JP6128560B2 - フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ - Google Patents
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Description
従って、本発明の課題は、10〜50℃の広い温度帯において活性の変動が小さいフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ及びそれを用いるグルコースの測定法を提供することにある。
[1]下記の性質(1)〜(3)を有するフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ:(1)作用:電子受容体存在下でグルコース脱水素酵素活性を示す;
(2)基質特異性:D−グルコースに対する活性値を100%とした場合のマルトース、D−ガラクトース、D−フルクトース、ソルビトール、ラクトース及びスクロースに対する活性値が10%以下である;
(3)温度特性:30℃における活性値を100%とした場合に、10〜50℃における活性値の範囲が20〜150%である。
[2]酵素のポリペプチド部分の分子量が60〜70kDaである[1]記載のグルコースデヒドロゲナーゼ。
[3]至適温度が40〜45℃である[1]又は[2]に記載のグルコースデヒドロゲナーゼ。
[4]下記の性質(6)及び(7)を有する[1]〜[3]のいずれかに記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ:
(6)至適pH:6.0〜7.5;
(7)安定pH範囲:4.5〜7.0。
[5]40℃、15分間の熱処理後の残存活性が70%以上である[1]〜[4]のいずれかに記載のグルコースデヒドロゲナーゼ。
[6]糸状菌由来である[1]〜[5]のいずれかに記載のグルコースデヒドロゲナーゼ。
[7]キンカクキン科に属する糸状菌由来である[1]〜[6]のいずれかに記載のグルコースデヒドロゲナーゼ。
[8]以下の(a)、(b)又は(c)のアミノ酸配列を有し、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ:
(a)配列番号2、4、6、8、10又は12に示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号2、4、6、8、10又は12に示されるアミノ酸配列において、1個〜数個のアミノ酸が置換、欠失又は付加されたアミノ酸配列、又は
(c)配列番号2若しくは8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、又は配列番号4、6、10若しくは12に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列。
[9]配列番号8、10又は12に示されるアミノ酸配列と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ以下の(i)〜(v)の性質を有する精製されたフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ:
(i)グルコースの1位を酸化する、
(ii)実質的に酸素を電子受容体としない、
(iii)安定pH:4.5〜7.0、
(iv)糖タンパク質である、及び
(v)酵素のポリペプチド部分の分子量が60〜70kDaである。
[10]糸状菌又は酵母に属するグルコースデヒドロゲナーゼ生産菌を培養し、培養物からグルコースデヒドロゲナーゼを採取することを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載のグルコースデヒドロゲナーゼの製造法。
[11]被検試料と[1]〜[9]のいずれかに記載のグルコースデヒドロゲナーゼを接触させる工程を含む該被検試料中のグルコースの測定方法。
[12]測定時のpHが5.0〜9.0であって、溶存酸素の影響を受けない[11]に記載のグルコースの測定方法。
[13][1]〜[9]のいずれかに記載のグルコースデヒドロゲナーゼを含有するグルコース測定試薬。
[14]pHが4.0〜7.5である[13]に記載のグルコース測定試薬。
[15][1]〜[9]のいずれかに記載のグルコースデヒドロゲナーゼを含有するグルコース測定用バイオセンサ。
[16]反応層のpHが4.0〜7.5であって、溶存酸素の影響を受けない[15]に記載のグルコース測定用バイオセンサ。
[17][8]又は[9]記載のグルコースデヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチド。
[18]以下の(d)、(e)又は(f)のポリヌクレオチド:
(d)配列番号1、3、5、7、9又は11に示される塩基配列から成るポリヌクレオチド、
(e)(d)のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルコースデヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチド、
(f)配列番号1若しくは7に示される塩基配列と少なくとも90%、又は配列番号3、5、9若しくは11に示される塩基配列と少なくとも95%の同一性を有する塩基配列からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチド。
[19]配列番号7、9又は11に示される塩基配列と少なくとも60%の同一性を有する塩基配列からなり、開始コドンのAから57番目までの塩基を削除した改変遺伝子で、かつグルコースデヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチド。
[20][18]又は[19]に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[21][18]若しくは[19]に記載のポリヌクレオチド又は[20]に記載のベクターを用いて作成された形質転換細胞。
[22]糸状菌から調製された染色体DNA又はcDNAから、配列番号13及び14に記載のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより、グルコースデヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチドの一部を取得する工程を含む、グルコースデヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチドの製造方法。
(2)基質特異性:D−グルコースに対する活性値を100%とした場合のマルトース、D−ガラクトース、D−フルクトース、ソルビトール、ラクトース及びスクロースに対する活性値が10%以下である。
(3)温度特性:30℃における活性値を100%とした場合に、10〜50℃における活性値が20〜150%。
また、30℃における活性値を100%とした場合に、10〜45℃における活性値は20〜150%であるのが好ましく、当該10〜45℃における活性値の下限値は30%であるのがより好ましく、40%であるのが更に好ましく、50%であるのが特に好ましい。更に、当該10〜45℃における活性値の上限値は140%であるのがより好ましく、130%であるのが更に好ましく、120%であるのが特に好ましく、110%であるのが最も好ましい。
また、45℃における活性値を100%とした場合に、10〜45℃における活性値は20〜120%であるのが好ましく、当該10〜45℃における活性値の下限値は30%であるのがより好ましく、40%であるのが更に好ましく、50%であるのが特に好ましい。更に、当該10〜45℃における活性値の上限は115%であるのがより好ましく、110%であるのが更に好ましく、105%であるのが特に好ましく、100%であるのが最も好ましい。
また、50℃における活性値を100%とした場合に、10℃における活性値は25%以上であるのが好ましく、30%以上であるのがより好ましく、40%以上であるのが更に好ましく、50%以上であるのが特に好ましい。更に、20℃における活性値は40%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましく、60%以上であるのが更に好ましく、70%以上であるのが特に好ましい。
(1)作用:電子受容体存在下でグルコース脱水素酵素活性を示す。
(2)基質特異性:D−グルコースに対する活性値を100%とした場合のマルトース、D−ガラクトース、D−フルクトース、ソルビトール、ラクトース及びスクロースに対する活性値が10%以下である。
(3)温度特性:30℃における活性値を100%とした場合に、10〜50℃における活性値の範囲が20〜150%であって、好適範囲は、基質濃度10mMの場合、好ましくは30〜140%、より好ましくは40〜130%、更に好ましくは50〜120%;基質濃度50mMの場合、好ましくは30〜140%、より好ましくは40〜130%、更に好ましくは50〜120%である。
45℃における活性値を100%とした場合に、10〜45℃における活性値の好適範囲は20〜120%であって、基質濃度10mMの場合、好ましくは30〜120%、より好ましくは40〜120%、更に好ましくは50〜120%;基質濃度50mMの場合、好ましくは30〜120%、より好ましくは30〜110%、更に好ましくは40〜110%である。
