JP6413159B2 - ポリプロピレンフィルムとその製造方法 - Google Patents
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Description
近年、このようなコンデンサ用フィルムには、フィルム厚のより薄いものが求められるようになってきている。これは、コンデンサ用フィルムの厚みが薄くなると、所定体積あたりの巻き回数を増加させ、コンデンサ内でフィルム面積を大きくとることができるようになり、その結果、コンデンサのより一層の小型化、高容量化が可能となるためである。
このように様々の方法で評価された耐電圧性は、互いに関連性が無いとは言えないが、必ずしも一義的に相関するものではなく、フィルムの他の様々な物性等の影響を受けていると考えられる。
前記仮想円環は、平均長軸径が20〜80μmであることが好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムの製造方法は、β型球晶を生成させたポリプロピレンキャストシートを二軸延伸する工程を有し、前記ポリプロピレンキャストシートの少なくとも一方の表面について、偏光顕微鏡で観察されるβ型球晶の平均半径が10μm以下であることを特徴とする。
X線回折法を用いて求められる前記ポリプロピレンキャストシートのβ晶分率が1〜20%であることが好適である。
本発明のポリプロピレンフィルムの表面には、多数のクレーター状の微細凹凸が形成され、該表面が粗面化されている。
図1は、本発明のポリプロピレンフィルム(後述の実施例1のポリプロピレンフィルム)の表面の光学顕微鏡写真であり、図2は、図1中の二点鎖線で囲まれる領域中に認められる1つのクレーター状の微細凹凸20を抽出して模式的に示した図である。
図示のように、クレーター状の各微細凹凸20は、ある高さでの横断面が円弧状であって互いに逆向きに湾曲して対をなす2つの凸起20a,20bを備え、これらの凸起20a,20bと凸起20a,20b間の凹み(窪み)20cとで、クレーター状をなしている。なお、2つの凸起20a,20bは合体して略円筒形をなしている場合もあり、その場合の横断面は円環状となる。
なお、横断面とは、フィルム表面に平行な面である。また、円弧状とは、概略円形または概略楕円形の周の少なくとも一部をなすような湾曲形状のことであり、円環には概略円形と概略楕円形の環が含まれる。
そして、このようなクレーター投影像Gにおいては、対をなす2つの円弧30a,30bの合計長さをLt(=L1+L2)とし、対をなす2つの円弧30a,30bを含む仮想円環を想定し、該仮想円環の全周長さをLc(=L1+L2+L3+L4)とした場合に、LtとLcとの比(Lt/Lc)が特定範囲になるという特徴を有する。
図4中、実線は、対をなす円弧からなるクレーター投影像である。一方、破線は、詳しくは後述するが、円弧30a,30bの形状(位置データ)から決定される補完線40a,40bである。そして、図4の例においては、実線で示される円弧30a,30bと、破線で示される補完線40a,40bとで形成される円環が仮想円環である。
よって、素子巻き加工時に、均一な面間隔で巻回でき、そのため、保安性や高電圧印加時の高温耐電圧特性の良好なコンデンサを製造できる。より好ましい平均値αは、0.35以上である。
なお、微細凹凸20によっては、高さ0.02μm以上の部分が完全な筒形であることもあり、その場合には、L3=L4=0となる。そのため、Lc=Lt=L1+L2であって、比(Lt/Lc)=1となる。
測定では、WAVEモードを用い、530whiteフィルタ及び×20対物レンズを用いて、一視野あたり237μm×178μmの計測を3×3視野の複数視野計測により実施する。そして、全画像をスティッチング処理して612μm×459μmの表面形状データを得る。この操作をフィルム表面の任意の3箇所について行う。
得られたデータについて、メディアンフィルタによるノイズ除去処理を行った後、カットオフ値60μmによるガウシアンフィルタ処理を行い、うねり成分を除去する。これにより、微細凹凸20の形状を良好に計測できる状態となる。
すなわち、各クレーター投影像Gに対応する各微細凹凸は、多数のβ型球晶を生成させたポリプロピレンキャストシートを二軸延伸し、各β型球晶をそれぞれα型球晶へ結晶変態させることで形成されたものであるが、キャストシートにおける多数のβ型球晶は、全てが分散性よく存在しているとは限らず、複数重なり合って存在しているものもある。ここで、複数が重なり合った状態にあるβ型球晶からは、二軸延伸により、微細凹凸も重なり合った状態で得られる。そして、そのクレーター投影像においても、円弧同士の重なり合いが認められる。このようなものは、一見しただけでは、どの円弧とどの円弧とが対をなしているかがわかりにくい場合がある。これに対して、1つずつ分散して存在しているβ型球晶からは、微細凹凸も1つずつ分散した状態で得られる。そのため、そのクレーター投影像においては、異なるβ型球晶に基く円弧同士の重なり合いがなく、どの円弧とどの円弧とが対をなしているかを一見しただけで容易に理解できる。よって、上述したとおり、3箇所の各表面形状データの画像からクレーター投影像Gを抽出する際には、「異なるβ型球晶に基く円弧同士の重なり合い」が認められないクレーター投影像Gを10個ずつ抽出する。
