JP6186760B2 - スクリーン、及びスクリーンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、映写機から投射された映像光を視認可能に表示するスクリーン、及び当該スクリーンの製造方法に関する。
通常、映写機から投射された映像光を視認可能に表示するスクリーンは、反射型、透過型を問わず映写機から投射された映像光を表示することを目的としており、観察者からみてスクリーンの反対側(背面側)を観察することができない。透過型のスクリーンでは背面側から投射された映像光を観察者側(正面側)に透過することにより映像を表示するので背面側からの光を透過することは可能である。しかしながらこのような透過型のスクリーンであっても特許文献1に記載のように表面に凹凸が必要であり、光の透過は可能であるが背面側の様子を観察することはできない。
特許文献2には、光を透過可能な単位プリズム形状と、複数の単位プリズム形状の間に配置される光吸収部と、裏面側に設けられて映像光を反射するとともに裏面からの光を透過可能な反射透過層と、が具備された半透過型反射スクリーンが開示されている。これによれば、単位プリズム形状を透過した映像光を反射透過層で反射させて観察者側に提供することによりスクリーンとして機能するとともに、プリズム形状を通して背面側の様子を観察することができるとされている。
特開平9−114003号公報 特開2006−243693号公報
しかしながら、特許文献2に開示されているような構成のスクリーンでは、表示させるべき映像光の表示や背面側の様子を観察する際に明るさが不足するという課題があった。
そこで本発明は上記した問題点に鑑み、映像を明るく表示することができるとともに、いずれの側からも反対側の視認性に優れるスクリーンを提供することを課題とする。またこのようなスクリーンの製造方法を提供する。
以下、本発明について説明する。
請求項1に記載の発明は、映写機から投射された映像光を観察者に視認可能に表示するスクリーンであって、透光性を有するシート状の基材層と、基材層の一方の面に形成される光散乱層と、を備え、光散乱層は、基材層の一方の面に沿って複数並べて配置され、基材層側を形成する面とその反対側となる面とが平行とされた、光を透過する光透過部、及び、複数の光透過部間に配置され、樹脂に光散乱剤又は顔料が含有されてなる光を散乱する光散乱部、を有し、光透過部の屈折率が光散乱部の樹脂の屈折率と同じ、スクリーンである。
請求項に記載の発明は、請求項に記載のスクリーンにおいて、光散乱部の一部には、光を吸収する光吸収部位が具備されている。
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載のスクリーンにおいて、透過する光の一部を吸収し、他を透過する光吸収層がさらに設けられる。
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれかに記載のスクリーンにおいて、光透過部と光散乱部との界面が微小な凹凸形状である。
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれかに記載のスクリーンにおいて、少なくとも一方の最表面にはさらにハードコート性、防汚性、帯電防止、及び撥水性のうち少なくとも1つの機能を備えた層が積層されている。
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれかに記載のスクリーンにおいて、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、及び近赤外線吸収剤の少なくとも1つを含む層を備えている。
請求項に記載の発明は、映写機から投射された映像光を観察者に視認可能に表示する請求項1〜6のいずれかに記載のスクリーンを製造する方法であって、一方の面に接着剤が積層された、透光性を有するシート状の基材層の他方の面に、基材層の他方の面に沿って複数並べて配置され、光を透過する光透過部を形成する工程と、複数の光透過部間に光を散乱する材料を充填して光散乱部を形成する工程と、光透過部のうち基材層が配置される側とは反対側の面に接着剤が積層されたハードコート層を積層する工程と、を含むスクリーンの製造方法である。
請求項に記載の発明は、映写機から投射された映像光を観察者に視認可能に表示する請求項1〜6のいずれかに記載のスクリーンを製造する方法であって、一方の面にハードコート層が積層された、透光性を有するシート状の基材層の他方の面に、基材層の他方の面に沿って複数並べて配置され、光を透過する光透過部を形成する工程と、複数の光透過部間に光を散乱する材料を充填して光散乱部を形成する工程と、光透過部のうち基材層が配置される側とは反対側の面に接着剤が積層された光を透過する層を積層する工程と、を含むスクリーンの製造方法である。
本発明によれば、映像を明るく表示することができるとともに、背面側の視認性にも優れるスクリーンを提供することができる。
第一の形態にかかるスクリーン100を説明する斜視図である。 スクリーン100の断面を示し、層構成を模式的に表した図である。 図3(a)は断面における脚部が凸状である光散乱部の例、図3(b)は断面における脚部が凹状である光散乱部の例、図3(c)が断面における脚部が折れ線状である光散乱部の例、及び図3(d)が下底が凹状である光散乱部の例を説明する図である。 変形例であるスクリーン100’の光散乱層を拡大して示した図である。 他の変形例であるスクリーン100”の断面を示し、層構成を模式的に表した図である。 第二の形態にかかるスクリーン200の断面を示し、層構成を模式的に表した図である。 第三の形態にかかるスクリーン300を説明する斜視図である。 スクリーン300の断面を示し、層構成を模式的に表した図である。 第四の形態にかかるスクリーン400の断面を示し、層構成を模式的に表した図である。 第五の形態にかかるスクリーン500を説明する斜視図である。 スクリーン500の断面を示し、層構成を模式的に表した図である。 スクリーン500の断面を示し、層構成を模式的に表した他の例の図である。 変形例であるスクリーン500’の断面を示し、層構成を模式的に表した図である。 第六の形態にかかるスクリーン600の断面を示し、層構成を模式的に表した図である。 第七の形態にかかるスクリーン700を説明する斜視図である。 スクリーン700の断面を示し、層構成を模式的に表した図である。 第八の形態にかかるスクリーン800の断面を示し、層構成を模式的に表した図である。 実施例1、2の光散乱層の形状を説明する図である。 実施例の結果を説明するグラフである。
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す形態に基づき説明する。ただし本発明は当該形態に限定されるものではない。また、以下に示す各図では、説明のため形状を誇張して記載することがある。
[反射スクリーン]
<固定型反射スクリーン>
図1は第一の形態にかかるスクリーン100の斜視図であり、映写機10と併せて示した。スクリーン100と映写機10とで映像表示装置を構成している。ここで、本形態のスクリーン100は、反射型のスクリーンのうち、常設されるタイプのもの(固定型反射スクリーン)の例である。従ってスクリーン100は図1からわかるようにAで表した観察者の側が正面となり、正面側に映写機10が設置され、これとは反対側(背面側物体Bが存在する側)が背面側となる。
図2は、スクリーン100を設置した姿勢(すなわち、スクリーン面を鉛直に立てた姿勢)において図1にII−IIで示した線に沿った鉛直方向におけるスクリーン100の厚さ方向断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。図2では見易さのため、繰り返しとなる符号は一部省略している(以降に示す各図において同じ。)。
スクリーン100は、背面側からパネル111、該パネル111に貼合された積層体112を備えている。そして積層体112は、背面側から接着層113、基材層114、光散乱層115、接着層118、保護層119、ハードコート層120を備えている。以下、スクリーン100を構成するこれらの構成要素について説明する。図2では、図2の紙面左が背面側、紙面右が正面側、紙面上方が天、紙面下方が地となる。
パネル111は、ガラスパネルや樹脂パネル等、透光性を有する板状のパネルである。従って、パネル111を構成する部材としては公知の板ガラスや樹脂板を用いることができる。これにより固定型のスクリーンとして安定した設置が可能となる。
接着層113は、パネル111に積層体112を接着するための層である。接着層113を構成する材料としては、パネル111と積層体112とを接着できるものであれば特に限定されず、公知の粘着剤、接着剤、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。その中では例えば接着層113を構成する材料としてアクリル系の粘着剤を用いることができ、さらに具体的にはアクリル系共重合体とイソシアネート化合物とを組み合わせた粘着剤を挙げることができる。接着層113を構成する材料は、スクリーン100の性質上、透光性、耐候性に優れることが好ましい。
