JP2016114806A - 光学フィルム - Google Patents

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【課題】ヘイズが低く高温高湿下でのヘイズの変動の少ない光学フィルムを提供する。【解決手段】基材2上に、少なくとも高屈折率層4、低屈折率層3及び混在層6からなる積層体5を有する光学フィルム1であって、高屈折率層4と低屈折率層3との屈折率の差が0.1以上であり、高屈折率層4又は低屈折率層3の少なくとも1層に、活性カルボニル変性ポリビニルアルコールと無機酸化物粒子とを含有し、混在層6が海島構造を有しており、かつ海島構造を構成する島のうち、直径80nm以上の島の数が、5個/5μm2以下である。【選択図】図1

Description

本発明は光学フィルムに関する。より詳しくは、ヘイズが低く高温高湿下でのヘイズの変動の少ない光学フィルムに関する。
近年、冷房設備にかかる負担を減らすため、建物や車両の窓ガラスに装着させて、太陽光の熱線の透過を遮断する近赤外線遮へいフィルムへの要望が高まっている。近赤外線を遮へいする方法の一つとして、屈折率の異なる二つの層を積層して形成することができる近赤外線反射フィルムは以前より知られており、その有用性から盛んに開発されている。
例えば、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構成からなる積層膜を、蒸着法、スパッタ法等のドライ成膜法を用いて形成する方法が提案されている。しかし、ドライ成膜法は、成膜に用いる真空装置等が大型になり、製造コストが高く、大面積化が困難であり、しかも、基材として耐熱性素材に限定される等の問題を抱えている。
上記のような問題を有しているドライ成膜法に代えて、湿式塗布法を用いて近赤外線反射フィルムを形成する方法が知られている。
例えば、該高屈折率層及び該低屈折率層の少なくとも一つの層に、水溶性樹脂と、無機酸化物粒子を含有した水系塗布液の同時多層塗布法を用いることで、より低コストに近赤外線反射フィルムを得ることができる(例えば特許文献1参照。)。
しかしながら、水系の同時多層塗布法を用いて無機酸化物粒子を含有する層を形成して近赤外線反射フィルムを作製する方法では、得られる近赤外線反射フィルムのヘイズが高く、さらに高温高湿下に置かれるとヘイズが高くなり、近年望まれている高い近赤外線反射性を得ることができないという問題があった。
国際公開第2013/054912号
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、ヘイズが低く高温高湿下でのヘイズの変動の少ない光学フィルムを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、高屈折率層又は低屈折率層の少なくとも一層に、活性カルボニル変性ポリビニルアルコールを含有させることで、高屈折率層と低屈折率層とが混在した混在層中における、ヘイズの原因と考えられる海島構造の島に相当する部分の数を軽減することが可能であることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.基材上に、少なくとも高屈折率層、低屈折率層及び混在層からなる積層体を有する光学フィルムであって、前記高屈折率層と前記低屈折率層との屈折率の差が0.1以上であり、前記高屈折率層又は前記低屈折率層の少なくとも1層に、活性カルボニル変性ポリビニルアルコールと無機酸化物粒子とを含有し、前記混在層が海島構造を有しており、かつ当該海島構造を構成する島のうち、直径80nm以上の島の数が、5個/5μm以下であることを特徴とする光学フィルム。
2.前記活性カルボニル変性ポリビニルアルコールのケン化度が、92.0〜99.9%の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の光学フィルム。
3.前記高屈折率層又は前記低屈折率層の少なくとも1層に、有機架橋剤を含有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の光学フィルム。
4.前記高屈折率層に酸化チタン粒子を含有し、前記混在層に0.01〜0.001質量%のリン酸を含有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
本発明の上記手段により、ヘイズが低く高温高湿下でのヘイズの変動の少ない光学フィルムを提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
従来の多層塗布においては、無機酸化物粒子を含有した、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構成からなる積層膜において、高屈折率層と低屈折率層との間に混在層が形成される。この混在層は、屈折率が均一な、バインダーと無機酸化物粒子を含有する海に相当する部分に加えて、直径が80nm以上の屈折率が海の部分とは異なる島の部分とからなり、この島の部分が可視光領域の光と干渉を起こし、光学フィルムのヘイズを高くしていることが分かった。また、特に高温高湿化にフィルムが置かれた場合、経時でも混在層中に、この島が存在するとヘイズが劣化することが分かった。この混在層は高屈折率層と低屈折率層の間に形成されやすいが、高屈折率層中又は低屈折率層中に形成されることもある。この島は、重層塗布時の衝撃等で形成した無機酸化物粒子の凝集体と推定される。
活性カルボニル変性ポリビニルアルコール(以下、活性カルボニル変性PVAともいう。)を混在層に含有させることにより、直径80nm以上の島の数を減らすことができ、ヘイズを格段に向上させることができるのは、無機酸化物粒子に活性カルボニル変性PVAが吸着することにより無機酸化物粒子の分散性が上昇し、混在層における島の形成の原因と考えられる無機酸化物粒子の凝集が抑制されたためであると推測している。
本発明の光学フィルムの概略断面図
本発明の光学フィルムは、基材上に、少なくとも高屈折率層、低屈折率層及び混在層からなる積層体を有する光学フィルムであって、前記高屈折率層と前記低屈折率層との屈折率の差が0.1以上であり、前記高屈折率層又は前記低屈折率層の少なくとも1層に、活性カルボニル変性ポリビニルアルコールと無機酸化物粒子とを含有し、前記混在層が海島構造を有しており、かつ当該海島構造を構成する島のうち、直径80nm以上の島の数が、5個/5μm以下であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項4までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、活性カルボニル変性ポリビニルアルコールのケン化度が、92.0〜99.9%の範囲内であることが好ましい。また、高屈折率層又は前記低屈折率層の少なくとも1層に、有機架橋剤を含有することが、耐水性が向上し経時による島の形成を抑制し、ヘイズ劣化を抑制するこの効果が得られることから好ましい。
さらに、本発明においては、高屈折率層に酸化チタン粒子を含有し、前記混在層に0.01〜0.001質量%のリン酸を含有することが、島の形成をより抑制し、ヘイズを低減できることから好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《光学フィルム》
本発明の光学フィルムは、少なくとも高屈折率層、低屈折率層及び混在層からなる積層体を有する光学フィルムであって、前記高屈折率層と前記低屈折率層との屈折率の差が0.1以上であり、前記高屈折率層又は前記低屈折率層の少なくとも1層に、活性カルボニル変性ポリビニルアルコールと無機酸化物粒子とを含有し、前記混在層が海島構造を有しており、かつ当該海島構造を構成する島のうち、直径80nm以上の島の数が、5個/5μm以下であることを特徴とする。
図1は本発明の光学フィルムの概略断面図である。光学フィルム1は、基材2上に無機酸化物粒子を含有する低屈折率層3と高屈折率層4を積層した積層体5を有しているが、低屈折率層3と高屈折率層4との間に混在層6が塗布時に形成される例を示している。この混在層は均一な層であればヘイズ増加の原因にはならないが、海島構造を形成して島の大きさが直径80μm以上になるとヘイズの原因になると考えられる。本発明では高屈折率層又は低屈折率層の少なくとも1層に活性カルボニル変性ポリビニルアルコールを含有させることにより、直径80nm以上の島の数を減らすことができ、ヘイズを格段に向上させることができる。
本発明の光学フィルムは、近赤外線反射フィルムとして有用である。なお、本明細書において、「近赤外線」とは、波長が約750〜2500nmの近赤外線のことであり、本発明において近赤外線反射フィルムとは、近赤外線を反射することにより、近赤外線の全部又は一部を遮ることができるフィルムである。
生産性の観点から、基材の片面あたりの好ましい高屈折率層及び低屈折率層の総層数の範囲は、100層以下12層以上、より好ましくは45層以下15層以上、さらに好ましくは45層以下21層以上である。なお、前記の好ましい高屈折率層及び低屈折率層の総層数の範囲は、基材の片面にのみ積層される場合においても適応可能であり、基材の両面に同時に積層される場合においても適応可能である。基材の両面に積層される場合において、基材の一方の面と他の面との高屈折率層及び低屈折率層の総層数は、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、本発明の光学フィルムにおいて、最下層(基材と接触する層)及び最表層は、高屈折率層及び低屈折率層のいずれであってもよい。しかしながら、低屈折率層が最下層及び最表層に位置する層構成とすることにより、最下層の基材への密着性、最上層の吹かれ耐性、さらには最表層へのハードコート層等の塗布性や密着性に優れるという観点から、本発明の光学フィルムとしては、最下層及び最表層が低屈折率層である層構成が好ましい。
