JP5888450B2 - 採光シート、採光装置、及び建物 - Google Patents

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Description

本発明は、建物等の内部に日光等の外光を採り入れるための採光シート、採光装置、及びこれを用いた建物に関する。
いわゆる窓ガラスにより、建物の内部に日光等の外光を採り入れて明るく快適な室内空間を形成することはよく知られている。しかし一方で当該窓ガラスに入射した外光をそのまま室内に採り入れると、まぶしさを感じる等の不具合を生じることもある。これに対して、直射日光を制御してより快適な態様で室内側に採り入れる技術がいくつか提案されている。
特許文献1には、太陽光を建物内に取り入れる部位に配置される太陽光取り入れ制御用の光制御シートが開示されている。これは太陽光を透過する光透過性部と、太陽光を吸収する遮光部群とからなり、遮光部群はシート内の一方向に所定ピッチで、遮光部を複数配列させているものである。
また特許文献2には、太陽光を採り入れるよう建物の開口部に設けられる板状の採光用光学素子が開示されている。これは、同一平面上に詰めて設けられた多数のプリズム部から成り、各プリズム部の斜面は、太陽の仰角が臨界仰角より小さい場合には太陽光を透過させ臨界仰角以上の場合には全反射させる角度となっており、太陽の仰角が臨界仰角以上の場合の全体の採光量は、臨界仰角より小さい場合の全体の採光量に比べて少なくなる形態を備えている。
特開2010−259406号公報 特開2003−157707号公報
しかしながら、特許文献1に開示されているような構成の光制御シートでは、外光(太陽光)の一部を遮光部群が吸収してしまうため、該光制御シートを建物等の窓に適用した場合、外光を吸収してしまい外光を効果的に室内に採り入れることが難しかった。
また、特許文献2に開示されている技術では、外側から入射する光について制御することができるが、室内側から外を見たときに像が屈折するため、外の景色を見るための鮮明さに不足があった。さらに、特許文献2に開示されている採光用光学素子は、プリズム状の凹凸が室内側に露出しているため、設置場所によっては損傷を受けやすく、耐久性に問題があった。
そこで本発明は上記した問題点に鑑み、太陽光の直射(直達光)を抑制するとともに効率良く採光でき、室内側から室外側を見ることが可能な採光シートを提供することを課題とする。また、これを用いた採光装置及び建物を提供する。
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、これにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
請求項1に記載の発明は、シート面が鉛直となるように建物開口部に配置されるシート状である採光シート(20、120)であって、透光性を有するシート状の基材層(22)と、基材層の一方の面に形成され、光を偏向する光偏向層(23、123)と、を備え、光偏向層は、基材層の一方の面に沿って複数並べて配置された光を透過する光透過部(24)と、複数の光透過部間に配置され、該光透過部よりも低い屈折率の紫外線硬化型樹脂の組成物が充填された光偏向部(25、125)と、を有し、光透過部が配置された部位の光偏向層の表裏面は平行に形成されており、採光シートが建物開口部に配置された姿勢で、光偏向部は採光シートの厚さ方向断面において、その上部となる側の辺が、複数の直線が連続した折れ線、又は曲線状で形成されており、上部となる側の辺は、下に凸となるよう形成され、上部となる側の辺とは反対側の下部となる側の辺は直線状であり、上部となる側の辺と下部となる側の辺との間に形成される辺のうち、光透過部間の開口となる側の辺には凹部が設けられている採光シートである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の採光シート(20、120)において、上部となる側の辺における下に凸は、上部となる側の辺のうち室外側における水平面に対する傾斜角が、室内側における水平面に対する傾斜角よりも大きく形成されている。
請求項3に記載の発明は、透光性を有する板状のパネル(13)と、パネルの一方の面に貼付される請求項1又は2に記載の採光シート(20、120)と、少なくともパネルの周囲を囲むように配置される枠(11)と、を備える採光装置(10)である。
請求項4に記載の発明は、壁に形成された開口部に請求項3に記載の採光装置(10)が設置された建物(1)である。
本発明によれば、太陽光の直射(直達光)を抑制するとともに効率良く採光でき、室内側から室外側を見ることが可能となる。
第一実施形態を説明する図で、建物1の外観斜視図である。 採光装置10を正面視した図である。 採光パネル12の層構成を説明する図である。 光偏向層23の形態を説明する図である。 図5(a)は光偏向部の上部となる側の辺が下に凸の曲線である例、図5(b)は光偏向部の上部となる側の辺が3つの直線により形成された下に凸状である例を表した。 光偏向部の室外側に面する部位が凹状である例である。 採光シート20の効果を説明する1つの図である。 採光シート20の効果を説明する他の図である。 第二実施形態を説明する図で、採光パネル112の層構成を説明する図である。 実施例1の採光パネルの構成を説明する図である。 比較例1の採光パネルの構成を説明する図である。 比較例2の採光パネルの構成を説明する図である。
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明は当該実施形態に限定されるものではない。なお、以下に示す各図では、分かりやすさのためその構造を誇張して記載することがある。また、各図では見易さのため、繰り返しとなる符号は一部を省略することがある。
