JP6137513B2 - ポリプロピレンフィルムとその製造方法 - Google Patents

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本発明は、コンデンサの誘電体フィルムなどとして好適に使用されるポリプロピレンフィルムとその製造方法に関する。
ポリプロピレンフィルムは、耐電圧特性や、誘電損失などの電気特性が他のプラスチックフィルムよりも優れていることから、例えばハイブリッド電気自動車(HEV)などに使用されるコンデンサ用の誘電体フィルム(以下、コンデンサ用フィルムという場合がある。)などの電気用途に広く利用されている。
近年、このようなコンデンサ用フィルムには、フィルム厚のより薄いものが求められるようになってきている。これは、コンデンサ用フィルムの厚みが薄くなると、所定体積あたりの巻き回数を増加させ、コンデンサ内でフィルム面積を大きくとることができるようになり、その結果、コンデンサのより一層の小型化、高容量化が可能となるためである。
ところが、このような非常に薄いコンデンサ用フィルムは、加工の際のハンドリング性が極めて悪く、コンデンサを作製する際の素子巻き加工において、シワや巻きずれを発生し易いと言う難点がある。そこで、素子巻き加工時の滑り性を向上させ、該加工を容易にするために、その表面には微細凹凸が形成されて、該表面が粗面化されることが多い。また、表面が粗面化されると、過剰な電圧が印加された場合においてヒューズ機能が働き、保安性が向上することも知られている。
粗面化の方法としては、多数のβ型球晶を生成させたポリプロピレンの原反シートを特定条件で延伸して、β型球晶をより密度の大きなα型球晶に結晶変態させることにより、結晶変態が起きた部分にクレーター状の微細凹凸を形成する方法などが知られている(例えば特許文献1参照。)。このようにβ型球晶の結晶変態を利用した粗面化の方法は、樹脂に添加剤などの不純物を混入させる必要がない方法であるため、電気的特性に悪影響を及ぼすことなく、微細凹凸を付与できるというメリットを有する。
特開2008−133446号公報
しかしながら、このように表面が粗面化されたコンデンサ用フィルムを用いて得られたコンデンサにおいては、高電圧印加時の高温耐電圧特性(高温条件下において、高電圧の印加を繰り返した際の短期的な電圧特性。)などの耐電圧特性の低下が認められる場合や、印加する電圧を上げていった際に、ある電圧を超えると急激に蓄電性能が低下するという保安性低下の問題が認められる場合があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、高電圧印加時の高温耐電圧特性などの耐電圧特性と保安性とを兼ね備えたコンデンサを製造できるポリプロピレンフィルムの提供を課題とする。
本発明者は鋭意検討した結果、粗面化されたポリプロピレンフィルム表面における突起の高さや単位面積あたりの数が、耐電圧特性と保安性とを兼ね備えたコンデンサを製造するうえで重要な因子であることを見出した。そして、突起の高さや単位面積あたりの数について、光干渉式非接触表面形状測定器を用いて測定される突起の一定高さ以上の体積を指標として特定することに想到し、本発明を完成させた。
本発明は以下の構成を有する。
[1]ゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定した重量平均分子量が10万〜50万のポリプロピレン樹脂を主成分とし、一方の表面に微細凹凸が多数形成されることにより、前記表面が粗面化された厚さ1.0〜8.0μmのポリプロピレンフィルムであって、前記一方の表面は、240μm×180μmの範囲内で、光干渉式非接触表面形状測定器を用いて表面形状の計測を行った際、高さ0.02μm以上の突起部総体積が1mmあたり1000〜4000μmであり、かつ、高さ0.3μm以上の突起部総体積が1mmあたり1000μm以下の粗面化表面であり、他方の表面は、240μm×180μmの範囲内で、光干渉式非接触表面形状測定器を用いて表面形状の計測を行った際、高さ0.02μm以上の突起部総体積が、1mmあたり1000μm未満であることを特徴とするポリプロピレンフィルム。
[2]前記粗面化表面は、240μm×180μmの範囲内で、光干渉式非接触表面形状測定器を用いて表面形状の計測を行った際、二乗平均平方根粗さ(Sq)が、0.01〜0.04μmであることを特徴とする[1]に記載のポリプロピレンフィルム。
[3][1]または[2]に記載のポリプロピレンフィルムの製造方法であって、溶融しポリプロピレン樹脂を冷却ドラム上に押出して固化させつつ、エアナイフを用いて冷却ドラム上のポリプロピレン樹脂に冷却ドラムよりも低い温度のエアを吹き付けて、β型球晶を生成させたポリプロピレンキャストシートを得る工程と、β型球晶を生成させたポリプロピレンキャストシートを二軸延伸する工程とを有し、前記ポリプロピレンキャストシートは、X線回折法を用いて求められるβ晶分率が1%以上20%未満であり、一方の表面について、偏光顕微鏡で観察されるβ型球晶の平均半径が10μm以下であることを特徴とするポリプロピレンフィルムの製造方法。
本発明によれば、高電圧印加時の高温耐電圧特性などの耐電圧特性と保安性とを兼ね備えたコンデンサを製造できるポリプロピレンフィルムを提供できる。