接着層113の厚さは特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。接着層113が薄過ぎるとパネル111と積層体112との密着性が低下する虞がある。また、接着層113が厚過ぎると接着層113の厚さを均一にすることが困難になる。
基材層114は、光散乱層115を形成するための基材となる層である。従って基材層114は、透光性を有するとともに光散乱層115の変形を防止できるように支持する。かかる観点から、基材層114を構成する材料の具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等のうちの1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
基材層114の厚さは特に限定されないが、25μm以上300μm以下であることが好ましい。基材層114の厚さがこの範囲を外れると、加工性に問題を生じる虞がある。例えば、基材層114が薄過ぎればしわが生じやすくなる。一方、基材層114が厚過ぎれば、スクリーン100を製造する工程のうち中間工程において巻き取りが困難になる。
光散乱層115は光透過部116及び光散乱部117を有している。光散乱層115は、図2に示した断面を有して紙面奥/手前側に延在する。すなわち、図2に表れる断面を有して光透過部116及び光散乱部117がスクリーン面に沿った一方向(本形態では水平方向)に延びるように配置されるとともに、該一方向とは異なる方向(本形態では鉛直方向)のスクリーン面に沿って複数の光透過部116が配列されている。そして光散乱部117は光透過部116の間に配置されている。
光透過部116は光を透過する部位であり、本形態では光透過部116のうち基材層114側の面とその反対側面(接着層118側の面)とは平行に形成されている。これによって、後に説明するようにスクリーン100を通して背面側の景色が見やすくなる。好ましくは光透過部は光を散乱させることなく透過する。これにより背面側の景色の見易さがさらに向上する。ここで「散乱することなく光を透過する」とは、意図的に散乱させる材料等を添加することなく形成された部位であることを意味し、材料中を光が透過するときに不可避的に若干の散乱が生じることは許される。
光透過部116を構成する材料は、基材層114と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし両者間で屈折率差があるとその界面で光が偏向されてしまう可能性が高まるので、同じ材料であること、又は異なる材料であっても屈折率差が小さい、あるいは屈折率差がないことが好ましい。
光透過部116と基材層114とを同じ材料で構成する場合には、基材層114と光透過部116とを一体に形成することもできる。また、光透過部116と基材層114とを異なる材料で構成する場合、及び同じ材料で構成する場合であっても、基材層114と光透過部116を別々に形成し、公知の手段により積層してもよい。
光透過部116の形成方法の具体例は後で説明する。
光透過部116を構成する材料としては、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
光散乱部117は、本形態では到達した光を散乱反射させることができるように構成されている。詳しくは次の通りである。
上記したように光透過部116はシート面に沿った方向に所定の間隔で並列され、光透過部116間には、台形断面を有する凹部が形成されている。本形態における凹部は、保護層119側(正面側)に長い下底、基材層114側(背面側)に短い上底を有する台形状の断面を有した溝であり、ここに光散乱部117を構成する材料が充填されることにより光散乱部117が形成されている。従って光散乱部117も凹部に沿った台形断面を具備している。
光散乱部117を構成する材料としては、本形態では光を反射して散乱する材料であれば特に限定されることはない。
このような材料としては、例えば白色顔料や銀色顔料を混ぜた硬化性樹脂が挙げられる。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物が挙げられる。銀色顔料としては、例えば、アルミニウム、クロムなどの金属が挙げられる。これにより効率よく光を散乱反射させることができる。また、硬化性樹脂は光透過部116を構成する材料と同様のものを用いることができる。
また、光散乱部117を透明なバインダー樹脂と該バインダー樹脂とは屈折率が異なる透明な散乱剤とを混合させた材料で構成してもよい。透明なバインダー樹脂としては光透過部116と同様なものを用いることができる。一方、当該透明な散乱剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレンを中心としたモノマーを重合して得られた架橋粒子が挙げられる。当該架橋粒子の具体例としては、アイカ工業株式会社製のガンツパール(登録商標)が挙げられる。上記架橋粒子は、アクリル酸エステル及びスチレンとの混合比を変えることによって、屈折率を制御することができる。例えば、アクリル比を高くすることで屈折率を1.49程度にすることができ、スチレン比を高くすることで屈折率を1.59程度にすることができる。また、散乱剤にはウレタン架橋粒子を用いることも可能である。当該ウレタン架橋粒子の具体例としては、根上工業株式会社製のアートパール(登録商標)が挙げられる。また、散乱剤は中空粒子にすることも可能である。
光散乱部117の屈折率は光透過部116の屈折率と同じ又は近いことが好ましい。これにより光透過部116と光散乱部117との界面における屈折、及びこれによる波長分散を防止することができ、画面に観察される虹状のムラ(模様)の発生を抑制できる。
ただし、光散乱部117の屈折率と光透過部116の屈折率とを異なるように形成することを妨げるものではない。例えば光散乱部117の屈折率を光透過部116の屈折率よりも低くなるように形成すれば、界面に入射する光が全反射臨界角より大きい場合、全反射を利用して光を反射することができる。そのためには上記光散乱部の硬化性樹脂、バインダー樹脂の屈折率を調整する。
光散乱部117の台形断面のうち脚部を構成する斜辺の、スクリーン面法線に対する角度θ(図2参照)は、0°以上20°以下であることが好ましい。スクリーン面法線に対する角度θが0°未満(本形態でθが負であるとは、図2に表れる断面において、光散乱部117の基材層114側の底の幅より保護層119側の底の幅が短い形状となることを意味する。)になるように光散乱部117を形成するとすれば、光散乱層115を形成する際に用いる金型の作製が困難になり、金型を作製したとしてもこれにより成形した材料の離型性が悪くなる。一方、θが大き過ぎると光透過部間に形成される凹部の開口幅に対する凹部の深さのアスペクト比を大きくとることが困難となり、後述するような光散乱層115における所望の効果が低減する虞がある。
ただし、本発明において光透過部及び光散乱部の形状は図2に例示した形態に限定されない。従って、図2に表れる断面に相当する断面において、光透過部及び光散乱部が長方形(θ=0°のとき)であってもよい。
光散乱部の台形断面の脚部を構成する斜辺は曲線状、折れ線状であってもよい。図3に各例の光散乱部の断面形状を表した。図3(a)が脚部が凸状の曲線の光散乱部117aの例、図3(b)が脚部が凹状の曲線の光散乱部117bの例、及び図3(c)が脚部が折れ線状の光散乱部117cの例である。断面における脚部が曲線状のときには、当該曲線の接線が各部において上記θと同じ条件であることが好ましい。また、断面における脚部が折れ線状のときには、該折れ線を構成する各線が上記θと同じ条件であることが好ましい。
また、図3(d)は、光散乱部の台形断面のうち下底側(光透過部間に形成される溝の開口側)が凹状に形成されている例の光散乱部117dである。この場合、積層体を形成するときに光散乱部117dを含む光散乱層が他の層に積層された際には、当該凹状の内側には粘着層118の粘着剤が充填される。
また、散乱反射をさせ易くするという観点から光散乱部117と光透過部116との界面を微小な凹凸が無数に形成された面であるマット面としてもよい。
光散乱部117が並列されるピッチは特に限定されないが、10μm以上200μm以下であることが好ましい。光散乱部117のピッチが狭すぎると、光散乱層115による後述の効果が低減する虞があるとともに、さらに微細な形状になるので加工が困難となる。一方、光散乱部117のピッチが広すぎると、金型で成形する際に材料の離型性が低下する傾向にある。
光散乱部117の台形断面のうち、保護層119側の幅は特に限定されないが、5μm以上150μm以下であることが好ましい。この幅が狭すぎると光散乱層115による後述の効果が低減する虞があるとともに、さらに微細な形状になるので加工が困難となる。一方、この幅が広すぎると金型で成形する際に材料の離型性が低下する傾向にある。
また、複数の光散乱部117の関係のうち、図2に示した見込み角θは、映写機からの映像光の投射角θに対して、次の関係を有していることが好ましい。
Figure 0006186760