一般に、近赤外線反射フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層との屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で近赤外線反射率を高くすることができるという観点から好ましい。本発明では、隣接する高屈折率層と低屈折率層との屈折率差は0.1以上である。好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.35以上であり、最も好ましくは0.4以上である。
この屈折率差と、必要な層数とについては、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、近赤外線反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと200層以上の積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、故障なく製造することも非常に困難になる場合があり好ましくない。
近赤外線反射フィルムが高屈折率層及び低屈折率層を交互に積層する場合には、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が、上記好適な屈折率差の範囲内にあることが好ましい。ただし、例えば、最表層はフィルムを保護するための層として形成される場合又は最下層が基板との接着性改良層として形成される場合などにおいて、最表層や最下層に関しては、上記好適な屈折率差の範囲外の構成であってもよい。
さらには、本発明の光学フィルムの光学特性として、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上であり、好ましくは75%以上であり、より好ましくは85%以上である。また、波長900〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
本発明の光学フィルムの全体の厚さは、好ましくは12〜315μm、より好ましくは15〜200μm、さらに好ましくは20〜100μmの範囲内である。
次いで、本発明の光学フィルムの構成要素である混在層、高屈折率層、低屈折率層、活性カルボニル変性ポリビニルアルコール、基材について、順に詳説する
《混在層》
多層塗布においては、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた構成からなる積層膜において、高屈折率層と低屈折率層との間に混在層が形成される。この混在層は、屈折率が均一な、バインダーと無機酸化物粒子を含有する海に相当する部分に加えて、直径が80nm以上の屈折率が海の部分とは異なる島の部分とからなり、この島の部分が可視光領域の光と干渉を起こし、光学フィルムのヘイズを高くしていることが分かった。また、特に高温高湿化にフィルムが置かれた場合、経時でも混在層中に、この島が形成されヘイズが劣化することが分かった。この混在層は高屈折率層と低屈折率層の間に形成されやすいが、高屈折率層中又は低屈折率層中に形成されることもある。この島は、重層塗布時の衝撃等で移動した無機酸化物粒子の凝集体と推定される。無機酸化物粒子が、一次粒子として水溶性樹脂中に分散されたものは海に相当する。
また、塗布液中の固形分濃度が低い場合や各層の表面張力差が小さい場合にこの混在層は形成しやすい。
本発明において混在層は以下のように定義する。
1.無機酸化物粒子が高屈折率層又は低屈折率層のいずれかにしか入っていない場合:
積層体において、無機酸化物粒子の濃度が、無機酸化物添加層における無機酸化物粒子の最大濃度に対して10〜90%の範囲となる領域。
2.無機酸化物粒子が高屈折率層かつ低屈折率層の両方に入っている場合:
積層体において、主たる無機酸化物粒子が90%以下であり、主たる無機酸化物粒子層以外から移動した異種粒子が10%以上含有する領域。
混在層は以下のようにして観察することができる。
積層膜の無機酸化物濃度プロファイルは、スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて最表面を0nmとして、0.5nm/minの速度でスパッタし、原子組成比を測定することにより、混在層を見ることができる。
また、積層膜を切断して切断面をXPS表面分析装置で原子組成比を測定することで見ることも可能である。混合領域において無機酸化物の濃度が不連続に変化している場合には電子顕微鏡(TEM)による断層写真により境界は分かる。
本発明ではXPS表面分析装置としては、スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて最表面を0nmとして、0.5nm/minの速度でスパッタし、原子組成比を測定することにより混在層を特定する。XPS表面分析装置は、特に限定なく、いかなる機種も使用することができるが、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いることができる。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定する。
上記混合層における島の数は、積層体の断層SEM観察おいて、無機酸化物粒子が高屈折率層又は低屈折率層のいずれかにしか入っていない場合は、無機酸化物粒子の濃度が、無機酸化物添加層における無機酸化物粒子の最大濃度に対して10〜90%の範囲となる領域に、無機酸化物粒子成分が無機酸化物粒子添加層(含有濃度90%以上)と接触せず独立している直径80nm以上のものを島と定義する。
無機酸化物粒子が高屈折率層かつ低屈折率層の両方に入っている場合は、異種粒子含有成分が異種粒子成分を主とする相と接触せず独立している直径80nm以上ものを島と定義する。
これを以下のように測定することで島の数とする。なお、直径はSEM観察おいて島の面積をその面積に等しい円に換算(円換算)したときの直径で表す。
断層SEMの観察条件は以下のとおりである。
(島の数の測定方法)
光学フィルムの総層厚Yμmに対して、断層SEM観察で混在層が複数あるとき、複数の層全てを測定する。測定範囲はXY=5μmとなる面積範囲で行う。Xは断層SEM観察における層厚に直交する長さを表す。
SEM観察画像の濃淡で、無機酸化物粒子を含む島の数を観察することができる。島の個数は3か所の平均値をとり、小数点以下は四捨五入する。
《高屈折率層》
本発明に係る高屈折率層は、水溶性樹脂及び第1の無機酸化物粒子を必須成分として含み、必要により、架橋剤、表面被覆成分、界面活性剤、及び各種添加剤からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。
本発明に係る高屈折率層の屈折率は、好ましくは1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。
本発明に係る高屈折率層の1層あたりの厚さは、20〜800nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。
(第1の無機酸化物粒子)
本発明に係る第1の無機酸化物粒子としては、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズの粒子を挙げることができる。これらの無機酸化物は含ケイ素の水和酸化物で被覆されていてもよい。
第1の無機酸化物粒子は、体積分布で平均粒子径が1〜30nmの範囲内で、かつ80nm以上の粒子が全体の0.1%以下であることが、ヘイズを低くする観点から好ましい。
高屈折率層及び低屈折率層中の無機酸化物の含有量は、50〜95質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましい。無機酸化物の含有量を50質量%以上とすることにより、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易となり、無機酸化物の含有量を95質量%以下とすることにより、膜の柔軟性が得られ、近赤外線反射フィルムを形成することが容易となる。
本発明に係る高屈折率層の形成に用いる無機酸化物粒子の無機酸化物としては、TiO、ZnO、ZrOが好ましい。
これらの無機酸化物粒子の中でも、酸化チタン粒子が含ケイ素の水和酸化物で被覆された粒子であることが好ましい。本発明において、酸化チタン粒子とは、二酸化チタン(TiO)粒子を意味する。
ここで、「被覆」とは、酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部に、含ケイ素の水和酸化物が付着されている状態を意味する。すなわち、本発明に係る第1の無機酸化物粒子として用いられる酸化チタン粒子の表面が、完全に含ケイ素の水和酸化物で被覆されていてもよく、酸化チタン粒子の表面の一部が含ケイ素の水和酸化物で被覆されていてもよい。被覆された酸化チタン粒子の屈折率が含ケイ素の水和酸化物の被覆量により制御される観点から、酸化チタン粒子の表面の一部が含ケイ素の水和酸化物で被覆されることが好ましい。
