そこで本発明は、固定フード部が成形により一体的に形成された構成において、雄ネジ部を高精度に成形することが容易であって、しかも、竿本体への取付作業も容易な釣竿用リールシート及び釣竿を提供することを課題としている。
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る釣竿用リールシートは、竿本体に外装される筒状のリールシート本体を備え、該リールシート本体は、リール脚を支持するための脚支持面部と、リール脚の一端部を覆うための固定フード部と、リール脚の他端部を覆うための可動フード体を竿軸方向にスライド移動させるためのナットが螺合可能な雄ネジ部とを備えている釣竿用リールシートであって、リールシート本体は、脚支持面部の少なくとも一部と固定フード部とが一つの部材を構成すべく成形により一体的に形成されたフード筒体と、成形により形成されてその外周面に雄ネジ部が形成されたネジ筒体とが、別部材の分割構成とされ、且つ、リールシート本体は、フード筒体とネジ筒体を連結するための連結部として筒状の連結用内筒部を備えており、ネジ筒体は、フード筒体とは反対側に位置して外周面に雄ネジ部が形成されたネジ領域と、フード筒体側に位置して外周面に雄ネジ部が形成されていない非ネジ領域とに区画され、連結用内筒部はネジ領域の内側に進入することなく非ネジ領域の内側に重なり合うことを特徴とする。
該構成の釣竿用リールシートにあっては、固定フード部を有するフード筒体と雄ネジ部を有するネジ筒体とが別部材の構成とされているので、ネジ筒体における肉厚差を小さくすることが容易であってネジ筒体を高精度に成形することができる。また、フード筒体において固定フード部と脚支持面部の少なくとも一部が成形により一体的に形成されているので、固定フード部の内側に差し込まれたリール脚の一端部を脚支持面部と共にしっかりと安定して保持することができる。そして、リールシート本体がフード筒体とネジ筒体とを連結するための連結部を備えているので、フード筒体とネジ筒体を連結部によって予め連結させておくことができ、連結された状態のフード体とネジ筒体を竿本体に外装することができる。即ち、フード体とネジ筒体とが別部材とされた分割構成であっても、リールシート本体が一つの部材からなる一体構成の場合と同様に容易に竿本体にリールシートを外装することができる。また、竿本体に装着する前に予めフード体とネジ筒体を連結部で連結させておくことができるので、フード体とネジ筒体との間の竿軸方向の位置決めや周方向の位置決めを容易且つ正確に行うことができる。
特に、連結部は筒状の連結用内筒部であって、該連結用内筒部はネジ筒体の内側に所定長さ挿入されて内外重ね合わせられることが好ましい。筒状の連結用内筒部をネジ筒体の内側に挿入させて連結用内筒部とネジ筒体とを内外重ね合わせる構成とすると、リールシート本体を竿本体に接着固定するための接着剤が、ネジ筒体のフード筒体側の端部から外側に実質上はみ出さなくなるので、その箇所における接着剤の除去作業が不要になり、リールシートの竿本体への取付作業が容易になる。尚、この場合、連結用内筒部はフード筒体の一部を構成すべく成形により一体的に形成された構成であってもよいし、フード筒体とは別部材の構成とされていてもよい。
更に、ネジ筒体は、フード筒体とは反対側に位置して外周面に雄ネジ部が形成されたネジ領域と、フード筒体側に位置して外周面に雄ネジ部が形成されていない非ネジ領域とに区画され、連結用内筒部はネジ領域の内側に進入することなく非ネジ領域の内側に重なり合うことが好ましい。非ネジ領域には雄ネジ部が形成されていないので、雄ネジ部のネジ山の高さ分だけネジ領域に比して肉厚には余裕がある。従って、ネジ領域の内側まで連結用内筒部を進入させることなく、非ネジ領域の内側に連結用内筒部を重ね合わせることで、ネジ筒体の肉厚を全体として薄肉化することができ、ネジ筒体を容易に小径化することができる。
また、連結用内筒部とネジ筒体には、ネジ筒体の内側において互いの周方向の位置決めを行うべく竿軸方向に係合する位置決め用係合部がそれぞれ形成されていることが好ましい。連結用内筒部とネジ筒体に位置決め用係合部が形成されているので、連結用内筒部とネジ筒体との間の周方向の位置決めを容易に行うことができ、従って、フード筒体とネジ筒体との間の周方向の位置決めを容易に行うことができる。そして、ネジ筒体に対して連結用内筒部が周方向に位置ずれすることも確実に防止され、ネジ筒体と連結用内筒部との間の周方向の固定力を強化することができる。しかも、ネジ筒体の位置決め用係合部はネジ筒体の内側に形成されていて連結用内筒部の位置決め用係合部とネジ筒体の内側において係合するので、位置決め用係合部が外部に露出せず、良好な外観デザインが得られる。
