JP6192566B2 - ポリオレフィン中に含まれるソルビトール系化合物を定量分析する方法 - Google Patents
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ポリオレフィン中に含まれる添加剤の定量分析は、添加剤をポリオレフィンから抽出して分析する操作により行われることが多い。一般に、ポリオレフィン中に含まれる添加剤を抽出するには、ソックスレー抽出法が用いられる。しかし、ソックスレー抽出法はサイホンの原理を応用して溶媒を循環し、ポリオレフィン中の添加剤を抽出する方法であり、高い抽出率を得るには5時間以上の還流が必要となり、多大な時間を必要とする(例えば、非特許文献1参照)。しかも、ソルビトール系化合物は、分子間の水素結合によってネットワーク構造を形成するため、ソックスレー抽出法を用いても定量に十分な抽出率が得られないという課題があった。
すなわち、本発明によれば、ポリオレフィン中に含まれるソルビトール系化合物を定量分析する方法において、ポリオレフィン試料を、一種又は二種以上のSP値が8〜11、比誘電率が7〜30および沸点が100℃以下の溶媒(A)を含む抽出溶媒に含浸させ、抽出溶媒の温度が40〜70℃の範囲で超音波溶媒抽出する操作を含むソルビトール系化合物を定量分析する方法が提供される。
また、本発明によれば、ポリオレフィン中に含まれるソルビトール系化合物を定量分析する方法において、ポリオレフィン試料を、一種又は二種以上のSP値が8〜11、比誘電率が7〜30および沸点が100℃以下の溶媒(A)と、一種又は二種以上のSP値が8〜11および沸点が100℃以下の溶媒(B)および/又は一種又は二種以上の比誘電率が7〜30および沸点が100℃以下の溶媒(C)含む抽出溶媒に含浸させ、抽出溶媒の温度が40〜70℃の範囲で超音波溶媒抽出する操作を含むソルビトール系化合物を定量分析する方法が提供される。
また、ポリオレフィン中に配合するソルビトール系化合物の量の規格値と、前記のいずれかの方法によって求まるソルビトール系化合物の量の分析値との差を求めるステップと、前記差の大小に応じて配合するソルビトール系化合物の使用量を調整するフィードバックのステップを含むことを特徴とするポリオレフィン樹脂の製造方法が提供される。
(1)試料を、フィルム状又はパウダー状にする。(試料作製操作)
(2)(1)で作製した試料から定量する対象物質を抽出、分離して、抽出試料を得る。(抽出操作)
(3)(2)で得られた抽出試料から対象物質を定量的に検出する。(定量操作)
本発明の方法は、ポリオレフィン中に含まれるソルビトール系化合物を定量分析する方法において、ポリオレフィン試料を、特定の溶媒を含む抽出溶媒に含浸させ、抽出溶媒の温度が40〜70℃の範囲で超音波溶媒抽出する操作を含むことを特徴とする。以下、本発明のポリオレフィン中に含まれるソルビトール系化合物を定量分析する方法について、操作毎に、詳細に説明する。
まず、試料を作製する操作(試料作製操作)を行うことができる。
試料の形状はフィルム状またはパウダー状であることが好ましい。試料を熱プレス等して、フィルムにすることができる。より表面積を大きくするために、フィルムを細かく切断してもよい。フィルムの厚みは、抽出効率がより向上するため、100μm以下とすることが好ましい。
プレス温度は、試料の融点、試料の劣化や添加剤の分解などを考慮して定めることができる。例えば試料がポリプロピレンの場合、プレス温度は、190〜250℃程度が好ましい。プレス圧力は、低すぎるとフィルムの厚みが十分に薄くならず、高すぎるとプレス装置が故障する原因となることから、例えば試料がポリプロピレンの場合、プレス圧は、5〜20MPa程度が好ましい。プレス時間は、短すぎると試料が十分に溶融しないためフィルムの厚みが十分に薄くならず、長すぎると試料の劣化や添加剤の分解が生じる原因となることから、例えば試料がポリプロピレンの場合、プレス時間は、30〜300秒程度が好ましい。
試料を凍結粉砕等して、パウダー状にすることができる。ペレット等の状態から直接粉砕することもできるし、フィルム又は切断されたフィルムの状態から粉砕することもできる。パウダーの粒径は、抽出効率がより向上するため、1mm以下とすることが好ましく、粒径100μm以下とすることがより好ましい。
次に、試料から定量する対象物質を抽出、分離して、抽出試料を得る、抽出操作を行うことができる。
試料には(1)試料作製操作で作製した試料を用いることができる。
本発明においては、抽出操作は、以下の通りの手順で行うことが好ましい。試料を抽出溶媒と共にフラスコ等の容器に入れ、超音波抽出器に固定する。この状態で超音波抽出し、濾紙等を用いて濾別し、抽出液をナスフラスコ等の容器へ回収する。抽出液から抽出溶媒をエバポレーター等で完全に除去して、抽出試料を得る。
SP値は、POLYMER HANDBOOK FOURTH EDITION (ISBN 0−471−16628−6)に記載の方法に準じて求めることができる。
