JP3572934B2 - 液体の脱泡装置および液体の塗布装置 - Google Patents

液体の脱泡装置および液体の塗布装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続的に液体を送る際に液体中に存在する気泡を除去する装置に関する。また本発明は、塗液中の気泡を低減して、気泡巻き込みに起因する被塗布物の塗膜欠陥を防止できる液体の塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼板のような金属板に対して、ロールコーター方式、カーテンコーター方式、ノズルコーター方式等の塗布装置を用いて、塗料や化成処理液等の塗液の塗布が広く行われている。
【0003】
例えば、鋼板の連続処理ラインにおいて、鋼板に塗料や化成処理液等の塗液を塗布する場合、ロールコーター塗布装置を用いることが多い。気泡を巻き込んだ塗液が鋼板に塗布されると、塗膜にクレーター状の塗膜欠陥等が発生し、製品の外観を損なったり、塗膜性能を損なったりする。
【0004】
塗布部に供給される塗液中には、種々の原因で気泡が巻き込まれている。そのため、ロールコーター塗布装置では、図8(a)に示すように塗布部のコーターパン19a内に液面付近がピックアップロール20a側と連通する板状の仕切板80a、図8(b)に示すようにコーターパン19aの底部でピックアップロール20a側と連通する板状の仕切板80b、あるいは両者を設けて、これらの仕切板によって、循環流路40aからコーターパン19aに送られてきた塗液中の気泡5aの浮上を促進して破泡し、気泡5aがピックアップロール20a側に移動しないようにしている(例えば、特開昭62−160161号公報等)。
【0005】
しかし、前記した板状の仕切板は気泡の浮上を促進する作用が弱いので、気泡の巻き込みに起因する塗膜欠陥が発生しやすい。特に塗料のように粘性が高い液体で、また塗料中の気泡のように直径の小さい気泡の場合、気泡の浮上が遅いので、塗液中の気泡を浮上除去する作用が低下し、気泡の巻き込みに起因する塗膜欠陥がより発生しやすくなる。
【0006】
したがって、塗料のように粘性が高い液体で、また塗料中の気泡のように直径の小さい気泡であっても、塗液中に存在する気泡を効率よく除去できることが必要である。
【0007】
液体中の気泡の挙動について、容器内の静止した液体中に存在する気泡を例にして、図9を用いて説明する。
【0008】
容器28内の液体29中に存在する気泡30は、その周りの液体29よりも比重が小さいため液体29中を浮上し、液面31まで到達すると、気泡膜32が破れて消滅する。矢印Bで示される速度で浮上中の気泡30には上向き方向に矢印Cで示される浮力が、下向き方向には矢印Dで示される液体29の粘性による流体抵抗力が作用している。ここで、気泡30の直径が小さいほど、気泡30の浮力Cは小さくなるから浮上速度Bは小さくなり、また、液体29の粘性が大きいほど気泡30の浮上時の粘性による流体抵抗力Dが大きくなるから気泡30の浮上速度Bは小さくなる。したがって、一般的に、気泡30の直径が小さくなるほど、また液体29の粘性が大きくなるほど、気泡30が浮上消滅するまでの時間が長くなるので、消泡しにくくなる。
【0009】
液体中の気泡を除去する装置として、超音波を利用した脱泡装置や遠心分離式脱泡装置が知られている。
【0010】
図10に、超音波を利用した液体の脱泡装置を示す。多数の気泡5を含む液体4が流入管1から送られ、超音波加振器2を外壁に設置した加振容器3内に流入する。超音波加振器2で加振容器3内の液体4に超音波による振動を与え、加振容器3内を流れる液体4中に圧力分布の不均一を形成して、高圧部の気泡5を低圧部に移動させ、液体4中に分散している複数の気泡5をブドウの房のように集合させ、気泡集合体6をつくる。
【0011】
加振容器3から流出した液体4は、連結管33を経て気泡浮上容器34内に送られる。気泡浮上容器34では、気泡を含む液体4を溜め、静止に近い状態にして、気泡集合体6を浮上させて液面31で消滅させる。
【0012】