本発明のポリプロピレンフィルムについて、(a)粗面化表面の一例を模式的に示す横断面図、(b)(a)の粗面化表面のI−I’線に沿う縦断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリプロピレンフィルムは、特定の重量平均分子量のポリプロピレン樹脂を主成分とし、一方または両方の表面に微細凹凸が多数形成されることにより、該表面が粗面化された厚さ1.0〜8.0μm、好ましくは厚さ2.0〜4.0μmのポリプロピレンフィルムである。
該ポリプロピレンフィルムの少なくとも一方の表面は、240μm×180μmの範囲内で、光干渉式非接触表面形状測定器を用いて表面形状の計測を行った際、高さ(垂直方向)0.02μm以上の突起部総体積が1mmあたり1000〜4000μmであり、かつ、高さ0.3μm以上の突起部総体積が1mmあたり1000μm以下との条件を満たす粗面化表面である。該粗面化表面における高さ0.02μm以上の突起部総体積は、1mmあたり1200〜3300μmであることが好ましく、1mmあたり1400〜2600μmであることがより好ましい。該粗面化表面における高さ0.3μm以上の突起部総体積は、1mmあたり800μm以下であることが好ましく、1mmあたり400μm以下であることがより好ましい。高さ0.3μm以上の突起部総体積の下限値は、20μmが好ましく、50μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。また、高さ1.5μm以上の突起部総体積はゼロであり、このような高さの突起は存在しないことが好ましく、さらには、高さ1.0μm以上の突起部総体積はゼロであり、このような高さの突起は存在しないことがより好ましい。
ポリプロピレンフィルムの少なくとも一方の表面が、上記条件を満たす粗面化表面であると、高電圧印加時の高温耐電圧特性などの耐電圧特性と保安性とを兼ね備えたコンデンサを製造できる。
すなわち、高さ0.02μm以上の突起部総体積が上記範囲未満では、粗面化が不充分であるため、充分な保安性が得られない。また、素子巻き加工性も低下する。
一方、高さ0.02μm以上の突起部総体積が上記範囲を超えると、突起の高さが大きすぎる、突起の単位面積あたりの数が多すぎるなど、粗面化が過度となる。そのため、ポリプロピレンフィルムの実質的な厚みが低下し、耐電圧特性が低下する。また、高さ0.02μm以上の突起部総体積が上記範囲を超えると、素子巻き加工時の面間隔が不均一となりやすく、面間隔が狭い部分においてセルフヒーリング(自己回復)機能が働きにくい状態となり、局所的な絶縁破壊が発生して、保安性が低下したり、高電圧印加時の高温耐電圧特性などの耐電圧特性が劣ったりする。
また、高さ0.02μm以上の突起部総体積が上記範囲内であっても、高さ0.3μm以上の突起部総体積が上記範囲を超える場合には、高さの大きな突起の割合が多くなるため、ポリプロピレンフィルムの実質的な厚みが低下して耐電圧特性が低下したり、素子巻き加工時の面間隔が不均一となって絶縁破壊が起こったりしやすくなる。
粗面化表面は、240μm×180μmの範囲内で、光干渉式非接触表面形状測定器を用いて表面形状の計測を行った際、三次元表面粗さパラメータとして算出される二乗平均平方根粗さ(Sq)が0.01〜0.04μmであることがさらに好ましい。二乗平均平方根粗さ(Sq)は、0.015〜0.035μmの範囲がより好ましく、0.020〜0.030μmの範囲がさらに好ましい。二乗平均平方根粗さ(Sq)が上記範囲内であると、粗面化の程度がより適度であり、高電圧印加時の高温耐電圧特性などの耐電圧特性と保安性とを兼ね備えたコンデンサを製造できる。また、粗面化表面のJIS B0601による算術平均粗さRaは、0.005〜0.15μmであることが好ましく、0.01〜0.12μmがより好ましく、0.01〜0.10μmがさらに好ましい。
なお、突起部総体積とは、粗面化表面に形成された微細凹凸を構成する多数の突起の各体積を合計した合計体積である。そして、高さ0.02μm以上の突起部総体積とは、基準面からの高さが0.02μm以上の部分に存在する多数の突起部の合計体積であり、高さ0.3μm以上の突起部総体積とは、基準面からの高さが0.3μm以上の部分に存在する突起部の合計体積である。
二乗平均平方根粗さ(Sq)とは、ISO25178に規定されている三次元粗さパラメータであり、二次元のRq(RMS)を三次元に拡張したものである。具体的には、表面形状曲面と平均面との距離を二乗した曲面と、平均面によりはさまれる部分の体積を測定面積で割った後に平方根を求めた二乗平均平方根偏差である。
突起部総体積および二乗平均平方根粗さ(Sq)は、光干渉式非接触表面形状測定器を用いて計測できる。光干渉式非接触表面形状測定器としては、例えば、(株)菱化システム製の「VertScan2.0(型式:R5500GML)」が挙げられる。測定では、WAVEモードを用い、530whiteフィルタ及び×20対物レンズを用いて、一視野あたり240μm×180μmの計測を計測対象のフィルム表面の任意の10箇所について行う。得られたデータについて、メディアンフィルタによるノイズ除去処理を行った後、カットオフ値30μmによるガウシアンフィルタ処理を行い、うねり成分を除去する。これにより、粗面化表面の状態を適切に計測できる状態となる。
突起部総体積は、「VertScan2.0」の解析ソフトウェア「VS−Viewer」のプラグイン機能「ベアリング」を用いて次のようにして求める。すなわち、「山側高さ閾値」を、所定の高さ(すなわち、0.02μmまたは0.3μm。)に設定した後、「山側体積」として表示されるものが一視野あたりの突起総体積になる。この測定を10箇所について行い、その平均値を求めた後、該平均値を一視野の面積(0.240mm×0.180mm=0.0432mm)で割ることにより、「1mmあたりの突起総体積(単位:μm/mm)」が算出される。