ここで、nは光透過部116の屈折率を表している。これにより映像光が光散乱部117に達する割合が多くなり、より明るい映像を観察者に提供することができる。
ここで、「見込み角θ」とは、図2に表れているように、隣接する2つの光散乱部117のうちの一方の光散乱部117の背面側角部と、他方の光散乱部117の正面側角部とを結ぶ線であり、1つの光透過部116の台形断面における対角線を構成する線が、スクリーン100の法線となす角である。
また、「映像光の投射角θ」とは、映写機から投射される映像光のうちその光軸が、スクリーン100の法線となす角である(図2のθ参照。ここでは映像光L101の投射角をθとしている。)。このときの光軸はこのような映写機の分野における通常に用いられる光軸と同じ意味である。
この式は、映像光の投射角θは空気中(屈折率=1)、見込み角θは光透過部116中をそれぞれ対象としているので、スネルの法則から、
1・sinθ=n・sinθ
の関係に基づいて求めることができる。
光散乱層115の厚さは特に限定されないが、10μm以上200μm以下であることが好ましい。光散乱層115が薄過ぎると光散乱部117の高さ(厚さ方向大きさ)が不足して所望の光学的効果が低減してしまったり、光散乱部117の加工自体が困難になったりする虞がある。一方、光散乱層115が厚過ぎると逆に光散乱部117が高くなりすぎ、そのための金型の製造、及び金型からの材料の離型性が低下し、生産性が悪くなる虞がある。
接着層118は、保護層119を光散乱層115の面のうち基材層114とは反対側の面に貼り付けるための層である。接着層118に用いられる材料は特に限定されることはないが、上記の目的を有し、透光性を備えていれば各種材料を用いることができる。これには例えば公知の粘着剤、接着剤、紫外線硬化樹脂、電離放射線硬化樹脂、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。例えばアクリル系の粘着剤を用いることができ、さらに具体的にはアクリル系共重合体とイソシアネート化合物を組み合わせた粘着剤を挙げることができる。
接着層118の厚さは特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。接着層118が薄過ぎると保護層119と光散乱層115との密着性が低下する虞がある。また、接着層118が厚過ぎると接着層118の厚さを均一にすることが困難になる。
保護層119は、上記基材層114と対になり、光散乱層115を挟むように配置される層であり、基材層114と併せて光散乱層115を保護する機能を有する。保護層119はこのような機能を有するものであれば、その材料は特に限定されることはないが、例えば上記した基材層114と同様の材料により構成することができる。
ハードコート層120は、表面保護を目的として、スクリーン100のうちパネル111とは反対側の最表面に設けられる層である。ハードコート層120は透明な樹脂層として形成することができ、擦り傷、表面汚染に対する耐性の観点から、硬化性樹脂が硬化してなる樹脂硬化層として形成することが好ましい。
具体的には電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂等を要求性能に応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系等が挙げられる。例えば、アクリレート系の電離放射線硬化性樹脂は、単官能(メタ)アクリレートモノマー、2官能(メタ)アクリレートモノマー、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーなどの(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー乃至は(メタ)アクリル酸エステルプレポリマーなどからなる。さらに3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを例示すれば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等がある。
また、ハードコート層120には、耐汚染性向上の機能を追加してもよい。これは例えばシリコーン系化合物、フッ素系化合物などを添加することにより可能となる。さらにその他の機能として帯電防止性向上、撥水性向上の機能を有するものとしてもよい。
帯電防止性向上のために用いることができる材料としては、電子伝導タイプではPEDOT−PSS(PEDOT(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene);3,4−エチレンジオキシチオフェンポリマー)とPSS(poly(styrenesulfonate);スチレンスルホン酸ポリマー)とを共存)などが挙げられ、イオン導電タイプではリチウム塩系材料等が挙げられる。
また、撥水性向上のために用いることができる材料としては、フッ素系化合物等が挙げられる。
以上説明した構成を具備するスクリーン100は例えば次のように製造することができる。
スクリーン100は、パネル111に積層体112を貼合することによって製造することができる。積層体112は、例えば次のように作製する。
光散乱層115は金型ロールを用いる方法により形成する。すなわち、円筒状であるロールの外周面に光散乱層115の光透過部116の形状を転写可能な凹凸が設けられた金型ロールを準備する。そして金型ロールとこれに対向するように配置されたニップロールとの間に、基材層114となる基材を挿入する。このとき基材の一方の面には接着層113が予め形成されていることが好ましい。その際には、接着層113が他にくっついてしまわないように、接着層113の表面のうち基材と反対側の表面には剥離シートが付けられている。そして、基材のうち接着層113が配置されていない側の面と金型ロールとの間に光透過部116を構成する組成物を供給しながら金型ロール及びニップロールを回転させる。これにより金型ロールの表面に形成された凹凸の凹部内に光透過部116を構成する組成物が充填され、該組成物が金型ロールの凹凸の表面形状に沿ったものとなる。
ここで、光透過部116を構成する組成物としては、上記したものが好ましいが、さらに具体的には次の通りである。すなわち、光硬化型プレポリマー(P1)に、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(I1)を配合した光硬化型樹脂組成物を用いることができる。
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
また、上記光重合開始剤(I1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン化合物(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置及び光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。なお、光透過部116の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドである。
これらの光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(I1)は、それぞれ、1種類で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
金型ロールと基材との間に挟まれ、ここに充填された光透過部116を構成する組成物に対し、基材側から光照射装置により光を照射する。これにより、光透過部116を構成する組成物を硬化させ、その形状を固定させることができる。そして、離型ロールにより金型ロールから基材層114及び成形された光透過部116を離型する。
次に、光透過部116間に形成された凹部に光散乱部117を構成する組成物を充填して硬化させることによって、光散乱部117を形成することができる。具体的には、例えば電離放射線硬化性樹脂やその他公知の硬化性樹脂に、上記した光を反射して散乱する材料を分散させた組成物を凹部に過剰に供給し、ブレードによりスキージして余分な組成物を掻きとって除去するとともに、凹部に組成物を充填する。このようにして充填された組成物に対して適切な硬化方法を適用して硬化性樹脂を硬化させる。
以上により光散乱層115が形成される。
一方、保護層119の一方の面にハードコート層120、他方の面に接着層118を積層した積層体を準備し、この積層体の接着層118が光散乱層115に接するように積層する。なお、接着層118が紫外線硬化樹脂、光硬化性樹脂等からなる場合には、積層後に紫外線又は光を照射して硬化させればよい。
以上のように作製した積層体112を接着層113によりパネル111に貼合することでスクリーン100を製造することができる。
スクリーン100には上記した各層のいずれかに、他の機能を付加させるための構成を備えてもよい。これには例えば、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、又は近赤外線吸収剤を添加し、紫外線吸収機能、熱線吸収機能、又は近赤外線吸収機能を備えさせることが挙げられる。