50℃における活性値を100%とした場合の好適範囲は、基質濃度10mMの場合、10℃における活性値が好ましくは25%以上、より好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上、20℃における活性値が好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上、特に好ましくは80%以上;基質濃度50mMの場合、10℃における活性値が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、特に好ましくは45%以上、20℃における活性値が好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは55%以上、特に好ましくは60%以上である。
(4)酵素タンパクのポリペプチドの分子量が60〜70kDaである。
(5)至適温度が30〜45℃である。
下記の性質(6)及び(7):
(6)至適pHが6.0〜8.0である。
(7)安定pH範囲が4.5〜7.0である。
(8)40℃、15分間の熱処理後の残存活性が70%以上である。
(1)作用:電子受容体存在下でグルコース脱水素酵素活性を示す。
(2)基質特異性:D−グルコースに対する活性値を100%とした場合のマルトース、D−ガラクトース、D−フルクトース、ソルビトール、ラクトース及びスクロースに対する活性値が10%以下である。
(3)温度特性:30℃における活性値を100%とした場合に、10〜50℃における活性値の範囲が20〜150%であって、好適範囲は、基質濃度10mMの場合、好ましくは30〜140%、より好ましくは40〜130%、更に好ましくは40〜120%;基質濃度50mMの場合、好ましくは20〜140%、より好ましくは30〜140%、更に好ましくは30〜130%である。
45℃における活性値を100%とした場合に、10〜45℃における活性値の好適範囲は20〜120%であって、基質濃度10mMの場合、好ましくは30〜120%、より好ましくは30〜110%、更に好ましくは40〜110%;基質濃度50mMの場合、好ましくは25〜120%、より好ましくは25〜110%、更に好ましくは30〜110%である。
50℃における活性値を100%とした場合の好適範囲は、基質濃度10mMの場合、10℃における活性値が好ましくは25%以上、より好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上、特に好ましくは45%以上、20℃における活性値が好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上、特に好ましくは65%以上;基質濃度50mMの場合、10℃における活性値が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、20℃における活性値が好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上、更に好ましくは50%以上である。
(4)酵素タンパクのポリペプチドの分子量が60〜70kDaである。
(5)至適温度が35〜50℃である。
下記の性質(6)及び(7):
(6)至適pHが6.0〜7.5である。
(7)安定pH範囲が4.5〜7.0である。
(8)40℃、15分間の熱処理後の残存活性が70%以上である。
(1)作用:電子受容体存在下でグルコース脱水素酵素活性を示す。
(2)基質特異性:D−グルコースに対する活性値を100%とした場合のマルトース、D−ガラクトース、D−フルクトース、ソルビトール、ラクトース及びスクロースに対する活性値が10%以下である。
(3)温度特性:30℃における活性値を100%とした場合に、10〜50℃における活性値の範囲が20〜150%であって、好適範囲は、基質濃度10mMの場合、好ましくは20〜140%、より好ましくは30〜140%、更に好ましくは30〜130%;基質濃度50mMの場合、好ましくは25〜150%、より好ましくは30〜150%、更に好ましくは35〜150%;10〜45℃における活性値の好適範囲は、基質濃度50mMの場合、好ましくは35〜145%である。
45℃における活性値を100%とした場合に、10〜45℃における活性値の好適範囲は20〜120%であって、基質濃度10mMの場合、好ましくは25〜120%、より好ましくは25〜110%、更に好ましくは30〜110%;基質濃度50mMの場合、好ましくは20〜115%、より好ましくは20〜110%、更に好ましくは25〜110%である。
50℃における活性値を100%とした場合の好適範囲は、基質濃度10mMの場合、10℃における活性値が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、20℃における活性値が好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上、更に好ましくは50%以上、特に好ましくは55%以上;基質濃度50mMの場合、10℃における活性値が好ましくは25%以上、20℃における活性値が好ましくは40%以上である。
(4)酵素タンパクのポリペプチドの分子量が60〜70kDaである。
(5)至適温度が40〜50℃である。
下記の性質(6)及び(7):
(6)至適pHが5.5〜7.5である。
(7)安定pH範囲が5.0〜8.0である。
(8)40℃、15分間の熱処理後の残存活性が70%以上である。
(1)作用:電子受容体存在下でグルコース脱水素酵素活性を示す。
(2)基質特異性:D−グルコースに対する活性値を100%とした場合のマルトース、D−ガラクトース、D−フルクトース、ソルビトール、ラクトース及びスクロースに対する活性値が10%以下である。
(3)温度特性:30℃における活性値を100%とした場合に、10〜50℃における活性値の範囲が20〜150%であって、好適範囲は、基質濃度10mMの場合、好ましくは20〜140%、より好ましくは30〜130%、更に好ましくは30〜120%;基質濃度50mMの場合、好ましくは20〜140%、より好ましくは30〜130%、更に好ましくは40〜120%;10〜45℃における活性値の好適範囲は、基質濃度10mMの場合、好ましくは40〜120%である。
45℃における活性値を100%とした場合に、10〜45℃における活性値の好適範囲は20〜120%であって、基質濃度10mMの場合、好ましくは30〜120%、より好ましくは40〜120%、更に好ましくは45〜120%;基質濃度50mMの場合、好ましくは30〜120%、より好ましくは35〜120%、更に好ましくは40〜120%である。
50℃における活性値を100%とした場合の好適範囲は、基質濃度10mMの場合、10℃における活性値が好ましくは25%以上、20℃における活性値が好ましくは40%以上;基質濃度50mMの場合、10℃における活性値が好ましくは25%以上、20℃における活性値が好ましくは40%以上である。
(4)酵素タンパクのポリペプチドの分子量が60〜70kDaである。
(5)至適温度が30〜45℃である。
下記の性質(6)及び(7):
(6)至適pHが5.5〜7.5である。
(7)安定pH範囲が4.5〜7.0である。
(8)40℃、15分間の熱処理後の残存活性が70%以上である。
Dumontinia由来のグルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子の塩基配列は配列番号1であり、その遺伝子がコードするアミノ酸配列は配列番号2である。また、Dumontinia由来のグルコースデヒドロゲナーゼのシグナル配列を除いたアミノ酸配列は配列番号8であり、それに対応する塩基配列は配列番号7である。
Botrytis由来のグルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子の塩基配列は配列番号3であり、その遺伝子がコードするアミノ酸配列は配列番号4である。また、Botrytis由来のグルコースデヒドロゲナーゼのシグナル配列を除いたアミノ酸配列は配列番号10であり、それに対応する塩基配列は配列番号9である。
Ovulinia由来のグルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子の塩基配列は配列番号5であり、その遺伝子がコードするアミノ酸配列は配列番号6である。また、Ovulinia由来のグルコースデヒドロゲナーゼのシグナル配列を除いたアミノ酸配列は配列番号12であり、それに対応する塩基配列は配列番号11である。
(a)配列番号2、4、6、8、10又は12に示されるアミノ酸配列。
(b)配列番号2、4、6、8、10又は12に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が置換、欠失又は付加されたアミノ酸配列。
(c)配列番号2若しくは8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、又は配列番号4、6、10若しくは12に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列。
数個とは、好ましくは20個以上、より好ましくは15個以上、更に好ましくは10個以上、更に好ましくは5個以上、特に好ましくは3個以上である。
(i)グルコースの1位を酸化する、
(ii)実質的に酸素を電子受容体としない、
(iii)安定pH:4.5〜7.0、
(iv)糖タンパク質である、及び
(v)酵素のポリペプチド部分の分子量が60〜70kDa。
実質的に酸素を電子受容体としないとは、後述のグルコース酸化酵素活性測定方法により活性がみられない程度であり、2,6−ジクロロフェノールインドフェノールを電子受容体とした場合の反応性を100%とした場合に、酸素を電子受容体とした場合の反応性が好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.1%以下、特に好ましくは0.05%以下である。
(d)配列番号1、3、5、7、9又は11に示される塩基配列から成るポリヌクレオチド。
