JP5889800B2 - 大腸菌形質転換体、それを用いたフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法、および、変異型フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ - Google Patents

大腸菌形質転換体、それを用いたフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法、および、変異型フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ Download PDF

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Description

本発明は、ケカビ由来のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを大腸菌で効率的に組換え生産するための大腸菌形質転換体と、それを用いたフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法、および、変異型フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼに関する。
血中グルコース濃度(血糖値)は、糖尿病の重要なマーカーである。糖尿病患者が自己の血糖値を管理するための装置としては、電気化学的バイオセンサを用いた自己血糖測定(Self Monitoring of Blood Glucose:SMBG)機器が広く利用されている。SMBG機器に用いられるバイオセンサには、従来、グルコースオキシダーゼ(GOD)等のグルコースを基質とする酵素が利用されている。しかしながら、GODは酸素を電子受容体とするという特性を備えているため、GODを用いたSMBG機器では、測定サンプル中の溶存酸素が測定値に影響を与え、正確な測定値が得られない場合が起こりうる。
一方、グルコースを基質とするが、酸素を電子受容体としない別の酵素として、各種のグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)が知られている。具体的には、ニコチンアミドジヌクレオチド(NAD)やニコチンアミドジヌクレオチドリン酸(NADP)を補酵素とするタイプのGDH(NAD(P)−GDH)や、ピロロキノリンキノン(PQQ)を補酵素とするGDH(PQQ−GDH)が見出されており、SMBG機器のバイオセンサに使用されている。しかしながら、NAD(P)−GDHは、酵素の安定性が乏しく、かつ、補酵素の添加が必要という問題を有し、また、PQQ−GDHは基質特異性が低く、測定対象であるグルコース以外にも、マルトース、D−ガラクトースおよびD−キシロースなどの糖化合物に対して作用してしまうため、測定サンプル中のグルコース以外の糖化合物が測定値に影響し、正確な測定値が得られないという問題点が存在する。
近年、PQQ−GDHをバイオセンサとして用いたSMBG機器を用いて、輸液投与を受けていた糖尿病患者の血糖値を測定する際に、PQQ−GDHが輸液中に含まれるマルトースにも作用して、実際の血糖値よりも高い測定値が得られ、この値に基づく処置が原因となって患者が低血糖等を発症した例が報告されている。また、同様の事象はガラクトース負荷試験およびキシロース吸収試験を実施中の患者にも起こり得ることも判明している(例えば、非特許文献1参照)。これを受け、厚生労働省医薬食品局は、グルコース溶液に各糖類を添加した場合における血糖測定値への影響を調査する目的で交差反応性試験を行ったところ、600mg/dLのマルトース、300mg/dLのD−ガラクトース、あるいは、200mg/dLのD−キシロース添加を行った場合には、PQQ−GDH法を用いた血糖測定キットの測定値は、実際のグルコース濃度より2.5〜3倍ほど高い値を示した。すなわち、測定試料中に存在し得るマルトース、D−ガラクトース、D−キシロースにより測定値が不正確になることが判明し、このような測定誤差の原因となる糖化合物の影響を受けず、グルコースを特異的に測定可能な基質特異性の高いGDHの開発が切に望まれている。
上記のような背景の下、上記以外の補酵素を利用するタイプのGDHが着目されるようになってきている。例えば、基質特異性に関する詳細な記載はないが、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)由来のGDHについての報告(例えば、非特許文献2〜5参照)が知られている。また、アスペルギルス(Aspergillus)属由来のフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼ(FAD−GDH)が開示されており(例えば、特許文献1〜3参照)、D−キシロースに対する作用性を低減させたアスペルギルス属由来のFAD−GDHも開示されている(例えば、特許文献4参照)。
上記のとおり、D−グルコースではない1種または数種の糖化合物に対して反応性が低いFAD−GDHがいくつか知られてはいるが、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロースのいずれに対しても反応性が十分に低いという特性を有するフラビン結合型GDHは知られていない。また、D−グルコース、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロースが存在する条件下において、それらの糖化合物による影響を受けることなくグルコース濃度を正確に測定することが可能なフラビン結合型GDHも知られていない。さらに、そのような優れた基質特異性を有するフラビン結合型GDHを効率的に製造する方法および手段については、これまでに全く報告されていない。
有用な酵素を効率よく製造するための一手段として、目的とする酵素の遺伝子を適当な宿主に導入して形質転換体を作製し、この形質転換体を培養して製造を行う方法は、従来知られている。中でも大腸菌への導入は、効率的な物質生産の手段として広く行われることが多い方法である。しかしながら、FAD−GDHに関して、大腸菌による組換え生産の知見は未だ乏しく、アスペルギルス(Aspergillus)属とペニシリウム(Penicillium)属由来のFAD−GDH遺伝子を大腸菌宿主K12株へと導入して組換え発現を行わせる方法がわずかに開示されている(例えば、特許文献5参照)程度である。
ある遺伝子を何らかの宿主に導入して発現させる際には、実際にどのような遺伝子を、どのような異種宿主にどのように導入するかによって、効果の度合いは一律ではない。特に、異種宿主への導入、中でも、真核生物由来の遺伝子を大腸菌へと導入しようとする場合には、公知の方法を用い、同種の酵素に関する知見を参考にした場合であっても、導入自体うまくいかないか、宿主での発現がうまくいかないことが多くある。大腸菌は翻訳後修飾系を持たないため、例えばカビ等の真核生物由来の酵素であって、その酵素活性にとって翻訳後修飾が必要である場合等に、この酵素を大腸菌で活性を発現させることは一般に非常に困難を伴うことが多い。例えば、カビ由来の酵素を大腸菌で発現させた場合、発現できた場合でも不溶性の封入体となってしまう場合がほとんどである。
そのような背景の下、カビ等の真核生物由来の酵素を大腸菌において活性型として発現させ、さらに効率的に生産させることのできる遺伝子、宿主、導入方法等の組み合わせを個々に見出すことは、産業上非常に有用であり、優れた性質を有するFAD−GDHが求められていることと併せて、そのような優れた性質を有する酵素を工業生産に有利な大腸菌において効率的に生産できる技術の確立も、強く求められている。
特開2007−289148号公報 国際公開第04/058958号 国際公開第07/139013号 特開2008−237210号公報 特許第4561764号公報
医薬品・医療用具等安全性情報206号(Pharmaceuticals and Medical Devices Safety Information No.206)、2004年10月、厚生労働省医薬食品局 Studies on the glucose dehydrogenase of Aspergillus oryzae. I. Induction of its synthesis by p−benzoquinone and hydroquinone, T. C. Bak, and R. Sato, Biochim. Biophys. Acta, 139, 265−276 (1967). Studies on the glucose dehydrogenase of Aspergillus oryzae. II. Purification and physical and chemical properties, T.C. Bak, Biochim. Biophys. Acta, 139, 277−293 (1967). Studies on the glucose dehydrogenase of Aspergillus oryzae. III. General enzymatic properties, T.C. Bak, Biochim. Biophys. Acta, 146, 317−327 (1967). Studies on the glucose dehydrogenase of Aspergillus oryzae. IV. Histidyl residue as an active site, T.C. Bak, and R. Sato, Biochim. Biophys. Acta, 146, 328−335 (1967).