近赤外線吸収機能は、近赤外線吸収剤(近赤外線吸収色素)を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。近赤外線吸収色素としては、800nm以上1100nm以下の波長領域の光を吸収するものを用いることが好ましい。該波長領域の近赤外線の透過率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。一方で、近赤外線吸収色素は可視光領域、即ち、380nm以上780nm以下の波長領域で、十分な透過率を有することが好ましい。
紫外線吸収機能は、以下に例示する紫外線吸収剤を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(TINUVIN P、TINUVIN P FL、TINUVIN 234、TINUVIN 326、TINUVIN 326 FL、TINUVIN 328、TINUVIN 329、TINUVIN 329 FL、全てBASFジャパン株式会社製)や、トリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN 1577 ED、BASFジャパン株式会社製)、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(CHIMASSORB 81、CHIMASSORB 81 FL、全てBASFジャパン株式会社製)、ベンゾエート系紫外線吸収剤(TINUVIN 120、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
熱線吸収機能は、以下に例示する熱線吸収剤を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。熱線吸収剤としては、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)又はスズドープ酸化インジウム(ITO)、フタロシアニン化合物等の金属酸化物超微粒子などが挙げられる。
次に、スクリーン100を図1のようにして設置したときの作用について説明する。図2に模式的な光路例を示した。なお当該光路例は概念的に示したものであり、屈折、反射の程度等を厳密に表したものではない。以下同様である。
映写機10(図1参照)から投射された映像光L101は、ハードコート層120、保護層119、及び接着層118を透過して光散乱層115の光散乱部117に到達する。光散乱部117に到達した映像光L101は、光散乱部117によって散乱反射される。そして、散乱反射された光の一部が映写機10側、すなわち観察者側に向きが変えられる。そしてスクリーン100から出射して観察者に映像として提供される。
スクリーン100によれば、光散乱部117に達した映像光が吸収されることなく散乱反射されて観察者に出射されるので、明るい映像光を提供することができる。すなわち、映写機10からの映像光を効率よく観察者側に反射されて出射することが可能である。
一方、スクリーン100の背面側からスクリーン100を通過して観察者に達する光は例えばL102による。すなわち、背面側からの光L102は光散乱部117に達することなくスクリーン100を透過して観察者に観察される。従って、基材層114の面(パネル111の面)に対して平行な面である光透過部116の基材層114側の面及びその反対側の面を介して背面側からの光が観察者に提供され、明確に明るくスクリーン100の背面側を観察することができる。
以上のように、スクリーン100によれば映写機からの映像光を効率よく観察者に提供することができる。さらにはスクリーン100によれば効率よく背面側の光を観察者に提供することもでき、背面側を明確に明るく観察することも可能である。
例えばこのようなスクリーン100を、これまでオフィス等で用いられていたスクリーンの代わりにする等、従来のスクリーン用途に用いることができる。これに加えその他にも、ガラス張りで店内を視認できる店舗のショーウィンドウのガラスにスクリーン100を適用し、スクリーン100に効果的な映像を投射すれば、映像と店内とをいずれも視認することができ、ディスプレイ効果を向上させることができる。
図4はスクリーン100の変形例であるスクリーン100’のうち、光散乱層115’にのみ注目し拡大して示した図である。スクリーン100’は、スクリーン100の光散乱層115のうち光散乱部117の代わりに光散乱部117’が適用された点でスクリーン100と異なる。他の部分はスクリーン100と同様である。従ってここでは、光散乱部117’についてのみ説明し、他の部位については同じ符号を用いるとともに説明を省略する。
光散乱部117’は、光散乱部位117’a及び光吸収部位117’bを備えている。光散乱部位117’aは光を散乱反射する部位であり、該光散乱部位117’aを構成する材料は上記説明した光散乱部117と同様である。
光散乱部117’は光散乱部117と同様に隣接する光透過部116間の凹部に形成されるが、光散乱部位117’aは、凹部内のうち当該凹部の開口側(図4の紙面右側)の一部には形成されない。そしてこの光散乱部位117’aが形成されない部位に光吸収部位117’bが充填されるように設けられている。
光吸収部位117’bは、光透過性を有する樹脂中に光吸収性を有する粒子(光吸収粒子)が分散されて構成されている。
光透過性を有する樹脂としては光透過部116の樹脂と同様のものを用いることができる。
一方、光吸収粒子としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、吸収すべき光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用してもよい。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した有機微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましく用いられる。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましく用いられる。
本例では、光吸収部位117’bを上記のように構成したが、光吸収部位は光を吸収することができればその形態は限定されることなく、他の形態をとることも可能である。これには例えば、顔料や染料で着色した樹脂を挙げることができる。
このような光散乱部117’は、上記説明した光散乱層115と同様に、光透過部116間に形成された凹部内に光散乱部117’を構成する組成物を充填して硬化させることによって形成することができる。具体的には、電離放射線硬化性樹脂やその他公知の硬化性樹脂に上記した光を反射して散乱する材料を分散させた組成物を、凹部に向けて過剰に供給する。次にこれをブレードによりスキージして余分な組成物を掻き取って除去するとともに、凹部に組成物を充填する。このようにして充填された組成物に対して適切な硬化方法を適用して硬化性樹脂を硬化させる。ここでスキージの際に、ブレードを光透過部に少し強く押し当てる。これにより組成物が凹部の内容積よりも少なくなるように掻き出され、凹部内の開口部付近に空間が形成され、光散乱部位117’aとなる。そして当該凹部内の空間に光吸収部位117’bとなる組成物を過剰に供給し、再度ブレードによりスキージして余分な組成物を掻き取って除去するとともに、該空間内に組成物を充填する。次いで充填された組成物に対して適切な硬化方法を適用して硬化性樹脂を硬化させ光吸収部位117’bとする。
このように2回にわたって光透過部間の凹部にそれぞれの組成物を供給、スキージ、及び硬化することで光散乱部117’を形成することができる。
変形例に係るスクリーン100’によれば、光散乱部117’の一部に光を吸収する部位が形成されている。これにより図4に光路例L103で示したように、スクリーン100’に入射する正面側からの外光の一部を光吸収部位117’bで吸収することが可能となる。これによりスクリーン100’は、スクリーン100で説明した効果に加え、映像光や背面側景色のコントラストを向上させることが可能となる。
また、本変形例では光吸収部位117’bが備えられているものの、光吸収部位117’bは光散乱部117’の一部にしか形成されていないことから、光散乱部117’の光散乱性能の低下を小さく抑えつつ外光を吸収することができる。従って、正面側への明るい映像光を提供する機能、及び明るい背面側景色を観察者に提供する機能を高く維持しつつ、コントラストも向上させることが可能である。
図5は他の変形例にかかるスクリーン100”の層構成を示す図で、図2に相当する図である。スクリーン100”は、接着層113と基材層114との間に光吸収層121を備えている。他の部位についてはスクリーン100と同じである。
光吸収層121は、ここを透過する光の一部を吸収し、他を透過する機能を有する層であり、いわゆるNDフィルタが配置された層である。基材層114と光吸収層121とは不図示の接着剤等により接着されている。また、光吸収層121は所定の色を吸収する層であってもよい。これにより色調の調整が可能である。
