JP6213617B2 - 二軸延伸ポリオレフィンフィルム、金属蒸着ポリオレフィンフィルムおよびフィルムコンデンサの製造方法 - Google Patents

二軸延伸ポリオレフィンフィルム、金属蒸着ポリオレフィンフィルムおよびフィルムコンデンサの製造方法 Download PDF

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本発明は、コンデンサの誘電体フィルムなどとして好適に使用される二軸延伸ポリオレフィンフィルム、該フィルムの製造方法、金属蒸着ポリオレフィンフィルムおよびフィルムコンデンサに関する。
二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、優れた耐電圧性能、低い誘電損失特性などの電気特性を有し、さらに高い耐湿性を備えていることから、例えばコンデンサ用の誘電体フィルムとして広く利用されている。具体的には、高電圧コンデンサ;各種スイッチング電源、コンバータ、インバータ等のフィルタ用および平滑用として用いられるコンデンサ類;などに好ましく用いられている。
特にポリオレフィンフィルムを用いたコンデンサは、近年需要が高まっている電気自動車やハイブリッド自動車等の駆動モータを制御するインバータ電源回路において、平滑用コンデンサとして広く用いられ始めている。
このような自動車等に用いられるインバータ電源機器用コンデンサは、小型・軽量・高容量でありながら、およそ−40℃〜100℃という広い温度範囲において、長期にわたり高電圧に耐え、かつ、静電容量を維持し、安定した動作を継続しなければならない。
そのため、コンデンサ用の誘電体フィルムとして用いられるフィルムには、コンデンサの小型化、高容量化の要求に応えるために、1〜6μm厚と極薄(高延伸性能)化をなしつつ、かつ、より高温下でより高い直流電圧を負荷しても絶縁破壊されないという、高い高温絶縁破壊強度が求められる。
そして、このようなフィルムを用いたコンデンサ(以下、フィルムコンデンサという場合がある。)には、高温条件下において高電圧を付加し続けても、静電容量の時間変化が少ないという優れた高温耐電圧特性や、印加する電圧を上げていってフィルムに絶縁破壊が生じた際にも、破壊部分をヒューズ部によって切り離すことにより、コンデンサの蓄電性能を急激には低下させないという、優れた保安性が必要とされる。
そこで、フィルムの表面性を適正に制御することにより、高温耐電圧特性と保安性とを兼ね備えたフィルムコンデンサを得ようとする技術が検討されている。
フィルムの表面性を適正に制御する技術としては、β晶のα晶への結晶変態を利用してクレータ状の微小楕円構造物を形成する技術(例えば特許文献1参照。)、高溶融張力ポリプロピレンを用いる技術(例えば特許文献2、3参照。)等が提案されている。
特開平11−273990号公報 特開2001−72778号公報 特開2001−129944号公報
しかしながら、これらの従来の方法では、進展著しいコンデンサ市場の要求に充分に応える程の高温耐電圧特性や保安性は必ずしも得られなかった。
本発明の目的は、高電圧印加時の高温耐電圧特性と保安性とを兼ね備えた小型で大容量の電子・電気機器用コンデンサを製造できる二軸延伸ポリオレフィンフィルムと、該フィルムの製造方法と、金属蒸着ポリオレフィンフィルムおよびフィルムコンデンサの提供にある。
本発明者は鋭意検討した結果、光干渉式非接触表面形状測定器を用いて、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの粗面化表面の「曲線要素の平均長さ(RSm)」をフィルムの縦方向と幅方向にそれぞれ測定した際において、縦方向における測定値と幅方向における測定値との差が特定の範囲にあると、該二軸延伸ポリオレフィンフィルムは高温絶縁破壊強度に優れ、かつ、フィルムコンデンサとした際の高電圧印加時の高温耐電圧特性と保安性とが共に優れることに想到した。また、このような表面の粗さは、特定のポリプロピレン樹脂組成物を用いることで形成できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下の構成を有する。
[1]アイソタクチックポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物から形成された表層を有し、該表層の表面は、微細凹凸が形成された粗面化表面である二軸延伸ポリオレフィンフィルムであって、
前記ポリプロピレン樹脂組成物は、下記式(1)で表される単位を有するポリメチルペンテンを含有し、
前記粗面化表面は、下記式(2)および(3)の関係を満足することを特徴とする二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
−15μm≦RSm−RSm≦3μm・・・(2)
8μm≦RSm≦25μm・・・(3)
(式中、RSmおよびRSmは、前記粗面化表面の表面粗さを光干渉式非接触表面形状測定器で測定した際の曲線要素の平均長さであり、RSmはポリオレフィンフィルムの縦方向に沿う測定値、RSmはポリオレフィンフィルムの幅方向に沿う測定値である。)
[2]前記ポリプロピレン樹脂組成物は、前記ポリメチルペンテンを5〜30質量%含有することを特徴とする[1]に記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
[3]前記粗面化表面は、下記式(4)の関係を満足することを特徴とする[1]または[2]に記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
18μm≦RSm≦28μm・・・(4)
[4]前記粗面化表面は、前記光干渉式非接触表面形状測定器で測定した際の高さデータの絶対値の算術平均値Saが、下記式(5)の関係を満足することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
0.01μm≦Sa≦0.03μm・・・(5)
[5]前記アイソタクチックポリプロピレン樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定した重量平均分子量(Mw)が25万〜45万で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で定義される分子量分布(Mw/Mn)が5〜12であるとともに、分子量分布曲線において、対数分子量が4.5のときの微分分布値から対数分子量が6のときの微分分布値を引いた差(Δdw)が8〜18%であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
[6]前記ポリメチルペンテンは、試験荷重5kg、温度260℃の条件下で測定されたメルトマスフローレートが、20g/10分以上であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
[7]前記ポリプロピレン樹脂組成物は、前記ポリメチルペンテンを7〜20質量%含有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
[8]前記粗面化表面は、コロナ放電処理されていることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
[9][1]〜[8]のいずれかに記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法であって、
ポリプロピレン樹脂組成物からキャストシートを製造するキャストシート製造工程と、前記キャストシートを二軸延伸する延伸工程とを有し、
前記キャストシート製造工程でのドラフト比が3〜7であることを特徴とする二軸延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法。
[10][8]に記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの前記コロナ放電処理された前記粗面化表面上に、金属蒸着膜が形成されたことを特徴とする金属蒸着ポリオレフィンフィルム。
[11][10]に記載の金属蒸着ポリオレフィンフィルムを用いて構成されたことを特徴とするフィルムコンデンサ。
本発明によれば、高電圧印加時の高温耐電圧特性と保安性とを兼ね備えた小型で大容量の電子・電気機器用コンデンサを製造できる二軸延伸ポリオレフィンフィルムと、該フィルムの製造方法と、金属蒸着ポリオレフィンフィルムおよびフィルムコンデンサを提供できる。
実施例1で得られた二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面のイメージ図である。 図1に認められる微小突起構造物の頂部(稜線)と、β晶のα晶への結晶変態により形成されたクレータ状の微小楕円構造物の頂部(稜線)とをトレースしたトレース図である。 図1中の線Aに沿う断面を示す断面解析図である。 図1中の線Bに沿う断面を示す断面解析図である。 比較例1で得られた二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面のイメージ図である。 図5に認められるβ晶のα晶への結晶変態により形成されたクレータ状の微小楕円構造物の頂部(稜線)をトレースしたトレース図である。 図5中の線A’に沿う断面を示す断面解析図である。 図5中の線B’に沿う断面を示す断面解析図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
[二軸延伸ポリオレフィンフィルム]
本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、アイソタクチックポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物から形成された表層を有し、該表層の表面は、微細凹凸が形成された粗面化表面とされている。
そして、表層を構成するポリプロピレン樹脂組成物は、下記式(1)で表される、4−メチルペンテン−1に基づく単位を少なくとも有するポリメチルペンテンを含有し、また、表層の粗面化表面は、下記式(2)および(3)の関係を満足する特定の粗面化状態を有している。表層を構成するポリプロピレン樹脂組成物がポリメチルペンテンを含有することにより、詳しくは後述するが、その表面を上述の特定の粗面化状態とすることができると考えられる。
