本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1〜4)
実施形態1〜4は、ステアリング装置、具体的にはステアリングコラム装置に関する。特に、ステアリング装置の操向コラムに関し、チルト及びテレスコピック動作が可能であり、衝撃エネルギ吸収機能を有するものに関する。
従来から、チルト及びテレスコピック動作によるステアリング位置調整が可能であり、かつ、衝突時の衝撃エネルギを吸収する機能も有するステアリング装置が使われている。しかしながら、より一層の安定した衝撃吸収機能が求められる一方、ステアリング装置の車両への取り付け強度や安定性を損なうことがないことも求められている。
先行技術としての特許文献1(特開2007−69800号公報)に記載の構造は、アウターコラムとインナーコラムで構成されたストローク機構と、テレスコ多板の先端のフック部がアウターコラムの固定部から外れることでアウターコラムから離脱可能に構成されている。この場合、左右のテレスコ多板が個々に固定されているので、離脱荷重の左右のバラつきでコラムがコジれてしまう可能性がある。
一方では、特許文献2(特開2009−29152号公報)に記載の構造は、テレスコの固定部材が衝撃荷重の発生で、固定部がスライドする構造が開示されている。この構造では固定部材が溝に収まっていることから、ストローク量を多く取る為には溝を長くする必要がありコラムが大型化する傾向にある。
上述の通り、より一層のエネルギ吸収機能を備えつつ、ステアリング装置の取付の安定性を備え、さらに大型化の懸念をきたさないステアリング装置が求められている。
上記課題を解決するための第一の構造は以下の通りである。すなわち、インナーコラムとアウターコラムからなるテレスコ嵌合構造で、締付固定部の摩擦板(いわゆるテレスコ多板)を固定するT字形状の固定ブラケットをアウターコラムのスリットの間でインナーコラム離脱可能に固定する。固定部をインナーコラムから離脱させることで、コラムの脱落を防止しながら、低荷重での離脱、衝撃吸収を可能にする。固定ブラケット、インナーコラムには孔が設けられ、ピンを挿入固定する。ステアリングシャフトに2次衝突荷重が入力されるとインナーコラムに伝達され、固定ブラケットを固定するピンがせん断し、固定ブラケットの固定面とインナーコラムが相対変位しながら、テレスコストローク以上のストロークを可能にする。
好ましくは、離脱荷重を安定させる為に多板を左右に配置し、その中央の固定面を離脱させる方式が良い(いわゆるT字形状)。左右の固定部に同じ固定力が発生し、衝撃荷重を受けると踏ん張る。その中心部の固定面が真っ直ぐに離脱できる。また、左右の固定部の荷重バランスが崩れても、アウターコラムのスリットがガイドするので比較的真っ直ぐに離脱し、ストロークが可能になる。また、コラムの締付剛性も向上する。
好ましくは、せん断ピンは、樹脂を流し込み硬化させるインジェクション方式を用いてはみ出し充填させると固定部のガタを抑制できる。樹脂ピン、リベット、ボルトなどで固定しても材料強度、せん断部の面積から離脱荷重が計算できるので適用できる。
上記課題を解決するための第二の構造は以下の通りである。すなわち、インナーコラムとアウターコラムからなるテレスコ嵌合構造で、締付固定部の固定側ギヤロックをアウターコラムのスリットの間でインナーコラム離脱可能に固定する。インナーコラムから離脱させることで、コラムの脱落を防止しながら、低荷重での離脱、衝撃吸収を可能にする。固定ブラケット、インナーコラムには孔が設けられ、ピンを挿入固定する。ステアリングシャフトに2次衝突荷重が入力されるとインナーコラムに伝達され、固定ブラケットを固定するピンがせん断し、固定ブラケットの固定面とインナーコラムが相対変位しながら、テレスコストローク以上のストロークを可能にする。
この締付構造では、(1)ギヤを下方から上方に押し上げるので、インナーコラムをアウターコラム上方内面に押し付けることになる。(2)ディスタンスブラケットはアウターコラムの側面まで延びている。(3)アウターコラムのスリットとスリットを挟むようにディスタンスブラケットで横方向からインナーコラムを押し付ける。これらによりコラムの締付剛性も向上する。
好ましくは、せん断ピンは、樹脂を流し込み硬化させるインジェクション方式を用いてはみ出し充填させると固定部のガタを抑制できる。樹脂ピン、リベット、ボルトなどで固定しても材料強度、せん断部の面積から離脱荷重が計算できるので適用できる。
また、本願のカム付きチルトボルトとギヤロックと固定側ギヤロックのロック機構に変えて、公知のカム(例えば、特開2001−322552号公報に記載されているもの)と固定側ギヤロックのギヤに無い平板とを組合わせて、平板を離脱させることも可能である。
上記課題を解決するための第三の構造は以下の通りである。すなわち、インナーコラムとアウターコラムのテレスコ嵌合構造で、締付固定部の摩擦板(テレスコ多板)を固定するT字形状の固定ブラケットをアウターコラムのスリットの間でインナーコラム離脱可能に固定する。固定部をインナーコラムから離脱させることで、コラムの脱落を防止しながら、低荷重での離脱、衝撃吸収を可能にする。固定ブラケット、インナーコラムには孔が設けられ、ピンを挿入固定する。ステアリングシャフトに2次衝突荷重が入力されるとインナーコラムに伝達され、固定ブラケットを固定するピンがせん断し、固定ブラケットの固定面とインナーコラムが相対変位しながら、テレスコストローク以上のストロークを可能にする。
好ましくは、離脱荷重を安定させる為には多板を左右に配置し、その中央の固定面を離脱させる方式が良い(T字形状)。左右の固定部に同じ固定力が発生し、衝撃荷重を受けると踏ん張る。その中心部の固定面が真っ直ぐに離脱できる。また、左右の固定部の荷重バランスがズレても、アウターコラムのスリットがガイドするので比較的真っ直ぐに離脱し、ストロークが可能になる。また、コラムの締付剛性も向上する。
好ましくは、せん断ピンは、樹脂を流し込み硬化させるインジェクション方式を用いる。その際に固定ブラケットはインナーコラムにインナープレートを内側からカシメ固定し、せん断ピンが通過するインナーコラムの孔を一時的に塞いでおく。その上で固定ブラケットのせん断ピンが通過する孔を重ね合わせて位置決めし、固定ブラケット側の孔から樹脂を射出し硬化させて一体に固定する。せん断部の面積から離脱荷重が計算できるので安定した離脱を達成するために適用できる。
また、好ましくはインナープレートには樹脂だまりが設けられ、樹脂が充填されることで孔から樹脂が脱落することを防止できる。更に樹脂をはみ出し充填させると固定部のガタを抑制できる。充填量の目視確認もできる。
本構造によれば、比較的低荷重による衝撃に対しても安定したエネルギ吸収が可能であり、ステアリング装置の車両への取り付けの安定性も損なうことがない。
以下図1〜23を参照して、具体的に説明する。図1〜4は実施形態1〜4を模式的に示すものである。図5〜10は実施形態1の構造を具体的に示すものである。同様に、図11〜15は実施形態2の構造を具体的に示し、図16〜23は実施形態3の構造を具体的に示すものである。図2において、軸方向DAは、ステアリングシャフトの軸方向を示し、前方DFおよび後方DBは、ステアリング装置を車体に取り付けた場合の車体の前方および後方を示している。
実施形態1に係るステアリングコラム装置は、ステアリングシャフトを支持するステアリングコラム装置であって、ステアリングコラムはインナーコラムとアウターコラムからなり、テレスコピック調整可能、及び、衝撃吸収可能に軸方向にストロークする機能を備えており、車体に取り付けられるチルトブラケットを介してチルト調整可能であり、チルトブラケットに備えられた締付機構でアウターコラムを締め付けることでインナーコラムを保持するものであって、締付機構の摩擦面を増加させるテレスコ用多板を有しており、テレスコ多板はコラム底面、かつ、アウターコラムのスリット間に設けた固定ブラケットに固定され、インナーコラム側面の孔と固定ブラケット側面の孔を一致させてせん断ピンを挿通することで、固定ブラケットからインナーコラムが離脱可能に支持されていることを特徴とする。
すなわち、実施形態1は、雄ステアリング軸106と雌ステアリング軸105からなるステアリングシャフトを支持するステアリングコラム装置120であって、ステアリングコラムはインナーコラム121とアウターコラム122からなり、テレスコピック調整可能、及び、衝撃吸収可能に軸方向にストロークする機能を備えており、車体に取り付けられるチルトブラケット123を介してチルト調整可能であり、チルトブラケット123に備えられた締付機構129でアウターコラム122を締め付けることでインナーコラム121を保持するものであって、締付機構129の摩擦面を増加させるテレスコ多板125を有しており、テレスコ多板125はコラム(121,122)の底面側、かつ、アウターコラム122のスリット間に設けた固定ブラケット124に固定され、インナーコラム121の孔と固定ブラケット124の孔を一致させてせん断ピンを挿通することで、固定ブラケット124からインナーコラム121が離脱可能に支持されていることを特徴とするステアリングコラム装置120である。
実施形態2に係るステアリングコラム装置は、ステアリングシャフトを支持するステアリングコラム装置であって、ステアリングコラムはインナーコラムとアウターコラムからなり、テレスコピック動作及び衝撃吸収可能機能を有し、相対的に軸方向にストロークするものであり、車体に取り付けられるチルトブラケットを介してチルト調整可能に車体に取り付けられ、チルトブラケットは締付機構を備えており、アウターコラムを締め付けることでインナーコラムを保持するものであって、アウターコラムはスリットを有し、スリットに対し左右方向から締付機構の作用により押圧する押圧ブラケットでインナーコラムを包持しており、このスリットの間に、インナーコラムに離脱可能に取り付けられた固定板を配置し、締付機構を構成するチルトレバーの回転により、チルトレバー中央のカムを回転させることで、カムを固定板に下方から上方に向かって押し付け、保持する締付機構を有することを特徴とする。
すなわち、実施形態2は、雄ステアリング軸106と雌ステアリング軸105からなるステアリングシャフトを支持するステアリングコラム装置120であって、ステアリングコラム装置120はインナーコラム121とアウターコラム122からなり、テレスコピック動作及び衝撃吸収可能機能を有し、相対的に軸方向にストロークするものであり、車体に取り付けられるチルトブラケット123を介してチルト調整可能に車体に取り付けられ、チルトブラケット123は締付機構129を備えており、アウターコラム122を締め付けることでインナーコラム121を保持するものであって、アウターコラム122はスリットを有し、スリットに対し左右方向から締付機構129の作用により押圧する押圧ブラケット1232でインナーコラム121を包持しており、このスリットの間に、インナーコラム121に離脱可能に取り付けられた固定板としての機能を有するカム及びギヤ機構148を配置し、締付機構129を構成するチルトレバー127の回転により、チルトレバー中央部のカムであるカムロック機構133を回転させることで、チルトボルト中央部153に形成されたカム部を固定板に下方から上方に向かって押し付け、保持する締付機構を有することを特徴とするステアリングコラム装置120である。
実施形態3に係るステアリングコラム装置は、ステアリングシャフトを支持するステアリングコラム装置であって、ステアリングコラムはインナーコラムとアウターコラムからなり、テレスコピック調整機能及び衝撃吸収可能に軸方向にストロークするものであって、車体に取付られるチルトブラケットを備え、チルト調整可能に車体に取り付けられるものであって、締付機構により、チルトブラケットとアウターコラムと摩擦板としてのテレスコ多板とを締め付けることで、アウターコラムに内嵌されたインナーコラムを保持するものであって、アウターコラムはスリットを有し、締付機構により、スリットに対し左右方向から押圧する押圧ブラケットでインナーコラムを包持し、このスリット間にインナーコラムに離脱可能に取り付けられた固定板を配置し、さらに摩擦板を固定する固定ブラケットを樹脂の射出成形にてインナーコラムに結合固定したことを特徴とする。
実施形態3は、ステアリングシャフトを支持するステアリングコラム装置であって、ステアリングコラムはインナーコラムとアウターコラムからなり、テレスコピック調整機能及び衝撃吸収可能に軸方向にストロークするものであって、車体に取付られるチルトブラケットを備え、チルト調整可能に車体に取り付けられるものであって、締付機構により、チルトブラケットとアウターコラムと摩擦板としてのテレスコ多板とを締め付けることで、アウターコラムに内嵌されたインナーコラムを保持するものであって、アウターコラムはスリットを有し、締付機構により、スリットに対し左右方向から押圧する押圧ブラケットでインナーコラムを包持し、このスリット間にインナーコラムに離脱可能に取り付けられた摩擦板としての固定板であるインナープレート158を配置し、さらに摩擦板を固定する固定ブラケットとの間を樹脂の射出成形にて形成したせん断ピン137,138でインナーコラムに結合固定したことを特徴とするステアリングコラム装置である。
実施形態4は、実施形態1〜3の何れかに記載のステアリングコラム装置を備えるステアリング装置である。
実施形態4のステアリング装置は、車両の操向装置として好適に使用できる。
(実施形態5)
図24は、実施形態5に係るステアリング装置の周辺を模式的に示す図である。図25は、実施形態5に係るステアリング装置を底面側から見た斜視図である。図24および図25を用いて、実施形態5に係るステアリング装置の概要を説明する。また、以下の説明において、ステアリング装置100を車体VBに取り付けた場合の車体VBの前方は、単に前方と記載され、ステアリング装置100を車体VBに取り付けた場合の車体VBの後方は、単に後方と記載される。図24において、前方は、図中の左側であり、後方は、図中の右側である。
(ステアリング装置)
ステアリング装置100は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、ユニバーサルジョイント84と、ロアシャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、を備え、ピニオンシャフト87に接合している。
ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを含む。入力軸82aは、一方の端部がステアリングホイール81に連結され、他方の端部が出力軸82bに連結される。出力軸82bは、一方の端部が入力軸82aに連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント84に連結される。実施形態5では、入力軸82a及び出力軸82bは、機械構造用炭素鋼(いわゆるSC材)または機械構造用炭素鋼鋼管(いわゆるSTKM材)等の一般的な鋼材等から形成される。
ロアシャフト85は、一方の端部がユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。ピニオンシャフト87は、一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結される。
また、ステアリング装置100は、図25に示す回転中心軸Zrを中心として入力軸82aを回転可能に支持する筒状のインナーコラム51と、インナーコラム51の少なくとも一部が内側に挿入される筒状のアウターコラム54と、を含むステアリングコラム50を備える。インナーコラム51は、アウターコラム54よりも後方側に配置されている。以下の説明において、インナーコラム51の軸方向およびアウターコラム54の軸方向は、適宜単に軸方向と記載される。
ステアリング装置100は、車体側部材13に固定されてアウターコラム54を支持するアウターコラムブラケット52を備える。アウターコラムブラケット52は、車体側部材13に固定される取付板部52bと、取付板部52bに一体に形成された枠状支持部52aと、を備えている。アウターコラムブラケット52の取付板部52bは、例えば取付孔52hを有しており、取付孔52hおよびボルト等の固定部材を用いて車体側部材13に固定される。アウターコラムブラケット52の枠状支持部52aは、アウターコラム54の両側に配置され、アウターコラム54を締め付けている。また、枠状支持部52aには、車体VBの上下方向に長い長穴であるチルト調整孔23hが設けられている。
また、アウターコラム54は、前方側端部に設けられるピボットブラケット55を有する。ピボットブラケット55は、回転軸55aを中心として回転可能に車体側部材12に支持されている。回転軸55aは、例えば水平方向に平行である。これにより、アウターコラム54は、鉛直方向に揺動可能に支持されている。
図26は、図24におけるd−d断面を示す図である。図27は、図26におけるe−e断面を示す図である。図28は、実施形態5に係るステアリング装置の底面を示す図である。図26に示すように、アウターコラム54は、2つのロッド貫通部31と、スリット54sと、を有する。ロッド貫通部31は、インナーコラム51の外壁から径方向外側に突出する部分であり、図27に示すように丸孔であるロッド貫通孔31hを有する。径方向は、軸方向に対して直交する方向であり、以下の説明においても同様の意味で用いられる。2つのロッド貫通部31が有するそれぞれのロッド貫通孔31hは、径方向に対向している。また、ロッド貫通部31の一部は、枠状支持部52aと対向している。ロッド33は、2つのロッド貫通孔31hを貫通すると共に枠状支持部52aのチルト調整孔23hを貫通し、操作レバー53と連結されている。
また、スリット54sは、インナーコラム51の挿入側の一端を切り欠いた長穴であって、アウターコラム54の外壁において2つのロッド貫通部31の間の位置に設けられている。アウターコラム54は、スリット54sを有するので、締め付けられると内径が小さくなる。これにより、アウターコラム54が締め付けられている状態では、アウターコラム54がインナーコラム51を覆う部分において、アウターコラム54の内壁とインナーコラム51の外壁とは接触している。このため、アウターコラム54とインナーコラム51との間に摩擦力が生じている。また、スリット54sの軸方向の両端が塞がれていてもよい。すなわち、スリット54sは閉構造であってもよい。
図26に示すように、ステアリング装置100は、第1テレスコ摩擦板21と、第2テレスコ摩擦板22と、を有する。第1テレスコ摩擦板21は、軸方向を長手方向とする長穴であるテレスコ調整孔21hを有する板状部材である。第1テレスコ摩擦板21は、例えば、枠状支持部52aとロッド貫通部31との間の位置に2つずつ重ねて配置される。第2テレスコ摩擦板22は、例えば、板材を曲げて形成された部材であって、軸方向から見て略U字形状である。第2テレスコ摩擦板22は、2つの第1テレスコ摩擦板21の間に配置される2つの摩擦部22aと、2つの摩擦部22aを連結する連結部22bと、連結部22bに設けられる屈曲部22cと、を含む。なお、第1テレスコ摩擦板21は、必ずしも枠状支持部52aとロッド貫通部31との間の位置に配置されていなくてもよく、第1テレスコ摩擦板21とロッド貫通部31とで枠状支持部52aを挟むように配置されていてもよい。
摩擦部22aは、丸孔であるロッド貫通孔22hを有する。ロッド33は、テレスコ調整孔21hおよびロッド貫通孔22hを貫通している。連結部22bは、2つの摩擦部22aを連結して一体にすることで、摩擦部22aを2つの第1テレスコ摩擦板21の間に配置する作業を容易にしている。また、連結部22bは、屈曲部22cを有することで、たわんだ状態を保つことができる。これにより、連結部22bは、アウターコラムブラケット52の締め付け状態が変化して2つの摩擦部22a同士の距離が変化した場合でも、摩擦部22aを引っ張りにくくなっている。このため、摩擦部22aが連結部22bに引っ張られることによって摩擦部22aと第1テレスコ摩擦板21との間に隙間が生じる事態が抑制されている。
