JP6146410B2 - 赤外遮蔽フィルムおよび赤外遮蔽体 - Google Patents

赤外遮蔽フィルムおよび赤外遮蔽体 Download PDF

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Description

本発明は、赤外遮蔽フィルムおよび赤外遮蔽体に関する。
近年、省エネルギー対策への関心が高まり、建物や車両の窓ガラスから、太陽光のうち、熱線の透過を遮断する赤外遮蔽フィルム(赤外光反射フィルム)の開発が盛んに行われる様になってきている。これにより、冷房設備にかかる負荷を減らすことが出来、省エネルギー対策として有効であるためである。
従来、赤外遮蔽フィルムとして、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた積層膜を蒸着法、スパッタ、などのドライ製膜法で作製する提案がされている。また、交互に積層させた積層膜の光学膜厚を調整することで、赤外光に代えて可視光を反射するように設計できることも知られている。
しかし、ドライ製膜法は製造コストが高く、大面積化が困難であり、耐熱性素材に限定される等の課題がある。
そこで塗布法で作製する方法として、熱硬化樹脂を用いる方法(特許文献1)やUV硬化樹脂を用いる方法(特許文献2)が開示されている。これらの方法は製造コストや大面積化などの点で有利であるが、どちらも大量に有機溶媒を用いる方法であり、環境保全上好ましくない。
赤外遮蔽フィルムの製造において、水溶性ポリマーを用いた水系塗布液を用いる公知例はほとんど知られていない。強いてあげるならば、特許文献3の実施例には、低屈折率層の形成において水溶液を用いてスピンコートしたとの記載がある。しかし、当該水溶液は無機酸化物粒子(特に金属酸化物粒子)を添加したものではない。また、高屈折率層は、TiO2と分散剤とUV硬化樹脂とを含む有機溶媒(PGMEA;Propylene Glycol Monomethyl Ether Acetate)溶液をスピンコートして形成されており、水系塗布液を用いて形成されたものではない。また、特許文献4の実施例では、ZnO2とポリビニルピロリドンとを含む水およびエタノール(20:80)混合溶媒をスピンコートして高屈折率層を形成したとの記述がある。ポリビニルピロリドンは水溶性ポリマーであるが、溶媒として水およびエタノール(20:80)混合溶媒を用いており、水系塗布液とは言い難い。
ところで、一般に基材上に2層以上の積層膜を塗布で作製する方法としては、1層ずつ塗布・乾燥して積層する逐次塗布と、同時に複数の層を塗布する同時重層塗布がある。逐次塗布としては、スピンコート法、バーコート法、ブレード塗布、グラビア塗布などがあるが、赤外遮蔽フィルムのような多層膜を作製する場合には塗布・乾燥回数が多くなるため生産性が低い。一方、同時重層塗布としてはカーテン塗布やスライドビード塗布などを用いた方法があり、同時に複数の層が形成できるため生産性が高い。
特開平8−110401号公報 特開2004−125822号公報 特開2009−86659号公報 特表平09−500974号公報
しかしながら、水系塗布法にて作製しようとすると、乾燥時に塗布ムラ(干渉ムラ)が発生し、同時多層重層塗布の場合には層数が増えると更にひどくなる傾向があった。
そこで本発明は、塗布ムラが低減され、膜厚均一性が高い赤外遮蔽性に優れた赤外遮蔽フィルムおよびその赤外遮蔽フィルムを設けた赤外遮蔽体、並びにその赤外遮蔽フィルムを構成する低屈折率層用ないし高屈折率層形成用塗布液を提供することを目的とする。
そこで、本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、低屈折率層および高屈折率層の少なくとも一方の層に、両性界面活性剤を含むことにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.基材上に、屈折率の異なる低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された積層体を少なくとも1つ以上有し、
前記低屈折率層および前記高屈折率層の少なくとも一層が、金属酸化物粒子と、水溶性樹脂と、両性界面活性剤と、を含み、
前記両性界面活性剤が、下記B−1〜B−21(B−21で表される化合物は花王製アンヒトール20HD)で表される化合物よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種であることを特徴とする赤外遮蔽フィルム。
2.前記両性界面活性剤が、少なくとも前記低屈折率層に含有していることを特徴とする、上記1記載の赤外遮蔽フィルム。
3.前記両性界面活性剤が、スルホン酸系であることを特徴とする、上記1または2記載の赤外遮蔽フィルム。
4.前記両性界面活性剤が、前記低屈折率層および前記高屈折率層の全層に含有していることを特徴とする、上記1〜3のいずれかに記載の赤外遮蔽フィルム。
5.前記低屈折率層及び高屈折率層の少なくとも一層に、ノニオン系およびアニオン系界面活性剤よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種を含有することを特徴とする、上記1〜4のいずれかに記載の赤外遮蔽フィルム。
6.前記両性界面活性剤にフッ素が含まれていないことを特徴とする、上記1〜5のいずれか記載の赤外遮蔽フィルム。
7.上記1〜6のいずれかに記載の赤外遮蔽フィルムを構成する低屈折率層ないし高屈折率層を形成するための水系塗布液であって、
金属酸化物粒子と、水溶性樹脂と、両性界面活性剤と、水系溶媒とを含み、
両性界面活性剤の添加量が、水系塗布液全量に対して0.001〜0.05質量%の範囲であることを特徴とする、水系塗布液。
8.上記1〜6のいずれかに記載の赤外遮蔽フィルムを、基体の少なくとも一方の面に設けてなる赤外遮蔽体。
本発明の一実施形態に用いられる赤外遮蔽フィルムの一般的な構成を示す概略断面図である。 本発明の他の一実施形態に用いられる赤外遮蔽フィルムの一般的な構成を示す概略断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に、屈折率の異なる低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された積層体を少なくとも1つ以上有する赤外遮蔽フィルムにおいて、前記低屈折率層および前記高屈折率層の少なくとも一方の層が、両性界面活性剤を含むことにより、塗布ムラが少なく、膜面均一性に優れた赤外遮蔽性に優れた赤外遮蔽フィルムを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
上述した本発明の構成による作用効果の発揮のメカニズムは以下のように推測される。なお、本発明は、下記推論によって何ら制限されるものではない。
本発明では、低屈折率層および高屈折率層のうち少なくとも一方の層において、両性界面活性剤を用いることで金属酸化物粒子に界面活性剤が吸着し、表面張力を下げ同時重層の場合には組成が異なる隣接層と混合しにくくなり、塗布ムラが改善されたと考えている。ただし両性界面活性剤がフッ素系であると、表面に配向してしまい後加工として反射層(低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された積層体;図1、2の符号13の積層ユニット)の表面に積層する場合に塗布がしにくくなるという問題点があることがわかり、また、低屈折率層に両性界面活性剤を入れることで、低屈折率層形成用の塗布液の粘度調整がしやすく、低屈折率層を最下層(基材との接着面)及び最上層(ハードコート層等の接触面)に用いた場合に、基材との密着性、最上層の吹かれ耐性や最上層へのハードコート層等の塗布性や密着性に優れることがわかり、全層に両性界面活性剤を入れることで、更に塗布ムラが良好になることがわかった。
更に、両性界面活性剤の中でもスルホン酸系であると低屈折率層及び/又は高屈折率層と混合性が良くなり、膜厚均一性(ヘイズ)が良くなることがわかった。
また、両性界面活性剤と共にノニオン系およびアニオン系界面活性剤の少なくとも1種を併用することで、塗布ムラ以外の塗布性(筋等)が良くなり、膜厚均一性(ヘイズ)もさらに良くなることが判明した。
以上のことから、本発明によれば、塗布ムラが低減され、膜厚均一性が高い赤外遮蔽性に優れた赤外遮蔽フィルムおよびその赤外遮蔽フィルムを設けた赤外遮蔽体、並びにその赤外遮蔽フィルムを構成する低屈折率層用ないし高屈折率層形成用塗布液が提供される。
[赤外遮蔽フィルム]
本形態の赤外遮蔽フィルムは、基材と、少なくとも1つの低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された積層体と、を含み、前記低屈折率層および前記高屈折率層の少なくとも一方の層が、両性界面活性剤を含むことを特徴とする。また、本発明の赤外遮蔽フィルムは、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された交互積層体の形態を有するのが好ましい。なお、本明細書中、他方に対して屈折率の高い屈折率層を高屈折率層と、他方に対して屈折率の低い屈折率層を低屈折率層と称する。本明細書において、「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、隣接した2層の屈折率差を比較した場合に、屈折率が高い方の屈折率層を高屈折率層とし、低い方の屈折率層を低屈折率層とすることを意味する。したがって、「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、赤外遮蔽フィルム(光学反射フィルム)を構成する各屈折率層において、隣接する2つの屈折率層に着目した場合に、各屈折率層が同じ屈折率を有する形態以外のあらゆる形態を含むものである。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の一実施形態に用いられる赤外遮蔽フィルムの一般的な構成を示す概略断面図である。
図1に示すように、本実施形態の赤外遮蔽フィルム1は、基材11と、基材11両面に形成された下引層12と、基材11両面の下引層12上に形成された積層ユニット13とを有する。基材11両面に形成された各積層ユニット13は、低屈折率層14と、高屈折率層15とが交互に積層された積層体を少なくとも1つ以上有してなるように構成されている。具体的には、図1に示す本実施形態では、積層体数が4.5個からなる構成であって、基材側の最下層と最上層に低屈折率層14が配置されるように、5層の低屈折率層14と、4層の高屈折率層15とを交互に積層した9層重層品(積層ユニット13)が、基板11の両面にそれぞれ形成された構成となっている(実施例1〜11参照)。本実施形態では、基材11の片面(例えば、太陽光Lが差し込む側とは反対側の屋内側の面)の9層重層品(積層ユニット13)の最上層の低屈折率層14上に透明なハードコート層(HC層)16が形成されており、基材11のもう一方の面(例えば、自動車窓などの基体18に貼りつけられる面)の9層重層品(積層ユニット13)の最上層の低屈折率層14上に透明接着層17が形成されている。この場合には、自動車窓や建物のガラス窓などの基体18の屋内(車内または室内)側に赤外遮蔽フィルム1を貼りつければよい(図1では基体18に赤外遮蔽フィルム1を貼りつけ後の様子を表している)。また、本実施形態では、基材11両面上に下引層12を形成した例を示したが、下引層12を形成することなく、基材11上に直接、積層ユニット13を形成してもよい。また、使用形態によっては、ハードコート層(HC層)16や透明接着層17は必ずしも必要ではなく、これらの層を設けない構成とすることもできる。また、透明接着層17は、ハードコート層(HC層)16上に形成するようにしてもよい。また、接着剤層17の上には、剥離層(図示せず)を設けておき、基体18に貼りつける際に、この剥離層を剥がすようにしてもよい。同様に、ハードコート層(HC層)16の上にも、剥離層(図示せず)を設けておき、基体18に貼りつけた後に、この剥離層を剥がすようにしてもよい。また、ハードコート層(HC層)16や透明接着層17に代えて、他の層(例えば、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、粘着層、接着層、本発明の高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)、合わせガラスに利用される中間膜層などの機能層の1つ以上)を単独もしくは適当に組み合わせて用いてもよい。
低屈折率層14は、低屈折率層形成用の水系塗布液から形成され、第1の金属酸化物粒子(例えば、コロイダルシリカ粒子等)と、水溶性樹脂(バインダー樹脂;例えば、重合度1000以上のポリビニルアルコール樹脂)と、水系溶媒とを含んで構成される。高屈折率層15は、高屈折率層形成用の水系塗布液から形成され、第2の金属酸化物粒子(例えば、酸化チタン粒子等)と、水溶性樹脂(バインダー樹脂;例えば、重合度1000以上のポリビニルアルコール樹脂)と、水系溶媒とを含んで構成される。本実施形態では、これらの低屈折率層14と高屈折率層15からなる積層ユニット13の少なくとも1層を形成する塗布液には、両性界面活性剤が含まれてなることを特徴とする。好ましくは両性界面活性剤が、少なくとも低屈折率層14に含有しているのが望ましく、より好ましくは両性界面活性剤が、低屈折率層14および高屈折率層15の全層(積層ユニット13の全層)に含有しているのが望ましい。本実施形態において、第1の金属酸化物粒子(例えば、コロイダルシリカ粒子など)は低屈折率材料として機能し、第2の金属酸化物粒子(例えば、酸化チタン粒子など)は高屈折率材料として機能する。