気泡集合体6は一つ一つの分散した気泡5に比べて体積が大きいため、その浮力が分散した気泡5の浮力より大きいので、気泡浮上容器34内での浮上速度が速くなり、液面31に浮上消滅するまでの時間が短くなるので、気泡除去が促進される。流出管12から流出する液体4中の気泡は、加振容器3内への流入時と比べると、少なくなっている。
【0013】
しかし、この装置では、気泡集合体6の浮上消滅を十分に行うためには、浮上に要する時間を確保するために気泡浮上容器34の容積をかなり大きくする必要がある。そのため、設備が大規模になり、設備費の増加、設置場所の確保、気泡浮上容器34内の液体量の増加などの問題点がある。特に、気泡5の直径が小さくて気泡集合体6の体積が小さくなる場合、液体4の粘性が大きい場合には、図9で説明した通り、気泡浮上容器34内での気泡集合体6の浮上速度が遅くなるため、この問題が顕著になる。そのため、設備規模の制約から、気泡集合体6が浮上して消滅するまでの時間が十分に得られず、気泡集合体6は液面31で消滅する前に流出管12から液体4とともに流出してしまい、低い気泡除去効率で利用しているのが実状である。
【0014】
図11に遠心分離式脱泡装置を示す。遠心分離式脱泡器8で液体を強制的に旋回させて、発生する大きな遠心力を利用し、また気体と液体の遠心力の差を利用して気液分離を行う。
【0015】
多数の気泡5を含む液体4が流入管1から、円筒状の遠心分離式脱泡器8の下部に高流速で流入する。遠心分離式脱泡器8内では矢印Aで示される螺旋回転の運動により、大きな遠心力が発生する。気泡5より比重が大きい液体4は旋回円の中心から外側に向かって移動する。逆に、液体4より比重が小さい気泡5は旋回円の中心に向かって移動する。旋回円の中心に集まった気泡5は互いに合体して大きな気泡塊9になり、旋回円の中心軸上に設置された放気管10から吸引ポンプ11で吸引され、若干の液体4とともに系外に排出される。
【0016】
ここで、旋回円の中心に向かって移動中の気泡5には旋回円の中心に向かって向心力が、外側に向かって流体粘性力が作用している。この時、気泡5の直径が小さいほど、気泡5の向心力は小さくなるから旋回円中心への移動速度は遅くなり、さらに液体4の粘性が大きいほど液体の粘性による流体抵抗が大きくなるから気泡5の旋回円中心への移動速度は遅くなる。したがって、超音波を利用した脱泡装置の場合と同様、遠心分離式脱泡装置でも、気泡5の直径が小さく、さらに液体4の粘性が大きくなると、気泡5が旋回円中心に集まって放気管10から系外に排出されるまでの所要時間が長くなるため、気泡5は放気管10から遠心分離式脱泡装置の系外へ排出される前に流出管12から液体4とともに流出してしまい、その結果、気泡除去効率が著しく低くなる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、超音波を利用した液体の脱泡装置では、十分な浮上速度が得られず、気泡除去時間が長くかかるため、設備規模が大きくなり、また設備規模を小さくした場合、気泡除去効率が極めて低くなってしまう。また、遠心分離式脱泡装置でも、気液の分離効果が十分に得られず、気泡除去効率が極めて低いという問題がある。この問題は、液体の粘性が高くかつ気泡の直径が小さい場合に、特に顕著になる。
【0018】
したがって、例えば、鋼板のロールコーター塗布装置の塗液の供給部に前記脱泡装置を設けても、塗料のように粘性が大きく、塗液中の気泡の直径の小さい塗液を塗布すると、塗液中の気泡を十分に除去できない。そのため、多数の小さな気泡の残った塗液が塗布部に供給され、鋼板に塗布されるので、鋼板表面にクレーター状の欠陥等の塗膜欠陥が発生し、外観を損なったり、塗膜性能が低下したりする。 塗液中に存在する気泡が弊害になるのは、前記の例だけでない。例えば、感光性印刷版の製造にあたって、ロールコーター塗布装置等の塗布装置を用いて、アルミニウム板やプラスチック板等の支持体上に感光液を塗布することなどが広く行われているが、塗布する感光液中に気泡があると、この気泡が塗布膜(感光膜)中に巻き込まれて性能が低下する。
【0019】