なお、本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、1層以上からなり、少なくとも一方の表層が、アイソタクチックポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物から形成される。両方の表層がアイソタクチックポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物から形成されている場合、少なくとも一方の表層の表面が、上述の特定の粗面化状態とされる。一方の表層がアイソタクチックポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物から形成されている場合、該一方の表層の表面が、上述の特定の粗面化状態とされる。また、二軸延伸ポリオレフィンフィルムが1層構成である場合、表層とは、該二軸延伸ポリオレフィンフィルムそのものを指す。
以降、「特定の粗面化状態」とは、式(2)および(3)を満足するフィルムの表面状態のことを意味する。
−15μm≦RSm−RSm≦3μm・・・(2)
8μm≦RSm≦25μm・・・(3)
式中、RSmおよびRSmは、粗面化表面の表面粗さを光干渉式非接触表面形状測定器で測定した際の曲線要素の平均長さであり、RSmは二軸延伸ポリオレフィンフィルムの粗面化表面の縦方向に沿う測定値、RSmは二軸延伸ポリオレフィンフィルムの粗面化表面の幅方向に沿う測定値である。
曲線要素の長さとは、粗さ曲線において隣接する1つの山と1つの谷を含む要素の長さであり、RSmおよびRSmは平均値である。曲線要素の平均長さRSmおよびRSmは、JIS−B0601:2001で定義されている。
なお、フィルムの縦方向とは、二軸延伸ポリオレフィンフィルム製造時の流れ方向(MD方向)に相当し、幅方向とは、縦方向に直交する方向(TD方向)に相当する。
本発明においては、粗面化表面における表面粗さの測定を光干渉式非接触表面形状測定器で行っている。
これは以下の理由による。
すなわち、本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの粗面化表面に形成された微小突起構造物は、高さ10〜20nm程度の非常に小さなものが多い。そのため、高さ方向の解像度が低い測定方法では測定できない。また、接触式の測定方法では、測定部分の先端(例えば触針の先端。)が微小突起構造物間に入らない場合があり、その場合には正確な測定が困難である。
以上の理由により、本発明においては、光干渉式非接触表面形状測定器である(株)菱化システム社製の非接触表面・層断面形状測定システムVertScan(登録商標)2.0(型式:R5500GML)を用いて、粗面化表面における表面状態、表面粗さを測定している。
該光干渉式非接触表面形状測定器で測定した粗面化表面のフィルムの縦方向に沿う曲線要素の平均長さ(RSm)と、フィルムの幅方向に沿う曲線要素の平均長さ(RSm)との差が上記式(2)で表される特定の範囲内であり、かつ、RSmが上記式(3)で表される特定の範囲内であると、二軸延伸ポリオレフィンフィルムを用いて構成されたフィルムコンデンサの耐電圧性、すなわち、高電圧印加時の高温耐電圧特性および保安性などが優れる。
また、フィルムの縦方向に沿う曲線要素の平均長さ(RSm)は、下記式(4)を満足することが、耐電圧性の点で好ましい。
18μm≦RSm≦28μm・・・(4)
さらには、フィルムの縦方向に沿う曲線要素の平均長さ(RSm)、フィルムの幅方向に沿う曲線要素の平均長さ(RSm)は、下記式(6)〜(8)を満足することが、フィルムコンデンサの耐電圧性がより優れる点で好ましい。
−10μm≦RSm−RSm≦0μm・・・(6)
11μm≦RSm≦23μm・・・(7)
20μm≦RSm≦26μm・・・(8)
二軸延伸ポリオレフィンフィルムの粗面化表面が、上記式(2)を満足するということは、該粗面化表面に形成された微小突起構造物がフィルムの縦方向に配向する傾向にあり、そのため、フィルムの縦方向に沿って測定されたRSmは、フィルムの幅方向に沿って測定されたRSmと概ね同程度か、RSmより長い値となることを意味する。本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムにおいては、後述するように、ポリメチルペンテンの配合により、このような特定の粗面化状態が得られるものと考えられる。なお、「フィルムの縦方向に配向する」とは、後の実施例において、図面を参照して説明するように、各々の微小突起構造物の頂部(稜線)がフィルムの概略縦方向に沿う状態のことをいう。
一方、本発明者の検討によれば、ポリメチルペンテンが配合されない樹脂を用い、β晶のα晶への結晶変態を利用して形成された従来のクレータ状の微小楕円構造物は、楕円の長軸が幅方向に沿う方向であって該構造物の配向の向きが主にフィルムの幅方向であることに基づき、フィルムの幅方向に沿って測定されたRSmは、フィルムの縦方向に沿って測定されたRSmよりも少なくとも4μm以上は大きい値となる。
特定の粗面化状態の粗面化表面を有する本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムが、フィルムコンデンサとした際の耐電圧性に優れる詳細な理由は明らかではないが、上述のとおり、β晶のα晶への結晶変態を利用して形成された微小楕円構造物を有する従来のポリプロピレンフィルムとは、微小突起の配向状態が異なり、この点がフィルムコンデンサの耐電圧性に影響を与えているものと考えられる。
なお、本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムを用いてフィルムコンデンサを製造する場合には、フィルムの長尺方向である縦方向に沿って巻き付け加工を行う。
フィルムコンデンサの耐電圧性を向上させる点からは、光干渉式非接触表面形状測定器で測定した際の粗面化表面の粗さの高さデータの絶対値の算術平均値Saは、下記式(5)の関係を満足することが好ましい。
0.01μm≦Sa≦0.03μm・・・(5)
なお、高さデータの絶対値の算術平均値SaはISO−25178規格に基づく。
光干渉式非接触表面形状測定器である(株)菱化システム社製の非接触表面・層断面形状測定システムVertScan(登録商標)2.0(型式:R5500GML)を用いたRSm、RSm、Saの測定は以下のように行う。
測定モードは、高さ方向の解像度が0.1nmであるWAVEモードにて測定する。
そして、光干渉式非接触表面形状測定器にて、530whiteフィルタ及び×10対物レンズを用いて、一視野あたり470.92μm×353.16μmを640×480pixelとなる解像度にて測定し、表面形状データを得る。この操作を粗面化表面の任意の3箇所について行う。
得られたデータについて、VertScan(登録商標)2.0に付属の解析ソフトウェア「VS−Viewer」を用いて、下記の画像処理および表面形状の測定を行う。
まず、ノイズ除去処理として、メディアンフィルタにて、各画素の高さを、その画素を中央とする5×5画素の領域の高さソートした中央値に置き換える処理を行う。その後、粗さ成分の抽出処理として、ガウシアンフィルタ処理にてカットオフ値30μm以上の高周波成分を抽出し、うねり成分を除去する。
上述のようにして得られた任意の3箇所の表面形状データの各画像それぞれについて、高さデータの絶対値の算術平均の値Saを測定し、3つの値の平均値として高さデータの絶対値の算術平均の値Saを求める。
また、3箇所の表面形状データの各画像それぞれにつき、縦方向、幅方向の各方向について5箇所の断面解析を行い、表面粗さの曲線要素の平均長さRSm(縦方向)およびRSm(幅方向)について、それぞれ15のデータを得る。そして、15のデータの平均値をRSmおよびRSmの測定値として採用する。
特定の粗面化状態にある粗面化表面について、一般的に広く使用されている触針式表面粗さ計を用いて、JIS−B0601:2001等に定められている方法によって測定した場合、その中心線平均粗さ(Ra)は0.05〜0.2μm程度、最大高さ(Rz、旧JIS定義でのRmax)は0.5〜1.5μm程度となる。
これらの値が上述の範囲であれば、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの巻き取り、巻き戻しなどの加工時やコンデンサを製造する際の素子巻き加工時において、フィルム間に適度な空隙が生じ、フィルムのすべり、シワ、横ズレ等が起こりにくく加工性に問題は無い。一方、上述の範囲を超えると、フィルムコンデンサにおいて、フィルム間の層間空隙が大きくなることによる重量厚み低下が起こり、耐電圧性の低下を招く場合がある。上述の範囲未満であると、素子巻き加工時にシワが発生しやすくなり、生産性の低下、コンデンサの耐電圧性の低下を招く場合がある。RaやRzは、二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得る際の縦延伸時の延伸温度を微調整することで、適切な範囲にコントロールできる。
本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面における特定の粗面化状態は、該表面を構成する表層の材料として、アイソタクチックポリプロピレン樹脂を主成分とし、上記式(1)で表される4−メチルペンテン−1に基づく単位を有するポリメチルペンテンを含有するポリプロピレン樹脂組成物を採用するとともに、好ましくは、後述するように、二軸延伸ポリオレフィンフィルム製造時のキャストシート製造工程におけるドラフト比を適切な範囲とすることにより形成できる。
アイソタクチックポリプロピレン樹脂にポリメチルペンテンを配合したポリプロピレン樹脂組成物を用いることで、特定の粗面化状態を形成できる理由は以下のように考えられる。
ポリメチルペンテンの融点は220〜240℃であり、アイソタクチックポリプロピレン樹脂の融点よりも凡そ60℃以上も高い。そのため、アイソタクチックポリプロピレン樹脂とポリメチルペンテンとを溶融混合などで混合した場合、これらは完全には混合されず、ポリメチルペンテンがアイソタクチックポリプロピレン樹脂中に微小粒子の形態で均一分散するものと考えられる。このような状態のポリプロピレン樹脂組成物により形成された層を後述の延伸工程で延伸すると、ポリメチルペンテンはアイソタクチックポリプロピレン樹脂よりも延伸性が僅かに低いため、延伸後のフィルム内において薄膜化の程度に差異が生じ、ポリメチルペンテンが存在する部分はわずかに盛り上がった微小突起構造物を形成する。これにより上述の特定の粗面化状態が形成されるものと考えられる。
なお、一般に、アイソタクチックポリプロピレン樹脂を主成分とした樹脂により延伸フィルムを製造すると、特許文献1を例示して上述したとおり、製造工程中でβ晶が生成し、さらに該β晶がα晶に結晶変態して、延伸フィルムの表面にはクレータ状の凹凸である微小楕円構造物が形成されることが多い。本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、粗面化表面が上記式(2)の条件を満たしている限り、このようなクレータ状の微小楕円構造物が形成されていても、形成されていなくてもよい。β晶のα晶への結晶変態による微小楕円構造物は、ポリプロピレン樹脂組成物中のポリメチルペンテンの含有量が大きくなるにしたがって、形成されにくくなる傾向にある。