本発明は、D−グルコースに特異性が高く、D−グルコース以外の糖化合物の共存条件下においてもD−グルコース量を正確に測定できるGDHを効率良く製造するための大腸菌形質転換体と、それを用いたフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法および変異型フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの提供を課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討を重ね、グルコース量の正確な測定を可能とする新規なGDHを生産する微生物のスクリーニングを実施した結果、ケカビ亜門に属する菌株から、グルコースに特異性が高く、グルコース以外の糖化合物の共存条件下で測定を行った場合でもグルコースを正確に測定できるGDH活性を有する新規なGDHを見出した。
本発明者等は、このGDHを精製し諸性質を決定した結果、この酵素が新規なフラビン結合型GDHであることを確認し、実際にマルトース、D−ガラクトース、D−キシロース存在下でのD−グルコース測定を実施するとともに、その新規なGDHのアミノ酸配列とそれをコードする遺伝子配列情報を取得した。さらに、本来の由来微生物の培養物からでは十分な量の酵素を取得することが困難であるという課題を解決するために、同種および異種の各種微生物にこの遺伝子を導入することを着想し、検討を重ねた。その一環として、例えば、発明者等は、同じカビ類に属するAspergillus属の微生物(Aspergillus sojae)を宿主とする形質転換体の作製を試みた。しかしながら、この方法によって得られるGDHのほとんどは本来の由来微生物で生産する場合と同様、菌体内で生産され、酵素の抽出工程等に同様の時間と手間を要すること、また、同じカビ類であるために、本来の由来微生物を培養する場合と比較して培養時間の短縮という観点からも大幅な改良効果が得られないことが判明した。
そこで発明者等は、培養時間の短縮や菌体破砕の容易性等の点でより有利な宿主候補である大腸菌を宿主の候補とし、ケカビ由来フラビン結合型GDHをコードする遺伝子を大腸菌へと導入して形質転換体を得て、この大腸菌形質転換体を培養し、この培養物よりフラビン結合型GDHを取得することを試みた。しかしながら、本発明者等が見出した新規なGDHは、その全長遺伝子を導入した際には、大腸菌での発現量が非常に低いことが確認された。
そこで、この問題を解決するために発明者等はさらに検討を重ねた結果、このGDHのN末端領域に存在するMKITAAIITVATAFASFASAに相当するアミノ酸配列を欠失させた変異型フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子を作製して適当なベクター等に導入し、これを用いて大腸菌を形質転換して大腸菌形質転換体を得た。そして、この大腸菌形質転換体を培養し、該培養物よりN末端欠失型の変異型フラビン結合型GDHを採取することにより、より多くのフラビン結合型GDHを効率的に取得できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)ケカビ亜門、好ましくは、ケカビ綱、より好ましくは、ケカビ目、さらに好ましくはケカビ科に分類される微生物に由来する野生型フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列からそのN末端領域に存在するMKITAAIITVATAFASFASAに相当するアミノ酸配列を含むN末端領域を欠失させた変異型フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を大腸菌に導入して得られる大腸菌形質転換体。
(2)配列番号1又は配列番号3で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列と85%以上同一なアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列からそのN末端領域に存在するMKITAAIITVATAFASFASAに相当するアミノ酸配列を含むN末端領域を欠失させた変異型フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を大腸菌に導入して得られる大腸菌形質転換体。
(3)上記(1)〜(2)記載の大腸菌形質転換体を培養し、該培養物よりフラビン結合型GDHを採取することを特徴とする、フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法。
(4)配列番号1又は配列番号3で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列と85%以上同一なアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるフラビン結合型GDHのアミノ酸配列からそのN末端領域に存在するMKITAAIITVATAFASFASAに相当するアミノ酸配列を含むN末端領域を欠失させたフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。
本発明の大腸菌形質転換体および、それを用いたフラビン結合型GDHの製造法によれば、グルコース量の正確な測定を可能とする新規なGDHを効率的に製造できる。具体的には、測定試料に含まれるマルトース、D−ガラクトース、D−キシロース等の糖化合物の影響を受けることなく、正確にD−グルコース量を測定することが可能なフラビン結合型GDHを効率的に取得できる。これにより、マルトースを含む輸液の投与を受けている患者や、ガラクトース負荷試験およびキシロース吸収試験を実施中の患者の試料についても、正確に血糖値を測定することが可能な実用性に優れたGDHを効率的に提供することが可能になる。
本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例の吸収スペクトルを示す図である。 本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例の至適pHを示す図である。 本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例の至適温度を示す図である。 本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例の熱安定性を示す図である。 本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例のpH安定性を示す図である。 本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例のSDS−ポリアクリルアミド電気泳動結果である。 本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例を用いて測定した、D−グルコース量の測定結果を示す図である。 本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例のシグナルペプチド予想切断部位である。 本発明のシグナルペプチド欠失型フラビン結合型GDHの一例におけるN末端部分のアミノ酸配列である。
(フラビン結合型GDH)
本発明に用いるフラビン結合型GDHは、ケカビ亜門、好ましくは、ケカビ綱、より好ましくは、ケカビ目、さらに好ましくは、ケカビ科に分類される微生物から得ることができる。ケカビ亜門、好ましくは、ケカビ綱、より好ましくは、ケカビ目、さらに好ましくは、ケカビ科に分類される微生物としては、例えば、ムコール(Mucor)属、アブシジア(Absidia)属、アクチノムコール(Actinomucor)属等が挙げられる。Mucor属に分類される微生物であって、本発明に用いるフラビン結合型GDHを生産する具体的な好ましい微生物の例としては、ムコール・プライニ(Mucor prainii)、ムコール・ジャバニカス(Mucor javanicus)もしくはムコール・シルシネロイデス・f・シルシネロイデス(Mucor circinelloides f. circinelloides)が挙げられる。より具体的には、Mucor prainii NISL0103、Mucor javanicus NISL0111もしくはMucor circinelloides f. circinelloides NISL0117が挙げられる。Absidia属に分類される微生物であって、本発明に用いるフラビン結合型GDHを生産する具体的な好ましい微生物の例としては、アブシジア・シリンドロスポラ(Absidia cylindrospora)、アブシジア・ヒアロスポラ(Absidia hyalospora)を挙げることができる。より具体的には、Absidia cylindrospora NISL0211、Absidia hyalospora NISL0218を挙げることができる。Actinomucor属に分類される微生物であって、本発明に用いるフラビン結合型GDHを生産する具体的な好ましい微生物の例としては、アクチノムコール・エレガンス(Actinomucor elegans)を挙げることができる。より具体的には、Actinomucor elegans NISL9082を挙げることができる。なお、上記の菌株はNISL(財団法人 野田産業科学研究所)の保管菌株であり、所定の手続きを経ることにより、分譲を受けることができる。
本発明に用いるフラビン結合型GDHは、上述の通り、「ケカビ亜門、好ましくは、ケカビ綱、より好ましくは、ケカビ目、さらに好ましくは、ケカビ科に分類される微生物に由来し、上述の各種性質を具備するフラビン結合型GDH」である。さらにまた、それらのフラビン結合型GDH生産微生物から公知の遺伝子工学的手法によって取得したフラビン結合型GDHをコードする遺伝子を利用し、必要によりそれを一部改変して、適当な宿主微生物に各種公知の手法により導入して生産された組換えフラビン結合型GDHもまた、本発明に用いる「ケカビ亜門、好ましくは、ケカビ綱、より好ましくは、ケカビ目、さらに好ましくは、ケカビ科に分類される微生物に由来し、上述の各種性質を具備するフラビン結合型GDH」に含まれる。同様に、「Mucor属に分類される微生物」、あるいは、特定の生産微生物菌株名を記載したフラビン結合型GDHについても、各々に由来する遺伝子情報を元に取得される、上述の各種性質を具備するフラビン結合型GDHをも本発明に包含する。
(フラビン結合型GDHの基質特異性)
本発明に用いるフラビン結合型GDHは、本発明者等が見出したもので、基質特異性に優れ、D−グルコースに対する選択性が極めて高いことを特徴とする。具体的には、本発明に用いるフラビン結合型GDHは、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロースに対する反応性が極めて低い。具体的には、D−グルコースに対する反応性を100%とした場合に、マルトース、D−ガラクトースおよびD−キシロースに対する反応性がいずれも2%以下であることを特徴とする。本発明に用いるフラビン結合型GDHは、このような高い基質特異性を有するため、マルトースを含む輸液の投与を受けている患者や、ガラクトース負荷試験およびキシロース吸収試験を実施中の患者の試料についても、測定試料に含まれるマルトース、D−ガラクトース、D−キシロース等の糖化合物の影響を受けることなく、正確にD−グルコース量を測定することが可能となる。