(e)(d)のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルコースデヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチド。
(f)配列番号1若しくは7に示される塩基配列と少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、又は配列番号3、5、9若しくは11に示される塩基配列と少なくとも95%の同一性を有する塩基配列からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチド。
以下の手順に従って各溶液を混合し、吸光度を測定し、GLD活性を調べた。
100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)1.00mL、1M D−グルコース溶液1.00mL、超純水0.61mL、3mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(以下DCIPという)0.14mL及び3mM 1−メトキシ−5−メチルフェナジウムメチルサルフェイト(以下1−m−PMSという)0.20mLを混合し、37℃で10分間保温後、酵素サンプル0.05mLを添加し、反応を開始した。反応開始時から5分間、酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量(ΔA600)を測定し、直線部分から式1に従いGLD活性を算出した。この際、GLD活性は、37℃、pH6.0で1分間に1μmolのDCIPを還元する酵素量を1Uと定義した。
(本発明のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの取得)
自然界から分離した菌株及び微生物保存機関(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)から購入した、計約3,800株からGLD生産菌の探索を行った結果、Dumontinia tuberose NBRC30254、Ovulinia azaleae NBRC6610、Sclerotinia sclerotiorum NBRC9395、Sclerotinia sclerotiorum NBRC103652、Botrytis fabae NBRC5895、Botrytis fabae NBRC7171、Botrytis tulipae NBRC5896、Ciborinia camelliae NBRC103663の培養ろ液にGLD活性が確認できた。
前培養培地(D−グルコース1.0%、大豆粉2.0%、コーンスティープリカー0.5%、硫酸マグネシウム七水和物0.1%、pH7.0)0.05Lを0.2L容バッフル付き三角フラスコに入れ、121℃、20分オートクレーブ処理し、これに予めプレート上で培養したDumontinia tuberose NBRC30254を約0.5cm2分接種し、25℃、100rpmで3日間回転振盪培養をした。これを種培養として、5Lジャーファーメンターに入れオートクレーブ処理した上記培地3.5Lに0.05Lずつ接種し(ジャーファーメンター5基)、25℃、300rpm、1v/v/mで7日間培養した。培養終了後、培養液17.5Lをろ布でろ過し、ろ液を回収した。次いで、得られたろ液を遠心分離(7,000×g、30分)により上清を回収し、メンブレンフィルター(10μm、アドバンテック社製)で吸引ろ過し、培養上清とした。
(Ovulinia属微生物由来GLDの精製:グルコースデヒドロゲナーゼ(B))
前培養培地(D−グルコース1.0%、大豆粉2.0%、コーンスティープリカー0.5%、硫酸マグネシウム七水和物0.1%、pH7.0)0.05Lを0.2L容バッフル付き三角フラスコに入れ、121℃、20分オートクレーブ処理し、これに予めプレート上で培養したOvulinia azaleae NBRC6610を約0.5cm2分接種し、25℃、100rpmで3日間回転振盪培養をした。これを種培養として、5Lジャーファーメンターに入れオートクレーブ処理した上記培地3.5Lに0.05Lずつ接種し(ジャーファーメンター5基)、25℃、300rpm、1v/v/mで4日間培養した。培養終了後、培養液17.5Lをろ布でろ過し、ろ液を回収した。次いで、得られたろ液を遠心分離(7,000×g、30分)により上清を回収し、メンブレンフィルター(10μm、アドバンテック社製)で吸引ろ過し、培養上清とした。
(Sclerotinia属微生物由来GLDの精製:グルコースデヒドロゲナーゼ(C))
前培養培地(D−グルコース1.0%、大豆粉2.0%、コーンスティープリカー0.5%、硫酸マグネシウム七水和物0.1%、pH7.0)0.05Lを0.2L容バッフル付き三角フラスコに入れ、121℃、20分オートクレーブ処理し、これに予めプレート上で培養したSclerotinia sclerotiorum NBRC103652を約0.5cm2分接種し、25℃、100rpmで3日間回転振盪培養をした。これを種培養として、5Lジャーファーメンターに入れオートクレーブ処理した上記培地3Lに0.05Lずつ接種(ジャーファーメンター5基)し、25℃、400rpm、1v/v/mで6日間培養した。培養終了後、培養液15Lをろ布でろ過し、ろ液を回収した。次いで、得られたろ液を遠心分離(5,000×g、15分)により上清を回収し、メンブレンフィルター(10μm、アドバンテック社製)で吸引ろ過し、培養上清とした。
(Botrytis属微生物由来GLDの精製:グルコースデヒドロゲナーゼ(D))
前培養培地(D−グルコース1.0%、大豆粉2.0%、コーンスティープリカー0.5%、硫酸マグネシウム七水和物0.1%、pH7.0)0.05Lを0.2L容バッフル付き三角フラスコに入れ、121℃、20分オートクレーブ処理し、これに予めプレート上で培養したBotrytis fabae NBRC7171を約0.5cm2分接種し、25℃、130rpmで4日間回転振盪培養をした。これを種培養として、5Lジャーファーメンターに入れオートクレーブ処理した上記培地3Lに0.05Lずつ接種し(ジャーファーメンター5基)、25℃、400rpm、1v/v/mで4日間培養した。培養終了後、培養液15Lをろ布でろ過し、ろ液を回収した。次いで、得られたろ液を遠心分離(5,000×g、15分)により上清を回収し、メンブレンフィルター(10μm、アドバンテック社製)で吸引ろ過し、培養上清とした。
(Dumontinia属微生物由来GLD遺伝子のクローニング1)
(1)菌体培養
グルコース(ナカライ社製)1%(W/V)、脱脂大豆(昭和産業社製)2%(W/V)、コーンスティープリカー(サンエイ糖化社製)0.5%(W/V)、硫酸マグネシウム七水和物(ナカライ社製)0.1%(W/V)及び水からなる液体培地をpH6.0に調整し、150mLを500mL容の坂口フラスコに入れ、121℃、20分間オートクレーブした。冷却したこの液体培地に、Dumontinia tuberose NBRC30254株を接種し、15℃で90時間振とう培養した後、さらしを用いて、湿菌体を回収した。
(1)で取得した湿菌体200mgを−80℃で凍結した後、ISOGENII(ニッポンジーン社製)を用いて100μgの全RNAを抽出した。
全RNAから、逆転写酵素およびアダプター配列付きオリゴdTプライマーを用いた逆転写反応によりcDNAライブラリーを調製した。反応試薬は、「SMARTer RACE cDNA Amplification kit」(タカラバイオ株式会社製)を使用し、反応条件は説明書記載のプロトコールに準じて行った。
(3)で取得したcDNAライブラリーを鋳型とし、GLD遺伝子をPCR増幅した。プライマーは、本発明者らによって既に解明されていた複数のGLD配列から共通配列を解析し、その共通配列を基に相同性の低いGLD配列でも増幅するように、縮重塩基を用いて設計した。最終的に下記の配列番号13、14のプライマー対を用いてPCRを行ったところ、1,200bp程度の長さに相当するバンドが確認された。このDNA断片を精製し、DNA Ligation Kit(タカラバイオ社製)を用いて、T−vector PMD20(タカラバイオ社製)にライゲーションした。
得られたプラスミドを用い、公知の方法で大腸菌JM109コンピテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換した。得られた形質転換体からillustra plasmid−Prep Mini Spin Kitを用いてプラスミドを抽出・精製し、プラスミドに含まれる前記増幅DNAの遺伝子配列を決定した(1,171bp)。更に、得られた内部配列を基に設計した下記の配列番号15のプライマーを用いた5’RACE法によってcDNAの上流を、配列番号16のプライマーを用いた3’RACE法によってcDNAの下流部分をPCR増幅し、前記の方法に従って得られたDNA断片の塩基配列解析を行った結果、配列番号1に示す全鎖長1,770bpのDumontinia tuberose NBRC30254株由来GLD全長遺伝子配列が明らかとなった。当該遺伝子配列がコードする全長アミノ酸配列を配列番号2に示す。
配列番号13:5'−GGAACCAGTGGTCTAGTCATCGCAAAYCGKYTATCYGA−3'
配列番号14:5'−TGGATACTTCCTCTTGCAAATGGTARYARRGCCCAATA−3'
配列番号15:5'−GATCGCCGCAGGGGTGCCTGGTATCG−3'
配列番号16:5'−GGTGCCGATGTCCCTACTGCAAATGGAG−3'
(プライマー配列中のYはC又はT、KはG又はT、RはA又はG)
