以下、この発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による回転電機を示す縦断面図である。また、図2は、図1の回転電機を示す斜視図である。さらに、図3は、図1の回転電機を示す構成図である。図において、回転電機1は、円筒状の電機子(固定子)2と、電機子2の軸線上に配置された回転軸3と、回転軸3に固定され回転軸3と一体に電機子2に対して回転される回転子4とを有している。
また、回転電機1は、支持台50に支持されている。支持台50は、ベース51と、ベース51の上面に互いに離して固定された電機子用支持部52及び回転子用支持部53とを有している。電機子2は、電機子用支持部52に支持されている。回転軸3は、回転子用支持部53に軸受54を介して回転自在に支持されている。回転軸3及び回転子4は、回転子用支持部53に片持ちで支持されている。
回転子4は、電機子2の内側に配置されている。また、回転子4は、磁性材料(例えば鉄等)で構成された円柱状の回転子コア5と、回転子コア5の外周面(電機子2の内周面に対向する面)に設けられた複数の磁石6とを有している。各磁石6は、図3に示すように、回転子コア5の周方向について互いに間隔を置いて配置されている。回転子4には、各磁石6によって回転子コア5の周方向へ並ぶ複数の磁極が形成されている。この例では、10個の磁石6が回転子コア5の外周面に設けられており、回転子4の磁極数Pが10になっている。
電機子2は、図3に示すように、磁性材料(例えば鉄等)で構成された電機子コア7と、電機子コア7にそれぞれ設けられた第1の電機子コイル群20及び第2の電機子コイル群30とを有している。
電機子コア7は、円筒状のバックヨーク8と、バックヨーク8の内周部から径方向内側へ(回転子4に向けて)突出する複数の磁極ティース9とを有している。各磁極ティース9は、電機子コア7の周方向について互いに間隔を置いて設けられている。これにより、各磁極ティース9間には、電機子コア7の径方向内側へ(回転子4に向けて)開放されたスロット10が形成されている。電機子コア7では、磁極ティース9の数とスロット10の数(スロット数)Qとが同じになっている。この例では、磁極ティース9の数及びスロット数Qがともに24になっている。
ここでは、説明の便宜上、図1の回転軸3の中心から鉛直上方に位置するスロット10を基準スロットとし、基準スロット10の番号をNo.1としている。また、図1の基準スロットNo.1から反時計まわりの順に各スロット10の番号をNo.2、No.3、…、No.24としている。また、図1のNo.1及びNo.2のスロット10間に位置する磁極ティース9の番号をNo.1とし、No.1の磁極ティース9から反時計まわりの順に各磁極ティース9の番号をNo.2、No.3、…、No.24としている。
また、電流の相数をm(この例では、第1及び第2の電機子コイル群20,30に流れる電流の相数が3相であるため、m=3)とすると、スロット数Qと磁極数Pとの関係を示す係数である毎極毎相スロット数qは、以下の式(1)で表される。
q=Q/(P・m) …(1)
従って、この例では、毎極毎相スロット数qの値が24/30=4/5となっている。
図4は、図3の電機子2を示す展開図である。第1の電機子コイル群20は複数の電機子コイル21を有し、第2の電機子コイル群30は複数の電機子コイル31を有している。
各電機子コイル21,31は、複数の磁極ティース9にまとめて巻かれた導線束により構成されている。即ち、各電機子コイル21,31は、重ね巻きで磁極ティース9に巻かれている。また、各電機子コイル21,31を構成する導線束の線種及びターン数は、すべて同じである。
各電機子コイル21,31は、互いに異なるスロット10に配置された一対のコイル辺41と、複数の磁極ティース9を跨いで一対のコイル辺41間を繋ぐ一対のコイルエンド42とを有している。各コイル辺41は、スロット10に沿った略直線部である。各コイルエンド42は、電機子コア7の軸線方向外側でコイル辺41の端部間を繋いでいる。
各スロット10には、コイル辺41を配置するための空間である上口(上層)及び下口(下層)がスロット10の深さ方向について存在している。スロット10の上口は、スロット10の下口よりも電機子コア7の径方向内側(スロット10の開口側)に位置している。
第1の電機子コイル群20の各電機子コイル21は、一方及び他方のコイル辺41をいずれもスロット10の上口に配置して電機子コア7に設けられている。第2の電機子コイル群30の各電機子コイル31は、一方及び他方のコイル辺41をいずれもスロット10の下口に配置して電機子コア7に設けられている。電機子コア7では、各電機子コイル21の各コイル辺41が各スロット10の上口のすべてに配置され,各電機子コイル31の各コイル辺41が各スロット10の下口のすべてに配置されている。
コイルエンド42が跨ぐ磁極ティース9の数(即ち、共通のコイルにおける一方及び他方のコイル辺41間に挟まれる磁極ティース9の数)をコイルピッチとすると、各電機子コイル21,31のそれぞれのコイルピッチは、すべて同じになっている。この例では、各電機子コイル21,31のそれぞれのコイルピッチが2になっている。
なお、図4では、各電機子コイル21,31のそれぞれに流れる電流の相をU、V、Wで示している。また、図4では、各コイル辺41に流れる電流の向きを、U、V、Wの大文字及び小文字と、コイル辺41を示す白抜きの丸印の中に黒丸印及びX印を付した記号とで示している。従って、各電機子コイル21,31の巻き回し方向は、各コイル辺41の電流の向きで分かるようになっている。
ここで、本実施の形態による回転電機1での各電機子コイル21,31の位置を特定するために、複数の仮想コイルを電機子コア7に設けた比較例1による回転電機を想定する。
図5は、比較例1による回転電機101を示す構成図である。また、図6は、図5の回転電機101の電機子2を示す展開図である。さらに、図7は、図6の回転電機101の電機子2の要部拡大図である。なお、図6及び図7では、各仮想コイル102に流れる電流相と、各仮想コイル辺103に流れる電流の向きとが、図4と同様の方法で示されている。
比較例1による回転電機101の構成は、第1の電機子コイル群20及び第2の電機子コイル群30の代わりに複数の仮想コイル102が電機子コア7に設けられていることを除いて、実施の形態1による回転電機1の構成と同様である。
