(実施形態1)
以下では、本実施形態の赤外線検出素子20aについて図1に基づいて説明する。
赤外線検出素子20aは、1つの焦電体基板21に第1焦電素子22と第2焦電素子23とが並んで形成されている。第1焦電素子22は、焦電体基板21の表面21aに形成された第1表面電極22aと、焦電体基板21の裏面21bに形成されて第1表面電極22aに対向した第1裏面電極22bと、焦電体基板21において第1表面電極22aと第1裏面電極22bとで挟まれた第1部分22cと、を備える。第2焦電素子23は、焦電体基板21の表面21aに形成された第2表面電極23aと、焦電体基板21の裏面21bに形成されて第2表面電極23aに対向した第2裏面電極23bと、焦電体基板21において第2表面電極23aと第2裏面電極23bとで挟まれた第2部分23cと、を備える。焦電体基板21の表面21aには、第1表面電極22a、第2表面電極23aにそれぞれ電気的に接続された第1表面配線24a、第2表面配線25aが形成されている。焦電体基板21の裏面21bには、第1裏面電極22b、第2裏面電極23bにそれぞれ電気的に接続された第1裏面配線24b、第2裏面配線25bが形成されている。焦電体基板21は、第1焦電素子22を囲む周辺部に、第1焦電素子22の外周に沿った形状のスリット26が、第1表面配線24a及び第1裏面配線24bを避けて形成され、第2焦電素子23を囲む周辺部が、第2部分23cの全周に亘って連続している。これにより、赤外線検出素子20aは、第1焦電素子22と第2焦電素子23を逆並列もしくは逆直列に接続し、第1焦電素子22を受光用の焦電素子とし、第2焦電素子23を温度補償用の焦電素子として利用することにより、赤外線のクロストークによる影響を軽減することが可能となり、高感度化を図ることが可能となる。
赤外線検出素子20aの各構成要素については、以下に詳細に説明する。
焦電体基板21は、焦電性を有する基板である。焦電体基板21は、単結晶のLiTaO3基板により構成されている。焦電体基板21の材料である焦電材料としては、LiTaO3を採用しているが、これに限らず、例えば、LiNbO3、PbTiO3、PZT(:Pb(Zr,Ti)O3)、PZT−PMN(:Pb(Zr,Ti)O3−Pb(Mn,Nb)O3)等を採用してもよい。
焦電体基板21の自発分極の方向は、この焦電体基板21の厚み方向に沿った一方向である。図1(b)で見れば、焦電体基板21の自発分極の方向は、上方向である。
焦電体基板21は、平面視形状を矩形状としてある。焦電体基板21の平面視形状は、特に限定するものではない。
焦電体基板21の厚さは、50μmに設定してあるが、この値に限定するものではない。焦電体基板21の厚さは、例えば、薄いほうが赤外線検出素子20aの感度を向上させる観点から好ましい。このため、焦電体基板21の厚さは、30μm〜150μm程度の範囲で設定するのが好ましい。赤外線検出素子20aは、焦電体基板21の厚さが30μmよりも薄いと脆弱性による焦電体基板21の破損の懸念があり、150μmよりも厚いと赤外線検出素子20aの感度が低下してしまう懸念がある。
第1表面電極22a、第1裏面電極22b、第2表面電極23a及び第2裏面電極23bは、検出対象の赤外線を吸収可能で且つ導電性を有する導電膜により構成されている。導電膜は、Ni膜により構成されている。導電膜は、Ni膜に限らず、例えば、NiCr膜や金黒膜等でもよい。導電膜は、膜厚が厚いほうが、電気抵抗が小さくなる一方、膜厚が薄いほうが、赤外線の吸収量を高めることが可能となる。このため、第1焦電素子22、第2焦電素子23は、第1表面電極22a、第2表面電極23aの厚さを、第1裏面電極22b、第2裏面電極23bの厚さよりも、それぞれ薄くしてもよい。また、第1焦電素子22、第2焦電素子23は、第1表面電極22a、第2表面電極23aの厚さと、第1裏面電極22b、第2裏面電極23bの厚さと、をそれぞれ同じとしてもよい。
赤外線検出素子20aは、第1表面電極22aの厚さと、第2表面電極23aの厚さと、を同じに設定してある。また、赤外線検出素子20aは、第1裏面電極22bの厚さと、第2裏面電極23bの厚さと、を同じに設定してある。
第1表面電極22a及び第2表面電極23aの厚さは、30nmに設定してあるが、この値に限定するものではない。第1表面電極22a及び第2表面電極23aの厚さは、例えば、100nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましい。第1表面電極22a及び第2表面電極23aは、例えば、蒸着法やスパッタ法等により形成することができる。
第1裏面電極22b及び第2裏面電極23bの厚さは、100nmに設定してあるが、この値に限定するものではない。第1裏面電極22b及び第2裏面電極23bの厚さは、40nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。第1裏面電極22b及び第2裏面電極23bは、例えば、蒸着法やスパッタ法等により形成することができる。
赤外線検出素子20aは、第1表面電極22a及び第2表面電極23aの厚さと、第1裏面電極22b及び第2裏面電極23bの厚さと、を同じとする場合、これらの厚さを、例えば、40nm〜100nm程度の範囲で設定すればよい。
第1表面電極22a及び第2表面電極23aは、シート抵抗の値によって赤外線吸収率が変化する。第1表面電極22a及び第2表面電極23aの赤外線吸収率は、例えば、20%〜50%の範囲で設定するのが好ましい。第1表面電極22a及び第2表面電極23aの赤外線吸収率の理論的な最大値は、50%である。第1表面電極22a及び第2表面電極23aの赤外線吸収率が50%となる第1表面電極22a及び第2表面電極23aのシート抵抗は、189Ω/□(189Ω/sq.)である。つまり、赤外線検出素子20aは、第1表面電極22a及び第2表面電極23aのシート抵抗を189Ω/□とすれば、第1表面電極22a及び第2表面電極23aの赤外線吸収率を最大とすることが可能となる。赤外線検出素子20aは、第1表面電極22a及び第2表面電極23aにおいて例えば40%以上の赤外線吸収率を確保することが好ましい。このため、赤外線検出素子20aは、第1表面電極22a及び第2表面電極23aのシート抵抗を73〜493Ω/□の範囲で設定するのが好ましい。
第1焦電素子22及び第2焦電素子23の平面視形状は、長方形状としてある。赤外線検出素子20aは、第1焦電素子22の平面サイズと第2焦電素子23の平面サイズと、を同じに設定してあるのが好ましい。要するに、赤外線検出素子20aは、第1焦電素子22と第2焦電素子23と、を同じ構成としてあるのが好ましい。第1焦電素子22及び第2焦電素子23の平面視形状は、長方形状に限らず、例えば、正方形状や、円形状、半円形状、楕円形状、半楕円形状、矩形以外の多角形状等でもよい。また、赤外線検出素子20aは、第1焦電素子22の平面視形状と第2焦電素子23の平面視形状とが異なる場合、平面視における面積が同じであるのが好ましい。
第1焦電素子22は、第1表面電極22aと、第1裏面電極22bと、が同じ形状であり、第1裏面電極22bが、第1表面電極22aの垂直投影領域に一致するように配置されているのが好ましい。第1表面電極22aの垂直投影領域とは、第1表面電極22aの厚さ方向への投影領域を意味する。このため、第1焦電素子22の平面視形状は、第1表面電極22aの平面視形状により決まる。要するに、第1焦電素子22の平面視形状は、第1表面電極22aの平面視形状と同じである。第1焦電素子22は、第1表面電極22aと第1裏面電極22bと、で大きさが異なってもよい。
第2焦電素子23は、第2表面電極23aと、第2裏面電極23bと、が同じ形状であり、第2裏面電極23bが、第2表面電極23aの垂直投影領域に一致するように配置されているのが好ましい。第2表面電極23aの垂直投影領域とは、第2表面電極23aの厚さ方向への投影領域を意味する。このため、第2焦電素子23の平面視形状は、第2表面電極23aの平面視形状により決まる。要するに、第2焦電素子23の平面視形状は、第2表面電極23aの平面視形状と同じである。第2焦電素子23は、第2表面電極23aと第2裏面電極23bと、で大きさが異なってもよい。
赤外線検出素子20aは、焦電体基板21の表面21aに、第1表面配線24a及び第2表面配線25aが形成され、焦電体基板21の裏面21bに、第1裏面配線24b及び第2裏面配線25bが形成されている。
第1表面配線24a及び第2表面配線25aは、材料、厚さそれぞれを第1表面電極222a及び第2表面電極23aと同じとしてあるのが好ましい。これにより、赤外線検出素子20aの形成にあたっては、第1表面配線24a及び第2表面配線25aを、第1表面電極22a及び第2表面電極23aと同時に形成することが可能となる。また、赤外線検出素子20aは、第1表面配線24aと第1表面電極22aとを連続膜として形成でき、且つ、第2表面配線25aと第2表面電極23aとを連続膜として形成できる。
第1裏面配線24b及び第2裏面配線25bは、材料、厚さそれぞれを第1裏面電極222b及び第2裏面電極23bと同じとしてあるのが好ましい。これにより、赤外線検出素子20aの形成にあたっては、第1裏面配線24b及び第2裏面配線25bを、第1裏面電極22b及び第2裏面電極23bと同時に形成することが可能となる。また、赤外線検出素子20aは、第1裏面配線24bと第2裏面電極22bとを連続膜として形成でき、且つ、第2裏面配線25bと第2裏面電極23bとを連続膜として形成できる。
赤外線検出素子20aは、第1表面配線24aにおける第1表面電極22a側とは反対側の端部が、出力用の端子部24aaを構成している。また、赤外線検出素子20aは、第1裏面配線24bにおける第2裏面電極22b側とは反対側の端部が、出力用の端子部24bbを構成している。また、赤外線検出素子20aは、第2表面配線25aにおける第2表面電極23a側とは反対側の端部が、出力用の端子部25aaを構成している。また、赤外線検出素子20aは、第2裏面配線25bにおける第2裏面電極23b側とは反対側の端部が、出力用の端子部25bbを構成している。
第1焦電素子22及び第2焦電素子23は、それぞれ、赤外線を受光して光電変換した出力信号を発生することができる。
赤外線検出素子20aは、第1焦電素子22の第1表面電極22aに電気的に接続された端子部24aaと、第2焦電素子23の第2裏面電極23bに電気的に接続された端子部25bbと、が焦電体基板21の厚み方向において重なるように配置されている。また、赤外線検出素子20aは、第1焦電素子22の第1裏面電極22bに電気的に接続された端子部24bbと、第2焦電素子23の第2表面電極23aに電気的に接続された端子部25aaと、が焦電体基板21の厚み方向において重なるように配置されている。赤外線検出素子20aは、平面視において第1焦電素子22と第2焦電素子23との並ぶ方向と、焦電体基板21の厚み方向と、に直交する方向の一端部に、端子部24aa、25bbが形成され、他端部に、端子部24bb、25aaが形成されている。