比誘電率は、化学便覧 基礎編 改5版(ISBN 4−621−07341−9 C3543)に記載の方法に準じて求めることができる。
また、本発明に用いる抽出溶媒は、上述の比誘電率を満足するしないにかかわらず、上述のSP値および沸点を同時に満足する溶媒(B)と、上述のSP値を満足するしないにかかわらず、上述の比誘電率および沸点を同時に満足する溶媒(C)との混合溶媒を用いることができる。溶媒(B)、一種でも二種以上の併用であってもよい。溶媒(C)、一種でも二種以上の併用であってもよい。
さらに、本発明に用いる抽出溶媒は、上述のSP値、比誘電率および沸点を同時に満足する溶媒(A)と、上述の比誘電率を満足するしないにかかわらず、上述のSP値および沸点を同時に満足する溶媒(B)および/または上述のSP値を満足するしないにかかわらず、上述の比誘電率および沸点を同時に満足する溶媒(C)との混合溶媒を用いることができる。溶媒(A)は、一種でも二種以上の併用であってもよい。溶媒(B)および/または溶媒(C)、一種でも二種以上の併用であってもよい。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、t−ブタノールなどが挙げられる。1−プロパノール、エタノール、メタノールが好ましく、特に1−プロパノールが好適である。
第三の態様において、クロロホルム等の溶媒(B)の使用量は、テトラフドロフラン等の溶媒(A)の容積に対して0.1〜0.9倍が好ましく、0.2〜0.8がより好ましい。アルコール等の溶媒(C)の使用量は、テトラフドロフラン等の溶媒(A)の容積に対して0.1〜0.9倍が好ましく、0.2〜0.8がより好ましい。
試料の絶対量が少なすぎると、抽出されるソルビトール系化合物の濃度が薄く、分析装置の定量限界未満となり、定量性に欠ける恐れがある。また、試料の量が相対的に多すぎたり、抽出溶媒の量が相対的に少なすぎたりすると、抽出溶媒に試料フィルムが十分浸漬せず、抽出率が低くなる恐れがある。また、抽出溶媒の絶対量が多すぎると、抽出後の溶媒除去の時間が長く、効率が悪くなる恐れがある。そこで、試料の量は0.5〜3gが好ましく、抽出溶媒の量は30〜100mlが好ましい。
そして、抽出試料を用いてソルビトール系化合物を定量的に検出する、定量操作を行うことができる。検出方法は、特に限定されないが、GC、GC−MS、LC、LC−MSまたはNMRの分析機器を用いる方法が好ましい。
ソルビトール系化合物は、ポリオレフィンに対して、造核剤として作用することがあり、ポリオレフィン樹脂の透明性、剛性等の物性を改質する添加剤として利用されることが多い。物性の改質幅は添加量に依存するので、所望の改質幅が安定的に得られるように、添加量が規格値化されるのが一般的である。
試料1:ソルビトール化合物Aを0.16重量%添加したポリプロピレン
試料2:ソルビトール化合物Bを0.45重量%添加したポリプロピレン
ソルビトール化合物A:1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール
ソルビトール化合物B:ノニトール,1,2,3−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−o−[(4−プロピルフェニル)メチレン]
溶媒1:テトラヒドロフラン
テトラヒドロフラン:SP値9.1、比誘電率7.6、沸点65℃
溶媒2:クロロホルム/1−プロパノール=2/1(体積比)の混合溶媒
クロロホルム:SP値9.3、比誘電率4.81、沸点61.1℃
1−プロパノール:SP値11.9、比誘電率20.8、沸点97.2℃
溶媒3:クロロホルム/2−プロパノール=2/1(体積比)の混合溶媒
クロロホルム:SP値9.3、比誘電率4.81、沸点61.1℃
2−プロパノール:SP値11.5、比誘電率20.18、沸点82.3℃
溶媒4:クロロホルム/エタノール=2/1(体積比)の混合溶媒
クロロホルム:SP値9.3、比誘電率4.81、沸点61.1℃
エタノール:SP値12.7、比誘電率25.3、沸点78.2℃
酢酸エチル:SP値9.1、比誘電率6.08、沸点77.1℃
溶媒6:1−プロパノール
1−プロパノール:SP値11.9、比誘電率20.8、沸点97.2℃
溶媒7:N,N−ジメチルホルムアミド
N,N−ジメチルホルムアミド:SP値12.1、比誘電率38.25、沸点153℃
溶媒8:クロロホルム
クロロホルム:SP値9.3、比誘電率4.81、沸点61.1℃
溶媒9:クロロホルム/メタノール=2/1(体積比)の混合溶媒
クロロホルム:SP値9.3、比誘電率4.81、沸点61.1℃
メタノール:SP値14.5、比誘電率33.0、沸点64.6℃
ソルビトール化合物を超音波溶媒抽出した抽出試料に10mlのクロロホルムを加えて試料溶液を調製する。0.2μmのシリンジフィルターで試料溶液を濾過し、表1のガスクロマトグラフィーの条件で測定し定量する。
