JP6534172B2 - セルロースナノファイバーの乾燥固形物及びその製造方法ならびに乾燥固形物の再分散体 - Google Patents

セルロースナノファイバーの乾燥固形物及びその製造方法ならびに乾燥固形物の再分散体 Download PDF

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本発明は、一旦乾燥した後でも溶媒にナノファイバーとして再分散させることが可能なセルロースナノファイバーの乾燥固形物及びその製造方法、ならびに前記乾燥固形物を再分散させて得たセルロースナノファイバー分散体に関する。
ナノサイズの材料である微細セルロース繊維(以下、「セルロースナノファイバー」と称することがある)は、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロースをN−オキシル化合物を酸化触媒とし、共酸化剤を作用させることにより酸化させ、前記酸化させたセルロース(以下、「酸化セルロース繊維」と称することがある)を水中でせん断力を与えるような機械的な解繊処理でナノファイバーへと微細分散(以下、「ナノ分散」と称することがある)して得られる。前記酸化セルロース繊維をナノ分散させたセルロースナノファイバー(以下、「酸化セルロースナノファイバー」または「セルロースナノファイバー」と称することがある)の分散体はそのまま、あるいは他の材料と複合化して増粘材として利用できる。また、酸化セルロースナノファイバー分散体をそのまま、あるいは他の材料と複合化して乾燥することで、シート状、フィルム状、発泡体状、エアロゲル状等の材料を製造することができる(例えば、特許文献1)。前記酸化セルロースナノファイバーは、均一の幅で、高アスペクト比のバイオ系ナノファイバーであり、大比表面積、高強度、高いチキソトロピー性、及び導入されたカルボキシル基による水中での高いナノ分散性を有するという優れた特徴がある。そのため、例えば、酸素バリア膜、汎用プラスチックの補強材、医療用材、細胞培養基材、触媒担体、吸着剤、分離材などの様々な分野への利用が期待されている。
しかしながら、前記酸化セルロースナノファイバーの水分散体は、通常、固形分濃度が0.1〜5質量%程度と非常に低い。そのため、酸化セルロースナノファイバーを用いた製品を製造するために用いる前記酸化セルロースナノファイバー分散体を輸送する際には、大量の水を運ぶこととなり輸送に係る費用が高いという問題がある。また、前記酸化セルロースナノファイバー分散体を保存する際には、微生物対策として、冷蔵保存をしたり、防腐剤処理を行ったりしなければならないという問題もある。
前記問題への対応策としては、前記酸化セルロース繊維または酸化セルロースナノファイバーを乾燥させ、固形分濃度を高めたものを輸送し、使用する際にナノ分散することが考えられる。しかしながら、凍結乾燥などの穏やかな乾燥方法を用いた場合であっても、一旦乾燥してしまうと、過酷な条件で分散処理を行ってもナノ分散することができないという問題がある。
前記ナノ分散ができないと、前記酸化セルロースナノファイバーの均一超極細幅、高アスペクト比、高いチキソトロピー性、ゲル及びフィルムの透明性という素材としての特徴が発現しないという問題がある。
これまでに、再分散が容易であるセルロース繊維の製法として、バクテリアセルロースのハイドロゲル又はその離解物を、特定の有機溶媒で置換処理した後に乾燥する方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、セルロースナノファイバーの繊維間の空隙は非常に小さい上に、繊維の表面には多量の水が水和しているため、有機溶媒に置換して乾燥するには、多量の溶媒と時間とが必要となる。また、有機溶媒に置換することができない水分が残存すると、十分な再分散性が得られないという問題がある。
したがって、一旦乾燥させた場合であっても、未乾燥状態から調製した場合と同様に溶媒にナノ分散させることができ、輸送に係る費用の低減が可能で、保存性に優れる酸化セルロースナノファイバーを環境負荷が小さく、容易に製造することができる方法の速やかな開発が強く求められている。
特許第4998981号公報 特開平6−233691号公報
本発明は、一旦乾燥させた場合であっても、未乾燥状態の分散体と同様に溶媒にナノ分散させることができ、輸送に係る費用の低減が可能で、保存性に優れるセルロースナノファイバー及びその乾燥固形物、並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。
<1> N−オキシル化合物及び共酸化剤を含む反応液中でセルロース原料を酸化することにより得られる酸化セルロース繊維に対し、以下の2つの工程:
解繊してセルロースナノファイバー分散体とすること、及び、
還元剤を含む反応液中で還元すること
を行った後に、乾燥することを含む、セルロースナノファイバーの乾燥固形物の製造方法。
<2> 前記酸化セルロース繊維を、解繊してセルロースナノファイバー分散体とした後に還元剤を含む反応液中で還元し、その後に乾燥する、前記<1>に記載の方法。
<3> 前記酸化セルロース繊維を、還元剤を含む反応液中で還元した後に解繊してセルロースナノファイバー分散体とし、その後に乾燥する、前記<1>に記載の方法。
<4> 前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の方法を行ってセルロースナノファイバーの乾燥固形物を得た後に、前記乾燥固形物を溶媒に再分散させてセルロースナノファイバー分散体を得ることを含む、セルロースナノファイバー分散体の製造方法。
