JP5969392B2 - フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ、フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法およびそれに用いる酵母形質転換体 - Google Patents

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Description

本発明は、新規なフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ、フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの製造法およびそれに用いる酵母形質転換体に関する。
血中グルコース濃度(血糖値)は、糖尿病の重要なマーカーである。糖尿病患者が自己の血糖値を管理するための装置としては、電気化学的バイオセンサを用いた自己血糖測定(Self Monitoring of Blood Glucose:SMBG)機器が広く利用されている。SMBG機器に用いられるバイオセンサには、従来、グルコースオキシダーゼ(GOD)等のグルコースを基質とする酵素が利用されている。しかしながら、GODは酸素を電子受容体とするという特性を備えているため、GODを用いたSMBG機器では、測定サンプル中の溶存酸素が測定値に影響を与え、正確な測定値が得られない場合が起こりうる。
一方、グルコースを基質とするが、酸素を電子受容体としない別の酵素として、各種のグルコースデヒドロゲナーゼ(以下、GDH)が知られている。具体的には、ニコチンアミドジヌクレオチド(NAD)やニコチンアミドジヌクレオチドリン酸(NADP)を補酵素とするタイプのGDH(NAD(P)−GDH)や、ピロロキノリンキノン(PQQ)を補酵素とするGDH(PQQ−GDH)が見出されており、SMBG機器のバイオセンサに使用されている。しかしながら、NAD(P)−GDHは、酵素の安定性が乏しく、かつ、補酵素の添加が必要という問題を有し、また、PQQ−GDHは基質特異性が低く、測定対象であるグルコース以外にも、マルトース、D−ガラクトースおよびD−キシロースなどの糖化合物に対して作用してしまうため、測定サンプル中のグルコース以外の糖化合物が測定値に影響し、正確な測定値が得られないという問題点が存在する。
近年、PQQ−GDHをバイオセンサとして用いたSMBG機器を用いて、輸液投与を受けていた糖尿病患者の血糖値を測定する際に、PQQ−GDHが輸液中に含まれるマルトースにも作用して、実際の血糖値よりも高い測定値が得られ、この値に基づく処置が原因となって患者が低血糖等を発症した例が報告されている。また、同様の事象はガラクトース負荷試験およびキシロース吸収試験を実施中の患者にも起こり得ることも判明している(例えば、非特許文献1参照)。これを受け、厚生労働省医薬食品局は、グルコース溶液に各糖類を添加した場合における血糖測定値への影響を調査する目的で交差反応性試験を行ったところ、600mg/dLのマルトース、300mg/dLのD−ガラクトース、あるいは、200mg/dLのD−キシロース添加を行った場合には、PQQ−GDH法を用いた血糖測定キットの測定値は、実際のグルコース濃度より2.5〜3倍ほど高い値を示した。すなわち、測定試料中に存在し得るマルトース、D−ガラクトース、D−キシロースにより測定値が不正確になることが判明し、このような測定誤差の原因となる糖化合物の影響を受けず、グルコースを特異的に測定可能な基質特異性の高いGDHの開発が切に望まれている。
上記のような背景の下、上記以外の補酵素を利用するタイプのGDHが着目されるようになってきている。例えば、基質特異性に関する詳細な記載はないが、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)由来のGDHについての報告(例えば、非特許文献2〜5参照)が知られている。また、アスペルギルス(Aspergillus)属由来のフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼ(FAD−GDH)が開示されており(例えば、特許文献1〜3参照)、D−キシロースに対する作用性を低減させたアスペルギルス属由来のFAD−GDHも開示されている(例えば、特許文献4参照)。
上記のとおり、D−グルコースではない1種または数種の糖化合物に対して反応性が低いFAD−GDHがいくつか知られてはいるが、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロースのいずれに対しても反応性が十分に低いという特性を有するフラビン結合型GDHは知られていない。また、D−グルコース、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロースが存在する条件下において、それらの糖化合物による影響を受けることなくグルコース濃度を正確に測定することが可能なフラビン結合型GDHも知られていない。また、そのような性質を有するとともに耐熱性にも優れたフラビン結合型GDHも知られていない。さらに、そのような優れた基質特異性を有するフラビン結合型GDHを効率的に製造する方法および手段については、これまでに全く報告されていない。
特開2007−289148号公報 国際公開第04/058958号 国際公開第07/139013号 特開2008−237210号公報
医薬品・医療用具等安全性情報206号(Pharmaceuticals and Medical Devices Safety Information No.206)、2004年10月、厚生労働省医薬食品局 Studies on the glucose dehydrogenase of Aspergillus oryzae. I. Induction of its synthesis by p−benzoquinone and hydroquinone, T. C. Bak, and R. Sato, Biochim. Biophys. Acta, 139, 265−276 (1967). Studies on the glucose dehydrogenase of Aspergillus oryzae. II. Purification and physical and chemical properties, T.C. Bak, Biochim. Biophys. Acta, 139, 277−293 (1967). Studies on the glucose dehydrogenase of Aspergillus oryzae. III. General enzymatic properties, T.C. Bak, Biochim. Biophys. Acta, 146, 317−327 (1967). Studies on the glucose dehydrogenase of Aspergillus oryzae. IV. Histidyl residue as an active site, T.C. Bak, and R. Sato, Biochim. Biophys. Acta, 146, 328−335 (1967).
本発明は、D−グルコースに対する基質特異性が高く、耐熱性に優れたフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼおよび、その効率的な製造方法およびそれに用いる形質転換体を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討を重ね、グルコース量の正確な測定を可能とする新規なGDHを生産する微生物のスクリーニングを実施した結果、ケカビ亜門に属する菌株から、グルコースに特異性が高く、グルコース以外の糖化合物の共存条件下で測定を行った場合でもグルコースを正確に測定できるGDH活性を有する新規なGDHを見出した。
本発明者等は、このGDHを精製し諸性質を決定した結果、この酵素が新規なフラビン結合型GDHであることを確認し、実際にマルトース、D−ガラクトース、D−キシロース存在下でのD−グルコース測定を実施するとともに、その新規なGDHのアミノ酸配列とそれをコードする遺伝子配列情報を取得した。さらに、本来の由来微生物の培養物からでは十分な量の酵素を取得することが困難であるという課題を解決するために、検討を重ねた。
その結果、このフラビン結合型GDHをコードする遺伝子を酵母へと導入して形質転換体を得、この酵母形質転換体を培養した場合に、その培養物からより多くのフラビン結合型GDHを効率的に取得できることを見出した。さらに、驚くべきことに、この酵母形質転換体から得られるフラビン結合型GDHは、本来の由来微生物中で製造されるものと比較して、その耐熱性が顕著に向上していることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)以下の(i)から(iv)の性質:
(i)作用:電子受容体存在下でグルコース脱水素酵素活性を示す、
(ii)分子量:タンパク質のポリペプチド鎖部分の分子量が約80kDaである、
(iii)基質特異性:D−グルコースに対する反応性に対して、マルトース、及びD−ガラクトース、及びD−キシロースに対する反応性が低い、
(iv)50℃、15分間の熱処理において50%以上の残存活性を有する、
を備えるフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。
(2)配列番号1または配列番号3で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列と85%以上同一なアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる上記(1)記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。
(3)フラビン結合型GDHがケカビ亜門、好ましくは、ケカビ綱、より好ましくは、ケカビ目、さらに好ましくはケカビ科に分類される微生物に由来し、酵母を宿主として発現されることを特徴とする上記(1)〜(2)記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。