比較例1による回転電機101における電機子コア7には、複数の仮想コイル102が設けられている。各仮想コイル102は、互いに異なるスロット10に配置された一対の仮想コイル辺103と、複数の磁極ティース9を跨いで一対の仮想コイル辺103間を繋ぐ一対の仮想コイルエンド104とを有している。各仮想コイル辺103は、スロット10に沿った略直線部である。各仮想コイルエンド104は、電機子コア7の軸線方向外側で仮想コイル辺103の端部間を繋いでいる。
各仮想コイル102は、一方の仮想コイル辺103をスロット10の上口に配置し、他方の仮想コイル辺103をスロット10の下口に配置して電機子コア7に設けられている。また、各仮想コイル102の仮想コイルエンド104は、電機子コア7の周方向に対して同じ方向に傾いた状態で複数の磁極ティース9を跨いでいる。さらに、各仮想コイル102の仮想コイルエンド104が跨ぐ磁極ティース9の数は、すべての仮想コイル102で同じになっている。即ち、各仮想コイル102のコイルピッチは、すべて同じになっている。比較例1では、仮想コイル102のコイルピッチが2になっている。
各仮想コイル102は、電機子コア7に規則的に並べられている。各仮想コイル辺103は、各スロット10の上口及び下口のすべてに配置されている。これにより、比較例1による回転電機101の電機子2の状態は、各仮想コイル102が2層重ね巻きで電機子コア7に規則的に配置された仮想コイル装着状態となっている。
回転電機の理想状態は、U相、V相、W相の各電機子コイルがつくる誘起電圧のそれぞれの合成ベクトルの大きさが同じで、各相の誘起電圧の合成ベクトルが電気角で位相差120°ごとに分布している状態である。従って、比較例1による回転電機101では、回転電機の理想状態になるように、各仮想コイル102に接続される電流相(U相、V相、W相)の選択と、各仮想コイル102の巻き回し方向の選択とが行われている。回転電機101では、各相の仮想コイル102の配置順及び各仮想コイル102の巻き回し方向をそれぞれ調整することにより、回転子4の磁極がつくる磁束に対応するおよそ正弦波状の誘起電圧が発生するようになっている。
図6では、各スロット10の上口に配置された各仮想コイル辺103の集合群である仮想コイル辺群Aと、各スロット10の下口に配置された各仮想コイル辺103の集合群である仮想コイル辺群Bとに分けてみると、仮想コイル辺群A及び仮想コイル辺群Bのいずれについても、同相逆向きの電流が流れる関係を持つ2つの仮想コイル辺103を2組ずつ組み合わせた複数の集合単位で、電機子2の全周にわたってそれぞれ独立して分けることができる。比較例1では、仮想コイル辺群A及び仮想コイル辺群Bのそれぞれを、4つのスロット10の集合単位(即ち、仮想コイル辺群Aでいえば、スロットNo.3〜6、スロットNo.7〜10、スロットNo.11〜14、スロットNo.15〜18、スロットNo.19〜22、スロットNo.23〜2のそれぞれの集合単位)にそれぞれ独立して分けることができる。
同相逆向きの電流が流れる関係を持つ2つの仮想コイル辺103間に挟まれる磁極ティース9の数は、仮想コイル102のコイルピッチ(即ち、仮想コイルエンド104が跨ぐ磁極ティース9の数)と同じになっている。従って、比較例1では、同相逆向きの電流が流れる関係を持つ2つの仮想コイル辺103間に挟まれる磁極ティース9の数がすべて2つになっている。また、比較例1では仮想コイル102のコイルピッチが2であることから、仮想コイル辺群Bでは、仮想コイル辺群Aに対して、同相逆向きの電流が流れる関係を持つ2つの仮想コイル辺103を2組ずつ組み合わせた各集合単位が、周方向へスロット10の2つ分だけずれて現れている。
図8は、比較例1による電機子2において時間T0(U相が電気位相角90°)のときに3相電流がつくる起磁力を各磁極ティース9の位置との関係で示すグラフである。また、図9は、比較例1による回転電機101における基本波成分の分布巻係数、短節係数及び巻線係数Kdを示す表である。なお、図8では、起磁力の分布の傾向を簡単にするために、仮想コイル102のターン数が1であり、電流のピーク値が1[A]であるものとして起磁力を算出している。
巻線係数Kdは、回転電機の特性を示す指標であり、基本波成分の数値が1に近いほどトルク特性が良い。また、電機子2がつくる起磁力の分布は、電機子2の周方向について回転子4の磁極数に対応した正弦波状に近づくほど、回転電機の動作特性が良好になる(例えばトルクリップルが低くなる)。
比較例1では、回転子4の磁極数Pが10であるので、回転子4の極対数が5である。一方、図8のグラフをみてみると、比較例1での電機子2がつくる起磁力は、電機子2の周方向へおよそ均等に5周期分の正弦波状で分布していることが分かる。従って、比較例1では、電機子2がつくる磁束分布が回転子4の極対数に対応しており、回転電機101の動作特性が良好であることが分かる。
本実施の形態による回転電機1では、図4を図6と比較すると、同相逆向きの電流が流れる関係を持つ2つの仮想コイル辺103の位置に、各電機子コイル21,31の一対のコイル辺41がそれぞれ配置されている。また、第1の電機子コイル群20の各コイル辺41が電流相及び電流の向きを仮想コイル辺103と一致させて仮想コイル辺群Aの各仮想コイル辺103の位置に配置され、第2の電機子コイル群30の各コイル辺41が電流相及び電流の向きを仮想コイル辺103と一致させて仮想コイル辺群Bの各仮想コイル辺103の位置に配置されている。これにより、図4に示すように、第1の電機子コイル群20では、2つの電機子コイル21をそれぞれ組み合わせた複数の集合単位が電機子2の周方向へそれぞれ独立して配置され、第2の電機子コイル群30では、2つの電機子コイル31をそれぞれ組み合わせた複数の集合単位が電機子2の周方向へそれぞれ独立して配置されている。
各電機子コイル21,31のそれぞれのコイルエンド42が跨ぐ磁極ティース9の数(各電機子コイル21,31のコイルピッチ)は、仮想コイル102の仮想コイルエンド104が跨ぐ磁極ティース9の数(仮想コイル102のコイルピッチ)と同じになっている。
本実施の形態での電機子2は、図4を図6と比較すると、仮想コイル102を無くして電機子コイル21,31を加えている点で、比較例1での電機子2と異なっているが、本実施の形態での各スロット10の上口及び下口のそれぞれのコイル辺41の電流相及び電流の向きは、比較例1での各スロット10の上口及び下口のそれぞれの仮想コイル辺103の電流相及び電流の向きと同じになっていることが分かる。これにより、本実施の形態での電機子2がつくる起磁力は、比較例1での電機子2がつくる起磁力と同じになる。