<5> 前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の方法により得られる、溶媒に再分散させてセルロースナノファイバー分散体を得るための、セルロースナノファイバーの乾燥固形物。
<6> 前記<4>に記載の方法により得られる、セルロースナノファイバーの分散体。
本発明によれば、一旦乾燥させた場合であっても、未乾燥状態の分散体と同様に溶媒にナノ分散させることができ、輸送に係る費用の低減が可能で、保存性に優れるセルロースナノファイバーの乾燥固形物を提供することができる。また、本発明の乾燥固形物を溶媒に再分散(ナノ分散)させて得たセルロースナノファイバー分散体は、未乾燥のセルロースナノファイバー分散体と同様に、高アスペクト比、大比表面積、高強度、高いチキソトロピー性、水中での高いナノ分散性、高い透明性などの優れた特徴を有する。
従来、セルロースナノファイバー分散体を一旦乾燥させてしまうと、高いせん断力を付与しても、再分散(ナノ分散)させることができないことが知られていたから、本発明により、再分散(ナノ分散)可能なセルロースナノファイバーの乾燥固形物が得られたことは、非常に有利なことである。本発明によれば、セルロースナノファイバー分散体を形成させた後に、乾燥して、セルロースナノファイバーを乾燥固形物の状態で輸送及び保存することができ、輸送費用を低減させ、また、高い保存性を得ることができ、さらに、使用時に適宜水等の分散媒中に再分散させることにより、未乾燥の分散体と同様の優れた特徴を有するセルロースナノファイバー分散体を再形成させることができる。
本発明により得られる再分散後のセルロースナノファイバー分散体は、一度、解繊工程によりセルロースナノファイバー分散体とした後に乾燥固形物としたものを再分散することにより得られるので、解繊工程を経ていない酸化セルロース繊維の乾燥固形物を水に再分散させたものに比べて、セルロース繊維径が微細であり、また、より均一であるという利点がある。また、再分散後に、未解繊の状態のセルロース繊維が残りにくいという利点がある。
本発明のセルロースナノファイバーの乾燥固形物の製造方法は、酸化工程と、解繊工程と、還元工程と、乾燥工程とを少なくとも含み、このうち、解繊工程及び還元工程は、酸化工程の後、乾燥工程の前に行われる。また、本発明のセルロースナノファイバー分散体の製造方法は、上記の工程に加えて、溶媒への再分散工程を含む。
<酸化工程>
前記酸化工程は、N−オキシル化合物、及び共酸化剤を含む反応液中でセルロース原料を酸化して酸化セルロース繊維を得る工程である。この酸化反応により、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にアルデヒド基と、カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート基(−COO)とを有する酸化セルロース繊維を得ることができる。
−セルロース原料−
前記セルロース原料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、針葉樹または広葉樹のクラフトパルプ、サルファイトパルプ、サーモメカニカルパルプ、再生パルプ等の木材系パルプ、コットンリンターやコットンリントのような綿系パルプ、麦わら、バガス、竹、麻、ジュート、ケナフ等に由来する非木材系パルプ、バクテリアセルロースのような微生物由来セルロース、ホヤから単離されるセルロースのような動物由来セルロース、海草から単離されるセルロースのような藻類由来セルロースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。好ましくは、木材、綿、非木材植物等の植物由来のパルプである。前記セルロース原料は、叩解等の表面積を高める処理を施したものであってもよい。
−N−オキシル化合物−
N−オキシル化合物は、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいい、目的の酸化反応を促進する化合物であれば特に制限なく使用することができる。例えば、「「Cellulose」Vol.10、2003年、第335ページから341ページにおけるI. Shibata及びA. Isogaiによる「TEMPO誘導体を用いたセルロースの触媒酸化:酸化生成物のHPSEC及びNMR分析」と題する記事」に記載されている化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記N−オキシル化合物の具体例としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(以下、「TEMPO」と称することがある)とその誘導体、例えば、4−ヒドロキシTEMPO、4−アセトアミドTEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−ホスホノオキシ−TEMPO、4−スルホキシTEMPOなど、また、特開2009−161613号公報に記載されるアザアダマンタン型ニトロキシラジカルなどが挙げられる。
N−オキシル化合物の使用量は、セルロース原料を酸化できる触媒量であればよく、特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.01〜10mmolが好ましく、0.01〜1mmolがより好ましく、0.05〜0.5mmolがさらに好ましい。また、反応系に対し0.1〜4mmol/程度がよい。
