JP6184326B2 - 基質特異性が向上したフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ - Google Patents
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Description
(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列と90%以上同一なアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列において1もしくは数個アミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列において、以下の(a)〜(i):
(a)配列番号1記載のアミノ酸配列における78位のメチオニンに対応する位置、
(b)配列番号1記載のアミノ酸配列における79位のチロシンに対応する位置、
(c)配列番号1記載のアミノ酸配列における81位のグルタミンに対応する位置、
(d)配列番号1記載のアミノ酸配列における121位のロイシンに対応する位置、
(e)配列番号1記載のアミノ酸配列における122位のバリンに対応する位置、
(f)配列番号1記載のアミノ酸配列における123位のトリプトファンに対応する位置、
(g)配列番号1記載のアミノ酸配列における465位のグルタミン酸に対応する位置、
(h)配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置、及び
(i)配列番号1記載のアミノ酸配列における612位のセリンに対応する位置
よりなる群から選択されるアミノ酸に対応する位置で1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有し、前記置換を行う前と比較して、D−グルコースへの反応性に対するD−キシロースへの反応性の割合(Xyl/Glc(%))、および/またはD−グルコースへの反応性に対するマルトースへの反応性の割合(Mal/Glc(%))が低減していることを特徴とする、フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。
(2)以下(j)〜(r):
(j)配列番号1記載のアミノ酸配列における78位のメチオニンに対応する位置のアミノ酸がグルタミン酸、グルタミン、システイン又はアスパラギンのいずれかである、
(k)配列番号1記載のアミノ酸配列における79位のチロシンに対応する位置のアミノ酸がフェニルアラニン又はアスパラギンのいずれかである、
(l)配列番号1記載のアミノ酸配列における81位のグルタミンに対応する位置のアミノ酸がロイシン、フェニルアラニン又はアスパラギンのいずれかである、
(m)配列番号1記載のアミノ酸配列における121位のロイシンに対応する位置のアミノ酸がシステイン又はメチオニンのいずれかである、
(n)配列番号1記載のアミノ酸配列における122位のバリンに対応する位置のアミノ酸がスレオニン、アラニン又はシステインのいずれかである、
(o)配列番号1記載のアミノ酸配列における123位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がシステイン、ファニルアラニン、ヒスチジン、バリン又はセリンのいずれかである、
(p)配列番号1記載のアミノ酸配列における465位のグルタミン酸に対応する位置のアミノ酸がアルギニン、アスパラギン酸又はイソロイシンのいずれかである、
(q)配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がファニルアラニン又はチロシンのいずれかである、及び
(r)配列番号1記載のアミノ酸配列における612位のセリンに対応する位置のアミノ酸がシステイン又はスレオニンのいずれかである
よりなる群から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有する、上記(1)に記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。
(3)配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファン残基に対応する位置のアミノ酸がチロシンに置換されたことを特徴とする、上記(1)に記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。
(4)配列番号1記載のアミノ酸配列における123位のトリプトファン残基に対応する位置のアミノ酸がファニルアラニン又はバリンに置換されたことを特徴とする、上記(1)に記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。
(5)以下(w)〜(ai):
(w)配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンであり、かつ、78位のメチオニンに対応する位置のアミノ酸がグルタミン酸又はアスパラギンのいずれかである、
(x)配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンであり、かつ、121位のロイシンに対応する位置のアミノ酸がメチオニンである、
(y)配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンであり、かつ、122位のバリンに対応する位置のアミノ酸がシステインである、
(z)配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンであり、かつ、123位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がフェニルアラニン又はバリンのいずれかである、
(aa)配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンであり、かつ、612位のセリンに対応する位置のアミノ酸がシステイン又はスレオニンのいずれかである、
(ab)配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンであり、78位のメチオニンに対応する位置のアミノ酸がアスパラギンであり、かつ、612位のセリンに対応する位置のアミノ酸がシステインである、