赤外線検出素子20aは、端子部24aaと端子部25bbとを電気的に接続し、且つ、端子部24bbと端子部25aaとを電気的に接続することにより、第1焦電素子22と第2焦電素子23とを逆並列接続した構成とすることができる。図2は、赤外線検出素子20aにおいて、第1焦電素子22と第2焦電素子23とを逆並列接続した場合の等価回路図である。図2では、上述の焦電体基板21の自発分極の方向を矢印で示してある。
図2の等価回路図では、赤外線検出素子20aが、一対の出力端子28c、28dを備えている。この場合、赤外線検出素子20aは、端子部24bbと端子部25aaとを電気的に接続する接続部(図示せず)が一方の出力端子28cを構成し、端子部24aaと端子部25bbとを電気的に接続する接続部(図示せず)が他方の出力端子28dを構成している。出力端子28cを第1出力端子28c、出力端子28dを第2出力端子28dともいう。
端子部24aaと端子部25bbとを電気的に接続する接続部は、例えば、導電ペーストにより形成することができる。端子部24bbと端子部25aaとを電気的に接続する接続部は、例えば、導電ペーストにより形成することができる。導電ペーストとしては、例えば、銀ペースト、金ペースト、銅ペースト等を採用することができる。
スリット26は、焦電体基板21の厚み方向に貫通して形成された孔を意味する。スリット26は、第1焦電素子22の周辺部において第1表面配線24a及び第1裏面配線24bを避けた位置に形成されている。スリット26は、第1焦電素子22の外周に沿った形状に形成されている。赤外線検出素子20aは、スリット26を、第1焦電素子22を囲む周辺部のみに形成し、第2焦電素子23の周辺部には形成していない。よって、赤外線検出素子20aは、第1焦電素子22を囲む周辺部に、第1焦電素子22の外周に沿った形状のスリット26が形成されている一方で、第2焦電素子23を囲む周辺部が、第2部分23cの全周に亘って連続している。
赤外線検出素子20aは、第1焦電素子22を赤外線の受光用の焦電素子とし、第2焦電素子23を温度補償用の焦電素子として利用することを想定している。受光用の焦電素子とは、赤外線検出素子20aの検出対象の赤外線を検出するための焦電素子を意味し、赤外線検出素子20aの検出対象の赤外線が入射される焦電素子である。温度補償用の焦電素子とは、赤外線検出素子20aの周囲温度の変化による出力信号の変動を少なくするための焦電素子を意味し、理想的には、赤外線検出素子20aの検出対象の赤外線が入射されない焦電素子である。言い換えれば、温度補償用の焦電素子とは、第1焦電素子22の出力信号から周囲温度に起因した成分を取り除くための焦電素子を意味する。このため、赤外線検出素子20aは、検出対象の赤外線が、第1焦電素子22に入射する一方で、第2焦電素子23に入射しないようにして使用する。例えば、赤外線検出素子20aをパッケージに収納して使用する場合、検出対象の赤外線が第2焦電素子23に入射しないようにするための手段としては、例えば、パッケージの一部を、赤外線を遮光する遮光部とすることが考えられる。この場合には、パッケージのうち検出対象の赤外線を透過する窓材の垂直投影領域外に第2焦電素子23が位置するように、窓材の配置を規定することで、パッケージのうち窓材を保持している遮光性の部材の一部を、遮光部として兼用することができる。遮光部は、これに限らず、例えば、赤外線カットフィルタや金属製の遮光板等により構成することも考えられる。
しかしながら、赤外線検出素子20aは、赤外線が入射する入射面側に空間が存在した状態で使用されるので、赤外線のクロストーク(crosstalk)により、第2焦電素子23から信号が出力される。赤外線検出素子20aにおいて赤外線が入射する入射面とは、第1表面電極22aの表面及び第2表面電極23aの表面を意味する。赤外線のクロストークとは、第1焦電素子22へ赤外線を入射させるための窓材やフィルタ等を透過した赤外線が第2焦電素子23における第2表面電極23aの表面へ斜め方向から入射することを意味する。言い換えれば、赤外線のクロストークとは、第1焦電素子22での検出対象の赤外線が、赤外線の入射が阻止されることを意図した第2焦電素子23における第2表面電極23aへ斜め方向から入射することを意味する。
赤外線検出素子20aは、検出対象の赤外線が入射することによる第1焦電素子22の温度変化や、赤外線のクロストークによる第2焦電素子23の温度変化に比べて、環境温度の変化に伴う第1焦電素子22や第2焦電素子23の温度変化が非常に緩やかである。環境温度は、赤外線検出素子20aの周囲の温度を意味し、赤外線検出素子20aをパッケージに収納して使用する場合、パッケージの周囲の温度を意味する。パッケージの周囲の温度は、外気の温度である。
赤外線検出素子20aは、第1焦電素子22への検出対象の赤外線の入射に対して、基本的に第1焦電素子22のみが暖められるので、熱容量が小さく、熱時定数が小さい。また、赤外線検出素子20aは、環境温度の上昇により、赤外線検出素子20a全体が暖められるので、熱容量が大きく、熱時定数が大きい。特に、赤外線検出素子20aは、パッケージに収納して使用される場合、環境温度の上昇により、パッケージ及び赤外線検出素子20aが暖められるので、更に熱容量が大きくなり、熱時定数が大きくなる。
熱容量に関しては、環境温度の変化に対する第1焦電素子22の熱容量をH1、検出対象の赤外線の入射に対する第1焦電素子22の熱容量をH2とすると、H1>H2となる。
また、熱コンダクタンスに関しては、環境温度の変化に対する第1焦電素子22の熱コンダクタンスをG1、検出対象の赤外線の入射に対する第1焦電素子22の熱コンダクタンスをG2とすると、G2>G1となる。
また、熱時定数に関しては、熱時定数=〔熱容量〕/〔熱コンダクタンス〕であるため、環境温度の変化に対する第1焦電素子22の熱時定数をτ1、検出対象の赤外線の入射に対する第1焦電素子22の熱時定数をτ2とすると、τ1>τ2となる。
赤外線検出素子20aは、第1焦電素子22の周辺部のみにスリット26が形成されていることにより、検出対象の赤外線の入射による第1焦電素子22と第2焦電素子23との熱時定数の差に基づく感度差を生じさせることが可能となる。よって、赤外線検出素子20aは、第1焦電素子22と第2焦電素子23とを逆並列に接続し、第1焦電素子22、第2焦電素子23をそれぞれ、受光用、温度補償用の焦電素子として使用することで、赤外線のクロストークによる影響を軽減することが可能となる。これにより、赤外線検出素子20aは、高感度化を図ることが可能となる。
図3は、実施形態1の赤外線検出素子20aの特性の模式的な説明図である。図3は、横軸が赤外線の周波数、縦軸が感度(電流感度)である。図3では、検出対象の赤外線の入射に対する第1焦電素子22の感度を実線A1で示し、環境温度の変化に対する第1焦電素子22及び第2焦電素子23の感度を実線A2で示してある。更に、図3では、第1焦電素子22の熱コンダクタンスの低下により、第1焦電素子22の感度が、低周波域において破線A3で示すように高くなり、低周波域で第1焦電素子22の感度と第2焦電素子23の感度との差が大きくなることを模式的に表わしている。図3から、赤外線検出素子20aは、低周波数域での感度が重視される場合、焦電体基板21における第1焦電素子22の周辺部のみにスリット26を設けることで、第1焦電素子22の熱コンダクタンスを低下させるのが好ましいことが分かる。
焦電体基板21は、スリット26が、少なくとも、第1焦電素子22の第2焦電素子23側に形成されているのが好ましい。これにより、赤外線検出素子20aは、第2焦電素子23に比べて第1焦電素子22の感度を、低周波域で高めることが可能となるだけでなく、熱のクロストークを抑制することが可能となり、第1焦電素子22の感度の更なる向上を図ることが可能となる。熱のクロストークとは、第1焦電素子22と第2焦電素子23との間で焦電体基板21を介して熱が伝達することを意味する。
赤外線検出素子20aは、スリット26が、第1焦電素子22の外周に沿って形成されていればよく、スリット26の数を特に限定するものではない。赤外線検出素子20aは、第1焦電素子22の周辺部において、複数のスリット26を、第1焦電素子22の外周に沿った方向において離して形成することにより、機械的強度を向上させることが可能となる。複数のスリット26は、第1焦電素子22の外周に沿った方向において等間隔で形成されているのが好ましい。
赤外線検出素子20aでは、第1表面電極22aの外周縁がスリット26の第1表面電極22a側の開孔縁から離れた構成としてもよい。これにより、赤外線検出素子20aは、高感度化を図りながらも、第1表面電極22aと第1裏面電極22bとの短絡をより確実に抑制することが可能となる。
また、赤外線検出素子20aは、第1裏面電極22bの外周縁がスリット26の第1裏面電極22b側の開孔縁から離れているのが好ましい。これにより、赤外線検出素子20aは、第1表面電極22aと第1裏面電極22bとの短絡をより確実に抑制することが可能となり、電気的安定性の低下を抑制することが可能となる。
図4は、赤外線検出素子20aの第1変形例の赤外線検出素子20bを示す。赤外線検出素子20bは、第1焦電素子22と第2焦電素子23とが逆直列に接続されている点が、赤外線検出素子20aと相違する。なお、赤外線検出素子20bについては、赤外線検出素子20aと同様の構成要素に同一の符号を付して説明を適宜省略する。
赤外線検出素子20bは、第1焦電素子22の第1表面電極22aと第2焦電素子23の第2表面電極23aとが第1表面配線24a及び第2表面配線25aを介して電気的に接続されている。これにより、赤外線検出素子20bは、第1焦電素子22と第2焦電素子23とが逆直列に接続されている。図5は、第1変形例の赤外線検出素子20bの等価回路図である。赤外線検出素子20bは、一対の出力端子28c、28dを備えている。赤外線検出素子20bは、端子部24bbが、一方の出力端子28c(第1出力端子28c)を構成し、端子部25bbが、他方の出力端子28d(第2出力端子28d)を構成している。
赤外線検出素子20bは、第1焦電素子22を受光用の焦電素子として使用し、第2焦電素子23を温度補償用の焦電素子として使用することで、赤外線のクロストークによる影響を軽減することが可能となる。これにより、赤外線検出素子20bは、高感度化を図ることが可能となる。
