JP6189744B2 - 試料保持具 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体集積回路の製造工程または液晶表示装置の製造工程等において用いられる、半導体ウエハ等の各試料を保持する際に用いられる試料保持具に関するものである。
半導体集積回路の製造に用いられるシリコンウエハを始めとする半導体ウエハまたは液晶表示装置の製造に用いられるガラス基板等の板状の試料は、それらの製造工程において製造装置または検査装置の支持台あるいは試料保持具の上に保持されて、加工処理または検査等が行なわれる。
製造工程では、複数の製造装置および検査装置を使用することが一般的であり、シリコンウエハ等の試料を試料保持具に保持するための手段は、製造工程中の製造装置および検査装置の種類ならびに次の装置にまで搬送するための搬送装置の種類に応じて様々な形態のものが提案されている。
ここで、シリコンウエハ表面に成膜等の処理をする装置(以下、試料処理装置という)に使用される試料保持具を例にとる。試料処理装置は、下側に開口する貫通孔を有する筺体と筺体の内部に設けられた試料保持具とを有する。試料保持具は、上側主面に試料保持面を有するセラミック体とセラミック体の下側主面に設けられた金属部材とを備えている。
セラミック体の内部には、発熱抵抗体または静電吸着用の電極等が設けられており、これらに接続された配線がセラミック体の下側主面から筺体の貫通孔を通って外部に引き出されている。
金属部材は、筒状の部材であって、その内側で筺体の貫通孔を囲むように配置されるとともに、筺体およびセラミック体との接合部がそれぞれろう材で接合されている。これによって筐体内部の試料保持面が露出する空間の気密が確保される。セラミック体の内部の電極等から引き出された配線は、この筒状の金属部材の内側を通って筐体の貫通孔から外部に引き出される。
特許文献1には、このような試料保持具が開示されており、特にセラミック体にろう付けで接合される筒状の金属部材について、筒部と鍔部とを有する構成が開示されている。
特開2000−219578号公報
しかしながら、特許文献1に記載の試料保持具においては、温度50〜450℃のヒートサイクルをかけるためにセラミック体内部の発熱抵抗体に100〜300Vの電圧を印加し、20〜100MHzの高周波使用下で使用している。このとき、セラミック体の静電吸着用電極に電圧を印加する際には、正極と負極との間で電圧差による電場の分布やばらつきによってセラミック体に歪みが発生し、20〜100MHzの高周波使用下でセラミック体に微小な振動が生じるため、金属部材のセラミック体へのろう付け部には振動を
伴う応力がかかる。
また、セラミック体と金属部材との間には、セラミック体と金属部材との熱膨張率の違いに起因して、加熱および冷却によって熱膨張差による応力が生じる。
さらに、この応力に対してろう付け部におけるろう材が厚い部分は変形しにくいため、ろう材とセラミック体との接合面やセラミック体自体にクラックが入ることがあり、試料保持具の寿命が短くなることがあった。その結果、ヒートサイクル下における試料保持具の長期信頼性を向上させることが困難であるという問題点があった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、セラミック体と金属部材との間に生じる応力による影響を低減することができる試料保持具を提供することにある。
本発明の一態様の試料保持具は、上側主面および下側主面を有し、前記上側主面に試料保持面を有するセラミック体と、該セラミック体の前記下側主面に接合された鍔部および該鍔部の内周から下側に向かって伸びる筒部を有する金属部材とを備え、前記筒部の内周面と前記セラミック体の下側主面とがメニスカス状に設けられたろう材によって接合されており、該ろう材の表面に凹部が分布しているとともに、該凹部が前記メニスカス状の中央領域において周縁領域よりも多いことを特徴とする。