本発明において、第1の無機酸化物粒子としては、含ケイ素の水和酸化物で被覆されたルチル型の酸化チタン粒子であってもよく、含ケイ素の水和酸化物で被覆されたアナターゼ型の酸化チタン粒子であってもよく、又はこれらの混合粒子であってもよい。これらの中では、含ケイ素の水和酸化物で被覆されたルチル型の酸化チタン粒子がより好ましい。
これは、ルチル型の酸化チタン粒子が、アナターゼ型の酸化チタン粒子より光触媒活性が低いため、高屈折率層や隣接した低屈折率層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高くなるという理由からである。
本発明に係る第1の無機酸化物粒子に用いられる酸化チタン粒子を含む水溶液は、pHが1.0〜3.0であり、かつチタン粒子のゼータ電位が正である水系の酸化チタンゾルの表面を、疎水化して有機溶剤に分散可能な状態にしたものを用いることができる。
また、高屈折率層に酸化チタン粒子を含み、混合層に0.01〜0.001質量%のリン酸又はリン酸エステルを含むことが、島の形成をより抑制し、ヘイズを低減できることから好ましい。リン酸とリン酸エステルではリン酸がより好ましい。酸化チタン粒子とリン酸が相互作用して酸化チタン粒子の分散安定性が向上するものと思われる。リン酸は、拡散性が高く、高屈折率層、低屈折率層及び混在層に均一に存在し、混在層に存在するリン酸量は初期投入量で決定する。
本発明に係る高屈折率層における第1の無機酸化物粒子の含有量としては、高屈折率層の固形分100質量%に対して、15〜95質量%であることが好ましく、20〜88質量%であることがより好ましく、30〜85質量%であることがさらに好ましい。
第1の無機酸化物粒子の含有量が高屈折率層の固形分100質量%に対して、15〜95質量%であると、低屈折率層との屈折率差を大きくできるという観点で好ましい。
前記酸化チタン粒子及び前記第1の無機酸化物粒子(含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子)の粒径は、体積平均粒径や一次平均粒径により求めることができる。
本発明に係る第1の無機酸化物粒子及び第1の無機酸化物粒子に用いられる酸化チタン粒子の粒径に関しては、体積平均粒径又は一次平均粒径により求めることができる。
本発明においては、第1の無機酸化物粒子に用いられる酸化チタン粒子(含ケイ素の水和酸化物で被覆されていない)の体積平均粒径は、30nm以下であることが好ましく、1〜30nmであることがより好ましく、5〜15nmであることがさらに好ましく、6〜10nmであることが最も好ましい。また、80nm以上の粒子が全体の0.1%以下であることが好ましい。体積平均粒径が1nm以上30nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
なお、本発明に係る第1の無機酸化物粒子に用いられる酸化チタン粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、又は電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する粒子状の無機酸化物の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
さらに、本発明に係る第1の無機酸化物粒子に用いられる酸化チタン粒子は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下であることをいう。この単分散度は、さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%である。
単分散度=(体積粒径の分布から求められる標準偏差値)/(体積平均粒径)×100
本発明は、含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子を高屈折率層に含有させることで、含ケイ素の水和酸化物と水溶性樹脂との相互作用により、高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制される効果、及びルチル型酸化チタン粒子のみならずアナターゼ型酸化チタン粒子を用いる場合の酸化チタンの光触媒活性による水溶性樹脂の劣化やチョーキングなどの問題を防ぐことができるという効果を奏する。
本発明に係る第1の無機酸化物粒子の体積平均粒径は、好ましくは1〜31nmであり、より好ましくは6〜16nmであり、さらに好ましくは7〜11nmである。本発明に係る第1の無機酸化物粒子の体積平均粒径が1〜31nmであると、本発明の効果である近赤外線反射性や、透明性、ヘイズといった光学特性の観点から好ましい。
第1の無機酸化物粒子に用いられる酸化チタン粒子(含ケイ素の水和酸化物で被覆されていない)の一次平均粒径は、30nm以下であることが好ましく、1〜30nmであることがより好ましく、1〜20nmであることがさらに好ましく、1〜10nmであることが最も好ましい。一次平均粒径が1nm以上30nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
本発明に係る第1の無機酸化物粒子の一次平均粒径は、好ましくは1〜31nmであり、より好ましくは1〜21nmであり、さらに好ましくは1〜11nmである。本発明に係る第1の無機酸化物粒子の一次平均粒径が1〜31nmであると、近赤外線反射性や、透明性、ヘイズといった光学特性の観点から好ましい。
なお、本明細書における一次平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
透過型電子顕微鏡から求める場合、粒子の一次平均粒径は、粒子そのもの又は屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
本発明に係る第1の無機酸化物粒子の製造方法としては、公知の方法を採用することができる。
本発明に係る第1の無機酸化物粒子を調製する際に、含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子を含む懸濁液において、懸濁液全体の固形分100質量%に対して、当該第1の無機酸化物粒子の好ましい固形分は、1〜40質量%である。また、当該固形分は、15〜25質量%であることがより好ましい。これは、当該固形分を1質量%以上にすることで、固形分濃度が大きくして溶媒揮発負荷を低減し生産性が向上でき、また、当該固形分を40質量%以下にすることで、高粒子密度による凝集を防止でき、塗布時の欠陥を減らすことができるからである。本発明に係る第1の無機酸化物粒子を調製する際に、含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子を含む懸濁液のpH範囲は、3〜9であることが好ましく、4〜8であることがより好ましい。懸濁液のpHを9以下にすることでアルカリ溶解による体積平均粒径の変化を抑えることができ、懸濁液のpHを3以上にすることでハンドリング性を向上することができるからである。
本発明に係る第1の無機酸化物粒子は、酸化チタン粒子に対して、含ケイ素の水和酸化物の被覆量は、SiOとして好ましくは3〜30質量%であり、より好ましくは3〜10質量%、さらに好ましくは3〜8質量%である。被覆量が3〜30質量%であれば、高屈折率層の高屈折率化が容易となりまた、被覆した粒子を安定に形成することができる。
本明細書における「含ケイ素の水和酸化物」とは、無機ケイ素化合物の水和物、有機ケイ素化合物の加水分解物又は縮合物のいずれでもよいが、本発明の効果を得るためにはシラノール基を有することがより好ましい。
本発明に係る高屈折率層において、本発明に係る第1の無機酸化物粒子以外に、他の無機酸化物粒子が含まれていてもよい。他の無機酸化物粒子を併用する場合には、本発明に係る第1の無機酸化物粒子と電荷的に凝集しないよう、各種のイオン性分散剤や保護剤を用いることができる。本発明に係る第1の無機酸化物粒子以外に用いることのできる無機酸化物粒子は、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズなどが挙げられる。上記のような第1の無機酸化物粒子以外の他の無機酸化物粒子が、高屈折率層に含有される場合の含有量は、本発明の効果を奏することができる範囲であれば特に制限されるものではない。
なお、本発明の近赤外線反射フィルムが高屈折率層を複数有する場合は、複数の高屈折率層のうち少なくとも1層に酸化チタン粒子が含ケイ素の水和酸化物で被覆された粒子である第1の無機酸化物粒子が含まれていればよく、複数の高屈折率層の全ての層に本発明に係る第1の無機酸化物粒子が含まれることが特に好ましい。本発明の近赤外線反射フィルムが高屈折率層を1層有する場合は、当該1層の高屈折率層に本発明に係る第1の無機酸化物粒子が含まれていればよい。
《低屈折率層》
本発明に係る低屈折率層は、水溶性樹脂及び第2の無機酸化物粒子を含み、必要により架橋剤、界面活性剤、及び各種添加剤からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
本発明に係る低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
本発明に係る低屈折率層の1層あたりの厚さは、20〜800nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。
(第2の無機酸化物粒子)