なお、それぞれの測定箇所における基準面は、ガウシアンフィルタ処理を行う際における「うねり成分」の高さとする。
二乗平均平方根粗さ(Sq)についても、10箇所について計測し、その平均値を採用する。
本発明のポリプロピレンフィルムは、一方または両方の表面が上記条件を満たす粗面化表面であればよいが、一方の表面のみが上記条件を満たす粗面化表面であり、他方の表面は、240μm×180μmの範囲内で光干渉式非接触表面形状測定器を用いて表面形状の計測を行った際、高さ0.02μm以上の突起部総体積が1mmあたり1000μm未満であることが好ましい。このように一方の面が粗面化表面であり、他方の面が実質的に粗面化されていない表面であるポリプロピレンフィルムは、粗面化された面が一方の面のみであるために、ポリプロピレンフィルムの実質的な厚みが低くなりすぎない。そのために、誘電体フィルムとして充分な厚さを担保でき、コンデンサの耐電圧特性を良好に維持できるものと考えられる。
本発明のポリプロピレンフィルムの製造方法としては、少なくとも一方の表面が上記条件を満たす粗面化表面であるポリプロピレンフィルムが得られる方法であればよい。粗面化の方法としては、エンボス法、エッチング法なども挙げられるが、添加剤などを使用せずに粗面化表面を形成できることから、多数のβ型球晶を生成させたポリプロピレンキャストシート(原反シート)を二軸延伸する工程を有する方法が好ましい。
β型球晶を有するポリプロピレンキャストシートを延伸すると、β型球晶はより密度の大きなα型球晶に結晶変態する。その結果、結晶変態が起きた部分には、図1に摸式的に示すようなクレーター状の微細凹凸20が形成される。該微細凹凸20は、横断面(フィルム表面に平行な断面。)が円弧状であって互いに逆向きに湾曲して対をなす2つの突起20a,20bを備え、これらの突起20a,20bと突起20a,20b間の凹み(窪み)20cとで、クレーター状をなしている。2つの突起20a,20bは合体して略円筒形をなしている場合もある。なお、図1において、縦方向が縦延伸の方向で、横方向が横延伸の方向である。また、図1は、多数のクレーター状の微細凹凸のうちの1つを抽出して示したものである。該突起20a,20bは、上述した基準面からの高さが、0.02μm以上0.5μm未満であることが好ましい。
ポリプロピレンフィルムの原料に用いられるポリプロピレン樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定された重量平均分子量(Mw)が10万〜50万であることが好ましく、より好ましくは20万〜40万である。重量平均分子量(Mw)が上記範囲を超えると、ポリプロピレン樹脂の流動性が著しく低下し、ポリプロピレンキャストシートの厚さの制御が難しくなる傾向にある。一方、重量平均分子量(Mw)が上記範囲未満では、押出し成形性は優れるが、得られたポリプロピレンキャストシートの力学特性と延伸性とが著しく低下し、その後の二軸延伸が困難となる傾向にある。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)装置としては、ポリオレフィン類の分子量分析が可能な一般に市販されている高温型GPC装置を例外なく使用できる。このような装置としては、例えば、東ソー株式会社製の示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機「HLC−8121GPC/HT」などが挙げられる。測定条件としては、GPCカラムとして、例えば東ソー株式会社製「TSKgel GMHhr−H(20)HT」を3本連結させて用い、カラム温度145℃とし、溶離液にはトリクロロベンゼンを用い、流速1.0ml/minとする条件が挙げられる。検量線の作製には、標準ポリスチレン(例えば東ソー株式会社製。)を用い、測定結果はポリプロピレン値に換算する。
また、ポリプロピレン樹脂は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で定義される分子量分布(Mw/Mn)が4〜15であるとともに、分子量分布曲線において、対数分子量が4.5のときの微分分布値から対数分子量が6のときの微分分布値を引いた差(D)が9〜20%であり、かつ、高温核磁気共鳴測定によって求められるメソペンタッド分率([mmmm]、立体規則性度。)が、94%以上98%未満であることが好ましい。
このようなポリプロピレン樹脂は、プロピレンの単独重合体である結晶性のアイソタクチックポリプロピレン樹脂により構成される。該ポリプロピレン樹脂を原料とすることにより、耐電圧特性に優れるポリプロピレンフィルムが得られやすい。また、該ポリプロピレン樹脂からなるポリプロピレンキャストシートは延伸性に優れるため、非常に薄いポリプロピレンフィルムが得られやすい。
「対数分子量」とは、重量平均分子量(Mw)の対数(Log(Mw))であり、「対数分子量が4.5のときの微分分布値から対数分子量が6のときの微分分布値を引いた差(D)」とは、重量平均分子量(Mw)が104.5である成分(低分子量成分)の量が、重量平均分子量(Mw)が10である成分(高分子量成分)の量よりもどれだけ多いかの指標となる値である。差(D)の値が「正」であることは、低分子量成分の量が高分子量成分の量よりも多いことを意味する。