図1は第一実施形態を説明する図であり、採光シート20(図3参照)が備えられた建物1の外観斜視図である。建物1はいわゆるオフィスビルであり、南側に面する外壁には室内外を連通する複数の開口部が設けられ、ここに採光シート20を具備する採光装置10が配置されている。
図2には1つの採光装置10を室外側から正面視した図を表した。このように採光装置10は、枠11と該枠11の枠組み内に配置された採光パネル12とを備えており、いわゆる窓として構成されている。そして当該採光装置10が上記のように建物1の開口部に配置される。
図3には図2にIII−IIIで示した線に沿った採光装置10の鉛直方向断面のうち、採光パネル12の層構成を模式的に表した。図3では採光パネル12のパネル面が鉛直になるように建物1に取り付けられた姿勢で表されており、図3の紙面左が室外側、紙面右が室内側、紙面上方が天側、紙面下方が地側となる。
採光パネル12は、図3からわかるように、パネル13、及び該パネル13の室内側面に貼合された採光シート20を備えている。また、採光シート20は、室内側からハードコート層21、基材層22、光偏向層23、及び接着層26を備えている。以下、これらの各層について説明する。
パネル13は、ガラスパネルや樹脂パネル等、通常の建物や乗り物の窓等に用いられる透光性を有する板状の透光パネルである。従って、パネル13を構成する部材としては公知の板ガラスや樹脂板を用いることができる。上記した枠11は少なくとも当該パネル13の周囲に配置されることにより、採光パネル12が枠11の枠組み内に取り付けられる。
ハードコート層21は、表面保護を目的として、採光シート20のうちパネル13とは反対側の最表面に設けられる層である。ハードコート層21は透明な樹脂層として形成することができ、擦り傷、表面汚染に対する耐性の観点から、硬化性樹脂が硬化してなる樹脂硬化層として形成することが好ましい。
具体的には電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂等を要求性能に応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系等が挙げられる。例えば、アクリレート系の電離放射線硬化性樹脂は、単官能(メタ)アクリレートモノマー、2官能(メタ)アクリレートモノマー、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーなどの(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー乃至は(メタ)アクリル酸エステルプレポリマーなどからなる。さらに3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを例示すれば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等がある。
また、ハードコート層21には、耐汚染性向上の機能を追加してもよい。これは例えばシリコーン系化合物、フッ素系化合物などを添加することにより可能となる。さらにその他の機能として帯電防止性向上、撥水性向上の機能を有するものとしてもよい。
帯電防止性向上のために用いることができる材料としては、電子伝導タイプではPEDOT−PSS(PEDOT(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene);3,4−エチレンジオキシチオフェンポリマー)とPSS(poly(styrenesulfonate);スチレンスルホン酸ポリマー)とを共存)などが挙げられ、イオン導電タイプではリチウム塩系材料等が挙げられる。
また、撥水性向上のために用いることができる材料としては、フッ素系化合物等が挙げられる。
基材層22は、光偏向層23を形成するための基材となる層である。
従って基材層22は、透光性を有するとともに光偏向層23の変形を防止できるように支持する。かかる観点から、基材層22を構成する材料の具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等のうちの1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
基材層22の厚さは特に限定されないが、25μm以上300μm以下であることが好ましい。基材層22の厚さがこの範囲を外れると、加工性に問題を生じる虞がある。例えば、基材層22が薄過ぎればしわが生じやすくなる。また、基材層22が厚過ぎれば、採光シート20を製造する工程のうち中間工程において巻き取りが困難になる。
光偏向層23は光透過部24及び光偏向部25を有している。光透過部23は、図3に示した断面を有して基材層22の面に沿った一方向(建物1に配置された姿勢で水平方向)に延びるように配置されるとともに、該一方向とは異なる方向の基材層22の面に沿って(建物1に配置された姿勢で鉛直方向)複数の光透過部24が所定の間隔で配列されている。本実施形態では隣り合う光透過部24は基材層22側の端部で連結され、一体化されている。
一方、光偏向部25は隣り合う光透過部24の間に配置されている。
図4には光偏向層23の一部を拡大した図を示した。
光透過部24は、光を透過する部位であり、光偏向層23のうち光透過部24が配置された部位における基材層22側の面とその反対側面(接着層26側の面)とは平行に形成されている。これによって、後に説明するように採光シート20を通して室外側の景色がさらに見やすくなる。好ましくは光透過部24は光を散乱させることなく透過する。これにより背面側の景色の見易さが向上する。ここに「光を散乱させることなく透過する」とは、意図的に散乱させる材料等を添加することなく形成された部位であることを意味し、材料中を光が透過するときに不可避的に散乱が生じることは許容される。
本実施形態では光透過部24は図3、図4に表れる断面で2つの光偏向部25間において略台形の断面を有しており、室外側が短い上底、室内側が長い下底であり光偏向部25との界面を構成する辺が脚部となっている。ただし、脚部は後述する光偏向部25の形状に沿った形状となるので、必ずしも一直線ではない。