仮想円環とは、図4に示すように、円弧30a、30bを含む環形状のものであって、円弧(実線)30a,30bと、これら円弧30a,30bをつなぐ補完線(破線)40a,40bとで形成される。
ここで補完線40a,40bは、一方の補完線40aが、ある楕円(E0)の一部であり、他方の補完線40bが、ある楕円(E1)の一部であるとみなし、円弧30a,30bの形状(位置データ)を用いた最小二乗法により決定する。
(1)まず、図5(a)に示すように、円弧30aおよび円弧30b上における、互いに最も離れた2点をP1、P2とし、P1とP2を結んだ直線(以下、直線(P1−P2)という。)を決定する。
(2)ついで、図5(b)に示すように、直線(P1−P2)の一方側(図5中では、直線(P1−P2)よりも上方側。)に位置する部分の円弧30a,30bの形状(位置データ)から、最小二乗法により、直線(P1−P2)が長軸となるような楕円(E0)を導き出す。そして、この楕円(E0)を構成する曲線(楕円(E0)の周の一部)により、上記一方側における円弧30aと円弧30bとの間の部分を補完して補完線40aとする。なお、図5では、楕円(E0)のうち、補完線40aに相当する部分以外を図示略としている。
(3)ついで、図5(c)に示すように、直線(P1−P2)の他方側(図5中では、直線(P1−P2)よりも下方側。)に位置する部分の円弧30a,30bの形状(位置データ)から、最小二乗法により、直線(P1−P2)が長軸となるような楕円(E1)を導き出す。そして、この楕円(E1)を構成する曲線(楕円(E1)の周の一部)により、上記他方側における円弧30aと円弧30bとの間の部分を補完して補完線40bとする。なお、図5では、楕円(E1)のうち、補完線40bに相当する部分以外を図示略としている。
(4)このように決定された補完線40a,40bと、円弧30a,30bとで連結された図5(c)に示される円環が仮想円環である。
(5)そして、この仮想円環の周における各位置(周のある点を基準とした際の距離。)に対する、各位置における微細凹凸20の高さを示す、微細凹凸20の高さプロファイルを描く。この高さプロファイルから、高さ0.02μm以上の部分に対応するクレーター投影像GにおけるLtおよびLcを読み取ることができる。
例えば、図6に一例として、円弧30a,30bの各末端がいずれも楕円(E0)および楕円(E1)上に位置しない場合を示す。この場合には、これら各末端Q1,Q2,Q3,Q4から、楕円(E0)または楕円(E1)に対して、最短線である垂線(Q1−P1)、垂線(Q2−P2)、垂線(Q3−P3)、垂線(Q4−P4)をそれぞれ引く。
そして、これら4つの垂線と、曲線(P1−P3)および曲線(P2−P4)と、円弧30a,30bとを結んだものを仮想円環とする。
このように円弧30a,30bの末端のうち、楕円(E0)および楕円(E1)上に位置しないものについては、該末端から垂線をひき、その垂線を補完線40a,40bの一部とみなして、仮想円環を決定する。
なお、ここで垂線とは、楕円の周の接線に対して垂直となる線をいう。
(1)両方の表面が、比(Lt/Lc)の平均値α0.3以上となるように粗面化されている。
(2)両方の表面が粗面化されているが、一方の表面のみが比(Lt/Lc)の平均値α0.3以上となる条件を満たし、他方の表面はこの条件を満たさない。
(3)一方の表面は、比(Lt/Lc)の平均値α0.3以上となるように粗面化されているが、他方の表面は平滑であり粗面化されていない。
ここで長軸径とは、先に「仮想円環の決定方法」において説明した、円弧30aおよび円弧30b上における互いに最も離れた2点P1、P2間の距離(すなわち、直線(P1−P2)の長さ。)である(図5参照。)。そして、平均長軸径とは、上述のようにして得られる任意の3箇所の各表面形状データの画像(612μm×459μm)から、対をなす円弧30a,30bからなるクレーター投影像Gを10個ずつ抽出し、合計30個についての長軸径を求めた際のその平均値である。
仮想円環の個数は、上述のようにして得られる任意の3箇所の各表面形状データの画像(612μm×459μm)について、観察される仮想円環の数をそれぞれカウントし、3箇所についてカウントされた個数の平均値を1mm2あたりに換算することにより求められる。
