本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態)
図1は、本実施形態に係るステアリング装置の周辺を模式的に示す図である。図2は、本実施形態に係るステアリング装置の側面図である。図3は、本実施形態に係るステアリング装置の平面図である。図4は、本実施形態に係るステアリング装置を車体上方側から見た斜視図である。以下の説明において、図2に示す回転中心軸Zrに沿う方向のうち、ステアリング装置100を車体VBに取り付けた場合の車体VBの前方は、単に前方と記載され、ステアリング装置100を車体VBに取り付けた場合の車体VBの後方は、単に後方と記載される。また、回転中心軸Zに対する直交方向のうち、ステアリング装置100を車体VBに取り付けた場合の車体VBの上方は、単に上方と記載され、ステアリング装置100を車体VBに取り付けた場合の車体VBの下方は、単に下方と記載される。すなわち、図2において、図中の左側が前方であり、図中の右側が後方であり、図中の上側が上方であり、図中の下側が下方である。
(ステアリング装置)
図1に示すように、ステアリング装置100は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール14と、ステアリングシャフト15と、ユニバーサルジョイント16と、ロアシャフト17と、ユニバーサルジョイント18と、を備え、ピニオンシャフト19に接合されている。
図1に示すように、ステアリングシャフト15は、入力軸151と、出力軸152と、を備える。入力軸151及び出力軸152は、ステアリングコラム5に支持されている。入力軸151の一方の端部がステアリングホイール14に連結され、入力軸151の他方の端部が出力軸152に連結されている。例えば、入力軸151の表面には樹脂コーティングが施されている。これにより、入力軸151は樹脂を介して出力軸152に連結されている。また、出力軸152の一方の端部が入力軸151に連結され、出力軸152の他方の端部がユニバーサルジョイント16に連結される。本実施形態では、入力軸151及び出力軸152は、機械構造用炭素鋼(いわゆるSC材(Carbon Steel for Machine Structural Use))又は機械構造用炭素鋼鋼管(いわゆるSTKM材)等の一般的な鋼材等から形成される。
ロアシャフト17は、ユニバーサルジョイント16を介して出力軸152に連結される部材である。ロアシャフト17の一方の端部がユニバーサルジョイント16に連結され、ロアシャフト17の他方の端部がユニバーサルジョイント18に連結される。また、ピニオンシャフト19の一方の端部がユニバーサルジョイント18に連結される。
ステアリングコラム5は、インナーコラム51と、アウターコラム54と、を備える。インナーコラム51は、入力軸151を回転中心軸Zrを中心に回転可能に支持する筒状部材である。インナーコラム51は、アウターコラム54よりも後方に配置されている。アウターコラム54は、インナーコラム51の少なくとも一部が内側に挿入される筒状部材である。アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されている。インナーコラム51及びアウターコラム54は、例えば機械構造用炭素鋼鋼管(いわゆるSTKM材)等の一般的な鋼材等から形成される。以下の説明において、回転中心軸Zrに平行な方向は、単に軸方向と記載される。
アウターコラムブラケット52は、車体側部材13に固定される取付板522と、取付板522に一体に形成された側板521と、を備えている。アウターコラムブラケット52の取付板522は、図3に示すように取付孔522hを有しており、取付孔522h及びボルト等の固定部材を用いて車体側部材13に固定される。側板521は、アウターコラム54の両側に配置され、アウターコラム54を締め付けている。また、側板521には、上下方向に長い長穴であるチルト調整孔521hが設けられている。
図2に示すように、アウターコラム54は、前方端部にピボットブラケット55を備える。ピボットブラケット55は、回転軸551を中心として回転可能に車体側部材12に支持されている。回転軸551は、例えば水平方向に平行である。これにより、アウターコラム54は、鉛直方向に揺動可能に支持されている。
図5は、図2におけるA−A断面図である。図5に示すように、アウターコラム54は、2つのロッド貫通部31と、第1スリット541と、第2スリット542と、を備える。
ロッド貫通部31は、例えばアウターコラム54から下方に突出する部材であり、丸孔であるロッド貫通孔31hを有する。2つのロッド貫通部31が有するそれぞれのロッド貫通孔31hは、第1スリット541を挟んで対向している。また、ロッド貫通部31の一部は、側板521と対向している。2つのロッド貫通孔31h及び側板521のチルト調整孔521hを、ロッド33が貫通している。ロッド33は、操作レバー53と連結されている。
第1スリット541は、アウターコラム54のうちインナーコラム51の挿入側の一端を切り欠いた長穴である。第1スリット541は、2つのロッド貫通部31の間に配置されている。アウターコラム54が第1スリット541を有するので、アウターコラム54が締め付けられるとアウターコラム54の内径が小さくなる。これにより、アウターコラム54が締め付けられている状態では、アウターコラム54がインナーコラム51を覆う部分において、アウターコラム54の内壁とインナーコラム51の外壁とは接触している。このため、アウターコラム54とインナーコラム51との間に摩擦力が生じている。例えば本実施形態においては、インナーコラム51の外壁にアウターコラム54との摩擦を低減するための低摩擦材によるコーティングが施されている。
第2スリット542は、第1スリット541に対してインナーコラム51を挟んで反対側に設けられた長穴である。すなわち、第2スリット542は、インナーコラム51の上方に設けられた長穴である。第2スリット542の前方端部は、第1スリット541の前方端部よりも前方に位置している。
図5に示すように、ステアリング装置100は、アウターコラム54に対する締付保持力を強固にするための部材として、第1テレスコ摩擦板21と、第2テレスコ摩擦板22と、を備える。