光透過部24を構成する材料としては、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
ここで光透過部24を構成する材料の屈折率は、基材層22の屈折率と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし両者間で屈折率差があるとその界面で光が偏向されてしまう可能性が高まるので、同じ材料であること、又は異なる材料であっても屈折率差が小さい、あるいは屈折率差がないことが好ましい。ここで光透過部24を形成する材料の屈折率は原材料の汎用性から1.49以上1.56以下の範囲が好ましく、1.49以上1.50以下であることがより好ましい。
光偏向部25は、隣り合う2つの光透過部24間に形成される部位である。すなわち、上記したように光透過部24はシート面に沿った方向に所定の間隔で並列され、光透過部24間には、所定の形状を有する凹部が形成されている。本実施形態における凹部は、後述する光偏向部25の断面形状に応じた断面形状を有する溝であり、ここに光偏向部25を構成する材料が充填されることにより光偏向部25が形成されている。従って光偏向部25は凹部に基づいた断面形状を具備している。
光偏向部25は、ここに照射された光を全反射して偏向可能に構成された層である。そのため、光偏向部25は光透過部24よりも屈折率が低い材料が充填されている。これによれば、光偏向部25と光透過部24との屈折率差、及びその界面に入射する光の角度の関係により、該入射した光が全反射条件を満たせばここでその光を全反射して偏向することができる。後で詳しく説明するが、偏向された光は、その向きが変わり、例えば天井に照射されるなどしてまぶしさを与える直達光でなくなることができる。光偏向部25を形成する材料の屈折率は原材料の汎用性から1.49以上1.56以下の範囲が好ましく、1.49以上1.50以下であることがより好ましい。
また、そのときにおける光透過部24と光偏向部25との屈折率差は、0.03以上0.07以下、より好ましくは0.05以上0.06以下である。屈折率差が0より大きく0.03より小さい範囲では、全反射時の波長分散(波長により全反射角度が異なることによる分散。)が生じた際に長波長の成分が全反射せず、短波長の成分のみが全反射することがあり、色彩の変化が生じる虞がある。一方、屈折率差が0.06より大きいと、短波長の成分の屈折率が長波長の屈折率の成分の屈折率に対して大きくなる傾向にあり、虹状のムラが顕著に表れる虞がある。
さらに、本実施形態では光偏向部25は次のような形状を構成を備えている。図4を参照しつつ説明する。
光偏向部25は図4に表れる断面において、多角形状を有している。そのうち、採光パネル12を建物1に配置した姿勢において、上部となる側は2つの辺25a、25bが室内外方向に連続するように配置され下に凸になるように形成されている。すなわち、室外側に辺25a、室内側に辺25bが配置されている。
これら2つの辺25a、25bは、図4に表された姿勢とされたとき、その傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対してそれぞれ異なる角度θU1及びθU2を具備している。ここで、θU1及びθU2は室外側(太陽側)に向けて上となるように傾斜し、θU1はθU2より大きな角度とされる。これにより、季節や時間により異なる太陽の高度を考慮し、太陽光を光透過部24と光偏向部25との界面で全反射して偏向することができる場面を拡大することができる。従って、角度θU1及び角度θU2もかかる観点から決められることが好ましい。詳しくは光路例を示しつつ後で説明する。
一方、辺25a、25bとは反対側となる下部となる側の辺25dは、その傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対してθとされている。θは特にに限定されることはないが、製造の観点から0°以上30°以下とすることが好ましい。
光偏向部25が並列されるピッチは特に限定されないが、10μm以上200μm以下であることが好ましい。光偏向部25のピッチが狭すぎると微細形状になるので製造の際に加工が困難になる。一方、光偏向部25のピッチが広すぎると、金型で成形する際に材料の離型性が低下する傾向にある。
また、光偏向部25の断面のうち、室外側(基材層22と反対側で光透過部間の凹部の開口側)の大きさは特に限定されないが、5μm以上150μm以下であることが好ましい。この幅が狭すぎると微細形状になるので加工が困難になる。一方、この幅が広すぎると金型で成形する際に材料の離型性が低下する傾向にある。
光偏向部25の厚さ方向の大きさ(図4の紙面左右方向)は特に限定されないが、10μm以上200μm以下であることが好ましい。これが小さすぎると、光偏向部25の加工自体が困難になる虞がある。一方、これが大きすぎると光偏向部25を形成するための金型の製造、及び金型からの材料の離型性が低下し、生産性が悪くなる虞がある。
図5、図6には、変形例に係る光偏向部の断面形状を表した。
図5(a)は、上部となる側の辺が下に凸である光偏向部25’の例を示した。この例では、最も室外側となる部位における接線の傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θU1、最も室内側となる部位における接線の傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θU2となればよい。