その場合特に、ネジ筒体の内周面は、フード筒体とは反対側に位置する小径部と、フード筒体側に位置して小径部よりも大径に形成された大径部とから構成され、連結用内筒部の位置決め用係合部は凹状であってネジ筒体の位置決め用係合部は凸状であり、小径部の全周のうちの一部を大径部側に延長することによりネジ筒体の位置決め用係合部が形成されていることが好ましい。ネジ筒体の内周面の小径部と大径部との間の径差を利用してネジ筒体の位置決め用係合部を形成することにより、容易にネジ筒体の位置決め用係合部を形成できる。
一方、連結部は筒状の連結用内筒部であって、該連結用内筒部はフード筒体の内側に所定長さ挿入されて内外重ね合わせられることもまた好ましい。この構成では、フード筒体のネジ筒体側の端部から接着剤が外側に実質上はみ出さなくなるので、その箇所における接着剤の除去作業が不要になり、竿本体への取付作業が容易になる。尚、この場合、連結用内筒部はネジ筒体の一部を構成すべく成形により一体的に形成された構成であってもよいし、ネジ筒体とは別部材の構成とされていてもよい。
また、連結用内筒部とフード筒体には、フード筒体の内側において互いの周方向の位置決めを行うべく竿軸方向に係合する位置決め用係合部がそれぞれ形成されていることも好ましい。連結用内筒部とフード筒体に位置決め用係合部が形成されているので、連結用内筒部とフード筒体との間の周方向の位置決めを容易に行うことができ、従って、フード筒体とネジ筒体との間の周方向の位置決めを容易に行うことができる。そして、フード筒体に対して連結用内筒部が周方向に位置ずれすることも確実に防止され、フード筒体と連結用内筒部との間の周方向の固定力を強化することができる。しかも、フード筒体の位置決め用係合部はフード筒体の内側に形成されていて連結用内筒部の位置決め用係合部とフード筒体の内側において係合するので、位置決め用係合部が外部に露出せず、良好な外観デザインが得られる。
特に、フード筒体における脚支持面部には内外方向に貫通する貫通孔が形成され、該貫通孔を介して連結用内筒部が表出することが好ましい。例えば連結用内筒部の材質をフード筒体のそれとは異なるものとしたり、連結用内筒部の外周面の色や表面粗さ、質感等をフード筒体の脚支持面部のそれらとは異なるものとすれば、貫通孔を介して材質等の異なる連結用内筒部が表出することで、フード筒体と連結用内筒部とが別部材であるという特性を効果的に利用した良好なデザインが得られる。
また一方、リールシート本体は、フード筒体及びネジ筒体とは別部材として構成された連結部としての連結パイプを備え、該連結パイプの一端側所定領域がフード筒体の内側に挿入されて内外重ね合わせられると共に連結パイプの他端側所定領域がネジ筒体の内側に挿入されて内外重ね合わせられることにより、フード筒体とネジ筒体が連結パイプを介して連結され、該連結状態において連結パイプの外周面の一部が外部に表出することも好ましい。このように別部材として連結パイプを備える場合においては、その連結パイプをフード筒体やネジ筒体とは異なる材質としたり、外周面の色や表面粗さ、質感等を異なるものとすることができ、連結状態で連結パイプの外周面の一部を外部に表出させることで、別部材構成の連結パイプをデザインとしても有効に活用することができる。
その場合特に、連結状態において、フード筒体とネジ筒体は互いに竿軸方向に離間してその間の間隙から連結パイプが表出することが好ましい。その連結状態において、フード筒体とネジ筒体との間の間隙から連結パイプが表出することで、別部材構成の連結パイプをデザインとしても有効に活用することができ、特に、フード筒体とネジ筒体が別部材の分割構成であるという構成上の特徴がデザイン的にも強調されることになり、良好なデザインを容易に得ることができる。尚、フード筒体の内周面とネジ筒体の内周面のうち少なくとも一方には連結パイプの挿入停止位置を定めるべく連結パイプの所定箇所が当接するストッパー部が形成されていることが好ましく、ストッパー部を設けることにより連結パイプとフード筒体あるいはネジ筒体との間の竿軸方向の位置決めが容易となる。