本発明に係る第2の無機酸化物粒子としては、屈折率を上記のように調整できる無機酸化物粒子であれば特に制限はないが、シリカ(二酸化ケイ素)を用いることが好ましく、具体的な例として合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。これらのうち、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることがより好ましく、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカゾルを用いることがさらに好ましい。また、屈折率をより低減させるためには、第2の無機酸化物粒子として、粒子の内部に空孔を有する中空微粒子を用いることができ、特にシリカ(二酸化ケイ素)の中空微粒子が好ましい。また、シリカ以外の公知の無機酸化物粒子も使用することができる。
本発明において、第2の無機酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)は、その一次平均粒径が1〜31nmであることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗布前の分散液状態での一次平均粒径)は、6〜16nmであるのがより好ましく、7〜11nmであるのがさらに好ましい。また、二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
また、本発明において、第2の無機酸化物粒子の粒径は、一次平均粒径の他に、体積平均粒径により求めることができる。なお、体積平均粒径の測定方法は前述の第1の無機酸化物粒子の場合と同様であり、第2の無機酸化物粒子も、体積分布で平均粒子径が1〜30nmの範囲内で、かつ80nm以上の粒子が全体の0.1%以下であることが、ヘイズを低くする観点から好ましい。
本発明で用いられるコロイダルシリカは、ケイ酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、例えば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、及び国際公開第94/26530号などに記載されているものである。
かようなコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。コロイダルシリカは、その表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、Mg又はBa等で処理された物であってもよい。
本発明では第2の無機酸化物粒子として、中空粒子を用いることもできる。中空微粒子を用いる場合には、平均粒子空孔径が、3〜70nmであるのが好ましく、5〜50nmがより好ましく、5〜45nmがさらに好ましい。なお、中空微粒子の平均粒子空孔径とは、中空微粒子の内径の平均値である。本発明において、中空微粒子の平均粒子空孔径は、上記範囲であれば、十分に低屈折率層の屈折率が低屈折率化される。平均粒子空孔径は、電子顕微鏡観察で、円形、楕円形又は実質的に円形は楕円形として観察できる空孔径を、ランダムに50個以上観察し、各粒子の空孔径を求め、その数平均値を求めることにより得られる。なお、本明細書中、平均粒子空孔径としては、円形、楕円形又は実質的に円形若しくは楕円形として観察できる空孔径の外縁を、2本の平行線で挟んだ距離のうち、最小の距離を意味する。
低屈折率層における第2の無機酸化物粒子の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、0.1〜70質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましく、45〜65質量%であることがさらに好ましい。
《水溶性樹脂》
本発明において、各高屈折率層及び各低屈折率層には、バインダーとして機能する水溶性樹脂が含有されている。各高屈折率層に含有される水溶性樹脂と低屈折率層の含有される水溶性樹脂とは、同じ構成成分であってもよく、異なる構成成分であってもよい。ただし、高屈折率層又は低屈折率層の少なくとも1層に、活性カルボニル変性ポリビニルアルコールを含有している。
本発明に係る水溶性樹脂としては、活性カルボニル変性ポリビニルアルコール単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。さらに、本発明の効果を損なわない範囲で他の水溶性樹脂と組み合わせてもよい。また、水溶性樹脂は合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。以下、本発明に係る水溶性樹脂について、詳細に説明する。
(活性カルボニル変性ポリビニルアルコール)
活性カルボニル変性ポリビニルアルコール(活性カルボニル変性PVA)を無機酸化物粒子とともに用いることで、無機酸化物粒子と活性カルボニル変性PVAが相互作用して、より粒子の分散性が上昇し、混在層における島の形成が抑制されると考えられる。
活性カルボニル変性PVAは、酢酸ビニル、ビニルアルコール及び活性カルボニル基を有するビニルエステルをモノマーとする3元共重合体として表すことができる。
活性カルボニル基を有するビニルエステルは、分子内に含有される活性カルボニルは基活性カルボニル単位を有する官能基であればよく、分子内にケト基又はアルデヒド基に由来する活性カルボニル基を1個以上有していることが好ましい。具体的には、ポリビニルアルコールが下記のアシル基で置換されている置換基1〜3が好ましい。特に置換基2で表される1,3−ジケトン構造の活性カルボニル基を有する置換基が好ましい。
Figure 2016114806
(*は、ポリビニルアルコールの酸素と結合する部分を表す。)
活性カルボニル変性PVAの酢酸ビニルとビニルアルコールの割合はケン化度で表すことができる。
ケン化度:変性ポリビニルアルコールの酢酸エステル基AとOH基Bの割合であり以下で定義される。なお、活性カルボニルを有するエステル部分はケン化度の計算には含めない。
ケン化度%=B/(A+B)×100%
活性カルボニル変性PVAのケン化度は、好ましくは92.0〜99.9%の範囲内である。
活性カルボニル変性PVAの変性率、すなわち活性カルボニル基を有するビニルエステルの、組成比は1〜20モル%が好ましく、より好ましくは1〜10モル%の範囲内である。
本発明で用いられる水溶性樹脂は、活性カルボニル変性PVA単独でも良いし、本発明の効果を損なわない範囲内の他の水溶性樹脂を併用することができる。
活性カルボニル変性PVAは公知の方法で合成することができる。例えば、特開2002−225438号公報、特開2002−275218号公報又は特開2007−277492号公報に記載された方法で合成可能である。
(他の水溶性樹脂)
本発明で用いられる他の水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中でも、本発明において、ポリビニルアルコールが特に好ましく用いられる。以下では、ポリビニルアルコールについて説明する。
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、他の公知の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1500〜5000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
(ゼラチン)
本発明に適用可能なゼラチンとしては、従来、ハロゲン化銀写真感光材料分野で広く用いられてきた各種ゼラチンを適用することができ、例えば、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチン及びゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基を有し、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。ゼラチンの一般的製造法に関してはよく知られており、例えば、T.H.James:The Theory of Photographic Process 4th. ed. 1977(Macmillan)55項、科学写真便覧(上)72〜75項(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124頁(コロナ社)等の記載を参考にすることができる。また、リサーチ・ディスクロージャー誌第176巻、No.17643(1978年12月)のIX項に記載されているゼラチンを挙げることができる。
(ゼラチンの硬膜剤)
ゼラチンを用いる場合、必要に応じてゼラチンの硬膜剤を添加することもできる。
使用できる硬膜剤としては、通常の写真乳剤層の硬膜剤として使用されている公知の化合物を使用でき、例えば、ビニルスルホン化合物、尿素−ホルマリン縮合物、メラニン−ホルマリン縮合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、活性オレフィン類、イソシアネート系化合物などの有機硬膜剤、クロム、アルミニウム、ジルコニウムなどの無機多価金属塩類などを挙げることができる。
(セルロース類)
本発明で用いることのできるセルロース類としては、水溶性のセルロース誘導体が好ましく用いることができ、例えば、カルボキシメチルセルロース(セルロースカルボキシメチルエーテル)、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース誘導体や、カルボン酸基含有セルロース類であるカルボキシメチルセルロース(セルロースカルボキシメチルエーテル)、カルボキシエチルセルロース等を挙げることができる。その他には、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロース、セルロース硫酸エステル等のセルロース誘導体を挙げることができる。