そして、低屈折率層形成用の水系塗布液Aと高屈折率層形成用の水系塗布液Bとを塗布し乾燥することにより、低屈折率材料としての第1の金属酸化物粒子と、水溶性樹脂(バインダー樹脂)と、更に好ましくは両性界面活性剤と、を含む水系塗布液Aから低屈折率層14が、高屈折率材料としての第2の金属酸化物粒子と、水溶性樹脂(バインダー樹脂)と、更に好ましくは両性界面活性剤と、を含む塗布液Bから高屈折率層15が形成される。かかる塗布液Aと塗布液Bの塗布、乾燥を繰り返すことで、積層ユニット13(9層重層品)を形成することができる。あるいは、基材11の片面に、塗布液Aおよび塗布液Bを同時重層塗布し、乾燥して、積層ユニット13(9層重層品)を形成し、基材11のもう一方の面にも、同様に塗布液Aおよび塗布液Bを同時重層塗布し、乾燥して、積層ユニット13(9層重層品)を形成してもよい。
図2は、本発明の他の一実施形態に用いられる赤外遮蔽フィルムの一般的な構成を示す概略断面図である。図2に示すように、本実施形態の赤外遮蔽フィルム1’は、基材11と、基材11上に形成された下引層12と、下引層12上に形成された積層ユニット13を有する。積層ユニット13は、低屈折率層14と、高屈折率層15とが交互に積層された積層体が少なくとも1つ以上有してなるように構成されている。具体的には、図2に示す本実施形態では、積層体数4.5個が2組からなる構成であって、基材側の最下層と最上層に低屈折率層14が配置されるように、5層の低屈折率層14と、4層の高屈折率層15とを交互に積層した9層重層品が形成され、更にその上に、同様の構成となるように5層の低屈折率層14と、4層の高屈折率層15とを交互に積層した9層重層品が形成された片面18層重層品(積層ユニット13)の構成となっている(実施例12参照)。本実施形態では、基材11の片面(例えば、太陽光Lが差し込む側とは反対側の屋内側の面)の18層重層品(積層ユニット13)の最上層の低屈折率層14上に透明なハードコート層(HC層)16が形成されており、基材11のもう一方の面(例えば、自動車窓などの基体18に貼りつけられる面)上に透明接着層17が形成されている。この場合には、自動車窓や建物のガラス窓などの基体18の屋内(車内または室内)側に赤外遮蔽フィルム1’を貼りつけいればよい(図2でも基体18に赤外遮蔽フィルム1’を貼りつけ後の様子を表している)。また、本実施形態では、基材11片面に下引層12を形成した例を示したが、下引層12を形成することなく、基材11上に直接、積層ユニット13を形成してもよい。また、使用形態によっては、ハードコート層(HC層)16や透明接着層17は必ずしも必要ではなく、これらの層を設けない構成とすることもできる。また、透明接着層17は、ハードコート層(HC層)16上に形成するようにしてもよい。また、接着剤層17の上には、剥離層(図示せず)を設けておき、基体18に貼りつける際に、この剥離層を剥がすようにしてもよい。同様に、ハードコート層(HC層)16の上にも、剥離層(図示せず)を設けておき、基体18に貼りつけた後に、この剥離層を剥がすようにしてもよい。また、ハードコート層(HC層)16や透明接着層17に代えて、他の層(例えば、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、粘着層、接着層、本発明の高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)、合わせガラスに利用される中間膜層などの機能層の1つ以上)を単独もしくは適当に組み合わせて用いてもよい。
低屈折率層14は、低屈折率層形成用の水系塗布液から形成され、第1の金属酸化物粒子(例えば、コロイダルシリカ粒子等)と、水溶性樹脂(バインダー樹脂;例えば、重合度1000以上のポリビニルアルコール樹脂)と、水系溶媒とを含んで構成される。高屈折率層15は、高屈折率層形成用の水系塗布液から形成され、第1の金属酸化物粒子(例えば、酸化チタン粒子等)と、水溶性樹脂(バインダー樹脂;例えば、重合度1000以上のポリビニルアルコール樹脂)と、水系溶媒とを含んで構成される。本実施形態でも、これらの低屈折率層14と高屈折率層15からなる積層ユニット13の少なくとも1層を形成する塗布液には、両性界面活性剤が含まれてなることを特徴とする。好ましくは両性界面活性剤が、少なくとも低屈折率層14に含有しているのが望ましく、より好ましくは両性界面活性剤が、低屈折率層14および高屈折率層15の全層(積層ユニット13の全層)に含有しているのが望ましい。本実施形態において、第1の金属酸化物粒子(例えば、コロイダルシリカ粒子など)は低屈折率材料として機能し、第2の金属酸化物粒子(例えば、酸化チタン粒子など)は高屈折率材料として機能する。
そして、低屈折率層形成用の水系塗布液Aと高屈折率層形成用の水系塗布液Bとを塗布し乾燥することにより、低屈折率材料としての第1の金属酸化物粒子と、水溶性樹脂(バインダー樹脂)と、更に好ましくは両性界面活性剤と、を含む水系塗布液Aから低屈折率層14が、高屈折率材料としての第2の金属酸化物粒子と、水溶性樹脂(バインダー樹脂)と、更に好ましくは両性界面活性剤と、を含む塗布液Bから高屈折率層15が形成される。かかる塗布液Aと塗布液Bの塗布、乾燥を繰り返すことで、積層ユニット13(9層重層品)を形成することができる。あるいは、基材11の片面に、塗布液Aおよび塗布液Bを同時重層塗布し、乾燥して、9層重層品を形成し、更にその上に、同様に塗布液Aおよび塗布液Bを同時重層塗布し、乾燥して、9層重層品を形成して、積層ユニット13(片面18層重層品)を形成してもよい。
本発明において、赤外遮蔽フィルムは、屈折率の異なるふたつの層、すなわち、高屈折率層と、低屈折率層と、から構成される積層体(ユニット)を少なくとも1つ含むが、高屈折率層と低屈折率層とは、以下のように考える。
例えば、高屈折率層を構成する成分(以下、高屈折率層成分)と低屈折率層を構成する成分(以下、低屈折率層成分)とが、ふたつの層の界面で混合され、高屈折率層成分と低屈折率層成分とを含む層(混合層)が形成される場合がある。この場合、混合層において、高屈折率層成分が50質量%以上である部位の集合を高屈折率層とし、低屈折率層成分が50質量%を超える部位の集合を低屈折率層とする。具体的には、低屈折率層が、例えば、低屈折率成分として第1の金属酸化物を、また、高屈折率層は高屈折率成分として第2の金属酸化物を含有している場合、これらの積層膜における膜厚方向での金属酸化物濃度プロファイルを測定し、その組成によって、高屈折率層または低屈折率層とみなすことができる。積層膜の金属酸化物濃度プロファイルは、スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、最表面を0nmとして、0.5nm/minの速度でスパッタし、原子組成比を測定することで観測することが出来る。また、低屈折率成分または高屈折率成分に金属酸化物粒子が含有されておらず、高屈折率層または低屈折率層の一方が水溶性樹脂(有機バインダー)のみから形成されている積層体においても、同様にして、水溶性樹脂(有機バインダー)濃度プロファイルにて、例えば、膜厚方向での炭素濃度を測定することにより混合領域が存在していることを確認し、さらにその組成をEDXにより測定することで、スパッタでエッチングされた各層が、高屈折率層または低屈折率層とみなすことができる。
XPS表面分析装置としては、特に限定なく、いかなる機種も使用することができるが、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定する。
一般に、赤外遮蔽フィルムにおいては、低屈折率層と高屈折率層との屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で赤外反射率を高くすることができるという観点から好ましい。本形態では、低屈折率層および高屈折率層から構成される積層体(ユニット)の少なくとも1つにおいて、隣接する低屈折率層と高屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.35以上であり、特に好ましくは0.4超である。赤外遮蔽フィルムが高屈折率層および低屈折率層の積層体(ユニット)を複数有する場合には、全ての積層体(ユニット)における高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が上記好適な範囲内にあることが好ましい。ただし、最表層や最下層に関しては、上記好適な範囲外の構成であってもよい。また、本形態の赤外遮蔽フィルムにおいては、低屈折率層の好ましい屈折率は、1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.50である。また、高屈折率層の好ましい屈折率は1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。なお、屈折率の測定は、実施例に記載の方法により行うことができる。
特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、200層以上の積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。反射率の向上と層数を少なくするという観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.4程度が限界である。
さらには、本形態の赤外遮蔽フィルムの光学特性として、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上であることが好ましく、また、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。波長900nm〜1400nmの近赤外波長領域を反射させることで、熱線の透過を遮蔽することができ、熱さを防ぐことができる。なお、可視光領域の透過率の測定は、JIS R3106−1998により測定できる。詳しくは、実施例に記載の分光光度計を用いて赤外遮蔽フィルム(サンプル)の可視光透過率のほか、赤外透過率及び赤外反射率を測定することができる。
本形態の赤外遮蔽フィルムは、基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成される積層体(ユニット)を少なくとも1つ含む構成を有するものであればよい。好ましい高屈折率層および低屈折率層の層数としては、上記の観点から、総層数の範囲としては、100層以下、すなわち50ユニット以下であり、より好ましくは40層(20ユニット)以下であり、さらに好ましくは20層(10ユニット)以下である。また、本発明の赤外遮蔽フィルムは、上記ユニットを少なくとも1つ積層した構成であればよく、例えば、積層膜の最表層や最下層のどちらも高屈折率層または低屈折率層となる積層膜であってもよい。本発明の赤外遮蔽フィルムとしては、基材に隣接する最下層が、低屈折率層で、最表層も低屈折率層である層構成が好ましい。低屈折率層が最下層(基材との接着面)及び最上層(オーバーコート層等の接触面)に位置する層構成とすることで、最下層の基材への密着性、最上層の吹かれ耐性、更には最上層へのハードコート層等の塗布性や密着性に優れる。
本形態の赤外遮蔽フィルムの全体の厚みは、好ましくは12μm〜315μm、より好ましくは15μm〜200μm、さらに好ましくは20μm〜100μmである。また、低屈折率層の1層あたりの厚みは、20〜800nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。一方、高屈折率層の1層あたりの厚みは、20〜800nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。赤外遮蔽フィルムの全体、低屈折率層の1層及び高屈折率層の1層の厚さは、赤外遮蔽フィルムの切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定することで求めることができる。なお、高屈折率層成分と低屈折率層成分とを含む層(混合層)が形成される場合には、上記したXPS表面分析装置とEDXにより測定することで求めることができる。なお、低屈折率層の1層及び高屈折率層の1層の厚さは、シュミレーション計算により、実測値と大差ない値を事前に設計(設定)することができる。
赤外遮蔽フィルムは、基材の下または基材と反対側の最表面層の上に、さらなる機能の付加を目的として、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層(接着層)、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、ハードコート層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、粘着層、接着層、本発明の高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)、合わせガラスに利用される中間膜層などの機能層の1つ以上を有していてもよい。
〔両性界面活性剤〕
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、イミダゾリウム型などがある。本発明に好ましく用いられる両性界面活性剤の具体例を以下に示す。本発明ではスルホベタイン型が塗布ムラの観点から好ましく、製品としてはLSB−R、LSB(川研ファインケミカル製)、アンヒトール20HD(花王製)等が挙げられる。フッ素系の両性界面活性剤も本発明に含まれるが、後に反射層上にハードコート層(HC層)等を塗布する場合にはフッ素系であると塗布性が悪くなる為、後加工適性の観点からはフッ素系は好ましくない。