本発明の一態様の試料保持具によれば、金属部材がセラミック体の下側主面に接合された鍔部およびこの鍔部の内周から下側に向かって伸びる筒部を有しており、筒部の内周面とセラミック体の下側主面とがメニスカス状に設けられたろう材によって接合されている。そして、このろう材の表面に凹部が分布しているとともに、この凹部がメニスカス状の中央領域において周縁領域よりも多いことから、セラミック体と筒部を有する金属部材との熱膨張差により生じる応力を、ろう材が凹部周辺で変形しやすくなることによって吸収してくれるようになる。また、凹部がメニスカス状の中央領域において周縁領域よりも多いことから、ろう材がメニスカス状の表面に沿って全体として変形しやすくなるため、効果的に応力を吸収することができる。
また、ろう材の表面に凹部が分布していることから、ろう材の表面積が大きくなり、ろう付け部に伝わってきた熱を効果的に逃がすことができるので、金属部材の熱膨張を抑制することができ、したがって熱応力を軽減できるので、ろう材およびセラミック体におけるクラックの発生を抑制することができる。
また、ろう材の表面に凹部が分布していることから、ろう材が凹部周辺で変形しやすくなり、振動を吸収して金属部材およびセラミック体の接合部にかかる応力を吸収することができる。その結果、ろう材およびセラミック体にクラックが発生しにくくなる。以上により、試料保持具の長期信頼性を向上させることができる。
本発明の一実施形態の試料保持具およびこれを用いた試料処理装置の断面図である。 図1に示す試料保持具の斜視図である。 図1に示す試料保持具の部分拡大断面図である。 本発明の他の実施形態の試料保持具の部分拡大断面図である。 従来の試料保持具の例を示す部分拡大断面図である。
以下、本発明の一実施形態に係る試料保持具1およびこれを用いた試料処理装置10について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る試料保持具1およびこれを用いた試料処理装置10を示す断面図である。また、図2は図1に示す試料保持具1の斜視図であり、図1において下向きに示した下側主面をひっくり返して上向きにして示している。図1および図2には、それぞれ下側主面の向きを矢印で図中に示している。なお、ここで「上側主面」および「下側主面」とは説明の都合上定めた向きを示していることから、試料保持面30を有する試料保持具1の上側主面を試料処理装置10の仕様に応じて上側以外の方向(例えば、下側の方向または横側の方向等)に向けて試料保持具1を使用することに関しては何ら問題ない。
図1に示すように、試料処理装置10は、筺体2と、筺体2の内部に設けられた試料保持具1とを備えている。試料処理装置10は、例えば、半導体製造装置として用いられる。この場合には、筺体2はいわゆる真空処理装置のチャンバーとして用いられ、試料保持具1には、試料として例えば、シリコンウエハ等が保持される。
筺体2は、底面の中央部に下側に開口する貫通孔20を有しており、この貫通孔20を囲って気密構造を構成するように試料保持具1が取り付けられている。試料保持具1は、上側主面に試料保持面30を有するセラミック体3と、セラミック体3の下側主面に接合された金属部材4とを備えている。この金属部材4が筺体2の貫通孔20を取り囲んで筐体2に接合されている。金属部材4は、筺体2にろう材5によって接合されて、筺体2の貫通孔20をセラミック体3とともに封止している。これによって、セラミック体3の試料保持面30が露出する筺体2内の空間を気密構造としている。
セラミック体3は、試料保持面30にウエハ等の板状の試料を保持するための部材である。図1および図2に示すように、セラミック体3は、例えば、円板状の部材である。セラミック体3は、上側主面に試料保持面30を有する。
セラミック体3は、例えば、窒化アルミニウム等のセラミック材料から成る。また、酸化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素等のセラミック材料から成るものであってもよい。セラミック体3は、例えば、複数のセラミックグリーンシートを積層して、これをホットプレス法等で焼成することによって得ることができる。また、必要に応じて、セラミック体3の内部に静電吸着用の電極またはヒータ用の配線等が設けられていてもよい。これら電極または配線パターンを設けるには、焼成前の複数のセラミックグリーンシートのうち所望のグリーンシートにスクリーン印刷法等を用いて、焼成後に電極または配線と成る形状に導体ペーストのパターンを印刷しておけばよい。