尚、連結パイプは径一定のストレートパイプであることが好ましく、汎用のパイプを使用することも可能となって製造コストを容易に削減できる。また、カーボンプリプレグ等の各種の強化繊維プリプレグを筒状に焼成したものも使用でき、例えば、他の釣竿用のブランクを流用することもできる。
また、本発明に係る釣竿は上記釣竿用リールシートを備えたものである。
以上のように、ネジ筒体をフード筒体とは別部材の構成とすることで、雄ネジ部を高精度に成形することが容易になり、滑らかなナットの回転操作フィールやしっかりとした締め付け力が得られる。また、リールシート本体の連結部によってフード筒体とネジ筒体とを竿本体への装着前に予め連結させておくことができるので、竿本体への取付作業も容易になる。
以下、本発明の一実施形態に係る釣竿用リールシートについて図1乃至図9を参酌しつつ説明する。釣竿用リールシート(以下、単に「リールシート」という。)は、釣竿にリールを固定するためのものであって、図示しない釣竿の竿本体(ブランク)に装着されて使用される。該リールシートは、いわゆるパイプシートとも称され、全体として筒状のものであって竿本体に外装される。具体的には、リールシートは竿本体の外周面に接着により固定される。
本実施形態におけるリールシートは主として両軸リールを取り付けるためのものであって、使用状態ではリールが釣竿の上側に位置する。従って、リール脚90が載置されてそのリール脚90を内側(リール脚90の裏側)から支持する脚支持面部10は、使用状態において上向きとなる。尚、周方向のうち脚支持面部10が存在している側を正面側とし、それとは反対側を背面側とする。
リールシートは、竿本体に外装されてその内周面が竿本体の外周面に接着固定される筒状のリールシート本体1と、該リールシート本体1に外装されて竿軸方向にスライド移動可能な図示しない筒状の可動フード体と、該可動フード体をスライド移動させるための図示しないナットとを備えている。リールシート本体1の竿軸方向一端側の所定箇所にはリール脚90の一端部90aを保持するための固定フード部22が形成されており、リールシート本体1の竿軸方向他端側の外周面にはナットが螺合するための雄ネジ部31が形成されている。尚、リールシートを竿本体に装着する前後の向きは任意であるが、本実施形態では、竿軸方向一端側が竿尻側となり、竿軸方向他端側が竿先側となるようにして竿本体に装着される。従って、固定フード部22が竿尻側に位置し、可動フード体及びナットが竿先側に位置することになる。以下の説明では、説明の都合上、竿軸方向一端側を後側、竿軸方向他端側を前側として説明する。
可動フード体は、リール脚90の他端部90bを外側から覆ってそれを保持するためのものであって、固定フード部22と可動フード体は脚支持面部10の竿軸方向の両側、即ち前後両側に対峙する。可動フード体は、ナットの後側に位置していてナットに相対回転可能に係止され、リールシート本体1のスライド溝34に竿軸方向にスライド可能に係合している。ナットを回転させると可動フード体は回転することなくナットと共に竿軸方向に移動する。従って、ナットを一方向に回転させて可動フード体を後側に移動させて固定フード部22に接近させると、リール脚90の両端部90a,90bは固定フード部22と可動フード体によって竿軸方向に狭持されると共に脚支持面部10に押し付けられて固定される。逆に、ナットを他方向に回転させて可動フード体を前側に移動させて固定フード部22から離すと、リール脚90の固定状態が解除されてリールを釣竿から取り外すことができる。
また、リールシート本体1の後部外周面には径一定のストレート部23が形成されており、該ストレート部23の外側には、図3に二点鎖線で示す如く、発泡EVA等のグリップ用素材からなるシートグリップ5が装着固定される。尚、シートグリップ5の背面には径方向外側に突出したトリガ5aが形成されており、該トリガ5aの前側に例えば人差し指を引っ掛けるようにしてシートグリップ5を把持することができる。
リールシート本体1は、図4に示しているように、三つの部材から構成されている。即ち、フード筒体2と、ネジ筒体3と、フード筒体2とネジ筒体3とを竿軸方向に連結するための連結パイプ4とから構成されている。尚、図1、図2、図4において、連結パイプ4の外周面には多数のドットを付して表している。