(4)で明らかになった全長アミノ酸配列から予想シグナル配列を除いた17番目以降のアミノ酸配列をコードする遺伝子を増幅できるようにプライマー(配列番号17、18)を設計し、(3)で調製したcDNAを鋳型にPCRを行い、改変遺伝子を得た。このとき、配列番号17のプライマーは予めリン酸化しておいた。得られたPCR産物をSalIで処理した後に、予めNaeI、SalIで処理し、NaeIの切断部位は脱リン酸化しておいた分泌型プラスミドpAFF2(独立行政法人産業技術総合研究所より分譲)に対して導入し、プラスミドpAFF3/DuGLDを取得した。続いて、pAFF3/DuGLDを鋳型とし、配列番号17、18のプライマー対を用いてPCRを行った。得られたPCR産物をBglIIおよびSphIで処理し、予めBglIIとSphIで処理しておいたプラスミドpAFF3/DuGLDに対し導入し、プラスミドpAFF4/DuGLDを取得し、大腸菌JM109株に導入して形質転換した。得られた形質転換体のうち5クローンよりプラスミドDNAを調製し、BglIIとXbaIで処理したところ、全てのクローンで目的のサイズの断片が確認できた。そのうち4クローンについてプラスミドを調製してそのインサートの配列決定を行ったところ、全てのプラスミドにおいて目的の遺伝子が確認された(pAFF4/DuGLD)。以下の実験にはpAFF4/DuGLDを用いた。
配列番号17:5'−GGCAGATCTAGTCCTGACCTTAGTCTAACTTATGACTAT−3'
配列番号18:5'−CTGCAGGTCGACGCATGCTTAAATATCCTCCTTGATCAAATCTGCCGC−3'
配列番号19:5'−ACATGCATGCTCTAGATTAAATATCCTCCTTGATCAAATCTGCCGC−3'
調製した組換えベクター(pAFF4/DuGLD)を宿主酵母Saccaromyces cerevisiae BY4741に導入した。導入にはFrozen−EZ Yeast Transformation II Kit(ZYMO RESEARCH社製)を用いた。得られた形質転換体をイーストエクストラクト(BD社製)1.0%、トリプトン(BD社製)2.0%、グルコース(和光純薬製)2.0%からなるYPD培地100mLを加えた500mL容の坂口フラスコに植菌し、30℃、120rpmで72時間振とう培養した。培養後、遠心して上清を回収した。前述のGLD活性測定法に準じ、プレートリーダー(モレキュラーデバイス社製)を用いてGLD活性を測定した。GLD遺伝子を挿入していないプラスミド(pAFF4)で形質転換したコントロール株を用いて得られた上清中のGLD活性は0.1U/mL以下であったのに対し、pAFF4/DuGLDを形質転換した株を用いて得られた上清中のGLD活性は1.6U/mLであり、本発明のGLD活性が確認できた。この培養上清を分画分子量10,000の限外ろ過膜(ザルトリウス社製)を用いて濃縮し、Dumontinia属由来GLDの粗酵素を得た。
(Dumontinia属微生物由来GLD遺伝子のクローニング2)
(1)プラスミドpSENS/DuGLD及びDuGLD−Atsigの構築
実施例5(3)で調製したcDNAを鋳型とし、配列番号1に記載の配列から設計した下記の配列番号30、31のプライマー対を用いてPCRを行い、全長DuGLD遺伝子を含むPCR産物を取得した。更に、DuGLDの予想シグナル配列をアスペルギルス・テレウス由来GLDのシグナル配列に置換する蛋白をコードするDuGLD−Atsig改変遺伝子を取得するためのPCRを、三段階で行った。リバースプライマーは何れも配列番号31に記載のプライマーを使用した。一段階目のPCRは、前記PCR産物を鋳型として、DuGLDの予想シグナル配列を除いた17番目以降のアミノ酸配列をコードする遺伝子を増幅できるように設計したプライマー(配列番号32)をフォワードプライマーとして行った。二段階目のPCRは一段階目のPCR産物を鋳型として、配列番号33に記載のプライマーをフォワードプライマーとして行い、三段階目のPCRは二段階目のPCR産物を鋳型として、配列番号34に記載のプライマーをフォワードプライマーとして行い、DuGLD−Atsig改変遺伝子を含むPCR産物を取得した。
配列番号30: 5'-(TGACCAATTCCGCAGCTCGTCAAA)ATGAATCATTTACTTCCTGCTTTTGC-3'
配列番号31:5'-((CGCTTCTAGA))GCATGCTTAAATATCCTCCTTGATCAAATCTGCC-3'
配列番号32:5'-CCCTGTCCCTGGCAGTGGCGGCACCTTTGAGTCCTGACCTTAGTCTAACTTATG-3'
配列番号33:5'-ATGTTGGGAAAGCTCTCCTTCCTCAGTGCCCTGTCCCTGGCAGTGGCGGCACCTTTG-3'
配列番号34:5'-(TGACCAATTCCGCAGCTCGTCAAA)ATGTTGGGAAAGCTCTCCTTCCTCA-3'
(括弧内:転写増強因子、二重括弧内:pSENSベクター配列、下線部:制限酵素部位(SphI)、配列番号32、33、34の下線部:シグナル配列)
次に、上記全長DuGLD遺伝子を含むPCR産物及びDuGLD−Atsig改変遺伝子を含むPCR産物を各々鋳型とし、何れも配列番号35、31に記載のプライマー対を用いて各々PCRを行い、N末端側に制限酵素認識部位及びベクター配列を付加した。
配列番号35:5'-((CCGTCCTCCAAGTTA))GTCGAC(TGACCAATTCCGCAGCTCGTCAAA)-3'
(括弧内:転写増強因子、二重括弧内:pSENSベクター配列、下線部:制限酵素部位(SalI))
公知文献1(Aspergillus属の異種遺伝子発現系、峰時俊貴、化学と生物、38、12、831−838、2000)に記載してあるアスペルギルス・オリゼ由来のアミラーゼ系の改良プロモーターを使用し、その下流に上記で得られた二つのPCR産物を各々結合させることで、遺伝子が発現可能な二つのプラスミドベクターを各々調製した。これらの発現用プラスミドベクターを各々大腸菌JM109株に導入して形質転換し、得られた各形質転換体を培養して、集菌した菌体から、Illustra plasmid−prep MINI Flow Kit(GEヘルスケア社製)を用いて各プラスミドを抽出した。各プラスミド中のインサートの配列解析を行ったところ、DuGLD遺伝子(配列番号1)又はDuGLD−Atsig改変遺伝子(配列番号39)が確認できた。
(1)で抽出したプラスミドを用いて、公知文献2(Biosci. Biotech. Biochem.,61(8),1367−1369,1997)及び3(清酒用麹菌の遺伝子操作技術、五味勝也、醸協、494−502、2000)に記載の方法に準じて、DuGLD遺伝子又はDuGLD−Atsig改変遺伝子を挿入した組換えカビ(アスペルギルス・オリゼ)を各々作製し、得られた各組換え株をCzapek−Dox固体培地で各々純化した。宿主としては、アスペルギルス・オリゼNS4株を使用した。本菌株は、公知文献2にあるように、1997年(平成9年)に醸造試験所で育種され、転写因子の解析、各種酵素の高生産株の育種などに利用され、分譲されているものが入手可能である。
パインデックス2%(松谷化学工業社製)(w/v)、トリプトン1%(BD社製)(w/v)、リン酸二水素カリウム0.5%(ナカライテスク社製)(w/v)、硫酸マグネシウム七水和物0.05%(w/v)(ナカライテスク社製)及び水からなる液体培地15mLを太試験管(22mm×200mm)に入れ、121℃、20分間オートクレーブした。冷却したこの液体培地に、(2)で取得した形質転換体を植菌し、30℃で4日間振とう培養した。培養終了後、遠心して上清を回収し、前述のGLD活性測定法に従い各々GLD活性(U/mL)を測定したところ、何れもGLD活性を確認でき、DuGLD−Atsig改変遺伝子で形質転換した組換えカビは、培養液1mL当たり500U/mLの生産性を確認できた。
(Botrytis属微生物由来GLD遺伝子のクローニング1)
(1)菌体培養
グルコース(ナカライ社製)1%(W/V)、脱脂大豆(昭和産業社製)2%(W/V)、コーンスティープリカー(サンエイ糖化社製)0.5%(W/V)、硫酸マグネシウム七水和物(ナカライ社製)0.1%(W/V)及び水からなる液体培地をpH6.0に調整し、150mLを500mL容の坂口フラスコに入れ、121℃、20分間オートクレーブした。冷却したこの液体培地に、Botrytis tulipae NBRC5896株を接種し、15℃で90時間振とう培養した後、さらしを用いて、湿菌体を回収した。
(1)で取得した湿菌体200mgを−80℃で凍結した後、ISOGENII(ニッポンジーン社製)を用いて100μgの全RNAを抽出した。
全RNAから、逆転写酵素およびアダプター配列付きオリゴdTプライマーを用いた逆転写反応によりcDNAライブラリーを調製した。反応試薬は、「SMARTer RACE cDNA Amplification kit」(タカラバイオ株式会社製)を使用し、反応条件は説明書記載のプロトコールに準じて行った。
(3)で取得したcDNAライブラリーを鋳型とし、実施例5の(4)に記載の配列番号13、14のプライマー対を用いてPCRを行ったところ、1,200bp程度の長さに相当するバンドが確認された。このDNA断片を精製し、DNA Ligation Kit(タカラバイオ社製)を用いて、T−vector PMD20(タカラバイオ社製)にライゲーションした。
得られたプラスミドを用い、公知の方法で大腸菌JM109コンピテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換した。得られた形質転換体からillustra plasmid−Prep Mini Spin Kitを用いてプラスミドを抽出・精製し、プラスミドに含まれる前記増幅DNAの遺伝子配列を決定した(1,174bp)。
