JP6037068B2 - 採光シート、採光装置、及び建物 - Google Patents
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また、特許文献2に開示されている技術では、外側から入射する光について制御することができるが、室内側から外を見たときに像が屈折するため、外の景色を見るための鮮明さに不足があった。さらに、特許文献2に開示されている採光用光学素子は、プリズム状の凹凸が室内側に露出しているため、設置場所によっては損傷を受けやすく、耐久性に問題があった。
図2には1つの採光装置10を室外側から正面視した図を表した。このように採光装置10は、枠11と該枠11の枠組み内に配置された採光パネル12とを備えており、いわゆる窓として構成されている。そして当該採光装置10が上記のように建物1の開口部に配置される。
具体的には電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂等を要求性能に応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系等が挙げられる。例えば、アクリレート系の電離放射線硬化性樹脂は、単官能(メタ)アクリレートモノマー、2官能(メタ)アクリレートモノマー、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーなどの(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー乃至は(メタ)アクリル酸エステルプレポリマーなどからなる。さらに3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを例示すれば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等がある。
帯電防止性向上のために用いることができる材料としては、電子伝導タイプではPEDOT−PSS(PEDOT(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene);3,4−エチレンジオキシチオフェンポリマー)とPSS(poly(styrenesulfonate);スチレンスルホン酸ポリマー)とを共存)などが挙げられ、イオン導電タイプではリチウム塩系材料等が挙げられる。
また、撥水性向上のために用いることができる材料としては、フッ素系化合物等が挙げられる。
従って基材層22は、透光性を有するとともに光偏向層23の変形を防止できるように支持する。かかる観点から、基材層22を構成する材料の具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等のうちの1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
一方、光偏向部25は隣り合う光透過部24の間に配置されている。
光透過部24は、光を透過する部位であり、光偏向層23のうち光透過部24が配置された部位における基材層22側の面とその反対側面(接着層26側の面)とは平行に形成されている。これによって、後に説明するように採光シート20を通して室外側の景色がさらに見やすくなる。好ましくは光透過部24は光を散乱させることなく透過する。これにより背面側の景色の見易さが向上する。ここに「光を散乱させることなく透過する」とは、意図的に散乱させる材料等を添加することなく形成された部位であることを意味し、材料中を光が透過するときに不可避的に散乱が生じることは許容される。
ここで光透過部24を構成する材料の屈折率は、基材層22の屈折率と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし両者間で屈折率差があるとその界面で光が偏向されてしまう可能性が高まるので、同じ材料であること、又は異なる材料であっても屈折率差が小さい、あるいは屈折率差がないことが好ましい。ここで光透過部24を形成する材料の屈折率は原材料の汎用性から1.49以上1.56以下の範囲が好ましく、1.49以上1.50以下であることがより好ましい。
また、そのときにおける光透過部24と光偏向部25との屈折率差は、0.03以上0.07以下、より好ましくは0.05以上0.06以下である。屈折率差が0より大きく0.03より小さい範囲では、全反射時の波長分散(波長により全反射角度が異なることによる分散。)が生じた際に長波長の成分が全反射せず、短波長の成分のみが全反射することがあり、色彩の変化が生じる虞がある。一方、屈折率差が0.06より大きいと、短波長の成分の屈折率が長波長の屈折率の成分の屈折率に対して大きくなる傾向にあり、虹状のムラが顕著に表れる虞がある。