連結パイプ4は、図5のように薄肉の径一定のストレートパイプであって、その長さはリールシート本体1の内周面の全長よりも短い。従って、連結パイプ4の内周面はリールシート本体1の内周面の全長のうちの一部を構成する。また、本実施形態においてはリールシート本体1の内周面を竿本体の外周面にスペーサを介することなく直接接着固定するため、連結パイプ4の内径は竿本体の外径に略等しい。
連結パイプ4の両端部にはそれぞれ位置決め用係合部としての切欠部40が形成されている。該切欠部40は、連結パイプ4の端部における周方向の所定箇所を肉厚全体を切り欠くようにして形成されている。即ち、切欠部40は、連結パイプ4の端面に開口し、その連結パイプ4の端面から竿軸方向に所定長さ延びている。切欠部40の形状は例えば矩形であって、特には竿軸方向に長い長方形である。この切欠部40が両端部にそれぞれ一箇所ずつ形成され、両端部の切欠部40は互いに周方向の同一箇所(同一直線上)に位置している。かかる連結パイプ4は、切欠部40が背面側となるようにして組み立てられる。
連結パイプ4の材質は任意であって種々の汎用品を流用することも可能であるが、フード筒体2やネジ筒体3に使用されている材質とは異なる材質のものを使用したり、少なくとも外周面がフード筒体2やネジ筒体3と異なる色や表面粗さ、素材感であったりすることが好ましい。本実施形態では、竿本体と同様にカーボンプリプレグ等の各種の強化繊維プリプレグから筒状に加熱焼成されたものを所定長さにカットして使用している。
フード筒体2は、合成樹脂から成形により形成された成形品であって、両端開口の筒状である。正面側にはリール脚90を内側から支持する脚支持面部10の主要部20が形成されている。尚、フード筒体2に脚支持面部10の全体を形成するようにしてもよいが、本実施形態では脚支持面部10の大部分を形成するようにしていて、脚支持面部10の残る残部30についてはネジ筒体3に形成するようにしている。そして、脚支持面部10には内外方向に貫通する貫通孔21が形成されており、該貫通孔21は竿軸方向に長い形状となっている。
該脚支持面部10の主要部20の後側には固定フード部22が一体的に形成されており、固定フード部22とその内側に位置する脚支持面部10の主要部20とから、前側に開口する開口部が形成され、該開口部からリール脚90の一端部90aが後側に向けて挿入される。また、フード筒体2の後部外周面には上述した径一定のストレート部23が形成されている。該ストレート部23の竿軸方向の長さは、正面側において短く背面側において長い。
フード筒体2の内周面は、全長に亘って径一定であって竿本体の外周面よりも大きく、具体的には連結パイプ4の略肉厚分だけ大きい。即ち、フード筒体2の内側には全長に亘って連結パイプ4が挿入されて内外重なり合った二重構造とされる。
フード筒体2の内周面には位置決め用係合部としての係合凸部24が形成されている。該係合凸部24は、連結パイプ4とフード筒体2との周方向の位置決めを行うためのものであって、連結パイプ4の切欠部40と竿軸方向に係合するものである。具体的には、係合凸部24はフード筒体2の内周面の後端部に形成されており、連結パイプ4の切欠部40を埋めるようにそれに対応した形状とされていて、フード筒体2の後端から前側に向けて竿軸方向に所定長さ延びて形成されている。該係合凸部24はフード筒体2の内周面に径方向内側に向けて所定厚さで突出している。係合凸部24の突出量(厚さ)は、連結パイプ4の肉厚と略等しいか、あるいは、その肉厚よりも小さくするが、連結パイプ4の肉厚と略等しくすることが好ましい。連結パイプ4の肉厚と略等しくする場合には、係合凸部24の先端面を連結パイプ4の内周面の一部を構成すべく周方向に湾曲した曲面とすることが好ましい。係合凸部24の形成箇所は周方向の何れの箇所であってもよくその個数も任意でよいが、本実施形態では背面側の位置に一箇所形成されており、固定フード部22や脚支持面部10が形成された角度位置とは180度反対側の角度位置に位置している。