(4)配列番号1または配列番号3で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列と85%以上同一なアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼをコードするフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子を酵母に導入して得られる酵母形質転換体。
(5)酵母がチゴサッカロマイセス属、サッカロマイセス属、ピキア属、カンジダ属に属する、上記(4)記載の酵母形質転換体。
(6)上記(4)〜(5)記載の酵母形質転換体を培養し、該培養物よりフラビン結合型GDHを採取することを特徴とする、フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法。
(7)以下の(A)〜(E)からなる群より選択されるいずれかのDNAからなるフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子:
(A)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードするDNA;
(B)配列番号2で示される塩基配列からなるDNA;
(C)配列番号3で示されるアミノ酸配列をコードするDNA;
(D)配列番号4で示される塩基配列からなるDNA;
(E)配列番号2又は配列番号4で示される塩基配列と85%以上相同な塩基配列、
を有し、かつフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ酵素活性をもつタンパク質をコードするDNAが導入されている酵母形質転換体を培養し、該培養物よりフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを採取することを特徴とする、フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法。
本発明の酵母形質転換体および、それを用いたフラビン結合型GDHの製造法によれば、測定試料に含まれるマルトース、D−ガラクトース、D−キシロース等の糖化合物の影響を受けることなく、正確にD−グルコース量を測定することが可能であり、かつ、優れた耐熱性を有する新規なフラビン結合型GDHを効率的に取得できる。これにより、マルトースを含む輸液の投与を受けている患者や、ガラクトース負荷試験およびキシロース吸収試験を実施中の患者の試料についても、正確に血糖値を測定することが可能な実用性に優れたGDHを効率的に提供することが可能になる。
本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例の吸収スペクトルを示す図である。 本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例の至適pHを示す図である。 本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例の至適温度を示す図である。 本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例の熱安定性を示す図である。 本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例のpH安定性を示す図である。 本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例のSDS−ポリアクリルアミド電気泳動結果である。 本発明に使用するフラビン結合型GDHの一例を用いて測定した、D−グルコース量の測定結果を示す図である。 本発明の酵母形質転換体により生産される本発明のフラビン結合型GDHの一例のSDS−ポリアクリルアミド電気泳動結果である。 本発明の酵母形質転換体により生産されるフラビン結合型GDHの一例の熱安定性を示す図である。 本発明の酵母形質転換体および比較例の麹菌形質転換体により生産されるフラビン結合型GDHの一例の熱安定性を示す、熱処理時間と残存活性の関係を表す図である。 比較例の麹菌形質転換体により生産されるケカビ由来フラビン結合型GDHの一例のSDS−ポリアクリルアミド電気泳動結果である。
(フラビン結合型GDHの基質特異性)
本発明に用いるフラビン結合型GDHは、基質特異性に優れ、D−グルコースに対する選択性が極めて高いことを特徴とする。具体的には、本発明に用いるフラビン結合型GDHは、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロースに対する反応性が極めて低い。具体的には、D−グルコースに対する反応性を100%とした場合に、マルトース、D−ガラクトースおよびD−キシロースに対する反応性がいずれも2%以下であることを特徴とする。本発明に用いるフラビン結合型GDHは、このような高い基質特異性を有するため、マルトースを含む輸液の投与を受けている患者や、ガラクトース負荷試験およびキシロース吸収試験を実施中の患者の試料についても、測定試料に含まれるマルトース、D−ガラクトース、D−キシロース等の糖化合物の影響を受けることなく、正確にD−グルコース量を測定することが可能となる。
本発明に用いるフラビン結合型GDHは、上述のようにD−グルコースの代わりにマルトース、D−ガラクトース、D−キシロース等の糖化合物を基質として測定を行った際の測定値が非常に低く、さらに、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロース等の糖化合物が夾雑する条件下でも正確にグルコース測定値を測定できることを特徴とする。具体的には、それらの夾雑糖化合物が存在しない条件でのD−グルコースに対する反応性を100%とした場合に、夾雑糖化合物としてマルトース、D−ガラクトース、D−キシロースから選択される1以上が存在する場合の測定値が96%〜103%であり、夾雑糖化合物としてマルトース、D−ガラクトースおよびD−キシロースの3種が同時に存在する場合でも、測定値が96%〜104%であることを特徴とする。このような特性を有するフラビン結合型GDHを用いた場合には、測定試料中にマルトースやD−ガラクトース、D−キシロースが存在している状況でも、グルコース量を正確に測定することが可能であり、好ましい。
(本発明に用いるフラビン結合型GDHの酵素化学的特徴)
本発明に用いるフラビン結合型GDHとして好ましい酵素の例としては、以下の酵素化学的特徴を有するものが挙げられる。
(1)作用:電子受容体存在下でGDH活性を示す
(2)分子量:タンパク質のポリペプチド鎖部分の分子量が約80kDaである
(3)基質特異性:D-グルコースに対する反応性と比較して、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロースに対する反応性が低い
(4)至適pH:pH6.5〜7.0
(5)至適温度:37〜40℃
(6)安定pH範囲:pH3.5〜7.0
(7)40度、15分間の熱処理において80%以上の残存活性を有する、
(8)フラビン化合物を補酵素とする
(9)Km値:D−グルコースに対するKm値が26〜33mMである
上記のような酵素化学的特徴を有するGDHであれば、測定試料に含まれるマルトース、D−ガラクトース、D−キシロース等の糖化合物の影響を受けることなく、正確にD−グルコース量を測定することが可能となる。また、血糖値の測定等の臨床診断に応用するために好適なpH範囲、温度範囲で良好に作用するので、診断用測定試薬等の用途に好適に使用することができる。
なお、上記の諸性質パラメータは典型的な例であるが、所定の測定条件においてD−グルコースの測定を行う際に本発明の効果を達成可能である範囲で、上記パラメータのうちには、許容可能な変動の幅を有するものがある。例えば、安定pH範囲や至適pH範囲、至適温度範囲等のパラメータは、所定の測定条件を含む範囲で、上記の典型的な範囲よりやや広くてもよいし、逆に、上記の典型的な範囲よりやや狭い場合でも、測定条件において十分な活性および/または安定性が確保されていればよい。Km値は一般的には小さくなるほど基質特異性が良いとされるが、本発明の酵素としては、所定の測定条件において実質的に十分な基質の選択が実現される範囲の値を有していればよい。
上記の各種の酵素化学的性質は、酵素の諸性質を特定するための公知の手法、例えば、以下の実施例に記載の方法を用いて調べることができる。酵素の諸性質は、本発明に用いるフラビン結合型GDHを生産する微生物の培養液や、精製工程の途中段階において、ある程度調べることもでき、より詳細には、精製酵素を用いて調べることができる。
精製酵素とは、当該酵素以外の成分、特に当該酵素以外のタンパク質(夾雑タンパク質)を実質的に含まない状態に分離された酵素をいう。具体的には、例えば、夾雑タンパク質の含有量が重量換算で全体の約20%未満、好ましくは約10%未満、更に好ましくは約5%未満、より一層好ましくは約1%未満である。なお、本明細書中に後述する「MpGDH」、「MjGDH」および「McGDH」は、特に断りの無い限り、精製酵素をいう。
本発明に用いるフラビン結合型GDHが利用する電子受容体は、特に限定されず、例えば、血糖値測定に用いるために好適な試薬成分として公知の任意の電子受容体を用いることができる。
本発明に用いるフラビン結合型GDHが利用する補酵素は、フラビン化合物であることを特徴とする。フラビン化合物には、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)等が挙げられる。
本発明に用いるフラビン結合型GDHとして好ましい酵素の例としては、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で測定したときに、タンパク質のポリペプチド鎖部分の分子量が約80kDaであるフラビン結合型GDHが挙げられる。なお、本発明に用いるフラビン結合型GDHには糖鎖が結合していると考えられ、糖鎖を除去する操作を行わない場合、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で測定した際の分子量はこれより大きめに測定される傾向を有する。
本発明に用いるフラビン結合型GDHとして好ましい酵素の例としては、D−グルコースに対するKm値が26〜33mMであるフラビン結合型GDHが挙げられる。
(フラビン結合型GDHの作用原理および活性測定法)