塗布ムラを低減し、膜厚均一性(ヘイズ)を高め、優れた赤外遮蔽性を発現し得る観点からは、低屈折率層または高屈折率層の1層当たりの両性界面活性剤の含有量は、それぞれ0.05質量%以上2質量%以下が好ましく、さらには0.1質量%以上1.0質量%以下が好ましい。両性界面活性剤は、赤外遮蔽フィルムを所定のサイズ(例えば、1cm×1cmの正方形)に裁断し、低屈折率層と高屈折率層が交互積層された積層膜の最表面を0nmとして、0.5nm/minの速度でスパッタし、基材表面の1層(低屈折率層ないし高屈折率層)だけが残る状態で、水(好ましくは温水)につけ、界面活性剤が溶出されるか否か、微量でも検出可能であり、濃度及びLC−MS(LC装置:アジレント製Agillent1100、MS装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック製LCQシリーズ。)によりその化学構造も特定可能である。上記と同様にしてスパッタし、基材表面から2層分(低屈折率層1層と高屈折率層1層)だけが残る状態で、水(好ましくは温水)につけ、LC−MSによりその化学構造を特定する。これにより、界面活性剤が、低屈折率層側、高屈折率層側、または低屈折率層+高屈折率層の双方に添加されているか否か、その化学構造を含めて特定可能である。なお、低屈折率層と高屈折率層が交互積層された積層膜のうちの一部(1層またはそれ以上)のみに界面活性剤が添加されている場合には、上記操作を繰り返して(即ち、基材表面から1層分、2層分、3層分、4層分、・・・、n層分だけ残る状態で)、水(好ましくは温水)につけ、界面活性剤が溶出されるか否か、それぞれ判定する。そして、上記により低屈折率層と高屈折率層が交互積層された積層膜のどの部分に界面活性剤が添加されているのか、その化学構造を含めて特定すると共に、界面活性剤の溶出量から、低屈折率層ないし高屈折率層の1層当たりの両性界面活性剤の含有量を計測することができる。これは、後述するノニオン系界面活性剤およびアニオン系界面活性剤についても、両性界面活性剤と同様にして、低屈折率層と高屈折率層が交互積層された積層膜のどの部分にノニオン系界面活性剤ないしアニオン系界面活性剤が添加されているのか、その化学構造を含めて特定すると共に、溶出されるノニオン系界面活性剤ないしアニオン系界面活性剤の溶出量(濃度)から、低屈折率層ないし高屈折率層の1層当たりのノニオン系界面活性剤ないしアニオン系界面活性剤の含有量を特定することができる。
上記した低屈折率層ないし高屈折率層の1層当たりの両性界面活性剤の含有量とするためには低屈折率層ないし高屈折率層形成用の水系塗布液全量に対する両性界面活性剤の添加量は0.0001〜0.20質量%が好ましく、0.001〜0.05質量%が更に好ましい。0.0001質量%未満では表面張力低下の効果が得られず、0.20質量%を超えると塗布液との混合性がやや悪くなり液がやや白濁するからである。本発明に添加する両性界面活性剤は表面張力低下の効果が高く、水溶性はできるたけ高い方が好ましい。各層の静的表面張力は、塗布性の観点から、45mN/m以下であることが好ましい。静的表面張力は、高屈折率層、低屈折率層をそれぞれ単層で塗設したサンプルを作製し、静的表面張力計(例えば、ラウダ社製の静的表面張力計TDなど)を用いて当該サンプルの静的表面張力を測定することができる。
界面活性剤を1層のみに含有させた場合でも拡散により全層に広げることができる場合がある。こうした場合には、拡散後に上記した低屈折率層ないし高屈折率層の1層当たりの両性界面活性剤の含有量となるように、上記塗布液全量に対する両性界面活性剤の添加量を調整すればよい。
〔ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤〕
本発明の赤外遮蔽フィルムでは、塗布ムラや膜厚均一性(ヘイズ)等をより一層改善、向上し得る観点から、低屈折率層及び高屈折率層の少なくとも一層に、ノニオン系およびアニオン系界面活性剤よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種を更に含有するのが望ましい。特に両性界面活性剤が用いられている低屈折率層ないし高屈折率層に、ノニオン系およびアニオン系界面活性剤よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種を併用するのが上記観点から、特に効果的である。
本発明に用いることのできるノニオン系(非イオン系)界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤、ポリオキシエチレン系界面活性剤等が挙げられる。シリコン系界面活性剤とは、ジメチルポリシロキ酸の側鎖または末端をポリエーテル変性したものであり、例えば、信越化学工業製のKF−351A、KF−642やビッグケミー製のBYK347、BYK348などが市販されている。また、アセチレン系界面活性剤とは、市販品として入手することができ、例えば、日信化学工業株式会社製のサーフィノール、オルフィン、川研ファインケミカル社製のアセチレノールが挙げられる。ポリオキシエチレン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体などがあげられ、例えば花王製のエマルゲンが挙げられる。
ノニオン系(非イオン系)界面活性剤の中では、シリコン系あるいはポリオキシエチレン系界面活性剤の少なくとも一方と、両性界面活性剤(特にスルホン酸系界面活性剤)とを併用することが塗布性の観点から好ましい。
また、本発明に用いることのできるアニオン系界面活性剤としては、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸エステル塩等が挙げられる。例えば硫酸エステル塩は花王製のエマールが挙げられ、スルホン酸塩は花王製のネオペレックス、ペレックスが挙げられる。カルボン酸塩としては、第一工業製薬製のネオハイテノールが挙げられ、リン酸エステル塩としては、第一工業製薬製のプライサーフ等が挙げられる。本発明では硫酸エステル塩あるいはスルホン酸塩であることが液との混合性の観点からは好ましい。
ノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤の双方を、両性界面活性剤(特にスルホン酸系界面活性剤)と併用する場合には、上記したノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤の中から適宜組み合わせて用いればよく、好ましくはノニオン系(非イオン系)界面活性剤の中では、シリコン系あるいはポリオキシエチレン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤の中では、硫酸エステル塩あるいはスルホン酸塩から選ばれてなるものを組み合わせて用いるのが双方の効果を損なうことなく相乗的効果を発現し得る点で優れている(実施例10参照)。
塗布ムラを低減し、膜厚均一性(ヘイズ)を高め、優れた赤外遮蔽性をより向上し、更に基材やハードコート層との密着性や吹かれ耐性(塗布性)を高める得る観点からは、低屈折率層の1層当たりの、ノニオン系界面活性剤あるいはアニオン系界面活性剤を合わせた量が、上記した両性界面活性剤の含有量の5〜50質量%であることが好ましい。同様の観点から、高屈折率層の1層当たりの、ノニオン系界面活性剤あるいはアニオン系界面活性剤を合わせた量が、上記した両性界面活性剤の含有量の5〜50質量%であることが好ましい。
両性界面活性剤と併用する界面活性剤としては表面張力低下能と水溶性の観点からHLB値が10〜15であることが更に好ましい。HLB値は、既存の計算法(例えば、アトラス法、グリフィン法、デイビス法、川上法、高速液体クロマトグラフィーでの保持時間から決定する方法など)を用いて算出することができる。また界面活性剤の混合物のHLB値は各成分のHLB値の加重平均となる。上記した低屈折率層ないし高屈折率層の1層当たりのノニオン系界面活性剤あるいはアニオン系界面活性剤を合わせた量とするためには、ノニオン系界面活性剤あるいはアニオン系界面活性剤の添加量は、各層の塗布液全量に対して0.0001〜0.10質量%であることが好ましい。また各層の塗布液中の両性界面活性剤に対しては、ノニオン系界面活性剤あるいはアニオン系界面活性剤を合わせた量が、塗布液中の両性界面活性剤の量の5〜50質量%であることが塗布性の観点から好ましい。
〔水溶性樹脂〕
本発明においては、バインダー樹脂は水溶性樹脂から構成されることが好ましい。水溶性樹脂を用いることで、有機溶媒を用いることなく、屈折率層を形成することができ、環境上好ましいためである。水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ゼラチン、セルロース類、増粘多糖類、反応性官能基を有するポリマー類が好ましいが、赤外遮蔽フィルムの性能(塗布ムラや膜厚均一性(ヘイズ)等の向上効果)の観点から、特にポリビニルアルコール系樹脂を用いることが好ましい。これらの水溶性樹脂は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
(ポリビニルアルコール系樹脂)
本発明の水溶性樹脂として用いられるポリビニルアルコール系樹脂(PVA)としては、重合度(平均重合度)が1500〜7000であるのが好ましく、より好ましくは2000〜6000であり、さらに好ましくは2300〜4500である。1500以上であると塗布膜のひび割れ耐性が良くなり、7000以下であると塗布液が安定するからである。
ここで、重合度(P)とは粘度平均重合度を指し、JIS−K6726(1994)に準じて測定され、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA)を完全に再鹸化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から次式により求められるものである。
各屈折率層中で重合度の相違を比較する方法としては、各屈折率層が重合度の異なる複数のポリビニルアルコール系樹脂を含む場合には、屈折率層中に含まれるポリビニルアルコール系樹脂の重合度を平均した値を、「重合度」として採用する。例えば、屈折率層に、重合度6000のポリビニルアルコール系樹脂85質量%および重合度3500のポリビニルアルコール系樹脂15質量%が含有されている場合、当該屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂の重合度としては、「(6000×0.85)+(3500×0.15)=5625」となる。なお、重合度が1000未満の低重合度ポリビニルアルコール系樹脂は、当該重合度の計算から除外する。また、変性ポリビニルアルコール系樹脂は、当該重合度の計算に含まれる。ここで、重合度が1000未満の低重合度ポリビニルアルコール系樹脂を、重合度の計算から除外したのは、基本的にはバインダー樹脂として用いる水溶性樹脂(ポリビニルアルコール系樹脂)と後述する保護剤として用いる水溶性樹脂(ポリビニルアルコール系樹脂)を区別するためである。但し、本発明では、バインダー樹脂として用いる水溶性樹脂(ポリビニルアルコール系樹脂)と後述する保護剤として用いる水溶性樹脂(ポリビニルアルコール系樹脂)を区別することなく、保護剤としての機能を有するバインダー樹脂として水溶性樹脂(ポリビニルアルコール系樹脂)を適用可能とみなすこともできる。この場合には、保護剤としての機能を効果的に発現する上では、重合度が1000未満の低重合度の水溶性樹脂(ポリビニルアルコール系樹脂)を所定の割合で含有するのが望ましく、本来のバインダー機能を効果的に発現する上では、重合度が1000以上の水溶性樹脂(ポリビニルアルコール系樹脂)を所定の割合で含有するのが望ましいといえる。特に保護剤としての機能を効果的に発現する上では、重合度が100〜700で鹸化度が95mol%以上である低重合度高鹸化ポリビニルアルコールを所定の割合で含有するのが好ましい。このような低重合度高鹸化ポリビニルアルコールを含有すると、塗布液の安定性が向上し、塗布ムラを低減し、塗布性を高め、赤外遮蔽フィルムの膜厚均一性(ヘイズ)を高めることができる。
本発明の赤外遮蔽フィルムは、高屈折率層と低屈折率層とに鹸化度の異なるポリビニルアルコール系樹脂をそれぞれ含有することが好ましい。高屈折率層と低屈折率層とに鹸化度の異なるポリビニルアルコール系樹脂をそれぞれ含有することにより、界面の混合が抑制され、赤外反射率(赤外遮蔽率)がより良好となり、ヘイズが低くなるため好ましい。また、高屈折率層と低屈折率層とのどちらの鹸化度が高くてもよいが、高屈折率層に含まれるポリビニルアルコールが、低屈折率層に含まれるポリビニルアルコールよりも鹸化度が高いのがより好ましい。高屈折率層に含まれる金属酸化物粒子を、鹸化度の高いポリビニルアルコールが保護することができるためである。
さらに、低屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂と高屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂との鹸化度の絶対値の差は、3mol%以上であることが好ましい。より好ましくは5mol%以上である。かような範囲であれば、高屈折率層と低屈折率層との層間混合状態を好ましいレベルにするために好ましい。低屈折率層に含まれるポリビニルアルコールと高屈折率層に含まれるポリビニルアルコールとの鹸化度の差は離れていれば離れているほど好ましいが、ポリビニルアルコールの水への溶解性の点からは20mol%以下であることが好ましい。
ここで、鹸化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂中のアセチルオキシ基(原料の酢酸ビニル由来のもの)と水酸基の合計数に対する水酸基の割合のことである。