連結パイプ4はフード筒体2に前側から挿入される。そして、連結パイプ4の一端がフード筒体2の後端と略一致するまで挿入される。連結パイプ4はフード筒体2の全長よりも長く、従って、連結パイプ4の他端側所定領域(前部)がフード筒体2から前側に突出した状態となる。連結パイプ4の挿入停止位置は、連結パイプ4の一端がフード筒体2の後端と一致する位置としてもよいし、連結パイプ4の切欠部40の奥側の壁面がフード筒体2の係合凸部24の前端の壁面に当接する位置としてもよい。前者の場合、例えば、ストッパー用の別途の部材を準備して、その部材にフード筒体2の後端を当接させ、更に連結パイプ4の一端がその部材に当接するまで挿入する。後者の場合、フード筒体2の係合凸部24に連結パイプ4の切欠部40の奥側の壁面が当接するまで連結パイプ4を挿入することになる。従って、後者の場合には、フード筒体2の係合凸部24が、連結パイプ4の挿入停止位置を定めるべく連結パイプ4の所定箇所が当接するストッパー部としても機能する。
ネジ筒体3は、フード筒体2とは別部材の構成であって、合成樹脂から成形により形成された成形品であり、両端開口の筒状である。ネジ筒体3は、外周面に雄ネジ部31が形成されたネジ領域32と雄ネジ部31が形成されていない非ネジ領域33とに区画され、フード筒体2とは反対側である前側に非ネジ領域33が形成され、フード筒体2側である後側にネジ領域32が形成されている。ネジ領域32はネジ筒体3の半分以上の長さを占める主要部分である。
ネジ領域32には、雄ネジ部31を部分的に切り欠くようにしてスライド溝34が竿軸方向に直線状に延びて形成されている。該スライド溝34の数や配置は任意であるが、本実施形態では周方向に90度毎に合計四箇所形成されており、正面、背面、及び両側面の合計四箇所である。四本のスライド溝34のうち一本は長く、他の三本は同一長さである。即ち、四本のスライド溝34は何れもネジ領域32の全長に亘って形成されているが、そのうちの三本のスライド溝34aは、ネジ領域32の後端部(非ネジ領域33側の端部)で止まっており、従って、その長さはネジ領域32の全長と同じである。残る一本のスライド溝34bは、ネジ領域32を越えて非ネジ領域33の竿軸方向中途部まで所定長さ延設されており、従ってその延設長さ分だけ他の三本のスライド溝34aよりも長くなっている。そして、その長いスライド溝34bは背面に位置している。このように背面のスライド溝34bを後側に向けて長く延ばして形成することにより、可動フード体の背面側の竿軸方向の寸法を正面側の竿軸方向の寸法よりも後側(固定フード部22側)に向けて長く形成することができる。
非ネジ領域33の外周面は径一定に形成されている。尚、非ネジ領域33の前端部は竿軸方向に対して直交しているが、非ネジ領域33の後端部、即ち、ネジ筒体3の後端の開口端面は竿軸方向に対して直交しておらず周方向に沿って竿軸方向に凹凸を有する形状となっている。より詳細には、ネジ筒体3の後端の開口端面は、正面及び背面においてそれぞれ凹状となっていて、正面及び背面から両側面に向かって徐々に凸状となっている。尚、ネジ筒体3の後端の開口端面における正面の凹形状は、図2のように、フード筒体2の脚支持面部10の主要部20が前側に向けて突出しているその凸形状を受け入れることができるようにその凸形状に対応した凹形状とされている。尚、ネジ筒体3の後端の開口端面において両側面の部分を後側に向けて突出させることにより、正面及び背面を凹形状としても、連結パイプ4との重合長さを確保することができる。また、非ネジ領域33の正面側の一部分が脚支持面部10の残部30を構成する。従って、脚支持面部10はフード筒体2の主要部20とネジ筒体3の非ネジ領域33の正面に位置する残部30とから構成される。但し、このように脚支持面部10がフード筒体2とネジ筒体3とに分割された構成とするのではなく、フード筒体2のみに設けられる構成としてもよい。
また、ネジ筒体3の内周面は径一定ではなく相対的に径の小さい小径部35と相対的に径の大きい大径部36とを有している。小径部35は前側にあって、該小径部35よりも大径である大径部36は後側にある。小径部35と大径部36との間には段差部37が形成されている。小径部35はネジ筒体3の内周面の半分以上の長さを有しており、残りの部分が大径部36となっている。より詳細には、小径部35は少なくともネジ領域32の全長に亘って形成されており、本実施形態ではネジ領域32の全長よりも若干長く、非ネジ領域33側に僅かに延長されて形成されている。従って、大径部36は非ネジ領域33の全長よりも僅かに短い。