本発明に用いるフラビン結合型GDHは、上述のようにD−グルコースの代わりにマルトース、D−ガラクトース、D−キシロース等の糖化合物を基質として測定を行った際の測定値が非常に低く、さらに、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロース等の糖化合物が夾雑する条件下でも正確にグルコース測定値を測定できることを特徴とする。具体的には、それらの夾雑糖化合物が存在しない条件でのD−グルコースに対する反応性を100%とした場合に、夾雑糖化合物としてマルトース、D−ガラクトース、D−キシロースから選択される1以上が存在する場合の測定値が96%〜103%であり、夾雑糖化合物としてマルトース、D−ガラクトースおよびD−キシロースの3種が同時に存在する場合でも、測定値が96%〜104%であることを特徴とする。このような特性を有するフラビン結合型GDHを用いた場合には、測定試料中にマルトースやD−ガラクトース、D−キシロースが存在している状況でも、グルコース量を正確に測定することが可能であり、好ましい。
(本発明に用いるフラビン結合型GDHの酵素化学的特徴)
本発明に用いるフラビン結合型GDHとして好ましい酵素の例としては、以下の酵素化学的特徴を有するものが挙げられる。
(1)作用:電子受容体存在下でGDH活性を示す
(2)分子量:タンパク質のポリペプチド鎖部分の分子量が約80kDaである
(3)基質特異性:D-グルコースに対する反応性と比較して、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロースに対する反応性が低い
(4)至適pH:pH6.5〜7.0
(5)至適温度:37〜40℃
(6)安定pH範囲:pH3.5〜7.0
(7)熱安定性:40℃、15分間の熱処理後に80%以上の残存活性を有する
(8)フラビン化合物を補酵素とする
(9)Km値:D−グルコースに対するKm値が26〜33mMである
上記のような酵素化学的特徴を有するGDHであれば、測定試料に含まれるマルトース、D−ガラクトース、D−キシロース等の糖化合物の影響を受けることなく、正確にD−グルコース量を測定することが可能となる。また、血糖値の測定等の臨床診断に応用するために好適なpH範囲、温度範囲で良好に作用するので、診断用測定試薬等の用途に好適に使用することができる。
なお、上記の諸性質パラメータは典型的な例であるが、所定の測定条件においてD−グルコースの測定を行う際に本発明の効果を達成可能である範囲で、上記パラメータのうちには、許容可能な変動の幅を有するものがある。例えば、安定pH範囲や至適pH範囲、至適温度範囲等のパラメータは、所定の測定条件を含む範囲で、上記の典型的な範囲よりやや広くてもよいし、逆に、上記の典型的な範囲よりやや狭い場合でも、測定条件において十分な活性および/または安定性が確保されていればよい。Km値は一般的には小さくなるほど基質特異性が良いとされるが、本発明の酵素としては、所定の測定条件において実質的に十分な基質の選択が実現される範囲の値を有していればよい。
上記の各種の酵素化学的性質は、酵素の諸性質を特定するための公知の手法、例えば、以下の実施例に記載の方法を用いて調べることができる。酵素の諸性質は、本発明に用いるフラビン結合型GDHを生産する微生物の培養液や、精製工程の途中段階において、ある程度調べることもでき、より詳細には、精製酵素を用いて調べることができる。
精製酵素とは、当該酵素以外の成分、特に当該酵素以外のタンパク質(夾雑タンパク質)を実質的に含まない状態に分離された酵素をいう。具体的には、例えば、夾雑タンパク質の含有量が重量換算で全体の約20%未満、好ましくは約10%未満、更に好ましくは約5%未満、より一層好ましくは約1%未満である。なお、本明細書中に後述する「MpGDH」、「MjGDH」および「McGDH」は、特に断りの無い限り、精製酵素をいう。
本発明に用いるフラビン結合型GDHが利用する電子受容体は、特に限定されず、例えば、血糖値測定に用いるために好適な試薬成分として公知の任意の電子受容体を用いることができる。
本発明に用いるフラビン結合型GDHが利用する補酵素は、フラビン化合物であることを特徴とする。フラビン化合物には、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)等が挙げられる。
本発明に用いるフラビン結合型GDHとして好ましい酵素の例としては、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で測定したときに、タンパク質のポリペプチド鎖部分の分子量が約80kDaであるフラビン結合型GDHが挙げられる。なお、本発明に用いるフラビン結合型GDHには糖鎖が結合していると考えられ、糖鎖を除去する操作を行わない場合、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で測定した際の分子量はこれより大きめに測定される傾向を有する。
本発明に用いるフラビン結合型GDHとして好ましい酵素の例としては、D−グルコースに対するKm値が26〜33mMであるフラビン結合型GDHが挙げられる。
(フラビン結合型GDHの作用原理および活性測定法)
本発明に用いるフラビン結合型GDHは、電子受容体存在下でグルコースの水酸基を酸化してグルコノ−δ−ラクトンを生成する反応を触媒する。
したがって、この原理を利用して、例えば、電子受容体としてフェナジンメトサルフェート(PMS)および2,6−ジクロロインドフェノール(DCIP)を用いた以下の測定系により、本発明に用いるフラビン結合型GDHの活性を測定することができる。
(反応1) D−グルコ−ス + PMS(酸化型)
→ D−グルコノ−δ−ラクトン + PMS(還元型)
(反応2) PMS(還元型) + DCIP(酸化型)
→ PMS + DCIP(還元型)
まず、(反応1)において、グルコースの酸化に伴いPMS(還元型)が生成する。続いて進行する(反応2)により、PMSの酸化と共にDCIPが還元されるため、酸化型DCIPの消失を600nmの波長の吸光度変化量から測定することができる。
具体的には、フラビン結合型GDHの活性は、以下の手順に従って測定する。100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 1.79mL、1.25M D−グルコース溶液 0.08mLおよび20mM DCIP溶液 0.01mLを混合し、37℃で5分間保温する。次いで、20mM PMS溶液 0.02mLおよび酵素サンプル溶液0.1mLを添加し、反応を開始する。反応開始時、および、経時的な吸光度を測定し、酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量(ΔA600)を求め、次式に従いフラビン結合型GDH活性を算出する。この際、フラビン結合型GDH活性は、37℃において濃度50mMのD−グルコース存在下で1分間に1μmolのDCIPを還元する酵素量を1Uと定義する。
なお、式中の2.0は反応試薬+酵素試薬の液量(mL)、16.3は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm/μmol)、0.1は酵素溶液の液量(mL)、1.0はセルの光路長(cm)、ΔA600blankは10mM 酢酸緩衝液を酵素サンプル溶液の代わりに添加して反応開始した場合の600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量、dfは希釈倍数を表す。
(フラビン結合型GDHのアミノ酸配列)
本発明に用いるフラビン結合型GDHは、配列番号1又は配列番号3で示されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と85%以上相同なアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有することを特徴とする。配列番号1又は配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するフラビン結合型GDHは、上述の各種の性質を有する。また、配列番号1又は配列番号3で示されるアミノ酸配列と85%以上の相同性、好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号1又は配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するフラビン結合型GDHと同様な諸性質を有するGDHも、本発明のフラビン結合型GDHに含まれる。
(フラビン結合型GDHをコードする遺伝子配列)
本発明に用いるフラビン結合型GDHをコードする遺伝子とは、配列番号1又は配列番号3で示されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と85%以上相同なアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するフラビン結合型GDHをコードするDNAをいう。または、本発明に用いるフラビン結合型GDHをコードする遺伝子とは、配列番号2又は配列番号4で示される塩基配列からなるDNAをいう。あるいは、本発明に用いるフラビン結合型GDHをコードする遺伝子とは、配列番号2又は配列番号4で示される塩基配列と85%以上の相同性、好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列を有し、且つフラビン結合型GDH酵素活性をもつタンパク質をコードするDNAをいう。
(フラビン結合型GDHをコードする遺伝子配列を含むベクター、形質転換体)
本発明に用いるフラビン結合型GDHをコードする遺伝子は、適当な公知の各種ベクター中に挿入することができる。さらに、このベクターを適当な公知の各宿主に導入して、フラビン結合型GDH遺伝子を含む組換え体DNAが導入されている形質転換体を作製することができる。これらの遺伝子の取得方法や、遺伝子配列、アミノ酸配列情報の取得方法、各種ベクターの製造方法や形質転換体の作製方法は、当業者にとって公知であり、一例を後述する。
フラビン結合型GDHを生産する微生物からフラビン結合型GDH遺伝子を取得するには、通常一般的に用いられている遺伝子のクローニング方法が用いられる。例えば、フラビン結合型GDH生産能を有する微生物菌体や種々の細胞から常法、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (WILEY Interscience,1989)記載の方法により、染色体DNAまたはmRNAを抽出することができる。さらにmRNAを鋳型としてcDNAを合成することができる。このようにして得られた染色体DNAまたはcDNAを用いて、染色体DNAまたはcDNAのライブラリーを作製することができる。
次いで、フラビン結合型GDHのアミノ酸配列に基づき、適当なプローブDNAを合成して、これを用いて染色体DNAまたはcDNAのライブラリーからスクリーニングする方法、あるいは、上記アミノ酸配列に基づき、適当なプライマーDNAを作製して、5’RACE法や3’RACE法などの適当なポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)により、目的の遺伝子断片を含むDNAを増幅させ、これらを連結させて全長の目的遺伝子を含むDNAを得ることができる。