光偏向部25は図4に表れる断面において、多角形状を有している。そのうち、採光パネル12を建物1に配置した姿勢において、上部となる側は2つの辺25a、25bが室内外方向に連続するように配置され下に凸になるように形成されている。すなわち、室外側に辺25a、室内側に辺25bが配置されている。
一方、辺25a、25bとは反対側となる下部となる側の辺25dは、その傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対してθDとされている。θDは特にに限定されることはないが、製造の観点から0°以上30°以下とすることが好ましい。
また、光偏向部25の断面のうち、室外側(基材層22と反対側で光透過部間の凹部の開口側)の大きさは特に限定されないが、5μm以上150μm以下であることが好ましい。この幅が狭すぎると微細形状になるので加工が困難になる。一方、この幅が広すぎると金型で成形する際に材料の離型性が低下する傾向にある。
図5(a)は、上部となる側の辺が下に凸である光偏向部25’の例を示した。この例では、最も室外側となる部位における接線の傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θU1、最も室内側となる部位における接線の傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θU2となればよい。
図5(b)は、上部となる側の辺が室外側から3つの辺25’’a、25’’c、25’’bにより形成されて下に凸となる光偏向部25’’の例である。この例では、最も室外側となる辺25’’aの傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θU1、最も室内側となる辺25’’bの傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θU2となり、間に配置される辺25’’cの傾斜角は、水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θU3であり、θU2<θU3<θU1であることが好ましい。
ここでは3つの辺3つの辺25’’a、25’’c、25’’bからなる光偏向部の例を説明したが、これに限らずさらに多くの辺により形成されていてもよい。
接着層26は、パネル13に採光シート20を接着するための層である。接着層26を構成する材料としては、パネル13に採光シート20を接着できるものであれば特に限定されず、公知の粘着剤、接着剤、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。より具体的な例としては、接着層26として、例えばアクリル系の粘着剤を用いることができ、さらに具体的にはアクリル系共重合体とイソシアネート化合物とを組み合わせた粘着剤を挙げることができる。ただし、接着層26を構成する材料は、採光シート20の性質上、透光性、耐候性に優れた材料によることが好ましい。
すなわち、この例では光透過部24と光偏向部25との界面のうち傾斜角がθU1である部位と傾斜角がθU2である部位とで2回太陽光を全反射して偏向し、まぶしさの原因となる直達光を防止している。
仮に光偏向部の当該傾斜角が全部に亘ってθU2であったとすれば、LS2は大きな仰角(太陽光進行角)θP2で光透過部に入射するので、光偏向部と光透過部との界面で全反射することができず、透過してしまい、直達光として室内に入射してしまう。
これに対して、光偏向部25によれば、このような太陽光LS2をも全反射させて直達光とならないように偏向させることが可能となる。
一方、散乱反射、散乱透過のための構成については、光偏向部125を透明なバインダー樹脂と該バインダー樹脂とは屈折率が異なる透明な散乱剤とを混合させた材料で構成することができる。透明なバインダー樹脂としては光透過部24と同様なものを用いることができる。一方、当該透明な散乱剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレンを中心としたモノマーを重合して得られた架橋粒子が挙げられる。当該架橋粒子の具体例としては、ガンツ化成株式会社製のガンツパール(登録商標)が挙げられる。上記架橋粒子は、アクリル酸エステル及びスチレンとの混合比を変えることによって、屈折率を制御することができる。例えば、アクリル比を高くすることで屈折率を1.49程度にすることができ、スチレン比を高くすることで屈折率を1.59程度にすることができる。また、散乱剤にはウレタン架橋粒子を用いることも可能である。当該ウレタン架橋粒子の具体例としては、根上工業株式会社製のアートパール(登録商標)が挙げられる。また、散乱剤は中空粒子にすることも可能である。