各屈折率層中で鹸化度の相違を比較するポリビニルアルコール系樹脂は、各屈折率層が(鹸化度が異なる)複数のポリビニルアルコール系樹脂を含む場合には、屈折率層中で最も含有量の高いポリビニルアルコール系樹脂である。これは、主となる樹脂の鹸化度が重要なためである。ここで、「屈折率層中で最も含有量が高いポリビニルアルコール系樹脂」という際には、鹸化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコール系樹脂は同一のポリビニルアルコール系樹脂であるとし、鹸化度を算出する。ただし、重合度1000未満の低重合度ポリビニルアルコール系樹脂は異なるポリビニルアルコール系樹脂とする(仮に鹸化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコール系樹脂があったとしても同一のポリビニルアルコール系樹脂とはしない)。具体的には、鹸化度が90mol%、鹸化度が91mol%、鹸化度が93mol%のポリビニルアルコール系樹脂が同一層内にそれぞれ10質量%、40質量%、50質量%含まれる場合には、これら3つのポリビニルアルコール系樹脂は同一のポリビニルアルコール系樹脂とし、これら3つの混合物を、低屈折率層または高屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂とする。また、上記「鹸化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコール系樹脂」とは、いずれかのポリビニルアルコール系樹脂に着目した場合に3mol%以内であれば足り、例えば、90、91、92、94mol%のビニルアルコール系樹脂を含む場合には、91mol%のビニルアルコール系樹脂に着目した場合にいずれのポリビニルアルコール系樹脂も3mol%以内なので、同一のポリビニルアルコール系樹脂となる。
同一層内に鹸化度が3mol%以上異なるポリビニルアルコール系樹脂が含まれる場合、異なるポリビニルアルコール系樹脂の混合物とみなし、それぞれに鹸化度を算出する。
例えば、PVA203:5質量%、PVA117:25質量%、PVA217:10質量%、PVA220:10質量%、PVA224:10質量%、PVA235:20質量%、PVA245:20質量%が含まれる場合、最も含有量の多いPVAはPVA217〜245の混合物であり(PVA217〜245の鹸化度の差は3mol%以内なので同一のポリビニルアルコール系樹脂である。ここで、PVA117〜PVA245は、いずれも株式会社クラレの商品名(クラレポバール=PVA)と銘柄(117〜245)を表しており、銘柄の始めの数字は鹸化度の分類を表し、次の二つの数字に100を掛けたものが重合度の目安を表す。銘柄の始めの数字1=鹸化度98〜99mol%、平均値98.5mol%、銘柄の始めの数字2=鹸化度87〜89mol%、平均値88mol%を表している。また、次の二つの数字が、例えば03=重合度300、17=重合度1700、45=重合度4500を表している。)、この混合物が低屈折率層または高屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂となる。そして、PVA217〜245の混合物(低屈折率層または高屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂)においては、鹸化度は、88mol%(いずれも銘柄の始めの数字が2であるため、鹸化度88mol%(平均値))となる。また、変性ポリビニルアルコール系樹脂は、当該鹸化度の計算に含まれる。
低屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂および高屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂の鹸化度は水への溶解性の点で75mol%以上が好ましい。さらに低屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂および高屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂のうち一方が鹸化度90mol%以上であり、他方が90mol%未満であることが高屈折率層と低屈折率層との層間混合状態を好ましいレベルにするために好ましい。低屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂および高屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂のうち一方が鹸化度95mol%以上であり、他方が90mol%以下であることがより好ましい。また、低屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂の鹸化度が90mol%以下であり、高屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂の鹸化度が95mol%以上であることがさらに好ましい。かかる構成とすることにより、高屈折率層と低屈折率層形成用の塗布液の安定化に優れ、当該塗布液の塗布により得られる高屈折率層と低屈折率層の界面の混合が抑制され、赤外反射率(赤外遮蔽率)がより良好となり、ヘイズが低くでき、更に高屈折率層に含まれる金属酸化物粒子を、鹸化度の高いポリビニルアルコールが保護することができるためである。なお、ポリビニルアルコール系樹脂の鹸化度の上限は特に限定されるものではないが、通常100mol%未満であり、99.9mol%以下程度である。
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコール(未変性ポリビニルアルコール)の他に、末端をカチオン変性したカチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコール、アクリル等で変性した変性ポリビニルアルコール、酢酸ビニル系樹脂(ビニルアルコール系ポリマー)(例えば、クラレ製「エクセバール」)も含まれる。また、ポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させて得られるポリビニルアセタール樹脂(例えば、積水化学製「エスレック」)、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール(例えば、クラレ製「R−1130」)等も含まれる。これらのポリビニルアルコール系樹脂は、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
本明細書中、「水溶性」とは、水媒体に対し1質量%以上溶解する化合物であり、好ましくは3質量%以上である。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報および同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体および特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
また、酢酸ビニル系樹脂(ビニルアルコール系ポリマー)として、エクセバール(商品名:(株)クラレ製)などが挙げられ、変性ポリビニルアルコールとしてニチゴーGポリマー(商品名:日本合成化学工業(株)製)などが挙げられる。
シラノール変性ポリビニルアルコールとしては、特に制限はなく、公知の方法で合成したものであってもよく、市販品であってもよい。シラノール変性ポリビニルアルコールの変性率としては、通常0.01〜5mol%であり、好ましくは0.1〜1mol%である。変性率が0.01mol%未満であると、耐水性が劣化することがあり、5mol%を越えると、水との溶解性が悪くなることがある。また、シラノール変性ポリビニルアルコールは、耐傷性、光沢跡の観点から、鹸化度が95mol%以上であるのが好ましく、95.0〜99.5mol%であるのがより好ましい。また、シラノール変性ポリビニルアルコールは、重合度が、通常300〜2,500であり、好ましくは500〜1,700である。重合度が300以上であると塗工層の強度が高く、2,500以下であると塗布液の粘度が高くなりすぎず工程適性があるため好ましい。
本発明において、シラノール変性ポリビニルアルコールが屈折率層を形成するための塗布液に含有されると、塗布液が安定し、結果として、得られる塗膜の塗布性が良好になるため好ましい。なお、塗布液が安定するとは塗布液が経時的に安定することを意味する。
また、本発明では、高屈折率層に、シラノール変性ポリビニルアルコールを含有することが好ましい。シラノール変性ポリビニルアルコールを用いるとヘイズが良くなり、膜の透明性が上がるためである。高屈折率層にシラノール変性ポリビニルアルコールが含まれる場合、その含有量は、高屈折率層の全固形分100質量%に対して、1〜40質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましく、3〜25質量%であることが特に好ましい。1質量%以上であるとセット性が良くなるため膜が乱れにくくなりヘイズが良好となり、40質量%以下であると液の安定性が良く好ましい。
本発明においては、ポリビニルアルコール系樹脂(全ポリビニルアルコール系樹脂)は、各屈折率層の全質量(固形分)100質量%に対し、5〜50質量%の範囲で含有させることが好ましく、10〜40質量%がより好ましく、14〜30質量%がさらに好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂が5.0質量%以上であれば、屈折率層を塗工した後の乾燥時に、膜面が均一になり、透明性が向上する傾向が大きくなる。一方、含有量が50質量%以下であれば、相対的な金属酸化物の含有量が適切となり、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きくすることが容易になる。なお、本明細書中、「膜面」とは塗膜の表面を意味し、「表面」とも称する場合がある。
なお、全ポリビニルアルコール系樹脂とは、各屈折率層に含まれるポリビニルアルコール系樹脂の合計量を意味する。例えば、重合度が1000未満の低重合度ポリビニルアルコール系樹脂等も、全ポリビニルアルコール系樹脂の含量に含まれる。
(ゼラチン)
本発明の水溶性樹脂として適用可能なゼラチンとしては、従来、ハロゲン化銀写真感光材料分野で広く用いられてきた各種ゼラチンを適用することができ、例えば、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンの他に、ゼラチンの製造過程で酵素処理をする酵素処理ゼラチンおよびゼラチン誘導体、すなわち分子中に官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を持ち、それと反応して得る基を持った試薬で処理し改質したものでもよい。ゼラチンの一般的製造法に関しては良く知られており、例えばT.H.James:The Theory of Photographic Process 4th. ed. 1977(Macmillan)55項、科学写真便覧(上)72〜75項(丸善)、写真工学の基礎−銀塩写真編119〜124(コロナ社)等の記載を参考にすることができる。また、リサーチ・ディスクロージャー誌第176巻、No.17643(1978年12月)のIX項に記載されているゼラチンを挙げることができる。
(ゼラチンの硬膜剤)
ゼラチンを用いる場合、必要に応じてゼラチンの硬膜剤を添加することもできる。
用いることのできる硬膜剤としては、通常の写真乳剤層の硬膜剤として使用されている公知の化合物を使用でき、例えば、ビニルスルホン化合物、尿素−ホルマリン縮合物、メラニン−ホルマリン縮合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、活性オレフィン類、イソシアネート系化合物などの有機硬膜剤、クロム、アルミニウム、ジルコニウムなどの無機多価金属塩類などを挙げることができる。
(セルロース類)
本発明の水溶性樹脂として適用可能なセルロース類としては、水溶性のセルロース誘導体が好ましく用いることができ、例えば、カルボキシメチルセルロース(セルロースカルボキシメチルエーテル)、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース誘導体や、カルボン酸基含有セルロース類であるカルボキシメチルセルロース(セルロースカルボキシメチルエーテル)、カルボキシエチルセルロース等を挙げることができる。その他には、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、酢酸セルロース、セルロース硫酸エステル等のセルロース誘導体を挙げることができる。
(増粘多糖類)
本発明の水溶性樹脂として適用可能な増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類を挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり分子内に水素結合基を多数有するもので、温度により分子間の水素結合力の違いにより、低温時の粘度と高温時の粘度差が大きな特性を備えた多糖類であり、さらに金属酸化物微粒子を添加すると、低温時にその金属酸化物微粒子との水素結合によると思われる粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加することにより15℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、更に好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられ、塗布液中に共存する金属酸化微粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖もグルコースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がグルコースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。本発明においては、特には、タマリンド、グアーガム、カチオン化グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガムが好ましい。