光吸収層121により次のような効果を奏する。すなわち、スクリーン100”の背面側からスクリーン100”を通過して観察者に達する光L102は、光吸収層121を1回透過して観察者に至る。従って若干明るさは低下するが、背面側の観察は十分に可能とされている。一方、観察者側からスクリーン100”に照射される外光である光L104は、パネル111と接着層113との界面で反射され、観察者側に戻る。従って、光L104は観察者側に戻るまでに光吸収層121を2回透過することになり、光が吸収される程度が大きい。これにより効率よくコントラストを向上させることができる。
なお、映写機からの映像光L101は光吸収層121を透過することがないので、スクリーン100と同様にして明るい映像を観察者に提供することができる。
このように、スクリーン100”では、光散乱層115より背面側に光吸収層121を備えることにより、明るい映像を高いコントラストで提供することができる。
図6は第二の形態にかかるスクリーン200を説明する図であり、図2に相当する図である。スクリーン200では、スクリーン100と同様の構成のものには同じ符号を付すとともに詳しい説明は省略する。以下同様である。
スクリーン200も固定型反射スクリーンの1つの形態であり、パネル111、該パネル111に貼合された積層体212を備えている。そして、積層体212は、接着層221、光散乱層215、基材層214、ハードコート層120を備えている。
接着層221は、積層体212をパネル111に貼り付けるための層である。接着層221に用いられる材料は特に限定されることはないが、接着の機能を発揮させる観点からは公知の粘着剤、接着剤を用いることができる。例えばアクリル系の粘着剤を用いることができ、さらに具体的にはアクリル系共重合体とイソシアネート化合物を組み合わせた粘着剤を挙げることができる。ただし、スクリーン200の性質上透光性に優れていることが好ましく、耐候性に優れた材料によることがより好ましい。
スクリーン200では光散乱層215が、スクリーン100の光散乱層115と比較して観察者側と背面側とが反転した形状とされている。これに伴って基材層214が光散乱層215の観察者側に配置されている。
従って光散乱層215は当該反転した形態であること以外は光散乱層115と同様であり、光透過部216は光透過部116に相当し、光散乱部217は光散乱部117に相当する。
また、基材層214は光散乱層215を形成するための基材となる層である点で基材層114と共通する。従って基材層214は、透光性を有するとともに光散乱層215の変形を防止できるように支持する。かかる観点から、基材層214を構成する材料の具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等のうちの1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。基材層214の厚さは特に限定されないが、25μm以上300μm以下であることが好ましい。基材層214の厚さがこの範囲を外れると、加工性に問題を生じる虞がある。例えば、基材層214が薄過ぎればしわが生じやすくなる。また、基材層214が厚過ぎれば、スクリーン200を製造する工程のうち中間工程において巻き取る際に、その巻き取りが困難になる。
このようなスクリーン200では、保護層を必ずしも必要としない点でスクリーン100に比べて層構成を簡略化することができるため、低コストで製造することができる。例えばスクリーン200は次のように製造することができる。
基材層214の一方の面に光散乱層215を形成する方法は、上記したスクリーン100の製造方法のうち、基材層114の一方の面に光散乱層115を形成する方法と同様である。ここで基材層214の他方の面には予めハードコート層120が形成されていることが好ましい。
その後、光散乱層215の面のうち基材層214とは反対側の面に接着層221を積層して積層体212を作製し、接着層221によりパネル111に貼合することでスクリーン200を製造することができる。
次に、スクリーン200を図1のようにして設置したときの作用について説明する。図6に模式的な光路例を示した。
映写機10(図1参照)から出射された映像光L201は、ハードコート層120及び基材層214を透過して光散乱層215の光散乱部217に到達する。光散乱部217に到達した映像光L201は、光散乱部217によって散乱反射される。そして、散乱反射された光の一部が映写機10側、すなわち観察者側に向きが変えられる。そしてスクリーン200から出射して観察者に映像として提供される。
スクリーン200によれば、光散乱部217に達した映像光が吸収されることなく散乱反射されて観察者に出射されるので、明るい映像光を提供することができる。すなわち、映写機10からの映像光を効率よく観察者に出射することが可能である。
一方、スクリーン200の背面側からスクリーン200を通過して観察者に達する光はL202による。すなわち、背面側からの光L202は光散乱部217に達することなくスクリーン200を透過して観察者に観察される。従って、基材層214の面(パネル111の面)に対して平行な面である、光散乱層215の光透過部216が配置された部位の基材層214側の面及びその反対側面を介して背面側からの光が観察者に提供されるので、明確に明るくスクリーン200の背面側を観察することができる。
以上のように、スクリーン200によれば、映写機からの映像光を効率よく観察者に提供することができる。さらにはスクリーン200によれば、効率よく背面側の光を観察者に提供することができ、背面側を明るく観察することが可能である。
またスクリーン200でも、上記117a〜117dで示した光散乱部の形状やスクリーン100’で説明した形態で光吸収部位が具備された光散乱部が適用されてもよい。また、スクリーン100”で説明した光吸収層が設けられてもよい。
<ロール型反射スクリーン>
図7は第三の形態にかかるスクリーン300の斜視図であり、映写機10と併せて示した。本形態のスクリーン300は、反射型のスクリーンのうち、巻回及び展開が可能であるタイプのもの(ロール型反射スクリーン)である。従ってスクリーン300は図7からわかるように、展開した姿勢でAで表した観察者の側が正面となり、正面側に映写機10が設置され、これとは反対側(背面側物体Bが存在する側)が背面側となる。
一方、スクリーン300は使用しないときにはロール状に巻回して収納することが可能である。
図8は、スクリーン300を展開して設置した姿勢(スクリーン面を鉛直に立てた姿勢)において図7にVIII−VIIIで示した線に沿った鉛直方向におけるスクリーン300の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
スクリーン300は、背面側から基材層114、光散乱層115、接着層118、保護層119、ハードコート層120を備えている。図8では、紙面左が背面側、紙面右が正面側、紙面上方が天、紙面下方が地となる。
図8からわかるように、スクリーン300の層構成はスクリーン100からパネル111及び接着層113を除いた構成である。これによりスクリーン300に可撓性が備えられるので巻回及び展開可能なロール型反射スクリーンとすることができる。スクリーン300を構成する各層はパネル111及び接着層113以外はスクリーン100と同様であり、同様の効果を奏するスクリーンとすることができる。
ここで、スクリーン300の最表面の少なくとも一方には貼り付きを防止する処理又は層の積層がなされていることが好ましい。これにより、展開時にくっつきが防止され、円滑な展開が可能である。
図9は第四の形態にかかるスクリーン400の層構成を模式的に示す図であり、図8に相当する図である。スクリーン400もロール型反射スクリーンの1つの形態である。
スクリーン400は、保護層411、該保護層411に貼合された積層体212を備えている。そして、積層体212は、接着層221、光散乱層215、基材層214、ハードコート層120を備えている。
図9からわかるように、スクリーン400の層構成はスクリーン200のパネル111の代わりに保護層411を適用した構成である。保護層411はスクリーン100の保護層119と同様のものを用いることができる。これによりスクリーン400に可撓性が備えられるので巻回及び展開可能なロール型反射スクリーンとすることができる。スクリーン400を構成する各層は当該パネル111を保護層411としたこと以外はスクリーン200と同様であり、同様の効果を奏するスクリーンとすることができる。
なお、スクリーン300、スクリーン400でも、上記117a〜117dで示した光散乱部の形状や、スクリーン100’で説明した形態で光吸収部位が具備された光散乱部が適用されてもよい。また、スクリーン100”で説明した光吸収層が設けられてもよい。
[透過スクリーン]
<固定型透過スクリーン>
図10は第五の形態にかかるスクリーン500の斜視図であり、映写機20と併せて示した。本形態のスクリーン500は、透過型のスクリーンのうち、常設されるタイプのもの(固定型透過スクリーン)である。従ってスクリーン500は図10からわかるようにAで表した観察者の側が正面側となり、これとは反対側である背面側に映写機20が設置される。