枠状支持部52aが締め付けられると、第1テレスコ摩擦板21および第2テレスコ摩擦板22の摩擦部22aは、枠状支持部52aによってアウターコラム54のロッド貫通部31に押し付けられる。これにより、枠状支持部52aと第1テレスコ摩擦板21との間、第1テレスコ摩擦板21と第2テレスコ摩擦板22の摩擦部22aとの間、第1テレスコ摩擦板21とロッド貫通部31との間においてそれぞれ摩擦力が生じる。このため、第1テレスコ摩擦板21および第2テレスコ摩擦板22を有さない場合に比較して、摩擦力が生じる面が増加する。枠状支持部52aは、第1テレスコ摩擦板21および第2テレスコ摩擦板22によってより強固にアウターコラム54を締め付けることができる。
また、操作レバー53が回転させられると、枠状支持部52aに対する締め付け力が緩められ、枠状支持部52aとアウターコラム54との間の摩擦力がなくなるまたは小さくなる。これにより、アウターコラム54のチルト位置の調整が可能となる。また、操作レバー53が回転させられると、枠状支持部52aに対する締め付け力が緩められ、アウターコラム54のスリット54sの幅が大きくなる。これにより、アウターコラム54がインナーコラム51を締め付ける力がなくなるため、インナーコラム51が摺動する際の摩擦力がなくなる。これにより、操作者は、操作レバー53を回転させた後、ステアリングホイール81を介してインナーコラム51を押し引きすることで、テレスコ位置を調整することができる。
図27および図28に示すように、ステアリング装置100は、インナーコラムブラケット4を備える。図29は、実施形態5に係るインナーコラムブラケットの斜視図である。図29に示すように、インナーコラムブラケット4は、例えば、腕部41と、差込部42と、首部44と、脚部43と、を含む。例えば、腕部41は、図28に示すように、アウターコラム54の両側で対向する2組の第1テレスコ摩擦板21を接続する棒状の部分である。差込部42は、腕部41の両端に設けられ、第1テレスコ摩擦板21に設けられた孔に差し込まれる部分である。差込部42は、腕部41よりも細く形成されている。首部44は、腕部41の一部から腕部41の長手方向に対して直交方向に向かって突出する部分である。脚部43は、首部44の腕部41とは反対側の端部に設けられる板状の部分であって、インナーコラム51に接触している。図29に示すように、脚部43のインナーコラム側表面43bは、インナーコラム51の外壁の形状に沿った形状にされている。また、脚部43は、例えば、インナーコラム51に対向する表面とは反対側の表面に円形の凹部45を2つ備える。
インナーコラムブラケット4は、図28に示すように、アウターコラム54の両側に配置された第1テレスコ摩擦板21に連結されている。インナーコラムブラケット4は、差込部42が第1テレスコ摩擦板21に設けられた孔に差し込まれることによって、第1テレスコ摩擦板21に支持されている。また、アウターコラム54の両側に配置される第1テレスコ摩擦板21は、インナーコラムブラケット4の腕部41を挟んで対向している。また、インナーコラムブラケット4は、脚部43でインナーコラム51に連結されている。
インナーコラムブラケット4とインナーコラム51とを離脱可能に連結するため、図27に示すようにインナーコラム51には第1孔51hが開けられ、脚部43の凹部45の底面には第2孔43hが開けられている。第1孔51hと第2孔43hとは、連通している。例えば実施形態5において、第1孔51hおよび第2孔43hは、それぞれ2つずつ設けられており、内周は全て同じである。第1孔51hと第2孔43hとに跨る位置にシェアピンPが挿入されることで、インナーコラムブラケット4とインナーコラム51とが離脱可能に連結されている。また、第1孔51hおよび第2孔43hは、アウターコラム54の両側に配置されたそれぞれの第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置される。
また、インナーコラムブラケット4は、少なくとも一部がアウターコラム54のスリット54sに嵌まるように配置されている。具体的には、インナーコラムブラケット4の脚部43がスリット54sの内壁に対向するように嵌まっている。
図30は、図27のシェアピンの周辺部分を拡大して示す図である。図31は、実施形態5に係るインナーピンがアウターピンに挿入される前の状態でのシェアピンを示す斜視図である。図32は、実施形態5に係るインナーピンがアウターピンに挿入された後の状態でのシェアピンを示す斜視図である。実施形態5において、シェアピンPは、アウターピンPoと、インナーピンPiと、を備える。アウターピンPoおよびインナーピンPiは、例えばポリアセタール等の樹脂で形成されている。
図30に示すように、アウターピンPoは、第1孔51hおよび第2孔43hを貫通する筒状の部材である。アウターピンPoは、例えば、本体部Po1と、抜止部Po2と、フランジ部Po3と、ガイド孔Pohと、を備える。図30および図31に示すように、本体部Po1は、円筒状であって、第1孔51hおよび第2孔43hを貫通している。抜止部Po2は、本体部Po1の一端に設けられ、インナーコラム51の内側に位置している。抜止部Po2は、円筒状であって、第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きな外周を有する。これにより、抜止部Po2がインナーコラム51の内壁に接するので、アウターピンPoが第1孔51hおよび第2孔43hから抜け落ちることが抑制される。フランジ部Po3は、本体部Po1の他端に設けられ、第2孔43hよりもインナーコラム51の径方向外側に位置している。フランジ部Po3は、例えば円盤状であって、第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きな外周を有する。これにより、フランジ部Po3が凹部45の底面に接するので、アウターピンPoが第1孔51hおよび第2孔43hから抜け落ちることが抑制される。ガイド孔Pohは、フランジ部Po3から抜止部Po2までを貫通する貫通孔である。
実施形態5において、アウターピンPoは、圧入により第1孔51hおよび第2孔43hに挿入されている。アウターピンPoが第1孔51hおよび第2孔43hに挿入されることで、第1孔51hおよび第2孔43hが位置決めされる。例えば、抜止部Po2が第2孔43h側から第1孔51hおよび第2孔43hに挿入される。抜止部Po2は、本体部Po1とは反対側の端部Poeにおける外周が第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも小さくなるように形成されている。これにより、抜止部Po2は、第2孔43hに挿入しやすくなっている。なお、アウターピンPoは、第1孔51h側から第1孔51hおよび第2孔43hに挿入されてもよい。また、アウターピンPoは、本体部Po1の外壁にリブ等を設けた上で圧入されてもよい。
図31〜図33に示すように、アウターピンPoは、抜止部Po2からフランジ部Po3に向かって設けられるノッチPosを1つ備える。抜止部Po2が第2孔43hに挿入されると、アウターピンPoの周方向におけるノッチPosの幅dsが小さくなることで、抜止部Po2の外周が小さくなる。これにより、抜止部Po2は、第1孔51hおよび第2孔43hを通過しやすくなっている。以下の説明において、アウターピンPoの周方向におけるノッチPosの幅dsは、単にノッチPosの幅dsと記載される。なお、アウターピンPoは、ノッチPosを複数備えていてもよく、複数のノッチPosは、アウターピンPoの周方向で等間隔に配置されることが好ましい。
アウターピンPoが第1孔51hおよび第2孔43hを貫通する前の状態において、本体部Po1の外周は、第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きい。そして、アウターピンPoが第1孔51hおよび第2孔43hを貫通している状態において、本体部Po1の外周は、第1孔51hの内周および第2孔43hの内周に等しくなっている。これにより、本体部Po1が第1孔51hの内壁および第2孔43hの内壁を付勢している。このため、本体部Po1と第1孔51hの内壁との間の隙間および本体部Po1と第2孔43hの内壁との間の隙間が生じにくくなっている。これにより、アウターピンPoのガタつきが抑制されている。
インナーピンPiは、ガイド孔Pohを貫通しガイド孔Pohの内壁をガイド孔Pohの径方向外側に付勢する部材である。以下の説明において、ガイド孔Pohの径方向外側は、単に径方向外側と記載される。インナーピンPiは、例えば、胴体部Pi1と、大径部Pi2と、を備える。図30〜図32に示すように、胴体部Pi1は、円柱状であってガイド孔Pohを貫通している。大径部Pi2は、胴体部Pi1の両端に設けられて、ガイド孔Pohの外部に位置している。大径部Pi2は、ガイド孔Pohの内周よりも大きな外周を有する。これにより、大径部Pi2がガイド孔Pohの両端の縁に接するので、インナーピンPiがアウターピンPoから抜け落ちることが抑制される。なお、ガイド孔Pohは、両端部に内周を拡大した段差部を備えていてもよい。この場合、大径部Pi2が段差部の縁に接するので、インナーピンPiがガイド孔Pohの両端から突出しにくくなる。
実施形態5において、インナーピンPiは、圧入によりガイド孔Pohに挿入されている。例えば、大径部Pi2がフランジ部Po3側からガイド孔Pohに挿入される。大径部Pi2は、胴体部Pi1とは反対側の端部Pieにおける外周がアウターピンPoの内周よりも小さくなるように形成されている。これにより、大径部Pi2は、ガイド孔Pohに挿入しやすくなっている。また、インナーピンPiは、両端に同じ大径部Pi2を備えているので、どちらの端部からでもガイド孔Pohに挿入することができる。これにより、シェアピンPの組み立てが容易になっている。
インナーピンPiがガイド孔Pohを貫通する前の状態において、胴体部Pi1の外周は、ガイド孔Pohの内周よりも大きい。そして、インナーピンPiがガイド孔Pohを貫通している状態において、胴体部Pi1の外周は、ガイド孔Pohの内周に等しくなっている。これにより、胴体部Pi1がガイド孔Pohの内壁を付勢している。このため、胴体部Pi1とガイド孔Pohの内壁との間の隙間が生じにくくなっている。これにより、インナーピンPiのガタつきが抑制されている。
胴体部Pi1がガイド孔Pohの内壁を径方向外側に付勢することで、ノッチPosの幅dsを拡げる力がアウターピンPoに作用する。これにより、アウターピンPoが第1孔51hの内壁および第2孔43hの内壁を径方向外側に付勢する力が大きくなる。また、胴体部Pi1がガイド孔Pohの内壁を径方向外側に付勢することで、抜止部Po2におけるノッチPosの幅dsは大きくなる。これにより、抜止部Po2の外周が大きくなる。このため、アウターピンPoとインナーピンPiとが一体となったシェアピンPは、第1孔51hおよび第2孔43hに跨る位置に固定され、インナーコラム51およびインナーコラムブラケット4を連結している。
また、実施形態5に係るステアリング装置100は、第1孔51hおよび第2孔43hにシェアピンPを用いることで、樹脂部材を第1孔51hおよび第2孔43hに充填する場合に比較して、樹脂部材を充填するための装置および樹脂部材を受けるための部材が不要となる。このため、実施形態5に係るステアリング装置100は、組み立てを容易にすることができる。
ステアリングホイール81に過大荷重が加えられると、当該荷重は、入力軸82aを介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4は移動しない。このため、シェアピンPにせん断力が加わるので、当該荷重がシェアピンPの許容せん断力を超える場合、シェアピンPは切断される。シェアピンPが切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除される。インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除されると、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。よって、操作者がステアリングホイール81に衝突して過大荷重が加わった場合、過大荷重が加わった直後にインナーコラム51を移動させるための力が低減し衝撃を吸収する。
また、シェアピンPが切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、シェアピンPが切断されても、ステアリングコラム50は落下しない。
図33は、切断された後のシェアピンの状態を説明するための説明図である。図33に示すように、シェアピンPは切断面BKで切断される。切断面BKは、インナーコラム51の外壁であり、すなわち脚部43のインナーコラム側表面43bである。アウターピンPoは本体部Po1で切断され、インナーピンPiは胴体部Pi1で切断される。このため、シェアピンPの許容せん断力は、切断面BKにおける本体部Po1の断面積および胴体部Pi1の断面積に依存する。
図34は、図27のシェアピンの周辺部分を拡大し、シェアピンのみを側面図として示す図である。図34に示すように、フランジ部Po3からノッチPosの先端Posbまでの距離d3は、フランジ部Po3からインナーコラム51の外壁までの距離d4よりも大きいことが好ましい。これにより、シェアピンPが切断される時の切断面BKにノッチPosが含まれなくなる。このため、切断面BKにおける本体部Po1の断面にノッチPos分の欠損部分がなくなるので、シェアピンPの許容せん断力のバラつきが抑制される。
また、シェアピンPが切断された後において、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動することが望ましい。インナーコラム51の移動する方向がアウターコラム54の軸方向に対して角度をなす方向である場合、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる事態が生じるやすくなるためである。
実施形態5において、インナーコラムブラケット4は、図28に示したようにアウターコラム54の両側に配置された第1テレスコ摩擦板21に接合されている。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力を受ける。このため、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対して真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなる。
また、図27および図28に示すように、第1孔51hおよび第2孔43hは、それぞれ2つずつ軸方向で異なる位置に設けられている。このため、シェアピンPは、軸方向で異なる位置に2つ配置されている。仮に、第1孔51hおよび第2孔43hがそれぞれ1つずつ設けられる場合、すなわちシェアピンPが1つ配置される場合には、インナーコラムブラケット4がシェアピンPを中心に回転する可能性がある。これに対して、実施形態5においては、シェアピンPが軸方向で異なる位置に2つ配置されていることにより、インナーコラムブラケット4の回転が抑制される。このため、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢がより安定する。
また、第1孔51hおよび第2孔43hは、インナーコラムブラケット4を挟んだ両側で対向する第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置されている。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力をより均等に受けるので、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対してより真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対してより真っ直ぐ移動しやすくなる。
また、仮にインナーコラムブラケット4が、アウターコラム54の両側からの締付力を均等に受けることができなかった場合であっても、インナーコラムブラケット4の脚部43がスリット54sの内壁に対向するように嵌まっているので、インナーコラムブラケット4がスリット54sに案内され、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。
また、図30に示すように、凹部45の深さd1は、シェアピンPの第2孔43hから突出する部分の長さd2以上であることが好ましい。これにより、シェアピンPがインナーコラムブラケット4の表面よりも突出しなくなる。このため、シェアピンPが外力によって破損する可能性が低減される。
なお、シェアピンPの許容せん断力は、第1孔51hおよび第2孔43hの個数、第1孔51hおよび第2孔43hの断面積、シェアピンPの材料を変更することで調節することができる。例えば、第1孔51hおよび第2孔43hの個数は、それぞれ1個でもよいし3個以上であってもよい。また、シェアピンPは、例えば、非鉄金属を含む金属、またはゴム等で形成されていてもよい。
図35は、比較例におけるステアリングコラムの変位量とステアリングコラムを移動させるために必要な荷重との関係を示す図である。図36は、実施形態5におけるステアリングコラムの変位量とステアリングコラムを移動させるために必要な荷重との関係を示す図である。図35および図36において、横軸はステアリングコラムの前方への変位量であり、縦軸はステアリングコラムを前方へ移動させるために必要な荷重である。
比較例は、特許文献1に記載の技術のように、アウターコラムがカプセルを介して車体に取り付けられている場合の例である。比較例においては、アウターコラムがインナーコラムよりも後方側に配置されており、アウターコラムに過大荷重が加わると、アウターコラムと一体に設けられたテレスコ調整孔の端部にロッドが接触し、ブラケットを介して荷重がカプセルに伝わるようになっている。図35に示す力F5は、カプセルの許容せん断力を示している。
比較例において、アウターコラムは、ブラケットの締め付けによってインナーコラムとの間に生じる摩擦力によって軸方向に支持されている。図35で示す力F4は、アウターコラムを支持している当該摩擦力を示している。力F4は、力F5よりも小さい。通常使用において加わるような荷重によってアウターコラムが移動しないようにするために、力F4は、所定値以上に保たれる必要がある。
比較例において、アウターコラムに力F5以上の荷重が加わると、カプセルが切断されアウターコラムが車体から離脱する。その後、アウターコラムが、インナーコラムとの摩擦力で衝撃を吸収しながら軸方向に移動する。しかし、上述したように、力F4が所定値以上に保たれているので、アウターコラムの移動を滑らかにして操作者を2次衝突からより保護しやすくすることが難しい。
一方、実施形態5において、インナーコラム51は、アウターコラムブラケット52の締め付けによってアウターコラム54との間に生じる第1摩擦力と、第1テレスコ摩擦板21と第1テレスコ摩擦板21に接触する部材(アウターコラムブラケット52、第2テレスコ摩擦板22、アウターコラム54)との間に生じる第2摩擦力と、によって軸方向に支持されている。図36に示す力F1は、第1摩擦力を示しており、力F3は、第1摩擦力と第2摩擦力との和を示している。また、図36に示す力F2は、シェアピンPの許容せん断力を示している。力F2は、力F3より小さくかつ力F1よりも大きい。