第1テレスコ摩擦板21は、軸方向を長手方向とする長穴であるテレスコ調整孔21hを有する板状部材である。第1テレスコ摩擦板21は、例えば、側板521とロッド貫通部31との間の位置に2つずつ重ねて配置される。
第2テレスコ摩擦板22は、例えば板材を曲げて形成された部材であって、回転中心軸Zr方向から見て略U字形状である。第2テレスコ摩擦板22は、2つの第1テレスコ摩擦板21の間に配置される2つの摩擦部221と、2つの摩擦部221を連結する連結部222と、連結部222に設けられる屈曲部223と、を備える。摩擦部221は、丸孔であるロッド貫通孔22hを有する。ロッド33は、テレスコ調整孔21h及びロッド貫通孔22hを貫通している。連結部222が2つの摩擦部221を連結して一体にしているので、摩擦部221を2つの第1テレスコ摩擦板21の間に配置する作業が容易になる。また、連結部222は、屈曲部223を有することで、たわんだ状態を保つことができる。これにより、連結部222は、アウターコラムブラケット52の締め付け状態が変化して2つの摩擦部221同士の距離が変化した場合でも、摩擦部221を引っ張りにくくなっている。このため、摩擦部221が連結部222に引っ張られることによって摩擦部221と第1テレスコ摩擦板21との間に隙間が生じる可能性が抑制される。
側板521が締め付けられると、第1テレスコ摩擦板21及び第2テレスコ摩擦板22の摩擦部221は、側板521によってアウターコラム54のロッド貫通部31に押し付けられる。これにより、側板521と第1テレスコ摩擦板21との間、第1テレスコ摩擦板21と第2テレスコ摩擦板22の摩擦部221との間、第1テレスコ摩擦板21とロッド貫通部31との間においてそれぞれ摩擦力が生じる。このため、第1テレスコ摩擦板21及び第2テレスコ摩擦板22がない場合に比較して、摩擦力が生じる面が増加する。側板521は、第1テレスコ摩擦板21及び第2テレスコ摩擦板22によってより強固にアウターコラム54を締め付けることができる。
操作レバー53が回転させられると、側板521に対する締め付け力が緩められ、側板521とアウターコラム54との間の摩擦力がなくなる又は小さくなる。これにより、アウターコラム54のチルト位置の調整が可能となる。本実施形態において、ステアリング装置100は、図4に示すように第1バネ56と、第2バネ57と、を備える。第1バネ56及び第2バネ57は、例えばコイルバネである。第1バネ56の一端は取付板522に取り付けられ、第1バネ56の他端はアウターコラム54に取り付けられている。第1バネ56は、チルト調整時におけるステアリングコラム5の上下動を補助するとともに、ステアリングコラム5の落下を抑制している。第2バネ57の一端は取付板522に取り付けられ、第2バネ57の他端は操作レバー53に取り付けられている。第2バネ57は、操作レバー53を介してロッド33に予圧を加えている。具体的には、第2バネ57は、チルト調整孔521hの長手方向に対して交差する方向の予圧をロッド33に加えている。これにより、チルト調整時におけるロッド33のガタツキが抑制される。
また、操作レバー53が回転させられると、側板521に対する締め付け力が緩められ、アウターコラム54の第1スリット541の幅が大きくなる。これにより、アウターコラム54がインナーコラム51を締め付ける力がなくなるため、インナーコラム51が摺動する際の摩擦力がなくなる。これにより、操作者は、操作レバー53を回転させた後、ステアリングホイール14を介してインナーコラム51を押し引きすることで、テレスコ位置を調整することができる。
なお、第1テレスコ摩擦板21は、必ずしも側板521とロッド貫通部31との間の位置に配置されていなくてもよい。例えば、第1テレスコ摩擦板21は、側板521の外側に配置されていてもよい、すなわち側板521を挟んでロッド貫通部31と反対側に配置されていてもよい。
なお、ステアリングコラム5に対する締付保持力を強固にするための部材は、必ずしもテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21及び第2テレスコ摩擦板22)でなくてもよい。例えば、ギア噛み合い式等の公知の手段が用いられてもよい。
図6は、図2におけるB−B断面図である。図7は、図4のうちストッパーの周辺を拡大して示す図である。図6及び図7に示すように、ステアリング装置100は、ストッパー7を備える。ストッパー7は、インナーコラム51のうち第2スリット542で露出する部分に取り付けられている。ストッパー7は、例えば、当て板72と、ボルト71と、座金73と、スペーサー74と、通電プレート75と、を備える。
当て板72は、円筒状の突起部を備えた金属製の板状部材である。当て板72の円筒状の突起部が、インナーコラム51のうち第2スリット542で露出する位置に設けられた貫通孔に対してインナーコラム51の内側から嵌め込まれている。当て板72は、円筒状の突起部の内壁に雌ネジを有する。ボルト71は、当て板72の雌ネジに締結される。座金73は、ボルト71のボルト頭部と当て板72との間に配置されている。座金73の底面は、インナーコラム51の外壁の形状に沿う形状となっている。これにより、ボルト71の姿勢が安定する。スペーサー74は、第2スリット542の内壁とボルト71との隙間及び第2スリット542の内壁と当て板72との隙間を埋めるための部材である。スペーサー74は、例えば貫通孔を備える樹脂製部材である。ボルト71及び当て板72がスペーサー74の貫通孔の内側に配置されている。通電プレート75は、例えば金属製の板状部材である。通電プレート75は、例えばボルト71の頭部とスペーサー74に挟まれて固定され、且つアウターコラム54に接している。これにより、インナーコラム51は、当て板72、ボルト71及び通電プレート75を介してアウターコラム54と通電状態となっている。
本実施形態において、例えばホーンのためにボディアースを行う場合、入力軸151から車体VB側に電気を流す必要がある。しかし、入力軸151が樹脂コーティングを介して出力軸152に連結されているので、入力軸151から出力軸152へ電気が流れない。また、インナーコラム51の外壁に低摩擦材によるコーティングが施されているので、インナーコラム51の外壁からアウターコラム54には電気が流れない。そこで、本実施形態においては、入力軸151からインナーコラム51に伝達した電気をアウターコラム54に流す機能をストッパー7が担っている。
