JP6245779B2 - 誘導体化cnfの製造方法及び高分子化合物樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は誘導体化CNFの製造方法に関する。また別の観点から、本発明は、バイオマス材料の利用により環境特性に優れ、かつ衝撃強度の低下が少なく、低比重にして高剛性で成形外観に優れた高分子化合物樹脂樹脂組成物の製造方法に関する。

近年、環境保護の観点からバイオマス材料が注目されており、自動車、OA・電気電子分野向け材料として天然由来の有機充填材やバイオポリマーとの複合材料が、使用され始めている。また、剛性等の機械的強度や耐熱性を向上させる目的で、樹脂組成にガラス繊維等の無機充填剤を配合する方法が検討されている。しかしこれらの無機充填剤は、大量に加える必要があるため、成形品の比重が増大し、さらに焼却又は廃棄時にゴミとなる残留物が増加して環境に負荷がかかる等の問題がある。 一方で、天然由来のセルロースナノファイバー(以下CNFと記す)は、環境への負荷が少なく、その特性からプラスチックの補強材としての用途が期待されている。
しかしながら、CNFは、その分子内に多数の水酸基を有しており、極めて親水性が高いことが知られている。それゆえ、疎水環境中あるいは乾燥状態では自己凝集を起こす。その結果、極めて疎水性が高く、一般的な熱可塑樹脂であるポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、あるいは、ポリスチレン(PS)などとの間で、CNFと樹脂を混練することは容易ではなく、従来、CNFとポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)を混練したコンポジットは、期待される機械強度特性を発揮できていない。そのため、疎水環境中でCNFが十分に分散できる手法が求められていた。
一般的にCNFに疎水性置換基を導入して疎水性を付与する場合、非水溶媒中で反応を行う。しかしながら、CNFの場合では高い比表面積上に存在する水酸基の影響で極めて親水性が高い。それゆえ、ナノファイバーから水を除去することは難しく、多段回の溶媒置換や過熱による脱水処理を行う、あるいは有機溶媒中でナノ化した後に置換反応を行う必要があるなど煩雑な操作を必要としていた。
水媒体中で解繊処理を行うナノファイバーの調製は様々にあるが、例えばCNFの物理的調製方法である水中対向衝突法(以下ACC法と記す)では、特許文献1にも開示されているように、水中に分散させた微粒子を二つのノズルに導入し高圧下で対するノズルから噴射して水中で対向衝突させる。この手法は天然セルロース繊維の他に水しか使用せず、繊維間の相互作用のみを解裂させることによるナノ微細化方法であるため、セルロース分子の構造変化がなく、解裂に伴う重合度低下を最小限にした状態でナノ微細化品を得ることが可能である。これ以外に、特許文献6や特許文献7にも記載されているブレンダー撹拌、グラインダー、マイクロフルイダイザー、高圧ホモジナイザーなどの処理によって機械的に水媒体中でCNFを製造することが出来る。
一般にCNF水懸濁液を乾燥させた場合、CNF間の相互作用で強固な凝集体を作り、水や疎水溶媒中に再分散し得ない形態になる。すなわち、アスペクト比の高い(=補強効果の高い)CNFは乾燥すると、再凝固し、再び分散しないという性質があり、ゲル状態、すなわち含水状態で取り扱う必要がある。
非特許文献1〜非特許文献3にみられるように水溶液中で酢酸ビニルを用いて、デンプンやパルプや木粉をラウリル化する、若しくはアセチル化する方法が広く知られている。また非特許文献4にみられるように塩化脂肪酸を用いてセルロースを疎水化する手法も公知である。
特許文献2、特許文献3は優れた特性を有する繊維複合材料を提供する。カルボキシル基およびアシル基を有する置換基によって修飾されたCNFと、樹脂を含有することを特徴とする繊維複合材料が記載されている。
特許文献4は広範な有機溶剤可溶な高分子材料との複合化にも好適に用いることができるCNF分散液の製造方法を提供する。カルボン酸塩型の基を有するCNFを水系溶媒に分散させてCNF水分散液を調製する工程と、基をカルボン酸塩型から、有機基を有するアミンのカルボン酸アミン塩型に置換する工程と、カルボン酸アミン塩型の基を有するCNFを、有機溶媒に分散させる工程を有することを特徴とするCNF分散液の製造方法が記載されている。
特許文献5は平均重合度が600以上30000以下であり、アスペクト比が20〜10000であり、平均直径が1〜800nmであり、X線回折パターンにおいて、Iβ型の結晶ピークを有し、水酸基が修飾基により化学修飾されていることを特徴とするCNFが記載されている。
樹脂組成物については、以下のごとく先行技術が知られている。
特許文献8には、芳香族ポリカーボネート樹脂に脂肪族ポリエステルと天然由来の有機充填材を配合して機械特性及び難燃性に優れた樹脂組成物とするために、天然由来の有機充填材としてジュート繊維やレーヨン繊維を用いて樹脂組成物と複合化した技術が記載されている。
特許文献9には、(A)ポリカーボネート樹脂99〜60質量%及び(B)平均繊維径が5〜50μmであり、平均繊維長が0.03〜1.5mmであるセルロース繊維1〜40質量%からなる樹脂混合物100質量部に対し、(C)テルペン系化合物を1〜10質量部含むポリカーボネート樹脂組成物であり、バイオマス材料の利用により環境特性に優れ、かつ低比重にして高剛性で成形外観に優れ、さらに熱安定性が良好で、難燃性が付与された樹脂組成物が記載されている。
特許文献10には、セルロースと、分散剤とを含む組成物であって、該分散剤が樹脂親和性セグメントAとセルロース親和性セグメントBとを有し、ブロック共重合体構造又はグラジエント共重合体構造を有するものであることを特徴とする組成物製造技術が記載されている。
特許文献11には、水酸基を有する親水性ナノ繊維の前記水酸基を親水性有機溶媒で溶媒和させ、溶融したプラスチックと混合することを特徴とする親水性ナノ繊維複合材料の製造技術が記載されている。
特許文献12には、分散媒中で、CNFと樹脂との両方が均一に分散している分散液、並びに樹脂中でCNFが均一に含有する樹脂組成物を記載されている。
特開2005−270891 特開2011−105799 特開2011−148914 特開2012−021081 特開2013−44076 特開2010−216021 WO2011118746 特開2010−215791号公報 WO/2013/133228 特開2014−162880 特開2013−170241 特開2013−166818
Wormann W. and Al−Higari M. Starch 2004, 56, pp.118−121 OLARU N. et al. Polimery 2011, 56, pp.11−12 Ozmen N. et al. BioResources 2013, 8, pp.753−767 矢野浩之ら、成形加工シンポジア13要旨集 pp.99−100
非特許文献1〜非特許文献3にあるようにアセチル化する方法は広く知られているものの、CNFに対してはアセチル化では疎水性が充分に確保できず、疎水性の高いポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂中に均一に分散させるにはより強い疎水性を付与することが必要だという問題がある。
非特許文献4にみられるように塩化脂肪酸を用いてセルロースを疎水化する手法も公知であるが非水系での反応が必要であり、水を含む反応を行うことはできないという問題がある。