なお、低分子量成分の代表値としてLog(Mw)=4.5における微分分布値を、高分子量成分の代表値として、Log(Mw)=6のときの微分分布値を採用している。
より好ましい分子量分布(Mw/Mn)は6〜10、より好ましい差(D)は10〜18%である。
微分分布値は、GPC法においては、一般に次のように得られる。
GPCの示差屈折(RI)検出計において検出される強度分布の時間曲線(一般には、溶出曲線と呼ぶ。)を、分子量既知の物質から得た検量線を用い、対数分子量(Log(Mw))に対する分布曲線に変換する。ここでRI検出強度は、成分濃度と比例関係にあるので、次に、分布曲線の全面積を100%とした場合の対数分子量Log(Mw)に対する積分分布曲線を得る。微分分布曲線は、この積分分布曲線をLog(Mw)で微分することによって得る。このように、ここで言う微分分布とは、濃度分率の分子量に対する微分分布を意味する。この曲線から、特定のLog(Mw)のときの微分分布値を読み取ることができる。
ポリプロピレン樹脂は、上述の分子量分布(Mw/Mn)および差(D)を有しているとともに、高温核磁気共鳴測定によって求められるメソペンタッド分率([mmmm]、立体規則性度。)が、94%以上98%未満であることが好ましい。メソペンタッド分率が94%以上、より好ましくは96%以上であると、高い立体規則性に起因して樹脂の結晶性が向上し、耐電圧特性に優れるポリプロピレンフィルムが得られやすい。また、ポリプロピレンフィルムの耐熱性も良好となる。一方、メソペンタッド分率[mmmm]が98%未満、より好ましくは97%以下であると、ポリプロピレンキャストシートを成形する際の固化(結晶化)の速さが早くなりすぎず、シート成形用の金属ドラムから剥離しやすくなるという問題が生じにくく、延伸性にも優れる。
従来、立体規則性度(結晶性)の値を例えば98%以上と高くすることによって、高い耐電圧特性を実現できることが知られている。ところが、立体規則性度(結晶性)の値を高くすると延伸性が低下し、非常に薄いポリプロピレンフィルムは得ることは困難であった。これに対して、分子量分布(Mw/Mn)および差(D)を上述の範囲内とすることにより、メソペンタッド分率を94%以上98%未満とし必ずしも98%以上としなくても、優れた耐電圧特性のポリプロピレンフィルムが得られる。このように分子量分布(Mw/Mn)、差(D)、メソペンタッド分率がそれぞれ上記範囲にあるポリプロピレン樹脂を用いると、耐電圧特性が優れ、かつ、非常に薄いポリプロピレンフィルムを得ることが可能となる。
差(D)を上記範囲内に調整する方法としては、ポリプロピレン樹脂に分解剤(過酸化水素、有機過酸化物など。)を適量混練して例えば180〜300℃で溶融混練し、高分子量成分を選択的に過酸化分解処理する方法が挙げられる。
メソペンタッド分率を上記範囲内に調整する方法としては、ポリプロピレン樹脂の重合条件、触媒の種類、触媒の使用量などを適宜調整する方法が挙げられる。
高温核磁気共鳴測定に用いられる装置としては、一般に市販されている高温型核磁気共鳴(NMR)装置(例えば、日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)、JNM−ECP500。)が利用できる。なお、観測核は13C(125MHz)、測定温度は135℃、用いる溶媒はオルト−ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1))である。測定モードはシングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は9.1μsec(45°パルス)、パルス間隔は5.5sec、積算回数は4,500回、シフト基準はCH(mmmm)=21.7ppmとする。
高温核磁気共鳴測定は、例えば「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版 高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、610頁」に記載の方法などの公知の方法により行える。
立体規則性度を表すペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmm、mrrmなど。)に由来する各シグナルの強度積分値より百分率で算出される。mmmm、mrrmなどに由来する各シグナルの帰属に関しては、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」などのスペクトルの記載が参照される。
ポリプロピレン樹脂を製造する際の重合法としては、気相重合法、塊状重合法、スラリー重合法などが挙げられる。
重合法としては、少なくとも2つ以上の重合反応器を用いた多段重合反応を採用してもよいし、反応器中に水素あるいはコモノマーを分子量調整剤として添加してもよい。また、触媒としては、公知のチーグラー・ナッタ触媒などを使用でき、助触媒成分やドナーを併用してもよい。触媒や重合条件を調整することによって、ポリプロピレン樹脂の分子量、分子量分布、立体規則性度をコントロールできる。