このようにして得られたフラビン結合型GDHをコードする遺伝子の好ましい一例として、Mucor属由来のフラビン結合型GDH遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子は、常法通り各種ベクターに連結されていることが、取扱い上好ましく、例えば、単離したMucor属由来のフラビン結合型GDHをコードする遺伝子を含む組換え体プラスミドを作製し、そこから例えば、QIAGEN(キアゲン社製)を用いることにより、抽出、精製して得ることができる。本発明において用いることのできるベクターDNAとしては、例えば、プラスミドベクターDNA、バクテリオファージベクターDNA等を用いることができる。具体的には、例えば、pBluescriptII SK+ (STRATAGENE社製)等が好ましい。
上記方法により得られたフラビン結合型GDH遺伝子の塩基配列の決定・確認は、例えば、マルチキャピラリーDNA解析システムCEQ2000(ベックマン・コールター社製)等を用いることにより行い得る。
得られたフラビン結合型GDH遺伝子を、後述するように、常法により、適当なベクターに組込み、各々のベクターに対応する宿主を、常法により、形質転換または形質導入することができる。具体的には、例えば、フラビン結合型GDH遺伝子を適当なベクター上に連結することにより組換えベクターを得ることができる。ベクターとしては、形質転換する宿主中でフラビン結合型GDHを生産させ得るものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、染色体組込み型、人工染色体等のベクターを用いることができる。ベクターとしてプラスミドを用いる場合、例えば、エシェリヒア・コリーを宿主微生物とする場合にはpBluescript,pUC18,pET−22b(+),pET−16bなどが使用できる。
また、上記ベクターには、形質転換された細胞を選択することを可能にするためのマーカー遺伝子が含まれていてもよい。マーカー遺伝子としては、例えば、URA3、niaDのような、宿主の栄養要求性を相補する遺伝子又はアンピシリン、カナマイシンあるいはオリゴマイシン等の薬剤に対する抵抗遺伝子等が挙げられる。また、組換えベクターは、宿主細胞中で本発明の遺伝子を発現することのできるプロモーター又はその他の制御配列(例えば、エンハンサー配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列等)を含むことが望ましい。プロモーターとしては、具体的には、例えば、GAL1プロモーター、amyBプロモーター、lacプロモーター等が挙げられる。また、精製のためのタグをつけることもできる。例えば、フラビン結合型GDH遺伝子の下流に適宜リンカー配列を接続し、ヒスチジンをコードする塩基配列を6コドン以上接続することにより、ニッケルカラムを用いた精製を可能にすることができる。
(本発明の形質転換体に使用する宿主)
上記の組換えベクターで宿主微生物を形質転換することにより、本発明の形質転換体が得られる。本発明の形質転換体における宿主の例としては、大腸菌(エシェリヒア・コリー、Escherichia coli)に属する微生物が挙げられる。エシェリヒア・コリーに分類される具体的な好ましい微生物としては、エシェリヒア・コリー W3110、エシェリヒア・コリーBL21(DE3)、エシェリヒア・コリーJM109、エシェリヒア・コリーDH5αなどの細菌が挙げられ、これらの菌株は各種市販されている。
(形質転換)
大腸菌の形質転換は、宿主により公知の方法で行うことができる。宿主微生物がエシェリヒア属に属する微生物の場合には、カルシウムイオンの存在下で組換えDNAの移入を行なう方法などを採用することができ、また、エレクトロポレーションによる方法(Methods Enzymol., 194, 182−187(1990))等を用いることができる。さらには、市販のコンピテントセル(例えば、ECOS BL21(DE3);ニッポンジーン社製)を用いても良いが、これらに限定されず、任意の手法で形質転換を行えば良い。
(N末端ペプチドの削除)
本発明の大腸菌形質転換体およびそれを用いたFAD−GDHの製造方法は、FAD−GDHの組換え発現において、そのN末端領域に存在する一定の長さのペプチド配列を欠失させた変異型GDH遺伝子を大腸菌に導入することを特徴とする。このことにより、ペプチド配列を欠失させない野生型GDH遺伝子を大腸菌に導入させた場合と比較して、および/または、本来の由来微生物を培養してGDHを生産させた場合と比較して、酵素の生産性を顕著に増加させることができる。
本発明に使用するケカビ由来FAD−GDHは実用性に優れた新規酵素であり、そのアミノ酸配列および遺伝子配列もこれまで知られていなかった。したがって、組換え生産はもとより、異種宿主での発現を想定して効率的な生産を行うための着想についても当然ながら全く知られていなかった。実際、本発明者等がケカビ由来FAD−GDHを見出した後に解明したアミノ酸配列および遺伝子配列も、従来知られていたいくつかのFAD−GDHとの相同性が極めて低いものである。すなわち、本発明に使用するFAD−GDHの組換え生産性の効率化に関しては、由来や構造が大幅に異なる他のFAD−GDHの知見をそのまま参照し適用することは困難であることが強く示唆され、個別的な試行錯誤が必要とされた。
(N末端ペプチドの削除領域の予測)
本発明に使用するFAD−GDHの組換え生産性の効率化に寄与するN末端の削除領域を検討するにあたり、シグナルペプチドの予測は有効な手段のひとつである。シグナルペプチドは、成熟型タンパク質のN末端に残基数15〜30個に及ぶ延長ペプチドとして存在する。シグナルペプチド配列中には疎水性アミノ酸領域が存在して新生ポリペプチド鎖の小胞体膜への付着および膜通過を先導し、膜通過後にはシグナルペプチドは切断される。すなわち、シグナルペプチドは細胞内の輸送に利用されるものであり、輸送後には切断されてしまう性質のものであるため、GDHのシグナルペプチド領域はGDHの活性自体には関与しないものである。したがって、シグナルペプチドであるとわかっている領域内での削除によって、酵素活性そのものが損なわれる恐れは低いと考えられる。
さらに、本発明に使用するケカビ由来FAD−GDHを大腸菌宿主において異種発現させる場合には、シグナルペプチドは、原株において認められる輸送の機能をもたないばかりか、大腸菌内では疎水性の高いペプチド鎖が付加されたままで存在することとなり、GDHの安定性を下げるなど、むしろ発現量を下げる要因になってしまう可能性があることが示唆される。
上記のような理由から、適当なツールを用いて、シグナルペプチドの長さを予測し、その近傍の位置でN末端を欠失させた変異型GDH遺伝子を作製し、これらを大腸菌に導入して酵素発現の状態を比較することは、好適な長さのN末端欠失領域の決定にとって有効な手段である。こうしたシグナルペプチド予測用のツールとしては、例えば、WEB上のシグナルペプチド予想プログラム(SignalP、「www.cbs.dtu.dk/services/SignalP−2.0/」)等が知られている。
(本発明におけるGDHのN末端ペプチドの削除領域)
本発明の大腸菌形質転換体およびそれを用いたFAD−GDHの製造方法では、ケカビ由来GDHのN末端領域に存在するシグナルペプチドに相当する領域を含むN末端領域を欠失させることにより、大腸菌で発現させた際の発現量を向上させることができる。具体的には、例えば、配列番号1または配列番号3に記載されたアミノ酸配列を有するGDHにおいては、そのN末端に存在するMKITAAIITVATAFASFASAのアミノ酸配列を含むN末端領域をコードするDNAを削除して発現させることにより、シグナルペプチドを欠失させることができる。この領域を削除することにより、本発明の大腸菌形質転換体によって生産されるGDHの発現量および/または生産量を顕著に増加させることができる。
なお、本発明における「そのN末端に存在するMKITAAIITVATAFASFASAに相当するアミノ酸配列」とは、配列番号1、または配列番号3に記載されたアミノ酸配列を有するGDHと一定の相同性(例えば、85%以上、好ましくは90%、より好ましくは95%以上の同一性)を有するGDHにおいて相当するアミノ酸配列をいう。これらの一定以上のアミノ酸配列同一性を有するGDH間における、「相当する位置・配列」の対応関係は、既製のアミノ酸の相同性解析用ソフト、例えば、GENETYX−Mac(Software Development社製)等を用いて、各種GDHのアミノ酸配列と配列番号1、または配列番号3のGDHのアミノ酸配列とを比較することにより、容易に知ることができる。
本発明者等が見出したケカビ由来のGDHと相同性が高いGDHは、現状では他に報告されてはいない。しかし、一般に、互いに相同性が高い酵素タンパク質においては、相同性の高い領域でのタンパク質構造が類似している可能性が高いことから、一定以上のアミノ酸配列同一性を有する複数の酵素の相同性解析によりそれらのアミノ酸配列の対応関係を解析し、一方における特定のアミノ酸の位置またはアミノ酸配列領域に相当する他方のアミノ酸の位置またはアミノ酸配列領域に同様の変異や削除等を導入することによって、酵素の性質に関して同様の効果を与えることができる例も多く知られている。従って、GDHに関しても、配列番号1または3で例示された本発明におけるGDHのN末端ペプチドの削除領域に関する本発明の知見を利用し、これらのGDHに関しても同様の効果を得るための方策として、その他のGDHにおいて相当する領域のアミノ酸配列を同様に削除する試みを容易に行うことができる。
また、本発明におけるGDHのN末端ペプチドの削除領域が、必ずしもシグナルペプチド領域のみである必要はない。例えば、N末端シグナルペプチド領域のみを削除する以外にも、シグナルペプチド領域そのものに加え、シグナルペプチド領域に隣接し、酵素活性に悪影響を及ぼさない範囲の領域までを含む領域を削除することもできる。具体的には、例えば、配列番号3に記載されたアミノ酸配列を有するGDHにおいては、そのN末端に存在するMKITAAIITVATAFASFASAを削除してもよいし、さらに1残基多く削除された形となるMKITAAIITVATAFASFASAQのアミノ酸配列を削除してもよい。酵素活性に悪影響を及ぼさない範囲であれば、さらに多くの残基までを削除してもよい。例えば、配列番号3に記載されたアミノ酸配列を有するGDHにおいては、そのN末端に存在するMKITAAIITVATAFASFASAQQDTNSSを削除してもよいし、さらに1残基多く削除された形となるMKITAAIITVATAFASFASAQQDTNSSSのアミノ酸配列を削除してもよい。本発明において重要なのは、N末端シグナルペプチド領域が実質的に削除されていることであって、N末端シグナルペプチド領域に加えて若干の領域が併せて削除されているかどうかは本発明の必須要件ではなく、同様の効果を奏する限り、複数のN末端領域削除のバリエーションが本発明のGDHに包含される。また、GDHの由来や宿主によっては、N末端シグナルペプチド領域とされる領域からわずかに短いN末端領域、例えば、1残基ないし数残基短いN末端領域を削除する場合に関しても、この削除による効果とN末端シグナルペプチド領域とされる領域全体を削除した時の効果、または、N末端シグナルペプチド領域とされる領域全体を含み、さらに長いN末端領域を削除した時の効果との間に実質的な差異が認められない場合には、そのような削除もまた、本発明のバリエーションに包含され得る。