また、塗液に限らず、液体中に含まれる気泡が弊害になることも多い。例えば、セラミック原料、焼結用助材,樹脂、可塑剤および有機溶剤を適正粘度に混合した後、テープ成形するグリーンシートの製造に際して、前記混合物に気泡が含まれていると、乾燥後のグリーンシートの性能が低下する。また、オンライン分析などにおいて、液体分析試料を連続的に採取して分析装置に供給するにあたって、液体中に空気などの気泡が混入していると、分析に支障をきたしたり、分析精度が低下したりする。
【0020】
したがって、液体中の気泡を効率よく除去できる脱泡装置があれば、前記した多様な問題にも対処できる。
【0021】
本発明は、前記した必要性を考慮して、液体中に存在する気泡を小さい設備規模で効率良く除去できる装置を提供することを目的とする。また、本発明は、鋼板の連続塗布ライン等において、塗液中の気泡を低減して、塗膜欠陥を防止できる液体の塗布装置を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段は、第1発明は超音波加振器と加振容器を備えた超音波脱泡手段と遠心分離式脱泡器を備えた遠心分離式脱泡手段とを液体の流れ方向に順次連接した液体の脱泡装置であって、加振容器とその下流の遠心分離式脱泡器の下部を連結する連結管を有し、該連結管は連結管内の液体が遠心分離式脱泡器の内壁に沿って流入するように連結されていることを特徴とする液体の脱泡装置、第2発明は第1発明の脱泡装置を有する液体の塗布装置、第3発明は第2発明の塗布装置が、ロールコーター塗布装置、また第4発明は、第3発明のロールコーター塗布装置が、メッシュの見開きサイズが150〜2000μmの網目状開口部を有する高分子樹脂製仕切板を有するコーターパンを備えている場合である。
【0023】
[作用]
超音波脱泡手段、遠心分離式脱泡手段のそれぞれの脱泡作用自体は公知であるが、第1発明では、両者を連接することによって、各々の公知の作用の組み合わせからは予測できない顕著な脱泡作用を奏する。すなわち、第1発明では、液体中に分散して存在する多数の気泡は、先ず、超音波加振器と加振容器を備えた超音波脱泡手段の超音波振動により液体中に生ずる圧力分布の不均一によって、高圧部から低圧部へ移動してブドウの房状の気泡集合体になる。ブドウの房状の気泡集合体は一つ一つの分散した気泡に比べて、体積が大きい。加振容器とその下流の遠心分離式脱泡器の下部を連結管で連結するとともに、該連結管は連結管内の液体が遠心分離式脱泡器の内壁に沿って流入するように連結されることで、遠心分離式脱泡器を備えた遠心分離式脱泡手段において、旋回円中心への向心力が大きくなり、ブドウの房状の気泡集合体の旋回円中心への移動速度が格段に速くなる。そのため、遠心式脱泡器内に流入してから流出していくまでの短時間の間で、確実に旋回円中心に集まり、そこで互いに合体し大きな気泡塊となって放気管から系外に排出される。
【0024】
以上の作用により、第1発明の脱泡装置は、これまでの装置に比べて気泡除去効率が著しく高くなる。また、粘度が高く、小さい気泡を含む液体であっても気泡除去効率が優れる。さらに、気泡を浮上させるための大容積の気泡浮上容器が不必要となるため、脱泡装置の設備規模を著しく小さくできる。
【0025】
第1発明の脱泡装置を有する液体の塗布装置(第2発明)は、塗料のように粘性が大きくかつ気泡の直径が小さい塗液であっても、塗液中の気泡を十分に除去できるので、気泡の巻き込みに起因する塗膜欠陥を防止できる。ロールコーター塗布装置に、この脱泡装置を設ける(第3発明)と、塗布部に持ち込まれる塗液中の気泡が少なくなっているので、塗液を塗布後の鋼板表面に発生する気泡巻き込みに起因するクレーター状の塗膜欠陥等を防止できる。
【0026】
第3発明の液体のロールコーター塗布装置においては、第1発明の脱泡装置によって塗液中の気泡が大幅に低減されるが、塗液中に少量の気泡が残存することがあり、あるいは塗液が塗布部に送られる際に気泡が発生することもある。したがって、塗布部で塗液中の気泡をさらに低減できると、気泡巻き込みに起因する塗膜欠陥等を防止する上でより有利である。
【0027】