また、ポリメチルペンテンは融点が高いため、ポリメチルペンテンの配合により、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの耐熱性が向上する。二軸延伸ポリオレフィンフィルムが複数層を有する場合、耐熱性の点からは、複数の層にポリメチルペンテンを配合することが好ましいが、その際には、コスト抑制の点から、ポリメチルペンテンの原料価格を勘案することが必要である。
二軸延伸ポリオレフィンフィルムの厚さは、フィルムコンデンサの小型化の点から、1〜6μmが好ましく、1.5〜4μmがより好ましく、1.5〜3.5μmがさらに好ましく、1.8〜3μmが特に好ましい。
また、ポリメチルペンテンを含むポリプロピレン樹脂組成物で形成され、特定の粗面化状態にある粗面化表面を有する表層の厚さは、1.0μm以上が好ましく、より好ましくは2.0μm以上である。該表層の厚みが1.0μm未満であると、微小突起構造物が充分に形成されにくい傾向がある。そのため、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの厚みが薄い場合には、該フィルムの層構成を1層構成として、充分な厚さを確保することが好ましい。表層の厚みの好ましい上限は6μmである。
(アイソタクチックポリプロピレン樹脂)
アイソタクチックポリプロピレン樹脂は、結晶性を有する樹脂であり、電気特性の点から、コンデンサの誘電体フィルムへの使用に適している。アイソタクチックポリプロピレン樹脂を製造する際の重合方法としては、公知の重合方法を採用できる。該重合方法としては、例えば、気相重合法、塊状重合法、スラリー重合法が挙げられる。重合触媒としては、特に制限はなく、チタン、マグネシウム、ハロゲンを含む固体状チタン触媒等を使用できる。アイソタクチックポリプロピレン樹脂としては、市販のポリプロピレン樹脂を使用してもよい。
ポリプロピレン樹脂組成物中のアイソタクチックポリプロピレン樹脂含有量は、70〜95質量%の範囲が好ましく、80〜93質量%の範囲がより好ましい。
アイソタクチックポリプロピレン樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定した重量平均分子量(Mw)が25万〜45万であることが好ましく、25万〜40万がより好ましい。重量平均分子量が45万以下であると樹脂流動性が優れ、非常に薄い二軸延伸ポリオレフィンフィルムを製造する際の延伸性に優れる。重量平均分子量が25万以上であると、キャストシート、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの厚みムラ、力学特性、熱−機械的特性等の点で優れる。
アイソタクチックポリプロピレン樹脂は、GPC法により得られる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が、5〜12であることが好ましく、6〜12がより好ましく、7〜11がさらに好ましい。分子量分布(Mw/Mn)の値が高く、分子量の分布幅が上記範囲にあるアイソタクチックポリプロピレン樹脂は、成形性や延伸性に優れるばかりでなく、後述のように高分子量成分、低分子量成分の分布の構成を調整することで、二軸延伸ポリオレフィンフィルムを用いて構成されたコンデンサの耐電圧性をより向上させることができる。
GPC法に使用されるGPC装置には特に制限はなく、ポリオレフィン類の分子量分析が可能な一般に市販されている高温型GPC装置、例えば、東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機、HLC−8121GPC−HT等が利用できる。
具体的には、GPCカラムとして東ソー株式会社製、TSKgel GMHHR−H(20)HTを3本連結させたものが用いられ、カラム温度は140℃に設定され、溶離液にはトリクロロベンゼンが用いられ、流速1.0ml/minにて測定される。検量線の作製には東ソー株式会社製の標準ポリスチレンが用いられ、測定結果はポリプロピレン値に換算される。
アイソタクチックポリプロピレン樹脂は、分子量の微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6のときの微分分布値を引いた差(Δdw)が8〜18%であることが好ましく、10〜17%であることがより好ましく、12〜16%であることがさらに好ましい。
対数分子量とは、重量平均分子量(Mw)の対数(Log(Mw))であり、「対数分子量が4.5のときの微分分布値から対数分子量が6のときの微分分布値を引いた差(Δdw)とは、重量平均分子量(Mw)が104.5である成分(低分子量成分)の量が、重量平均分子量(Mw)が10である成分(高分子量成分)の量よりもどれだけ多いかの指標となる値である。差(Δdw)の値が「正」であることは、低分子量成分の量が高分子量成分の量よりも多いことを意味する。
なお、低分子量成分の代表値としてLog(Mw)=4.5における微分分布値を、高分子量成分の代表値として、Log(Mw)=6のときの微分分布値を採用している。
上述のとおり、アイソタクチックポリプロピレン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は5〜12が好ましいが、該分子量分布は、分子量の分布幅の広さを表しているにすぎず、高分子量成分、低分子量成分の分布構成までを特定するものではない。そこで、アイソタクチックポリプロピレン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)を5〜12とするとともに、分子量の分布を調整し、差(Δdw)を上記範囲とすると、二軸延伸ポリオレフィンフィルムを製造する際の延伸性とフィルムコンデンサとしたときの耐電圧性とを両立できる。
微分分布値は、GPC法においては、一般に次のように得られる。
GPCの示差屈折(RI)検出計において検出される強度分布の時間曲線(一般には、溶出曲線と呼ぶ。)を、分子量既知の物質から得た検量線を用い、対数分子量(Log(Mw))に対する分布曲線に変換する。ここでRI検出強度は、成分濃度と比例関係にあるので、次に、分布曲線の全面積を100%とした場合の対数分子量Log(Mw)に対する積分分布曲線を得る。微分分布曲線は、この積分分布曲線をLog(Mw)で微分することによって得る。このように、ここで言う微分分布とは、濃度分率の分子量に対する微分分布を意味する。この曲線から、特定のLog(Mw)のときの微分分布値を読み取ることができる。
差(Δdw)を上記範囲内に調整する方法としては、重合条件によって分子量分布を調整する方法、過酸化分解によって高分子量成分を選択的に分解処理する方法、異なる分子量の樹脂をブレンド(樹脂混合)する方法などがある。
重合条件によって分子量分布や分子量の構成を制御する場合には、重合温度、重合時間、重合触媒の種類および量を適宜調整すればよい。
過酸化分解によって、アイソタクチックポリプロピレン樹脂の分子量分布の構成を調整する場合には、過酸化水素や有機(過)酸化物などの分解剤による過酸化処理による方法が好ましい。
ポリプロピレンのような崩壊型ポリマーに(過)酸化物を添加すると、ポリマーからの水素引抜き反応が起こり、生じたポリマーラジカルは一部再結合し架橋反応も起こすが、殆どのラジカルは二次分解(β開裂)を起こし、より分子量の小さな二つのポリマーに分かれることが知られている。したがって、高分子量成分から高い確率で分解が進行し、それにより低分子量成分が増大し、分子量分布の構成を調整できる。
低分子量成分を適度に含有している樹脂を過酸化分解により得る方法としては、次のような方法が例示できる。
重合して得たポリプロピレン樹脂の重合粉あるいはペレットに対して、有機(過)酸化物(例えば1,3−ビス−(ターシャリー−ブチルパーオキサイドイソプロピル)−ベンゼンなど。)を0.001〜0.5質量%程度の範囲内で、目標とする高分子量成分及び低分子量成分の組成(構成)を考慮しながら添加し、溶融混練機にて例えば180〜300℃程度の温度で溶融混練する。
ブレンドにより低分子量成分の含有量を調整する場合には、異なる分子量の少なくとも2種類以上のアイソタクチックポリプロピレン樹脂を、ドライブレンドあるいは溶融混錬する。
ドライブレンドに使用するミキサーや、溶融混錬に使用する混練機には特に制限はなく、混練機としては、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、多軸スクリュータイプのものを適宜使用できる。また、2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のどちらの混練タイプでもよい。
アイソタクチックポリプロピレン樹脂は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって求められる立体規則性度であるメソペンタッド分率[mmmm]が、94〜98%未満であることが好ましく、95〜97%であることがより好ましい。
メソペンタッド分率[mmmm]が94%以上であると、高い立体規則性成分により樹脂の結晶性が向上し、高い耐電圧性が奏されやすくなる。一方、メソペンタッド分率[mmmm]を98%未満とすることで、後述のキャストシート製造工程におけるキャストシートの固化(結晶化)の速さを適度な速さとし、キャストシート成形用の金属ドラム(冷却成型ロール)からの剥離性を向上させ、延伸性を良化させやすくなる。
メソペンタッド分率[mmmm]は、重合条件や触媒の種類、触媒量などを適宜調整することでコントロールできる。
メソペンタッド分率[mmmm]の測定に使用される高温NMR装置には、特に制限はなく、ポリオレフィン類の立体規則性の測定が可能な一般に市販されている高温核磁気共鳴(NMR)装置、例えば、日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)、JNM−ECP500が利用可能である。
観測核は13C(125MHz)であり、測定温度は135℃、溶媒にはオルト−ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1))が用いられる。高温NMRによる方法は、公知の方法、例えば「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版 高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、610頁」に記載の方法などにより行える。
測定モードは、シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は9.1μ秒(45°パルス)、パルス間隔5.5秒、積算回数4500回、シフト基準はCH3(mmmm)=21.7ppmとされる。