本発明においては、さらには、二種類以上の増粘多糖類を併用することもできる。
(反応性官能基を有するポリマー類)
本発明に適用可能な水溶性樹脂としては、反応性官能基を有するポリマー類が挙げられ、例えば、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体が挙げられる。
〔保護剤〕
本発明の一実施形態では、低屈折率層および/または高屈折率層は、金属酸化物粒子を被覆(保護)する水溶性樹脂を含有することが好ましい。以下に、金属酸化物粒子を被覆(保護)する水溶性樹脂について説明する。なお、当該水溶性樹脂は、金属酸化物粒子を溶媒に分散させやすくするための役割を有し、以下、「保護剤」と称する。
保護剤としては、重合度が、好ましくは100〜700、より好ましくは200〜500の水溶性樹脂であることが、金属酸化物微粒子を安定化するという観点で好ましい。また、吸着性の観点からポリビニルアルコール系樹脂が好ましいが、透明性および安定化の観点から変性ポリビニルアルコールであることがさらに好ましい。さらに、ポリビニルアルコールの鹸化度が、好ましくは95%mol以上、より好ましくは98〜99.5mol%であると粒子への吸着性が強く好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂については、上記ポリビニルアルコール系樹脂の欄で述べたため省略する。
本発明において、保護剤は、金属酸化物粒子100質量%に対して、0.1〜30質量%の範囲で含有させることが好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。上記範囲で保護剤を含むことで、低屈折率層および/または高屈折率用塗布液の液安定性が優れ、塗布性が安定するため好ましい。
〔硬化剤〕
本発明の低屈折率層および/または高屈折率層は、硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と反応して、水素結合のネットワークを形成することができるためである。また、バインダー樹脂としてポリビニルアルコール系樹脂を用いた場合、その効果は特に発揮されうる。
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂と共に用いることのできる硬化剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂と硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸、ホウ酸塩、およびホウ砂からなる群から選択されるのが好ましい。ホウ酸、ホウ酸塩、およびホウ砂以外にも公知のものが使用でき、一般的にはポリビニルアルコール系樹脂と反応し得る基を有する化合物あるいはポリビニルアルコール系樹脂が有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
ホウ酸またはホウ酸塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
ホウ砂とは、Na245(OH)4・8H2O(四ホウ酸ナトリウム Na247の十水和物)で表される鉱物である。
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸、ホウ酸塩、およびホウ砂は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することが出来ないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化する事が出来る。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることが出来る利点がある。
本発明では、ホウ酸およびその塩並びに/またはホウ砂を用いることが本発明の効果を得るためには好ましい。ホウ酸およびその塩並びに/またはホウ砂を用いた場合には、金属酸化物粒子とポリビニルアルコール系樹脂のOH基と水素結合ネットワークを形成し、その結果として高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制され、好ましい赤外遮蔽特性が達成されると考えられる。特に、高屈折率層と低屈折率層の多層重層をコーターで塗布後、一旦塗膜の膜面温度を15℃程度に冷やした後、膜面を乾燥させるセット系塗布プロセスを用いた場合には、より好ましく効果を発現することができる。
上記硬化剤の総使用量は、バインダー樹脂(ポリビニルアルコール系樹脂)1g当たり1〜600mgが好ましく、100〜600mgがより好ましい。硬化剤として上記した効果を有効に発現し得る観点から、硬化剤の上記した総使用量が、バインダー樹脂(ポリビニルアルコール系樹脂)に対する最適量である。
〔金属酸化物粒子〕
本発明において、高屈折率層および/または低屈折率層は、金属酸化物粒子を含有することが好ましい。
〔低屈折率層中の金属酸化物粒子(第1の金属酸化物粒子)〕
本発明の低屈折率層に用いられる第1の金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカなどの二酸化ケイ素、アルミナ、コロイダルアルミナを挙げることができる。本発明において、屈折率を調整するために、第1の金属酸化物粒子は1種であっても2種以上を併用してもよい。
本発明に係る低屈折率層においては、第1の金属酸化物粒子としては、屈折率が低く小粒径である観点から、二酸化ケイ素を用いることが好ましく、屈折率が低く小粒径であり更に透明性が高く、二次粒子を作らず扱いやすい観点から、コロイダルシリカを用いることが特に好ましい。
本発明の低屈折率層に含まれる第1の金属酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)は、その平均粒径(個数平均)が1〜100nmであることが好ましく、3〜50nmであることがより好ましい。これは、低屈折率層の膜厚が120〜150nm程度が特に好適であるため、第1の金属酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)の平均粒径(個数平均)は、小さければ小さい方が好ましい。ただし、技術的に製造可能な観点から1nm以上が望ましい。同様の観点から、第1の金属酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)の平均粒径(個数平均)は100nm以下、好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。上記範囲内であれば、低屈折率層の膜厚を制限することなく適用可能な点でも望ましい。なお、本明細書中、金属酸化物微粒子の平均粒径(個数平均)は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。本発明で用いられるコロイダルシリカは、珪酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、例えば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、および国際公開第94/26530号パンフレットなどに記載されているものである。
この様なコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、日産化学工業(株)から販売されているスノーテックスシリーズ(スノーテックスOS、OXS、S、OS、20、30、40、O、N、C等)が挙げられる。
コロイダルシリカは、その表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、MgまたはBa等で処理されたものであってもよい。
低屈折率層における第1の金属酸化物粒子の含有量は、低屈折率層の全固形分100質量%に対して、20〜75質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましく、35〜69質量%であることがさらに好ましく、40〜68質量%であることが特に好ましい。20質量%以上であると、所望の屈折率が得られ75質量%以下であると塗布性が良好となり好ましい。
〔高屈折率層中の金属酸化物粒子(第2の金属酸化物粒子)〕
本発明の高屈折率層は、第2の金属酸化物粒子を含むのが好ましい。高屈折率層に含まれうる第2の金属酸化物粒子は、屈折率を異ならせる観点から、低屈折率層とは異なる金属酸化物粒子であることが好ましい。
本発明に係る高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、アルミナ、コロイダルアルミナ、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、ジルコンを挙げることができる。本発明において、屈折率を調整するために、第2の金属酸化物は1種であっても2種以上を併用してもよい。
本発明では、透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成するために、高屈折率層は、チタン、ジルコニア等の高屈折率を有する金属酸化物粒子、すなわち、酸化チタン粒子、酸化ジルコニア粒子を含有することが好ましい。また、体積平均粒径が100nm以下のルチル型(正方晶形)酸化チタン粒子を含有することが、アナターゼ型よりも小粒径化しやすく、またアナターゼ型のように光触媒作用により反応して高屈折率層に色がつくこともないなどの観点から、より好ましい。また、複数種の酸化チタン粒子を混合してもよい。
また、低屈折率層に含まれる第1の金属酸化物粒子と高屈折率層に含まれる第2の金属酸化物粒子とは、イオン性をそろえた状態(すなわち、電荷が同符号)にすることが好ましい。例えば、同時重層塗布する場合にはイオン性が異なると、界面で反応し凝集物ができヘイズが悪くなるためである。イオン性をそろえる手段としては、例えば、低屈折率層に二酸化ケイ素(アニオン)、高屈折率層に酸化チタン(カチオン)を用いた場合に、二酸化ケイ素をアルミニウム等で処理してカチオン化したり、あるいは、後述するように、酸化チタンを含ケイ素の水和酸化物で処理してアニオン化したりすることが可能である。
本発明の高屈折率層に含まれる第2の金属酸化物粒子は、その平均粒径(個数平均)が3〜100nmであることが好ましく、3〜50nmであることがより好ましい。
また、高屈折率層に含まれる第2の金属酸化物粒子は、体積平均粒径が50nm以下であることが特に好ましく、1〜45nmであることがより好ましく、5〜40nmであるのがさらに好ましい。体積平均粒径が50nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
ここでいう体積平均粒径とは、媒体中に分散された一次粒子または二次粒子の体積平均粒径であり、レーザー回折/散乱法、動的光散乱法等により測定できる。
具体的には、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する金属酸化物粒子の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径を算出する。
さらに、本発明で用いられる金属酸化物粒子は、単分散であることが好ましい。これは、多分散では粒径が大きいものが混ざり、ヘイズが上がる(膜厚均一性や透明性が低下する)ためである。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下であることをいう。この単分散度は、さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%である。下記単分散度の式中の粒径の平均値は、粒子の体積平均値を指す。
高屈折率層における金属酸化物粒子の含有量としては、高屈折率層の全固形分100質量%に対して、15〜85質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましく、30〜75質量%であることがさらに好ましい。上記範囲とすることで、赤外遮蔽性の良好なものができる。
本発明の第2の金属酸化物粒子として好ましく用いられる酸化チタン粒子は、酸化チタンゾルの表面を変性して水または有機溶剤等に分散可能な状態にしたものを用いることが好ましい。
水系の酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等に記載された事項を参照にすることができる。
第2の金属酸化物粒子として酸化チタン粒子を用いる場合、酸化チタン粒子のその他の製造方法については、例えば、「酸化チタン−物性と応用技術」清野学 p255〜258(2000年)技報堂出版株式会社、またはWO2007/039953号明細書の段落番号0011〜0023に記載の工程(2)の方法を参考にすることができる。
上記工程(2)による製造方法とは、二酸化チタン水和物をアルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される、少なくとも1種の塩基性化合物で処理する工程(1)の後に、得られた二酸化チタン分散物を、カルボン酸基含有化合物および無機酸で処理する工程(2)からなる。
また、本発明の第2の金属酸化物粒子は、酸化チタン粒子が含ケイ素の水和酸化物で被覆されたコアシェル粒子の形態が好ましい。コアシェル粒子としては、コアの部分である酸化チタン粒子の体積平均粒径が、好ましくは1nm超30nm未満、より好ましくは4nm以上30nm未満であり、当該酸化チタン粒子の表面を、コアとなる酸化チタン100質量%に対して、含ケイ素の水和酸化物の被覆量がSiO2として3〜30質量%となるように含ケイ素の水和酸化物からなるシェルが被覆してなる構造である。本発明において、第2の金属酸化物粒子としてコアシェル粒子を含有させることで、シェル層の含ケイ素の水和酸化物とバインダー樹脂との相互作用により、高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制される効果を奏する。