更に、得られた内部配列、及び本発明者らによって既に解明されていたGLD配列を基に設計した、下記の配列番号20のプライマーを用いた3’RACE法によってcDNAの下流部分を、配列番号21、22のプライマー対でGLD遺伝子をPCR増幅し、前記の方法に従って得られたDNA断片の塩基配列解析を行った結果、配列番号3に示す全鎖長1,773bpのGLD全長遺伝子配列が明らかとなった。当該遺伝子配列がコードする全長アミノ酸配列を配列番号4に示す。
配列番号20:5'−CGTTCGTCATGACGCTGGACGAGC−3'
配列番号21:5'−GAAGATCTATGTATCGTTTACTCTCTACATTTGC−3'
配列番号22:5'−GCTCTAGACTAAATGTCCTCCTTGATCAAATCTG−3'
(4)で明らかになった全長アミノ酸配列から予想シグナル配列を除いた17番目以降のアミノ酸配列をコードする改変遺伝子を増幅できるようにプライマー(配列番号23、24)を設計し、(3)で調製したcDNAを鋳型にPCRを行い、改変遺伝子を得た。PCR産物をアガロース電気泳動に供したところ、約1.8kb付近にバンドが確認されたため、Wizard SV Gel and PCR Clean−Up System(Promega社製)を用いてゲル精製後、BglIIとXbaIで切断した。また、実施例5の(5)で作製したpAFF4/DuGLDも同制限酵素で処理し、制限酵素処理後のPCR産物をベクターにライゲーションし、大腸菌JM109株に導入して形質転換した。得られた形質転換体のうち5クローンよりプラスミドDNAを調製し、BglIIとXbaIで処理したところ、全てのクローンで目的のサイズの断片が確認できた。これら5クローンについてプラスミドを調製してそのインサートの配列決定を行ったところ、全てのプラスミドにおいて目的の遺伝子が確認された(pAFF4/BotGLD)。
配列番号23:5'−GAAGATCTAGCACCGACTCTACTTTAACTTATG−3'
配列番号24:5'−GCTCTAGACTACATGTCTTCCTTGATCAAATCTGC−3'
調製した組換えベクター(pAFF4/BotGLD)を宿主酵母Saccaromyces cerevisiae BY4741に導入した。導入にはFrozen−EZ Yeast Transformation II Kit(ZYMO RESEARCH社製)を用いた。得られた形質転換体をイーストエクストラクト(BD社製)1.0%、トリプトン(BD社製)2.0%、グルコース(和光純薬製)2.0%からなるYPD培地100mLを加えた500mL容の坂口フラスコに植菌し、30℃、120rpmで72時間振とう培養した。培養後、遠心して上清を回収した。前述のGLD活性測定法に準じ、プレートリーダーを用いてGLD活性を測定した。コントロール株を用いて得られた上清中のGLD活性は0.1U/mL以下であったのに対し、pAFF4/BotGLDを形質転換した株を用いて得られた上清中のGLD活性は2.6U/mLであり、本発明のGLD活性が確認できた。
(Botrytis属微生物由来GLD遺伝子のクローニング2)
(1)プラスミドpSENS/BotGLD及びBotGLD−Atsigの構築
実施例7(3)で調製したcDNAを鋳型とし、配列番号3に記載の配列から設計した下記の配列番号36、37のプライマー対を用いてPCRを行い、全長BotGLD遺伝子を含むPCR産物を取得した。更に、BotGLDの予想シグナル配列をアスペルギルス・テレウス由来GLDのシグナル配列に置換する蛋白をコードするBotGLD−Atsig改変遺伝子を取得するためのPCRを、三段階で行った。リバースプライマーは何れも配列番号37に記載のプライマーを使用した。一段階目のPCRは、前記PCR産物を鋳型として、BotGLDの予想シグナル配列を除いた17番目以降のアミノ酸配列をコードする遺伝子を増幅できるように設計したプライマー(配列番号38)をフォワードプライマーとして行った。二段階目のPCRは一段階目のPCR産物を鋳型として、配列番号33に記載のプライマーをフォワードプライマーとして行い、三段階目のPCRは二段階目のPCR産物を鋳型として、配列番号34に記載のプライマーをフォワードプライマーとして行い、BotGLD−Atsig改変遺伝子を含むPCR産物を取得した。
配列番号36:5'-(TGACCAATTCCGCAGCTCGTCAAA)ATGTATCGTTTACTCTCTACATTTGC-3'
配列番号37:5'-((CGCTTCTAGA))GCATGCCTAAATGTCCTCCTTGATCAAATCTGC-3'
配列番号38:5'-CCCTGTCCCTGGCAGTGGCGGCACCTTTGAGCACCGACTCTACTTTAACTTATG-3'
(括弧内:転写増強因子、二重括弧内:pSENSベクター配列、下線部:制限酵素部位(SphI)、配列番号38の下線部:Atシグナル配列)
次に、上記全長BotGLD遺伝子を含むPCR産物及びBotGLD−Atsig改変遺伝子を含むPCR産物を各々鋳型とし、何れも配列番号35、37に記載のプライマー対を用いて各々PCRを行い、N末端側に制限酵素認識部位及びベクター配列を付加した。
公知文献1(Aspergillus属の異種遺伝子発現系、峰時俊貴、化学と生物、38、12、831−838、2000)に記載してあるアスペルギルス・オリゼ由来のアミラーゼ系の改良プロモーターを使用し、その下流に上記で得られた二つのPCR産物を各々結合させることで、遺伝子が発現可能な二つのプラスミドベクターを各々調製した。これらの発現用プラスミドベクターを各々大腸菌JM109株に導入して形質転換し、得られた各形質転換体を培養して、集菌した菌体から、Illustra plasmid−prep MINI Flow Kit(GEヘルスケア社製)を用いて各プラスミドを抽出した。各プラスミド中のインサートの配列解析を行ったところ、BotGLD遺伝子(配列番号3)又はBotGLD-Atsig改変遺伝子(配列番号41)が確認できた。
(1)で抽出したプラスミドを用いて、公知文献2(Biosci. Biotech. Biochem.,61(8),1367−1369,1997)及び3(清酒用麹菌の遺伝子操作技術、五味勝也、醸協、494−502、2000)に記載の方法に準じて、BotGLD遺伝子又はBotGLD−Atsig改変遺伝子を挿入した組換えカビ(アスペルギルス・オリゼ)を各々作製し、得られた各組換え株をCzapek−Dox固体培地で各々純化した。宿主としては、アスペルギルス・オリゼNS4株を使用した。本菌株は、公知文献2にあるように、1997年(平成9年)に醸造試験所で育種され、転写因子の解析、各種酵素の高生産株の育種などに利用され、分譲されているものが入手可能である。
パインデックス2%(松谷化学工業社製)(w/v)、トリプトン1%(BD社製)(w/v)、リン酸二水素カリウム0.5%(ナカライテスク社製)(w/v)、硫酸マグネシウム七水和物0.05%(w/v)(ナカライテスク社製)及び水からなる液体培地15mLを太試験管(22mm×200mm)に入れ、121℃、20分間オートクレーブした。冷却したこの液体培地に、(2)で取得した形質転換体を植菌し、30℃で4日間振とう培養した。培養終了後、遠心して上清を回収し、前述のGLD活性測定法に従い各々GLD活性(U/mL)を測定したところ、何れもGLD活性を確認でき、BotGLD遺伝子で形質転換した組換えカビは、培養液1mL当たり13U/mL、BotGLD−Atsig改変遺伝子で形質転換した組換えカビは、培養液1mL当たり36U/mLの生産性を確認できた。
(Ovulinia属微生物由来GLD遺伝子のクローニング)
(インサートDNAを含むベクターの調製)
(1)菌体培養
グルコース(ナカライ社製)1%(W/V)、脱脂大豆(昭和産業社製)2%(W/V)、コーンスティープリカー(サンエイ糖化社製)0.5%(W/V)、硫酸マグネシウム七水和物(ナカライ社製)0.1%(W/V)及び水からなる液体培地をpH6.0に調整し、150mLを500mL容の坂口フラスコに入れ、121℃、20分間オートクレーブした。冷却したこの液体培地に、Ovulinia azaleae NBRC6610株を接種し、15℃で90時間振とう培養した後、さらしを用いて、湿菌体を回収した。
(1)で取得した湿菌体200mgを−80℃で凍結した後、ISOGENII(ニッポンジーン社製)を用いて100μgの全RNAを抽出した。
全RNAから、逆転写酵素およびアダプター配列付きオリゴdTプライマーを用いた逆転写反応によりcDNAライブラリーを調製した。反応試薬は、「SMARTer RACE cDNA Amplification kit」(タカラバイオ株式会社製)を使用し、反応条件は説明書記載のプロトコールに準じて行った。
(3)で取得したcDNAライブラリーを鋳型とし、実施例5の(4)に記載の配列番号13、14のプライマー対を用いてPCRを行ったところ、1,200bp程度の長さに相当するバンドが確認された。このDNA断片を精製し、DNA Ligation Kit(タカラバイオ社製)を用いて、T−vector PMD20(タカラバイオ社製)にライゲーションした。
得られたプラスミドを用い、公知の方法で大腸菌JM109コンピテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換した。得られた形質転換体からillustra plasmid−Prep Mini Spin Kitを用いてプラスミドを抽出・精製し、プラスミドに含まれる前記増幅DNAの遺伝子配列を決定した(1,174bp)。
更に、得られた内部配列、及び本発明者らによって既に解明されていたGLD配列を基に設計した下記の配列番号25のプライマーを用いた3’RACE法によってcDNAの下流部分を、配列番号26、27のプライマー対でGLD遺伝子をPCR増幅し、前記の方法に従って得られたDNA断片の塩基配列解析を行った結果、配列番号5に示す全鎖長1,773bpのGLD全長遺伝子配列が明らかとなった。当該遺伝子配列がコードする全長アミノ酸配列を配列番号6に示す。