特許文献2の繊維複合材料は、水酸基をカルボキシル基に酸化することでナノファイバー化し、その後脱水してから、酸無水物を使いエステル化して用いるものであり、非水系での反応が行われている。特許文献3の繊維複合材料は、セルロースを無水条件で修飾しており、しかも置換度が1.5−3.0と非常に高く、非特許文献4によると置換度が0.55を超えるとナノファイバーの物理強度が低下することから十分な強度を実現できない。以上の特許文献2、特許文献3では酸無水物ないし酸塩化物を使っているので無水条件が必須となる。 特許文献4はセルロース(グルコース残基)の水酸基をカルボキシル基に変えてCNFを製造し、疎水性の高いアミン類とカルボキシル基の塩を形成し、ナノファイバーに疎水性を与えるというもので、機械的な解繊方法で得られたCNFを処理することができるものではない。特許文献5のCNFはイオン液体を使いナノファイバー化前処理を行う際に同時に無水酢酸でアセチル化し、得られた産物をホモジナイズしナノ化するというもので、ナノファイバーの疎水性と耐熱性が上がるというものである。ACC法で得られたCNFを処理することができるものではなく、一般に無水で誘導体化反応を行うものであり、CNFを含水状態で取り扱う場合、反応性が著しく低下する。また高額なイオン液体を使用するため、現状では工業的に利用することは難しい。
樹脂組成物については、上述のごとくさまざまに試みられているものの、いずれも満足のいく結果が得られていない。特許文献8で得られる樹脂組成物は、衝撃強度の低下が大きく、成形外観が不十分であり、また着色が大きく、成形時の熱安定性も十分ではない。特許文献9に記載の樹脂組成物は低比重であるとはするものの、その比重(g/cm3)は何れの実施例も1.20を超えるものであり、水よりも比重が大きく、構成材料の軽量化という課題に充分に応えるものではない。特許文献10に記載のオレフィン系樹脂との組合せについて、無水マレイン酸変性樹脂を併用しなければCNFを分散できないうえ、併用しても10μm以上の凝集物が多数存在する。また、セルロースは化学修飾を施されており、未修飾のセルロースを用いることができない。さらにテルペン系樹脂は利用されていない。強度レベルにおいても弾性率は向上するものの衝撃強度が著しく低下するものである。特許文献11に記載の技術では、低級脂肪族アルコールで溶媒和し溶媒置換する必要があり含水状態のナノ繊維を直接用いることが出来ない。さらにテルペン系樹脂は利用されていない。特許文献12に記載の技術では、マイクロレベルの凝集物が存在し、且つCNFはビーズミルで調製されており重合度を低下させるものである。また、マレイン酸変性樹脂を併用している。さらにテルペン系樹脂は利用されていない。
一般に、CNFによってポリオレフィン系樹脂を補強しようとした場合、親水性の高いCNFが疎水性の高いポリオレフィン樹脂中で凝集し充分な補強効果は得られなかった。さらに、その生じる凝集物により透明性が大きく低下するという問題が生じていた。
本発明は、CNF表面に存在する水酸基がエステル化された誘導体化CNF及びその製造方法を提供する。上述の従来技術における問題に対し、かかる誘導体化CNFは、結晶構造が維持され、かつ、機械特性が損なわれない一方で、含水CNFが有していた高い親水性が打消され、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンをはじめとした疎水性樹脂への相溶性が向上する。また、完全に乾燥することが可能で、混練時の水分の影響や、輸送コストなどが削減できる。
さらに別の観点から、本発明は、以上の従来技術における問題に鑑み、バイオマス材料の利用により環境特性に優れ、かつ衝撃強度の低下が少なく、低比重にして高剛性で成形外観に優れた樹脂組成物を提供する。また前記複合樹脂には、より高い補強効果と透明性が付与される。 ここにおいて、本発明のポリオレフィン‐CNF複合樹脂は、CNFの代わりに表面疎水化CNFを補強材として用い、高速撹拌混合および二軸押出混練によって、ポリオレフィンと複合化して製造する。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下を見出した。すなわち、CNF表面に存在する水酸基による水素結合を阻害すれば、ポリオレフィン樹脂混練時の疎水性環境下での凝集を防ぎ、複合樹脂の機械強度特性を改善できる。あるいは、この水素結合を阻害すると同時に疎水性を付与すれば、ポリオレフィン等の疎水性樹脂への相溶性を増加させ、複合樹脂の機械特性をさらに改善できる。その結果、バイオマス材料として特定の平均繊維径及び平均繊維長を有し、疎水性が付与された誘導体化CNFをポリオレフィン樹脂へ特定量配合することにより、上記課題を解決できる。
まず、本発明は有機酸ビニルを用いてCNFを疎水化せしめる方法であって、例えば酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどを用いてCNF表面に露出した水酸基をエステル化する表面修飾化の手法である。
すなわち本発明の誘導体化CNFの製造方法は、含水CNFを親水性有機溶媒に分散した溶液に有機酸ビニルを加え、反応終了後の反応液に沈殿を生じさせ、その沈殿を回収し、乾燥することを特徴とする。あるいは、トルエンなどの疎水性有機溶媒により抽出、回収してもよい。CNFのナノ構造を維持したまま脱水する場合、煩雑な操作を伴うが、含水CNFと有機溶媒を混合することにより、容易に、反応液中にCNFのナノ構造を維持したまま、疎水性の誘導体化CNFを均一に溶解することが可能となる。
また本発明の誘導体化CNFの製造方法は、含水CNFを、炭酸カリウムと共にCNFに対し十分な分散性を有する有機溶媒中に添加し、有機酸ビニルを加え、反応終了後の反応生成物を回収し、乾燥することを特徴とする。
さらに別の観点からは、本発明は、下記のポリオレフィン樹脂組成物に関する。 すなわち、(A)平均太さ10〜200nmであり、多糖を高圧水流にて解繊してなるCNFを誘導体化した誘導体化CNF1〜10質量%及び(B)ポリオレフィン樹脂99〜90質量%からなることを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物である。 ここにおいて、前記誘導体化CNFは有機酸ビニルを用いて疎水誘導体化されてなるのがよく、例えば、ラウリル酸ビニルを用いて疎水誘導体化されてなる誘導体化CNFがあげられる。また、(A)前記CNFは、0.5〜10質量%の水混合液にした多糖に対し、50〜400MPa程度の高圧水を衝突させることによって得られるものがよい。 さらに、前記ポリオレフィンはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレンとすることができるほか、この技術はポリオレフィンのみに適応するものではなく、300℃以下で成形加工可能なその他汎用プラスチックへの適応も可能である。300℃以上の場合、セルロースの分解が生じてしまう。
本発明の複合化樹脂の製造方法は有機溶媒で膨潤状態とした疎水誘導体化CNFを、ポリオレフィンと高速撹拌する前処理工程の後、溶融混練することを特徴とする。
本発明の誘導体化CNFの製造方法によればCNFの高い親水性を打消し、疎水性を付与することができる。本発明の誘導体化CNFの製造方法によって得られる本発明の誘導体化CNFは、完全に乾燥することが可能となり、ポリオレフィンなどの疎水性樹脂への相溶性が向上し、プラスチックとの混練時の水分の影響や、輸送コストなどを削減することができる。