セラミック体3の寸法は、試料保持面30に保持される試料の大きさに応じて適宜設定される。セラミック体3の寸法は、試料保持面30にシリコンウエハを保持する場合であれば、例えば、円板状として試料保持面30の直径を30〜500mm程度に、厚みを5〜25mm程度に設定できる。
金属部材4は、セラミック体3を保持するための部材である。図1および図2に示すように、金属部材4は、セラミック体3の下側主面に接合された鍔部41および鍔部41から下側(セラミック体3の下側主面から離れる方向)に向かって伸びる筒部42を有する。これら鍔部41と筒部42とは一体的に形成されている。鍔部41と筒部42とは、例えば、切削加工等によって一体に形成することができる。また、鍔部41と筒部42とを接合して一体になるように形成することもできる。金属部材4は、例えばFe−Ni−Co等の耐熱性および生産性に優れた金属材料から成る。
鍔部41は、セラミック体3の下側主面に接合される部位である。鍔部41は、例えば円環状の部位であって、セラミック体3の下側主面に接して、ろう付け等によって接合されてセラミック体3と一体になるように設けられている。鍔部41は、幅方向に広がりを持った上面がセラミック体3の下側主面に対向している。鍔部41の寸法は、セラミック体3の寸法に応じて適宜設定されるが、円板状のセラミック体3に対しては、例えば、内径を20〜450mm程度に、円環の幅を2〜15mm程度に設定できる。
なお、試料処理装置10においては試料処理用の各種の電力やガスが筐体2の外部から貫通孔20を通してセラミック体3に供給されることから、鍔部41の内径は、セラミック体3の下側主面に配置される各種の端子(図示せず)の配置および試料処理装置10の内部にガスを導入するためにセラミック体3に設けられるガス供給孔(図示せず)等の配置等を踏まえて設定される。また、鍔部41の円環の幅は、セラミック体3と金属部材4との接合強度を十分に確保できるように設定される。
また、本実施形態における金属部材4は円環状の鍔部41および円筒状の筒部42を有するものであるが、形状はこれに限られない。鍔部41の形状は楕円形状の環状または三角形状、四角形状もしくは六角形状等の多角形状の環状であってもよい。筒部42の形状も同様に、楕円形状の筒状または三角形状、四角形状もしくは六角形状等の多角形状の筒状であってもよい。さらに、鍔部41の形状と筒部42の形状との組合せも、円環状と円筒状のように同様の形状に限られず、異なる形状の組合せであっても構わない。
図3は、図1に示す試料保持具1の部分拡大断面図である。図2と同じくセラミック体3の下側主面を上向きにして、セラミック体3の下側主面と金属部材4の鍔部41および筒部42の上端近傍との接合部分を拡大して示している。図3においても、下側主面の旨を矢印で図中に示している。図3に示すように、鍔部41とセラミック体3とはろう材5によって接合されており、筒部42の上端とセラミック体3とも同じくろう材5によって接合されている。そして、ろう材5は、筒部42の内周面側および鍔部41の外周側でそれぞれメニスカス状に設けられており、筒部42の内周面側で大きなメニスカス状になっている。ろう材5としては、例えば、銀ろうを用いることができる。
本実施形態では、鍔部41とセラミック体3との接合を良好に行なうために、セラミック体3の下側主面には、ろう付け用の下地層としてメタライズ層6が設けられている。メタライズ層6は、鍔部41の形状に対応して設けられている。すなわち、鍔部41が円環状であれば、これに対応するように、メタライズ層6もそれよりもやや幅が広い円環状である。メタライズ層6としては、例えば、Ag−Cu−Ti系合金等を用いることができる。
金属部材4の筒部42は、筺体2の内部においてセラミック体3を支えるための筒状の部位である。筒部42は鍔部41の内周から伸びており、筒部42の上端は、円環状の鍔部41の内周に連続している。すなわち、本実施形態では筒部42は円筒状である。筒部42の下端は、例えば、試料処理装置10における筺体2の内側底面に貫通孔20の周囲で接合される。すなわち、金属部材4は、鍔部41の上面がセラミック体3の下側主面に接合されるとともに、筒部42の下端の部位が筺体2に接合されて用いられる。