N末端ペプチドの削除方法は限定されないが、公知の手段を用い、例えば、シグナルペプチド切断によりN末端となるアミノ酸を開始コドンであるメチオニンに変えて発現させる方法が挙げられる。または、シグナルペプチド切断によりN末端となるアミノ酸に開始コドンであるメチオニンを付加することで、シグナルペプチド欠失型のGDHを大腸菌で発現させることも可能である。あるいは、上述の通り、シグナルペプチドを含み若干の隣接領域を含むペプチドを削除することを想定し、想定される領域での切断を行った場合にN末端となるアミノ酸を開始コドンであるメチオニンに変えて発現させる方法や、切断によりN末端となるアミノ酸に開始コドンであるメチオニンを付加する方法も考えられる。
一定のN末端領域を切断する際に、新たにできるN末端をメチオニンに置換するか、あるいは置換せずにメチオニンを付加するかによって、得られるGDHのアミノ酸配列は1残基違ってくるが、これはシグナルペプチドの削除によって新たにできるN末端がメチオニンでなくなった場合に開始コドンを付与して遺伝子からのタンパク質発現を正常に行わせるために行う操作であって、本発明の必須要件ではない。
該目的酵素の発現量がシグナルペプチド配列の存在する状態と比べて高まったかどうかは、該配列への変異導入前後における培養液1mlあたりの総活性値を比較して確認することが出来る。なお、シグナルペプチドの欠失の確認には、エドマン分解を用いたN末端アミノ酸シーケンスにより確かめることも可能である。シグナルペプチドの予測プログラムとしては、PSORT、SignalPがよく利用されている。それぞれ、webにて「psort.nibb.ac.jp/」、あるいは「www.cbs.dtu.dk/services/SignalP−2.0/」のアドレスから利用することができる。
(フラビン結合型GDHの製造)
上記の形質転換により得られる大腸菌形質転換体を用いて、フラビン結合型GDHを製造する。具体的には、上記の形質転換により得られる大腸菌形質転換体を培養し、該培養物よりフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを取得することができる。
ある有用なタンパク質をコードする遺伝子を異種の宿主に導入することによって生産させる技術は、理論的には公知である。しかしながら、実際には、どのような遺伝子を、どのような異種宿主にどのように導入するかによって、その効果の度合いは一律ではなく、異種宿主へ導入しようとしても導入自体うまくいかないか、異種宿主での発現がうまくいかないことは多くある。すなわち、個々の物質生産において、具体的にどのような遺伝子を、どのような宿主にどのように導入した場合に効率的な製造が可能となるかを見出すことは容易とはいいがたく、効率的な製造を実現し得る遺伝子、宿主、導入方法等の組み合わせを見出すことは、産業上非常に有用である。
本発明の大腸菌形質転換体を培養することにより、本発明に用いるフラビン結合型GDHの由来微生物(すなわち、ケカビ)そのものを培養して製造を行う場合と比較して、格段に効率の良い酵素の製造を実現できる。具体的には、より多くの酵素を製造できるようになる。本発明に使用する各種ケカビ由来のフラビン結合型GDHは、本来の由来微生物を培養した場合には、フラビン結合型GDHの生産量は十分とはいいがたく、より大スケールでの菌体培養が必要となる。また、培養にも3〜5日を要するとともに、培養後の菌体を遠心分離で菌体を取得し菌体破砕(酵素抽出)を行う工程、さらに、再度遠心分離して粗酵素液を調製するという工程を必要とする。本発明の形質転換体(すなわち、大腸菌)を用いれば、培養日数および、菌体破砕(酵素抽出)工程を大幅に短縮することができ、効率的な製造が可能となる。
(大腸菌形質転換体の培養)
本発明の大腸菌形質転換体の培養は、通常の固体培養法で培養してもよいが、可能なかぎり液体培養法を採用して培養するのが好ましい。培養に用いる培地は、炭素源、窒素源、無機物、その他の栄養素を適宜含有するものであればよく、また、合成培地、天然培地の何れでもよく、目的の酵素を効率よく製造することのできる培地であれば、如何なる培地でもよい。
培地に使用する炭素源としては、同化可能な炭素化合物であればよく、例えばグルコース、デンプン加水分解物、グリセリン、フラクトース、糖蜜などが挙げられる。窒素源としては、利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、コーンスチープリカー、大豆粉、マルツエキス、アミノ酸、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどが挙げられる。無機物としては、例えば、食塩、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸第1鉄、リン酸第1カリウム、リン酸第2カリウム、炭酸ナトリウム、塩化カルシウムなどの種々の塩が挙げられる。その他、必要に応じてビタミン類、消泡剤などを添加してもよい。
その他にも、添加することにより本発明に用いるフラビン結合型GDHの製造量を向上させることができる栄養源や成分があれば、単独で、あるいは組み合わせて用いてもよい。
培養条件は、培養する微生物により異なっても良いが、例えば、培地の初発pHは、pH5〜10に調整し、培養温度は、20〜40℃、培養時間は、15〜25時間、1〜2日間、あるいは10〜50時間等、適宜設定することができる。培養方法は、通気撹拌深部培養、振盪培養、静地培養など任意の方法を採用すればよい。例えば、大腸菌等の微生物を培養する培地および培養条件の一例として、イーストエキス0.1%、マルツエキス0.1%、リン酸二水素カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.05%、pH7.3の培地を用いた、25℃、120rpmで4日間の振盪培養が挙げられる。本発明の大腸菌形質転換体を培養するための培養条件のさらなる一例としては、100μg/mLのアンピシリンおよび1mMのIPTGを含む10mLのTY培地(1% バクトトリプトン、0.5% バクトイースト・エクストラクト、0.5% NaCl、pH7.0)に植菌し、37℃、4時間振とう培養後、さらに20℃で一晩、振とう培養を行う方法も挙げられる。使用する形質転換体によって培養条件を最適化することにより、培養時間の短縮や酵素生産量の増加が実現され、より効率的な酵素製造に貢献することとなる。
培養終了後、該培養物あるいは培養菌体内部からフラビン結合型GDHを採取するには、通常の酵素の採取手段を用いることができる。上記酵素が菌体内に存在する場合には、培養物から、例えば、濾過、遠心分離などの操作により菌体を分離し、この菌体から酵素を採取するのが好ましい。例えば、超音波破砕機、フレンチプレス、ダイノミルなどの、通常の破壊手段を用いて菌体を破壊する方法、リゾチームなどの細胞壁溶解酵素を用いて菌体細胞壁を溶解する方法、トリトンX−100などの界面活性剤を用いて菌体から酵素を抽出する方法などを単独または組み合わせて採用することができる。
次いで、濾過または遠心分離などにより不溶物を取りのぞき、酵素抽出液を得る。得られた抽出液から、フラビン結合型GDHを、必要に応じて単離、精製するには、必要により核酸を除去したのち、これに硫酸アンモニウム、アルコール、アセトンなどを添加して分画し、沈殿物を採取する。さらに精製度の高い酵素標品を得るには、例えば、セファデックス、ウルトラゲルもしくはバイオゲルなどを用いるゲル濾過法、イオン交換体、ヒドロキシアパタイトなどを用いる吸着溶出法、アフィニティクロマト法、分子ふるい膜もしくは中空糸膜などを用いる分画法などを適宜選択し、またこれらを組み合わせて実施する。
本発明に使用するフラビン結合型GDHは、公知の遺伝子組換え手法を用いて遺伝子配列およびアミノ酸配列の一部を欠失、置換、付加および/または挿入により改変したものであってもよい。このように所望の特性を付与させたフラビン結合型GDHについても、本発明の大腸菌形質転換体を用いて効率よく製造することが可能である。
上記のような方法で製造されたフラビン結合型GDHは、夾雑糖化合物の存在下においても正確にグルコース量を測定できることから、グルコースセンサなどへの応用・実用化に好適に用いることができる。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。
(ケカビ由来のフラビン結合型GDHの取得)
1.GDH生産菌のスクリーニング
自然界から分離した菌株および微生物保存機関((財)野田産業科学研究所)から分与された保存菌約500株から、GDH生産菌のスクリーニングを行った。マルツエキス培地(マルツエキス2.0%、D−グルコース2.0%、ポリペプトン0.1%、pH6.0)3mlに供試菌株をそれぞれ接種し、3〜5日、30℃で振とう培養した。この培養液を800×g、10分間遠心分離して菌体を沈殿として得た。その後、この菌体を10mM 酢酸緩衝液(pH5.0)中に懸濁し、ビーズショッカー(安井器械(株)製)により菌体を破砕(2,000rpm、60秒、16回)し、4℃、20,000×g、10分間の遠心によって回収された上清を粗酵素液とした。
2.GDH活性の確認
以下の手順に従って各溶液を混合し、吸光度を測定して、粗酵素液中のGDH活性を調べた。100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 1.79mL、1.25M D−グルコース溶液 0.08mLおよび20mM DCIP溶液 0.01mLを混合し、37℃で5分間保温後、20mM PMS溶液 0.02mLおよび酵素サンプル溶液0.1mLを添加し、反応を開始した。反応開始時から酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量(ΔA600)を測定し、次式に従いGDH活性を算出した。この際、GDH活性は、37℃において濃度50mMのD−グルコ−ス存在下で1分間に1μmolのDCIPを還元する酵素量を1Uと定義した。
なお、式中の2.0は反応試薬+酵素試薬の液量(mL)、16.3は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm/μmol)、0.1は酵素溶液の液量(mL)、1.0はセルの光路長(cm)、ΔA600blankは10mM 酢酸緩衝液を酵素サンプル溶液の代わりに添加して反応開始した場合の600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量、dfは希釈倍数を表す。
各菌株の粗酵素液について、上記活性測定法に基づいてGDH活性の有無を調べた結果を表1に示す。
その結果、Mucor prainii NISL0103、Mucor javanicus NISL0107、Mucor javanicus NISL0108、Mucor javanicus NISL0111、Mucor javanicus NISL0112、Mucor javanicus NISL0115、Mucor circinelloides f. circinelloides NISL0116、Mucor circinelloides f. circinelloides NISL0117、Mucor hiemalis f. silvaticus NISL0118、Absidia cylindrospora NISL0211、Absidia hyalospora NISL0218、Actinomucor elegans NISL9082由来の粗酵素液中にGDH活性が検出された。
(ケカビ由来フラビン結合型GDHの精製)