CNFの製造(解繊処理)装置の一例の概念図である。 図1におけるCNFの製造(解繊処理)装置の一部を拡大して示す概念図である。 他の例におけるCNFの製造(解繊処理)装置の概念図である。 さらに他の例におけるCNFの製造(解繊処理)装置の概念図である。 CNFのナノ化処理(解繊処理)後のSPM画像でありaはA解繊、bはC解繊を示し、スケールは縦・横 2.5μmとした。 各種誘導体化反応液のトルエン抽出結果を示す写真であり、左から、アセチル化、ベンジル化、2−エチルヘキシル化、ラウリル化CNF。 ラウリル化反応溶液トルエン抽出液中のCNFのSEM観察像(5000倍)。 各種エステル化CNF乾燥シートの撥水性を示す写真であり、左から、アセチル化、ベンジル化、2−エチルヘキシル化、ラウリル化CNF。 異なる解繊度、水分量によるラウリル化反応性の違いを示す図。 温度によるラウリル化反応性の違いを示す図。 非極性溶媒中でのラウリル化CNF分散状態を示し、A:トルエンおよびデカリン分散液の様子、B:トルエン分散液中の繊維のSEM観察図(×5,000)、C:デカリン分散液中の繊維のSEM観察図(×5,000)。 CNF1.5%を含む反応系内における炭酸カリウムとCNFの比率によるラウリル化反応性の違いを示し、●:反応系含水率6%、○:反応系含水率10%。 アセチル化CNF、ラウリル化CNF、ラウリル‐アセチル化CNFの赤外吸収スペクトル。 加水分解前後のCNFおよび各種誘導体化CNFのX線結晶回折スペクトル。 ラウリン酸エステル化反応における反応時間と重量増加率、置換率との関係。 PE−CNF及びLauCNF等複合樹脂の引張強度特性を示す図。 PE−CNF及びLauCNF等複合樹脂の曲げ強度特性を示す図。 5%CNF(左)又はラウリル化CNF(右)を混練した本発明のポリプロピレン複合樹脂シートの顕微鏡写真。 ポリプロピレンおよび本発明によって得られたラウリル化CNF配合ポリプロピレン複合樹脂フィルムの光透過性。 本発明によって得られたラウリル化CNF又はCNFとPPの複合樹脂化がその機械強度特性に与える影響、丸印:弾性率、菱型:最大応力、三角形:最大点ひずみ、黒塗り(グラフ左):ラウリル化CNF配合、白抜き(グラフ右):CNF配合。 異なる配合率のラウリル化CNF複合ポリエチレン樹脂の引張・曲げ弾性率の変動、実線:引張弾性率、破線:曲げ弾性率、黒塗り:ラウリル化CNF配合品、白抜き:CNF配合品。
以下、本発明の誘導体化CNFの製造法について詳細に説明する。
まず、CNFの調製方法について説明する。本発明において、CNFとしては例えば、木材繊維、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維、葉繊維等の天然の植物を含む多糖由来のCNFが挙げられ、これらCNFは一種を単独で又は二種以上を混合して用いてもよい。また多糖としてはα−セルロース含有率60%〜99質量%のパルプを用いるのが好ましい。α−セルロース含有率60質量%以上の純度であれば繊維径及び繊維長さが調整しやすくなって繊維同士の絡み合いを抑えることができ、α−セルロース含有率60質量%未満のものを用いた場合に比べ、溶融時の熱安定性が高く、衝撃強度の低下を引き起こすことがないほか、着色抑制効果が良好であり、本発明の効果をより優れたものとすることができる。一方、99質量%以上のものを用いた場合、繊維をナノレベルに解繊することが困難になる。
本発明におけるCNFは、多糖を高圧水流にて解繊してなる。 多糖の高圧水流による解繊は、0.5〜10質量%の水混合液にした多糖に対し、50〜400MPa程度の高圧水を衝突させて行う。これは例えば図1に示すCNFの製造装置1を用いて行うことができる。CNFの製造装置1は、一のチャンバー2に対して多糖スラリを供給可能に配置される第1の液状媒体供給経路であるところの多糖スラリ供給経路3と、例えば水である非多糖スラリを一のチャンバー2を介して循環させる第2の液状媒体供給経路4とよりなる。一のチャンバー2内には第2の液状媒体供給経路4の非多糖スラリを多糖スラリ供給経路3からの多糖スラリ供給方向と交差する方向にオリフィス噴射するオリフィス噴射部5を備える。多糖スラリ供給経路3は、多糖スラリを一のチャンバー2を介して循環可能にされる。
多糖スラリ供給経路3と第2の液状媒体供給経路4とは一のチャンバー2内に相互の交差部6を有する。
多糖スラリ供給経路3は多糖スラリ供給部であり多糖スラリを貯留するタンク7、ポンプ8を循環路9に配置してなり、一方、第2の液状媒体供給経路4はタンク10、ポンプ11、熱交換器12、プランジャ13を循環路である液状媒体供給経路4に配置してなる。
なお非多糖スラリは、例えば水であり、当初タンク10に収納され、その後CNFの製造装置1の作動に伴い交差部6を通過してタンク10に収納されたナノ微細化された多糖を操業の度合いに応じた濃度で含むことになった状態のものをも、包括的に指称する。
図2に示すようにチャンバー2を貫通する態様で多糖スラリ供給経路3の循環路9が配置され、これと交差する方向に非多糖スラリをオリフィス噴射して循環路9を貫通させることができるように第2の液状媒体供給経路4のプランジャ13に接続されるオリフィス噴射部5のオリフィス噴射口14がチャンバー2内側において開口する。チャンバー2のオリフィス噴射口14と対向する位置にチャンバー2の排出口15が設けられ、このチャンバー2の排出口15に第2の液状媒体供給経路4の循環路が接続されて、第2の液状媒体供給経路4が構成される。
一方、多糖スラリ供給経路3の循環路9は例えばビニルホース、ゴムホース等を用いて形成され、その循環路9のチャンバー2への入り側にはチャンバー2方向にのみ開弁される一方向弁16が取りつけられる。さらに循環路9のチャンバー2からの出側にはチャンバー2からの排出方向にのみ開弁される一方向弁17が取りつけられる。加えてチャンバー2と一方向弁17の間の循環路9にはエア吸入弁18が取りつけられ、このエア吸入弁18は外部から循環路9へエアを吸入する方向にのみ開弁される。
以上のCNFの製造装置によれば、以下のようにしてCNFが製造される。
非多糖スラリーをチャンバー2を介して第2の液状媒体供給経路4を循環させる。具体的にはポンプ11を用いてタンク10内の非多糖スラリを熱交換器12、プランジャ13を通過させて液状媒体供給経路4内を循環させる。一方、多糖スラリーをチャンバー2を介して多糖スラリ供給経路3内を循環させる。具体的にはポンプ8を用いてタンク7内の多糖スラリをビニルホース、ゴムホース等を用いて形成された循環路9内を循環させる。
これにより、多糖スラリ供給経路3内を循環してチャンバー2内を流通する多糖スラリに対して第2の液状媒体供給経路4を循環する非多糖スラリがオリフィス噴射される。具体的にはプランジャ13に接続されるオリフィス噴射口14にプランジャ13から高圧水が供給され、これがオリフィス噴射口14から循環路9に向けて50〜400MPa程度の高圧でオリフィス噴射される。
その結果、例えばビニルホース、ゴムホース等を用いて形成された循環路9に予め形成された貫通孔26a、bを通過して、循環路9と交差する方向に循環路9内側を通過した非多糖スラリが循環路9内を循環する多糖スラリを巻き込みながらチャンバー2の排出口15に向けて排出され、第2の液状媒体供給経路4に流入する。これによって、非多糖スラリが第2の液状媒体供給経路4内を再度循環する。
以上のプロセスを反復する過程で多糖スラリ供給経路3内を循環してチャンバー2内を流通する多糖スラリ及び第2の液状媒体供給経路4を循環する非多糖スラリ中の多糖が徐々に解繊されて、用途に応じた解繊度合いの均一性の高いCNFが得られる。