一方、(2)〜(4)の溶媒で可溶な成分は、ステレオブロックと呼ばれる中間的な規則性をもったポリマーから主として構成されているとされている。
このように、逐次抽出法によって評価される立体規則性分布の割合は、いわゆるヘプタン不溶分(HI値)やアイソタクチック不溶分(II値)で評価されるような単一の溶媒による抽出量評価結果とはまったく異なる意味を持つ。
重合法としては、少なくとも2つ以上の重合反応器を用いた多段重合反応を採用してもよいし、反応器中に水素あるいはコモノマーを分子量調整剤として添加してもよい。また、触媒としては、公知のチーグラー・ナッタ触媒などを使用でき、助触媒成分やドナーを併用してもよい。触媒や重合条件を調整することによって、ポリプロピレン樹脂の分子量、分子量分布、立体規則性度をコントロールできる。
また、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、塩酸吸収剤などの安定化剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤などの添加剤を用いてもよい。
ポリプロピレン樹脂からポリプロピレンキャストシートを得る際において、ポリプロピレン樹脂を溶融する際の温度(溶融温度)は、通常170〜320℃、好ましくは200〜300℃である。また、溶融したポリプロピレン樹脂を固化させる冷却ドラムの温度は、原料樹脂の種類にもよるが、80℃以上100℃未満が好ましく、85℃以上100℃未満が好ましい。特に、高電圧印加時の高温耐電圧特性により優れるコンデンサを製造できるポリプロピレンフィルムが得られる観点からは、冷却ドラムの温度は、93℃以上100℃未満が好ましく、93℃以上97℃以下がより好ましい。
このような温度で冷却すると、得られたポリプロピレンキャストシートには、β型球晶が多数生成する。
このようなサイズのβ型球晶を形成するためには、特に、冷却ドラムの温度を80℃以上100℃未満とすることが好ましく、85℃以上100℃未満がより好ましく、90℃以上100℃未満がさらに好ましく、90℃以上97℃以下が最も好ましい。
なお、偏光顕微鏡で観察される1つ1つのβ型球晶は、ほぼ真円状である。
et al.,Makromol.Chem.,75巻,134頁(1964)」に記載されている方法によって算出される値であり、K値と呼ばれている値である。すなわち、α型球晶由来の3本の回折ピークの高さの和とβ型球晶由来の1本の回折ピークの高さとの総和に対する、β型球晶由来の1本の回折ピークの高さの比率を百分率で表したものを、β晶分率とした。
具体的には、ポリプロピレンキャストシートを、特定の表面温度に維持され、かつ、速度差が設けられたロール(縦延伸ロール)間に通す。縦延伸ロールの表面温度は、好ましくは142〜155℃、より好ましくは143〜150℃、さらに好ましくは144〜148℃である。これにより、流れ方向に3〜7倍に縦延伸して直ちに室温に冷却する。引き続き、テンターに導いて、150℃以上の温度で幅方向に3〜11倍に横延伸した後、緩和、熱固定を施し、巻き取る。このような延伸工程により、ポリプロピレンキャストシート中のβ型球晶がα型球晶へと変態しつつ引き伸ばされた結果、表面に多数のクレーター状の微細凹凸20が形成される。また、こうして形成された微細凹凸20から得られるクレーター投影像Gの仮想円環の形状は、二軸延伸における縦延伸および横延伸の延伸倍率に応じて、円形〜楕円形となる。
特に、比(Lt/Lc)の平均値αが0.3以上となる表面を備えたポリプロピレンフィルム10を得るためには、ポリプロピレンキャストシートを縦延伸する際の温度の制御が重要であり、上述のとおり、縦延伸時の縦延伸ロールの表面温度を好ましくは142〜155℃、より好ましくは143〜150℃、さらに好ましくは144〜148℃とする。このような温度で縦延伸工程を行うと、縦延伸工程におけるβ型球晶からα型球晶への変態がより効率的に起こりやすくなる。その結果、クレーター状の微細凹凸20の高さが高くなりやすくなり、それにともなって、比(Lt/Lc)の平均値αが0.3以上となるクレーター部を備えたポリプロピレンフィルム10が得られやすくなる。
ポリプロピレン樹脂(重量平均分子量(Mw)3.1×105、分子量分布(Mw/Mn)7.4、アイソタクチック成分分率97.7質量%)のペレットを押出機に供給して樹脂温度250℃の温度で溶融し、Tダイを用いて押出し、表面温度を90℃に保持した冷却ドラム(金属ドラム)に巻きつけて固化させた。このようにして得られたポリプロピレンキャストシートの厚さは約125μmであった。