図6は、赤外線検出素子20aの第2変形例の赤外線検出素子20cを示している。赤外線検出素子20cは、赤外線検出素子20aと基本構成が略同じである。赤外線検出素子20cは、第1表面電極22a上に、赤外線を吸収する赤外線吸収層27が形成されている点が、赤外線検出素子20aと相違するだけである。なお、赤外線検出素子20cは、赤外線検出素子20aと同様の構成要素について同一の符号を付して説明を適宜省略する。
赤外線検出素子20cは、赤外線吸収層27を設けたことにより、赤外線吸収率を高めることが可能となり、高感度化を図ることが可能となる。
赤外線吸収層27は、例えば、樹脂と導電性微粉末との混合体により形成されているのが好ましい。この場合、赤外線吸収層27は、樹脂に、導電性微粉末が分散されている。導電性微粉末は、導電性を有する微粉末である。導電性微粉末としては、カーボン系微粉末、金属系微粉末、金属酸化物系微粉末の群から選択される少なくとも1種の導電性微粉末を採用することが好ましい。赤外線吸収層27における導電性微粉末の体積濃度は、17%に設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。導電性微粉末の体積濃度は、例えば、1〜30%程度の範囲内で設定することができる。
赤外線吸収層27は、樹脂に導電性微粉末を分散させ有機溶剤を混合させたペースト(印刷インク)を、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等により印刷してから、ベークすることで硬化させることによって形成することができる。赤外線吸収層27の形成にあたっては、例えば、ペーストにおける導電性微粉末の組成を8.5%とすれば、赤外線吸収層27における導電性微粉末の体積濃度を17%程度とすることが可能である。
赤外線吸収層27は、より広い温度範囲で化学的及び物理的に安定していることが望ましい。このため、赤外線吸収層27の樹脂としては、熱硬化性樹脂が望ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。赤外線検出素子20cは、これらの熱硬化性樹脂のうち、赤外線検出素子20cの検出対象の赤外線の吸収率がより高い熱硬化性樹脂を採用することが好ましい。これにより、赤外線検出素子20cは、赤外線吸収層27の厚みを薄くすることが可能となり、感度をより高めることが可能となる。検出対象の赤外線を吸収可能な樹脂は、検出対象の赤外線に対する吸収率が30%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましい。
赤外線検出素子20cをガスの検知等の用途に用い、検出対象の赤外線の波長が3〜8μm、特に3〜5μmの範囲内にある場合、赤外線吸収層27の樹脂としては、水酸基を含む樹脂が好ましい。水酸基を含む樹脂は、多分子間で水素結合しているため、3μm付近から長波長側にかけて赤外線を吸収する特性を有している。この種の樹脂としては、フェノール系樹脂が挙げられる。フェノール系樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、シクロペンタジエン、フェノール重合体、ナフタレン型フェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、赤外線検出素子20cを人体の検知等の用途に用い、検出対象の赤外線の波長が8〜13μmの範囲内にある場合、赤外線吸収層27の樹脂としては、芳香族系の樹脂が好ましい。この種の樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。
ガスの検知、人体の検知の両方への適用を考慮した場合、赤外線吸収層27の樹脂としては、水酸基を持つ芳香族系の樹脂が好ましく、例えば、フェノール系樹脂を挙げることができる。
カーボン系微粉末としては、固体炭素材料で赤外線吸収率が高く、樹脂中に分散できる微粉末が適している。この種のカーボン系微粉末としては、例えば、非晶質(微結晶)炭素として分類される、カーボンブラック、カーボンファイバー、黒鉛等や、ナノカーボンとして分類される、フラーレン、ナノチューブ、グラフェン等が挙げられる。特に、カーボンブラックは、粒子径が小さく、化学的にも安定しており、好ましい。
金属系微粉末に関しては、粒子径が0.1μm程度以下の金属系微粉末が、赤外線を吸収する性質があり、幅広い赤外波長域で吸収率が高いという特徴を有している。そして、この特徴は、金属の種類に依存しない。このため、金属系微粉末の材料としては、化学的に安定なAu、Pt、Ag等の貴金属や、耐熱性の高いW、Mo等の高融点金属や、微粉末の作りやすいZn、Mg、Cd、Al、Cu、Fe、Cr、Ni、Co、Snや、それらの2種以上の合金等、が挙げられる。
金属酸化物系微粉末は、遠赤外線を効率よく吸収し、また、化学的にも安定しているため、赤外線検出素子20cを人体の検知等の用途に適用する場合等に好適に採用することができる。金属酸化物系微粉末の材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、AZO(AlドープZnO)、GZO(GaドープZnO)等が挙げられる。
赤外線検出素子20cは、赤外線吸収層27を付加することによって、第1焦電素子22の赤外線吸収率を高めることができて感度を高めることが可能であるが、その一方で、第1焦電素子22の熱容量が増大し、第1焦電素子22で受光した赤外線による第1焦電素子22の温度上昇が小さくなって感度が低くなる傾向にある。
第1焦電素子22は、放熱性が変化しないと仮定すると、感度が熱容量に反比例する。また、第1焦電素子22の感度は、赤外線吸収率に比例する。したがって、赤外線吸収層27を付加したことによる感度の変化率は、〔感度の変化率〕=〔赤外線吸収率の変化率〕/〔熱容量の変化率〕で表すことができる。ここで、感度を向上させるためには、感度の変化率を1よりも大きくする必要がある。また、単位面積当りの熱容量で考えた場合、厚さと体積熱容量との積により、感度の変化率を議論できる。
ここでは、第1表面電極22a上の赤外線吸収層27の厚さをAd〔μm〕、赤外線吸収層27の体積熱容量をAρ〔J/K〕、焦電体基板21の厚さをSd〔μm〕、焦電体基板21の体積熱容量をSρ〔J/K〕とする。この場合には、赤外線吸収層27を設けることで第1焦電素子22の単位面積当りの熱容量がSd×Sρから、Sd×Sρ+Ad×Aρに変化する。よって、この場合には、赤外線吸収率が20%から40%に上昇したとすると、感度が向上するための条件を、下記の式(1)で表すことができる。
1<(0.4/0.2)/{(Sd×Sρ+Ad×Aρ)/(Sd×Sρ)}・・・式(1)
式(1)は、整理すると、下記の式(2)で表すことができる。
0.2/(Sd×Sρ)<0.4/(Sd×Sρ+Ad×Aρ)・・・式(2)
式(2)は、更に整理すると、下記の式(3)で表すことができる。
Ad<(Sd×Sρ)/Aρ・・・式(3)
また、赤外線吸収層27を付加したことによる感度の変化がない場合は、不等号が等号となるから、式(3)を下記の式(4)で表すことができる。
Ad=(Sd×Sρ)/Aρ・・・式(4)
式(3)、(4)は、赤外線吸収層27の厚さAdが、(Sd×Sρ)/Aρのときには感度の変化がないことを意味し、(Sd×Sρ)/Aρよりも薄ければ感度が向上することを意味している。ここで、赤外線吸収層27の厚さAdの規格化厚さをNAd=(Sd×Sρ)/Aρ、規格化厚さNAd=1のときの感度を1とする相対的な感度を規格化感度と定義する。赤外線検出素子20cは、赤外線吸収層27の規格化厚さNAdを1よりも小さくすることにより、規格化感度を1よりも大きくすることが可能となる。
赤外線検出素子20cは、検出対象の赤外線の波長に対する赤外線吸収層27の屈折率をAn、第1表面電極22a上の赤外線吸収層27の厚さをAd〔μm〕、検出対象の赤外線の波長をλt〔μm〕とするとき、下記の式(5)の関係を満たすのが好ましい。
(An×Ad)>(λt/4)・・・式(5)
赤外線検出素子20cは、式(5)の関係を満たすことにより、赤外線吸収層27の赤外線吸収率を高めることが可能となる。
赤外線検出素子20cにおける第1表面電極22a及び第2表面電極23aは、赤外線を反射する赤外線反射層として機能するようにそれぞれのシート抵抗が設定されているのが好ましい。これにより、赤外線検出素子20cは、赤外線吸収層27で吸収されずに第1表面電極22aの表面に入射した赤外線を第1表面電極22aでより効率良く反射することが可能となり、赤外線吸収層27での赤外線吸収率の向上を図ることが可能となる。よって、赤外線検出素子20cは、感度の更なる向上を図ることが可能となる。また、赤外線検出素子20cは、赤外線のクロストークにより第2焦電素子23へ入射した赤外線を第2表面電極23aでより効率良く反射することが可能となり、赤外線のクロストークの影響を更に軽減することが可能となり、感度の向上を図ることが可能となる。
図7は、第1表面電極22aのシート抵抗と、第1表面電極22aにおける赤外線の反射率、吸収率それぞれとの関係を模式的に示している。図7は、横軸がシート抵抗、縦軸が反射率、吸収率それぞれの比率である。赤外線検出素子20cは、第1表面電極22aのシート抵抗を、50Ω/□以下とするのが好ましく、20Ω/□以下とするのが更に好ましい。赤外線検出素子20cは、第1表面電極22aのシート抵抗を50Ω/□以下とすることにより、反射率を吸収率の2倍よりも大きな値とすることが可能となる。また、赤外線検出素子20cは、第1表面電極22aのシート抵抗を20Ω/□以下とすることにより、反射率を80%よりも高くすることが可能となる。
また、赤外線検出素子20cは、第1表面電極22aのシート抵抗と第2表面電極23aのシート抵抗とが同じであるのが更に好ましい。これにより、赤外線検出素子20cは、製造時に、第1表面電極22aと第2表面電極23aとを同時に形成することが可能となり、製造コストの低コスト化を図ることが可能となる。第1表面電極22aのシート抵抗と第2表面電極23aのシート抵抗とが同じとは、完全に同じである場合に限らず、製造時のばらつき程度の誤差があってもよい。
図8は、本実施形態の赤外線検出素子20の第3変形例の赤外線検出素子20dを示している。赤外線検出素子20dは、第1変形例の赤外線検出素子20bと基本構成が略同じである。赤外線検出素子20dは、第1焦電素子22と第2焦電素子23との組を複数組、備え、焦電体基板21は、隣り合う2つの第1焦電素子22それぞれの他方の第1焦電素子22側に、スリット26が形成されている。なお、赤外線検出素子20dは、赤外線検出素子20bと同様の構成要素について同一の符号を付して説明を適宜省略する。