そして、小径部35と大径部36との間の段差部37によって、大径部36は小径部35に対して一段大径となっており、その大径部36に連結パイプ4が挿入される。従って、大径部36は連結パイプ4の外径と略同一径であり、また、小径部35と大径部36との間の径差である段差部37は、連結パイプ4の肉厚と略等しい。即ち、小径部35は竿本体の外径と略同一径であり、連結パイプ4の内径と小径部35とは略同一径となっていて、連結パイプ4が大径部36に挿入されると、連結パイプ4の内周面と小径部35とが略面一となって一つの連続した内周面を構成する。換言すれば、ネジ筒体3の小径部35はリールシート本体1の内周面の一部を構成し、ネジ筒体3の小径部35と連結パイプ4の内周面とからリールシート本体1の内周面が構成されることになる。尚、連結パイプ4の端部が段差部37に当接することによりそれ以上の連結パイプ4の進入が阻止されることになる。従って、段差部37は、連結パイプ4の挿入停止位置を定めるためのストッパー部として機能する。
また、ネジ筒体3の内周面にも位置決め用係合部としての係合凸部38が形成されている。該係合凸部38は、連結パイプ4とネジ筒体3との周方向の位置決めを行うためのものであって、連結パイプ4の切欠部40と竿軸方向に係合するものである。係合凸部38の形状については上述したフード筒体2の係合凸部24と同様であって、その突出量及び先端面の形状についても同様である。かかるネジ筒体3の係合凸部38は、連結パイプ4の切欠部40に対応して一箇所形成されており、具体的には、背面に一箇所形成されている。また、係合凸部38は小径部35と大径部36との間の段差部37から大径部36側に向けて延設されており、小径部35の全周のうちの一部を大径部36側に延長することにより形成されている。従って、係合凸部38の先端面と小径部35の内周面は連続している。
尚、上述したように背面のスライド溝34bは、ネジ領域32を越えて非ネジ領域33の竿軸方向中途部まで延設されているが、該背面のスライド溝34bは係合凸部38に対応した外周面の位置に形成されている。係合凸部38を形成することによってその部分における肉厚は局所的に大きくなる。この局所的に肉厚となる部分を利用して、その外周面の位置に背面のスライド溝34bを形成して、その背面のスライド溝34bを非ネジ領域33側に延長している。従って、係合凸部38の幅(周方向の長さ)は背面のスライド溝34bの幅よりも幅広とし、そのスライド溝34bの後端部は係合凸部38の後端部よりも前側に位置させる。
以上のように、本実施形態におけるリールシート本体1は3ピース構造となっているのであるが、竿本体に装着する前にそれらを予め組み立てておくことができる。即ち、連結パイプ4をフード筒体2とネジ筒体3のうちの何れか一方に挿入し合体させた上で、連結パイプ4の突出する部分を他方に挿入するのであり、フード筒体2とネジ筒体3のうちの何れを先に連結パイプ4と合体させるかは任意であるが、一例としてフード筒体2と連結パイプ4を先に合体させる場合について説明する。まず、図9(a)のように、フード筒体2の他端側である前側から連結パイプ4の一端側をフード筒体2の内側に挿入させる。その場合、連結パイプ4の切欠部40が背面側となるようにして挿入させて、その切欠部40をフード筒体2の係合凸部24に係合させる。これにより、フード筒体2と連結パイプ4との間の周方向の位置決めを行うことができる。フード筒体2と連結パイプ4は接着剤によって固定する。
このようにフード筒体2に連結パイプ4を合体させると、連結パイプ4の他端側所定領域がフード筒体2から前側に突出することになる。そこで次に、図9(b)のように、フード筒体2から前側に突出している連結パイプ4の他端側所定領域をネジ筒体3の後端開口から挿入して両者を合体させる。その際、連結パイプ4の切欠部40をネジ筒体3の係合凸部38に係合させることにより、ネジ筒体3と連結パイプ4との間の周方向の位置決めを行うことができると同時に、連結パイプ4を介してフード筒体2とネジ筒体3との間の周方向の位置決めも行うことができる。また、連結パイプ4の端部がネジ筒体3の内周面の段差部37に当接することにより連結パイプ4はそれ以上先には進入できなくなり、連結パイプ4の挿入停止位置も自動的に定まる。尚、連結パイプ4とネジ筒体3との固定は、上述したように両面テープ等を使用した仮固定としてもよいし、接着剤等を使用した完全固定としてもよい。そして、このようにして連結一体化されたリールシート本体1に可動フード体やナット、シートグリップ5等を装着してリールシートの組み立て作業が完了する。