実施形態5において、インナーコラム51に力F2以上の荷重が加わると、シェアピンPが切断され、インナーコラム51がインナーコラムブラケット4から離脱する。これにより、インナーコラム51と第1テレスコ摩擦板21との連結が解除されるので、上述した第2摩擦力がインナーコラム51に対して作用しなくなる。このため、シェアピンPが切断された後において、インナーコラム51は、上述した第1摩擦力で衝撃を吸収しながら軸方向に移動する。実施形態5に係るステアリング装置100は、第1摩擦力を小さく設定すると、インナーコラム51の移動を滑らかにして操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
実施形態5においては、仮に第1摩擦力の設定値を小さくしたとしても、インナーコラム51を軸方向に支持するための力のうち、第1摩擦力を小さくした分を第2摩擦力が補完することができる。このため、実施形態5に係るステアリング装置100は、第1摩擦力の設定値と第2摩擦力の設定値を調節することで、通常使用において加わるような荷重によってインナーコラム51が移動することを抑制でき、かつ操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
上述したように、実施形態5に係るステアリング装置100は、ステアリングホイール81に連結される入力軸82aを回転可能に支持し、第1孔51hが開けられた筒状のインナーコラム51と、インナーコラム51の少なくとも一部が内側に挿入される筒状であって、インナーコラム51の挿入側の一端を切り欠いたスリット54sを有するアウターコラム54と、を備える。また、ステアリング装置100は、車体側部材13に固定され、アウターコラム54を支持し、板材であるテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)と共にアウターコラム54を締め付けるアウターコラムブラケット52を備える。また、ステアリング装置100は、テレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)に支持され、第2孔43hが開けられたインナーコラムブラケット4を備える。また、ステアリング装置100は、第1孔51hと第2孔43hとに跨る位置にあって、インナーコラム51およびインナーコラムブラケット4を離脱可能に連結するシェアピンPを備える。
これにより、実施形態5に係るステアリング装置100において、ステアリングホイール81に過大荷重が加えられると、当該荷重は、入力軸82aを介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4は移動しない。このため、シェアピンPにせん断力が加わるので、当該荷重がシェアピンPの許容せん断力を超える場合、シェアピンPは切断される。シェアピンPが切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除される。インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除されると、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。このため、ステアリングコラム50のうちインナーコラム51が車体前方に移動することができるようになる。また、シェアピンPが切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、シェアピンPが切断されても、ステアリングコラム50は落下しない。よって、実施形態5に係るステアリング装置100は、ステアリングコラム50が車体前方に移動する離脱荷重の設定値(シェアピンPの許容せん断力)を下げても、誤動作によってステアリングコラム50が落下する事態を抑制することができる。
また、実施形態5に係るステアリング装置100において、シェアピンPは、一端から他端まで貫通するガイド孔Pohを備える筒状の部材であって第1孔51hおよび第2孔43hを貫通するアウターピンPoと、ガイド孔Pohを貫通しガイド孔Pohの内壁をガイド孔Pohの径方向外側に付勢するインナーピンPiと、を備える。これにより、ステアリング装置100は、アウターピンPoによって第1孔51hおよび第2孔43hの位置決めをした後にインナーピンPiを挿入して組み立てられるので、容易に組み立てることができる。
また、実施形態5に係るステアリング装置100において、アウターピンPoは、第1孔51hおよび第2孔43hを貫通する筒状の本体部Po1と、本体部Po1の一端に設けられて第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きな外周を有する抜止部Po2と、抜止部Po2から本体部Po1の他端に向かって設けられるノッチPosと、を備える。これにより、抜止部Po2が第1孔51hまたは第2孔43hに挿入されると、アウターピンPoの周方向におけるノッチPosの幅dsが小さくなることで、抜止部Po2の外周が小さくなる。これにより、抜止部Po2は、第1孔51hおよび第2孔43hを通過しやすくなっている。このため、アウターピンPoは、第1孔51hおよび第2孔43hに容易に取り付けることができる。
また、実施形態5に係るステアリング装置100において、アウターピンPoは、本体部Po1の他端に設けられて第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きな外周を有するフランジ部Po3を備える。フランジ部Po3からノッチPosの先端Posbまでの距離d3は、フランジ部Po3からインナーコラム51の外壁までの距離d4よりも大きい。これにより、シェアピンPが切断される時の切断面BKにノッチPosが含まれなくなる。このため、切断面BKにおける本体部Po1の断面にノッチPos分の欠損部分がなくなる。よって、実施形態5に係るステアリング装置100は、シェアピンPの許容せん断力のバラつきが抑制されやすくなる。
また、実施形態5に係るステアリング装置100において、インナーピンPiは、ガイド孔Pohの内壁をガイド孔Pohの径方向外側に付勢する円柱状の胴体部Pi1と、胴体部Pi1の両端に設けられてガイド孔Pohの内周よりも大きな外周を有する大径部Pi2と、を備える。これにより、大径部Pi2がガイド孔Pohの両端の縁に接するので、インナーピンPiがアウターピンPoから抜け落ちることが抑制される。
また、実施形態5に係るステアリング装置100において、インナーコラムブラケット4は、インナーコラム51に対向するインナーコラム側表面43bとは反対側の表面に凹部45を有する。第2孔43hは、凹部45の底面の一部に開けられ、凹部45の深さd1は、シェアピンPの第2孔43hから突出する部分の長さd2以上である。これにより、シェアピンPがインナーコラムブラケット4の表面よりも突出しなくなる。このため、シェアピンPが外力によって破損する可能性が低減される。
また、実施形態5に係るステアリング装置100において、テレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)は、アウターコラム54の両側に配置される。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力を受けるので、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対して真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる事態が生じることが抑制される。
また、実施形態5に係るステアリング装置100において、アウターコラム54の両側に配置されるテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)は、インナーコラムブラケット4を挟んで対向し、第1孔51hおよび第2孔43hは、インナーコラムブラケット4を挟んだ両側で対向するそれぞれのテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)からの距離が等しい位置に配置される。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力をより均等に受けるので、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対してより真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる事態が生じることが抑制される。
また、実施形態5に係るステアリング装置100において、アウターコラム54は、車体前方側に位置し、ピボットブラケット55を備え、離脱したインナーコラム51を挿入可能である。これにより、アウターコラム54は、軸方向をインナーコラム51の軸方向に合わせることができる。このため、アウターコラム54は、インナーコラム51が軸方向に移動する際に、インナーコラム51を案内しやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる事態が生じることが抑制される。
また、上述したように、実施形態5に係るステアリング装置100は、シェアピンPを用いた部材連結構造によって組み立てられている。この部材連結構造は、第1孔51hが開けられた第1固定部材(インナーコラム51)と、第1固定部材(インナーコラム51)に接して配置され、第2孔43hが開けられた第2固定部材(インナーコラムブラケット4)と、を備える。また、部材連結構造は、第1孔51hと第2孔43hとに跨る位置にあって、第1固定部材(インナーコラム51)および第2固定部材(インナーコラムブラケット4)を連結し、2次衝突の発生時の第1固定部材(インナーコラム51)の移動により第1固定部材(インナーコラム51)と第2固定部材(インナーコラムブラケット4)との境界部分の切断面BKで切断されるシェアピンPを備える。シェアピンPは、一端から他端まで貫通するガイド孔Pohを備える筒状の部材であって第1孔51hおよび第2孔43hを貫通するアウターピンPoと、ガイド孔Pohを貫通しガイド孔Pohの内壁をガイド孔Pohの径方向外側に付勢するインナーピンPiと、を備える。アウターピンPoは、第1孔51hおよび第2孔43hを貫通する円筒状の本体部Po1と、本体部Po1の一端に設けられて第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きな外周を有する抜止部Po2と、抜止部Po2から本体部Po1の他端に向かって設けられるノッチPosと、を備える。ノッチPosは、切断面BKに重ならない。
これにより、シェアピンPが切断される時の切断面BKにノッチPosが含まれなくなる。このため、切断面BKにおける本体部Po1の断面にノッチPos分の欠損部分がなくなる。よって、実施形態5に係る部材連結構造は、シェアピンPの許容せん断力のバラつきが抑制されやすくなる。
なお、上述した部材連結構造は、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結に用いられるだけでなく、他の部材同士の連結に用いられてもよい。例えば、部材連結構造は、車体側部材13とアウターコラムブラケット52との連結に用いられてもよい。部材連結構造は、2次衝突の発生時に一方の部材(第1固定部材)が他方の部材(第2固定部材)に対して離脱できるように部材同士を連結する、離脱部材連結用の部材連結構造である。また、実施形態5においてアウターピンPoにインナーピンPiが挿入される前の状態では、抜止部Po2は、本体部Po1の外壁よりもガイド孔Pohの径方向外側に突出しているが、後述する実施形態5の変形例3のように本体部Po1の内壁よりもガイド孔Pohの径方向内側に突出していてもよい。
(実施形態5の変形例1)
図37は、実施形態5の変形例1に係るシェアピンの周辺部分を拡大し、シェアピンのみを側面図として示す説明図である。図38は、図37におけるf−f断面を示す図である。実施形態5の変形例1は、上述した実施形態5と比較して、実施形態5に係るアウターピンPoと異なるアウターピンPoAを備える点が相違する。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図37に示すように、実施形態5の変形例1に係るアウターピンPoAは、本体部Po1の外壁に突起部prを備える。突起部prは、ガイド孔Pohの径方向外側に向かって突出する。突起部prは、弾性変形可能な部材であって、例えばゴム等の材料で形成されている。突起部prは、例えばフランジ部Po3から抜止部Po2に向かって直線状に設けられている。図38に示すように、アウターピンPoAは8つの突起部prを備えている。8つの突起部prは、本体部Po1の周方向に等間隔に配置されている。なお、アウターピンPoAが備える突起部prは必ずしも8つでなくてもよく、7つ以下であってもよいし、9つ以上であってもよい。
仮に、インナーピンPiがガイド孔Pohに挿入される前の状態で本体部Po1と第1孔51hとの間に間隙があっても、インナーピンPiがガイド孔Pohに挿入されるとノッチPosの幅dsが大きくなり、本体部Po1の第1孔51hに対向する部分の外周が大きくなる。このため、本体部Po1と第1孔51hとの間の間隙は埋められやすい。これに対して、インナーピンPiがガイド孔Pohに挿入される前の状態で本体部Po1と第2孔43hとの間に間隙がある場合、インナーピンPiがガイド孔Pohに挿入されても本体部Po1の第2孔43hに対向する部分の外周は大きくなりにくい。このため、本体部Po1と第2孔43hとの間の間隙は埋められない可能性がある。
図37に示すように、第2孔43hの内周が公差の範囲内で第1孔51hの内周よりも大きい場合、本体部Po1と第2孔43hの内壁との間に間隙Δrが生じる可能性がある。間隙Δrは、シェアピンPAがガタつく原因となる可能性がある。これに対して、実施形態5の変形例1に係るアウターピンPoAは弾性変形可能な突起部prを備えるので、突起部prが間隙Δrを埋めることができる。これにより、本体部Po1の第2孔43hに対向する部分の外周が大きくなりにくい点を、突起部prが補完することができる。このため、実施形態5の変形例1に係るステアリング装置100は、シェアピンPAがガタつくことを抑制できる。
図37に示すように、突起部prの長さd5は、第2孔43hの深さd4に等しいことが好ましい。これにより、第2孔43hの内周が公差の範囲内で第1孔51hの内周よりも大きい場合であっても、間隙Δrが深さd4の全長に亘って埋められる。このため、実施形態5の変形例1に係るステアリング装置100は、シェアピンPAがガタつくことをより抑制できる。なお、突起部prの長さd5は、第2孔43hの深さd4より短くてもよいし長くてもよい。
上述したように、実施形態5の変形例1に係るステアリング装置100において、アウターピンPoAは、本体部Po1の外壁に弾性変形可能な突起部prを備える。これにより、突起部prが、本体部Po1と第1孔51hの内壁との間の間隙または本体部Po1と第2孔43hの内壁との間の間隙を埋めることができる。このため、実施形態5の変形例1に係るステアリング装置100は、シェアピンPAがガタつくことを抑制できる。
(実施形態5の変形例2)
図39は、実施形態5の変形例2に係るステアリング装置を、図26におけるe−e断面に相当する平面で切った断面を示す図である。実施形態5の変形例2は、上述した実施形態5と比較して、実施形態5に係るインナーコラムブラケット4と異なるインナーコラムブラケット4Bを備える点が相違する。
図39に示すように、インナーコラムブラケット4Bは、脚部431と、脚部432と、を備える。脚部431は、首部44の腕部41とは反対側の端部から前方側に向かって設けられる板状の部分であって、インナーコラム51に接触している。脚部432は、首部44の腕部41とは反対側の端部から後方側に向かって設けられる板状の部分であって、インナーコラム51に接触している。脚部431、432のインナーコラム側表面は、インナーコラム51の外壁の形状に沿った形状にされている。脚部431、432は、例えば、インナーコラム51に対向する表面とは反対側の表面に円形の凹部45を1つずつ備える。脚部431の凹部45の底面には、第2孔431hが開けられている。脚部432の凹部45の底面には、第2孔432hが開けられている。第1孔51hと第2孔431hとに跨る位置および第1孔51hと第2孔432hとに跨る位置にシェアピンPが挿入されることで、インナーコラムブラケット4Bとインナーコラム51とが離脱可能に連結されている。
インナーコラムブラケット4Bは、第1テレスコ摩擦板による支持点である腕部41に対して、前方側および後方側の両側に第2孔431h、432hを備える。これにより、上述した実施形態5のように腕部41よりも後方側に2つの第2孔43hが設けられる場合と比較して、腕部41から第2孔431h、432hまでの距離が近くなりやすくなる。このため、第1テレスコ摩擦板に荷重が加えられ、腕部41の長手方向に平行な軸廻りのモーメントがインナーコラムブラケット4Bに伝わった場合であっても、シェアピンPに加わるモーメントは抑制されやすくなる。
また、上述した実施形態5のように腕部41よりも後方側に2つの第2孔43hが設けられる場合と比較して、インナーコラムブラケット4Bは第2孔431h、432h同士の距離を大きくすることができる。これにより、インナーコラムブラケット4Bの回転が抑制されるので、シェアピンPが切断されるときのインナーコラムブラケット4Bの姿勢が安定する。このため、シェアピンPの許容せん断力のバラつきが抑制されやすくなる。
(実施形態5の変形例3)
図40は、実施形態5の変形例3に係るステアリング装置を、図26におけるe−e断面に相当する平面で切った断面を示す図である。図41は、図40のシェアピンの周辺部分を拡大して示す図である。図42は、インナーピンがアウターピンに挿入される前の状態での実施形態5の変形例3に係るシェアピンを示す斜視図である。図43は、図40のシェアピンの周辺部分を拡大し、シェアピンのみを側面図として示す説明図である。実施形態5の変形例3に係るインナーコラムブラケット4Cは、上述した実施形態5に係る脚部43とは異なる脚部43Cを備える。また、実施形態5の変形例3に係るシェアピンPCは、上述した実施形態5に係るアウターピンPoとは異なるアウターピンPoCを備える。
図40に示すように、実施形態5の変形例3に係る脚部43Cは、例えば2つの第2孔43Chを有しているが、実施形態に係る脚部43の凹部45に相当する部分を有していない。これにより、実施形態5の変形例3に係るインナーコラムブラケット4Cは、実施形態5に係るインナーコラムブラケット4に比較して必要とする加工が少ないので、より容易に製作することができる。また、図41および図42に示すように、第1孔51hの内周は、第2孔43Chの内周よりも大きく形成されている。第1孔51hの内周と第2孔43Chの内周との差は、所定の公差よりも大きいことが好ましい。このようにすることで、公差の範囲内で第1孔51hおよび第2孔43Chの製作誤差が生じた場合であっても、第1孔51hの内周が第2孔43Chの内周よりも大きい状態が保たれやすい。
なお、インナーコラムブラケット4Cは、実施形態5に係る脚部43の凹部45に相当する部分を有していてもよい。このようにした場合、実施形態5で説明したように、シェアピンPCが外力によって破損する可能性が低減される。