その他に多糖を高圧水流にて解繊してCNFを調製する手法としては特開2012−36518に記載された破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーで原料繊維を溶媒に分散させた分散液を処理するホモジナイズ処理法がある。図3に示されるようにこのホモジナイズ処理法によれば高圧でホモジナイザー内を圧送される原料繊維101が、狭い間隙である小径オリフィス102を通過する際に、小径オリフィス102の壁面(特にインパクトリング103の壁面)と衝突することにより、剪断応力又は切断作用を受けて分割され、均一な繊維径を有するミクロフィブリル化が行われる。
さらに多糖を高圧水流にて解繊してCNFとする手法としては、特開2005−270891に記載された水中対向衝突法がある。これは、水に懸濁した天然セルロース繊維をチャンバー(図4:107)内で相対する二つのノズル(図4:108a,108b)に導入し、これらのノズルから一点に向かって噴射、衝突させる手法である(図4)。この手法によれば、天然微結晶セルロース繊維(例えば、フナセル)の懸濁水を対向衝突させ、その表面をナノフィブリル化させて引き剥がし、キャリアーである水との親和性を向上させることによって、最終的には溶解に近い状態に至らせることが可能となる。図4に示される装置は液体循環型となっており、タンク(図4:109)、プランジャ(図4:110)、対向する二つのノズル(図4:108a,108b)、必要に応じて熱交換器(図4:111)を備え、水中に分散させた微粒子を二つのノズルに導入し高圧下で合い対するノズル(図4:108a,108b)から噴射して水中で対向衝突させる。この手法では天然セルロース繊維の他には水しか使用せず、繊維間の相互作用のみを解裂させることによってナノ微細化を行うためセルロース分子の構造変化がなく、解裂に伴う重合度低下を最小限にした状態でCNFを得ることが可能となる。
以上の様にして得るCNFは、水分散状態における固形分濃度が20%以上とすることによって分散剤との馴染みが改善し、凝集物を生成しにくい。そのためポリオレフィン樹脂に対して効率的に分散することができる。固形分濃度が20%未満である場合には、構造の一部に疎水性を有する分散剤との相溶性が悪く、CNF同士で凝集物を生成しやすいため、その凝集物がポリオレフィン中での分散性の悪化要因となる。さらに、混練時の樹脂温度の低下により混練時の不均一なせん断力を招く結果となり、そのため混練過程での均一分散の障害となっており好ましくない。さらには、混練装置の温度上昇を妨げるため熱エネルギーのロスを招くことになる。
本発明の誘導体化CNFの製造方法は、セルロースファイバーに有機酸ビニルを加えることを特徴とし、その態様としては例えば含水CNFに有機酸ビニル、例えば酢酸ビニル及び安息香酸ビニル及びラウリン酸ビニルのうちの少なくとも1以上を加える態様がある。
この様にCNFを疎水化するために、ビニルエステルを使用すると水を含んでいてもCNFをエステル化できる。
CNFは繊維状多糖を物理的処理によってナノ微細化して得られるものでよく、この物理的処理としてACC法を適用することができる。
このACC法によって得られるCNFは、繊維間の相互作用のみを解裂させてナノ微細化を行うことによって得られる結果、化学修飾が施されておらず、セルロース分子構造の損傷や重合度の低下が抑制されている一方、水に懸濁した状態でしか得られず、そのことが利用性を妨げる要因となっていた。しかし、本発明の誘導体化CNFの製造方法によれば、水に懸濁した状態で得られるCNFをそのまま疎水化することができるため、ACC法等によって得られるCNFの工業的利用性を飛躍的に向上させることができる。
また繊維状多糖としてパルプを用いることができ、パルプとしては、広葉樹や針葉樹といった木本植物、竹や葦といった草本植物を原料とした化学パルプ、機械パルプ及び古紙を用いることができる。
含水CNFは例えば竹BKPを所要のパス数でACC処理し、プレス脱水して得られ、含水率が90%以下のものであるが、これに限らず木本類、草木類から得られたパルプを用い、グラインダー、ホモジナイザーなどの機械的な処理で調製したCNFを用いることもできる。また、遠心分離、乾燥濃縮などの方法で含水率を90%以下にしたものでもよい。しかしながら、含水率が90%を上回ると、反応系内に持ち込まれる水分量が過多になり生産効率が低下していくため、工業的生産が困難で。含水率は好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である。
炭酸カリウムと共に、係る含水CNFを十分に分散性しうる有機溶媒中に添加し、次いで、有機酸ビニル、例えば酢酸ビニル及び安息香酸ビニル及びラウリン酸ビニルのうちの少なくとも1以上を加え、70℃〜100℃で2時間以上、好ましくは80℃で2時間反応させる。反応終了後、生成物を回収し、乾燥する。
炭酸カリウムは反応触媒として働くが、反応系内をアルカリ性に保つ緩衝効果が重要であり、一定以上の濃度があればその効果は十分に維持できる。しかし、誘導体化による置換率を向上させるという観点からは、炭酸カリウム添加量を、対CNF比で5〜30%程度とするのがよい。対CNF比20%程度で行うと反応効率がよい。
ラウリン酸ビニルによるエステル化の結果、トルエンやデカリンなどの疎水性溶媒に分散可能な疎水CNFを合成できる。また広葉樹、針葉樹、竹由来の漂白クラフトパルプから同条件で作成したCNFをラウリル化する場合、反応効率は竹が最も高い。
CNFを十分に分散性しうる有機溶媒中に添加することによってセルロースの表面修飾を均一かつ効率よく行うことができる。係る有機溶媒としてはN−メチルピロリドン(以下、NMPと記す)、ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと記す)、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記す)、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと記す)などを含む非イオン性極性溶媒があり、特にDMSOはCNFの分散性が高いことに加え、疎水性の高い誘導体化CNFを溶解する。すなわち種々の含水非イオン性極性溶媒中にてCNFのラウリル化は進行するが、DMSOを用いた場合が最も反応効率が高い。
このCNFの有機溶媒への分散性は、目視で確認することができ、例えばプレス脱水ナノファイバーをDMSO(90%程度)に分散させた場合は良好に分散する。
反応容器内の水分量が6%以下になるようにCNFを撹拌可能な濃度でDMSOに分散し、炭酸カリウムをCNFの20wt%で添加し、反応系温度80℃以上で2時間反応することによって置換度が0.4〜0.55である誘導体化CNFを得ることができる。すなわちエステル化反応は、反応温度を80℃以上にすれば良好な結果が得られる。また反応後は、水で凝集させ、濾過・乾燥することによって分散性の良好な誘導体化CNFを得ることができる。または、トルエンで抽出し、濃縮・乾燥させることもできる。
CNFエステル化は、含水率10%程度でも十分に疎水性を付与できるが、反応系内の水分量が少ないほど反応効率が高い。