赤外線検出素子20dは、第1焦電素子22と第2焦電素子23との組を2組、備えている場合、2チャネルをもつ構成することができ、第1焦電素子22と第2焦電素子23との各組それぞれを1つのチャネル(channel)とする赤外線検出素子として用いることができる。言い換えれば、赤外線検出素子20dは、2つのチャネルをもつ構成であり、各チャネルが、第1焦電素子22、第2焦電素子23、第1表面配線24a、第1裏面配線24b、第2表面配線25a及び第2裏面配線25bを備える検出エレメントDE、DEにより構成されている。以下では、説明の便宜上、図6における左側の検出エレメントDEを、第1検出エレメントDE1と称し。図6における右側の検出エレメントDEを、第2検出エレメントDE2と称する。
赤外線検出素子20dでは、例えば、赤外線式ガスセンサ等に用いる場合に、検出対象の赤外線の波長を、第1焦電素子22と第2焦電素子23との組の数だけ設定することが可能となる。検出対象の赤外線の波長は、例えば、光学フィルタ等によって設定することができる。赤外線検出素子20dを備えた赤外線式ガスセンサでは、第1焦電素子22と第2焦電素子23との組の数に対応する複数のチャネル(channel)を有する赤外線式ガスセンサを構成することが可能となる。
赤外線検出素子20dは、第1焦電素子22と第2焦電素子23との組を2組、備える場合、各組ごとに、第1焦電素子22を受光用焦電素子とし、第2焦電素子23を温度補償用焦電素子として利用することが可能となる。よって、赤外線検出素子20dは、赤外線式ガスセンサ等に用いる場合に、受光用焦電素子ごとに、検出対象の赤外線の波長を設定することが可能となる。
赤外線検出素子20dは、上述のように、第1焦電素子22と第2焦電素子23との組を2組、備えている。以下では、説明の便宜上、第1検出エレメントDE1の第1焦電素子22、第2焦電素子23を、それぞれ、第1受光素子221、第1温度補償素子231と称し、第2検出エレメントDE2の第1焦電素子22、第2焦電素子23を、それぞれ、第2受光素子222、第2温度補償素子232と称することもある。
赤外線検出素子20dは、隣り合う2つの第1焦電素子22それぞれの他方の第1焦電素子22側に、スリット26が形成されているので、隣り合う2つの第1焦電素子22間での熱伝達を抑制することが可能となる。これにより、赤外線検出素子20dは、第1検出エレメントDE1及び第2検出エレメントDE2それぞれの感度の低下を抑制することが可能となる。
赤外線検出素子20dは、第1焦電素子22の第1表面電極22a上に、赤外線検出素子20c(図6参照)と同様の赤外線吸収層27を設けた構成としてもよい。
また、赤外線検出素子20dは、各チャネルごとに、第1焦電素子22と第2焦電素子23とを逆並列に接続して用いるようにしてもよく、更に、第1表面電極22a上に、赤外線検出素子20c(図6参照)と同様の赤外線吸収層27を設けた構成としてもよい。
(実施形態2)
以下では、本実施形態の赤外線検出器2aについて図9〜12に基づいて説明する。なお、赤外線検出器2aのうち、実施形態1の第3変形例の赤外線検出素子20dと同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
赤外線検出器2aは、赤外線検出素子20dと、赤外線検出素子20dの前方に配置され、赤外線検出素子20dの検出対象の波長領域の赤外線を透過させる光学フィルタ31、32と、を備える。また、赤外線検出器2aは、赤外線検出素子20dの出力信号を信号処理するIC素子41、42を備える。また、赤外線検出器2aは、赤外線検出素子20d及びIC素子41、42が実装された基板43と、赤外線検出素子20d、光学フィルタ31、32、IC素子41、42及び基板43が収納されたパッケージ29と、を備える。パッケージ29は、基板43を支持する台座29aと、赤外線検出素子20d及び光学フィルタ31、32を覆うように台座29aに固着された金属製のキャップ29bと、を備える。また、パッケージ29は、キャップ29bにおける天板部29baに形成された窓孔29cと、窓孔29cを塞ぐように配置され、赤外線を透過可能な窓材29wと、を備える。赤外線検出器2aは、赤外線検出素子20dを備えているので、高感度化を図ることが可能となる。
赤外線検出器2aの各構成要素については、以下に、より詳細に説明する。
赤外線検出素子20dは、上述のように、第1焦電素子22と第2焦電素子23との組を、2組、備えている。
また、赤外線検出器2aは、2つの光学フィルタ31、32を備えており、一方の光学フィルタ31が、第1受光素子221の前方に配置され、他方の光学フィルタ32が、第2受光素子222の前方に配置されている。
赤外線検出器2aは、光学フィルタ31、32がパッケージ29内に収納されていることで、光学フィルタ31、32が外気に曝されるのを抑制することが可能となり、フィルタ特性の経時変化を抑制することが可能となる。以下では、説明の便宜上、光学フィルタ31を第1光学フィルタ31と称し、光学フィルタ32を第2光学フィルタ32と称することもある。
第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32は、赤外線検出器2aの用途に必要とされる光学特性を有するようにフィルタ特性を設計すればよい。
第1光学フィルタ31は、例えば、図13に示すように、基板31sと、第1フィルタ部31aと、第2フィルタ部31bと、を備えている。また、第2光学フィルタ32は、例えば、図13に示すように、基板32sと、第3フィルタ部32aと、第4フィルタ部32bと、を備えている。基板31s、32sは、赤外線を透過可能なものである。基板31s、32sとしては、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、サファイア基板、酸化マグネシウム基板等を採用することができる。赤外線検出器2aは、第2フィルタ部31bと第4フィルタ部32bとを同じ構成とすることができる。これにより、赤外線検出器2aは、第2フィルタ部31bの分光特性と第4フィルタ部32bの分光特性とを略同じとすることが可能となる。
第1フィルタ部31aは、例えば、λ/4多層膜34と、波長選択層35と、λ/4多層膜36とで構成されるバンドパスフィルタとすることができる。λ/4多層膜34は、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい2種類の薄膜31aa、31abが交互に積層された多層膜である。光学膜厚は、設計波長λの1/4に設定されている。λ/4多層膜36は、2種類の薄膜31aa、31abが交互に積層された多層膜である。波長選択層35は、λ/4多層膜34とλ/4多層膜36との間に介在する。波長選択層35は、選択波長に応じて光学膜厚を各薄膜31aa、31abの光学膜厚とは異ならせてある。λ/4多層膜34及びλ/4多層膜36は、屈折率周期構造を有していればよく、3種類以上の薄膜を積層したものでもよい。薄膜の材料としては、例えば、Ge、Si、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。SiOxは、SiOやSiO2である。SiNx等は、SiN、Si3N4等である。
第3フィルタ部32aは、例えば、λ/4多層膜37と、波長選択層38と、λ/4多層膜39とで構成されるバンドパスフィルタとすることができる。λ/4多層膜37は、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい2種類の薄膜32aa、32abが交互に積層された多層膜である。λ/4多層膜39は、2種類の薄膜32aa、32abが交互に積層された多層膜である。波長選択層38は、λ/4多層膜37とλ/4多層膜39との間に介在する。波長選択層38は、選択波長に応じて光学膜厚を各薄膜32aa、32abの光学膜厚とは異ならせてある。λ/4多層膜37及びλ/4多層膜39は、屈折率周期構造を有していればよく、3種類以上の薄膜を積層したものでもよい。薄膜の材料としては、例えば、Ge、Si、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
第1フィルタ部31aの薄膜31aa、31abと第3フィルタ部32aの薄膜32aa、32abとはそれぞれ同じ材料を採用することができる。
第1フィルタ部31a、第3フィルタ部32aは、屈折率周期構造の中に光学膜厚の異なる波長選択層35、38を設けて屈折率周期構造に局所的な乱れを導入することにより、反射帯域の中に反射帯域幅に比べてスペクトル幅の狭い透過帯域を局在させることができる。第1フィルタ部31a、第3フィルタ部32aは、波長選択層35、38の光学膜厚を適宜変化させることによって、透過波長域の透過ピーク波長を変化させることができる。
第1フィルタ部31aの選択波長は、第1フィルタ部31aの透過波長域の中心波長λ1である。また、第3フィルタ部32aの選択波長は、第3フィルタ部32aの透過波長域の中心波長λ2である。
第2フィルタ部31bは、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい2種類の薄膜31ba、31bbが交互に積層された多層膜である。第2フィルタ部31bは、相対的に屈折率の高い薄膜の材料として、例えば、Ge、Si等を採用することができ、相対的に屈折率の低い薄膜の材料として、例えば、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。SiOxは、SiOやSiO2である。SiNx等は、SiN、Si3N4等である。
第4フィルタ部32bは、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい2種類の薄膜32ba、32bbが交互に積層された多層膜である。第4フィルタ部32bは、相対的に屈折率の高い薄膜の材料として、例えば、Ge、Si等を採用することができ、相対的に屈折率の低い薄膜の材料として、例えば、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
赤外線検出器2aは、赤外線式ガスセンサに適用することを想定している。赤外線式ガスセンサは、検知対象のガスの種類によって赤外線の吸収波長が異なるので、ガスの識別性を高めることが可能となる。吸収波長は、例えば、メタン(CH4)が3.3μm、二酸化炭素(CO2)が4.3μm、一酸化炭素(CO)が4.7μm、一酸化窒素(NO)が5.3μmである。
赤外線検出器2aは、赤外線式ガスセンサに適用する場合、例えば、第1フィルタ部31aの中心波長λ1を検知対象のガスの吸収波長に設定し、第3フィルタ部32aの中心波長λ2を参照波長に設定すればよい。参照波長とは、検知対象のガス及び他のガスでの吸収のない波長を意味する。検知対象のガスとして、CO2を想定している場合、他のガスとしては、例えば、H2O、CH4、CO、NO等が挙げられる。