図5(b)は、上部となる側の辺が室外側から3つの辺25’’a、25’’c、25’’bにより形成されて下に凸となる光偏向部25’’の例である。この例では、最も室外側となる辺25’’aの傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θU1、最も室内側となる辺25’’bの傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θU2となり、間に配置される辺25’’cの傾斜角は、水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θU3であり、θU2<θU3<θU1であることが好ましい。
ここでは3つの辺3つの辺25’’a、25’’c、25’’bからなる光偏向部の例を説明したが、これに限らずさらに多くの辺により形成されていてもよい。
これら図5(a)、図5(b)に記載のような光偏向部によっても図4で示した形状の光偏向部と同様の効果を奏するものとなる。さらに図5(a)、図5(b)による形状によれば、全反射による波長分散による虹状のムラの発生を抑制することが可能となる。
図6は、光偏向部のうち、光透過部間に形成される溝の開口側(本実施形態では室外側に面する辺)が窪んだ形状に形成されている例の光偏向部25’’’を表した。この場合、当該窪みの内側には隣接する接着層26の接着剤が充填される。これによれば、さらに当該凹部において太陽光を偏向させ、光を制御することができる。
また、全反射した光を散乱させる観点から光偏向部25と光透過部24との界面を微小な凹凸が無数に形成された面であるマット面としてもよい。
なお、本実施形態では辺25d側を一直線としたが、下部となる側の辺の形態はこれに限られることなく、上部となる側の辺と同様(鏡面対象)となるように形成してもよい。
図3に戻って他の構成についても説明を続ける。
接着層26は、パネル13に採光シート20を接着するための層である。接着層26を構成する材料としては、パネル13に採光シート20を接着できるものであれば特に限定されず、公知の粘着剤、接着剤、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。より具体的な例としては、接着層26として、例えばアクリル系の粘着剤を用いることができ、さらに具体的にはアクリル系共重合体とイソシアネート化合物とを組み合わせた粘着剤を挙げることができる。ただし、接着層26を構成する材料は、採光シート20の性質上、透光性、耐候性に優れた材料によることが好ましい。
接着層26の厚さは特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。接着層26が薄過ぎるとパネル13と採光シート20との密着性が低下する虞がある。また、接着層26が厚過ぎると該接着層26の厚さを均一にすることが困難になる。
以上説明した採光シート20を具備する採光パネル12により採光装置10を形成し、これを図1に示したように建物1の開口部に配置する。次に、このように採光シート20が配置された場面における作用、及び上記説明した角度θU1、θU2の好ましい値について、主要な光路に基づいて説明する。説明に必要な光路例を以下に示す図面に適宜表した。なお各図面に表した光路例は概念的なものであり、屈折、反射の程度等を厳密に表したものではない。
図7に1つの光路例である太陽Sからの光LS1を示した。図7からわかるようにLS1はそのときの太陽高度に基づいて仰角(水平面からなす角)θS1で採光パネル12に照射される。採光パネル12に入射した光LS1は採光パネル12を透過するうちに光偏向層23の光透過部24内を進む。光透過部24内では、該光透過部の屈折率をN、室外の屈折率をNとすれば、光LS1は、式(1)で表される太陽光進行角θP1で進む。
Figure 0005888450
太陽光進行角θP1で進行した太陽光が光透過部24と光偏向部25との界面のうち傾斜角がθU2である部位に達したとき、光透過部24と光偏向部25との屈折率差、及び太陽光進行角θP1の関係が全反射臨界角以上であれば図7のように界面で全反射する。これにより太陽光が偏向されて、まぶしさの原因となる直達光を抑制することが可能となる。
図8には他の光路例である太陽Sからの光LS2を示した。図8からわかるようにLS2はそのときの太陽高度に基づいて仰角(水平面からなす角)θS2で採光パネル12に照射される。ここで、θS2はθS1よりも大きい角度である。採光パネル12に入射した光LS2は採光パネル12を透過するうちに光偏向層23の光透過部24内を進む。光透過部24内では、該光透過部の屈折率をN、室外の屈折率をNとすれば、光LS2は、式(2)で表される太陽光進行角θP2で進む。
Figure 0005888450
この例では、太陽光進行角θP2で進行した太陽光が光透過部24と光偏向部25との界面のうち傾斜角がθU1である部位に達したとき、光透過部24と光偏向部25との屈折率差、及び太陽光進行角θP1の関係が全反射臨界角以上であれば図8のように界面で全反射する。これにより太陽光進行角θP2より仰角が小さい角で光透過部24を進み、さらに室内側に配置される傾斜角がθU2である部位に達してここで全反射される。これにより太陽光が偏向されて、まぶしさの原因となる直達光を抑制することが可能となる。
すなわち、この例では光透過部24と光偏向部25との界面のうち傾斜角がθU1である部位と傾斜角がθU2である部位とで2回太陽光を全反射して偏向し、まぶしさの原因となる直達光を防止している。
仮に光偏向部の当該傾斜角が全部に亘ってθU2であったとすれば、LS2は大きな仰角(太陽光進行角)θP2で光透過部に入射するので、光偏向部と光透過部との界面で全反射することができず、透過してしまい、直達光として室内に入射してしまう。
これに対して、光偏向部25によれば、このような太陽光LS2をも全反射させて直達光とならないように偏向させることが可能となる。
以上からわかるように、採光シート20によれば、傾斜角θU1、θU2がθU1>θU2の関係を有していれば、光LS1、LS2のように進行角が異なる太陽光の少なくとも一部を全反射で偏向させて室内側に提供することができ、太陽光の室内への入射量を大きく減じることなく、かつ、少なくとも一部の直達光(いわゆる直射日光)をなくすことが可能となる。これにより明るく、快適な室内空間を形成することができる。