第4発明では、コーターパン内にメッシュの見開きサイズが150〜2000μmの網目状開口部を有する高分子樹脂製仕切板を有するコーターパンを備えることによって、コーターパン内に供給された塗液が塗料のように粘度が高く、気泡の小さい場合であっても、塗液が仕切板の網目状開口部を通過してピックアップロール側に移動する際に、塗液中の気泡が仕切板の網目部にトラップされて脱泡される。そのため、ピックアップロールで汲み上げ時の塗液中の気泡がさらに少なくなるので、気泡巻き込みに起因する塗膜欠陥等の防止効果がさらに向上する。
【0028】
第4発明の仕切板の材質、開口部寸法の限定理由について説明する。図1に示す塗液を循環させる簡易な実験装置を用いて、コーターパン内の流れを制御するために使用されている仕切板の材質、形状を変更して、塗液中の気泡の除去性を検討した。
【0029】
図1において、72は塗液の流れを制御する仕切板であり、底部に塗液が容易に流れることができる隙間を有する仕切板72a、上部に塗液が通過する部位のある仕切板72bからなる。
【0030】
塗液として、粘度300cpのアミノアルキド系クリアー塗料をおよそ1000ml入れた後、小型高速ディスペーサーを用いて強制的に気泡を巻き込んだ試料を作成した。そして、図1の実験装置において、材質、メッシュの目開きサイズの異なる網目状開口部を有する仕切板72a、72bを用い、それぞれについて、試料70をポンプ71を用いて5分間循環した後、塗液槽73(深さ10cm)の液面下2cmの部分(c点)から試料70をスポイトでサンプリングした。サンプリングした試料70を、スペーサーを介したスライドガラスに滴下し、上部にカバーガラスをのせた後、倍率3倍の顕微鏡観察により光点として認められた気泡数をカウントした。
【0031】
調査結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0003572934
【0033】
表1から、仕切板の材質が高分子樹脂で、メッシュの目開きサイズが150〜2000μmの網目状開口部を有する場合に、気泡数の減少効果が大きいことがわかる。
【0034】
高分子樹脂製仕切板が、金属製仕切板よりも、網目部で気泡をトラップする効果が大きいのは、高分子樹脂製仕切板の方が、金属製仕切板よりも、塗料との濡れ性がよいので、網目部で気泡をトラップする効果が優れるためと考えられる。
【0035】
また、メッシュの目開きサイズを150〜2000μmで気泡数の減少効果が大きいのは、メッシュの目開きサイズが150μmより小さい場合、塗料が網目状開口部を通過しにくくなり、従来の板状の仕切板と同様な流れになるため、気泡をトラップする効果が不十分になり、また、メッシュの目開きサイズが2000μmより大きい場合、塗料が網目状開口部を通過する際に、気泡をトラップする効果がほとんどなくなるためと考えられる。
【0036】
また、コーターパンに送られる塗液中の気泡は、超音波脱泡手段を経ているので、気泡の直径が大きくなっているので、仕切板での脱泡効果をより向上できる。
【0037】
【発明の実施の形態】
図2は、第1発明の第1の実施の形態に係る液体の脱泡装置を示す図であり、説明の便宜上、脱泡装置の中の液体および気泡の様子を透視する斜視図としている。
【0038】
図2において、流入管1を通り、超音波加振器2が設置された加振容器3内に流入する液体4中には多数の気泡5が存在する。超音波加振器2が設置された加振容器3内の液体4に超音波により振動を与えることによって加振容器3内を流れる液体4中に圧力分布の不均一が生じ、高圧部の気泡5が低圧部に移動して、液体4中に分散している複数の気泡5が、ブドウの房状に集合して、気泡集合体6となる。
【0039】
ブドウの房状に集合した気泡集合体6を含む液体4は、加振容器3から流出し、連結管7を経て下流に設置された遠心分離式脱泡器8内にその下部から流入する。図3は、図2の遠心分離式脱泡器8下部の液体4流入部の断面(E−E断面)を示す図である。図3に示すように、遠心分離式脱泡器8の入口36は、高流速を得るために流路が狭くなっている。液体4は流入管1から遠心分離式脱泡器8の断面形状が円形の内壁35の矢印Fで示される接線方向に高流速で流れ込んでくる。高流速で流れ込んできた液体4は遠心分離式脱泡器8の内壁35に沿って、図3の矢印Gで示されるように旋回し、図2の矢印Aで示される螺旋回転をしながら上昇し、最終的に遠心分離式脱泡器8の上部の流出管12から流出していく。