図9からわかるようにLS3はそのときの太陽高度に基づいて仰角(水平面からなす角)θS3で採光パネル112に照射される。採光パネル112に入射した光LS3は採光パネル112を透過するうちに光偏向層123の光透過部24内を進む。光透過部24内では、該光透過部の屈折率をNP、室外の屈折率をN0とすれば、光LS3は、式(9)で表される太陽光進行角θP3で進む。
また、各試験例で用いる光透過部の屈折率はNpは1.550、光偏向部の屈折率は1.490である。従って、仰角θSHのとき、光透過部内を進む太陽光の進行角(太陽光進行角)θPは39.1°、仰角θSLのとき、光透過部内を進む太陽光の進行角(太陽光進行角)θPは19.4°である。
(1)光透過部構成組成物の調整
まずビスフェノールAエチレンオキシド/キシリレンジイソシアネート/フェノキシエチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)を30:15:50:5:0.02で混合し、80℃で10時間反応させ、光硬化性プレポリマー(P1)を得た。
一方、ビスフェノールAエチレンオキシド/イソホロンジイソシアネート/フェノキシエチルアクリレート/ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)を30:20:50:0.02で混合し、80℃で10時間反応させ、光硬化性プレポリマー(P2)を得た。
次に、光硬化性プレポリマー(P1)を30質量部、光硬化性プレポリマー(P2)を30質量部、反応性希釈モノマー(M1)としてのフェノキシエチルアクリレートを10質量部、反応性希釈モノマー(M2)としてのビスフェノールAエチレンオキシドを30質量部、金型離型剤(S1)としてのテトラデカノールエチレンオキシド10モル付加物のリン酸エステルを0.03質量部、金型離型剤(S2)としてのステアリルアミンエチレンオキシド15モル付加物を0.03質量部、光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、メーカー名:BASF)を3質量部混合し、均一化して、光透過部構成組成物を得た。
なお、この光透過部構成組成物を厚さ100μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させ、多波長アッベ屈折率計(株式会社アタゴ製)を用いて、589nmの屈折率を測定したところ、1.550であった。
基材としてはPETフィルム、商品名:A4300、東洋紡績社製、厚さ100μmを用いた。
光偏向層の作製に供される金型ロールを作製した。金型ロールは円柱状であり、銅メッキが施され、当該銅メッキ部分をバイトにより切削して光透過部に対応する溝を形成した。バイトとしてはダイヤモンドバイトを用いた。ロール軸方向の所定ピッチで金型ロールの銅メッキ層の外周を切削して溝を形成した。この切削したロールにクロムメッキをした。
上記(3)で作製した金型ロールとニップロールとの間に、上記(2)の基材を搬送した。この基材の搬送に合わせ、上記(1)で得られた光透過部構成組成物を基材の基材層上に供給装置から供給し、金型ロールおよびニップロール間の押圧力により、基材層と金型ロールとの間に光透過部構成組成物を充填した。その後、基材側から高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させて、光透過部を形成した。その後、剥離ロールにより、金型ロールから光透過部を離型し、光透過部を含むシート(中間部材)を作製した。
圧縮式微小硬度計(FISCHER HM2000)を用いて微小圧子材料に負荷をかけ、これを除荷することによってこの光透過部の弾性率を測定した。このとき、負荷力は100mN、負荷速度は4μm/10秒、保持時間は60秒とした。その結果、光透過部の弾性率は800MPaであった。
光硬化性プレポリマー(P3)としてウレタンアクリレートを42質量部、光硬化性プレポリマー(P4)としてエポキシアクリレートを18質量部、反応性希釈モノマー(M3)としてのトリプロピレングリコールジアクリレートを35質量部、反応性希釈モノマー(M4)としてのメトキシトリエチレングリコールアクリレートを5質量部、光散乱剤(D1)としての酸化チタンを5質量部、光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、メーカー名:BASF)を7質量部混合し、均一化して、光偏向部構成組成物を得た。