さらに、採光シート20には上記したように光透過部24が備えられており、光透過部24が配置される部位の光偏向層23の表裏面は平行、平滑に形成されている。これにより、図7に示したように室外側の景色を伴う光LK1は室内にほとんど歪みなく入射しすることができ、これは室内側から室外側の景色を視認することができることを意味する。従って、採光シート20は、さらに室外側の景色を視認し易い構造を具備している。
ここで、偏向される向きは界面に入射する角度である太陽光進行角θ、及び光偏向部の傾斜角であるθU1、θU2に依存する。従って、ここで全反射した光が最終的に水平より上向きとなるようにθU1、θU2が決められることが好ましい。
また、上記のように採光シート20によれば、θU1>θU2であれば、効率よく室内に太陽光を取り入れつつも直達光の少なくとも一部をなくすことができる。ただし、より効果的に太陽光を光偏向部25で全反射させ、太陽光を偏向して室内側に出射させる観点から好ましいθU1、θU2を規定することができる。以下に詳しく説明する。
θU1は、上記光路例からもわかるように、太陽の仰角が高い場合に採光シートに入射した太陽光を適切に全反射することができる角度を設定することができる。これには例えば一年のうちで最も南中高度が高いときの仰角θSHを設定することができる。すなわち、仰角θSHとしたときの光透過部内の太陽光進行角θPHは次式(3)で表されるので、この角度θPHで進行する光を全反射することができるようにθU1を設定する。
Figure 0005888450
ただし、仰角θSHは緯度により異なるので、異なる緯度を跨ぐように広がる所定の領域(例えば国や地域等)におけるθSH1乃至θSH2により(θSH1<θSH2)、θU1の範囲を規定することができる。すなわち、式(4)をθU1の好ましい範囲とすることができる。
Figure 0005888450
ここで日本国内では、札幌におけるθSHは70.5°、沖縄におけるθSHは87.5°であることから、θU1は式(5)の範囲にあることが好ましい。
Figure 0005888450
一方、θU2は、上記光路例からもわかるように、太陽の仰角が低い場合に採光シートに入射した太陽光を適切に全反射することができる角度を設定することができる。これには例えば一年のうちで最も南中高度が低いときの仰角θSLを設定することができる。すなわち、仰角θSLとしたときの光透過部内の太陽光進行角θPLは次式(6)で表されるので、この角度θPLで進行する光を全反射することができるようにθU2を設定する。
Figure 0005888450
ただし、仰角θLHは緯度により異なるので、異なる緯度を跨ぐように広がる所定の領域(例えば国や地域等)におけるθSL1乃至θSL2により(θSH1<θSH2)、θU2の範囲を規定することができる。ここで、θU2は0°より小さくなる(図4とは反対に傾く。)と製造が困難になることから、0°以上であることが好ましい。以上より、式(7)をθU2の好ましい範囲とすることができる。
Figure 0005888450
ここで日本国内では、沖縄におけるθSLは40.5°であることから、θU2は式(8)の範囲にあることが好ましい。
Figure 0005888450
採光シート20には上記した各層のいずれかに、他の機能を付加させるための構成を備えてもよい。これには例えば、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、又は近赤外線吸収剤を添加し、紫外線吸収機能、熱線吸収機能、又は近赤外線吸収機能を備えさせることが考えられる。
近赤外線吸収機能は、近赤外線吸収剤(近赤外線吸収色素)を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。近赤外線吸収色素としては、800nm以上1100nm以下の波長領域を吸収するものを用いることが好ましい。該波長領域の近赤外線の透過率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。一方で、近赤外線吸収色素は可視光領域、即ち、380nm以上780nm以下の波長領域で、十分な透過率を有することが好ましい。
紫外線吸収機能は、以下に例示する紫外線吸収剤を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(TINUVIN P、TINUVIN P FL、TINUVIN 234、TINUVIN 326、TINUVIN 326 FL、TINUVIN 328、TINUVIN 329、TINUVIN 329 FL、全てBASFジャパン株式会社製)や、トリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN 1577 ED、BASFジャパン株式会社製)、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(CHIMASSORB 81、CHIMASSORB 81 FL、全てBASFジャパン株式会社製)、ベンゾエート系紫外線吸収剤(TINUVIN 120、BASFジャパン株式会社製)などが挙げられる。
熱線吸収機能は、以下に例示する熱線吸収剤を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。熱線吸収剤としては、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)またはスズドープ酸化インジウム(ITO)、フタロシアニン化合物などの金属酸化物超微粒子などが挙げられる。
以上説明した採光パネル12は例えば次のように製造する。すなわち、採光パネル12は、パネル13に採光シート20を貼合することによって製造することができる。ここで採光シート20は、例えば次のように作製することが可能である。