本発明に用いるフラビン結合型GDHは、電子受容体存在下でグルコースの水酸基を酸化してグルコノ−δ−ラクトンを生成する反応を触媒する。
したがって、この原理を利用して、例えば、電子受容体としてフェナジンメトサルフェート(PMS)および2,6−ジクロロインドフェノール(DCIP)を用いた以下の測定系により、本発明に用いるフラビン結合型GDHの活性を測定することができる。

(反応1) D−グルコ−ス + PMS(酸化型)
→ D−グルコノ−δ−ラクトン + PMS(還元型)
(反応2) PMS(還元型) + DCIP(酸化型)
→ PMS + DCIP(還元型)
まず、(反応1)において、グルコースの酸化に伴いPMS(還元型)が生成する。続いて進行する(反応2)により、PMSの酸化と共にDCIPが還元されるため、酸化型DCIPの消失を600nmの波長の吸光度変化量から測定することができる。
具体的には、フラビン結合型GDHの活性は、以下の手順に従って測定する。100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 1.79mL、1.25M D−グルコース溶液 0.08mLおよび20mM DCIP溶液 0.01mLを混合し、37℃で5分間保温する。次いで、20mM PMS溶液 0.02mLおよび酵素サンプル溶液0.1mLを添加し、反応を開始する。反応開始時、および、経時的な吸光度を測定し、酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量(ΔA600)を求め、次式に従いフラビン結合型GDH活性を算出する。この際、フラビン結合型GDH活性は、37℃において濃度50mMのD−グルコース存在下で1分間に1μmolのDCIPを還元する酵素量を1Uと定義する。
なお、式中の2.0は反応試薬+酵素試薬の液量(mL)、16.3は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm/μmol)、0.1は酵素溶液の液量(mL)、1.0はセルの光路長(cm)、ΔA600blankは10mM 酢酸緩衝液を酵素サンプル溶液の代わりに添加して反応開始した場合の600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量、dfは希釈倍数を表す。
(フラビン結合型GDHの由来)
上記の特徴を有し、本発明に用いるフラビン結合型GDHは、ケカビ亜門、好ましくは、ケカビ綱、より好ましくは、ケカビ目、さらに好ましくは、ケカビ科に分類される微生物から得ることができる。ケカビ亜門、好ましくは、ケカビ綱、より好ましくは、ケカビ目、さらに好ましくは、ケカビ科に分類される微生物としては、例えば、ムコール(Mucor)属、アブシジア(Absidia)属、アクチノムコール(Actinomucor)属等が挙げられる。Mucor属に分類される微生物であって、本発明に用いるフラビン結合型GDHを生産する具体的な好ましい微生物の例としては、ムコール・プライニ(Mucor prainii)、ムコール・ジャバニカス(Mucor javanicus)もしくはムコール・シルシネロイデス・f・シルシネロイデス(Mucor circinelloides f. circinelloides)が挙げられる。より具体的には、Mucor prainii NISL0103、Mucor javanicus NISL0111もしくはMucor circinelloides f. circinelloides NISL0117が挙げられる。Absidia属に分類される微生物であって、本発明に用いるフラビン結合型GDHを生産する具体的な好ましい微生物の例としては、アブシジア・シリンドロスポラ(Absidia cylindrospora)、アブシジア・ヒアロスポラ(Absidia hyalospora)を挙げることができる。より具体的には、Absidia cylindrospora NISL0211、Absidia hyalospora NISL0218を挙げることができる。Actinomucor属に分類される微生物であって、本発明に用いるフラビン結合型GDHを生産する具体的な好ましい微生物の例としては、アクチノムコール・エレガンス(Actinomucor elegans)を挙げることができる。より具体的には、Actinomucor elegans NISL9082を挙げることができる。なお、上記の菌株はNISL(財団法人 野田産業科学研究所)の保管菌株であり、所定の手続きを経ることにより、分譲を受けることができる。
本発明に用いるフラビン結合型GDHは、上述の通り、「ケカビ亜門、好ましくは、ケカビ綱、より好ましくは、ケカビ目、さらに好ましくは、ケカビ科に分類される微生物に由来し、上述の各種性質を具備するフラビン結合型GDH」である。さらにまた、それらのフラビン結合型GDH生産微生物から公知の遺伝子工学的手法によって取得したフラビン結合型GDHをコードする遺伝子を利用し、必要によりそれを一部改変して、適当な宿主微生物に各種公知の手法により導入して生産された組換えフラビン結合型GDHもまた、本発明に用いる「ケカビ亜門、好ましくは、ケカビ綱、より好ましくは、ケカビ目、さらに好ましくは、ケカビ科に分類される微生物に由来し、上述の各種性質を具備するフラビン結合型GDH」に含まれる。同様に、「Mucor属に分類される微生物」、あるいは、特定の生産微生物菌株名を記載したフラビン結合型GDHについても、各々に由来する遺伝子情報を元に取得される、上述の各種性質を具備するフラビン結合型GDHをも本発明に包含する。
(フラビン結合型GDHのアミノ酸配列)
本発明に用いるフラビン結合型GDHは、配列番号1又は配列番号3で示されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と85%以上相同なアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有することを特徴とする。配列番号1又は配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するフラビン結合型GDHは、上述の各種の性質を有する。また、配列番号1又は配列番号3で示されるアミノ酸配列と85%以上の相同性、好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、配列番号1又は配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するフラビン結合型GDHと同様な諸性質を有するGDHも、本発明のフラビン結合型GDHに含まれる。
(フラビン結合型GDHをコードする遺伝子配列)
本発明に用いるフラビン結合型GDHをコードする遺伝子とは、配列番号1又は配列番号3で示されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と85%以上相同なアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するフラビン結合型GDHをコードするDNAをいう。または、本発明に用いるフラビン結合型GDHをコードする遺伝子とは、配列番号2又は配列番号4で示される塩基配列からなるDNAをいう。あるいは、本発明に用いるフラビン結合型GDHをコードする遺伝子とは、配列番号2又は配列番号4で示される塩基配列と85%以上の相同性、好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列を有し、且つフラビン結合型GDH酵素活性をもつタンパク質をコードするDNAをいう。
(フラビン結合型GDHをコードする遺伝子配列を含むベクター、形質転換体)
本発明に用いるフラビン結合型GDHをコードする遺伝子は、適当な公知の各種ベクター中に挿入することができる。さらに、このベクターを適当な公知の各宿主に導入して、フラビン結合型GDH遺伝子を含む組換え体DNAが導入されている形質転換体を作製することができる。これらの遺伝子の取得方法や、遺伝子配列、アミノ酸配列情報の取得方法、各種ベクターの製造方法や形質転換体の作製方法は、当業者にとって公知であり、一例を後述する。
フラビン結合型GDHを生産する微生物からフラビン結合型GDH遺伝子を取得するには、通常一般的に用いられている遺伝子のクローニング方法が用いられる。例えば、フラビン結合型GDH生産能を有する微生物菌体や種々の細胞から常法、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (WILEY Interscience,1989)記載の方法により、染色体DNAまたはmRNAを抽出することができる。さらにmRNAを鋳型としてcDNAを合成することができる。このようにして得られた染色体DNAまたはcDNAを用いて、染色体DNAまたはcDNAのライブラリーを作製することができる。
次いで、フラビン結合型GDHのアミノ酸配列に基づき、適当なプローブDNAを合成して、これを用いて染色体DNAまたはcDNAのライブラリーからスクリーニングする方法、あるいは、上記アミノ酸配列に基づき、適当なプライマーDNAを作製して、5’RACE法や3’RACE法などの適当なポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)により、目的の遺伝子断片を含むDNAを増幅させ、これらを連結させて全長の目的遺伝子を含むDNAを得ることができる。
このようにして得られたフラビン結合型GDHをコードする遺伝子の好ましい一例として、Mucor属由来のフラビン結合型GDH遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子は、常法通り各種ベクターに連結されていることが、取扱い上好ましく、例えば、単離したMucor属由来のフラビン結合型GDHをコードする遺伝子を含む組換え体プラスミドを作製し、そこから例えば、QIAGEN(キアゲン社製)を用いることにより、抽出、精製して得ることができる。本発明において用いることのできるベクターDNAとしては、例えば、プラスミドベクターDNA、バクテリオファージベクターDNA等を用いることができる。具体的には、例えば、pBluescriptII SK+ (STRATAGENE社製)等が好ましい。