図41に示すように、シェアピンPCは、アウターピンPoCと、インナーピンPiと、を備える。アウターピンPoCは、第1孔51hおよび第2孔43Chを貫通する筒状の部材である。アウターピンPoCは、例えば、本体部PoC1と、抜止部PoC2と、フランジ部PoC3と、ガイド孔PoChと、を備える。本体部PoC1は、円筒状であって、第1孔51hおよび第2孔43Chを貫通している。抜止部PoC2は、本体部PoC1の一端に設けられ、インナーコラム51の内側に位置している。フランジ部PoC3は、本体部PoC1の他端に設けられ、第2孔43Chよりもインナーコラム51の径方向外側に位置している。フランジ部Po3は、例えば円盤状であって、第2孔43Chの内周よりも大きな外周を有する。これにより、フランジ部PoC3が脚部43Cの表面に接するので、アウターピンPoCが第1孔51hおよび第2孔43Chから抜け落ちることが抑制される。ガイド孔PoChは、フランジ部PoC3から抜止部PoC2までを貫通する貫通孔である。
アウターピンPoCが第1孔51hおよび第2孔43Chに挿入される前の状態では、本体部PoC1および抜止部PoC2の外周は、例えば一定であって、第2孔43Chの内周よりも大きくかつ第1孔51hの内周よりも小さい。そして、アウターピンPoCは、圧入により第1孔51hおよび第2孔43Chに挿入される。これにより、本体部PoC1の外壁と第2孔43Chの内壁とが接することで摩擦力が生じ、図42に示すようにアウターピンPoCが第2孔43Chに取り付けられる。このため、第1孔51hおよび第2孔43Chが位置決めされる。また、アウターピンPoCの本体部PoC1と第1孔51hの内壁との間には、間隙ΔCが生じている。
アウターピンPoCは、抜止部PoC2の内壁に、ガイド孔PoChの径方向内側に向かって突出する凸部PoC4を備える。例えば、凸部PoC4は環状である。これにより、図42に示すようにアウターピンPoCにインナーピンPiが挿入される前の状態では、抜止部PoC2の内周は、本体部PoC1の内周よりも小さくなっている。また、アウターピンPoCにインナーピンPiが挿入される前の状態では、インナーピンPiの胴体部Pi1の外周は、本体部PoC1の内周と略等しい、または本体部PoC1の内周よりも大きい。インナーピンPiは、圧入によりガイド孔PoChに挿入される。インナーピンPiがガイド孔PoChに挿入され、インナーピンPiが凸部PoC4に接すると、径方向外側に向かう力が抜止部PoC2に加えられる。これにより、アウターピンPoCの周方向におけるノッチPosの幅dsが拡がる。このため、図43に示すように、アウターピンPoCにインナーピンPiが挿入された後の状態では、アウターピンPoCの抜止部PoC2は、第1孔51hの内周および第2孔43Chの内周よりも大きな外周を有する。これにより、抜止部PoC2がインナーコラム51の内壁に接するので、アウターピンPoCが第1孔51hおよび第2孔43Chから抜け落ちることが抑制される。
アウターピンPoCの周方向におけるノッチPosの幅dsが拡がることにより、アウターピンPoCの本体部PoC1のうち第1孔51hの内壁に対向する第1孔対向部PoC5の外周が大きくなる。これにより、図42に示した間隙ΔCが埋められ、第1孔対向部PoC5の少なくとも一部が第1孔51hの内壁に接する。このため、ガイド孔PoChの径方向におけるシェアピンPCのガタつきが抑制される。
第1孔51hの内周が第2孔43Chの内周よりも大きいので、第1孔対向部PoC5の外周は、第1孔51hと第2孔43Chとの境界を起点として抜止部PoC2に向かって拡大している。これにより、第1孔対向部PoC5は、図41および図43に示すように第1孔51hの縁および第2孔43Chの縁に引っ掛かる。このため、ガイド孔PoChの軸方向におけるシェアピンPCのガタつきが抑制される。
また、インナーコラム51に第1孔51hを開けると、インナーコラム51の内側に位置する第1孔51hの縁にバリが生じる。バリとは、切削加工等の際に加工面に生ずる不要な突起であり、通常はバリを取り除く作業が発生する。しかしながら、実施形態5の変形例3においては、第1孔51hの縁にバリがあることで第1孔対向部PoC5が第1孔51hの縁により引っ掛かりやすくなる。このため、実施形態5の変形例3においてはバリを取り除く必要がなく、バリがあることでガイド孔PoChの軸方向におけるシェアピンPCのガタつきが抑えられやすくなる。
また、図43に示すように、フランジ部PoC3からノッチPosの先端Posbまでの距離d6は、フランジ部Po3からインナーコラム51の内壁までの距離d8よりも小さいことが好ましい。これにより、アウターピンPoCの周方向におけるノッチPosの幅dsがより拡がりやすくなるので、第1孔対向部PoC5の外周が拡大しやすくなる。このため、ガイド孔PoChの径方向におけるシェアピンPCのガタつき、およびガイド孔PoChの軸方向におけるシェアピンPCのガタつきがより抑制される。
また、図43に示すように、距離d6は、フランジ部Po3からインナーコラム51の外壁までの距離d7よりも大きいことが好ましい。これにより、シェアピンPCが切断される時の切断面にノッチPosが含まれなくなる。このため、切断面における本体部PoC1の断面にノッチPos分の欠損部分がなくなるので、シェアピンPCの許容せん断力のバラつきが抑制される。ここで、シェアピンPCが切断される時の切断面は、図33で示した切断面BKに相当する部分である。
上述したように、実施形態5の変形例3に係るステアリング装置100において、第1孔51hの内周は、第2孔43Chの内周よりも大きい。また、アウターピンPoCは、抜止部PoC2の内壁に、ガイド孔PoChの径方向内側に向かって突出する凸部PoC4を備える。これにより、インナーピンPiが凸部PoC4をガイド孔PoChの径方向外側に向けて押すので、アウターピンPoCの周方向におけるノッチPosの幅dsが拡がる。これにより、アウターピンPoCの本体部PoC1の少なくとも一部が第1孔51hの内壁に接する。このため、ガイド孔PoChの径方向におけるシェアピンPCのガタつきが抑制される。さらに、第1孔51hの内周が第2孔43Chの内周よりも大きいため、アウターピンPoCの本体部PoC1の外周が、第1孔51hと第2孔43Chとの境界を起点として抜止部PoC2に向かって拡大する。これにより、アウターピンPoCの本体部PoC1が、第1孔51hの縁および第2孔43Chの縁に引っ掛かる。このため、ガイド孔PoChの軸方向におけるシェアピンPCのガタつきも抑制される。したがって、実施形態5の変形例3に係るステアリング装置100は、ガイド孔PoChの径方向におけるシェアピンPCのガタつき、およびガイド孔PoChの軸方向におけるシェアピンPCのガタつきの両方を抑制できる。
また、実施形態5の変形例3に係るステアリング装置100において、アウターピンPoCは、本体部PoC1の他端に設けられて第1孔51hの内周および第2孔43Chの内周よりも大きな外周を有するフランジ部PoC3を備える。フランジ部PoC3からノッチPosの先端Posbまでの距離d6は、フランジ部PoC3からインナーコラム51の内壁までの距離d8よりも小さい。これにより、アウターピンPoCの周方向におけるノッチPosの幅dsがより拡がりやすくなるので、アウターピンPoCの本体部PoC1の外周が拡大しやすくなる。このため、ガイド孔PoChの径方向におけるシェアピンPCのガタつき、およびガイド孔PoChの軸方向におけるシェアピンPCのガタつきがより抑制される。
(実施形態6)
図44は、実施形態6に係るステアリング装置を、図26におけるe−e断面に相当する平面で切った断面を示す図である。図45は、実施形態6に係るステアリング装置の底面を示す図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
インナーコラムブラケット4とインナーコラム51とを離脱可能に連結するため、図44に示すようにインナーコラム51には第1孔51hが開けられ、脚部43の凹部45の底面には第2孔43hが開けられている。第1孔51hと第2孔43hとは、連通している。例えば実施形態6において、第1孔51hおよび第2孔43hは、それぞれ2つずつ設けられており、内周は全て同じである。第1孔51hと第2孔43hとに跨る位置にシェアピンQが挿入されることで、インナーコラムブラケット4とインナーコラム51とが離脱可能に連結されている。また、第1孔51hおよび第2孔43hは、アウターコラム54の両側に配置されたそれぞれの第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置される。
図46は、図44のシェアピンの周辺部分を拡大して示す図である。図47は、実施形態6に係るインナーピンがアウターピンに挿入される前の状態でのシェアピンを示す斜視図である。図48は、実施形態6に係るインナーピンがアウターピンに挿入された後の状態でのシェアピンを示す斜視図である。実施形態6において、シェアピンQは、アウターピンQoと、インナーピンQiと、を備える。アウターピンQoおよびインナーピンQiは、例えばポリアセタール等の樹脂で形成されている。
図46に示すように、アウターピンQoは、第1孔51hおよび第2孔43hを貫通する筒状の部材である。アウターピンQoは、例えば、本体部Qo1と、抜止部Qo2と、アウターフランジ部Qo3と、ガイド孔Qohと、を備える。図46および図47に示すように、本体部Qo1は、円筒状であって、第1孔51hおよび第2孔43hを貫通している。抜止部Qo2は、本体部Qo1の一端に設けられ、インナーコラム51の内側に位置している。抜止部Qo2は、円筒状であって、第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きな外周を有する。これにより、抜止部Qo2がインナーコラム51の内壁に接するので、アウターピンQoが第1孔51hおよび第2孔43hから抜け落ちにくくなる。アウターフランジ部Qo3は、本体部Qo1の他端に設けられ、インナーコラム51の径方向で第2孔43hよりも外側に位置している。アウターフランジ部Qo3は、例えば円盤状であって、第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きな外周を有する。これにより、アウターフランジ部Qo3が凹部45の底面に接するので、アウターピンQoが第1孔51hおよび第2孔43hから抜け落ちにくくなる。ガイド孔Qohは、アウターフランジ部Qo3から抜止部Qo2までを貫通する貫通孔である。
実施形態6において、アウターピンQoは、圧入により第1孔51hおよび第2孔43hに挿入されている。アウターピンQoが第1孔51hおよび第2孔43hに挿入されることで、第1孔51hおよび第2孔43hが位置決めされる。例えば、抜止部Qo2が第2孔43h側から第1孔51hおよび第2孔43hに挿入される。抜止部Qo2は、本体部Qo1とは反対側の端部Qoeにおける外周が第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも小さくなるように形成されている。これにより、抜止部Qo2は、第2孔43hに挿入しやすくなっている。
なお、アウターピンQoは、第1孔51h側から第1孔51hおよび第2孔43hに挿入されてもよい。また、アウターピンQoは、本体部Qo1の外壁にリブ等を設けた上で圧入されてもよい。
図47および図48に示すように、アウターピンQoは、抜止部Qo2からアウターフランジ部Qo3に向かって設けられるノッチQosを1つ備える。抜止部Qo2が第2孔43hに挿入されると、アウターピンQoの周方向におけるノッチQosの幅dsが小さくなることで、抜止部Qo2の外周が小さくなる。これにより、抜止部Qo2は、第1孔51hおよび第2孔43hを通過しやすくなっている。以下の説明において、アウターピンQoの周方向におけるノッチQosの幅dsは、単にノッチQosの幅dsと記載される。
なお、アウターピンQoは、ノッチQosを複数備えていてもよい。ノッチQosが複数である場合、複数のノッチQosは、アウターピンQoの周方向で等間隔に配置されることが好ましい。
アウターピンQoが第1孔51hおよび第2孔43hを貫通する前の状態において、本体部Qo1の外周は、第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きい。そして、アウターピンQoが第1孔51hおよび第2孔43hを貫通している状態において、本体部Qo1が弾性変形することで、本体部Qo1の外周が第1孔51hの内周および第2孔43hの内周に等しくなっている。これにより、本体部Qo1が第1孔51hの内壁および第2孔43hの内壁を押している。このため、本体部Qo1と第1孔51hの内壁との間の隙間および本体部Qo1と第2孔43hの内壁との間の隙間が生じにくくなっている。これにより、アウターピンQoのガタつきが抑制されている。
インナーピンQiは、アウターピンQoのガイド孔Qohに挿入される部材である。以下の説明において、ガイド孔Qohの径方向外側は、単に径方向外側と記載される。インナーピンQiは、例えば、胴体部Qi1と、突出部Qi2と、を備える。図46〜図48に示すように、胴体部Qi1は、全体形状が略円柱状であって、ガイド孔Qohを貫通している。胴体部Qi1は、第1大径部Qi11と、第1小径部Qi12と、を備える。第1大径部Qi11は、例えば円柱状であり、ガイド孔Qohの内周に等しい外周を有する。第1小径部Qi12は、第1孔51hおよび第2孔43hに跨る位置に設けられる。第1小径部Qi12は、例えば、第1大径部Qi11と同心の回転体の形状をしている。第1小径部Qi12の外周は、第1大径部Qi11の外周よりも小さい。第1小径部Qi12は、例えば、図47に示すように胴体部Qi1の一部を周方向の全周に亘って切り欠くことにより形成されている。すなわち、第1小径部Qi12は、胴体部Qi1の表面を周方向に沿って凹ませた溝である。第1小径部Qi12の表面の底部は、例えば曲面状である。すなわち、回転中心軸Zrを含む平面でインナーピンQiを切った断面(図46で示す断面)において、第1小径部Qi12の表面が円弧を描いている。より具体的には、第1小径部Qi12の表面が半円を描いている。例えば、図46で示す断面において、第1小径部Qi12のうち外周が最小である部分を通る直線L1は、インナーコラム51の外壁の延長線上、すなわち脚部43のインナーコラム側表面43bの延長線上に位置している。突出部Qi2は、胴体部Qi1の両端に設けられて、ガイド孔Qohの外部に位置している。突出部Qi2は、ガイド孔Qohの内周よりも大きな外周を有する。これにより、突出部Qi2がガイド孔Qohの両端の縁に接するので、インナーピンQiがアウターピンQoから抜け落ちにくくなる。また、インナーピンQiが位置決めされることで、第1小径部Qi12が第1孔51hおよび第2孔43hに跨る位置からずれにくくなる。
なお、ガイド孔Qohは、両端部に内周を拡大した段差部を備えていてもよい。この場合、突出部Qi2が段差部の縁に接するので、インナーピンQiがガイド孔Qohの両端から突出しにくくなる。
実施形態6において、インナーピンQiは、圧入によりガイド孔Qohに挿入されている。例えば、突出部Qi2がアウターフランジ部Qo3側からガイド孔Qohに挿入される。突出部Qi2は、胴体部Qi1とは反対側の端部Qieにおける外周がアウターピンQoの内周よりも小さくなるように形成されている。これにより、突出部Qi2は、ガイド孔Qohに挿入しやすくなっている。また、インナーピンQiは、両端に同じ突出部Qi2を備えているので、どちらの端部からでもガイド孔Qohに挿入することができる。これにより、シェアピンQの組み立てが容易になっている。
インナーピンQiがガイド孔Qohに挿入される前の状態において、第1大径部Qi11の外周は、ガイド孔Qohの内周よりも大きい。そして、胴体部Qi1がガイド孔Qohを貫通している状態において、第1大径部Qi11が弾性変形することで、第1大径部Qi11の外周がガイド孔Qohの内周に等しくなっている。これにより、第1大径部Qi11がガイド孔Qohの内壁を径方向外側に押している。このため、胴体部Qi1とガイド孔Qohの内壁との間の隙間が生じにくくなっている。これにより、インナーピンQiのガタつきが抑制されている。
第1大径部Qi11がガイド孔Qohの内壁を径方向外側に押すことで、ノッチQosの幅dsを拡げる力がアウターピンQoに作用する。これにより、アウターピンQoと第1孔51hの内壁および第2孔43hの内壁との間に生じる摩擦力が大きくなる。さらに、抜止部Qo2におけるノッチQosの幅dsが大きくなるので、抜止部Qo2の外周が大きくなる。このため、アウターピンQoとインナーピンQiとが一体となったシェアピンQは、第1孔51hおよび第2孔43hに跨る位置に固定され、インナーコラム51およびインナーコラムブラケット4を連結している。
ステアリング装置100は、アウターピンQoによって第1孔51hおよび第2孔43hの位置決めをした後にインナーピンQiを挿入して組み立てられるので、容易に組み立てることができる。
また、実施形態6に係るステアリング装置100は、第1孔51hおよび第2孔43hにシェアピンQを用いることで、樹脂部材を第1孔51hおよび第2孔43hに充填する場合に比較して、樹脂部材を充填するための装置および樹脂部材を受けるための部材が不要となる。このため、実施形態6に係るステアリング装置100は、組み立てを容易にすることができる。
ステアリングホイール81に過大荷重が加えられると、当該荷重は、入力軸82aを介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4は移動しない。このため、シェアピンQにせん断力が加わるので、当該荷重がシェアピンQの許容せん断力を超える場合、シェアピンQは切断される。シェアピンQが切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除される。インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除されると、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。よって、操作者がステアリングホイール81に衝突して過大荷重が加わった場合、過大荷重が加わった直後にインナーコラム51を移動させるための力が低減し衝撃を吸収する。
また、シェアピンQが切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、シェアピンQが切断されても、ステアリングコラム50は落下しない。
図49は、切断された後のシェアピンの状態を説明するための説明図である。図49に示すように、シェアピンQは切断面BKで切断される。切断面BKは、シェアピンQのうち第1孔51hおよび第2孔43hに跨る部分に生じる。回転中心軸Zrを含む平面でインナーピンQiを切った断面(図49で示す断面)において、切断面BKは、インナーコラム51の外壁の延長線上、すなわち脚部43のインナーコラム側表面43bの延長線上に位置している。
シェアピンQの許容せん断力は、切断面BKの断面積に依存する。第1小径部Qi12の外周が第1大径部Qi11の外周よりも小さいため、インナーピンQiにせん断力が加えられたとき、応力集中が発生し第1小径部Qi12で亀裂が生じやすい。これにより、インナーピンQiは第1小径部Qi12で切断されやすくなる、すなわちインナーピンQiにおける切断面BKが第1小径部Qi12内に納まりやすくなる。このため、インナーピンQiにおける切断面BKの面積がバラつきにくくなる。したがって、シェアピンQの許容せん断力が安定する。