なお、この光偏向部構成組成物の光散乱剤を除いた成分を厚さ100μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、多波長アッベ屈折率計(株式会社アタゴ製)を用いて、589nmの屈折率を測定したところ、1.490であった。
上記(5)で得られた光偏向部構成組成物を、上記(4)で作製した中間部材上に供給装置から供給した。また、中間部材の進行方向と略垂直に配置されたドクターブレードを用いて、中間部材上に供給した光偏向部構成組成物を中間部材に形成された溝(光透過部間の溝)内に充填するとともに、余剰分の光偏向部構成組成物を掻き落とした。その後、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して光偏向部構成組成物を硬化させ、光偏向部を形成した。この状態では、光偏向部の表面には、深さ6μmの窪みが発生していた。上記工程を更に1回行ったところ、光偏向部の表面には、深さ3μmの窪みが発生していた。
アクリル系樹脂の粘着剤(商品名:SKダイン2094、綜研化学株式会社、固形分25.0%、溶剤は酢酸エチルとメチルエチルケトン)を100質量部と、架橋剤(E−5XM、L−45、綜研化学株式会社、固形分5.0%)を0.28質量%と、1,2,3−ベンゾトリアゾールを0.25質量部と、希釈溶剤(トルエン/メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=27.69g/27.69g/4.61g)を32.0質量部と、を混合して接着層組成物を得た。
この組成物を離型フィルム(商品名:E7007、東洋紡績社製、厚さ38μm)に塗布して乾燥させ、上記光学機能層の面と貼り合わせた。
なお、この接着層について、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.490であった。また、この接着層の貯蔵弾性率は0.22MPaであった。
光源(メタルハライドファイバー光源、IMH−250、シグマ光機株式会社)により白色光を所定の角度θSH、θSLで投射した。光源の照度を照度計(T−1H、コニカミノルタオプティクス株式会社)を用いて500lxに調整した。
輝度計(LS−110、コニカミノルタオプティクス株式会社)を採光シートへの光の入射前、光の入射後に設置して、それぞれの輝度を測定し、輝度比から採光効率を算出した。試験例1の採光効率を○とし、これと同等であれば同様に○、これより低ければ×とした。
一方、直達光の評価は、まぶしさを主観評価し、十分まぶしくないと感じるレベルを◎、まぶしくないと感じるレベルを○、直視できないと感じるレベルを×とした。
表2に結果を表した。
10 採光装置
11 枠
12 採光パネル
13 パネル
20 採光シート
21 ハードコート層
22 基材層
23 光偏向層
24 光透過部
25 光偏向部
26 接着層
Claims (4)
- シート面が鉛直となるように建物開口部に配置されるシート状である採光シートであって、
透光性を有するシート状の基材層と、
前記基材層の一方の面に形成され、光を偏向する光偏向層と、を備え、
前記光偏向層は、
前記基材層の一方の面に沿って複数並べて配置された光を透過する光透過部と、
複数の前記光透過部間に配置され、該光透過部よりも低い屈折率の紫外線硬化型樹脂の組成物が充填された光を吸収しない光偏向部と、を有し、
前記光透過部が配置された部位の前記光偏向層の表裏面は平行に形成されており、
前記採光シートが前記建物開口部に配置された姿勢で、前記光偏向部は前記採光シートの厚さ方向断面において、その上部となる側の辺が、複数の直線が連続した折れ線、又は曲線状で形成されており、前記上部となる側の辺は、下に凸となるよう形成され、
前記上部となる側の辺における前記下に凸は、前記上部となる側の辺のうち室外側における水平面に対する傾斜角が、室内側における水平面に対する傾斜角よりも大きく形成されており、
前記上部となる側の辺の反対側の下部となる側の辺は、1つの直線状であるとともに、前記採光シートのシート面法線に対して0°以上30°以下であり、前記上部となる側の辺と、前記下部となる側の辺との距離が、室内側に向かうにつれて小さくなるように構成されている、採光シート。 - 前記上部となる側の辺の前記室外側における前記傾斜角は0°以上23.1°以下、前記室内側における前記傾斜角は0°以上1.7°以下である、請求項1に記載の採光シート。
- 透光性を有する板状のパネルと、
前記パネルの一方の面に貼付される請求項1又は2に記載の採光シートと、
少なくとも前記パネルの周囲を囲むように配置される枠と、を備える採光装置。 - 壁に形成された開口部に請求項3に記載の採光装置が設置された建物。
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