(増粘多糖類)
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類に挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり分子内に水素結合基を多数有するもので、温度により分子間の水素結合力の違いにより、低温時の粘度と高温時の粘度差が大きな特性を備えた多糖類であり、さらに無機酸化物粒子を添加すると、低温時にその無機酸化物粒子との水素結合によると思われる粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加することにより15℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、更に好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレランなどの紅藻類に由来する天然高分子多糖類などが挙げられる。塗布液中に共存する無機酸化物粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。そのような増粘多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。本発明においては、特には、タマリンド、グアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。
本発明においては、さらには、2種類以上の増粘多糖類を併用することもできる。
上記の中でも、水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールを用いる場合、ポリビニルアルコールとともに、他の水溶性樹脂を併用してもよく、この際、併用する他の水溶性樹脂の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、0.5〜10質量%で用いることができる。
本発明に係る水溶性樹脂の重量平均分子量は、1000以上200000以下が好ましく、3000以上40000以下がより好ましい。本発明における重量平均分子量は、公知の方法によって測定することができ、例えば、静的光散乱法、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)、TOFMASSなどによって測定することができ、本発明では一般的な公知の方法であるゲルパーミエーションクロマトグラ法によって測定している。
本発明においては、上記の水溶性樹脂は、高屈折率層の固形分100質量%に対し、5.0質量%以上、かつ50質量%以下の範囲で含有させることが好ましく、10質量%以上、かつ40質量%以下の範囲で含有させることがより好ましい。ただし、水溶性樹脂と共に、例えば、エマルジョン樹脂を併用する場合には、3.0質量%以上含有すればよい。水溶性樹脂が少ないと、屈折率層を塗工した後の乾燥時に、膜面が乱れて透明性が劣化する傾向が大きくなる。一方、含有量が50質量%以下であれば、相対的な無機酸化物の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易になる。
(架橋剤)
本発明においては、バインダーである水溶性樹脂を硬化させるため、架橋剤を使用することもできる。水溶性樹脂とともに用いることのできる架橋剤としては、当該水溶性樹脂と硬化反応を起こすものであれば特に制限はない。例えば、水溶性樹脂として、ポリビニルアルコールを用いる場合では、架橋剤として、ホウ酸及びその塩が好ましい。ホウ酸及びその塩以外にも公知のものが使用でき、一般的には、ポリビニルアルコールと反応し得る基を有する化合物あるいはポリビニルアルコールが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、適宜選択して用いられる。架橋剤の具体例としては、例えば、エポキシ系架橋剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系架橋剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール、グリオキシル酸塩等)、活性ハロゲン系架橋剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、ジヒドラジド系架橋剤(アジピン酸ジヒドラジド(ADH)等)、アルミニウムミョウバン、ホウ砂等が挙げられる。
ホウ酸又はその塩とは、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸及び八ホウ酸及びそれらの塩が挙げられる。
架橋剤としてのホウ素原子を有するホウ酸及びその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
ホウ酸とホウ砂との水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することができないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることができ、塗布液を濃縮化することができる。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。
本発明では、ホウ酸及びその塩並びにホウ砂の少なくとも一方を用いることが本発明の効果を得るためには好ましい。ホウ酸及びその塩並びにホウ砂の少なくとも一方を用いた場合には、無機酸化物粒子と水溶性樹脂であるポリビニルアルコールのOH基と水素結合ネットワークがより形成しやすく、その結果として高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制され、好ましい近赤外線反射特性が達成されると考えられる。特に、高屈折率層と低屈折率層の多層重層をコーターで塗布後、一旦塗膜の膜面温度を15℃程度に冷やした後、膜面を乾燥させるセット系塗布プロセスを用いた場合には、より好ましく効果を発現することができる。
より好ましくは架橋剤としてアルデヒド系架橋又はジヒドラジド系架橋剤等の有機架橋剤を用いることである。このような有機架橋剤を用いることにより、ヘイズの経時劣化を防止する利点がある。ホウ酸及びその塩並びにホウ砂の少なくとも一方と有機架橋剤を用いることも好ましい。
高屈折率層における架橋剤の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、1〜10質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることがより好ましい。
特に、水溶性樹脂としてポリビニルアルコールを使用する場合の上記架橋剤の総使用量は、ポリビニルアルコール1g当たり1〜600mgが好ましく、ポリビニルアルコール1g当たり100〜600mgがより好ましい。
「界面活性剤」
本発明に係る高屈折率層及び低屈折率層には、塗布性の観点から界面活性剤を含有することが好ましい。
塗布時の表面張力調整のため用いられる界面活性剤としてアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができるが、アニオン系界面活性剤がより好ましい。好ましい化合物としては、1分子中に炭素数8〜30の疎水性基とスルホン酸基又はその塩を含有するものが挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカン又はオレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル又はアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、エーテルカルボキシレート、アルキルスルホコハク酸エステル塩、α−スルホ脂肪酸エステル及び脂肪酸塩よりなる群から選ばれる界面活性剤や、高級脂肪酸とアミノ酸との縮合物、ナフテン酸塩等を用いることができる。好ましく用いられるアニオン性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩(とりわけ直鎖アルキルのもの)、アルカン又はオレフィンスルホン酸塩(とりわけ第2級アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩)、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル又はアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩(とりわけポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩)、アルキルリン酸塩(とりわけモノアルキルタイプ)、エーテルカルボキシレート、アルキルスルホコハク酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル及び脂肪酸塩よりなる群から選ばれる界面活性剤であり、特に好ましくは、アルキルスルホコハク酸塩である。
高屈折率層における界面活性剤の含有量は、高屈折率層の塗布液の全質量を100質量%として、0.001〜0.03質量%であることが好ましく、0.005〜0.015質量%であることがより好ましい。
(添加剤)