なお、溶融したポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)のモデルとして、トルエンを用いることができる。CNFを乾燥状態からトルエンに容易に分散させることができるか否かを検証することによってポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)と良好な混練状態とすることができるか否かを予測することができる。
さらに、乾燥ラウリル化CNFはトルエン中の再分散しうる。またデカハイドロナフタレン(ポリオレフィン系樹脂の溶剤)にも膨潤・分散しうる。
セルロースの結晶構造解析によると、セルロース結晶表面に突出している一級水酸基はグルコースユニット当たり0.5であり、CNF表面の一級水酸基(C−6位)のみを選択的に酸化するTEMPO酸化処理でも置換度が0.5付近である。0.5以上の置換度であった場合、セルロースの分子結合を破壊している可能性がある。
また非特許文献4における非結晶度の解析結果から、充分な結晶度と疎水性を両立するには、置換度0.4〜0.55となるような反応条件が好ましい。
[(A)平均太さ10〜200nmであり、多糖を高圧水流にて解繊してなるCNFを誘導体化した誘導体化CNF] 上述の方法で得られた誘導体化CNFの含有量は1〜10質量%が好ましい。1質量%未満であると弾性率等の機械特性の向上効果が十分に発揮されず、10質量%を超えると衝撃強度等が大きく低下する上、過剰に費用がかかる。
[(B)熱可塑性樹脂] 本発明の(B)熱可塑性樹脂は、本発明の複合樹脂組成物の主成分であるが、該組成物を成形することによって得られる成形品は、剛性や耐衝撃性などの機械物性、成形加工性、耐溶剤性、耐熱性などの特性について、良好に発現される必要がある。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンのほか、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ビニルエーテル樹脂等があげられるが、ポリオレフィン系樹脂の場合、本発明の誘導体化CNFによる補強効果が特に顕著である。
係るポリオレフィン系樹脂は、上記の特性発現の点で、炭素数2〜6のα−オレフィンから選択される1種以上のモノマーを単独重合又は共重合して得られるポリオレフィン系樹脂が好ましい。 しかし、上記特性発現を妨げない範囲で、炭素数7以上のα−オレフィンをコモノマーとして使用することもできる。
ポリオレフィン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1等の炭素数2〜6のα−オレフィンの単独重合体、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンの共重合体、2種以上の炭素数2〜6のα−オレフィンの共重合体やアイオノマー樹脂等が挙げられる。
共重合体としては、ランダム又はブロックのいずれの共重合体であってもよい。
また、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の種々のポリオレフィン系樹脂の混合物を用いることもできる。
ポリオレフィン系樹脂のうち、プロピレンを主原料とするポリプロピレン系樹脂は、剛性や耐衝撃性、耐溶剤性、耐熱性に優れるため、本発明の複合樹脂組成物に特に好適に使用することができる。
ポリプロピレン系樹脂としては、具体的には、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレンとエチレン及び/又は上記α―オレフィンとの共重合体から構成されるブロック共重合体やランダム共重合体、極性官能基を有する変性ポリプロピレンなどが挙げられる。
オレフィン系樹脂の中でも、樹脂組成物とした場合の補強効果を得ることができ且つ柔軟性を有し、安価であるという利点から、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、バイオポリエチレン等のポリエチレン系樹脂(PE)、ポリプロピレン系樹脂(PP)があげられる。
更に、(B)成分として、上記のポリオレフィン系樹脂に、次に例示するようなゴムを配合してなるポリマーアロイを用いてもよい。
このようなゴムとしては、具体例として、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、エチレン−ブテン−1共重合ゴム、エチレン−ヘキセン共重合ゴム、エチレン−オクテン共重合ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンブロック共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、部分水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合ゴム、部分水添スチレン−イソプレンブロック共重合ゴム、ポリウレタンゴム、スチレングラフト−エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、スチレン−グラフト−エチレン−プロピレン共重合ゴム、スチレン/アクリロニトリル−グラフト−エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、スチレン/アクリロニトリル−グラフト−エチレン−プロピレン共重合ゴムがなど挙げられる。
ポリマーアロイ中のゴムの含量は、ポリオレフィン系樹脂の特性に新たな特性を付加するという観点から、50質量%以下であることが好ましい。
[ポリオレフィン樹脂組成物] 本発明のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法としては、従来から公知の方法で各成分を溶融混練する方法が挙げられる。
例えば、各成分をタンブルミキサーやヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーで代表される高速ミキサーで分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法が適宜選択される。
樹脂組成物としてバイオマス材料であるCNFは、特定の平均繊維径及び平均繊維長を有するCNFを用いることにより、セルロースの凝集性が抑制され、衝撃強度の低下を抑えることができる。さらにCNFは、ガラス繊維等の無機繊維に比べ低い比重でありながら剛性を向上させることができるので、剛性の高い低比重の樹脂組成物とすることができる。
本発明におけるCNFは、平均太さ10〜200nmであり、多糖を高圧水流にて解繊してなる。
平均太さは日本電子株式会社の電界放出形走査電子顕微鏡JSM−7001FTTLSによって測定した。
平均太さ10〜200nmのレベルまで解繊することで流動性があり衝撃強度の低下が少なく、低比重にして高剛性で成形外観に優れた樹脂組成物を得ることができる。
平均太さ10nm未満では脱水性が悪化するため固形分濃度を上げることが難しくなり好ましくない。
平均太さ200nmを超える場合には、解繊が進んでいない数10μmの繊維幅のものが含まれることになり流動性が著しく低下し、且つ分散性が悪化することとなり好ましくない。
本発明のポリオレフィン樹脂組成物を用いた成形方法には特に制限はなく、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形、真空成形、押出し成形、中空成形体等の成形法を適用することができる。
本発明のポリオレフィン樹脂組成物を用いた成形品は、前記の性状を有することから、例えば、OA機器、情報・通信機器、繊維材料、フィルム材料、被覆膜、塗料成分、自動車部品又は建材分野等で好適に用いることができる。