立体規則性度を表すペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrmなど)に由来する各シグナルの強度積分値より百分率で算出される。mmmmやmrrmなどに由来する各シグナルの帰属に関しては、例えば「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」などのスペクトルの記載が参照される。
(ポリメチルペンテン)
ポリメチルペンテンとしては、上記式(1)で表される4−メチルペンテン−1に基づく単位を少なくとも有するポリメチルペンテンを使用できる。ポリメチルペンテンとしては、上記式(1)で表される4−メチルペンテン−1に基づく単位のみを有するホモポリマーでも、その他の単位としてプロピレンに基づく単位等を有するコポリマーでもよい。
ポリメチルペンテンとしては、三井化学(株)より、「TPX(登録商標)シリーズ」として販売されているものを使用できる。具体的な商品名としては、「TPX RT31」、「TPX MX004」、「TPX MX002」、「TPX MX002O」等が挙げられる。ポリメチルペンテンは1種類単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
また、二軸延伸ポリオレフィンフィルムが2層以上からなり、2層以上の層において、ポリメチルペンテンが配合される場合、各層に配合されるポリメチルペンテンの種類や含有量は同じでも異なっていてもよい。
ポリメチルペンテンは、試験荷重5kg、温度260℃の条件下で測定されたメルトマスフローレート(MFR)が、20g/10分以上であることが好ましく、20g/10分以上30g/10分以下であることがより好ましい。20g/10分以上であると、アイソタクチックポリプロピレン樹脂と混練する際の溶融混練温度、二軸延伸ポリオレフィンフィルム製造時においてポリプロピレン樹脂組成物を押出成形する際の押出温度等が仮に低めでも、特定の粗面化状態を形成し得る適度な微小突起構造物が得られやすくなる。20g/10分未満であると、上述の溶融混錬温度や押出温度を高く設定しなくては、微小突起構造物が大きくなる傾向にある。その場合、高さデータの絶対値の算術平均の値Saが過大となりやすい。また、溶融混錬温度や押出温度を高くすると、アイソタクチックポリプロピレン樹脂の樹脂劣化が進みやすくなるため、ポリメチルペンテンのメルトマスフローレートは、20g/10分以上であることが好ましい。一方、30g/10分を超えると表面の微小突起構造物が小さくなり易く、また小さくなり過ぎて微小突起構造物とならない場合もある。また、高さデータの絶対値の算術平均の値Saが過小となる場合がある。また、幅方向の曲線要素の平均長さRSmが充分には小さくなりにくく、上記式(2)の条件を満足しなくなる場合がある。
ポリプロピレン樹脂組成物中のポリメチルペンテンの含有量は、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの粗面化表面を上述の特定の粗面化状態とできる限り制限はないが、ポリプロピレン樹脂組成物中5〜30質量%の範囲が好ましく、7〜20質量%の範囲がより好ましい。上記範囲未満であると、表面に充分な微小突起構造物を形成できず、その結果、フィルム幅方向の曲線要素の平均長さRSmが充分には小さくなりにくくなる。その場合、RSmおよびRSmが上記式(2)の範囲を満たさず、フィルムコンデンサとした際の耐電圧性が向上しにくくなる傾向がある。一方、上記範囲を超えると延伸性が低下し、延伸工程中の破断が多くなるなど生産性が低下する場合がある。また、フィルム幅方向の曲線要素の平均長さRSmが過小となり、RSmおよびRSmが上記式(2)の範囲を満たさず、フィルムコンデンサとした際の耐電圧性が向上しにくくなる傾向がある。
(その他の成分)
ポリオレフィン樹脂組成物には、酸化防止剤を配合してもよい。酸化防止剤には、二軸延伸ポリオレフィンフィルム製造時の押出成形機内での熱・酸化劣化を抑制する目的で配合される1次剤としての役割と、コンデンサとして長期使用した際の経時的な劣化を抑制する目的で配合される2次剤としての役割とが少なくともある。
これら2つの役割に応じて、各々異なる種類の酸化防止剤を用いても構わないし、1種類の酸化防止剤に、2つの役割を持たせてもよい。
異なる種類の酸化防止剤を用いる場合、押出成形機内での劣化抑制を目的とする1次剤としては、例えば2,6−ジ−ターシャリー−ブチル−パラ−クレゾール(一般名称:BHT)をポリプロピレン樹脂組成物中に1000〜4000ppm程度添加することが好ましい。この目的で配合された酸化防止剤は、押出成形機内での成形工程でほとんどが消費され、二軸延伸ポリオレフィンフィルム中にはほとんど残存しない。そのため、一般的には残存量は100ppmより少なくなり、酸化防止剤によるフィルム特性への影響がほとんどない点で好ましい。
2次剤としては、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を1種類以上用いることが好ましい。これにより、二軸延伸ポリオレフィンフィルムに対して、コンデンサとして長期使用した際の経時的な劣化を抑制する効果を付与できる。
カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−ターシャリー−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(商品名:イルガノックス245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス259)、ペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:イルガノックス1076)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(商品名:イルガノックス1098)などが挙げられるが、高分子量であり、ポリプロピレンとの相溶性に富み、低揮発性かつ耐熱性に優れたペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が最も好ましい。
カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、質量基準による二軸延伸ポリオレフィンフィルム中の存在量(残存量)として、4000〜6000ppmが好ましく、4500〜6000ppmがより好ましい。4000ppm未満の場合、長期寿命試験中における酸化劣化抑制効果が不充分であり、高温・高電圧下における目的の効果が充分には得られにくい傾向にある。一方、6000ppmを超えると、酸化防止剤自身が電荷のキャリア(ある種の不純物)となる場合があり、結果として高電圧下において電流を発生し、熱暴走または破裂などと呼ばれる破壊に至る現象が発生し、逆に長期耐性を失うおそれがある。
カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤は、二軸延伸ポリオレフィンフィルム製造時の押出成形機内において、少なくともその一部は消費される。そのため、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の二軸延伸ポリオレフィンフィルム中の存在量を上記範囲とするためには、押出成形前の添加量を目的とする存在量よりも1000〜2000ppm程度多めとすることが好適である。
ポリプロピレン樹脂組成物には、必要に応じて、各種添加剤(塩素吸収剤や紫外線吸収剤等の安定剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤など。)を本発明の効果を損なわない範囲内で添加できる。
二軸延伸ポリオレフィンフィルム中に含まれる総灰分は、電気特性を良化するために可能な限り少ないことが好ましく、50ppm以下が好ましく、40ppm以下がより好ましい。
[二軸延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法]
本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、アイソタクチックポリプロピレン樹脂と、ポリメチルペンテンと、必要に応じて添加される酸化防止剤や各種添加剤とを混合し、ポリプロピレン樹脂組成物を調製する調製工程と、調製工程により得られたポリプロピレン樹脂組成物からキャストシートを製造するキャストシート製造工程と、得られたキャストシートを二軸延伸する延伸工程とを有する方法により製造できる。
(調製工程)
調製工程は、ドライブレンドまたは溶融混錬により行えるが、適度な粗さの微小突起構造物を得られやすいことから、ドライブレンドが好ましい。
ドライブレンドの際の混合装置としては、タンブラーやウイングミキサー等のバッチ式や、連続式の計量混合機が、いずれも好ましく使用できる。
溶融混錬の場合は、樹脂温度を240〜280℃とすると、適度な粗さの微小突起構造物が得られる点で好ましい。280℃を超えると、微小突起構造物が小さくなり、高さデータの絶対値の算術平均の値Saが過小となったり、RSmやRSmの値が小さくなったりする傾向が有る。また、アイソタクチックプロピレン樹脂が熱劣化して、フィルムコンデンサの耐電圧性が低下する可能性がある。溶融混練時の樹脂温度が240℃より低いとRSmやRSmの値が大きくなったり、融点の高いポリメチルペンテンの未溶解物が発生したりすることがある。
混練機には特に制限はなく、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、多軸スクリュータイプのものを適宜使用できる。2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のどちらの混練タイプでも、樹脂劣化が大きくならないよう混錬条件を調整することで使用可能ではあるが、1軸スクリュータイプ、同方向回転の2軸スクリュータイプを用いると、樹脂が劣化し難く好ましい。
(キャストシート製造工程)
延伸前のキャストシート(原反シート)を成形するキャストシート製造工程は、上述の調製工程において調製された粉状またはペレット状等のポリプロピレン樹脂組成物を押出成形機に供給し、加熱溶融し、ろ過フィルタを通した後、Tダイから溶融押し出しする。
押出成形時の樹脂温度を240〜280℃とすると、適度な粗さの微小突起構造物が得られる点で好ましい。280℃を超えると、微小突起構造物が小さくなり、高さデータの絶対値の算術平均の値Saが小さくなったり、RSmやRSmの値が小さくなったりする傾向が有る。また、アイソタクチックプロピレン樹脂が熱劣化して、フィルムコンデンサの耐電圧性が低下する可能性がある。溶融混練時の樹脂温度が240℃より低いと、RSmやRSmの値が大きくなったり、融点の高いポリメチルペンテンの未溶解物が発生したりすることがある。