配列番号25:5'−CACATGGACATCCGACGCTAATACCCC−3'
配列番号26:5'−ATGTATCGTTTACTCTCTACATTTGC−3'
配列番号27:5'−CTACATGTCTTCCTTGATCAAATCTG−3'
(4)で明らかになった全長アミノ酸配列から予想シグナル配列を除いた17番目以降のアミノ酸配列をコードする遺伝子を増幅できるようにプライマー(配列番号28、29)を設計し、(3)で調製したcDNAを鋳型にPCRを行い、改変遺伝子を得た。PCR産物をアガロース電気泳動に供したところ、約1.8kb付近にバンドが確認されたため、Wizard SV Gel and PCR Clean−Up System(Promega社製)を用いてゲル精製後、BglIIとXbaIで切断した。また、実施例5の(5)で作製したpAFF4/DuGLDも同制限酵素で処理し、制限酵素処理後のPCR産物をベクターにライゲーションし、大腸菌JM109株に導入して形質転換した。得られた形質転換体のうち5クローンよりプラスミドDNAを調製し、BglIIとXbaIで処理したところ、全てのクローンで目的のサイズの断片が確認できた。これら5クローンについてプラスミドを調製してそのインサートの配列決定を行ったところ、全てのプラスミドにおいて目的の遺伝子が確認された(pAFF4/OvGLD)。
配列番号28:5'−GAAGATCTAGCACCGACTCTACTTTAACTTATG−3'
配列番号29:5'−GCTCTAGACTACATGTCTTCCTTGATCAAATCTG−3'
調製した組換えベクター(pAFF4/OvGLD)を宿主酵母Saccaromyces cerevisiae BY4741に導入した。導入にはFrozen−EZ Yeast Transformation II Kit(ZYMO RESEARCH社製)を用いた。得られた形質転換体をイーストエクストラクト(BD社製)1.0%、トリプトン(BD社製)2.0%、グルコース(和光純薬製)2.0%からなるYPD培地100mLを加えた500mL容の坂口フラスコに植菌し、30℃、120rpmで72時間振とう培養した。培養後、遠心して上清を回収した。前述のGLD活性測定法に準じ、プレートリーダーを用いてGLD活性を測定したところ、本発明のGLD活性が確認できた。
(Ciborinia属微生物由来GLD遺伝子のクローニング)
(1)菌体培養
グルコース(ナカライ社製)1%(W/V)、脱脂大豆(昭和産業社製)2%(W/V)、コーンスティープリカー(サンエイ糖化社製)0.5%(W/V)、硫酸マグネシウム七水和物(ナカライ社製)0.1%(W/V)及び水からなる液体培地をpH6.0に調整し、150mLを500mL容の坂口フラスコに入れ、121℃、20分間オートクレーブした。冷却したこの液体培地に、Ciborinia camelliae NBRC103663株を接種し、15℃で90時間振とう培養した後、さらしを用いて、湿菌体を回収した。
(1)で取得した湿菌体200mgを−80℃で凍結した後、ISOGENII(ニッポンジーン社製)を用いて100μgの全RNAを抽出した。
全RNAから、逆転写酵素およびアダプター配列付きオリゴdTプライマーを用いた逆転写反応によりcDNAライブラリーを調製した。反応試薬は、「SMARTer RACE cDNA Amplification kit」(タカラバイオ株式会社製)を使用し、反応条件は説明書記載のプロトコールに準じて行った。
(3)で取得したcDNAライブラリーを鋳型とし、実施例5の(4)に記載の配列番号13、14のプライマー対を用いてPCRを行ったところ、1,200bp程度の長さに相当するバンドが確認された。このDNA断片を精製し、DNA Ligation Kit(タカラバイオ社製)を用いて、T−vector PMD20(タカラバイオ社製)にライゲーションした。
得られたプラスミドを用い、公知の方法で大腸菌JM109コンピテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換した。得られた形質転換体からillustra plasmid−Prep Mini Spin Kitを用いてプラスミドを抽出・精製し、プラスミドに含まれる前記増幅DNAの遺伝子配列を決定した。更に、得られた内部配列を基に設計した下記の配列番号43のプライマーを用いた5’RACE法によってcDNAの上流を、配列番号44のプライマーを用いた3’RACE法によってcDNAの下流部分をPCR増幅し、前記の方法に従って得られたDNA断片の塩基配列解析を行った結果、全鎖長1,776bpのCiborinia camelliae NBRC103663株由来GLD全長遺伝子配列が明らかとなった。
配列番号43:5'−ACGGAAATGTTGTACTTCTCAAGGATAGCA−3'
配列番号44:5'−CGTCGTTGATCTCCCAACCGTCGGAGAGAA−3'
(3)で調製したcDNAを鋳型とし、配列から設計した下記の配列番号45、46のプライマー対を用いてPCRを行い、全長CiGLD遺伝子を含むPCR産物を取得した。更に、CiGLDの予想シグナル配列をアスペルギルス・テレウス由来GLDのシグナル配列に置換する蛋白をコードするCiGLD−Atsig改変遺伝子を取得するためのPCRを、三段階で行った。リバースプライマーは何れも配列番号46に記載のプライマーを使用した。一段階目のPCRは、前記PCR産物を鋳型として、CiGLDの予想シグナル配列を除いた20番目以降のアミノ酸配列をコードする遺伝子を増幅できるように設計したプライマー(配列番号47)をフォワードプライマーとして行った。二段階目のPCRは一段階目のPCR産物を鋳型として、配列番号37に記載のプライマーをフォワードプライマーとして行い、三段階目のPCRは二段階目のPCR産物を鋳型として、配列番号34に記載のプライマーをフォワードプライマーとして行い、DuGLD−Atsig改変遺伝子を含むPCR産物を取得した。
配列番号45:5'-(CCGCAGCTCGTCAAA)ATGCATCGCTTCCTTCCTGCC-3'
配列番号46:5'-(GTTACGCTTCTAGA)GCATGCGTTCATTTACATATCTTCCTTGATC-3'
配列番号47:5'-GTGGCGGCACCTTTGGTTGCCTTAACCTACGATTAT-3'
(括弧内:転写増強因子、二重括弧内:pSENSベクター配列、下線部:制限酵素部位(SphI)、配列番号47の下線部:シグナル配列)
次に、上記全長CiGLD遺伝子を含むPCR産物及びCiGLD−Atsig改変遺伝子を含むPCR産物を各々鋳型とし、何れも配列番号35、46に記載のプライマー対を用いて各々PCRを行い、N末端側に制限酵素認識部位及びベクター配列を付加した。
公知文献1(Aspergillus属の異種遺伝子発現系、峰時俊貴、化学と生物、38、12、831−838、2000)に記載してあるアスペルギルス・オリゼ由来のアミラーゼ系の改良プロモーターを使用し、その下流に上記で得られた二つのPCR産物を各々結合させることで、遺伝子が発現可能な二つのプラスミドベクターを各々調製した。これらの発現用プラスミドベクターを各々大腸菌JM109株に導入して形質転換し、得られた各形質転換体を培養して、集菌した菌体から、Illustra plasmid−prep MINI Flow Kit(GEヘルスケア社製)を用いて各プラスミドを抽出した。各プラスミド中のインサートの配列解析を行ったところ、CiGLD遺伝子又はCiGLD-Atsig改変遺伝子が確認できた。
(5)で抽出したプラスミドを用いて、公知文献2(Biosci. Biotech. Biochem.,61(8),1367−1369,1997)及び3(清酒用麹菌の遺伝子操作技術、五味勝也、醸協、494−502、2000)に記載の方法に準じて、CiGLD遺伝子又はCiGLD−Atsig改変遺伝子を挿入した組換えカビ(アスペルギルス・オリゼ)を各々作製し、得られた各組換え株をCzapek−Dox固体培地で各々純化した。宿主としては、アスペルギルス・オリゼNS4株を使用した。本菌株は、公知文献2にあるように、1997年(平成9年)に醸造試験所で育種され、転写因子の解析、各種酵素の高生産株の育種などに利用され、分譲されているものが入手可能である。
パインデックス2%(松谷化学工業社製)(w/v)、トリプトン1%(BD社製)(w/v)、リン酸二水素カリウム0.5%(ナカライテスク社製)(w/v)、硫酸マグネシウム七水和物0.05%(w/v)(ナカライテスク社製)及び水からなる液体培地15mLを太試験管(22mm×200mm)に入れ、121℃、20分間オートクレーブした。冷却したこの液体培地に、(6)で取得した形質転換体を植菌し、30℃で4日間振とう培養した。培養終了後、遠心して上清を回収し、前述のGLD活性測定法に従い各々GLD活性(U/mL)を測定したところ、何れもGLD活性を確認でき、CiGLD遺伝子で形質転換した組換えカビは、培養液1mL当たり90U/mL、CiGLD−Atsig改変遺伝子で形質転換した組換えカビは、培養液1mL当たり250U/mLの生産性を確認できた。
(N末端解析)
実施例1で得られた精製DuGLDのN末端を解析したところ、LSLTYDであることが明らかになった。つまり、MNHLLPAFALASLAVASPDの19アミノ酸がシグナル配列であり、該酵素は、翻訳後にシグナルペプチダーゼによる修飾で、該19アミノ酸が削除されており、配列番号8からなるグルコースデヒドロゲナーゼとして存在していることが分かった。更に、配列相同性や特許文献1記載のアスペルギルス・テレウスGLD配列との比較からOvGLD、BotGLD及びCiGLDも同様に19アミノ酸がシグナル配列と考えられた。
(Botrytis属微生物由来GLDの精製:グルコースデヒドロゲナーゼ(E))