比較例1の仮想コイル辺群A及び仮想コイル辺群Bのそれぞれにおいて、同相逆向きの電流が流れる関係を持つ2つの仮想コイル辺103を2組ずつ組み合わせた複数の集合単位を電機子2の全周にわたって配置するためには、まず、U相、V相、W相の仮想コイル102の数が偶数(スロット10の数が偶数)であり、仮想コイル辺群A内及び仮想コイル辺群B内でUとu、Vとv、Wとwの仮想コイル辺103がそれぞれ同数存在していることが必要である。即ち、電機子コア7のスロット10の数は、6の倍数であることが必要である。
また、回転電機のトルク特性を向上させ、回転電機のトルクリップルを低減させるためには(即ち、回転電機の動作特性を良好にするためには)、U相、V相、W相の3相の仮想コイル102が形成する3つの磁束群内のばらつきが電気角60°以内であり、U相、V相、W相のそれぞれの合成磁束が電気角位相差120°で均等に分布していることが望ましい。
これらの前提を考慮すると、第1及び第2の電機子コイル群20,30の各電機子コイル21,31を電機子コア7に適用するためには、毎極毎相スロット数qが以下の条件1〜3のすべてを満たす必要がある。
条件1:整数でないこと
条件2:分子が偶数であること
条件3:分母が偶数でなく、かつ3の倍数ではないこと
各電機子コイル21,31を電機子コア7に巻くときには、まず第2の電機子コイル群30の各電機子コイル31(スロット10の下口に配置されたコイル辺41を持つ電機子コイル31)を電機子コア7に巻いた後、第1の電機子コイル群20の各電機子コイル21(スロット10の上口に配置されたコイル辺41を持つ電機子コイル31)を電機子コア7に巻く。このようにして、電機子2を作製する。これにより、各電機子コイル21,31を電機子コア7に巻くときに他の電機子コイルが邪魔になることを回避することができる。
このような回転電機1では、第1の電機子コイル群20の各電機子コイル21のコイル辺41が各スロット10の上口に配置され、第2の電機子コイル群30の各電機子コイル31のコイル辺41が各スロット10の下口に配置されており、複数の仮想コイル102が電機子コア7に2層重ね巻きで規則的に配置されている仮想コイル装着状態を想定すると、各電機子コイル21,31のそれぞれのコイル辺41が、電流相及び電流の向きを仮想コイル辺103と一致させて各仮想コイル辺103の位置に配置されているので、第1の電機子コイル群20の各コイル辺41と第2の電機子コイル群30の各コイル辺41とを、スロット10の上口と下口とに分けて配置することができる。従って、スロット10の下口に配置されるコイル辺41を持つ電機子コイル31を電機子コア7に巻いた後に、スロット10の上口に配置されるコイル辺41を持つ電機子コイル21を電機子コア7に巻くことにより、すでに巻かれている電機子コイル31が邪魔にならずに電機子コイル21を巻くことができる。このことから、各電機子コイル21,31を電機子コア7に巻きやすくすることができ、回転電機1の製造を容易にすることができる。また、各スロット10の上口及び下口に配置されている各コイル辺41の電流相及び電流の向きを仮想コイル辺103と一致させているので、回転電機1の動作特性を良好に保つことができる。即ち、動作特性が良好な回転電機1を容易に製造することができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、第1の電機子コイル群20と第2の電機子コイル群30とが共通の電機子コア7に設けられているが、第1の電機子コイル群20と第2の電機子コイル群30とを、互いに別個の第1及び第2の電機子コアに分けて設けてもよい。
即ち、図10は、この発明の実施の形態2による回転電機1を示す縦断面図である。また、図11は、図10の回転電機1を示す斜視図である。図において、回転電機1は、円筒状の第1の電機子2aと、第1の電機子2aに対して回転される第1の回転子4aと、円筒状の第2の電機子2bと、第2の電機子2bに対して回転される第2の回転子4bと、第1及び第2の回転子4a,4bが固定された共通の回転軸3とを有している。第1及び第2の回転子4a,4bは、回転軸3の軸線方向について並んで配置されている。第1及び第2の電機子2a,2bは、回転軸3の軸線方向について、第1及び第2の回転子4a,4bのそれぞれの位置に合わせて並んで配置されている。
回転電機1は、支持台50に支持されている。支持台50は、ベース51と、ベース51の上面にそれぞれ固定された第1の電機子用支持部52a、第2の電機子用支持部52b及び回転子用支持部53とを有している。第1の電機子用支持部52a、第2の電機子用支持部52b及び回転子用支持部53は、回転軸3の軸線方向について互いに離して配置されている。第1の電機子2aは第1の電機子用支持部52aに支持され、第2の電機子2bは第2の電機子用支持部52bに支持されている。回転軸3の一端部は、回転子用支持部53に軸受54を介して回転自在に支持されている。第1及び第2の回転子4a,4bは、回転軸3の他端部にそれぞれ固定されている。従って、第1の回転子4a、第2の回転子4b及び回転軸3は、回転子用支持部53に片持ちで支持されている。
図12は、図10の第1の電機子2a及び第1の回転子4aを示す構成図である。また、図13は、図12の第1の電機子2aを示す展開図である。第1の回転子4aは、第1の電機子2aと隙間を介して対向した状態で第1の電機子2aの内側に配置されている。また、第1の回転子4aは、磁性材料(例えば鉄等)で構成された円柱状の回転子コア5aと、回転子コア5aの外周面(第1の電機子2aの内周面に対向する面)に設けられた複数の磁石6aとを有している。各磁石6aは、回転子コア5aの周方向について互いに間隔を置いて配置されている。第1の回転子4aには、各磁石6aによって回転子コア5aの周方向へ並ぶ複数の磁極が形成されている。
第1の電機子2aは、磁性材料(例えば鉄等)で構成された第1の電機子コア7aと、第1の電機子コア7aに設けられた実施の形態1と同じ構成の第1の電機子コイル群20とを有している。