【0040】
遠心分離式脱泡器8内では、ブドウの房状の気泡集合体6は、一つ一つの分散した気泡5に比べて、矢印Aで表される旋回円の中心への向心力が大きくなるため、旋回円中心への移動速度が速くなって効率良く旋回円中心に集められる。旋回円中心に集合した複数の気泡集合体6は互いに合体し、一つの大きな気泡塊9となる。気泡塊9は放気管10から放気ポンプ11により系外へ連続的に排出される。流出管12から気泡を含まない液体4が流出する。
【0041】
図2の装置において、液体4の流量が多くなる程、また、液体4の粘性が大きくなる程、もしくは気泡5の直径が小さくなる程、脱泡装置にかかる負荷が大きくなり、気泡除去効率が低下する。このような場合、前記図2に示した超音波脱泡手段と遠心分離式脱泡手段とを順次連設した脱泡装置を、図4あるいは図5に示すように液体4の流れに対して並列あるいは直列に設置することにより、気泡除去効率を向上できる。
【0042】
図4は、第1発明の第2の実施の形態に係る脱泡装置を示す図で、図2に示した脱泡装置が液体4の流れに対して並列に設置されており、図中の符号は図2における符号と同じものを示す。図4の脱泡装置では、一組の脱泡装置の負荷を少なくして気泡除去効率をさらに向上できる。尚、並列に設置する脱泡装置の列数は2列にとどまらず、3列以上でも良い。
【0043】
図5は、第1発明の第3の実施の形態に係る脱泡装置を示す図で、図2に示した脱泡装置が液体4の流れに対して直列に設置されており、図中の符号は図2における符号と同じものを示す。図5の脱泡装置では、前段の脱泡装置で除去しきれなかった気泡を後段の脱泡装置で除去でき、トータルの気泡除去効率をさらに向上できる。尚、直列に設置する脱泡装置の段数は2段にとどまらず、必要に応じては3段以上でも良い。
【0044】
尚、脱泡装置の気泡除去効果をより高めるために、超音波加振器2を設置した加振容器3とその下流の遠心分離式脱泡器8を連結する連結管7の長さはできる限り短くすることが望ましい。加振容器3内でブドウの房状に集合した気泡集合体6は、加振容器3を出た後の流れの中で、特に流れが乱流の場合、時間が経つと再び分散して気泡5が均一に分布してしまい、下流の遠心分離式脱泡器8において、気泡集合体6を旋回円の中心に効率よく集めるという作用が低下する。したがって、気泡集合体6が再び分散する時間をなるべく与えないために、加振容器3とその下流の遠心分離式脱泡器8の間の連結管7の長さはできる限り短くすることが、気泡除去効率を高める上でより有効である。
【0045】
本発明の第1発明の脱泡装置は、液体中に含まれる気泡を除去する装置として、広く使用することができる。
【0046】
例えば、鋼板等の帯状体にカーテンコーター、ノズルコーター等の塗布装置を用いて塗料や化成処理液等の塗液を塗布するにあたって、塗液中の気泡を除去する装置として好適である。
【0047】
また、感光性印刷版の製造に際して、ロールコーター塗布装置等の塗布装置を用いてアルミニウム板やプラスチック板等の支持体上に感光性液を塗布するにあたって、感光液中の気泡を除去する装置としても使用できる。
【0048】
また、セラミック原料、焼結用助材,樹脂、可塑剤および有機溶剤を適正粘度に混合した後、テープ成形するグリーンシートの製造に際して、前記混合物中の気泡を除去する装置として使用することもできる。
【0049】
また、本発明の脱泡装置は、オンライン分析などにおいて、液体分析試料を連続的に採取して分析装置に供給するにあたって、液体中に混入している空気などの気泡を除去する装置として使用する等、液体の脱泡装置として広く使用することができる。
【0050】
次に、本発明の第2発明乃至第4発明の実施の形態について、図6に示す鋼板の連続塗装ラインのロールコーター塗装装置に基いて説明する。図6において、塗装部への塗料供給部に、脱泡装置として、超音波加振器2を外壁に設置した加振容器3、および遠心分離式脱泡器8が連設されている。塗装部のコーターパン19内には、塗料中に一部浸漬しているピックアップロール20を挟むように仕切板80が設けられている。