上記方法により得られたフラビン結合型GDH遺伝子の塩基配列の決定・確認は、例えば、マルチキャピラリーDNA解析システムCEQ2000(ベックマン・コールター社製)等を用いることにより行い得る。
得られたフラビン結合型GDH遺伝子は、常法により、形質転換または形質導入することができる。具体的には、例えば、相同組換えやトランスポゾンを利用することにより宿主の染色体上に直接的に挿入する手法、及びプラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、人工染色体等のベクター上に連結することにより宿主内に導入する手法などが挙げられる。
また、上記挿入遺伝子には、形質転換された細胞を選択することを可能にするためのマーカー遺伝子が含まれていてもよい。マーカー遺伝子としては、例えば、URA3、TRP1のような、宿主の栄養要求性を相補する遺伝子等が挙げられる。また、挿入遺伝子は、宿主細胞中で本発明の遺伝子を発現することのできるプロモーター又はその他の制御配列(例えば、エンハンサー配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列等)を含むことが望ましい。プロモーターとしては、具体的には、例えば、GAL1プロモーター、ADH1プロモーター等が挙げられる。
(本発明の形質転換体に使用する宿主)
本発明の形質転換体における宿主の例としては、酵母が挙げられる。酵母に分類される微生物としては、例えば、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、カンジダ(Candida)属などに属する酵母が挙げられる。これらの属に分類される微生物であって、本発明に用いるフラビン結合型GDHを生産する具体的な好ましい微生物としては、チゴサッカロマイセス・ルキシー(Zygosaccharomyces rouxii)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)等が挙げられる。より具体的には、Zygosaccharomyces rouxii IFO1876が挙げられる。
(酵母の形質転換)
本発明では宿主として酵母を用いる。酵母への形質転換方法としては、公知の方法、例えば、酢酸リチウムを用いる方法(Methods Mol. Cell. Biol., 5, 255−269(1995))やエレクトロポレーション(J Microbiol Methods 55 (2003)481−484)等を好適に用いることができるが、これに限定されず、スフェロプラスト法やガラスビーズ法等を含む各種任意の手法を用いて形質転換を行えば良い。
(フラビン結合型GDHの製造)
上記の形質転換により得られる形質転換体を用いて、フラビン結合型GDHを製造する。具体的には、上記の形質転換により得られる酵母形質転換体を培養し、該培養物よりフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを取得することができる。
ある有用なタンパク質をコードする遺伝子を異種の宿主に導入することによって生産させる技術は、理論的には公知である。しかしながら、実際には、どのような遺伝子を、どのような異種宿主にどのように導入するかによって、その効果の度合いは一律ではなく、異種宿主へ導入しようとしても導入自体うまくいかないか、異種宿主での発現がうまくいかないことは多くある。すなわち、個々の物質生産において、具体的にどのような遺伝子を、どのような宿主にどのように導入した場合に効率的な製造が可能となるかを見出すことは容易とはいいがたく、効率的な製造を実現し得る遺伝子、宿主、導入方法等の組み合わせを見出すことは、産業上非常に有用である。
本発明の酵母形質転換体を培養することにより、本発明に用いるフラビン結合型GDHの由来微生物(すなわち、ケカビ)を培養して製造を行う場合と比較して、格段に効率の良い酵素の製造を実現できる。具体的には、培養後の菌体内、あるいは菌体外において確認される酵素発現量がより多くなる。さらに、宿主によっては、発現された酵素の分泌パターンが変化し、効率的な製造が行えるようになる。例えば、Mucor属由来のフラビン結合型GDH遺伝子を含む遺伝子発現カセットを用いてチゴサッカロマイセス属の酵母を形質転換して得られる酵母形質転換体を酵母形質転換体を培養することにより生産されるフラビン結合型GDHは、そのほとんどが菌体外に分泌されるようになる。このように、菌体外に目的酵素が分泌生産されるようになることによって酵素の精製工程が非常に効率化されることは、より好ましい本発明の効果である。
例えば、本発明に使用する各種ケカビ由来のフラビン結合型GDHは、本来の由来微生物を培養した場合にはその生産量は十分とはいいがたく、より大スケールでの菌体培養が必要となるとともに、培養した菌体から酵素を抽出するための付加的な工程を必要とすることになる。
(酵母形質転換体の培養)
本発明の酵母形質転換体の培養は、Saccharomyces cerevisiaeの培養において広く用いられているYPD(バクトペプトン 2%,バクトイースト・エクストラクト 1%,グルコース 2%)液体培地を好適に用いることができると考えられるが、その他にも、添加することにより本発明に用いるフラビン結合型GDHの製造量を向上させることができる栄養源や成分があれば、単独で、あるいは組み合わせて用いてもよい。
培地に使用する炭素源としては、同化可能な炭素化合物であればよく、例えばグルコース、デンプン加水分解物、グリセリン、フラクトース、糖蜜などが挙げられる。窒素源としては、利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、コーンスチープリカー、大豆粉、マルツエキス、アミノ酸、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどが挙げられる。無機物としては、例えば、食塩、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸第1鉄、リン酸第1カリウム、リン酸第2カリウム、炭酸ナトリウム、塩化カルシウムなどの種々の塩が挙げられる。その他、必要に応じてビタミン類、消泡剤などを添加してもよい。
培養条件は、培養する微生物により異なっても良いが、例えば、培地の初発pHは、pH5〜10に調整し、培養温度は、20〜40℃、培養時間は、15〜25時間、1〜2日間、あるいは10〜50時間等、適宜設定することができ、通気撹拌深部培養、振盪培養、静地培養などにより実施する。例えば、チゴサッカロマイセス属の酵母を培養する場合の培地および培養条件の一例として、バクトペプトン 2%,バクトイースト・エクストラクト 1%,グルコース 2%の培地を用いた、30℃、200rpmで24時間の振盪が挙げられる。なお、本発明に使用するGDHの本来の生産微生物であるケカビ亜門の微生物を原株のまま培養する場合の培地および培養条件の一例としては、イーストエキス2.0%、グルコース4%、pH6.0の培地を用いた、30℃、130rpmで2〜5日間、3〜5日間等の振盪が挙げられる。本発明の酵母形質転換体を用い、使用する形質転換体によって培養条件を最適化することにより達成される培養時間の短縮や酵素生産量の増加は、より効率的な酵素製造に貢献することとなる。
培養終了後、該培養物あるいは培養菌体内部からフラビン結合型GDHを採取するには、通常の酵素の採取手段を用いることができる。上記酵素が菌体内に存在する場合には、培養物から、例えば、濾過、遠心分離などの操作により菌体を分離し、この菌体から酵素を採取するのが好ましい。例えば、超音波破砕機、フレンチプレス、ダイノミルなどの、通常の破壊手段を用いて菌体を破壊する方法、リゾチームなどの細胞壁溶解酵素を用いて菌体細胞壁を溶解する方法、トリトンX−100などの界面活性剤を用いて菌体から酵素を抽出する方法などを単独または組み合わせて採用することができる。上記酵素が菌体外に存在する場合には、濾過、遠心分離などの操作により菌体を分離し、上清を回収すればよい。
次いで、濾過または遠心分離などにより不溶物を取りのぞき、酵素抽出液を得る。得られた抽出液から、フラビン結合型GDHを、必要に応じて単離、精製するには、必要により核酸を除去したのち、これに硫酸アンモニウム、アルコール、アセトンなどを添加して分画し、沈殿物を採取する。さらに精製度の高い酵素標品を得るには、例えば、セファデックス、ウルトラゲルもしくはバイオゲルなどを用いるゲル濾過法、イオン交換体、ヒドロキシアパタイトなどを用いる吸着溶出法、アフィニティクロマト法、分子ふるい膜もしくは中空糸膜などを用いる分画法などを適宜選択し、またこれらを組み合わせて実施する。
本発明に使用するフラビン結合型GDHは、公知の遺伝子組換え手法を用いて遺伝子配列およびアミノ酸配列の一部を欠失、置換、付加および/または挿入により改変したものであってもよい。このように所望の特性を付与させたフラビン結合型GDHについても、本発明の酵母形質転換体を用いて効率よく製造することが可能である。
上記のような方法で製造されたフラビン結合型GDHは、夾雑糖化合物の存在下においても正確にグルコース量を測定できることから、グルコースセンサなどへの応用・実用化に好適に用いることができる。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。
(ケカビ由来のフラビン結合型GDHの取得)
1.GDH生産菌のスクリーニング
自然界から分離した菌株および微生物保存機関((財)野田産業科学研究所)から分与された保存菌約500株から、GDH生産菌のスクリーニングを行った。マルツエキス培地(マルツエキス2.0%、D−グルコース2.0%、ポリペプトン0.1%、pH6.0)3mlに供試菌株をそれぞれ接種し、3〜5日、30℃で振とう培養した。この培養液を800×g、10分間遠心分離して菌体を沈殿として得た。その後、この菌体を10mM 酢酸緩衝液(pH5.0)中に懸濁し、ビーズショッカー(安井器械(株)製)により菌体を破砕(2,000rpm、60秒、16回)し、4℃、20,000×g、10分間の遠心によって回収された上清を粗酵素液とした。
2.GDH活性の確認