押出成形機のシリンダー直径とシリンダー長さの比であるL/Dは、30〜50が好ましい。30未満では微小突起構造物が大きめになり、高さデータの絶対値の算術平均の値Saが過大となりやすい。また、RSmやRSmの値が大きくなったり、融点の高いポリメチルペンテンの未溶解物が発生したりすることがある。L/Dが50を超えると、微小突起構造物が小さくなってSaが過小となったり、RSmやRSmの値が小さくなったりする傾向が有る。また、アイソタクチックポリプロピレン樹脂が熱劣化して、上述の耐電圧性が低下したりする場合がある。
ついで、Tダイから溶融押し出しされた樹脂層は、10〜140℃に保持された1つ以上の冷却成型ロールで冷却、固化され、これにより未延伸のキャストシートが得られる。
冷却成型ロールが1つの場合、ポリメチルペンテンを含むポリプロピレン樹脂組成物により形成され、特定の粗面化状態とされる側の表面が、冷却成型ロールに接触することが、粗面化状態を制御する点から好ましい。冷却成型ロールが2つ以上である場合には、ポリメチルペンテンを含むポリプロピレン樹脂組成物により形成され、特定の粗面化状態とされる側の表面が、最も上流側の1段目の冷却成型ロールに接触することが好ましい。特定の粗面化状態とされる側の表面が接触する冷却成型ロールの温度により、高さデータの絶対値の算術平均の値Saを有効にコントロールできるため、該温度は、70〜110℃が好ましく、80〜100℃がより好ましく、85〜95℃がより好ましい。
2つ以上の冷却成型ロールを使用する場合、2段目(2つ目)の冷却成型ロールには、1段目の冷却成型ロールに接触した面とは反対側の面を接触させることが好ましく、2段目の冷却成型ロールの温度は、30〜90℃が好ましい。
キャストシート製造工程におけるドラフト比は、3〜7であることが好ましく、4〜6であることがより好ましい。
ドラフト比とは、押出成形機のダイスリップ出口部での樹脂流速と、冷却成型ロール接触点での樹脂流速との比である。ドラフト比が上記範囲内であると、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの粗面化表面に、フィルムの縦方向に配向した微小突起構造物が形成されて、上記式(2)を満足しやすくなり、その結果、耐電圧性に優れたフィルムコンデンサが得られやすくなる。
ドラフト比は、溶融樹脂の密度d(g/cm)、ダイスリップ出口部の幅W(cm)、ダイスリップ出口部の平均スリット間隙t(cm)、樹脂吐出量Q(g/分)、冷却成形ロールの周速V(cm/分)より、下記式にて計算される。
ドラフト比=dVWt/Q
ドラフト比が上記範囲未満であると、微小突起構造物のフィルムの縦方向への配向が弱くなり、微小突起構造物のフィルムの幅方向の曲線要素の平均長さRSm値が小さくなり難い傾向にあり、その結果、上記式(2)を満足しなくなる傾向にある。一方、ドラフト比が上記範囲を超えると、微小突起構造物のフィルムの縦方向への配向が過度となり、微小突起構造物のフィルムの幅方向の曲線要素の平均長さRSm値が過小となって、上記式(2)を満足しなくなったり、縦方向への配向が過度となることにより、次の延伸工程での幅方向の延伸時に破断が発生して、生産性が低下したりする傾向がある。
キャストシート製造工程において、製造されるキャストシートの厚さには特に制限はないが、通常0.05〜2mmであり、0.05〜0.5mmが好ましい。
(延伸工程)
延伸工程では、キャストシート製造工程で得られたキャストシートに二軸延伸処理を行う。二軸延伸方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれも採用可能であるが、逐次二軸延伸方法が好ましい。
逐次二軸延伸方法としては、まず、キャストシートを好ましくは130〜155℃、より好ましくは135〜150℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向(縦方向、MD方向)に4〜8倍に縦延伸する(縦延伸工程)。縦延伸工程での温度を上記範囲に適切に調整することにより、ポリメチルペンテンを含むポリプロピレン樹脂組成物により形成された表層の表面に、フィルムの縦方向に配向した微小突起構造物が形成され、特定の粗面化表面となる。また、この際、キャストシートにβ晶が含まれると、該β晶が融解してα晶に転移し、表面にクレータ状の微小楕円構造物が形成されることがある。
引き続き、縦延伸された延伸フィルムをテンターに導いて、好ましくは155℃以上、より好ましくは160〜175℃の温度で、流れ方向と直交する方向(幅方向、TD方向)に8〜12倍に横延伸した後(横延伸工程)、横延伸の倍率を10%程度、緩和・熱固定する(緩和工程)。
緩和・熱固定されたフィルムは、必要に応じて後述のコロナ放電処理が施され、ワインダーで巻き取られる。巻き取られたフィルムは、20〜45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施された後、所望の製品幅に断裁される。
このような縦延伸工程と横延伸工程とを有する延伸工程により、ポリメチルペンテンを含むポリプロピレン樹脂組成物により形成された表層には、フィルムの縦方向に配向した微小突起構造物が形成される。この際、延伸工程における総延伸倍率(=縦延伸倍率×横延伸倍率(緩和後))が高まるにつれ、フィルムの縦方向に配向した微小突起構造物が顕在化する傾向にある。
また、総延伸倍率が高くなると、フィルムコンデンサとした際の耐電圧性が一層向上する。これは、高延伸倍率に延伸されたフィルムの分子鎖は延伸方向に強く配向することで、電圧が印加されても電流が流れ難くなることに起因すると推定される。
フィルムの縦方向の延伸倍率と、緩和後の幅方向の延伸倍率の積である総延伸倍率は、好ましくは40倍以上、より好ましくは45倍以上であると、フィルムコンデンサの耐電圧性を向上させる効果が大きい。一方、総延伸倍率が高くなり過ぎると、延伸破断を引き起こして生産性が低下する可能性があるため、縦延伸倍率が4〜8倍で、かつ、緩和後の横延伸倍率が8〜12倍であることが好ましい。
加えて縦延伸倍率を高めるとRSm値が大きく、縦延伸倍率を下げるとRSm値が小さくなる傾向が有る。同様にまた横延伸倍率を高めるとRSm値が大きく、横延伸倍率を下げるとRSm値が小さくなる傾向が有る。そのためRSm値やRSm値を好ましい範囲とするためにも、上記延伸倍率が好ましい。
(コロナ放電処理工程)
延伸工程の後には、金属蒸着膜を設けるなどの後工程での接着特性を高める目的で、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの粗面化表面に対して、オンラインまたはオフラインにて、コロナ放電処理を行うことが好ましい。コロナ放電処理には公知の方法を採用できるが、雰囲気ガスとしては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、及びこれらの混合ガスを用いることが好ましい。なお、本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表層はポリメチルペンテンを含有するが、コロナ放電処理は、ポリメチルペンテンを含有しない一般的なコンデンサ用ポリプロピレンフィルムに対しての処理の強さ(電圧)と同程度で可能である。またこの程度の処理の強さであれば、通常、コロナ放電処理工程の前後で、二軸延伸ポリオレフィンフィルムのRSm、RSm、Saは変化しない。
本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面に金属蒸着膜を形成する場合、少なくとも、特定の粗面化状態にある粗面化表面に対して、あらかじめコロナ放電処理を行い、その後、少なくとも該表面に対して、金属蒸着膜を設けることが好ましい。特定の粗面化状態にある表面に対して、コロナ放電処理し、金属蒸着膜を設けることにより、得られるフィルムコンデンサの耐電圧性がより優れる。
なお、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの両面にコロナ放電処理し、両面に金属蒸着膜を設けてもよい。
[金属蒸着ポリオレフィンフィルム]
本発明の金属蒸着ポリオレフィンフィルムは、上述のコロナ放電処理工程にて、コロナ放電処理された粗面化表面上に、金属蒸着膜が設けられたフィルムである。
金属蒸着膜を設ける方法としては、例えば真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられ、生産性や経済性などの点からは、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法としては、るつぼ法式、ワイヤー方式などの公知の方法から適宜選択すればよい。
金属蒸着膜を構成する金属としては、亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、ニッケルなどの単体、複数種の混合物、合金などを使用でき、環境面、経済性、フィルムコンデンサ性能などの点からは、亜鉛、アルミニウムが好ましい。
金属蒸着膜のマージンパターンには特に制限はないが、フィルムコンデンサの保安性等の点からは、フィッシュネットパターン、Tマージンパターン等のいわゆる特殊マージンを含むパターンが好ましい。特殊マージンを含むパターンで金属蒸着膜を設けて得られた金属蒸着ポリオレフィンフィルムを用いると、フィルムコンデンサは保安性に優れ、フィルムコンデンサの破壊やショートも抑制できる。
マージンを形成する方法としては、蒸着時にテープによりマスキングをするテープ法、オイルの塗布によりマスキングをするオイル法などの公知の方法を採用できる。
[フィルムコンデンサ]
本発明のフィルムコンデンサは、本発明の金属蒸着ポリオレフィンフィルムをフィルムの長尺方向である縦方向に沿って巻き付ける巻き付け加工を経て、製造される。フィルムコンデンサの構成としては、特に制限はなく、例えば、巻き付け加工により得られた巻回物(素子本体)の両端(金属蒸着ポリオレフィンフィルムの幅方向の端部に相当。)に、金属を溶射して外部電極を設け、さらに外部電極に対してリード線を溶接する方法などで製造される。
本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムおよび金属蒸着ポリオレフィンフィルムは、フィルムコンデンサとした際の耐電圧性、すなわち、高電圧印加時の高温耐電圧特性および保安性などに優れる。また、ポリメチルペンテンの使用に起因して耐熱性にも優れる。また、その厚みを薄い上述の範囲とすることにより、高い静電容量も発現し易い。そのため、本発明の好ましいフィルムコンデンサとしては、小型で、かつ、静電容量が5μF以上、好ましくは10μF以上、さらに好ましくは20μF以上の高容量のコンデンサが挙げられる。