図11は、スクリーン500を設置した姿勢(スクリーン面を鉛直に立てた姿勢)において図10にXI−XIで示した線に沿った鉛直方向におけるスクリーン500の厚さ方向断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
スクリーン500は、背面側からパネル111、該パネル111に貼合された積層体512を備えている。そして積層体512は、背面側から接着層113、基材層514、光散乱層515、接着層118、保護層119、ハードコート層120を備えている。図11では、紙面左が背面側、紙面右が正面側、紙面上方が天、紙面下方が地となる。
パネル111、接着層113、接着層118、保護層119、及びハードコート層120は上記したスクリーン100と同様である。
基材層514は、光散乱層515を形成するための基材となる層である。従って基材層514は、透光性を有するとともに光散乱層515の変形を防止できるように支持する。かかる観点から、基材層514を構成する材料の具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等のうちの1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
基材層514の厚さは特に限定されないが、25μm以上300μm以下であることが好ましい。基材層514の厚さがこの範囲を外れると、加工性に問題を生じる虞がある。例えば、基材層514が薄過ぎればしわが生じやすくなる。また、基材層514が厚過ぎれば、スクリーン500を製造する工程のうち中間工程において巻き取りが困難になる。
光散乱層515は光透過部116及び光散乱部517を有している。光散乱層515は、図11に示した断面を有して紙面奥/手前側に延在する形状を有する。すなわち、図11に表れる断面を有して光透過部116及び光散乱部517がスクリーン面に沿った一方向(本形態では水平方向)に延びるように配置されるとともに、該一方向とは異なる方向(本形態では鉛直方向)のスクリーン面に沿って複数の光透過部116が配列されている。そして光散乱部517は光透過部116の間に配置されている。
光透過部116はスクリーン100と同様である。
光散乱部517は、到達した光を散乱させつつスクリーン500を透過することができるように構成されている。光散乱部517は、光散乱部117と同様に、光透過部116間の凹部に形成される。
光散乱部517を構成する材料としては、透明なバインダー樹脂と該バインダー樹脂とは屈折率が異なる透明な散乱剤とを混合させた材料を挙げることができる。透明なバインダー樹脂としては光透過部116と同様なものを用いることができる。一方、当該散乱剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレンを中心としたモノマーを重合して得られた架橋粒子が挙げられる。当該架橋粒子の具体例としては、アイカ工業株式会社製のガンツパール(登録商標)が挙げられる。上記架橋粒子は、アクリル酸エステル及びスチレンとの混合比を変えることによって、屈折率を制御することができる。例えば、アクリル比を高くすることで屈折率を1.49程度にすることができ、スチレン比を高くすることで屈折率を1.59程度にすることができる。また、散乱剤にはウレタン架橋粒子を用いることも可能である。当該ウレタン架橋粒子の具体例としては、根上工業株式会社製のアートパール(登録商標)が挙げられる。また、散乱剤は中空粒子にすることも可能である。これにより効率よく光を透過散乱することができる。
また、光散乱部517には光を反射して散乱する材料を用いることもできる。このような材料としては、例えば白色顔料や銀色顔料を混ぜた硬化性樹脂が挙げられる。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物が挙げられる。銀色顔料としては、例えば、アルミニウム、クロムなどの金属が挙げられる。これにより効率よく光を散乱反射させることができる。また、硬化性樹脂は光透過部116を構成する材料と同様のものを用いることができる。
光散乱部517の他の構成についてはスクリーン100の光散乱部117と同様であることから説明を省略する。
スクリーン500の製造方法についても、光散乱部517に充填すべき材料を上記のものに変更するのみでスクリーン100と同様の方法を適用することが可能である。
次に、スクリーン500を図10のようにして設置したときの作用について説明する。図11に模式的な光路例を示した。図11は光散乱部517に透明なバインダー樹脂と該バインダー樹脂とは屈折率が異なる透明な散乱剤とを混合させた材料を充填した例の光路例である。
映写機20(図10参照)から投射された映像光L501は、パネル111、接着層113、及び基材層514を透過して光散乱層515の光散乱部517に到達する。光散乱部517に到達した映像光L501は、光散乱部517に入り、該光散乱部517の作用により散乱される。そして、散乱された光は、スクリーン500から出射して観察者に映像として提供される。
スクリーン500によれば、光散乱部517に達した映像光が吸収されることなく散乱されて観察者に出射されるので、明るい映像光を提供することができる。すなわち、映写機20からの映像光を効率よく観察者に出射することが可能である。
一方、スクリーン500の背面側からスクリーン500を通過して観察者に達する光はL502による。すなわち、背面側からの光L502は光散乱部517に達することなくスクリーン500を透過して観察者に観察される。従って、基材層514(パネル111)に対して平行な面である、光散乱層515の光透過部116が配置された部位の基材層514側の面及びその反対側面を介して背面側からの光が観察者に提供されるので、明確に明るくスクリーン500の背面側を観察することができる。
図12には光散乱部517に光を反射して散乱する材料を充填したときの光路例を示した。このときには映写機20(図10参照)から投射された映像光L501’は、パネル111、接着層113、及び基材層514を透過して光散乱層515の光散乱部517に到達する。光散乱部517に到達した映像光L501’は、光散乱部517の作用により散乱反射される。そして、散乱された光の一部は、スクリーン500から出射して観察者に映像として提供される。
スクリーン500によれば、光散乱部517に達した映像光が吸収されることなく散乱されて観察者に出射されるので、明るい映像光を提供することができる。すなわち、映写機20からの映像光を効率よく観察者に出射することが可能である。
一方、図12におけるスクリーン500の背面側からスクリーン500を通過して観察者に達する光はL502は上記と同様である。
以上のように、スクリーン500によれば、映写機からの映像光を効率よく観察者に提供することができる。さらにはスクリーン500によれば、効率よく背面側の光を観察者に提供することができ、背面側を明るく観察することが可能である。
図13には、変形例にかかるスクリーン500’の層構成を示す図で、図11に相当する図を示した。スクリーン500’は、接着層113と基材層514との間に光吸収層521を備えている。他の部位についてはスクリーン500と同じである。
光吸収層521は、ここを透過する光の一部を吸収し、他を透過する機能を有する層であり、いわゆるNDフィルタが配置された層である。基材層514と光吸収層521とは不図示の接着剤等により接着されている。また、光吸収層521は所定の色を吸収する層であってもよい。これにより色調の調整が可能である。
光吸収層521により次のような効果を奏する。図13は光散乱部517に透明なバインダー樹脂と該バインダー樹脂とは屈折率が異なる透明な散乱剤とを混合させた材料を充填したときの光路例である。この場合、スクリーン500’の背面側からスクリーン500’を通過して観察者に達する光L502は、光吸収層521を1回透過して観察者に至る。従って若干明るさは低下するが、背面側の観察は十分に可能とされている。一方、観察者側からスクリーン500’に照射される外光である光L503は、パネル111と接着層113との界面で反射され、観察者側に戻る。従って、光L503は観察者側に戻るまでに光吸収層521を2回透過することになり、光が吸収される程度が大きい。これにより効率よくコントラストを向上させることができる。
なお、映写機20からの映像光L501は光吸収層521を1回だけ透過するので、背面側観察と同様、十分に明るい映像を観察者に提供することができる。
透過スクリーン500’では、光吸収層521の位置には関係なく同様の効果を奏するものとなる。そしてこの光吸収層521を備えることにより、明るい映像を高いコントラストで提供することができる。
図14は第六の形態にかかるスクリーン600を説明する図であり、図11に相当する図である。スクリーン600も固定型透過スクリーンの1つの形態であり、背面側からパネル111、及び該パネル111に貼合された積層体612を備えている。そして、積層体612は、背面側から接着層621、光散乱層615、基材層614、ハードコート層120を備えている。