15mgのソルビトール化合物Aをクロロホルム100mlに溶解したものを標準液とした。試料溶液と標準液をそれぞれガスクロマトグラフィーで測定し、試料溶液のクロマトグラムのソルビトール化合物Aに帰属されるピークの面積と標準液のクロマトグラムのソルビトール化合物Aのピークの面積とを用いて定量した。
[実施例2] 試料には試料1を、抽出溶媒には溶媒2を用い、実施例1と同様の条件でソルビトール化合物Aを抽出し、測定と定量をした。
[実施例4] 試料には試料2を、抽出溶媒には溶媒2を用い、実施例3と同様の条件でソルビトール化合物Bを抽出し、測定と定量をした。
[実施例5] 試料には試料2を、抽出溶媒には溶媒3を用い、実施例3と同様の条件でソルビトール化合物Bを抽出し、測定と定量をした。
[実施例6] 試料には試料2を、抽出溶媒には溶媒4を用い、実施例3と同様の条件でソルビトール化合物Bを抽出し、測定と定量をした。
[比較例2] 試料には試料2を、抽出溶媒には溶媒6を用い、実施例3と同様の条件でソルビトール化合物Bを抽出し、測定と定量をした。
[比較例3] 試料には試料1を、抽出溶媒には溶媒7を用い、実施例1と同様の条件でソルビトール化合物Aを抽出し、測定と定量をした。
[比較例4] 試料には試料1を、抽出溶媒には溶媒8を用い、実施例1と同様の条件でソルビトール化合物Aを抽出し、測定と定量をした。
[比較例5] 試料には試料1を、抽出溶媒には溶媒9を用い、実施例1と同様の条件でソルビトール化合物Aを抽出し、測定と定量をした。
[比較例6] 試料には試料1を、抽出溶媒には溶媒1を用い、超音波を当てず実験をした。その他は実施例1と同様の条件でソルビトール化合物Aを抽出し、測定と定量をした。
[比較例7] 試料には試料1を、抽出溶媒には溶媒1を用い、抽出温度を30℃とした。その他は実施例1と同様の条件でソルビトール化合物Aを抽出し、測定と定量をした。
Claims (9)
- ポリオレフィン中に含まれるソルビトール系化合物を定量分析する方法において、ポリオレフィン試料を、一種又は二種以上のSP値が8〜11、比誘電率(20℃)が7〜30および沸点が100℃以下の分子中にフラン環構造を有する溶媒(A)を含む抽出溶媒に含浸させ、抽出溶媒の温度が40〜70℃の範囲で超音波溶媒抽出する操作を含むことを特徴とするソルビトール系化合物を定量分析する方法。
- ポリオレフィン中に含まれるソルビトール系化合物を定量分析する方法において、ポリオレフィン試料を、クロロホルムと、一種又は二種以上の比誘電率が7〜30および沸点が100℃以下のアルコール(溶媒(C))とを含む抽出溶媒に含浸させ、抽出溶媒の温度が40〜70℃の範囲で超音波溶媒抽出する操作を含むことを特徴とするソルビトール系化合物を定量分析する方法。
- ポリオレフィン中に含まれるソルビトール系化合物を定量分析する方法において、ポリオレフィン試料を、一種又は二種以上のSP値が8〜11、比誘電率が7〜30および沸点が100℃以下の分子中にフラン環構造を有する溶媒(A)と、クロロホルムおよび/又は一種又は二種以上の比誘電率が7〜30および沸点が100℃以下のアルコール(溶媒(C))含む抽出溶媒に含浸させ、抽出溶媒の温度が40〜70℃の範囲で超音波溶媒抽出する操作を含むことを特徴とするソルビトール系化合物を定量分析する方法。
- 分子中にフラン環構造を有する溶媒(A)が、テトラヒドロフランであることを特徴とする請求項1又は3に記載のソルビトール系化合物を定量分析する方法。
- 溶媒(C)が、炭素数2以上のアルコールであることを特徴とする請求項2に記載のソルビトール系化合物を定量分析する方法。
- 溶媒(C)が、炭素数3以上のアルコールであることを特徴とする請求項2に記載のソルビトール系化合物を定量分析する方法。
- 溶媒(C)が、1−プロパノールであることを特徴とする請求項6に記載のソルビトール系化合物を定量分析する方法。
- ポリオレフィン中に配合するソルビトール系化合物の量の規格値と、請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって求まるソルビトール系化合物の量の分析値との差を求めるステップと、前記差の大小に応じて配合するソルビトール系化合物の使用量を調整するフィードバックのステップを含むことを特徴とするポリオレフィン樹脂の製造方法。
- ポリオレフィン中に配合するソルビトール系化合物の量の規格値と、請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって求まるソルビトール系化合物の量の分析値とを比較するステップと、当該ポリオレフィンを販売するか否かを決定するステップとを含むことを特徴とするポリオレフィン樹脂の品質管理方法。
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