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。また、特に断らない限り、例中の部は「質量部」を示し、%は「質量%」を示す。
以下の各例では、アイソタクチックポリプロピレン樹脂として、以下の市販の樹脂A〜Cを用いた。各樹脂A〜Cはいずれも、酸化防止剤としてペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を5500ppm含有する。また、アイソタクチックポリプロピレン樹脂Cは、分子量分布および分布の構成を調節するために、1,3−ビス−(ターシャリー−ブチルパーオキサイドイソプロピル)−ベンゼンを用いて過酸化物処理が施されたものである。
(1)アイソタクチックポリプロピレン樹脂A
Mn:40万、Mw/Mn:9.0、Δdw:7.4、[mmmm]値:97.2%。
(2)アイソタクチックポリプロピレン樹脂B
Mn:33万、Mw/Mn:4.2、Δdw:4.2、[mmmm]値:93.7%。
(3)アイソタクチックポリプロピレン樹脂C
Mn:33万、Mw/Mn:8.6、Δdw:13.9、[mmmm]値:97.2%。
〔実施例1〕
アイソタクチックポリプロピレン樹脂Cを90質量%、ポリメチルペンテンとして、三井化学(株)製TPX(登録商標)MX002O(試験荷重5kg、温度260℃で測定したMFR=21g/10分)10質量%を、連続式計量混合機にて混合し押出成形機(1軸混錬タイプ、L/D=40)に供給した。
押出成形機にて樹脂温度が265℃となるように加熱溶融し、フィルタを通した後、押出成形機の回転数とダイスリップ部の平均スリット間隙および冷却成型ロールの速度を制御して、Tダイからドラフト比が5となるような条件で溶融押し出しし、表面温度90℃の1段目の冷却成型ロールにエアナイフを用いて押し当てた。次いで、反対面を表面温度70℃の2段目の冷却成型ロールに押し当てて冷却固化しキャストシートを得た。なお随時測定した二軸延伸ポリオレフィンフィルムの厚みが2.5μmとなるよう、キャストシートの厚みを適宜調整した。キャストシートの厚みは0.15mm前後であった。
引き続きこのキャストシートを145℃まで加熱し、速度差を設けたロール間に通して縦方向に5倍に延伸した。次いで、当該延伸フィルムをテンターに導いて165℃まで加熱し、横方向に10倍に延伸した後、9倍まで緩和し170℃で熱固定した。
次いで、この二軸延伸フィルムの1段目の冷却成型ロールに押し当てられた面側に、空気雰囲気下でコロナ放電処理を行い、ワインダーで巻き取った。巻き取られたロールは35℃の雰囲気下で24時間エージング処理を施し、厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリオレフィンフィルムについて、各種測定および評価を行った。表面特性、絶縁破壊強度の結果を表1に示す。なお、表面特性は、1段目の冷却成型ロールに押し当てられ、コロナ放電処理がなされた側の表面の特性である。
また、該二軸延伸ポリオレフィンフィルムを用いて、後述の方法で製造されたコンデンサ素子(フィルムコンデンサ)について、耐電圧性として、高電圧印加時の高温耐電圧特性および保安性を評価した。結果を表1に示す。
図1に、実施例1で得られた二軸延伸ポリオレフィンフィルムにおける、1段目の冷却成型ロールに押し当てられ、コロナ放電処理が施された側の表面のイメージ図を示す。
なお、図1は、表面測定によって得られた高さデータを高さ方向に強調し、視覚的に分かり易く表示したイメージ図であり、上述した解析ソフトウェア「VS−Viewer」にて、3D表示として示されるものである。
図2に、図1に認められる微小突起構造物の頂部(稜線)と、β晶の結晶変態により形成されたクレータ状の微小楕円構造物の頂部(稜線)とをトレースしたトレース図を示す。図2中、多数の直線で示されているのが各微小突起構造物の頂部(稜線)Pである。この図から、該微小突起構造物はフィルムの縦方向に配向していることが理解できる。一方、楕円状に示されているのがβ晶のα晶への結晶変態により形成されたクレータ状の微小楕円構造物の頂部(稜線)Qである。
図3は、図1中の線Aに沿う断面を示す断面解析図、図4は、図1中の線Bに沿う断面を示す断面解析図である。
〔実施例2〕
アイソタクチックポリプロピレン樹脂Cを94質量%、ポリメチルペンテンとして三井化学(株)製TPX(登録商標)MX002Oを6質量%とした以外は、実施例1と同様にして厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
また、実施例1と同様の測定および評価を行った。二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性、絶縁破壊強度、フィルムコンデンサの高電圧印加時の高温耐電圧特性、保安性の各結果を表1に示す。
〔実施例3〕
アイソタクチックポリプロピレン樹脂Cを85質量%、ポリメチルペンテンとして三井化学(株)製TPX(登録商標)MX002Oを15質量%とした以外は、実施例1と同様にして厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
また、実施例1と同様の測定および評価を行った。二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性、絶縁破壊強度、フィルムコンデンサの高電圧印加時の高温耐電圧特性、保安性の各結果を表1に示す。
〔実施例4〕
アイソタクチックポリプロピレン樹脂Cを75質量%、ポリメチルペンテンとして三井化学(株)製TPX(登録商標)MX002Oを25質量%とした以外は、実施例1と同様にして厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
また、実施例1と同様の測定および評価を行った。二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性、絶縁破壊強度、フィルムコンデンサの高電圧印加時の高温耐電圧特性、保安性の各結果を表1に示す。
〔実施例5〕
ダイスリップ部の平均スリット間隙を狭めてドラフト比が3.2となるような条件で溶融押し出しした以外は、実施例1と同様にして厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
また、実施例1と同様の測定および評価を行った。二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性、絶縁破壊強度、フィルムコンデンサの高電圧印加時の高温耐電圧特性、保安性の各結果を表1に示す。
〔実施例6〕
ダイスリップ部の平均スリット間隙を広げてドラフト比が6.8となるような条件で溶融押し出しした以外は、実施例1と同様にして厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
また、実施例1と同様の測定および評価を行った。二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性、絶縁破壊強度、フィルムコンデンサの高電圧印加時の高温耐電圧特性、保安性の各結果を表1に示す。
〔実施例7〕
製造時の延伸条件を、キャストシートを145℃まで加熱し、速度差を設けたロール間に通して縦方向に6倍に延伸した後、当該延伸フィルムをテンターに導いて165℃まで加熱し、横方向に8倍に延伸した後、7倍まで緩和し170℃で熱固定した。それ以外は実施例1と同様にして、厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
また、実施例1と同様の測定および評価を行った。二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性、絶縁破壊強度、フィルムコンデンサの高電圧印加時の高温耐電圧特性、保安性の各結果を表1に示す。
〔実施例8〕
ポリメチルペンテンとして三井化学(株)製TPX(登録商標)DX845(試験荷重5kg、温度260℃で測定したMFR=9g/10分)10質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
また、実施例1と同様の測定および評価を行った。二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性、絶縁破壊強度、フィルムコンデンサの高電圧印加時の高温耐電圧特性、保安性の各結果を表1に示す。
〔実施例9〕
ポリメチルペンテンとして三井化学(株)製TPX(登録商標)DX310(試験荷重5kg、温度260℃で測定したMFR=100g/10分)10質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
また、実施例1と同様の測定および評価を行った。二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性、絶縁破壊強度、フィルムコンデンサの高電圧印加時の高温耐電圧特性、保安性の各結果を表1に示す。
〔実施例10〕
アイソタクチックポリプロピレン樹脂Aを90質量%用いた以外は、実施例1と同様にして厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
また、実施例1と同様の測定および評価を行った。二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性、絶縁破壊強度、フィルムコンデンサの高電圧印加時の高温耐電圧特性、保安性の各結果を表1に示す。
〔実施例11〕
アイソタクチックポリプロピレン樹脂Bを90質量%用いた以外は、実施例1と同様にして厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
また、実施例1と同様の測定および評価を行った。二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性、絶縁破壊強度、フィルムコンデンサの高電圧印加時の高温耐電圧特性、保安性の各結果を表1に示す。
〔実施例12〕
以下のようにして、2層構成の二軸延伸ポリオレフィンフィルムを製造した。
第1の押出成形機(1軸混錬タイプ、L/D=40)において、アイソタクチックポリプロピレン樹脂Cを樹脂温度が250℃となるように加熱溶融し、フィルタを通した後Tダイに供給した。
一方、第2の押出成形機(1軸混錬タイプ、L/D=40)において、アイソタクチックポリプロピレン樹脂Cを90質量%、ポリメチルペンテンとして三井化学(株)製TPX(登録商標)MX002Oの10質量%を連続式計量混合機にて混合して供給した。該押出成形機にて樹脂温度が265℃となるように加熱溶融し、フィルタを通した後Tダイに供給した。