−共酸化剤−
前記共酸化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸、又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化水素や過有機酸などの過酸化物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記共酸化剤の具体例としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウムなどが挙げられ、次亜塩素酸ナトリウムは好ましい。
共酸化剤の使用量は、セルロース原料を酸化できる量であればよく、特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.5〜500mmolが好ましく、0.05〜50mmolがより好ましく、1〜25mmolがさらに好ましく、3〜10mmolが最も好ましい。また、例えば、N−オキシル化合物1molに対して1〜40molが好ましい。
−その他の成分−
酸化工程における反応系には、上述したセルロース原料、N−オキシル化合物、及び共酸化剤に加えて、臭化物、ヨウ化物、又はこれらの混合物等の添加物を加えてもよい。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
臭化物またはヨウ化物の使用量は、特に制限されず、酸化反応を促進できる範囲で選択すればよい。例えば、絶乾1gのセルロース原料に対して、0.1〜100mmolが好ましく、0.1〜10mmolがより好ましく、0.5〜5mmolがさらに好ましい。
−反応条件−
酸化工程の反応系における前記セルロース原料の分散媒としては、酸化反応が進行するものであればよく、特に制限されない。取扱いの容易さや、副反応が生じにくいこと等から、水は好ましい。
反応温度は特に制限されない。4〜40℃程度、また15〜30℃程度の室温であっても効率よく反応を進行させることができる。
反応時の反応系のpHは特に制限されないが、酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を用いて、反応系のpHを8〜12、または10〜11程度に維持することが好ましい。
反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5〜6時間、例えば、0.5〜4時間程度である。
−酸化セルロース繊維−
前記酸化工程により得られる酸化セルロース繊維は、カルボキシル基量が0.6mmol/g〜2.2mmol/g、好ましくは0.8〜2.0mmol/g、さらに好ましくは1.0〜2.9mmol/g程度であり、アルデヒド基量が0.8mmol/g以下である。酸化セルロース繊維のカルボキシル基及びアルデヒド基の量は、上記した共酸化剤の添加量、反応時間等の反応条件を制御することにより調整することができる。
前記酸化セルロース繊維中のカルボキシル基量とアルデヒド基量は、「T.Saito及びA.Isogai、「TEMPO−mediated oxidation of native cellulose. The effect of oxidation conditions on chemical and crystal structures of the water−insoluble fractions」、Biomacromolecules、Vol.5、1983〜1989ページ、2004年」に記載されている方法に従い、亜塩素酸ナトリウムによる追酸化処理と電導度滴定によって測定することができる。
<追酸化工程>
前記酸化工程に続いて、任意に、追酸化工程を行ってもよい。追酸化工程は、前記酸化工程で得られた酸化セルロース繊維を亜塩素酸ナトリウムにより更に酸化する工程である。
追酸化工程の条件としては、特に制限はなく、例えば、「T.Saito及びA.Isogai、「TEMPO−mediated oxidation of native cellulose. The effect of oxidation conditions on chemical and crystal structures of the water−insoluble fractions」、Biomacromolecules、Vol.5、1983〜1989ページ、2004年」に記載されている条件を適宜選択することができる。
追酸化工程により、C6位に微量生成したアルデヒド基をカルボキシル基へと酸化することができる。
前記酸化工程または追酸化工程後の酸化セルロース繊維は、後述する解繊工程または還元工程へと送る前に、洗浄を行っても良い。洗浄には水を用いることが好ましい。例えば、水を用いて吸引ろ過等することにより洗浄することができる。また、洗浄には水以外の溶媒は用いないことが好ましい。洗浄の回数は、1回であってもよいし、複数回であってもよい。前記洗浄により、未反応の共酸化剤や各種副生成物を除去することができる。
酸化工程または追酸化工程後の酸化セルロース繊維は、乾燥工程を行う前に、後述する解繊工程または還元工程へと送られる。解繊工程と還元工程とは、この順序で行ってもよいし、逆の順序でもよい。
<解繊工程>
前記解繊工程は、酸化工程または追酸化工程で得られた酸化セルロース繊維、あるいは後述する還元工程後に得られた還元型酸化セルロース繊維を溶媒中で機械的なせん断力を用いて解繊しながらナノ分散させて、酸化セルロースナノファイバーの分散体を得る工程である。