前培養用培地(イーストエキス 2.0 %、グルコース 4%、pH6.0)0.1Lを0.5L容坂口フラスコに入れ、予めプレート培地上で培養したMucor prainii NISL0103、Mucor javanicus NISL0111、Mucor circinelloides f. circinelloides NISL0117を、約1cm分それぞれ接種し、30℃、130rpmで2日間回転振とう培養した。これを種培養として、30L容ジャーファメンターに入れた上記培地20Lに0.2Lずつ接種し(ジャーファメンター2基)、30℃、200rpm、0.5vvmで3日間培養した。培養終了後、培養液40Lをろ布でろ過し、菌体を回収した。次いで、得られた菌体を10mM 酢酸緩衝液(pH5.0)に懸濁した。
上記の菌体懸濁液を、ダイノミルに送液(150ml/分)して破砕し、6,000×gで30分遠心して上清を回収した。この上清を分画分子量6,000の中空糸膜AIP2013(旭化成ケミカルズ社製)を用いて濃縮し、濃縮後の酵素液に硫酸アンモニウムを70%飽和となるよう徐々に添加し、余分な蛋白質を沈殿させた。一晩、4℃で放置後、遠心分離(200,000×g、60分)により上清を回収した。
この上清を、緩衝液A(10mM 酢酸緩衝液、2M 硫酸アンモニウム、pH5.0)にて予め平衡化したブチルトヨパール650C(東ソー社製)カラム(26φ×28.5cm)にかけ、緩衝液Aから緩衝液B(10mM 酢酸緩衝液、pH5.0)のリニアグラジエントによって溶出させた。溶出された活性画分をセントリコンプラス−70(ミリポア社製)で濃縮後、緩衝液C(10mM 酢酸緩衝液、pH4.5)で透析し、予め緩衝液Cで平衡化したSPセファロースFastFlow(GEヘルスケア社製)カラム(26φ×28.5cm)にかけ、緩衝液Cから緩衝液D(10mM 酢酸緩衝液、200mM 塩化カリウム、pH4.5)のリニアグラジエントで溶出させた。溶出された活性画分を濃縮し、精製酵素を得た。
以降、各精製酵素について、Mucor prainii NISL0103由来のGDHをMpGDH、Mucor javanicus NISL0111由来のGDHをMjGDH、Mucor circinelloides f. circinelloides NISL0117由来のGDHをMcGDHと表記する。
(Mucor属由来フラビン結合型GDHの酵素化学的性質の検討)
実施例2により得られた各精製GDHの諸性質を調べた。
(a)吸収スペクトルの測定
MpGDH、MjGDHおよびMcGDHを10mM 酢酸緩衝液(pH5.0)で透析し、250−800nmにおける吸収スペクトルを分光光度計U−3010(日立ハイテクノロジーズ社製)により測定した。測定結果を図1に示す(図1(A)はMpGDHの吸収スペクトル、図1(B)はMjGDHの吸収スペクトル、図1(C)はMcGDHの吸収スペクトルを示す)。いずれのGDHについても、波長340〜350nm付近および波長420〜430nm付近に極大を示す2つのピークが確認され、このような吸収スペクトルの形状がフラビン酵素に特有の形状であることから、本発明のGDHがフラビン結合型タンパク質であることが強く示唆された。
(b)GOD活性の測定
実施例2により得られたMpGDH、MjGDHおよびMcGDHと、Aspergillus niger由来の市販のグルコースオキシダーゼ(GOD、biozyme laboratories社製)を用いて、GDH活性およびGOD活性を測定した。結果を表2に示す。
GDH活性は、実施例1の方法に準じ、GOD活性は、4−アミノアンチピリン(4−AA)、およびN−エチルーN−(2−ヒドロキシー3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOOS)を使用した以下の方法で測定した。100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 30.0mL、833mM D−グルコース溶液 6.0mL、25mM 4−AA溶液 0.3mL、40mM TOOS溶液 0.3mLおよび500U/mL POD溶液 0.3mLを混合後、3.0mLを試験管に移し、37℃で5分間保温後、酵素サンプル溶液0.1mLを添加して反応を開始した。酵素反応の進行に伴う555nmにおける吸光度の1分間あたりの増加量(ΔA555)を測定し、次式に従ってGOD活性を算出した。この際、GOD活性は、37℃において濃度131mMのD−グルコース存在下で1分間に1μmolのHを生成する酵素量を1Uと定義した。
なお、式中の3.1は反応試薬+酵素試薬の液量(mL)、32.8は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm/μmol)、0.5は1分子のHが還元されるときに生じるキノンイミン染料の分子数、0.1は酵素溶液の液量(mL)、1.0はセルの光路長(cm)、ΔA555blankは10mM 酢酸緩衝液を酵素サンプル溶液の代わりに添加して反応開始した場合の555nmにおける吸光度の1分間あたりの増加量、dfは希釈倍数を表す。
表2に示す通り、MpGDH、MjGDHおよびMcGDHはいずれも全くGOD活性を示さず、専らGDH活性を示した。一方、GODは主としてGOD活性を示すが、GDH活性も併せ持つことが判明した。すなわち、本発明のGDHは酸素を電子受容体として利用しないため、D−グルコースを定量する際に反応系の溶存酸素の影響を極めて受けにくいことが示された。
(c)至適pH
上記のフラビン結合型GDHにおける至適pHを調べた。結果を図2に示す(図2(A)はMpGDH、(B)はMjGDH、(C)はMcGDHの結果を示す)。具体的には、100mM 酢酸カリウム緩衝液(pH5.0−5.5、図中△印でプロット)、100mM MES−NaOH緩衝液(pH5.5−6.5、図中斜め四角印でプロット)、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0−8.0、図中丸印でプロット)、100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5−9.0、図中×印でプロット)を用い、それぞれのpHにおいて、温度37℃にて酵素反応を行い、相対活性を比較した。
その結果、上記のフラビン結合型GDHはいずれも、pH6.5もしくはpH7.0において最も高い活性を示し、pH7.0付近に至適pHを有していた。個別にみると、MpGDHおよびMcGDHの相対活性が最も高かったのはpH7.0においてであり、その周辺域として、pH6.5−7.5の範囲で最大相対活性値の80%以上を示したことから、この範囲で好適に使用できると考えられた。また、MjGDHの相対活性が最も高かったのはpH6.5においてであり、その周辺域として、pH6.0−7.0の範囲で最大相対活性値の80%以上を示したことから、この範囲で好適に使用できると考えられた。
(d)至適温度範囲
実施例1記載の活性測定法に準じ、種々の温度にて本酵素の活性測定を行った。具体的には、100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 1.79mL、1.25M D−グルコース溶液 0.08mLおよび20mM DCIP溶液 0.01mLを混合し、37℃で保温する代わりに各温度で5分間保温後、20mM PMS溶液 0.02mLおよび酵素サンプル溶液0.1mLを添加し、各温度にて反応を開始した。反応開始時、および、2分後の吸光度を測定し、酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量を求めた。結果を図3に示す(図3(A)はMpGDH、(B)はMjGDH、(C)はMcGDHの結果を示す)。いずれも37℃付近で最大の活性を示し、最大活性に対して80%以上の活性を示す温度範囲は30〜40℃であった。以上より、本発明のフラビン結合型GDHの至適温度範囲は、30〜40℃、最も好ましい温度は37℃であると考えられた。
(e)D−グルコースに対するKm値
前記活性測定法において、基質であるD−グルコース濃度を変化させて活性測定を行い、ラインウェーバー・バークプロットから、ミカエリス定数(Km)を求めた。この結果、D−グルコースに対するKm値は、MpGDHで31.1mM、MjGDHで26.4mM、McGDHで33.2mMであった。
(f)熱安定性
100mM 酢酸カリウム緩衝液(pH5.0)を用いて、本発明のフラビン結合型GDHを各温度で15分間処理した時の熱安定性の結果を図4に示す(図4(A)はMpGDH、(B)はMjGDH、(C)はMcGDHの結果を示す)。本発明のフラビン結合型GDHは、40℃、15分間の熱処理後に80%以上の残存活性を有しており、約40℃まで安定であることがわかった。
(g)安定pHの範囲
次いでこれらのフラビン結合型GDHにおける安定pHを調べた。結果を図5に示す(図5(A)はMpGDH、(B)はMjGDH、(C)はMcGDHの結果を示す)。具体的には、100mM グリシン−HCl緩衝液(pH2.5−3.5、図中四角印でプロット)、100mM 酢酸カリウム緩衝液(pH3.5−5.5、図中△印でプロット)、100mM MES−NaOH緩衝液(pH5.5−6.5、図中斜め四角印でプロット)、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0−8.0、図中丸印でプロット)、100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5−9.0、図中×印でプロット)を用い、それぞれのpHにおいて25℃で16時間処理した後、フラビン結合型GDHの残存活性をそれぞれ測定した。その結果、いずれも、最大の残存活性を示したpH5.0付近での活性に対し80%以上の活性を示すpH範囲はpH3.5−7.0であった。以上から、これらのフラビン結合型GDHの安定pH範囲はpH3.5−7.0であることが判った。
(h)分子量
スーパーセップエース 10−20%(和光純薬工業社製)を用いたSDS−ポリアクリルアミド電気泳動によりMpGDH、MjGDHおよびMcGDHの分子量を求めた。また、脱糖鎖キット(Enzymatic Deglycosylation Kit、PZM製)を用いて、各フラビン結合型GDHを脱糖鎖処理し、同様に電気泳動に供した。結果を図6に示す。泳動サンプルは以下の通りである。
レーン1:分子量マーカー(New England Biolabs社製、Protein Ladder(10−250kDa),上から250kDa、150kDa、100kDa、80kDa、60kDa、50kDa、40kDa、30kDa、25kDa、20kDa、15kDa)
レーン2:MpGDH
レーン3:脱糖鎖処理後のMpGDH
レーン4:MjGDH
レーン5:脱糖鎖処理後のMjGDH
レーン6:McGDH
レーン7:脱糖鎖処理後のMcGDH
レーン8:脱糖鎖反応に使用した酵素
図6より、これらのフラビン結合型GDHの分子量は、MpGDHで約90〜130kDa、MjGDHで約100〜150kDa、McGDHで約130〜200kDaであり、脱糖鎖キット(Enzymatic Deglycosylation Kit、PZM製)により糖鎖を除去した後の分子量はMpGDH、MjGDHおよびMcGDHいずれも約80kDaであった。
(i)基質特異性
実施例1の酵素活性測定方法に準じ、基質としてはD−グルコース、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロース、マンノース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、マルトテトラオースをそれぞれ用いて、各基質に対するフラビン結合型GDHの活性を測定した。基質濃度は50mMとした。結果を表3に示す。