第1の電機子コア7aは、円筒状のバックヨーク8aと、バックヨーク8aの内周部から径方向内側へ(第1の回転子4aに向けて)突出する複数の磁極ティース9aとを有している。各磁極ティース9aは、第1の電機子コア7aの周方向について互いに間隔を置いて設けられている。これにより、各磁極ティース9a間には、第1の電機子コア7aの径方向内側へ(第1の回転子4aに向けて)開放されたスロット10aが形成されている。各スロット10aの深さ寸法は、実施の形態1でのスロット10の深さ寸法よりも小さくなっている。これにより、各スロット10a内には、コイル辺41が1層分だけ配置される空間が形成されている。第1の電機子コア7aの各スロット10aには、第1の電機子コイル群20における各電機子コイル21のコイル辺41がそれぞれ配置されている。
図14は、図10の第2の電機子2b及び第2の回転子4bを示す構成図である。また、図15は、図14の第2の電機子2bを示す展開図である。第2の回転子4bは、第2の電機子2bと隙間を介して対向した状態で第2の電機子2bの内側に配置されている。また、第2の回転子4bは、磁性材料(例えば鉄等)で構成された円柱状の回転子コア5bと、回転子コア5bの外周面(第2の電機子2bの内周面に対向する面)に設けられた複数の磁石6bとを有している。各磁石6bは、回転子コア5bの周方向について互いに間隔を置いて配置されている。第2の回転子4bには、各磁石6bによって回転子コア5bの周方向へ並ぶ複数の磁極が形成されている。
第2の電機子2bは、磁性材料(例えば鉄等)で構成された第2の電機子コア7bと、第2の電機子コア7bに設けられた実施の形態1と同じ構成の第2の電機子コイル群30とを有している。
第2の電機子コア7bは、円筒状のバックヨーク8bと、バックヨーク8bの内周部から径方向内側へ(第2の回転子4bに向けて)突出する複数の磁極ティース9bとを有している。各磁極ティース9bは、第2の電機子コア7bの周方向について互いに間隔を置いて設けられている。これにより、各磁極ティース9b間には、第2の電機子コア7bの径方向内側へ(第2の回転子4bに向けて)開放されたスロット10bが形成されている。各スロット10bの深さ寸法は、実施の形態1でのスロット10の深さ寸法よりも小さくなっている。これにより、各スロット10b内には、コイル辺41が1層分だけ配置される空間が形成されている。第2の電機子コア7bの各スロット10bには、第2の電機子コイル群30における各電機子コイル31のコイル辺41がそれぞれ配置されている。
第1及び第2の回転子4a,4bのそれぞれの磁極数Pは、実施の形態1での回転子4の磁極数Pと同数になっている。従って、この例では、第1及び第2の回転子4a,4bのそれぞれの磁極数Pが10になっている。また、第1及び第2の電機子コア7a,7bのそれぞれのスロット10a,10bの数(スロット数)Qは、実施の形態1での電機子コア7のスロット10の数Qと同数になっている。従って、この例では、第1及び第2の電機子コア7a,7bのそれぞれのスロット10a,10bの数Qが24になっている。
ここで、図6に示す比較例1の回転電機101を想定すると、回転電機101の電機子コア(仮想電機子コア)7には、第1及び第2の電機子コア7a,7bのそれぞれのスロット10a,10bの数と同数のスロット(仮想スロット)10が形成されている。従って、第1及び第2の電機子コア7a,7bのそれぞれには、比較例1による仮想電機子コア7の各仮想スロット10にそれぞれ対応するスロット10a,10bが形成されている。第1の電機子コイル群20のそれぞれのコイル辺41は、比較例1での仮想スロット10の上口に配置された仮想コイル辺103と電流相及び電流の向きを一致させて、仮想スロット10に対応する第1の電機子コア7aの各スロット10aに配置されている。また、第2の電機子コイル群30のそれぞれのコイル辺41は、比較例1での仮想スロット10の下口に配置された仮想コイル辺103と電流相及び電流の向きを一致させて、仮想スロット10に対応する第2の電機子コア7bの各スロット10bに配置されている。
図16は、図12の第1の電機子2aにおいて時間T0(U相が電気位相角90°)のときに3相電流がつくる起磁力の分布を磁極ティース9aの位置との関係で示すグラフである。また、図17は、図12の第1の電機子2a及び第1の回転子4aの構成部分の基本波成分の分布巻係数、短節係数及び巻線係数Kdを示す表である。さらに、図18は、図14の第2の電機子2bにおいて時間T0(U相が電気位相角90°)のときに3相電流がつくる起磁力の分布を磁極ティース9bの位置との関係で示すグラフである。また、図19は、図14の第2の電機子2b及び第2の回転子4bの構成部分の基本波成分の分布巻係数、短節係数及び巻線係数Kdを示す表である。
第1及び第2の電機子2a,2bがそれぞれつくる起磁力の分布に着目すると、図16及び図18から、第1及び第2の電機子2a,2bがそれぞれつくる起磁力の分布形状は、実施の形態1での電機子2がつくる起磁力分布と比べて周波数が同じで振幅が半分の高次正弦波と、電機子1周分の電気角を周期とする低次正弦波とが合成された形状になっている。従って、第1及び第2の電機子2a,2bのそれぞれがつくる起磁力分布の正弦波形状は崩れており、第1の電機子2a及び第1の回転子4aの構成部分の動作特性、及び第2の電機子2b及び第2の回転子4bの構成部分の動作特性は、いずれも単独では良好とはいえないことが分かる。
しかし、第1及び第2の電機子2a,2bがつくる2つの起磁力の分布(図16及び図18)を比較すると、第1の電機子2aがつくる起磁力分布の低次正弦波の位相が、第2の電機子2bがつくる起磁力分布の低次正弦波の位相に対して180°ずれていることが分かる。一方、第1及び第2の電機子2a,2bがつくる起磁力分布の高次正弦波の位相は、ほぼ同じである。ここで、第1及び第2の電機子2a,2bがつくる2つの起磁力の分布を合成すると、合成した起磁力の分布は、比較例1による回転電機101での起磁力の分布(図8)と同じになる。
このように第1及び第2の電機子2a,2bがつくる2つの起磁力の分布を合成するために、本実施の形態による回転電機1では、第1及び第2の電機子コイル群20,30の各コイル辺41について、共通の仮想スロット10の上口及び下口に配置された各仮想コイル辺103のそれぞれに対応する2つのコイル辺41同士の周方向の位置関係を、第1の回転子4aの磁極と第2の回転子4bの磁極との周方向の位置関係と同じにしている。これにより、本実施の形態による回転電機1では、回転軸3に対する第1の電機子2a及び第2の電機子2bのそれぞれの電気角位相の位置関係と、回転軸3に対する第1の回転子4a及び第2の回転子4bのそれぞれの電気角位相の位置関係とが、同じになる。