採光シート20のうち光偏向層23は金型ロールを用いる方法により形成することができる。すなわち、円筒状であるロールの外周面に光偏向層23の光透過部24を転写可能な凹凸が設けられた金型ロールを準備する。そして金型ロールとこれに対向するように配置されたニップロールとの間に、基材層22となる基材を挿入する。そして、基材のうち一方の面と金型ロールとの間に光透過部24を構成する組成物を供給しながら金型ロール及びニップロールを回転させる。これにより金型ロールの表面に形成された凹凸の凹部内に光透過部24を構成する組成物が充填され、該組成物が金型ロールの凹凸の表面形状に沿ったものとなる。
ここで、光透過部24を構成する組成物としては、上記したものが好ましいが、さらに具体的な例は次の通りである。すなわち、光硬化型プレポリマー(P1)に、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(I1)を配合した光硬化型樹脂組成物を用いることができる。
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
また、上記光重合開始剤(I1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置及び光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。なお、光透過部16の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドである。
これらの光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(I1)は、それぞれ、1種類で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
金型ロールと基材との間に挟まれ、ここに充填された光透過部24を構成する組成物に対し、基材側から光照射装置により光を照射する。これにより、光透過部24を構成する組成物を硬化させ、その形状を固定させることができる。そして、離型ロールにより金型ロールから基材層22及び成形された光透過部24を離型する。
次に、光透過部24の凹部に光偏向部25を構成する組成物を充填して硬化させることによって、光偏向部を形成することができる。このようにして、基材層22上に光偏向層23を形成することが可能である。
このようにして形成された光偏向層23上に接着剤を積層して接着層26とし、基材層22にハードコート層21を接着剤等により貼り付ける。これにより採光シート20となる。
図9は第二実施形態を説明する図であり、図7に相当する図である。第二実施形態では、光偏向部25の代わりに光偏向部125が適用された光偏向層123を有する採光シート120が形成されている。そして、採光シート120がパネル13に貼付されて採光パネル112となる。従って、採光シート120は、光偏向部25の代わりにに光偏向部125が適用され、他の構成は採光シート20と同じなので、ここでは光偏向部125について説明し、他の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
光偏向部125は、光偏向部25の形態に加え、光を散乱して反射又は散乱して透過するための材料が充填されている。光を散乱させるための材料は特に限定されることはないが、例としては、散乱反射については、白色顔料や銀色顔料等の光散乱剤を混ぜた硬化性樹脂が挙げられる。白色顔料は、例えば、酸化チタン、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物が挙げられる。銀色顔料としては、例えば、アルミニウム、クロムなどの金属が挙げられる。これにより効率よく光を散乱反射させることができる。また、硬化性樹脂は光透過部24を構成する材料と同様のものを用いることができる。
一方、散乱反射、散乱透過のための構成については、光偏向部125を透明なバインダー樹脂と該バインダー樹脂とは屈折率が異なる透明な散乱剤とを混合させた材料で構成することができる。透明なバインダー樹脂としては光透過部24と同様なものを用いることができる。一方、当該透明な散乱剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレンを中心としたモノマーを重合して得られた架橋粒子が挙げられる。当該架橋粒子の具体例としては、ガンツ化成株式会社製のガンツパール(登録商標)が挙げられる。上記架橋粒子は、アクリル酸エステル及びスチレンとの混合比を変えることによって、屈折率を制御することができる。例えば、アクリル比を高くすることで屈折率を1.49程度にすることができ、スチレン比を高くすることで屈折率を1.59程度にすることができる。また、散乱剤にはウレタン架橋粒子を用いることも可能である。当該ウレタン架橋粒子の具体例としては、根上工業株式会社製のアートパール(登録商標)が挙げられる。また、散乱剤は中空粒子にすることも可能である。
このような光偏向部125を有する採光シート120では、上記したLS1、LS2のような光路の加え、太陽光LS3のように光を導くことができる。図9にLS3の光路を示した。
図9からわかるようにLS3はそのときの太陽高度に基づいて仰角(水平面からなす角)θS3で採光パネル112に照射される。採光パネル112に入射した光LS3は採光パネル112を透過するうちに光偏向層123の光透過部24内を進む。光透過部24内では、該光透過部の屈折率をN、室外の屈折率をNとすれば、光LS3は、式(9)で表される太陽光進行角θP3で進む。
Figure 0005888450