Tダイ内部にて、第1の押出成形機から供給された樹脂と、第2の押出成形機から供給された樹脂を、第2の押出成形機から供給された樹脂が1段目の冷却成型ロールに押し当てられる側となるような順序で、体積比で1:1となるように積層した。
各押出成形機の回転数とダイスリップ部の平均スリット間隙および冷却成型ロールの速度を制御して、Tダイからドラフト比が5となるような条件で溶融押し出しし、表面温度90℃の1段目の冷却成型ロールにエアナイフを用いて押し当てた。次いで第1の押出成形機から供給された樹脂側の面を表面温度70℃の2段目の冷却成型ロールに押し当てて冷却固化し、キャストシートを得た。なお、随時測定した二軸延伸ポリオレフィンフィルムの厚みが2.5μmとなるよう、キャストシートの厚みを適宜調整した。キャストシートの厚みは0.15mm前後であった。
引き続きこのキャストシートを145℃まで加熱し、速度差を設けたロール間に通して縦方向に5倍に延伸した。次いで、当該延伸フィルムをテンターに導いて165℃まで加熱し、横方向に10倍に延伸した後、9倍まで緩和し170℃で熱固定した。
次いでこの二軸延伸フィルムの1段目の冷却成型ロールに押し当てられた面側(第2の押出成形機から供給された樹脂側)に、空気雰囲気下でコロナ放電処理を行い、ワインダーで巻き取った。巻き取られたロールは35℃の雰囲気下で24時間エージング処理を施し、厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性、絶縁破壊強度、フィルムコンデンサの高電圧印加時の高温耐電圧特性、保安性の各結果を表1に示す。
〔比較例1〕
アイソタクチックポリプロピレン樹脂Cを100質量%とし、ポリメチルペンテンを用いなかった以外は実施例1と同様にして厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
また、実施例1と同様の測定および評価を行った。二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性、絶縁破壊強度、フィルムコンデンサの高電圧印加時の高温耐電圧特性、保安性の各結果を表1に示す。
図5に、比較例1で得られた二軸延伸ポリオレフィンフィルムにおける、1段目の冷却成型ロールに押し当てられ、コロナ放電処理が施された側の表面のイメージ図を示す。図5も図1と同様に、高さ方向を強調したイメージ図である。
図6に、図5に認められるβ晶のα晶への結晶変態により形成されたクレータ状の微小楕円構造物の頂部(稜線)Qをトレースしたトレース図を示す。なお、図6中には、図1中に認められた縦方向に配向する微小突起構造物は確認できなかった。
図7は、図5中の線A’に沿う断面を示す断面解析図、図8は、図5中の線B’に沿う断面を示す断面解析図である。
〔比較例2〕
アイソタクチックポリプロピレン樹脂Cを96質量%、ポリメチルペンテンとして三井化学(株)製TPX(登録商標)MX002Oを4質量%とした以外は実施例1と同様にして厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
また、実施例1と同様の測定および評価を行った。二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性、絶縁破壊強度、フィルムコンデンサの高電圧印加時の高温耐電圧特性、保安性の各結果を表1に示す。
〔比較例3〕
アイソタクチックポリプロピレン樹脂Cを65質量%、ポリメチルペンテンとして三井化学(株)製TPX(登録商標)MX002Oを35質量%とした以外は実施例1と同様にして厚みが2.5μmの二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得た。
また、実施例1と同様の測定および評価を行った。二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性、絶縁破壊強度、フィルムコンデンサの高電圧印加時の高温耐電圧特性、保安性の各結果を表1に示す。
〔各種測定方法および評価方法〕
上述の実施例および比較例における各種測定方法、評価方法を以下に示す。
(1)アイソタクチックポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、差(Δdw)の測定
GPCを用い、以下の条件で測定を行った。
測定機:東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵高温GPC、HLC−8121GPC−HT型
カラム:東ソー株式会社製、TSKgel GMHHR−H(20)HTを3本連結
カラム温度:140℃
溶離液:トリクロロベンゼン
流速:1.0ml/min
検量線の作製には、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用い、測定結果はポリプロピレン値に換算した。
なお、差(Δdw)は次のような方法で得た。
まず、RI検出計において検出される強度分布の時間曲線(溶出曲線)を、検量線を用いて分子量(Log(Mw))に対する分布曲線とした。次に、分布曲線の全面積を100%とした場合のLog(Mw)に対する積分分布曲線を得た後、この積分分布曲線をLog(Mw)で、微分することによって、Log(Mw)に対する微分分布曲線を得た。
この微分分布曲線から、Log(Mw)=4.5およびLog(Mw)=6のときの微分分布値を読み取り、その差(Δdw)を求めた。
なお、微分分布曲線を得るまでの一連の操作は、通常、GPC測定装置に内蔵の解析ソフトウェアを用いて行える。
(2)メソペンタッド分率[mmmm]測定
アイソタクチックポリプロピレン樹脂を溶媒に溶解し、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)を用いて、以下の条件でメソペンタッド分率[mmmm]を求めた。
測定機:日本電子株式会社製、高温FT−NMR JNM−ECP500
観測核:13C(125MHz)
測定温度:135℃
溶媒:オルト−ジクロロベンゼン〔ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(4/1)〕
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:9.1μsec(45°パルス)
パルス間隔:5.5sec
積算回数:4500回
シフト基準:CH3(mmmm)=21.7ppm
5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrmなど)に由来する各シグナルの強度積分値より、百分率(%)で算出した。mmmmやmrrmなどに由来する各シグナルの帰属に関し、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」などのスペクトルの記載を参考とした。
(3)フィルム厚み
二軸延伸ポリオレフィンフィルムの厚さは、マイクロメーター(JIS−B7502)を用いて、JIS−C2330に準拠して測定した。
(4)光干渉式非接触表面形状測定器による表面特性(Sa、RSm、RSm
二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性について、光干渉式非接触表面形状測定器((株)菱化システム社製、非接触表面・層断面形状測定システム、VertScan(登録商標)2.0(型式:R5500GML))により、以下の条件にて測定した。
測定モード:WAVE
フィルタ:530white
対物レンズ倍率:×10
視野:470.92μm×353.16μm(640×480pixel)
測定数:フィルム表面の任意の3箇所について測定
上記測定データにつき、解析ソフトウェア「VS−Viewer」を用いて、以下の画像処理を行った。
ノイズ除去処理:メディアンフィルタ(5×5画素)
粗さ成分の抽出処理:ガウシアンフィルタ処理(カットオフ値30μm以上)
Sa、RSm、RSmは、以下のようにして求めた。
(Sa)
上述の画像処理された表面形状データの各画像それぞれにつき、高さデータの絶対値の算術平均の値Saを測定し、3画像分(3つの値)の平均値として、値Saを求めた。
(RSm
上述の画像処理された表面形状データの各画像それぞれにつき、フィルムの縦方向の任意の5箇所の断面解析(視野の端から端まで)を行い、3画像分(15個の値)の平均値として、RSmを求めた。
(RSm
上述の画像処理された表面形状データの各画像それぞれにつき、フィルムの幅方向の任意の5箇所の断面解析(視野の端から端まで)を行い、3画像分(15個の値)の平均値として表面粗さの曲線要素の平均長さRSmを求めた。
(5)接触式表面粗さ計による表面特性(Ra、Rz)
二軸延伸ポリオレフィンフィルムの表面特性について、株式会社東京精密製、表面粗さ・輪郭形状測定器、サーフコム1400−3DFを用い、JIS−B0601に定められている方法に準拠して、中心線平均粗さ(Ra)および最大高さ(Rz、旧JIS定義でのRmax)を求めた。測定倍率は2万倍、分解能は2nmの条件にて測定した。測定回数は10回とし、その平均値を評価に用いた。
(6)フィルムの高温耐電圧性(高温での絶縁破壊強度)の評価
二軸延伸ポリオレフィンフィルムの耐電圧性は、JIS−C2330 7.4.11.2(絶縁破壊電圧・平板電極法:B法)に準じ、絶縁破壊電圧値を直流(DC)にて測定することによって評価した。送風循環式恒温槽内にフィルム及び電極冶具をセットして、評価温度100℃にて測定を行った。昇圧速度は100V/sec、破壊の際の遮断電流は10mAとし、測定回数は32回とした。測定された平均電圧値をフィルムの厚みで割ったものを絶縁破壊強度として評価に用いた。
高温絶縁破壊強度は、400VDC/μm以上が実用上好適である。450VDC/μm以上であるとさらに好ましい。
(7)フィルムコンデンサとしての性能評価
二軸延伸ポリオレフィンフィルムを下記手順にてコンデンサ素子(フィルムコンデンサ)とし、耐電圧性(保安性、高温耐電圧特性)の評価を実施した。
(7−1)フィルムコンデンサの製造
上述の各実施例および比較例において、二軸延伸ポリオレフィンフィルムのコロナ放電処理を施した表面に対して、アルミニウム蒸着により、フィッシュネット蒸着パターン(1mmマージン)と全蒸着(ベタ)パターン(1mmマージン)を蒸着抵抗6Ω/□にてそれぞれ施し、2種の蒸着フィルムを得た。
これらをそれぞれ小幅にスリットした後、両蒸着フィルムを相合わせて、株式会社皆藤製作所製の自動巻取機「3KAW−4L(B)」を用い、巻き取り張力400gにて956ターン巻回を行った。こうして得られた素子を120℃にて2時間熱処理し、素子端面に亜鉛金属を溶射し、フィルムコンデンサとした。得られたフィルムコンデンサの電気容量は、いずれの例においても20μF(±1μF)であった。なお、巻き取り方向は、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの縦方向に沿う方向とした。