本実施形態の試料保持具1においては、筒部42の内周面とセラミック体3の下側主面とを接合しているメニスカス状のろう材5の表面に凹部51が分布しているとともに、この凹部51がメニスカス状の中央領域において周縁領域よりも多くなっている。この凹部51は断面図では分からないが多数の窪みとして存在しており、その形状や大きさはメニスカス状の表面に存在できるものとして様々である。例えば、その形状としては、不定形
ではあるが、断面形状においては主に円弧状である。凹部51の大きさとしては、ろう材5の厚み方向の幅51aが10μm〜2mmであり、ろう材5の厚みの5〜60%の大きさ、好ましくは10〜40%の大きさの幅である。また、ろう材5の中央部に向かう深さ51bが10μm〜2mmであり、ろう材5の厚みの5〜90%の大きさ、好ましくは20〜60%の大きさの深さである。また、金属部材4の筒部42の周方向に沿った長さは、10μm以上から内周全体に至る長さまでの種々の長さを取り得る。そして、この窪み状の凹部51がろう材5のメニスカス状の中央領域において周縁領域よりも少なくとも1個以上、好ましくは3個以上多く存在しているとよい。
あるいは、凹部51は、筒部42の内周面の円周に沿った溝状のものであってもよい。溝状の凹部51としては、以上と同様の幅51aおよび深さ51bで、金属部材4の筒部42の周方向に沿った長さが100μm以上であることが好ましい。
メニスカス状のろう材5がこのような形状であることによって、ろう材5が変形しやすくなり、また、メニスカス状の中央部においてろう材5がより変形しやすくなっている。これにより、セラミック体3と金属部材4との間でヒートサイクルおよび振動によって生じる応力をろう材5が凹部51で吸収できる形状になっている。また、凹部51が分布していることによって、ろう材5の表面積が大きくなり、ろう付け部に伝わって来る熱をろう材5の表面からの放熱で逃がすことができるようになる。この結果、金属部材4の熱膨張を抑制することができ、熱応力を軽減できてセラミック体3におけるクラックの発生を抑制することができる。また、ろう材5が凹部51の変形によって振動を吸収して、金属部材4およびセラミック体3の接合部にかかる応力を吸収することができる。その結果、ろう材5およびセラミック体3にクラックが発生しにくくなる。従って、本発明によれば、試料保持具1の寿命が長くなり、長期信頼性を向上させることができる。
ろう材5の表面に分布している凹部51は、図3に示すように、筒部42の厚みの中心を通る円筒面8(一点鎖線で示す)に対して、ろう材5の中央側(円筒面8の外側)に位置することが好ましい。これにより、金属部材4の鍔部41と筒部42との間の曲面部よりも曲率が小さい凹部51ができることになるので、凹部51によってろう材5が変形しやすくなる。その結果、ろう材5にかかる応力を凹部51によってより効果的に吸収できるようになるので、ろう材5およびセラミック体3にクラックが発生しにくくなる。従って、試料保持具1の寿命が長くなり、長期信頼性を向上させることができる。
また、ろう材5の表面の凹部51は、筒部42の内周面の円周に沿って連続的に分布していることが好ましい。例えば、金属部材4の筒部42の内周に沿って、ろう材5の表面の凹部51の幅51aが、10μm〜2mmの範囲で狭くなったり広くなったりして連続的に変化していることが望ましい。また、深さ51bについても、10μm〜2mmの範囲で浅くなったり深くなったりして連続的に変化していることが望ましい。また、これら幅51aや深さ51bが連続的に変化している凹部51が、金属部材4の筒部42の周方向に沿って長さ10μmから内周全体に至る長さで形成されていることが好ましい。これにより、金属部材4全体に荷重がかかった場合に鍔部41の外周に荷重ばらつきによる応力ばらつきが発生したとしても、連続的に分布している凹部51があることで外周全体にかかる応力を内周側のろう材5によって吸収しやすくなる。その結果、ろう材5およびセラミック体3にクラックが発生しにくくなり、試料保持具1の長期信頼性を向上させることができる。
また、ろう材5の表面には、筒部42の内周面の円周に沿って、大きさが比較的大きい複数の凹部51が規則的に配置していることが好ましい。具体的には、金属部材4の筒部42の内周に沿って、幅51aが20μm以上で深さ51bが20μm以上であり、筒部42の周方向の長さが100μm以上の凹部51が、筒部42の内周に沿って180°以