ストッパー7は、インナーコラム51に取り付けられており、テレスコ調整が行われる際には第2スリット542の内壁に対向した状態で摺動することができる。スペーサー74が樹脂製であることにより、ストッパー7は、第2スリット542に対して滑らかに摺動する。ストッパー7は、テレスコ位置の調整時に第2スリット542の後方側端部である第2端部内壁542eに接することで、テレスコ位置の調整範囲を規制している。また、スペーサー74が第2スリット542の内壁に接することで、ストッパー7は、回転中心軸Zrを中心としたインナーコラム51の回転を抑制している。
図8は、図2におけるC−C断面図である。図9は、図3におけるD−D断面図である。図10は、図9のうちインナーコラムブラケットの周辺を拡大して示す図である。図11は、図10におけるE矢視図である。ステアリング装置100は、例えばアルミニウム合金又は鋼材等の金属で形成されたインナーコラムブラケット4を備える。例えば、図9に示すように、インナーコラムブラケット4は、インナーコラム51の下方に配置されている。インナーコラムブラケット4は、図10及び図11に示すように、腕部41と、首部44と、脚部43と、ダンパー保持部46と、凹部48と、貫通孔47と、を備える。
図11に示すように、腕部41は、アウターコラム54の両側で対向する2組の第1テレスコ摩擦板21を接続する棒状の部材である。首部44は、腕部41の一部からインナーコラム51に近付く方向に突出する部材である。首部44は、前方側の表面として傾斜面441を備える。傾斜面441のインナーコラム51に近い端部441aは、傾斜面441のインナーコラム51から遠い端部441bよりも前方に位置する。すなわち、傾斜面441は、上方の端部441aが下方の端部441bよりも前方に位置するように傾斜している。脚部43は、首部44の腕部41とは反対側の端部に設けられる板状の部材であって、インナーコラム51に接触している。図10に示す脚部43のインナーコラム側表面431は、インナーコラム51の外壁の形状に沿った形状を有する。ダンパー保持部46は、腕部41のインナーコラム51に対向する表面である。凹部48は、例えばダンパー保持部46に形成された略直方体状の窪みである。貫通孔47は、凹部48の底に設けられており、腕部41をインナーコラム51の径方向に貫通している。
インナーコラムブラケット4は、腕部41によって、アウターコラム54の両側に配置された第1テレスコ摩擦板21に連結されている。また、インナーコラムブラケット4は、脚部43によってインナーコラム51に連結されている。また、インナーコラムブラケット4は、少なくとも一部がアウターコラム54の第1スリット541に嵌まるように配置されている。具体的には、インナーコラムブラケット4の脚部43が第1スリット541の内壁に対向している。
インナーコラムブラケット4とインナーコラム51とを離脱可能に連結するため、図10に示すようにインナーコラム51には第1孔51hが開けられ、脚部43には第2孔43hが開けられている。第1孔51h及び第2孔43hは連通している。例えば本実施形態において、第1孔51h及び第2孔43hは、それぞれ2つずつ設けられており、内周は全て同じである。第1孔51hと第2孔43hとに跨る位置にシェアピン8が挿入されることで、インナーコラムブラケット4とインナーコラム51とが離脱可能に連結されている。シェアピン8は、いわゆるメカニカルヒューズである。また、第1孔51h及び第2孔43hは、アウターコラム54の両側に配置されたそれぞれの第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置される。
インナーコラムブラケット4は、テレスコ調整が行われる際には第1スリット541に沿って移動することができる。インナーコラムブラケット4は、テレスコ位置の調整時に第1スリット541の前方端部の内壁である第1端部内壁541eに接することで、テレスコ位置の調整範囲を規制している。また、図9に示すように、ストッパー7から第2スリット542の前方端部までの距離が、インナーコラムブラケット4から第1端部内壁541eまでの距離よりも長くなっている。これにより、インナーコラムブラケット4がインナーコラム51から離脱した後において、インナーコラム51の前方への移動量(ストローク量)が所定量以上に確保される。したがって、本実施形態においては、テレスコ位置の前方側の限界がインナーコラムブラケット4及び第1端部内壁541eで規制されており、テレスコ位置の後方側の限界がストッパー7及び第2端部内壁542eで規制されている。
図12は、図10のうちシェアピンの周辺を拡大して示す図である。本実施形態において、シェアピン8は、アウターピン81と、インナーピン82と、を備える。アウターピン81及びインナーピン82は、例えばポリアセタール等の樹脂で形成されている。
図12に示すように、アウターピン81は、第1孔51h及び第2孔43hを貫通する筒状の部材である。アウターピン81は、例えば、本体部811と、抜止部812と、フランジ部813と、ガイド孔81hと、を備える。本体部811は、円筒状であって、第1孔51h及び第2孔43hを貫通している。抜止部812は、本体部811の一端に設けられ、インナーコラム51の内側に位置している。抜止部812は、円筒状であって、第1孔51hの内周及び第2孔43hの内周よりも大きな外周を有する。これにより、抜止部812がインナーコラム51の内壁に接するので、アウターピン81が第1孔51h及び第2孔43hから抜け落ちにくくなる。フランジ部813は、本体部811の他端に設けられ、インナーコラム51の径方向で第2孔43hよりも外側に位置している。フランジ部813は、例えば円盤状であって、第1孔51hの内周及び第2孔43hの内周よりも大きな外周を有する。これにより、フランジ部813が凹部45の底面に接するので、アウターピン81が第1孔51h及び第2孔43hから抜け落ちにくくなる。ガイド孔81hは、フランジ部813から抜止部812までを貫通する貫通孔である。
アウターピン81は、例えば圧入により第1孔51h及び第2孔43hに挿入されている。アウターピン81が第1孔51h及び第2孔43hに挿入されることで、第1孔51h及び第2孔43hが位置決めされる。例えば、抜止部812が第2孔43h側から第1孔51h及び第2孔43hに挿入される。