この例では、第1及び第2の回転子4a,4bが各磁極を周方向について一致させて共通の回転軸3に固定され、共通の仮想スロット10の上口及び下口に配置された各仮想コイル辺103のそれぞれに対応する2つのコイル辺41同士の位置を周方向について一致させて第1及び第2の電機子コイル群20,30が配置されている。即ち、第1及び第2の電機子コイル群20,30では、各コイル辺41の位置が周方向について仮想コイル装着状態の各仮想コイル辺103の位置と同じになっている。ここでは、第1及び第2の電機子2a,2bが、電機子コア7aのNo.1のスロット(基準スロット)10aの位置と電機子コア7bのNo.1のスロット(基準スロット)10bの位置とを周方向について一致させて配置されている。これにより、この例では、回転軸3に対する電気角位相の位置が第1及び第2の回転子4a,4bで同じになり、回転軸3に対する電気角位相の位置が第1及び第2の電機子コイル群20,30で同じになる(即ち、回転軸3に対する機械角位相の位置が同じになる)。
本実施の形態による回転電機1では、共通の回転軸3に対して、2つの電機子2a,2bと2つの回転子4a,4bとを上記のように構成させることで、回転電機1全体では第1及び第2の電機子2a,2bのそれぞれがつくる2つの起磁力を合成させることと同じ効果を得ることができ、この合成された起磁力が比較例1による回転電機101での起磁力の分布(図8)と同じとすることができる。これにより、本実施の形態による回転電機1の巻線係数Kdも、比較例1による回転電機101の巻線係数Kd(図9)と同じになる。従って、回転電機1全体としては動作特性が良好になっている。他の構成は実施の形態1と同様である。
このような回転電機1では、第1及び第2の回転子4a,4bが共通の回転軸3に固定されているとともに、第1の電機子2aの電機子コア7aに第1の電機子コイル群20が設けられ、第2の電機子2bの電機子コア7bに第2の電機子コイル群30が設けられているので、電機子コア7a,7bの各スロット10a,10bに配置されるコイル辺41を1層分だけにすることができる。これにより、各スロット10a,10bに対してコイル辺41を1つずつ入れるだけでよくなり、第1及び第2の電機子2a,2bを製造しやすくすることができる。また、回転子が第1及び第2の回転子4a,4bに分かれ、電機子が第1及び第2の電機子2a,2bに分かれているので、第1及び第2の電機子2a,2b、第1及び第2の回転子4a,4bの1つ当たりのサイズをそれぞれ小さくすることができる。特に大型の回転電機では、部品のサイズ及び重さが大きくなると、部品の運搬及び組立等の取り扱いが著しく悪くなる。本実施の形態による回転電機1では、第1及び第2の電機子2a,2b、第1及び第2の回転子4a,4bのそれぞれのサイズを小さくすることができるので、回転電機1の生産性の向上を図ることができる。
実施の形態3.
図20は、この発明の実施の形態3による回転電機1の第1の電機子2a及び第1の回転子4aを示す構成図である。また、図21は、この発明の実施の形態3による回転電機1の第2の電機子2b及び第2の回転子4bを示す構成図である。本実施の形態による回転電機1の構成は、第1及び第2の電機子コア7a,7bの構成を除いて、実施の形態2による回転電機1の構成と同様である。第1及び第2の電機子コア7a,7bは、周方向へ並ぶ複数の分割コア61にそれぞれ分割されている。
第1の電機子コイル群20では、2つの電機子コイル21を組み合わせた複数の集合単位が、電機子2の全周にわたってそれぞれ独立して配置されている。従って、第1の電機子コア7aでは、電機子コイル21のコイルエンド42が跨っていない磁極ティース9aが電機子コイル21の各集合単位間に存在している。第1の電機子コア7aにおける各分割コア61の境界62は、電機子コイル21のコイルエンド42が跨っていない磁極ティース9aの位置に形成されている。この例では、第1の電機子コア7aにおける各分割コア61の境界62が第1の電機子コア7aの径方向に沿って形成されている。第1の電機子2aは、分割コア61と、分割コア61に設けられた2つの電機子コイル21とを含む複数(この例では、6つ)の分割電機子63で構成されている。
第2の電機子コイル群30でも、2つの電機子コイル31を組み合わせた複数の集合単位が、電機子2の全周にわたってそれぞれ独立して配置されている。従って、第2の電機子コア7bでも、電機子コイル31のコイルエンド42が跨っていない磁極ティース9bが電機子コイル31の各集合単位間に存在している。第2の電機子コア7bにおける各分割コア61の境界62は、電機子コイル31のコイルエンド42が跨っていない磁極ティース9bの位置に形成されている。この例では、第2の電機子コア7bにおける各分割コア61の境界62が第2の電機子コア7bの径方向に沿って形成されている。第2の電機子2bは、分割コア61と、分割コア61に設けられた2つの電機子コイル31とを含む複数(この例では、6つ)の分割電機子63で構成されている。他の構成は実施の形態2と同様である。
このような回転電機1では、電機子コイル21,31が跨っていない磁極ティース9a,9bが第1及び第2の電機子コア7a,7bに存在し、電機子コイル21,31が跨っていない磁極ティース9a,9bの位置で第1及び第2の電機子コア7a,7bが複数の分割コア61にそれぞれ分割されているので、第1及び第2の電機子2a,2bのそれぞれを複数の分割電機子63に分割することができる。これにより、各分割電機子63に分けて第1及び第2の電機子2a,2bを製造することができ、第1及び第2の電機子2a,2bの製造を容易にすることができる。また、第1及び第2の電機子2a,2bを構成する各部品の小形軽量化を図ることができるので、回転電機1の完成後も、第1及び第2の電機子2a,2bを分割電機子63単位で分解及び再組立を行うことができ、回転電機1の修理及びメンテナンス等の作業性を向上させることができる。これにより、第1及び第2の電機子2a,2bが損傷した場合であっても、第1及び第2の電機子2a,2b全体を修理、交換する必要がなくなり、回転電機1の修理及び交換に要するコストの低減化及び作業期間の短縮化を図ることができる。
実施の形態4.