(7−2)保安性の評価
(1)素子(フィルムコンデンサ)を試験温度(105℃)にて1時間予熱する。
(2)予熱後の素子の初期電気容量(C)を測定する。電気容量測定には安藤電気(株)社製LCRテスターAG4311を用いた。
(3)105℃の恒温槽中で、高圧電源を用いて素子に直流0.6KVの電圧を1分間負荷後、電気容量(C0.60)を測定する。
(4)負荷後の電気容量変化率(ΔC0.60/C=(C0.60−C)/C)を百分率で計算する。
(5)素子を105℃の恒温槽内に戻し、電圧を0.05kVずつ増加させてVkVの電圧を1分間負荷し、素子の電気容量(C)を測定する。
(6)負荷後の電気容量変化率(ΔC/C=(C−C)/C)を百分率で計算する。
(7)電気容量変化率ΔC/Cが百分率で−10%未満となるまで、上記(5)〜(6)の手順で、電圧を0.05KVずつ増加させたステップを繰り返す。
(8)電気容量変化率が百分率で−10%未満となったステップの負荷電圧をその素子の保安性評価の指標とした。
この際の負荷電圧が高い方が保安性が優れる(電圧を上げていった際に、ある電圧を超えると蓄電性能が低下するが、その低下の仕方が緩やかである。)。
この際の負荷電圧が1000V以上であると実用上好適である。1100V以上であるとさらに好ましい。
(7−3)高温耐電圧特性の評価
(1)素子(フィルムコンデンサ)を試験温度(105℃)にて1時間予熱する。
(2)予熱後の素子の初期電気容量(C)を測定する。電気容量測定には安藤電気(株)社製LCRテスターAG4311を用いた。
(3)105℃の恒温槽中で、高圧電源を用いて素子に直流1.05KVの電圧を1分間負荷後、電気容量(Cn1)を測定する。
(4)素子を105℃の恒温槽内に戻し、同じく直流1.05KVの電圧にて2回目の電圧負荷(1分間)を行った後、電気容量(Cn2)を測定する。
(5)同様の手順にて3回目、4回目の電圧負荷を行い、電気容量(Cn3)、電気容量(Cn4)を測定する。
(6)4回目の電圧負荷後の電気容量(Cn4)より、電気容量変化率(ΔCn4/C=(Cn4−C)/C)を百分率で計算し高温耐電圧特性の指標とした。
この4回目の容量変化率の値が、百分率で−50%以上であると実用上好適である。−35%以上であるとさらに好ましい。
(考察)
(1)実施例1〜4および比較例1〜3について
アイソタクチックポリプロピレン樹脂Cを使用し、試験荷重5kg、温度260℃で測定したメルトマスフローレートが21g/10分であるポリメチルペンテンTPX MX002Oを10質量%含有する実施例1、および15質量%含有する表層を有する実施例3の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、光干渉式非接触表面形状測定器にて測定される表面の微小突起構造物のRSm−RSm値やSa値が好ましい値であり、コンデンサ素子とした際の性能が非常に優れていた。
ポリメチルペンテンを6質量%含有する実施例2の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、RSm−RSm値が若干高めだが好ましい値であり、コンデンサ素子とした際の性能も優れていた。一方、ポリメチルペンテンを4質量%含有する比較例2の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、RSm−RSm値が式(2)の範囲よりも高く、コンデンサ素子とした際の性能は劣るものだった。
さらに、ポリメチルペンテンを含有しない比較例1の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、RSm−RSm値が式(2)の範囲よりも非常に高く、コンデンサ素子とした際の性能は非常に劣るものだった。
一方、ポリメチルペンテンを25質量%含有する実施例4の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、RSm−RSm値が若干低めだが好ましい値であり、コンデンサ素子とした際の性能も優れていた。一方、ポリメチルペンテンを35質量%含有する比較例3の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、RSm−RSm値が式(2)の範囲よりも低く、コンデンサ素子とした際の性能は劣るものだった。
(2)実施例5〜12について
製造時のドラフト比を3.2とした実施例5の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、RSm−RSm値が式(2)の範囲の上限に近く、コンデンサ素子とした際の性能は実施例1よりは劣るものの、優れたものだった。一方、製造時のドラフト比を6.8とした実施例6の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、RSm−RSm値が式(2)の範囲の下限に近くコンデンサ素子とした際の性能は実施例1よりは劣るものの、優れたものだった。
製造時の延伸倍率を変更し、総延伸倍率を低くした実施例7の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、RSm−RSm値が式(2)の範囲の下限に近くコンデンサ素子とした際の性能は実施例1よりは劣るものの、優れたものだった。
試験荷重5kg、温度260℃で測定したメルトマスフローレートが9g/10分であるポリメチルペンテンTPX DX845を使用した実施例8の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、Sa値が好ましい範囲の上限に近く、コンデンサ素子とした際の性能は実施例1よりは劣るものの、優れたものだった。一方、試験荷重5kg、温度260℃で測定したメルトマスフローレートが100g/10分であるポリメチルペンテンTPX DX310を使用した実施例9の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、Sa値が好ましい範囲の下限に近く、コンデンサ素子とした際の性能は実施例1よりは劣るものの、優れたものだった。
アイソタクチックポリプロピレン樹脂Aを使用した実施例10の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、GPC法で測定したΔdw値が低く、コンデンサ素子とした際の性能は実施例1よりは劣るものの、優れたものだった。アイソタクチックポリプロピレン樹脂Bを使用した実施例11の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、GPC法で測定したMw/Mn値、Δdw値が低く、またメソペンタッド分率[mmmm]値も低く、コンデンサ素子とした際の性能は実施例1よりは劣るものの、優れたものだった。
2層構成とし片面のみにポリメチルペンテンを含有する表層を設けた実施例12の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、RSm−RSm値やSa値が好ましい値であり、コンデンサ素子とした際の性能が非常に優れていた。
本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、高電圧、耐熱性が要求される自動車や電力用途などの小型かつ大容量型のコンデンサに好ましく利用できる。

Claims (6)

  1. アイソタクチックポリプロピレン樹脂を主成分とし、下記式(1)で表される単位を有するポリメチルペンテンを5〜30質量%含有する表層用ポリプロピレン樹脂組成物から形成された厚みが1.0〜6μmの表層を有し、該表層の表面は、微細凹凸が形成された粗面化表面である二軸延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法であって、
    前記表層用ポリプロピレン樹脂組成物を調製する調製工程と、
    前記調製した表層用ポリプロピレン樹脂組成物を用いてキャストシートを製造するキャストシート製造工程と、
    前記キャストシートを二軸延伸する延伸工程とを有し、
    前記調製工程では、前記表層用ポリプロピレン樹脂組成物の樹脂温度を240〜280℃として溶融混錬をし、
    前記キャストシート製造工程では、前記表層用ポリプロピレン樹脂組成物を、シリンダー直径とシリンダー長さの比であるL/Dが30〜50である押出成形機からドラフト比3〜7で押し出し、70〜110℃の冷却成型ロールに表面を接触させて冷却することを特徴とする二軸延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法。
  2. 前記アイソタクチックポリプロピレン樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定した重量平均分子量(Mw)が25万〜45万で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で定義される分子量分布(Mw/Mn)が5〜12であるとともに、分子量分布曲線において、対数分子量が4.5のときの微分分布値から対数分子量が6のときの微分分布値を引いた差(Δdw)が8〜18%であることを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法。
  3. 前記ポリメチルペンテンは、試験荷重5kg、温度260℃の条件下で測定されたメルトマスフローレートが、20g/10分以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法。
  4. さらに、前記粗面化表面を、コロナ放電処理することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法。
  5. 請求項1〜の何れか一項に記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの製造方法により二軸延伸ポリオレフィンフィルムを得、得られた二軸延伸ポリオレフィンフィルムの前記粗面化表面上に、金属蒸着膜を形成することを特徴とする金属蒸着ポリオレフィンフィルムの製造方法。
  6. 請求項に記載の金属蒸着ポリオレフィンフィルムの製造方法により金属蒸着ポリオレフィンフィルムを得、得られた金属蒸着ポリオレフィンフィルムを用いてフィルムコンデンサを製造することを特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。
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