以上のように構成されたリールシートにあっては、フード筒体2とネジ筒体3とが別部材の構成であるので、ネジ筒体3における肉厚差を小さくすることができ、ネジ筒体3を高精度に成形することができる。従って、ナットを回転操作した際に良好なフィールが得られると共に、可動フード体を介してリール脚90をしっかりと締め付け固定することができる。また、ネジ筒体3を高い精度を確保しつつ薄肉化できるので、リールシート全体を薄肉化でき、脚支持面部10を竿本体に接近させやすくなる結果、リールと釣竿との一体感も向上する。更に、フード筒体2において固定フード部22と脚支持面部10の主要部20とが成形により一体的に形成されているので、固定フード部22が脚支持面部10に対してぐらついたりすることがなく、固定フード部22と脚支持面部10とによってリール脚90を確実に保持することができ、長期に亘って安定した保持力が維持される。
そして、リールシート本体1がフード筒体2とネジ筒体3とを連結するための連結パイプ4を備えているので、フード筒体2とネジ筒体3を連結パイプ4によって予め連結させておくことができ、連結された状態のフード筒体2とネジ筒体3を竿本体に一括的に外装することができる。即ち、フード体とネジ筒体3とが別部材とされた分割構成であっても、リールシート本体1が一つの部材からなる一体構成の場合と同様に容易に竿本体に外装することができる。また、竿本体に装着する前に予めフード体とネジ筒体3を連結パイプ4で連結させておくことができるので、フード体とネジ筒体3との間の竿軸方向の位置決めや周方向の位置決めを容易且つ正確に行うことができる。
しかも、連結パイプ4の一端側をフード筒体2の内側に所定長さ挿入して内外重ね合わせると共に、連結パイプ4の他端側をネジ筒体3の内側に所定長さ挿入する構成であるから、リールシート本体1を竿本体に接着するための接着剤がフード筒体2の前端部やネジ筒体3の後端部から外側にはみ出すということがなく、それらの箇所における接着剤の除去作業が不要になってリールシートの竿本体への取付作業が容易になる。
また、連結パイプ4が径一定のストレートパイプであるので、製造が容易で低コストであり、カーボンプリプレグ等の各種の強化繊維プリプレグを筒状に焼成したものも使用できる。特に、強化繊維プリプレグから形成されたものとすれば、薄肉であっても十分な強度を容易に確保することができる。また種々の汎用のパイプを使用することも可能で、例えば、他の釣竿用のブランクを所定長さにカットして流用するということもできる。
そして、フード筒体2の脚支持面部10には貫通孔21が形成されていて該貫通孔21から連結パイプ4の外周面が表出すると共にフード筒体2とネジ筒体3との間の間隙Sからも連結パイプ4の外周面が表出するので、連結パイプ4の材質や外周面の色、表面粗さ、質感等をフード筒体2やネジ筒体3のそれらとは異なるものとすることで、3ピース構造という特性を活かした良好なデザインを施すことができる。
また更に、ネジ筒体3がネジ領域32の後側に非ネジ領域33を備えていて、雄ネジ部31のネジ山の高さ分だけネジ領域32よりも肉厚に余裕のある非ネジ領域33の内側に連結パイプ4を重ね合わせているので、ネジ筒体3の肉厚を容易に全体として薄肉化することができ、ネジ筒体3を容易に小径化することができる。
また、連結パイプ4の両端に切欠部40がそれぞれ形成されていると共に、フード筒体2の内周面とネジ筒体3の内周面にはそれぞれ係合凸部24,38が形成されているので、連結パイプ4とフード筒体2及びネジ筒体3との間の周方向の位置決めを容易に行うことができ、フード筒体2とネジ筒体3とが別部材の構成であっても、連結パイプ4をフード筒体2とネジ筒体3に連結させることで容易にフード筒体2とネジ筒体3との間の周方向の位置決めを行うことができる。更に、フード筒体2やネジ筒体3に対して連結パイプ4が周方向に位置ずれすることを確実に防止することができ、連結パイプ4とフード筒体2やネジ筒体3との間の周方向の固定力を強化することができる。しかも、フード筒体2及びネジ筒体3のそれぞれの内側において切欠部40と係合凸部24,38が係合するので、係合凸部24,38が外部に露出することがなく、良好な外観デザインが得られる。また、連結パイプ4の位置決め用係合部が凸部ではなく切欠部40であるので、その製造、加工も容易である。