また、上述したように第1小径部Qi12の表面の底部が曲面状であることにより、第1小径部Qi12の表面の底部が尖った形状である場合に比較して、加工が容易になっている。このため、実施形態6に係る第1小径部Qi12は、加工の精度を高くすることができる。
図50は、図44のシェアピンの周辺部分を拡大し、シェアピンのみを側面図として示す図である。図50に示すように、アウターフランジ部Qo3からノッチQosの先端Qosbまでの距離d3は、アウターフランジ部Qo3からインナーコラム51の外壁までの距離d4よりも大きいことが好ましい。これにより、シェアピンQが切断される時の切断面BKにノッチQosが含まれなくなる。このため、切断面BKにおける本体部Qo1の断面にノッチQos分の欠損部分がなくなるので、シェアピンQの許容せん断力のバラつきが抑制される。
また、シェアピンQが切断された後において、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動することが望ましい。インナーコラム51の移動する方向がアウターコラム54の軸方向に対して角度をなす方向である場合、インナーコラム51の移動が妨げられる可能性またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる可能性が高くなるためである。
実施形態6において、インナーコラムブラケット4は、図45に示したようにアウターコラム54の両側に配置された第1テレスコ摩擦板21に接合されている。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力を受ける。このため、シェアピンQが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対して真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなる。
また、図44および図45に示すように、第1孔51hおよび第2孔43hは、それぞれ2つずつ軸方向で異なる位置に設けられている。このため、シェアピンQは、軸方向で異なる位置に2つ配置されている。仮に、第1孔51hおよび第2孔43hがそれぞれ1つずつ設けられる場合、すなわちシェアピンQが1つ配置される場合には、インナーコラムブラケット4がシェアピンQを中心に回転する可能性がある。これに対して、実施形態6においては、シェアピンQが軸方向で異なる位置に2つ配置されていることにより、インナーコラムブラケット4の回転が抑制される。このため、シェアピンQが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢がより安定する。
また、第1孔51hおよび第2孔43hは、インナーコラムブラケット4を挟んだ両側で対向する第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置されている。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力をより均等に受けるので、シェアピンQが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対してより真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対してより真っ直ぐ移動しやすくなる。
また、仮にインナーコラムブラケット4が、アウターコラム54の両側からの締付力を均等に受けることができなかった場合であっても、インナーコラムブラケット4の脚部43がスリット54sの内壁に対向するように嵌まっているので、インナーコラムブラケット4がスリット54sに案内され、シェアピンQが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。
また、図46に示すように、凹部45の深さd1は、シェアピンQの第2孔43hから突出する部分の長さd2以上であることが好ましい。これにより、シェアピンQがインナーコラムブラケット4の表面よりも突出しなくなる。このため、シェアピンQが外力によって破損する可能性が低減される。
なお、シェアピンQの許容せん断力は、第1孔51hおよび第2孔43hの個数、第1孔51hおよび第2孔43hの断面積、シェアピンQの材料を変更することで調節することができる。例えば、第1孔51hおよび第2孔43hの個数は、それぞれ1個でもよいし3個以上であってもよい。また、シェアピンQは、例えば、非鉄金属を含む金属、またはゴム等で形成されていてもよい。
実施形態6におけるステアリングコラムの変位量とステアリングコラムを移動させるために必要な荷重との関係を示す図は、図36と同様の図である。
実施形態6において、インナーコラム51は、アウターコラムブラケット52の締め付けによってアウターコラム54との間に生じる第1摩擦力と、第1テレスコ摩擦板21と第1テレスコ摩擦板21に接触する部材(アウターコラムブラケット52、第2テレスコ摩擦板22、アウターコラム54)との間に生じる第2摩擦力と、によって軸方向に支持されている。図36に示す力F1は、第1摩擦力を示しており、力F3は、第1摩擦力と第2摩擦力との和を示している。また、図36に示す力F2は、シェアピンQの許容せん断力を示している。力F2は、力F3より小さくかつ力F1よりも大きい。
実施形態6において、インナーコラム51に力F2以上の荷重が加わると、シェアピンQが切断され、インナーコラム51がインナーコラムブラケット4から離脱する。これにより、インナーコラム51と第1テレスコ摩擦板21との連結が解除されるので、上述した第2摩擦力がインナーコラム51に対して作用しなくなる。このため、シェアピンQが切断された後において、インナーコラム51は、上述した第1摩擦力で衝撃を吸収しながら軸方向に移動する。実施形態6に係るステアリング装置100は、第1摩擦力を小さく設定すると、インナーコラム51の移動を滑らかにして操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
実施形態6においては、仮に第1摩擦力の設定値を小さくしたとしても、インナーコラム51を軸方向に支持するための力のうち、第1摩擦力を小さくした分を第2摩擦力が補完することができる。このため、実施形態6に係るステアリング装置100は、第1摩擦力の設定値と第2摩擦力の設定値を調節することで、通常使用において加わるような荷重によってインナーコラム51が移動することを抑制でき、かつ操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
上述したように、実施形態6に係るステアリング装置100は、ステアリングホイール81に連結される入力軸82aを回転可能に支持し、第1孔51hが開けられた筒状のインナーコラム51と、インナーコラム51の少なくとも一部が内側に挿入される筒状であって、インナーコラム51の挿入側の一端を切り欠いたスリット54sを有するアウターコラム54と、を備える。また、ステアリング装置100は、車体側部材13に固定され、アウターコラム54を支持し、板材であるテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)と共にアウターコラム54を締め付けるアウターコラムブラケット52を備える。また、ステアリング装置100は、テレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)に支持され、第2孔43hが開けられたインナーコラムブラケット4を備える。また、ステアリング装置100は、第1孔51hと第2孔43hとに跨る位置にあって、インナーコラム51およびインナーコラムブラケット4を離脱可能に連結するシェアピンQを備える。シェアピンQは、一端から他端まで貫通するガイド孔Qohを備える筒状の部材であって、第1孔51hおよび第2孔43hを貫通するアウターピンQoと、ガイド孔Qohに挿入されたインナーピンQiと、を備える。インナーピンQiは、ガイド孔Qohを貫通する胴体部Qi1を備える。胴体部Qi1は、ガイド孔Qohの内壁をガイド孔Qohの径方向外側に押す第1大径部Qi11と、第1孔51hおよび第2孔43hに跨る位置に配置されて、第1大径部Qi11の外周よりも小さな外周を有する第1小径部Qi12と、を備える。
これにより、実施形態6に係るステアリング装置100において、ステアリングホイール81に過大荷重が加えられると、当該荷重は、入力軸82aを介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4は移動しない。このため、シェアピンQにせん断力が加わるので、当該荷重がシェアピンQの許容せん断力を超える場合、シェアピンQは切断される。シェアピンQが切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除される。インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除されると、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。このため、ステアリングコラム50のうちインナーコラム51が車体前方に移動することができるようになる。また、シェアピンQが切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、シェアピンQが切断されても、ステアリングコラム50は落下しない。よって、実施形態6に係るステアリング装置100は、ステアリングコラム50が車体前方に移動する離脱荷重の設定値(シェアピンQの許容せん断力)を下げても、誤動作によってステアリングコラム50が落下する事態を抑制することができる。
さらに、シェアピンQの許容せん断力は、切断面BKの断面積に依存する。第1小径部Qi12の外周が第1大径部Qi11の外周よりも小さいため、インナーピンQiにせん断力が加えられたとき、第1小径部Qi12で亀裂が生じやすい。これにより、インナーピンQiは第1小径部Qi12で切断されやすくなる。すなわち、第1小径部Qi12が設けられることでせん断時に応力集中が発生するので、インナーピンQiにおける切断面BKが第1小径部Qi12内に納まりやすくなる。このため、インナーピンQiにおける切断面BKの位置および面積がバラつきにくくなるので、シェアピンQの許容せん断力が安定する。よって、実施形態6に係るステアリング装置100は、離脱荷重の設定値(シェアピンQの許容せん断力)の精度を向上させることができる。
実施形態6に係るステアリング装置100において、インナーピンQiは、ガイド孔Qohの内周よりも大きな外周を有する突出部Qi2を胴体部Qi1の両端に備える。これにより、インナーピンQiが位置決めされることで、第1小径部Qi12が第1孔51hおよび第2孔43hに跨る位置からずれにくくなる。このため、インナーピンQiが突出部Qi2を有しない場合に比較して、シェアピンQの許容せん断力がより安定する。
また、実施形態6に係るステアリング装置100において、インナーコラムブラケット4は、インナーコラム51に対向するインナーコラム側表面43bとは反対側の表面に凹部45を有する。第2孔43hは、凹部45の底面の一部に開けられ、凹部45の深さd1は、シェアピンQの第2孔43hから突出する部分の長さd2以上である。これにより、シェアピンQがインナーコラムブラケット4の表面よりも突出しなくなる。このため、ステアリング装置100は、シェアピンQが外力によって破損することを防止できる。
また、実施形態6に係るステアリング装置100において、テレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)は、アウターコラム54の両側に配置される。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力を受けるので、シェアピンQが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対して真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、ステアリング装置100は、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなることを抑制する。
また、実施形態6に係るステアリング装置100において、アウターコラム54の両側に配置されるテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)は、インナーコラムブラケット4を挟んで対向し、第1孔51hおよび第2孔43hは、インナーコラムブラケット4を挟んだ両側で対向するそれぞれのテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)からの距離が等しい位置に配置される。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力をより均等に受けるので、シェアピンQが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対してより真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、ステアリング装置100は、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなることを抑制する。
また、実施形態6に係るステアリング装置100において、アウターコラム54は、車体前方側に位置し、ピボットブラケット55を備え、離脱したインナーコラム51を挿入可能である。これにより、アウターコラム54は、軸中心をインナーコラム51の軸中心に合わせることができる。このため、アウターコラム54は、インナーコラム51が軸方向に移動する際に、インナーコラム51を案内しやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、ステアリング装置100は、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなることを抑制する。
また、上述したように、実施形態6に係るステアリング装置100は、シェアピンQを用いた部材連結構造によって組み立てられている。この部材連結構造は、第1孔51hが開けられた第1固定部材(インナーコラム51)と、第1固定部材(インナーコラム51)に接して配置され、第2孔43hが開けられた第2固定部材(インナーコラムブラケット4)と、を備える。また、部材連結構造は、第1孔51hと第2孔43hとに跨る位置にあって、第1固定部材(インナーコラム51)および第2固定部材(インナーコラムブラケット4)を連結し、2次衝突の発生時の第1固定部材(インナーコラム51)の移動により第1固定部材(インナーコラム51)と第2固定部材(インナーコラムブラケット4)との境界部分の切断面BKで切断されるシェアピンQを備える。シェアピンQは、一端から他端まで貫通するガイド孔Qohを備える筒状の部材であって第1孔51hおよび第2孔43hを貫通するアウターピンQoと、ガイド孔Qohに挿入されたインナーピンQiと、を備える。インナーピンQiは、ガイド孔Qohを貫通する胴体部Qi1を備える。胴体部Qi1は、ガイド孔Qohの内壁をガイド孔Qohの径方向外側に押す第1大径部Qi11と、第1孔51hおよび第2孔43hに跨る位置に配置されて、第1大径部Qi11の外周よりも小さな外周を有する第1小径部Qi12と、を備える。
シェアピンQの許容せん断力は、切断面BKの断面積に依存する。第1小径部Qi12の外周が第1大径部Qi11の外周よりも小さいため、インナーピンQiにせん断力が加えられたとき、第1小径部Qi12で亀裂が生じやすい。これにより、インナーピンQiは第1小径部Qi12で切断されやすくなる。すなわち、第1小径部Qi12が設けられることでせん断時に応力集中が発生するので、インナーピンQiにおける切断面BKが第1小径部Qi12内に納まりやすくなる。このため、インナーピンQiにおける切断面BKの位置および面積がバラつきにくくなるので、シェアピンQの許容せん断力が安定する。よって、実施形態6に係る部材連結構造は、離脱荷重の設定値(シェアピンQの許容せん断力)の精度を向上させることができる。
なお、上述した部材連結構造は、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結に用いられるだけでなく、他の部材同士の連結に用いられてもよい。例えば、部材連結構造は、車体側部材13とアウターコラムブラケット52との連結に用いられてもよい。部材連結構造は、2次衝突の発生時に一方の部材(第1固定部材)が他方の部材(第2固定部材)に対して離脱できるように部材同士を連結する、離脱部材連結用の部材連結構造である。
(実施形態6の変形例1)
図51は、実施形態6の変形例1に係るシェアピンの周辺部分の断面を示す図である。実施形態6の変形例1に係るシェアピンQ1は、上述した実施形態6に係るシェアピンQと比較して、インナーピンQiとは異なるインナーピンQiAを備える点が相違する。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図51に示すように、実施形態6の変形例1に係るインナーピンQiAは、例えば、胴体部Qi1と、突出部Qi2と、インナーフランジ部Qi3と、を備える。インナーピンQiAにおいて、突出部Qi2は、例えば胴体部Qi1のインナーコラム51の内部側の端部に設けられている。すなわち、突出部Qi2は、インナーコラム51の内部であってガイド孔Qohの外部である位置に配置されている。これにより、突出部Qi2がガイド孔Qohの一端の縁に接するので、インナーピンQiがアウターピンQoから抜け落ちにくくなる。インナーフランジ部Qi3は、例えば円盤状であって、胴体部Qi1のうち突出部Qi2とは反対側の端部に設けられている。インナーフランジ部Qi3は、凹部45の内部であってガイド孔Qohの外部である位置に配置されている。インナーフランジ部Qi3の外周は、突出部Qi2の外周よりも大きい。これにより、インナーフランジ部Qi3がガイド孔Qohの他端の縁に接するので、インナーピンQiAがアウターピンQoから抜け落ちにくくなる。
インナーピンQiAは、容易に押し込める突出部Qi2側からガイド孔Qohに挿入される。インナーピンQiAがガイド孔Qohに押し込まれる方向において、インナーフランジ部Qi3とアウターピンQoとが重なる面積は、突出部Qi2とアウターピンQoとが重なる面積よりも大きい。これにより、突出部Qi2をガイド孔Qoh内に押し込むために必要な力がインナーピンQiAに加えられていても、インナーフランジ部Qi3とアウターピンQoとが接すると、インナーピンQiAのガイド孔Qohへの進入が抑制される。すなわち、実施形態6の変形例1に係るインナーピンQiAにおいては、胴体部Qi1の両端に突出部Qi2がある場合に比較して、インナーピンQiAのガイド孔Qohへの過剰な押し込みが抑制されやすい。これにより、第1小径部Qi12が第1孔51hおよび第2孔43hに跨る位置からずれにくくなる。このため、シェアピンQの許容せん断力が安定しやすくなる。
なお、図51に示すように、凹部45の深さd1は、インナーピンQiAの第2孔43hから突出する部分の長さd5以上であることが好ましい。これにより、シェアピンQ1がインナーコラムブラケット4の表面よりも突出しなくなる。このため、ステアリング装置100は、シェアピンQ1が外力によって破損することを防止できる。
(実施形態6の変形例2)