(ac)配列番号1記載のアミノ酸配列における123位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がフェニルアラニンであり、かつ、121位のロイシンに対応する位置のアミノ酸がメチオニンである、
(ad)配列番号1記載のアミノ酸配列における123位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がフェニルアラニンであり、かつ、612位のセリンに対応する位置のアミノ酸がスレオニンである、
(ae)配列番号1記載のアミノ酸配列における123位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がバリンであり、かつ、121位のロイシンに対応する位置のアミノ酸がメチオニンである、
(af)配列番号1記載のアミノ酸配列における232位のバリンに対応する位置のアミノ酸がグルタミン酸であり、387位のスレオニンに対応する位置のアミノ酸がアラニンであり、545位のイソロイシンに対応する位置のアミノ酸がスレオニンであり、かつ、569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンである、
(ag)配列番号1記載のアミノ酸配列における232位のバリンに対応する位置のアミノ酸がグルタミン酸であり、387位のスレオニンに対応する位置のアミノ酸がアラニンであり、545位のイソロイシンに対応する位置のアミノ酸がスレオニンであり、かつ、612位のセリンに対応する位置のアミノ酸がシステインである、
(ah)配列番号1記載のアミノ酸配列における232位のバリンに対応する位置のアミノ酸がグルタミン酸であり、387位のスレオニンに対応する位置のアミノ酸がアラニンであり、545位のイソロイシンに対応する位置のアミノ酸がスレオニンであり、かつ、612位のセリンに対応する位置のアミノ酸がスレオニンである、又は
(ai)配列番号1記載のアミノ酸配列における232位のバリンに対応する位置のアミノ酸がグルタミン酸であり、387位のスレオニンに対応する位置のアミノ酸がアラニンであり、465位のグルタミン酸に対応する位置のアミノ酸がアスパラギン酸であり、545位のイソロイシンに対応する位置のアミノ酸がスレオニンであり、かつ、569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンである、
のアミノ酸置換を有する、上記(1)に記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。
(6)D−グルコースの反応性に対するD−キシロースへの反応性の割合(Xyl/Glc(%))および/またはD−グルコースへの反応性に対するマルトースへの反応性の割合(Mal/Glc(%))が、前記の置換を導入する前と比較して20%以上低減していることを特徴とする上記(1)〜(5)記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼをコードするフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子。
(8)上記(7)記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子を含む組換えベクター。
(9)上記(8)記載の組換え体ベクターを含む宿主細胞。
(10)以下の工程:
(aj)上記(9)に記載の宿主細胞を培養する工程、
(ak)前記宿主細胞中に含まれるフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子を発現させる工程、及び
(al)前記培養物からフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを単離する工程
を含むフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを製造する方法。
(11)上記(1)〜(6)に記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを用いることを特徴とするグルコース測定方法。
(12)上記(1)〜(6)に記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを含むグルコースアッセイキット。
(13)上記(1)〜(6)に記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを含むグルコースセンサー。
本発明のFAD−GDHは、公知の野生型または変異型FAD−GDH同様、電子受容体存在下でD−グルコースの水酸基を酸化してグルコノ−δ−ラクトンを生成する反応を触媒する。
本発明のFAD−GDHの活性は、この作用原理を利用し、例えば、電子受容体としてフェナジンメトサルフェート(PMS)および2,6−ジクロロインドフェノール(DCIP)を用いた以下の測定系を用いて測定することができる。
(反応1) D−グルコ−ス + PMS(酸化型)
→ D−グルコノ−δ−ラクトン + PMS(還元型)
(反応2) PMS(還元型) + DCIP(酸化型)
→ PMS(酸化型) + DCIP(還元型)
具体的には、フラビン結合型GDHの活性は、以下の手順に従って測定することができる。50mM リン酸緩衝液(pH6.5) 2.05mL、1M D−グルコース溶液 0.6mLおよび2mM DCIP溶液 0.15mLを混合し、37℃で5分間保温する。次いで、15mM PMS溶液 0.1mLおよび酵素サンプル溶液0.1mLを添加し、反応を開始する。反応開始時、および、経時的な吸光度を測定し、酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量(ΔA600)を求め、次式に従いフラビン結合型GDH活性を算出する。この際、フラビン結合型GDH活性は、37℃において濃度200mMのD−グルコース存在下で1分間に1μmolのDCIPを還元する酵素量を1Uと定義する。