【0051】
塗料14はその成分分布を均一にするため循環タンク15内で攪拌器16により攪拌されている。攪拌された塗料14は塗料送りポンプ17で送り配管18を通してコーターパン19に送られる。コーターパン19では、送られてきた塗料14の一部が、回転しているピックアップロール20の表面に付着する様にコーターパン19内の塗料液面レベルが制御されている。ピックアップロール20の表面に付着した塗料はさらに回転しているコーターロール21の表面に付着する。コーターロール21は一定速度で回転しており鋼板13と接触しているため、コーターロール21に付着した塗料14は一定量鋼板13に塗布される。
【0052】
ここで、コーターパン19内の塗料14の成分分布の均一性を良くするために、コーターパン19に送られてくる塗料14の流量は鋼板13に塗布する流量より数倍多いのが一般的である。よって、コーターパン19では塗料14が余るため、余った塗料14を一旦リザーバ22で受けて、塗料戻しポンプ23にて、戻し配管24をとおして循環タンク15に戻すようになっている。
【0053】
循環タンク15内の塗料レベルを一定に保つため、循環タンク15内には鋼板13に塗布される分に相当する量の塗料14を外部の塗料缶25からポンプ26を介して供給されている。
【0054】
以上のようにして鋼板13に連続塗装する間、塗料14は循環タンク15、コーターパン間19を循環している。
【0055】
ここで、主に、塗料缶25の輸送時、塗料缶25から循環タンク15への塗料供給時、塗装装置稼動時の空の配管内に塗料14を送液しはじめる時、稼働中の循環タンク15での塗料攪拌時、およびコーターパン19からリザーバ22へ塗料14が落ちる時等、塗料14が外気と接触しかつ乱れて流れる時に塗料14は外気を巻き込み塗料14内に微小な気泡が生成する。
【0056】
一旦、塗料14内に生成した前記気泡は、塗料14の粘性が大きいこと、気泡の直径が小さいことが原因で、自然に浮上して消滅することなく、塗料14の流れに乗って移動する。
【0057】
コーターパン19の上流側に第1発明の脱泡装置、具体的には、遠心分離式脱泡器8の上流に直列に超音波加振器2を設置した加振容器3が設置されている。塗料14はコーターパン19に流入する前に、上流側の加振容器3中に流れ込み、一旦ここで超音波振動によって、塗料14中の気泡がブドウの房状に集合し気泡集合体となり、そのままの状態で、遠心分離式脱泡器8内に流入する。遠心分離式脱泡器8内で、気泡集合体はその体積に比例した強い向心力を受けるため、短時間で効率良く旋回円の中心上に集まり、旋回円の中心に集まった気泡集合体は互いに合体して大きな気泡塊になり、旋回円の中心軸上に設置された放気管10を通してコーターパン19の下流のリザーバ22に戻される。気泡が除去された塗料は、流出管12を経てコーターパン19へ送られる。
【0058】
ここで、放気管10内の気泡を、リザーバ22に戻す理由は以下の通りである。放気管10からは、除去された気泡だけではなく、若干の塗料14も排出されるため、その分の塗料14を無駄に捨てないためにリザーバ22に戻している。この際、リザーバ22に戻った気泡は既に塊となって大きくなっているため、リザーバ22内で素早く浮上して消滅する。万が一、気泡塊が塗料14の流れに巻き込まれ、微細化して、塗料14とともに移動していっても、コーターパン19の前で脱泡装置で除去されるために問題はない。
【0059】
この事から、放気管10内の気泡塊を戻す場所としては、塗料が溜められていて、戻ってきた気泡塊が浮上して外部の大気中に消滅していく場所が望ましく、前記のリザーバ22内の他には、循環タンク15内が望ましい。
【0060】
尚、前記の例に限らず、放気管10から気泡塊とともに若干排出される塗料14を専用に回収する塗料回収装置を設置し、この塗料回収装置に放気管10内の塗料14を回収することも有効である。
【0061】