下の均等の角度で分割した間隔に形成されているとよい。また、これら比較的大きい複数の凹部51は、円周に沿って均等に配置していることが好ましい。具体的には、金属部材4の筒部42の内周に沿って、幅51aが20μm以上で深さ51bが20μm以上であり、筒部42の周方向の長さが100μm以上の凹部51が、筒部42の内周に沿って180°以下の均等に分割した間隔で形成されており、それら凹部51の大きさのばらつき比率(最大のものの大きさを最小のものの大きさで割った比率)が200%以下であることがよい。好ましくは、幅51aのばらつきが40μm以下であり、深さ51bのばらつきが100μm以下であり、筒部42の周方向に沿った長さのばらつきが200μm以下であるとよい。
試料処理装置10の筐体2にろう付けあるいは溶接等によって接合されている金属部材4の筒部42は、試料処理装置10の振動に伴うねじり(外周方向)の応力を受けることがある。この応力を比較的大きな凹部51が規則的に分布したろう材5で吸収することができる。つまり、ろう材5の表面に規則的に大きな凹部51を配置することにより、1箇所に応力集中することがないので、これら大きな凹部51で応力を吸収することができる。その結果、ろう材5およびセラミック体3にクラックが発生しにくくなり、試料保持具1の長期信頼性を向上させることができる。
図4は、本発明の他の実施形態の試料保持具を示す図3と同様の部分拡大断面図である。図4に示すように、セラミック体3の下側主面に接合された鍔部41の下面(図中では上側に位置している)には、セラミックリング7が、ろう材5で鍔部41に接合されることによって設けられていてもよい。このセラミックリング7は、鍔部41の全周に沿った円環状の部材である。このようにしてセラミックリング7とセラミック体3とによって鍔部41を挟むことによって、より強固に鍔部41を固定することができる。このセラミックリング7は、セラミック体3と同じセラミック材料から成ることが好ましい。これにより、セラミックリング7とセラミック体3との熱膨張率を近付けることができるので、両者に挟まれた鍔部41について、ヒートサイクル下における変形を抑制することができる。セラミックリング7と鍔部41との固定は、セラミック体3と鍔部41とを固定する場合と同様に、ろう材5による接合を用いることが好ましい。また、ろう材5によってセラミックリング7と鍔部41との接合を良好に行なうために、セラミックリング7の上面(図中では下側に位置している、セラミック体3側の面)には、セラミック体3の下面にメタライズ層6を設ける場合と同様にメタライズ層が設けられていることが好ましい。
メニスカス状のろう材5の表面に凹部51が分布している本実施形態の試料保持具1の作製方法を以下に説明する。
セラミック体3に形成した円環状のメタライズ層6に、同じく円環状のろう材を配置し、このろう材上に金属部材4の鍔部41を搭載し、この金属部材4を円環状のカーボン治具にて固定する。次に、円環状の鍔部41の金属部材4の内側から、円環状の鍔部41と筒部42の間の曲面部の曲率半径よりも小さい径の、ろう材では接合されないワイヤーを円環状に配置する。次に、筒部42の内側から円環状のカーボン治具を用いて、円環状のワイヤーを鍔部41と筒部42との間の曲面部の中央部分に押し込んで固定する。しかる後、真空中にて800℃〜900℃で加熱してろう材を溶融させて、室温に戻してからワイヤーを取り除くことで、金属部材4の筒部42の内周面とセラミック体3の下側主面とがメニスカス状のろう材5によって接合され、ろう材5の表面に凹部51が分布しているとともに、これら凹部51がメニスカス状の中央領域において周縁領域よりも多い試料保持具1を作製できる。
このとき、円環状に配置するワイヤーは、例えばカーボン製のもの、あるいはニッケル等の金属にBNコート材を塗布したものを用いることができる。また、このワイヤーの径
は、鍔部41と筒部42との間の曲面部の曲率半径よりも20〜80%小さい半径のものを用いるとよい。また、ろう材としては、銀ろう、銀銅ろう、金銅ろうなどを用いることができる。そして、径の異なるワイヤーを用いて、半径の小さなものを外側(鍔部41の外周側)に配置し、半径の大きなものを内側(筒部42の内周面側)に配置して、大きい径のワイヤーで小さい径のワイヤーを押し込むようにしてろう付けすることで、メニスカス状の表面を有するろう材5の表面に凹部51を形成することができる。