ポリプロピレンフィルムの原料には、上述のポリプロピレン樹脂を主成分として用いるが、必要に応じて他の樹脂も併用できる。他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリイソブテン、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(1−メチルペンテン)などのポリα−オレフィン;エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体などのα−オレフィン同士の共重合体;スチレン−ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体−ジエン単量体ランダム共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのビニル単量体−ジエン単量体−ビニル単量体ランダム共重合体;などが挙げられる。他の樹脂は、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、10質量部以下、好ましくは5質量部以下の範囲で使用することが好ましい。
また、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、塩酸吸収剤などの安定化剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤などの添加剤を用いてもよい。
ポリプロピレン樹脂からポリプロピレンキャストシートを製造する具体的な方法としては、ポリプロピレン樹脂を溶融し、冷却ドラム上に押出して固化させる方法が好適である。これにより、例えば厚み100〜1000μmのポリプロピレンキャストシートを製造する。
ポリプロピレン樹脂からポリプロピレンキャストシートを得る際において、ポリプロピレン樹脂を溶融する際の温度(溶融温度)は、通常170〜320℃、好ましくは200〜300℃である。また、溶融したポリプロピレン樹脂を固化させる冷却ドラムの温度は、85〜95℃とすることが好ましく、87〜93℃がより好ましく、89〜93℃がさらに好ましい。このような温度で冷却すると、得られたポリプロピレンキャストシートには、二軸延伸を経ることにより上記条件の粗面化表面を形成し得るβ型球晶が多数生成する。
溶融したポリプロピレン樹脂を冷却ドラムで固化する際には、ポリプロピレン樹脂の冷却ドラムへの密着性を高めるために、エアナイフにより、冷却ドラム上のポリプロピレン樹脂にエアを吹き付けることが好ましい。また、この際、エアナイフのエア温度を例えば60〜80℃とするなどして、冷却ドラムの温度よりも低くすると、最終的に得られるポリプロピレンフィルムの一方の表面(冷却ドラムに接触する側の面。)のみが上記条件の粗面化表面となりやすい。
こうして得られたポリプロピレンキャストシートの少なくとも一方の表面について、偏光顕微鏡で観察されるβ型球晶の平均半径は、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。β型球晶の平均半径がこのような大きさのポリプロピレンキャストシートからは、上記条件を満たす粗面化表面を有するポリプロピレンフィルムが得られやすい。
このようなサイズのβ型球晶を形成するためには、上述のとおり、冷却ドラムの温度を制御することが好ましい。
β型球晶の平均半径は、偏光顕微鏡の一視野(460×620μm)中で観察される全てのβ型球晶について計測される半径(=直径×1/2)の平均値である。直径の計測には、例えば(株)日本ローバー製の画像解析ソフト「ImagePro」を使用できる。
なお、偏光顕微鏡で観察される1つ1つのβ型球晶は、ほぼ真円状である。
また、ポリプロピレンキャストシートのX線回折法を用いて求められるβ晶分率は、1%以上20%未満であることが好ましく、5〜18%であることがより好ましい。β晶分率が上記範囲内であると、二軸延伸を経て得られたポリプロピレンフィルムの表面には、適度な数の突起が形成されると考えられ、上記条件を満たす粗面化表面を形成しやすい。なお、得られたポリプロピレンフィルムの単位面積(1mm)あたりの微細凹凸の個数は、100〜500個であることが好ましく、150〜450個がより好ましい。上記範囲の下限値以上の個数であると、保安性、素子巻き性が充分に優れ、上記範囲の上限値以下の個数であると、ポリプロピレンフィルムを用いて製造されたコンデンサの性能に悪影響を与えにくい。
ここでX線回折法を用いて求められるβ晶分率とは、「A.Turner−Jones et al.,Makromol.Chem.,75巻,134頁(1964)」に記載されている方法によって算出される値であり、K値と呼ばれている値である。すなわち、α型球晶由来の3本の回折ピークの高さの和とβ型球晶由来の1本の回折ピークの高さとの総和に対する、β型球晶由来の1本の回折ピークの高さの比率を百分率で表したものを、β晶分率とした。
上述の範囲のβ晶分率は、冷却ドラムの温度、及びキャスト速度(冷却ドラムの半径および回転数により制御。)などを調整することにより制御できる。具体的には、特に限定されないが、例えば、β晶分率を小さくするためには、キャスト速度一定の条件下で、冷却ドラムの温度を下げることが挙げられる。
次に、このようにして得られたポリプロピレンキャストシートを二軸延伸する。二軸延伸の具体的方法としては、公知の方法を採用できるが、逐次二軸延伸方法を採用することが好ましい。