さらにここで、放気管10に気泡塊9を吸引するポンプが設置されていないにもかかわらず、気泡塊が遠心分離式脱泡器8から放気管10を通して排出される理由は、遠心分離式脱泡器8の下流に設置した圧力調整弁27の開度を調整することによって、塗料送りポンプ17により発生した正圧の影響で遠心分離式脱泡器8内が外部に対して正圧になるため、その圧力差により遠心分離式脱泡器8内の気泡塊9は放気管10を通って外部に流れるためである。
【0062】
コーターパン19内に設けられている仕切板80を図7に示す。仕切板80は第4発明に規定するメッシュの見開きサイズ(d)が150〜2000mμの網目状開口部を有する高分子樹脂製仕切板であり、その上部と両側部がSUS板81で補強されており、コーターパン19内の塗料中に一部浸漬しているピックアップロール20を挟むように設けられている。
【0063】
図6に示した装置では、塗料供給部に設けた第1発明の脱泡装置によって気泡が大幅に低減された塗液がコーターパン19に供給されるが、塗液中に少量の気泡が残存することもあり、あるいはコーターパンに塗液が流入する際に気泡が発生することもある。
【0064】
このような場合、必要に応じてコーターパン19内に仕切板を設けることができる。仕切板は図8に示したような板状の仕切板であってもよいが、板状の仕切板の場合、塗料流量が多い場合や気泡のサイズが数十μm以下の場合などでは、塗料中に気泡を巻き込んだまま、塗料が仕切板にそって流れるため、気泡を浮上除去する作用が弱く、気泡がピックアップロール20側へ流れ込むことがある。
【0065】
図6に示した装置では、コーターパン19内に、第4発明に規定する特定寸法の網目状開口部を有する高分子樹脂製仕切板80を設けてあるので、塗料流量が多い場合や泡のサイズが小さい場合であっても、塗料が網目状開口部を通過する際に、塗料中の気泡を網目部でトラップして破泡し、網目状開口部を通過後の塗料中の気泡をさらに減少することができる。
【0066】
網目状開口部は、気泡除去の面からは仕切板の全面に設けることが好ましいが、必用に応じて、仕切板の一部の面に設けてもよく、また、強度確保のために、仕切板の周囲等にSUS板等の補強部材を取り付けてもよい。
【0067】
仕切板は、底部に塗料流通部がなく、塗料が仕切板を必ず通過する方が、気泡除去効果がより優れる。しかし、必用に応じて、底部に塗料流通部のある仕切板にして一部の塗料がここを通過してもよい。 仕切板の材質は、耐塗料性の観点からフッ素樹脂製であることがより好ましい。
【0068】
どのような仕切板にするかは、塗料の粘度や塗料中に含まれる顔料の種類などによって適宜選択することができる。
【0069】
仕切板80を通過した塗料は、ピックアップロール20で汲み上げられ、コーターロール21を介して、鋼板13に塗布される。ピックアップロール20が汲み上げる塗料は、気泡が少ないので、気泡巻き込みに起因するクレーター状の欠陥等の塗膜欠陥の発生を著しく低減できる。
【0070】
以上、本発明の第2発明乃至第4発明の実施の形態について、ロールコーター塗装装置を用いて鋼板に塗料を塗装する場合について説明したが、本発明の塗布装置は、カーテンコーター方式、ノズルコーター方式、ディップ方式等他の塗布方式にも適用でき、特にロールコーター方式に制限されるものではない。また、塗液については、塗料だけでなく、化成処理液、感光液、その他の塗液の塗布に広く適用できる。被塗布物は、鋼板のような金属板、プラスチック等の帯状体だけでなく、帯状体以外のものであってもよい。
【0071】
【実施例】
図2に示した超音波加振器を備える加振容器(容量15リットル)と遠心分離式脱泡器を連接した本発明の脱泡装置、図10に示した超音波加振器を備える加振容器と気泡浮上容器を備える脱泡装置および図11に示した遠心分離式脱泡器を備える脱泡装置を準備した。超音波加振容器の容量はいずれも15リットル、気泡浮上容器の容量は1000リットルであり、遠心分離式脱泡器には、仕様が粘度300cPで流量30リットル/分の市販品を使用した。
【0072】
予め攪拌して微細な気泡を含有させた透明な有機系塗料を前記の各脱泡装置を用いて脱泡処理し、気泡除去効率を調査した。気泡除去効率は、脱泡装置に流入直前の塗料、脱泡装置から流出直後の塗料を透明容器にそれぞれ50ccサンプリングし、塗料中の気泡を光学顕微鏡で撮影して気泡数を測定し、下式から求めた気泡除去率で評価した。