以下の手順に従って各溶液を混合し、吸光度を測定して、粗酵素液中のGDH活性を調べた。100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 1.79mL、1.25M D−グルコース溶液 0.08mLおよび20mM DCIP溶液 0.01mLを混合し、37℃で5分間保温後、20mM PMS溶液 0.02mLおよび酵素サンプル溶液0.1mLを添加し、反応を開始した。反応開始時から酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量(ΔA600)を測定し、次式に従いGDH活性を算出した。この際、GDH活性は、37℃において濃度50mMのD−グルコ−ス存在下で1分間に1μmolのDCIPを還元する酵素量を1Uと定義した。
なお、式中の2.0は反応試薬+酵素試薬の液量(mL)、16.3は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm/μmol)、0.1は酵素溶液の液量(mL)、1.0はセルの光路長(cm)、ΔA600blankは10mM 酢酸緩衝液を酵素サンプル溶液の代わりに添加して反応開始した場合の600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量、dfは希釈倍数を表す。
各菌株の粗酵素液について、上記活性測定法に基づいてGDH活性の有無を調べた結果を表1に示す。
その結果、Mucor prainii NISL0103、Mucor javanicus NISL0107、Mucor javanicus NISL0108、Mucor javanicus NISL0111、Mucor javanicus NISL0112、Mucor javanicus NISL0115、Mucor circinelloides f. circinelloides NISL0116、Mucor circinelloides f. circinelloides NISL0117、Mucor hiemalis f. silvaticus NISL0118、Absidia cylindrospora NISL0211、Absidia hyalospora NISL0218、Actinomucor elegans NISL9082由来の粗酵素液中にGDH活性が検出された。
(ケカビ由来フラビン結合型GDHの精製)
前培養用培地(イーストエキス 2.0 %、グルコース 4%、pH6.0)0.1Lを0.5L容坂口フラスコに入れ、予めプレート培地上で培養したMucor prainii NISL0103、Mucor javanicus NISL0111、Mucor circinelloides f. circinelloides NISL0117を、約1cm分それぞれ接種し、30℃、130rpmで2日間回転振とう培養した。これを種培養として、30L容ジャーファメンターに入れた上記培地20Lに0.2Lずつ接種し(ジャーファメンター2基)、30℃、200rpm、0.5vvmで3日間培養した。培養終了後、培養液40Lをろ布でろ過し、菌体を回収した。次いで、得られた菌体を10mM 酢酸緩衝液(pH5.0)に懸濁した。
上記の菌体懸濁液を、ダイノミルに送液(150ml/分)して破砕し、6,000×gで30分遠心して上清を回収した。この上清を分画分子量6,000の中空糸膜AIP2013(旭化成ケミカルズ社製)を用いて濃縮し、濃縮後の酵素液に硫酸アンモニウムを70%飽和となるよう徐々に添加し、余分な蛋白質を沈殿させた。一晩、4℃で放置後、遠心分離(20,000×g、60分)により上清を回収した。
この上清を、緩衝液A(10mM 酢酸緩衝液、2M 硫酸アンモニウム、pH5.0)にて予め平衡化したブチルトヨパール650C(東ソー社製)カラム(26φ×28.5cm)にかけ、緩衝液Aから緩衝液B(10mM 酢酸緩衝液、pH5.0)のリニアグラジエントによって溶出させた。溶出された活性画分をセントリコンプラス−70(ミリポア社製)で濃縮後、緩衝液C(10mM 酢酸緩衝液、pH4.5)で透析し、予め緩衝液Cで平衡化したSPセファロースFastFlow(GEヘルスケア社製)カラム(26φ×28.5cm)にかけ、緩衝液Cから緩衝液D(10mM 酢酸緩衝液、200mM 塩化カリウム、pH4.5)のリニアグラジエントで溶出させた。溶出された活性画分を濃縮し、精製酵素を得た。
以降、各精製酵素について、Mucor prainii NISL0103由来のGDHをMpGDH、Mucor javanicus NISL0111由来のGDHをMjGDH、Mucor circinelloides f. circinelloides NISL0117由来のGDHをMcGDHと表記する。
(Mucor属由来フラビン結合型GDHの酵素化学的性質の検討)
実施例2により得られた各精製GDHの諸性質を調べた。
(a)吸収スペクトルの測定
MpGDH、MjGDHおよびMcGDHを10mM 酢酸緩衝液(pH5.0)で透析し、250−800nmにおける吸収スペクトルを分光光度計U−3010(日立ハイテクノロジーズ社製)により測定した。測定結果を図1に示す(図1(A)はMpGDHの吸収スペクトル、図1(B)はMjGDHの吸収スペクトル、図1(C)はMcGDHの吸収スペクトルを示す)。いずれのGDHについても、波長340〜350nm付近および波長420〜430nm付近に極大を示す2つのピークが確認され、このような吸収スペクトルの形状がフラビン酵素に特有の形状であることから、本発明のGDHがフラビン結合型タンパク質であることが強く示唆された。
(b)GOD活性の測定
実施例2により得られたMpGDH、MjGDHおよびMcGDHと、Aspergillus niger由来の市販のグルコースオキシダーゼ(GOD、biozyme laboratories社製)を用いて、GDH活性およびGOD活性を測定した。結果を表2に示す。
GDH活性は、実施例1の方法に準じ、GOD活性は、4−アミノアンチピリン(4−AA)、およびN−エチルーN−(2−ヒドロキシー3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOOS)を使用した以下の方法で測定した。100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 30.0mL、833mM D−グルコース溶液 6.0mL、25mM 4−AA溶液 0.3mL、40mM TOOS溶液 0.3mLおよび500U/mL POD溶液 0.3mLを混合後、3.0mLを試験管に移し、37℃で5分間保温後、酵素サンプル溶液0.1mLを添加して反応を開始した。酵素反応の進行に伴う555nmにおける吸光度の1分間あたりの増加量(ΔA555)を測定し、次式に従ってGOD活性を算出した。この際、GOD活性は、37℃において濃度131mMのD−グルコース存在下で1分間に1μmolのHを生成する酵素量を1Uと定義した。
なお、式中の3.1は反応試薬+酵素試薬の液量(mL)、32.8は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm/μmol)、0.5は1分子のHが還元されるときに生じるキノンイミン染料の分子数、0.1は酵素溶液の液量(mL)、1.0はセルの光路長(cm)、ΔA555blankは10mM 酢酸緩衝液を酵素サンプル溶液の代わりに添加して反応開始した場合の555nmにおける吸光度の1分間あたりの増加量、dfは希釈倍数を表す。
表2に示す通り、MpGDH、MjGDHおよびMcGDHはいずれも全くGOD活性を示さず、専らGDH活性を示した。一方、GODは主としてGOD活性を示すが、GDH活性も併せ持つことが判明した。すなわち、本発明のGDHは酸素を電子受容体として利用しないため、D−グルコースを定量する際に反応系の溶存酸素の影響を極めて受けにくいことが示された。
(c)至適pH
上記のフラビン結合型GDHにおける至適pHを調べた。結果を図2に示す(図2(A)はMpGDH、(B)はMjGDH、(C)はMcGDHの結果を示す)。具体的には、100mM 酢酸カリウム緩衝液(pH5.0−5.5、図中△印でプロット)、100mM MES−NaOH緩衝液(pH5.5−6.5、図中斜め四角印でプロット)、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0−8.0、図中丸印でプロット)、100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5−9.0、図中×印でプロット)を用い、それぞれのpHにおいて、温度37℃にて酵素反応を行い、相対活性を比較した。
その結果、上記のフラビン結合型GDHはいずれも、pH6.5もしくはpH7.0において最も高い活性を示し、pH7.0付近に至適pHを有していた。個別にみると、MpGDHおよびMcGDHの相対活性が最も高かったのはpH7.0においてであり、その周辺域として、pH6.5−7.5の範囲で最大相対活性値の80%以上を示したことから、この範囲で好適に使用できると考えられた。また、MjGDHの相対活性が最も高かったのはpH6.5においてであり、その周辺域として、pH6.0−7.0の範囲で最大相対活性値の80%以上を示したことから、この範囲で好適に使用できると考えられた。
(d)至適温度範囲
実施例1記載の活性測定法に準じ、種々の温度にて本酵素の活性測定を行った。具体的には、100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 1.79mL、1.25M D−グルコース溶液 0.08mLおよび20mM DCIP溶液 0.01mLを混合し、37℃で保温する代わりに各温度で5分間保温後、20mM PMS溶液 0.02mLおよび酵素サンプル溶液0.1mLを添加し、各温度にて反応を開始した。反応開始時、および、2分後の吸光度を測定し、酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量を求めた。結果を図3に示す(図3(A)はMpGDH、(B)はMjGDH、(C)はMcGDHの結果を示す)。いずれも37℃付近で最大の活性を示し、最大活性に対して80%以上の活性を示す温度範囲は30〜40℃であった。以上より、本発明のフラビン結合型GDHの至適温度範囲は、30〜40℃、最も好ましい温度は37℃であると考えられた。
(e)D−グルコースに対するKm値
前記活性測定法において、基質であるD−グルコース濃度を変化させて活性測定を行い、ラインウェーバー・バークプロットから、ミカエリス定数(Km)を求めた。この結果、D−グルコースに対するKm値は、MpGDHで31.1mM、MjGDHで26.4mM、McGDHで33.2mMであった。