接着層621は、積層体612をパネル111に貼り付けるための層である。従って、接着層621に用いられる材料は接着が可能であれば特に限定されることはなく公知の粘着剤、接着剤を用いることができる。例えばアクリル系の粘着剤を用いることができ、さらに具体的にはアクリル系共重合体とイソシアネート化合物を組み合わせた粘着剤を挙げることができる。ただし、スクリーン600の性質上透光性に優れていることが好ましく、耐候性に優れた材料によることがより好ましい。
スクリーン600では光散乱層615が、スクリーン500の光散乱層515と比較して観察者側と背面側とが反転した形状とされている。これに伴って基材層614が光散乱層615の観察者側に配置されている。
従って光散乱層615は当該反転した形態であること以外は光散乱層515と同様であり、光透過部616は光透過部116に相当し、光散乱部617は光散乱部517に相当する。
また、基材層614は基材層514と同様である。
このようなスクリーン600では、保護層を必ずしも必要としない点でスクリーン500に比べて層構成を簡略化することができるため、低コストで製造することができる。例えばスクリーン600は次のように製造することができる。
基材層614の一方の面に光散乱層615を形成する方法は、上記したスクリーン500の製造方法のうち、基材層514の一方の面に光散乱層515を形成する方法と同様である。ここで基材層614の他方の面には予めハードコート層120が形成されていることが好ましい。
その後、光散乱層615の面のうち基材層614とは反対側の面に接着層621を積層して積層体612を作製し、接着層621によりパネル111に貼合することでスクリーン600を製造することができる。
次に、スクリーン600を図10のようにして設置したときの作用について説明する。図14に模式的な光路例を示した。図14は光散乱部617に透明なバインダー樹脂と該バインダー樹脂とは屈折率が異なる透明な散乱剤とを混合させた材料を充填したときの光路例である。この場合、映写機20(図10参照)から投射された映像光L601は、パネル111、及び接着層621を透過して光散乱層615の光散乱部617に到達する。光散乱部617に到達した映像光L601は、光散乱部617に入り、該光散乱部617の作用により散乱される。そして、散乱された光は、スクリーン600から出射して観察者に映像として提供される。
スクリーン600によれば、光散乱部617に達した映像光が吸収されることなく散乱されて観察者に出射されるので、明るい映像光を提供することができる。すなわち、映写機20からの映像光を効率よく観察者に出射することが可能である。
一方、スクリーン600の背面側からスクリーン600を透過して観察者に達する光はL602による。すなわち、背面側からの光L602は光散乱部617に達することなくスクリーン600を透過して観察者に観察される。従って、基材層614(パネル111)に対して平行な面である、光散乱層615の光透過部616が配置された部位の基材層614側の面及びその反対側面を介して背面側からの光が観察者に提供されるので、明確に明るくスクリーン600の背面側を観察することができる。
以上のように、スクリーン600によれば、映写機からの映像光を効率よく観察者に提供することができる。さらにはスクリーン600によれば、効率よく背面側の光を観察者に提供することができ、背面側を明るく観察することが可能である。
なお、スクリーン500’、600においてもその光散乱部517、617に
光を反射して散乱する材料を充填することもでき、このときには図12で説明したように映像光を提供することが可能である。
<ロール型透過スクリーン>
図15は第七の形態にかかるスクリーン700の斜視図であり、映写機20と併せて示した。本形態のスクリーン700は、透過型のスクリーンのうち、巻回及び展開が可能であるタイプのもの(ロール型透過スクリーン)である。従ってスクリーン700は図15からわかるように、展開した姿勢でAで表した観察者の側が正面側となり、スクリーン700を挟んでこれとは反対側である背面側に映写機20が設置される。
一方、スクリーン700は使用しないときにはロール状に巻回して収納することが可能である。
図16は、スクリーン700を展開して設置した姿勢(すなわち、スクリーン面を鉛直に立てた姿勢)において図15にXVI−XVIで示した線に沿った鉛直方向におけるスクリーン700の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。
スクリーン700は、背面側から基材層514、光散乱層515、接着層118、保護層119、及びハードコート層120を備えている。図16では、紙面左が背面側、紙面右が正面側、紙面上方が天、紙面下方が地となる。
図16からわかるように、スクリーン700の層構成はスクリーン500からパネル111及び接着層113を除いた構成である。これによりスクリーン700に可撓性が備えられるので巻回及び展開可能なロール型透過スクリーンとすることができる。スクリーン700を構成する各層はパネル111及び接着層113以外はスクリーン500と同様であり、同様の効果を奏するスクリーンとすることができる。
図17は第八の形態にかかるスクリーン800の層構成を模式的に示す図であり、図16に相当する図である。スクリーン800もロール型透過スクリーンの1つの形態である。
スクリーン800は、保護層811、該保護層811に貼合された積層体612を備えている。そして、積層体612は、接着層621、光散乱層615、基材層614、ハードコート層120を備えている。
図17からわかるように、スクリーン800の層構成はスクリーン600のパネル111の代わりに保護層811を適用した構成である。保護層811はスクリーン100の保護層119と同様のものを用いることができる。これによりスクリーン800に可撓性が備えられるので巻回及び展開可能なロール型反射スクリーンとすることができる。スクリーン800を構成する各層は当該パネル111を保護層811としたこと以外はスクリーン600と同様であり、同様の効果を奏するスクリーンとすることができる。
以上説明した透過スクリーンであるスクリーン500、500’、600、700、800にも、光散乱部117a〜117dで説明した光散乱部や、スクリーン100’で説明した形態で光吸収部位が具備されてもよい。
ただし透過スクリーンでは、光散乱部内に映像光を入射させ、これを散乱させて光散乱部の外に出射させるという性質上、上記した反射スクリーンに光吸収部位が具備された形態(例えばスクリーン100’)に比べ、映像光が光吸収部位に吸収される程度が大きくなる。しかしながら、余計な外光の散乱を光吸収部位で吸収することにより効果的にコントラストを向上させることができ、映像光の吸収による映像光の輝度低下はあるが、光吸収部がない場合に比べ高い質の映像を提供することができる。
また、以上説明した透過スクリーンであるスクリーン600、700、800にも、スクリーン500’で説明した形態で光吸収層が具備されてもよい。
<実施例1>
実施例1では図2に示した形態を有する固定型反射スクリーンに対して映像光の投射位置から白色光を出射し、観察者側で輝度を測定した。より詳しい条件は次の通りである。
(光源)
・光源:メタルハライドファイバー光源(IMH−250、シグマ光機株式会社)
・光源入射角(光軸):正面側斜め下方45°(図2のθ=45°)
・光軸:スクリーン中央
・光源照度(光軸):510lm/m
(光散乱層)
光散乱層の形状を以下及び図18に表す。
・光透過部開口幅(正面側):80μm
・光透過部開口幅(背面側):100μm
・光散乱部幅(正面側):25μm
・光散乱部幅(背面側):5μm
・光散乱部の厚さ方向大きさ:160μm
・光散乱部の脚部傾斜角度(図2のθ):1.5°
また、実施例1で用いたスクリーンは次のように作製した。
(1)光透過部構成組成物の調整
ビスフェノールAエチレンオキシド/キシリレンジイソシアネート/フェノキシエチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)=30:15:50:5:0.02で混合し、80℃で10時間反応させ、光硬化性プレポリマー(P1)を得た。
一方、ビスフェノールAエチレンオキシド/イソホロンジイソシアネート/フェノキシエチルアクリレート/ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)=30:20:50:0.02で混合し、80℃で時間反応させ、光硬化性プレポリマー(P2)を得た。
次に、光硬化性プレポリマー(P1)を30質量部、光硬化性プレポリマー(P2)を30質量部、反応性希釈モノマー(M1)としてのフェノキシエチルアクリレート10質量部、反応性希釈モノマー(M2)としてのビスフェノールAエチレンオキシド30質量部、金型離型剤(S1)としてのテトラデカノールエチレンオキシド10モル付加物のリン酸エステル0.03質量部、金型離型剤(S2)としてのステアリルアミンエチレンオキシド15モル付加物0.03質量部、及び光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、メーカー名:BASF)を3質量部混合し、均一化して、光透過部構成組成物を得た。