ついで、このキャストシートを145℃で(縦延伸ロールの表面温度が145℃)、流れ方向に5倍縦延伸し、直ちに室温まで冷却した。ついで、テンターにて170℃で幅方向に10倍横延伸して、厚さ2.5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム10を得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンのJIS B0601(カットオフ値:0.8mm)による、一方の表面の算術平均粗さRaは、0.05μmであった。
測定器:東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵高温GPC、
HLC−8121GPC/HT型
カラム:東ソー株式会社製、TSKgel GMHhr−H(20)HTを3本連結
カラム温度:145℃
溶離液:トリクロロベンゼン
流速:1.0ml/min
検量線の作製には、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用い、測定結果はポリプロピレン値に換算した。
ここで表1に記載された二軸延伸ポリプロピレンフィルムの各項目の数値は、該フィルムの上述の一方の表面における数値である。なお、他方の表面は平滑であり粗面化されていない。また、ポリプロピレンキャストシートについてのβ晶の平均半径は、該キャストシートの表面のうち、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの上述の一方の表面に対応する面についての数値である。
(β晶の平均径)
ポリプロピレンキャストシートの上述の一方の表面を偏光顕微鏡(ニコン製「ECLIPSE E200」)で観察し、その際に、一視野(460×620μm)中で確認される全てのβ型球晶について半径を計測し、平均半径を求めた。直径の計測には、日本ローバー製の画像解析ソフト「ImagePro」を用いた。
β晶分率は、X線回折強度測定によって求められるK値を用いて評価した。
X線回折強度測定条件は次の通り行った。
測定装置:リガク社製、X線回折装置RINT−2200
X線源:CuKα線
照射出:40KV−40mA
散乱スリット1deg
受光スリット0.3mm
走査速度1deg/min
(厚さ)
マイクロメーター(JIS−B7502)を用いて、JIS−C2330に準拠して測定した。
光干渉式非接触表面形状測定器として、(株)菱化システム製の「VertScan2.0(型式 R5500GML)」を使用し、WAVEモードにて、530whiteフィルタ及び×20対物レンズを用いて、一視野あたり237μm×178μmの計測を3×3視野の複数視野計測により実施した。そして、全画像をスティッチング処理して612μm×459μmの表面形状データを得た。この操作をフィルム表面の任意の3箇所について行った。
得られたデータについて、メディアンフィルタによるノイズ除去処理を行った後、カットオフ値60μmによるガウシアンフィルタ処理を行い、うねり成分を除去した。
上述のようにして得られた任意の3箇所の各表面形状データの画像から、対をなす円弧からなるクレーター投影像を10個ずつ抽出し、それぞれについて、対をなす円弧の合計長さLtと、対をなす円弧を含む仮想円環の全周長さをLcとを計測し、比(Lt/Lc)を求めた。そして、得られた合計30の値を平均し、比(Lt/Lc)の平均値αを得た。なお、図3が表面形状データの画像である。また、クレーター投影像を抽出するにあたっては、異なるβ型球晶に基く円弧同士の重なり合いが認められないクレーター投影像を10個ずつ抽出した。
具体的手順は以下の通りである。
(1)まず、図5(a)に示すように、円弧30aおよび円弧30b上における、互いに最も離れた2点をP1、P2とし、P1とP2を結んだ直線(以下、直線(P1−P2)という。)を決定する。
(2)ついで、図5(b)に示すように、直線(P1−P2)の一方側(図5中では、直線(P1−P2)よりも上方側。)に位置する部分の円弧30a,30bの形状(位置データ)から、最小二乗法により、直線(P1−P2)が長軸となるような楕円(E0)を導き出す。そして、この楕円(E0)を構成する曲線(楕円(E0)の周の一部)により、上記一方側における円弧30aと円弧30bとの間の部分を補完して補完線40aとする。なお、図5では、楕円(E0)のうち、補完線40aに相当する部分以外を図示略としている。
(3)ついで、図5(c)に示すように、直線(P1−P2)の他方側(図5中では、直線(P1−P2)よりも下方側。)に位置する部分の円弧30a,30bの形状(位置データ)から、最小二乗法により、直線(P1−P2)が長軸となるような楕円(E1)を導き出す。そして、この楕円(E1)を構成する曲線(楕円(E1)の周の一部)により、上記他方側における円弧30aと円弧30bとの間の部分を補完して補完線40bとする。なお、図5では、楕円(E1)のうち、補完線40bに相当する部分以外を図示略としている。