(f)熱安定性
100mM 酢酸カリウム緩衝液(pH5.0)を用いて、本発明のフラビン結合型GDHを各温度で15分間処理した時の熱安定性の結果を図4に示す(図4(A)はMpGDH、(B)はMjGDH、(C)はMcGDHの結果を示す)。本発明のフラビン結合型GDHは、40℃、15分間の熱処理後に80%以上の残存活性を有しており、約40℃まで安定であることがわかった。
(g)安定pHの範囲
次いでこれらのフラビン結合型GDHにおける安定pHを調べた。結果を図5に示す(図5(A)はMpGDH、(B)はMjGDH、(C)はMcGDHの結果を示す)。具体的には、100mM グリシン−HCl緩衝液(pH2.5−3.5、図中四角印でプロット)、100mM 酢酸カリウム緩衝液(pH3.5−5.5、図中△印でプロット)、100mM MES−NaOH緩衝液(pH5.5−6.5、図中斜め四角印でプロット)、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0−8.0、図中丸印でプロット)、100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5−9.0、図中×印でプロット)を用い、それぞれのpHにおいて25℃で16時間処理した後、フラビン結合型GDHの残存活性をそれぞれ測定した。その結果、いずれも、最大の残存活性を示したpH5.0付近での活性に対し80%以上の活性を示すpH範囲はpH3.5−7.0であった。以上から、これらのフラビン結合型GDHの安定pH範囲はpH3.5−7.0であることが判った。
(h)分子量
スーパーセップエース 10〜20%(和光純薬工業社製)を用いたSDS−ポリアクリルアミド電気泳動によりMpGDH、MjGDHおよびMcGDHの分子量を求めた。また、脱糖鎖キット(Enzymatic Deglycosylation Kit、PZM製)を用いて、各フラビン結合型GDHを脱糖鎖処理し、同様に電気泳動に供した。結果を図6に示す。泳動サンプルは以下の通りである。
レーン1:分子量マーカー(New England Biolabs社製、Protein Ladder(10−250kDa),上から250kDa、150kDa、100kDa、80kDa、60kDa、50kDa、40kDa、30kDa、25kDa、20kDa、15kDa)
レーン2:MpGDH
レーン3:脱糖鎖処理後のMpGDH
レーン4:MjGDH
レーン5:脱糖鎖処理後のMjGDH
レーン6:McGDH
レーン7:脱糖鎖処理後のMcGDH
レーン8:脱糖鎖反応に使用した酵素
図6より、これらのフラビン結合型GDHの分子量は、MpGDHで約90〜130kDa、MjGDHで約100〜150kDa、McGDHで約130〜200kDaであり、脱糖鎖キット(Enzymatic Deglycosylation Kit、PZM製)により糖鎖を除去した後の分子量はMpGDH、MjGDHおよびMcGDHいずれも約80kDaであった。
(i)基質特異性
実施例1の酵素活性測定方法に準じ、基質としてはD−グルコース、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロース、マンノース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、マルトテトラオースをそれぞれ用いて、各基質に対するフラビン結合型GDHの活性を測定した。基質濃度は50mMとした。結果を表3に示す。
その結果、これらのフラビン結合型GDHは、D−グルコースに対する活性を100%とした場合に、各種の糖化合物に対し、いずれも反応性が非常に低いことが判明した。そして、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロースに対する活性は、いずれも、2%以下であった。
(j)1,10−フェナントロリンによる阻害効果
これらのフラビン結合型GDHの活性に対する1,10−フェナントロリンの阻害効果を、以下の方法で調べた。実施例1の酵素活性の測定方法に準じ、ただし、終濃度が1mM、5mM、10mM、25mMおよび50mMとなるように1,10−フェナントロリンを添加した場合の酵素活性を求め、1,10−フェナントロリン無添加の阻害率を0%として、その阻害率を計算した。結果を表4に示す。
本発明のフラビン結合型GDHに対する1,10−フェナントロリンの阻害効果は低く、1mMの1,10−フェナントロリン添加では2〜4%程度の阻害効果が認められるに過ぎず、5mMの添加でも阻害率は10%程度であった。
(ケカビ由来フラビン結合型GDHを用いたグルコース濃度の定量性の検証1)
上述のフラビン結合型GDHを用いて、グルコースの測定を行った。具体的には、100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 1.79mL、D−グルコース溶液(250、750、1,250、1,750、2,500、3,250、4,000、5,000mg/dL) 0.08mLおよび20mM DCIP溶液 0.01mLを混合し、37℃で5分間保温後、20mM PMS溶液 0.02mLおよび0.8U/mL GDH溶液0.1mLを添加し、反応を開始した。酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量(ΔA600)とグルコースの終濃度の関係を図7に示す(図7(A)はMpGDHを用いた測定結果、(B)はMjGDHを用いた測定結果、(C)はMcGDHを用いた測定結果を示す)。
図7に示す通り、ケカビ由来のフラビン結合型GDHを用いることにより、終濃度200mg/dL以下のグルコース濃度であれば、測定試料中のグルコース濃度を精度良く測定できることが確認された。
(ケカビ由来のフラビン結合型GDHを用いたグルコース濃度の定量性の検証2)
100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 1.77mL、D−グルコース溶液(10,000、16,000mg/dL) 0.02mLおよび20mM DCIP溶液 0.01mLを混合した。続いて、マルトース溶液(3,000、6,000、9,000、12,000、15,000mg/dL)もしくはD−ガラクトース溶液(1,500、3,000、4,500、6,000、7,500mg/dL)もしくはD−キシロース溶液(1,000、2,000、3,000、4,000、5,000mg/dL) 0.08mLを添加して37℃で5分間保温した後、20mM PMS溶液 0.02mLおよび2.0U/mL GDH溶液0.1mLを添加し、反応を開始した。酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量(ΔA600)、およびグルコースの終濃度の関係を表5〜7に示す。
表5〜7より、ケカビ由来のこれらのGDHは、終濃度600mg/dL以下のマルトース、または、終濃度300mg/dL以下のD−ガラクトース、あるいは終濃度200mg/dL以下のD−キシロースを含有するサンプルのグルコース濃度を精度良く定量できることが示された。
(フラビン結合型GDHを用いたグルコース濃度の定量性の検証3)
100mM リン酸緩衝液(pH7.0) 1.61mL、D−グルコース溶液(10,000、16,000mg/dL) 0.02mLおよび20mM DCIP溶液 0.01mLを混合した。続いて、マルトース溶液(3,000、6,000、9,000、12,000、15,000mg/dL)、D−ガラクトース溶液(1,500、3,000、4,500、6,000、7,500mg/dL)およびD−キシロース溶液(1,000、2,000、3,000、4,000、5,000mg/dL) をそれぞれ0.08mL添加して37℃で5分間保温した後、20mM PMS溶液 0.02mLおよび2.0U/mL のフラビン結合型GDH溶液0.1mLを添加し、反応を開始した。酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量(ΔA600)とグルコースの終濃度の関係を表8〜9に示した。
表8〜9より、MpGDHまたはMjGDHは、終濃度600mg/dL以下のマルトース、終濃度300mg/dL以下のD−ガラクトースおよび終濃度200mg/dL以下のD−キシロースを含有する試料中のグルコース濃度を、極めて精度良く定量できることが示された。
(Mucor属由来フラビン結合型GDH遺伝子のクローニングと酵母形質転換体の作製)
(1)mRNAの調製
Mucor prainii NISL0103をマルツエキス培地(マルツエキス 2.0%、グルコース 4.0%、ポリペプトン 0.1%、pH6.0)3mLに接種し、2日、30℃で振とう培養した。この培養液を濾紙濾過し、菌糸体を回収した。得られた菌糸を液体窒素中で凍結させ、乳鉢を用いて菌糸を粉砕した。次いで、ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いて、本キットのプロトコールに従って、粉砕した菌体からmRNAを得た。
(2)GDH部分アミノ酸配列の決定
実施例2より得られたMpGDHをスーパーセップエース 10−20%(和光純薬工業社製)に供し、電気泳動を行った。電気泳動後のゲルをQuick−CBB(和光純薬工業社製)を用いて染色し、当該酵素の分子量に相当するバンド部分を切り出した。切り出したゲル断片を外部機関に委託し、その中に含まれるタンパク質の内部アミノ酸配列情報を取得した。その結果、得られたアミノ酸配列は、LVENFTPPTPAQIE(配列番号5)およびIRNSTDEWANYY(配列番号6)であった。
(3)GDH遺伝子配列の決定
上記の部分アミノ酸配列情報に基づき、ミックス塩基を含有するディジェネレートプライマー(プライマーの一例を配列番号7(フォワードプライマー)、配列番号8(リバースプライマー)に示す)を作製した。なお、配列番号7および8に記載の1文字表記において、混合塩基はそれぞれ、h=a+c+t、r=a+g、y=c+t、d=a+g+tを表す。上記(1)にて調製したMucor prainii NISL0103のmRNAをテンプレートとし、PrimeScript RT−PCR Kit(タカラバイオ社製)を用いて、本キットのプロトコールに従ってRT−PCRを行った。逆転写反応には本キット付属のオリゴdTプライマーを、PCRによるcDNA増幅には配列番号7、8に示すディジェネレートプライマーを用いた。反応液をアガロースゲル電気泳動に供したところ、800bp程度の長さに相当するシングルバンドが確認された。このバンドに含まれる増幅DNA断片を精製し、Ligation Convenient Kit(ニッポンジーン社製)を用いて、pT7Blue(ノバジェン社製)に前記増幅DNA断片をライゲーションすることにより、組換えプラスミドpTMGD−1を構築した。