本発明のFAD−GDHは、配列番号1で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列と同一性の高い、例えば、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上同一なアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、配列番号1記載のアミノ酸配列における78位に相当する位置、79位に相当する位置、81位に相当する位置、121位に相当する位置、122位に相当する位置、123位に相当する位置、465位に相当する位置、569位に相当する位置および612位に相当する位置から選択される位置のアミノ酸に対応する位置で1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有することを特徴とする。
また、上記のような多重変異体を作出するにあたっては、上述の各種の置換以外の位置における置換を組み合わせることもできる。このような置換の位置は、単独で置換を導入した場合には、上述の置換部位におけるもののように顕著な効果を奏さないものであっても、上述の置換部位と組み合わせて導入することによって、相乗的に効果を奏するものであり得る。
目的とするアミノ酸置換導入方法としては、例えばランダムに変異を導入する方法あるいは想定した位置に部位特異的変異を導入する方法が挙げられる。前者の方法としては、エラープローンPCR法(Techniques,1,11−15,(1989))や、増殖の際、プラスミドの複製にエラーを起こしやすく、改変を生じやすいXL1−Redコンピテントセル(STRATAGENE社製)を用いる方法等がある。また、後者の方法として、目的とするタンパク質の結晶構造解析により立体構造を構築し、その情報をもとに目的の効果を付与すると予想されるアミノ酸を選択し、市販のQuick Change Site Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社製)等により部位特異的変異を導入する方法がある。あるいは、後者の方法として、目的とするタンパク質と相同性の高い公知のタンパク質の立体構造を用いて、目的の効果を付与すると予想されるアミノ酸を選択し、部位特異的変異を導入する方法もある。
本発明のFAD−GDHは、高い基質特異性を有することを特徴とする。具体的には、本発明のFAD−GDHは、本発明者らが先に見出した特許第4648993号公報に記載のMucor属由来FAD−GDHと同様に、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロースに対する反応性が極めて低いことを特徴とする。具体的には、D−グルコースに対する反応性を100%とした場合に、マルトース、D−ガラクトースおよびD−キシロースに対する反応性がいずれも2%以下であることを特徴とする。本発明に用いるFAD−GDHは、このような高い基質特異性を有するため、マルトースを含む輸液の投与を受けている患者や、ガラクトース負荷試験およびキシロース吸収試験を実施中の患者の試料についても、測定試料に含まれるマルトース、D−ガラクトース、D−キシロース等の糖化合物の影響を受けることなく、正確にD−グルコース量を測定することが可能となる。さらに、本発明のFAD−GDHは、特許第4648993号公報に記載のMucor属由来FAD−GDHを比較して、さらに高いD−グルコースに対する基質特異性を有するものであるため、一層の産業上の有用性が期待される。
このような特性を有するFAD−GDHを用いた場合には、測定試料中にマルトースやD−ガラクトース、D−キシロースが存在している状況でも、D−グルコース量を正確に測定することが可能である。
本発明のFAD−GDHは、Xyl/Glc(%)またはMal/Glc(%)のいずれか片方のみがアミノ酸置換を導入する前のFAD−GDHと比べて好ましい程度に低減していてもよく、あるいは、その両方が、好ましい程度に低減していてもよい。両方の基質に対する反応性がいずれも低減しているものであれば、より好ましい。
本発明のFAD−GDHは、公知のタンパク質を出発物質として、それを改変することにより取得することもできる。特に、本発明のFAD−GDHに望まれる酵素科学的性質と類似点が多い出発物質を利用することは、所望のFAD−GDHを取得する上で有利である。
上述のような出発物質の例としては、公知のFAD−GDHを挙げることができる。公知のFAD−GDHの由来微生物の好適な例としては、ケカビ亜門、好ましくはケカビ綱、より好ましくはケカビ目、さらに好ましくはケカビ科に分類される微生物を挙げることができる。具体的には、ムコール(Mucor)属、アブシジア(Absidia)属、アクチノムコール(Actinomucor)属由来のFAD−GDHは、本発明のFAD−GDHを取得するための出発物質の一例として好適である。
本発明のFAD−GDHを効率よく取得するためには、遺伝子工学的手法を利用するのが好ましい。本発明のFAD−GDHをコードする遺伝子(以下、FAD−GDH遺伝子)を取得するには、通常一般的に用いられている遺伝子のクローニング方法を用いればよい。例えば、公知のFAD−GDHを出発物質とし、それを改変することにより本発明のFAD−GDHを取得するには、FAD−GDH生産能を有する公知の微生物菌体や種々の細胞から、常法、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (WILEY Interscience,1989)記載の方法により、染色体DNA又はmRNAを抽出することができる。さらにmRNAを鋳型としてcDNAを合成することができる。このようにして得られた染色体DNA又はcDNAを用いて、染色体DNA又はcDNAのライブラリーを作製することができる。
出発物質であるFAD−GDH遺伝子の変異処理は、企図する変異形態に応じた、公知の任意の方法で行うことができる。すなわち、FAD−GDH遺伝子あるいは当該遺伝子の組み込まれた組換え体DNAと変異原となる薬剤とを接触・作用させる方法;紫外線照射法;遺伝子工学的手法;又は蛋白質工学的手法を駆使する方法等を広く用いることができる。
この接触・作用の諸条件は、用いる薬剤の種類等に応じた条件を採ることが可能であり、現実に所望の変異をMucor属由来FAD−GDH遺伝子において惹起することができる限り特に限定されない。通常、好ましくは0.5〜12Mの上記薬剤濃度において、20〜80℃の反応温度下で10分間以上、好ましくは10〜180分間接触・作用させることで、所望の変異を惹起可能である。紫外線照射を行う場合においても、上記の通り常法に従い行うことができる(現代化学、p24〜30、1989年6月号)。