なお、アウターピン81は、第1孔51h側から第1孔51h及び第2孔43hに挿入されてもよい。また、アウターピン81は、本体部811の外壁にリブ等を設けた上で圧入されてもよい。
アウターピン81が第1孔51h及び第2孔43hを貫通している状態においては、本体部811は、弾性変形により第1孔51hの内壁及び第2孔43hの内壁を押している。このため、本体部811と第1孔51hの内壁との間の隙間及び本体部811と第2孔43hの内壁との間の隙間が生じにくくなっている。これにより、アウターピン81のガタつきが抑制されている。
インナーピン82は、アウターピン81のガイド孔81hに挿入される部材である。インナーピン82は、例えば、胴体部821と、大径部822と、を備える。胴体部821は、円柱状であってガイド孔81hを貫通している。大径部822は、胴体部821の両端に設けられて、ガイド孔81hの外部に位置している。大径部822は、ガイド孔81hの内周よりも大きな外周を有する。これにより、大径部822がガイド孔81hの両端の縁に接するので、インナーピン82がアウターピン81から抜け落ちにくくなる。
なお、ガイド孔81hは、端部に内周を拡大した段差部を備えていてもよい。この場合、大径部822が段差部の縁に接するので、インナーピン82がガイド孔81hの端部から突出しにくくなる。
本実施形態において、インナーピン82は、圧入によりガイド孔81hに挿入されている。例えば、大径部822がフランジ部813側からガイド孔81hに挿入される。インナーピン82は、両端に同じ大径部822を備えているので、どちらの端部からでもガイド孔81hに挿入することができる。これにより、シェアピン8の組み立てが容易になっている。
インナーピン82がガイド孔81hを貫通している状態においては、胴体部821は、弾性変形によりガイド孔81hの内壁を径方向外側に押している。このため、胴体部821とガイド孔81hの内壁との間の隙間が生じにくくなっている。これにより、インナーピン82のガタつきが抑制されている。
ステアリング装置100は、アウターピン81によって第1孔51h及び第2孔43hの位置決めをした後にインナーピン82を挿入して組み立てられるので、容易に組み立てることができる。
なお、シェアピン8は、必ずしも上述したアウターピン81及びインナーピン82で構成されていなくてもよい。例えば、シェアピン8は、第1孔51h及び第2孔43hに跨る位置に充填された樹脂等が固まることによって形成されていてもよい。すなわち、シェアピン8は、インナーコラムブラケット4とインナーコラム51とを離脱可能に連結する連結部材であればよい。
ステアリングホイール14に過大荷重が加えられると、この荷重は、入力軸151を介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4は移動しない。このため、シェアピン8にせん断力が加わるので、荷重がシェアピン8の許容せん断力を超える場合、シェアピン8は切断される。シェアピン8が切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除される。これにより、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。よって、2次衝突時に操作者がステアリングホール14に衝突して過大荷重が加わった場合、過大荷重が加わった直後にインナーコラム51を移動させるための力が低減し衝撃を吸収する。
また、シェアピン8が切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、シェアピン8が切断されても、ステアリングコラム5は落下しない。
図13は、切断された後のシェアピンの状態を説明するための図である。図13に示すように、シェアピン8は切断面BKで切断される。切断面BKは、シェアピン8のうち第1孔51h及び第2孔43hに跨る部分に生じる。図13で示す断面において、切断面BKは、インナーコラム51の外壁の延長線上、すなわち脚部43のインナーコラム側表面431の延長線上に位置している。アウターピン81は本体部811で切断され、インナーピン82は胴体部821で切断される。このため、シェアピン8の許容せん断力は、切断面BKにおける本体部811の断面積及び胴体部821の断面積に依存する。
また、シェアピン8が切断された後において、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動することが望ましい。インナーコラム51の移動する方向がアウターコラム54の軸方向に対して角度をなす方向である場合、インナーコラム51の移動が妨げられる可能性又はインナーコラム51とアウターコラム54との間に生じる摩擦力が所定値よりも大きくなる可能性が高くなるためである。
本実施形態において、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側に配置された第1テレスコ摩擦板21に接合されている。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力を受ける。このため、シェアピン8が切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対して真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対して真っ直ぐ移動しやすくなる。
また、第1孔51h及び第2孔43hは、インナーコラムブラケット4を挟んだ両側で対向する第1テレスコ摩擦板21からの距離が等しい位置に配置されている。これにより、インナーコラムブラケット4に軸方向荷重が加わったとき、インナーコラムブラケット4は、アウターコラム54の両側からの締付力をより均等に受けるので、シェアピン8が切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。したがって、インナーコラム51が移動を始める際の姿勢は、軸方向に対してより真っ直ぐに保たれやすくなる。よって、インナーコラム51が軸方向に対してより真っ直ぐ移動しやすくなる。