本明細書における含ケイ素の水和酸化物とは、無機ケイ素化合物の水和物、有機ケイ素化合物の加水分解物および/または縮合物のいずれでもよく本発明の効果を得るためにはシラノール基を有することがより好ましい。よって、本発明において、第2の金属酸化物粒子としては、酸化チタン粒子がシリカ変性されたシリカ変性(シラノール変性)酸化チタン粒子であることが好ましい。
酸化チタンの含ケイ素の水和化合物の被覆量は、酸化チタン100質量%に対して、SiO2として3〜30質量%、好ましくは3〜10質量%、より好ましくは3〜8質量%である。被覆量が30質量%以下であると、高屈折率層の所望の屈折率化が得られ、被覆量が3%以上であると粒子を安定に形成することができるからである。
また、本発明の第2の金属酸化物粒子としては、公知の方法で製造されたコアシェル粒子を用いることもできる。例えば、以下の(i)〜(iv);(i)酸化チタン粒子を含有する水溶液を加熱加水分解し、または酸化チタン粒子を含有する水溶液にアルカリを添加し中和して、平均粒径が1〜30nmの酸化チタンを得た後、モル比で表して酸化チタン粒子/鉱酸が1/0.5〜1/2の範囲になるように、前記酸化チタン粒子と鉱酸とを混合したスラリーを、50℃以上該スラリーの沸点以下の温度で加熱処理し、その後得られた酸化チタン粒子を含むスラリーに、ケイ素の化合物(例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液)を添加し、酸化チタン粒子の表面にケイ素の含水酸化物を析出させて表面処理し、次いで、得られた表面処理された酸化チタン粒子のスラリーから不純物を除去する方法(特開平10−158015号);(ii)含水酸化チタンなどの酸化チタンを一塩基酸またはその塩で解膠処理して得られる酸性域のpHで安定した酸化チタンゾルと、分散安定化剤としてのアルキルシリケートを常法により混合し、中性化する方法(特開2000−053421号);(iii)過酸化水素および金属スズを、2〜3のH22/Snモル比に保持しつつ同時にまたは交互にチタン塩(例えば、四塩化チタン)等の混合物水溶液に添加し、チタンを含む塩基性塩水溶液を生成し、該塩基性塩水溶液を0.1〜100時間かけて50〜100℃の温度で保持して酸化チタンを含む複合体コロイドの凝集体を生成させ、次いで、該凝集体スラリー中の電解質を除去し、酸化チタンを含む複合体コロイド粒子の安定な水性ゾルが製造される。一方、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液)等を含有する水溶液を調製し、水溶液中に存在する陽イオンを除去することで、二酸化ケイ素を含む複合体コロイド粒子の安定な水性ゾルが製造される。得られた酸化チタンを含む複合体水性ゾルを金属酸化物TiO2に換算して100質量部と、得られた二酸化ケイ素を含む複合体水性ゾルを金属酸化物SiO2に換算して2〜100質量部と混合し、陰イオンを除去後、80℃で1時間加熱熟成する方法(特開2000−063119号);(iv)含水チタン酸のゲルまたはゾルに過酸化水素を加えて含水チタン酸を溶解し、得られたペルオキソチタン酸水溶液に、ケイ素化合物等を添加し加熱し、ルチル型構造をとる複合固溶体酸化物からなるコア粒子の分散液が得られ、次いで、該コア粒子の分散液にケイ素化合物等を添加した後、加熱しコア粒子表面に被覆層を形成し、複合酸化物粒子が分散されたゾルが得られ、さらに、加熱する方法(特開2000−204301号);(v)含水酸化チタンを解膠して得られた酸化チタンのヒドロゾルに、安定剤としてのオルガノアルコキシシラン(R1nSiX4-n)または過酸化水素および脂肪族もしくは芳香族ヒドロキシカルボン酸から選ばれた化合物を添加し、溶液のpHを3以上9未満へ調節し熟成させた後に脱塩処理を行う方法(特許第4550753号);で製造されたコアシェル粒子が挙げられる。
〔屈折率層のその他の添加剤〕
本発明に係る高屈折率層と低屈折率層には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることができる。
例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報および同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報および同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
〔基材〕
本発明の赤外遮蔽フィルムに用いられる基材としては、透明な有機材料で形成されたものであれば特に限定されるものではない。
かような基材としては、例えば、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリスチレン(PS)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の樹脂からなるフィルム、さらには前記樹脂を二層以上積層してなる樹脂フィルム等が挙げられる。コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)などが好ましく用いられる。
基材の厚さは、窓ガラスや自動車のフロントガラスやリアウィンドなどの基体側への赤外遮蔽フィルムの貼りやすさの観点から、5〜200μm程度が好ましく、さらに好ましくは15〜150μm、特に好ましくは50〜100μmである。基材の厚さが厚すぎると、赤外遮蔽フィルムを巻き取りにくくなり、薄すぎると扱いづらくなる(フィルムの腰がなくなる)。基材は、2枚以上を重ねたものであってもよく、この際、基材の種類は同じでもよいし異なっていてもよい。
また、基材は、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率としては85%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。基材が上記透過率以上であることにより、赤外遮蔽フィルムとしたときのJIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率を50%以上にするという点で有利であり、好ましい。
また、上記樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。
基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
また、基材は、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルム(例えば、PET、PEN等)の延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、またはテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は、製造のしやすさ(例えば、その後の塗布液の塗布性など)の観点から、処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃である。また、製造のしやすさ(例えば、その後の塗布液の塗布性など)の観点から、長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%で処理されることである。弛緩処理された基材は、オフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、さらに、寸法安定性が良好になる。
基材は、積層体との密着性の観点から製膜過程で片面または両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明においては、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂およびゼラチン等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。下引層の塗布量を0.01g/m2以上とすることで、密着性の効果を十分とでき、2g/m2以下とすることでより透明性が良好となるからである。
[赤外遮蔽フィルムの製造方法]
本発明の赤外遮蔽フィルムの製造方法について特に制限はなく、基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも1つ形成することができるのであれば、いかなる方法でも用いられうる。
本発明の赤外遮蔽フィルムの製造方法では、基材上に高屈折率層と低屈折率層とから構成される積層体(ユニット)を積層して形成され、例えば、高屈折率層用塗布液と低屈折率層用塗布液とを交互に塗布、乾燥して積層体を形成する。例えば、第1の金属酸化物粒子と、水溶性樹脂(好ましくは、第1のポリビニルアルコール系樹脂)と、両性界面活性剤と、水系溶媒と、を含む低屈折率層用塗布液と、第2の金属酸化物粒子と、バインダー樹脂である水溶性樹脂(好ましくは、第2のポリビニルアルコール系樹脂)と、両性界面活性剤と、水系溶媒と、を含む高屈折率層用塗布液と、を基材に塗布する工程と、塗布液が塗布された前記基材を乾燥する工程と、を含む赤外遮蔽フィルムの製造方法により得られる。
具体的には高屈折率層と低屈折率層とを交互に塗布、乾燥して積層体を形成することが好ましい。具体的には以下の形態が挙げられる;(1)基材上に、高屈折率層用塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成した後、低屈折率層用塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成し、赤外遮蔽フィルムを形成する方法;(2)基材上に、低屈折率層用塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成した後、高屈折率層用塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成し、赤外遮蔽フィルムを形成する方法;(3)基材上に、高屈折率層用塗布液と、低屈折率層用塗布液とを交互に逐次重層塗布した後乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含む赤外遮蔽フィルムを形成する方法;(4)基材上に、高屈折率層用塗布液と、低屈折率層用塗布液とを同時重層塗布し、乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含む赤外遮蔽フィルムを形成する方法;などが挙げられる。なかでも、より簡便な製造プロセスとなる上記(4)の方法が好ましい。また、同時重層塗布の場合には、通常、界面の混合がより生じやすいが、本発明は、両性界面活性剤を用いることで、界面の混合が抑制され、塗布ムラやヘイズが改善されることから、同時重層塗布により製造する場合に、より効果が発揮されやすい。
(塗布液)
本発明に用いられる低屈折率層用ないし高屈折率層用塗布液としては、水系塗布液であれば、特に制限されるものではない。ただし、本発明では、金属酸化物粒子と、水溶性樹脂(バインダー樹脂)と、両性界面活性剤と、を含む低屈折率層ないし高屈折率層の少なくとも一層の形成に用いられる塗布液としては、金属酸化物粒子と、水溶性樹脂(バインダー樹脂)と、両性界面活性剤と、水系溶媒とを含む水系塗布液であることを特徴とする。かかる水系塗布液中の両性界面活性剤の含有量は、当該水系塗布液の全量に対して、0.001〜0.05質量%であることが好ましい。両性界面活性剤の添加量が0.001質量%以上とすることにより塗布ムラを改良する効果が良好となり、0.05質量%以下とすることにより、透明性も良好である。
(塗布液の調製方法)
まず、高屈折率層用ないし低屈折率層用の塗布液の調製方法について述べる。
本発明では、金属酸化物粒子、水溶性樹脂(バインダー樹脂)に加えて、更に両性界面活性剤を含む、低屈折率層ないし高屈折率層の少なくとも一層(好ましくは少なくとも低屈折率層の全層、より好ましくは低屈折率層ないし高屈折率層の全層)の形成に用いられる高屈折率層用ないし低屈折率層用の水系塗布液の調整方法としては、例えば、金属酸化物粒子、水溶性樹脂(バインダー樹脂;特にポリビニルアルコール系樹脂、その他のバインダー樹脂)、両性界面活性剤、水系溶媒(特に水、又は水を含む水系溶媒)、および必要に応じて添加されるその他の添加剤を添加し、攪拌混合するのが望ましい。この際、各成分の添加順も特に制限されず、攪拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、攪拌しながら一度に添加し混合してもよい。水系溶媒は、水系塗布液を適当な粘度に調製する目的で添加されるものである。
また、両性界面活性剤を含まない高屈折率層用ないし低屈折率層用の塗布液の調製方法としては、特に制限されず、例えば、金属酸化物粒子、水溶性樹脂(バインダー樹脂;特にポリビニルアルコール系樹脂、その他のバインダー樹脂)、および必要に応じて添加されるその他の添加剤を添加し、攪拌混合する方法が挙げられる。この際、各成分の添加順も特に制限されず、攪拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、攪拌しながら一度に添加し混合してもよい。必要に応じて、さらに溶媒(特に水、又は水を含む水系溶媒)を用いて、適当な粘度に調製される。