本発明に係る高屈折率層及び低屈折率層には、必要に応じて各種の添加剤を用いることができる。また、高屈折率層における添加剤の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、0〜20質量%であることが好ましい。当該添加剤の例を以下に記載する。
(等電点が6.5以下のアミノ酸)
本発明に係る高屈折率層又は低屈折率層は、25℃における等電点が6.5以下のアミノ酸を含有していてもよい。アミノ酸を含むことにより、高屈折率層又は低屈折率層中の無機酸化物粒子の分散性が向上しうる。
ここでアミノ酸とは、同一分子内にアミノ基とカルボキシ基とを有する化合物であり、α−、β−、γ−などいずれのタイプのアミノ酸でもよい。アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、いずれの異性体も単独で又はラセミ体でも使用することができる。
アミノ酸の詳しい解説は、化学大辞典1縮刷版(共立出版;昭和35年発行)268〜270頁の記載を参照することができる。
具体的に好ましいアミノ酸として、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、セリン、等を挙げることができ、特にグリシン、セリンが好ましい。
アミノ酸の等電点とは、アミノ酸は特定のpHにおいて分子内の正・負電荷が釣り合い、全体としての電荷が0となるので、このpH値をいう。各アミノ酸の等電点については、低イオン強度での等電点電気泳動で求めることができる。
(エマルジョン樹脂)
本発明に係る高屈折率層又は低屈折率層は、エマルジョン樹脂をさらに含有していてもよい。エマルジョン樹脂を含むことにより、膜の柔軟性が高くなりガラスへの貼りつけ等の加工性がよくなる。
エマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な、例えば、平均粒径が0.01〜2.0μm程度の樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、ヒドロキシ基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られない。エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。ヒドロキシ基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な粒子の少なくとも表面にヒドロキシ基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
ヒドロキシ基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖又は末端にヒドロキシ基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシ基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものがより好ましい。
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体又は共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
その他にも、本発明に係る高屈折率層又は低屈折率層には、例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオン又はノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
以上のように、本発明は、含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子を高屈折率層に含有させることにより、含ケイ素の水和酸化物と水溶性樹脂との相互作用が働き高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制され、また、酸化チタン粒子の光触媒活性によるバインダーの劣化やチョーキングなどの問題を防ぐことができる。したがって、本発明の近赤外線反射フィルムは、耐久性や膜柔軟性に優れ、可視光透過率が高く、近赤外線反射性に優れたものとなる
<基材>
本発明に係る近赤外線反射フィルムの支持体である基材の厚さは、5〜200μmであることが好ましく、より好ましくは15〜150μmの範囲内のである。また、本発明に係る基材は、2枚を重ねたものであっても良く、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。
本発明の近赤外線反射フィルムに適用する基材としては、透明であれば特に制限されることはなく、種々の樹脂フィルムを用いることができ、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、及びこれらのポリエステルの2種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
また、基材は、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。基材が上記透過率以上であることにより、近赤外線反射フィルムとしたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率を50%以上にするという点で有利であり、好ましい。
また、上記樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、又は基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
また、基材は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、又はテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われることが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%で処理されることである。弛緩処理された基材は、下記のオフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、さらに、寸法安定性が良好になる。
基材は、製膜過程で片面又は両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明においては、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
≪近赤外線反射フィルムの製造方法≫
本発明の近赤外線反射フィルムの製造方法について特に制限はなく、基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも一つ形成することができるのであれば、いかなる方法でも用いられうる。
本発明の近赤外線反射フィルムの製造方法では、基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを積層して形成されるが、具体的には高屈折率層と低屈折率層とを同時重層塗布を行い、乾燥して高屈折率層と低屈折率層とからなる積層体を形成することが好ましい。より詳細には、基材上に、高屈折率層塗布液と、低屈折率層塗布液とを同時重層塗布し、乾燥して、高屈折率層、及び低屈折率層を含む近赤外線反射フィルムを形成する方法が好ましい。
塗布方式としては、例えば、カーテン塗布方法、米国特許第2761419号、同第2761791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
高屈折率層塗布液及び低屈折率層塗布液を調製するための溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、又はその混合溶媒が好ましい。また、有機溶媒の飛散による環境面を考慮すると、水、又は水と少量の有機溶媒との混合溶媒がより好ましく、水が特に好ましい。
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、特に水、又は水とメタノール、エタノール、若しくは酢酸エチルとの混合溶媒が好ましく、水がより好ましい。
水と少量の有機溶媒との混合溶媒を用いる際、当該混合溶媒中の水の含有量は、混合溶媒全体を100質量%として、80〜99.9質量%であることが好ましく、90〜99.5質量%の範囲内であることがより好ましい。ここで、80質量%以上にすることで、溶媒の揮発による体積変動が低減でき、ハンドリングが向上し、また、99.9質量%以下にすることで、液添加時の均質性が増し、安定した液物性を得ることができるからである。
高屈折率層塗布液中の水溶性樹脂の濃度は、1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。また、高屈折率層塗布液中の第1の無機酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
低屈折率層塗布液中の水溶性樹脂の濃度は、1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。また、低屈折率層塗布液中の第2の無機酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