また、仮にインナーコラムブラケット4が、アウターコラム54の両側からの締付力を均等に受けることができなかった場合であっても、ストッパー7が第2スリット542に嵌まっているので、インナーコラム51は、第2スリット542の長手方向すなわち軸方向に案内される。このため、シェアピン8が切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢が安定する。
また、図10に示すように、第1孔51h及び第2孔43hは、それぞれ2つずつ軸方向で異なる位置に設けられている。このため、シェアピン8は、軸方向で異なる位置に2つ配置されている。仮に、第1孔51h及び第2孔43hがそれぞれ1つずつ設けられる場合、すなわちシェアピン8が1つ配置される場合には、インナーコラムブラケット4がシェアピン8を中心に回転する可能性がある。これに対して、本実施形態においては、シェアピン8が軸方向で異なる位置に2つ配置されていることにより、インナーコラムブラケット4の回転が抑制される。このため、シェアピン8が切断されるときのインナーコラムブラケット4の姿勢がより安定する。
なお、シェアピン8の許容せん断力は、第1孔51h及び第2孔43hの個数、第1孔51h及び第2孔43hの断面積、シェアピン8の材料を変更することで調節することができる。例えば、第1孔51h及び第2孔43hの個数は、それぞれ1個でもよいし3個以上であってもよい。また、シェアピン8は、例えば、非鉄金属を含む金属、又はゴム等で形成されていてもよい。
図14は、比較例について、ステアリングコラムの変位量とステアリングコラムを移動させるために必要な荷重との関係を示すグラフである。図15は、本実施形態について、ステアリングコラムの変位量とステアリングコラムを移動させるために必要な荷重との関係を示す図である。図14及び図15において、横軸はステアリングコラムの前方への変位量であり、縦軸はステアリングコラムを前方へ移動させるために必要な荷重である。
比較例は、特許文献1に記載の技術のように、アウターコラムがカプセルを介して車体に取り付けられている場合の例である。比較例においては、アウターコラムがインナーコラムよりも後方側に配置されており、アウターコラムに過大荷重が加わると、アウターコラムと一体に設けられたテレスコ調整孔の端部にロッドが接触し、ブラケットを介して荷重がカプセルに伝わるようになっている。図14に示す力F2cは、カプセルの許容せん断力を示している。
比較例において、アウターコラムは、ブラケットの締め付けによってインナーコラムとの間に生じる摩擦力によって軸方向に支持されている。図14で示す力F1cは、アウターコラムを支持している当該摩擦力を示している。力F1cは、力F2cよりも小さい。通常使用において加わるような荷重によってアウターコラムが移動しないようにするために、力F1cは、所定値以上に保たれる必要がある。
比較例において、アウターコラムに力F2c以上の荷重が加わると、カプセルが切断されアウターコラムが車体から離脱する。その後、アウターコラムが、インナーコラムとの摩擦力で衝撃を吸収しながら軸方向に移動する。しかし、上述したように、力F1cが所定値以上に保たれているので、アウターコラムの移動を滑らかにして操作者を2次衝突からより保護しやすくすることが難しい。
一方、本実施形態において、インナーコラム51は、アウターコラムブラケット52の締め付けによってアウターコラム54との間に生じる第1摩擦力と、第1テレスコ摩擦板21と第1テレスコ摩擦板21に接触する部材(アウターコラムブラケット52、第2テレスコ摩擦板22、アウターコラム54)との間に生じる第2摩擦力と、によって軸方向に支持されている。図15に示す力F1は、第1摩擦力を示しており、力F3は、第1摩擦力と第2摩擦力との和を示している。また、図15に示す力F2は、シェアピン8の許容せん断力を示している。力F2は、力F3より小さくかつ力F1よりも大きい。
本実施形態において、インナーコラム51に力F2以上の荷重が加わると、シェアピン8が切断され、インナーコラム51がインナーコラムブラケット4から離脱する。これにより、インナーコラム51と第1テレスコ摩擦板21との連結が解除されるので、上述した第2摩擦力がインナーコラム51に対して作用しなくなる。このため、シェアピン8が切断された後において、インナーコラム51は、上述した第1摩擦力で衝撃を吸収しながら軸方向に移動する。本実施形態に係るステアリング装置100は、第1摩擦力を小さく設定すると、インナーコラム51の移動を滑らかにして操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
本実施形態においては、仮に第1摩擦力の設定値を小さくしたとしても、インナーコラム51を軸方向に支持するための力のうち、第1摩擦力を小さくした分を第2摩擦力が補完することができる。このため、本実施形態に係るステアリング装置100は、第1摩擦力の設定値と第2摩擦力の設定値を調節することで、通常使用において加わるような荷重によってインナーコラム51が移動することを抑制でき、かつ操作者を2次衝突からより保護しやすくすることができる。
ところで、通常使用において、操作レバー53を操作してからテレスコ調整を行う際、インナーコラムブラケット4が第1端部内壁541eに接すると、シェアピン8にはせん断力が作用する。このため、テレスコ調整時にインナーコラム51に加えられる力が過大である場合、テレスコ調整によってシェアピン8が切断される可能性がある。そこで、本実施形態に係るステアリング装置100は、ダンパー9を備える。図9及び図10に示すように、ダンパー9はインナーコラムブラケット4に取り付けられている。
図16は、本実施形態に係るダンパーの側面図である。図17は、本実施形態に係るダンパーの斜視図である。図18は、本実施形態に係るダンパーの斜視図である。図16において破線で示されているのは、インナーコラムブラケット4である。ダンパー9は、例えば合成ゴムで形成されている。図16から図18に示すように、ダンパー9は、基部91と、複数の前方突起92と、後方突起93と、抜止部99と、を備える。例えば基部91、複数の前方突起92、後方突起93及び抜止部99は一体に形成されている。