太陽光進行角θP3で進行した太陽光が光透過部24と光偏向部125との界面のうち傾斜角がθU2である部位に達したとき、光透過部24と光偏向部125との屈折率差、及び太陽光進行角θP3の関係が全反射臨界角以下であれば図9のように界面を超えて光偏向部125内に進行する。ここで、光偏向部125は光を散乱させて室内側に出射することができるので、太陽光を散乱してまぶしさの原因となる直達光を抑制することが可能となる。
このように、採光シート120では、入射光の条件により全反射することなく光偏向部内に入った光も散乱して直達光でなくしてから室内側に出射することができる。
従来の技術は、太陽光が拡散せずに、室内に直接達する光(直達光)が多い場合があり、室内の人がまぶしさを感じてしまう不具合があった。結果として、室内が明るくなったとしても、まぶしさ防止のため、カーテンやブラインドをしてしまい、室内が暗くなってしまう不具合があった。本発明によればこれを抑制することができ、室内を従来のように暗くすることなく、まぶしさをも防止することができる。
以下に示す各実施例及び比較例では、東京における南中高度を考慮した例を説明する。東京では、一年のうち最も高い南中高度における仰角θSHは78°、一年のうち最も低い南中高度における仰角θSLは31°である。
また、各実施例及び比較例で用いる光透過部の屈折率はNは1.550、光偏向部の屈折率は1.490である。従って、仰角θSHのとき、光透過部内を進む太陽光の進行角(太陽光進行角)θは39.1°、仰角θSLのとき、光透過部内を進む太陽光の進行角(太陽光進行角)θは19.4°である。
実施例1では採光シート20を備える採光パネル12の例による採光パネルを作製した。図10、表1に実施例1における光偏向層の形状を表した。これらからわかるように、実施例1では、光偏向部の上部となる側を断面で角度の異なる2つの辺で構成した。
本例では光偏向層を次のように作製した。
(1)光透過部構成組成物の調整
まずビスフェノールAエチレンオキシド/キシリレンジイソシアネート/フェノキシエチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)を30:15:50:5:0.02で混合し、80℃で10時間反応させ、光硬化性プレポリマー(P1)を得た。
一方、ビスフェノールAエチレンオキシド/イソホロンジイソシアネート/フェノキシエチルアクリレート/ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)を30:20:50:0.02で混合し、80℃で10時間反応させ、光硬化性プレポリマー(P2)を得た。
次に、光硬化性プレポリマー(P1)を30質量部、光硬化性プレポリマー(P2)を30質量部、反応性希釈モノマー(M1)としてのフェノキシエチルアクリレートを10質量部、反応性希釈モノマー(M2)としてのビスフェノールAエチレンオキシドを30質量部、金型離型剤(S1)としてのテトラデカノールエチレンオキシド10モル付加物のリン酸エステルを0.03質量部、金型離型剤(S2)としてのステアリルアミンエチレンオキシド15モル付加物を0.03質量部、光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、メーカー名:BASF)を3質量部混合し、均一化して、光透過部構成組成物を得た。
なお、この光透過部構成組成物を厚さ100μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させ、多波長アッベ屈折率計(株式会社アタゴ製)を用いて、589nmの屈折率を測定したところ、1.550であった。
(2)基材
基材としてはPETフィルム、商品名:A4300、東洋紡績社製、厚さ100μmを用いた。
(3)金型ロールの作製
光偏向層の作製に供される金型ロールを作製した。金型ロールは円柱状であり、銅メッキが施され、当該銅メッキ部分をバイトにより切削して光透過部に対応する溝を形成した。バイトとしてはダイヤモンドバイトを用いた。ロール軸方向の所定ピッチで金型ロールの銅メッキ層の外周を切削して溝を形成した。この切削したロールにクロムメッキをした。
(4)光透過部の形成
上記(3)で作製した金型ロールとニップロールとの間に、上記(2)の基材を搬送した。この基材の搬送に合わせ、上記(1)で得られた光透過部構成組成物を基材の基材層上に供給装置から供給し、金型ロールおよびニップロール間の押圧力により、基材層と金型ロールとの間に光透過部構成組成物を充填した。その後、基材側から高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させて、光透過部を形成した。その後、剥離ロールにより、金型ロールから光透過部を離型し、光透過部を含むシート(中間部材)を作製した。
圧縮式微小硬度計(FISCHER HM2000)を用いて微小圧子材料に負荷をかけ、これを除荷することによってこの光透過部の弾性率を測定した。このとき、負荷力は100mN、負荷速度は4μm/10秒、保持時間は60秒とした。その結果、光透過部の弾性率は800MPaであった。
(5)光偏向部構成組成物の調整
光硬化性プレポリマー(P3)としてウレタンアクリレートを42質量部、光硬化性プレポリマー(P4)としてエポキシアクリレートを18質量部、反応性希釈モノマー(M3)としてのトリプロピレングリコールジアクリレートを35質量部、反応性希釈モノマー(M4)としてのメトキシトリエチレングリコールアクリレートを5質量部、光散乱剤(D1)としての酸化チタンを5質量部、光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、メーカー名:BASF)を7質量部混合し、均一化して、光偏向部構成組成物を得た。
なお、この光偏向部構成組成物の光散乱剤を除いた成分を厚さ100μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して硬化させ、多波長アッベ屈折率計(株式会社アタゴ製)を用いて、589nmの屈折率を測定したところ、1.490であった。