本発明は、ポリオレフィン樹脂にバイオマス材料としてCNFを配合することによって、衝撃強度の低下が少なく、かつ高剛性にして低比重、すなわち、比剛性(MPa)を大きくすることができ、さらに、表面荒れ等が低減されて成形外観に優れ、さらにCNFの分散性が向上した樹脂組成物である。
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、以下の実施例に記載する性能評価において、得られる成形品の引張弾性率(MPa)、引張伸び(%)が概ね以下の性能を満足し、かつ成形外観に優れているという特徴を有している。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
デンプンのエステル化反応である化1の反応方法を参考に、一部改変した方法を用いて実施例1〜実施例4としてCNFの表面修飾処理による誘導体化を行った。CNFは、ACCを用いて作成した、〜300nmの繊維を含む粗CNF(rCNF)を用いた。
rCNF1.5%(w/v)および炭酸カリウム(対パルプ重量20%)を含む、94%DMSO/6%水(v/v)の混合溶液5mLを、良分散液になるまで室温で撹拌した。分散後70℃に加熱し、酢酸ビニル、ラウリン酸ビニル、安息香酸ビニル、2‐エチルヘキサン酸ビニルを無水グルコース単位(AGU)当たり1.2モル相当となるように添加・密栓し、2時間・70℃で反応した。
反応終了後、反応液を一部取り、倍量のトルエンと混合し反応産物の疎水性を簡便に評価した。また、残りの反応液に水を添加し反応を停止した後に、濾過、水洗浄を2回およびアセトンによる洗浄を3回行い、熱風乾燥器で水を除去した。得られた乾燥シートは水の撥水性を観察した。
反応終了時の溶液にトルエンを加えた際の様子を図6に示した。非誘導体化CNF(ビニル誘導体化なし)、酢酸ビニル、安息香酸ビニルによる誘導体化CNFでは、トルエンへのCNFの移行は生じず、ラウリン酸ビニルによる誘導体化を行った場合のみ、トルエン層(上層)にCNFが移行しており、したがって、ラウリン酸化CNFはトルエン抽出により回収可能である。ラウリル化誘導体化反応液のトルエン抽出層を回収・乾固させSEM観察すると、300nm程度の繊維が大量に含まれていることが解り、原料として用いたrCNFよりも繊維幅が太くなる傾向が観察された(図7)。
誘導体化物を乾燥後重量測定した結果を表2に示した。重量増加率(WPG: weight percent gain)から推定置換度(DS)算出したところ、酢酸ビニルが最も高い誘導体化率を示し、次いで安息香酸ビニル、ラウリン酸ビニルの順であった。これは置換基の嵩高さ、あるいは、疎水性に起因した反応性の違いであると考えられ、2−エチルヘキサン酸ビニルが特に反応性が低いのは、立体障害によるものと考えられる。また、乾燥誘導体化CNFシートの撥水性の観察結果(図8)では、ラウリル化CNFが最も撥水性が高く、接触角が90°を超えている。したがって、ラウリル化がCNFに最も高い疎水性を付与できる。

[実施例5]
実施例4と同様にしてラウリル化CNFを製造した。ただし、炭酸カリウム量は対CNF20%とし、反応系内の水分量あるいは反応温度を変化させた。また、実施例4と同様のCNF(rCNF)に加え、より繊維径の小さいCNF(fCNF)も用いた。反応時間は2時間とした。
反応温度80℃での水分量 6〜10 vol%のDMSO溶液中での重量増加率を図11に示した。すべての水分濃度領域で、fCNFがrCNFより高い反応性を示し、比表面積が反応性に影響することが予想され、つまり本反応系ではファイバー表面の水酸基が主に誘導体化していることが推測される結果となった。一方で、反応系内の水分量の増加に伴い、重量増加率も徐々に低下することが明らかになった。しかし、最もWPGが小さいDS0.25の場合でも、水添加で凝集物が生じるため、疎水化は進行していた。水分量は低いほど反応性が高いが、一方で10%程度の含水率があってもCNFの疎水化は十分に進行する。
反応温度を70℃から100℃に設定した場合の重量増加率を図10に示した。80℃と100℃では重量増加率に有意な差はなく同等の反応性である。一方で70℃では80℃以上の場合に比べ、重量増加率が35%程度低下した。反応温度は80℃以上であればよい。
推定置換度が0.5程度のラウリル化CNFをトルエンおよびデカリンに1%濃度で分散させた様子を図12A、それぞれの分散状態をSEM観察した結果を図12B,Cに示した。トルエン中では良分散状態であった。また、デカリン分散液でも、白濁しているものの目視観察では十分に良好な分散状態である。分散液中のラウリル化CNFの分散状態をSEM観察すると、デカリン中ではやや繊維凝集傾向が見られるものの、どちらの溶媒でも繊維が独立して観察できることから、置換度が0.5程度のラウリル化CNFは、トルエン、デカリン中で分散可能である。トルエン、デカリン共にポリオレフィン系樹脂を溶解することが知られており、特に熱デカリンはポリプロピレンを溶解するので、ラウリル化CNFはポリプロピレン中に均一に分散しうる。
[実施例6]
実施例4と同様にしてラウリル化CNFを合成した。ただし、fCNFを用い、系内の水分量を6%あるいは10%とし、反応温度を80℃とした。また、炭酸カリウム量を変化させ反応を行った。反応時間は2時間とした。
水分量6%、10%いずれの場合も、炭酸カリウム添加率が対CNF比で20%の時に重量増加率が最大で、それ以上の炭酸カリウム濃度領域では緩やかに反応性が低下する。また、逆に20%未満の濃度領域では、炭酸カリウムの濃度低下に依存して重量増加率も急速に低下する(図12)。
無水DMF中でセルロースナノクリスタル(CNC)をアセチル化した研究では(Cetin et. al. (2009) Acetylation of cellulose nanowhiskers with vinyl acetate under moderate conditions. Macromol Biosci 9:997−1003)、ビニル酢酸を約2倍AGUモル、炭酸カリウムを重量比でCNCの33%添加し、2時間の反応で置換度が0.35程度である。先行例が無水条件で、かつ、より多くの有機酸ビニルを使用しているにも関わらず、本発明では、先行例より高い置換度が得られていることから、炭酸カリウム添加条件について大幅に改善されている。
[実施例7]
実施例4と同様にし、溶媒をDMSO、DMF、DMAc、NMPにしてラウリル化CNFを合成した。また、広葉樹(LB)、針葉樹(NB)、竹(BB)由来のクラフトパルプから製造したfCNFを用いてラウリル化CNFの合成も行った。炭酸カリウムは対CNF20%、反応温度80℃、水分量6%、反応時間2時間とした。
LB−CNFをDMSO中でラウリル化した際の重量増加率を100%として、比重量増加率を表2にまとめた。種々の非プロトン性極性溶媒を使用した場合、DMF、DMAc、NMPすべての場合でDMSOの3分の1程度の反応性であった。DMSOを含めいずれの溶媒もセルロースの溶解に使用される非イオン性極性溶媒であるが、DMSO以外はいずれもアミン系溶媒でありカルボニル酸素と窒素原子の共鳴構造を持ち、いずれもDMSOより疎水性が高いなどの違いが存在する。反応性の違いは、このような特性の差に起因する可能性がある。
一方で、針葉樹と竹由来の漂白クラフトパルプ(NBとBB)から調製したCNFに対するラウリル化反応性をLBの場合と比較した場合、NBでは若干反応性が低く、BBでは反応性が同等かやや高い。
[実施例8]