高屈折率層塗布液及び低屈折率層塗布液の調製方法は、特に制限されず、例えば、無機酸化物粒子、水溶性樹脂、及び必要に応じて添加されるその他の添加剤を添加し、撹拌混合する方法が挙げられる。この際、各成分の添加順も特に制限されず、撹拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、撹拌しながら一度に添加し混合してもよい。必要に応じて、さらに溶媒を用いて、適当な粘度に調製される。
本発明においては、第1の無機酸化物粒子を添加、分散して調製した水系の高屈折率層塗布液を用いて、高屈折率層を形成することが好ましい。このとき、本発明の第1の無機酸化物粒子としては、25℃でのpHが5.0〜7.5の範囲内で、かつ粒子のゼータ電位が負であるゾルとして、高屈折率層塗布液に添加して調製することが好ましい。
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液及び低屈折率層塗布液の温度は、スライドビード塗布方式を用いる場合は、25〜60℃の温度範囲が好ましく、30〜45℃の温度範囲がより好ましい。また、カーテン塗布方式を用いる場合は、25〜60℃の温度範囲が好ましく、30〜45℃の温度範囲がより好ましい。
同時重層塗布を行う際の高屈折率層塗布液及び低屈折率層塗布液の粘度は、特に制限されない。しかしながら、スライドビード塗布方式を用いる場合には、上記の塗布液の好ましい温度の範囲において、5〜100mPa・sの範囲であることが好ましく、10〜50mPa・sの範囲であることがより好ましい。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、上記の塗布液の好ましい温度の範囲において、5〜1200mPa・sの範囲であることが好ましく、25〜500mPa・sの範囲であることがより好ましい。このような粘度の範囲であれば、効率よく同時重層塗布を行うことができる。
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3000〜30000mPa・sであり、最も好ましいのは10000〜30000mPa・sの範囲内である。
塗布及び乾燥方法としては、高屈折率層塗布液及び低屈折率層塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
本発明の近赤外線反射フィルムは、基材の下又は基材と反対側の最表面層の上に、さらなる機能の付加を目的として、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層(接着層)、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、ハードコート層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、近赤外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、粘着層、接着層、本発明の高屈折率層及び低屈折率層以外の近赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)、合わせガラスに利用される中間膜層などの機能層の一つ以上を有していてもよい。
本発明において用いられる近赤外線反射フィルムは、上述の各種の機能層を有する際の積層順としては、特に制限されない。
例えば、窓ガラスの室内側に本発明の近赤外線反射フィルムを貼る(内貼り)仕様では、基材表面に、光学干渉膜、粘着層の順に積層し、さらにこれらの層が積層されている側とは逆の側の基材表面にハードコート層を塗設する形態が好ましい一例として挙げられる。また、粘着層、基材、光学干渉膜、ハードコート層の順であってもよく、さらに他の機能層、基材、又は近赤外線吸収剤などを有していてもよい。また、窓ガラスの室外側に本発明の近赤外線反射フィルムを貼る(外貼り)仕様でも好ましい一例を挙げると、基材表面に光学干渉膜、粘着層の順に積層し、さらにこれらの層が積層されている側とは逆の側の基材表面にハードコート層が塗設する構成である。内貼りの場合と同様に、粘着層、基材、光学干渉膜、ハードコート層の順であってもよく、さらに他の機能層基材、又は近赤外線吸収剤などを有していてもよい。
≪用途≫
本発明の光学フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備(基体)に貼り合わせ、近赤外線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。特に、本発明に係る近赤外線反射フィルムが直接又は接着剤を介してガラス又はガラス代替の樹脂などの基体に貼合されている部材に好適である。
前記基体の具体的な例としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、金属板、セラミック等が挙げられる。樹脂の種類は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂のいずれでも良く、これらを2種以上組み合わせて用いても良い。本発明で使用されうる基体は、押出成形、カレンダー成形、射出成形、中空成形、圧縮成形等、公知の方法で製造することができる。基体の厚さは特に制限されないが、通常0.1mm〜5cmである。
近赤外線反射フィルムと基体とを貼り合わせる接着層又は粘着層は、近赤外線反射フィルムを日光(熱線)入射面側に設置することが好ましい。また、本発明に係る近赤外線反射フィルムを、窓ガラスと基体との間に挟持すると、水分等の周囲のガスから封止でき耐久性に優れるため好ましい。本発明に係る近赤外線反射フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
近赤外線反射フィルムと基体とを貼り合わせる接着剤としては、光硬化性若しくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製:デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
近赤外線反射フィルムの断熱性能、日射熱遮へい性能は、一般的にJIS R3209−1998(複層ガラス)、JIS R 3106−1998(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)、JIS R3107−1998(板ガラス類の熱抵抗及び建築における熱貫流率の算定方法)に準拠した方法により求めることができる。
日射透過率、日射反射率、放射率、可視光透過率の測定は、(1)波長(300〜2500nm)の分光測光器を用い、各種単板ガラスの分光透過率、分光反射率を測定する。また、波長5.5〜50μmの分光測定器を用いて放射率を測定する。なお、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、熱線吸収板ガラスの放射率は既定値を用いる。(2)日射透過率、日射反射率、日射吸収率、修正放射率の算出は、JIS R3106−1998に従い、日射透過率、日射反射率、日射吸収率、垂直放射率を算出する。修正放射率に関しては、JIS R3107−1998に示されている係数を、垂直放射率に乗ずることにより求める。
断熱性、日射熱遮へい性の算出は、(1)厚さの測定値、修正放射率を用いJIS R3209−1998に従って複層ガラスの熱抵抗を算出する。ただし中空層が2mmを超える場合はJIS R3107−1998に従って中空層の気体熱コンダクタンスを求める。(2)断熱性は、複層ガラスの熱抵抗に熱伝達抵抗を加えて熱貫流抵抗で求める。(3)日射熱遮へい性はJIS R3106−1998により日射熱取得率を求め、1から差し引いて算出する。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
《活性カルボニル変性PVAの合成》
(活性カルボニル変性PVA−1の合成)
温度調節器付きリボンブレンダーに、酢酸ソーダを0.5%含有するPVA粉末(ケン化90%、重合度2400、平均粒子径400μm:日本酢ビ・ポバール社製)100質量部仕込み、PVA粉末が80℃になるようにジャケット設定温度を90℃にし、35rpmで撹拌した。PVA粉末が80℃になった後、撹拌しながら、イオン交換水2質量部(PVA粉末に対して2質量%)と酢酸30質量部(PVA粉末に対して30質量%)の混合液体を2時間かけて添加した。添加終了後、同条件のまま1時間撹拌を行った。
PVA粉末が60℃になるようにジャケット設定温度を40℃にし、PVA粉末が60℃になった後、ジケテン19.3質量部(PVAに対して19.3質量%)を4時間30分間にわたって噴霧添加した。ジケテン添加終了後、PVA粉末の温度が60℃のまま30分間撹拌を行った。
反応終了後、メタノールを300質量部添加し、残留ジケテンを分解した。その後、固液分離の後、PVAをメタノールにより抽剤比3(倍)で洗浄を2回行い、60℃に設定した乾燥器により乾燥し、アセトアセチル化度が4.2モル%である、アセトアセチル化PVA樹脂(活性カルボニル変性PVA−1)を得た。
(活性カルボニル変性PVA2〜4の合成)
上記使用のPVAのケン化度を、90%から、それぞれ95モル%、98%及び99%に変化させてケン化度の異なるアセトアセチル化PVA(活性カルボニル変性PVA−2〜4)を得た。表3では活性カルボニル変性PVA−1〜4を活PVA−1〜4と略記した。
(異なるケン化度のPVA)
ここでPVAのケン化度はポリ酢酸ビニルのケン化度を意味し、以下のものを用いた。
PVA−1:ケン化度86%のPVA(日本酢ビ・ポバール社製)