なお、上記遺伝子改変法の他に、有機合成法又は酵素合成法により、直接所望の基質特異性の高い改変FAD−GDH遺伝子を合成することもできる。
上述のように得られた本発明のFAD−GDH遺伝子を、常法により、バクテリオファージ、コスミド、又は原核細胞若しくは真核細胞の形質転換に用いられるプラスミド等のベクターに組み込み、各々のベクターに対応する宿主細胞を常法により、形質転換又は形質導入をすることができる。
例えば、真核宿主細胞の一例としては、酵母が挙げられる。酵母に分類される微生物としては、例えば、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、カンジダ(Candida)属などに属する酵母が挙げられる。
挿入遺伝子には、形質転換された細胞を選択することを可能にするためのマーカー遺伝子が含まれていてもよい。マーカー遺伝子としては、例えば、URA3、TRP1のような、宿主の栄養要求性を相補する遺伝子等が挙げられる。また、挿入遺伝子は、宿主細胞中で本発明の遺伝子を発現することのできるプロモーター又はその他の制御配列(例えば、エンハンサー配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列等)を含むことが望ましい。プロモーターとしては、具体的には、例えば、GAL1プロモーター、ADH1プロモーター等が挙げられる。酵母への形質転換方法としては、公知の方法、例えば、酢酸リチウムを用いる方法(MethodsMol. Cell. Biol., 5, 255−269(1995))やエレクトロポレーション(J Microbiol Methods 55 (2003)481−484)等を好適に用いることができるが、これに限定されず、スフェロプラスト法やガラスビーズ法等を含む各種任意の手法を用いて形質転換を行えば良い。
本発明のFAD−GDHは、上述のように取得した本発明のFAD−GDHを生産する宿主細胞を培養し、前記宿主細胞中に含まれるフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子を発現させ、次いで、前記培養物からフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを単離することにより、製造すればよい。
上記真核宿主細胞を培養するためには、例えば、Saccharomyces cerevisiaeの培養において広く用いられているYPD(バクトペプトン 2%,バクトイースト・エクストラクト 1%,グルコース 2%)液体培地を好適に用いることができると考えられるが、その他にも、添加することにより本発明に用いるフラビン結合型GDHの製造量を向上させることができる栄養源や成分があれば、単独で、あるいは組み合わせてそれらを添加してもよい。
培地に使用する炭素源としては、同化可能な炭素化合物であればよく、例えばグルコース、デンプン加水分解物、グリセリン、フラクトース、糖蜜などが挙げられる。窒素源としては、利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、コーンスチープリカー、大豆粉、マルツエキス、アミノ酸、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどが挙げられる。無機物としては、例えば、食塩、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸第1鉄、リン酸第1カリウム、リン酸第2カリウム、炭酸ナトリウム、塩化カルシウムなどの種々の塩が挙げられる。その他、必要に応じてビタミン類、消泡剤などを添加してもよい。
例えば、チゴサッカロマイセス属の酵母を培養する場合の培地および培養条件の一例として、バクトペプトン 2%,バクトイースト・エクストラクト 1%,グルコース 2%の培地を用いた、30℃、200rpmで24時間の振盪が挙げられる。例えば、エシェリヒア・コリーの培養は、10〜42℃の培養温度、好ましくは25℃前後の培養温度で4〜24時間、さらに好ましくは25℃前後の培養温度で4〜8時間、通気攪拌深部培養、振盪培養、静置培養等により実施すればよい。
上記酵素が菌体内に存在する場合には、培養物から、例えば、濾過、遠心分離などの操作により菌体を分離し、この菌体から酵素を採取するのが好ましい。例えば、超音波破砕機、フレンチプレス、ダイノミルなどの、通常の破壊手段を用いて菌体を破壊する方法、リゾチームなどの細胞壁溶解酵素を用いて菌体細胞壁を溶解する方法、トリトンX−100などの界面活性剤を用いて菌体から酵素を抽出する方法などを単独または組み合わせて採用することができる。
上記酵素が菌体外に存在する場合には、例えば、濾過、遠心分離などの操作により菌体を分離し、上清を回収すればよい。次いで、濾過または遠心分離などにより不溶物を取りのぞき、酵素抽出液を得る。得られた抽出液から、フラビン結合型GDHを、必要に応じて単離、精製するには、必要により核酸を除去したのち、これに硫酸アンモニウム、アルコール、アセトンなどを添加して分画し、沈殿物を採取し、本発明のFAD−GDHの粗酵素を得ることができる。
本発明はまた、本発明のFAD−GDHを含むグルコースアッセイキットを開示し、例えば、このようなグルコースアッセイキットを用いることにより、本発明のFAD−GDHを用いて血中のD−グルコース(血糖値)を測定することができる。
本発明のグルコースアッセイキットは、本発明に従う改変型FAD−GDHを、少なくとも1回のアッセイに十分な量で含む。典型的には、本発明のグルコースアッセイキットは、本発明の改変型FAD−GDHに加えて、アッセイに必要な緩衝液、メディエーター、キャリブレーションカーブ作製のためのD−グルコース標準溶液、ならびに使用の指針を含む。本発明に従う改変型FAD−GDHは種々の形態で、例えば、凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中の溶液として提供することができる。