具体的には、ポリプロピレンキャストシートを100〜160℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して、流れ方向に3〜7倍に縦延伸して直ちに室温に冷却する。引き続き、テンターに導いて、150℃以上の温度で幅方向に3〜11倍に横延伸した後、緩和、熱固定を施し、巻き取る。このような延伸工程により、ポリプロピレンキャストシート中のβ型球晶がα型球晶へと変態しつつ引き伸ばされた結果、表面に多数のクレーター状の微細凹凸が形成される。
ここでポリプロピレンキャストシートにおけるβ型球晶の平均径、β晶分率や、延伸工程における縦延伸および横延伸の温度、処理速度、延伸倍率などの条件により、ポリプロピレンフィルムの粗面化の状態、粗面化する面(両面/片面)などを制御できる。
このようにして得られたポリプロピレンフィルムには、コンデンサを製造する際の金属蒸着加工工程における接着特性を高める目的で、オンラインもしくはオフラインにて、コロナ放電処理を行ってもよい。コロナ放電処理としては、公知の方法を用いることができる。処理時の雰囲気ガスとしては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、およびこれらの混合ガスを選択することが好ましい。
以上説明したポリプロピレンフィルムは、一方または両方の表面が特定の粗面化表面であり、適度に粗面化された状態にあるため、このポリプロピレンフィルムをHEVなどのコンデンサ用の誘電体フィルムとして用いると、高電圧印加時の高温耐電圧特性などの耐電圧特性と保安性とを兼ね備えたコンデンサを製造できる。また、該ポリプロピレンフィルムは、非常に薄いフィルムでありながら、素子巻き加工にも優れる。
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。また、特に断らない限り、例中の部は「質量部」を示す。
<実施例1>
表1に示す重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、差(D)(分子量分布曲線において、対数分子量が4.5のときの微分分布値から対数分子量が6のときの微分分布値を引いた差。)、メソペンタッド分率を有するポリプロピレン樹脂(樹脂A:プロピレンの単独重合体である結晶性のアイソタクチックポリプロピレン樹脂。)のペレットを押出機に供給して樹脂温度250℃の温度で溶融し、Tダイを用いて押出し、表面温度を90℃に保持した冷却ドラム(金属ドラム)に巻きつけて固化させた。また、この際、エアナイフにより、70℃のエアを冷却ドラム上のポリプロピレン樹脂に吹き付けた。
このようにして得られたポリプロピレンキャストシートの厚さは約125μmであった。
ついで、このキャストシートを140℃に保ち、流れ方向に5倍縦延伸し、直ちに室温まで冷却した。ついで、テンターにて170℃で幅方向に10倍横延伸して、厚さ2.5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(一方の表面のみが粗面化表面のフィルム)を得た。
ポリプロピレンキャストシート、二軸延伸ポリプロピレンフィルムについて、下記測定を行った。結果を表2および3に示す。なお、得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの一方の面(粗面化表面:冷却ドラムに接触する側の面。)におけるJIS B0601(カットオフ値:0.8mm)による算術平均粗さRaも測定した。結果を表3に示す。
各種測定は以下のように行った。
[ポリプロピレン樹脂]
(重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)、差(D))
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて、以下の条件で測定し、算出した。
測定器:東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵高温GPC
HLC−8121GPC/HT型
カラム:東ソー株式会社製、TSKgel GMHhr−H(20)HTを3本連結
カラム温度:145℃。
溶離液:トリクロロベンゼン
流速:1.0ml/min
検量線の作製には、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用い、測定結果はポリプロピレン値に換算した。
(メソペンダット分率)
NMR装置を用いて、以下の条件で測定した。
高温型核磁気共鳴(NMR)装置:日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)、JNM−ECP500
観測核は:13C(125MHz)
測定温度:135℃
溶媒:オルト−ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1))
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:9.1μsec(45°パルス)
パルス間隔:5.5sec
積算回数:4,500回
シフト基準:CH(mmmm)=21.7ppm
[ポリプロピレンキャストシート(延伸前)]
(β型球晶の平均半径)
ポリプロピレンキャストシートの上述の一方の表面を偏光顕微鏡(ニコン製「ECLIPSE E200」)で観察し、その際に、一視野(460×620μm)中で確認される全てのβ型球晶について半径を計測し、平均半径を求めた。該計測には、日本ローバー製の画像解析ソフト「ImagePro」を用いた。
(β晶分率)