−分散媒−
解繊工程で用いる分散媒としては、特に制限されず、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリンなど)、エーテル類(エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイドなどを挙げることができるが、中でも、水が最も好ましい。分散媒中の酸化セルロース繊維の量は、特に限定されないが、0.1〜5質量%程度が好ましく、1〜3質量%程度がより好ましい。分散媒中の酸化セルロース繊維の量が5質量%を超えると、解繊/分散時に粘度が顕著に向上し、解繊/分散処理が継続できなくなる場合がある。
−解繊/分散装置−
解繊工程で用いる装置(以下、「解繊/分散装置」と称することもある)は、酸化セルロース繊維に対してせん断力を付与できるものであればよく、特に制限されない。例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、二重円筒型ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、水流対向衝突型分散機、ビーター、ディスク型リファイナー、コニカル型リファイナー、ダブルディスク型リファイナー、グラインダー、二軸混練機などが挙げられる。中でも、効率よく解繊するには、50MPa以上の圧力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。圧力はより好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。高圧ホモジナイザーでの解繊/分散処理に先立って、高速ミキサーなどによる予備分散を行ってもよい。
−セルロースナノファイバー分散体−
前記解繊工程により、酸化セルロース繊維または還元型酸化セルロース繊維が解繊されてナノ分散されたセルロースナノファイバー分散体を得ることができる。セルロースナノファイバー分散体は、幅が2〜5nm程度、長さが0.2μm〜5μm程度のセルロースのシングルミクロフィブリルの分散体である。分散媒は、上述の通り、水が最も好ましい。
<還元工程>
前記還元工程は、前記酸化工程または追酸化工程で得られた酸化セルロース繊維、あるいは前記解繊工程で得られたセルロースナノファイバー分散体を、還元剤を含む反応液中で還元させる工程である。
前記酸化工程では、副反応として、酸化セルロース繊維中のC2位及びC3位にケトン基が生成し、また、酸化反応条件によっては、上記のケトン基に加えてC6位にアルデヒド基が微量生成する。酸化セルロース繊維における上記のケトン基及びアルデヒド基は、解繊工程後の酸化セルロースナノファイバーにも引き継がれる。還元工程では、酸化セルロース繊維または酸化セルロースナノファイバー中の前記ケトン基及び/又はアルデヒド基の少なくとも一部をアルコール性水酸基に変換する。即ち、還元工程で得られる還元型酸化セルロース繊維または還元型酸化セルロースナノファイバーでは、前記ケトン基の量、または前記ケトン基とアルデヒド基の量が、還元工程前の酸化セルロース繊維または酸化セルロースナノファイバーにおける量よりも少なくなる。
−還元剤−
還元工程に用いる還元剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、チオ尿素、ハイドロサルファイト、亜硫酸水素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記還元剤の中でも、選択的な反応性に優れる点で、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
還元剤の使用量は、特に制限されないが、絶乾1gの酸化セルロース繊維または酸化セルロースナノファイバーに対して、0.001g以上が好ましく、0.01g以上がより好ましい。
−反応条件−
還元工程の反応液に用いる溶媒としては、水が好ましい。反応液は、本発明の効果を損なわない限り、上述した酸化セルロース繊維または酸化セルロースナノファイバー、及び還元剤以外の成分を含んでいてもよい。
反応液のpHは、特に制限されないが、7〜11が好ましく、9〜10がより好ましく、10が特に好ましい。前記pHがより好ましい範囲内であると、酸化セルロース繊維または酸化セルロースナノファイバーにおけるケトン基の量、またはケトン基とアルデヒド基の量をより低減させることができる。
還元工程における反応温度は、特に制限されず、例えば、4〜40℃とすることができる。圧力も特に制限されず、例えば、常圧とすることができる。
還元工程における反応時間は、特に制限されないが、1時間以上が好ましく、5時間以上がより好ましい。
還元工程は、前記反応液を撹拌しながら行うことが好ましい。
還元工程で得られた還元型酸化セルロース繊維または還元型酸化セルロースナノファイバー分散体は、洗浄した後に後述する乾燥工程に送ることが好ましい。洗浄には水を用いることが好ましい。例えば、水を用いて吸引ろ過等することにより洗浄することができる。また、洗浄には水以外の溶媒は用いないことが好ましい。洗浄の回数は、1回であってもよいし、複数回であってもよい。
<乾燥工程>
前記乾燥工程は、前記酸化工程(任意に追酸化工程)と、解繊工程及び還元工程をこの順序でまたは逆の順序で行った後に行われる工程であり、還元工程を経た酸化セルロースナノファイバー分散体(以下、「還元型酸化セルロースナノファイバー分散体」、「還元型セルロースナノファイバー分散体」、または「セルロースナノファイバー分散体」と称することがある)を乾燥して乾燥固形物を得る工程である。