第1フィルタ部31a及び第3フィルタ部32aとしては、透過スペクトルの半値全幅が狭いバンドパスフィルタが好ましい。また、赤外線検出器2aは、第1フィルタ部31aの中心波長λ1と第3フィルタ部32aの中心波長λ2との差が小さい方が好ましい。これにより、赤外線検出器2aは、検知対象のガスが存在しないときの第1フィルタ部31aを透過する赤外線の光量と第3フィルタ部32aを透過する赤外線の光量との差を少なくすることが可能となる。赤外線検出器2aは、赤外線式ガスセンサの検知対象のガスが例えばCO2の場合、第1フィルタ部31aの中心波長λ1を4.3μmに設定し、第3フィルタ部32aの中心波長λ2を例えば3.9μmに設定することができる。
赤外線検出器2aは、第1光学フィルタ31と第2光学フィルタ32とが、1チップ化されているが、別体に形成されたものでもよい。
この場合、IC素子41、42は、例えば、図14に示すように、電流電圧変換回路41a、42aと、増幅回路41b、42bと、を備えた構成とすることができる。電流電圧変換回路41a、42aは、赤外線検出素子20dの出力信号である電流信号を電流−電圧変換して出力する回路である。増幅回路41b、42bは、電流電圧変換回路41a、42aの出力信号をそれぞれ増幅する回路である。赤外線検出素子20dの出力信号とは、検出エレメントDEの出力信号である。したがって、電流電圧変換回路41aは、この電流電圧変換回路41aの入力側に接続されている第1検出エレメントDE1の出力信号である電流信号を電流−電圧変換する。電流電圧変換回路42aは、この電流電圧変換回路42aの入力側に接続されている第2検出エレメントDE1の出力信号である電流信号を電流−電圧変換する。赤外線検出器2aは、IC素子41の回路構成とIC素子42の回路構成とが、同じであるのが好ましい。なお、赤外線検出器2aは、電流電圧変換回路41aと電流電圧変換回路42aと増幅回路41bと増幅回路42bと、を集積化して1チップのIC素子としてもよい。
電流電圧変換回路41aは、オペアンプOP1と、コンデンサCfと、を備える。第1検出エレメントDE1は、2つの出力端子28c、28dのうちの一方が基準電圧源E1を介して接地され、他方がオペアンプOP1の反転入力端子に接続されている。電流電圧変換回路41aは、オペアンプOP1の出力端子と反転入力端子との間に、コンデンサCfが接続されている。電流電圧変換回路41aは、オペアンプOP1の非反転入力端子に、オペアンプOP1の動作点を所定レベルに設定するための基準電圧源E2が接続されている。電流電圧変換回路41aは、オペアンプOP1の出力端子が増幅回路41bに接続される。
電流電圧変換回路42aは、オペアンプOP1と、コンデンサCfと、を備える。第1検出エレメントDE2は、2つの出力端子28c、28dのうちの一方が基準電圧源E1を介して接地され、他方がオペアンプOP1の反転入力端子に接続されている。電流電圧変換回路42aは、オペアンプOP1の出力端子と反転入力端子との間に、コンデンサCfが接続されている。電流電圧変換回路42aは、オペアンプOP1の非反転入力端子に、オペアンプOP1の動作点を所定レベルに設定するための基準電圧源E2が接続されている。電流電圧変換回路42aは、オペアンプOP1の出力端子が増幅回路42bに接続される。
電流電圧変換回路41a、42aの回路構成は、図14の構成以外でもよい。
基板43は、例えば、MID(Molded Interconnect Devices)基板により構成することができる。MID基板は、樹脂成形品により形成された絶縁性基材43aに、2つ1組のリード端子43j、43kの組が、2組、形成されている。絶縁性基材43aは、電気絶縁性を有する。なお、基板43は、MID基板に限らず、部品内蔵基板、セラミック基板、プリント基板等により構成することができる。
赤外線検出器2aは、第1検出エレメントDE1の出力端子28c、28dと、図9における左側のリード端子43j、43kと、が導電性接着剤によりそれぞれ接合され電気的に接続されている。また、赤外線検出器2aは、第2検出エレメントDE2の出力端子28c、28dと、図9における右側のリード端子43j、43kと、が導電性接着剤によりそれぞれ接合され電気的に接続されている。導電性接着剤は、例えば、Ag粉末又はAu粉末を含んだエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂の接着剤を採用することができる。導電性接着剤としては、例えば、導電ペーストを用いることができる。導電ペーストは、例えば、銀ペースト、金ペースト、銅ペースト等を採用することができる。導電性接着剤としては、有機樹脂系の導電性接着剤を採用するのが好ましい。これにより、赤外線検出器2aは、基板43から赤外線検出素子20dへの熱伝導を抑制することが可能となる。
絶縁性基材43aは、赤外線検出素子20dを位置決めする2つの突起43cが形成されている。各突起43cは、絶縁性基材43aにおける赤外線検出素子20の搭載予定領域の外側に形成されている。各突起43cの各々は、組をなすリード端子43jとリード端子43kとの間で、リード端子43j、43kよりも突出するように形成されている。
赤外線検出器2aは、赤外線検出素子20dを2つの突起43cにより位置決めでき、赤外線検出素子20dの位置精度を高めることが可能となる。これにより、赤外線検出器2aは、赤外線検出素子20dの位置精度に起因する冗長設計が不要となり、小型化及び感度の向上を図ることが可能となる。
絶縁性基材43aは、各第1焦電素子22及び各第2焦電素子23の垂直投影領域を含む大きさの穴43bが形成されているのが好ましい。穴43bは、各第1焦電素子22及び各第2焦電素子23と絶縁性基材43aとの間の熱絶縁性を高める目的で、熱絶縁用の穴として形成されている。これにより、赤外線検出器2aは、各第1焦電素子22及び各第2焦電素子23それぞれの感度の向上を図ることが可能となる。穴43bは、各第1焦電素子22及び各第2焦電素子23それぞれに対して1つずつ形成してもよい。
また、赤外線検出器2aは、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32を位置決めする2つ位置決め部43dが形成されている。これにより、赤外線検出器2aは、基板43において光学フィルタ31、32を位置決めすることが可能となる。よって、赤外線検出器2aは、光学フィルタ31、32と第1受光素子221、第2受光素子222との相対的な位置精度を高めることが可能となり、高感度化を図ることが可能となる。
位置決め部43dは、平面視で光学フィルタ31、32の並ぶ方向における光学フィルタ31、32の位置を規定する壁部43eと、光学フィルタ31、32を支持する支持部43fと、を備えることが好ましい。
光学フィルタ31、32は、例えば、壁部43e、43eに対して接着剤により固定することが好ましい。これにより、赤外線検出器2aは、光学フィルタ31、32を支持部43f、43fに対して接着剤により固定する場合に比べて、赤外線検出素子20dと光学フィルタ31、32との距離の精度を高めることが可能となる。赤外線検出器2aは、赤外線検出素子20dの厚み方向において光学フィルタ31、32と赤外線検出素子20dとの間に間隙が形成されている。これにより、赤外線検出器2aは、光学フィルタ31、32と赤外線検出素子20dとを熱絶縁することが可能となり、赤外線検出素子20dの高感度化を図ることが可能となる。赤外線検出器2aは、例えば、支持部43fの突出寸法を赤外線検出素子20dの厚み寸法よりも大きくすることで、光学フィルタ31、32と赤外線検出素子20dとの間に間隙が形成される。
赤外線検出器2aは、基板43の厚み方向の一面側に赤外線検出素子20dが配置され、基板43の厚み方向の他面側にIC素子41、42が配置されているのが好ましい。これにより、赤外線検出器2aは、基板43の厚み方向の一面側において赤外線検出素子20dの側方にIC素子41、42が配置されている場合に比べて、小型化を図ることが可能となる。また、赤外線検出器2aは、IC素子41、42それぞれで発生した熱が赤外線検出素子20dへ伝熱されることを、より抑制することが可能となる。
IC素子41、42の各々は、ベアチップであり、基板43の他面側に設けた凹部43y(図11参照)の内底面に、ダイボンド材により固定されている。ダイボンド材としては、例えば、エポキシ樹脂を用いることができる。なお、基板43には、IC素子41、42が電気的に接続される複数の導体部がパターン形成されている。IC素子41、42は、封止材料(例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等)により形成された封止部(図示せず)で覆われているのが好ましい。
パッケージ29は、上述のように、台座29aと、キャップ29bと、窓材29wと、を備えている。
台座29aは、金属製である。台座29aは、円板状に形成されている。キャップ29bは、金属製である。キャップ29bは、円筒状の部位の一端側に、円板状の天板部29baが形成されている。キャップ29bは、天板部29baの中央部に窓孔29cが形成されている。
パッケージ29は、4本のリードピン29dを備えている。4本のリードピン29dは、台座29aに保持されている。4本のリードピン29dは、台座29aに対して、台座29aの厚み方向に貫通して設けられている。各リードピン29dは、基板43に結合されている。4本のリードピン29dは、給電用、グラウンド用、IC素子41の出力信号の取り出し用、及びIC素子42の出力信号の取り出し用それぞれに、1本ずつ利用される。グラウンド用のリードピン29dは、台座29aに対して導電性の封止材で固定されており、台座29aと電気的に接続されている。それ以外のリードピン29dは、台座29aに対して電気絶縁性の封止材(ガラス)で固定されており、台座29aと電気的に絶縁されている。なお、赤外線検出器2aは、基板43に、グラウンド用のリードピン29dが電気的に接続されるシールド板やシールド層を設けてもよい。
台座29aは、平面視形状が円形状であるが、これに限らず、例えば、多角形状でもよい。また、キャップ29bの形状は、台座29aの形状に応じて適宜変更すればよい。例えば、台座29aの平面視形状が矩形状の場合、キャップ29bの平面視形状は、円形状でもよいし、矩形状でもよい。
窓孔29cは、第1受光素子221と第2受光素子222とを併せたサイズよりもやや大きな開口サイズとしてある。窓孔29cの開口形状は、矩形状であるが、これに限らず、例えば、円形状や矩形以外の多角形状等でもよい。