次いで、得られたpTMGD−1を用い、公知のヒートショック法により大腸菌JM109コンピテントセル(ニッポンジーン社製)を形質転換した。得られた形質転換体からGenElute Plasmid Miniprep Kit(シグマ社製)を用いてプラスミドを抽出・精製し、プラスミド中に含まれる前記増幅DNA断片の塩基配列を決定した(767bp)。
得られた前記増幅DNA断片の配列情報を元に、3’−Full RACE Core Set(タカラバイオ社製)を用いて3’側のGDH遺伝子未知領域を、また、5’−Full RACE Core Set(タカラバイオ社製)を用いて5’側のGDH遺伝子未知領域を決定した。いずれも各キットのプロトコールに従い、3’−Full RACE Core Setでは本キット付属の3サイトアダプタープライマーおよび配列番号9に示すプライマーを用い、また、5’−Full RACE Core Setでは配列番号10、11、12、13、14に示すプライマーをそれぞれ用いた。前記の方法に従って得られた複数のプラスミド中に含まれるDNA断片の塩基配列解析を行った結果、配列番号2および配列番号4に示す全鎖長1926bpのMucor prainii NISL0103由来GDH遺伝子配列が明らかとなった。当該遺伝子配列により予測した当該酵素遺伝子のアミノ酸配列を配列番号1および配列番号3に示す。
(4)酵母形質転換体の作製、酵母形質転換体の培養、およびGDH活性の確認
Double−joint PCR(Fungal Genetics and Biology,2004年,第41巻,p973−981)を行い、5’アーム領域〜URA5遺伝子(ウラシル栄養要求性マーカー)〜TDH1プロモーター〜GDH遺伝子〜3’アーム領域をタンデムに連結した遺伝子発現カセットを構築した。なお5’アーム領域、及び3’アーム領域とは、Zygosaccharomyces rouxii IFO1876におけるTDH1遺伝子の上流、及び下流のそれぞれ約1kbの領域である。これをエレクトロポレーションによってZygosaccharomyces rouxii IFO1876のコンピテントセルに対して形質転換を行った。なお、エレクトロポレーションはJ Microbiol Methods 55 (2003)481−484の報告と同様に実施した。ここで得られた菌体を最小培地のプレートにスプレッドし、ウラシル非要求性を指標として酵母形質転換体を取得した。
前記のGDH遺伝子発現カセットが挿入された本発明の酵母形質転換体、および、GDH遺伝子発現カセットが挿入されていないコントロール株を、それぞれ1白金耳、YPD液体培地(バクトペプトン 2%,バクトイースト・エクストラクト 1%,グルコース 2%)1mLを含む試験管に植菌し、30℃、200rpmの条件で24時間前培養を行った。この前培養液を、YPD液体培地50mLを含む300mL容バッフル付き三角フラスコに1%(v/v)となるようそれぞれ植菌し、30℃、200rpmの条件で24時間旋回培養を行った。
得られた培養液を50mL容ファルコンチューブに移し、4℃、8,000×g、5分間の条件で遠心分離を行うことで菌体と培養上清を分離し、各々に含まれるGDH活性を測定した。具体的には、得られた菌体を50mLの10mM 酢酸緩衝液(pH5.0)に再懸濁し、この溶液をマルチビーズショッカー(安井器械社製)により2,000rpm、60秒×8回の菌体破砕を行い、14,000rpm、30分間の遠心分離後、得られた上清画分の酵素活性を測定して「菌体内GDH」の活性とした。また、培養上清中の培地成分を除去する目的で培養上清をPD−10カラム(GE Healthcare社製、スウェーデン)にかけ、10mM 酢酸緩衝液(pH5.0)にて溶出して得られたGDH画分の酵素活性を測定して「菌体外GDH」の活性とした。
(5)本発明の酵母形質転換体によるGDHの生産
前述の酵素活性測定法により測定を行った結果、「菌体内GDH」の活性は4.6U/mL、「菌体外GDH」の活性は27.6U/mLであった。すなわち、本発明の形質転換体を培養した場合は、生産されるGDHの大半は培養上清中に分泌されることが確認された。そして、このことは、本発明のGDHにおいて、Mucor由来のシグナル配列が異種の宿主である酵母内においても機能し、しかもむしろ本来の由来微生物により達成されるよりも効率良くGDHを培養上清中に分泌させることができたことを意味する。一般には、シグナル配列の機能は、そのタンパク質を生産する宿主に限定的であることが多く、ある宿主において効果的なシグナル配列が異種の宿主に同様の効果を奏することはほとんどないことから、この結果は全く予期せぬ効果であった。
上述の通り、本発明の酵母形質転換体の培養上清からは、植菌後24時間の培養後で27.6U/mLのフラビン結合型GDHが確認されている。また、このGDHは培養上清中にほぼシングルバンドの純度で存在するため、非常に効率的に精製工程を行うことができる。一方、実施例1の表1記載の通り、Mucor属やAbsidia属、Actinomucor属等のケカビ由来の本来のGDH生産微生物を培養して得られる酵素の生産量は、0.001U/mL未満か、0.1〜0.2U/mLのものが多く、最大でも0.714U/mLというレベルにとどまっていた。すなわち、本発明の酵母形質転換体を用いることによって、培養液あたり40〜200倍以上の酵素活性を得ることができ、より小さい設備で効率よく製造を行うことができるようになる。さらには、これら本来のGDH生産微生物の培養工程には、3〜5日という長期間培養工程と、遠心分離で菌体を取得し菌体破砕(酵素抽出)を行う工程、さらに、再度遠心分離して粗酵素液を調製するという工程が含まれるが、本発明の酵母形質転換体を用いることによって、培養日数および、菌体破砕(酵素抽出)工程を大幅に短縮することができるようになり、効率的な製造が可能となる。
(6)本発明の酵母形質転換体が生産するGDHの分子量と糖鎖の付加状態
本発明の酵母形質転換体の培養上清をMicrocon YM−50(Millipore社製、米国)を用いて50倍濃縮し、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動(スーパーセップエース10〜20%、和光純薬工業社製)に供した。泳動サンプルは以下の通りである。結果を図8に示す。
レーン1:分子量マーカー(New England Biolabs社製、Protein Ladder(10〜250kDa),上から250kDa、150kDa、100kDa、80kDa、60kDa、50kDa、40kDa、30kDa)
レーン2:コントロール株の培養上清(50倍濃縮サンプル)
レーン3:本発明の酵母形質転換体の培養上清(50倍濃縮サンプル)
図8の通り、本発明の酵母形質転換体の培養上清中には、コントロール株の培養上清からは検出されないバンドが検出された。このバンドは本発明のGDHに相当し、分子量にして約200kDaを中心付近とし、バンドの上端から下端は分子量にして約150〜250kDaに及ぶ幅広のシングルバンドである。このような幅広のバンドの様子からは、このタンパク質に多量の糖鎖が付加されていることが強く示唆される。
なお、本発明に用いるGDHの本来の由来微生物であるケカビが生産するGDHにおいても、このような糖鎖の付加が認められており、図6に示す通り、GDHから糖鎖を外す処理を行う前後で、検出されるバンドの分子量の変化が確認されている。糖鎖を外す前のケカビ由来GDHは、微生物の種類によって若干の幅を有するが、バンドの幅の中心付近に相当する分子量にして約100〜150kDaであり、実施例7に記載の酵母形質転換体に用いられたMpGDHの場合は、約100kDaである。一方、このMpGDHの遺伝子情報を利用して作製した本発明の酵母形質転換体の培養上清中に認められるGDHは、糖鎖を外す前の分子量が、バンドの幅の中心付近に相当する分子量として約200kDaであり、本来の由来微生物中で発現する場合の約2倍に増加していることがわかる。
より具体的な糖鎖の付加状況の詳細については、各種公知の分析方法を用いることにより明らかになるであろうが、上述の分子量変化からも容易に推察されるように、本発明の酵母形質転換体を用いることにより、ケカビ由来GDHと同じポリペプチド配列を有するGDHでありながら、糖鎖の付加状態が大きく異なる新規なGDHを製造することができることがわかった。そして、本発明のGDHにおけるこのような糖鎖の付加状態の変化がGDHの酵素としての性質に顕著な変化をもたらすことにより、実用性に一層優れたGDHを提供することが可能となることは、全く予期せぬ効果であった。
(7)本発明の酵母形質転換体が生産するGDHの諸性質
実施例3に準じて、本発明の酵母形質転換体の培養上清から取得された本発明のフラビン結合型GDHにおける至適pH、至適温度範囲、熱安定性、安定pHの範囲、基質特異性等の諸性質を調べた。その結果、本発明の酵母形質転換体が生産する本発明のフラビン結合型GDHは、特にその熱安定性において、ケカビ由来GDHの熱安定性よりも優れていることが確認された。その結果を図9に示す。
図4に示す通り、本来の由来微生物であるケカビによって生産されるGDHは、35℃まではほとんど失活せず、40℃、15分間の処理で80%以上の残存活性を有することを特徴とする。そして、45℃、15分間の処理では残存活性が40〜60%となり、50℃、15分間の処理により、3種のうち2種では完全に失活し、最も耐熱性の高い1種でも約40%まで低下した。そして、55℃以上の熱処理に供した場合は、いずれも完全に失活した。
これに対し、図9に示す通り、本発明の酵母形質転換体の培養上清から取得された本発明のフラビン結合型GDHでは、40℃、15分間の処理ではほぼ100%の活性が残存剤していた。さらに、45℃、15分間の処理でも残存活性が80%を超えており、50℃、15分間の処理でも50%以上、ほぼ60%に近い残存活性が確認された。さらに、ケカビにおいて生産させたものでは15分間の熱処理により完全に失活していた55℃以の熱処理に供した場合においても、約10%の残存活性が確認された。