−乾燥方法−
前記乾燥の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、噴霧乾燥、圧搾、風乾、熱風乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥などが挙げられる。乾燥装置も特に制限されず、連続式のトンネル乾燥装置、バンド乾燥装置、縦型乾燥装置、垂直ターボ乾燥装置、多重段円板乾燥装置、通気乾燥装置、回転乾燥装置、気流乾燥装置、噴霧乾燥装置、円筒乾燥装置、ドラム乾燥装置、ベルト乾燥装置、スクリューコンベア乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、振動輸送乾燥装置、回分式の箱型乾燥装置、真空箱型乾燥装置、及び撹拌乾燥装置等を単独で又は2つ以上組み合わせて用いることができる。
−乾燥固形物−
本発明において、乾燥固形物とは、水分量が20質量%以下になるように乾燥させた状態をいう。水分量は0〜20質量%であることが好ましく、輸送にかかる費用を低減させるという観点からは0〜12質量%であることがさらに好ましい。乾燥時には、水分量0%(絶乾)まで乾燥させてもよい。例えば、105℃で3時間の乾燥により、絶乾させることができる。
本発明により得られる還元型酸化セルロースナノファイバーの乾燥固形物は、乾燥前の分散体と同様に溶媒にナノ分散させることができる。例えば、105℃で3時間乾燥させて得た絶乾状態の場合であっても、固形分濃度0.01〜5質量%程度で水に再分散させて、セルロースナノファイバー分散体とすることが可能である。乾燥固形物の形態で輸送および保存をし、使用時に溶媒にナノ分散(再分散)させることによって、輸送に係る費用を低減させ、かつ、優れた保存性を得ることができる。
本発明の乾燥固形物は、前記解繊工程により酸化セルロース繊維が解繊されており、電解放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いてその表面を観察すると、シングルミクロフィブリルの状態にまで解繊されたセルロース繊維(セルロースナノファイバー)を観測することができる。セルロースナノファイバーの繊維径は、一般に、2〜5nm程度である。一方、解繊工程を経ていない乾燥固形物は、セルロース繊維がナノファイバーにまで解繊されていないため、本発明の乾燥固形物に比べて、観測される繊維径は有意に大きい。
本発明の乾燥固形物は、前記還元工程により、ケトン基の量、またはケトン基とアルデヒド基の量が、前記酸化工程または追酸化工程後で還元工程を行う前の酸化セルロース繊維または酸化セルロースナノファイバーにおける上記量よりも、低減されている。本発明の乾燥固形物中のケトン基の量、またはケトン基とアルデヒド基の量が低減されたことを確認する方法としては、公知の方法を用いればよく、特に限定されない。例えば、乾燥固形物を水に再分散させた後に、上述した電導度滴定によってアルデヒド基の量を測定し、これを還元工程を行っていないセルロースナノファイバー分散体におけるアルデヒド基の量と比べることにより、アルデヒド基量が低減されたことを確認することができる。また、次に示す手順にしたがって、紫外線吸収スペクトルの測定によりケトン基量及びアルデヒド基量が低減されたことを確認することができる。
−乾燥固形物のケトン基/アルデヒド基量の紫外線吸収スペクトルによる確認方法−
105℃で3時間乾燥して得た乾燥固形物を、固形分濃度が0.1質量%となるように水で希釈して40mLの分散液とする。固形分濃度は、0.05〜0.5質量%の範囲で適宜選択することができる。前記分散液を50mL容器の遠心分離管(ポリプロピレン製;コーニング社製)に入れ、そのまま二重円筒型ホモジナイザー(刃の直径1.5cm、マイクロテック・ニチオン社製 NS−56)を用いて7,500rpmで2分間解繊処理を行う。次いで、前記二重円筒型ホモジナイザーによる解繊処理後、そのまま直ちに氷水で容器の周りを冷やしながら超音波ホモジナイザー(日本精機社製 US−300T、プローブチップ7mm、出力300W、19.5kHz)で8分間解繊処理を行う。
なお、前記超音波ホモジナイザーでの処理では、超音波処理による分散液の温度上昇を避けるために、2分間超音波処理して、1分間放置冷却するというサイクルを繰り返し、合計の超音波処理時間が8分間となるように行う。なお、ここで、得られた分散液波長600nmにおける光透過度(以下、「透過率」と称することがある)が80%以上であれば、乾燥固形物が水に再分散(ナノ分散)されたと判断することができる。光透過度が80%未満の場合には、「水中ナノ分散化できない」と判断される。
次いで、前記容器のまま、12,000Gで10分間遠心分離機にて遠心分離を行い、固形分がある場合には除去して、上澄みを得る。なお、ここで、除去した固形分の重量割合が10%以上である場合には、乾燥固形物は、「水中ナノ分散化できない」と判断される。