窓孔29cを塞ぐ窓材29wは、赤外線を透過する機能を備えている。窓材29wは、平板状のシリコン基板により構成してある。窓材29wは、窓孔29cの開口サイズよりもやや大きな矩形板状に形成されている。窓材29wは、導電性材料(例えば、半田、導電性接着剤等)によりキャップ29bに固着されているのが好ましい。これにより、赤外線検出器2aは、窓材29wをキャップ29bと略同電位とすることが可能となり、外来の電磁ノイズの影響を受けにくくなるという利点がある。窓材29wは、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板や硫化亜鉛基板等でもよいが、シリコン基板を用いたほうが低コスト化の点で有利である。
パッケージ29は、窓孔29cの赤外線検出素子20dへの垂直投影領域内に第1焦電素子22、22が位置し且つ垂直投影領域外に第2焦電素子23、23が位置するように、窓孔29cが形成されているのが好ましい。これにより、赤外線検出器2aは、パッケージ29により、第2焦電素子23、23への検出対象の赤外線の入射を抑制することが可能となり、部品点数の削減による低コスト化を図ることが可能となる。図12中の矢印は、窓孔29cを通して入射する赤外線の進行方向を模式的に示している。また、赤外線検出器2aは、パッケージ29の内側や外側に配置する導光ミラーにより第2焦電素子23、23への検出対象の赤外線の入射を抑制する場合に比べて、感度のばらつきを抑制することが可能となる。
図15は、赤外線検出器2aの変形例の赤外線検出器2bを示している。赤外線検出器2bは、赤外線検出器2aと基本構成が略同じである。赤外線検出器2bは、天板部29baにおける赤外線検出素子20d側の下面29bdに形成された樹脂層33を備え、樹脂層33が、下面29bdのうち窓材29wが重なっていない領域の全域を覆うように形成されている点が、赤外線検出器2aと相違する。なお、赤外線検出器2bは、赤外線検出器2aと同様の構成要素について同一の符号を付して説明を適宜省略する。
樹脂層33の材料は、例えば、エポキシ樹脂等を採用することができる。
赤外線検出器2bは、樹脂層33が、天板部29baの下面29bdのうち窓材29wが重なっていない領域の全域を覆っているので、パッケージ29内に入った赤外線が散乱や反射等されて発生した迷光の一部を樹脂層33で吸収することが可能となる。これにより、赤外線検出器2bは、迷光となった赤外線が第2焦電素子23、23に入射するのを抑制することが可能となり、S/N比の向上を図ることが可能となる。
赤外線検出器2a、2bは、赤外線検出素子20dの代わりに、赤外線検出素子20a、20b、20cのいずれかを1つ乃至複数、備えた構成としてもよい。
(実施形態3)
以下では、本実施形態の赤外線式ガスセンサ100について図16〜23に基づいて説明する。なお、赤外線式ガスセンサ100のうち、実施形態2の赤外線検出器2aと同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
赤外線式ガスセンサ100(以下、「ガスセンサ100」ともいう。)は、検知対象のガスの種類によって赤外線の吸収波長が異なることを利用して、ガスを検知するので、ガスの識別性を高めることが可能となる。
ガスセンサ100は、赤外光源1と、赤外線検出器2aと、赤外光源1と赤外線検出器2との間に配置され検知対象ガスの出入りが可能な試料セル6(図17〜20参照)と、を備える。また、ガスセンサ100は、赤外光源1に間欠的に通電する駆動回路5と、駆動回路5を制御する制御部51と、IC素子41、42の出力信号を信号処理して検知対象のガスの濃度を求める信号処理回路4と、を備える。これにより、ガスセンサ100は、上述の赤外線検出器2aを備え、赤外線検出器2aが赤外線検出素子20dを備えているので、赤外線のクロストークによる影響を軽減することが可能となり、高感度化を図ることが可能となる。
赤外線検出器2aにおける光学フィルタ31は、測定対象のガスの吸収波長の赤外線を透過するように第1透過波長域が設定されている。第1透過波長域は、上述の第1フィルタ部31a(図13参照)の透過波長域である。
赤外線検出器2aにおける光学フィルタ32は、測定対象のガスに吸収されない参照波長の赤外線を透過し第1透過波長域に重複しない第2透過波長域が設定されている。第2透過波長域は、上述の第3フィルタ部32a(図13参照)の透過波長域である。
信号処理回路4は、IC素子41の出力信号とIC素子42の出力信号との比に基づいて検知対象のガスの濃度を求め、この濃度に相当する出力信号を発生するように構成されている。IC素子41の出力信号は、第1検出エレメントDE1の出力信号を電流電圧変換回路41aで電流−電圧変換してから、増幅回路41bで増幅して出力されるアナログの電圧信号である。IC素子42の出力信号は、第2検出エレメントDE2の出力信号を電流電圧変換回路42aで電流−電圧変換してから、増幅回路42bで増幅して出力されるアナログの電圧信号である。信号処理回路4は、IC素子41の出力信号とIC素子42の出力信号との差分に基づいて検知対象のガスの濃度を求める、この濃度に相当する出力を発生するようにしてもよい。
ガスセンサ100の各構成要素については、以下に、より詳細に説明する。
赤外光源1は、熱放射により赤外線を放射するように構成されている。赤外光源1は、熱放射により赤外線を放射するように構成されているから、赤外発光ダイオードに比べて広い波長域の赤外線を放射することができる。赤外光源1は、第1透過波長域の中心波長及び第2透過波長域の中心波長を含む広帯域の赤外線を放射することができる。要するに、赤外光源1は、光学フィルタ31の第1透過波長域と光学フィルタ32の第2透過波長域とを包含する波長域の赤外線を放射することができる。
赤外光源1は、熱放射により赤外線を放射する赤外線放射素子10と、赤外線放射素子10を収納したパッケージ19と、を備えている。なお、図17中の矢印付きの線は、ガスセンサ100において赤外光源1から放射された赤外線の進行経路を模式的に示したものである。
赤外線放射素子10は、図21に示すように、半導体基板11と、半導体基板11の一面111側に形成された薄膜部12と、半導体基板11に形成され薄膜部12における半導体基板11側の第1面121の一部を露出させる開口部11aと、を備える。また、赤外線放射素子10は、薄膜部12の第2面122に形成され、通電されることによる熱放射により赤外線を放射する赤外線放射層13を備える。赤外線放射層13は、駆動回路5から通電されることによって、熱放射により赤外線を放射する。赤外光源1は、熱放射により赤外線を放射するものであるから、赤外発光ダイオードに比べて広い波長域の赤外線を放射することができる。
赤外線放射素子10は、保護層14と、赤外線放射層13に電気的に接続された複数の端子部16と、を備えている。保護層14は、薄膜部12の第2面122側で赤外線放射層13を覆うように形成されている。保護層14は、赤外線放射層13から放射される赤外線を透過可能な材料により形成されている。赤外線放射層13と各端子部16とは、配線15を介して電気的に接続されている。
赤外線放射素子10は、MEMS(micro electro mechanical systems)の製造技術等を利用して製造することができる。
赤外線放射素子10は、赤外線放射層13への通電により赤外線放射層13が発熱し、赤外線放射層13から熱放射により赤外線が放射される。赤外線放射素子10の赤外線放射層13は、赤外光源1における発熱体を構成している。
半導体基板11としては、単結晶のシリコン基板を採用している。半導体基板11は、単結晶のシリコン基板に限らず、例えば、多結晶のシリコン基板等を採用することができる。
薄膜部12は、例えば、半導体基板11側のシリコン酸化膜12aと、シリコン酸化膜12aにおける半導体基板11側とは反対側に積層されたシリコン窒化膜12bとの積層膜により構成することができる。薄膜部12は、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜の単層構造でもよい。
赤外線放射層13の材料は、窒化タンタルを採用している。つまり、赤外線放射層13は、窒化タンタル層により構成されている。赤外線放射層13の材料は、窒化タンタルに限らず、例えば、窒化チタン、ニッケルクロム、タングステン、チタン、トリウム、白金、ジルコニウム、クロム、バナジウム、ロジウム、ハフニウム、ルテニウム、ボロン、イリジウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、オスミウム、レニウム、ニッケル、ホルミウム、コバルト、エルビウム、イットリウム、鉄、スカンジウム、ツリウム、パラジウム、ルテチウムを採用してもよい。また、赤外線放射層13の材料は、導電性ポリシリコンを採用してもよい。つまり、赤外線放射層13は、導電性ポリシリコン層により構成してもよい。赤外線放射層13について、高温で化学的に安定であり、且つ、シート抵抗の設計容易性という観点からは、窒化タンタル層、窒化チタン層、導電性ポリシリコン層等を採用することが好ましい。窒化タンタル層及び窒化チタン層の各々は、その組成を変えることにより、シート抵抗を変えることが可能である。導電性ポリシリコン層は、不純物濃度を変えることにより、シート抵抗を変えることが可能である。
開口部11aは、半導体基板11の厚み方向に貫通した孔により形成されているが、これに限らず、半導体基板11の一面111に形成された穴により形成されていてもよい。
保護層14は、シリコン窒化膜により構成してある。保護層14は、シリコン窒化膜に限らず、例えば、シリコン酸化膜により構成してもよいし、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との積層構造を有していてもよい。保護層14は、耐湿性等の信頼性を確保するためのパッシベーション膜である。保護層14は、赤外線放射層13への通電時に赤外線放射層13から放射される所望の波長域の赤外線に対する透過率が高いほうが好ましいが、透過率が100%であることを必須とするものではない。
赤外線放射層13の厚さは、赤外線放射層13の低熱容量化を図るという観点から0.2μm以下とするのが好ましい。
薄膜部12の厚さと赤外線放射層13の厚さと保護層14の厚さとの合計厚さは、薄膜部12と赤外線放射層13と保護層14との積層構造の低熱容量化を図るという観点から、例えば、0.1μm〜1μm程度の範囲で設定することが好ましく、0.7μm以下とするのがより好ましい。