更に、小径部35の全周のうちの一部を大径部36側に延長することによりネジ筒体3の係合凸部38が形成されているので、小径部35と大径部36との間の径差を有効に利用して係合凸部38を容易に形成することができる。また更に、小径部35と大径部36との間の段差部37に連結パイプ4の端部が当接してそれ以上の進入が阻止されるので、連結パイプ4の挿入停止位置も自動的に定まり、組み立て作業が容易になる。
尚、本実施形態では、連結パイプ4の両端部に切欠部40をそれぞれ一箇所ずつ形成したが、両端部における切欠部40の個数は任意であって180度対向して二箇所ずつ形成したり、90度毎に合計四箇所ずつ形成したりしてもよい。また、両端部の切欠部40の個数を互いに異なる個数としてもよい。更に、両端部の切欠部40を互いに同一線上即ち同位相に形成するのではなく、互いに周方向に位置ずれして形成するようにしてもよい。
また、切欠部40の形状も種々の設計変更が可能であって、例えば図10のように、切欠部40が竿軸方向に延びる縦部40aと該縦部40aの奥側の端部から周方向に延びる横部40bとから鍵状に構成されているものとしてもよい。その場合、フード筒体2やネジ筒体3の係合凸部24,38は、縦部40aに進入可能であって且つ横部40bに周方向に沿って係合可能な形状とし、例えば、図10に二点鎖線で示すような矩形とする。そして、フード筒体2やネジ筒体3に連結パイプ4を竿軸方向に挿入すると、フード筒体2やネジ筒体3の係合凸部24,38が初めに切欠部40の縦部40aに進入し、その後、連結パイプ4をフード筒体2やネジ筒体3に対して相対的に周方向に回転させることで係合凸部24,38が切欠部40の縦部40aから横部40bへと進入する。このように切欠部40が周方向に延びる横部40bを有して全体として鍵状となっていれば、フード筒体2やネジ筒体3に対して連結パイプ4が竿軸方向に位置ずれすることが確実に防止され、連結パイプ4とフード筒体2やネジ筒体3との間の竿軸方向の固定力を強化することができる。尚、図10では、連結パイプ4の両端部における切欠部40の横部40bの延設方向を互いに逆向きとしたが互いに同じ向きにしてもよい。但し、両端部の切欠部40の形状を互いに同一にすると共に横部40bの向きを互いに逆向きとすれば、連結パイプ4の両端部の何れであってもフード筒体2やネジ筒体3に挿入することができるので組み立て作業性が向上する。また、横部40bの延設方向の向きは任意であるが、ナットを締め付ける際のその回転方向と同じ方向とすることが好ましい。尚、両端部の切欠部40のうちの一方のみに横部40bを形成してもよいし、両端部の切欠部40において横部40bの形状や周方向の長さを互いに異なるようにしてもよい。
また、フード筒体2に貫通孔21を形成してその貫通孔21から連結パイプ4が表出するようにしたが、貫通孔21を設けなくてもよい。同様に、連結状態においてフード筒体2とネジ筒体3との間に間隙Sが形成されてその間隙Sから連結パイプ4の外周面が外部に表出するようにしたが、間隙Sが設けられない構成としてもよい。
また更に、連結用内筒部としてフード筒体2やネジ筒体3とは別部材の連結パイプ4を設けたが、連結用内筒部がフード筒体2あるいはネジ筒体3と成形により一体的に形成された構成としてもよい。即ち、リールシート本体1をフード筒体2とネジ筒体3と連結パイプ4とからなる3ピース構造とするのではなく、連結用内筒部を備えたフード筒体2とネジ筒体3という2ピース構造としたり、連結用内筒部を備えたネジ筒体3とフード筒体2という2ピース構造としたりしてもよい。その他、連結部として筒状の連結用内筒部とする他、各種形状、構造の連結部としてよい。何れにしてもリールシート本体1が連結部を備えることにより、予めフード筒体2とネジ筒体3を連結部によって連結させることができる。
尚、両軸リール(電動リールを含む)を取り付けるためのリールシートについて説明したが、スピニングリールを取り付けるためのリールシートにも適用可能である。また、フード筒体2が後側に位置し、ネジ筒体3が前側に位置する構成について説明したが、逆の配置であっても無論よい。