前記上澄みをシャーレに注入し、乾燥機中で乾燥し、前記シャーレから剥離することで微細セルロース繊維フィルム(以下、「キャストフィルム」と称することがある)を得る。上澄みの注入量は、前記キャストフィルムの膜厚みが、5〜50μmになるように調節する。前記キャストフィルムの密度は、1〜1.6g/cmになる。前記キャストフィルムの膜厚みは、前記シャーレの大きさを調整することにより、調整してもよい。シャーレの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレンなどが挙げられる。乾燥機の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、室温〜50℃が好ましく、40℃がより好ましい。乾燥の期間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3日間〜6日間が好ましく、5日間がより好ましい。
前記キャストフィルムを105℃で3時間加熱した後、室温で冷却し、乾燥キャストフィルムとする。乾燥キャストフィルムの紫外線吸収スペクトル(190〜400nmの範囲)を測定する。紫外線吸収スペクトルの吸光度の値から、元のセルロース繊維中のアルデヒド基、及びケトン基の量を測定することができる。
具体的には、元のセルロース繊維中にC2位、C3位のケトン基が存在すると、紫外線吸収スペクトルの290nmの吸光度が増加する。また、元のセルロース繊維中にアルデヒド基が存在すると紫外線吸収スペクトルの260nmの吸光度が増加する。一方、前記還元工程において、前記酸化セルロース繊維または酸化セルロースナノファイバーに添加する水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤の量が十分であれば(例えば、1gの酸化セルロース繊維に対して0.01gの水素化ホウ素ナトリウムを添加した場合)、得られるセルロース繊維にはケトン基やアルデヒド基が存在せず、紫外線吸収スペクトルを測定したときに、290nmと260nmにピークは見られない。
乾燥キャストフィルムの紫外線吸光度は、フィルムの厚さに影響する(フィルムの厚さが大きいと吸光度が大きくなり、薄いと小さくなる)。そこで、吸光度をフィルムの厚さで除すことで、規格化(条件を統一化)した吸光度で評価・比較できる。具体的には、290nmと260nmの吸光度を乾燥キャストフィルムの厚さ1μmあたりの吸光度に補正して評価・比較する。
ただし、乾燥キャストフィルム中にヘキセンウロン酸基が存在する場合には、235nmに吸収が見られる。その場合には、260nmの吸光度が過大に評価されるため、前記260nmの吸光度を乾燥キャストフィルムの厚さ1μmあたりの吸光度に補正した値に0.7を乗じて補正する。
本発明では、前記乾燥キャストフィルムの波長290nm及び260nmの吸光度を前記乾燥キャストフィルムの厚さ1μmあたりの吸光度に補正した値(ただし、ヘキセンウロン酸基に由来する235nmの吸収が見られた場合には、260nmの吸光度を乾燥キャストフィルムの厚さ1μmあたりの吸光度に補正した値は、該補正した値に0.7を乗じた値とする)が、いずれも0.020以下であることが好ましい。
なお、上記の方法によるセルロース繊維中のアルデヒド基量、ケトン基量は、未乾燥のセルロース繊維に対しても適用できる。
上記の方法で、未乾燥のセルロース繊維、及び乾燥したセルロース繊維中のアルデヒド基量、及びケトン基量を測定することができるので、未知のセルロース繊維試料について、前記還元工程が行われたか否かを判定できる。
−乾燥固形物の用途−
本発明による還元型酸化セルロースナノファイバーの乾燥固形物は、望ましいレオロジー特性、具体的には、チキソトロピー性、望ましい降伏応力、せん断力を加えても静置すればゲルに戻る可逆ゲル性、温度鈍感性の弾性率等を有するので、これらの特徴を利用するような用途に好ましく用いることができる。
本発明の乾燥固形物は、一般的に添加剤が用いられる様々な分野、例えば、飲食品、化粧品、医薬品、各種化学用品、製紙、土木、塗料、建築、農薬、自動車、防疫薬剤、電子材料、電池、難燃剤、断熱材、洗浄剤、水処理、ドリル液、中性の機能性物質、シェールガス及びオイルの流出制御及び/又は回収における添加剤として使用することが出来る。具体的には、増粘剤、ゲル化剤、糊剤、安定剤、分散剤、食品添加剤、錠剤用崩壊剤、賦形剤、薬剤放出制御剤、ゴム・プラスチック用補強材、塗料用添加剤、接着剤用添加剤、製紙用添加剤、サイジング剤、成分分離抑制剤、成分沈降抑制剤、強度改善剤、沈殿剤、凝集剤、柔軟性改善剤、ガスバリア性改善剤、研磨剤、吸水材、防臭剤、防錆剤、保水剤、保湿剤、保冷剤、保形剤、泥水調整剤、ろ過助剤、及び溢泥防止剤などとして使用することができ、それらを構成成分として含むゴム・プラスチック材料、塗料、接着剤、コート紙用塗剤、コート紙、バインダー、化粧品、潤滑用組成物、研磨用組成物、衣料用しわ低減剤、アイロンがけ用滑り剤などに応用できる。
<再分散工程>
本発明により得られた還元型酸化セルロースナノファイバーの乾燥固形物は、溶媒に再分散(ナノ分散)させることによって、還元型酸化セルロースナノファイバー分散体とすることができる。乾燥固形物を溶媒に再分散(ナノ分散)させる方法は、上述の解繊工程に記載した方法と同様である。分散媒は最も好ましくは水であり、分散媒中の固形分濃度は、特に限定されないが、0.1〜5質量%程度が好ましく、1〜3質量%程度がより好ましい。
−再分散工程により得られたセルロースナノファイバー分散体−
こうして得られた再分散後の分散体におけるセルロースナノファイバーは、前記還元工程により、ケトン基の量、またはケトン基とアルデヒド基の量が、前記酸化工程または追酸化工程後で還元工程を行う前の酸化セルロース繊維または酸化セルロースナノファイバーにおける上記量よりも、低減されている。ケトン基の量、またはケトン基とアルデヒド基の量が低減されたことを確認する方法は、公知の方法を用いればよく、特に限定されない。例えば、上述した電導度滴定による方法や、紫外線吸収スペクトルの測定による方法を用いることができる。