その結果、これらのフラビン結合型GDHは、D−グルコースに対する活性を100%とした場合に、各種の糖化合物に対し、いずれも反応性が非常に低いことが判明した。そして、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロースに対する活性は、いずれも、2%以下であった。
(j)1,10−フェナントロリンによる阻害効果
これらのフラビン結合型GDHの活性に対する1,10−フェナントロリンの阻害効果を、以下の方法で調べた。実施例1の酵素活性の測定方法に準じ、ただし、終濃度が1mM、5mM、10mM、25mMおよび50mMとなるように1,10−フェナントロリンを添加した場合の酵素活性を求め、1,10−フェナントロリン無添加の阻害率を0%として、その阻害率を計算した。結果を表4に示す。
本発明のフラビン結合型GDHに対する1,10−フェナントロリンの阻害効果は低く、1mMの1,10−フェナントロリン添加では2〜4%程度の阻害効果が認められるに過ぎず、5mMの添加でも阻害率は10%程度であった。
(ケカビ由来フラビン結合型GDHを用いたグルコース濃度の定量性の検証1)
上述のフラビン結合型GDHを用いて、グルコースの測定を行った。具体的には、100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 1.79mL、D−グルコース溶液(250、750、1,250、1,750、2,500、3,250、4,000、5,000mg/dL) 0.08mLおよび20mM DCIP溶液 0.01mLを混合し、37℃で5分間保温後、20mM PMS溶液 0.02mLおよび0.8U/mL GDH溶液0.1mLを添加し、反応を開始した。酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量(ΔA600)とグルコースの終濃度の関係を図7に示す(図7(A)はMpGDHを用いた測定結果、(B)はMjGDHを用いた測定結果、(C)はMcGDHを用いた測定結果を示す)。
図7に示す通り、ケカビ由来のフラビン結合型GDHを用いることにより、終濃度200mg/dL以下のグルコース濃度であれば、測定試料中のグルコース濃度を精度良く測定できることが確認された。
(ケカビ由来のフラビン結合型GDHを用いたグルコース濃度の定量性の検証2)
100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 1.77mL、D−グルコース溶液(10,000、16,000mg/dL) 0.02mLおよび20mM DCIP溶液 0.01mLを混合した。続いて、マルトース溶液(3,000、6,000、9,000、12,000、15,000mg/dL)もしくはD−ガラクトース溶液(1,500、3,000、4,500、6,000、7,500mg/dL)もしくはD−キシロース溶液(1,000、2,000、3,000、4,000、5,000mg/dL) 0.08mLを添加して37℃で5分間保温した後、20mM PMS溶液 0.02mLおよび2.0U/mL GDH溶液0.1mLを添加し、反応を開始した。酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量(ΔA600)、およびグルコースの終濃度の関係を表5〜7に示す。
表5〜7より、ケカビ由来のこれらのGDHは、終濃度600mg/dL以下のマルトース、または、終濃度300mg/dL以下のD−ガラクトース、あるいは終濃度200mg/dL以下のD−キシロースを含有するサンプルのグルコース濃度を精度良く定量できることが示された。
(フラビン結合型GDHを用いたグルコース濃度の定量性の検証3)
100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 1.61mL、D−グルコース溶液(10,000、16,000mg/dL) 0.02mLおよび20mM DCIP溶液 0.01mLを混合した。続いて、マルトース溶液(3,000、6,000、9,000、12,000、15,000mg/dL)、D−ガラクトース溶液(1,500、3,000、4,500、6,000、7,500mg/dL)およびD−キシロース溶液(1,000、2,000、3,000、4,000、5,000mg/dL) をそれぞれ0.08mL添加して37℃で5分間保温した後、20mM PMS溶液 0.02mLおよび2.0U/mL のフラビン結合型GDH溶液0.1mLを添加し、反応を開始した。酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量(ΔA600)とグルコースの終濃度の関係を表8〜9に示した。
表8〜9より、MpGDHまたはMjGDHは、終濃度600mg/dL以下のマルトース、終濃度300mg/dL以下のD−ガラクトースおよび終濃度200mg/dL以下のD−キシロースを含有する試料中のグルコース濃度を、極めて精度良く定量できることが示された。
(Mucor属由来フラビン結合型GDH遺伝子のクローニングと大腸菌形質転換体の作製)
(1)mRNAの調製
Mucor prainii NISL0103をマルツエキス培地(マルツエキス 2.0%、グルコース 4.0%、ポリペプトン 0.1%、pH6.0)3mLに接種し、2日、30℃で振とう培養した。この培養液を濾紙濾過し、菌糸体を回収した。得られた菌糸を液体窒素中で凍結させ、乳鉢を用いて菌糸を粉砕した。次いで、ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いて、本キットのプロトコールに従って、粉砕した菌体からmRNAを得た。
(2)GDH部分アミノ酸配列の決定
実施例2より得られたMpGDHをスーパーセップエース 10−20%(和光純薬工業社製)に供し、電気泳動を行った。電気泳動後のゲルをQuick−CBB(和光純薬工業社製)を用いて染色し、当該酵素の分子量に相当するバンド部分を切り出した。切り出したゲル断片を外部機関に委託し、その中に含まれるタンパク質の内部アミノ酸配列情報を取得した。その結果、得られたアミノ酸配列は、LVENFTPPTPAQIE(配列番号5)およびIRNSTDEWANYY(配列番号6)であった。
(3)GDH遺伝子配列の決定
上記の部分アミノ酸配列情報に基づき、ミックス塩基を含有するディジェネレートプライマー(プライマーの一例を配列番号7(フォワードプライマー)、配列番号8(リバースプライマー)に示す)を作製した。なお、配列番号7および8に記載の1文字表記において、混合塩基はそれぞれ、h=a+c+t、r=a+g、y=c+t、d=a+g+tを表す。上記(1)にて調製したMucor prainii NISL0103のmRNAをテンプレートとし、PrimeScript RT−PCR Kit(タカラバイオ社製)を用いて、本キットのプロトコールに従ってRT−PCRを行った。逆転写反応には本キット付属のオリゴdTプライマーを、PCRによるcDNA増幅には配列番号7、8に示すディジェネレートプライマーを用いた。反応液をアガロースゲル電気泳動に供したところ、800bp程度の長さに相当するシングルバンドが確認された。このバンドに含まれる増幅DNA断片を精製し、Ligation Convenient Kit(ニッポンジーン社製)を用いて、pT7Blue(ノバジェン社製)に前記増幅DNA断片をライゲーションすることにより、組換えプラスミドpTMGD−1を構築した。
次いで、得られたpTMGD−1を用い、公知のヒートショック法により大腸菌JM109コンピテントセル(ニッポンジーン社製)を形質転換した。得られた大腸菌形質転換体からGenElute Plasmid Miniprep Kit(シグマ社製)を用いてプラスミドを抽出・精製し、プラスミド中に含まれる前記増幅DNA断片の塩基配列を決定した(767bp)。
得られた前記増幅DNA断片の配列情報を元に、3’−Full RACE Core Set(タカラバイオ社製)を用いて3’側のGDH遺伝子未知領域を、また、5’−Full RACE Core Set(タカラバイオ社製)を用いて5’側のGDH遺伝子未知領域を決定した。いずれも各キットのプロトコールに従い、3’−Full RACE Core Setでは本キット付属の3サイトアダプタープライマーおよび配列番号9に示すプライマーを用い、また、5’−Full RACE Core Setでは配列番号10、11、12、13、14に示すプライマーをそれぞれ用いた。前記の方法に従って得られた複数のプラスミド中に含まれるDNA断片の塩基配列解析を行った結果、配列番号2および配列番号4に示す全鎖長1926bpのMucor prainii NISL0103由来GDH遺伝子配列が明らかとなった。当該遺伝子配列により予測した当該酵素遺伝子のアミノ酸配列を配列番号1および配列番号3に示す。
(4)大腸菌の形質転換とGDH活性の確認
N末領域のプライマー(配列番号15)およびC末領域のプライマー(配列番号16)を作製し、これらのプライマーおよび上記(1)にて調製したMucor prainii NISL0103のmRNAを用いて、RT−PCRを行った。
反応液をアガロースゲル電気泳動に供したところ、約2kbp程度の長さに相当するシングルバンドが確認された。このバンドに含まれる増幅DNA断片を精製し、制限酵素SmaIで消化したプラスミドpUC19(タカラバイオ社製)とライゲーションを行って、組換えプラスミドpuc−MGDを構築した。
得られた組換えプラスミドpuc−MGDを用い、公知のヒートショック法により大腸菌JM109コンピテントセル(ニッポンジーン社製)を形質転換した。次いで、形質転換した大腸菌JM109(puc−MGD)菌体を100μg/mLのアンピシリンを含むTY培地(1% バクトトリプトン、0.5% バクトイースト・エクストラクト、0.5% NaCl、pH7.0)10mL中で37℃、2時間振とう培養後、IPTGを終濃度1mMとなるように添加し、さらに30℃、6時間振とう培養を行った。
この培養液を氷上で冷却下、超音波破砕器(Ultrasonicgenerator、Nissei社製)を用いて20秒間、4回処理し、破砕した。破砕液をエッペンドルフチューブに入れ、微量遠心機を用い、12,000rpmで10分間遠心分離後、上清画分を別のエッペンドルフチューブに移しかえ、粗酵素液とした。前述の酵素活性測定法によりこの粗酵素液中のGDH活性を測定したところ、本発明のフラビン結合型GDH活性が確認された。
(5)N末端配列を欠失したMucor属由来フラビン結合型GDH遺伝子の大腸菌への導入とGDH活性の確認
大腸菌による組換え発現に適したMucor属由来GDHをコードするDNAを取得するため、コドン使用頻度を大腸菌にあわせた遺伝子配列を設計し、該遺伝子を全合成した。この全合成したDNA配列を配列番号17に示す。この合成DNAを鋳型とし、N末領域のプライマー(配列番号18)およびC末領域のプライマー(配列番号21)を作製し、In−Fusion法(Clontech社製)により、pET−22b(+)ベクター(Novagen社製)のNdeI−BamHIサイトに挿入し、組換えプラスミド(pET−22b−MpFull)を構築した。