実施の形態4による回転電機1を説明する前に、比較例2による回転電機101の構成を説明する。
図22は、比較例2による回転電機101を示す構成図である。また、図23は、図22の電機子2を示す展開図である。比較例2による回転電機1の電機子2の状態は、比較例1と同様に、各仮想コイル102が2層重ね巻きで電機子コア7に規則的に配置された仮想コイル装着状態となっている。また、比較例2による回転電機101では、スロット10の数Qが36、回転子4の磁極数Pが14になっている。従って、比較例2での毎極毎相スロット数qの値は、式(1)から6/7であり、回転電機101に本発明を適用するための上述の条件1〜3をすべて満たす。また、比較例2では、各仮想コイル102のコイルピッチが3になっている。
図23では、各スロット10の上口に配置された各仮想コイル辺103の集合群である仮想コイル辺群Aと、各スロット10の下口に配置された各仮想コイル辺103の集合群である仮想コイル辺群Bとに分けてみると、仮想コイル辺群A及び仮想コイル辺群Bのいずれについても、同相逆向きの電流が流れる関係を持つ2つの仮想コイル辺103を3組ずつ組み合わせた複数の集合単位で、電機子2の全周にわたってそれぞれ独立して分けることができる。比較例2では、仮想コイル辺群A及び仮想コイル辺群Bのそれぞれを、6つのスロット10の集合単位(即ち、仮想コイル辺群Aでいえば、スロットNo.4〜9、スロットNo.10〜15、スロットNo.16〜21、スロットNo.22〜27、スロットNo.28〜33、スロットNo.34〜3のそれぞれの集合単位)でそれぞれ独立して分けることができる。
同相逆向きの電流が流れる関係を持つ2つの仮想コイル辺103間に挟まれる磁極ティース9の数は、仮想コイル102のコイルピッチ(即ち、仮想コイルエンド104が跨ぐ磁極ティース9の数)と同じになっている。従って、比較例1では、同相逆向きの電流が流れる関係を持つ2つの仮想コイル辺103間に挟まれる磁極ティース9の数がすべて3つになっている。また、比較例2では仮想コイル102のコイルピッチが3であることから、仮想コイル辺群Bでは、仮想コイル辺群Aに対して、同相逆向きの電流が流れる関係を持つ2つの仮想コイル辺103を3組ずつ組み合わせた各集合単位が、周方向へスロット10の3つ分だけずれて現れている。他の構成は比較例1と同様である。
図24は、比較例2による電機子2において時間T0(U相が電気位相角90°)のときに3相電流がつくる起磁力を各磁極ティース9の位置との関係で示すグラフである。また、図25は、比較例2による回転電機101における基本波成分の分布巻係数、短節係数及び巻線係数Kdを示す表である。なお、図24では、起磁力の分布の傾向を簡単にするために、仮想コイル102のターン数が1であり、電流のピーク値が1[A]であるものとして起磁力を算出している。
比較例2では、回転子4の磁極数Pが14であるので、回転子4の極対数が7である。一方、図24のグラフをみてみると、比較例2での電機子2がつくる起磁力は、電機子2の周方向へおよそ均等に7周期分の正弦波状で分布していることが分かる。従って、比較例2では、電機子2がつくる磁束分布が回転子4の極対数に対応しており、回転電機101の動作特性が良好であることが分かる。
図26は、この発明の実施の形態4による回転電機1の電機子2を示す展開図である。図26を図23と比較すると、本実施の形態による回転電機1では、実施の形態1と同様に、同相逆向きの電流が流れる関係を持つ2つの仮想コイル辺103の位置に、各電機子コイル21,31の一対のコイル辺41がそれぞれ配置されている。また、第1の電機子コイル群20の各コイル辺41が電流相及び電流の向きを仮想コイル辺103と一致させて仮想コイル群Aの各仮想コイル辺103の位置に配置され、第2の電機子コイル群30の各コイル辺41が電流相及び電流の向きを仮想コイル辺103と一致させて仮想コイル群Bの各仮想コイル辺103の位置に配置されている。これにより、図26に示すように、第1の電機子コイル群20では、3つの電機子コイル21をそれぞれ組み合わせた複数の集合単位が電機子2の周方向へそれぞれ独立して配置され、第2の電機子コイル群30では、3つの電機子コイル31をそれぞれ組み合わせた複数の集合単位が電機子2の周方向へそれぞれ独立して配置されている。
各電機子コイル21,31のそれぞれのコイルエンド42が跨ぐ磁極ティース9の数(各電機子コイル21,31のコイルピッチ)は、仮想コイル102の仮想コイルエンド104が跨ぐ磁極ティース9の数(仮想コイル102のコイルピッチ)と同じになっている。他の構成は比較例2と同様である。
本実施の形態での電機子2は、仮想コイル102を無くして電機子コイル21,31を加えている点で、比較例2での電機子2と異なっているが、図26を図23と比較すると、各スロット10の上口及び下口のそれぞれのコイル辺41の電流相及び電流の向きは、本実施の形態も比較例2も同じになっていることが分かる。これにより、本実施の形態での電機子2がつくる起磁力は、比較例2での電機子2がつくる起磁力と同じになる。
このように、毎極毎相スロット数qの値が6/7である場合であっても、各スロット10の上口及び下口のそれぞれに配置されるコイル辺41の電流相及び電流の向きを仮想コイル辺103と一致させながら、電機子コイル21のコイル辺41と、電機子コイル31のコイル辺41とを各スロット10の上口及び下口に分けて配置することができる。即ち実施の形態1と同様に、回転電機1の動作特性を良好に維持しながら、回転電機1の製造を容易にすることができる。
実施の形態5.