また、本発明により得られる再分散後のセルロースナノファイバー分散体は、一度、解繊工程によりセルロースナノファイバー分散体とした後に乾燥固形物としたものを再分散することにより得られるので、解繊工程を経ていない酸化セルロース繊維の乾燥固形物を水に再分散させたものに比べて、セルロース繊維径が微細であり、また、より均一であるという特徴がある。また、再分散後に、未解繊の状態のセルロース繊維が残りにくいという特徴がある。
再分散工程によりセルロースナノファイバー分散体が得られているか否か(すなわち、ナノ分散がされたか否か)は、電解放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等を用いて幅2〜5nm程度のセルロースのシングルミクロフィブリルの形成が観察できるか否かなどにより確認することができる。また、例えば、以下の方法を用いて確認することができる。
−光透過度によるナノ分散の確認−
固形分濃度が0.1質量%になるように水で希釈する。得られた分散液の波長600nmにおける光透過度を測定し、光透過度が80%以上であれば、ナノ分散されたと判断できる。一方、光透過度が、80%未満の場合には、ナノ分散されていない成分を含有していると判断できる。
−複屈折によるナノ分散の確認−
固形分濃度が0.1質量%になるように水で希釈する。得られた分散液を直交偏光板の間に置き、複屈折を示すか否かを観察する。複屈折を示す場合には、ナノ分散されたと判断することができる。
−再分散後のセルロースナノファイバー分散体の用途−
本発明により得られる再分散後のセルロースナノファイバー分散体は、再分散及び乾燥前のセルロースナノファイバー分散体と同様の高アスペクト比、大比表面積、高強度、高いチキソトロピー性、水中での高いナノ分散性、高い透明性などの優れた特徴を有する。こうして得られた分散体は、例えば、必要に応じて、分散媒を適度に除去することにより、上述したセルロースナノファイバーの乾燥固形物と同様の用途に用いることができる。また、以下に説明する通り、フィルム等の所定形状の成形体とすることができ、また、他の材料と組み合わせて複合体とすることができる。
−セルロースナノファイバーを用いた成形体の製造−
セルロースナノファイバー分散体を所定形状に保持しつつ分散媒を除去することにより、所定形状の成形体とすることができる。例えば、ガラス板などの基板上に、セルロースナノファイバー分散体を流延塗布した後、自然乾燥、送風乾燥、真空乾燥などの乾燥法により分散媒を除去することで膜を形成させることができ、膜を基板から剥がすことにより、フィルム状の成形体を得ることができる。
また、紙、板紙、プラスチック、金属、これらの複合体などの成形物の上にセルロースナノファイバー分散体を、塗布または噴霧することにより、または成形物をセルロースナノファイバー分散体に浸漬することにより、表面にセルロースナノファイバー層を有する成形体を形成してもよい。成形体の形状等は、特に制限はなく、例えば、所望の形状及び大きさを有するフィルム、シート、織布、不織布などの箔状物、所望の形状及び大きさの箱、ボトルなどの立体容器とすることができる。セルロースナノファイバーの層は、一層であってもよいし、多層であってもよい。
また、膜状に形成したセルロースナノファイバー成形体を、前記成形物の表面に貼り合わせてもよい。貼り合わせる方法は、特に制限されず、接着剤を用いる方法、熱融着法などが挙げられる。
−セルロースナノファイバーを含む複合体の製造−
セルロースナノファイバー分散体と、所望の複合化材料を含む液体とを混合することにより、セルロースナノファイバーを含む複合体を製造することができる。
複合化材料は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、ナイロン(登録商標)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル等の合成高分子などが挙げられる。
前記合成高分子は、有機溶媒に溶解させて紡糸(溶液紡糸)したり、フィルムに成形したりすることができる。したがって、セルロースナノファイバー分散体と、前記合成高分子を含む液体とを混合してなる分散液を用いることで、セルロースナノファイバーを含む複合体である繊維状成形物やフィルム状成形物を得ることができる。
また、有機溶媒中で、モノマーと、前記微細セルロース繊維分散体とを混合させ、前記モノマーを重合させて高分子を合成することにより、微細セルロース繊維と、合成高分子との複合体を形成することもできる。
以下に実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。
−酸化工程−
針葉樹漂白クラフトパルプ(乾燥質量で4g相当分)、62.4mgのTEMPO、及び0.4gの臭化ナトリウムを蒸留水400mLに分散させた後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が5mmolとなるように加えて反応を開始した。反応中は、0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10に保ち、室温(20℃〜25℃)で撹拌しながら反応を行った。pHに変化が見られなくなった時点で反応終了とみなし、反応物をガラスフィルターにてろ過した後、十分な量の水による水洗、ろ過を5回繰り返し、固形分含量が9.3質量%である酸化セルロース繊維を得た(収率>90%)。