図52は、実施形態6の変形例2に係るシェアピンの周辺部分の断面を示す図である。図53は、実施形態6の変形例2に係るシェアピンの周辺部分の断面を、シェアピンのみを側面図として示す図である。実施形態6の変形例2に係るシェアピンQ2は、上述した実施形態6に係るシェアピンQと比較して、実施形態6の変形例1で示したインナーピンQiAと、アウターピンQoとは異なるアウターピンQoAとを備える点が相違する。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図52に示すように、実施形態6の変形例2に係るアウターピンQoAにおいて、本体部Qo1は、第2大径部Qo11と、第2小径部Qo12と、を備える。第2大径部Qo11は、例えば円柱状であり、第1孔51hおよび第2孔43hの内周に等しい外周を有する。第2小径部Qo12は、第1孔51hおよび第2孔43hに跨る位置に設けられる。第2小径部Qo12は、例えば、第2大径部Qo11と同心の回転体の形状をしている。第2小径部Qo12の外周は、第2大径部Qo11の外周よりも小さい。第2小径部Qo12は、例えば、本体部Qo1の一部を周方向の全周に亘って切り欠くことにより形成されている。回転中心軸Zrを含む平面でインナーピンQiAを切った断面(図52で示す断面)において、第2小径部Qo12の表面は半円を描いている。例えば、図52で示す断面において、第1小径部Qi12のうち外周が最小である部分を通る直線L1は、第2小径部Qo12のうち外周が最小である部分を通る直線L2に重なっている。また、実施形態6の変形例2においては、胴体部Qi1の軸方向での第1小径部Qi12の幅は、胴体部Qi1の軸方向での第2小径部Qo12の幅に等しい。
シェアピンQ2の許容せん断力は、切断面BKの断面積に依存する。第2小径部Qo12の外周が第2大径部Qo11の外周よりも小さいため、アウターピンQoAにせん断力が加えられたとき、第2小径部Qo12で亀裂が生じやすい。これにより、アウターピンQoAは第2小径部Qo12で切断されやすくなる。すなわち、第2小径部Qo12が設けられることでせん断時に応力集中が発生するので、アウターピンQoAにおける切断面BKが第2小径部Qo12内に納まりやすくなる。このため、アウターピンQoAにおける切断面BKの位置および面積がバラつきにくくなるので、シェアピンQ2の許容せん断力が安定する。よって、実施形態6の変形例2に係るステアリング装置100は、離脱荷重の設定値(シェアピンQ2の許容せん断力)の精度を向上させることができる。
また、アウターピンQoAは、本体部Qo1の一端に設けられて第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きな外周を有する抜止部Qo2と、本体部Qo1の他端に設けられて抜止部Qo2の外周よりも大きな外周を有するアウターフランジ部Qo3と、抜止部Qo2からアウターフランジ部Qo3側に向かって設けられるノッチQosと、を備える。これにより、抜止部Qo2が第1孔51hまたは第2孔43hに挿入されると、アウターピンQoAの周方向におけるノッチQosの幅ds(図47等参照)が小さくなることで、抜止部Qo2の外周が小さくなる。これにより、抜止部Qo2は、第1孔51hおよび第2孔43hを通過しやすくなっている。このため、アウターピンQoAは、第1孔51hおよび第2孔43hに容易に取り付けることができる。さらに、抜止部Qo2およびアウターフランジ部Qo3により、アウターピンQoAが位置決めされることで、第2小径部Qo12が第1孔51hおよび第2孔43hに跨る位置からずれにくくなる。このため、シェアピンQ2の許容せん断力がより安定する。
図53に示すように、アウターフランジ部Qo3からノッチQosの先端Qosbまでの距離d3は、アウターフランジ部Qo3から第2小径部Qo12の第1孔51h側端部までの距離d6よりも大きいことが好ましい。これにより、ノッチQosと第2小径部Qo12とが重ならないので、アウターピンQoAが切断される時の切断面BKにノッチQosが含まれなくなる。このため、アウターピンQoAの切断面BKにおいてノッチQos分の欠損部分がなくなるので、シェアピンQ2の許容せん断力のバラつきが抑制される。
なお、胴体部Qi1の軸方向での第1小径部Qi12の幅は、胴体部Qi1の軸方向での第2小径部Qo12の幅に必ずしも等しくなくてもよい。図54は、実施形態6の変形例2に係るシェアピンの小径部を説明するための図である。例えば図54に示すように、胴体部Qi1の軸方向での第1小径部Qi12の幅が、胴体部Qi1の軸方向での第2小径部Qo12の幅よりも大きくてもよい。
(実施形態6の変形例3)
図55は、実施形態6の変形例3に係るシェアピンの周辺部分の断面を示す図である。実施形態6の変形例3に係るシェアピンQ3は、上述した実施形態6に係るシェアピンQと比較して、インナーピンQiとは異なるインナーピンQiBを備える点が相違する。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図55に示すように、インナーピンQiBは、例えば、胴体部Qi1と、突出部Qi2と、インナーフランジ部Qi3と、ガイド部Qi4と、を備える。インナーピンQiBは、実施形態6の変形例1で示したインナーピンQiAに対して、ガイド部Qi4を備える点で相違する。ガイド部Qi4は、例えば胴体部Qi1と同心の円柱状であって、突出部Qi2のうち胴体部Qi1とは反対側の端部に設けられている。すわなち、胴体部Qi1とガイド部Qi4との間に、突出部Qi2が配置されている。ガイド部Qi4の外周は、胴体部Qi1の第1大径部Qi11の外周よりも小さい。
インナーピンQiBは、ガイド部Qi4側からガイド孔Qohに挿入される。まず、ガイド部Qi4が、アウターフランジ部Qo3側からガイド孔Qohに挿入される。ガイド部Qi4の外周がガイド孔Qohの内周よりも小さいので、ガイド部Qi4とガイド孔Qohの内壁との間には隙間が生じる。これにより、ガイド部Qi4は容易にガイド孔Qoh内に進入できる。その後、例えば突出部Qi2がガイド孔Qohの縁に接してから、インナーピンQiBに圧力が加えられ、インナーピンQiBがガイド孔Qohに押し込まれる。すなわち、インナーピンQiBがガイド孔Qohに圧入される。すなわち、インナーピンQiBは、ガイド部Qi4が予めガイド孔Qoh内に挿入された状態で、ガイド孔Qohに押し込まれる。インナーピンQiBがガイド孔Qohに押し込まれる際、仮にインナーピンQiBが倒れた場合であっても、ガイド部Qi4の縁がガイド孔Qohの内壁に接触する。これにより、インナーピンQiBの倒れる角度が所定の角度以下に規制される。これにより、ガイド孔Qoh内に押し込まれるときのインナーピンQiBの姿勢が安定しやすくなる。よって、実施形態6の変形例3に係るステアリング装置100は、離脱可能に連結されるインナーコラム51およびインナーコラムブラケット4の連結部分の組み立てを容易にすることができる。
(実施形態6の変形例4)
図56は、実施形態6の変形例4に係るシェアピンの周辺部分の断面を示す図である。実施形態6の変形例4に係るシェアピンQ4は、上述した実施形態6に係るシェアピンQと比較して、インナーピンQiとは異なるインナーピンQiCを備える点が相違する。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図56に示すように、インナーピンQiCは、上述した実施形態6で示した第1小径部Qi12と異なる形状の第1小径部Qi12Cを備える。第1小径部Qi12Cは、第1孔51hおよび第2孔43hに跨る位置に設けられる。第1小径部Qi12Cは、例えば、第1大径部Qi11と同心の回転体の形状をしている。第1小径部Qi12Cの外周は、第1大径部Qi11の外周よりも小さい。第1小径部Qi12Cは、例えば、胴体部Qi1の一部を周方向の全周に亘って切り欠くことにより形成されている。すなわち、第1小径部Qi12Cは、胴体部Qi1の表面を周方向に沿って凹ませた溝である。第1小径部Qi12Cの表面の底部は、例えばV字状である。回転中心軸Zrを含む平面でインナーピンQiCを切った断面(図56で示す断面)において、第1小径部Qi12Cの表面は楔形状を描いている。例えば、図56で示す断面において、第1小径部Qi12Cのうち外周が最小である部分を通る直線L3は、インナーコラム51の外壁の延長線上、すなわち脚部43のインナーコラム側表面43bの延長線上に位置している。
第1小径部Qi12Cの外周が第1大径部Qi11の外周よりも小さいため、インナーピンQiCにせん断力が加えられたとき、第1小径部Qi12Cで亀裂が生じやすい。さらに、第1小径部Qi12Cの断面形状が楔形状であることにより、第1小径部Qi12Cは、外周が最小の部分(楔形状の先端部分)での亀裂を誘発する。これにより、第1小径部Qi12Cは、外周が最小の部分で亀裂を生じさせやすい。インナーピンQiCは、上述した実施形態6に係るインナーピンQiに比較して、インナーピンQiCにおける切断面BKが生じる位置の精度をより高めることができる。このため、インナーピンQiCにおける切断面BKの面積がバラつきにくくなるので、シェアピンQ4の許容せん断力が安定する。
なお、図56で示す断面において、第1小径部Qi12Cの表面が楔形状を描いているが、楔形状の先端部分は必ずしもV字形状すなわち尖った形状でなくてもよい。楔形状は、胴体部Qi1の径方向内側に向かって狭くなる形状であればよい。例えば、楔形状の先端部分が円弧状であってもよい。または、楔形状の先端部分が胴体部Qi1の軸方向に平行な直線状であってもよい、すなわち、楔形状全体が台形状であってもよい。
以上の説明において、実施形態6および実施形態6の変形例1〜4が示されているが、実施形態は前述した内容により限定されるものではない。実施形態6および実施形態6の変形例1〜4で示したアウターピンQoまたはアウターピンQoAのそれぞれは、インナーピンQi、インナーピンQiA、インナーピンQiBまたはインナーピンQiCのうちの1つと組み合わせられ得る。また、実施形態6の変形例4で示した第1小径部Qi12Cの形状(楔形状)は、アウターピンQoAにおける第2小径部Qo12の形状にも適用され得る。また、インナーピンQiの全体形状は必ずしも上述したような略円柱形状でなくてもよいし、アウターピンQoの全体形状は必ずしも上述したような略円筒形状でなくてもよい。例えば、第1孔51hの軸方向に対して直交する平面でインナーピンQiまたはアウターピンQoを切った断面形状は、四角形等の多角形であってもよい。また、第1孔51hの軸方向に対して直交する平面で第1小径部Qi12または第2小径部Qo12を切った断面形状は、円形に限らず四角形等の多角形であってもよい。
(実施形態7)
図57は、実施形態7に係るステアリング装置を、図26におけるe−e断面に相当する平面で切った断面を示す図である。図58は、実施形態7に係るステアリング装置の底面を示す図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
インナーコラムブラケット4とインナーコラム51とを離脱可能に連結するため、図57に示すようにインナーコラム51には第1孔51hが開けられ、脚部43の凹部45の底面には第2孔43hが開けられている。第1孔51hと第2孔43hとは、連通している。例えば実施形態7において、第1孔51hおよび第2孔43hは、それぞれ2つずつ設けられており、内周は全て同じである。第1孔51hと第2孔43hとに跨る位置にシェアピンRが挿入されることで、インナーコラムブラケット4とインナーコラム51とが離脱可能に連結されている。また、第1孔51hおよび第2孔43hは、アウターコラム54の両側に配置されたそれぞれの第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置される。
図59は、図57のシェアピンの周辺部分を拡大して示す図である。図60は、実施形態7に係るインナーピンがアウターピンに挿入される前の状態でのシェアピンを示す斜視図である。図61は、実施形態7に係るインナーピンがアウターピンに挿入された後の状態でのシェアピンを示す斜視図である。実施形態7において、シェアピンRは、アウターピンRoと、インナーピンRiと、を備える。アウターピンRoおよびインナーピンRiは、例えばポリアセタール等の樹脂で形成されている。
図59に示すように、アウターピンRoは、第1孔51hおよび第2孔43hを貫通する筒状の部材である。アウターピンRoは、例えば、本体部Ro1と、抜止部Ro2と、アウターフランジ部Ro3と、ガイド孔Rohと、を備える。図59および図60に示すように、本体部Ro1は、円筒状であって、第1孔51hおよび第2孔43hを貫通している。抜止部Ro2は、本体部Ro1の一端に設けられ、インナーコラム51の内側に位置している。抜止部Ro2は、円筒状であって、第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きな外周を有する。これにより、抜止部Ro2がインナーコラム51の内壁に接するので、アウターピンRoが第1孔51hおよび第2孔43hから抜け落ちにくくなる。アウターフランジ部Ro3は、本体部Ro1の他端に設けられ、インナーコラム51の径方向で第2孔43hよりも外側に位置している。アウターフランジ部Ro3は、例えば円盤状であって、第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きな外周を有する。これにより、アウターフランジ部Ro3が凹部45の底面に接するので、アウターピンRoが第1孔51hおよび第2孔43hから抜け落ちにくくなる。ガイド孔Rohは、アウターフランジ部Ro3から抜止部Ro2までを貫通する貫通孔である。
実施形態7において、アウターピンRoは、圧入により第1孔51hおよび第2孔43hに挿入されている。アウターピンRoが第1孔51hおよび第2孔43hに挿入されることで、第1孔51hおよび第2孔43hが位置決めされる。例えば、抜止部Ro2が第2孔43h側から第1孔51hおよび第2孔43hに挿入される。抜止部Ro2は、本体部Ro1とは反対側の端部Roeにおける外周が第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも小さくなるように形成されている。これにより、抜止部Ro2は、第2孔43hに挿入しやすくなっている。
なお、アウターピンRoは、第1孔51h側から第1孔51hおよび第2孔43hに挿入されてもよい。また、アウターピンRoは、本体部Ro1の外壁にリブ等を設けた上で圧入されてもよい。
図60および図61に示すように、アウターピンRoは、抜止部Ro2からアウターフランジ部Ro3に向かって設けられるノッチRosを1つ備える。抜止部Ro2が第2孔43hに挿入されると、アウターピンRoの周方向におけるノッチRosの幅dsが小さくなることで、抜止部Ro2の外周が小さくなる。これにより、抜止部Ro2は、第1孔51hおよび第2孔43hを通過しやすくなっている。以下の説明において、アウターピンRoの周方向におけるノッチRosの幅dsは、単にノッチRosの幅dsと記載される。
なお、アウターピンRoは、ノッチRosを複数備えていてもよい。ノッチRosが複数である場合、複数のノッチRosは、アウターピンRoの周方向で等間隔に配置されることが好ましい。
アウターピンRoが第1孔51hおよび第2孔43hを貫通する前の状態において、本体部Ro1の外周は、第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きい。そして、アウターピンRoが第1孔51hおよび第2孔43hを貫通している状態において、本体部Ro1が弾性変形することで、本体部Ro1の外周が第1孔51hの内周および第2孔43hの内周に等しくなっている。これにより、本体部Ro1が第1孔51hの内壁および第2孔43hの内壁を押している。このため、本体部Ro1と第1孔51hの内壁との間の隙間および本体部Ro1と第2孔43hの内壁との間の隙間が生じにくくなっている。これにより、アウターピンRoのガタつきが抑制されている。
インナーピンRiは、アウターピンRoのガイド孔Rohに挿入される部材である。以下の説明において、ガイド孔Rohの径方向外側は、単に径方向外側と記載される。インナーピンRiは、例えば、胴体部Ri1と、大径部Ri2と、インナーフランジ部Ri3と、ガイド部Ri4と、を備える。図59〜図61に示すように、胴体部Ri1は、円柱状であってガイド孔Rohを貫通している。大径部Ri2は、例えば胴体部Ri1のインナーコラム51の内部側の端部に設けられている。すなわち、大径部Ri2は、インナーコラム51の内部であってガイド孔Rohの外部である位置に配置されている。大径部Ri2の外周は、ガイド孔Rohの内周よりも大きい。これにより、大径部Ri2がガイド孔Rohの一端の縁に接するので、インナーピンRiがアウターピンRoから抜け落ちにくくなる。インナーフランジ部Ri3は、例えば胴体部Ri1と同心の円盤状であって、胴体部Ri1のうち大径部Ri2とは反対側の端部に設けられている。インナーフランジ部Ri3は、凹部45の内部であってガイド孔Rohの外部である位置に配置されている。インナーフランジ部Ri3の外周は、ガイド孔Rohの内周よりも大きい。これにより、インナーフランジ部Ri3がガイド孔Rohの他端の縁に接するので、インナーピンRiがアウターピンRoから抜け落ちにくくなる。ガイド部Ri4は、例えば胴体部Ri1と同心の円柱状であって、大径部Ri2のうち胴体部Ri1とは反対側の端部に設けられている。すわなち、胴体部Ri1とガイド部Ri4との間に、大径部Ri2が配置されている。ガイド部Ri4の外周は、胴体部Ri1の外周よりも小さい。また、図59に示すように、アウターピンRoの端部Roeからガイド部Ri4の先端までの距離l1は、端部Roeから入力軸82aまでの距離l2よりも小さい。
なお、ガイド孔Rohは、端部に内周を拡大した段差部を備えていてもよい。この場合、大径部Ri2またはインナーフランジ部Ri3が段差部の縁に接するので、インナーピンRiがガイド孔Rohの端部から突出しにくくなる。
実施形態7において、インナーピンRiは、ガイド部Ri4側からガイド孔Rohに挿入されている。まず、ガイド部Ri4が、アウターフランジ部Ro3側からガイド孔Rohに挿入される。ガイド部Ri4の外周が胴体部Ri1の外周よりも小さいので、ガイド部Ri4とガイド孔Rohの内壁との間には隙間が生じる。これにより、ガイド部Ri4は容易にガイド孔Roh内に進入できる。その後、例えば大径部Ri2がガイド孔Rohの縁に接してから、インナーピンRiに圧力が加えられ、インナーピンRiがガイド孔Rohに押し込まれる。すなわち、インナーピンRiがガイド孔Rohに圧入される。インナーピンRiは、ガイド部Ri4が予めガイド孔Roh内に挿入された状態で、ガイド孔Rohに押し込まれる。
図62は、インナーピンの中心軸がガイド孔の中心軸に対して傾斜した場合を示す図である。図62に示すように、インナーピンRiがガイド孔Rohに押し込まれる際、インナーピンRiの中心軸Ziがガイド孔Rohの中心軸Zhに対して傾斜する可能性がある。すなわち、インナーピンRiが倒れる可能性がある。しかしながら、実施形態7においては、仮にインナーピンRiが倒れた場合であっても、ガイド部Ri4の縁Ri41がガイド孔Rohの内壁に接触する。これにより、インナーピンRiの中心軸Ziとガイド孔Rohの中心軸Zhとのなす角度θ、すなわちインナーピンRiの倒れる角度θが所定の角度以下に規制される。これにより、ガイド孔Roh内に押し込まれるときのインナーピンRiの姿勢が安定しやすくなる。
なお、ガイド部Ri4の縁Ri41には、面取りが施されていることが好ましい。面取りは、例えば断面形状が直線状になるように切り取る面取り(C面取り)であってもよいし、断面形状が曲線状になるように切り取る面取り(R面取り)であってもよい。これにより、インナーピンRiがガイド孔Rohに挿入されるときに、ガイド部Ri4がガイド孔Rohに進入しやすくなる。