基部91は、略直方体状の部材である。前方突起92は、基部91から前方側へ突出している突起である。前方突起92は、例えば第1スリット541の短手方向を長手方向とする略直方体状の部材である。例えば、前方突起92の数は3つであり、3つの前方突起92が第1スリット541の短手方向と平行に並べられている。前方突起92同士の間には、溝921が形成されている。後方突起93は、基部91から後方側へ突出しており突起である。
後方突起93は、例えば略三角柱状の部材である。後方突起93は、インナーコラムブラケット4の傾斜面441に対向する後方接触面931を備える。後方接触面931のインナーコラム51に近い端部931aは、後方接触面931のインナーコラム51から遠い端部931bよりも前方に位置する。すなわち、後方接触面931は、上方の端部931aが下方の端部931bよりも前方に位置するように傾斜している。例えば、後方接触面931は、傾斜面441と平行である。
抜止部99は、ダンパー9のインナーコラムブラケット4からの脱落を防ぐための部材である。抜止部99は、第1嵌合部94と、第2嵌合部95と、位置決め部96と、ガイド部97と、を備える。第1嵌合部94は、基部91の後方に設けられており、インナーコラムブラケット4の首部44に接している。第1嵌合部94は、インナーコラムブラケット4の凹部48に嵌まっている。第2嵌合部95は、第1嵌合部94から下方に突出しており、例えば円柱状である。第2嵌合部95は、インナーコラムブラケット4の貫通孔47を貫通している。第2嵌合部95の外周は貫通孔47の内周に略等しい。位置決め部96は、第2嵌合部95の下端部から下方に突出しており、例えば第2嵌合部95側から下方に向かって外周が小さくなる略円錐状である。位置決め部96の上端部すなわち最大外周部は、インナーコラムブラケット4の腕部41の表面に接している。位置決め部96の上端部(最大外周部)における外周は、貫通孔47の内周よりも大きく、且つ位置決め部96の下端部(最小外周部)における外周は、貫通孔47の内周よりも小さい。ガイド部97は、位置決め部96の下端部から下方に突出しており、例えば円柱状である。ガイド部97の外周は、貫通孔47の内周よりも小さい。
ダンパー9がインナーコラムブラケット4に取り付けられる際、抜止部99が凹部48側から貫通孔47に挿入される。ガイド部97の外周が貫通孔47の内周よりも小さいので、ガイド部97は容易に貫通孔47に進入できる。その後、例えば位置決め部96が貫通孔47の縁に接してから、位置決め部96が貫通孔47に圧入される。位置決め部96は、ガイド部97が予め貫通孔47内に挿入された状態で、貫通孔47に押し込まれ変形しながら貫通孔47を通過する。位置決め部96は、貫通孔47を通過後に弾性変形することで腕部41の表面に接する。このため、ダンパー9のインナーコラムブラケット4からの脱落が防がれる。
抜止部99が貫通孔47に押し込まれる際、抜止部99が倒れる可能性がある。しかしながら、本実施形態においては、仮に抜止部99が倒れた場合であっても、ガイド部97が貫通孔47の内壁に接触する。これにより、抜止部99の倒れる角度が所定の角度以下に規制される。これにより、貫通孔47内に押し込まれるときの抜止部99の姿勢が安定しやすくなる。このため、インナーコラムブラケット4に対するダンパー9の取り付けが容易である。
なお、前方突起92は、複数であればよく、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、前方突起92は、必ずしも略直方体形状でなくてもよく、例えば略円柱状、略円錐状または略半球状等の形状であってもよい。
図19は、比較例について、インナーコラムブラケットが第1端部内壁に接触した状態を示す図である。図20は、比較例について、インナーコラムの位置とシェアピンに加わるせん断力との関係を示すグラフである。比較例に係るインナーコラムブラケット4cにはダンパー9が設けられていない。図19及び図20において、インナーコラム51の軸方向の位置はxで示され、インナーコラム51の位置が前方へ移動にするにつれてxの値が増加する。図20において、インナーコラムブラケット4cの前方端部が第1端部内壁541eに接したときのxは、x1として示されている。
比較例において、操作レバー53を操作してからテレスコ調整を行う際、テレスコ位置が最前方(x=x1)になると、インナーコラムブラケット4cの前方端部が第1端部内壁541eに接する。インナーコラムブラケット4cが第1端部内壁541eに接した状態で力f1がインナーコラム51に加えられている場合、インナーコラムブラケット4cには第1端部内壁541eからの反力として力f1が加わる。インナーコラムブラケット4cは金属製であるため、力f1に略等しい大きさの力がシェアピン8にせん断力fcとして作用する。このため、図20に示すように、力f1がシェアピン8の許容せん断力faよりも大きい場合、シェアピン8に作用する力f2cがシェアピン8の許容せん断力faよりも大きくなる可能性が高い。したがって、比較例においては、テレスコ調整を行う際に、シェアピン8の許容せん断力faよりも大きな力でインナーコラムブラケット4cが第1端部内壁541eに衝突すると、図20中でx=x2となる時点でシェアピン8が切断される。シェアピン8が切断されると、図20に示すようにシェアピン8に作用するせん断力fcは0となる。
図21は、本実施形態において、ダンパーが第1端部内壁に接触した状態を示す図である。図22は、本実施形態について、インナーコラムの位置とシェアピンに加わるせん断力との関係を示すグラフである。図21及び図22において、インナーコラム51の軸方向の位置はxで示され、インナーコラム51の位置が前方へ移動にするにつれてxの値が増加する。図22において、ダンパー9が第1端部内壁541eに接したときのxは、x1として示されている。
本実施形態においては、操作レバー53を操作してからテレスコ調整を行う際、テレスコ位置が最前方(x=x1)になるとダンパー9が第1端部内壁541eに接する。より具体的には、前方突起92が第1端部内壁541eに接する。これにより、まず前方突出部92が変形する。前方突起92同士の間には溝921があるため、前方突起92は変形しやすい。そして、前方突起92から基部91及び後方突起93へと力が伝達し、基部91及び後方突起93も変形する。前方突起92、基部91、後方突起93のバネ定数をそれぞれk92、k91、k93とし、前方突起92、基部91及び後方突起93を合わせた全体でのバネ定数をKとした場合、Kは、以下の数式(1)で表される。ダンパー9は、k92、k91及びk93が適宜調整されることで、所定のバネ定数Kすなわち所定の衝撃吸収能力を有する。