前記酸化セルロース繊維のカルボキシル基量は1.43mmol/gであり、アルデヒド基量は0.04mmol/gであった。前記酸化セルロース1gあたりのカルボキシル基量及びアルデヒド基量は、「T.Saito及びA.Isogai、「TEMPO−mediated oxidation of native cellulose. The effect of oxidation conditions on chemical and crystal structures of the water−insoluble fractions」、Biomacromolecules、Vol.5、1983〜1989ページ、2004年」に記載されている方法に従い、亜塩素酸ナトリウムによる追酸化処理と電導度滴定によって測定した。
−解繊工程−
前記酸化工程で得られた酸化セルロース繊維を水に懸濁して、固形分含量が1質量%のスラリーを調製した。得られたスラリーをホモミキサーを用いて6000rpmで10分間撹拌し、固形分含量が1質量%の酸化セルロースナノファイバー分散体(参考例)を得た。
−還元工程−
前記解繊工程で得られた酸化セルロースナノファイバー分散体(参考例)のpHを0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いて10に調整した後、セルロースナノファイバーの固形分100質量部に対して2.5質量部の水素化ホウ素ナトリウムを加え、室温(20℃〜25℃)で撹拌しながら反応を24時間行い、還元型酸化セルロースナノファイバー分散体を得た。
−乾燥工程−
前記還元工程で得られた還元型酸化セルロースナノファイバー分散体を、105℃の恒温乾燥機中で3〜4時間乾燥させ、還元型酸化セルロースナノファイバーの乾燥固形物(絶乾)を得た。
−再分散工程−
前記乾燥工程で得られた還元型酸化セルロースナノファイバーの乾燥固形物を水に懸濁して、固形分含量が1質量%のスラリーを調製した。得られたスラリーをホモミキサーを用いて6000rpmで10分間撹拌し、固形分含量が1質量%の再分散後の還元型酸化セルロースナノファイバー分散体(実施例)を得た。
比較例として、実施例1と同様の方法で酸化工程、解繊工程を行った後、還元工程を行わずに、乾燥工程及び再分散工程を行い、酸化セルロースナノファイバーの乾燥固形物の水懸濁液(比較例)を得た。
得られた再分散後の還元型酸化セルロースナノファイバー分散体(実施例)および酸化セルロースナノファイバー乾燥固形物の水懸濁液(比較例)、ならびに還元工程を行う前の酸化セルロースナノファイバー分散体(比較例)について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
−分散性の評価−
実施例、比較例、及び参考例の分散体/懸濁液のそれぞれを、0.1質量%に薄めてスライドガラスに乗せ、スライドガラスを傾けた時に未分散状態のゲル状の粒が見られるかどうかで分散性を評価した。粒が見られないものが3、粒が浮き出てみられるものが2、ほとんど分散せず粒と水が分離するものを1と評価した。
−光透過度の評価−
実施例、比較例、及び参考例の分散体/懸濁液のそれぞれ(固形分含量1質量%)について、波長600nmにおける光透過度を測定した。
−チキソトロピー性の評価−
実施例、比較例、及び参考例の分散体/懸濁液のそれぞれ(固形分含量1質量%)について、分散/懸濁直後のB型粘度(25℃、30rpm、3分間)と、一昼夜静置した後のB型粘度(25℃、30rpm、3分間)を測定した。
Figure 0006534172
表1の比較例の結果より、還元工程を行わずに乾燥させた酸化セルロースナノファイバーの乾燥固形物は、分散性が非常に低いことがわかる。比較例では、再分散工程において固形物と分散媒(水)とが分離したため、粘度が正しく測定できなかった。一方、還元工程を行った後に乾燥させた還元型酸化セルロースナノファイバーの乾燥固形物は、ナノ分散させることができ、得られた分散体(実施例)は、未乾燥の酸化セルロースナノファイバー分散体(参考例)と同等の分散性と光透過度を有することがわかる。また、実施例の分散体は、参考例の分散体と同様に、静置により粘度が向上するチキソトロピー性を有することがわかる。

Claims (4)

  1. N−オキシル化合物及び共酸化剤を含む反応液中でセルロース原料を酸化することにより得られる酸化セルロース繊維に対し、以下の2つの工程:
    解繊してセルロースナノファイバー分散体とすること、及び、
    還元剤を含む反応液中で還元すること
    を行った後に、乾燥することを含む、セルロースナノファイバーの乾燥固形物の製造方法。
  2. 前記酸化セルロース繊維を、解繊してセルロースナノファイバー分散体とした後に還元剤を含む反応液中で還元し、その後に乾燥する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記酸化セルロース繊維を、還元剤を含む反応液中で還元した後に解繊してセルロースナノファイバー分散体とし、その後に乾燥する、請求項1に記載の方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法を行ってセルロースナノファイバーの乾燥固形物を得た後に、前記乾燥固形物を溶媒に再分散させてセルロースナノファイバー分散体を得ることを含む、セルロースナノファイバー分散体の製造方法。
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