PVA−2:ケン化度94%のPVA(日本酢ビ・ポバール社製)
PVA−3:ケン化度99%のPVA(日本酢ビ・ポバール社製)
《光学フィルムの作製》
(低屈折率層用塗布液L1の調製)
光学フィルム1の低屈折率層に用いる低屈折率層用塗布液L1を以下のように調製した。
40℃に加熱した100質量部の10質量%コロイダルシリカ水溶液(スノーテックスOXS、日産化学工業株式会社製)に、30質量部の3質量%ホウ酸水溶液を撹拌しながら添加した。次いで、450質量部の5質量%のPVA−3水溶液及び375質量部の純水を撹拌しながら添加した。その後、1質量部の界面活性剤5質量%水溶液(ソフタゾリンLSB−R、川研ファインケミカル株式会社製)を撹拌しながら添加し、低屈折率層用塗布液L1を調製した。表1に低屈折率層用塗布液L1の構成を示した。
Figure 2016114806
(高屈折率層用塗布液H1の調製)
光学フィルム1の高屈折率層に用いる高屈折率層用塗布液H1を以下のように調製した。
50質量部の下記20質量%シリカ変性酸化チタン分散液を40℃に加熱し、10質量部の2質量%クエン酸水溶液を撹拌しながら添加した。その後、90質量部の4質量%の活性カルボニル変性PVA−1水溶液及び40質量部の純水を撹拌しながら添加した。最後に、1質量部の5質量%界面活性剤水溶液(ソフタゾリンLSB−R、川研ファインケミカル株式会社製)を撹拌しながら添加し、高屈折率層用塗布液H1を調製した。
(シリカ変性酸化チタン粒子の分散液の調製)
10質量部の15.0質量%二酸化チタンゾル(SRD−W、体積平均粒径:5nm、ルチル型二酸化チタン粒子、堺化学工業株式会社製)に40質量部の純水を加えた後、90℃に加熱した。次いで、26質量部のケイ酸水溶液(ケイ酸ソーダ4号(日本化学工業株式会社製)をSiO濃度が4質量%となるように純水で希釈したもの)を徐々に添加した後、オートクレーブ中に175℃にて18時間加熱処理を行い、冷却後、限外濾過膜にて濃縮することにより、固形分濃度が20質量%のSiOを表面に付着させた二酸化チタン粒子の分散液(以下では、「シリカ変性酸化チタン分散液」とも称する。)を得た。
表2に低屈折率層用塗布液H1の構成を示した。
Figure 2016114806
《光学フィルム1の作製》
20層重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用いて、上記で調製した低屈折率層用塗布液L1及び高屈折率層用塗布液H1を40℃に保温しながら、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(A4300、両面易接着層付、東洋紡績株式会社製)の上に、20層の同時多層塗布を行った。
この際、最下層及び最表層は低屈折率層とし、それ以外はそれぞれ交互に積層されるように設定した。また、塗布量については、乾燥時の膜厚が低屈折率層は各層150nm、高屈折率層は各層130nmになるように調節した。
塗布直後、5℃の冷風を吹き付けてセットした。セット完了後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、光学フィルム1を作製した。
《光学フィルム2〜15の作製》
(低屈折率層用塗布液の調製)
低屈折率層用塗布液L1の調製において、水溶性樹脂、無機酸化物粒子、添加剤を表3に示したように、変えて光学フィルム2〜15用の低屈折率層用塗布液を調製した。表3において「−」は添加しなかったことを表す。
(ゼラチン)
光学フィルム15の低屈折率層用塗布液にはPVA−3の代わりに同一質量部で同一質量%のゼラチン(数量平均分子量200000)を用いた。
(グリオキシル酸ナトリウム)
光学フィルム11の低屈折率層用塗布液には、水溶性樹脂の変更に加えて、14質量部の5質量%グリオキシル酸ナトリウムを、有機架橋剤として加えた。
(高屈折率層用塗布液の調製)
高屈折率層用塗布液H1の調製において、水溶性樹脂、無機酸化物粒子、添加剤を表3に示したように、変えて光学フィルム2〜15用の高屈折率層用塗布液を調製した。表3において「−」は添加しなかったことを表す。
(酸化ジルコニウム粒子の分散液の調製)
光学フィルム12〜15の高屈折率層用塗布液には、水溶性樹脂の変更に加えて、シリカ変性酸化チタン分散液の代わりに酸化ジルコニウム粒子を用いた。酸化ジルコニウム粒子は、日産化学工業株式会社製、ナノユースZR、ZR30BFN使用して、シリカ変性酸化チタンと固形分が同じになるように高屈折率層用塗布液を調製した。
(ADH)
光学フィルム5の高屈折率層用塗布液には、水溶性樹脂の変更に加えて、2質量部の5質量%アジピン酸ジヒドラジド(ADH:日本化成株式会社製)を、有機架橋剤として加えた。
(グリオキシル酸ナトリウム)
光学フィルム6及び10の高屈折率層用塗布液並びに光学フィルム11の低屈折率層用塗布液には、水溶性樹脂の変更に加えて、2質量部の5質量%グリオキシル酸ナトリウムを、有機架橋剤として加えた。
(リン酸)
光学フィルム7〜11については、光学フィルムを構成する高屈折率層と低屈折率層の固形分に対し、表3に示したリン酸濃度となるように、高屈折率層用塗布液の調製に際しリン酸を加えた。リン酸は、拡散性が高く、高屈折率層、低屈折率層及び混在層に均一に存在し、混在層に存在するリン酸量は初期投入量で決定する。
(低屈折率層と高屈折率層の積層)
光学フィルム1の作製と同様にして、20層重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用いて、上記で調製した低屈折率層用塗布液及び高屈折率層用塗布液を用いて低屈折率層と高屈折率層を積層、乾燥して光学フィルム2〜15を作製した。
《光学フィルム1〜15の評価》
光学フィルム1〜15について、混在層中の直径80nm以上の島の数、へイズ及び高温高湿下でのヘイズの変動を評価した。
(混在層中の直径80nm以上の島の数)
スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、積層膜の無機酸化物濃度プロファイルを求めた。最表面を0nmとして、0.5nm/minの速度でスパッタし、原子組成比を測定した。XPS表面分析装置として、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。
混在層は、以下のようにして特定した。
1.無機酸化物粒子が高屈折率層又は低屈折率層のいずれかにしか入っていない場合:
積層体において、無機酸化物粒子の濃度が、無機酸化物添加層における無機酸化物粒子の最大濃度に対して10〜90%の範囲となる領域。
2.無機酸化物粒子が高屈折率層かつ低屈折率層の両方に入っている場合:
積層体において、主たる無機酸化物粒子が90%以下であり、主たる無機酸化物粒子層以外から移動した異種粒子が10%以上含有する領域。
島の数は、断層SEM観察おいて、異種粒子含有成分が異種粒子成分を主とする相と接触せず独立している直径が80nm以上ものを数えた。直径はSEM観察において円換算直径を用いた。
測定の範囲は、混在層を測定し、XY=5μm
(Y:総層厚、X:断層SEM観察における総層厚に直交する長さ)となる範囲で測定した。
(へイズ)
ヘイズの測定は、JIS K 7136に準じて行った。具体的には、23℃55%RHにて各光学フィルムの試料15cm×5cm(75cm)を日本電色工業社製 NDH−7000で、5か所測定した平均値をヘイズ値とした。
(高温高湿下でのヘイズの変動)
各光学フィルムに対して、30℃80%の恒温槽に60日処理し、処理前後のヘイズ値を測定し、その差をΔヘイズとし、高温高湿下でのヘイズの変動の尺度とした。
Δヘイズ=|処理前のヘイズ値−処理後のヘイズ値|
表3には、以下の評価基準で示した。
×:0.5<Δヘイズ
△:0.3<Δヘイズ≦0.5
○:0.1<Δヘイズ≦0.3
◎:Δヘイズ≦0.1
以上の結果を表3に示す。
Figure 2016114806
表3から、本発明の光学フィルム1〜13は比較例の光学フィルム14及び15に比べ、混在層中の島の数が少なく、ヘイズが低く及び高温高湿下でのヘイズの変動が小さいことが分かる。
1 光学フィルム
2 基材
3 低屈折率層
4 高屈折率層
5 積層体
6 混合層
L 光線入射側

Claims (4)

  1. 基材上に、少なくとも高屈折率層、低屈折率層及び混在層からなる積層体を有する光学フィルムであって、
    前記高屈折率層と前記低屈折率層との屈折率の差が0.1以上であり、
    前記高屈折率層又は前記低屈折率層の少なくとも1層に、活性カルボニル変性ポリビニルアルコールと無機酸化物粒子とを含有し、
    前記混在層が海島構造を有しており、かつ
    当該海島構造を構成する島のうち、直径80nm以上の島の数が、5個/5μm以下であることを特徴とする光学フィルム。
  2. 前記活性カルボニル変性ポリビニルアルコールのケン化度が、92.0〜99.9%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 前記高屈折率層又は前記低屈折率層の少なくとも1層に、有機架橋剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学フィルム。
  4. 前記高屈折率層に酸化チタン粒子を含有し、前記混在層に0.01〜0.001質量%のリン酸を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
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