インナーピンRiがガイド孔Rohに挿入される前の状態において、胴体部Ri1の外周は、ガイド孔Rohの内周よりも大きい。そして、胴体部Ri1がガイド孔Rohを貫通している状態において、胴体部Ri1が弾性変形することで、胴体部Ri1の外周がガイド孔Rohの内周に等しくなっている。これにより、胴体部Ri1がガイド孔Rohの内壁を径方向外側に押している。このため、胴体部Ri1とガイド孔Rohの内壁との間の隙間が生じにくくなっている。これにより、インナーピンRiのガタつきが抑制されている。
胴体部Ri1がガイド孔Rohの内壁を径方向外側に押すことで、ノッチRosの幅dsを拡げる力がアウターピンRoに作用する。これにより、アウターピンRoと第1孔51hの内壁および第2孔43hの内壁との間に生じる摩擦力が大きくなる。さらに、抜止部Ro2におけるノッチRosの幅dsが大きくなるので、抜止部Ro2の外周が大きくなる。このため、アウターピンRoとインナーピンRiとが一体となったシェアピンRは、第1孔51hおよび第2孔43hに跨る位置に固定され、インナーコラム51およびインナーコラムブラケット4を連結している。
ステアリング装置100は、アウターピンRoによって第1孔51hおよび第2孔43hの位置決めをした後にインナーピンRiを挿入して組み立てられるので、容易に組み立てることができる。
また、図59で示したように距離l1が距離l2よりも小さいので、インナーピンRiのガイド部Ri4が入力軸82aに接触しにくくなる。これにより、入力軸82aとガイド部Ri4との接触による入力軸82aのトルクの増加が抑制される。
また、実施形態7に係るステアリング装置100は、第1孔51hおよび第2孔43hにシェアピンRを用いることで、樹脂部材を第1孔51hおよび第2孔43hに充填する場合に比較して、樹脂部材を充填するための装置および樹脂部材を受けるための部材が不要となる。このため、実施形態7に係るステアリング装置100は、組み立てを容易にすることができる。
ステアリングホイール81に過大荷重が加えられると、当該荷重は、入力軸82aを介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4は移動しない。このため、シェアピンRにせん断力が加わるので、当該荷重がシェアピンRの許容せん断力を超える場合、シェアピンRは切断される。シェアピンRが切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除される。インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除されると、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。よって、操作者がステアリングホイール81に衝突して過大荷重が加わった場合、過大荷重が加わった直後にインナーコラム51を移動させるための力が低減し衝撃を吸収する。
また、シェアピンRが切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、シェアピンRが切断されても、ステアリングコラム50は落下しない。
図63は、切断された後のシェアピンの状態を説明するための説明図である。図63に示すように、シェアピンRは切断面BKで切断される。切断面BKは、シェアピンRのうち第1孔51hおよび第2孔43hに跨る部分に生じる。図63で示す断面において、切断面BKは、インナーコラム51の外壁の延長線上、すなわち脚部43のインナーコラム側表面43bの延長線上に位置している。アウターピンRoは本体部Ro1で切断され、インナーピンRiは胴体部Ri1で切断される。このため、シェアピンRの許容せん断力は、切断面BKにおける本体部Ro1の断面積および胴体部Ri1の断面積に依存する。
図64は、図57のシェアピンの周辺部分を拡大し、シェアピンのみを側面図として示す図である。図64に示すように、アウターフランジ部Ro3からノッチRosの先端Rosbまでの距離d3は、アウターフランジ部Ro3からインナーコラム51の外壁までの距離d4よりも大きいことが好ましい。これにより、シェアピンRが切断される時の切断面BKにノッチRosが含まれなくなる。このため、切断面BKにおける本体部Ro1の断面にノッチRos分の欠損部分がなくなるので、シェアピンRの許容せん断力のバラつきが抑制される。
また、シェアピンRが切断された後において、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動することが望ましい。インナーコラム51の移動する方向がアウターコラム54の軸方向に対して角度をなす方向である場合、インナーコラム51の移動が妨げられる可能性またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる可能性が高くなるためである。
実施形態7において、インナーコラムブラケット4は、図58に示したようにアウターコラム54の両側に配置された第1テレスコ摩擦板21に接合されている。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力を受ける。このため、シェアピンRが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対して真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなる。
また、図57および図58に示すように、第1孔51hおよび第2孔43hは、それぞれ2つずつ軸方向で異なる位置に設けられている。このため、シェアピンRは、軸方向で異なる位置に2つ配置されている。仮に、第1孔51hおよび第2孔43hがそれぞれ1つずつ設けられる場合、すなわちシェアピンRが1つ配置される場合には、インナーコラムブラケット4がシェアピンRを中心に回転する可能性がある。これに対して、実施形態7においては、シェアピンRが軸方向で異なる位置に2つ配置されていることにより、インナーコラムブラケット4の回転が抑制される。このため、シェアピンRが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢がより安定する。
また、第1孔51hおよび第2孔43hは、インナーコラムブラケット4を挟んだ両側で対向する第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置されている。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力をより均等に受けるので、シェアピンRが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対してより真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対してより真っ直ぐ移動しやすくなる。
また、仮にインナーコラムブラケット4が、アウターコラム54の両側からの締付力を均等に受けることができなかった場合であっても、インナーコラムブラケット4の脚部43がスリット54sの内壁に対向するように嵌まっているので、インナーコラムブラケット4がスリット54sに案内され、シェアピンRが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。
また、図59に示すように、凹部45の深さd1は、シェアピンRの第2孔43hから突出する部分の長さd2以上であることが好ましい。これにより、シェアピンRがインナーコラムブラケット4の表面よりも突出しなくなる。このため、ステアリング装置100は、シェアピンRが外力によって破損することを防止できる。
なお、シェアピンRの許容せん断力は、第1孔51hおよび第2孔43hの個数、第1孔51hおよび第2孔43hの断面積、シェアピンRの材料を変更することで調節することができる。例えば、第1孔51hおよび第2孔43hの個数は、それぞれ1個でもよいし3個以上であってもよい。また、シェアピンRは、例えば、非鉄金属を含む金属、またはゴム等で形成されていてもよい。
実施形態7におけるステアリングコラムの変位量とステアリングコラムを移動させるために必要な荷重との関係を示す図は、図36と同様の図である。
実施形態7において、インナーコラム51は、アウターコラムブラケット52の締め付けによってアウターコラム54との間に生じる第1摩擦力と、第1テレスコ摩擦板21と第1テレスコ摩擦板21に接触する部材(アウターコラムブラケット52、第2テレスコ摩擦板22、アウターコラム54)との間に生じる第2摩擦力と、によって軸方向に支持されている。図36に示す力F1は、第1摩擦力を示しており、力F3は、第1摩擦力と第2摩擦力との和を示している。また、図36に示す力F2は、シェアピンRの許容せん断力を示している。力F2は、力F3より小さくかつ力F1よりも大きい。
実施形態7において、インナーコラム51に力F2以上の荷重が加わると、シェアピンRが切断され、インナーコラム51がインナーコラムブラケット4から離脱する。これにより、インナーコラム51と第1テレスコ摩擦板21との連結が解除されるので、上述した第2摩擦力がインナーコラム51に対して作用しなくなる。このため、シェアピンRが切断された後において、インナーコラム51は、上述した第1摩擦力で衝撃を吸収しながら軸方向に移動する。実施形態7に係るステアリング装置100は、第1摩擦力を小さく設定すると、インナーコラム51の移動を滑らかにして操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
実施形態7においては、仮に第1摩擦力の設定値を小さくしたとしても、インナーコラム51を軸方向に支持するための力のうち、第1摩擦力を小さくした分を第2摩擦力が補完することができる。このため、実施形態7に係るステアリング装置100は、第1摩擦力の設定値と第2摩擦力の設定値を調節することで、通常使用において加わるような荷重によってインナーコラム51が移動することを抑制でき、かつ操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
上述したように、実施形態7に係るステアリング装置100は、ステアリングホイール81に連結される入力軸82aを回転可能に支持し、第1孔51hが開けられた筒状のインナーコラム51と、インナーコラム51の少なくとも一部が内側に挿入される筒状であって、インナーコラム51の挿入側の一端を切り欠いたスリット54sを有するアウターコラム54と、を備える。また、ステアリング装置100は、車体側部材13に固定され、アウターコラム54を支持し、板材であるテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)と共にアウターコラム54を締め付けるアウターコラムブラケット52を備える。また、ステアリング装置100は、テレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)に支持され、第2孔43hが開けられたインナーコラムブラケット4を備える。また、ステアリング装置100は、第1孔51hと第2孔43hとに跨る位置にあって、インナーコラム51およびインナーコラムブラケット4を離脱可能に連結するシェアピンRを備える。シェアピンRは、一端から他端まで貫通するガイド孔Rohを備える筒状の部材であって、第1孔51hおよび第2孔43hを貫通するアウターピンRoと、ガイド孔Rohに挿入されたインナーピンRiと、を備える。インナーピンRiは、ガイド孔Rohを貫通しガイド孔Rohの内壁をガイド孔Rohの径方向外側に押す胴体部Ri1と、胴体部Ri1の一端に設けられて胴体部Ri1の外周よりも小さな外周を有するガイド部Ri4と、を備える。
これにより、実施形態7に係るステアリング装置100において、ステアリングホイール81に過大荷重が加えられると、当該荷重は、入力軸82aを介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4は移動しない。このため、シェアピンRにせん断力が加わるので、当該荷重がシェアピンRの許容せん断力を超える場合、シェアピンRは切断される。シェアピンRが切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除される。インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除されると、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。このため、ステアリングコラム50のうちインナーコラム51が車体前方に移動することができるようになる。また、シェアピンRが切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、シェアピンRが切断されても、ステアリングコラム50は落下しない。よって、実施形態7に係るステアリング装置100は、ステアリングコラム50が車体前方に移動する離脱荷重の設定値(シェアピンRの許容せん断力)を下げても、誤動作によってステアリングコラム50が落下する事態を抑制することができる。
さらに、シェアピンRでインナーコラム51およびインナーコラムブラケット4を連結する際、アウターピンRoによって第1孔51hおよび第2孔43hが位置決めされた状態で、インナーピンRiがガイド孔Rohに挿入される。ガイド部Ri4の外周が胴体部Ri1の外周よりも小さいので、ガイド部Ri4とガイド孔Rohの内壁との間には隙間が生じる。これにより、ガイド部Ri4は容易にガイド孔Roh内に進入できる。このため、ガイド部Ri4が予めガイド孔Roh内に挿入された状態で、インナーピンRiがガイド孔Rohに押し込まれる。インナーピンRiがガイド孔Rohに押し込まれる際、仮にインナーピンRiが倒れた場合であっても、ガイド部Ri4の縁Ri41がガイド孔Rohの内壁に接触する。これにより、インナーピンRiの倒れる角度θが所定の角度以下に規制される。これにより、ガイド孔Roh内に押し込まれるときのインナーピンRiの姿勢が安定しやすくなる。よって、実施形態7に係るステアリング装置100は、離脱可能に連結されるインナーコラム51およびインナーコラムブラケット4の連結部分の組み立てを容易にすることができる。
実施形態7に係るステアリング装置100において、インナーピンRiは、ガイド孔Rohの内周よりも大きな外周を有するインナーフランジ部Ri3を胴体部Ri1の他端(ガイド部Ri4とは反対側の端部)に備える。これにより、インナーフランジ部Ri3がガイド孔Rohの縁に接するので、インナーピンRiがアウターピンRoから抜け落ちにくくなる。さらに、インナーピンRiがインナーフランジ部Ri3を備えることにより、インナーピンRiに対して押し込む力を加えることができる面積が増加する。このため、ガイド孔RohへのインナーピンRiの押し込みがより容易になる。
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、インナーピンRiは、ガイド孔Rohの内周よりも大きな外周を有する大径部Ri2を、胴体部Ri1とガイド部Ri4との間の位置に備える。これにより、大径部Ri2がガイド孔Rohの縁に接するので、インナーピンRiがアウターピンRoから抜け落ちにくくなる。
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、アウターピンRoは、第1孔51hおよび第2孔43hを貫通する筒状の本体部Ro1と、本体部Ro1の一端に設けられて第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きな外周を有する抜止部Ro2と、抜止部Ro2から本体部Ro1の他端に向かって設けられるノッチRosと、を備える。これにより、抜止部Ro2が第1孔51hまたは第2孔43hに挿入されると、アウターピンRoの周方向におけるノッチRosの幅dsが小さくなることで、抜止部Ro2の外周が小さくなる。これにより、抜止部Ro2は、第1孔51hおよび第2孔43hを通過しやすくなっている。このため、アウターピンRoは、第1孔51hおよび第2孔43hに容易に取り付けることができる。
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、アウターピンRoは、第1孔51hの内周および第2孔43hの内周よりも大きな外周を有するアウターフランジ部Ro3を本体部Ro1の他端(抜止部Ro2とは反対側の端部)に備える。アウターフランジ部Ro3からノッチRosの先端Rosbまでの距離d3は、アウターフランジ部Ro3からインナーコラム51の外壁までの距離d4よりも大きい。これにより、シェアピンRが切断される時の切断面BKにノッチRosが含まれなくなる。このため、切断面BKにおける本体部Ro1の断面にノッチRos分の欠損部分がなくなる。よって、実施形態7に係るステアリング装置100は、シェアピンRの許容せん断力のバラつきが抑制されやすくなる。
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、インナーコラムブラケット4は、インナーコラム51に対向するインナーコラム側表面43bとは反対側の表面に凹部45を有する。第2孔43hは、凹部45の底面の一部に開けられ、凹部45の深さd1は、シェアピンRの第2孔43hから突出する部分の長さd2以上である。これにより、シェアピンRがインナーコラムブラケット4の表面よりも突出しなくなる。このため、ステアリング装置100は、シェアピンRが外力によって破損することを防止できる。
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、テレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)は、アウターコラム54の両側に配置される。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力を受けるので、シェアピンRが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対して真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、ステアリング装置100は、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなることを抑制する。
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、アウターコラム54の両側に配置されるテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)は、インナーコラムブラケット4を挟んで対向し、第1孔51hおよび第2孔43hは、インナーコラムブラケット4を挟んだ両側で対向するそれぞれのテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)からの距離が等しい位置に配置される。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力をより均等に受けるので、シェアピンRが切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対してより真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、ステアリング装置100は、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなることを抑制する。