β晶分率は、X線回折強度測定によって求められるK値を用いて評価した。
X線回折強度測定条件は次の通り行った。
測定装置:リガク社製、X線回折装置RINT−2200
X線源:CuKα線
照射出:40KV−40mA
散乱スリット1deg
受光スリット0.3mm
走査速度1deg/min
K値は、得られた強度曲線から、以下の式を用い、α晶由来の3本の回折ピークの高さの和とβ晶由来の1本の回折ピークの比によって算出した。
K値(強度比%)=Hβ/(Hβ+Hα+HαII+HαIII)×100
〔ただし、Hβはβ晶(2θ=16deg)の結晶性回折に対応するピークの強度(高さ)、Hαはα晶(110)面の結晶性回折に対応するピークの強度(高さ)、HαIIはα晶(040)面の結晶性回折に対応するピークの強度(高さ)、HαIIIはα晶(130)面の結晶性回折に対応するピークの強度(高さ)である。ただし、いずれも非晶性散乱を差し引いた後の強度(高さ)を用いた。〕
[二軸延伸ポリプロピレンフィルム]
(厚さ)
マイクロメーター(JIS−B7502)を用いて、JIS−C2330に準拠して測定した。
(突起総体積(高さ0.02μm以上、高さ0.3μm以上)および二乗平均平方根粗さ(Sq))
光干渉式非接触表面形状測定器として(株)菱化システム製の「VertScan2.0(型式:R5500GML)」を用い、WAVEモードにより、530whiteフィルタ及び×20対物レンズを用いて、一視野あたり240μm×180μmの計測を計測対象のフィルム表面の任意の10箇所について行った。得られたデータについて、メディアンフィルタによるノイズ除去処理を行った後、カットオフ値30μmによるガウシアンフィルタ処理を行い、うねり成分を除去した。このようにして粗面化表面の状態を適切に計測できる状態とした。
そして、突起部総体積について、「VertScan2.0」の解析ソフトウェア「VS−Viewer」のプラグイン機能「ベアリング」を用いて次のようにして求めた。すなわち、「山側高さ閾値」を、所定の高さ(すなわち、0.02μmまたは0.3μm。)に設定した後、「山側体積」として表示されるものが一視野あたりの突起総体積になる。この測定を10箇所について行い、その平均値を求めた後、該平均値を一視野の面積(0.237mm×0.178mm=0.0422mm)で割ることにより、「1mmあたりの突起総体積(単位:μm/mm)」を算出した。
なお、それぞれの測定箇所における基準面は、ガウシアンフィルタ処理を行う際における「うねり成分」の高さとした。
二乗平均平方根粗さ(Sq)についても、10箇所について計測し、その平均値を採用し、表3に記載した。
<実施例2>
キャストシートの作製における、冷却ドラムの保持温度を90℃に代えて92℃にした以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。実施例1と同様にして、各種測定等を行った。結果を表2〜3に示す。
<実施例3>
表1に示す重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、差(D)(分子量分布曲線において、対数分子量が4.5のときの微分分布値から対数分子量が6のときの微分分布値を引いた差。)、メソペンタッド分率を有するポリプロピレン樹脂(樹脂B:プロピレンの単独重合体である結晶性のアイソタクチックポリプロピレン樹脂。)を用いた点と、キャストシートの作製における、冷却ドラムの保持温度を90℃に代えて92℃にした以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。実施例1と同様にして、各種測定等を行った。結果を表2〜3に示す。
<比較例1>
キャストシートの作製における、冷却ドラムの保持温度を92℃に代えて102℃にした以外は、実施例3と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。実施例1と同様にして、各種測定等を行った。結果を表2〜3に示す。
<比較例2>
表1に示す重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、差(D)(分子量分布曲線において、対数分子量が4.5のときの微分分布値から対数分子量が6のときの微分分布値を引いた差。)、メソペンタッド分率を有するポリプロピレン樹脂(樹脂C:プロピレンの単独重合体である結晶性のアイソタクチックポリプロピレン樹脂。)のペレットを用いた点と、キャストシートの作製における、冷却ドラムの保持温度を90℃に代えて105℃にした点以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。実施例1と同様にして、各種測定等を行った。結果を表2〜3に示す。
[コンデンサとしての評価]
上記各例で得られたポリプロピレンフィルムを誘電体フィルムとして用いて、以下のようにしてコンデンサを製造した。
ポリプロピレンフィルムに対して、アルミニウム蒸着により、フィッシュネット蒸着パターン(1mmマージン)と全蒸着(ベタ)パターン(1mmマージン)を蒸着抵抗6Ω/□にてそれぞれ施し、2種の蒸着フィルムを得た。これらをそれぞれ小幅にスリットした後、両蒸着フィルムを相合わせて、株式会社皆藤製作所製の自動巻取機「3KAW−4L(B)」を用い、巻き取り張力400gにて、956ターン巻回を行った。こうして得られた素子を120℃にて2時間熱処理し、素子端面に亜鉛金属を溶射し、コンデンサとした。得られたコンデンサの電気容量は、20μF(±1μF)であった。このコンデンサについて、以下のようにして、保安性と高電圧印加時の高温耐電圧特性を評価した。結果を表4に示す。