前培養培地(D−グルコース1.0%、大豆粉2.0%、コーンスティープリカー0.5%、硫酸マグネシウム七水和物0.1%、pH7.0)0.05Lを0.2L容バッフル付き三角フラスコに入れ、121℃、20分オートクレーブ処理し、これに予めプレート上で培養したBotGLD−Atsig改変遺伝子を導入したA.oryzaeNS4株を約0.5cm2接種し、25℃、100rpmで3日間回転振盪培養をした。これを種培養として、5Lジャーファーメンターに入れオートクレーブ処理した上記培地3.5Lに0.05L接種し、25℃、300rpm、1v/v/mで7日間培養した。培養終了後、培養液をろ布でろ過し、ろ液を回収した。次いで、得られたろ液を遠心分離(7,000×g、30分)により上清を回収し、メンブレンフィルター(10μm、アドバンテック社製)で吸引ろ過し、培養上清2Lを回収した。
(Ciborinia属微生物由来GLDの精製:グルコースデヒドロゲナーゼ(F))
前培養培地(D−グルコース1.0%、大豆粉2.0%、コーンスティープリカー0.5%、硫酸マグネシウム七水和物0.1%、pH7.0)0.05Lを0.2L容バッフル付き三角フラスコに入れ、121℃、20分オートクレーブ処理し、これに予めプレート上で培養したCiGLD−Atsig改変遺伝子を導入したA.oryzaeNS4株を約0.5cm2接種し、25℃、100rpmで3日間回転振盪培養をした。これを種培養として、5Lジャーファーメンターに入れオートクレーブ処理した上記培地3.5Lに0.05L接種し、25℃、300rpm、1v/v/mで7日間培養した。培養終了後、培養液をろ布でろ過し、ろ液を回収した。次いで、得られたろ液を遠心分離(7,000×g、30分)により上清を回収し、メンブレンフィルター(10μm、アドバンテック社製)で吸引ろ過し、培養上清2Lを回収した。
[実施例14]
(本発明のGLDの性質試験)
実施例 で得られた各精製GLDの諸性質を調べた。(A)はDuGLD、(B)はOvGLD、(C)はScGLD、(D)はBoGLD、(E)はBotGLD、(F)はCiGLDの酵素である。
(a)補酵素
(A)〜(F)の各精製GLDの300−600nmにおける吸収スペクトルを、プレートリーダー(SPECTRA MAX PLUS 384、モレキュラーデバイス社製)を用いて測定し、測定結果を図1に示した。各精製GLDで、360−380nm付近及び450−460nm付近に吸収極大が認められた。これらの吸収極大はフラビンに特有であるため、本発明のGLDは、何れも補酵素がフラビンアデニンジヌクレオチドであることが明らかになった。
(A)〜(F)の各精製GLDについて、前記活性測定法において、基質であるD−グルコース濃度を変化させて活性測定を行った。Hanes−Woolfプロットから各GLDのミカエリス定数(Km)を求め、表1にまとめた。尚、Km値は、測定方法や算出するプロットによって値が変動し易いため、DuGLDのKmは約100〜200mM、OvGLDのKmは約10〜40mM、ScGLDのKmは約10〜30mM、BoGLDのKmは約20〜50mM、BotGLDのKmは約20〜50mM、CiGLDのKmは約1.0〜20mMと考えられる。
(A)〜(F)の各精製GLDのGOD活性を調べた結果、何れのGLDについてもGOD活性は見られなかった。よって、本発明のGLDは酸素を電子受容体として実質的に利用しないため、血糖測定用バイオセンサに本発明のGLDを用いると溶存酸素の影響を受けにくいバイオセンサを作成できることが明らかになった。
(A)〜(D)の各精製GLDを6U/mLに調製し、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)中で、4〜60℃の各温度で15分間処理した後、前記酵素活性測定方法で酵素活性を測定した。酵素活性の残存率を算出し、熱安定性として図2に示した。各精製GLDを100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)中で、4℃、15分間処理した後に、前記酵素活性測定法により測定した活性を100%とした場合に、各温度で15分間処理した後に、前記酵素活性測定法により測定した残存活性が、DuGLDは35℃で90%以上、40℃で70%以上、45℃で30%以上、OvGLDは35℃で90%以上、40℃で80%以上、45℃で30%以上、ScGLDは40℃で90%以上、45℃で70%以上、BoGLDは35℃で90%以上、40℃で80%以上、45℃で15%以上の残存活性だった。以上から、本発明のGLDは、40℃、15分間の熱処理後に70%以上、35℃、15分処理後に90%以上の残存活性を有していることがわかった。
(A)〜(F)の各精製GLDを6U/mLに調製し、終濃度が100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5−5.5、図中斜め四角印でプロット)、100mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0−6.0、図中四角印でプロット)、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0−6.0図中黒丸印でプロット)、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0−7.5図中三角印でプロット)、100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0−9.0図中白丸印でプロット)、100mMグリシン−NaOH緩衝液(pH8.0−11.0図中×でプロット)になるように緩衝液を添加し、25℃で16時間処理した後、前記酵素活性測定方法で酵素活性を測定した。酵素活性の残存率を算出し、安定pHとして図3に示した。その結果、各精製GLDを100mM各種pHの緩衝液で25℃、16時間処理した後に最も安定だったpHの緩衝液で処理した酵素の活性を100%とした場合に、DuGLDはpH4.4〜7.2で80%以上、pH4.4〜7.3で70%以上、pH4.1〜8.1で40%以上、OvGLDはpH4.5〜7.0で80%以上、pH3.9〜7.8で70%以上、pH3.5〜7.8で40%以上、ScGLDはpH5.0〜7.9で80%以上、pH4.5〜8.4で70%以上、pH4.0〜9.1で40%以上、BoGLDはpH4.5〜7.3で80%以上、pH4.1〜7.3で70%以上、pH3.6〜7.8で40%以上、BotGLDはpH5.0〜7.5で80%以上、pH3.9〜7.7で70%以上、pH3.3〜7.8で40%以上、CiGLDはpH5.1〜7.4で80%以上、pH3.9〜7.9で70%以上、pH3.5〜7.9で40%以上の残存活性だった。以上から、本発明のGLDの安定pH範囲は、pH5.0〜7.0で80%以上、pH4.5〜7.0で70%以上、pH4.0〜7.5で40%以上であることがわかった。尚、同じpHであっても緩衝液の種類によって残存活性は異なることがある。
DuGLD及びOvGLDを、0.2M NaClを含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に溶解し、移動相に同緩衝液を使用してTSKgel−G3000SW(φ2.15cm×60.0cm、東ソー社製)にて分析した。ゲルろ過法による分析で測定した結果、分子量マーカー(Bio−Rad社製、Gel Filtration Standard)を指標にして、DuGLDの分子量は150〜230kDa、OvGLDの分子量は260〜440kDaだった。
図4(A)
レーン1:分子量マーカー(BioDynamics Laboratory社製 DynaMarker Protein Recombinant(10−150kDa)、上から150kDa、100kDa、80kDa、60kDa、40kDa)
レーン2:DuGLD糖鎖切断前
レーン3:DuGLD糖鎖切断後
図4(B)
レーン1:分子量マーカー(BioDynamics Laboratory社製 DynaMarker Protein Recombinant(10−150kDa)、上から150kDa、100kDa、80kDa、60kDa、40kDa)
レーン2:OvGLD糖鎖切断前
レーン3:OvGLD糖鎖切断後
図4(C)
レーン1:分子量マーカー(BioDynamics Laboratory社製 DynaMarker Protein Recombinant(10−150kDa)、上から150kDa、100kDa、80kDa、60kDa、40kDa)
レーン2:ScGLD糖鎖切断前
レーン3:ScGLD糖鎖切断後
図4(D)
レーン1:分子量マーカー(BioDynamics Laboratory社製 DynaMarker Protein Recombinant(10−150kDa)、上から150kDa、100kDa、80kDa、60kDa、40kDa)
レーン2:BoGLD糖鎖切断前
レーン3:BoGLD糖鎖切断後
図4(E)
レーン1:分子量マーカー(BioDynamics Laboratory社製 DynaMarker Protein Recombinant(10−150kDa)、上から150kDa、100kDa、80kDa、60kDa、40kDa)
レーン2:BotGLD糖鎖切断前
レーン3:BotGLD糖鎖切断後
図5(F)
レーン1:分子量マーカー(BioDynamics Laboratory社製 DynaMarker Protein Recombinant(10−150kDa)、上から150kDa、100kDa、80kDa、60kDa、40kDa)
レーン2:CiGLD糖鎖切断前
レーン3:CiGLD糖鎖切断後