本発明の試料保持具の実施例について、以下のようにして試料を作製した。以下では試料として静電チャックとなる試料保持具を作製した。
出発原料として、アルミナ還元窒化法によって製造された平均粒径が1.5μm、酸素含有量が0.8%、炭素含有量が300ppmの窒化アルミニウム粉末を用いた。この窒化アルミニウム粉末に対して焼結助剤を加えずに、有機系のバインダーおよび溶剤を混ぜて混合した後、60℃で乾燥させて複数のセラミックグリーンシートを作製した。これら複数のセラミックグリーンシートのうち所望のグリーンシートにスクリーン印刷法等を用いて、焼成後に静電吸着用の電極またはヒータ用の配線と成る導体ペーストのパターンを印刷し、これらのパターンをセラミック体3に埋設するように他のセラミックグリーンシートを4MPaの圧力で積層した。この積層体を窒素雰囲気中で脱脂し、次いで2000℃で2時間かけて焼成した後、切削加工を施して、半径が200mmで厚みが6mmの円板状のセラミック体3を作製した。また、このセラミック体3の下側主面に、内部に埋設した電極および配線に外部から電気的に接続するための各種の端子の取付穴およびセラミック体3を通して試料処理装置10の内部にガスを導入するためのガス供給穴をマシニング穴加工によって形成した。
金属部材4は、Fe−Ni−Co合金のインゴットから切削加工により、幅が10mmの円環状の鍔部41および内径が300mmの円筒状の筒部42を有する形状に作製した。
金属部材4の鍔部41を接合するセラミック体3の下側主面には、Ag−Cu−Ti系合金のメタライズ層6を、円環状の鍔部41に対応するように幅が20mmの円環状に形成した。
次に、セラミック体3の下側主面を上向きにして、セラミック体3に形成したメタライズ層6にこのメタライズ層6と同じ円環状で厚みが0.1mmの銀ろう材を配置し、この上に金属部材4の鍔部41を搭載し、円環状のカーボン治具を鍔部41に重ねて配置して0.02MPaの荷重を加えて固定した。
次に、鍔部41と筒部42との間の曲面部に対して筒部42の内周面側から円周に沿って、鍔部41と筒部42との間の曲面部の曲率半径が1.5mmであったのに対して半径が1mmのカーボンワイヤーを配列した。このカーボンワイヤーは、金属部材4の筒部42の周方向に沿って、長さが313mmのものを1mmの隙間を設けてろう材5のメニスカスに沿って並ぶように3個配列した。次いで、筒部42の内周面側から円環状のカーボン治具を用いて、カーボンワイヤーを鍔部41と筒部42との間の曲面部に位置する銀ろう材の中央部に0.01MPaの荷重を加えて押し込んで固定した。
しかる後、真空中で850℃で銀ろう材を溶融させて、室温に戻してからカーボン治具およびカーボンワイヤーを取り除いた。これにより、金属部材4の鍔部41がセラミック体3の下側主面に接合され、筒部42の内周面とセラミック体3の下側主面とがメニスカス状に設けられたろう材5によって接合されており、ろう材5の表面に凹部51が分布し
ているとともに、この凹部51がメニスカス状の中央領域において周縁領域よりも多い、凹部51を3箇所形成した本発明の実施例の試料1を作製した。
また、上記と同様に、セラミック体3に形成したメタライズ層6に、幅が20mmで厚みが0.1mmの円環状の銀ろう材を配置し、この上に金属部材4の鍔部41を搭載し、円環状のカーボン治具を鍔部41に重ねて配置して0.02MPaの荷重を加えて固定した。
次に、鍔部41と筒部42との間の曲面部に対して筒部42の内周面側から円周に沿って、鍔部41と筒部42との間の曲面部の曲率半径が1.5mmであったのに対して半径が1mmで長さが18mmのカーボンワイヤーを2mmの間隔を空けて配列し、その2mmの間隔に半径が0.5mmのカーボンワイヤーを挿入した。次いで、筒部42の内周面側から円環状のカーボン治具を用いて、両方のカーボンワイヤーを鍔部41と筒部42との間の曲面部に位置する銀ろう材の中央部に0.01MPaの荷重を加えて固定した。
