nmになるように計21層の同時重層塗布を行った。
塗布直後、5℃の冷風を吹き付けてセットさせ、セット完了後80℃の温風を吹き付けて乾燥させ、試料1を作成した。
〈試料2〜15の作製〉
低屈折率層用塗布液および高屈折率層塗布液を下記の表1に記載の組み合わせに変更した以外は、試料1の作製方法と同様にして試料2〜15を作製した。なお、試料1〜10までは本発明であり、11〜15は比較例である。
<空隙率の測定>
電子顕微鏡(FE−SEM)としてS−5000H型(日立製作所製)を用いて、加速電圧2.0kVにて低屈折率層の断面の空隙の個数が1000個以上となるように視野数を選び観察した。画像はデジタル化し接続されたファイリング装置(VIDEOBANK)に転送しMOディスク中に保存した。続いて画像処理装置にて空隙部分のコントラストを調整し、空隙の面積を求め全体の面積で割ることで空隙率を計算した。
<赤外遮蔽フィルム試料の評価>
上記で作製した各赤外遮蔽フィルム試料(試料1〜15)について、下記の性能評価を行った。性能評価結果を下記の表1に示す。
〈近赤外透過率測定〉
分光光度計としてU−4000型(日立製作所社製)を用い、各試料の900nm〜1200nmにおける最小の透過率の値を近赤外透過率として用いた。
〈層間分離性評価〉
各試料の断面を、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)により元素測定し、ケイ素とチタンの存在分布を観察し、下記の基準に従って、塗布時の層間分離性の評価を行った:
○:低屈折率層と高屈折率層間で、明確にケイ素とチタンの存在分布が分離しており、層間の乱れは全く認められず、層間分離が良好である;
△:低屈折率層と高屈折率層間で、明確にケイ素とチタンの存在分布が分離しており、層間の乱れはほとんど認められず、層間分離が比較的良好である;
×:低屈折率層と高屈折率層間で、ケイ素とチタンの存在分布の乱れが認められ、層間分離性に乏しい。
〈ヘイズ測定〉
ヘイズ値はヘイズメーター(NDH2000、日本電色工業製)により測定し、下記基準に従って評価した。なお、下記基準のうち○または△であれば、実用上問題のないレベルである:
○:1.0%以下;
△:1.0%超〜3.0%以下;
×:3.0%超。
〈膜強度評価〉
各試料をJIS K5600−5−1に準拠した屈曲試験法に基づき、屈曲試験機タイプ1(型式IMC−AOF2、マンドレル径φ20mm、井元製作所製)を用いて、30回の屈曲試験を行った後、各試料表面を目視観察し、下記基準に従って膜強度を評価した。なお、下記基準のうち○または△であれば、実用上問題のないレベルである:
○:赤外遮蔽フィルム表面に、折り曲げ跡やひび割れは観察されない;
△:赤外遮蔽フィルム表面に、僅かに折り曲げ跡や凹凸部分が観察される;
×:赤外遮蔽フィルム表面に、明らかなひび割れが多数発生している。
Figure 2014215513
表1に記載の結果から明らかなように、本発明の赤外遮蔽フィルムは、比較例の赤外遮蔽フィルムと比べ、層間分離性が良好であり、赤外遮蔽性に優れ、ヘイズも小さく、巻く強度にも優れることが分かる。
≪赤外遮蔽体の作製・評価≫
<赤外遮蔽体試料の作製>
前記作製した赤外遮蔽フィルム試料1〜15のそれぞれを用いて赤外遮蔽体1〜15を作製した。具体的には、厚さ5mm、20cm×20cmのサイズの透明アクリル樹脂板上に、赤外遮蔽フィルム1〜15のそれぞれをアクリル接着剤で接着して、対応する赤外遮蔽体1〜15を作製した。
<赤外遮蔽体試料の評価>
上記作製した赤外遮蔽体1〜15はサイズが大きいにもかかわらず容易に利用可能であり、また本発明の赤外遮蔽フィルムを利用することで、優れた赤外遮蔽性を確認することができた。

Claims (6)

  1. 基材上に、低屈折率層と高屈折率層とを積層したユニットを少なくとも1つ含む赤外遮蔽フィルムにおいて、前記低屈折率層および前記高屈折率層はともに少なくとも1種のポリビニルアルコールを含有し、
    前記低屈折率層中で最も含有量の多いポリビニルアルコール(L)の鹸化度と、前記高屈折率層中で最も含有量の多いポリビニルアルコール(H)の鹸化度は異なっており、
    少なくとも1つの前記低屈折率層は金属酸化物の鎖状体または数珠状体を含み、
    少なくとも1つの前記低屈折率層には空隙が存在し、当該低屈折率層の空隙率が3%〜40%であることを特徴とする、赤外遮蔽フィルム。
  2. 前記ポリビニルアルコール(L)と前記ポリビニルアルコール(H)との鹸化度の絶対値の差が3mol%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の赤外遮蔽フィルム。
  3. 前記ポリビニルアルコール(L)の鹸化度は75mol%以上90mol%未満であり、前記ポリビニルアルコール(H)の鹸化度が90mol%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の赤外遮蔽フィルム。
  4. 前記金属酸化物の鎖状体または数珠状体を含有する前記低屈折率層が、金属酸化物の球状体をさらに含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルムを、基体の少なくとも一方の面に設けてなる赤外遮蔽体。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の赤外遮蔽フィルムの製造方法であって、基材上に高屈折率層塗布液と低屈折率塗布液とを同時重層塗布した後乾燥して、高屈折率層と低屈折率層とを含む赤外遮蔽フィルムを形成する工程を含むことを特徴とする、赤外遮蔽フィルムの製造方法。
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