(6)光偏向部の形成
上記(5)で得られた光偏向部構成組成物を、上記(4)で作製した中間部材上に供給装置から供給した。また、中間部材の進行方向と略垂直に配置されたドクターブレードを用いて、中間部材上に供給した光偏向部構成組成物を中間部材に形成された溝(光透過部間の溝)内に充填するとともに、余剰分の光偏向部構成組成物を掻き落とした。その後、高圧水銀灯により800mJ/cmの紫外線を照射して光偏向部構成組成物を硬化させ、光偏向部を形成した。この状態では、光偏向部の表面には、深さ6μmの窪みが発生していた。上記工程を更に1回行ったところ、光偏向部の表面には、深さ3μmの窪みが発生していた。
(7)接着層の形成
アクリル系樹脂の粘着剤(商品名:SKダイン2094、綜研化学株式会社、固形分25.0%、溶剤は酢酸エチルとメチルエチルケトン)を100質量部と、架橋剤(E−5XM、L−45、綜研化学株式会社、固形分5.0%)を0.28質量%と、1,2,3−ベンゾトリアゾールを0.25質量部と、希釈溶剤(トルエン/メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=27.69g/27.69g/4.61g)を32.0質量部と、を混合して接着層組成物を得た。
この組成物を離型フィルム(商品名:E7007、東洋紡績社製、厚さ38μm)に塗布して乾燥させ、上記光学機能層の面と貼り合わせた。
なお、この接着層について、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.490であった。また、この接着層の貯蔵弾性率は0.22MPaであった。
比較例1では採光シートを備える採光パネルを作製した。図11、及び表1に比較例1における光偏向層の形状をそれぞれ表した。これらからわかるように、比較例1では、光偏向部の上部となる側を断面で1つの直線となる辺で構成した。
比較例2では、θU1<θU2の例の採光パネルを作製した。図12及び表1に比較例2における光偏向層の形状をそれぞれ表した。これからわかるように比較例2では、光偏向部の上部となる側を断面で上に凸となる折れ線状の辺で構成した。
参考例1は、採光シートを用いることなくパネルのみとした。
Figure 0005888450
以上示した各例の採光パネルについて、直達光及び採光効率を測定して評価した。詳しくは次の通りである。
光源(メタルハライドファイバー光源、IMH−250、シグマ光機株式会社)により白色光を所定の角度θSH、θSLで投射した。光源の照度を照度計(T−1H、コニカミノルタオプティクス株式会社)を用いて500lxに調整した。
輝度計(LS−110、コニカミノルタオプティクス株式会社)を採光シートへの光の入射前、光の入射後に設置して、それぞれの輝度を測定し、輝度比から採光効率を算出した。実施例1の採光効率を○とし、これと同等であれば同様に○、これより低ければ×とした。
一方、直達光の評価は、まぶしさを主観評価し、十分まぶしくないと感じるレベルを◎、まぶしくないと感じるレベルを○、直視できないと感じるレベルを×とした。
表2に結果を表した。
Figure 0005888450
表2の結果からわかるように、実施例1では太陽高度が高いときの仰角θSHでも、太陽高度が低いときの仰角θSLでも良好な採光効率を有しつつも直達光を抑えることができた。これはθSH時には上記説明したように、傾斜角の異なる2つの斜辺で順に光を全反射して室内側に出射することにより、一方、θSL時には室内側の傾斜により光を全反射して室内側に出射することによると考えられる。
比較例1では、θSH、θSLのいずれの場合にも直達光を抑制することができたが、θSHのときに採光効率が低下してしまった。
比較例2では、光偏向部の上部が折れ線状ではあるが、その傾斜の関係が適切でないことから、θSHのときに採光効率が低下してしまった。
1 建物
10 採光装置
11 枠
12 採光パネル
13 パネル
20 採光シート
21 ハードコート層
22 基材層
23 光偏向層
24 光透過部
25 光偏向部
26 接着層

Claims (4)

  1. シート面が鉛直となるように建物開口部に配置されるシート状である採光シートであって、
    透光性を有するシート状の基材層と、
    前記基材層の一方の面に形成され、光を偏向する光偏向層と、を備え、
    前記光偏向層は、
    前記基材層の一方の面に沿って複数並べて配置された光を透過する光透過部と、
    複数の前記光透過部間に配置され、該光透過部よりも低い屈折率の紫外線硬化型樹脂の組成物が充填された光偏向部と、を有し、
    前記光透過部が配置された部位の前記光偏向層の表裏面は平行に形成されており、
    前記採光シートが前記建物開口部に配置された姿勢で、前記光偏向部は前記採光シートの厚さ方向断面において、その上部となる側の辺が、複数の直線が連続した折れ線、又は曲線状で形成されており、前記上部となる側の辺は、下に凸となるよう形成され、
    前記上部となる側の辺とは反対側の下部となる側の辺は直線状であり、
    前記上部となる側の辺と前記下部となる側の辺との間に形成される辺のうち、前記光透過部間の開口となる側の辺には凹部が設けられている採光シート。
  2. 前記上部となる側の辺における前記下に凸は、前記上部となる側の辺のうち室外側における水平面に対する傾斜角が、室内側における水平面に対する傾斜角よりも大きく形成されている、請求項1に記載の採光シート。
  3. 透光性を有する板状のパネルと、
    前記パネルの一方の面に貼付される請求項1又は2に記載の採光シートと、
    少なくとも前記パネルの周囲を囲むように配置される枠と、を備える採光装置。
  4. 壁に形成された開口部に請求項3に記載の採光装置が設置された建物。
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