配線15の材料としては、アルミニウム合金(Al−Si)を採用している。配線15の材料は、特に限定するものではなく、例えば、金、銅等を採用してもよい。また、配線15は、赤外線放射層13と接する部分が赤外線放射層13とオーミック接触が可能な材料であればよく、単層構造に限らず、多層構造でもよい。例えば、配線15は、その厚さ方向において、赤外線放射層13側から順に、第1層、第2層、第3層が積層された3層構造として、赤外線放射層13に接する第1層の材料を高融点金属(例えば、クロム等)とし、第2層の材料をニッケルとし、第3層の材料を金としてもよい。
端子部16は、パッド電極を構成している。端子部16の材料としては、アルミニウム合金(Al−Si)を採用している。端子部16の材料は、配線15と同じ材料を採用しているが、端子部16の材料と異なる材料でもよい。
ガスセンサ100は、駆動回路5から赤外線放射素子10の一対の端子部16間に与える入力電力を調整することにより、赤外線放射層13に発生するジュール熱を変化させることができ、赤外線放射層13の温度を変化させることができる。よって、赤外線放射素子10は、赤外線放射層13の温度を変化させることで赤外線放射層13から放射される赤外線のピーク波長を変化させることができる。
パッケージ19は、赤外線放射素子10が実装される台座19aと、赤外線放射素子10を覆うように台座19aに固着されるキャップ19bと、を備える。パッケージ19は、キャップ19bにおける赤外線放射素子10の前方に形成された窓孔19rと、窓孔19rを塞ぐように配置され、赤外線を透過可能な窓材19wと、を備える。
台座19aは、金属製である。台座19aは、円板状に形成されている。キャップ19bは、金属製である。キャップ19bは、円筒状の部位の一端側に、円板状の天板部が形成されており、天板部の中央部に窓孔19rが形成されている。
台座19aは、平面視形状が円形状であるが、これに限らず、例えば、多角形状でもよい。また、キャップ19bの形状は、台座19aの形状に応じて適宜変更すればよい。例えば、台座19aの平面視形状が矩形状の場合、キャップ19bの平面視形状は、円形状でもよいし、矩形状でもよい。
パッケージ19は、赤外線放射素子10への給電用の端子として、2本のリードピン19dを備えている。赤外線放射素子10の端子部16とリードピン19dとは、金属細線(図示せず)を介して電気的に接続されている。
2本のリードピン19dは、台座19aに保持されている。2本のリードピン19dは、台座19aに対して、台座19aの厚み方向に貫通して設けられている。2本のリードピン19dは、台座19aに対して電気絶縁性の封止材(ガラス)で固定されており、台座19aと電気的に絶縁されている。
窓材19wは、赤外線を透過する機能を有する。窓材19wは、平板状のシリコン基板により構成してある。窓材19wは、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板や硫化亜鉛基板等でもよいが、シリコン基板を用いたほうが低コスト化の点で有利である。また、窓材19wとしては、レンズを採用することもできる。
ガスセンサ100は、駆動回路5から赤外線放射素子10の赤外線放射層13へ与える入力電力を調整することにより、赤外線放射層13に発生するジュール熱を変化させることができ、赤外線放射層13の温度を変化させることができる。よって、ガスセンサ100では、赤外線放射層13の温度を変化させることで赤外線放射層13から放射される赤外線のピーク波長を変化させることができる。
駆動回路5は、赤外光源1を間欠的に駆動する。駆動回路5は、赤外光源1に対して、所定パルス幅の電圧(以下、「パルス電圧」ともいう。)を一定の時間間隔で印加する。したがって、ガスセンサ100は、駆動回路5から赤外光源1へ、パルス電圧が周期的に印加される。赤外光源1は、パルス電圧が印加されている期間が通電期間となり、パルス電圧が印加されていない期間が非通電期間となる。
試料セル6は、筒状に形成されている。試料セル6は、その内部空間と外部とを連通させる複数の通気孔69が、試料セル6の軸方向に直交する方向に貫通して形成されているのが好ましい。試料セル6が、円筒状に形成されている場合、通気孔69は、試料セル6の径方向に貫通して形成されているのが好ましい。試料セル6は、通気孔69を通して外部からの気体が導入されたり、内部空間の空気が導出されたりする。
ガスセンサ100は、試料セル6の軸方向の一端部側に赤外光源1が配置され、試料セル6の軸方向の他端部側に赤外線検出器2aが配置されている。ガスセンサ100は、通気孔69を通って試料セル6の内部空間に、例えば、外部からの検知対象のガス、あるいは検知対象のガスを含む気体が導入される。ガスセンサ100は、試料セル6の内部空間にある検知対象のガスの濃度が増加すると、赤外線検出器2aへ入射する赤外線の光量が低下し、試料セル6の内部空間にある検知対象のガスの濃度が低下すると、赤外線検出器2aへ入射する赤外線の光量が増加する。
ガスセンサ100では、検知対象のガスの種類によって赤外線の吸収波長が異なるので、ガスの識別性を高めることが可能となる。吸収波長は、例えば、CH4(メタン)が3.3μm、CO2(二酸化炭素)が4.3μm、CO(一酸化炭素)が4.7μm、NO(一酸化窒素)が5.3μmである。このため、赤外線検出器2aは、例えば、第1フィルタ部31a(図13参照)の中心波長λ1を検知対象のガスの吸収波長に設定し、第3フィルタ部32aの中心波長λ2を検知対象のガス及び他のガス(H2O、CH4、CO、NO等)での吸収のない波長に設定すればよい。第1フィルタ部31a及び第3フィルタ部32aとしては、透過スペクトルの半値全幅が狭いバンドパスフィルタが好ましい。また、ガスセンサ100は、第1フィルタ部31aの中心波長λ1と第3フィルタ部32aの中心波長λ2との差が小さい方が好ましい。これにより、ガスセンサ100は、検知対象のガスが存在しないときの第1フィルタ部31aを透過する赤外線の光量と第3フィルタ部32aを透過する赤外線の光量との差を少なくすることが可能となる。ガスセンサ100は、検知対象のガスが例えば二酸化炭素の場合、第1フィルタ部31aの中心波長λ1を4.3μmに設定し、第3フィルタ部32aの中心波長λ2を例えば3.9μmに設定することができる。
試料セル6は、この試料セル6の中心軸を含む平面で分割された対になる半割体64、65(図18〜20参照)を結合することにより形成されている。半割体64と半割体65とは、例えば、嵌め合い、超音波溶着、接着等から選択される技術により結合することができる。
試料セル6は、赤外光源1から放射された赤外線を赤外線検出器2a側へ反射する光学要素を兼ねているのが好ましい。試料セル6は、例えば、合成樹脂により形成されている場合、内面側に、赤外線を反射する反射層を備えた構成とするのが好ましい。試料セル6の材料は、合成樹脂に限らず、例えば、金属を採用してもよい。
要するに、試料セル6は、筒状であり、その内面が、赤外光源1から放射された赤外線を反射する反射面66(図18、20参照)を構成するのが好ましい。上述の反射層を備えている場合には、この反射層の表面が反射面66を構成することができる。
ガスセンサ100は、赤外光源1を保持する保持部材70(図18〜20参照)を備え、この保持部材70が試料セル6に取り付けられている。また、ガスセンサ100は、赤外線検出器2aを保持する保持部材80を備え、この保持部材80が試料セル6に取り付けられている。
保持部材70は、キャップ部71と、押さえ板72と、を備えている。キャップ部71は、円盤状であって、試料セル6側の端面に、試料セル6の一端部が挿入される凹部71aが設けられ、凹部71aの底部の中央に、赤外光源1が挿入される貫通孔71bが形成されている。押さえ板72は、キャップ部71に対して赤外光源1を押さえるためのものである。
保持部材70は、押さえ板72の孔72b及びキャップ部71の孔71dに通された複数のねじ(図示せず)が、試料セル6の一端部のめねじ部64d、65dにねじ込まれることによって、試料セル6に取り付けられている。
保持部材80は、キャップ部81と、押さえ板82と、を備えている。キャップ部81は、円盤状であって、試料セル6側の端面に、試料セル6の他端部が挿入される凹部81aが設けられ、凹部81aの底部の中央に、赤外線受光ユニット2が挿入される貫通孔81bが形成されている。押さえ板82は、キャップ部81に対して赤外線検出器2aを押さえるためのものである。
保持部材80は、押さえ板82の孔82b及びキャップ部81の孔81cに通されたねじ(図示せず)が、試料セル6の他端部のめねじ部(図示せず)にねじ込まれることによって、試料セル6に取り付けられている。
なお、保持部材70,80それぞれの構造は、特に限定するものではない。また、試料セル6への保持部材70,80それぞれの取付構造も特に限定するものではない。
ところで、試料セル6の反射面66は、試料セル6の中心軸上に規定した長軸を回転軸とする回転楕円体の長軸方向の両端部それぞれを長軸に直交する2つの平面によりカットした形状としてある。よって、試料セル6は、回転楕円体(長楕円体)の一部に対応する内部空間が形成されている。
ガスセンサ100は、赤外光源1を、試料セル6の中心軸上において、上記回転楕円体の一方の焦点に配置し、赤外線検出器2aを、試料セル6の中心軸上において、上記回転楕円体の他方の焦点よりも赤外光源1に近い側に配置するのが好ましい。
なお、ガスセンサ100は、赤外光源1と赤外線検出器2aとの間に配置される部材(試料セル6等)の形状や数、配置等を特に限定するものではない。
信号処理回路4は、A/D変換回路45aと、濃度演算部45bと、を備える。A/D変換回路45aは、IC素子41の出力信号(以下、「第1出力信号」ともいう。)、IC素子42の出力信号(以下、「第2出力信号」ともいう。)それぞれをアナログ−ディジタル変換して出力するように構成されている。濃度演算部45bは、A/D変換回路45aにてそれぞれディジタル化された第1出力信号と第2出力信号との比に基づいて測定対象のガスの濃度を演算するように構成されている。
濃度演算部45bは、IC素子41の第1出力信号とIC素子42の第2出力信号との比から、濃度を演算するように構成されている。濃度演算部45bでは、〔IC素子41の第1出力信号〕/〔IC素子42の第2出力信号〕の値が大きいほど、濃度が高くなる。
濃度演算部45bは、A/D変換回路45aにてそれぞれディジタル化された第1出力信号と第2出力信号との差分に基づいて測定対象のガスの濃度を演算するように構成してもよい。この場合、濃度演算部45bでは、|〔第1増幅回路41bにて増幅された第1出力信号〕−〔第2増幅回路42bにて増幅された第2出力信号〕|の値が大きいほど、濃度が高くなる。
ガスセンサ100は、制御部51と濃度演算部45bとを備える演算部が、マイクロコンピュータに適宜のプログラムを搭載することにより構成されている。演算部は、例えば、カスタムIC等により構成してもよい。