本発明はまた、本発明のFAD−GDHを用いるグルコースセンサーを開示する。電極としては、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上に本発明の酵素を固定化する。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどがあり、あるいはフェロセンあるいはその誘導体に代表される電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。典型的には、グルタルアルデヒドを用いて本発明の改変型FAD−GDHをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする。
(1)Mucor属由来FAD−GDHを発現する酵母形質転換体Sc−Mp株の作製
特許文献4に記載の方法に準じ、配列番号2のFAD−GDH遺伝子(特許文献4ではMpGDH遺伝子と記載)をコードする組換え体プラスミド(puc−MGD)を取得した。これを鋳型として、配列番号3、4の合成ヌクレオチド、Prime STAR Max DNAポリメラーゼ(TaKaRa社製)を用い、添付のプロトコールに従ってPCR反応を行った。PCR反応液を1.0%アガロースゲルで電気泳動し、RECOCHIP(TakaRa社製)を用いて、約2kbの「インサート用DNA断片」を精製した。
また、Saccharomyces cerevisiaeの発現用プラスミドpYES2/CT(Invitrogen社製)を制限酵素KpnI(New England Biolabs社製)で処理し、制限酵素処理後の反応液を1.0%アガロースゲルで電気泳動し、RECOCHIP(TakaRa社製)を用いて、約6kbの「ベクター用DNA断片」を精製した。
酵母形質転換株Sc−Mp株を、5mLの前培養用液体培地[0.67%(w/v)アミノ酸不含有イーストニトロゲンベース(BD)、0.192%(w/v)ウラシル不含有酵母合成ドロップアウト培地用添加物(sigma社製)、2.0%(w/v)ラフィノース]中で、30℃にて24時間培養した。その後、前培養液1mLを4mLの本培養用液体培地[0.67%(w/v)アミノ酸不含有イーストニトロゲンベース、0.192%(w/v)ウラシル不含有酵母合成ドロップアウト培地用添加物、2.5%(w/v)D−ガラクトース、0.75%(w/v)ラフィノース]に加えて、30℃で16時間培養した。
Sc−Mp株で発現させたMucor属由来FAD−GDHの(Mal/Glc(%))および(Xyl/Glc(%))は、本来の由来微生物であるMucor属において生産されたFAD−GDHを精製して同様の測定を行ったものと、ほぼ同等であった。すなわち、Sc−Mp株で発現させたMucor属由来FAD−GDHは、公知の各種FAD−GDHと比較しても既に十分に優れたD−グルコースへの基質特異性を有していることが確認され、改変によりさらなる基質特異性向上を目指す取り組みにおいてこの酵素が好ましい出発物といえることがわかった。
(1)Mucor属由来FAD−GDHにおける基質結合部位周辺のアミノ酸残基の予測
出願人が特許文献第4648993号公報で開示したMucor属由来のケカビ由来FAD−GDHの一種であるMucor属由来FAD−GDHは、そのアミノ酸配列において、それまでに知られた各種公知のタンパク質の中で高い相同性を有するものがみつかっていない。従って、相同性の高い公知のタンパク質が存在する場合のように、酵素が類似すると予測される公知のタンパク質の立体構造を基に、Mucor属由来FAD−GDHの立体構造や活性部位近傍に位置するアミノ酸を予測することは容易ではないと考えられた。
上記のような間接的な推測により、Mucor属由来FAD−GDHにおいて基質結合部位近傍に位置する可能性が予測された位置、すなわち、配列番号1における79位のチロシン、120位のグリシン、566位のアルギニン、613位のヒスチジンに対して、これらを各種アミノ酸へと置換する部位特異的変異を導入することとした。
組換え体プラスミドpYE2C−Mpを鋳型として、配列番号6、7の合成ヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、以下の条件でPCR反応を行った。
すなわち、10×KOD−Plus−緩衝液を5μl、dNTPが各2mMになるよう調製されたdNTPs混合溶液を5μl、25mMのMgSO4溶液を2μl、鋳型となるpYE2C−Mpを50ng、上記合成オリゴヌクレオチドをそれぞれ15pmol、KOD−Plus−を1Unit加えて、滅菌水により全量を50μlとした。調製した反応液をサーマルサイクラー(エッペンドルフ社製)を用いて、94℃で2分間インキュベートし、続いて、「94℃、15秒」−「55℃、30秒」−「68℃、8分」のサイクルを30回繰り返した。
部位特異的変異を導入した上述の改変型Mucor属由来FAD−GDHをコードする組換え体プラスミドpYE2C−Mp−Y79A、pYE2C−Mp−Y79V、pYE2C−Mp−Y79P、pYE2C−Mp−Y79C、pYE2C−Mp−Y79N、pYE2C−Mp−Y79Q、pYE2C−Mp−Y79S、pYE2C−Mp−Y79T、pYE2C−Mp−Y79H、pYE2C−Mp−Y79F、pYE2C−Mp−Y79W、pYE2C−Mp−Y79K、pYE2C−Mp−G120H、pYE2C−Mp−G120C、pYE2C−Mp−G120E、pYE2C−Mp−G120K、pYE2C−Mp−G120W、pYE2C−Mp−G120M、pYE2C−Mp−R566H、pYE2C−Mp−R566M、pYE2C−Mp−R566Y、pYE2C−Mp−R566Q、pYE2C−Mp−R566E、pYE2C−Mp−R566K、pYE2C−Mp−H613K、pYE2C−Mp−H613R、pYE2C−Mp−H613N、pYE2C−Mp−H613Dを用いて、上述と同様にしてInv−Sc株を形質転換し、形質転換株の培養を行って、培養上清中のFAD−GDH活性を測定した。
すなわち、上述の(1)の方針により間接的に推測した複数箇所のアミノ酸をそれぞれ変異させることにより、所望の効果を奏する改変体を容易に取得することはできなかったが、探索を行う中で、79位の位置のアミノ酸を変異させ、ある種のアミノ酸残基へと置換を行った場合において、好ましい効果を奏する改変体を取得することができた。
(1)予測基質結合部位周辺への部位特異的変異導入
実施例2に示すように、作製した一部の改変体において、所望の性質を有する改変体を取得することができたため、次いで、実施例2で変異させた79位のチロシン、120位のグリシン、566位のアルギニン、613位のヒスチジンのそれぞれの近傍に位置するアミノ酸に対しても、部位特異的変異を導入することを試みた。