(4)このように決定された補完線40a,40bと、円弧30a,30bとで連結された図5(c)に示される円環が仮想円環である。
(5)そして、この仮想円環の周における各位置(周のある点を基準とした際の距離。)に対する、各位置における微細凹凸20の高さを示す、微細凹凸20の高さプロファイルを描く。この高さプロファイルから、高さ0.02μm以上の部分に対応するクレーター投影像GにおけるLtおよびLcを読み取る。
上記(2)で得られた任意の3箇所の各表面形状データの画像から、対をなす円弧からなるクレーター投影像を10個ずつ抽出し、合計30個についての長軸径を求め、これら30のデータの平均値を仮想円環の平均長軸径とした。なお、長軸径は、すでに説明したように、円弧30aおよび円弧30b上における互いに最も離れた2点P1、P2間の距離(すなわち、直線(P1−P2)の長さ。)である(図5参照。)。
上記(2)で得られた任意の3箇所の各表面形状データの画像(612μm×459μm)について、観察された仮想円環の数をそれぞれカウントし、3箇所についてカウントされた個数の平均値を1mm2あたりに換算し、仮想円環の個数とした。
キャストシートの作製における、冷却ドラムの保持温度を90℃に代えて92℃にした以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンのJIS B0601による算術平均粗さRaは、0.05μmであった。また、実施例1と同様にして、各種測定、算出を行った。結果を表1に示す。
キャストシートの作製における、冷却ドラムの保持温度を90℃に代えて95℃にした以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンのJIS B0601による算術平均粗さRaは、0.07μmであった。また、実施例1と同様にして、各種測定、算出を行った。結果を表1に示す。
キャストシートの作製における、冷却ドラムの保持温度を90℃に代えて97℃にした以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンのJIS B0601による算術平均粗さRaは、0.10μmであった。また、実施例1と同様にして、各種測定、算出を行った。結果を表1に示す。
キャストシートの作製における、冷却ドラムの保持温度を90℃に代えて110℃にした点と、縦延伸時の温度(縦延伸ロールの表面温度)を145℃に代えて140℃とした点以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンのJIS B0601による算術平均粗さRaは、0.15μmであった。また、実施例1と同様にして、各種測定、算出を行った。結果を表1に示す。
キャストシートの作製における、冷却ドラムの保持温度を90℃に代えて120℃にした点と、縦延伸時の温度(縦延伸ロールの表面温度)を145℃に代えて140℃とした点以外は、実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンのJIS B0601による算術平均粗さRaは、0.22μmであった。また、実施例1と同様にして、各種測定、算出を行った。結果を表1に示す。
特許文献1(特開2008−133446号公報)の実施例1の記載に沿って、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの粗面化表面のJIS B0601による算術平均粗さRaは、0.14μmであった。また、実施例1と同様にして、各種測定、算出を行った。結果を表1に示す。
上記各例で得られたポリプロピレンフィルムを誘電体フィルムとして用いて、以下のようにしてコンデンサを製造した。
ポリプロピレンフィルムに対して、アルミニウム蒸着により、フィッシュネット蒸着パターン(1mmマージン)と全蒸着(ベタ)パターン(1mmマージン)を蒸着抵抗6Ω/□にてそれぞれ施し、2種の蒸着フィルムを得た。これらをそれぞれ小幅にスリットした後、両蒸着フィルムを相合わせて、株式会社皆藤製作所製の自動巻取機「3KAW−4L(B)」を用い、巻き取り張力400gにて、956ターン巻回を行った。こうして得られた素子を120℃にて2時間熱処理し、素子端面に亜鉛金属を溶射し、コンデンサとした。得られたコンデンサの電気容量は、20μF(±1μF)であった。このコンデンサについて、以下のようにして、保安性と高電圧印加時の高温耐電圧特性を評価した。結果を表2に示す。
得られたコンデンサの保安性を評価するため、ステップアップ昇圧試験(疑似保安性試験)を以下の手順で行った。