実施例1同様にして、アセチル化CNFを合成した。ただし反応系内の水分量は5%とした。
[実施例9]
実施例4同様にして、ラウリル化CNFを合成した。ただし反応系内の水分量は5%とした。
[実施例10]
実施例9と同様にして、ラウリン酸ビニルによるCNFの誘導体化を1.5時間行った後に、連続して酢酸ビニルを加え、さらに1.5時間反応させて、ラウリル−アセチル化CNFを得た。
[実施例11]
実施例8〜10で製造した各種誘導体化CNF(アセチル化CNF、ラウリル化CNF、ラウリル−アセチル化CNF)および誘導体化していないCNFを、ソックスレー抽出による洗浄の後に乾燥粉末とし、赤外吸収スペクトルを測定した。
赤外吸光スペクトルを図13に示した。アセチル化CNF(AceCNF)では、典型的なセルロースの赤外吸収スペクトルに加え、1750cmー1付近のC=O伸縮由来の吸収が見られる。また、アセチル基由来の1380cmー1付近のメチル基、1240cmー1付近の−CO−の伸縮に由来する吸収が明確に観察され、アセチル置換されていることが確認できた。ラウリル化CNF(LauCNF)では、3000−2800cmー1の範囲に新たにアルカン伸縮由来のピークが二つ出現しており、また、1750cm−1付近にC=O伸縮由来のピークが確認できた。これらのことから、ラCNFがラウリル化されていることが示された。ラウリル‐アセチル化CNF(LauAceCNF)では、ほぼラウリル化CNFと同様のスペクトルを示している。しかし1240cm−1付近に吸収が見られることから、アセチル基も付与されており、ラウリル基、アセチル基が共にCNFに導入されていると考えられる。
[実施例12]
各種誘導体化CNFあるいはCNFは、メタノールで数回洗浄して予め溶媒置換した。次いで、これを0.5%NaOHを含むメタノール中で50℃、2時間加水分解した。誘導体化CNF、CNFおよび加水分解後各種CNFは、乾燥・粉末とし粉末X線回折装置を用いて、X線回折試験を行った。X線回折図からSegal法より2θ=18.5°および22.5°の回折強度から比結晶化度(CrI)を算出した。
加水分解前後の各種誘導体化CNFおよびCNFのX線回折スペクトルを図14に示した。誘導体化CNFは、セルロースI型結晶から大きくスペクトルが変化しており、正確な比結晶化度を求めることは難しい(加水分解前)。しかしながら、加水分解後誘導体化CNFのX線回折分析を行うと、すべてのサンプルがほぼ同様のスペクトルを示し、いずれもセルロースI型結晶を保持していた(加水分解後)。CNFを加水分解処理しても結晶化度は変化しておらず、0.5%NaOHメタノール溶液中で50℃、2時間の加水分解処理ではセルロース結晶形に影響を与えない。また、加水分解した各誘導体化CNFはCrI=63〜66%とCNFと同等か、わずかに低下している程度であり、本手法によるCNFの表面疎水化はセルロース繊維表面への反応であり、結晶部分にはほとんど影響を与えていない(表3)。
[実施例13]
75mgのCNFに、AGUで1.2倍モルのラウリン酸ビニルを添加して、70℃で1.5時間から6時間反応を行った。その際の重量変化から推測した置換度の継時変化を図15に示す。反応開始後1時間から1.5時間までに置換反応は殆ど完了し、その後緩やかに置換度が向上した。
次に、誘導体化CNFとポリオレフィン系樹脂の組成物に関する発明について、実施例を具体的に説明する。
[実施例14]
微細化されたナノセルロースは、高い比表面積を保持しており、同時に表面に露出した水酸基の影響で極めて高い親水性を有するので、水素結合により凝集しやすい。
従って、その高い親水性によってポリオレフィンなどの疎水性の高い樹脂中では凝集を生じてしまい、十分にその強度特性が発揮できていないという現状がある。よって、その問題点を解決するためにナノセルロース繊維の表面をエステル化して疎水性を付与し、ポリオレフィン中での分散性を向上させることで、ポリオレフィンに対する補強機能を向上させた。
CNFは、水中対向衝突法により作成した。またより微細化を進行させたナノファイバー(CNFfine)も調製した。CNF及びCNFfineは、[実施例1]〜[実施例10]にしたがいラウリル化し(LauCNFおよびLauCNFfine)、ラウリル化による水酸基の置換度は0.45(±0.01)とした。
含水CNFあるいは含アセトン誘導体化CNFは、中密度ポリエチレン(Lupolen性3621MRM、PE)にたいし、セルロース部が5%あるいは10%となるように前混合した。なお、ここにおける含水CNFの前混合は、手捏ね、あるいは、流動式混合器、高速攪拌混合機などを用いてもよい。含アセトン誘導体化CNFの前混合は、アセトンにPEと共に懸濁し、これを良く撹拌した後にアセトンを溜去させてもよいし、含水CNFと同様に流動式混合器を用いて前混合してもよい。
前混合は、PEと誘導体化CNFが均一に混合されれば良いが、一旦誘導体化CNFが乾燥してしまうと、強固な凝集体を形成し、再分散が極めて困難となる。その結果、二軸押出混練によっても誘導体化CNFの凝集物が多量に生じ、強度に悪影響を与えるため、誘導体化CNFの乾燥は避けなければならない。
前混合したPEとの混合物は、二軸押出機(東洋精機、ラボプラストミル)に供した
スクリュー系はΦ25mm、有効長(スクリュー長さLと直径D比)を30とした。得られた複合樹脂ペレットは、小型射出成型機(日精樹脂工業、NPX7−1F)を用いて、ダンベル試験片1BAおよび短冊形試験片を作成した。試験片は、温度23度、湿度50%で4日間以上放置した後、機械特性の分析に供した。島津製作所製Ez−LXを用いて引張強度試験(10mm/min)はダンベル試験片1BAを用い、曲げ強度試験(2mm/min)は短冊形試験片を用いて測定した。
CNFあるいは誘導体化CNFとPEの複合樹脂の引張強度を図15に、曲げ強度を図16に示した。PEにCNFを10%配合した複合樹脂(PE+10%CNF)とCNFfineを10%配合した複合樹脂(PE+10%CNFfine)をt検定により統計的に比較した結果、最大引張応力、曲げ弾性率、最大曲げ応力でPE+10%CNFの方が有意(p<0.05)に高強度であったが、引張弾性率、引張および曲げ最大ひずみでは有意差は観察されなかった。一方で、PEにCNFを5%配合した複合樹脂(PE+5%CNF)およびPE+10%CNFを比較した場合、最大引張応力、曲げ弾性率、最大曲げ応力において、有意にPE+10%CNFの方が高い強度を示し、引張ひずみのみでPE+5%CNFの方が有意に高い値を示した。
PE+5%および10%CNFと、PEにLauCNFをCNF部が5%となるように配合した複合樹脂(PE−5%LauCNF)の強度を比較すると、PE+5%LauCNFがPE+10%CNF複合樹脂よりも、引張弾性率、最大引張応力、最大曲げひずみで有意に高い強度特性を示し、PE+10%CNFが最大引張ひずみ、曲げ弾性率、最大曲げ弾性率で有意に高い伸びを示した。PE+5%CNFと比較すると、引張弾性率、最大引張応力、曲げ弾性率、最大曲げ応力でPE+5%LauCNFの方が有意に良好な特性を示した。また、最大引張ひずみに関してのみPE+5%CNFの方が良好な値を示した。PE+10%CNFfineとPE+5%LauCNFfineの場合では、最大引張応力、最大曲げ応力でPE+5%LauCNFfineが高い強度を示し、有意差はない(p=0.07)ものの、引張弾性率はLauCNFfineの方が高い傾向が見られた。また、最大引張ひずみに関しては、PE+5%CNFfineの方が有意に良好な伸びを示した。また、PE+5%LauCNFとPE+5%LauCNFfineを比較すると、最大引張および曲げ応力のみ有意差が観察され、LauCNFの方が高強度であり、誘導体化しない場合と同様に微細化によって強度が低下する傾向が見られた。