1/K=(1/k92)+(1/k91)+(1/k93)・・・(1)
ダンパー9が第1端部内壁541eに接した状態で力f1がインナーコラム51に加えられている場合、ダンパー9には第1端部内壁541eからの反力として力f1が加わる。上述したようにダンパー9の前方突起92、基部91及び後方突起93が一体としてバネ定数Kの弾性体として機能するため、力f1の一部は、バネ定数Kの弾性体を変形させるために消費される。そして、力f1よりも小さい力f2がダンパー9からインナーコラムブラケット4へと伝達し、力f2よりも小さい力がシェアピン8にせん断力fとして作用する。
図22に示すように、ダンパー9は、インナーコラム51に対してシェアピン8の許容せん断力fa以上の力f1が加わったときに、シェアピン8に伝達されるせん断力fを許容せん断力fa未満に減少させる。すなわち、インナーコラム51に加えられた力f1がシェアピン8の許容せん断力faよりも大きい場合でも、シェアピン8に作用するせん断力fはシェアピン8の許容せん断力faよりも小さくなる。図22で示す力fdは、ダンパー9(バネ定数Kの弾性体)を変形させるために消費される力である。また、ダンパー9の変形により、図22で示すx3は、図20で示したx2と比較して大きい値となる。図22中でx=x3となる時点でせん断力fはピークである力f2となるが、その後ダンパー9の変形が復元するに伴ってインナーコラム51の位置が元に戻されせん断力fは小さくなっていく。したがって、本実施形態においては、テレスコ調整を行う際に、シェアピン8の許容せん断力faよりも大きな力でダンパー9が第1端部内壁541eに衝突しても、シェアピン8の切断は抑制される。
ところで、図21に示すように、インナーコラムブラケット4の支点である腕部41は第1端部内壁541eよりも下方に位置している。すなわち、上下方向において、第1端部内壁541eの位置が腕部41の位置とずれている。このため、第1端部内壁541eがダンパー9を介してインナーコラムブラケット4を押すと、インナーコラムブラケット4にはモーメントが生じる。このモーメントは、インナーコラムブラケット4の後方端部を下方に移動させる方向のモーメントである。このため、シェアピン8に引き抜き力が作用する可能性がある。
本実施形態においては、ダンパー9が傾斜面441に接触するので、力f2の方向は、図21に示すようにインナーコラム51に向かう方向となる。これにより、ダンパー9がインナーコラムブラケット4を押すとき、インナーコラムブラケット4にはインナーコラム51に向かう方向(上方向き)の力が作用する。このため、シェアピン8に作用する引き抜き力が抑制される。
上述したように、本実施形態に係るステアリング装置100は、インナーコラム51と、アウターコラム54と、アウターコラムブラケット52と、インナーコラムブラケット4と、シェアピン8と、ダンパー9と、を備える。インナーコラム51は、ステアリングホイール14に連結される入力軸151を回転可能に支持し、第1孔51hが開けられた筒状の部材である。アウターコラム54は、インナーコラム51の少なくとも一部が内側に挿入される筒状であって、インナーコラム51の挿入側の一端を切り欠いた第1スリット541を有する。アウターコラムブラケット52は、車体側部材13に固定され、アウターコラム54を支持し、板材であるテレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)と共にアウターコラム54を締め付ける。インナーコラムブラケット4は、テレスコ摩擦板(第1テレスコ摩擦板21)に支持され、第2孔43hが開けられている。シェアピン8は、第1孔51hと第2孔43hとに跨る位置にあって、インナーコラム51及びインナーコラムブラケット4を離脱可能に連結する。ダンパー9は、インナーコラムブラケット4に取り付けられており、第1スリットの端部の内壁である第1端部内壁541eと対向する。インナーコラムブラケット4は、ダンパー9の後方側の表面である後方接触面931に対向する傾斜面441を備える。傾斜面441のインナーコラム51に近い端部441aは、傾斜面441のインナーコラム51から遠い端部441bよりも前方に位置する。
これにより、2次衝突時にステアリングホイール14に加わる荷重は、入力軸151を介してインナーコラム51に伝わることで、インナーコラム51を前方に移動させる。一方、第1テレスコ摩擦板21に支持されているインナーコラムブラケット4は移動しない。このため、シェアピン8にせん断力が加わるので、荷重がシェアピン8の許容せん断力を超える場合、シェアピン8は切断される。シェアピン8が切断されると、インナーコラム51とインナーコラムブラケット4との連結が解除される。これにより、インナーコラム51は、インナーコラム51とアウターコラム54との間に生じている摩擦力によって軸方向に支持される状態となる。このため、インナーコラム51が車体前方に移動できるようになる。また、シェアピン8が切断されても、アウターコラム54は、車体側部材13に固定されたアウターコラムブラケット52によって支持されたままである。また、インナーコラム51は、アウターコラム54によって支持されたままである。このため、シェアピン8が切断されても、ステアリングコラム5は落下しない。さらに、テレスコ位置の調整が行われる際、テレスコ位置が最前方になるとダンパー9が第1端部内壁541eに接する。これにより、インナーコラム51に加えられた荷重の一部が、ダンパー9の変形に消費される。このため、テレスコ位置の調整時にシェアピン8に作用するせん断力のピークが、シェアピン8の許容せん断力を超えにくくなる。したがって、ステアリング装置100は、誤動作によるステアリングコラム5の落下を抑制でき且つテレスコ調整時において離脱機構を保護できる。
さらに、第1端部内壁541eがダンパー9を介してインナーコラムブラケット4を押すと、インナーコラムブラケット4に生じるモーメントによってシェアピン8に引き抜き力が作用する可能性がある。これに対して、本実施形態おいては、テレスコ位置が最前方になるときダンパー9は傾斜面441に接触する。これにより、ダンパー9がインナーコラムブラケット4を押すとき、インナーコラムブラケット4にはインナーコラム51に向かう方向の力が作用する。このため、シェアピン8に作用する引き抜き力が抑制される。