上述の部位特異的変異を導入した改変型Mucor属由来FAD−GDHをコードする組換え体プラスミドpYE2C−Mp−G77A、pYE2C−Mp−M78C、pYE2C−Mp−M78D、pYE2C−Mp−M78N、pYE2C−Mp−M78E、pYE2C−Mp−M78Q、pYE2C−Mp−Q81L、pYE2C−Mp−Q81F、pYE2C−Mp−Q81N、pYE2C−Mp−L121C、pYE2C−Mp−L121M、pYE2C−Mp−V122T、pYE2C−Mp−V122I、pYE2C−Mp−V122A、pYE2C−Mp−V122M、pYE2C−Mp−V122C、pYE2C−Mp−W123C、pYE2C−Mp−W123F、pYE2C−Mp−W123H、pYE2C−Mp−W123V、pYE2C−Mp−W123S、pYE2C−Mp−D568N、pYE2C−Mp−D568E、pYE2C−Mp−W569F、pYE2C−Mp−W569Y、pYE2C−Mp−S612A、pYE2C−Mp−S612C、pYE2C−Mp−S612Tを用いて、実施例2と同様にしてInv−Sc株を形質転換し、各形質転換株の培養を行い、培養上清中のGDH活性を確認した。
(1)Mucor属由来FAD−GDHへの基質特異性向上型変異の多重導入
実施例2および実施例3の知見をもとに、実施例2および実施例3の方法に準じ、組み換え体プラスミドpYE2C−Mp−W569Yを鋳型として、各種合成ヌクレオチドの組み合わせにより、目的とする部位特異的変異を多重に導入した多様な変異体を取得した。作製した改変体の代表例を表3に示す。これらの改変体は、具体的には、配列番号1の569位のトリプトファンがチロシンに置換され、さらに配列番号1の78位のメチオニンがシステインに、78位のメチオニンがアスパラギンに、78位のメチオニンがグルタミン酸に、78位のメチオニンがグルタミンに、79位のチロシンがフェニルアラニンに、79位のチロシンがアスパラギンに、81位のグルタミンがアスパラギンに、121位のロイシンがメチオニンに、122位のバリンがシステインに、123位のトリプトファンがフェニルアラニンに、123位のトリプトファンがバリンに、612位のセリンがシステインに、612位のセリンがスレオニンに置換された変異体であり、それぞれをコードする遺伝子を包含する組換え体プラスミドをpYE2C−MpY−M78C、pYE2C−MpY−M78N、pYE2C−MpY−M78E、pYE2C−MpY−M78Q、pYE2C−MpY−Y79F、pYE2C−MpY−Y79N、pYE2C−MpY−Q81N、pYE2C−MpY−L121M、pYE2C−MpY−V122C、pYE2C−MpY−W123F、pYE2C−MpY−W123V、pYE2C−MpY−S612C、pYE2C−MpY−S612Tと称した。
部位特異的変異を多重に導入した改変型Mucor属由来FAD−GDHをコードする組換え体プラスミドpYE2C−MpY−M78C、pYE2C−MpY−M78N、pYE2C−MpY−M78E、pYE2C−MpY−M78Q、pYE2C−MpY−Y79F、pYE2C−MpY−Y79N、pYE2C−MpY−Q81N、pYE2C−MpY−L121M、pYE2C−MpY−V122C、pYE2C−MpY−W123F、pYE2C−MpY−W123V、pYE2C−MpY−S612C、pYE2C−MpY−S612T、pYE2C−MpYC−M78N、pYE2C−MpF−L121M、pYE2C−MpF−S612T、pYE2C−MpV−L121M、pYE2C−MpV−S612Tを用いて、上述と同様にしてInv−Sc株を形質転換し、各形質転換株の培養を行って、培養上清中のGDH活性を確認した。
また、配列番号1の569位のトリプトファンをチロシンに置換した単独変異体と比較して、配列番号1の569位のトリプトファンをチロシンに置換し、さらに78位のメチオニンをアスパラギンに、もしくは123位のトリプトファンをフェニルアラニンに、もしくは612位のセリンをスレオニンに置換した二重変異体において、Xyl/Glc(%)およびXyl/Glc比率(%)が、より低減することがわかった。
また、123位のトリプトファンをフェニルアラニンに置換した単独変異体と比較して、配列番号1の123位のトリプトファンをフェニルアラニンに置換し、さらに121位のロイシンをメチオニンに置換した二重変異体において、Mal/Glc(%)、Mal/Glc比率(%)、Xyl/Glc(%)およびXyl/Glc比率(%)のいずれもが、より低減することがわかった。この多重変異体においては、各変異点の効果が加わって、より優れた基質特異性が発揮されているといえる。
(1)各種改変型Mucor由来FAD−GDHの粗酵素液の濃縮
取得した上述の組換え体プラスミドpYE2C−Mp−W569Y、pYE2C−MpY−V122C、pYE2C−MpY−W123V、pYE2C−MpY−S612C、pYE2C−MpYC−M78Nを用いて、それぞれInv−Sc株を形質転換し、各種形質転換株を前培養用液体培地[0.67%(w/v)アミノ酸不含有イーストニトロゲンベース(BD)、0.192%(w/v)ウラシル不含有酵母合成ドロップアウト培地用添加物(sigma社製)、2.0%(w/v)ラフィノース]100mL中で30℃にて24時間培養した。その後、前培養液全量を1Lの本培養用液体培地[0.67%(w/v)アミノ酸不含有イーストニトロゲンベース、0.192%(w/v)ウラシル不含有酵母合成ドロップアウト培地用添加物、2.5%(w/v)D−ガラクトース、0.75%(w/v)ラフィノース]に加えて、30℃で16時間培養した。
上記で取得した、各種改変型Mucor属由来FAD−GDHの濃縮粗酵素液を用いて、酵素電極測定による基質特異性評価を行った。具体的には、カーボンの作用電極、銀塩化銀の参照電極が印刷されてなる、DEP Chip電極(丸形・カーボン・ダムリング付き;バイオデバイステクノロジー社製)上に、終濃度364mMのフェリシアン化カリウム、終濃度約100mMのリン酸緩衝液(pH6.0)及び1000U/mLの各種粗酵素濃縮液を2μLに溶解した液を載せ、35℃で20分間静置することにより、酵素の電極上への固定化(2U/srtip)を行った。その後、DEP Chip専用コネクターを用いて、オートマチック ポラリゼーションシステム HSV−100(北斗電工社製)に接続した。そして、300mVの電圧を印加して、所定濃度のD−グルコース及びマルトース及びD−キシロース溶液20μLをそれぞれ電極上に載せて反応を行い、20秒後の電流値を測定した。反応させた各基質濃度における電流応答値をプロットした結果を図2〜図6に示す。また、それぞれの基質濃度20mMにおいて、D−グルコースへの反応性を100%としたときのマルトースへの反応性(Mal/Glc(%))、およびD−グルコースへの反応性を100%としたときのD−キシロースへの反応性(Xyl/Glc(%))を表4に示す。