なお、高屈折率層用塗布液に含まれる第2の金属酸化物粒子は、塗布液を調製する前に、別途、分散液の状態に調製したものを用いるのが好ましい。すなわち、体積平均粒径が100nm以下のルチル型の酸化チタンを添加、分散して調製した水系の高屈折率層用塗布液を用いて、高屈折率層を形成することが好ましい。さらに、本発明では、上述した方法で、含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子を添加、分散して調製した水系の高屈折率層塗布液を用いて、高屈折率層を形成することがより好ましい。分散液を用いる場合は、各層において任意の濃度となるように分散液を適宜添加すればよい。
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を調製するための溶媒は、特に制限されないが、水系溶媒(特に水、又は水を含む水系溶媒)が好ましい。本発明においては、水溶性樹脂(バインダー樹脂)として、ポリビニルアルコール系樹脂を主に用いるために、水系溶媒を好適に用いることができる。水系溶媒は、有機溶媒を用いる場合と比較して、大規模な生産設備を必要とすることがないため、生産性の点で好ましく、また環境保全の点でも好ましい。なお、本発明の作用効果を損なわない範囲内であれば、有機溶媒を少量含んでいてもよく、塗布液全量に対して、10質量%以下が好ましく、最も好ましくは5質量%以下とするのが、上記効果を有効に発現し得る観点から望ましい。
前記水系溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類;などが挙げられる。これら水系溶媒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。また本発明の作用効果を損なわない範囲内で用いられる有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、特に水、または水とメタノール、エタノール、もしくは酢酸エチルとの混合溶媒が好ましく、水、または又は水を含む水系溶媒(特に水とメタノールまたはエタノールとの混合溶媒)がより好ましく、水が最も好ましい。
また、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液としては、塗布後に塗膜をセットさせて層間の混合を抑制できるという点から、ポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂と、水あるいは水を含む水系溶媒を主成分とする水系塗布液を用いることが好ましい。
高屈折率層用塗布液中のバインダー樹脂(ポリビニルアルコール系樹脂も含む)の濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましい。また、高屈折率層用塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。更に、高屈折率層用塗布液中に両性界面活性剤を含む場合には、高屈折率層用塗布液中の両性界面活性剤の濃度は、0.001〜0.05質量%であることが好ましい。
低屈折率層用塗布液中のバインダー樹脂(ポリビニルアルコール系樹脂も含む)の濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましい。また、低屈折率層用塗布液中の金属酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。更に、低屈折率層用塗布液中に両性界面活性剤を含む場合には、低屈折率層用塗布液中の両性界面活性剤の濃度は、0.001〜0.05質量%であることが好ましい。
同時重層塗布を行う際の高屈折率層用塗布液と低屈折率層用塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、45℃における粘度が、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、45℃における粘度が、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
(塗布および乾燥方法)
塗布および乾燥方法としては、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を30℃以上に加温して、塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましく、より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
塗布および乾燥方法の条件は、特に制限されないが、例えば、逐次塗布法の場合は、まず、30〜60℃に加温した高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液のいずれか一方を基材上に塗布、乾燥して層を形成した後、もう一方の塗布液をこの層上に塗布、乾燥して積層膜前駆体(ユニット)を形成する。次に、所望の赤外遮蔽性能を発現するために必要なユニット数を、前記方法にて逐次塗布、乾燥して積層させて積層膜前駆体を得る。乾燥する際は、形成した塗膜を、30℃以上で乾燥することが好ましい。例えば、湿球温度5〜50℃、膜面温度5〜100℃(好ましくは10〜50℃)の範囲で乾燥するのが好ましく、例えば、40〜60℃の温風を1〜5秒吹き付けて乾燥する。乾燥方法としては、温風乾燥、赤外乾燥、マイクロ波乾燥が用いられる。また単一プロセスでの乾燥よりも多段プロセスの乾燥が好ましく、恒率乾燥部の温度<減率乾燥部の温度にするのがより好ましい。この場合の恒率乾燥部の温度範囲は30〜60℃、減率乾燥部の温度範囲は50〜100℃にするのが好ましい。
また、同時重層塗布を行う場合の塗布および乾燥方法の条件は、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を30〜60℃に加温して、基材上に高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を好ましくは1〜15℃にいったん冷却し(セット)、その後10℃以上で乾燥することが好ましい。より好ましい乾燥条件は、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件である。例えば、80℃の温風を1〜5秒吹き付けて乾燥する。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜の均一性向上の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
ここで、前記セットとは、冷風等を塗膜に当てて温度を下げるなどの手段により、塗膜組成物の粘度を高め、各層間および各層内の物質の流動性を低下させたり、またゲル化する工程のことを意味する。冷風を塗布膜に表面から当てて、塗布膜の表面に指を押し付けたときに指に何もつかなくなった状態を、セット完了の状態と定義する。
塗布した時点から、冷風を当ててセットが完了するまでの時間(セット時間)は、5分以内であることが好ましく、2分以内であることがより好ましい。また、下限の時間は特に制限されないが、45秒以上の時間をとることが好ましい。セット時間が短すぎると、層中の成分の混合が不十分となる虞がある。一方、セット時間が長すぎると、金属酸化物微粒子の層間拡散が進み、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が不十分となるおそれがある。なお、高屈折率層と低屈折率層との間の中間層の高弾性化が素早く起こるのであれば、セットさせる工程は設けなくてもよい。
セット時間の調整は、水溶性樹脂の濃度や金属酸化物粒子の濃度を調整したり、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギーナン、ゲランガム等の各種公知のゲル化剤など、他の成分を添加することにより調整することができる。
冷風の温度は、0〜25℃であることが好ましく、5〜10℃であることがより好ましい。また、塗膜が冷風に晒される時間は、塗膜の搬送速度にもよるが、好ましくは10〜360秒、より好ましくは10〜300秒、さらに好ましくは10〜120秒である。
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の塗布厚は、上記で示したような好ましい乾燥時の厚みとなるように塗布すればよい。
[赤外遮蔽体]
本発明により提供される赤外遮蔽フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、赤外遮蔽効果を付与する赤外遮蔽フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
特に、本発明に係る赤外遮蔽フィルムが直接または接着剤を介してガラスまたはガラス代替の樹脂などの基体に貼合されている部材に好適である。
すなわち、本発明のさらに他の形態によれば、本発明に係る赤外遮蔽フィルムを、基体の少なくとも一方の面に設けた、赤外遮蔽体をも提供する。
前記基体の具体的な例としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、金属板、セラミック等が挙げられる。樹脂の種類は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂のいずれでも良く、これらを2種以上組み合わせて用いても良い。本発明で使用されうる基体は、押出成形、カレンダー成形、射出成形、中空成形、圧縮成形等、公知の方法で製造することができる。基体の厚みは特に制限されないが、通常0.1mm〜5cmである。
赤外遮蔽フィルムと基体とを貼り合わせる接着層または粘着層は、赤外遮蔽フィルムを日光(熱線)入射面側に設置することが好ましい。また、本発明に係る赤外遮蔽フィルムを、窓ガラスと基体との間に挟持すると、水分等の周囲のガスから封止でき耐久性に優れるため好ましい。本発明に係る赤外遮蔽フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。さらに粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
赤外遮蔽フィルムまたは赤外遮蔽体の断熱性能、日射熱遮へい性能は、一般的にJIS R 3209〜1998(複層ガラス)、JIS R 3106〜1998(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)、JIS R 3107〜1998(板ガラス類の熱抵抗および建築における熱貫流率の算定方法)に準拠した方法により求めることができる。
日射透過率、日射反射率、放射率、可視光透過率の測定は、(1)波長(300〜2500nm)の分光測光器を用い、各種単板ガラスの分光透過率、分光反射率を測定する。また、波長5.5〜50μmの分光測定器を用いて放射率を測定する。なお、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、熱線吸収板ガラスの放射率は既定値を用いる。(2)日射透過率、日射反射率、日射吸収率、修正放射率の算出は、JIS R 3106〜1998に従い、日射透過率、日射反射率、日射吸収率、垂直放射率を算出する。修正放射率に関しては、JIS R 3107〜1998に示されている係数を、垂直放射率に乗ずることにより求める。断熱性、日射熱遮へい性の算出は、(1)厚さの測定値、修正放射率を用いJIS R 3209〜1998に従って複層ガラスの熱抵抗を算出する。ただし中空層が2mmを超える場合はJIS R 3107〜1998に従って中空層の気体熱コンダクタンスを求める。(2)断熱性は、複層ガラスの熱抵抗に熱伝達抵抗を加えて熱貫流抵抗で求める。(3)日射熱遮蔽性はJIS R 3106〜1998により日射熱取得率を求め、1から差し引いて算出する。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。
《赤外遮蔽フィルムの作製》
〔実施例1〕
(低屈折率層用塗布液L1の調製)
コロイダルシリカ(日産化学社製;スノーテックスOXS)の10質量%水溶液650部に、ポリビニルアルコール(PVA103、重合度300、鹸化度99mol%、クラレ社製)の4.0質量%水溶液30部、ホウ酸の3.0質量%水溶液150部をそれぞれ混合した後、純水で1000部に仕上げて、酸化ケイ素分散液L1を調製した。
次いで、上記分散液L1を45℃に加熱し、撹拌しながら、ポリビニルアルコール(JP−45、日本酢ビ・ポバール製、重合度4500、鹸化度88mol%)の4.0質量%水溶液760部を順次添加した後、フッ素系両性界面活性剤(ネオス社製フタージェント400SW)の1質量%水溶液を40部添加し、低屈折率層用塗布液L1を調製した。
(高屈折率層用塗布液H1の調製)
二酸化チタン水和物を水に懸濁させた水性懸濁液(TiO2濃度100g/L)10L(リットル)に、水酸化ナトリウム水溶液(濃度10モル/L)30Lを撹拌下で添加し、90℃に昇温し、5時間熟成した後、塩酸で中和、濾過、水洗した。なお、上記反応(処理)において、二酸化チタン水和物は公知の手法に従い、硫酸チタン水溶液を熱加水分解して得られたものを用いた。
塩基処理チタン化合物をTiO2濃度20g/Lになるよう純水に懸濁させ、撹拌下クエン酸をTiO2量に対し0.4モル%加え昇温した。液温が95℃になったところで、濃塩酸を塩酸濃度30g/Lになるように加え、液温を維持しつつ3時間撹拌した。
得られた酸化チタンゾル水系分散液のpHおよびゼータ電位を測定したところ、pHは1.4、ゼータ電位は+40mVであった。さらに、マルバーン社製ゼータサイザーナノにより粒径測定を行ったところ、体積平均粒径は35nm、単分散度は16%であった。
体積平均粒径35nmのルチル型酸化チタン粒子を含む20.0質量%酸化チタンゾル水系分散液1kgに純水1kgを添加した。
・ケイ酸水溶液の調製
SiO2濃度が2.0質量%のケイ酸水溶液を調製した。
・シリカ変性酸化チタン粒子の調製