しかる後、真空中で850℃で銀ろう材を溶融させて、室温に戻してからカーボン治具および両方のカーボンワイヤーを取り除いた。これにより、金属部材4の鍔部41がセラミック体3の下側主面に接合され、筒部42の内周面とセラミック体3の下側主面とがメニスカス状に設けられたろう材5によって接合されており、ろう材5の表面に凹部51が分布しているとともに、この凹部51がメニスカス状の中央領域において周縁領域よりも多い、上記試料1における凹部51よりも大きい47箇所の凹部51が円周に沿って規則的に配置した本発明の実施例の試料2を作製した。
次に、この試料2に対して、金属部材4の鍔部41の上に外周部から2mmはみ出すように幅が18mmで厚みが0.5mmの円環状の銀ろう材を配置し、この銀ろう材の上に、セラミック体3と同じセラミック材料で作製して表面にメタライズ層を形成したセラミックリング7をメタライズ層を鍔部41側にして搭載し、その上から円環状のカーボン治具で0.02MPaの荷重を加えて固定した。そして、金属部材4の鍔部41にセラミックリング7をろう付けして、図4に示す構成の本発明の実施例の試料3を作製した。
また、比較例の試料を次のようにして作製した。上記と同じセラミック体3に形成したメタライズ層6に、幅が20mmで厚みが2mmの円環状の銀ろう材を配置し、この上に金属部材4の鍔部41を搭載し、円環状のカーボン治具を鍔部41に重ねて配置して0.02MPaの荷重を加えて固定した。しかる後、真空中で850℃で銀ろう材を溶融させて、金属部材4の鍔部41がセラミック体3の下側主面に接合された試料を得た。この試料では、筒部42の内周面とセラミック体3の下側主面とがメニスカス状に設けられたろう材によって接合されていたが、このろう材の表面には凹部が分布していないものであった。これにより、比較例の試料4を作製した。この試料4(試料保持具1’)について、図3および図4と同様の部分拡大図を図5に示す。
以上の試料1〜4に対して、セラミック体の内部の電極ヒーター部に高周波電源を接続して、周波数が50MHz下で最大200Vまでの電圧を印加しながら、温度を常温から450℃まで1時間で昇温した後に1時間降温するヒートサイクルを1サイクルとして、500サイクルのヒートサイクル試験を実施した。そして、0サイクル(初期状態)、10サイクル、50サイクル、100サイクル、150サイクル、200サイクル、250サイクルおよび500サイクル後に、金属部材4の筒部42の内周面とセラミック体3の下側主面とを接合しているろう材(ろう材5)のメニスカス状の表面に発生するクラックの状態を観察した。
その結果、本発明の実施例である試料1〜3では、500サイクル後においてもろう材
5のメニスカス状の表面にクラックは発生しなかった。また、ろう材5による接合部近傍のセラミック体3の下側主面にもクラックは発生しなかった。
これに対して、比較例の試料4では、50サイクル後にろう材のメニスカス状の表面にクラックが発生した。また、この試料4を切断して断面を観察したところ、セラミック体3の下側主面にもクラックが発生していた。従って、静電チャックとしての寿命が短かいものであった。
また、試料1〜4に対して、周波数を50MHzとして振動による耐久試験を実施した。このとき、常温でろう材5のメニスカス状の表面中央領域において、レーザー変位計にて振動の状態を観察したところ、最大で1μmの振動が観察された。この耐久試験の結果、本発明の実施例である試料1〜3では、1000時間後でもろう材5のメニスカス状の表面にクラックは発生しなかった。これに対して、比較例の試料4では、200時間後にろう材のメニスカス状の表面にクラックが発生した。
以上の結果より、本発明によれば、試料保持具の長期信頼性を向上させることができることを確認できた。
1:試料保持具
2:筺体
20:貫通孔
3:セラミック体
30:試料保持面
4:金属部材
41:鍔部
42:筒部
5:ろう材
51:凹部
10:試料処理装置

Claims (1)

  1. 上側主面および下側主面を有し、前記上側主面に試料保持面を有するセラミック体と、該セラミック体の前記下側主面に接合された鍔部および該鍔部の内周から下側に向かって伸びる筒部を有する金属部材とを備え、前記筒部の内周面と前記セラミック体の下側主面とがメニスカス状に設けられたろう材によって接合されており、該ろう材の表面に凹部が分布しているとともに、該凹部が前記メニスカス状の中央領域において周縁領域よりも多いことを特徴とする試料保持具。
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