(1)素子(コンデンサ)を試験温度(105℃)にて1時間予熱する。
(2)予熱後の素子の初期電気容量(C0)を測定する。電気容量測定には安藤電気株式会社製LCRテスターAG4311を用いた。
(3)105℃の高温槽中で、高圧電源を用いて素子に直流0.6KVの電圧を1分間負荷する。
(4)1分間の電圧負荷後、素子の電気容量(C0.60)を測定し、負荷後の電気容量変化率(ΔC0.60/C0=(C0.60−C0)/C0)を百分率で計算する。
(5)素子を105℃の高温槽内に戻し、電圧を0.05kV増加させてVkVの電圧を1分間負荷する。
(6)1分間の電圧負荷後、素子の電気容量(CV)を測定し、初期電気容量からの電気容量変化率(ΔCV/C0=(CV−C0)/C0)を百分率で計算する。
(7)上記(5)〜(6)の手順で、電圧を0.05KVずつ増加させたステップを繰り返し、電気容量変化率ΔCV/C0が百分率で−95%未満となるまで繰り返す。
(8)上記(7)の手順で求めた、電気容量変化率が百分率で−10%未満となったステップの負荷電圧をその素子の保安性評価の指標とした。
なお、この際の負荷電圧が高い方が、保安性が優れる(電圧を上げていった際に、ある電圧を超えると蓄電性能が低下するが、その低下の仕方が緩やかである)。この際の負荷電圧が1000V以上であると、実用上好適である。
得られたコンデンサの高温耐電圧特性の評価試験を以下の手順で行った。
まず、素子(コンデンサ)を試験温度(105℃)にて1時間予熱した後、試験前の初期の電気容量を安藤電気株式会社製LCRテスターAG4311にて評価した。次に、105℃の高温槽中にて、高圧電源を用い、素子に直流1.05KVの電圧を1分間負荷した。電圧負荷を終えた後の素子の容量をLCRテスターで測定し、電圧負荷前後の容量変化率を百分率で算出した。ついで、素子を再度高温槽内に戻し、2回目の電圧負荷を行い、2回目の容量変化(累積)を百分率で求め、これを4回繰り返した。そして、4回目の容量変化率を高温耐電圧特性の指標とした。
なお、この4回目の容量変化率の値が百分率で−50%以上であると、実用上好適である。
一方、各比較例で得られたポリプロピレンフィルムは、比(Lt/Lc)の値が0.3よりも小さいために、素子巻き加工時に面間隔が不均一な部分が発生し、そのため、コンデンサとしての保安性や高電圧印加時の高温耐電圧特性が不十分であった。
特開2008−133446号の実施例1の追試に相当する比較例3で得られたポリプロピレンフィルムも、コンデンサとしての保安性や高電圧印加時の高温耐電圧特性に劣っていた。このことから、特開2008−133446号の実施例1のフィルムのように、フィルムとしては高い絶縁破壊電圧を有するものであっても、該フィルムを用いてコンデンサを製造したときに、該コンデンサの保安性や高電圧印加時の高温耐電圧特性は、必ずしも優れないことが、理解できた。
20 微細凹凸
20a,20b 凸起
30a,30b 円弧
Claims (1)
- 原料を溶融し冷却ドラム上で固化させてβ型球晶を生成させたキャストシートを得、
得られたキャストシートを縦延伸した後に横延伸する、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法であって、
前記原料は、重量平均分子量(Mw)が25万以上40万以下であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比から計算される分子量分布が4以上15以下であり、逐次抽出法で得られるアイソタクチック成分の割合が97質量%以上99質量%以下であるポリプロピレン樹脂原料(ただし、230℃で測定したときの溶融張力(MS)と溶融流動指数(MFR)が、log(MS)>−0.56log(MFR)+0.74なる関係式を満たす分岐鎖状ポリプロピレン(H)が混合されたものを除く。)であり、
前記キャストシートは、厚みが50〜350μmであり、少なくとも一方の表面について偏光顕微鏡で観察されるβ型球晶の平均半径が10μm以下であり、X線回折法を用いて求められるβ晶分率が1〜20%であり、
前記縦延伸の温度は142〜155℃、前記横延伸の温度は150℃以上であり、
前記縦延伸と前記横延伸の倍率は、前記縦延伸の倍率が3〜7倍の範囲となり、前記横延伸の倍率が3〜11倍の範囲となり、得られる二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さが1〜7μmとなるように設定される、ことを特徴とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法。
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