なお、この光透過部構成組成物を厚さ100μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させ、多波長アッベ屈折率計(株式会社アタゴ製)を用いて、589nmの屈折率を測定したところ、1.550であった。
(2)基材
基材としてはPETフィルム、商品名:A4300、東洋紡績社製、厚さ100μmを用いた。
(3)金型ロールの作製
光散乱層の作製に供される金型ロールを次のように作製した。金型ロールは円柱状であり、銅メッキが施され、当該銅メッキ部分をバイトにより切削して光透過部に対応する溝を形成した。切削にはダイヤモンドバイトを用いた。ロール軸方向の所定ピッチで金型ロールの銅メッキ層の外周を切削して溝を形成し、切削後にはクロムメッキを施した。
(4)光透過部の形成
上記(3)で作製した金型ロールと、別途準備したニップロールとの間に、上記(2)で説明した基材を搬送した。この基材の搬送に合わせ、上記(1)で得られた光透過部構成組成物を基材の基材層上に供給装置から供給し、金型ロールおよびニップロール間の押圧力により、基材層と金型ロールとの間に光透過部構成組成物を充填した。その後、基材側から高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させて、光透過部を形成した。その後、剥離ロールにより、金型ロールから光透過部を離型し、光透過部を含むシート(中間部材)を作製した。
この光透過部について圧縮式微小硬度計(FISCHER HM2000)を用いて微小圧子材料に負荷をかけ、これを除荷することによって弾性率を測定した。このとき、負荷力は100mN、負荷速度は4μm/10秒、保持時間は60秒とした。その結果、光透過部の弾性率は800MPaであった。また、このとき、光透過部は金型ロールの溝に対応した形状となる。
(5)光散乱部構成組成物の調整
光透過部構成組成物を構成する原料と同一原料に、酸化チタンを5質量部を混合し、均一化して、光散乱部を構成する組成物を得た。
(6)光散乱部の形成
上記(5)で得られた光散乱部を構成する組成物を、上記(4)で作製した中間部材上に供給装置から供給した。また、中間部材の進行方向と略垂直延びるように配置されたドクターブレードを用いて、中間部材上に供給した光散乱部構成組成物を中間部材に形成された溝(光透過部間の溝)内に充填するとともに、余剰分の光散乱部を構成する組成物を掻き落とした。その後、高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して光拡散部構成組成物を硬化させ、硬化した光散乱部構成組成物によって光散乱部を形成した。この状態では、光散乱部の表面には、深さ6μmの窪みが発生していた。上記工程を更に1回行ったところ、光散乱部の表面の窪みは深さ3μmであった。
(測定条件)
スクリーン中央から正面側に延びる法線を基準(0°)とし、この法線を含む鉛直面内において、法線に対してなす角を視野角として各視野角における輝度を測定した。輝度の測定は輝度計(LS−110、コニカミノルタオプティクス株式会社)用いて輝度を測定した。ここで、鉛直面内において法線より下方側をマイナス、法線より上方側をプラスで表した。
(ゲインの算出)
各視野角で得られた輝度からゲインを算出した。ゲインは次の式(2)により求めることができる。
ゲイン=π・輝度/光源照度 (2)
ここで輝度はcd/m、光源照度はlm/m、πは円周率である。
<実施例2>
実施例2では、実施例1で用いたスクリーンを同じ形態のまま固定型透過スクリーンとして用いた(図11に示した形態)。従って、実施例1で使用した光源を背面側に配置し、背面側下方斜め45°からスクリーンに光を投射した。
他については実施例1と同様である。
<比較例1、2>
上記(5)で作製した光散乱部を構成する組成物を、上記(2)で説明した基材の一方面に均一に厚さ10μmで塗布し、高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して塗布した組成物を硬化させた。これにより、均一な光散乱層を有する光散乱フィルムを形成して比較例のためのスクリーンとした。このスクリーンを反射スクリーンとして使用する例を比較例1、透過スクリーンとして用いる例を比較例2とした。
<結果>
以上の条件により測定した輝度及び算出したゲインの値を表1に示した。また、横軸に視野角、縦軸にゲインをとったグラフを図19に示した。
Figure 0006186760
表1、図19からもわかるように、実施例1、2では視野角が0°の付近において、光源からの光を反射又は透過した光の正面側における輝度、ゲインが他の視野角に対して低い傾向を有している。これにより、光散乱部において散乱される光が、図2、図5の光L102、図6のL202、図11、図13のL502、図14のL602のような背面側からの光の正面側への透過に与える影響が低くなることを意味し、背面がより見やすくなることがわかる。また、正面以外の部分についてはこれより高い輝度、ゲインを得ることができ、総合的にみて映像光を十分に観察者に提供することが可能である。
一方、比較例1、2では実施例1、2とは逆に、視野角が0°の付近において、光源からの光を反射又は透過した光の正面側における輝度、ゲインが他の視野角に対して高い傾向を有している。すなわち、比較例では光源からの光の反射又は透過した光の影響が大きすぎ、背面側を視認し難いといえる。
10 映写機
20 映写機
100 スクリーン
111 パネル
112 積層体
113 接着層
114 基材層
115 光散乱層
116 光透過部
117 光散乱部
117’光散乱部
118 接着層
119 保護層
120 ハードコート層
121 光吸収層
200 スクリーン
212 積層体
214 基材層
215 光散乱層
216 光透過部
217 光散乱部
221 接着層
300 スクリーン
400 スクリーン
411 保護層
500 スクリーン
512 積層体
514 基材層
515 光散乱層
517 光散乱部
521 光吸収層
600 スクリーン
612 積層体
614 基材層
615 光散乱層
616 光透過部
617 光散乱部
621 接着層
700 スクリーン
800 スクリーン
811 保護層

Claims (8)

  1. 映写機から投射された映像光を観察者に視認可能に表示するスクリーンであって、
    透光性を有するシート状の基材層と、
    前記基材層の一方の面に形成される光散乱層と、を備え、
    前記光散乱層は、
    前記基材層の一方の面に沿って複数並べて配置され、前記基材層側を形成する面とその反対側となる面とが平行とされた、光を透過する光透過部、及び、
    前記複数の光透過部間に配置され、樹脂に光散乱剤又は顔料が含有されてなる光を散乱する光散乱部、を有し、
    前記光透過部の屈折率が前記光散乱部の前記樹脂の屈折率と同じである、
    スクリーン。
  2. 前記光散乱部の一部には、光を吸収する光吸収部位が具備されている、請求項に記載のスクリーン。
  3. 透過する光の一部を吸収し、他を透過する光吸収層がさらに設けられる、請求項1又は2に記載のスクリーン。
  4. 前記光透過部と前記光散乱部との界面が微小な凹凸形状である、請求項1〜のいずれかに記載のスクリーン。
  5. 少なくとも一方の最表面にはさらにハードコート性、防汚性、帯電防止、及び撥水性のうち少なくとも1つの機能を備えた層が積層されている請求項1〜のいずれかに記載のスクリーン。
  6. 紫外線吸収剤、熱線吸収剤、及び近赤外線吸収剤の少なくとも1つを含む層を備えている、請求項1〜のいずれかに記載のスクリーン。
  7. 映写機から投射された映像光を観察者に視認可能に表示する請求項1〜6のいずれかに記載のスクリーンを製造する方法であって、
    一方の面に接着剤が積層された、透光性を有するシート状の前記基材層の他方の面に、前記基材層の他方の面に沿って複数並べて配置され、光を透過する前記光透過部を形成する工程と、
    前記複数の光透過部間に光を散乱する材料を充填して前記光散乱部を形成する工程と、
    前記光透過部のうち前記基材層が配置される側とは反対側の面に接着剤が積層されたハードコート層を積層する工程と、を含むスクリーンの製造方法。
  8. 映写機から投射された映像光を観察者に視認可能に表示する請求項1〜6のいずれかに記載のスクリーンを製造する方法であって、
    一方の面にハードコート層が積層された、透光性を有するシート状の前記基材層の他方の面に、前記基材層の他方の面に沿って複数並べて配置され、光を透過する前記光透過部を形成する工程と、
    前記複数の光透過部間に光を散乱する材料を充填して前記光散乱部を形成する工程と、
    前記光透過部のうち前記基材層が配置される側とは反対側の面に接着剤が積層された光を透過する層を積層する工程と、を含むスクリーンの製造方法。
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