(保安性の評価(ステップアップ昇圧試験))
得られたコンデンサの保安性を評価するため、ステップアップ昇圧試験(疑似保安性試験)を以下の手順で行った。
(1)素子(コンデンサ)を試験温度(105℃)にて1時間予熱する。
(2)予熱後の素子の初期電気容量(C)を測定する。電気容量測定には安藤電気株式会社製LCRテスターAG4311を用いた。
(3)105℃の高温槽中で、高圧電源を用いて素子に直流0.6KVの電圧を1分間負荷する。
(4)1分間の電圧負荷後、素子の電気容量(C0.60)を測定し、負荷後の電気容量変化率(ΔC0.60/C=(C0.60−C)/C)を百分率で計算する。
(5)素子を105℃の高温槽内に戻し、電圧を0.05kV増加させてVkVの電圧を1分間負荷する。
(6)1分間の電圧負荷後、素子の電気容量(C)を測定し、初期電気容量からの電気容量変化率(ΔC/C=(C−C)/C)を百分率で計算する。
(7)上記(5)〜(6)の手順で、電圧を0.05KVずつ増加させたステップを繰り返し、電気容量変化率ΔC/Cが百分率で−95%未満となるまで繰り返す。
(8)上記(7)の手順で求めた、電気容量変化率が百分率で−10%未満となったステップの負荷電圧をその素子の保安性評価の指標とした。
なお、この際の負荷電圧が高い方が、保安性が優れる(電圧を上げていった際に、ある電圧を超えると蓄電性能が低下するが、その低下の仕方が緩やかである)。この際の負荷電圧が1000V以上であると、実用上好適である。
(高電圧印加時の高温耐電圧特性の評価)
得られたコンデンサの高温耐電圧特性の評価試験を以下の手順で行った。
まず、素子(コンデンサ)を試験温度(105℃)にて1時間予熱した後、試験前の初期の電気容量(C)を安藤電気株式会社製LCRテスターAG4311にて評価した。次に、105℃の高温槽中にて、高圧電源を用い、素子に直流1.05KVの電圧を1分間負荷した。電圧負荷を終えた後の素子の容量をLCRテスターで測定し、電圧負荷前後の容量変化率を百分率で算出した。ついで、素子を再度高温槽内に戻し、2回目の電圧負荷を行い、2回目の容量変化(累積)を百分率で求め、これを4回繰り返した。そして、4回目の容量変化率(ΔC×100/C)を高温耐電圧特性の指標とした。
なお、この4回目の容量変化率の値が百分率で−50%以上であると、実用上好適である。
Figure 0006137513
Figure 0006137513
Figure 0006137513
Figure 0006137513
各実施例で得られたポリプロピレンフィルムを誘電体フィルムとして用いたコンデンサは、いずれも保安性や高電圧印加時の高温耐電圧特性が良好であることが示された。
これに対して、各比較例のポリプロピレンフィルムを誘電体フィルムとして用いたコンデンサは、保安性や高電圧印加時の高温耐電圧特性が良好ではなく、これは、ポリプロピレンフィルムの粗面化表面の粗面化の度合いが過度であることに起因するものと考えられた。
また、特に実施例1と比較例1とを比較すると、これらは粗面化表面の算術平均粗さRaは同じ値であるにもかかわらず、実施例1は保安性や高電圧印加時の高温耐電圧特性が良好で、比較例1は保安性、高電圧印加時の高温耐電圧特性が良好ではない結果であった。このことから、突起総体積を用いてポリプロピレンフィルムの粗面化表面の状態を評価することが、保安性と高電圧印加時の高温耐電圧特性などの耐電圧特性とを兼ね備えたコンデンサを得るうえで、重要であることが示された。
20 微細凹凸
20a,20b 突起
20c 凹み

Claims (3)

  1. ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に金属蒸着膜が形成されている蒸着膜含有フィルムであって、
    前記ポリプロピレンフィルムが、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定した重量平均分子量が10万〜50万のポリプロピレン樹脂を主成分とし、一方の表面に微細凹凸が多数形成されることにより、前記表面が粗面化された厚さ1.0〜8.0μmのポリプロピレンフィルムであ
    前記一方の表面は、240μm×180μmの範囲内で、光干渉式非接触表面形状測定器を用いて表面形状の計測を行った際、高さ0.02μm以上の突起部総体積が1mmあたり1000〜4000μmであり、かつ、高さ0.3μm以上の突起部総体積が1mmあたり1000μm以下の粗面化表面であり、
    他方の表面は、240μm×180μmの範囲内で、光干渉式非接触表面形状測定器を用いて表面形状の計測を行った際、高さ0.02μm以上の突起部総体積が、1mmあたり1000μm未満である
    ことを特徴とする蒸着膜含有フィルム。
  2. 前記ポリプロピレンフィルムの前記粗面化表面は、240μm×180μmの範囲内で、光干渉式非接触表面形状測定器を用いて表面形状の計測を行った際、二乗平均平方根粗さ(Sq)が、0.01〜0.04μmであることを特徴とする請求項1に記載の蒸着膜含有フィルム。
  3. 請求項1又は2に記載の蒸着膜含有フィルムを含むコンデンサ。
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