しかし、W569Yのみの単独変異を有する改変型FAD−GDHのXyl/Glc(%)が4%であるのに対し、W569Y/V122Cの変異を有する改変型FAD−GDHでは、Xyl/Glc(%)が19%となり、マルトースへの反応性はほとんど示されなかったが、D−キシロースへの反応性が顕著であることがわかった。
一方、表4に示す通り、W569Y、W569Y/W123V、W569Y/S612C、W569Y/S612C/M78Nの変異を有するMucor由来改変型FAD−GDHでは、酵素電極測定による評価においても、マルトースやD−キシロースへほとんど反応性を示さないことがわかった。
実施例2に従って、P. amagasakiense由来のグルコース酸化酵素の立体構造を表示し、FADのイソアロキサジン環のre面を囲むように位置するアミノ酸の候補として、さらに428位のアスパラギン酸を予想した。図1より、P. amagasakiense由来グルコース酸化酵素の428位のアスパラギン酸は、Mucor属由来FAD−GDHにおいて、配列番号1の471位のアスパラギン酸に相当することが予想され、このアミノ酸がMucor属由来FAD−GDHにおいて基質結合部位近傍に位置することが予想された。そこで、配列番号1に471位のアスパラギン酸及びその周辺のアミノ酸に対して、各種アミノ酸へと置換する部位特異的変異を導入することとした。
具体的には、表5に示した各種合成ヌクレオチドの組み合わせをプライマーとして用いることにより、実施例2に準じ、組換え体プラスミドpYE2C−Mpを鋳型として、目的とする部位特異的変異を導入した改変型FAD−GDHをコードする組換え体プラスミドを作製した。作成した改変体の代表例を表5に示す。これらの改変体は、具体的には、配列番号1の465位のグルタミン酸がアスパラギン酸に、465位のグルタミン酸がグリシンに、465位のグルタミン酸がイソロイシンに、465位のグルタミン酸がアルギニンに、465位のグルタミン酸がロイシンに、465位のグルタミン酸がセリンに、465位のグルタミン酸がスレオニンに、465位のグルタミン酸がバリンに、465位のグルタミン酸がトリプトファンに、469位のアスパラギンがアスパラギン酸に、469位のアスパラギンがグルタミンに、469位のアスパラギンがグルタミン酸に、471位のアスパラギン酸がアスパラギンに、471位のアスパラギン酸がグルタミン酸に、471位のアスパラギン酸がグルタミンに、473位のグルタミンがグルタミン酸に、473位のグルタミンがアスパラギンに、473位のグルタミンがアスパラギン酸に、474位のアスパラギンがアスパラギン酸に、474位のアスパラギンがグルタミンに、474位のアスパラギンがグルタミン酸に、475位のアスパラギンがアスパラギン酸に、475位のアスパラギンがグルタミンに、475位のアスパラギンがグルタミン酸に置換された変異体であり、それぞれをコードする遺伝子を包含する組換え体プラスミドをpYE2C−Mp−E465D、pYE2C−Mp−E465G、pYE2C−Mp−E465I、pYE2C−Mp−E465R、pYE2C−Mp−E465L、pYE2C−Mp−E465S、pYE2C−Mp−E465T、pYE2C−Mp−E465V、pYE2C−Mp−E46W、pYE2C−Mp−N469D、pYE2C−Mp−N469Q、pYE2C−Mp−N469E、pYE2C−Mp−D471N、pYE2C−Mp−D471E、pYE2C−Mp−D471Q、pYE2C−Mp−Q473E、pYE2C−Mp−Q473N、pYE2C−Mp−Q473D、pYE2C−Mp−N474D、pYE2C−Mp−N474Q、pYE2C−Mp−N474E、pYE2C−Mp−N475D、pYE2C−Mp−N475Q、pYE2C−Mp−N475Eと称した。
これまでに発明者らは、配列番号1の232位のバリンがグルタミン酸に、387位のスレオニンがアラニンに、545位のイソロイシンがスレオニンに置換された改変型FAD−GDHが優れた耐熱性を有することを見出した。そこで、これら3つの耐熱性向上型変異を蓄積させた3重変異体に、さらに各種基質特異性向上型変異を蓄積させることで、耐熱性及び基質特異性に優れた改変型FAD−GDHを作製することにした。
具体的には、配列番号106、107及び配列番号108、109及び配列番号110、111の合成ヌクレオチドの組み合わせをプライマーとして用いることにより、実施例2に準じ、組換え体プラスミドpYE2C−Mpを鋳型として部位特異的変異を順次導入し、配列番号1の232位のバリンがグルタミン酸に、387位のスレオニンがアラニンに、545位のイソロイシンがスレオニンに置換された改変型FAD−GDHをコードする組換え体プラスミドYE2C−Mp−V232E/T387A/I545Tを作製した。
Claims (9)
- 配列番号1で示されるアミノ酸配列、該アミノ酸配列と90%以上同一なアミノ酸配列において、以下:
配列番号1記載のアミノ酸配列における78位のメチオニンに対応する位置のアミノ酸がグルタミン酸、グルタミン、システイン及びアスパラギンからなる群より選択される、
配列番号1記載のアミノ酸配列における79位のチロシンに対応する位置のアミノ酸が、フェニルアラニン及びアスパラギンからなる群より選択される、
配列番号1記載のアミノ酸配列における81位のグルタミンに対応する位置のアミノ酸が、ロイシン、フェニルアラニン及びアスパラギンからなる群より選択される、
配列番号1記載のアミノ酸配列における121位のロイシンに対応する位置のアミノ酸がシステイン及びメチオニンからなる群より選択される、
配列番号1記載のアミノ酸配列における122位のバリンに対応する位置のアミノ酸がスレオニン、アラニン及びシステインからなる群より選択される、