上記の10.0質量%酸化チタンゾル水系分散液0.5kgに、純水2kgを加えた後、90℃に加熱した。その後、2.0質量%のケイ酸水溶液1.3kgを徐々に添加し、次いで、得られた分散液をオートクレーブ中、175℃で18時間加熱処理を行い、さらに濃縮して、ルチル型構造を有する酸化チタンで、被覆層がSiO2である、20質量%のシリカ変性酸化チタン粒子のゾル水系分散液を得た。
上記で得られた20.0質量%のシリカ変性酸化チタン粒子のゾル水系分散液289部と、1.92質量%のクエン酸水溶液105部と、10質量%のポリビニルアルコール(PVA103、重合度300、鹸化度99mol%、クラレ社製)水溶液20部と、3質量%のホウ酸水溶液90部を混合して、シリカ変性酸化チタン粒子分散液H1を調製した。
次いで、シリカ変性酸化チタン粒子分散液H1を撹拌しながら、純水163部に、4.0質量%のポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA−124、重合度2400、鹸化度88mol%)水溶液419部を添加し、最後に純水で1200部に仕上げて、高屈折率層用塗布液H1を調製した。
(試料1の作製)
9層重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、上記で得られた低屈折率層用塗布液L1および高屈折率層用塗布液H1を45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層、長さ200m×幅210mm)上に、最下層と最上層は低屈折率層とし、それ以外はそれぞれ交互に、乾燥時の膜厚が低屈折率層は各層150nm、高屈折率層は各層130nmになるように計9層の同時重層塗布を行った。なお、層間の混合領域(混合層)の確認および膜厚の測定(確認)は、積層膜(赤外遮蔽フィルム試料)を切断して切断面をXPS表面分析装置で高屈折率材料(TiO2)と低屈折率材料(SiO2)の存在量を測定することで、上記した各層の膜厚が確保されていることが確認できた。
塗布直後、5℃の冷風を吹き付けてセットさせた。このとき、表面を指で触れても指に何もつかなくなるまでの時間(セット時間)は5分であった。
セット完了後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、9層からなる重層塗布品を作製した。
上記9層重層塗布品の裏面(9層重層塗布された基材面とは反対側の基材面(裏面))に、さらに9層重層塗布を行い、両面計18層からなる赤外遮蔽フィルム試料1を作製した(図1参照)。
〔実施例2〕
前記低屈折率層用塗布液L1の両性界面活性剤を花王製アンヒトール20HDに変更し、5%水溶液で8部添加し塗布液L2を作製した以外は実施例1と同様にして赤外遮蔽フィルム試料2を作製した。
〔実施例3〕
実施例2より、高屈折率層用塗布液H1に両性界面活性剤である花王製アンヒトール20HDを追加し、5%水溶液で1.5部添加し塗布液H3を作製した以外は実施例2と同様にして赤外遮蔽フィルム試料3を作製した。
〔実施例4〕
前記低屈折率層用塗布液L1の両性界面活性剤を花王製アンヒトール20ABに変更し、5%水溶液で8部添加し塗布液L4を作製した以外は実施例1と同様にして赤外遮蔽フィルム試料4を作製した。
〔実施例5〕
前記実施例3の低屈折率層用塗布液L2の両性界面活性剤をソフタゾリンLSB−R(川研ファインケミカル社製)に変更し、ノニオン系界面活性剤(ビッグケミー社製;BYK−348)を5%水溶液で0.8部追加添加し塗布液L5を作製した以外は実施例3と同様にして赤外遮蔽フィルム試料5を作製した。
〔実施例6〕
前記実施例3の低屈折率層用塗布液L2にアニオン系界面活性剤(花王社製;ペレックスTR)の5%溶液(水/エタノール=1/1(質量比))で0.8部追加添加し塗布液L6を作製した以外は実施例3と同様にして赤外遮蔽フィルム試料6を作製した。
〔実施例7〕
前記実施例3から低屈折率層用塗布液L2中の両性界面活性剤を8部から0.32部に変更し、高屈折率用塗布液の両性界面活性剤を5%水溶液で0.20部に変更して塗布液L7を作製した以外は実施例3と同様にして赤外遮蔽フィルム試料7を作製した。
〔実施例8〕
前記実施例3から低屈折率層用塗布液L2中の両性界面活性剤を8部から24部に変更し塗布液L8を作製した以外は実施例3と同様にして赤外遮蔽フィルム試料8を作製した。
〔実施例9〕
前記実施例5から低屈折率層用塗布液L5のノニオン界面活性剤を除去し塗布液L9を作製した以外は実施例5と同様にして赤外遮蔽フィルム試料9を作製した。
〔実施例10〕
前記実施例5の低屈折率層用塗布液L5に更にアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製;ハイテノールNF0825)を5%水溶液で0.8部添加し塗布液L10を作製した以外は実施例5と同様にして赤外遮蔽フィルム試料10を作製した。
〔実施例11〕
前記実施例1の低屈折率層用塗布液L1からフッ素界面活性剤を除去し塗布液L11を作製し、高屈折率層用塗布液H1にソフタゾリンLSB−R(川研ファインケミカル製)を5%水溶液で4部添加し塗布液H11を作製した以外は実施例1と同様にして赤外遮蔽フィルム試料11を作製した。
〔実施例12〕
前記実施例9の赤外遮蔽フィルム試料の構成を、基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)の両面に9層からなる重層塗布品を形成するのではなく、基材の片面に9層重層塗布後、更に9層を重層塗布し、片面18層からなる重層塗布品にした以外は実施例9と同様にして赤外遮蔽フィルム試料12を作製した(図2参照)。
〔比較例1〕
前記実施例1から低屈折率層塗布液L1中の界面活性剤をアニオン系界面活性剤(花王社製;ペレックスTR)の5%溶液(水/エタノール=1/1(質量比))で8部に変更し塗布液L13を作製した以外は実施例1と同様にして赤外遮蔽フィルム試料13を作製した。
〔比較例2〕
前記実施例1から低屈折率層塗布液L1中の界面活性剤をノニオン系界面活性剤(ビッグケミー社製;BYK−348)を5%水溶液で8部に変更し塗布液L14を作製した以外は同様にして赤外遮蔽フィルム試料14を作製した。
〔比較例3〕
前記実施例1から低屈折率層塗布液L1中の界面活性剤をカチオン系界面活性剤(花王社製;コータミン24P)を5%水溶液で8部に変更し塗布液L15を作製した以外は実施例1と同様にして赤外遮蔽フィルム試料15を作製した。
〔比較例4〕
前記実施例1から低屈折率層塗布液L1中の界面活性剤を抜いて塗布液L16を作製した以外は実施例1と同様にして赤外遮蔽フィルム試料16を作製した。
各層中での両性界面活性剤の含有量は塗布液の固形分量から求めることができる。
《赤外遮蔽フィルムの評価》
上記で用いたそれぞれの高屈折率層用塗布液と低屈折率層用塗布液と、上記で作製した各赤外遮蔽フィルムとについて、下記の性能評価を行った。
(各層の単膜屈折率の測定)
基材上に屈折率を測定する対象層(高屈折率層、低屈折率層)をそれぞれ単層で塗設したサンプルを作製し、下記の方法に従って、各高屈折率層および低屈折率層の屈折率を求めた。
分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率の測定結果より、屈折率を求めた。
上記方法に従って各層の屈折率を測定した結果、実施例1〜12及び比較例1〜4の試料1〜16の高屈折率層、低屈折率層の屈折率差は、いずれも0.3以上であることを確認した。
(可視光透過率および赤外透過率の測定)
上記分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、実施例1〜12及び比較例1〜4の赤外遮蔽フィルム試料1〜16の300nm〜2000nmの領域における透過率を測定した。可視光透過率は550nmにおける透過率の値を、赤外透過率は1000nmにおける透過率の値を用いた。なお、比較例3の赤外遮蔽フィルム試料15に関しては、カチオン系界面活性剤を添加した低屈折率層用塗布液が真っ白になり、得られる低屈折率層も白色となったため、可視光透過率および赤外透過率を測定することはできなかった。
(膜面均一性(ヘイズ値)の測定)
ヘイズ値は、実施例1〜12及び比較例1〜4の赤外遮蔽フィルム試料1〜16をヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)により測定し、下記のように評価した。
◎:1%以下
○:1%超〜1.5%以下
△:1.5%超〜2%以下
×:2%超。
(塗布ムラ)
実施例1〜12及び比較例1〜4の赤外遮蔽フィルム試料1〜16の塗布面(膜面)の干渉ムラを目視評価した。
◎:干渉ムラなし
○:うっすら干渉ムラが見られる
△:一部に干渉ムラが見られる
×:全面に干渉ムラが見られる。
(他の塗布性(筋等))
実施例1〜12及び比較例1〜4の赤外遮蔽フィルム試料1〜16の塗布面(膜面)の筋を目視評価した。
◎:筋が見られない
○:端部の方に筋が見られる
△:端部以外でも筋が見られる
×:全面に筋が見られる。
(後加工適性)
[ハードコート層形成方法]
上記作製した赤外遮蔽フィルム(実施例1〜12及び比較例1〜4の赤外遮蔽フィルム試料1〜16の9層または18層の重層塗布品の最表面層である低屈折率層の表面)上に、塗布組成物として下記のハードコート塗布組成物1を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過したものを、マイクログラビアコーターを用いて赤外遮蔽フィルムの表面に塗布し、恒率乾燥区間温度50℃、減率乾燥区間温度70℃で乾燥の後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を0.2J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚3μmのハードコート層(HC層)を形成した。
[ハードコート塗布組成物1]
上記ハードコート塗布組成物1の組成は、以下の通りである。
・ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート 73質量部
(NKエステルA−TMM−3、新中村化学工業(株)製)
・イルガキュア184(チバ・ジャパン(株)製) 5質量部
・シリコーン系界面活性剤 1質量部
(信越化学工業(株)製 商品名:KF−351A)
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
・酢酸メチル 70質量部
・メチルエチルケトン 70質量部
[後加工適性評価]
上記したハードコート層形成方法において、赤外遮蔽フィルム上にハードコート塗布組成物1を塗布した際の膜面を目視評価した(図1、2参照)。
○:問題なくハードコート塗布組成物1が塗布でき、良好なHC層を形成できる
△:ハードコート塗布組成物1を塗布した際に塗布ムラが見られる。
なお、比較例3の赤外遮蔽フィルム試料15に関しては、カチオン系界面活性剤を添加した低屈折率層用塗布液が真っ白になり、得られる低屈折率層も白色となったため、後加工適性を目視評価することはできなかった。
本出願は、2012年6月6日に出願された日本特許出願番号2012−129047号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
1、1’ 赤外遮蔽フィルム、
11 基材、
12 下引層、
13 積層ユニット、
14 低屈折率層、
15 高屈折率層、
16 ハードコート層、
17 透明接着層、
18 基体、
L 太陽光。

Claims (8)

  1. 基材上に、屈折率の異なる低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された積層体を少なくとも1つ以上有し、
    前記低屈折率層および前記高屈折率層の少なくとも一層が、金属酸化物粒子と、水溶性樹脂と、両性界面活性剤と、を含み、
    前記両性界面活性剤が、下記B−1〜B−21(B−21で表される化合物は花王製アンヒトール20HD)よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種であることを特徴とする赤外遮蔽フィルム。
  2. 前記両性界面活性剤が、少なくとも前記低屈折率層に含有していることを特徴とする請求項1記載の赤外遮蔽フィルム。
  3. 前記両性界面活性剤が、スルホン酸系であることを特徴とする請求項1または2記載の赤外遮蔽フィルム。
  4. 前記両性界面活性剤が、前記低屈折率層および前記高屈折率層の全層に含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の赤外遮蔽フィルム。
  5. 前記低屈折率層及び高屈折率層の少なくとも一層に、ノニオン系およびアニオン系界面活性剤よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の赤外遮蔽フィルム。
  6. 前記両性界面活性剤にフッ素が含まれていないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の赤外遮蔽フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の赤外遮蔽フィルムを構成する低屈折率層ないし高屈折率層を形成するための水系塗布液であって、
    金属酸化物粒子と、水溶性樹脂と、両性界面活性剤と、水系溶媒とを含み、
    両性界面活性剤の添加量が、水系塗布液全量に対して0.001〜0.05質量%の範囲であることを特徴とする水系塗布液。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の赤外遮蔽フィルムを、基体の少なくとも一方の面に設けてなる赤外遮蔽体。
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