(A)〜(F)の各精製GLDについて、前記酵素活性測定法におけるD−グルコースを他の基質に置き換え、各基質に対する酵素活性を測定した。各基質としては、マルトース、D−ガラクトース、D−フルクトース、ソルビトール、ラクトース、スクロース、D−キシロース、D−マンノース及びトレハロースを用いた。D−グルコースに対する活性を100%とした場合の各基質に対する相対活性を求め、基質特異性として表2にまとめた。
(A)〜(D)の各精製GLDについて、前記酵素活性測定法における温度を5〜60℃の各温度に設定し、更に基質の終濃度を10mM及び50mMとして酵素活性を測定した。基質の終濃度が10mMの場合、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)1.00mL、1M D−グルコース溶液0.03mL、超純水1.58mL、3mM DCIP0.14mL及び3mM 1−m−PMS0.20mLを混合し、基質の終濃度が50mMの場合、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)1.00mL、1M D−グルコース溶液0.15mL、超純水1.46mL、3mM DCIP0.14mL及び3mM 1−m−PMS0.20mLを混合し、何れの基質の終濃度の場合も37℃で保温する代わりに各温度で10分間保温し、酵素サンプル0.05mLを添加し、各温度にて反応を開始した。反応開始時から5分間、酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量を測定し、直線部分から前記式1に従いGLD活性を算出した。各精製GLDが最大活性を示す温度における活性値を100%とした場合の各温度における相対活性を求め、至適温度として図5に示した。その結果、各精製GLDが最大活性を示す温度における活性値を100%とした場合に、基質濃度10mMでは、DuGLDは30〜45℃で80%以上、OvGLDは30〜50℃で80%以上、ScGLDは30〜50℃で80%以上、BoGLDは30〜45℃で80%以上の相対活性で、基質濃度50mMでは、DuGLDは30〜50℃で80%以上、OvGLDは35〜55℃で80%以上、ScGLDは40〜55℃で80%以上、BoGLDは30〜45℃で80%以上の相対活性で、何れの基質濃度においても、DuGLDは30〜45℃で80%以上、OvGLDは35〜50℃で80%以上、ScGLDは40〜50℃で80%以上、BoGLDは30〜45℃で80%以上の相対活性であった。以上から、本発明のGLDは、最大活性を示す温度における活性値を100%とした場合に、基質濃度10mMでは30〜45℃、基質濃度50mMでは40〜45℃で相対活性値が80%以上であり、何れの基質の終濃度においても40〜45℃で相対活性値が80%以上だった。
(A)〜(E)の各精製GLDについて、前記酵素活性測定法におけるリン酸カリウム緩衝液を各基質に置き換え、各pHにおける酵素活性を測定した。各緩衝液としては、酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0〜5.5、図中四角印でプロット)、クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0〜6.0、図中斜め四角印でプロット)、リン酸カリウム緩衝液(pH6.0〜7.5、図中三角印でプロット)、トリス・塩酸緩衝液(pH7.0〜9.0、図中白丸印でプロット)及びグリシン・水酸化ナトリウム緩衝液(pH8.0〜10.0、図中黒丸印でプロット)を用いた。各精製GLDが最大活性を示す温度における活性値を100%とした場合の各pHにおける相対活性を求め、至適pHとして図6に示した。その結果、各精製GLDが最大活性を示す緩衝液のpHにおける活性値を100%とした場合に、DuGLDはpH6.0〜8.0で80%以上、pH5.0〜9.0で40%以上、OvGLDはpH6.0〜7.5で80%以上、pH5.0〜9.0で40%以上、ScGLDはpH5.5〜7.5で80%以上、pH5.0〜9.5で40%以上、BoGLDはpH5.5〜7.5で80%以上、pH5.0〜9.0で40%以上、BotGLDはpH5.5〜7.5で80%以上、pH5.0〜9.0で40%以上だった。以上から、本発明のGLDは、最大活性を示す緩衝液のpHにおける活性値を100%とした場合に、pH6.0〜7.5で相対活性値が80%以上、pH5.0〜9.0で40%以上だった。
(A)〜(D)の各精製GLDについて、前記酵素活性測定法における温度を10〜50℃の各温度に設定し、更に基質の終濃度を10mM及び50mMとして酵素活性を測定した。30、45℃における活性値を100%とした場合の各温度の相対活性を求め、表3にまとめた。尚、同条件で1サンプルにつき2回ずつ測定し、平均した値について表にまとめた。その結果、30℃における活性値を100%とした場合に、10〜50℃における活性値の範囲は、基質濃度10mMでは、DuGLDは60.6〜108%、OvGLDは54.4〜107%、ScGLDは43.2〜119%、BoGLDは55.0〜106%で、基質濃度50mMでは、DuGLDは56.0〜111%、OvGLDは43.7〜123%、ScGLDは41.6〜141%、BoGLDは49.5〜112%だった。30℃における活性値を100%とした場合に、10〜45℃における活性値の範囲は、基質濃度10mMでは、DuGLDは60.6〜108%、OvGLDは54.4〜107%、ScGLDは43.2〜119%、BoGLDは55.0〜106%で、基質濃度50mMでは、DuGLDは56.0〜111%、OvGLDは43.7〜123%、ScGLDは41.6〜137%、BoGLDは49.5〜112%だった。45℃における活性値を100%とした場合に、10〜45℃における活性値の範囲は、基質濃度10mMでは、DuGLDは60.1〜107%、OvGLDは51.9〜102%、ScGLDは36.4〜100%、BoGLDは58.8〜113%で、基質濃度50mMでは、DuGLDは50.5〜100%、OvGLDは35.4〜100%、ScGLDは30.5〜100%、BoGLDは48.6〜110%だった。以上から、本発明のGLDは、30℃における活性値を100%とした場合に、10〜50℃における活性値の範囲が20〜150%であることがわかった。よって、広い温度範囲で活性の変動が少ない。
(A)〜(F)の各精製GLDについて、前記酵素活性測定法において、終濃度が2mM、5mM、10mMになるようにメタノールに溶解した1,10−フェナントロリンをそれぞれ加えた場合の酵素活性を測定した。メタノールのみ添加の阻害効果を0%として、各濃度の1,10−フェナントロリンの阻害効果を求め、1,10−フェナントロリンの阻害効果として表4にまとめた。
(本発明のGLDによるグルコースの定量)
(A)〜(F)の本発明のGLDを用いて、前記活性測定法におけるD−グルコースの濃度を0.3mM(5.5mg/dL)〜50mM(900mg/dL)の範囲に変化させて、吸光度変化を測定した。結果を図7に示した。本発明のGLDを用いてD−グルコースの定量が可能であることが示された。
本発明の各GLDのアミノ酸配列同士又は塩基配列同士をGeneDoc(2.7.0.0)により比較して、各identity%の数値を表5にまとめた。
Claims (12)
- 以下の(a)、(b)又は(c)のアミノ酸配列を有し、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ:
(a)配列番号2、4、6、8、10又は12に示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号2、4、6、8、10又は12に示されるアミノ酸配列において、1個〜数個のアミノ酸が置換、欠失又は付加されたアミノ酸配列、又は
(c)配列番号2若しくは8に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%、又は配列番号4、6、10若しくは12に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列。 - 糸状菌又は酵母に属するグルコースデヒドロゲナーゼ生産菌を培養し、培養物からグルコースデヒドロゲナーゼを採取することを特徴とする請求項1記載のグルコースデヒドロゲナーゼの製造法。
- 被検試料と請求項1記載のグルコースデヒドロゲナーゼを接触させる工程を含む該被検試料中のグルコースの測定方法。
- 測定時のpHが5.0〜9.0であって、溶存酸素の影響を受けない請求項3に記載のグルコースの測定方法。
- 請求項1記載のグルコースデヒドロゲナーゼを含有するグルコース測定試薬。
- pHが4.0〜7.5である請求項5に記載のグルコース測定試薬。
- 請求項1記載のグルコースデヒドロゲナーゼを含有するグルコース測定用バイオセンサ。
- 反応層のpHが4.0〜7.5であって、溶存酸素の影響を受けない請求項7に記載のグルコース測定用バイオセンサ。
- 請求項1記載のグルコースデヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチド。
- 以下の(d)又は(f)のポリヌクレオチド:
(d)配列番号1、3、5、7、9又は11に示される塩基配列から成るポリヌクレオチド、又は
(f)配列番号1若しくは7に示される塩基配列と少なくとも90%、配列番号3、5、9若しくは11に示される塩基配列と少なくとも95%の同一性を有する塩基配列からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼをコードするポリヌクレオチド。 - 請求項9又は10記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
- 請求項9若しくは10記載のポリヌクレオチド、又は請求項11に記載のベクターを用いて作成された形質転換細胞。
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