配列番号1記載のアミノ酸配列における123位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がシステイン、フェニルアラニン、ヒスチジン、バリン及びセリンからなる群より選択される、
配列番号1記載のアミノ酸配列における465位のグルタミン酸に対応する位置のアミノ酸が、アルギニン及びアスパラギン酸からなる群より選択される、
配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸が、チロシンである、
配列番号1記載のアミノ酸配列における612位のセリンに対応する位置のアミノ酸がシステイン又はスレオニンのいずれかである、
配列番号1記載のアミノ酸配列における232位のバリンに対応する位置のアミノ酸がグルタミン酸であり、387位のスレオニンに対応する位置のアミノ酸がアラニンであり、545位のイソロイシンに対応する位置のアミノ酸がスレオニンであり、かつ、569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンである、
配列番号1記載のアミノ酸配列における232位のバリンに対応する位置のアミノ酸がグルタミン酸であり、387位のスレオニンに対応する位置のアミノ酸がアラニンであり、545位のイソロイシンに対応する位置のアミノ酸がスレオニンであり、かつ、612位のセリンに対応する位置のアミノ酸がシステインである、
配列番号1記載のアミノ酸配列における232位のバリンに対応する位置のアミノ酸がグルタミン酸であり、387位のスレオニンに対応する位置のアミノ酸がアラニンであり、545位のイソロイシンに対応する位置のアミノ酸がスレオニンであり、かつ、612位のセリンに対応する位置のアミノ酸がスレオニンである、
配列番号1記載のアミノ酸配列における232位のバリンに対応する位置のアミノ酸がグルタミン酸であり、387位のスレオニンに対応する位置のアミノ酸がアラニンであり、465位のグルタミン酸に対応する位置のアミノ酸がアスパラギン酸であり、545位のイソロイシンに対応する位置のアミノ酸がスレオニンであり、かつ、569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンである、
配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンであり、かつ、78位のメチオニンに対応する位置のアミノ酸がグルタミン酸である、
配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンであり、かつ、78位のメチオニンに対応する位置のアミノ酸がアスパラギンである、
配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンであり、かつ、121位のロイシンに対応する位置のアミノ酸がメチオニンである、
配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンであり、かつ、123位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がフェニルアラニンである、
配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンであり、かつ、123位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がバリンである、
配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンであり、かつ、612位のセリンに対応する位置のアミノ酸がシステインである、又は
配列番号1記載のアミノ酸配列における569位のトリプトファンに対応する位置のアミノ酸がチロシンであり、かつ、612位のセリンに対応する位置のアミノ酸がスレオニンである
のアミノ酸置換を有し、前記置換を行う前と比較して、D−グルコースへの反応性に対するD−キシロースへの反応性の割合(Xyl/Glc(%))、および/またはD−グルコースへの反応性に対するマルトースへの反応性の割合(Mal/Glc(%))が低減していることを特徴とする、フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。 - D−グルコースへの反応性に対するD−キシロースへの反応性の割合(Xyl/Glc(%))および/またはD−グルコースへの反応性に対するマルトースへの反応性の割合(Mal/Glc(%))が、前記の置換を導入する前と比較して20%以上低減していることを特徴とする、請求項1記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。
- 請求項1に記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼをコードする、フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子。
- 請求項3記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子を含む、組換えベクター。
- 請求項4記載の組換え体ベクターを含む、宿主細胞。
- 以下の工程:
請求項5に記載の宿主細胞を培養する工程、
前記宿主細胞中に含まれるフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子を発現させる工程、及び
前記培養物からフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを単離する工程
を含むフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを製造する方法。 - 請求項1に記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを用いることを特徴とする、グルコース測定方法。
- 請求項1に記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを含む、グルコースアッセイキット。
- 請求項1に記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを含む、グルコースセンサー。
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