また、実施形態7に係るステアリング装置100において、アウターコラム54は、車体前方側に位置し、ピボットブラケット55を備え、離脱したインナーコラム51を挿入可能である。これにより、アウターコラム54は、軸中心をインナーコラム51の軸中心に合わせることができる。このため、アウターコラム54は、インナーコラム51が軸方向に移動する際に、インナーコラム51を案内しやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなるため、ステアリング装置100は、インナーコラム51の移動が妨げられる事態またはインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなることを抑制する。
また、上述したように、実施形態7に係るステアリング装置100は、シェアピンRを用いた部材連結構造によって組み立てられている。この部材連結構造は、第1孔51hが開けられた第1固定部材(インナーコラム51)と、第1固定部材(インナーコラム51)に接して配置され、第2孔43hが開けられた第2固定部材(インナーコラムブラケット4)と、を備える。また、部材連結構造は、第1孔51hと第2孔43hとに跨る位置にあって、第1固定部材(インナーコラム51)および第2固定部材(インナーコラムブラケット4)を連結し、2次衝突の発生時の第1固定部材(インナーコラム51)の移動により第1固定部材(インナーコラム51)と第2固定部材(インナーコラムブラケット4)との境界部分の切断面BKで切断されるシェアピンRを備える。シェアピンRは、一端から他端まで貫通するガイド孔Rohを備える筒状の部材であって第1孔51hおよび第2孔43hを貫通するアウターピンRoと、ガイド孔Rohに挿入されたインナーピンRiと、を備える。インナーピンRiは、ガイド孔Rohを貫通しガイド孔Rohの内壁をガイド孔Rohの径方向外側に押す胴体部Ri1と、胴体部Ri1の一端に設けられて胴体部Ri1の外周よりも小さな外周を有するガイド部Ri4と、を備える。
これにより、シェアピンRで第1固定部材(インナーコラム51)および第2固定部材(インナーコラムブラケット4)を連結する際、アウターピンRoによって第1孔51hおよび第2孔43hが位置決めされた状態で、インナーピンRiがガイド孔Rohに挿入される。ガイド部Ri4の外周が胴体部Ri1の外周よりも小さいので、ガイド部Ri4とガイド孔Rohの内壁との間には隙間が生じる。これにより、ガイド部Ri4は容易にガイド孔Roh内に進入できる。このため、ガイド部Ri4が予めガイド孔Roh内に挿入された状態で、インナーピンRiがガイド孔Rohに押し込まれる。インナーピンRiがガイド孔Rohに押し込まれる際、仮にインナーピンRiが倒れた場合であっても、ガイド部Ri4の縁Ri41がガイド孔Rohの内壁に接触する。これにより、インナーピンRiの倒れる角度θが所定の角度以下に規制される。これにより、ガイド孔Roh内に押し込まれるときのインナーピンRiの姿勢が安定しやすくなる。よって、実施形態7に係る部材連結構造は、離脱可能に連結される第1固定部材(インナーコラム51)および第2固定部材(インナーコラムブラケット4)の連結部分の組み立てを容易にすることができる。
なお、上述した部材連結構造は、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結に用いられるだけでなく、他の部材同士の連結に用いられてもよい。例えば、部材連結構造は、車体側部材13とアウターコラムブラケット52との連結に用いられてもよい。部材連結構造は、2次衝突の発生時に一方の部材(第1固定部材)が他方の部材(第2固定部材)に対して離脱できるように部材同士を連結する、離脱部材連結用の部材連結構造である。
(実施形態7の変形例1)
図65は、実施形態7の変形例1に係るシェアピンの周辺部分を拡大し、シェアピンのみを側面図として示す説明図である。図66は、図65におけるg−g断面を示す図である。実施形態7の変形例1は、上述した実施形態と比較して、実施形態に係るアウターピンRoと異なるアウターピンRoAを備える点が相違する。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図65に示すように、実施形態7の変形例1に係るアウターピンRoAは、本体部Ro1の外壁に突起部prを備える。突起部prは、ガイド孔Rohの径方向外側に向かって突出する。突起部prは、弾性変形可能な部材であって、例えばゴム等の材料で形成されている。突起部prは、例えばアウターフランジ部Ro3から抜止部Ro2に向かって直線状に設けられている。図66に示すように、アウターピンRoAは8つの突起部prを備えている。8つの突起部prは、本体部Ro1の周方向に等間隔に配置されている。なお、アウターピンRoAが備える突起部prは必ずしも8つでなくてもよく、7つ以下であってもよいし、9つ以上であってもよい。
仮に、インナーピンRiがガイド孔Rohに挿入される前の状態で本体部Ro1と第1孔51hとの間に間隙があっても、インナーピンRiがガイド孔Rohに挿入されるとノッチRosの幅dsが大きくなり、本体部Ro1の第1孔51hに対向する部分の外周が大きくなる。このため、本体部Ro1と第1孔51hとの間の間隙は埋められやすい。これに対して、インナーピンRiがガイド孔Rohに挿入される前の状態で本体部Ro1と第2孔43hとの間に間隙がある場合、インナーピンRiがガイド孔Rohに挿入されても本体部Ro1の第2孔43hに対向する部分の外周は大きくなりにくい。このため、本体部Ro1と第2孔43hとの間の間隙は埋められない可能性がある。
図65に示すように、第2孔43hの内周が公差の範囲内で第1孔51hの内周よりも大きい場合、本体部Ro1と第2孔43hの内壁との間に間隙Δrが生じる可能性がある。間隙Δrは、シェアピンRAがガタつく原因となる可能性がある。これに対して、実施形態7の変形例1に係るアウターピンRoAは弾性変形可能な突起部prを備えるので、突起部prが間隙Δrを埋めることができる。これにより、本体部Ro1の第2孔43hに対向する部分の外周が大きくなりにくい点を、突起部prが補完することができる。このため、実施形態7の変形例1に係るステアリング装置100は、シェアピンRAのガタつきを抑制する。
図65に示すように、突起部prの長さd5は、第2孔43hの深さd4に等しいことが好ましい。これにより、第2孔43hの内周が公差の範囲内で第1孔51hの内周よりも大きい場合であっても、間隙Δrが深さd4の全長に亘って埋められる。このため、実施形態7の変形例1に係るステアリング装置100は、シェアピンRAのガタつきをより抑制できる。なお、突起部prの長さd5は、第2孔43hの深さd4より短くてもよいし長くてもよい。
上述したように、実施形態7の変形例1に係るステアリング装置100において、アウターピンRoAは、本体部Ro1の外壁に弾性変形可能な突起部prを備える。これにより、突起部prが、本体部Ro1と第1孔51hの内壁との間の間隙または本体部Ro1と第2孔43hの内壁との間の間隙Δrを埋めることができる。このため、実施形態7の変形例1に係るステアリング装置100は、シェアピンRAのガタつきを抑制できる。
(実施形態7の変形例2)
図67は、実施形態7の変形例2に係るステアリング装置を、図26におけるe−e断面に相当する平面で切った断面を示す図である。実施形態7の変形例2は、上述した実施形態と比較して、実施形態7に係るインナーコラムブラケット4と異なるインナーコラムブラケット4Bを備える点が相違する。
図67に示すように、インナーコラムブラケット4Bは、脚部431と、脚部432と、を備える。脚部431は、首部44の腕部41とは反対側の端部から前方側に向かって設けられる板状の部分であって、インナーコラム51に接触している。脚部432は、首部44の腕部41とは反対側の端部から後方側に向かって設けられる板状の部分であって、インナーコラム51に接触している。脚部431、432のインナーコラム側表面は、インナーコラム51の外壁の形状に沿った形状にされている。脚部431、432は、例えば、インナーコラム51に対向する表面とは反対側の表面に円形の凹部45を1つずつ備える。脚部431の凹部45の底面には、第2孔431hが開けられている。脚部432の凹部45の底面には、第2孔432hが開けられている。第1孔51hと第2孔431hとに跨る位置および第1孔51hと第2孔432hとに跨る位置にシェアピンRが挿入されることで、インナーコラムブラケット4Bとインナーコラム51とが離脱可能に連結されている。
インナーコラムブラケット4Bは、第1テレスコ摩擦板21による支持点である腕部41に対して、前方側および後方側の両側に第2孔431h、432hを備える。これにより、上述した実施形態7のように腕部41よりも後方側に2つの第2孔43hが設けられる場合と比較して、腕部41から第2孔431h、432hまでの距離が近くなりやすくなる。このため、第1テレスコ摩擦板21に荷重が加えられ、腕部41の長手方向に平行な軸廻りのモーメントがインナーコラムブラケット4Bに伝わった場合であっても、シェアピンRに加わるモーメントは抑制されやすくなる。
また、上述した実施形態7のように腕部41よりも後方側に2つの第2孔43hが設けられる場合と比較して、インナーコラムブラケット4Bは第2孔431h、432h同士の距離を大きくすることができる。これにより、インナーコラムブラケット4Bの回転が抑制されるので、シェアピンRが切断されるときのインナーコラムブラケット4Bの姿勢が安定する。このため、シェアピンRの許容せん断力のバラつきが抑制されやすくなる。
(実施形態7の変形例3)
図68は、実施形態7の変形例3に係るステアリング装置を、図26におけるe−e断面に相当する平面で切った断面を示す図である。図69は、図68のシェアピンの周辺部分を拡大して示す図である。図70は、インナーピンがアウターピンに挿入される前の状態での実施形態7の変形例3に係るシェアピンを示す斜視図である。図71は、図68のシェアピンの周辺部分を拡大し、シェアピンのみを側面図として示す説明図である。実施形態7の変形例3に係るインナーコラムブラケット4Cは、上述した実施形態7に係る脚部43とは異なる脚部43Cを備える。また、実施形態7の変形例3に係るシェアピンRCは、上述した実施形態7に係るアウターピンRoとは異なるアウターピンRoCを備える。
図68に示すように、実施形態7の変形例3に係る脚部43Cは、例えば2つの第2孔43Chを有しているが、実施形態に係る脚部43の凹部45に相当する部分を有していない。これにより、実施形態7の変形例3に係るインナーコラムブラケット4Cは、実施形態7に係るインナーコラムブラケット4に比較して必要とする加工が少ないので、より容易に製作することができる。また、図69および図70に示すように、第1孔51hの内周は、第2孔43Chの内周よりも大きく形成されている。第1孔51hの内周と第2孔43Chの内周との差は、所定の公差よりも大きいことが好ましい。このようにすることで、公差の範囲内で第1孔51hおよび第2孔43Chの製作誤差が生じた場合であっても、第1孔51hの内周が第2孔43Chの内周よりも大きい状態が保たれやすい。
なお、インナーコラムブラケット4Cは、実施形態7に係る脚部43の凹部45に相当する部分を有していてもよい。このようにした場合、実施形態7で説明したように、ステアリング装置100は、シェアピンRCが外力によって破損することを防止できる。
図69に示すように、シェアピンRCは、アウターピンRoCと、インナーピンRiと、を備える。アウターピンRoCは、第1孔51hおよび第2孔43Chを貫通する筒状の部材である。アウターピンRoCは、例えば、本体部RoC1と、抜止部RoC2と、アウターフランジ部RoC3と、ガイド孔RoChと、を備える。本体部RoC1は、円筒状であって、第1孔51hおよび第2孔43Chを貫通している。抜止部RoC2は、本体部RoC1の一端に設けられ、インナーコラム51の内側に位置している。アウターフランジ部RoC3は、本体部RoC1の他端に設けられ、第2孔43Chよりもインナーコラム51の径方向外側に位置している。アウターフランジ部RoC3は、例えば円盤状であって、第2孔43Chの内周よりも大きな外周を有する。これにより、アウターフランジ部RoC3が脚部43Cの表面に接するので、アウターピンRoCが第1孔51hおよび第2孔43Chから抜け落ちにくくなる。ガイド孔RoChは、アウターフランジ部RoC3から抜止部RoC2までを貫通する貫通孔である。
アウターピンRoCが第1孔51hおよび第2孔43Chに挿入される前の状態では、本体部RoC1および抜止部RoC2の外周は、例えば一定であって、第2孔43Chの内周よりも大きくかつ第1孔51hの内周よりも小さい。そして、アウターピンRoCは、圧入により第1孔51hおよび第2孔43Chに挿入される。これにより、本体部RoC1の外壁と第2孔43Chの内壁とが接することで摩擦力が生じ、図70に示すようにアウターピンRoCが第2孔43Chに取り付けられる。このため、第1孔51hおよび第2孔43Chが位置決めされる。また、アウターピンRoCの本体部RoC1と第1孔51hの内壁との間には、間隙ΔCが生じている。
アウターピンRoCは、抜止部RoC2の内壁に、ガイド孔RoChの径方向内側に向かって突出する凸部RoC4を備える。例えば、凸部RoC4は環状である。これにより、図70に示すようにアウターピンRoCにインナーピンRiが挿入される前の状態では、抜止部RoC2の内周は、本体部RoC1の内周よりも小さくなっている。また、アウターピンRoCにインナーピンRiが挿入される前の状態では、インナーピンRiの胴体部Ri1の外周は、本体部RoC1の内周と略等しい、または本体部RoC1の内周よりも大きい。インナーピンRiは、圧入によりガイド孔RoChに挿入される。インナーピンRiがガイド孔RoChに挿入され、インナーピンRiが凸部RoC4に接すると、径方向外側に向かう力が抜止部RoC2に加えられる。これにより、アウターピンRoCの周方向におけるノッチRosの幅dsが拡がる。このため、図71に示すように、アウターピンRoCにインナーピンRiが挿入された後の状態では、アウターピンRoCの抜止部RoC2は、第1孔51hの内周および第2孔43Chの内周よりも大きな外周を有する。これにより、抜止部RoC2がインナーコラム51の内壁に接するので、アウターピンRoCが第1孔51hおよび第2孔43Chから抜け落ちにくくなる。
アウターピンRoCの周方向におけるノッチRosの幅dsが拡がることにより、アウターピンRoCの本体部RoC1のうち第1孔51hの内壁に対向する第1孔対向部RoC5の外周が大きくなる。これにより、図70に示した間隙ΔCが埋められ、第1孔対向部RoC5の少なくとも一部が第1孔51hの内壁に接する。このため、ガイド孔RoChの径方向におけるシェアピンRCのガタつきが抑制される。
第1孔51hの内周が第2孔43Chの内周よりも大きいので、第1孔対向部RoC5の外周は、第1孔51hと第2孔43Chとの境界を起点として抜止部RoC2に向かって拡大している。これにより、第1孔対向部RoC5は、図69および図71に示すように第1孔51hの縁および第2孔43Chの縁に引っ掛かる。このため、ガイド孔RoChの軸方向におけるシェアピンRCのガタつきが抑制される。
また、インナーコラム51に第1孔51hを開けると、インナーコラム51の内側に位置する第1孔51hの縁にバリが生じる。バリとは、切削加工等の際に加工面に生ずる不要な突起であり、通常はバリを取り除く作業が発生する。しかしながら、実施形態7の変形例3においては、第1孔51hの縁にバリがあることで第1孔対向部RoC5が第1孔51hの縁により引っ掛かりやすくなる。このため、実施形態7の変形例3においてはバリを取り除く必要がなく、バリがあることでガイド孔RoChの軸方向におけるシェアピンRCのガタつきが抑えられやすくなる。
また、図71に示すように、アウターフランジ部RoC3からノッチRosの先端Rosbまでの距離d6は、アウターフランジ部RoC3からインナーコラム51の内壁までの距離d8よりも小さいことが好ましい。これにより、アウターピンRoCの周方向におけるノッチRosの幅dsがより拡がりやすくなるので、第1孔対向部RoC5の外周が拡大しやすくなる。このため、ガイド孔RoChの径方向におけるシェアピンRCのガタつき、およびガイド孔RoChの軸方向におけるシェアピンRCのガタつきがより抑制される。
また、図71に示すように、距離d6は、アウターフランジ部RoC3からインナーコラム51の外壁までの距離d7よりも大きいことが好ましい。これにより、シェアピンRCが切断される時の切断面にノッチRosが含まれなくなる。このため、切断面における本体部RoC1の断面にノッチRos分の欠損部分がなくなるので、シェアピンRCの許容せん断力のバラつきが抑制される。ここで、シェアピンRCが切断される時の切断面は、図63で示した切断面BKに相当する部分である。
上述したように、実施形態7の変形例3に係るステアリング装置100において、第1孔51hの内周は、第2孔43Chの内周よりも大きい。また、アウターピンRoCは、抜止部RoC2の内壁に、ガイド孔RoChの径方向内側に向かって突出する凸部RoC4を備える。これにより、インナーピンRiが凸部RoC4をガイド孔RoChの径方向外側に向けて押すので、アウターピンRoCの周方向におけるノッチRosの幅dsが拡がる。これにより、アウターピンRoCの本体部RoC1の少なくとも一部が第1孔51hの内壁に接する。このため、ガイド孔RoChの径方向におけるシェアピンRCのガタつきが抑制される。さらに、第1孔51hの内周が第2孔43Chの内周よりも大きいため、アウターピンRoCの本体部RoC1の外周が、第1孔51hと第2孔43Chとの境界を起点として抜止部RoC2に向かって拡大する。これにより、アウターピンRoCの本体部RoC1が、第1孔51hの縁および第2孔43Chの縁に引っ掛かる。このため、ガイド孔RoChの軸方向におけるシェアピンRCのガタつきも抑制される。したがって、実施形態7の変形例3に係るステアリング装置100は、ガイド孔RoChの径方向におけるシェアピンRCのガタつき、およびガイド孔RoChの軸方向におけるシェアピンRCのガタつきの両方を抑制できる。
また、実施形態7の変形例3に係るステアリング装置100において、アウターピンRoCは、第1孔51hの内周および第2孔43Chの内周よりも大きな外周を有するアウターフランジ部RoC3を本体部RoC1の他端(抜止部RoC2とは反対側の端部)に備える。アウターフランジ部RoC3からノッチRosの先端Rosbまでの距離d6は、アウターフランジ部RoC3からインナーコラム51の内壁までの距離d8よりも小さい。これにより、アウターピンRoCの周方向におけるノッチRosの幅dsがより拡がりやすくなるので、アウターピンRoCの本体部RoC1の外周が拡大しやすくなる。このため、ガイド孔RoChの径方向におけるシェアピンRCのガタつき、およびガイド孔RoChの軸方向におけるシェアピンRCのガタつきがより抑制される。
以上の説明において、実施形態7および実施形態7の変形例1〜3が示されているが、シェアピンRの形状は上述したものに限定されるものではない。インナーピンRiの全体形状は必ずしも上述したような略円柱形状でなくてもよいし、アウターピンRoの全体形状は必ずしも上述したような略円筒形状でなくてもよい。例えば、第1孔51hの軸方向に対して直交する平面でインナーピンRiまたはアウターピンRoを切った断面形状は、四角形等の多角形であってもよい。