図27は、この発明の実施の形態5による回転電機1の第1の電機子2a及び第1の回転子4aを示す構成図である。また、図28は、図27の第1の電機子2aを示す展開図である。さらに、図29は、この発明の実施の形態5による回転電機1の第2の電機子2b及び第2の回転子4bを示す構成図である。また、図30は、図29の第2の電機子2bを示す展開図である。
本実施の形態による回転電機1は、実施の形態2と同様に、円筒状の第1の電機子2aと、第1の電機子2aに対して回転される第1の回転子4aと、円筒状の第2の電機子2bと、第2の電機子2bに対して回転される第2の回転子4bと、第1及び第2の回転子4a,4bが固定された共通の回転軸3とを有している。
第1の回転子4aの磁極数Pと、第2の回転子4bの磁極数Pとは、同数になっている。この例では、第1及び第2の回転子4a,4bの磁極数Pが、比較例2での回転子4の磁極数P(即ち、実施の形態4での回転子4の磁極数P)と同数の14になっている。また、第1の電機子2aにおける第1の電機子コア7aのスロット10aの数Qと、第2の電機子2bにおける第2の電機子コア7bのスロット10bの数Qとは、同数になっている。この例では、第1及び第2の電機子コア7a,7bのそれぞれのスロット10a,10bの数Qが、比較例2での電機子コア7のスロット10の数Qと同数(即ち、実施の形態4での電機子コア7のスロット10の数Q)の36になっている。
各スロット10a,10b内には、1層分のコイル辺41が配置される空間が形成されている。第1の電機子コア7aの各スロット10aには、第1の電機子コイル群20における各電機子コイル21のコイル辺41がそれぞれ配置され、第2の電機子コア7bの各スロット10bには、第2の電機子コイル群30における各電機子コイル31のコイル辺41がそれぞれ配置されている。
図23に示す比較例2の回転電機101を想定すると、第1及び第2の電機子コア7a,7bのそれぞれには、比較例2による回転電機101の電機子コア(仮想電機子コア)7の各スロット(仮想スロット)10にそれぞれ対応するスロット10a,10bが形成されている。第1の電機子コイル群20のそれぞれのコイル辺41は、比較例2での仮想スロット10の上口に配置された仮想コイル辺103と電流相及び電流の向きを一致させて、仮想スロット10に対応する第1の電機子コア7aの各スロット10aに配置されている。また、第2の電機子コイル群30のそれぞれのコイル辺41は、比較例2での仮想スロット10の下口に配置された仮想コイル辺103と電流相及び電流の向きを一致させて、仮想スロット10に対応する第2の電機子コア7bの各スロット10bに配置されている。
図31は、図27の第1の電機子2aにおいて時間T0(U相が電気位相角90°)のときに3相電流がつくる起磁力の分布を磁極ティース9aの位置との関係で示すグラフである。また、図32は、図27の第1の電機子2a及び第1の回転子4aの構成部分の基本波成分の分布巻係数、短節係数及び巻線係数Kdを示す表である。さらに、図33は、図29の第2の電機子2bにおいて時間T0(U相が電気位相角90°)のときに3相電流がつくる起磁力の分布を磁極ティース9bの位置との関係で示すグラフである。また、図34は、図29の第2の電機子2b及び第2の回転子4bの構成部分の基本波成分の分布巻係数、短節係数及び巻線係数Kdを示す表である。
第1及び第2の電機子2a,2bがそれぞれつくる起磁力の分布形状は、図31及び図33から、実施の形態4での電機子2がつくる起磁力分布と比べて周波数が同じで振幅が半分の高次正弦波と、電機子1周分の電気角を周期とする低次正弦波とが合成された形状になっている。また、第1及び第2の電機子2a,2bがつくる2つの起磁力の分布(図31及び図33)を比較すると、第1の電機子2aがつくる起磁力分布の低次正弦波の位相は、第2の電機子2bがつくる起磁力分布の低次正弦波の位相に対して180°ずれている。一方、第1及び第2の電機子2a,2bがつくる起磁力分布の高次正弦波の位相は、ほぼ同じである。ここで、第1及び第2の電機子2a,2bがつくる2つの起磁力の分布を合成すると、合成した起磁力の分布は、比較例2による回転電機101での起磁力の分布(図24)と同じになる。本実施の形態による回転電機1では、実施の形態2と同様に、第1及び第2の電機子コイル群20,30の各コイル辺41について、共通の仮想スロット10の上口及び下口に配置された各仮想コイル辺103のそれぞれに対応する2つのコイル辺41同士の周方向の位置関係を、第1の回転子4aの磁極と第2の回転子4bの磁極との周方向の位置関係と同じにしている。これにより、本実施の形態による回転電機1では、回転軸3に対する第1の電機子2a及び第2の電機子2bのそれぞれの電気角位相の位置関係と、回転軸3に対する第1の回転子4a及び第2の回転子4bのそれぞれの電気角位相の位置関係とが、同じになっている。
この例でも、第1及び第2の回転子4a,4bが各磁極を周方向について一致させて共通の回転軸3に固定され、共通の仮想スロット10の上口及び下口に配置された各仮想コイル辺103のそれぞれに対応する2つのコイル辺41同士の位置を周方向について一致させて第1及び第2の電機子コイル群20,30が配置されている。即ち、第1及び第2の電機子コイル群20,30では、各コイル辺41の位置が周方向について仮想コイル装着状態の各仮想コイル辺103の位置と同じになっている。これにより、回転軸3に対する電気角位相の位置が第1及び第2の回転子4a,4bで同じになり、回転軸3に対する電気角位相の位置が第1及び第2の電機子コイル群20,30で同じになる(即ち、回転軸3に対する機械角位相の位置が同じになる)。
本実施の形態による回転電機1では、第1及び第2の電機子2a,2bのそれぞれがつくる2つの起磁力が合成されることにより、回転電機1全体としての起磁力の分布が比較例2による回転電機101での起磁力の分布(図24)と同じになっている。これにより、本実施の形態による回転電機1の巻線係数Kdも、比較例2による回転電機101の巻線係数Kd(図25)と同じになる。従って、回転電機1全体としては動作特性が良好になっている。他の構成は実施の形態4と同様である。
このように、毎極毎相スロット数qの値が6/7である場合であっても、実施の形態2と同様に回転電機1の動作特性を良好に維持しながら、回転子を第1及び第2の回転子4a,4bに分け、電機子を第1及び第2の電機子2a,2bに分けることができ、第1及び第2の電機子2a,2b、第1及び第2の回転子4a,4bの1つ当たりのサイズをそれぞれ小さくすることができる。これにより、第1及び第2の電機子2a,2b、第1及び第2の回転子4a,4bのそれぞれのサイズを小さくすることができ、回転電機1の生産性の向上を図ることができる。
実施の形態6.