ガスセンサ100は、濃度演算部45bでの演算により求めた濃度を表示させる表示部8を備えていてもよい。表示部8は、例えば、液晶表示装置や、有機EL表示装置や、発光ダイオードを用いた表示装置等により構成することができる。
ガスセンサ100は、制御部51に、赤外光源1の抵抗値を設定する設定部52が接続されている。制御部51は、設定部52により設定された抵抗値に基づいて、駆動回路5から赤外光源1への投入電力が規定値となるように所定パルス幅を決定するように構成されている。
赤外光源1の抵抗の測定値とは、室温(例えば、25℃)下において赤外光源1に電圧を印加したときに赤外光源1に流れる電流を測定し、オームの法則から求めた値である。赤外光源1の抵抗は、ガスセンサ100の製造段階或いはガスセンサ100の製造前に、予め測定すればよい。赤外光源1の抵抗の測定値は、赤外線放射素子10の赤外線放射層13の抵抗と、パッケージ19のリードピン19dと赤外線放射層13との間の電路の抵抗と、の合成抵抗の値である。赤外光源1は、赤外線放射層13で発生するジュール熱を大きくし、赤外線放射層13から効率良く赤外線を放射させるという観点から、赤外線放射層13の抵抗値が、電路の抵抗値よりも十分に大きいのが好ましい。言い換えれば、赤外光源1は、赤外光源1の抵抗の測定値が、赤外線放射層13の抵抗値とみなせる程度に電路の抵抗値が小さいのが好ましい。
駆動回路5は、制御部51にて決定された所定パルス幅の電圧を赤外光源1へ供給するように構成されている。これにより、ガスセンサ100は、赤外光源1の製造ばらつき等に起因して赤外光源1の抵抗値がばらついていても、製造時に、予め測定した赤外光源1の抵抗の測定値を設定部52により抵抗値として設定することにより、赤外光源1への投入電力のばらつきを抑制することが可能となり、測定精度の高精度化を図ることが可能となる。
ところで、ガスセンサ100は、駆動回路5から赤外線放射層13へ供給する電圧の所定パルス幅を、第1焦電素子22、22が受光した赤外線量の時間変化に応じて電流を出力する応答時間に比べて短い時間に設定してある。
図22は、赤外線放射層13に印加されるパルス電圧の波形と、赤外線放射層13が放射する赤外線量との関係を模式的に示している。赤外線放射層13は、パルス電圧が印加されている期間のみ通電され、パルス電圧が印加されていない期間には通電が停止(オフ)されている。図22では、赤外線放射層13に通電されている通電期間をT1、赤外線放射層13への通電がオフされてから次に通電が開始されるまでの非通電期間をT2としてある。
赤外光源1は、赤外線放射素子10の開口部11a内に存在する気体が気体層を構成している。気体層を構成する気体としては、不活性ガスが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、N2ガス、Arガス等を採用することができる。
赤外光源1は、気体層を備えていることにより、通電期間T1に赤外線放射層13を効率的に昇温させることが可能であり、所定パルス幅の短縮化を図りながらも所望の赤外線量を確保することが可能となる。また、赤外光源1は、気体層を備えていることにより、非通電期間T2においても、通電期間T1よりも長い期間にわたって赤外線を放射させることが可能となる。ガスセンサ100は、所定パルス幅の短縮化により、低消費電力化を図ることが可能となる。
赤外線放射層13は、通電が開始されると時間が経過するにつれて、温度が上昇する。赤外線放射層13は、温度が上昇するにつれて、赤外線量が曲線的に増加する。赤外線放射層13は、通電がオフされると、温度が下降する。赤外線放射層13は、温度が下降するにつれて、赤外線量が緩やかに減少する。非通電期間T2において赤外線放射層13が放射する赤外線量の時間変化の周波数成分は、気体層1cを有する赤外光源1の構造的な熱時定数によって決定される。非通電期間T2は、通電期間T1に比べて十分に長い時間に時間に設定してある。例えば、ガスセンサ100は、例えば、通電期間T1を5ms〜30ms程度の範囲内で設定し、非通電期間T2を5s〜30s程度の範囲内で設定することができる。なお、非通電期間T2における赤外線量の時間変化の周波数成分は、通電期間T1における赤外線量の時間変化の周波数成分に比べて、低周波数となる。ガスセンサ100は、非通電期間T2においても、通電期間T1よりも長い期間にわたって赤外線を放射させることが可能なので、非通電期間T2に低周波数で減少する赤外線を利用した低周波応答が可能となる。
電流電圧変換回路41aでは、容量性素子であるコンデンサCfのインピーダンスを用いて第1検出エレメントDE1の出力信号である電流信号に対して電流−電圧変換を行う。第1検出エレメントDE1からみたインピーダンス(以下、「変換インピーダンス」は、下記の式(6)で表すことができる。
Z=1/(2・π・f・C)・・・式(6)
式(6)では、変換インピーダンスをZ〔Ω〕、周波数をf〔Hz〕、コンデンサCfのキャパシタンスをC〔F〕としてある。
図23は、変換インピーダンスZの周波数特性を模式的に示している。図23は、片対数グラフであり、縦軸を対数目盛としてある。図23では、縦軸及び横軸それぞれの目盛を省略してある。変換インピーダンスZは、図23に示すように、周波数が低くなるにつれて、線形に増加する傾向にある。
ガスセンサ100は、赤外光源1が気体層を備えていない場合に比べて、赤外光源1の非通電期間T2に赤外光源1から放射される赤外線量の時間変化の周波数成分が、低周波数である。このため、電流電圧変換回路41aは、第1検出エレメントDE1が出力する低周波数の電流信号に対して、変換インピーダンスZ(ゲイン)の高い領域で動作し、出力信号のS/N比の向上を図ることが可能となる。したがって、IC素子41は、電流電圧変換回路41aの出力信号を増幅する増幅回路41bの出力信号のS/N比の向上を図ることが可能となる。
IC素子42は、電流電圧変換回路42aの回路構成が電流電圧変換回路41aと同じあり、増幅回路42bの回路構成が増幅回路41bと同じなので、IC素子41と同様に、出力信号のS/N比の向上を図ることが可能となる。
上述したように、赤外光源1は、半導体基板11と、半導体基板11の一面111側に形成された薄膜部12と、半導体基板11に形成され薄膜部12における半導体基板11側の第1面121の一部を露出させる開口部11aと、を備える。また、赤外光源1は、薄膜部12の第2面122に形成され、通電されることによる熱放射により赤外線を放射する赤外線放射層13を備え、赤外線放射層13への通電がオフされてから次に通電が開始されるまでの非通電期間においても赤外線を放射する。また、IC素子41、42は、赤外線検出素子20dの出力信号である電流信号を電流−電圧変換する電流電圧変換回路41a、42aを備えている。電流電圧変換回路41a、42aは、赤外光源1の非通電期間において赤外光源1が放射する赤外線量の時間変化の周波数成分に対するゲインが、当該周波数成分より高い周波数領域に対するゲインより大きいのが好ましい。電流電圧変換回路41a、42aのゲインとは、上述の変換インピーダンスZを意味する。ガスセンサ100は、赤外線放射層13への通電期間の短縮化により、赤外光源1の駆動電力の低減を図ることが可能となる。また、ガスセンサ100は、赤外光源1の非通電期間において赤外光源1が放射する赤外線量の時間変化の周波数成分に対するゲインが、当該周波数成分より高い周波数領域に対するゲインより大きいことにより、S/N比の向上を図ることが可能となる。
電流電圧変換回路41a、42aは、コンデンサCfの電荷を定期的に放電させるリセット動作を可能とするために、コンデンサCfに、MOSFET等のスイッチ素子を並列接続した構成としてもよい。この場合、電流電圧変換回路41a、42aは、スイッチ素子を定期的に所定時間だけオンさせることで、コンデンサCfの電荷を定期的に放電させることが可能となる。これにより、ガスセンサ100は、電流電圧変換回路41a、42aの出力信号が飽和するのを抑制することが可能となる。
駆動回路5は、制御部51からの制御信号を昇圧してパルス電圧を生成するように構成されている。駆動回路5は、制御信号として与えられる入力電圧を昇圧する昇圧機能を有している。制御信号は、所定パルス幅を指示する信号である。
ガスセンサ100は、駆動回路5から赤外光源1へ供給するパルス電圧が同じでも、赤外光源1の抵抗値の違いによって、赤外線放射層13の温度が異なる。
そこで、ガスセンサ100は、制御部51が、設定部52により設定された抵抗値に基づいて、駆動回路5から赤外光源1への投入電力が規定値となるように所定パルス幅を決定するように構成されている。設定部52は、例えば、不揮発性記憶素子により構成することができる。設定部52は、例えば、ガスセンサ100の出荷検査時等に、別途に測定した赤外光源1の抵抗の測定値を、赤外光源1の抵抗値として記憶させることで設定するものである。制御部51は、所定パルス幅を決定する際、設定部52から赤外光源1の抵抗値を読み出し、所定の演算式に当該抵抗値を代入して演算を行うことで所定パルス幅を決定する。更に、ガスセンサ100は、駆動回路5が、制御部51にて決定された所定パルス幅のパルス電圧を赤外光源1へ間欠的に供給するように構成されている。これにより、ガスセンサ100は、赤外光源1の製造ばらつき等に起因して光源1の抵抗値がばらついていても、製造時に、予め測定した赤外光源1の抵抗の測定値を設定部52により抵抗値として設定することにより、赤外光源1への投入電力のばらつきを抑制することが可能となり、測定精度の高精度化を図ることが可能となる。要するに、ガスセンサ100は、製造時に所定パルス幅を赤外光源1の抵抗の測定値に基づいて初期調整する機能を有しており、測定精度の高精度化を図ることが可能となる。
ガスセンサ100は、赤外線検出器2aの代わりに、実施形態2において説明した変形例の赤外線検出器2bを用いてもよい。また、ガスセンサ100は、赤外線検出器2aにおける赤外線検出素子20dの代わりに、実施形態1において説明した赤外線検出素子20a、20b、20cを2つずつ用いてもよい。
ガスセンサ100は、第1検出エレメントDE1と第2検出エレメントDE2との組を、1組だけ備えているが、これに限らず、第1検出エレメントDE1と第2検出エレメントDE2との組を、複数組、備えていてもよい。これにより、ガスセンサ100は、第1検出エレメントDE1と第2検出エレメントDE2との組の数に1対1で対応する種類、のガスの濃度を測定することが可能となる。つまり、ガスセンサ100は、測定対象のガスの種類を1種類だけに限らず、複数種類とすることもできる。
なお、赤外光源1は、赤外線放射素子10とパッケージ19とを備えた構成に限らず、例えば、ハロゲンランプ等を採用することもできる。