【0073】
【数1】
Figure 0003572934
【0074】
脱泡条件と気泡除去率を表2に示す。
【0075】
【表2】
Figure 0003572934
【0076】
また、前記塗液を用いて、図6に示したロールコーター塗装装置を用い、気泡除去率を調査した結果も合わせて表2に示す。
【0077】
表2に示されるように、気泡除去率は従来例の遠心分離式脱泡装置では40%、超音波加振器を用いた脱泡装置では30%であるのに対して、本発明例の超音波加振器と遠心分離式脱泡器を連設した脱泡装置では、高粘性の塗料であるにもかかわらず85〜95%ときわめて高い気泡除去率である。
【0078】
そして、コーターパン内に第4発明に規定する仕切板を設けることにより、更に92〜98%の気泡除去が可能となる。よって、この結果により、本発明の脱泡装置の有効性が示される。
【0079】
【発明の効果】
本発明の脱泡装置によれば、液体が高粘度であっても、あるいは液体中に含まれる気泡の直径が小さい場合であっても、液体中の気泡を効率よく除去できる。そのため、気泡除去効率を高めることができ、あるいは脱泡装置を小規模にできる。
【0080】
本発明の脱泡装置を有する液体の塗布装置では、塗液中の気泡を低減できるので、従来、問題になっていた被塗布物表面の気泡巻き込みによるクレーター状の欠陥等の塗膜欠陥を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コーターパン内の仕切板による塗料の脱泡性調査に用いた実験設備を示す図。
【図2】本発明の第1発明の第1の実施の形態に係る脱泡装置を示す図。
【図3】図2の脱泡装置のE−E断面を示す図。
【図4】本発明の第1発明の第2の実施の形態に係る脱泡装置を示す図。
【図5】本発明の第1発明の第3の実施の形態に係る脱泡装置を示す図。
【図6】本発明の第2発明乃至第4発明の実施の形態に係る鋼板の連続塗装ラインのロールコーター塗装装置を示す図。
【図7】図6に示したロールコーター塗装装置のコーターパンに配設した仕切板を示す図。
【図8】ロールコーター塗布装置において、コーターパンに配設される仕切板を示す図。
【図9】静止液体中に存在する気泡の挙動を示す図。
【図10】従来技術の超音波を利用した脱泡装置を示す図。
【図11】従来技術の遠心分離式脱泡装置を示す図。
【符号の説明】
1 流入管
2 超音波加振器
3 加振容器
4 液体
5、5a 気泡
6 気泡集合体
7 連結管
8 遠心分離式脱泡器
9 気泡塊
10 放気管
11 放気ポンプ
12 流出管
13 鋼板
14 塗料
15 循環タンク
16 攪拌器
17、17a 塗料送りポンプ
18 送り配管
19、19a コーターパン
20、20a ピックアップロール
21 コーターロール
22 リザーバ
23 塗料戻しポンプ
24 戻し配管
25 塗料缶
26 ポンプ
27 圧力調整弁
28 容器
29 液体
30 気泡
31 液面
32 気泡膜
33 連結管
34 気泡浮上容器
35 内壁
36 遠心分離式脱泡器入口
80、80a、80b 仕切板

Claims (4)

  1. 超音波加振器と加振容器を備えた超音波脱泡手段と遠心分離式脱泡器を備えた遠心分離式脱泡手段とを液体の流れ方向に順次連接した液体の脱泡装置であって、加振容器とその下流の遠心分離式脱泡器の下部を連結する連結管を有し、該連結管は連結管内の液体が遠心分離式脱泡器の内壁に沿って流入するように連結されていることを特徴とする液体の脱泡装置。
  2. 請求項1記載の脱泡装置を有する液体の塗布装置。
  3. 塗布装置が、ロールコーター塗布装置であることを特徴とする請求項2に記載の液体の塗布装置。
  4. ロールコーター塗布装置が、メッシュの見開きサイズが150〜2000μmの網目状開口部を有する高分子樹脂製仕切板を有するコーターパンを備えていることを特徴とする請求項3に記載の液体の塗布装置。
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