図10の黒丸のプロットは、本発明の酵母形質転換体により生産されるGDHを50℃での熱処理に供した際の、熱処理時間と残存活性との関係を示す。この結果、本発明の酵母形質転換体により生産されるGDHは、50℃での熱処理を30分間行っても、20%を超える活性が残存していることがわかる。このような熱安定性は、本来の由来微生物が生産するGDHと比較して、顕著に優れている。本来のケカビで生産されるGDHでは達成できなかったこのように高い耐熱性が、酵母形質転換体を用いることにより獲得されるという本発明の知見は、製造・流通時に非常に有利であるとともに、酵素の使用時においても、より広範な温度範囲での用途が可能となるという点で非常に優れた新規な酵素を提供でき、GDHの付加価値を高めることに寄与する。
なお、耐熱性以外のその他の性質においては、本発明の酵母形質転換体の培養上清から取得された本発明のフラビン結合型GDHは、実施例2により得られた精製GDHと同様の性質を有していることが確認された。
(8)麹菌を宿主とする形質転換体が生産するGDHの耐熱性に関する比較検討
本発明においては、宿主として酵母を用いているが、比較のため、酵母以外の宿主を用いて同様に形質転換体を作製し、得られるGDHの耐熱性を比較を行った。比較用の宿主としては、本来の由来微生物と同じカビの一種である麹菌(Aspergillus属)を用いた。
具体的には、Double−joint PCR(Fungal Genetics and Biology,2004年,第41巻,p973−981)を行い、5’アーム領域〜PyrG遺伝子(ウラシル栄養要求性マーカー)〜TEF1プロモーター遺伝子〜フラビン結合型GDH遺伝子〜3’アーム領域から成るカセットを構築し、Aspergillus sojae K.K.1-2株を宿主に、プロトプラスト−PEG法により形質転換を行った。得られた菌株の中から目的の麹菌形質転換体を、PCRで確認して選抜した。
次いで、0.8%散水した小麦ふすまを150mL三角フラスコに5g取り、綿栓をして121℃、50分オートクレーブ滅菌したものに対し、上記の麹菌形質転換体の分生子懸濁液を、1×10/g麹となるように植菌し、30℃、64時間培養した。コントロール株としては、形質転換をしていない麹菌宿主を用いた。
培養後のふすま麹2gに対し、5倍量の10mM 酢酸緩衝液(pH5.0)を加え、ポリトロンホモジナイザーPT3000(キネマチカ社製)で30秒×8回破砕を行った。破砕後、14,000rpm、30分間遠心分離を行い、得られた上清画分を粗酵素液とした。前述の酵素活性測定法により、この粗酵素液中のGDH活性を測定したところ、コントロール株を用いて得られた粗酵素液中のGDH活性は0.3U/mLであったのに対し、麹菌形質転換体を用いて得られた粗酵素液中のGDH活性は14.0U/mLであり、麹菌形質転換体において本発明のフラビン結合型GDHが発現されていることが確認された。
実施例2に準じて得られた上記の麹菌形質転換体により生産されたケカビ由来精製フラビン結合型GDHを、上述の(6)の方法に準じてSDS−ポリアクリルアミド電気泳動に供した。泳動サンプルは以下の通りである。結果を図11に示す。なお、レーン2および3のサンプルは、別の形質転換体により生産されたGDHである。
レーン1:分子量マーカー(New England Biolabs社製、Protein Ladder(10−250kDa),上から250kDa、150kDa、100kDa、80kDa、60kDa、50kDa、40kDa、30kDa)
レーン2、3:得られた麹菌形質転換体により生産されたGDH
図10の通り、麹菌形質転換体により生産されるケカビ由来GDHは、分子量にして約90kDaを中心付近とし、バンドの上端から下端は分子量にして約80〜100kDaに及ぶ幅広のシングルバンドである。
図6、図8、および図11のバンドを比較した場合、麹菌形質転換体により生産されるケカビ由来GDHの分子量は、本来の由来微生物であるケカビにより生産されるGDHの分子量に非常に近く、一方、本発明の酵母形質転換体により生産されるケカビ由来GDHの分子量とは大きく異なっていることがわかる。すなわち、このことから推察して、麹菌形質転換体により生産されるケカビ由来GDHにおける糖鎖の付加状態は、本来の由来微生物であるケカビにより生産されるGDHにおける糖鎖の付加状態に近く、一方、本発明の酵母形質転換体により生産されるケカビ由来GDHの糖鎖の付加状態とは大きく異なっていることが強く示唆された。
実際に、この麹菌形質転換体により生産されるケカビ由来GDHの耐熱性データを図10に示す。図10の白三角のプロットは、麹菌形質転換体により生産されるGDHを50℃での熱処理に供した際の、熱処理時間と残存活性との関係を示す。この結果、麹菌形質転換体により生産されるGDHは、50℃での熱処理を15分間行うことにより、残存活性が20%未満に低下した。また、30分間の処理では、残存活性が10%未満に低下した。この熱安定性は、本来の由来微生物が生産するGDHと比較して格別向上していないどころか、むしろ低下傾向を示しているとも思われる。
すなわち、ケカビ由来のGDH遺伝子を各種の宿主に導入した場合において、本来の酵素の性質を保持した状態で活性を容易に発現できるとは限らず、まして、本来の酵素の性質よりも優れた状態の酵素として活性を発現させるということは容易に実現できないことである。本発明の酵母形質転換体を用いることによりこれが実現できるという知見は、製造・流通時に非常に有用で、かつ、広範な温度範囲での用途が可能である新規な酵素を提供できるという点で非常に有意義であり、より付加価値の高いGDHの提供に寄与する。
麹菌形質転換体により生産されるケカビ由来GDHの熱安定性は、本発明の酵母形質転換対により生産されるGDHの熱安定性よりは、図6に示されている本来の由来微生物であるケカビにより生産されるGDHの熱安定性に比較的近いことが認められる。そして、この結果からは各GDHにおける糖鎖の付加状況と熱安定性の類似性と相関を有することが示唆される。すなわち、本発明の酵母形質転換体により生産されるGDHには多量の糖鎖が付加しており、このことにより、本来の由来微生物であるケカビにより生産されるGDHが有し得なかった高い耐熱性を獲得するに至ったのではないかという可能性が推察される。
溶存酸素の影響を受けにくく、試料中にグルコース以外の糖化合物が存在する場合でも、グルコース量を正確に測定できるとともに耐熱性に優れたフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを効率的に製造できる。

Claims (6)

  1. 配列番号1または配列番号3で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列と90%以上同一なアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、
    以下の(i)から(iv)の性質:
    (i)作用:電子受容体存在下でグルコース脱水素酵素活性を示す、
    (ii)分子量:タンパク質のポリペプチド鎖部分の分子量が80kDaである、
    (iii)基質特異性:D−グルコースに対する反応性に対して、マルトース、及びD−ガラクトース、及びD−キシロースに対する反応性が2%以下である、
    (iv)50℃、15分間の熱処理において50%以上の残存活性を有する、
    を備える、フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  2. フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼがケカビ亜門、ケカビ綱、ケカビ目、又はケカビ科に分類される微生物に由来し、酵母を宿主として発現されることを特徴とする請求項記載のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ。
  3. 配列番号1または配列番号3で示されるアミノ酸配列、または該アミノ酸配列と90%以上同一なアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼをコードするフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子を酵母に導入して得られる酵母形質転換体。
  4. 酵母がチゴサッカロマイセス属、サッカロマイセス属、ピキア属、カンジダ属に属する、請求項記載の酵母形質転換体。
  5. 請求項3又は4記載の酵母形質転換体を培養し、該培養物よりフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを採取することを特徴とする、フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法。
  6. 以下の(A)〜(E)からなる群より選択されるいずれかのDNAからなるフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子:
    (A)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードするDNA;
    (B)配列番号2で示される塩基配列からなるDNA;
    (C)配列番号3で示されるアミノ酸配列をコードするDNA;
    (D)配列番号4で示される塩基配列からなるDNA;
    (E)配列番号2又は配列番号4で示される塩基配列と90%以上同一な塩基配列、
    を有し、かつフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ酵素活性をもつタンパク質をコードするDNAが導入されている酵母形質転換体を培養し、該培養物よりフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼを採取することを特徴とする、フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法。
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