また、ステアリング装置100において、後方接触面931のインナーコラム51に近い端部931aは、後方接触面931のインナーコラム51から遠い端部931bよりも前方に位置する。
これにより、後方接触面931が傾斜面441の傾斜方向に沿うように傾斜する。このため、ダンパー9の体積を大きくすることが容易になる。したがって、ダンパー9の変形能すなわち衝撃吸収性が向上する。
(変形例1)
図23は、変形例1に係るステアリング装置を、図3に示すD−D断面で切った断面図である。図24は、図23におけるF矢視図である。図23及び図24に示すように、変形例1においては、上述した実施形態の傾斜面441及び後方接触面931とは異なる傾斜面441A及び後方接触面931Aが設けられている。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図23及び図24に示すように、変形例1に係るインナーコラムブラケット4Aは、凸部442と、傾斜面441Aと、を備える。凸部442は、首部44Aからダンパー9の後方突起93Aに向かって突出している。凸部442の形状は、底面が上方及び下方に位置する略三角柱状である。傾斜面441Aは、凸部442の表面であって、図24に示すように略V字状を描いている。
変形例1に係るダンパー9Aは、凹部932と、後方接触面931Aと、を備える。凹部932は、凸部442に沿った形状を有する。凸部442は、凹部932に嵌まることができる。後方接触面931Aは、凹部932の表面であって、図24に示すように略V字状を描いている。
上述したように、変形例1において、傾斜面441Aは、ダンパー9に向かって突出するインナーコラムブラケット4Aの凸部442の表面である。後方接触面931Aは、凸部442に嵌まることができるダンパー9Aの凹部932の表面である。
これにより、後方接触面931Aが傾斜面441Aに接するとき、凸部442が凹部932に嵌まる。このため、インナーコラムブラケット4Aに対するダンパー9Aの位置が決まりやすい。したがって、ダンパー9Aからインナーコラムブラケット4Aに伝達される力のバラツキが抑制される。
(変形例2)
図25は、変形例2に係るステアリング装置を、図3に示すD−D断面で切った断面図である。図26は、図25におけるG矢視図である。図25及び図26に示すように、変形例2においては、上述した実施形態の傾斜面441及び後方接触面931とは異なる傾斜面441B及び後方接触面931Bが設けられている。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図25及び図26に示すように、変形例2に係るダンパー9Bは、凸部933と、後方接触面931Bと、を備える。凸部933は、後方突起93Bからインナーコラムブラケット4Bの首部44Bに向かって突出している。凸部933の形状は、底面が上方及び下方に位置する略三角柱状である。後方接触面931Bは、凸部933の表面であって、図26に示すように略V字状を描いている。
変形例2に係るインナーコラムブラケット4Bは、凹部443と、傾斜面441Bと、を備える。凹部443は、凸部933に沿った形状を有する。凸部933は、凹部443に嵌まることができる。傾斜面441Bは、凹部443の表面であって、図26に示すように略V字状を描いている。
上述したように、変形例2において、後方接触面931Bは、インナーコラムブラケット4Bに向かって突出するダンパー9の凸部933の表面である。傾斜面441Bは、凸部933に嵌まることができるインナーコラムブラケット4Bの凹部443の表面である。
これにより、後方接触面931Bが傾斜面441Bに接するとき、凹部443が凸部933に嵌まる。このため、インナーコラムブラケット4Bに対するダンパー9Bの位置が決まりやすい。したがって、ダンパー9Bからインナーコラムブラケット4Bに伝達される力のバラツキが抑制される。さらに、上述した変形例1とは異なり、インナーコラムブラケット4Bよりも軟らかい材料で形成されたダンパー9B側に凸部が配置されているので、ダンパー9Bに亀裂等の損傷が生じにくい。
(変形例3)
図27は、変形例3に係るステアリング装置を、図3に示すD−D断面で切った断面図である。図27に示すように、変形例3においては、上述した実施形態の第1端部内壁第1端部内壁541eとは異なる第1端部内壁541eCが設けられている。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
第1端部内壁541eCのインナーコラム51に近い端部541eaは、第1端部内壁541eCのインナーコラム51から遠い端部541ebよりも前方に位置する。すなわち、第1端部内壁541eCは、上方の端部541eaが下方の端部541ebよりも前方に位置するように傾斜している。
変形例3に係るダンパー9Cは、前方突起92Cと、前方接触面922と、を備える。前方突起92Cは、基部91から前方側へ突出している突起である。前方突起92は、例えば第1スリット541の内壁に対向する底面を有する略三角柱状の部材である。前方接触面922は、前方突起92Cの前方側の表面である。前方接触面922のインナーコラム51に近い端部922aは、前方接触面922のインナーコラム51から遠い端部922bよりも前方に位置する。すなわち、前方接触面922は、上方の端部922aが下方の端部922bよりも前方に位置するように傾斜している。
上述したように、変形例3において、ダンパー9Cは、第1端部内壁541eCと対向する前方接触面922を備える。前方接触面922のインナーコラム51に近い端部922aは、前方接触面922のインナーコラム51から遠い端部922bよりも前方に位置する。第1端部内壁541eCのインナーコラム51に近い端部541eaは、第1端部内壁541eCのインナーコラム51から遠い端部541eaよりも前方に位置する。
これにより、前方接触面922が第1端部内壁541eCの傾斜方向に沿うように傾斜する。このため、ダンパー9Cの体積を大きくすることが容易になる。したがって、ダンパー9Cの変形能すなわち衝撃吸収性が向上する。さらに、ダンパー9Cが変形するとき、変形の大きさが均一になりやすい。