図35は、この発明の実施の形態6による回転電機1の第1の電機子2a及び第1の回転子4aを示す構成図である。また、図36は、この発明の実施の形態6による回転電機1の第2の電機子2b及び第2の回転子4bを示す構成図である。本実施の形態による回転電機1の構成は、第1及び第2の電機子コア7a,7bの構成を除いて、実施の形態5による回転電機1の構成と同様である。第1及び第2の電機子コア7a,7bは、周方向へ並ぶ複数(この例では、6つ)の分割コア61にそれぞれ分割されている。
第1の電機子コイル群20では、図35に示すように、3つの電機子コイル21を組み合わせた複数の集合単位が、電機子2の全周にわたってそれぞれ独立して配置されている。従って、第1の電機子コア7aでは、電機子コイル21のコイルエンド42が跨っていない磁極ティース9aが電機子コイル21の各集合単位間に存在している。第1の電機子コア7aにおける各分割コア61の境界62は、電機子コイル21のコイルエンド42が跨っていない磁極ティース9aの位置に形成されている。この例では、第1の電機子コア7aにおける各分割コア61の境界62が第1の電機子コア7aの径方向に沿って形成されている。第1の電機子2aは、分割コア61と、分割コア61に設けられた2つの電機子コイル21とを含む複数(この例では、6つ)の分割電機子63で構成されている。
第2の電機子コイル群30でも、図36に示すように、3つの電機子コイル31を組み合わせた複数の集合単位が、電機子2の全周にわたってそれぞれ独立して配置されている。従って、第2の電機子コア7bでも、電機子コイル31のコイルエンド42が跨っていない磁極ティース9bが電機子コイル31の各集合単位間に存在している。第2の電機子コア7bにおける各分割コア61の境界62は、電機子コイル31のコイルエンド42が跨っていない磁極ティース9bの位置に形成されている。この例では、第2の電機子コア7bにおける各分割コア61の境界62が第2の電機子コア7bの径方向に沿って形成されている。第2の電機子2bは、分割コア61と、分割コア61に設けられた2つの電機子コイル31とを含む複数(この例では、6つ)の分割電機子63で構成されている。他の構成は実施の形態5と同様である。
このように、毎極毎相スロット数qの値が6/7である場合であっても、電機子コイル21,31が跨っていない磁極ティース9a,9bを第1及び第2の電機子コア7a,7bに存在させることができ、電機子コイル21,31が跨っていない磁極ティース9a,9bの位置で第1及び第2の電機子コア7a,7bを複数の分割コア61にそれぞれ分割することができる。これにより、第1及び第2の電機子2a,2bのそれぞれを複数の分割電機子63に分けて第1及び第2の電機子2a,2bを製造することができ、第1及び第2の電機子2a,2bの製造を容易にすることができる。また、第1及び第2の電機子2a,2bを構成する各部品の小形軽量化を図ることができるので、実施の形態3と同様に、回転電機1の完成後の回転電機1の修理及びメンテナンス等の作業性も向上させることができる。これにより、第1及び第2の電機子2a,2bが損傷した場合であっても、第1及び第2の電機子2a,2b全体を修理、交換する必要がなくなり、回転電機1の修理及び交換に要するコストの低減化及び作業期間の短縮化を図ることができる。
なお、毎極毎相スロット数qの値は、実施の形態1〜3による回転電機1で4/5、実施の形態4〜6による回転電機1で6/7となっているが、毎極毎相スロット数qの値はこれに限定されず、上述の条件1〜3を満たす回転電機の中から、この発明を適用できる回転電機を見つけることができる。例えば、毎極毎相スロット数qが6/5である回転電機にこの発明を適用してもよい。
また、実施の形態2及び5では、第1及び第2の回転子4a,4bが各磁極の位置を周方向について一致させて回転軸3に固定されているが、第1及び第2の回転子4a,4bの各磁極の位置を周方向について互いに位相差α°だけずらして(即ち、第2の回転子4bに対する第1の回転子4aの電気角位相の位置を位相差α°だけずらして)第1及び第2の回転子4a,4bを回転軸3に固定してもよい。この場合、共通の仮想スロット10の上口及び下口に配置された各仮想コイル辺103のそれぞれに対応する2つのコイル辺41同士の位置も周方向について位相差α°だけずらして(即ち、第2の電機子コイル群30に対する第1の電機子コイル群20の電気角位相の位置も位相差α°だけずらして)第1及び第2の電機子2a,2bが配置される。即ち、第1の回転子4aが第2の回転子4bに対してずれている位相分だけ、第1の電機子コイル群20が第2の電機子コイル群30に対して周方向へずらして配置される。
また、実施の形態2及び5では、回転軸3の一端部が回転子用支持部53に支持され、第1及び第2の回転子4a,4bが回転軸3の他端部に固定されているが、回転子用支持部53による回転軸3の支持位置、及び回転軸3に対する第1及び第2の回転子4a,4bの固定位置は、これに限定されない。例えば、図37及び図38に示すように、回転軸3の中間部を回転子用支持部53で支持するとともに、回転軸3の一端部に第1の回転子4aを固定し、回転軸3の他端部に第2の回転子4bを固定してもよい。この場合、第1の電機子2a及び第1の電機子用支持部52aが回転軸3の軸線方向について第1の回転子4aの位置に合わせて配置され、第2の電機子2b及び第2の電機子用支持部52bが回転軸3の軸線方向について第2の回転子4bの位置に合わせて配置される。
また、実施の形態3及び6では、第1及び第2の電機子コア7a,7bがいずれも複数の分割コア61に分割されているが、第1及び第2の電機子コア7a,7bのうち、第1の電機子コア7aのみを複数の分割コア61に分割してもよいし、第2の電機子コア7bのみを複数の分割コア61に分割してもよい。
また、各上記実施の形態では、電機子2の内側に回転子4が配置されたインナロータ型の回転電機1にこの発明が適用されているが、これに限定されず、筒状の回転子の内側に電機子が配置されたアウタロータ型の回転電機にこの発明を適用してもよい。また、電機子と回転子とが径方向について対向するラジアルギャップ型(インナロータ型、アウタロータ型)の回転電機だけでなく、例えば、電機子と回転子とが軸線方向について対向するアキシャルギャップ型の回転電機にこの発明を適用してもよい。
また、各上記実施の形態による回転電機1は、例えば電動機、発電機及び発電電動機のいずれにも適用することができる。また、各上記実施の形態による回転電機1は、同期機以外の例えば誘導機等に適用することもできる。