このように、CNF配合時とLauCNFを5%配合した複合樹脂の強度を比較した結果、CNFをラウリル化することによるPEに対する補強効果は、曲げ弾性率で同等以上、引張弾性率、最大引張および曲げ応力で2倍以上である。一方で最大引張ひずみはラウリル化によって低下し、強く硬い特性が付与される。また、原料であるCNFの強度はLauCNFの強度にも影響を及ぼす。
[実施例15]
ポリオレフィン系樹脂との混練
○ポリオレフィン樹脂との混練前混合
アセトンで膨潤したラウリル化CNFを、FMミキサ(FM10C/I、日本コークス工業株式会社)を用いてポリオレフィンと混合した。ポリプロピレン(PP)の場合、マレイン酸変性PP(TOYOBO Co.,LTD.)を5wt%混合したが、ポリエチレン(PE)の場合は混合しなかった。
○混練
前混合したPEないしPPとの混合物は、二軸押出機(東洋精機、ラボプラストミル)に供した。スクリュー系はΦ25mm、有効長(スクリュー長さLと直径D比)を30とした。得られた複合樹脂ペレットは、小型射出成型機(日精樹脂工業、NPX7−1F)を用いて、ダンベル試験片1BAおよび短冊形試験片を作成した。試験片は、温度23度、湿度50%で4日間以上放置した後、機械特性の分析に供した。
厚さ150μm程度の複合樹脂シートを調製した。光学顕微鏡観察(DSX500,OLYMPUS)にて、シート中の凝集物を観察した。さらに、可視−赤外分光光度計(積分球有、UV−2600,島津製作所)で光透過スペクトルを測定した。
○強度測定
島津製作所製Ex−LXを用いて強度試験を行った。引張強度試験(10mm/min)はダンベル試験片1BAを用い、3点曲げ強度試験(2mm/min)は短冊形試験片を用いて測定した。
(結果)
CNFおよびラウリル化CNFを用いて調製した複合樹脂(PP)シートの顕微鏡観察写真を図17に示した。CNF配合PP複合樹脂シートは、CNFが充分に分散しておらず500μm程度の凝集物が多数確認された。一方、ラウリル化CNF配合PP複合樹脂シートでは凝集物はほとんど観察されなかった。
○光透過性
ラウリル化CNF配合PP複合樹脂シートの光透過性を観察したところ、可視領域ではラウリル化CNF5%配合時ではポリプロピレンと同等の光透過性が得られ、10%配合であっても若干の光透過性の低下はあるものの、90%程度の光透過性を保持していた。なお、紫外領域では、ラウリル化CNFの配合率によって、光透過性が大きく低下していく傾向が観察された(図18)。
○ポリプロピレン(PP)に対する補強効果
ポリプロピレン複合樹脂の引張特性を行った結果を図19に示した。
まず、最大応力(◆と◇の比較)では、すべての配合率で、ラウリル化CNFは高い最大引張応力を示した。次に、弾性率(●と○の比較)では、ラウリル化品1.5%配合時にCNF品5%配合以上の弾性率を示した。また、ひずみ(▲と△の比較)では、配合により低下する傾向にあるものの、未修飾のCNFと比べるとひずみの低下率が小さかった。
ラウリル化CNFの配合率が0.5〜1.5%の範囲で、配合率依存的に補強効果を示した。しかしながら、それ以上に配合しても引張弾性率に与える補強効果は観察されなかった。3%配合時点が最も高い補強効果を示し、複合樹脂の強度は、ポリプロピレンに対する相対割合で、引張弾性率で約150%、最大引張応力で約110%を示した。また1.5%配合時と、ほぼ同等の強度特性であった。0.5%配合であっても、弾性率、最大応力共にポリプロピレンより有意に高い値を示し(p値<0.05なので、5%の有意水準で有意差が認められる)、弾性率は約120%であった。
5%以上に配合率を上昇させた場合、ポリプロピレンに対する補強効果は十分には維持したものの、補強効果が徐々に低下していく傾向が見られた。また、複合樹脂フィルムの透明性も5%より10%では低下した。これらのことから、ラウリル化CNFの配合率は5%より少なくすることが望ましい。さらに、費用対効果の面からも3%以下の配合率が望ましい。
[実施例16]
○ポリエチレン(PE)に対する補強効果
ラウリル化CNFのPEに対する補強効果をCNFと比較すると、引張、曲げ弾性率共により低濃度で同等以上の補強効果を得ることが出来た(図20)。
PEに対する補強効果について、引張および曲げ特性を示す(引張:実線、曲げ:破線)。引張弾性率はラウリル化CNFの0.5%配合時から補強効果が観察された。また、曲げ弾性率では1.5%配合時から補強効果が観察された。ただし、ポリプロピレンの場合と異なり、ラウリル化CNFを7.5%添加した際に、引張弾性率が最大値を取り、配合率を10%としても、引張弾性率は大きく変動(低下)しなかった。ラウリル化CNF7.5%配合ポリプロピレン複合樹脂はポリエチレンに対し、引張弾性率で155%、最大引張応力で135%の値を示した。なお、最大点ひずみは75%であった。一方で、曲げ弾性率は10%配合時まで配合濃度依存的に補強効果が増加し、この配合濃度における曲げ弾性率はポリエチレンの155%、最大曲げ応力が130%であった。

Claims (6)

  1. α―セルロースの含有率60〜99質量%のパルプである多糖の0.5〜10質量%水混合液を50〜400MPaの高圧水にして、複数箇所から噴射し衝突させて解繊処理して得られる平均太さ10〜200nmである含水状態のセルロースナノファイバー(CNF)に、6〜10%の反応容器内の水分量、70℃以上の反応系温度にて、置換度0.25〜0.55となるように、炭酸カリウムを添加した系で有機酸ビニルを非プロトン性極性溶媒中で反応させ、終了後に生成物を回収する工程を含むことを特徴とする誘導体化CNFの製造方法
  2. 前記有機酸ビニルが酢酸ビニル、安息香酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル及びラウリン酸ビニルからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の誘導体化CNFの製造方法。
  3. 前記非プロトン性極性溶媒がジメチルスルホキシド(以下DMSOと記す)、ジメチルホルムアミド(以下DMFと記す)、N,N‐ジメチルアセトアミド(以下DMAと記す)及びN‐メチルピロリドン(以下NMPと記す)からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の誘導体化CNFの製造方法。
  4. 前記有機酸ビニルがラウリル酸ビニルであり、前記ラウリル化CNFの接触角が90°以上であって、X線回折において2θ=18.5°及び22.5°の回折強度から算出した比結晶化度が63〜66%であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一に記載の誘導体化CNFの製造方法。
  5. 有機溶媒で膨潤した請求項1〜請求項4のいずれか一に記載の製造方法で得られる前記誘導体化CNF0.5〜10質量%及び熱可塑性樹脂99.5〜90質量%とを高速撹拌し、その後溶融混練する工程を含むことを特徴とする高分子化合物樹脂組成物の製造方法。
  6. 前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の高分子化合物合成樹脂組成物の製造方法。
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