この組換えプラスミドを、公知のヒートショック法により大腸菌BL21(DE3)コンピテントセル(ニッポンジーン社製)に導入した。常法に従いプラスミドを抽出し、全長Mucor属由来GDH遺伝子の塩基配列の確認を行った結果、配列番号17と一致し、cDNA配列から推定されるアミノ酸残基は641アミノ酸(配列番号3)であった。
次いで、WEB上のシグナルペプチド予想プログラム(SignalP、「www.cbs.dtu.dk/services/SignalP−2.0/」)を用いて、上記のMucor属由来GDHの配列全長を解析した結果、このGDHにおいては、N末端から20番目のAlaと21番目のGlnの間でシグナルペプチドの切断が起こる可能性が予想された(図8)。これにより、20番目のAlaまでN末端配列を欠失させてみることにより、大腸菌での酵素生産が向上する可能性があることが推測された。そこで、20番目のAlaまで欠失させ、21番目のGlnにMetを付加したGDH(NS1と称する)をコードする遺伝子を下記の要領で取得した。さらに、20番目のAlaまで欠失させ、21番目のGlnをMetに置換したGDH(NS2と称する)をコードする遺伝子も、同様に取得した(図9)。
まず、NS1に関し、配列番号19のオリゴヌクレオチドをN末端側プライマーとし、配列番号21のプライマーとの組み合わせによるIn−Fusionクローニングを行った。次いで、前述のpET−22b−MpFullを作製したのと同様の手順にて、NS1をコードするDNA配列をもつ組換えプラスミド(pET−22b−MpNS1)を構築し、これをヒートショック法により大腸菌BL21(DE3)コンピテントセル(ニッポンジーン社製)に導入し、本発明の大腸菌形質転換体を取得した。
次いで、同様に、NS2に関し、配列番号20のオリゴヌクレオチドをN末端側プライマーとして、配列番号21のプライマーとの組み合わせによるPCRを行い、NS2をコードするDNA配列をもつ組換えプラスミド(pET−22b−MpNS2)を構築し、大腸菌形質転換体を取得した。なお、それぞれの改変フラビン結合型GDHのDNA配列を持つプラスミドは、DNAシーケンシングにて配列に誤りがないことを確認した。配列番号22は、上記で決定したシグナルペプチド欠失変異体NS1をコードするDNA配列を示す。配列番号23はその対応するアミノ酸配列を示す。配列番号24は、上記で決定したシグナルペプチド欠失変異体NS2をコードするDNA配列を示す。配列番号25はその対応するアミノ酸配列を示す。
上記の通り取得した各種組換えプラスミドpET−22b−MpFull、pET−22b−MpNS1、pET−22b−MpNS2をそれぞれ用いて形質転換した大腸菌BL21(DE3)/pET−22b−MpFull、BL21(DE3)/pET−22b−MpNS1、BL21(DE3)/pET−22b−MpNS2菌体を、100μg/mLのアンピシリンおよび1mMのIPTGを含む10mLのTY培地(1% バクトトリプトン、0.5% バクトイースト・エクストラクト、0.5% NaCl、pH7.0)に植菌し、37℃、4時間振とう培養後、さらに20℃で一晩、振とう培養を行った。
この培養液を、氷冷下にて、超音波破砕器(Ultrasonicgenerator、Nissei社製)を用いて10秒間、1回処理して破砕した。破砕液をエッペンドルフチューブに入れ、微量遠心機を用い、12,000rpmで10分間遠心分離後、上清画分を別のエッペンドルフチューブに移しかえて粗酵素液とした。前述の酵素活性測定法により、得られた粗酵素液中のGDH活性を測定し、1ml培養液あたりのGDH活性量を比較した結果、野生型の全長GDH遺伝子を導入した大腸菌形質転換体BL21(DE3)/pET−22b−MpFullでは、0.0815U/mlに留まっていた。一方、N末端のMKITAAIITVATAFASFASAを欠失させMを付加した改変型GDHの遺伝子を導入した大腸菌形質転換体BL21(DE3)/pET−22b−MpNS1では4.10U/ml、N末端のMKITAAIITVATAFASFASAを欠失させ21番目のQをMに置換した改変型GDHの遺伝子を導入した大腸菌形質転換体BL21(DE3)/pET−22b−MpNS2では3.43U/mlの活性が見られた。すなわち、N末端を特定の長さで欠失した本発明の大腸菌形質転換体(BL21(DE3)/pET−22b−MpNS1およびBL21(DE3)/pET−22b−MpNS2)では、シグナルペプチドと予想されるアミノ酸配列を欠失させることにより、そのGDH生産性が約42〜50倍増大することがわかった。
すなわち、本発明の大腸菌形質転換体を用いることによって、実用性に優れた性質を有する本発明のGDHを、より小さい設備で効率よく製造できるようになる。さらに、これら本来のGDH由来微生物(すなわち、ケカビ)の培養工程には、3〜5日という長期間培養工程と、遠心分離で菌体を取得し菌体破砕(酵素抽出)を行う工程、そして、その後に再度遠心分離して粗酵素液を調製するという工程が含まれていたが、本発明の大腸菌形質転換体を用いることによって、培養日数が大幅に短縮できるとともに、宿主が大腸菌となることによって菌体破砕(酵素抽出)工程の負荷も軽減される結果、効率的なGDHの製造が可能となる。
また、図8より、切断サイトスコア(C、Y)が若干高い、N末端から27番目のSer付近でシグナルペプチドが切断される可能性も僅かに示されたため、MKITAAIITVATAFASFASAQQDTNSSを欠損させたGDHを大腸菌で発現させてみることにした。まず、N末端から27番目のSerまで欠失させ、28番目のSerにMetを付加したGDH(NS3と称する)をコードする遺伝子を下記の要領で取得した。さらに、27番目のSerまで欠失させ、28番目のSerをMetに置換したGDH(NS4と称する)をコードする遺伝子も同様に取得した(図9)。
まず、NS3に関し、配列番号26のプライマーと配列番号27のプライマーを組み合わせ、pET−22b−MpFullを鋳型としたPCRを行った。得られたPCR増幅断片をNdeIで切断し、反応液をアガロースゲル電気泳動に供したところ、7400bp程度の長さに相当するシングルバンドが確認された。このバンドに含まれる増幅DNA断片を精製し、Ligation Convenient Kit(ニッポンジーン社製)を用いてライゲーションすることにより、NS3をコードするDNA配列をもつ組換えプラスミド(pET−22b−MpNS3)を構築した。次いで、これをヒートショック法により大腸菌BL21(DE3)コンピテントセル(ニッポンジーン社製)に導入し、本発明の大腸菌形質転換体を取得した。
次いで、同様にNS4に関し、配列番号28のプライマーと配列番号27のプライマーの組み合わせ、pET−22b−MpFullを鋳型としたPCRを行った。pET−22b−MpNS3を作成した時と同様の方法により、NS4をコードするDNA配列をもつ組換えプラスミド(pET−22b−MpNS4)を構築し、大腸菌形質転換体を取得した。なお、それぞれの改変フラビン結合型GDHのDNA配列を持つプラスミドは、DNAシーケンシングにて配列に誤りがないことを確認した。
配列番号29は、上記で決定したシグナルペプチド欠失変異体NS3をコードするDNA配列を示す。配列番号30はその対応するアミノ酸配列を示す。配列番号31は、上記で決定したシグナルペプチド欠失変異体NS4をコードするDNA配列を示す。配列番号32はその対応するアミノ酸配列を示す。
上記の通り取得した各種組換えプラスミドpET−22b−MpFull、pET−22b−MpNS3、pET−22b−MpNS4をそれぞれ用いて形質転換した大腸菌BL21(DE3)/pET−22b−MpFull、BL21(DE3)/pET−22b−MpNS3、BL21(DE3)/pET−22b−MpNS4菌体を、100μg/mLのアンピシリンおよび0.1mMのIPTGを含む2mLのTY培地(1% バクトトリプトン、0.5% バクトイースト・エクストラクト、0.5% NaCl、pH7.0)に植菌し、37℃、3時間振とう培養後、さらに20℃で一晩、振とう培養を行った。
この培養液を、氷冷下にて、超音波破砕器(Ultrasonicgenerator、Nissei社製)を用いて10秒間、1回処理して破砕した。破砕液をエッペンドルフチューブに入れ、微量遠心機を用い、12,000rpmで10分間遠心分離後、上清画分を別のエッペンドルフチューブに移しかえて粗酵素液とした。前述の酵素活性測定法により、得られた粗酵素液中のGDH活性を測定し、1ml培養液あたりのGDH活性量を比較した結果、野生型の全長GDH遺伝子を導入した大腸菌形質転換体BL21(DE3)/pET−22b−MpFullでは、0.0196U/mlに留まっていた。一方、N末端のMKITAAIITVATAFASFASAQQDTNSSを欠失させMを付加した改変型GDHの遺伝子を導入した大腸菌形質転換体BL21(DE3)/pET−22b−MpNS3では0.0644U/ml、N末端のMKITAAIITVATAFASFASAQQDTNSSを欠失させ28番目のSをMに置換した改変型GDHの遺伝子を導入した大腸菌形質転換体BL21(DE3)/pET−22b−MpNS4では0.0681U/mlの活性が見られた。すなわち、N末端を特定の長さで欠失した本発明の大腸菌形質転換体(BL21(DE3)/pET−22b−MpNS3およびBL21(DE3)/pET−22b−MpNS4)では、シグナルペプチドと予想されるアミノ酸配列を欠失させることにより、そのGDH生産性が約3.3〜3.5倍増大することがわかった。
なお、本発明の大腸菌形質転換体により生産される本発明GDH(NS1,NS2,NS3,NS4)の基質特異性を実施例3,5に準じて調べた結果、それらは実施例2で得られた精製GDHと概ね同等であることが確認された。
溶存酸素の影響を受けにくく、試料中にグルコース以外の糖化合物が存在する場合でも、グルコース量を正確に測定できるFAD−GDHを効率的に製造することができる。

Claims (3)

  1. 配列番号1又は配列番号3で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列と90%以上同一なアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列からそのN末端領域に存在するMKITAAIITVATAFASFASAに相当するアミノ酸配列を含むN末端領域を欠失させた変異型フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を大腸菌に導入して得られる大腸菌形質転換体。
  2. 請求項記載の大腸菌形質転換体を培養し、該培養物よりフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを採取することを特徴とする、フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法。
  3. 配列番号1又は配列番号3で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列と90%以上同一なアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列からそのN末端領域に存在するMKITAAIITVATAFASFASAに相当するアミノ酸配列を含むN末端領域を欠失させたフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。
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